説明

TLR遺伝子発現の選択的調節

本発明は、少なくとも1つのTLR遺伝子発現を選択的に調節する化合物を認定する方法を提供する。概して、本方法は、複数のTLR遺伝子のそれぞれの発現を検出するための分析法を提供することと;被験化合物を使用して各分析法を実施することと;該被験化合物が、少なくとも1つの第2のTLR遺伝子の発現を調節するのとは異なる程度に、第1のTLR遺伝子の発現を調節するのであれば、該被験化合物を、少なくとも1つのTLR遺伝子発現を選択的に調節する化合物として認定することを含む。ある実施形態では、本発明は、上述の方法で認定された化合物、その塩類、およびこのような化合物、それらの薬学的に許容し得る形態、それらの誘導体、またはそれらのプロドラッグを含む、医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
免疫系のある主要な側面を刺激することにより作用するほかに、他のある側面を抑制することにより作用する新しい薬剤化合物を発見するために、近年多大な努力が払われ、目覚しい成功を収めた(たとえば、米国特許第6,039,969号明細書および米国特許第6,200,592号明細書参照)。免疫応答調節因子(IRM)として本明細書で言及されているこれらの化合物は、トル様受容体として知られる免疫系機構を介して、選択されたサイトカイン生合成を誘導するように作用すると思われる。それらは、多種多様な疾患および状態を治療するのに有用な可能性がある。たとえば、ある種のIRMは、ウイルス性疾患(たとえば、ヒト乳頭腫ウイルス、肝炎、ヘルペス)、腫瘍形成(たとえば、基底細胞癌、扁平上皮癌、光線性角化症、黒色腫)、およびTH2介在性疾患(たとえば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、等々)の治療に有用な可能性があり、また、ワクチンアジュバントとしても有用である。
【0002】
IRM化合物の多くは、小さい有機分子イミダゾキノリンアミン誘導体である(たとえば、米国特許第4,689,338号明細書参照)が、多数の他の化合物類も知られており(たとえば、米国特許第5,446,153号明細書、米国特許第6,194,425号明細書、および米国特許第6,110,929号明細書参照)、またそれ以上のものが今もまだ発見されている。他のIRMは、CpGを含む、オリゴヌクレオチドのような、より大きい分子量を有する(たとえば、米国特許第6,1994,388号明細書参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
IRMの治療可能性を考慮すれば、また既に行われた重要な研究にもかかわらず、それらの使用および治療効果を拡大する、かなりの継続的必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある種の化合物は、ある特定のTLR遺伝子の発現を選択的に調節できることが分かっている。したがって、本発明の一態様は、少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を選択的に調節する化合物を認定する方法を提供する。概して、本方法は、複数のTLR遺伝子のそれぞれの発現を検出するための分析法を提供することと;被験化合物を使用して各分析法を実施することと;該被験化合物が、少なくとも1つの第2のTLR遺伝子の発現を調節するのとは異なる程度に、第1のTLR遺伝子の発現を調節するのであれば、該被験化合物を少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を選択的に調節する化合物として認定すること;を含む。
【0005】
別の態様において、本発明はまた、標的TLR遺伝子発現プロフィールを有する標的化合物を認定する方法も提供する。概して、本方法は、標的TLR遺伝子発現プロフィールを選択することと;被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールを決定することと;該被験化合物の該TLR遺伝子発現プロフィールが該標的TLR遺伝子発現プロフィールを含むのであれば、該被験化合物を標的化合物として認定すること;を含む。
【0006】
ある実施形態では、本発明は、上述の方法で認定された化合物およびその薬学的に許容し得る形態、ならびにこのような化合物、このような化合物の薬学的に許容し得る形態、それらの誘導体、またはそれらのプロドラッグを含む、医薬組成物を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、免疫系の選択された細胞集団におけるTLR遺伝子の発現を調節する方法を提供する。概して、本方法は、第1の免疫系細胞集団および第2の免疫系細胞集団を認定することと;第2の細胞集団における同TLR遺伝子の発現を調節するのとは異なる程度に、第1の細胞集団のTLR遺伝子の発現を調節する化合物を選択することと;免疫系の細胞を、該細胞集団の少なくとも1つにおける少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を調節するのに有効な量の該選択された化合物と接触させること;を含む。
【0008】
また別の態様において、本発明は、対象における複数のTLR遺伝子の少なくとも1つの発現を選択的に調節することにより治療可能な状態を治療する方法を提供する。概して、本方法は、該状態の治療に有効な標的TLR発現プロフィールを認定することと;標的プロフィールに一致するTLR発現プロフィールを有する化合物を選択することと;該状態を治療するのに有効な該化合物の量を該対象に投与することと;を含む。
【0009】
以下の詳細な説明、実施例、特許請求の範囲および添付の図面を参照すれば、本発明の様々な他の特徴および利点は、容易に明白になるはずである。本明細書を通してあちこちに、例のリストを介して指針が提供されている。どの場合にも、列挙されたリストは、代表グループの役割を果たすに過ぎず、排他的リストとして解釈すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
免疫応答調節因子(「IRM」)は、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を含むがその限りではない、強力な免疫調節活性を有する化合物を含む。ある種のIRMは、サイトカイン類の産生および分泌を調節する。たとえば、ある種のIRM化合物は、たとえば、I型インターフェロン、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、MIP−1、および/またはMCP−1等のサイトカイン類の産生および分泌を誘導する。別の例として、ある種のIRM化合物は、ある種のTH2サイトカイン類、たとえばIL−4およびIL−5の、産生および分泌を阻害することができる。さらに、幾つかのIRM化合物は、IL−1およびTNFを抑制すると言われる(米国特許第6,518,265号明細書)。
【0011】
ある種のIRMは、たとえば、米国特許第4,689,338号明細書;米国特許第4,929,624号明細書;米国特許第5,266,575号明細書;米国特許第5,268,376号明細書;米国特許第5,346,905号明細書;米国特許第5,352,784号明細書;米国特許第5,389,640号明細書;米国特許第5,446,153号明細書;米国特許第5,482,936号明細書;米国特許第5,756,747号明細書;米国特許第6,110,929号明細書;米国特許第6,194,425号明細書;米国特許第6,331,539号明細書;米国特許第6,376,669号明細書;米国特許第6,451,810号明細書;米国特許第6,525,064号明細書;米国特許第6,541,485号明細書;米国特許第6,545,016号明細書;米国特許第6,545,017号明細書;米国特許第6,573,273号明細書;米国特許第6,656,938号明細書;米国特許第6,660,735号明細書;米国特許第6,660,747号明細書;米国特許第6,664,260号明細書;米国特許第6,664,264号明細書;米国特許第6,664,265号明細書;米国特許第6,667,312号明細書;米国特許第6,670,372号明細書;米国特許第6,677,347号明細書;米国特許第6,677,348号明細書;米国特許第6,677,349号明細書;米国特許第6,683,088号明細書;米国特許第6,756,382号明細書;米国特許出願公開第2004/0091491号明細書;米国特許出願公開第2004/0132766号明細書;および米国特許出願公開第2004/0147543号明細書;2004年3月5日出願の米国特許出願第10/794099号;および2004年8月27日出願の国際特許出願第PCT/US04/28021号に開示されているもの等の、小さい有機分子(タンパク質、ペプチド類等々の大きい生体分子とは対照的に、たとえば、約1000ダルトン未満、好ましくは約500ダルトン未満の分子量)である。
【0012】
