説明

TGF−βスーパーファミリーのデザイナーリガンド

本開示はTGF-β活性を有するキメラポリペプチド、前記ポリペプチドをコードする核酸、および前記ポリペプチドを産生する宿主細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は生物分子工学およびデザイン、ならびに作製したタンパク質および核酸に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチビン(Activin)と骨形成タンパク質(BMP)はさらに大きいトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーのメンバーである。これらは数多くの発生および細胞プロセスに広く関わるので、TGF-βリガンドは非常に興味深い研究対象になっている。TGF-βリガンドを治療手段として首尾よく用いるためには、いくつかの障害を克服する必要がある。TGF-βリガンドの特性を修飾しかつ改変すると共に、これらのリガンドを大量に作製する能力が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、TGF-βファミリーのタンパク質により与えられた活性を有する非天然のキメラポリペプチドを提供する。本開示のキメラポリペプチドは機能しうる形で連結された親TGF-βタンパク質由来の2つ以上のセグメントもしくは断片を含むものであって、得られるポリペプチドはTGF-βファミリーのタンパク質に関連する経路をモジュレートすることができる。一実施形態において、前記経路はSMADまたはDAXX経路である。
【0004】
一実施形態において、本開示は、TGF-βスーパーファミリーリガンドの色々な配列セグメントを選択しかつ繋ぎ合わせて新しいリガンド(デザイナーリガンド)を構築することにより合成できるデザイナーTGF-βリガンドを提供する。これらの新規リガンドは天然のTGF-βスーパーファミリーリガンドと異なる全く新しいタンパク質配列ライブラリーを持つ。この手法は主に、天然のTGF-βスーパーファミリーリガンド間の構造共通性の認識に基づくものである。全部でほぼ40種のTGF-βスーパーファミリーリガンドはタンパク質の各領域に対する属の特徴とともに同じ全体構造を共有する。TGF-βリガンドのフレームワークは(一般に)全てのスーパーファミリーメンバーが共有する6つのサブドメイン(配列セグメントとも呼ばれ;図19にて異なる6色で表した)に分割することができる。
【0005】
一実施形態において、本開示はまた、少なくとも2つのペプチドセグメント、第1のTGF-βファミリータンパク質と少なくとも80%の同一性を有する配列を含むポリペプチドの第1のセグメントと第2のTGF-βファミリータンパク質と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む第2のセグメントを含む組換えポリペプチドであって、前記セグメントは機能しうる形で連結されかつ第1または第2の親TGF-βファミリータンパク質の少なくとも1つの活性を有する前記組換えポリペプチドを提供する。一実施形態において、このポリペプチドはBMP-2由来のN末端セグメントを含む。他の実施形態において、少なくとも2つのペプチドセグメントはN末端〜C末端と機能しうる形で連結された6つのペプチドセグメントを含む。なお他の実施形態において、第1および第2のTGF-βファミリータンパク質のそれぞれは構造類似性を有し、各セグメントは構造モチーフに対応する。なおさらなる実施形態において、第1のTGF-βファミリータンパク質はBMP-2でありかつ第2のTGF-βファミリータンパク質はアクチビンである。一実施形態において、前記BMP-2タンパク質のセグメントはセグメント1、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約1〜約x1("1b");セグメント2、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x1〜約x2("2b”);セグメント3、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x2〜約x3("3b");セグメント4、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x3〜約x4(“4b”);セグメント5、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x4〜約x5("5b");およびセグメント6、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x5〜約x6("6b")を含み;ここで:x1は配列番号2の残基25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35であり;x2は配列番号2の残基45、46、47、または48であり;x3は配列番号2の残基65、66、67、または68であり;x4は配列番号2の残基76、77、78、79、80、81または82であり;x5は配列番号2の残基88、89、90、91、92、93、または94であり;そしてx6は配列番号2の残基112、113、もしくは114であってBMP-2のC末端に対応し;そして前記アクチビンタンパク質のセグメントはセグメント1、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約1〜約x1("1a");セグメント2、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x1〜約x2("2a”);セグメント3、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x2〜約x3("3a");セグメント4、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x3〜約x4(“4a”);セグメント5、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x4〜約x5("5a");およびセグメント6、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x5〜約x6("6a")を含み;かつここで:x1は配列番号5の残基22、23、24、25、26、27、28、29、30、31または32であり;x2は配列番号5の残基42、43、44、または45であり;x3は配列番号5の残基61、62、63、または64であり;x4は配列番号5の残基78、79、80、81、82、83または84であり;x5は配列番号5の残基90、91、92、93、94、95または96であり;そしてx6は配列番号5の残基114、115、または116であり;そしてポリペプチドはセグメント1-セグメント2-セグメント3-セグメント4-セグメント5-セグメント6の順で存在する。さらなる実施形態において、ポリペプチドは1b2b3b4b5b6a;1b2b3b4b5a6a;1b2b3b4b5a6b;1b2b3a4a5a6a;1b2b3a4a5b6a;1b2a3a4a5a6a;1b2a3a4a5a6aL66V/V67I;1b(1a_II)2a3a4a5a6a;1b2a3a4a5a6b;1b2a3a4a5b6b;1b2a3a4a5b6a;1b2a3b4b5b6a;1b2a3b4b5a6a;および1b2a3b4b5a6bからなる群より選択されるセグメントの配列を含む。
【0006】
本開示はまた、配列番号7、9、11、13、15、17、19、1、23、25、2、29、31、33、35、37、39または41に記載した配列と少なくとも80%、90%、95%、98%または99%の同一性を含むポリペプチドであって、SMADまたはDAXX経路をモジュレートする組換えポリペプチドを提供する。
【0007】
本開示はまた、第2の異なるTGF-βファミリータンパク質のセグメントと機能しうる形で連結された第1のTGF-βファミリータンパク質のセグメントを含んで、SMADまたはDAXXをモジュレートする活性を有するキメラポリペプチドを与えるキメラTGF-βファミリーポリペプチドを提供する。
【0008】
本開示はまた、本開示のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。一実施形態において、本ポリヌクレオチドは配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、24、26、28、および40からなる群より選択される配列と少なくとも80%、90%、95%、98%、99%以上の同一性を有する。かかるポリヌクレオチドを含むベクターはまた、組換え細胞によって提供される。
【0009】
代わりの実施形態において本開示は、TGF-βスーパーファミリーの外来または異なるメンバー由来の6つのサブドメインの少なくとも1つをもつキメラタンパク質である新規のリガンドを、TGF-βスーパーファミリーのメンバーに提供する。
【0010】
本開示は、第1のTGF-βファミリーメンバー由来の第1ドメイン、J1におけるクロスオーバーポイント(例えば、図18を参照)、前記または第2のTGF-βファミリーメンバー由来の第2ドメイン、J2におけるクロスオーバーポイント(例えば、図18を参照)、前記または第3のTGF-βファミリーメンバー由来の第3ドメイン、J3におけるクロスオーバーポイント(例えば、図18を参照)、前記または第4のTGF-βファミリーメンバー由来の第4ドメイン、J4におけるクロスオーバーポイント(例えば、図18を参照)、前記または第5のTGF-βファミリーメンバー由来の第5ドメイン、J5におけるクロスオーバーポイント(例えば、図18を参照)、および前記または第6のTGF-βファミリーメンバー由来の第6ドメインを含むキメラポリペプチドを含むものである。一実施形態において、キメラは2、3、4、5、または6つの異なるTGF-βファミリーメンバーから誘導される。さらに他の実施形態において、J3におけるクロスオーバーは任意である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1A〜BはBMP2/BMP6サンプルの特徴づけを示す。パネルA:SDS-PAGE上のBMP2/BMP6サンプルである。レーン1に非還元のBMP2/BMP6サンプル、レーン2に分子量マーカー、およびレーン3に還元したBMP2/BMP6サンプルを示す。パネルB:BMP2、BMP6、およびBMP2/BMP6リガンドの別々のサンプルから得たSELDI-TOF-MSを重ねた結果を示す。
【図2】野生型リガンドによるC2C12全細胞Smad1依存レポーターアッセイを示す。黒色バーは誤差を示す。
【図3】5日後のニワトリ肢芽間葉細胞の微量培養軟骨形成アッセイを可視化したものである。最上部のパネルは無因子かつ細胞外アンタゴニストNogginによる培養を示す。顕微鏡写真中のバーは1mmを表す。第2〜第4のパネルはそれぞれリガンドBMP2、BMP6、およびBMP2/BMP6による培養を示す。
【図4】3日後のニワトリ肢芽間葉細胞の微量培養軟骨形成アッセイの定量結果を示す。色々な濃度の具体的な増殖因子の添加結果を示した。
【図5】Smad1レポーター遺伝子の活性化を提示する変異体BMP2/BMP6ヘテロ二量体を示す。サンプルaは因子を含有せず(バックグランド)、そしてサンプルbは活性受容体部位をもたないBMP2ホモ二量体を含有する。全ての量は、完全活性のBMP2/BMP6ヘテロ二量体であるサンプルc(レポーター遺伝子の100%活性化)に対して規準化した。
【図6】明示したリガンドでリガンド受容体を飽和した後に残存する、II型受容体ECDの量を表す未変性PAGEを示す。
【図7】キメラデザインを計画するための構造/配列アラインメントを示す。
【図8】乾燥ゲルの存在のもとでの細胞生存率を示すグラフである(最低濃度、緑色、0.3ug/ul;中濃度、赤色、3ug/ul;高濃度、青色、30ug/ul)。
【図9】ヒトFGF2の非存在または存在のもとで色々な濃度のAB2-008を用いてmCIVA中で培養したH9 hES細胞を示す。
【図10】(A)リガンド無添加、(B)組換えBMP2(30ng/ml)、(C)AB2-004(30ng/ml)、(D)AB2-011(30ng/ml)および(E)AB2-015(30ng/ml)の条件でのVon Kossa染色による石灰化を示す。
【図11】AB2-008、AB2-009、および AB2-010のシグナル伝達活性を示す。(A)AB2-008-対-アクチビン-βA、(B)AB2-009-対-アクチビン-βA、(C)AB2-010-対-アクチビン-βA、(D)アクチビン-βAと比較した相対シグナル伝達強度。
【図12】AB2-008、AB2-009、およびAB2-010によるリン酸化をアクチビン-βAおよびBMP2と比較して示す。アクチビン-βA、AB2-008、およびAB2-009は比較しうるレベルのSMAD2のリン酸化を示すが、BMP2は特異的にSMAD1のリン酸化を示す。
【図13】アクチビン-βA、AB2-008、AB2-009、および AB2-010によるFSH放出を示す。(A)インヒビン無しでの用量依存性FSH刺激、および(B)インヒビンによる放出の減少。
【図14】アクチビン-βAおよびAB2-008による共受容体結合を示す。Criptoの存在および非存在における、(A)アクチビン-βAおよび(B)AB2-008によるHEK細胞中のSmad-2-ルシフェラーゼ活性である。
【図15】Smad-1経路によるAB2-011、AB2-012、およびAB2-015のシグナル伝達活性を示す。(A)AB2-004-対-BMP2、(B)AB2-011-対-BMP2、(C)AB2-012-対-BMP2、および(D)AB2-015-対-BMP2であり、全ての培地において3〜30ng/mlの濃度範囲でC2C12細胞によるSmad-1ルシフェラーゼアッセイを用いた。
【図16】BMP2、AB2-004、AB2-011、AB2-012、およびAB2-015のNoggin感受性を示す。Smad-1ルシフェラーゼシグナル伝達活性はNoggin有り(淡灰色)およびNoggin無し(暗灰色)で測定した。
【図17】RASCH法の模式図による説明である。
【図18】TGF-βスーパーファミリーのいくつかのメンバーの配列の、各メンバーに対して規定した関係セグメントとのアラインメントである。
【図19】TGF-βスーパーファミリーリガンドのスカフォールドの単一サブユニット上の6つのサブドメインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および添付した請求の範囲で使用する、単数形「ある("a"および"an")」ならびに「その("the")」は、文脈が特に断らない限り複数の言及物を含む。従って、例えば、「あるドメイン」への言及は、複数のかかるドメインを含みかつ「そのタンパク質」への言及は1以上のタンパク質への言及を含むという具合である。
【0013】
また、特に断らない場合、「または」の使用は「および/または」を意味する。
【0014】
同様に、「含む」(“comprise”、“comprises”、“comprising”、“include”、“includes”および“including”)は互換可能であって限定を意図するものでない。
【0015】
さらに、様々な実施形態の記載が用語「含む(comprising)」を使用する場合、当業者は、いくつかの具体的な例において、ある実施形態を代わりに言語「本質的にから成る」または「から成る」を用いて記載しうることを、理解しなければならない
本明細書に記載したのと類似または同等の方法および材料を開示した方法の実施および組成物に使用することができ、例示の方法、デバイスおよび材料を本明細書に記載する。
【0016】
特に定義されない場合、本明細書で使用する全ての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の業者に通常理解されているのと同じ意味を有する。従って、本出願全体を通して使用されるように、次の用語は次の意味を有すべきである。
【0017】
「アミノ酸」は、中心の炭素原子(α炭素原子)が水素原子、カルボン酸基(「その炭素原子を本明細書では「カルボキシル炭素原子」と呼ぶ」)、アミノ基(その窒素原子を本明細書では「アミノ窒素原子」と呼ぶ)、および側鎖基Rと連結した構造を有する分子である。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク中に組み込まれる場合、アミノ酸が他のアミノ酸と連結する脱水反応において、アミノ酸はアミノ基とカルボン酸基の1以上の原子を失う。その結果、タンパク質中に組み込まれると、アミノ酸はアミノ酸残基と呼ばれる。
【0018】
「タンパク質」または「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して連結された2以上の個々のアミノ酸(天然であるかなしかを問わず)を意味し、あるアミノ酸(またはアミノ酸残基)のα炭素と結合したカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が隣接アミノ酸のα炭素と結合したアミノ基のアミノ窒素原子と共有結合するときに生じる。用語「タンパク質」は用語「ポリペプチド」および「ペプチド」(本明細書では時々互換的に使用される)をその意味に含むことを理解しなければならない。さらに、複数のポリペプチドサブユニットを含むタンパク質(例えば、DNAポリメラーゼIII、RNAポリメラーゼII)または他の成分(例えば、テロメラーゼに存在するRNA分子)もまた、本明細書で使用する「タンパク質」の意味に含まれると理解すべきであろう。同様にタンパク質およびポリペプチドの断片もまた、本開示の範囲内にあり、本明細書では「タンパク質」と呼ぶことができる。本開示の一態様において、ポリペプチドは2以上の親ペプチドセグメントのキメラを含む。
【0019】
本明細書で使用するTGF-βスーパーファミリーメンバーは、いずれかの種、特に哺乳動物の種(限定されるものでないが、ウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ、およびヒトを含む)のTGF-βスーパーファミリー(骨形成因子を含む)遺伝子またはタンパク質を意味する。「TGF-βスーパーファミリーポリペプチド」はいずれかの種、特に哺乳動物の種(限定されるものでないが、ウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ、およびヒトを含む)からおよびいずれかの供給源(天然、合成、半合成、または組換えを問わない)から得た精製されたTGF-βスーパーファミリータンパク質のアミノ酸配列を意味する。
【0020】
「ペプチドセグメント」はより大きいポリペプチドまたはタンパク質の一部分または断片を意味する。ペプチドセグメントはそれ自体機能的活性を有する必要はない、しかしいくつかの事例において、ペプチドセグメントはそれ自体の生物学的活性を有するポリペプチドのドメインに対応しうる。安定性に関連するペプチドセグメントは、そのペプチドセグメントを欠く関係ポリペプチドと比較して安定性、機能、またはフォールディングを促進するポリペプチドにおいて見出されるペプチドセグメントである。
【0021】
所与のタンパク質の特定のアミノ酸配列(すなわち、アミノ末端からカルボキシ末端へ書いたときのポリペプチドの「一次構造」)はmRNAのコーディング部分のヌクレオチド配列によって決定され、これは順に遺伝情報、典型的にはゲノムDNA(小器官DNA、例えば、ミトコンドリアまたは葉緑体DNAを含む)により明示される。従って遺伝子の配列を決定することは、対応するポリペプチドの一次配列およびさらに特に遺伝子またはポリヌクレオチド配列がコードするポリペプチドまたはタンパク質の役割または活性を予測することを支援する。
【0022】
「融合した」、「機能しうる形で連結された」および「機能しうる形で関連した」は本明細書において互換的に使用され、各ドメインが独立した生物学的機能を有し、さもなくば異なる2つのドメインの化学的もしくは物理的カップリングを意味する。そのように、本開示はお互いに融合してTGF-βファミリー活性またはポリペプチドのTGF-βファミリーのリガンド特異性の改善または変化を有するポリペプチドとして機能するTGF-β(例えば、BMPまたはアクチビン)ドメインを提供する。一実施形態においては、2つの親TGF-βファミリーポリペプチド由来の複数のドメインを含むキメラポリペプチドを提供し、前記複数のドメインは連結されて同じコード配列の部分であり、各ドメインは親TGF-βファミリーポリペプチド由来のポリヌクレオチドによりコードされ、ここでこれらのポリヌクレオチドはポリヌクレオチドが転写されると単一mRNAをコードし、翻訳されると複数のドメインを単一ポリペプチドとして含むようにインフレームにある。典型的には、コードドメインは直接またはペプチドリンカーにより分離して「インフレーム」で連結され、そして単一ポリヌクレオチドによりコードされるであろう。ペプチドリンカーおよびペプチドに対する様々なコード配列は当技術分野において公知である。
【0023】
「ポリヌクレオチド」または「核酸」はヌクレオチド多量体を意味する。いくつかの事例において、ポリヌクレオチドはその由来する生物の天然ゲノム中で直接隣接しているコード配列(5'末端のものと3'末端のもの)のいずれとも直接隣接していないポリヌクレオチドである。それ故にこの用語は、例えば、ベクター中に;自己複製プラスミドもしくはウイルス中に;または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組込まれた、あるいは、他の配列とは独立した別の分子(例えば、cDNA)として存在する組換えDNAを含む。本開示のヌクレオチドはリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはその他のヌクレオチドの改変型であってもよい。本明細書で使用するポリヌクレオチドは、とりわけ、1本鎖および2本鎖DNA、1本鎖と2本鎖領域の混合物であるDNA、1本鎖および2本鎖RNA、ならびに1本鎖と2本鎖領域の混合物であるRNA、1本鎖もしくは、より典型的には、2本鎖または1本鎖と2本鎖領域の混合物であってもよいDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子を意味する。用語ポリヌクレオチドはゲノムDNAまたはRNA(生物に依存して、すなわち、ウイルスのRNAゲノム)、ならびにゲノムDNAおよびcDNAがコードするmRNAを包含する。
【0024】
「核酸セグメント」、「オリゴヌクレオチドセグメント」または「ポリヌクレオチドセグメント」はより大きいポリヌクレオチド分子の一部分を意味する。ポリヌクレオチドセグメントはコードされたタンパク質の機能性ドメインに対応する必要はない;しかし、いくつかの場合に、セグメントはタンパク質の機能性ドメインをコードしうる。ポリヌクレオチドセグメントは約6ヌクレオチド以上の長さ(例えば、6〜20、20〜50、50〜100、100〜200、200〜300、300〜400ヌクレオチド以上の長さ)でありうる。
【0025】
「キメラ」または「キメラタンパク質」または「キメラポリペプチド」は、少なくとも2つの異なる親タンパク質の少なくとも2つのセグメントの組み合わせを意味する。当業者は理解するように、セグメントは関係する特定の配列であって物理的な核酸自体ではないので、実際に親のそれぞれから得る必要はない、例えば、キメラBMPは、2つの異なる親BMP;またはBMPとTGF-βスーパーファミリーの他のメンバー、または、代わりに、無関係なタンパク質由来の少なくとも2つのセグメントを有しうる。キメラタンパク質はまた、異なる生物種により発現されるタンパク質構造(同じまたは異なるメンバータンパク質)の「種間」、「遺伝子間」などの融合であってもよい。一実施形態においては、2つのセグメントを結合して新しいキメラタンパク質を得ることもできる。言い換えれば、もしタンパク質が全長の親のいずれか1つと同一配列を有すれば、タンパク質はキメラではないであろう。キメラタンパク質は2つの異なる親タンパク質由来の2以上のセグメントを含むことができる。例えば、最終キメラまたはキメラのライブラリーを作製するのにドメインを誘導することができる元の親は2、3、4、5、6または10〜20以上存在しうる。それぞれの親タンパク質のセグメントは非常に短くてもまたは非常に長くてもよく、セグメントは近接アミノ酸長で1〜タンパク質のほぼ全長の範囲であってもよい。一実施形態において、最小長さは5アミノ酸である。一般に、セグメントまたはサブドメインは6サブドメイン、あるいは5サブドメインのものである(図18および19を参照)。TGF-βスーパーファミリーメンバーの6セグメントは、他の相同性のメンバータンパク質に対してアラインしたメンバータンパク質の構造構築物および/または一次アミノ酸配列に基づいて同定される。同定したメンバータンパク質は一般に、キメラ作製中にアラインした生来のTGF-βメンバー配列に対して改変を最小化する、または見方を変えると、改変を最大化するように誘導したセグメントに基づいて、6つの異なるセクション(あるいは5つの異なるセクション)に分割される。一般に、図18はいくつかのTGF-βスーパーファミリーメンバーのそれぞれのアラインした配列をオーバーラップする、異なるセグメントの相対的な位置を示す。垂直の線はキメラを作製する上でのドメイン間のクロスオーバーに対する一般的位置を記す。2つのドメインをオーバーラップしうるアミノ酸は垂直線のどちらの方向にもプラスまたはマイナス約5アミノ酸(またはあるいは、8、7、6、5、4、3、2もしくは1アミノ酸)であるように規定することができる。図18にはまた、キメラを作製するために用いることができるさらなる接合部を同定するアミノ酸のセットを箱で囲んで示す。J1〜J5接合部はTGF-βファミリータンパク質全体の一般的保存位置であって、これらを用いてクロスオーバー点を作製することができる。
【0026】
相対的に異なるが、セグメントは、置換、挿入、追加のアミノ酸を元来の配列、または他の改変物の末端のいずれかまたは両方に受け入れうる特定のアミノ酸配列または元来のアミノ酸配列を含むことができる。「受け入れうる」は各セグメントの構造的完全性が元来の配列のドメインと比較して維持されることを意味する。例えば、TGF-βスーパーファミリーメンバーの本明細書に記載のセグメントは同定したセグメントのいずれかまたは両方の末端で10、5、3、2、もしくは1、または好ましくは1以下のアミノ酸だけシフトすることができる。
【0027】
一実施形態において、本開示はあるTGF-βメンバー由来の少なくとも1つのセグメントと第2のTGF-βメンバー由来の第2のセグメントとの融合物を含むキメラタンパク質(ここで、第1のセグメントは第2のTGF-βメンバーに対して外来である)を提供する。スカフォールドフレームワークとしてのTGF-βスーパーファミリーリガンドの単一サブユニット上の5〜6つのサブドメイン(セグメント)を利用して、異なるTGF-βリガンド由来のセグメントを天然で現れるのと同じ順に混合することにより、新しい(デザイナー)配列を遺伝子組換えで連結することができる。このアセンブリーは、いくつかの異なる標的配列の1つと部分的に類似するが、いずれの天然の配列とも明らかに異なる新しい配列を生じる。
【0028】
一実施形態においては、単一クロスオーバーポイントを2つの親に対して規定する。そのクロスオーバー位置は1つの親アミノ酸セグメントが停止し得てかつ次の親アミノ酸セグメントが出発し得る位置を規定する。従って単純なキメラは1つのクロスオーバー位置だけを有し、その場合、クロスオーバー位置の前のセグメントは1つの親に属しかつクロスオーバー位置の後のセグメントは第2の親に属する。一実施形態において、キメラは2個以上のクロスオーバー位置、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11〜30以上のクロスオーバー位置を有する。特別な実施形態において、親ストランドは4つまたは5つのクロスオーバー位置を有すると規定される。これらのクロスオーバー位置を名付ける方法と規定する方法の両方を以下に考察する。2つのクロスオーバー位置と2つの親が存在する実施形態においては、第1の親由来の第1の近接セグメント、次いで第2の親由来の第2の近接セグメント、次いで第1の親由来の第3の近接セグメントが存在しうる。「近接」はそれらのセグメントを中断する意味のあるものは存在しないことを意味する。これらの近接セグメントが結合されて近接アミノ酸配列を形成する。例えば、BMP-2野生型親ストランドとアクチビン野生型親ストランドから2つのクロスオーバーによって誘導されるBMP-2/アクチビンキメラは、BMP-2またはアクチビンのいずれか由来の第1のセグメント;第1のストランドと機能しうる形で連結されかつ第1のストランドの下流の構造モチーフを含む第1のセグメントと比較して反対の親ストランド由来の第2セグメント;ならびに第2のセグメントと比較して反対の親ストランド由来のかつ第2のストランドと機能しうる形で連結されかつ第2のストランドの下流の構造モチーフを含む第1のセグメントと同じ親ストランド由来の第3のセグメントストランドを含みうるのであって、全てが1つの近接アミノ酸鎖で連結されている。
【0029】
当業者は理解するように、正確な配列だけでなくキメラの変異体が存在する。言い換えれば、保存的アミノ酸置換をキメラ中に組み込むことができる(例えば、1〜10の保存的アミノ酸置換)。従って、もし変異体キメラであれば、各セグメントの100%が最終キメラに存在する必要はない。改変しうる量は、さらなる残基または残基の除去もしくは改変を介して用語変異体を規定するように規定しうる。勿論、当業者は理解するように、上記の考察はアミノ酸だけでなく、そのアミノ酸をコードする核酸にも適用される。
【0030】
「保存的アミノ酸置換」は類似側鎖を有する残基の可換性を意味し、従って、典型的には、同じまたは類似の規定されたアミノ酸クラス内のアミノ酸によるポリペプチド中のアミノ酸の置換に関わる。例えば、限定されるものでないが、脂肪族側鎖をもつアミノ酸は、他の脂肪族アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、およびメチオニンによって置換し;ヒドロキシル側鎖をもつアミノ酸は、他のヒドロキシル側鎖をもつアミノ酸、例えば、セリンおよびトレオニンによって置換し;芳香族側鎖をもつアミノ酸は、他の芳香族側鎖をもつアミノ酸、例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、およびヒスチジンによって置換し;塩基性側鎖をもつアミノ酸は、他の塩基性側鎖をもつアミノ酸、例えば、リシン、アルギニン、およびヒスチジンによって置換し;酸性側鎖をもつアミノ酸は、他の酸性側鎖をもつアミノ酸、例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸によって置換し;そして疎水性または親水性アミノ酸は他の疎水性または親水性アミノ酸によって、それぞれ置換することができる。
【0031】
「非保存的置換」は、有意に異なる側鎖をもつアミノ酸によるポリペプチド中のアミノ酸の置換を意味する。非保存的置換は、規定したグループ内よりも、むしろ規定したグループ間のアミノ酸を用いることができ、(a)置換領域(例えば、プロリンをグリシンへ)におけるペプチド骨格の構造、(b)電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩に影響を与える。例として挙げると、限定されるものでないが、例示の非保存的置換は塩基性または脂肪族アミノ酸により置換した酸性アミノ酸;小さいアミノ酸により置換した芳香族アミノ酸;および疎水性アミノ酸により置換した親水性アミノ酸であってもよい。
【0032】
「参照配列」は、配列比較の基礎として使用される規定した配列を意味する。参照配列はより大きい配列のサブセット、例えば、全長遺伝子またはポリペプチド配列のセグメントであってもよい。一般に、参照配列は長さで20ヌクレオチドもしくはアミノ酸残基、長さで少なくとも25残基、長さで少なくとも50残基、または全長の核酸もしくはポリペプチドであってもよい。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドはそれぞれ、(1)2つの配列間で類似する配列(すなわち、全配列の一部分)を含んでもよく、かつ(2)さらに2つの配列の間で相違する配列を含んでもよいので、2つ(またはそれ以上)のポリヌクレオチドもしくはポリペプチド間の配列比較は典型的には、2つのポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの配列を「比較ウインドウ」全体で比較して局所領域の配列類似性を同定しかつ比較することにより実施する。
【0033】
「配列同一性」は2つのアミノ酸配列が比較ウインドウ全体で実質的に同一である(すなわちアミノ酸とアミノ酸の基準で)実質的に同一であることを意味する。用語「配列同一性」は同じ生物物理的特徴を共有する類似アミノ酸を意味する。用語「配列同一性のパーセント」または「配列類似性のパーセント」は、比較ウインドウ全体の2つの最適にアラインした配列を比較し、同一残基(または類似残基)が両方のポリペプチド位置に存在する位置数を決定してマッチした位置数を得て、マッチした位置数を比較ウインドウの全位置数(すなわちウインドウサイズ)により除し、そしてその結果に100を乗じて配列同一性のパーセント(または配列類似性のパーセント)を得ることによって計算する。ポリヌクレオチド配列に関する用語配列同一性および配列類似性はタンパク質配列について記載した意味と比較しうる意味を有し、用語「配列同一性のパーセント」は2つのポリヌクレオチドが比較ウインドウ全体で(ヌクレオチドとヌクレオチドの基準で)同一であることを示す。このように、ポリヌクレオチド配列同一性のパーセント(または、ポリヌクレオチド配列類似性、例えば、サイレントな置換または分析アルゴリズムに基づく他の置換についてのパーセント)も計算することができる。最高の一致を本明細書に記載の配列アルゴリズム(または当業者が利用しうる他のアルゴリズム)の1つを用いることによりまたは目視検査により決定することができる。
【0034】
ポリペプチドに適用したように、用語の実質的同一性または実質的類似性は、プログラムBLAST、GAPまたはBESTFITにより、デフォールトギャップウエイトによりまたは目視検査によりなどによって最適にアラインされたときに、2つのペプチド配列が配列同一性または配列類似性を共有することを意味する。同様に、核酸のコンテキストに適用したように、用語の実質的同一性または実質的類似性は、プログラムBLAST、GAPまたはBESTFITにより、デフォールトギャップウエイトによりまたは目視検査によりなどによって最適にアラインされたときに、2つの核酸配列が配列同一性または配列類似性を共有することを意味する。
【0035】
%配列同一性または配列類似性を決定するために好適であるアルゴリズムの一例はFASTAアルゴリズムであって、これはPearson, W. R. & Lipman, D. J., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444に記載されている。またW. R. Pearson, (1996) Methods Enzymology 266:227-258も参照されたい。%の同一性または%類似性を計算するためにDNA配列のFASTAアラインメントに用いる好ましいパラメーターは、最適化されていて、BL50 Matrix 15: -5、k-tuple=2;joining penalty=40、optimization=28;gap penalty -12、gap length penalty=-2;およびwidth=16である。
【0036】
他の有用なアルゴリズムの例はPILEUPである。PILEUPは多重配列アラインメントを関係配列のグループから、プログレシブ、ペアワイズアラインメントを用いて創製し、関連性および%配列同一性または%配列類似性を示す。これはまた、ツリーまたはデンドグラムもプロットし、アラインメントを創製するために用いるクラスター形成の関連性を示す。PILEUPはFeng & Doolittle, (1987) J. Mol. Evol. 35:351-360に記載の単純化プログレシブアラインメント法を使用する。使用した方法はHiggins & Sharp, CABIOS 5:151-153, 1989に記載された方法に類似する。プログラムは、それぞれの最大長が5,000ヌクレオチドまたはアミノ酸である配列を300配列までアラインすることができる。多重アラインメント手順は2つの最も類似した配列のペアワイズアラインメントで始まり、2つのアラインした配列のクラスターを生成する。このクラスターを次いで次の最も関係する配列またはアラインした配列のクラスターとアラインする。2つの配列クラスターを2つの個々の配列のペアワイズアラインメントの単純な拡張によりアラインする。最終アラインメントは一連のプログレシブ、ペアワイズアラインメントにより達成する。具体的な配列と配列比較の領域に対するアミノ酸もしくはヌクレオチド座標を示すことによりおよびプログラムパラメーターを示すことによりプログラムを走らせる。PILEUPを使用し、参照配列を他の試験配列と比較し、次のパラメーター:デフォールトギャップウエイト(3.00)、デフォールトギャップ長さウエイト(0.10)、およびウエイト付き末端ギャップを用いて、%配列同一性(または%配列類似性)関連性を決定する。PILEUPはGCG配列分析ソフトウエアパッケージ、例えば、version 7.0 (Devereaux et al., (1984) Nuc. Acids Res. 12:387-395)から入手することができる。
【0037】
多重DNAおよびアミノ酸配列アラインメントに好適であるアルゴリズムの他の例はCLUSTALWプログラム(Thompson, J. D. et al., (1994) Nuc. Acids Res. 22:4673-4680)である。CLUSTALWは配列のグループ間の多重ペアワイズ比較を行い、それらを配列同一性に基づいて多重アラインメントにアセンブルする。ギャップオープンおよびギャップ伸長ペナルティはそれぞれ10および0.05である。アミノ酸アラインメントについては、BLOSUMアルゴリズムをタンパク質ウエイトマトリックスとして用いることができる(Henikoff and Henikoff, (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919)。
【0038】
図18は、例えば、いくつかのTGF-βファミリーメンバーのアラインメントを示す。当業者は、これらのアラインメントから、ファミリー全体で保存されるアミノ酸ならびに保存されないアミノ酸を容易に決定することができる。
【0039】
「機能的な」はそのタイプの天然タンパク質の生来の生物学的活性、または、例えば、リガンドもしくはコグネイト分子と結合するかもしくは特別な生物学的機能を誘発する(例えば、筋肉成長、骨成長などを刺激する)その能力により判断したいずれかの具体的な所望の活性を持つポリペプチドを意味する。
【0040】
タンパク質のトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーは、大多数のヒト細胞に見出される細胞外サイトカインから成る。ほぼ40種類存在するTGF-βスーパーファミリーリガンドはさらに小さいファミリーに細分することができ、それには、TGF-β、骨形成タンパク質(BMP)、アクチビン(activin)およびインヒビン(inhibin)、増殖および分化因子(GDF)、ノーダル(Nodal)、ミューラー阻害物質(MIS)、およびグリア細胞株由来の向神経性因子(GDNF)が含まれる。TGF-βスーパーファミリーメンバーは多様な範囲の細胞型に見出され、多くの基礎的な細胞事象に役割を果たし、それには背側/腹側のパターン形成および骨形成に対する左/右軸決定および組織修復が含まれる。さらに最近、いくつかのTGF-βリガンドが維持に関わるかまたは幹細胞の分化を方向付けることが示されている。これらの広汎性によって、TGF-βリガンドシグナル伝達の調節は数多くの新生物事象に対する骨格および筋肉異常から生じる広範囲の色々な疾患の治療に期待されている。このファミリーまたはタンパク質の様々なメンバーについて本明細書に例示の配列を提供するが、当業者は言語検索または配列BLAST検索によって公に利用しうるデータベースを用いて同族体および変異体を容易に同定することができる。
【0041】
一般に、TGF-βのスーパーファミリー(TGF-β1〜β5)ならびに分化因子(例えばVg-1)内にはいくつかのサブファミリー、ホルモンアクチビンおよびインヒビン、ミューラー阻害物質(MIS)、骨原性および形態形成タンパク質(例えば、OP-1、OP-2、OP-3、他のBMP)、発生調節タンパク質Vgr-1、増殖/分化因子(例えば、GDF-1、GDF-3、GDF-9およびdorsalin-1)、などが認められている。例えば、Spom and Roberts (1990) in Peptide Growth Factors and Their Receptors, Sporn and Roberts, eds., Springer-Verlag: Berlin pp. 419-472;Weeks and Melton (1987) Cell 51: 861-867;Padgett et al. (1987) Nature 325: 81-84;Mason et al. (1985) Nature 318: 659-663;Mason et al. (1987) Growth Factors 1: 77-88;Cate et al. (1986) Cell 45: 685-698;PCT/US90/05903;PCT/US91/07654;PCT/WO94/10202;米国特許番号4,877,864;5,141,905;5,013,649;5,116,738;5,108,922;5,106,748;および5,155,058;Lyons et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 4554-58;McPherron et al. (1993) J. Biol. Chem. 268: 3444-3449;Basler et al. (1993) Cell 73: 687-702を参照されたい。
【0042】
TGF-βスーパーファミリーの形態形成タンパク質には、哺乳動物の骨原性タンパク質-1(OP-1、BMP-7としても知られる)、骨原性タンパク質-2(OP-2、BMP-8としても知られる)、骨原性タンパク質-3(OP3)、BMP-2(BMP-2AまたはCBMP-2A、およびショウジョウバエ同族体DPPとしても知られる)、BMP-3、BMP-4(BMP-2BまたはCBMP-2Bとしても知られる)、BMP-5、BMP-6およびそのマウス同族体Vgr-1、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、GDF3(Vgr2としても知られる)、GDF-8、GDF-9、GDF-10、GDF-11、GDF-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15、GDF-5(CDMP-1またはMP52としても知られる)、GDF-6(CDMP-2またはBMP13としても知られる)、GDF-7(CDMP-3またはBMP-12としても知られる)、アフリカツメガエル同族体Vglおよびノーダル、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURALなどが含まれる。
【0043】
多くのTGF-βスーパーファミリーリガンドに関わる研究に対する主な障害の一つはタンパク質を大量に作製することができないことである。BMP-2がin vitroで効率的にリフォールドすることは知られているものの、他のTGF-βリガンド(例えばアクチビン、ノーダル、およびBMP-7)は同じリフォールディング特性を示していない。他の発現系を機能性TGF-βリガンドを得るために利用することができる。アクチビンは、例えば、安定してトランスフェクトされた細胞株(例えばCHO)または一過性でトランスフェクトされた細胞株(例えばHEK293)を用いて発現される。
【0044】
TGF-βスーパーファミリーの最大のサブファミリーはBMP/GDFファミリーであり、これは公知の全リガンドの半分近くを含むものである。BMP/GDFファミリーのリガンドの多くは、BMPとGDF両方の名称を共有し、例えば、GDF-7はBMP-12とも呼ばれる。BMP/GDFファミリーは最大のファミリーであると共に、最も徹底して研究されたファミリーでもある。例えば、x線結晶構造がBMP-2単独で、そのI型受容体と結合して、またはその両方の受容体型と結合した三元複合体として解明されている。さらにBMP-2ならびにBMP-7はある特定の骨傷害に対する有効な治療に利用されている。BMP/GDFファミリーに関わる大量の構造および治療の研究がなされる理由は、これらのリガンドは化学的にリフォールドできることにある。実際、BMP-2はリフォールディングが最も首尾よく行われるTGF-βリガンドの1つであり、最適化した条件では出発材料から63%までの活性二量体を得ると報じられている。しかし、もしBMP-2の特定のアミノ酸を他のTGF-βリガンド中に組み込むことができれば、そうでないとリフォールドしないリガンドをリフォールドできるようにして残りのTGF-βスーパーファミリーのさらなる研究への道を開くであろう。
【0045】
TGF-βリガンドを、プロテアーゼ切断部位により連結したN末端プロドメインとC末端成熟ドメインから成る不活性な前駆体分子として合成する。活性化するために、成熟ドメインを、通常、フューリンなどのコンバターゼによってプロドメインから切断しなければならない。TGF-βスーパーファミリーのメンバーはその成熟ドメインに見出される保存された構造構築によって一緒に分類される。一般に、それぞれの成熟リガンド単量体は7個のシステインを含有し、そのうちの6個は「シスチンノット」モチーフ中にアレンジされた3個のジスルフィド内結合を形成する。「シスチンノット」から外へ伸びるのは4個のβであって、2つのカーブしたフィンガーを作る。最後に残るシステインは第2のリガンド単量体とジスルフィド間結合を形成して共有結合で連結された二量体を作製する。二量体はバターフライの全体的外観を有し、ボディーとしての「シスチンノット」および翼状に拡がるフィンガーを持つ。TGF-βスーパーファミリーの機能性サブユニットは二量体であり、これらはin vivoでホモおよびヘテロ二量体の両方で存在することが示されている。いくつかのファミリーメンバー、例えばGDF-9およびBMP-15はジスルフィド間結合を形成するのに必要なシステインを欠くが、それでも安定な二量体を形成することができる。
【0046】
シグナル伝達プロセスを開始するために、TGF-β二量体は2セットの受容体(I型およびII型と呼ばれる)を動員しなければならない。これらの受容体はセリン/トレオニンキナーゼであって、3-フィンガー毒素フォールド(3-finger toxin fold)中に配置された細胞外ドメイン(ECD)、単一の膜貫通ドメイン、および大きい細胞内キナーゼドメインを持つ。TGF-βリガンドは色々な受容体型に対してアフィニティの選好を提示することが示されている。アクチビンとノーダルはII型受容体に高いアフィニティを示す一方、BMP-2およびGDF-5はI型受容体に高いアフィニティを持つ。2つの高アフィニティ受容体のTGF-βリガンドとの結合後、次いで2つの低アフィニティ受容体が結合して複合体に加わることができる。4つの全ての受容体がTGF-βリガンドと結合すると、6メンバーの三次複合体を形成し、下流シグナル伝達カスケードが開始される。構成的に活性なII型受容体はI型受容体をリン酸化し、これが、順に、Smadと呼ばれる細胞内シグナル伝達分子と結合し、そしてリン酸化する。Smad分子は次いで核に移行し直接転写レギュレーターと相互作用する。複数の機構を使ってカスケードの色々な段階で(Noggin、フォリスタチン、およびインヒビンを含む細胞外アンタゴニスト;BAMBIに類似した細胞内キナーゼドメインを欠く仮性受容体;または阻害性Smadなどの細胞内分子を介して)TGF-βシグナル伝達を綿密に調節する。
【0047】
TGF-βスーパーファミリーは、このリガンドに対する受容体と高度に無差別な結合を示す。40種を超えるTGF-βリガンドが存在するものの、12種の受容体しか存在しない(7種のI型と5種のII型)。それ故に、受容体は複数種の異なるリガンドと相互作用しなければならない。例えば、ActRIIはアクチビンおよびBMP-7と高アフィニティで結合するが、BMP-2とは遥かに低いアフィニティで結合する。GDF-5においてそのI型受容体選好性を決定する単一アミノ酸が見出されている一方、BMP-3においてはII型受容体アフィニティを変えると共にリガンドに機能を与える一点突然変異が発見された。本開示は新規の受容体結合特性を備えてそれによりTGF-βリガンド機能を多様化する改変されたTGF-βリガンド、ならびにかかる活性を有する組成物を作製する方法を提供する。
【0048】
本開示は、新規のリガンド構築物を利用することによりTGF-βシグナル伝達複合体を実証する。キメラのホモまたはヘテロ二量体リガンドを利用することにより、本開示はTGF-βファミリータンパク質のシグナル伝達を解析するために用いる組成物を提供する。さらに、かかるリガンドを利用することによって、2つのI型受容体インターフェースのお互いからの、およびお互いにインターフェースを接した2つのII型受容体の寄与を識別する方法が可能になる。本開示の方法と組成物はリガンド-受容体アフィニティ、シグナル伝達活性、および生物学的活性の間の相関を実証する。本開示の方法と組成物はTGF-βスーパーファミリーシグナル伝達複合体アセンブリの機構と要件を明らかにする。さらに本キメラリガンドはタンパク質のTGF-βファミリーに関連する疾患および障害を治療するのに用いる新規ポリペプチドを提供する。
【0049】
本開示は、例えば、大腸菌または哺乳動物の発現系を用いて発現しかつリフォールドすることができる新規のキメラTGF-βリガンドを作る方法を提供する。これらのキメラは特異的なTGF-βリガンドのシグナル伝達特性を模倣するか、または自然で見られないユニークなシグナル伝達特性を提示する。一実施形態において、本開示はテンプレートとしてアクチビン-βAとBMP-2を用いて、BMP-2のリフォールディング効率とアクチビン-βAのシグナル伝達特性をもつアクチビン/BMP-2キメラを作製する;しかしいずれの数字のTGF-βタンパク質ファミリーメンバーを用いてもよいことは理解されるべきである。本開示のキメラデザインスキームは、非天然のシグナル伝達特性および生物学的活性をもつ、さらなるTGF-βメンバーキメラ(例えば、アクチビン/BMP-2)リガンドを生じた。かかるキメラTGF-βファミリーポリペプチドは、構造研究に利用することができるTGF-βリガンドのライブラリーを拡大すると共に、新規のTGF-βリガンドの治療薬としての開発を促進する。
【0050】
一実施形態において、本開示はユニークなシグナル伝達特性を持つ一連のアクチビン/BMP-2キメラリガンドを提供する。例えば、本開示のアクチビン/BMP-2リガンドは、野生型BMP-2のリフォールディング特性を示す一方、in vitroおよびin vivo研究の両方においてアクチビン様シグナル伝達性状を保持する。さらに、野生型BMP-2より強力である「スーパー」リガンドが作製され、これはBMPアンタゴニストNogginによって阻害されなかった。本開示はまた、異なるTGF-βリガンドポリペプチドセグメントと機能しうる形で連結された野生型BMP-2mqのN末端を含むキメラTGF-βポリペプチドを提供する。本開示は、野生型BMP-2mqのN末端は先にリフォールドしなかったリガンドをリフォールドするリガンドに切換えるのに十分であることを実証する。これらの知見はアクチビンおよびその他のTGF-βリガンド模倣体を得る方法を強調するものであり、この戦略を利用してその機能性を多様化することによりTGF-βリガンドのライブラリーを拡大しかつ治療目的のための非天然リガンドの開発を促進する方法を示すものである。
【0051】
BMP-2と天然変異体の核酸配列およびポリペプチド配列は公知である。ドブネズミ(Rattus sp.)由来の野生型BMP-2核酸配列(配列番号1)とポリペプチド配列(配列番号2)を提供する。残基1(Q)に対するN末端位置のMetは細菌の開始コドン(ATG)の翻訳から生じる。さらにアクチビンも当技術分野では公知である(例えば、配列番号5を参照)。本開示は、少なくとも1つのBMP-2由来のN末端ドメインと少なくとも1つの他のTGF-βファミリーメンバー由来の第2のドメインを有するいくつかのキメラTGF-βファミリーポリペプチドであって、野生型親タンパク質と異なる活性を提示する前記キメラポリペプチドを提供する。
【0052】
一実施形態において、キメラ体のセグメントをデザインしようとする場合、2つの因子を考慮した。第1は構造の考慮である。全TGF-β単量体フォールドを自然のまま6セクションに分割し:βストランド1および2、プレヘリックスループ、αへリックス1、およびβストランド3および4とした。これらのサブドメインの同定と特徴づけをさらに実施例4において記載した。本開示はデザインにおいて自然領域を模倣するキメラ構造を利用した。従って、各セグメントは1、2、3、4、5、および6によって示すことができる。第2の考慮は、キメラ作製中に、アラインした生来のTGF-βメンバー配列に対する改変を最小化することであった。それ故に、2つのタンパク質配列間の配列同一性をもつ領域を推定クロスオーバー点として同定した。これらの領域はPCR戦略のためのDNA配列のオーバーラップに好適であり、自然配列に対する変化を最小化しうる。図7は考慮をしたこれらの配列と構造の図解である。領域を箱で囲み、それらのセクションに従って番号を付けてリガンド単量体上にマッピングした。セグメント境界のクロスオーバー点として利用できる領域をオレンジ色の配列範囲として陰を付けた。一実施形態の残基番号はBMP-2(配列番号2)に基づいた。従って、本開示のキメラポリペプチドを作製する上でのクロスオーバー点は、構造モチーフ中の変化の間の配列セグメントにおける少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または100%の同一性と組み合わせて類似の構造モチーフを同定することにより同定することができる。これらの領域(3〜20アミノ酸の間でありうる)におけるクロスオーバーは得られるキメラポリペプチドの破壊を最小化し、安定したキメラを提供する。
【0053】
例えば、アルゴリズム1b2b3b4b5b6aを含むキメラポリペプチドは6つのセグメントを示し、文字は各セグメントの親ストランドを示す。従って、例「1b2b3b4b5b6a」においては、セグメント1はBMP-2mqの親ストランド「b」由来であり、セグメント2はBMP-2mqの親ストランド「b」由来であり、セグメント3はBMP-2mqの親ストランド「b」由来であり、セグメント4はBMP-2mqの親ストランド「b」由来であり、セグメント5はBMP-2mqの親ストランド「b」由来であり、そしてセグメント6はアクチビンの親ストランド「a」由来である。
【0054】
一実施形態において、BMP-2mqと第2のTGF-βファミリータンパク質のセグメント間のクロスオーバーは構造類似性と配列類似性がオーバーラップするところで起こりうる。図7はBMP-2mqとアクチビン間のかかるオーバーラップを記し、ここでクロスオーバーはほぼ残基D25〜P35、G45〜P48;T65〜N68;K76〜T82;およびS88〜E94(残基番号はBMP-2(配列番号2)に基づく)の間で作製することができる。BMP-2とアクチビン-βAの配列アラインメントはセグメント1から6まで通しての境界を強調する。アクチビンは2つのCys間に形成された追加のジスルフィド結合を有する。赤箱(または下側配列の第1の陰を施した箱)はAB2-008中に交換されたAB2-009の2つのアミノ酸を記す。青箱(下側配列の第2の陰を施した箱L/Y)は、全てのキメラについてBMP2のセグメント5において変化した1つのアミノ酸を記す。明確にするために説明すると、BMP-2のセグメント5はYLDの代わりにYYDを含有する。緑箱(KKQ-FFVSFKDI)はAB2-010の(1a_II)としてマークしたAB2-010を作るためにAB2-008中に導入したセグメントを記す。
【0055】
図18はさらに、TGF-βファミリーまたはタンパク質のさらなるメンバーを参照して、かかるクロスオーバー領域を描く。例えば、図18を参照すれば、当業者はBMP-3(配列番号43)が110アミノ酸を含むことを見ることができる。第1の垂直線は、クロスオーバーの全体領域を示し、垂直線の両側の1〜5アミノ酸を含みうる。従って、BMP-3由来の第1ドメインはアミノ酸1〜約x1(ここで、x1は残基20-29に対応するアミノ酸であり、例えば、x1は20、21、22、23、24、25、26、27、28、または 29である)を含みうる。さらに図18に示すように、「J1」は配列番号43の残基20〜23に対応する。J1は、タンパク質のTGF-βファミリーの様々な種を横断して保存を有する接合部領域を意味する。従って、BMP-3の第1ドメインはアミノ酸1〜約x1を含み、ここでx1はVまたはGでありうるし、第2のTGF-βファミリーメンバー由来の次のキメラドメインはGまたはWで始まりうる。図18をテンプレートとして用いると、当業者はTGF-βファミリーの様々なメンバーに対するクロスオーバー領域を容易に同定することができる。全てのキメラが6つの異なるドメインを有する必要のないことに注意することは重要である。例えば、異なるファミリーメンバー由来の5個以下のドメインが最終キメラ中に存在するようにすれば、接合部3(J3)におけるクロスオーバーは必要でないかも知れない。
【0056】
クロスオーバー位置を同定する他の方法を、キメラTGF-βファミリーポリペプチドの作製に用いることができる。例えば、SCHEMAは、タンパク質の構造完全性に影響を与えることなく相同的なタンパク質のどの断片を組換えることができるかを予測するコンピューターに基づく方法である(例えば、Meyer etal.、(2003) Protein Sci.、12:1686-1693を参照)。全体安定性に対する各セグメントの付加的な寄与は、配列安定性データの直線回帰の使用によってまたはフォールド-対-非フォールドタンパク質のMSAのコンセンサス分析に対する信頼性によってより高い安定性をもつキメラを決定することにより、同定することができる。SCHEMA組換えは、キメラが生物学的機能を保持することおよび寛容なものを交換する一方、重要な機能性残基を保存することにより高い配列多様性を表すことを保証する。
【0057】
本開示に記載したように、これらの組換えた機能的キメラTGF-βファミリーポリペプチドを作製すると、組み換えてない親ポリペプチドと比較して、それらのリガンド特異性を改善することまたは生物学的活性を改変もしくは改善できることを見出した。活性/リガンドプロファイルの相違の故に、これらの遺伝子操作で作られたキメラTGF-βファミリーポリペプチドは活性化および阻害特異的なリガンドの活性をスクリーニングするためのユニークなベースを提供し、新規の治療ポリペプチドおよび研究試薬を提供する。
【0058】
例えば、本開示のキメラにおいて、ドメイン1、2、3、4、5、および6は次の配列(表A)[ここでポリペプチドは構造(ドメイン1-ドメイン2-ドメイン3-ドメイン4-ドメイン5-ドメイン6)を含む]から選択することができる。
【0059】
表A:

