説明

TNFα抗体および他の薬剤の使用

【課題】TFNα活性が有害である障害を、ヒトの腫瘍壊死因子α(hTNFα)に特異的に結合するヒト抗体を用いて治療する方法の提供。
【解決手段】該抗体、好ましくは組み換え型ヒト抗体を、障害の治療に有用な、一種以上の他の薬剤と組み合わせて隔週で皮下投与することによって治療する方法。該抗体は、全長の抗体またはその抗原結合部分であることが好ましい。また医薬組成物および投与のための取扱説明書を含むキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、単球およびマクロファージを含めた非常に多くのタイプの細胞によって生産されるサイトカインであり、当初は特定のマウスの腫瘍の壊死を誘導するその能力に基づいて特定された(たとえばオールド,エル.(Old,L.)、(1985) Science 230:630−632を参照すること)。その後、悪液質と関係があるカケクチンと称される因子がTNFαと同一の分子であることが示された。TNFαは、ショックの仲介に関係している(たとえば、ビュートラー,ビー.およびセラミ,エイ.(Beutler,B.and Cerami,A.)、(1988)Annu.Rev.Biochem.57:505−518;ビュートラー,ビー.およびセラミ,エイ.、(1989)Annu.Rev.Immunol.:625−655を参照すること)。さらに、TNFαは、敗血症、感染症、自己免疫疾患、移植片の拒絶反応および移植片対宿主疾患を含めた他の種々のヒトの疾患および障害の病態生理に関係している(たとえば、バシリ,ピー.(Vasilli,P.)、(1992)Annu.Rev.Immunol.10:411−452;トレーシー,ケイ.ジェイ.およびセラミ,エイ.(Tracey,K.J.and Cerami,A.)、(1994)Annu.Rev.Med.45:491−503を参照すること)。
【0002】
種々のヒトの障害におけるヒトTNFα(hTNFα)の有害な役割のせいで、hTNFα活性を阻害するかまたは打ち消すための治療計画が設計されてきた。とりわけ、hTNFαと結合し、そしてそれを中和する抗体が、hTNFα活性を阻害するための手段として求められてきた。このような抗体の最も初期のもののうちのいくつかは、マウスのモノクローナル抗体(mAb)であり、このものは、hTNFαで免疫化されたマウスのリンパ球から調製されたハイブリドーマによって分泌された(たとえば、ハーン,ティー(Hahn T);ら、(1985)Proc Natl Acad Sci USA 82:3814−3818;リャン,シー−エム.(Liang,C−M.)ら、(1986)Biochem.Biophys.Res.Commun.137:847−854;ヒライ,エム.(Hirai,M.)ら、(1987)J.Immunol.Methods 96:57−62;フェンドリー,ビー.エム.(Fendly,B.M.)ら、(1987)Hybridoma :359−370;モラー,エイ.(Moeller,A.)ら、(1990)Cytokine :162−169;モラーらの米国特許第5,231,024号;ウォーラック,ディー.(Wallach,D.)による欧州特許公報第186 833 B1号;オールドらによる欧州特許公開公報第218 868 A1号;モラー,エイ.らによる欧州特許公報第260 610 B1号を参照すること)。多くの場合、これらのマウス抗hTNFα抗体はhTNFαに対して高い親和性を示し(たとえばKd≦10−9M)、かつhTNFα活性を中和することができたのだが、これらのものをインビボで用いることは、マウスの抗体をヒトに投与することに伴う問題点(たとえば、血清中の半減期が短いこと、ヒトの特定のエフェクター機能を引き起こす能力を奪うこと、およびヒトにおけるマウス抗体に対する不必要な免疫応答(「ヒト抗マウス抗体」(HAMA)反応)を導くことなど)によって、制限を受けるのかもしれない。
【0003】
ヒトにおいて完全なマウスの抗体を用いることに伴う問題点を克服しようとして、マウスの抗hTNFα抗体の遺伝子を操作して、より「ヒトのような」ものにしてきた。たとえば、キメラ抗体(その抗体における抗体の鎖の可変領域がマウス由来のものであり、かつ抗体の鎖の定常領域がヒト由来のものである)が調製された(ナイト,ディー.エム(Knight,D.M)ら、(1993) Mol.Immunol.30:1443−1453;ダッドナ,ピー.イー.(Daddona,P.E.)らによるPCT公報WO 92/16553号)。さらに、ヒト化抗体(その抗体における抗体の可変領域の超可変領域がマウス由来のものであるが、可変領域の残りと抗体の定常領域はヒト由来のものである)も調製された(アデア,ジェイ.アール.(Adair,J.R.)らによるPCT公報WO 92/11383号)。しかしながら、これらのキメラ抗体およびヒト化抗体はそれでもなお、いくらかのマウスの配列を保持しているので、不必要な免疫反応を、特に長期間、たとえば慢性関節リウマチなどの慢性的な適応症のために投与する場合にはヒト抗キメラ抗体(HACA)反応をやはり惹起するかもしれない(たとえば、エリオット,エム.ジェイ.(Elliott,M.J.)ら、(1994)Lancet 344:1125−1127;エリオット,エム.ジェイ.ら、(1994)Lancet 344:1105−1110を参照すること)。
【0004】
マウスのmAbまたはその誘導体(たとえばキメラ抗体またはヒト化抗体)に対する好ましいhTNFα阻害剤は、全体がヒト抗hTNFα抗体である。というのは、たとえ長期間用いる場合であっても、このような薬剤はHAMA反応を惹起すべきではないからである。ヒトのハイブリドーマ技術を利用して、hTNFαに対するヒトモノクローナル自己抗体が調製された(ボイル,ピー.(Boyle,P.)ら、(1993)Cell.Immunol.152:556−568;ボイル,ピー.ら、(1993)Cell.Immunol.152:569−581;ボイルらによる欧州特許公開公報第614 984 A2号)。しかしながら、これらのハイブリドーマ由来のモノクローナル自己抗体は、hTNFαに対する親和性があまりにも弱いために従来法によって計算できないことが報告され、可溶性hTNFαと結合する能力がなく、そしてhTNFαに誘導される細胞毒性を中和する能力がなかった(上掲のボイルらを参照すること)。さらに、ヒトのハイブリドーマ技術が成功するかどうかは、ヒトの末梢血中の、hTNFαに対して特異的な自己抗体を生産するリンパ球に関する自然の存在次第である。ある研究では、ヒトの被験体の血清においてhTNFαに対する自己抗体が検出された(フォムズガード,エイ.(Fomsgaard,A.)ら、(1989)Scand.J.Immunol.30:219−223;ベンテン,ケイ.(Bendtzen,K.)ら、(1990)Prog.Leukocyte Biol.10B:447−452)。それに対して他の研究では検出されなかった(ロイシュ,エイチ−ジー.(Leusch,H−G.)ら、(1991)J.Immunol.Methods 139:145−147)。
【0005】
天然型のヒト抗hTNFα抗体に代わるものとしては、組み換え型hTNFα抗体がある。比較的親和性が弱く(すなわち、Kは約10−7M)、かつ解離速度が速い(すなわち、Koffは約10−2sec−1)組み換え型ヒト抗体であってhTNFαと結合する組み換え型ヒト抗体が記載された(グリフィス,エイ.ディー.(Griffiths,A.D.)ら、(1993)EMBO J.12:725−734)。しかしながら、これらの解離動態は比較的速いために、これらの抗体は治療用途には適さないかもしれない。さらに、hTNFα活性を中和するどころか、むしろ細胞表面へのhTNFαの結合を促進し、かつhTNFαの内在化を促進するような組み換え型ヒト抗hTNFαが記載された(リドバリー,エイ.(Lidbury,A.)ら、(1994) Biotechnol.Ther.:27−45;アストン,アール.(Aston,R.)らによるPCT公報WO 92/03145号)。
【0006】