小分子IRMのさらなる例は、ある種のプリン誘導体(米国特許第6,376,501号明細書、および米国特許第6,028,076号明細書に記載のもの等)、ある種のイミダゾキノリンアミド誘導体(米国特許第6,069,149号明細書に記載のもの等)、ある種のイミダゾピリジン誘導体(米国特許第6,518,265号明細書に記載のもの等)、ある種のベンズイミダゾール誘導体(米国特許第6,387,938号明細書に記載のもの等)、ある種の、窒素含有複素5員環に縮合した4−アミノピリミジン誘導体(米国特許第6,376,501号明細書;米国特許第6,028,076号明細書および米国特許第6,329,381号明細書;ならびに国際公開第WO 02/08905号パンフレットに記載のアデニン誘導体等)、およびある種の3−β−D−リボフラノシルチアゾロ[4,5−d]ピリミジン誘導体(米国特許出願公開第2003/0199461号明細書に記載のもの等)を包含する。
【0013】
他のIRMは、オリゴヌクレオチド配列等の大きい生体分子を含む。幾つかのIRMオリゴヌクレオチド配列は、シトシン−グアニンジヌクレオチド(CpG)を含み、たとえば、米国特許第6,194,388号明細書;米国特許第6,207,646号明細書;米国特許第6,239,116号明細書;米国特許第6,339,068号明細書;および米国特許第6,406,705号に記載されている。一部のCpG含有オリゴヌクレオチドは、たとえば、米国特許第6,426,334号明細書および米国特許第6,476,000号明細書に記載のもの等の、合成の免疫調節性構造モチーフを含むことができる。他のIRMヌクレオチド配列は、CpG配列を欠き、たとえば、国際特許出願公開WO 00/75304号パンフレットに記載されている。
【0014】
他のIRMは、リン酸アミノアルキルグルコサミニド(AGP)等の生体分子を含み、また、たとえば、米国特許第6,113,918号明細書;米国特許第6,303,347号明細書;米国特許第6,525,028号明細書;および米国特許第6,649,172号明細書に記載されている。
【0015】
ある種のIRMは、トル様受容体(TLR)遺伝子の発現を選択的に調節することができることが分かっている。場合により、TLR遺伝子発現の選択的調節は、一TLR遺伝子の発現の調節を含むが、別のTLR遺伝子の発現を有意に調節しない。他の場合には、TLR遺伝子発現の選択的調節は、別のTLR遺伝子が調節を受ける方向および/または程度と異なる方向または程度への、一TLR遺伝子の発現の調節を含む。
【0016】
したがって、本発明は、TLR遺伝子の発現を選択的に調節する化合物を認定する方法、このようにして認定された化合物、およびこのような化合物を含む医薬組成物;ある特定のTLR遺伝子発現プロフィールを有する化合物を認定する方法、このようにして認定された化合物、およびこのような化合物を含む医薬組成物;選択された免疫細胞集団におけるTLR遺伝子の発現を調節する方法;および少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を選択的に調節する化合物を対象に投与することにより、対象を治療する方法を提供する。
【0017】
特に指示がない限り、化合物への言及は、異性体(たとえば、ジアステレオマーまたは鏡像異性体)、塩、溶媒和物、多形体等々を含む、あらゆる薬学的に許容し得る形態の化合物を包含することができる。特に、化合物が光学活性である場合、該化合物への言及は、該化合物の鏡像異性体のそれぞれならびに該鏡像異性体のラセミ混合物を包含することができる。
【0018】
本発明の目的のために、下記の用語は下記の意味を有するものとする。
【0019】
「作動薬」は、受容体(たとえば、TLR)と結合して細胞応答を生じさせることができる化合物を指す。作動薬は、該受容体に直接結合するリガンドであってもよい。あるいは、作動薬は、たとえば、(a)該受容体に直接結合する別の分子と複合体を形成することによって、または(b)別の方法で、結果として別の化合物を修飾し、その結果、もう1つの化合物が該受容体に直接結合することによって、受容体に間接的に結合してもよい。作動薬は、ある特定のTLRの作動薬(たとえば、TLR7作動薬)と呼ばれることもある。
【0020】
「発現する」およびその変形は、発現される構造遺伝子からのmRNAの転写を指す。
【0021】
「免疫細胞」は、免疫系の細胞、すなわち、免疫応答が先天性であれ、後天性であれ、体液性であれ、細胞性であれ、免疫応答の発生または維持に直接的または間接的に関与する細胞を指す。
【0022】
「誘導する」およびその変形は、遺伝子発現の測定可能な増加を指す。「誘導」は、「上方制御」と同義的に使用することが可能である。したがって「インデューサー」は、ある特定の遺伝子の発現を増加する化合物を指す。
【0023】
「阻害する」およびその変形は、遺伝子発現の測定可能な減少を指す。「阻害」は、「抑制」または「下方制御」と同義的に使用することが可能である。したがって「インヒビター」は、ある特定の遺伝子の発現を減少させる化合物を指す。
【0024】
「IRM化合物」は、IRM−応答性細胞に投与されるとき、1つ以上の免疫制御分子、たとえば、サイトカイン類または同時刺激マーカーのレベルを変える化合物を一般に指す。代表的なIRM化合物は、上述の小さい有機分子、プリン誘導体、小さい複素環式化合物、アミド誘導体、およびオリゴヌクレオチド配列を包含する。
【0025】
「調節する」およびその変形は、遺伝子発現の測定可能な上方制御または下方制御を指す。
【0026】
「プロドラッグ」は、有効な親薬物を体内で放出するために化学的または酵素的生体内変化を必要とする、薬物分子の誘導体を指す。
【0027】
「質的」およびその変形は、(1)遺伝子発現の有意な調節の存在(ある/ない)、(2)遺伝子発現調節の方向(誘導/阻害)、または(c)両者を指す。
【0028】
「量的」およびその変形は、方向に関係なく、遺伝子発現調節の大きさを指す。
【0029】
「選択的」およびその変形は、たとえば、細胞集団、遺伝子、または遺伝子の発現レベル等の、2つ以上の選択肢間で区別できることを指す。たとえば、遺伝子発現を選択的に調節することは、2つ以上の遺伝子発現を個別に変更することを指す。別の例として、選択された細胞集団における遺伝子発現を調節することは、所与の遺伝子の発現を、たとえば、1つの細胞集団では、ある特定の程度に調節し、かつたとえば、第2の細胞集団では、同一遺伝子の発現を、異なる程度に調節することを指す。
【0030】
「TLR遺伝子発現プロフィール」は、(a)IRMの投与により発現を調節することができるTLR遺伝子の同一性、(b)質的遺伝子発現調節の有無および/または特徴、および/または(c)量的遺伝子発現調節の有無および/または特徴を指す。所与の化合物のTLR遺伝子発現プロフィールは、所与の化合物により調節された、TLR遺伝子発現の観察されたプロフィールを指す。該観察されたプロフィールは、単一情報源から作成することもでき、複数の報源から作成することもできる。標的TLR遺伝子発現プロフィールは、(a)スクリーニング分析で認定すべき標的化合物、または(b)ある特定の方法で、ある特定の免疫細胞のTLR遺伝子発現を調節するであろう化合物に望まれる、ある特定のプロフィール−これは、たとえば、理論的なまたは理想的なTLR遺伝子発現プロフィールであってもよい−を指す。
【0031】
一態様において、本発明は、少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を選択的に調節する化合物を認定する方法を提供する。概して、本方法は、複数のTLR遺伝子のそれぞれの発現を検出することができる分析法を提供することと;被験化合物を使用して各分析法を実施することと;該被験化合物が、少なくとも1つの第2のTLR遺伝子の発現を調節するのとは異なる程度に、第1のTLR遺伝子の発現を調節するのであれば、該被験化合物を、少なくとも1つのTLR遺伝子を選択的に調節する化合物として認定すること;を含む。
【0032】
調節は、上方制御、下方制御、または両者を含むことが可能である。したがって、本発明のある方法は、たとえば、(a)2つ以上のTLR遺伝子の発現を調節するが、様々な程度に調節する、または(b)1つのTLR遺伝子の発現は調節するが、第2のTLR遺伝子発現は調節しない、化合物を認定することもできよう。2つ以上の遺伝子の発現を様々な程度に調節することは、たとえば、遺伝子の発現を異なる質的程度に調節すること(たとえば、上方制御、下方制御、または無制御)、同じ質的程度であるが、異なる量的程度に(たとえば、第2の遺伝子より多い、一遺伝子の上方制御)、または量的程度および質的程度の任意の組合せで、遺伝子の発現を調節することを含むことができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、TLR遺伝子発現の少なくとも2倍の調節(すなわち、上方制御または下方制御)を有意と考えてもよい。たとえば、TLR遺伝子の発現を少なくとも2倍上方制御することを、TLR遺伝子発現の有意な調節の代表と考えてもよく、一方、TLR遺伝子発現を2倍未満上方制御することを、たとえば、実験誤差、正常変動、または両者の範囲内として、些少と考えてもよい。他の実施形態では、TLR遺伝子の発現の少なくとも3倍の調節を有意と考えてもよく、一方、TLR遺伝子発現の3倍未満の調節を、些少と考えてもよい。さらに他の実施形態では、TLR遺伝子発現の少なくとも4倍の調節を有意と考えてもよく、一方、TLR遺伝子発現の4倍未満の調節を些少と考えてもよい。有意と考えられるために必要なTLR遺伝子の発現調節の正確なレベルは、認定された化合物の使用目的(予防用、治療用、診断用、等々);TLR遺伝子の発現を判定するために使用される分析法の質(たとえば、確度および/または精度);および該化合物が、TLR遺伝子の発現を調節することを意図する環境(たとえば、in vitroまたはin vivo);を含むがその限りではない因子に少なくともある程度左右される可能性がある。