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】
いくつかの実施形態において、ドメイン3はドメイン2、ドメイン4またはドメイン3と4の両方と同じ親に由来してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、ドメイン1とドメイン2の間のJ1(接合部1)はコンセンサス配列Z1Z2W[ここで、Z1はL、V、F、およびMからなる群より選択されかつZ2はGまたはKであり、3個のアミノ酸のうちの2個は第1ドメインのC末端または第2ドメインのN末端に見出される]を含む。いくつかの実施形態において、ドメイン2とドメイン3の間のJ2(接合部2)はコンセンサス配列CZ1G[ここで、Z1はH、S、A、L、I、E、K、QおよびDからなる群より選択され、3個のアミノ酸のうちの2個は第2ドメインのC末端または第3ドメインのN末端に見出される]を含む。いくつかの実施形態において、ドメイン3とドメイン4の間のJ3(接合部3)はコンセンサス配列Z1Z2Z3[ここで、Z1はT、S、P、GおよびIからなる群より選択されZ2はN、K、V、M、HおよびYからなる群より選択されかつZ3はH、Y、S、TおよびPからなる群より選択され、3個のアミノ酸のうちの2個は第3ドメインのC末端または第4ドメインのN末端に見出される]を含む。いくつかの実施形態において、ドメイン4とドメイン5の間のJ4(接合部4)はコンセンサス配列Z1CZ2[ここで、Z1はC、SおよびVからなる群より選択されかつZ2はV、A、IおよびTからなる群より選択され、3個のアミノ酸のうちの2個は第4ドメインのC末端または第5ドメインのN末端に見出される]を含む。いくつかの実施形態において、ドメイン5とドメイン6の間のJ5(接合部5)はコンセンサス配列Z1Z2Z3[ここで、Z1はL、RおよびVからなる群より選択されZ2はT、Q、Y、FおよびMからなる群より選択されかつZ3はL、F、Y、K、I、Q、VおよびTからなる群より選択され、3個のアミノ酸のうちの2個は第5ドメインのC末端または第6ドメインのN末端に見出される]を含む。
【0069】
一実施形態において、本開示は、組換えて生物学的活性(例えば、不活性化に対する耐性など)の増加もしくは改善した本開示のキメラを生成することができるTGF-βファミリーメンバーの研究のための次のドメイン(表B)を提供する。
【0070】
表B