高い親和性で可溶性hTNFαと結合し、解離動態が遅く、そして(インビトロおよびインビボでの)hTNFαに誘導される細胞毒性ならびにhTNFαに誘導される細胞の活性化を含めたhTNFα活性を中和する能力を有する組み換え型ヒト抗体も記載された(米国特許第6,090,382号を参照すること)。週に一回の頻度で抗体を静脈内に投与するための典型的なプロトコールを実施する。抗体および/または任意の薬剤を毎週投与することは、費用と手間がかかる可能性があり、そして結果的に、頻繁な投与によって副作用の頻度が増加する可能性がある。静脈内投与には、多くの場合その投与が誰かの医学訓練として行われるという制限もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,231,024号
【特許文献2】欧州特許公報第186 833 B1号
【特許文献3】欧州特許公開公報第218 868 A1号
【特許文献4】欧州特許公報第260 610 B1号
【特許文献5】国際公開第92/16553号
【特許文献6】国際公開第92/11383号
【特許文献7】欧州特許公開公報第614 984 A2号
【特許文献8】国際公開第92/03145号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】オールド,エル.(Old,L.)、(1985)Science 230:630−632
【非特許文献2】ビュートラー,ビー.およびセラミ,エイ.(Beutler,B.and Cerami,A.)、(1988)Annu.Rev.Biochem.57:505−518
【非特許文献3】ビュートラー,ビー.およびセラミ,エイ.、(1989)Annu.Rev.Immunol.7:625−655
【非特許文献4】バシリ,ピー.(Vasilli,P.)、(1992)Annu.Rev.Immunol.10:411−452
【非特許文献5】トレーシー,ケイ.ジェイ.およびセラミ,エイ.(Tracey,K.J.and Cerami,A.)、(1994)Annu.Rev.Med.45:491−503
【非特許文献6】ハーン,ティー(Hahn T);ら、(1985)Proc Natl Acad Sci USA 82:3814−3818
【非特許文献7】リャン,シー−エム.(Liang,C−M.)ら、(1986)Biochem.Biophys.Res.Commun.137:847−854
【非特許文献8】ヒライ,エム.(Hirai,M.)ら、(1987)J.Immunol.Methods 96:57−62
【非特許文献9】フェンドリー,ビー.エム.(Fendly,B.M.)ら、(1987)Hybridoma 6:359−370
【非特許文献10】モラー,エイ.(Moeller,A.)ら、(1990)Cytokine 2:162−169
【非特許文献11】ナイト,ディー.エム(Knight,D.M)ら、(1993)Mol.Immunol.30:1443−1453
【非特許文献12】エリオット,エム.ジェイ.(Elliott,M.J.)ら、(1994)Lancet 344:1125−1127
【非特許文献13】エリオット,エム.ジェイ.ら、(1994)Lancet 344:1105−1110
【非特許文献14】ボイル,ピー.(Boyle,P.)ら、(1993)Cell.Immunol.152:556−568
【非特許文献15】ボイル,ピー.ら、(1993)Cell.Immunol.152:569−581
【非特許文献16】フォムズガード,エイ.(Fomsgaard,A.)ら、(1989) Scand.J.Immunol.30:219−223
【非特許文献17】ベンテン,ケイ.(Bendtzen,K.)ら、(1990)Prog.Leukocyte Biol.10B:447−452
【非特許文献18】ロイシュ,エイチ−ジー.(Leusch,H−G.)ら、(1991) J.Immunol.Methods 139:145−147
【非特許文献19】グリフィス,エイ.ディー.(Griffiths,A.D.)ら、(1993)EMBO J.12:725−734
【非特許文献20】リドバリー,エイ.(Lidbury,A.)ら、(1994)Biotechnol.Ther.5:27−45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、TNFαに関連する障害(たとえば、敗血症、自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎およびネフローゼ症候群など)、感染症、悪性腫瘍、移植片の拒絶反応または移植片対宿主疾患、肺疾患、骨疾患、腸疾患、中枢神経系の障害、心疾患)を治療するために、一種以上の薬剤と共に抗TNFα抗体を投与する方法を提供する。治療される自己免疫疾患としては、慢性関節リウマチが好ましい。
【0010】
他の(単数または複数の)薬剤の投与の前に、投与と一緒にまたは投与後に、抗体を投与してもよい。本発明の方法は、抗体および他の(単数または複数の)薬剤のあらゆる投与順序、ならびにあらゆる投与手段を包含する。TNFαに関連する障害を治療するために隔週で投与する計画にて、好ましくは皮下経路を経て抗体を投与することが好ましい。
【0011】
他の薬剤としては、疾患修飾化抗リウマチ薬(DMARD)もしくは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、もしくはステロイド剤またはそれらの任意の組み合わせが好ましい。DMARDの好ましい例は、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、注射用金製剤、経口用金製剤およびスルファサラジンである。これらの方法には、ヒト抗体を、別の治療剤(たとえば、他の標的と結合する一種以上のさらなる抗体(他のサイトカイン類と結合または細胞表面分子と結合する抗体など)、一種以上のサイトカイン類、可溶性TNFα受容体(たとえばPCT公報WO 94/06476号を参照すること)、イミュネックス社(Immunex Corporation)のエタネルセプト(ENBREL(商標))およびセントコア社(Centocor,Inc.)のインフリキシマブ(REMICADE(商標))および/またはhTNFαの生産または活性を阻害する一種以上の化学薬品(たとえばPCT公報WO 93/19751号に記載されているようなシクロヘキサン−イリデン誘導体))と共に、被験体に投与するという組合せ療法を利用することが包含される。
【0012】
本発明の別の側面は、抗TNFα抗体および自己免疫疾患の治療に有用な一種以上の薬剤ならびに医薬適合性の担体を含有する医薬組成物に関する。
【0013】
本発明の別の側面は、抗TNFα抗体および医薬適合性の担体を含有する医薬組成物、ならびに自己免疫疾患の治療に有用な薬剤および医薬適合性の担体をそれぞれ含有する一種以上の医薬組成物を含むキットに関する。あるいは、このキットは、抗TNFα抗体、自己免疫疾患の治療に有用な一種以上の薬剤および医薬適合性の担体を含有する単一の医薬組成物を含む。このキットは、抗TNFα抗体の投与が有用である障害(たとえば自己免疫疾患、特に慢性関節リウマチ)の治療のための医薬組成物を投与するための取扱説明書、を含む。
【0014】
抗体またはその抗原結合部分としては、ヒトTNFαに特異的に結合する組み換え型ヒト抗体が好ましい。抗体としては、ヒトTNFαに特異的に結合する組み換え型ヒト抗体が好ましい。本発明の抗体は、高い親和性でhTNFαに結合し、解離動態が遅く、そして(インビトロおよびインビボでの)hTNFαに誘導される細胞毒性およびhTNFαに誘導される細胞の活性化を含めたhTNFα活性を中和することを特徴とする。この抗体またはその抗原結合部分としては、共に表面プラズモン共鳴によって測定されるKが1×10−8M以下かつKoff速度定数が1×10−3−1以下にてヒトTNFαから解離し、かつ標準的なインビトロのL929アッセイでのIC50が1×10−7M以下にてヒトTNFαの細胞毒性を中和するものが好ましい。より好ましいものは、Koffが5×10−4−1以下にてヒトTNFαから解離する、単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分であり、さらに好ましいものは、Koffが1×10−4−1以下にて解離するものである。さらに好ましい単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分は、標準的なインビトロのL929アッセイでのIC50が1×10−8M以下にてヒトTNFαの細胞毒性を中和するものであり、より好ましいものは、IC50が1×10−9M以下にて中和するものであり、特に好ましいものは、IC50が1×10−10M以下にて中和するものである。抗体は全長(たとえばIgG1抗体またはIgG4抗体)であってもよく、または一つの抗原結合部分(たとえばFab、F(ab’)、scFv断片または単一のドメイン)のみを含むものであってもよい。本発明の最も好ましい組み換え型抗体(D2E7と称されるもの)は、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR3ドメイン、および配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖のCDR3ドメインを有する。配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)とを有するD2E7抗体が好ましい。これらの抗体は米国特許第6,090,382号に記載されており、その全体が本明細書に参考として援用されている。