【0034】
当業者は、TLR遺伝子の発現の上方制御および/または下方制御を検出することができる分析法を考案および実施するために、標準技術を利用することが可能である。たとえば、遺伝子の発現は、リアルタイムPCR(RT−PCR)、マイクロアレイ遺伝子解析法、またはノーザンブロット分析法を使用して、分析することができる。
【0035】
本発明の方法の分析で使用される細胞は、1つ以上のTLR遺伝子を発現してTLR遺伝子の発現の検出を可能にする任意の細胞であってもよい。場合により、該細胞は、1つ以上のTLRを生来発現する可能性がある。1つ以上のTLRを生来発現する細胞は、単球、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、多形核細胞(たとえば、好中球、好塩基球、または好酸球)、Bリンパ球、Tリンパ球、および前述のいずれかに由来する細胞等の主要免疫細胞を包含するがその限りではない。
【0036】
図1は、あるIRM化合物によるTLR遺伝子発現の選択的調節を説明する図である。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、in vitroでIRM化合物と共にインキュベートし、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、およびTLR10のそれぞれからの発現を分析した。該IRM化合物は、TLR3遺伝子、TLR7遺伝子、およびTLR8遺伝子の発現を誘導する。該IRM化合物は、他のTLR遺伝子(たとえば、TLR2)のいずれからの発現も有意に調節せず、その結果、該IRM化合物によるTLR遺伝子の発現の質的選択的調節を示した。
【0037】
図2〜4は、ある種のIRM化合物が、ある特定のTLR遺伝子の発現を量的に(たとえば、同一方向であるが、様々な程度に)調節できる能力を説明する図である。TLR3(図2)、TLR7(図3)、およびTLR8(図4)以外のTLR遺伝子からのTLR遺伝子の発現に有意な変化は認められなかった。最高時点における発現の大きさは、使用したIRMによって異なった。最も大きいIRM関連の変動は、TLR8の発現で見られた。IRM1、IRM6、およびIRM8は、試験した他の化合物より高くかつ早い遺伝子発現ピークを与える。IRM7は、TLR3、TLR7、およびTLR8のいずれからの遺伝子発現にもほとんど影響を示さない。
【0038】
図5〜7は、TLR遺伝子発現の調節が、遺伝子発現の下方制御を含むことができることを説明する図である。マクロファージでは、TLR3(図5)、TLR5(図6)、およびTLR7(図7)のそれぞれからの発現がIRM1およびIRM2で下方制御された。
【0039】
樹状細胞では、IRM1は、TLR2からの発現を上方制御することが可能であり、かつTLR6およびTLR7からの発現を下方制御することが可能である。
【0040】
ある実施形態では、該分析は、該分析が適切に実施されていることを保証するために、1つ以上の適当なコントロールを含んでもよい。しかし、当業者は、十分な経験を積み、たとえば、所与の分析法、または該分析法が実施されるたびに適当なコントロールが無くてもよいある特定の化合物のTLR遺伝子発現プロフィールを、熟知することが可能である。
【0041】
本発明はまた、上述の方法に従って認定された化合物、およびそれらの塩類も提供する。上述の方法は、TLR遺伝子の発現の調節を検出する任意の分析を使用することができる。したがって、上述の方法は、1つ以上のTLR遺伝子の発現を選択的に調節する化合物の広域スペクトルを認定するための強力な道具になり得る。このようにして認定される化合物は、上述の様々な種類のIRM化合物の1つ以上に構造的に関係していてもよい。あるいは、本発明の方法で認定される化合物は、既知の種類のIRM化合物に構造的に関係がなくてもよく、したがって、新しい、これまで知られていなかった種類のIRM化合物を認定することが可能である。いずれの場合にも、このような化合物を、医薬組成物に組み入れることが可能である。このような医薬組成物は、詳しく後述する。
【0042】
別の態様において、本発明は、ある特定のTLR遺伝子発現プロフィールを有する標的化合物を認定する方法を提供する。概して、本方法は、標的TLR遺伝子発現プロフィールを選択することと;被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールを決定することと;該被験化合物の該TLR遺伝子発現プロフィールが、該標的TLR遺伝子発現プロフィールと一致すれば、該被験化合物を標的化合物として認定すること;を含む。
【0043】
標的TLR遺伝子発現プロフィールは、遺伝子発現の調節が(たとえば、予防効果、治療効果、または診断効果のために)望まれる1つ以上のTLR遺伝子を含むことが可能である。たとえば、1つ以上の特定のTLR遺伝子の発現を上方制御する化合物は、ある特定の状態を治療するのに有用な可能性がある。あるいは、ある特定のTLR遺伝子発現プロフィールは、新薬の魅力的な候補、または既知の薬剤の新用途のいずれかを認定するために有用な可能性がある。
【0044】
標的TLR遺伝子発現プロフィールは、ある化合物の、複数のTLR遺伝子に対するTLR遺伝子発現調節作用に関する情報を含むことが可能である。このような実施形態では、該TLR遺伝子発現プロフィールは、選択されたTLR遺伝子からの発現の上方制御、下方制御、および/または無制御を、任意の組合せで含むことが可能である。TLR遺伝子の個々の組合せ、各TLR遺伝子からの発現が調節されるかどうか、およびある特定の標的TLR遺伝子発現プロフィールに一致する遺伝子の発現調節の程度は、ある特定の用途に望ましい個々のTLR遺伝子の発現特性に少なくともある程度左右される可能性がある。
【0045】
標的TLR遺伝子発現プロフィールは、分かっているだけ、および/または使用目的に必要なだけ、多いまたは少ない情報を含むことが可能である。場合により、標的TLR遺伝子発現プロフィールの関連部分は、他のいかなるTLR遺伝子の発現とも関係なく、ただ1つのTLR遺伝子の発現を含んでもよい。これは、治療すべき病気に関する因子;実施されているまたは実施すべき診断分析の範囲;TLR遺伝子の発現(および/または結果として生じる生物活性)が調節を受けることが意図される標的細胞集団;検討中のTLR遺伝子の同一性、および該標的細胞におけるそれらの遺伝子の生来の発現レベル;該標的細胞の位置−in vitro、in vivo、およびin vivoであれば、該標的細胞が位置する組織または器官;および対象の免疫系の全身状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)を含むがその限りではない、ある種の因子のためである。
【0046】
被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールは、任意の適当な方法で決定することが可能である。化合物のTLR遺伝子発現プロフィールを決定する一法は、上述の分析法等の1つ以上の分析法を実施して、被験化合物が、ある特定のTLR遺伝子の発現を有意に調節するかどうかを判定することである。あるいは、ある特定の化合物が、1つ以上のTLR遺伝子の発現を調節することが分かっていてもよい。たとえば、ある種のIRM化合物は、たとえば、末梢血単核細胞(PBMC)におけるTLR7遺伝子のインデューサーとして本書で認定されている。場合により、被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールは、複数の情報源から作成された情報を含むことが可能である。
【0047】
被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールは、標的TLR遺伝子発現プロフィールとの比較に望ましいだけ、多いまたは少ない情報を含むことが可能である。被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールに望ましい情報の量は、標的TLR遺伝子発現プロフィールの決定に関して上述した因子を含むがその限りではない、多数の因子に少なくともある程度左右される。
【0048】
被験化合物を、ある特定の標的TLR遺伝子発現プロフィールを有するとして認定することは、該被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールを、該標的TLR遺伝子発現プロフィールと比較することを含む。場合により、該標的TLR遺伝子発現プロフィールおよび該被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールは、完全一致を成すことがある。このような場合、該被験化合物は、標的TLR遺伝子発現プロフィールに一致するとして、容易に認定することができる。
【0049】