【0071】
従って、本明細書で様々な実施形態により説明したように、本開示は、第1のTGF-βファミリータンパク質(すなわち、第1の親タンパク質)を第2の異なるTGF-βファミリータンパク質と組み換えてキメラポリペプチドを提供することを特徴とする、キメラTGF-βファミリーポリペプチドを提供する。下の表2は例示の本開示のキメラポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドはBMP-2タンパク質の1個以上のドメインを含み、ここでBMP-2タンパク質のセグメントはセグメント1、すなわち、配列番号2のアミノ酸残基約1〜約x1("1b")であり;セグメント2、すなわち、配列番号2のアミノ酸残基約x1〜約x2("2b”);セグメント3、すなわち、配列番号2のアミノ酸残基約x2〜約x3("3b");セグメント4、すなわち、配列番号2のアミノ酸残基約x3〜約x4(“4b”);セグメント5、すなわち、配列番号2のアミノ酸残基約x4〜約x5("5b");およびセグメント6、すなわち、配列番号2のアミノ酸残基約x5〜約x6("6b");を含み、かつx1は配列番号2の残基25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35であり;x2は配列番号2の残基45、46、47、または48であり;x3は配列番号2の残基65、66、67、または68であり;x4は配列番号2の残基76、77、78、79、80、81または82であり;x5は配列番号2の残基88、89、90、91、92、93、または94であり;そしてx6は配列番号2の残基112、113、または114であってBMP-2のC末端に対応し、セグメント1b2b3b4b5b6bを含む近接ポリペプチドは翻訳開始コドン(ATG)に続く野生型BMP-2を含むものである。上記配列と少なくとも約80%、90%、95%、98%、および99%の同一性を有する同族体およびタンパク質も本開示に含まれる。
【0072】
他の実施形態において、ポリペプチドはアクチビンタンパク質の1以上のドメインを含み、ここでアクチビンタンパク質のセグメントはセグメント1、すなわち、配列番号5のアミノ酸残基約1〜約x1("1a");セグメント2、すなわち、配列番号5のアミノ酸残基約x1〜約x2("2a”);セグメント3、すなわち、配列番号5のアミノ酸残基約x2〜約x3("3a");セグメント4、すなわち、配列番号5のアミノ酸残基約x3〜約x4(“4a”);セグメント5、すなわち、配列番号5のアミノ酸残基約x4〜約x5("5a");およびセグメント6、すなわち、配列番号5のアミノ酸残基約x5〜約x6("6a")を含み;そしてx1は配列番号5の残基22、23、24、25、26、27、28、29、30、31または32であり;x2は配列番号5の残基42、43、44、または45であり;x3は配列番号5の残基61、62、63、または64であり;x4は配列番号5の残基78、79、80、81、82、83または84であり;x5は配列番号5の残基90、91、92、93、94、95または96であり;そしてx6は配列番号5の残基114、115、または116であって、アクチビンのC末端に対応し、セグメント1a2a3a4a5a6aを含む近接ポリペプチドは野生型成熟アクチビンタンパク質を含むものである。上記配列と少なくとも約80%、90%、95%、98%、および99%の同一性を有する同族体およびタンパク質も本開示に含まれる。
【0073】
いくつかの実施形態において、キメラTGF-βファミリーポリペプチドは、1b2b3b4b5b6b;1b2b3b4b5b6a;1b2b3b4b5a6a;1b2b3b4b5a6b;1b2b3a4a5a6a;1b2b3a4a5b6a;1b2a3a4a5a6a;1b2a3a4a5a6aL66V/V67I;1b(1a_II)2a3a4a5a6a;1b2a3a4a5a6b;1b2a3a4a5b6b;1b2a3a4a5b6a;1b2a3b4b5b6a;1b2a3b4b5a6a;および1b2a3b4b5a6bからなる群より選択されるキメラセグメント構造を有する。
【0074】
他の実施形態においては、キメラポリペプチドをさらなる異種ポリペプチドと融合してキメラ融合ポリペプチドを作製することができる。異種ポリペプチドは、例えば、精製に有用なペプチドまたは本発明の多重キメラポリペプチドのオリゴマー化を可能にするペプチドであってもよい。異種ポリペプチドは、キメラポリペプチドと化学的にコンジュゲートしていてもよく、またはキメラポリペプチドのコード配列とインフレームで機能しうる形で連結されていてもよい。
【0075】
さらに特別な実施形態において、本ポリペプチドは、(a)配列番号7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、および33からなる群より選択されかつBMP-2活性を有する配列と少なくとも80%、90%、95%、98%、または99%同一である配列を含むか;(b)配列番号7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、および33に記載した配列を含むか;(c)配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、および32からなる群より選択される配列を含むポリヌクレオチドによってコードされているか;または(d)1b2b3b4b5b6b;1b2b3b4b5b6a;1b2b3b4b5a6a;1b2b3b4b5a6b;1b2b3b4a5a6a;1b2b3b4a5b6b;1b2b3b4a5a6b;1b2b3b4a5b6a;1b2b3a4a5a6a;1b2b3a4a5a6b;1b2b3a4a5b6b;1b2b3a4a5b6a;1b2b3a4b5b6b;1b2b3a4b5b6a;1b2b3a4b5a6a;1b2b3a4b5a6b;1b2a3a4a5a6a;1b2a3a4a5a6b;1b2a3a4a5b6b;1b2a3a4a5b6a;1b2a3a4b5b6b;1b2a3a4b5b6a;1b2a3a4b5a6b;1b2a3a4b5a6a;1b2a3b4b5b6b;1b2a3b4b5b6a;1b2a3b4b5a6a;1b2a3b4b5a6b;1b2a3b4a5a6a;1b2a3b4a5b6a;1b2a3b4a5b6b;1b2a3b4a5a6b;1b2a3a4a5a6aL66V/V67I;および1b(1a_II)2a3a4a5a6aからなる群より選択されるアルゴリズムにより記載される配列を含むものである。さらに他の実施形態において、本開示はBMP-2由来のセグメントおよびBMP-7由来のセグメント(例えば、1b-BMP7ポリペプチド;例えば、配列番号35を参照)を含むキメラTGF-βポリペプチドを提供する。さらに他の実施形態において、本開示はBMP-2由来のセグメントおよびBMP-9由来のセグメント(例えば、1b-BMP9ポリペプチド;例えば、配列番号37を参照)を含むキメラTGF-βポリペプチドを提供する。さらに他の実施形態において、本開示はBMP-2由来のセグメントおよびGDF-7由来のセグメント(例えば、1b-GDF7ポリペプチド;例えば、配列番号39を参照)を含むキメラTGF-βポリペプチドを提供する。さらに他の実施形態において、本開示はBMP-2由来のセグメントおよびGDF-8由来のセグメント(例えば、1b-GDF8ポリペプチド;例えば、配列番号41を参照)を含むキメラTGF-βポリペプチドを提供する。本開示のキメラポリペプチドはTGF-βタンパク質ファミリーメンバー活性を保持する。かかる活性は以下に記載した任意の数の方法により測定することができる。いくつかの実施形態において、本キメラポリペプチドはBMP-2活性を有するが、Nogginによって阻害されない。
【0076】
いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドのセグメントはそのセグメントが由来する親ストランドと100%同一である。他の実施形態において、本セグメントは親ストランドの対応するセグメントと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、本セグメントは1以上の保存的アミノ酸置換(例えば、1〜5個の保存的アミノ酸置換)を有してもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、キメラTGF-βファミリーポリペプチドはそのキメラポリペプチドが由来する親ストランドの1以上のと比較して改善された活性を有しうる。本開示のキメラポリペプチドの生物学的活性は、TGF-β活性の技術分野の認められた任意の数のアッセイを用いて測定することができる。かかるアッセイとしては、限定されるものでないが、BIAcore(表面プラズモン共鳴);C2Cl2ルシフェラーゼアッセイ:Smad1/5レポーターシステム;HEK293ルシフェラーゼアッセイ:Smad2/3レポーターシステム;FSH(卵胞刺激ホルモン)放出アッセイ:ラット下垂体の細胞における;BRE(BMP応答エレメント)ルシフェラーゼアッセイ:Smad1/5レポーターHEK293細胞;Cripto結合アッセイ:Crptioの存在/非存在で測定したルシフェラーゼ応答;ヒト幹細胞アッセイ:H9細胞の維持または分化;NMR結合研究;微量培養:ニワトリ胚で測定した骨形成;X線結晶学:リガンド:受容体複合体の構造決定;未変性ゲル:リガンド:受容体複合体の可視化;サイズ排除クロマトグラフィ(SEC):リガンド:受容体複合体の可視化;速度走査超遠心分析:リガンド:受容体複合体形成の可視化;およびSeldi質量分析:リガンドの正確なサイズ測定が挙げられる。
【0078】
本明細書に記載したキメラTGF-βファミリーポリペプチドは、様々な形態、例えば、溶菌液、粗抽出物、または単離した調製物で調製することができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、単離したキメラポリペプチドは実質的に純粋なポリペプチド組成物である。「実質的に純粋なポリペプチド」はそのポリペプチド種が存在する支配的な種である(すなわち、モルまたは重量基準でそれが他の個々の高分子種より組成物中で豊富である)組成物を意味し、そして一般的に目的種が、モルまたは重量基準で、存在する高分子種の少なくとも約50%を含むときに、実質的に純粋なポリペプチドである。一般的に、実質的に純粋なポリペプチド組成物は、モルまたは重量基準で、組成物中に全ての高分子種の約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、および約98%以上を含みうる。いくつかの実施形態において、組成物が本質的に単一の高分子種から成る場合、目的種は本質的な均一性(すなわち、夾雑種を通常の検出法によって組成物中に検出できない)まで精製される。溶媒種、小分子(<500ダルトン)、および元素イオン種は高分子種とみなされない。
【0080】
ある特定の実施形態において、本開示はキメラの構造を改変することにより機能性変異体を作ることを意図する。かかる改変体は、例えば、治療効力の向上、または安定性(例えば、ex vivo有効期間およびin vivoタンパク質分解耐性、安定性、溶解度、バイオアベイラビリティ、またはキメラタンパク質の体内分布の改善、その他)などの目的のために作ることができる。例えば、限定されるものでないが、本誘導体には、例えば、アセチル化、カルボキシル化、アシル化、グリコシル化、PEG化、リン酸化、ファルネシル化、ビオチン化、脂質化、アミド化、公知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは有機誘導体化剤などの他のタンパク質との結合などにより改変されたキメラが含まれる。多数の化学改変のいずれかを公知の技法により行ってもよく、前記技法には、限定されるものでないが、特定の化学切断、アセチル化、ホルミル化、代謝性合成などが含まれる。さらに本誘導体は1以上の非天然アミノ酸、例えば、ケトンを含有する側鎖、ポリエチレングリコール、脂質、多糖もしくは単糖、および リン酸塩を伴うものを含有してもよい。かかる非天然アミノ酸エレメントのキメラTGF-βスーパーファミリータンパク質の機能性に与える効果は、他のTGF-βスーパーファミリータンパク質変異体について本明細書に記載したように試験することができる。キメラTGF-βスーパーファミリータンパク質を新生型の前駆体タンパク質を切断することにより産生した場合、翻訳後プロセシングも、タンパク質の正しいフォールディングおよび/または機能のためにも重要である。色々な細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、W138、NIH-3T3またはHEK293)は、かかる翻訳後活性のために特定の細胞機構および特徴ある機構を有するので、これらを選んで前駆体タンパク質のキメラTGF-βスーパーファミリー タンパク質への正しい翻訳後の改変およびプロセシングを保証することができる。in vitro無細胞発現系をその関連する作製したtRNAシンターゼおよびtRNAと組み合わせて利用し、非天然アミノ酸を導入するように遺伝子でタグ付けした特定のアミノ酸位置における正しい改変を保証することができる。
【0081】
改変したキメラはまた、例えば、アミノ酸置換、欠失、または付加により産生することができる。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンとの、アスパラギン酸のグルタミン酸との、トレオニンのセリンとの置換え、またはあるアミノ酸の構造的に関係するアミノ酸との同様な置換え(例えば、保存的変異)は、得られる分子の生物学的活性に大きな影響を与えないだろうと予測するのは合理的である。保存的置換えはそれらの側鎖で関係付けられるアミノ酸のファミリー内で行われる置換えである。
【0082】
ある特定の実施形態において、本開示は、タンパク質分解切断に対する感受性を低下させるためにキメラ配列のタンパク質分解切断部位において変異体を作ることを意図する。コンピューター分析(市販のソフトウエア、例えば, MacVector, Omega, PCGene, Molecular Simulation, Inc.を利用)を用いてタンパク質分解性切断部位を同定することができる。当業者は理解しうるように、記載した変異体、変異体、または改変体のほとんどは核酸レベルで、または、いくつかの場合には、翻訳後改変もしくは化学合成によって作ることができる。かかる技法は当技術分野で公知である。
【0083】
ある特定の実施形態において、本開示はキメラのグリコシル化を改変するキメラ配列の特定の突然変異を意図する。かかる突然変異は1以上のグリコシル化部位、例えば、O-結合型またはN結合型グリコシル化部位を導入するかまたは除去するように選択することができる。アスパラギン結合グリコシル化認識部位は一般にトリペプチド配列、アスパラギン-X-トレオニン(ここで「X」は任意のアミノ酸である)を含み、これは適当な細胞のグリコシル化酵素により特異的に認識される。改変はまた、野生型ポリペプチド(O-結合型グリコシル化部位について)の配列への1以上のセリンまたはトレオニン残基の付加または置換により行うことができる。グリコシル化認識部位の第1または第3のアミノ酸位置の1つもしくは両方における色々なアミノ酸置換または欠失(および/または第2の位置におけるアミノ酸欠失)は改変されたトリペプチド配列に非グリコシル化をもたらす。糖部分の数を増加する他の手段はポリペプチドへのグリコシドの化学または酵素カップリングによるものである。用いるカップリング方式によって、糖類は(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)フリーのカルボキシル基;(c)フリーのスルフヒドリル基、例えばシステインなど;(d)フリーのヒドロキシル基、例えばセリン、トレオニン、またはヒドロキシプロリンなど;(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンなど;または(f)グルタミンのアミド基と結合させていてもよい。これらの方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO 87/05330(1987年9月11日公開)、およびAplin and Wriston (1981) CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306に記載されている。キメラ上に存在する1以上の糖部分の除去は化学的および/または酵素的に行うことができる。化学的脱グリコシル化は、例えば、その化合物のトルフルオロメタンスルホン酸、または同等の化合物への曝露に関わりうる。この処理は、結合している糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんどまたは全ての糖類の切断をもたらすが、アミノ酸配列は無傷のままである。化学的脱グリコシル化はさらにHakimuddin et al. (1987) Arch. Biochem. Biophys. 259:52およびEdge et al. (1981) Anal. Biochem. 118:131に記載されている。ポリペプチド上の糖部分の酵素切断は、様々なendo-およびexo-グリコシダーゼの使用によってThotakura et al. (1987) Meth. Enzymol. 138:350が記載したように実施することができる。哺乳動物、酵母、昆虫および植物細胞は全てペプチドのアミノ酸配列により影響されうる異なるグリコシル化パターンを導入するので、プロペプチドの核酸および/またはアミノ酸配列は使用する発現系のタイプに応じて適当に調節することができる。
【0084】
いくつかの実施形態において、キメラポリペプチドはアレイ形であってもよい。ポリペプチドは、例えば、マイクロタイタープレートウエル中の溶液のような可溶性の形態であっても、または基質上に固定されていてもよい。基質は固体基質または多孔基質(例えば、膜)であってもよく、有機ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、およびポリアクリルアミド、ならびにコポリマーから成ってもよく、ならびにそれらの移植片であってもよい。基質の立体構造はビーズ、球、粒子、顆粒、ゲル、膜または表面の形態であってもよい。表面は平面、実質的に平面、または非平面であってもよい。固体支持体は多孔または非多孔であってもよく、かつ膨潤性または非膨潤性の特性を有してもよい。固体支持体の形状はウエル、くぼみ、または他のコンテナー、丸形容器、フィーチャー(feature)、ロケーション(location)の形態であってもよい。複数の支持体は様々なロケーションにアレイ上で形状化されて試薬のロボット送達に対してまたは検出方法および/または計器により位置指定可能であってもよい。
【0085】
本開示はまた、本明細書に開示したキメラTGF-βファミリーポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。このポリヌクレオチドを1以上の異種の調節または制御配列と機能しうる形で連結し、それによって遺伝子発現を制御し、ポリペプチドを発現できる組換えポリヌクレオチドを作製することができる。キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する発現構築物を適当な宿主細胞中に導入してポリペプチドを発現させることができる。本開示の様々なドメインまたは全キメラをコードするポリヌクレオチド配列は、ポリペプチドのアミノ酸に関連する様々なコドンに基づいて不当な努力なしに決定することができる。さらに、本開示はTGF-βファミリーメンバーの例示の配列を提供する。本明細書に与えた配列からドメインまたはキメラの配列を誘導することは、当業者によれば容易に実施される。本明細書に記載のTGF-βファミリータンパク質の具体的な配列とキメラポリペプチドの具体的な説明の知識(例えば、キメラドメインのセグメント構造)が与えられれば、遺伝子操作で作られたキメラの核酸配列は当業者には明らかであろう。ポリペプチドのアミノ酸配列の知識と共に様々なアミノ酸に対応するコドンの知識によって、当業者は本開示のポリペプチドをコードする色々なポリヌクレオチドを作ることができる。従って、本開示は、可能なコドン選択に基づく組み合わせを選択することにより作ることができるポリヌクレオチドのそれぞれおよび全ての可能な変形を意図するものであり、そして全てのかかる変形は本明細書に記載したポリペプチドのいずれについても具体的に開示されたと考えるべきである。
【0086】
いくつかの実施形態において、本ポリヌクレオチドは、本明細書に記載したポリペプチドをコードするが、キメラまたは親TGF-βファミリーポリペプチドをコードする参照ポリヌクレオチドと、ヌクレオチドレベルにおいて、約80%以上の配列同一性、約85%以上の配列同一性、約90%以上の配列同一性、約91%以上の配列同一性、約92%以上の配列同一性、約93%以上の配列同一性、約94%以上の配列同一性、約95%以上の配列同一性、約96%以上の配列同一性、約97%以上の配列同一性、約98%以上の配列同一性、または約99%以上の配列同一性を有するポリペプチドを含むものである。
【0087】
いくつかの実施形態において、本ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドは様々な方法で遺伝子操作して本ポリペプチドの発現を提供することができる。ベクター中に挿入する前の単離されたポリヌクレオチドの遺伝子操作は発現ベクターに応じて望ましいかまたは必要でありうる。組換えDNA法を利用してポリヌクレオチドと核酸配列を改変する技法は当技術分野で公知である。手引きはSambrook et al., 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press;およびCurrent Protocols in Molecular Biology, Ausubel. F. ed., Greene Pub. Associates, 1998, updates to 2007に与えられている。
【0088】
いくつかの実施形態においては、ポリヌクレオチドを制御配列と機能しうる形で連結されて、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを発現する。いくつかの実施形態において、制御配列は宿主細胞にとって相同または非相同の、細胞外または細胞内のポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる適当なプロモーター配列であってもよい。
【0089】
いくつかの実施形態において、制御配列はまた、好適な転写ターミネーター配列(転写を終えるために宿主細胞により認識される配列)であってもよい。ターミネーター配列はポリペプチドをコードする核酸配列の3'末端と機能しうる形で連結される。選択した宿主細胞において機能性のあるいずれのターミネーターを用いてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、制御配列はまた、宿主細胞による翻訳にとって重要である好適なリーダー配列、RNAの非翻訳領域であってもよい。リーダー配列はポリペプチドをコードするする核酸配列の5'末端に機能しうる形で連結される。選択した宿主細胞において機能性のあるいずれのリーダー配列を用いることができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、制御配列はまた、ポリペプチドのアミノ末端に連結されたアミノ酸配列をコードしかつコードされたポリペプチドを細胞の分泌経路に指令するシグナルペプチドコード領域であってもよい。核酸配列のコード配列の5'末端は、分泌されるポリペプチドをコードするコード領域のセグメントをもつ翻訳リーディングフレームに、自然に連結されたシグナルペプチドコード領域を固有に含有しうる。あるいは、コード配列の5'末端がコード領域に外来であるシグナルペプチドコード領域を含有してもよい。コード配列が自然にシグナルペプチドコード領域を含有しない場合、外来のシグナルペプチドコード領域が必要でありうる。
【0092】
本開示はさらに、本明細書に記載したキメラTGF-βポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および、それらを導入する宿主の型に応じて1以上の発現調節領域、例えば、プロモーターおよびターミネーター、複製起点などを含む組換え発現ベクターに関する。発現ベクターを作製する際、コード配列は発現のための適当な制御配列と機能しうる形で連結されるように、コード配列をベクター中に配置する。
【0093】
組換え発現ベクターは組換えDNAの手続きによって好都合に処理することができ、ポリヌクレオチド配列の発現を実現できるいずれのベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)であってもよい。ベクターの選択は典型的には、ベクターを導入する宿主細胞またはin vitro無細胞反応混合物とベクターとの適合性に依存しうる。ベクターは直鎖または閉環プラスミドであってもよい。
【0094】
発現ベクターは自律複製ベクター、すなわち、その複製が染色体複製から独立している染色体外実体として存在するベクター、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体であってもよい。ベクターは自己複製を保障するいずれかの手段を含有してもよい。あるいはベクターは、宿主細胞中に導入されると、ゲノム中に組み込まれ、組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであってもよい。さらに、単一ベクターもしくはプラスミドまたは宿主細胞のゲノム中に導入すべき全DNAを一緒に含有する2以上のベクターもしくはプラスミド、またはトランスポゾンを用いることができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、本開示の発現ベクターは形質転換した細胞の選択を容易にする1以上の選択マーカーを含有する。選択マーカーはその産物が殺生物剤またはウイルス耐性、重金属耐性、栄養要求体に対する原栄養性などを提供する遺伝子である。
【0096】
他の実施形態において、本開示はキメラTGF-βポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供し、前記ポリヌクレオチドは宿主細胞において融合ポリペプチドを発現する1以上の制御配列と機能しうる形で連結されている。本開示の発現ベクターによりコードされた融合ポリペプチドを発現するために用いる宿主細胞は当技術分野で公知である。上記の宿主細胞に対する適当な培地および増殖条件は当技術分野で公知である。
【0097】
発現ベクターは原核生物または真核細胞でキメラを発現するようにデザインすることができる。例えば、本開示のキメラは細菌または原核細胞、例えば大腸菌、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系)、酵母細胞、微細藻類、植物細胞または哺乳動物細胞ならびにin vitro無細胞発現系で発現させることができる。いくつかの好適な宿主細胞はさらに、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に考察されている。
【0098】
考察した発現系の一例は大腸菌発現系であるが、当業者はこれらのタンパク質を多数の他の発現系に容易にクローニングし、それらから発現させることができる。その利点には、限定されるものでないが、タンパク質が由来する生物(この事例ではH. sapiens)で見られるであろう翻訳後の改変、細菌発現に必要な出発メチオニンなしでのリガンドの発現、および非天然アミノ酸の容易な組込みまたはさらなる化学改変の達成が含まれる。好適な原核生物には、限定されるものでないが、グラム陰性菌またはグラム陽性菌などの真正細菌、例えば大腸菌などの腸内細菌が含まれる。様々な大腸菌株、例えば、大腸菌K12菌株MM294(ATCC 31,446);大腸菌X1776(ATCC 31,537);大腸菌菌株W3110(ATCC 27,325)およびK5772(ATCC 53,635)が公的に利用しうる。原核生物だけでなく、真核生物微生物、例えば、糸状真菌または酵母はVEGF-Eをコードするベクターにとって好適なクローニングまたは発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は通常用いられる下等真核生物の宿主微生物である。
【0099】
キメラを発現するための好適な宿主細胞は単細胞および多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例にはショウジョウバエS2およびSpodoptera Sf9などの昆虫 細胞、ならびに植物細胞が含まれる。植物発現系も改変されたタンパク質を発現するのに首尾よく用いられている。有用な哺乳動物の宿主細胞株の例にはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)およびCOS細胞が含まれる。さらに具体的な例には、SV40により形質転換したサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎株(懸濁培養で増殖するためにサブクローニングした293または293細胞、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスセリトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2, HB 8065);およびマウス乳房腫瘍(MMT 060562, ATCC CCL51)が含まれる。適当な宿主細胞の選択は当分野の技術の範囲内であると考えられる。
【0100】
代わりのタンパク質発現系には、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞、バキュロウイルス発現系を利用する昆虫細胞株(S. frugiperda)、酵母発現系、限定されるものでないが、P. pastoris および S. cerevisiae、および多数の微細藻類株が含まれる。トランスジェニック動物を用いて正しく改変されたタンパク質を発現することができる。要するに、動物が牛乳などの容易に収穫される液または組織中に所望のタンパク質を大量に発現する能力のある、生存する「バイオリアクター」になる。細菌またはコムギ胚細胞溶菌液を用いる無細胞in vitro発現系を使うことができる。無細胞発現系は、より高い効率とより大きい特異性をもつ広範囲の非天然アミノ酸またはエピトープタグの挿入を可能にしうる。
【0101】