【0015】
次の特徴:
a)表面プラズモン共鳴によって測定されるKoffが1×10−3−1以下にてヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR3ドメイン、配列番号3からの1番目、4番目、5番目、7番目もしくは8番目の位置でただ一つのアラニン置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR3ドメイン、または1番目、3番目、4番目、6番目、7番目、8番目および/または9番目の位置で1〜5個の同類アミノ酸置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR3ドメインを有する;
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖のCDR3ドメイン、配列番号4からの2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、8番目、9番目、10番目もしくは11番目の位置でただ一つのアラニン置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含む重鎖のCDR3ドメイン、または2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、8番目、9番目、10番目、11番目および/または12番目の位置で1〜5個の同類アミノ酸置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含む重鎖のCDR3ドメインを有する;
を有する抗体またはその抗原結合部分が好ましい。
【0016】
offが5×10−4−1以下にてヒトTNFαから解離する抗体またはその抗原結合部分がより好ましい。Koffが1×10−4−1以下にてヒトTNFαから解離する抗体またはその抗原結合部分がさらに好ましい。
【0017】
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン、または配列番号3からの1番目、4番目、5番目、7番目もしくは8番目の位置でただ一つのアラニン置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有するLCVRを、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン、または配列番号4からの2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、8番目、9番目、10番目もしくは11番目の位置でただ一つのアラニン置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有するHCVRと共に含む、抗体またはその抗原結合部分が好ましい。LCVRが配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインをさらに有し、かつHCVRが配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR2ドメインをさらに有することが、より好ましい。LCVRが配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1ドメインをさらに有し、かつHCVRが配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1ドメインを有することが、さらに好ましい。
【0018】
配列番号1のアミノ酸配列を含むLCVRおよび配列番号2のアミノ酸配列を含むHCVRを含む、抗体またはその抗原結合部分が好ましい。特定の実施態様においては、抗体はIgG1の重鎖定常領域またはIgG4の重鎖定常領域を有する。さらに別の実施態様においては、抗体はFab断片、F(ab’)断片または単鎖Fv断片である。
【0019】
さらに他の実施態様においては、抗TNFα抗体の投与が有効である障害を、一種以上の抗TNFα抗体またはその抗原結合部分を隔週で被験体に皮下投与することによって治療する方法が、本発明によって提供される。配列番号3、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有するLCVRを含むか、または配列番号4、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34および配列番号35からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有するHCVRと共に含む、抗体またはその抗原結合部分が好ましい。
【0020】
本発明の上記の実施態様のうちで最も好ましいものは、抗体がD2E7であって、40mgの投与量にて隔週で皮下に投与する実施態様である。一種以上の他の薬剤の投与量は、その有効投与量に従う。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、抗TNFα抗体の投与が有効である障害を治療する方法であって、その障害が治療されるように、一種以上の他の薬剤と共に、高い親和性、遅い解離速度かつ高い中和能力にてヒトTNFαと結合する単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分を投与する工程を含む方法に関する。
【0022】
本発明の理解がより容易となるように、特定の用語を最初に定義する。
【0023】
本明細書で用いられる「投与すること」という用語は、治療目的(たとえばTNFαに関連する障害の治療)を達成するために、物質(たとえば抗TNFα抗体)を投与することを意味する。
【0024】
本明細書で用いられる「隔週で投与する計画」、「隔週で投与すること」、および「隔週投与」という用語は、治療目的(たとえばTNFαに関連する障害の治療)を達成するために、物質(たとえば抗TNFα抗体)を被験体に投与することの時間的経過を意味する。隔週で投与する計画は、毎週投与する計画を包含することを意図しない。9〜19日ごとに物質を投与することが好ましく、11〜17日ごとに投与することがより好ましく、13〜15日ごとに投与することがさらに好ましく、14日ごとに投与することが特に好ましい。
【0025】
本明細書で用いられる「組合せ療法」という用語は、二種以上の治療用物質(たとえば抗TNFα抗体とDMARDまたはNSAIDなどの他の薬剤)を投与することを意味する。抗TNFα抗体の投与と同時に、投与の前に、または投与後に、他の(単数または複数の)薬剤を投与してもよい。
【0026】