該標的TLR遺伝子発現プロフィールと該被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールがある程度異なる場合には、該被験化合物は、所望のTLR遺伝子発現プロフィールに一致するとして、やはり認定される可能性がある。たとえば、ある場合には、質的なTLR遺伝子の発現調節(すなわち、調節の方向)が、量的調節(すなわち、調節の大きさ)より重要なことがある。別の例として、該被験化合物は、標的TLR遺伝子発現プロフィールのために、たとえあるとしてもほんの少ししか関連がない、ある特定のTLR遺伝子の発現を調節することもあり得る。たとえば、標的TLR遺伝子発現プロフィールが、PBMCにおけるTLR7発現およびTLR8発現の誘導を含むと定義される場合、所望のTLR7発現およびTLR8発現の誘導に加えてTLR3発現を誘導することは、ある特定の用途では関連がない可能性があるため、PBMCにおけるTLR7、TLR8、およびTLR3の発現を誘導する被験化合物は、標的TLR遺伝子発現プロフィールに一致する可能性がある。
【0050】
該標的TLR遺伝子発現プロフィールは、該標的TLR遺伝子発現プロフィールに一致するとして認定された化合物が使用される具体的な用途に応じて異なる可能性がある。たとえば、あるウイルス感染症の治療は、TLR7インデューサー投与の恩恵である。このような治療は、たとえば、TLR7作動薬に対する、処置細胞のTLR7介在性細胞応答、たとえば、I型インターフェロンの産生およびある種の抗原提示細胞(APC)の活性化等を増強する。あるいは、ある腫瘍型の治療は、TLR8のインデューサーとして認定された化合物の使用の恩恵であるかもしれない。このような治療は、たとえば、TLR8作動薬に対する、処置細胞のTLR8介在性応答、たとえば、IL−12の産生および/または分泌、マクロファージの活性化、マクロファージによる処置領域の浸潤、および強い炎症反応等を増強する。反対に、ある病気の治療が、ある特定の細胞集団における1つ以上のTLR遺伝子の下方制御された発現または抑制された発現の恩恵のこともある。このような治療は、たとえば、(a)慢性関節リウマチまたは自己免疫疾患等の慢性炎症を特徴とする、ある種の病気を治療するため、または(b)ウイルス感染または細菌感染に起因する炎症を抑えるために、有用な可能性がある。
【0051】
本発明はまた、上述の方法に従って標的化合物であると認定された化合物、およびそれらの塩類も提供する。上述の方法は、幾つものTLR遺伝子の発現に関連した情報を組み入れて、任意の適当な標的TLR遺伝子発現プロフィールを使用することができる。したがって、上述の方法は、ある特定の標的TLR遺伝子発現プロフィールに一致する化合物の広域スペクトルを認定するための強力な道具になり得る。このようにして認定された化合物を、医薬組成物に組み入れることが可能である。このような医薬組成物は、詳しく後述する。
【0052】
別の態様において、本発明は、免疫系の細胞の、TLR遺伝子の発現を選択的に調節する方法を提供する。概して、本方法は、第1の免疫系細胞集団および第2の免疫系細胞集団を認定することと;第2の細胞集団における同一TLR遺伝子の発現を調節するのとは異なる程度に、第1の細胞集団のTLR遺伝子の発現を調節する化合物を選択することと;免疫系の細胞を、選択された化合物と、該細胞集団の少なくとも1つにおける該TLR遺伝子の発現を調節するのに有効な量で接触させること;を含む。
【0053】
免疫系は、様々な細胞集団を含み、各集団は生来、異なるTLR遺伝子を様々な程度に発現する。各様々な細胞集団は、血液、皮膚、骨髄、胸腺、リンパ系、および間質領域を含むがその限りではない、身体の異なる領域に存在する。たとえば、単球は生来、比較的多量のTLR2およびTLR4を発現し、また、かなりのレベルの、たとえば、TLR1およびTLR8発現も示す。Bリンパ球は生来、TLR6、TLR7およびTLR9の比較的高い発現を示すが、たとえば、TLR1およびTLR10も、より低い程度まで発現する。形質細胞様樹状細胞(pDC)は、TLR7およびTLR9を主に発現するが、TLR1およびTLR6も幾らか発現する。
【0054】
幾つかの化合物は、一細胞集団でTLR遺伝子の発現を調節し、別の細胞集団では異なる方法で(質的にまたは量的に)同一TLR遺伝子の発現を調節できることが発見され、本発明は、ある特定のTLR遺伝子の発現を、免疫系の異なる細胞集団間で選択的に調節できる方法を提供する。異なる細胞集団における細胞間のTLR遺伝子発現の選択的調節は、一免疫細胞集団におけるTLR遺伝子発現の調節という形をとるが、別の免疫細胞集団における同一TLR遺伝子の発現は、実質的に未調節のままであることがある(すなわち、質的または「オン・オフ」調節)。あるいは、異なる細胞集団における細胞間のTLR遺伝子発現の選択的調節は、2つ以上の免疫細胞集団におけるTLR遺伝子発現を様々な程度に調節すること(すなわち、量的調節)を含んでもよい。
【0055】
たとえば、図5を図2と組み合せると、化合物(たとえば、IRM1)が、異なる細胞型において質的に異なる様式で同一TLR遺伝子の発現を調節できることがわかる。図2は、IRM1が、PBMCにおけるTLR3遺伝子からの遺伝子発現を上方制御することを示すが、図5は、IRM1が、マクロファージにおけるTLR3遺伝子からの遺伝子発現を下方制御することを示す。また、IRM3およびIRM5は、PBMCにおけるTLR3遺伝子からの遺伝子発現を上方制御する(図2)が、マクロファージにおけるTLR3遺伝子からの遺伝子発現は、有意に調節しない(図5)。
【0056】
ある実施形態では、本発明の方法は、第1の細胞集団のTLR遺伝子発現プロフィールおよび第2の細胞集団のTLR遺伝子発現プロフィールを決定することを含んでもよい。該TLR遺伝子発現プロフィールは、PCR分析、マイクロアレイ遺伝子解析、またはノーザンブロット分析等によるTLR遺伝子の発現の検出を含むがその限りではない、任意の適当な方法で決定することが可能である。
【0057】
特定の免疫細胞集団におけるTLR遺伝子発現の調節は、該細胞におけるTLR遺伝子発現を有意に上方制御すること、または該細胞におけるTLR遺伝子の発現を有意に下方制御することを含んでもよい。幾つかの実施形態では、TLR遺伝子発現の少なくとも2倍の調節を有意と考えてもよく、一方、TLR遺伝子発現の2倍未満の調節を些少と考えてもよい。他の実施形態では、TLR遺伝子発現の少なくとも3倍の調節を有意と考えてもよく、一方、TLR遺伝子発現3倍未満の調節を些少と考えてもよい。さらに他の実施形態では、TLR遺伝子発現の少なくとも4倍の調節を有意と考えてもよく、一方、TLR遺伝子発現の4倍未満の調節を些少と考えてもよい。有意と考えられるために必要なTLR遺伝子発現調節の正確なレベルは、該認定された化合物の使用目的(予防用、治療用、診断用、等々);TLR遺伝子発現を判定するために使用される分析法の質(たとえば、確度および/または精度);および該化合物が、TLR遺伝子発現を調節することを意図する環境(たとえば、in vitroまたはin vivo);を含むがその限りではない因子に少なくともある程度左右される可能性がある。
【0058】
免疫系の細胞を、選択された化合物と、in vitroまたはin vivoのいずれかで接触させることにより、選択された細胞におおけるTLR遺伝子発現を調節することが可能である。選択された細胞におけるTLR遺伝子発現をin vitroで調節することは、免疫細胞のサンプルを対象から採取することと、採取した免疫細胞をin vitroで培養することと、該選択された化合物を該細胞培養に加えることとを含んでもよい。場合により、該対象から採取された免疫細胞の該サンプルは、同質のものからなる細胞サンプルであってもよい、すなわち、該サンプルは、ただ1つの免疫細胞集団の細胞を含んでもよい。他の場合には、該対象から採取された免疫細胞の該サンプルは、異質のものからなる細胞サンプルであってもよい、すなわち、該サンプルは、1つより多い免疫細胞集団の細胞を含んでもよい。選択された細胞におけるTLR遺伝子発現が調節されるように、該細胞を選択された化合物と接触させた後、処置細胞(選択された化合物との接触によって、それらのTLR遺伝子発現が選択的に調節されていてもいなくても)を該対象に再導入し、それによって予防的処置または治療的処置を提供することが可能である。あるいは、in vitroで選択的に調節されたTLR遺伝子発現を有する細胞は、診断的有用性を有する。
【0059】
幾つかの実施形態では、in vitroで選択的に調節された細胞は、対象から採取されるよりむしろ遺伝子操作されている可能性がある。このような細胞は、たとえば、TLR介在性生物学活性をさらに解明する等の、実験道具として有用である。
【0060】
選択された細胞におけるTLR遺伝子発現のIn vivo調節は、選択された化合物を対象に投与することを含んでもよい。該選択された化合物は、局所、注射(たとえば、静脈内、皮下、腹腔内、皮内)、吸入、経口摂取、経皮的、または経粘膜的送達を含むがその限りではない任意の適当な様式で投与することが可能である。
【0061】