細菌ベクターの例には、pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen)、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pbluescript SK、pbsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene);ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、およびpRIT5(Pharmacia)が含まれる。酵母S. cerevisiaeにおける発現用のベクターの例には、pYepSec1 (Baldari et al., EMBO J. 6:229 (1987))、pMFa (Kurjan and Herskowitz, Cell 30:933 (1982))、pJRY88 (Schultz et al., Gene 54:113 (1987))、およびpYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)が含まれる。培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)でタンパク質を産生する核酸の発現に利用できるバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smith et al., Mol. Cell. Biol. 3:2156 (1983))およびpVLシリーズ(Lucklow and Summers Virology 170:31 (1989))が含まれる。
【0102】
哺乳動物の発現ベクターの例には、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene)pSVK3、PBPV、pMSG、PSVL(Pharmacia)、pCDM8(Seed, Nature 329:840 (1987))およびpMT2PC(Kaufman et al., EMBO J. 6:187 (1987))が含まれる。哺乳動物細胞に用いる場合、発現ベクターの制御機能はしばしばウイルスの調節エレメントにより与えられる。例えば、通常用いられるプロモーターはポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルウイルス40由来である。
【0103】
ウイルスベクターは細胞ならびに生存動物被験体における様々な遺伝子送達用に用いられている。使用しうるウイルスベクターには、限定されるものでないが、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、アデノウイルス、ジェミニウイルス、およびカリモウイルスベクターが含まれる。非ウイルスベクターには、プラスミド、リポソーム、帯電脂質(サイトフェクチン)、核酸-タンパク質複合体、およびバイオポリマーが含まれる。ベクターはまた、目的の核酸だけでなく、核酸伝達結果(具体的な組織への送達、発現持続時間など)を選択し、測定し、およびモニタリングするのに有用な1以上の調節領域および/または選択マーカーを含んでもよい。
【0104】
本開示のキメラは当技術分野で公知の方法を用いて作ることができる。ポリヌクレオチドは、Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press;および Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel. F. ed., Greene Pub. Associates, 1998, updates to 2007に与えられたような、組換え技法により合成することができる。増幅のための酵素、もしくはプライマーをコードするポリヌクレオチドはまた、標準の固相法により、公知の合成法に従って、例えば、Beaucage et al., (1981) Tet Lett 22:1859-69に記載のホスホロアミダイト法, またはMatthes et al., (1984) EMBO J. 3:801-05に記載された方法を用いて調製することができる。さらに、自動化ペプチド合成器が市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396; Milligen/Biosearch 9600)。
【0105】
一実施形態において、本開示は大きいキメラライブラリーの構築を加速する方法を目指している。従って、本開示はRASCH(RAndom Segmental CHimera)と名付けられた組換え戦略を提供する;図17を参照されたい。この方法はテンプレート配列(1つのTGF-βスーパーファミリーメンバー由来の第1ストランド)とサブドメインを連結しようとする少数の標的配列(1以上の代わりのTGF-βスーパーファミリーメンバー由来の第2(第3、第4、第5、第6)ストランド)とを使用する。テンプレートDNA配列は標的配列の効率的なカップリングを促進するために使用され、サブドメインが連結されると分解する。キメラ配列を作製するための遺伝子構築の後、この新しいリガンドは化学的にリフォールドして機能性二量体になる。この二量体化プロセスは、天然およびデザイナー起源の両方の2つの異なる配列を混合しかつ二量体化することによって、最終配列のさらなる多様性を可能にする。それ故に、RASCH法を用いてほぼ40種のTGF-βスーパーファミリーリガンドの天然タンパク質配列を一万種以上の変異体配列に多様化することができ、それぞれが天然のTGF-βスーパーファミリーリガンド配列と異なる。
【0106】
宿主細胞で発現されて作製されたポリペプチドは、細胞および/または培地から、タンパク質精製のための公知の技法のいずれか1以上の方法を用いて回収することができ、これらの技法には、とりわけ、リゾチーム処理、超音波処理、濾過、塩析、超遠心分離、クロマトグラフィ、およびアフィニティ分離(例えば、基質に結合された抗体)が含まれる。
【0107】
ポリペプチドを単離するクロマトグラフ技法には、とりわけ、逆相クロマトグラフィ、高性能液体クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、およびアフィニティクロマトグラフィが含まれる。特定の酵素を精製するための条件は、部分的に、正味電荷、疎水性、親水性、分子量、分子形状などの因子に依存するものであって、当業者には明らかであろう。
【0108】
活性を測定するアッセイは当業者に公知である。本開示は、キメラタンパク質の生物学的活性を試験するアッセイ、より好ましくは、臨床活性を試験するアッセイに関する。かかる活性には、アゴニストまたはアンタゴニストとして強化されたTGF-β活性、組み合わせのまたは新規の生物学的活性などが含まれる。
【0109】
ある特定の実施形態において、あるTGF-βスーパーファミリータンパク質のアゴニストを含む本開示のキメラタンパク質は異なるTGF-βスーパーファミリータンパク質のアンタゴニストを含む。
【0110】
どのタンパク質発現、収穫、およびフォールディング手法が使われるかに関わらず、対象キメラタンパク質のいくつかは選好的に予め選択した受容体と結合することができ、そして今や標準手法、例えば、公知でかつ当技術分野で十分記載されたリガンド/受容体結合アッセイを用いて同定することができる。例えば、Legerski gl al. (1992) Bio h~_Biophys. Res. Comm. 183: 672679;Frakar et al. (1978) Biochem. Bio12-hys. Res. Comm 80:849-857;Chio et el. (1990) Nature 343: 266-269;Dahlman et al. (1988) Biochem 27: 1813-1817;Strader et el. (1989) J. Biol. Chem. 264: 13572-13578;およびDDowd et al. (1988) J. Biol. Chem. 263: 15985-15992を参照されたい。
【0111】
典型的には、リガンド/受容体結合アッセイにおいては、予め選択した受容体に対して公知の定量可能なアフィニティを有する目的の生来のまたは親TGF-βスーパーファミリーメンバーを、検出可能な部分、例えば、放射標識、色素生産標識、または蛍光発生標識を用いて標識する。精製受容体、受容体結合ドメイン断片、または表面上に目的の受容体を発現する細胞のアリコートを、様々な濃度の無標識のキメラタンパク質の存在のもとで、標識したTGF-βスーパーファミリーメンバーと共にインキュベートする。候補キメラタンパク質の相対的結合アフィニティは、標識したTGF-βスーパーファミリーメンバーの前記受容体との結合を阻害するキメラタンパク質の能力を定量することにより測定することができる。このアッセイの実施にあたっては、固定した濃度の受容体とTGF-βスーパーファミリーメンバーを無標識キメラタンパク質の存在および非存在のもとでインキュベートする。感受性は、標識したテンプレートTGF-βスーパーファミリーメンバーを加える前に受容体をキメラタンパク質と共にプレインキュベートすることにより、増加することができる。標識した競合体を加えた後に、適当な競合体結合を可能にするのに十分な時間を置いて、次いで無結合のおよび結合した標識したTGF-βスーパーファミリーメンバーをお互いから分離し、そしてそれぞれを測定する。スクリーニング手順の実施に有用な標識には、放射性標識、色素生産標識、分光学的標識(例えば、Haughland (1994) “Handbook of Fluorescent and Research Chemicals,” 5 ed. by Molecular Probes, Inc., Eugene, Oreg.に開示されている)または高い代謝回転速度を有する抱合酵素、(すなわち、化学発光または蛍光発生基質と組み合わせて使用される西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはα-ガラクトシダーゼ)が含まれる。得られるキメラタンパク質構築物の生物学的活性、すなわちアゴニストまたはアンタゴニスト特性は、続いて、TGF-βスーパーファミリーメンバーの生物学的活性を測定するために開発された通常のin vivoおよびin vitroアッセイを用いて特徴づけることができる。しかし、使用するアッセイのタイプは、好ましくは、キメラタンパク質が基づくTGF-βスーパーファミリーメンバーに応じたものが評価される。例えば、天然のBMP-2タンパク質に基づくキメラ構築物は、以下にさらに詳しく記載した、BMP-2活性を測定するために今まで開発されたいずれかの生物学的アッセイを用いてアッセイすることができる。
【0112】
対象キメラタンパク質のなかの多量体の存在は、DTTなどの還元剤の非存在のもとでの標準SDS-PAGEによるかまたはHPLC(例えば、C18逆相HPLC)により可視的に検出することができる。本開示の多量体タンパク質は、単量体サブユニットより比例的に大きい、例えば、約14〜18kDaの見かけの分子量を有しうる単量体サブユニットと比較して、二量体については28〜36kDaの範囲の見かけの分子量を有しうる。多量体タンパク質は電気泳動ゲル上で市販の分子量標準との比較により容易に可視化することができる。二量体タンパク質はまた、その単量体対応物とは異なる時点にC18 RP HPLC(45〜50%アセトニトリル:0.1%TFA)から溶出する。
【0113】
第2のアッセイは、二量体(例えば、OP-1二量体)の存在をヒドロキシアパラタイトと結合する能力により評価する。最適にフォールドした二量体はヒドロキシアパラタイトカラムとpH7、10mMリン酸塩、6M尿素、および0.142M NaCl中でよく結合し(二量体は0.25M NaClで溶出する)、実質的にこれらの濃度で結合しない単量体と比較される(単量体は0.1M NaClで溶出する)。第3のアッセイは、トリプシンまたはペプシン消化に対するタンパク質耐性によって二量体の存在を評価する。フォールドした二量体種は実質的に両方の酵素、特にトリプシンに対して耐性があり、成熟タンパク質のN末端の小部分だけが切断し、無処理二量体よりサイズが僅かに小さい生物学的活性二量体種を残す(各単量体はトリプシン切断後にアミノ酸数がより小さい)。対照的に、単量体とミスフォールドした二量体は実質的に分解される。本アッセイにおいては、タンパク質を標準条件、例えば、4M 尿素、100mM NaCl、0.3% Tween-80および20mMメチルアミンを含有する50mMトリスバッファー、pH 8のような標準バッファーを用いて酵素消化で処理する。消化は37℃にて16時間程度行い、その生成物をいずれかの好適な手段、好ましくはSDS PAGEによって可視化する。
【0114】
対象キメラタンパク質、例えば、BMP由来の1以上のセグメントを有するキメラタンパク質の生物学的活性は、WO00/20607に記載の多数の手法のいずれかにより評価することができる。例えば、軟骨内骨形成を誘発するタンパク質の能力は、よく特徴づけられたラット皮下骨アッセイを用いて評価することができる。このアッセイにおいては、骨形成を組織学により、ならびにアルカリホスファターゼおよび/またはオステオカルシン産生により測定する。さらに、高い特異的な骨形成活性を有する骨原性タンパク質、例えば、OP-1、BMP-2、BMR4、BMP-5およびBMP-6もin vivoラット骨芽細胞または骨肉腫細胞に基づくアッセイにおいてアルカリホスファターゼ活性を誘発する。かかるアッセイは当技術分野ではよく記載されている。例えば、Sabokdar of al. (1994) Bone and Mineral 27:57-67.; Knutsen et al. (1993) Biochem Biophvs Res. Commun 194:1352-1358; and Maliakal et al. (1994) Growth Factors 1:227-234)を参照されたい。
【0115】
対照的に、低い特異的な骨形成活性を有する骨原性タンパク質、例えば、CDMP-1およびCDMP-2などは細胞に基づく骨芽細胞アッセイにおいてアルカリホスファターゼ活性を誘発しない。このアッセイは従ってB1b9変異体の生物学的活性を評価するために直ぐ対応できる方法を提供する。例えば、CDMP-1、CDMP-2およびCMDP-3は全て競合して骨形成を誘発するが、BMP-2、BW-4、BV-5、BMP-6またはOP-1より低い特異的活性である。逆に、BMP-2、BMP-4、BMP-5、BPylP-6およびOP-1は、CDMP-1、CDMP-2またはCDMP-3より低い特異的活性であるが、全て関節の軟骨形成を誘発することができる。従って、細胞に基づくアッセイで競合してアルカリホスファターゼ活性を誘発すると本明細書でデザインされかつ記載されたCDMP由来の1以上のセグメントを有するキメラタンパク質は、ラット動物バイオアッセイにおいてより高い特異的な骨形成活性を示すことが予想される。
【0116】
キメラタンパク質の生物学的活性はまた、上皮細胞増殖を阻害するタンパク質の能力により容易に評価することができる。有用な、よく特徴づけられたin vitroアッセイはミンク肺細胞または黒色腫細胞を利用する。WO00/20607を参照されたい。TGF-βスーパーファミリーの他のメンバーに対する他のアッセイは文献によく記載され、無駄な実験をせずに実施することができる。
【0117】
ある特定の実施形態において、本開示は宿主、好ましくはヒトにおける骨格筋肉量を制御および維持する方法および薬剤を提供する。それ故に、TGF-βスーパーファミリータンパク質、例えばGDF-8などの筋肉に関係した機能に影響を与えると予想される本開示のいずれかのキメラタンパク質を、全細胞または組織において、in vitroまたはin vivoで、骨格筋肉量をモジュレートする能力を試験して確認することができる。GDF-8(ミオスタチンとしても知られる)は骨格筋肉成長の負のレギュレーターである。GDF-8ノックアウトマウスは正常なマウスのほぼ2倍の骨格筋肉量を有する。骨モデリングに与える筋肉量増加の効果は、例えば、雌性GDF-8ノックアウトマウスの大腿中の骨ミネラル含量(BMC)および骨ミネラル密度(BMD)を試験することにより研究することができる。二重エネルギーX線吸光光度法(DEXA)密度測定を用いて全大腿BMCおよびBMDを測定することができ、またPQCT密度測定を用いて組織の横断面からBMCおよびBMDを計算することができる。Hamrick、Anat Rec. 2003 May; 272A(1):388-91。当技術分野では公知のように、本開示のキメラタンパク質をGDF-8ノックアウトマウス中に導入することができ、類似のアッセイを用いて骨格筋肉量および骨密度に与えるキメラタンパク質の効果を決定することができる。
【0118】
デュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)のmdxマウスモデルにおけるジストロフィー表現型を用いて本開示にキメラタンパク質の生物学的活性を試験することもできる。3か月間のブロック抗体の腹腔内注射を用いることによる内因性ミオスタチンの遮断は、体重、筋肉量、筋肉サイズおよびmdxマウス筋肉の絶対筋肉強度の増加、ならびに筋肉変性および血清クレアチンキナーゼの濃度の有意な減少をもたらしたことが報じられた。Bogdanovich ら、Nature. 2002 Nov. 28; 420(6914):418-21。類似の研究を使って本開示のキメラタンパク質が内因性GDF-8活性を増強するかまたは阻害するかどうかを決定することができる。
【0119】
ある特定の実施形態において、本開示は神経形成をモジュレートする方法および薬剤を提供する。例えば、GDF-11はp27(Kip1)および前駆体における可逆的細胞サイクル静止を誘発することにより、in vitroで嗅覚の上皮神経形成を阻害することは公知である。Wu et al. Neuron. 2003 Jan. 23; 37(2):197-207。本開示のキメラタンパク質の神経形成に与える効果を同様に試験することができる。さらに、神経形成に対するGDF-11の効果に与える本開示のキメラタンパク質の効果も、Wu et. al.に記載したのと類似のアッセイを用いて試験することもできる。
【0120】
ある特定の実施形態において、本開示は骨形成を刺激するおよび骨量を増加する方法と薬剤を提供する。それ故に、TGF-βスーパーファミリータンパク質、例えばBMP-2、BMP-3、GDF-10、BMP-4、BMP-7、またはBMP-8などの骨に関係する機能に影響を与えると予想される本開示のいずれかのキメラタンパク質を、全細胞または組織において、in vitroまたはin vivoで試験して、骨または軟骨成長をモジュレートするそれらの能力を確認することができる。当技術分野で公知の様々な方法をこの目的に利用することができる。例えば、BMP-3はMsx2のBMP2介在性誘発を阻害しかつ骨前駆体細胞の骨芽細胞へのBMP2介在性分化をブロックする。従って、対象キメラタンパク質、好ましくはBMP-2またはBMP-3由来のセグメントを含むものの骨または軟骨成長に与える効果は、例えば、Msx2の誘導または骨前駆体細胞の骨芽細胞への分化を細胞に基づくアッセイで測定することによりBMP-2の骨原性 活性に与えるそれらの効果によって決定することができる(例えば、Daluiski et al., Nat. Genet. 2001, 27(1):84-8; Hino et al., Front Biosci. 2004, 9:1520-9を参照)。同様に、対象キメラタンパク質、好ましくはBMP-2またはBMP-3由来のセグメントを含むものを、その骨原性のまたは抗骨原性の活性またはそのBMP-2が介在する骨形成に与えるアゴニストまたはアンタゴニスト効果について試験することができる。
【0121】
細胞に基づくアッセイの他の例には、間葉前駆体および造骨細胞における対象キメラおよび試験化合物の骨原性または抗骨原性活性の分析が含まれる。説明するために、対象キメラタンパク質を発現する組換えアデノウイルスを構築して多能性間葉細胞前駆体C3H10T1/2細胞、プレ造骨性C2C12細胞、および造骨性TE-85細胞に感染した。次いで骨原性活性を、アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、および基質石灰化の誘導を測定することにより確認した(例えば、Cheng et al., J bone Joint Surg Am. 2003, 85-A(8):1544-52)。
【0122】
さらに、本開示は骨または軟骨成長を測定するためのin vivoアッセイを意図する。例えば、Namkung-Matthai et al., Bone, 28:80-86 (2001)は、骨折後の早い期間の骨修復を研究するラット骨粗鬆症モデルを開示している。Kubo et al., Steroid Biochemistry & Molecular Biology, 68:197-202 (1999)も骨折後の遅い期間の骨修復を研究するラット骨粗鬆症モデルを開示している。これらの参考文献は、粗鬆症の骨折の研究に対するラットモデルの開示について、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。ある特定の態様において、本開示は当技術分野で公知の骨折治癒アッセイを利用する。これらのアッセイには、例えば、米国特許第6,521,750号(骨折の生起ならびにその程度の測定、および修復過程のための実験プロトコルを開示するために、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる)に記載された、骨折技法、組織学的分析、および生体力学的分析が含まれる。
【0123】
本開示のスクリーニングアッセイは対象キメラタンパク質とその変異体だけでなく、キメラタンパク質もしくはその変異体自体のアゴニストおよびアンタゴニストを含むいずれの試験化合物にも適用されることは理解される。さらに、これらのスクリーニングアッセイは薬物標的立証および品質管理目的のために有用である。
【0124】
他の実施形態において、本開示は、キメラタンパク質の活性をモジュレートする化合物を同定するための対象キメラTGF-βスーパーファミリータンパク質の使用に関する。このスクリーニングを介して同定した化合物を、組織(例えば、骨および/または軟骨)または細胞(例えば、筋肉細胞)で試験してin vitroで試験組織または細胞(例えば、骨/軟骨成長または筋肉細胞増殖)をモジュレートするそれらの能力を評価することができる。場合によっては、これらの化合物を動物モデルにおいてさらに試験して、例えば、骨/軟骨成長または筋肉制御および維持をin vivoでモジュレートするそれらの能力を評価することができる。
【0125】
本開示を照合すれば、様々なアッセイフォーマットが満たし、本明細書に明示して記載されてないものも、それに関わらず、当業者により理解されるであろう。本明細書に記載のように、本開示の試験化合物(薬剤)はいずれかのコンビナトリアル 化学の方法により作製することができる。あるいは、対象化合物はin vivoまたはin vitroで合成した天然の生体分子であってもよい。骨または軟骨成長のモジュレーターとして作用するその能力を試験する化合物(薬剤)を、例えば、細菌、酵母、植物または他の生物によって産生する(例えば、天然産物)、化学的に生産する(例えば、ペプチドミメチックを含む小分子)、または組換えによって産生することができる。本開示により意図される試験化合物には、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチドミメチック、糖、ホルモン、および核酸分子が含まれる。具体的な実施形態において、試験薬剤は約2,000ダルトン未満の分子量を有する小さい有機分子である。
【0126】
本開示の試験化合物は単一の、個別の実体として提供するか、または、非常に複雑な、例えばコンビナトリアル化学により作られたライブラリーで提供することができる。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン類、アミド、エステル、アルデヒド、エーテル類および他のクラスの有機化合物を含んでもよい。試験化合物の試験系への提示は、単離された形態または、とりわけ最初のスクリーニングステップでは化合物の混合物であってもよい。場合によっては、化合物を任意に他の化合物で誘導体化してその化合物の単離を容易にしてもよい。誘導体化基の例には、限定されるものでないが、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位体、ポリヒスチジン、磁性ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ、光活性架橋剤またはそれらのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0127】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多数の薬物スクリーニングにおいては、所与の期間に調査する化合物の数を最大化するために、ハイスループットアッセイが望ましい。精製または半精製タンパク質で誘導してもよい無細胞系で実施するアッセイはしばしば「一次」スクリーニングとして好ましく、それらを作製して、試験化合物が媒介する分子標的における改変の迅速な開発と比較的容易な検出を可能にしうる。さらに、試験化合物の細胞毒性またはバイオアベイラビリティの効果は一般にin vitro系では無視してもよく、このアッセイは、その代りに、主に薬物の分子標的に与える効果、例えば、キメラTGF-βスーパーファミリータンパク質とその結合タンパク質(例えば、キメラタンパク質自体またはTGF-β受容体タンパク質もしくはその断片)との間の結合アフィニティに現れうる効果に重点をおく。
【0128】
単に説明のためであるが、本開示の例示のスクリーニングアッセイにおいては、目的の化合物を、単離しかつ精製したキメラタンパク質(TGF-β受容体タンパク質と通常結合することができて、アッセイの意図にとって適当なもの)もしくはその断片と接触させる。対象キメラタンパク質とTGF-β受容体タンパク質を含む混合物に、次いで試験化合物を含有する組成物を加える。キメラタンパク質受容体複合体の検出と定量は、キメラTGF-βスーパーファミリータンパク質とその結合タンパク質、例えば、TGF-β受容体またはその断片との間の複合体形成を阻害(または増強)する化合物の効力を決定する手段を提供する。様々な濃度の試験化合物を用いて得たデータから用量応答曲線を作ることによって、化合物の効力を評価することができる。さらに、対照アッセイも実施して比較のための基線を提供することができる。例えば、対照アッセイにおいては、単離しかつ精製したキメラTGF-βスーパーファミリータンパク質を、TGF-β受容体タンパク質またはその断片を含有する組成物(無細胞のまたは細胞に基づく)に加え、そしてキメラタンパク質受容体複合体の形成を試験化合物の非存在で定量する。一般に、試薬を混合する順序は変えてもよく、また同時に混合してもよいことは理解されよう。さらに、精製したタンパク質の代わりに、細胞抽出物および溶菌液を用いて好適な無細胞アッセイ系にしてもよい。あるいは、TGF-β受容体タンパク質またはその断片を表面に発現する細胞をある特定のアッセイにおいて用いることができる。
【0129】
対象キメラTGF-βスーパーファミリータンパク質とその結合タンパク質の間の複合体形成は様々な技法で検出することができる。例えば、複合体形成のモジュレーションは、例えば、検出可能に標識したタンパク質、例えば放射標識(例えば、32P、35S、14Cまたは3H)した、蛍光標識(例えば、FITC)した、または酵素標識したキメラタンパク質またはその結合タンパク質を用いて、イムノアッセイにより、またはクロマトグラフィ検出により定量することができる。
【0130】
ある特定の実施形態において、本開示は、キメラTGF-βスーパーファミリータンパク質とその結合タンパク質(例えば、TGF-β受容体タンパク質またはその断片)との間の相互作用の程度を直接または間接に測定するのに蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイの使用を意図する。さらに、他の検出方式、例えば、光学的導波管(PCT公報WO 96/26432および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴 (SPR)、表面電荷センサー、および表面力センサーに基づく方式は本開示の多くの実施形態に適合しうる。
【0131】
さらに本開示は、キメラTGF-βスーパーファミリータンパク質とその結合タンパク質(例えば、TGF-β受容体タンパク質またはその断片)との間の相互作用を破壊または増強する薬剤を同定するために、「ツーハイブリッドアッセイ」としても知られる相互作用捕捉アッセイの使用を意図する。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervos et al. (1993) Cell 72:223-232;Madura et al. (1993) J Biol Chem 268:12046-12054;Bartel et al. (1993) Biotechniques 14:920-924;およびIwabuchi et al. (1993) Oncogene 8:1693-1696)を参照されたい。
【0132】
本開示のキメラポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、細胞および他の試薬はin vitroおよびin vivoの両方で広範囲の用途を有する。例えば、代表的な実施形態において、これらの試薬をin vitroまたはin vivo(例えば、動物モデルにおいて)で用いて、石灰化、骨形成、および骨損失のプロセスを研究することができる。さらに、「ノックイン」および「ノックアウト」動物を、疾患の動物モデルとしてまたはスクリーニングツールとしてキメラポリヌクレオチドまたはポリペプチドと相互作用する化合物に対して用いることができる(以下でさらに考察した)。当業者には、いずれかの好適なベクターを用いてポリヌクレオチドを細胞または被験体に送達できることが明らかであろう。送達ベクターの選択は、当技術分野で公知のいくつもの因子に基づいて行うことができ、前記因子には標的 宿主の年齢と種、in vitro対in vivo 送達、所望の発現レベルと持続性、意図する目的(例えば、療法またはスクリーニングに対する)、標的細胞または器官、送達経路、単離されたポリヌクレオチドのサイズ、安全上の懸念などが含まれる。
【0133】
本開示のキメラポリペプチドはin vivoを含む様々な生物系において使用するために製剤することができる。当技術分野で公知の様々な方法のいずれかを用いてキメラを単独でまたは他の活性薬と組み合わせて投与することができる。例えば、投与は注射によるかまたは時間をかけた徐々の注入による腹腔内への投与であってもよい。薬剤は、経口、直腸、頬側(例えば、舌下)、膣、非経口(例えば、皮下、骨格筋肉を含む筋肉内、心臓筋肉、横隔膜筋肉および平滑筋、皮内、静脈内、腹腔内)、局所(すなわち、皮膚および気道表面を含む粘膜表面の両方)、鼻腔内、経皮、関節内、くも膜下腔内、腔内、および吸入投与、門脈内送達による肝臓への投与、ならびに直接の器官注入(例えば、肝臓中に、中枢神経系へ送達するために脳中に、膵臓中に)のような手段で投与することができる。いずれかの所与の事例における最も好適な経路は、治療する症状の性質と重篤度ならびに使用する特別な化合物の性質に応じる。