本明細書で用いられる「ヒトTNFα」(本明細書ではhTNFαまたは単にhTNFと略記する)という用語は、17kDの分泌型および26kDの膜結合型として存在するヒトのサイトカインを意味する意図であり、このものの生物的に活性な形態は、17kDの分子が非共有的に結合した三量体からなる。TNFαの構造は、たとえば、ペニーカ,ディー.(Pennica,D.)ら、(1984)Nature 312:724−729;デイビス,ジェイ.エム.(Davis,J.M.)ら、(1987)Biochemistry 26:1322−1326;およびジョーンズ,イー.ワイ.(Jones,E.Y.)ら、(1989)Nature 338:225−228にさらに記載されている。ヒトTNFαという用語は、組み換え型ヒトTNFα(rhTNFα)を包含する意図であり、このものは、標準的な組み換え発現法によって調製することができ、または市販のもの(アール・アンド・ディー・システムズ(R and D Systems)社、カタログ番号210−TA、ミネアポリス、ミネソタ州)を購入することができる。
【0027】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、四本のポリペプチド鎖からなる免疫グロブリン分子を意味する意図であり、二本の重(H)鎖と二本の軽(L)鎖はジスルフィド結合によって相互に連結している。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略記する)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、三つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)からなる。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略記する)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、一つのドメインであるCLからなる。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称するより保存性の高い領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称する超可変領域にさらに細分することができる。それぞれのVHおよびVLは三つのCDRと四つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端まで、次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列している。
【0028】
本明細書で用いられる、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体の一部分」)という用語は、抗原(たとえばhTNFα)と特異的に結合する能力を保持する抗体の一つ以上の断片を意味する。全長の抗体の断片によって、抗原と結合するという抗体の機能を発揮できることが示された。「抗原結合部分」という用語の範囲内に含まれる抗体の結合性断片の具体例としては、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合された二つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(ワード(Ward)ら、(1989)Nature 341:544−546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が包含される。そのうえ、Fv断片の二つのドメインであるVLおよびVHは異なる遺伝子にコードされているが、VL領域およびVH領域が組になって一価分子を形成するような単一のタンパク質鎖としてこれらを形成させることができる合成リンカーによって組み換え法を用いてこれらを結合することができる(この一価分子は単鎖Fv(scFv)として知られている;たとえば、バード(Bird)ら、(1988)Science 242:423−426;およびヒューストン(Huston)ら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照すること)。このような単鎖抗体を、抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含することも意図される。二重特異性抗体などの単鎖抗体の他の形態も包含される。二重特異性抗体(diabody)とは、二重に特異性を持つ二価の抗体であり、ここで、この中のVHドメインおよびVLドメインは単一のポリペプチド鎖上に発現しているが、同一の鎖上で二つのドメイン間での対形成ができないような極めて短いリンカーを用いることによって、これらのドメインを別の鎖の相補的なドメインと対形成させて二つの抗原結合部分が作られている(たとえば、ホリガー,ピー.(Holliger,P.)ら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;ポリャック,アール.ジェイ.(Poljak,R.J.)ら、(1994)Structure :1121−1123を参照すること)。
【0029】
さらに、抗体またはその抗原結合部分は、より大きなイムノアドヘシン分子の一部でもよく、ここで、この分子は、抗体または抗体の一部分と、一種以上の他のタンパク質またはペプチドとが共有的にまたは非共有的に結合して形成されるものである。このようなイムノアドヘシン分子の具体例としては、四量体scFv分子を作製するために用いられるストレプトアビジンのコア領域(キプリヤノフ,エス.エム.(Kipriyanov,S.M.)ら、(1995)Human Antibodies and Hybridomas :93−101)、ならびにビオチン化された二価のscFv分子を作製するために用いられるシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端のポリヒスチジンタグ(キプリヤノフ,エス.エム.ら、(1994)Mol.Immunol.31:1047−1058)が挙げられる。従来の技術(たとえば、抗体全体をそれぞれパパインまたはペプシンで消化すること)を用いて、抗体全体からFab断片およびF(ab’)断片などの抗体の一部分を調製することができる。さらに、上記のような標準的な組み換えDNA技術を用いて、抗体、抗体の一部分およびイムノアドヘシン分子を得ることができる。
【0030】
本明細書で用いられる「ヒト抗体」という用語は、ヒトの生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を包含する意図である。本発明のヒト抗体には、例えばCDR、特にCDR3において、ヒトの生殖細胞系列の免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(たとえば、インビトロでのランダム突然変異または部位特異的突然変異によって導入された突然変異体、またはインビボでの体細胞変異によって導入された突然変異体)が含まれてもよい。しかしながら、本明細書で用いられる「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するその中のCDR配列がヒトのフレームワーク配列上にグラフトされた抗体を包含することは意図しない。
【0031】
本明細書で用いられる「組み換え型ヒト抗体」という用語は、組み換え手段によって調製された、発現された、作製されたまたは単離されたすべてのヒト抗体(たとえば、宿主細胞内にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを用いて発現された抗体(下記のII部でさらに記載されている)、組み換え型ヒト抗体の組合せライブラリーから単離された抗体(下記のIII部でさらに記載されている)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックな動物(たとえばマウス)から単離された抗体(たとえばテイラー,エル.ディー.(Taylor,L.D.)ら、(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295を参照すること))または、他のDNA配列に対するヒトの免疫グロブリンの遺伝子配列のスプライシングを含む、他のあらゆる手段によって調製された、発現された、作製されたまたは単離された抗体を包含する意図である。このような組み換え型ヒト抗体は、ヒトの生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、特定の実施態様においては、このような組み換え型ヒト抗体をインビトロでの突然変異誘発に付して(またはヒトIg配列についてのトランスジェニック動物を用いる場合はインビボの体細胞変異誘発に付して)、それによって組み換え型抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列を、ヒトの生殖細胞系列のVH配列およびVL配列に由来し、それらに関連するものであると同時に、インビボでの天然のヒト抗体の生殖細胞系列のレパートリーの範囲内には存在しないかもしれない配列とする。