対象の選択された免疫細胞におけるTLR遺伝子発現を調節するために有効な選択された化合物の個々の量は、1つ以上の因子に少なくともある程度左右される可能性がある。このような因子は、投与されようとしている個々の化合物、対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている);TLR遺伝子発現が調節される細胞の同一性および位置;該化合物の投与経路;TLR遺伝子発現が調節される細胞のTLR遺伝子発現プロフィール;および所望の結果(たとえば、予防的処置または治療的処置)を含むがその限りではない。したがって、化合物の有効量となる量を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0062】
選択された免疫細胞のTLR遺伝子発現を調節するのに有効な選択された化合物の量は、該標的細胞集団(たとえば、単球、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、T細胞等々)に、少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を変化させるのに十分な量である。選択された免疫細胞のTLR遺伝子発現を調節するために有効な、選択された化合物の正確な量は、当該技術分野で周知の因子によって変わるが、ある実施形態では、該量は、約100ng/kg〜約50mg/kg、たとえば、約10μg/kg〜約5mg/kgという用量であってもよい。他の実施形態では、該量は、適当な溶液、懸濁液、乳液、混合物等々中に、重量基準で約0.001〜約50%の該選択された化合物を提供するために十分な量であってもよい。選択された化合物の最小量は、上述の因子によって変化する可能性があるが、ある実施形態では、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、または1.0%であってもよい。同様に、選択された化合物の最大量は、上述因子によって変化する可能性があるが、ある実施形態では、1.0%、2.0%、5.0%、または10%であってもよい。
【0063】
幾つかの実施形態では、該選択された化合物は、後述する小さい有機IRM分子、またはプリン誘導体、小さい複素環式化合物、アミド誘導体、および上述のオリゴヌクレオチド配列を含む、既知のIRM化合物であってもよい。あるいは、該選択された化合物は、本発明による方法の幾つかを含むこのような化合物を認定する適当な方法で認定された、少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を選択的に調節することができる化合物であってもよい。
【0064】
上記の通り、TLR遺伝子の発現を選択的に調節する化合物を、医薬組成物に組み入れることが可能である。このような組成物は、1つ以上のTLR遺伝子の発現を選択的に調節することにより治療できる状態の治療に有用な可能性がある。本発明の化合物は、治療計画で単一の潜在的治療薬として投与してもよい。あるいは、本発明の化合物は、本発明の別の化合物と組み合せて、または補足的IRM化合物、イムノゲン、アジュバント、抗ウイルス薬、抗生物質等々を含む1つ以上の有効な薬剤と組み合せて、投与してもよい。
【0065】
したがって、本発明はまた、複数のTLR遺伝子の発現を選択的に調節することにより治療できる状態を治療する方法も提供する。概して、本方法は、該状態の治療に有効な標的TLR遺伝子発現プロフィールを認定することと;該標的TLR遺伝子発現プロフィールに一致するTLR遺伝子発現プロフィールを有する化合物を選択することと;該状態を治療するために有効な化合物のある量を、該対象に投与することとを含む。
【0066】
ある状態を治療することは、予防的処置または治療的処置のいずれも含むことが可能である。本書で使用されるとき、予防的処置は、該状態の症状または徴候の発生前に開始される処置を指す。したがって、予防的処置は、概して、(1)該処置を受けている対象が該状態を獲得する可能性を下げるために、(2)いったん獲得したら、その後は、該状態の重症度を低下させるために、または(3)その両者のために、考案される。本明細書で使用されるとき、治療的処置は、ある状態の症状または徴候の発生後に開始される処置を指す。したがって、治療的処置は、該状態の進行を抑えるかまたは低減するように考案される。場合により、治療的処置は、完全回復という程度までさえ、該状態の逆転をもたらすことができる。
【0067】
本発明の方法では、該標的TLR遺伝子発現プロフィールを認定することは、どの免疫系細胞集団が、該状態の予防的処置または治療的処置に適している可能性があるかを判定することと、次いで、該認定された細胞集団のどのTLR遺伝子が、所望の治療を提供するように調節される可能性があるかを判定することとを含むことが可能である。
【0068】
該化合物のTLR遺伝子発現プロフィールは、TLR遺伝子発現の調節を検出するために考案された1つ以上の分析法を実施することにより決定することが可能である。あるいは、該IRM化合物のTLR遺伝子発現プロフィールは、たとえば、1つ以上の公表された情報源または未公表の情報源から得ることが可能である。
【0069】
該標的TLR遺伝子発現プロフィールに一致するTLR遺伝子発現プロフィールを有する化合物を選択することは、ある特定のTLR遺伝子発現プロフィールを有する標的化合物を分析するための分析法に関して上述したものと同じ検討事項を含む。
【0070】
本発明の方法を使用して治療することができる状態は、以下のものを含むがその限りではない:
(a)ウイルス性疾患、たとえば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(たとえば、HSV−I、HSV−II、CMV、またはVZV)、ポックスウイルス(たとえば、天然痘またはワクシニア等のオルトポックスウイルス、または伝染性軟属腫)、ピコルナウイルス(たとえば、ライノウイルスまたはエンテロウイルス)、オルトミクソウイルス(たとえば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(たとえば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、および呼吸器合胞体ウイルス(RSV))、コロナウイルス(たとえば、SARS)、パポバウイルス(たとえば、パピローマウイルス、たとえば生殖器疣贅、尋常性疣贅、または足底疣贅を引き起こすもの)、ヘパドナウイルス(たとえば、B型肝炎ウイルス)、フラビウイルス(たとえば、C型肝炎ウイルスまたはデングウイルス)、またはレトロウイルス(たとえば、HIV等のレンチウイルス)による感染に起因する疾患等;
(b)細菌性疾患、たとえば、大腸菌属、エンテロバクター属、サルモネラ属、ブドウ球菌属、シゲラ属、リステリア属、エアロバクター属、ヘリコバクター属、クレブシエラ属、プロテウス属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属、肺炎球菌、ナイセリア属、クロストリジウム属、桿菌、コリネバクテリウム属、マイコバクテリウム属、カンピロバクター属、ビブリオ属、セラチア属、プロビデンシア属、クロモバクテリウム属、ブルセラ属、エルシニア属、ヘモフィルス属、またはボルデテラ属の細菌による感染に起因する疾患等;
(c)その他の感染症、たとえばクラミジア、カンジダ症、アスペルギルス症、ヒストプラスマ症、クリプトコッカス髄膜炎を含むがその限りではない真菌病、またはマラリア、ニューモシステイス−カリニ肺炎、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、およびトリパノソーマ感染症を含むがその限りではない寄生虫病等;
(d)たとえば上皮内新生物、子宮頚部異形成、光線性角化症、基底細胞癌、扁平上皮癌、腎細胞癌、カポジ肉腫、黒色腫、腎細胞癌などの新生物疾患、骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、B−細胞リンパ腫、および毛様細胞白血病を含むがその限りではない白血病、およびたとえば、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌等々の他の癌;
(e)TH2介在性アトピー性疾患、たとえばアトピー性皮膚炎または湿疹、好酸球増多、喘息、アレルギー、アレルギー性鼻炎、およびオーメン(Ommen’s)症候群等;
(f)ある種の自己免疫疾患、たとえば、全身性エリテマトーデス、本態性血小板血症、多発性硬化症、円板状ループス、円形脱毛症等;および
(g)創傷修復に随伴する疾患、たとえば、ケロイド形成および他の型の瘢痕化の抑制(たとえば、慢性創傷を含む、創傷治癒増進)。
【0071】
さらに、本発明のある実施形態を実行することは、たとえば、BCGワクチン、コレラワクチン、ペストワクチン、腸チフスワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、C型肝炎ワクチン、A型インフルエンザワクチン、B型インフルエンザワクチン、パラインフルエンザワクチン、ポリオワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、黄熱病ワクチン、破傷風ワクチン、ジフテリアワクチン、ヘモフィルス・インフルエンザbワクチン、結核ワクチン、髄膜炎菌ワクチンおよび肺炎球菌ワクチン、アデノウイルス、HIV、ニワトリポックス、サイトメガロウイルス、デング、ネコ白血病、家禽ペスト、HSV−1およびHSV−2、豚コレラ、日本脳炎、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、乳頭腫ウイルス、黄熱病、およびアルツハイマー病に関連して使用するために、体液性および/または細胞介在性免疫応答のいずれも(いずれかを)上昇させる任意の材料、たとえば、生きている、ウイルスイムノゲン、細菌イムノゲン、または寄生虫のイムノゲン;不活化した、ウイルスイムノゲン、腫瘍由来のイムノゲン、原生動物イムノゲン、微生物由来のイムノゲン、真菌イムノゲン、または細菌イムノゲン、トキソイド、毒素;自己抗原;多糖類;タンパク質;糖タンパク質;ペプチド類;細胞ワクチン;DNAワクチン;自己ワクチン;組換えタンパク質;糖タンパク質;ペプチド類;等々と併せて、ワクチンアジュバントとしてIRM化合物を使用することを含んでもよい。