【0134】
本開示はまた対象キメラタンパク質および製薬上許容される担体を含む医薬調製物を提供する。医薬調製物を使用して被験体、好ましくはヒトの組織の成長を促進するかまたは組織の損失を減少するかもしくは阻止することができる。標的化する組織は、例えば、骨、軟骨、骨格筋肉、心臓の筋肉および/またはニューロンの組織でありうる。
【0135】
他の態様においては、キメラTGF-βポリペプチドを単独でまたは他の薬剤と組み合わせて製剤して(例えば、ローション、クリーム、噴霧、ゲル、または軟膏として)投与することができる。リポソーム中に製剤して毒性を低下させるかまたはバイオアベイラビリティを増加することができる。他の送達方法には、ミクロスフェアまたはプロテイノイド中の封入を必要とする経口方法、エアロゾル送達(例えば、肺へ)、または経皮送達(例えば、イオントフォレシスまたは経皮エレクトロポレーションによる)が含まれる。他の投与方法は当業者に公知であろう。
【0136】
キメラTGF-βポリペプチドを含む組成物の非経口投与用調製物には、無菌の水溶液もしくは非水溶液、懸濁液、および乳濁液が含まれる。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体の例には、水、生理食塩水、および緩衝化培地、アルコール/水溶液、および乳濁液または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルの例には塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、および固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには液体および栄養分補充液、電解質補充液(ブドウ糖リンゲル液に基づくもの)などが含まれる。保存剤および他の添加物、例えば、他の抗微生物、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどが含まれてもよい。
【0137】
本開示はTGF-βタンパク質ファミリーメンバーがモジュレートすることができる様々な疾患および障害を治療する方法であって、治療上有効な量のキメラTGF-βポリペプチドを単独でまたは他の薬剤と組み合わせてかかる障害を有するリスクのある被験者に接触させるかまたは投与するステップを含むものである前記方法を提供する。
【0138】
治療上有効な量は疾患もしくは障害に関連する被験者の症候群を減少させるのに十分な量として測定することができる。典型的には、被験者を、疾患もしくは障害の一症候を少なくとも50%、90%または100%だけ軽減するのに十分な治療組成物の量で治療する。一般に、最適な用量は障害および諸因子、例えば、被験者の体重、年齢、体重、性別、および症候群の程度などに依存しうる。例えば、骨形成については、場合によって、用量は再構築に用いる基質の型および組成物中の化合物の型によって変わってもよい。他の公知の増殖因子の最終組成物への付加も用量に影響を与えうる。進行は骨成長および/または修復の定期的な評価、例えば、X線、組織形態計測の測定値、およびテトラサイクリン標識によってモニターすることができる。それでもなお、好適な用量は当業者が容易に決定することができる。典型的には、好適な用量は0.5〜40mg/kg体重、例えば、1〜8mg/kg体重である。
【0139】
先に述べたように、本開示の組成物と方法には、さらなる(例えば、キメラTGF-βポリペプチドに加えて)治療薬(例えば、TNFのインヒビター、抗生物質など)の使用が含まれる。キメラTGF-βポリペプチド、他の治療薬、および/または抗生物質を逐次に投与してもよいが、同時に投与してもよい。
【0140】
本開示によるキメラを含む医薬組成物は、担体、賦形剤、および添加物または助剤を用いて被験者に投与するのに好適な形態であってもよい。しばしば用いる担体または助剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖類、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物および植物油、ポリエチレングリコールおよび溶媒、例えば無菌の水、アルコール、グリセロール、および多価アルコールが含まれる。静脈内ビヒクルには液体および栄養分補充物が含まれる。保存剤には抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスが含まれる。他の製薬上許容される担体には、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed., Easton: Mack Publishing Co., 1405-1412, 1461-1487 (1975)、およびThe National Formulary XIV., 14th ed., Washington: American Pharmaceutical Association (1975)(これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載された塩、保存剤、バッファーなどを含む水溶液、無毒の賦形剤が含まれる。pHおよび医薬組成物の様々な成分の正確な濃度は当技術分野の通常の技能に従って調節される。Goodman and Gilman's, The Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed.)を参照されたい。
【0141】
本開示による医薬組成物は局所にまたは全身に投与することができる。「治療上有効な用量」は、疾患もしくは障害に関連する症候群を予防、治療し、または少なくとも部分的に停止させるかまたは細胞成長、増殖または分化を促進するために必要な本開示による薬剤の量である。この使用に有効な量は、勿論、疾患の重症度、障害、または所望の効果に応じ、かつ被験者の体重および全体的状態に応じるものであろう。典型的には、in vitroで用いる用量は、医薬組成物のin situ投与に有用な量に有用な手引きを提供しうるし、また動物モデルを用いて感染を治療するための有効な用量を決定することができる。様々な考察が、Langer, Science, 249: 1527, (1990); Gilman et al. (eds.) (1990)(これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。医薬活性化合物の用量は当技術分野で公知の方法により決定することができ、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton, Pa.); Remington, The Science & Practice of Pharmacy, (Lippincott Williams & Wilkins; Twenty first Edition)を参照されたい。任意の具体的な化合物の治療上有効な用量は化合物毎にいくらか変わりうるのであって、患者の症状と送達経路に応じうる。一般的な提案としては、化合物の重量に基づいて計算した全重量(塩が使われる場合を含めて)で用量約0.1〜約100mg/kgが治療効力を有しうる。より高いレベルにおける毒性の懸念は、静脈内用量をより低いレベル、例えば、化合物の重量に基づいて計算した全重量(塩が使われる場合を含めて)で約10〜約20mg/kgに制限しうる。経口投与に、用量約10mg/kg〜約50mg/kgを使うことができる。典型的には、筋肉内注入に用量約0.5mg/kg〜15mg/kgを使うことができる。静脈内または経口投与には、特別な用量は約1μmol/kg〜50μmol/kgであり、さらに特にそれぞれ約22μmol/kgまでおよび33μmol/kgまでである。
【0142】
本開示の特別な実施形態において、1以上の投与(例えば、2、3、4、またはそれ以上の投与)を様々な時間間隔(例えば、毎時間、毎日、毎週、毎月、など)にわたって使い、治療効果を達成することができる。
【0143】
本開示の組成物およびキメラは獣医学および医学応用に用途が見出される。好適な被験体には、鳥類と哺乳動物の両方が含まれ、哺乳動物が好ましい。本明細書で使用する用語「鳥類」には、限定されるものでないが、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、およびキジが含まれる。本明細書で使用する用語「哺乳動物」には、限定されるものでないが、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、などが含まれる。ヒト被験体には、新生児、小児、若年者、および成人が含まれる。他の実施形態において、被験体は骨疾患の動物モデルである。
【0144】
本明細書で使用する「治療上有効な量を投与する」は、本開示の医薬組成物をその意図する治療機能を果たすために組成物を受け入れる被験体に与えるかもしくは施用する方法を含むことを意図する。
【0145】
医薬組成物は、注入(皮下、静脈内など)、経口投与、吸入、経皮施用、または直腸投与によるなどの好都合な方法で投与することができる。投与経路に応じて医薬組成物を材料でコートして、医薬組成物を不活化しうる酵素、酸、および他の自然条件の作用から医薬組成物を保護することができる。医薬組成物はまた、非経口的にまたは腹腔内に投与することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中で、ならびに油中で調製することができる。通常の貯蔵および使用の条件下で、これらの調製物は微生物の成長を防止する保存剤を含有してもよい。
【0146】
注射可能な使用に好適な医薬組成物には、無菌の水溶液(水溶性の場合)もしくは分散液および無菌の注射可能な溶液もしくは分散液を用事調製するための無菌粉末が含まれる。全事例において、組成物は無菌であるべきでありかつ注射に容易な程度の液体であるべきである。担体は例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、好適なそれらの混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であってもよい。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、所要の粒子径の維持によって(分散液の場合)、ならびに界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗細菌薬および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール類、または塩化ナトリウムを含むのが典型的である。注射可能な組成物の吸収の延長は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによって行うことができる。
【0147】
無菌の注射可能な溶液は、所要の量の医薬組成物を適当な溶媒中で上記成分の1つまたは組み合わせと共に組込み、所要により、次いで無菌濾過することにより調製することができる。一般に、分散液は医薬組成物を、基礎分散媒と所要の上記からの他成分を含有する無菌ビヒクル中に組込むことにより調製する。
【0148】
医薬組成物は、例えば、不活性希釈剤もしくは同化しうる食用担体と共に経口投与してもよい。医薬組成物と他成分はまた、ハードもしくはソフトシェルのゼラチンカプセルに封入すること、錠剤に圧縮すること、または直接、個人の食事中に組込むことができる。経口治療用の投与については、医薬組成物を賦形剤と共に組み込み、経口摂取錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエーハなどの剤形で用いてもよい。かかる組成物および調製物は少なくとも1重量%の活性化合物を含有すべきである。組成物および調製物のパーセントは、勿論、変わってもよく、好都合には、ユニットの重量の約5%〜約 80%であってもよい。
【0149】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセルなどはまた、次を含有してもよい:バインダー、例えばトラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸など;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;および甘味剤、例えばスクロース、ラクトースまたはサッカリン、または香料、例えばペパーミント、ウインターグリーンの油、またはサクラ香料。投与ユニット剤形がカプセルであるとき、これは上記タイプに加えて、液担体を含有してもよい。コーティングとしてまたは投与ユニットの物理的形態を別なものに改変するために、様々な他の材料が存在してもよい。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルをシェラック、糖、または両方でコートすることができる。シロップまたはエリキシルは薬剤、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、染料、およびサクラもしくはオレンジ香料などの香料を含有してもよい。勿論、いずれかの投与単位剤形を調製するために用いるいずれの材料も製薬上純粋でありかつ使う量では実質的に無毒/生体適合性でなければならない。さらに、医薬組成物を持続放出調製物および製剤中に組込むことができる。
【0150】
従って、「製薬上許容される担体」は、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含むことを意図する。かかる媒質と薬剤の医薬活性物質向けの使用は当技術分野では公知である。通常の媒質または薬剤が医薬組成物と不適合である場合を除いて、それらの治療組成物および治療方法における使用が考えられる。サプリメントの活性化合物も組成物中に組込むことができる。
【0151】
ある特定の実施形態において、本開示の治療法は組成物の局部的、全身的、または局所的に移植片またはデバイスとして投与する方法を含む。投与する場合、本開示により記載した治療組成物は一般に発熱物質を含まず、生物学的に受け入れられる剤形である。さらに、組成物は望ましくは封入するかまたは粘性の形態で注射して骨、軟骨または組織損傷の部位に送達することができる。局所投与が創傷治癒および組織修復用に好適であろう。本開示のキメラ以外の治療上有用な薬剤も、場合によっては、上記組成物中に含まれてもよく、あるいはまたさらに本明細書に記載の方法においてキメラと同時にまたは逐次的に投与されてもよい。例えば、好ましくは、骨および/または軟骨形成のために、組成物はBMPキメラまたは他の治療の化合物を骨および/または軟骨損傷の部位へ送達できる基質を含み、発生する骨および軟骨の構造を提供し、かつ身体中に最適に再吸収される。例えば、基質はBMPキメラを徐放してもよい。かかる基質は現在、他の移植体医療用に使われる材料で作ることができる。
【0152】
基質材料の選択は生体適合性、生物分解性、機械的特性、化粧外観および界面特性に基づく。対象組成物の特別な応用は適当な製剤を規定しうる。組成物に対する潜在的基質は、生物分解性でかつ化学的に規定された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパラタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であってもよい。他の潜在的材料は生物分解性でかつ生物学的によく規定された、骨または皮膚コラーゲンである。さらなる基質は純粋なタンパク質または細胞外基質成分から成る。他の潜在的基質は非生物分解性でかつ化学的に規定された、焼結ヒドロキシアパラタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、または他のセラミックスである。基質は上記タイプの材料のいずれかの組み合わせから成ってもよく、例えば、ポリ乳酸およびヒドロキシアパラタイトまたはコラーゲンおよびリン酸三カルシウムである。バイオセラミックはアルミン酸-リン酸-カルシウムなどの組成および処理で改変して、細孔サイズ、粒子サイズ、粒子径、粒子形状、および生物分解性を改変することができる。
【0153】
本明細書に開示したある特定の組成物を局所に、皮膚へまたは粘膜へ投与することができる。局所製剤にはさらに、皮膚もしくは角質層貫通エンハンサーとして有効であることが知られる1種以上の様々な薬剤が含まれる。これらの薬剤の例は、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、プロピレングリコール、メチルまたはイソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、およびアゾン(Azone)である。製剤を化粧的に受け入れられるようにするために、追加の薬剤がさらに含んでもよい。これらの薬剤の例は、脂肪、ワックス、オイル、染料、香料、保存剤、安定剤、表面活性剤である。当技術分野で公知の角質溶解薬を含んでもよい。例えば、サリチル酸および硫黄である。
【0154】
投与の容易と用量の均一性のために、非経口組成物を用量ユニット剤形で製剤することはとりわけ有利である。本明細書で使用する「用量ユニット剤形」は、治療する個人用にユニット用量として仕立てた物理的に異なるユニットを意味し;予定した量の医薬組成物を含有する各ユニットは所望の治療効果を所要の医薬品担体と結合して生じるように計算されている。本開示の用量ユニット剤形の仕様は、医薬組成物の特徴および達成すべき特別な治療効果に関係する。
【0155】
主な医薬組成物は、好都合かつ有効な投与のために、有効量で好適な製薬上許容される担体を用いて、受け入れられる用量ユニットで配合される。補充活性成分を含有する組成物の場合、用量は通常の用量と前記成分の投与方式を参照して決定される。
【0156】
キメラを治療薬として用いるための課題の1つはタンパク質を効果的に送達する能力である。本開示のキメラはいくつかの異なる方法により送達することができる。血流において、ほとんどのTGF-βリガンドの半減期は数分間のオーダーである。このように早く分解されるリガンドを補償するために、TGF-βリガンドに関わる現行療法は非常に高用量のタンパク質を使用する。リガンドの安定性または徐放特性の改善を助けるために、リガンドまたは送達系を直接改変するいくつかの手段が利用可能である。
【0157】
(1)タンパク質の直接改変は改変の1つの通常の形態としてPEG化を含む。この方法では、溶解度の増加、タンパク分解に対する耐性、および免疫原性の減少による安定性の増加を期待して、ポリエチレングリコール(PEG)をタンパク質と共有結合する。
【0158】
(2)タンパク質表面上の残基の合理的改変。全体のタンパク質機能を変えることなく、静電気不安定性を改善することにより、分子の全体の安定性を改善することができる。連続静電気モデルを用いて、不安定性に寄与する残基を位置付けし、次いで分析してそれをさらに好都合な残基に変異させることができるかを検討する。
【0159】
(3)リガンドを他のタンパク質またはタンパク質の部分と融合するのはタンパク質安定性および溶解度を増加する他の技法である。抗体定常断片(Fc)は安定性と溶解度を改善するために用いられる通常の融合パートナーである。
【0160】
(4)リポソームをタンパク質送達ビヒクルとして使用することができる。リポソームは、自己集合して球を形成する色々なリン脂質のいくつかの数から構成される。目的のタンパク質を二重層内に封入して、外部環境から保護する。リン脂質組成はリポソームの正確な特性に影響を与え、いくつかの所望の条件下でタンパク質を放出するように仕立てることができる。ポリマー/リポソーム複合系はまた送達系として利用することができる。理想的には、この型の系は各系の利点と組み合わさってタンパク質送達を改善する。
【0161】
(5)リポソームと同様に、ポリマーをタンパク質薬物送達系として用いることができる。ポリマーを用いて基質、通常、材料の高い水含量の故にヒドロゲルと名付けられるものを作る。ゲルを用いる利点は、ゲルが長期間、徐放性しならびにタンパク質のタンパク分解からの保護を可能にすることである。リポソームについてと同様に、ゲルを作るのに用いたポリマーはその特性に影響を与える。ヒドロゲルを作るために用いる材料については2つの一般的な分類:天然および非天然ポリマーが存在する。天然ポリマーを用いてヒドロゲルを作製するのに使われる通常の材料には、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、キトサン、およびデキストランが含まれる。ヒドロゲルを作るのに使われる合成ポリマーには、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ビニルアルコール)、およびポリホスファゼンが含まれる。
【0162】
(6)色々な種類のヒドロゲルを、天然または非天然のポリマーを使わずに作製することができる。生体活性ガラス、またはキセロゲルが考えられ、この材料は目的のタンパク質を吸収することができるシリカおよびリン酸カルシウム層から作製される。例えば、図8を参照されたい。キセロゲルはタンパク質の徐放時間を数週間まで増加する。図1は、骨芽細胞細胞株MC3T3を用いたMTTアッセイによる細胞生存率アッセイの結果を示し、キセロゲル材料は本発明者らが試験した培地において30mg/mlの最高濃度まで無毒性であることを示す。
【0163】
本開示のキメラを単独でまたは製薬上許容される担体と組み合わせて使用し、いくつかの数の疾患および障害を治療するかまたは細胞もしくは組織活性をモジュレートすることができる。
【0164】
本開示のキメラポリペプチドを用いて、TGF-β活性のモジュレーションが治療上の利点を与えるいくつかの数の疾患または障害を治療することができる。例えば、本開示のキメラを骨粗鬆症、軟骨疾患または歯周炎に苦しむ被験体に用いることができる。本キメラを用いて、骨および/または軟骨形成を促進し、骨損失/密度または脱石灰化を抑制し、骨沈着などを促進することができる。あるいは、本キメラを用いて過剰骨密度および成長を抑制することができる。他の実施形態においては、本キメラを内分泌疾患および障害、副甲状腺機能亢進症、クッシング病、吸収不良、腎の管状アシドーシス、または甲状腺中毒症の治療に用いることができる。
【0165】
本開示のキメラを性発達、下垂体ホルモン生産、ならびに骨および軟骨の創製の治療またはモジュレーションに用いることもできる。本キメラはまた、細胞増殖性の疾患および障害、炎症に関連する細胞増殖および分化、アレルギー、自己免疫性疾患、感染性疾患、および腫瘍の治療に用いることもできる。
【0166】
さらなる態様においては、本開示のキメラを神経筋障害、例えば筋ジストロフィーおよび筋肉萎縮、うっ血性閉塞性肺疾患、筋肉消耗症候群、肥満または、例えば、2型糖尿病を含む他の代謝性疾患の治療に用いることができる。
【0167】
本開示のキメラを骨格筋肉の漸進的な弱化および劣化を含む筋肉組織の異常な量、発生または代謝活性により特徴づけられる退行性筋肉疾患に用いることができる。筋肉疾患および障害の例には、限定されるものでないが、筋肉消耗病、悪疫質、摂食障害、AIDS消耗性症候群、筋ジストロフィー、デュシェーヌ筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー筋ジストロフィー(BMD)、筋委縮性ジストロフィー(MMD)(シュタイネルト病としても知られる)、眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD)、エメリー‐ドライフス筋ジストロフィー(EDMD)、肢帯筋ジストロフィー(LGMD)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHまたはFSHD)(ランドジー‐デジェリーヌジストロフィーとしても知られる)、先天性筋ジストロフィー(CMD)、および遠位型筋ジストロフィー(DD)が含まれる。
【0168】
本開示のキメラは、限定されるものでないが、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびハンチントン病(HD)、ならびに他の神経筋病、運動ニューロン疾患、神経筋接合部の疾患、および/または炎症性筋障害を含む神経変性疾患または障害の症候群を予防し、治療しまたは軽減する方法および組成物に用いることができる。
【0169】
被験体は炎症、アレルギー、自己免疫性疾患、感染性疾患、および/または腫瘍を生じる異常な細胞増殖および分化に関連する障害を有してもよい。被験体は心臓障害、例えば、過剰な心筋細胞増殖もしくは成長に関連する障害、または成長または増殖を刺激することが望ましいであろう障害を有してもよい。対象キメラTGF-βスーパーファミリータンパク質は、TGF-βスーパーファミリーのメンバーのアゴニストまたはアンタゴニストによる治療を受け入れる本質的にいずれの障害の治療に対してもデザインすることができる。
【0170】
次の実施例はさらなる説明を意味するものであり、上記開示または添付した請求の範囲を限定するものでない。
【0171】
(実施例)
【実施例1】
【0172】
TGF-βキメラの作製
これらの新規TGF-βリガンドを作製するために、改変した定方向進化手法を利用した。典型的にはこの技法は、相同遺伝子の配列を混合するかまたは無作為な突然変異を挿入することにより103を超える大量の無作為タンパク質配列を作り、次いで所望のリガンド特性をスクリーニングすることに関わる。一式の実験において、効率的にリフォールドすることが知られる骨格リガンド(back bone)と名付けた配列を、標的リガンドを模倣する所望のシグナル伝達特性を含有する第2リガンドと組み合わせた。構造に手引きされる手法を用いて、いくつかのTGF-βリガンド結晶構造を分析して6つの区切られたセクションに分割した。これらのセクションはおおまかに次のリガンド領域:セクション1、N末端およびβストランド1;セクション2、βストランド2;セクション3、プレへリックスループ;セクション4、αへリックス;セクション5、βストランド3;およびセクション6、βストランド4およびC末端を包含する。このプロトコルを用いると、組換えのために選んだTGF-βリガンドの各セットについて64通りの異なるリガンド組み合わせが可能である。2以上の親鎖が異なるサブファミリー(例えばBMP/GDF対TGFβ)に由来する場合、それらのシグナル伝達機構の間の相違はセクション3と4が分離されていれば、捕獲することができない。デザイン原理として広く応用可能であるために、2つの構造セグメント、セクション3と4を両方の親遺伝子の1セクション(セクション3*4と呼ぶ)として処理できるようにすることもデザインの一部である。
【0173】
この戦略を標的リガンドとしてアクチビン-βAおよび骨格リガンドとしてBMP-2を使用してアクチビン/BMP-2キメラを作ることにより実行した。アクチビン-βAは生物学的に非常に興味深いので標的リガンドとして取り上げた。BMP-2を骨格リガンドとして選んだ理由は、これが出発する変性封入体から優れた効率、>10%二量体収率でリフォールドすることが示されていること、およびこれらの二量体はin vitroとin vivo実験の両方で活性を有することが示されているからであった。様々なセクションをデザインするために、BMP-2とアクチビン-βAの配列アラインメントを実施してリガンド間の配列同一性領域を位置付けした(図7)。これらの領域を異なるセクションに対する境界として用いた。これらの配列部分をPCR中のオリゴヌクレオチドのオーバーラップ領域として用いることにより、変化がBMP-2またはアクチビン-βA配列のいずれにも導入されないであろう。次いで配列アラインメントを先に解明したBMP-2とアクチビン-βA構造からのデータと共に用いて最終的に6セクションを決定した(図7a-c)。配列間の同一性の領域による制限によって、セクションは理想から若干シフトしなければならなかった。特に、プレヘリックスループとα-へリックスの大部分を1つのセクションに結合する一方、α-へリックスのβストランド3冒頭までの残部を異なるセクション中に配置した(図7bおよびc)。さらにクローニング戦略を成功させるために3点突然変異を挿入した。セクション3の末端でBMP-2配列はTLVNであるが、アクチビン-βA配列はTVIN(図7a)である。これらの基は保存性であるので、BMP-2由来のロイシンとバリンを対応するアクチビン-βA配列中に導入した。第3の突然変異がセクション5の末端に見出された。ここで、BMP-2配列はLYLDである一方、等価のアクチビン-βA配列はLYYDである(図7a)。この残基の相違は先の2つより保存性が低いので、アクチビン-βA由来のチロシンを対応するBMP-2配列中に挿入した。
【0174】
アクチビン-βAのN末端は2つのさらなるシステインを含有し(図7a)、これが第4のジスルフィド内結合を形成する。リフォールディングプロセスを複雑化するこの追加のジスルフィド結合の可能性を排除するために、これらの残基を含有するセクションをアクチビン-βAキメラデザインのセクション1から排除した。
【0175】
アクチビン/BMP-2キメラについては、ヒトBMP-2およびヒトアクチビン-βAの成熟ドメインを最初に6セクションにそれぞれ分割し、各セクションに対するプライマーをデザインした。BMP-2については、プライマーを次のタンパク質配列についてコードした:セクション1、QAKHKQRKRLKSSCKRHPLYVDFSDVGWND;セクション2、WIVAPPGYHAFYCHGECP;セクション3、FPLADHLNSTNHAIVQTLVN;セクション4、SVNSKIPKACCVP;セクション5、TELSAISMLYYD;セクション6、ENEKVVLKNYQDMVVEGCGCR。アクチビン-βAについては、プライマーを次のタンパク質配列についてコードした:セクション1、RGLECDGKVNICCKKQFFVSFKDIGWNDW;セクション2、WIIAPSGYHANYCEGECP;セクション3、SHIAGTSGSSLSFHSTLVN;セクション4、HYRMRGHSPFANLKSCCVP;セクション5、TKLRPMSMLYYD;セクション6、DGQNIIKKDIQNMIVEECGCS。オーバーラップPCR戦略を用いて様々なセクションを一緒に混合し、全長キメラを作製した。1bキメラを作製するために、2つのオリゴを用いてBMP-2配列QAKHKQRKRLKSSCKRHPLYVDFSDVGWNDIIを標的遺伝子中に挿入した。全構築物に対する外側プライマーを構築してクローニング用の5'-NdeI部位および3'-XhoI部位をpET21a発現ベクターに組み込んだ。所望のタンパク質配列をDNA配列決定により確認した。
【0176】
キメラをそれらが含有するセクションに従って表示した。例えば、1b2b3b4a5a6bでは、bはそのセクションがBMP-2から取られたことおよびaはそのセクションがアクチビン-βA由来であることを表す。キメラはまた、簡略な数字表記、例えば、A/B2-020も与え、機能性アッセイをブラインド方式で行うことができるようにした。表1は様々なキメラのうちのいくつかを記載する。
【表1】