【0032】
本明細書で用いられる「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を意味する意図である(たとえば、単離された、hTNFαと特異的に結合する抗体は、hTNFα以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、単離された、hTNFαと特異的に結合する抗体は、他の抗原(たとえば(下記にてより詳細に検討される)他の種に由来するhTNFα分子)に対する交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞性成分および/または化合物を実質的に含まない。
【0033】
本明細書で用いられる「中和抗体」(または「hTNFα活性を中和する抗体」)とは、それがhTNFαと結合すると、hTNFαの生物活性の阻害を生ずる抗体を意味する意図である。hTNFαの生物活性の一種以上の指標(たとえば、(インビトロまたはインビボのいずれかにおける)hTNFαに誘導される細胞毒性、hTNFαに誘導される細胞の活性化、およびhTNFα受容体に対するhTNFαの結合性)を測定することによって、hTNFαの生物活性のこの阻害を評価することができる。当該技術分野で公知のインビトロまたはインビボでの数種のアッセイ(米国特許第6,090,382号を参照すること)のうちの一種以上によって、hTNFαの生物活性のこれらの指標を評価することができる。hTNFαに誘導されるL929細胞の細胞毒性の阻害によって、hTNFα活性を中和する抗体の能力を評価することが好ましい。hTNFα活性の追加のまたは代替的なパラメータとして、hTNFαに誘導されるHUVEC上でのELAM−1の発現を阻害する抗体の能力を、hTNFαに誘導される細胞の活性化の指標と同様に評価することができる。
【0034】
本明細書で用いられる「表面プラズモン共鳴」という用語は、ある光学現象を意味し、この光学現象によって、バイオセンサー・マトリクス内のタンパク質濃度の変化を検出することによる生物特異的相互作用のリアルタイム分析が可能となる。たとえば、BIAcoreシステム(ファルマシア(Pharmacia)社のBiosensor AB、ウプサラ、スウェーデンおよびピスカタウェイ、ニュージャージー州)が用いられる。さらなる説明については、実施例1、ならびにイェンソン,ユー.(Joensson,U.)ら、(1993)Ann.Biol.Clin.51:19−26;イェンソン,ユー.ら、(1991)Biotechniques 11:620−627;ジョンソン,ビー.(Johnsson,B.)ら、(1995)J.Mol.Recognit.:125−131;およびジョンソン,ビー.ら、(1991)Anal.Biochem.198:268−277を参照すること。
【0035】
本明細書で用いられる「Koff」という用語は、抗体/抗原複合体から解離する抗体についての解離速度定数を意味する意図である。
【0036】
本明細書で用いられる「K」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を意味する意図である。
【0037】
本明細書で用いられる「核酸分子」という用語は、DNA分子およびRNA分子を包含する意図である。核酸分子は一本鎖でもまたは二本鎖でもよいが、二本鎖DNAが好ましい。
【0038】
hTNFαと結合する抗体または抗体の一部分(たとえばVH、VL、CDR3)をコードする核酸に関連して、本明細書で用いられる「単離された核酸分子」という用語は、その中の抗体または抗体の一部分をコードするヌクレオチド配列が、hTNFα以外の抗原と結合する抗体または抗体の一部分をコードする他のヌクレオチド配列を含んでいない核酸分子を意味する意図であり、ここで、他の配列とは、ヒトのゲノムDNAにおいて天然の状態でその核酸に隣接しているかもしれない配列である。したがって、たとえば、抗hTNFα抗体のVH領域をコードする本発明の単離された核酸は、hTNFα以外の抗原と結合する他のVH領域をコードする他のいかなる配列も含まない。
【0039】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、それに連結した別の核酸を輸送する能力を有する核酸分子を意味する意図である。ベクターの一つのタイプは「プラスミド」であり、このものは、追加のDNAセグメントがその中に連結されてもよい環状の二本鎖DNAループという意味である。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここでは、ウイルスゲノム内に追加のDNAセグメントが連結され得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内で自律複製する能力を有する(たとえば、細菌の複製起点と哺乳動物のエピソームベクターを有する細菌ベクター)。宿主細胞内への導入時に、宿主細胞のゲノム内に他のベクター(たとえば哺乳動物の非エピソームベクター)を組み込むことができ、それによって、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それに機能的に連結する遺伝子の発現を導く能力を有する。本明細書では、このようなベクターを「組み換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称する。一般的に、組み換えDNA技術において役立つ発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは最も広く用いられるベクターの形態なので、本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」とを相互に交換して用いてもよい。しかしながら、本発明は、ウイルスベクター(たとえば、複製能を欠損したレトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)などの他の形態の発現ベクターを包含することを意図し、これらのものは等価な機能を果たす。
【0040】
本明細書で用いられる「組み換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、その中に組み換え発現ベクターが導入された細胞を意味する意図である。このような用語は、特定の対象細胞だけではなく、そのような細胞の子孫をも意味する意図であることを理解すべきである。突然変異または環境の影響のいずれかによる特定の修飾が、後の世代では生じてもよいので、実際のところ、このような子孫は親細胞と同一ではないかもしれないが、それでもなお本明細書で用いられる「宿主細胞」という用語の範囲内に包含される。
【0041】
本発明の種々の側面を、ここにより詳細に説明する。
【0042】
本発明によって、抗TNFα抗体の投与が有効である障害を治療する方法が提供される。これらの方法には、高い親和性でヒトTNFαと結合し、解離速度が遅く、そしてそれを中和する能力が高い、単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分を、自己免疫疾患、とりわけ慢性関節リウマチの治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に隔週で皮下投与することが挙げられる。本発明のヒト抗体は、組み換え型ヒト抗hTNFα中和抗体であることが好ましい。本発明の組み換え型中和抗体としては、本明細書でD2E7(D2E7 VL領域のアミノ酸配列を配列番号1に示す;D2E7 VH領域のアミノ酸配列を配列番号2に示す)と称されるものが最も好ましく、このものを40mgの投与量で投与する。D2E7の特性は、サルフェルド(Salfeld)ら、米国特許第6,090,382号に記載されており、このものは、本明細書中に参考として援用されている。