【0072】
ある実施形態は、免疫機能低下患者を治療するために特に有益な可能性がある。たとえば、ある実施形態は、たとえば、移植患者、癌患者およびHIV患者で、細胞介在性免疫の抑制後に起こる可能性がある、日和見感染症および腫瘍を治療するために使用することが可能である。上記の通り、ある態様では、本発明は、TLR遺伝子発現を選択的に調節する化合物を含む医薬組成物を含む。該医薬組成物は、任意の適当な送達経路を介して任意の適当な様式で投与することが可能である。該組成物は、局所的に送達してもよく、局所的に送達してもよい。局所送達に適する組成物は、軟膏類、ゲル類、泡類、クリーム類、ローション類、溶液類、懸濁液、乳濁液、ペースト類、粉末、石鹸、界面活性剤含有洗浄用製剤、固体スティック(たとえば、ワックスまたは石油を主成分とするスティック)、油およびスプレーを包含するがその限りではない。一般的な全身性送達経路は、注射(たとえば、静脈内、皮下、腹腔内、皮内)、吸入、経口摂取、経皮送達、または経粘膜送達を包含するがその限りではない。
【0073】
該化合物は、対象に投与するのに適当なあらゆる製剤で提供することが可能である。適当なタイプの製剤は、たとえば、米国特許第5,238,944号明細書;米国特許第5,939,090号明細書;米国特許第6,245,776号明細書;欧州特許EP 0 394 026号明細書;および米国特許出願公開第2003/0199538号明細書に記載されている。該化合物は、液剤、懸濁剤、乳剤、または任意の混合剤形を包含するがその限りではない、あらゆる適当な剤形で提供することが可能である。該化合物は、薬学的に許容し得る賦形剤、担体、または媒体を含む製剤で送達することが可能である。該製剤は、クリーム剤、軟膏剤、エアロゾール製剤、非エアロゾールスプレー、ゲル剤、ローション剤等々を包含するがその限りではない、任意の従来の局所剤形で送達することが可能である。該製剤は、アジュバント、皮膚浸透促進剤、着色料、香料、モイスチャーライザー、増粘剤、等々を包含するがその限りではない、1つ以上の添加物をさらに含んでもよい。
【0074】
幾つかの実施形態では、本発明の方法は、該化合物を、たとえば、約0.001〜約10%(特に指示がなければ、本明細書に記載の全てのパーセンテージは、該製剤総量に関して重量/重量である)の製剤で、対象に投与することを含むが、幾つかの実施形態では、該化合物は、この範囲外の濃度で化合物を提供する製剤を使用して投与することも可能である。ある実施形態では、該方法は、約0.1%〜約5%の化合物を含む製剤等の、約0.01%〜約5%の化合物を含む製剤を対象に投与することを含む。ある特定の実施形態では、本方法は、5%のIRM化合物を含む製剤を対象に投与することを含む。
【0075】
ある状態を治療するのに有効な化合物の量は、該化合物の物理的性質および化学的性質、担体の性質、所期の投与計画、対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)、該化合物の投与方法、および該製剤が投与される種を含むがその限りではない、当該技術分野で既知の因子によって変化する可能性がある。したがって、可能性のある全ての適用について、ある状態を治療するのに有効な該化合物の量となる量を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0076】
幾つかの実施形態では、本発明の方法は、たとえば、約100ng/kg〜約50mg/kgの用量を提供するのに十分な量の化合物を、該対象に投与することを含むが、幾つかの実施形態では、該方法は、この範囲外の濃度で該化合物を投与することにより実施することが可能である。これらの実施形態の幾つかでは、該方法は、約10μg/kg〜約5mg/kgの用量、たとえば、約100μg/kg〜約1mg/kgの用量を提供するのに十分なIRM化合物を対象に投与することを含む。
【0077】
幾つかの実施形態では、該化合物は、詳細に後述する小さい有機IRM分子、またはプリン誘導体、小さい複素環式化合物、アミド誘導体、および上述のオリゴヌクレオチド配列を含む、既知のIRM化合物であってもよい。あるいは、該化合物は、本発明による方法の幾つかを含む、このような化合物を認定する任意の適当な方法で認定された、少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を選択的に調節することができる化合物であってもよい。
【0078】
幾つかの実施形態では、適当な化合物は、上述の小分子IRM化合物を含むがその限りではない。窒素含有複素5員環に縮合した2−アミノピリジンを有する、適当な小分子IRM化合物は、たとえば、アミド置換イミダゾキノリンアミン類、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン類、尿素置換イミダゾキノリンアミン類、アリールエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、複素環式エーテル置換イミダゾキノリンアミン類、アミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、スルホンアミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、尿素置換イミダゾキノリンエーテル類、チオエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、6−、7−、8−、または9−アリール、ヘテロアリール、アリールオキシまたはアリールアルキレンオキシ置換イミダゾキノリンアミン類およびイミダゾキノリンジアミン類を含むがその限りではないイミダゾキノリンアミン類;アミド置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、スルホンアミド置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、アリールエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、複素環式エーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、アミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、スルホンアミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンエーテル類、チオエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、およびテトラヒドロイミダゾキノリンジアミンを含むがその限りではないテトラヒドロイミダゾキノリンアミン類;アミド置換イミダゾピリジンアミン類、スルホンアミド置換イミダゾピリジンアミン類、尿素置換イミダゾピリジンアミン類、アリールエーテル置換イミダゾピリジンアミン類、複素環式エーテル置換イミダゾピリジンアミン類、アミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン類、スルホンアミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン類、尿素置換イミダゾピリジンエーテル類、およびチオエーテル置換イミダゾピリジンアミン類を含むがその限りではないイミダゾピリジンアミン類;1,2架橋イミダゾキノリンアミン類;6,7縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン類;イミダゾナフチリジンアミン類;テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン類;オキサゾロキノリンアミン類;チアゾロキノリンアミン類;オキサゾロピリジンアミン類;チアゾロピリジンアミン類;オキサゾロナフチリジンアミン類;チアゾロナフチリジンアミン類;およびピリジンアミン類、キノリンアミン類、テトラヒドロキノリンアミン類、ナフチリジンアミン類、またはテトラヒドロナフチリジンアミン類に縮合した1H−イミダゾダイマー等を包含する。
【0079】
ある実施形態では、該IRM化合物は、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、またはチアゾロナフチリジンアミンであってもよい。
【0080】