【0177】

【0178】

【0179】

【0180】

【0181】

【0182】

【0183】

【0184】

【0185】

【0186】

【0187】

【0188】

【0189】

【0190】

【0191】

【0192】

【0193】
タンパク質発現と精製
アクチビン/BMP-2、1bキメラ、およびBMP-2maキメラを典型的な大腸菌発現系を用いて発現し、全部で32キメラを封入体画分中に見出した。発現された封入体を単離し、精製し、そしてリフォールドした。リフォールドしたリガンドをHi-Trapヘパリンカラム(GE Healthcare)と逆相クロマトグラフィ(GraceVydac)を用いて精製した。リガンドを凍結乾燥し、全ての細胞に基づくアッセイ用に4mM HCl、pH 1に、または全ての生物物理アッセイ用に10mM酢酸ナトリウム、pH 4に再懸濁した。アクチビン-βAを、安定してトランスフェクトしたCHO細胞株に発現して当技術分野で公知の技法を用いて精製した。先に記載したプロトコルに基づいてNogginを発現して精製した。
【0194】
アクチビン/BMP-2キメラ封入体を還元SDS-PAGEゲル上の単一バンドとして観察し、ほぼ13kDaの予想サイズにて見出した(図1a)。リフォールドを標準化するために、全てのアクチビン/BMP-2キメラを100mL体積で50mg/Lの濃度にてリフォールドした。この濃度は先に成功したBMP-2、BMP-3、およびGDF-5リフォールディングに基づいて選んだ。この体積は、どの2%以上の二量体収率も生物物理活性アッセイ用に十分なタンパク質を作製しうるように選んだが、多数のサンプルで管理するのにはまだ小さい。リフォールディングの後に、アクチビン/BMP-2サンプルを、ヘパリンカラムから溶出後の純粋な二量体、すなわち所望の産物の形成について分析した(図1bおよびc)。驚くべきことに、32件のアクチビン/BMP-2サンプルは全ていくらかの二量体の存在を示し、そこで、キメラをそのリフォールディング効率(二量体収率)に基づいてランク付けし、低い(<1%、-)から野生型(>10%、+++)まで4つのカテゴリーにグループ分けした(表2)。「成功した」キメラとして分類されるためには、リガンドは5%以上のリフォールディング効率を有する必要があった。この効率は、50mg/L濃度でのリフォールディングにて標準1Lから2.5mg/Lの二量体のタンパク質を生じうるので、大量に必要とされる実験、例えば、x線結晶学にとって好適であると考えられる。リフォールディング効率を計算する場合、アクチビン/BMP-2キメラ32のうち24(75%)がこの判定基準に合格した(表2、追補、++または+++)。
【表2】

【0195】
成功したリガンドとみなされるには、アクチビン/BMP-2キメラはリフォールド可能なだけでなく、シグナル伝達特性を提示する必要がある。これらの特性を試験するために、全てのアクチビン/BMP-2キメラを、リフォールディング効率にかかわらず、最初にアクチビン活性アッセイを実施した。アクチビン様シグナル伝達特性は、Smad-2/3活性化に感受性の全細胞ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて試験した(下記参照)。アクチビン-βAはシグナルを通してSmad-2/3経路を活性化することが知られているので、もしいずれかのアクチビン/BMP-2キメラがアクチビン-βA機能を模倣するのであれば、類似の方式でシグナルを送るに違いない。32キメラのうち、ただ1つ、1b2a3a4a5a6a(AB2-008)はアクチビン様の方式でシグナルを送る。AB2-008はルシフェラーゼレポーターを、アクチビン-βAと同様に、用量に応じた方式で活性化する。AB2-008キメラの効力を測定すると、EC50は64.5pMと計算された。この値は28.8pMのEC50をもつアクチビン-βAより2倍低い。ルシフェラーゼ結果がSmad-2活性化に対する直接応答であったことを確認するために、ホスホ-Smad-2をAB2-008の存在のもとで試験した。アクチビン-βAと同様に、AB2-008の添加はホスホ-Smad-2レベルの増加を促進する。予想されるように、AB2-008、ならびにアクチビン-βAはホスホ-Smad-1産生を刺激せず、特定のシグナル伝達経路の活性化だけを示す。興味深いことに、AB2-008は>10%の二量体収率でBMP-2maリフォールディング効率を示す(表2)。
【0196】
AB2-008が完全なアクチビン-βA機能を持つかを完全に試験するために、さらなる生物物理アッセイを実施した。Criptoは、多くのTGF-βリガンドの公知の共受容体であり、広範囲の応答を誘発する。例えば、Criptoの存在は適当なノーダルシグナル伝達に必要であるが、これはTGF-β1およびアクチビンシグナル伝達のアンタゴニストである。それ故に、Smad-2/3ルシフェラーゼアッセイを用いて、アクチビン-βAとAB2-008のシグナル伝達をCriptoの存在または非存在のもとでモニターした。Criptoの存在のもとで、アクチビン-βAシグナル伝達はアクチビン-βA単独と比較してほぼ43%減少する。AB2-008キメラは、Criptoをこのアッセイに加えると、ほぼ38%のシグナル伝達の類似の減少を示す。この結果は、AB2-008キメラがアクチビンシグナル伝達経路を活性化できることならびに他の公知のアクチビン結合パートナーと相互作用する能力を有することによって、完全にアクチビン模倣物として機能することを確証する。
【0197】
AB2-008の結果に基づいて、2つのさらなるアクチビン/BMP-2キメラを作製してキメラの効力を野生型アクチビン-βAレベルに増加しうるかを調べた。第1のキメラ、呼称1b2a3a4a5a6aL66V/V67I(AB2-009)はバリンおよびイソ-ロイシンをキメラ中に導入した。これらの残基はアクチビン-βAの野生型配列に見出されるものであって元来、実験設計の束縛によって対応するBMP-2残基に変異させたものである(図7a)。第2のキメラ、呼称1b(1a_II)2a3a4a5a6a(AB2-010)は、1bセクションの第2の半分をアクチビン由来の対応する配列で置き換えたものである(図7a)。これはこのキメラ構築物中にBMP-2由来の成分として、第1の構造的に保存されたシステイン、Leu-66、およびVal-67に先行する13N末端残基を残した。さらなるアクチビン残基のAB2-008中への導入はその機能的特徴(すなわち効力)を改善しうると予想される。AB2-009およびAB2-010を他のアクチビン/BMP-2キメラについて先に記載した通り、発現しかつリフォールドした。予想と異なり、これらの新しいキメラは両方ともAB2-008と比較するとリフォールディング効率が低下した。AB2-009とAB2-010は>10%の二量体収率から、AB2-009とAB2-010それぞれについてほぼ4%とほぼ3%への低下が見られた(表2)。この結果は、AB2-010については11セクションが突然変異されたので驚くことはなかったが、AB2-009についての劇的減少は意外であった。L66VとV67I両方の突然変異は非常に保存的な変化であって、変異残基の側鎖間に1個の炭素の違いがあるだけである。
【0198】
リフォールディング後に、新しいキメラを先のAB2-008と同じSmad-2/3ルシフェラーゼアッセイで処理した。AB2-009はレポーターを用量に依存して活性化し、AB2-008と比較しうる79.4pMのEC50の活性を示した。しかし、AB2-010もまたレポーターを活性化したものの、活性の有意な減少を示し、活性は198.6pMのEC50であり、AB2-008よりほぼ3倍弱くかつアクチビン-βAよりほぼ7倍弱かった。AB2-008の場合のように、AB2-009とAB2-0010の両方はSmad-2リン酸化を示した。AB2-009とAB2-010はルシフェラーゼアッセイにおいてAB2-008由来のシグナル伝達特性の増強を示さなかったので、Cripto結合アッセイを行わなかった。
【0199】
Smad-2/3ルシフェラーゼ、Smad-2リン酸化およびCriptoレポーターアッセイはアクチビン経路を介するAB2-008、AB2-009およびAB2-010シグナルを示し、アクチビン-βAに非常に類似して機能する一方、これらのアッセイはin vitro環境だけで機能を示した。それ故に、これらのアクチビン/BMP-2キメラがアクチビン-βAに類似した生物学的応答を惹起しうることを証明するために、もっと生理学的に関係する実験が必要である。適当なアクチビン機能を試験するのに用いる1つの古典的方法は、卵胞刺激ホルモン(FSH)放出アッセイである。ラット前側下垂体細胞はin vivoおよびin vitro実験の両方でアクチビンの存在に応答してFSHを放出することは公知である。それ故に、ラット前側下垂体細胞を増加量のアクチビン-βAまたはアクチビン/BMP-2キメラに曝してFSHをラジオイムノアッセイにより測定した。3つのアクチビン/BMP-2 キメラは全て、アクチビン-βAと同じ様に、用量に応じたFSH放出の増加を示した。キメラにより刺激されたFSH放出の量は存在するインヒビンの量の増加とともに減少した。in vitroアッセイ結果と組み合わせて、FSH放出アッセイはAB2-008、AB2-009、およびAB2-010が完全なアクチビン-βA機能の特徴を持つことを確証した。
【0200】
キメラをさらなるシグナル伝達特性についてもチェックした。BMP-2はある特定の骨治療用の治療薬として既に使われ、改変されたBMP-2機能をもつキメラは有利であることを示しうる。いずれかのアクチビン/BMP-2キメラがユニークなシグナル伝達特性を提示するかを試験するために、アクチビン-βA機能性アッセイと同様の実験を実施した。ここで、Smad-2/3活性化に感受性のレポーターよりむしろSmad-1/5活性化(公知のBMP-2シグナル伝達経路)に感受性の全細胞ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いた。用量に依存する方式でルシフェラーゼ応答をモニタリングすると、多数のアクチビン/BMP-2 キメラが興味深い特色を示した。これらのアクチビン/BMP-2キメラを同定して3グループ:アップレギュレーションされたものもしくは「スーパー」BMP-2活性をもつもの;Nogginに対する不感性をもつもの、BMP-2アンタゴニスト;または「スーパー」BMP-2活性とNogginに対する不感性の両方をもつものに分類した。アクチビン/BMP-2キメラ1b2a3b4b5a6a(AB2-004)、1b2b3b4b5a6a(AB2-011)、1b2b3b4b5b6a(AB2-012)、および1b2a3b4b5b6a(AB2-015)は全て、増強されたBMP-2活性がありNoggin不感性をもつカテゴリーに入る。Smad-1ルシフェラーゼアッセイにおいて、これらのリガンドはレポーターを、10倍少ないタンパク質を用いてBMP-2wtと同じレベルに活性化する(すなわち、活性が10倍高い)。アップレギュレーションされたBMP-2活性のカテゴリーにグループ分けされたのは1b2b3b4b5a6b(AB2-013)である。このキメラはAB2-004,-011,-012,-015と同じ10倍増加の活性を示すが、そのシグナルはNogginを加えるとBMP-2wtと同様にバックグランドレベルに低下する。キメラ、1b2a3b4b5a6b (AB2-014)は、正常なBMP-2シグナル伝達をするが不感性であるリガンドの最後のカテゴリーに入る。AB2-014はルシフェラーゼレポーターをBMP-2wtと同じレベルに活性化するがそのシグナルはNoggin添加によってブロックできない。AB2-008も試験してSmad-2経路を活性化するだけでなくSmad-1経路を活性化するかを調べた。AB2-008は1μg/mlのレベルまでSmad-1活性化を示さなかった。この結果は、AB2-008は特異的なアクチビン模倣体であって、非特異的なシグナル伝達特性を示すものでないことを確証する。
【0201】
効率的にリフォールドしかつアクチビン様シグナル伝達特性を持つAB2-008が成功したので、1bセクションを他の現行の非リフォールド性TGF-βリガンドのリフォールディングを改善する一般的ツールとして検証した。上記の通り、1bセクションは30a.a.長さであり、BMP-2のN末端ならびにフィンガー1の第1βストランドを形成する残基を含む(図7a)。BMP-2/BMPRIa/ActRIIの三次構造の分析に基づくと、セクション1bに見出される残基の大部分はI型またはII型受容体との接触を形成しない。実際、I型受容体と接触を作製する少数の残基、Val-26、Gly-27およびTrp-28のうちでトリプトファンは全TGF-βスーパーファミリーを通して不変異体である一方、Gly-27は骨格相互作用に参加し、かつバリンはTGF-βスーパーファミリーを通してこの位置において主に非極性アミノ酸である。これに基づくと、この1b領域は、リガンド-受容体アフィニティおよび特異性に対する寄与に決定的な意味をもたないものの、化学リフォールディングプロセス中の適当なジスルフィド結合形成を非常に助ける可能性がある。それ故に、1bセクションをさらなるTGF-βリガンドBMP-7、BMP-9、およびGDF-8中にクローニングした。アクチビン/BMP-2キメラとして、1bキメラを大腸菌発現系において発現しそして封入体を高純度で単離した。
【0202】
C2C12細胞におけるSmad-1ルシフェラーゼアッセイ
Smad1依存ルシフェラーゼ アッセイを当技術分野で公知の技法を用いて実施した。簡単に説明すると、C2C12筋芽細胞を、L-グルタミンと抗生物質を補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)+5%FBSで培養した。ルシフェラーゼレポーターアッセイについては、細胞をトリプシンで処理し、PBSで2回洗浄し、そしてDMEM+0.1%FBSを用いて48ウエルプレート中にプレーティングした。24時間後、細胞をSmad結合部位(Id1-Luc)、Smad1発現構築物、およびCAGGS-LacZプラスミドを含有する-1147Id1-ルシフェラーゼ構築物で、Fugene6(Roche)を用いて製造業者取扱説明書に従ってトランスフェクトし、そしてトランスフェクションの24時間後、加えた増加量のBMP-2maまたは様々なアクチビン/BMP-2キメラで細胞を刺激した。ルシフェラーゼ活性をリガンドによる刺激の24時間後に測定し、その値をトランスフェクション効率についてβ-ガラクトシダーゼ活性を用いて規準化した。ルシフェラーゼレポーターの活性は、Smad結合ドメインを欠く-927Id1-ルシフェラーゼ(Id1-Luc mut)を用いることにより得た対照値と比較して誘導倍数で表現した。リガンドのSmad1シグナル伝達を減衰するNogginの能力を試験するために、ルシフェラーゼアッセイを上記のように、アッセイに含まれる1セットのNogginの用量で繰り返した。
【0203】
HEK293細胞におけるSmad-2ルシフェラーゼアッセイ
HEK293T 細胞を、ポリリシンでコートした25ウエルプレート中に150,000細胞/ウエルの密度でまいた。24時間後、細胞を一晩、A3 Lux(25ng)とβ-ガラクトシダーゼ(25ng)レポータープラスミド、転写因子FAST2(50ng)、および空のpCDNA3ベクター(400ng)の混合物で、製造業者の推奨に従ってPerfectin(登録商標)トランスフェクション試薬(GenLantis)を用いてトランスフェクトした。次いで細胞を、増加用量のアクチビン-βAまたはアクチビン/BMP-2キメラで16〜24時間処理した。細胞を氷冷した溶解バッファー(25mMグリシルグリシン中の1% Triton X-100、4nM EGTA、1mMジチオトレイトールを含有する15mM MgSO4)に収穫し、標準方法を用いてルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼ活性を試験した。公知のTGF-β共受容体と結合するアクチビン/BMP-2キメラの能力を評価するために、HEK293T細胞を増加用量のアクチビン-βAまたはアクチビン/BMP-2キメラで、トランスフェクトしたCriptoの存在または非存在のもとで16〜24時間処理した(マウスCripto構築物はMalcolm Whitman (Department of Cell Biology, Harvard Medical School, Boston, MA)からの好意の贈物である)。
【0204】
ラット内部下垂体細胞からの卵胞刺激ホルモン(FSH)放出
本アッセイを当技術分野で従来記載された通り実施した。簡略に説明すると、数匹の動物からの雌性Sprague-Dawleyラット内部下垂体由来の新しく単離した細胞を組み合わせて、96ウエルプレート中に、50,000細胞/ウエルの密度で、2%ウシ胎児血清および適当な増殖因子を補充したβPJ培地にまいた。24時間後に細胞を増加用量のアクチビン-βAまたはアクチビン/BMP-2キメラs(0〜40nM)で処理した。72時間後、培地を収穫し、分泌したFSHの濃度をラジオイムノアッセイにより測定した。
【0205】
表面プラズモン共鳴(BIAcore)アフィニティ研究
リガンドのBMPRIa、ActRII、およびActRIIbとのアフィニティをBiacore 3000(GE Healthcare)を用いてモニターし、そのデータをBIA評価ソフトウエアver.4.1(GE Healthcare)を用いて分析した。一次アミンカップリングを用いて、受容体ECDをCM5チップ上に固定した。受容体を独立してフローセル2〜4上に10分間、流量5μL/分でかつ10mM酢酸Na中の濃度20μM、pH4.0にて固定した。フローセル1はブランクで残し、ネガティブ対照としてタンパク質を固定しなかった。実験は流量50μL/分、20mM Tris-HCl、pH 7.9、250 mM NaCl、0.36% 3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート (CHAPS)、および0.005% Tween-20で実施した。最小5レベルの濃度に加えて0濃度をサンプル毎に動力学分析用に試験し、そのデータを物質移動によるグローバル1:1 Langmuir結合を用いることによってフィットさせた。
【実施例2】
【0206】
BMPヘテロ二量体リガンドの合成
BMP2-BMPRIa-ActRIIbの結晶構造は、各受容体分子が細胞外結合せずかつ4つの異なるリガンド-受容体界面を有することを示した。これは、ヘテロ二量体が2つの異なるI型界面と2つの異なるII型界面を有しうることを示唆した。BMPリガンドの機能性と他の態様を特徴づけるために、組換えヘテロ二量体を合成した。タンパク質の純度はドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により立証した。図1aはBMP2/BMP6ヘテロ二量体の移動を、SDS-PAGE上の非還元下の単一バンド(レーン1)としておよび還元条件下の2つの異なるバンド(lane3)として図解する。2つの異なるバンドはBMP2/BMP6ヘテロ二量体の2つの異なる単量体種(それぞれ約13および15kDa)に関連する。この確証はさらに、表面増強レーザ脱離/イオン化飛行時間質量分析(SELDI-TOF-MS)のデータにより支持される。BMP2とBMP6のホモ二量体およびBMP2/BMP6ヘテロ二量体の3つの別々の精製サンプルをSELDI-TOF-MSで試験した。図1bは、3つのサンプルはそれらの予想される質量に対応し、他の汚染種が存在しないことを実証する。これらのアッセイは純粋なBMP2/BMP6ヘテロ二量体が作られたことを示す。
【0207】
BMPヘテロ二量体活性in vitro
BMP2/BMP6ヘテロ二量体とI型およびII型TGF-β受容体ECDとの間の相互作用を試験するために、表面プラズモン共鳴を利用してin vitroアフィニティを測定した。TGF-β受容体をチップに固定し、TGF-βリガンドを表面上に流しながら、相互作用をモニターした。表3は、試験したリガンドとI型およびII型受容体ECDに対するアフィニティの変化を総括する。BMP2/BMP6ヘテロ二量体の場合、そのBMP2およびBMP6単量体サブユニットのそれぞれと大きいアフィニティを有する。示されたように、BMP2/BMP6ヘテロ二量体はI型受容体に対してBMP2ホモ二量体と類似したアフィニティを有する。しかし、BMP2サブユニットのII型受容体ECDとのアフィニティの代わりに、BMP2/BMP6ヘテロ二量体はII型受容体に対してBMP6と類似したアフィニティを有する。これは、II型受容体ECDに対する高いアフィニティにはBMP6単量体サブユニットが寄与する一方、I型受容体ECDに対する高いアフィニティにはBMP2単量体サブユニットが寄与することを示す。
【表3】