【0043】
一つの側面において、本発明は、抗TNFα抗体および自己免疫疾患の治療に有用な一種以上の他の薬剤を投与することが有効である障害の治療に関する。これらの治療としては、D2E7抗体およびその抗体の一部分、D2E7に関係がある抗体およびその抗体の一部分、ならびにD2E7と等価の特性(たとえば、高い親和性でhTNFαと結合し、解離動態が遅く、そして中和能力が高いこと)を有する他のヒト抗体およびその抗体の一部分を隔週で皮下投与することが挙げられる。一つの実施態様においては、共に表面プラズモン共鳴によって測定されるKが1×10−8M以下かつKoff速度定数が1×10−3−1以下にてヒトTNFαから解離し、かつ標準的なインビトロのL929アッセイでのIC50が1×10−7M以下にてヒトTNFαの細胞毒性を中和する、単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分を用いての治療が、本発明によって提供される。Koffが5×10−4−1以下にてヒトTNFαから解離する、単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分がより好ましく、または、Koffが1×10−4−1以下にて解離するものがより好ましい。標準的なインビトロのL929アッセイでのIC50が1×10−8M以下にてヒトTNFαの細胞毒性を中和する、単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分がより好ましく、IC50が1×10−9M以下にて中和するものがさらに好ましく、IC50が1×10−10M以下にて中和するものがなお一層好ましい。好ましい実施態様においては、抗体は単離された組み換え型ヒト抗体またはその抗原結合部分である。
【0044】
抗体の重鎖のCDR3ドメインおよび軽鎖のCDR3ドメインが、抗原についての抗体の結合特異性/親和性において重要な役割を果たすことは、当該技術分野においては周知である。その結果、別の側面において、本発明は、hTNFαとの会合についての解離動態が遅いヒト抗体であって、かつD2E7のそれらと構造的に同一かまたは関連する軽鎖のCDR3ドメインおよび重鎖のCDR3ドメインを有するヒト抗体を皮下投与することによって、抗TNFα抗体の投与が有効であるの障害を治療する方法に関する。D2E7 VL CDR3の9番目の位置を、Koffに実質的な影響を与えることなくAlaまたはThrで占有することができる。その結果、D2E7 VL CDR3についてのコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列:Q−R−Y−N−R−A−P−Y−(T/A)(配列番号3)を含む。さらに、D2E7 VH CDR3の12番目の位置を、Koffに実質的な影響を与えることなくTyrまたはAsnで占有することができる。その結果、D2E7 VH CDR3についてのコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列:V−S−Y−L−S−T−A−S−S−L−D−(Y/N)(配列番号4)を含む。さらに、実施例2で示されるように、D2E7の重鎖および軽鎖のCDR3ドメインは、Koffの実質的な影響を伴わず、(VL CDR3内の1番目、4番目、5番目、7番目または8番目の位置において、またはVH CDR3内の2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、8番目、9番目、10番目または11番目の位置において)ただ一つのアラニン残基による置換を受けやすい。さらに、D2E7 VL CDR3ドメインおよびVH CDR3ドメインがアラニンによる置換を受けやすいことを考えれば、抗体の解離速度定数がなお小さいまま、CDR3ドメイン内の他のアミノ酸の置換、とりわけ同類アミノ酸による置換が可能かもしれないことを、当業者であれば理解する。本明細書で用いられる「同類アミノ酸の置換」とは、あるアミノ酸残基が類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置き換えられる置換である。当該技術分野においては、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが規定されており、塩基性側鎖(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(たとえば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(たとえば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。D2E7 VL CDR3ドメインおよび/またはD2E7 VH CDR3ドメイン内で、多くても1から5個の同類アミノ酸の置換がなされることが好ましい。D2E7 VL CDR3ドメインおよび/またはD2E7 VH CDR3ドメイン内で、多くても1から3個の同類アミノ酸の置換がなされることがより好ましい。さらに、hTNFαとの結合に決定的な位置のアミノ酸において、同類アミノ酸の置換がなされるべきではない。D2E7 VL CDR3の2番目および5番目の位置、ならびにD2E7 VH CDR3の1番目および7番目の位置は、hTNFαとの相互作用のために決定的であるように思われる。したがって、これらの位置において、同類アミノ酸の置換がなされないことが好ましい(D2E7 VL CDR3の5番目の位置におけるアラニンの置換は、上記のように許容し得るが)(米国特許第6,090,382号を参照すること)。
【0045】
その結果、別の実施態様においては、単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分を隔週で皮下投与することによって、自己免疫疾患の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、抗TNFα抗体を投与することが有効である障害を治療する方法が、本発明によって提供される。抗体またはその抗原結合部分は次の特徴を含むことが好ましい:
a)表面プラズモン共鳴によって測定されるKoff速度定数が1×10−3−1以下にてヒトTNFαから解離する;
b)配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR3ドメイン、配列番号3からの1番目、4番目、5番目、7番目もしくは8番目の位置でただ一つのアラニン置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR3ドメイン、または1番目、3番目、4番目、6番目、7番目、8番目および/または9番目の位置で1〜5個の同類アミノ酸置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含む軽鎖のCDR3ドメインを有する;
c)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖のCDR3ドメイン、配列番号4からの2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、8番目、9番目、10番目もしくは11番目の位置でただ一つのアラニン置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含む重鎖のCDR3ドメイン、または2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、8番目、9番目、10番目、11番目および/または12番目の位置で1〜5個の同類アミノ酸置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含む重鎖のCDR3ドメインを有する。
【0046】
offが5×10−4−1以下にてヒトTNFαから解離する抗体またはその抗原結合部分がより好ましい。Koffが1×10−4−1以下にてヒトTNFαから解離する抗体またはその抗原結合部分がさらに好ましい。
【0047】