ある実施形態では、該IRM化合物は、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、またはチアゾロナフチリジンアミンであってもよい。
【0081】
本明細書で使用されるとき、置換イミダゾキノリンアミンは、アミド置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンアミン、アリールエーテル置換イミダゾキノリンアミン、複素環式エーテル置換イミダゾキノリンアミン、アミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンエーテル、チオエーテル置換イミダゾキノリンアミン、6−、7−、8−、または9−アリール、ヘテロアリール、アリールオキシまたはアリールアルキレンオキシ置換イミダゾキノリンアミン、またはイミダゾキノリンジアミンを指す。本明細書で使用されるとき、置換イミダゾキノリンアミン類は1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンおよび4−アミノ−α,α−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノールを具体的にかつ明確に除外する。
【0082】
幾つかの実施形態では、該化合物は、たとえば、4−アミノ−2−(エトキシメチル)−α,α−ジメチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール等のテトラヒドロイミダゾキノリンアミンであってもよく、たとえば、N−[4−(4−アミノ−2−メチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)ブチル]モルホリン−4−カルボキサミド等の尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミンであってもよい。
【0083】
他の実施形態では、該化合物は、たとえば、2−プロピルチアゾロ[4,5−c]キノリン−4−アミン等のチアゾロキノリンアミンであってもよい。
【0084】
他の実施形態では、該化合物は、たとえば、N−[4−(4−アミノ−2−ブチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)ブチル]メタンスルホンアミド、N−{4−[4−アミノ−2−(2−メトキシエチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]ブチル}メタンスルホンアミド、またはN−[4−(4−アミノ−2−エチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)ブチル]メタンスルホンアミド等のスルホンアミド置換イミダゾキノリンアミンであってもよい。
【0085】
他の実施形態では、該化合物は、たとえば、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンまたは4−アミノ−α,α,2−トリメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール等のイミダゾキノリンアミンであってもよい。
【0086】
他の実施形態では、該化合物は、たとえば、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c][1,5]ナフチリジン−4−アミンまたは2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c][1,5]ナフチリジン−4−アミン等のイミダゾナフチリジンアミンであってもよい。
【0087】
さらに他の実施形態では、該化合物は、たとえば、N−[4−(4−アミノ−2−ブチル−6,7−ジメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−1−イル)ブチル]メタンスルホンアミド等のスルホンアミド置換イミダゾピリジンアミンであってもよい。
【0088】
本発明の方法は、適当な対象に対して実施することが可能である。適当な対象は、ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、またはウシ等の動物を含むがその限りではない。
【実施例】
【0089】
以下の実施例は、本発明の特徴、利点、および他の詳細をさらに説明するために選択されたに過ぎない。しかし、該実施例はこの目的に役立つが、使用した個々の材料および量ならびに他の条件および詳細は、本発明の範囲を不当に制限する要素と解釈してはならないことは、明確に理解されるべきである。
【0090】
IRM化合物
実施例で使用したIRM化合物を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
実施例1
幾つかの実験用に、フィコール(Ficol)勾配遠心分離により末梢血単核細胞(PBMC)をドナーから単離した。他の実験用に、ロイコフォレスした(leukophoresed)単核細胞を、カルフォルニア州バークレイにあるオールセルズLLC(AllCells,LLC,Berkeley,CA)から入手した。単球由来マクロファージおよび樹状細胞は、CD14+細胞のポジティブセレクションを使用して、ミルテニー(Miltenyi)マイクロビーズ(カリフォルニア州オーバーンにあるミリテニー・バイオテック社(Miltenyi Biotec Inc.,Auburn,CA))を用いてPBMCから調製した。樹状細胞は、33ng/mLのIL−4および66ng/mLのGM−CSFを使用して、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI 1640中で分化させ、マクロファージは、25ng/mLのM−CSFを使用して、37℃で7日間、分化させた。
【0093】
IRM化合物は、DMSOで1000倍原液として調製した。PBMCは、エキソビボ(Ex−Vivo)20媒体で、およそ3.0×106細胞/mLに希釈し、ウェル当たり1.0mLを96ディープウェルプレートに分配した。細胞を、37℃で1時間、平衡化させ、次いで、IRM化合物を培養に加えた。
【0094】
指示された各時点に、細胞を以下の通りに回収した。PBMCおよび樹状細胞は、該プレートを、キアゲン・シグマ(Qiagen SIGMA)遠心分離機(カリフォルニア州バレンシアにあるキアゲン社(Qiagen Inc.,Valencia,CA))で、4℃にて1500RPM、360RCFで遠心分離することにより回収した。次いで媒体を真空吸引し、1.0% 2−メルカプトエタノールを含むRLT緩衝溶液400μLを各ウェルに加えた。マクロファージ培養は、該媒体の吸引、およびRLT緩衝溶液をウェルに直接添加することによって回収した。全RNAは、キアゲン・バイオロボット(Qiagen BioRobot)8000(カリフォルニア州バレンシアにあるキアゲン社(Qiagen Inc.,Valencia,CA))を用いて、DNA分解酵素(DNase)消化工程を組み入れた半自動化手順を使用して精製した。
【0095】
精製した全RNAをコスター(Costar)3565プレートに移し、モレキュラー・デバイセズ・スペクトロマックス384プラス(Molecular Devices SpectroMax 384 Plus)(カリフォルニア州サニーベールにあるモレキュラー・デバイセズ社(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA))を使用して、260nmおよび280nmにおける光学密度を読み取った。次いで、該RNAをエタノール沈殿させ、洗浄し、そのペレットを水10μL中に再懸濁させた。cDNAは、ランダムプライミングおよび全RNA 2〜3μgを使用し、インビトロジェン・スーパースクリプト(Invitrogen Superscript)IIキット(カリフォルニア州カールスバッドにあるインビトロジェン社(Invitrogen Corp.,Carlsbad,CA))を用いて作製した。PCRは、ABI 7900(カリフォルニア州フォスター・シティにあるアプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems Corp.,Foster City,CA))、およびタクマンケミストリー(Taqman(登録商標)chemistry)付384ウェルマイクロフルイディック・カード(Microfluidic Card)を使用して実施し、マスター・ミックス(master mix)中2ng/μLのcDNAを使用して、反応を標準化した。サイクル条件は、50℃10分間、95℃2分間、次いで35サイクルの95℃ 30秒間、および60℃1分間であった。データは、SDS 2.0ソフトウェア(アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems,Inc.))を使用し、閾値0.1を使用して解析した。結果をエクセル(Excel)にインポートし、ΔΔCt法を使用して、発現倍数変化を算出した。(ユーザー・ブレティン(User Bulletin)#2、PEアプライド・バイオシステムズ社(PE Applied BioSystems,Inc.))。シグナルの正規化は、ハウスキーピング遺伝子、GAPDHを使用して実施した。
【0096】
実施例2