【0208】
BIAcore 実験からのリガンドアフィニティデータ。BIAcoreデータは物質移動を伴う動力学モデル1:1 Langmuir結合を用いるグローバルフィットに基づいて解離速度koffおよび結合速度konとして示した。結合定数KDはkoff/konとして計算した。受容体をチップ表面に固定し、リガンドを表面上に流した。
【0209】
BMP2/BMP6ヘテロ二量体の受容体ECDアフィニティはシグナル伝達活性と相関があるかを試験するために、ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いた。C2C12マウス筋芽細胞株を用いて、BMPリガンドのSmad1依存レポーター遺伝子を活性化する能力について定量的に試験した。BMP2、BMP6およびBMP2/BMP6は全て、用量に依存するレポーター活性化を示した。BMP2/BMP6ヘテロ二量体リガンドは、BMP2またはBMP6ホモ二量体対応物よりさらに大きいレポーター遺伝子の活性化を示した(図2)。22倍および400倍まで少ないBMP2/BMP6がレポーター遺伝子をそれぞれBMP2およびBMP6ホモ二量体と比較して等価のレベルへ活性化するために必要であった。BMP2/BMP6ヘテロ二量体はI型およびII型受容体ECDと高いアフィニティを有することがわかっているので、この結果は受容体とのアフィニティの増加は細胞内シグナル伝達活性のレベルと相関があることを示唆する。
【0210】
BMP2/BMP6ヘテロ二量体の活性をさらに特徴づけるために、ニワトリ肢芽間葉細胞を微量培養に使うex vivoアッセイを用いた。一次培養した肢芽間葉細胞はBMPに依存する方式で軟骨形成が起こり、この系は生物学的プロセスにおけるホモおよびヘテロ二量体の特徴づけを可能にする。図3は、その形成がBMPにより刺激されることが知られる軟骨形成小結節の染色の顕微鏡画像を示す。軟骨形成の程度は、軟骨形成小結節と結合した染料を測定することにより定量化される。色々なBMPリガンドによる肢芽間葉細胞の軟骨形成の用量に依存する活性化はレポーターアッセイと同様である。このアッセイのユニークな態様は、BMP6はBMP2よりわずかに高い活性を有する一方、Smad-1依存レポーター活性化はBMP2のそれより有意に低いことである。これはおそらくII型受容体が開始する別のシグナル伝達、例えばp38経路に関わる。この系において軟骨形成を活性化するBMP2/BMP6ヘテロ二量体のより大きい活性が観察された。BMP2/BMP6は10倍濃度にて、活性化軟骨形成をBMP2およびBMP6ホモ二量体の類似したレベルまで活性化した。ヘテロ二量体リガンドはまた、同じ濃度でより高い最大応答を誘発する。このアッセイはより高いリガンド-受容体アフィニティとより高いシグナル伝達活性との関連を可能にするだけでなく、この観察を生物学的活性の増加まで広げる。
【0211】
リガンド-受容体-ECDアフィニティ、in vitroおよびex vivoアッセイのデータは、機能性の不斉BMP2/BMP6二量体が作製されたことを実証した。BMP2/BMP6ヘテロ二量体の不斉性はリガンドの特定のTGF-β受容体部位の操作を可能にする。図5は、BMP2/BMP6ヘテロ二量体の特定の突然変異誘発とSmad1依存レポーター遺伝子を活性化する色々な変異体の能力の定量化を上記と同じ系を用いて提示する(全てのファクターは1nM濃度である)。定量化値は、突然変異誘発のないBMP2/BMP6野生型ヘテロ二量体と比較した%倍の活性化として提示した(レポーター遺伝子の100%活性化に規準化した)。2つのI型受容体界面の1つだけに点突然変異があり、2つのII型受容体界面は無傷であるBMP2/BMP6ヘテロ二量体リガンド(図5、サンプルdおよびe)は、BMP2/BMP6野生型ヘテロ二量体と比較して20〜80%であるが、レポーター遺伝子を活性化できる。対照的に、点突然変異を2つのII型受容体界面の1つだけにもち、2つのI型界面が無傷であるBMP2/BMP6ヘテロ二量体(図5、サンプルf)は、レポーター遺伝子を活性化できない。2つのI型受容体とII型受容体界面のそれぞれの1つを破壊する点突然変異をもつBMP2/BMP6ヘテロ二量体リガンド(図5、サンプルgおよびh)はレポーター遺伝子を活性化できない。これらの結果は、2つのII部位がシグナル伝達に必要である一方、ただ1つのI型部位がシグナル伝達にとって十分であったことを実証する。1つのI型部位突然変異を有する2つのリガンド(図5のdおよびe)間のシグナル伝達活性の相違は、Smad1活性がI型部位とI型受容体のアフィニティと相関があることを説明する(表3)。
【0212】
非シグナル伝達BMP2/BMP6ヘテロ二量体変異体についてのさらなる研究において、リガンドの受容体ECDと結合する能力に着手した。1つだけの活性II型受容体部位をもつリガンドはレポーター遺伝子を活性化する能力を持たないにもかかわらず(図5、サンプルf)、このリガンドは未変性PAGE条件のもとでII型受容体ECDとなお結合することができる。図6はII型受容体ECD飽和アッセイを説明し、ここでは受容体ECをリガンドの非存在および存在の両方のもとで未変性PAGE上で試験した。2つのII型受容体ECD 5μgでかつ無因子のレーンを、2つのII型結合部位を含有するリガンドのレーンと比較すると、バンド強度は9.0倍低下し、受容体ECDがリガンド-受容体複合体に組込まれたことを示す。3μg受容体ECDだけの試験の強度と比較すると、これはリガンド-受容体複合体に組込まれた受容体ECDの約半分を表す。次のレーンにおいて、1つだけ活性II型受容体部位を持つリガンドは2つの活性II型受容体部位を持つリガンドと比較して3.3倍だけバンド強度の増加を示す。そして最後のレーンにおいて、活性II型受容体部位の無いリガンドは1つの活性II型受容体部位を持つリガンドと比較して1.8倍だけバンド強度を増加する。予想通り、1つの活性II型受容体部位を持つBMP2/BMP6リガンドは2つの活性II型受容体部位をもつリガンドと活性II型受容体部位の無いリガンドとの間に入る。変異したBMP2/BMP6ヘテロ二量体上の単一の無傷のII型受容体界面はなお、1つのII型TGF-β受容体ECDと結合することができて、細胞外シグナル伝達複合体が会合しうることを示す。変異したリガンドがシグナルを伝達できないのは、細胞表面におけるシグナル伝達複合体会合からさらなる下流にその原因がある。このアッセイはリガンド-受容体複合体形成の独立した結合モデルに対する証拠を提供し、この場合、単一受容体ECDは、リガンドの他の3つの受容体部位のアフィニティまたは機能性とは関係なく、リガンド上の4つの受容体部位の1つと結合することができる。
【0213】
組換えBMPヘテロ二量体の分析から得た結果は、精製された均一なヘテロ二量体サンプルを合成できることを証明する(図1)。データはさらに、リフォールドされかつ拡張可能なレベルで精製された封入体として、組換えBMPヘテロ二量体を大腸菌に発現できることを示す。
【0214】
表面プラズモン共鳴アフィニティ研究から得たデータ(表3)は、BMPヘテロ二量体がin vivoおよびin vitroでBMPホモ二量体より効力が大きいことを示す。ホモ二量体対応物と比較して、BMP2/BMP6ヘテロ二量体は、その共有結合された単量体サブユニットのそれぞれより高いアフィニティの受容体部位を有する。BMP2/BMP6ヘテロ二量体はBMP2ホモ二量体と比較しうる高いアフィニティI型受容体部位およびBMP6ホモ二量体と比較しうる高いアフィニティII型受容体部位を有する。これらのホモ二量体リガンド二次受容体部位のそれぞれは、それらの一次受容体部位と比較しそれぞれの受容体に対して低いアフィニティを有する。このヘテロ二量体リガンド-受容体アフィニティデータは、初めて、それらのホモ二量体対応物と比較して高効力のTGF-βヘテロ二量体リガンドの明確な証拠を提供するものである。I型およびII型受容体ECD両方に対する高いアフィニティによって、TGF-βシグナル伝達複合体は容易に会合しかつ細胞表面として会合したまま残ることができる。BMPヘテロ二量体のアフィニティの増加は直接、全細胞レポーターアッセイにおけるシグナル伝達の増加と相関がある(図 2)。さらに間葉細胞アッセイからのex vivoデータ(図3および4)は、そのホモ二量体対応物より低い濃度でかつより高い最大値へ応答を誘発できるBMP2/BMP6ヘテロ二量体の能力を実証する(図3および4)。このデータは、リガンド-受容体アフィニティの増加、シグナル伝達活性、および生物学的活性の間の相関を直接、支持するものである。
【0215】
BMPヘテロ二量体の高いシグナル伝達活性は全細胞レポーター系(図2)で容易に達成される一方、TGF-βシグナル伝達複合体の要件と活性化の機構を明らかにすることは遥かに困難であることを証明した。丁度1つのI型受容体部位と2つのII型受容体部位を持つBMPヘテロ二量体構築物は、レポーター遺伝子でも活性化できたが、完全に機能性のBMPヘテロ二量体と比較すると程度は低かった(図5)。しかし、2つのI型受容体部位とただ1つのII型受容体部位を持つBMPヘテロ二量体構築物はレポーター遺伝子を活性化できなかった(図5)。リガンド上の所要の活性I型とII型受容体部位の数の間のこの不一致は容易に説明することができない。未変性のPAGE条件下の複合体形成を実証するデータ(図6)は、II型受容体ECDが変異ヘテロ二量体とただ1つの活性II型受容体界面で結合できることを説明する。これは、問題が、細胞表面におけるリガンドと受容体ECD間のシグナル伝達複合体形成でないことを示す。ただ1つのII型受容体との複合体はただ1つのI型受容体との複合体のように容易に形成するが、それでもただ1つのII型受容体を持つ複合体は下流のシグナル伝達を開始しない。
【0216】
このデータは、II型受容体キナーゼはそれ自体よりもむしろそのパートナーII型受容体をリン酸化し、そしてかかる「クロス-リン酸化」は自己リン酸化の分子的性質であることを示唆する。あるいは、2つのII型受容体間の細胞内キナーゼドメインの物理的会合が「自己リン酸化」にとって必要であるが、ECDはお互いに結合することはない。シグナル伝達カスケードの最初のステップは、1つのII型受容体が存在しなければ起こることはなく、従ってシグナルは伝達されない。ただ1つの存在するI型受容体と活性シグナル伝達複合体を形成する、いくつかの変異体BMPヘテロ二量体リガンドの能力(図5)は、シグナル伝達複合体中の2つのII型受容体キナーゼが二量化し、自己リン酸化し、次いで単一のI型受容体キナーゼをトランスリン酸化することができるので起こる。I型受容体キナーゼの二量体は必要でなく、その理由は、キナーゼドメインがII型受容体キナーゼの自己リン酸化された二量体により簡単にトランスリン酸化されるからである。
【0217】
本開示は、細胞表面におけるシグナル伝達複合体形成に対する真に独立するリガンド-受容体ECD結合モデルを示す。上述したように、ただ1つの活性II型受容体部位を持つ変異BMP2/BMP6ヘテロ二量体リガンドはなお単一II型受容体ECDと結合することができる(図6)。この確証は、リガンドの4つの個々の受容体部位のアフィニティまたは機能に関係なく、シグナル伝達複合体の形成能力の主張に対する根拠を提供する。もしリガンド上のそれぞれの受容体部位がこの独立する方式で結合できれば、TGF-βシグナル伝達複合体形成に対して他の層の複雑さが加わる。リガンドをコードする約40の遺伝子およびヘテロ二量体の故に可能である多数の機能性リガンドによって、複雑なシグナル伝達機構が存在するに違いない。12の受容体を介してシグナルを伝達するだけの能力を用いてこのリガンドが駆動するシグナル伝達機構は、個々の受容体部位の色々な受容体に対するリガンドのアフィニティに頼るに違いない。これは、リガンドの4つの受容体部位のそれぞれが独立して作用して受容体をシグナル伝達複合体中に補充するときにだけ可能である。前記12の受容体を介して色々な生物学的機能を誘発するために、4つの受容体部位のそれぞれのリガンドに対する独立したかつ個々のアフィニティが生物学的応答のファインチューニングに重要な因子である。この視点において、特異的リガンド(ホモ二量体またはヘテロ二量体)の役割は、異なるアフィニティをもつI型およびII型受容体の異なるセットを構築し、順に、シグナル伝達の色々なレベルおよびTGF−bシグナル伝達の複雑性を生み出すことである。
【0218】
in vitroおよびex vivoで高活性をもつ新規BMP2/BMP6構築物の拡張可能な作製は広く影響を与える。本開示の分子はTGF-βスーパーファミリーリガンド-受容体シグナル伝達複合体の構築物を決定するための、ならびに、リガンド-受容体アフィニティ、シグナル伝達活性、および生物学的活性の間の直接相関を実証するための基礎としての役割を果たす。リガンドと受容体の間のアフィニティの相違は重大であり、不斉ヘテロ二量体リガンドシグナル伝達がTGF-β分子の生物学的活性にさらなる複雑性を加える。BMPヘテロ二量体の研究は、各リガンド-受容体相互作用がTGF-βスーパーファミリーの活性にどのように寄与するかを明らかにする。
【0219】
ヘテロ二量体の作製
ヒトBMP2(残基1-110)とヒトBMP6(残基1-132)の成熟ドメインを大腸菌に封入体として発現させた。野生型リガンド配列への変異は、先に公開されたリガンド-受容体界面を破壊する知見(Keller et al., 2004; Kirsch et al., 2000)に基づいた。発現された封入体を単離し、精製し、そしてリフォールドした。リフォールドしたBMP2およびBMP6ホモ二量体、ならびにBMP2/BMP6ヘテロ二量体を、HiTrapヘパリンカラム(GE Healthcare)と逆相クロマトグラフィ(GraceVydac)を用いて精製した。リガンドを凍結乾燥し、10mM酢酸ナトリウムpH 4.0に再懸濁した。ヒトBMPRIa(残基1-129)およびマウスActRIIb(残基1-98)のECDを大腸菌にチオレドキシン融合タンパク質として発現させた。マウスActRII-ECD(残基1-102)を発現させ、P. pastoris発現系から精製した。
【0220】
表面プラズモン共鳴(BIAcore)アフィニティ研究
リガンドのBMPRIa、ActRII、およびACTRIIbとのアフィニティを、Biacore 3000(GE Healthcare)を用いてモニターし、そのデータを、BIAevaluation ソフトウエア ver.4.1(GE Healthcare)を用いて分析した。一級アミンカップリングを用いて、受容体ECDをCM5チップ上に固定した。受容体を独立してフローセル2〜4上に10分間、5μL/分の流量および10mM酢酸ナトリウム中の濃度20μM、pH4.0にて固定した。フローセル1はネガティブ対照としてタンパク質を固定せずブランクのままとした。実験は20mM Tris-HClで50μL/分の流量、pH 7.9、250mM NaCl、0.36% 3-[(3-コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)、および0.005% Tween-20にて実施した。1サンプル当たり少なくとも5レベルの濃度に加えて0濃度を動力学分析用に試験し、そのデータを物質移動によるグローバル1:1 Langmuir結合を用いてフィットさせた。
【0221】
ルシフェラーゼレポーターアッセイ
Smad1依存ルシフェラーゼアッセイを実施した。簡略に説明すると、C2C12細胞を、L-グルタミンと抗生物質を補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)+5%FBSで培養した。ルシフェラーゼレポーターアッセイについては、細胞をトリプシンで処理し、PBSで2回洗浄し、そしてDMEM+0.1%FBSを用いて48ウエルプレート中にプレーティングした。24時間後、細胞をSmad結合部位(Id1-Luc)(Nakashima ら、2001)、Smad1発現構築物、およびCAGGS-LacZプラスミドを含有する-1147Id1-ルシフェラーゼ構築物で、Fugene6(Roche)を用いて製造業者取扱説明書に従ってトランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性をリガンドによる刺激の24時間後に測定し、その値をトランスフェクション効率についてβ-ガラクトシダーゼ活性を用いて規準化した。ルシフェラーゼレポーターの活性は、Smad結合ドメインを欠く-927Id1-ルシフェラーゼ(Id1-Luc mut)を用いることにより得た対照値と比較して誘導倍数で表現した。
【0222】
ニワトリ肢芽微量アッセイ
ニワトリ胚(Hamburger-Hamiltonステージ23-24(Hamburger and Hamilton, 1951))を、Ca2+およびMg2+を含有するハンクス液に採集し、肢芽の遠位1/3部分を解体した。外胚葉板をトリプシン処理(Ca2+およびMg2+を含むハンクス液中で0.5%)、氷上で30分間により取除いて、次いで間葉組織を回収し、そしてCa2+およびMg2+を含まないハンクス液中で37℃にて15分間インキュベートした。間葉細胞を、1%FBSを含有するOptiMEM培地(Invitrogen)にピペッティングして単細胞に分離した。培養を96-ウエルプレート中に4x105細胞/ウエルでまいた。1時間後、各リガンドを含有する培地を加えた。リガンドを含む新鮮な培地を毎日変え、軟骨小結節を可視化するAlcian 青色 染色により細胞の軟骨形成を分析し、記載のように軟骨形成を定量した(Wada et al., 2003)。
【0223】
未変性PAGEリガンド-受容体ECD複合体の形成
5μgの精製ActRII-ECD単独および10μgのBMP2/BMP6を伴うもの、単一の活性II型受容体界面を伴うBMP2/BMP6、または活性II型受容体界面無しのBMP2を、50mM Tris-HCl、pH 7.9、700mM NaCl、および1.8%CHAPS中の未変性PAGEゲル上に供給した。クーマシーブリリアントブルー(Bio-Rad)で染色したゲルを、「積分密度(Integrated Density)」関数を用いてNIH ImageJ ソフトウエア (Abramoff et al., 2004)により分析した。
【実施例3】
【0224】
(1)AB2-008を用いる幹細胞培地の開発(Valera et al., 2010)
無フィーダー条件でヒト胚幹細胞(hESC)を培養するには多能を維持する複合体処方培地が必要である。残念ながら、培地に要求される増殖因子は哺乳動物細胞で産生するのが困難であるため、市販培地は非常に高価である。本発明者らはmTeSR1製剤を用いて新しい培地(CIVA培地またはmCIVA)を誘導し、ヒト胚幹(hES)細胞を培養し、誘導した多能幹(iPS)細胞を誘導しかつ培養した(図2参照)。CIVA培地はmTeSR1中のTGFβ1をAB2-008、アクチビン-Aと類似の活性を持つ新しいキメラタンパク質に置き換えた。マトリゲルコーティング上のこの培地で培養したhES細胞は、核型異常なしに20継代以上、多能性の形態学を維持する。これらの細胞はまた、多能マーカーTRA-1-60およびSSEA-4に対してポジティブであり、BMP-2処置に応答して分化する。この培地で培養したiPS細胞はまた、多能性の形態学的特徴および多能マーカーの発現を保持する。この新しいCIVA培地はまた、ヒト包皮繊維芽細胞からiPS細胞を誘導するのに好適である。CIVA培地はhES細胞に対する他の市販培地の所望の特性を全て有するが、現在入手しうる培地より相当安いコストで処方することができる。図2 H9 hES細胞株を用いるmCIVA処方の開発。
【0225】
図9はmCIVA中で色々な濃度のAB2-008を用いてヒトFGF2の非存在または存在のもとで培養したH9hES細胞を示す。A:3継代後の分化したH9細胞(1ng/mL、AB2-008;FGF2なし)。B:3継代後の分化したH9細胞(10ng/mL、AB2-008;FGF2なし)。
【0226】
C:11継代後の分化したH9細胞(100ng/mL、AB2-008;FGF2なし)。D:12継代後の分化したH9細胞(1ng/mL、AB2-008;100ng/mL、FGF2)。E:13継代後の分化したH9細胞(10ng/mL、AB2-008;100ng/mL、FGF2)。F:9継代後の分化したH9細胞(100ng/mL、AB2-008;100ng/mL、FGF2)。分化した細胞を矢印で示した。
【0227】
(2)AB2-004、AB2-011、AB2-015の石灰化データ(Yoon et al., 2010)
Von Kossa染色を用いて、Ca沈着による細胞外石灰化についてプレ骨芽細胞細胞株(MC3T3-E1)の発生をモニターした。AB2-004とAB2-011は10倍以上の強度の染色の劇的な増加を示す。AB2-015は最大の増加を示すが、7日後である(ここに示してない)。
【0228】
対照群(A)はかなりの石灰化を示すが、対照リガンド(BMP2)は図10の列Bに示すようにCaフラックスと沈着の穏やかな増加を示す。
【0229】
(3)AB2-004による成体ラット再生(共同で)
成人ラットのP3指を切断した。アガロースゲルビーズに浸漬したBMP2またはAB2-004を手術の部位に加えた。骨再成長をモニターした。BMP2で処理した組織は骨回復を示さなかった。AB2-004で処理した指は全回復した。
【0230】
(4)AB2-008、AB2-009、AB2-010による、Smad2に基づくシグナル伝達(ルシフェラーゼ)アッセイ(Allendorph et al., 2010)
AB2-008、AB2-009、およびAB2-010はSmad2経路をアクチビン-βAとほとんど区別のつかない程度に活性化する。キメラに対する効力はアクチビン-βAと比較してわずかに低下し、5〜20倍である(図11参照)。
【0231】
(5)AB2-008、AB2-009、およびAB2-010によるホスホ-Smad-2アッセイ
アクチビン-βAは特異的にSmad-2をリン酸化しかつSmad-1をリン酸化しない。これは、特異的にSmad-1をリン酸化しかつSmad-2をリン酸化しないBMP-2と対照的である。AB2-008、AB2-009、およびAB2-010はアクチビン-βAと同じSmad-2リン酸化パターンを示す。これは、これらの3リガンド全てがアクチビン-βAと類似の方式でアクチビン-βA シグナル伝達 経路を刺激することの確証である(図11参照)。
【0232】
(6)AB2-008、AB2-009、およびAB2-010による卵胞刺激ホルモン放出
アクチビン-βAをラット内部下垂体細胞に加えると、用量に依存する卵胞刺激ホルモン(FSH)放出を誘発する。アクチビン-βA が誘導するFSHの放出はアンタゴニストのインヒビンを加えることによってブロックすることができる。アクチビン-βAと同様に、AB2-008、AB2-009、および AB2-010はFSHの放出を誘発し、この刺激はインヒビンの存在で減少する。
【0233】
(7)AB2-008によるCriptoとの共-受容体結合
Criptoの添加はアクチビン-βAとAB2-008両方のシグナル伝達を比較しうるレベルだけ低下する。これらのデータは、AB2-008がCripto、アクチビン-βA共受容体と結合する能力を有することを示し、AB2-008とアクチビン-βAの機能的類似性の確証となる。
【0234】
(8)AB2-008とアクチビン-βA受容体のアフィニティ
AB2-008は、ActRIIと高いアフィニティを有しかつBMPRIaとアフィニティの無いアクチビン-βAのプロファイルと類似した受容体結合プロファイルを示す。さらに、この2つのリガンドはほぼ同じ結合アフィニティを有する。AB2-008はアクチビン-βAよりほぼ1.7弱い。
【0235】
表4 アクチビン-βA対AB2-008の受容体アフィニティ
【表4】