さらに好ましい実施態様においては、配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン、または配列番号3からの1番目、4番目、5番目、7番目もしくは8番目の位置のただ一つのアラニン置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を、配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR3ドメイン、または配列番号4からの2番目、3番目、4番目、5番目、6番目、8番目、9番目、10番目もしくは11番目の位置でただ一つのアラニン置換による修飾を受けたアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)と共に含む、抗体またはその抗原結合部分が好ましい。LCVRが配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン(すなわちD2E7 VL CDR2)をさらに有し、かつHCVRが配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン(すなわちD2E7 VH CDR2)をさらに有することが、好ましい。LCVRが配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン(すなわちD2E7 VL CDR1)をさらに有し、かつHCVRが配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン(すなわちD2E7 VH CDR1)を有することが、さらに好ましい。VLについてのフレームワーク領域はVκIヒト生殖細胞系列ファミリーに由来するものが好ましく、A20ヒト生殖細胞系列Vk遺伝子に由来するものがより好ましく、米国特許第6,090,382号の図1Aおよび図1Bに示されるD2E7 VLフレームワーク配列に由来するものが特に好ましい。VHについてのフレームワーク領域は、V3ヒト生殖細胞系列ファミリーに由来するものが好ましく、DP−31ヒト生殖細胞系列のVH遺伝子に由来するものがより好ましく、米国特許第6,090,382号の図2Aおよび図2Bに示されるD2E7 VHフレームワーク配列に由来するものが特に好ましい。
【0048】
さらに別の実施態様においては、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)(すなわちD2E7 VL)および配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)(すなわちD2E7 VH)を含む抗体またはその抗原結合部分が好ましい。特定の実施態様においては、抗体は重鎖定常領域(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgDの定常領域)を含む。重鎖定常領域がIgG1の重鎖定常領域またはIgG4の重鎖定常領域であることが好ましい。そのうえ、抗体は軽鎖定常領域、すなわちκ軽鎖定常領域またはλ軽鎖定常領域のいずれかを含むことができる。κ軽鎖定常領域を含む抗体が好ましい。あるいは、抗体の一部分は、たとえばFab断片または単鎖Fv断片であってもよい。
【0049】
さらに他の実施態様においては、D2E7に関係があるVL CDR3ドメインおよびVH CDR3ドメイン(たとえば、配列番号3、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25および配列番号26からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を伴うか、または、配列番号4、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34および配列番号35からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を伴う、抗体またはその抗原結合部分)を含む抗体またはその抗原結合部分が好ましい。
【0050】
本発明の抗体または抗体の一部分を、別の機能的分子(たとえば別のペプチドまたはタンパク質)に誘導体化させるかまたはそれに結合させることができる。その結果、本発明の抗体および抗体の一部分には、本明細書に記載された、イムノアドヘシン分子を含むヒト抗hTNFα抗体の誘導体化された形態および他の修飾された形態を含める意図である。たとえば、本発明の抗体または抗体の一部分を、一種以上の他の分子的実体(たとえば、別の抗体(二重に特異性を持つ抗体すなわち二重特異性抗体など)、検出可能な薬剤、細胞毒性薬剤、医薬、および/または抗体もしくは抗体の一部分と別の分子(ストレプトアビジンのコア領域またはポリヒスチジンタグなど)との会合を仲介する能力を持つタンパク質もしくはペプチド)に(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有的会合または他の方法によって)機能的に結合させることができる。
【0051】
(たとえば二重に特異性を持つ抗体を作製するために、同じタイプまたは異なるタイプの)二以上の抗体を架橋することによって、誘導体化された抗体の一つのタイプを作製する。適切な架橋剤としては、適切なスペーサーによって分離された二種の別個の反応性基を有するヘテロ二官能性のもの(たとえばm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、またはホモ二官能性のもの(たとえばスベリン酸ジスクシンイミジル)が挙げられる。このようなリンカーは、ピアース・ケミカル社(Pierce Chemical Company)、ロックフォード、イリノイ州から入手できる。
【0052】
それによって本発明の抗体または抗体の一部分を誘導体化してもよい、有用な検出用薬剤としては、蛍光性化合物が挙げられる。蛍光性の検出用薬剤の具体例としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリンなどが挙げられる。検出可能な酵素によって抗体を誘導体化してもよく、たとえば、アルカリホスファターゼ、ホースラディシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどがある。検出可能な酵素で抗体を誘導体化する場合、その酵素によって利用され、検出可能な反応生成物を生産する追加の試薬を添加することによってそれを検出する。たとえば、検出用薬剤のホースラディシュペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素およびジアミノベンジジンを添加することによって有色の反応生成物を導く。この生成物は検出可能なものである。ビオチンを用いて抗体を誘導体化してもよく、アビジンまたはストレプトアビジンの結合を間接的に測定することを介して検出する。
【0053】
宿主細胞内で免疫グロブリンの軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子を組み換え発現させることによって、本発明の抗体または抗体の一部分を調製することができる。抗体を組み的に換え発現させるために、その抗体の免疫グロブリンの軽鎖および重鎖をコードするDNA断片を保持する一種以上の組み換え発現ベクターを用いて、軽鎖および重鎖が宿主細胞内で発現するようなやり方で、好ましくは宿主細胞が培養されている培地内に分泌されるようなやり方で、宿主細胞をトランスフェクトし、そしてその培地から抗体を回収することができる。標準的な組み換えDNAの方法論を用いて、抗体の重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を得、これらの遺伝子を組み換え発現ベクター内に組み込み、そして宿主細胞内にベクターを導入する。これらは、たとえば、サムブロック、フリッチュおよびマニアティス(Sambrook,Fritsch and Maniatis)ら(編)、分子クローニング;実験の手引き(Molecular Cloning;A Laboratory Manual)、第二版、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、(1989)、オースベル,エフ.エム.(Ausubel,F.M.)ら(編)、分子生物学の最新のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、グリーン・パブリッシング・アソシエイツ(Greene Publishing Associates)、(1989)およびボス(Boss)らによる米国特許第4,816,397号に記載されている。