フェーズII、二重盲検、媒体対照、無作為、並行群試験には、組織学的に確認された光線性角化症(AK)に罹患した男性対象17例が含まれていた。5%クリーム剤として製剤化されたIRM5(ミネソタ州セントポールにあるスリーエム・ファーマシューティカルズから販売されているアルダラ(ALDARA,3M Pharmaceuticals,St.Paul,MN)または媒体クリームのいずれかを受けるように、3:1の比率で、適格対象を無作為化した。試験対象は、禿げかかった頭皮上に、薄片生検に適当な、面積25cm2以内の、臨床的に代表的な、不連続の、明白なAK病変を少なくとも5つ有していた。
【0097】
対象は、被験クリーム1袋(250mg)を、週3回、4週間、治療領域に塗布した。各用量の被験クリームは、各投与日のほぼ同じ時刻に、通常の睡眠時間の前に塗布され、およそ8時間、皮膚上に残るはずであった。
【0098】
各対象には、最高8つの薄片生検を実施することができた。治療開始来院時およびその後の全ての来院時に得られた生検サンプルを、遺伝子の発現分析に指定した。治療開始来院時(T=0)に、AK遺伝子発現のベースラインを確定するために、治療領域の無処置病変を生検した(サンプルシリーズA)。やはりこの来院時に、病変を含まない治療領域外にある頭皮の日光露光部を生検し(サンプルシリーズB)、病変を含まない身体の日光非露光部も同様に生検した(サンプルシリーズC)。日光非露光部生検は、遺伝子発現に関するベースラインコントロールを確定するために使用した。
【0099】
治療領域の残りの病変の1つの生検は、1週間の治療後(サンプルシリーズD)、2週間の治療後(サンプルシリーズE)、4週間の治療後(サンプルシリーズF)、および4週間の治療が完了した4週間後(すなわち、T=8、(サンプルシリーズG))に、採取した。
【0100】
【表2】

【0101】
各サンプルからRNAを抽出し、TLR1、TLR3、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、およびTLR10の発現を、実施例1に記載の通りに解析した。最高の応答時点(すなわち、シリーズD、E、FおよびGの中で最高の応答)を使用して、シリーズC(日光非露光部の非AK皮膚)に対する、表示したTLRの発現の変化を計算した。
【0102】
未処置AK病変とIRM5治療AK病変との間の倍数変化の差を決定するために、データのANOVA(分散分析)を実施した。P値≦0.05は、未処置AK生検サンプルとIRM治療AK生検サンプルとの間の、TLR発現の統計学的有意差を示す。結果を表3に示す。
【0103】
【表3】

【0104】
本書に引用されている、特許の全開示内容、特許書類および出版物は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体を参照により本書に援用する。闘争の場合には、定義を含む本明細書が、調整するであろう。
【0105】
本発明に対する様々な修飾および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明白になるであろう。説明に役立つ実施形態および実施例は、例として提供されているに過ぎず、本発明の範囲を限定する意図はない。本発明の範囲は、以下の通りに記載されている特許請求の範囲のみによって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】PBMCにおける、IRM1によるTLR遺伝子発現の調節を示す。
【図2】IRM化合物による、PBMCにおけるTLR3遺伝子発現の調節を示す。
【図3】IRM化合物による、PBMCにおけるTLR7遺伝子発現の調節を示す。
【図4】IRM化合物による、PBMCにおけるTLR8遺伝子発現の調節を示す。
【図5】IRM化合物による、マクロファージにおけるTLR3遺伝子発現の調節を示す。
【図6】IRM化合物による、マクロファージにおけるTLR5遺伝子発現の調節を示す。
【図7】IRM化合物による、マクロファージにおけるTLR7遺伝子発現の調節を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を選択的に調節する化合物を認定する方法であって、以下のステップ:
(1)複数のTLR遺伝子のそれぞれの発現を検出するための分析法を提供すること;
(2)被験化合物を使用して各分析法を実施すること;及び
(3)前記被験化合物が、少なくとも1つの第2のTLR遺伝子の発現を調節するのとは異なる程度に、第1のTLR遺伝子の発現を調節するのであれば、前記被験化合物を、少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を選択的に調節する化合物として認定すること;
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記化合物が、第1のTLR遺伝子の発現を誘導し、かつ少なくとも1つの第2のTLR遺伝子の発現を誘導しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法により認定された化合物、およびその塩類。
【請求項4】
請求項1に記載の方法により認定された化合物、その薬学的に許容し得る塩、その誘導体、またはそのプロドラッグを含む医薬組成物。
【請求項5】
標的TLR遺伝子発現プロフィールを有する標的化合物を認定する方法であって、以下のステップ:
(1)標的TLR遺伝子発現プロフィールを選択すること;
(2)被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールを決定すること;及び
(3)前記被験化合物の前記TLR遺伝子発現プロフィールが、前記標的TLR遺伝子発現プロフィールを含むのであれば、前記被験化合物を、標的化合物として認定すること;
を含む、前記方法。
【請求項6】
前記標的TLR遺伝子発現プロフィールが、標的化合物により検出可能に誘導されない1つ以上のTLR遺伝子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
被験化合物のTLR遺伝子発現プロフィールを決定することが、TLR遺伝子の発現を検出するための少なくとも1つの分析法を実施することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法により標的化合物として認定された化合物、またはその薬学的に許容し得る形態。
【請求項9】
請求項5に記載の方法により認定された標的化合物、その薬学的に許容し得る形態、その誘導体、またはそのプロドラッグを含む医薬組成物。
【請求項10】
免疫系の選択された細胞集団におけるTLR遺伝子の発現を調節する方法であって、以下のステップ:
(1)第1の免疫系細胞集団および第2の免疫系細胞集団を認定すること;
(2)第2の細胞集団における同一のTLR遺伝子の発現を調節するのとは異なる程度に、第1の細胞集団のTLR遺伝子の発現を調節する化合物を選択すること;及び
(3)前記免疫系の細胞を、前記細胞集団の少なくとも1つにおける少なくとも1つのTLR遺伝子の発現を調節するのに有効な量の前記選択された化合物と接触させること;
を含む、前記方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの細胞集団を、前記選択された化合物とin vitroで接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの細胞集団を、前記選択された化合物とin vivoで接触させる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
対象における複数のTLR遺伝子の少なくとも1つの発現を選択的に調節することにより治療可能な状態を治療する方法であって、以下のステップ:
(1)前記状態の治療に有効な標的TLR発現プロフィールを認定すること;
(2)前記標的プロフィールに一致するTLR発現プロフィールを有する化合物を選択すること;及び
(3)前記状態を治療するのに有効な前記化合物のある量を前記対象に投与すること;
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記状態が、感染症または新生物の状態である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記感染症が、ウイルス性疾患、真菌病、寄生虫病、細菌性疾患、またはプリオン介在性疾患である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記新生物の状態が、上皮内新生物、前癌新生物、または癌である、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−505629(P2007−505629A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527099(P2006−527099)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030693
【国際公開番号】WO2005/029037
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】