【0236】
(9)Smad-1経路による、AB2-011、AB2-012、およびAB2-015のシグナル伝達活性
AB2-004、AB2-011、AB2-012、およびAB2-015は、BMP-2より強力にSmad-1経路を活性化する。この活性化はBMP-2より3〜8倍高い(図14)。
【0237】
(10)AB2-004、AB2-011、AB2-012、およびAB2-015の受容体結合アフィニティ
AB2-004、AB2-011、AB2-012、およびAB2-015はActRIIに対してアクチビン-βAと類似の結合アフィニティを示す。これはBMP-2が同じ受容体に対して有する結合よりほぼ100倍高い。ABキメラに対するI型受容体結合は、BMP-2レベル(AB2-004)近くからアクチビン-βAレベルまでの範囲である(AB2-015についてはBMPRIaと無結合)。
【0238】
表5 AB2-004、AB2-011、AB2-012、および AB2-015の受容体結合アフィニティ
【表5】

【0239】
(11)AB2-004、AB2-011、AB2-012、および AB2-015のNoggin非感受性
Nogginはリガンドと直接複合体化することによりシグナル伝達活性を抑制し、自身のシグナル伝達用受容体と結合できなくする。Nogginの存在のもとでバックグランドレベル近くまでブロックされるBMP-2とは対照的に、AB2-004、AB2-011、およびAB2-015の高いシグナル伝達はNogginによって阻害されない。AB2-012は部分的にNoggin 阻害に非感受性であり、Nogginの添加によってシグナル伝達はほぼ50%減少する(図15)。この特性は、これらの細胞の骨再生を含むin vivoでのシグナル伝達能力を特に強力にする。
【0240】
(12)産生効率
表6 大腸菌封入体からのリフォールディングの産生効率
【表6】

【0241】
(13)BMP2/BMP6ヘテロ二量体の受容体結合(Isaacs et al., 2010)
BMP2/BMP6ヘテロ二量体はBMP2のI型受容体BMPRIaに対する結合特性とBMP6のII型受容体ActRIIbに対する結合特性とを有する。ヘテロ二量体リガンドはそれぞれの受容体に対して高いアフィニティを維持するので、BMP2/BMP6ヘテロ二量体はそのホモ二量体対応物、BMP2およびBMP6ホモ二量体よりシグナル伝達活性が強い(表7)。
【0242】
表7 表面プラズモン共鳴により測定した受容体結合アフィニティ
【表7】

【0243】
(14)BMP2/BMP6ヘテロ二量体のSMAD-1シグナル伝達活性
BMP2/BMP6ヘテロ二量体はBMP2またはBMP6単独のいずれよりもはるかに活性が高い。BMP2/BMP6はBMP2またはBMP6単独より少なくとも1オーダー高いEC50を有する。さらに、BMP2/BMP6によって到着される最大応答は、BMP2およびBMP6単独によって到着される最大シグナルの組み合わせより高い。
【0244】
(15)BMP2/BMP6ヘテロ二量体に対するニワトリ肢芽微量アッセイ
BMP2/BMP6は軟骨形成をBMP2またはBMP6ホモ二量体のいずれよりも強力に誘発する。ニワトリ肢芽間葉細胞の微量培養軟骨形成アッセイにおいて、3日後にBMP2/BMP6が両方ともBMP2またはBMP6のいずれよりも低い濃度においてかつより高いレベルへ軟骨形成を誘発することを本発明者らは観察した。
【実施例4】
【0245】
デザイナーリガンドを作製するためのサブドメイン(ビルディングブロック)の説明
キメラを創製するための第1ステップは、各セグメントに対する境界を何処に作るかを決定することである。キメラライブラリーをアクチビン-βAとBMP-2を2つの配列源として用いて構築した。アクチビン/BMP-2(AB)キメラを作るセクションに対するカットオフ領域(接合部)をデザインするために、タンパク質配列アラインメントと一緒に構造を手引きとした手法を用いた。最初に、アクチビン-βA(Harrington et al., 2006)とBMP-2(Allendorph et al., 2006)の3次元結晶構造を構造的に検査した。この分析から、リガンドをおおまかに6つの異なるセクションに分割した(図7、セグメント1〜6を参照されたい)。正確なセグメント接合部は、最終的に、接合部の接続結果としてどちらかのタンパク質配列のどの配列変化も最小化する2つのリガンドのタンパク質配列アラインメントに従って決定した。さらに、セグメント領域を受容体結合部位から離れた構造領域に位置するように選んだ。
【0246】
接合部の詳細な説明:セグメント1と2の間(接合部1):セグメント1とセグメント2の境界に焦点を合わせ、本発明者らは、BMP-2とアクチビン-βAの間に高度に保存された10残基領域を見出した。実際、10残基のうちの8残基は同一でありかつ他の2つは非常に保存的な相違がある。この領域はフィンガー1のチップ領域に位置しかつリガンドに依存して、どちらかの受容体型と限られた接触を作るかまたは作ると予想される。BMP-2/BMPRIa/ActRIIの三次結晶構造(Allendorph et al., 2006)に基づくと、ただVal-26、Gly-27、およびTrp-28(BMP-2番号による)がI型受容体との接触を作っている。これらの3残基のうち、Val-26だけはリガンド間で異なるが、アクチビン-βAの対応する残基はIle-23であるので、これは非常に保存的な変化である。この領域の残基は非常に類似しかつ受容体結合に関わらないので、これはセグメント1および2の良い境界点を作る。
【0247】
セグメント2と3の間(接合部2):セグメント2と3の間の境界領域に移ると、我々の境界カットオフにとって他の良い領域を見つけることができる。ここで、アクチビン-βAおよびBMP-2の間に同一である4残基配列が存在する。リガンドを適当にフォールドすると、この領域は二量体の中心に位置し、両方のシステインがシスチンノットに関与する。これは好都合である、何故なら、残基はリガンドの表面からここに埋められ、どのリガンド-受容体相互作用にも関与しないからである。
【0248】
セグメント4と5の間(接合部4):セグメント 2/3境界に類似し、セグメント 4/5 境界はカットオフにとって優れた位置に存在する。ここで、本発明者らは、5残基領域の配列同一性を見出しかつ、セグメント2/3境界のように、この領域はリガンド二量体の中心に埋められていることを見出した。2つのシステイン残基はシスチンノットならびに単量体間ジスルフィド結合の両方に関与する。再び、この位置は、この領域の残基が受容体結合相互作用に関わるのを阻止する。
【0249】
セグメント5と6の間(接合部5):BMP-2とアクチビン-βAキメラのデザインを拡張するために、他の境界領域を選んでTGF-βスーパーファミリーの全メンバーを用いてRASCH構築物を促進した。構造構築物を共有すると共に、TGF-βスーパーファミリーリガンドは、タンパク質配列中に高度に保存されたある特定の領域を有すると思われる。興味深いことに、これらの領域はBMP-2とアクチビン-βAのキメラを作るために選んだ境界領域と一致する。例えば、4と5の境界領域において、ほとんどのリガンドは境界ドメインを規定する4残基のうちの3残基を共有する。この高い類似度は、受容体結合部位から単離されたこれらの領域に加えて、RASCHが新しい機能を持つデザイナーリガンドのライブラリーを創製する普遍的な戦略であることを示す。
【0250】
セグメント3と4の間(接合部3):セグメント3と4の間の境界は、リガンド受容体構築機構が実質的に異なる色々なサブファミリー間の構造的可変性の影響を受ける。この関連で、セグメント3と4を共通の親ストランドから誘導された2つのセグメントである1つのセグメント片として処理し、これらの構造完全性を保存することができる。
【0251】
全TGF-βスーパーファミリーリガンドのなかの構造的類似性は、ある特定の機能、例えば分子認識を果たすことが公知の配列の関係セグメントを交換(またはスワップ)することによりキメラタンパク質をデザインするための合理的な基礎を形成する。抗体鎖、またはさらに具体的には抗体断片(Fab)のタンパク質工学は最も良い例であって、この場合、基礎的構造スカフォールドは6つの可変ループ(2つの鎖のそれぞれから3つ)がエピトープ結合特異性に役割に関わる軽鎖と重鎖配列のコア構造上に構築される。類似の流れで、TGF-βスーパーファミリーリガンドはその構造フレームワークをバターフライ様構造として共有する。抗体の可変ループ領域と機能的に等価である配列セグメントの一部分を、認識特異性を移動するために1つのリガンドから他のリガンドへ「移植」してもよい。本発明者らのデザイン原理は上記の「配列移植による機能性移動」という点が特徴となっている。新しいキメラライブラリーが、各接合部により規定した各サブドメインの構造的可能性に基づいて創製される。本開示のキメラを作製するために用いるTGF-βファミリーメンバーの様々なドメイン間の接合部は、キメラライブラリーの有用なビルディングブロックを提供する。この理由付けにより、接合部1、2、4、および5は全TGF-βスーパーファミリーメンバーに広く応用できるようによく規定されるが、接合部3は広く応用することはできない。接合部3のキメラデザインにおける応用は標的配列に依存し、その場合、キメラライブラリーのデザインにおいて、サブドメインセグメント3と4を代わりに1つのセグメントとして取扱うことができる。本手法はフォールド可能なタンパク質産物を産生する機会を最大化し、次いでその機能性の特徴づけを行いうる。
【0252】
さらなる配列の表:
【表8】

【0253】

【0254】

【0255】

【0256】

【0257】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのペプチドセグメント、第1のTGF-βファミリータンパク質と少なくとも80%の同一性を有する配列を含むポリペプチドの第1のセグメントと第2のTGF-βファミリータンパク質と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む第2のセグメント、またはそれらの組み合わせを含む組換えポリペプチドであって、前記セグメントは機能しうる形で連結されかつ第1もしくは第2の親TGF-βファミリータンパク質の少なくとも1つの活性、または新しいin vivoシグナル伝達および細胞特性の活性を有する前記組換えポリペプチド。
【請求項2】
ポリペプチドは1-2-3-4-5-6の全体配列順序を有する5または6つのドメインを含み、各ドメインは配列順序で少なくとも1つの他のTGF-βファミリーポリペプチド由来の少なくとも1つの他のドメインで組換えられていてもよい、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
ポリペプチドが5つのドメインを含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
キメラポリペプチドで少なくとも1つの他のドメインがシャッフルされる場合、ドメイン3だけがシャッフルされる、請求項2または3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
ドメインが表Aに記載されている、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項6】
ポリペプチドがBMP-2由来のN末端セグメントを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
少なくとも2つのポリペプチドセグメントがN〜C末端に機能しうる形で連結された6つのペプチドセグメントを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
第1と第2のTGF-βファミリータンパク質のそれぞれが構造類似性を有し、各セグメントがセグメントの構造モチーフに対応する、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
第1のTGF-βファミリータンパク質はBMP-2でありかつ第2のTGF-βファミリータンパク質はアクチビンである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項10】
第1のTGF-βファミリータンパク質はBMP-2でありかつ第2のTGF-βファミリータンパク質はアクチビンまたは他のファミリーメンバーである、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項11】
BMP-2タンパク質のセグメントはセグメント1、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約1〜約x1("1b");セグメント2、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x1〜約x2("2b”);セグメント3、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x2〜約x3("3b");セグメント4、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x3〜約x4(“4b”);セグメント5、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x4〜約x5("5b");およびセグメント6、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x5〜約x6("6b")を含み;かつここで:x1は配列番号2の残基25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35であり;x2は配列番号2の残基45、46、47、または48であり;x3は配列番号2の残基65、66、67、または68であり;x4は配列番号2の残基76、77、78、79、80、81または82であり;x5は配列番号2の残基88、89、90、91、92、93、または94であり;そしてx6は配列番号2の残基112、113または114であって、BMP-2のC末端に対応し;そしてアクチビンタンパク質のセグメントはセグメント1、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約1〜約x1("1a");セグメント2、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x1〜約x2("2a”);セグメント3、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x2〜約x3("3a");セグメント4、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x3〜約x4(“4a”);セグメント5、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x4〜約x5("5a");およびセグメント6、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x5〜約x6("6a")を含み;かつここで:x1は配列番号5の残基22、23、24、25、26、27、28、29、30、31または32であり;x2は配列番号5の残基42、43、44、または45であり;x3は配列番号5の残基61、62、63、または64であり;x4は配列番号5の残基78、79、80、81、82、83または84であり;x5は配列番号5の残基90、91、92、93、94、95または96であり;そしてx6は配列番号5の残基114、115、または116であり;そしてポリペプチドはセグメントをセグメント1-セグメント2-セグメント3-セグメント4-セグメント5-セグメント6の順で有する、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
ポリペプチドは1b2b3b4b5b6a;1b2b3b4b5a6a;1b2b3b4b5a6b;1b2b3a4a5a6a;1b2b3a4a5b6a;1b2a3a4a5a6a;1b2a3a4a5a6aL66V/V67I;1b(1a_II)2a3a4a5a6a;1b2a3a4a5a6b;1b2a3a4a5b6b;1b2a3a4a5b6a;1b2a3b4b5b6a;1b2a3b4b5a6a;および1b2a3b4b5a6bからなる群より選択されるセグメントの配列を含む、請求項10に記載のポリペプチド。
【請求項13】
ポリペプチドは配列番号7、9、11、13、15、17、19、1、23、25、2、29、31、33、35、37、39または41に記載した配列と80%、90%、95%、98%または99%の同一性を含み、ここで該ポリペプチドはSMADまたはDAXX経路をモジュレートする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項14】
ポリペプチドは配列番号7、9、11、13、15、17、19、1、23、25、2、29、31、33、35、37、39および41からなる群より選択される配列を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
第2の異なるTGF-βファミリータンパク質のセグメントと機能しうる形で連結された第1のTGF-βファミリータンパク質のセグメントを含んで、SMADまたはDAXXをモジュレートする活性を有するキメラポリペプチドを与えるキメラTGF-βファミリーポリペプチド。
【請求項16】
第1のTGF-βファミリータンパク質はBMP-2でありかつ第2のTGF-βファミリータンパク質はアクチビンである、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
BMP-2タンパク質のセグメントはセグメント1、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約1〜約x1("1b");セグメント2、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x1〜約x2("2b”);セグメント3、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x2〜約x3("3b");セグメント4、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x3〜約x4(“4b”);セグメント5、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x4〜約x5("5b");およびセグメント6、すなわち配列番号2のアミノ酸残基約x5〜約x6("6b")を含み;かつここで:x1は配列番号2の残基25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35であり;x2は配列番号2の残基45、46、47、または48であり;x3は配列番号2の残基65、66、67、または68であり;x4は配列番号2の残基76、77、78、79、80、81または82であり;x5は配列番号2の残基88、89、90、91、92、93、または94であり;そしてx6は配列番号2の残基112、113または114であって、BMP-2のC末端に対応し;そしてアクチビンタンパク質のセグメントはセグメント1、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約1〜約x1("1a");セグメント2、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x1〜約x2("2a”);セグメント3、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x2〜約x3("3a");セグメント4、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x3〜約x4(“4a”);セグメント5、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x4〜約x5("5a");およびセグメント6、すなわち配列番号5のアミノ酸残基約x5〜約x6("6a")を含み;かつここで:x1は配列番号5の残基22、23、24、25、26、27、28、29、30、31または32であり;x2は配列番号5の残基42、43、44、または45であり;x3は配列番号5の残基61、62、63、または64であり;x4は配列番号5の残基78、79、80、81、82、83または84であり;x5は配列番号5の残基90、91、92、93、94、95または96であり;そしてx6は配列番号5の残基114、115、または116であり;そしてポリペプチドはセグメント1-セグメント2-セグメント3-セグメント4-セグメント5-セグメント6の順で有する、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項18】
ポリペプチドは1b2b3b4b5b6a;1b2b3b4b5a6a;1b2b3b4b5a6b;1b2b3a4a5a6a;1b2b3a4a5b6a;1b2a3a4a5a6a;1b2a3a4a5a6aL66V/V67I;1b(1a_II)2a3a4a5a6a;1b2a3a4a5a6b;1b2a3a4a5b6b;1b2a3a4a5b6a;1b2a3b4b5b6a;1b2a3b4b5a6a;および1b2a3b4b5a6bからなる群より選択される配列を含む、請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項19】
請求項1または請求項15のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項20】
機能しうる形で連結された複数のTGF-βファミリーポリヌクレオチド由来の配列を含んで、SMADまたはDAXXをモジュレートする活性を有する機能性キメラポリペプチドをコードする、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項20に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項22】
6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、24、26、28、および40からなる群より選択される配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項21または22に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項24】
請求項23に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項25】
請求項21または請求項22に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項26】
キメラTGF-βポリペプチドを作製する方法であって、
(a)少なくとも2つのTGF-βファミリーメンバータンパク質の配列をアライメントするステップ;
(b)少なくとも2つのファミリーメンバータンパク質の構造的に関係するドメインを同定するステップ;
(c)構造的に関係するドメインのどちらかまたは両方にある領域であって、少なくとも5つの連続アミノ酸にわたって少なくとも80%、95%、98%、99%または100%の配列同一性を含む該領域を含む、少なくとも2つのTGF-βタンパク質のクロスオーバーの点を同定するステップ;
(d)第1のTGF-βファミリーメンバータンパク質由来の少なくとも1つのドメインと
第2のTGF-βファミリーメンバータンパク質由来の少なくとも1つのドメインを含み、そのドメインがクロスオーバーの点で連結されているキメラTGF-βポリペプチドを作製するステップ;および
(e)キメラTGF-βポリペプチドをI型およびII型リガンド結合能力について試験するステップを含むものである前記方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法から作製したキメラポリペプチド。
【請求項28】
SmadまたはDAXX経路に関連する細胞増殖または活性をモジュレートする方法であって、細胞を請求項1、15または27のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドと接触させるステップを含む前記方法。
【請求項29】
骨、軟骨、神経学的組織、心組織、骨格筋肉または内分泌組織に関連する疾患または障害を治療する方法であって、組織を請求項1、15または27のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドと接触させるステップを含む前記方法。
【請求項30】
細胞増殖性疾患または障害を治療する方法であって、細胞増殖性疾患または障害を有する細胞を請求項1、15または27のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドと接触させるステップを含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−518420(P2012−518420A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551315(P2011−551315)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025260
【国際公開番号】WO2010/099219
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(596086505)
【氏名又は名称原語表記】The Salk Institute For Biological Studies
【住所又は居所原語表記】10010 North Torrey Pines Road,La Jolla,California 92037,United States of America
【出願人】(511204496)
【Fターム(参考)】