【0054】
D2E7またはD2E7に関係がある抗体を発現させるためには、軽鎖および重鎖の可変領域をコードするDNA断片をまず最初に得る。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用して生殖細胞系列の軽鎖および重鎖の可変配列を増複し、そして修飾することによって、これらのDNAを得ることができる。ヒトの重鎖可変領域の遺伝子および軽鎖可変領域の遺伝子についての生殖細胞系列のDNA配列は、当該技術分野において公知である(たとえば「Vbase」ヒトの生殖細胞系列の配列のデータベースを参照すること;さらに、カバット,イー.エイ.(Kabat,E.A.)ら、(1991)、免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第五版、米国保健社会福祉省、NIH公報第91−3242号;トムリンソン,アイ.エム.(Tomlinson,I.M.)ら、(1992)、「ヒト生殖細胞系列のV配列のレパートリーから、異なる超可変ループを有する約50グループのVセグメントが明らかにされる(The Repertoire of Human Germline V Sequences Reveals about Fifty Groups of V Segments with Different Hypervariable Loops)」、J.Mol.Biol.227:776−798;およびコックス,ジェイ.ピー.エル.(Cox,J.P.L.)ら、(1994)、「ヒトの生殖細胞系列V78セグメントのディレクトリーから、それらの使用における強い偏りが明らかにされる(A Directory of Human Germ−line V78 Segments Reveals a Strong Bias in their Usage)」、Eur.J.Immunol.24:827−836を参照すること;これらのもののそれぞれの内容は、参照して本明細書に明確に組み込まれる)。D2E7の重鎖可変領域またはD2E7に関係がある抗体の重鎖可変領域をコードするDNA断片を得るためには、標準的なPCRによって、ヒトの生殖細胞系列のVH遺伝子のV3ファミリーのメンバーを増幅する。生殖細胞系列のDP−31 VHの配列を増幅することが最も好ましい。D2E7の軽鎖可変領域またはD2E7に関係がある抗体の軽鎖可変領域をコードするDNA断片を得るためには、標準的なPCRによって、ヒトの生殖細胞系列のVL遺伝子のVκIファミリーのメンバーを増幅する。A20 VL生殖細胞系列の配列を増幅することが最も好ましい。上記の参考文献に開示されたヌクレオチド配列に基づいて、標準的な方法を用いて、DP−31生殖細胞系列のVHの配列およびA20生殖細胞系列のVLの配列の増幅に用いることに適したPCRプライマーを設計することができる。
【0055】
生殖細胞系列のVH断片およびVL断片を一旦得れば、これらの配列を変異させて、D2E7のアミノ酸配列または本明細書に開示されたD2E7に関係があるアミノ酸配列をコードさせることができる。まず最初に、生殖細胞系列のVHのDNA配列およびVLのDNA配列によってコードされるアミノ酸配列を、D2E7のVHのアミノ酸配列およびVLのアミノ酸配列、またはD2E7に関係があるそれらの配列と比較して、D2E7の配列またはD2E7に関係がある配列内の、生殖細胞系列とは異なるアミノ酸残基を同定する。次いで、どのヌクレオチドが変化すべきなのかを決定するために遺伝暗号を利用して、生殖細胞系列のDNA配列のうちの適切なヌクレオチドを、変異した生殖細胞系列の配列がD2E7のアミノ酸配列またはD2E7に関係があるアミノ酸配列をコードするように変異させる。標準的な方法(たとえば、PCRを介する変異誘発法(ここでは、PCR産物が変異を含むように、変異を受けたヌクレオチドをPCRプライマーの中に組み込む)または部位特異的突然変異法)によって、生殖細胞系列の配列の変異を誘発する。
【0056】
(上記のように生殖細胞系列のVH遺伝子およびVL遺伝子を増幅し変異を誘発することによって)D2E7のVHセグメントおよびVLセグメント、またはD2E7に関係があるそれらセグメントをコードするDNA断片を一旦得れば、標準的な組み換えDNA技術によってこれらのDNA断片をさらに操作して、たとえば、可変領域の遺伝子を全長の抗体の鎖の遺伝子に、Fab断片の遺伝子に、またはscFvの遺伝子に転換することができる。これらの操作においては、VLをコードするDNA断片またはVHをコードするDNA断片が、別のタンパク質(たとえば抗体の定常領域またはフレキシブルリンカー)をコードする別のDNA断片に機能的に結合される。この文脈で用いられる「機能的に結合される」という用語は、二つのDNA断片によってコードされたアミノ酸配列がインフレームの状態のままであるように、その二つのDNA断片が結合されることを意味する意図である。
【0057】
VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に機能的に結合することによって、VH領域をコードする単離されたDNAを重鎖の全長遺伝子に転換することができる。ヒトの重鎖定常領域の遺伝子配列は当該技術分野において公知であり(たとえばカバット,イー.エイ.ら、(1991)、免疫学的に興味深いタンパク質の配列、第五版、米国保健社会福祉省、NIH公報第91−3242号を参照すること)、そして標準的なPCR増幅法によって、これらの領域を含むDNA断片を得ることができる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgDの定常領域であり得るが、IgG1の定常領域またはIgG4の定常領域が最も好ましい。Fab断片の重鎖遺伝子については、重鎖のCH1の定常領域のみをコードする別のDNA分子に、VHをコードするDNAを機能的に結合すればよい。
【0058】
VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域であるCLをコードする別のDNA分子に機能的に結合することによって、VL領域をコードする単離されたDNAを軽鎖の全長の遺伝子(ならびにFabの軽鎖の遺伝子)に転換することができる。ヒトの軽鎖定常領域の遺伝子配列は当該技術分野において公知であり(たとえばカバット,イー.エイ.ら、(1991)、免疫学的に興味深いタンパク質の配列、第五版、米国保健社会福祉省、NIH公報第91−3242号を参照すること)、そして標準的なPCR増幅法によって、これらの領域を含むDNA断片を得ることができる。軽鎖定常領域はκの定常領域またはλの定常領域であり得るが、κの定常領域が最も好ましい。
【0059】
scFv遺伝子を作製するためには、フレキシブルリンカーによって結合されたVL領域およびVH領域を有する、連続的な一本鎖タンパク質としてVH配列およびVL配列が発現できるように、VHをコードするDNA断片およびVLをコードするDNA断片を、フレキシブルリンカーをコードする(たとえばアミノ酸配列(Gly−Ser)をコードする)別の断片に機能的に結合する(たとえば、バードら、(1988)Science 242:423−426;ヒューストンら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;マッカフェティー(McCafferty)ら、Nature(1990)348:552−554を参照すること)。
【0060】
本発明の抗体または抗体の一部分を発現させるためには、上記のようにして得られる軽鎖および重鎖の一部または全長をコードする複数のDNAを、その遺伝子が転写調節配列および翻訳調節配列に機能的に結合するように発現ベクター内に挿入する。この文脈において、「機能的に結合される」という用語は、ベクター内の転写調節配列および翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するというそれらの意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター内に連結されることを意味する意図である。発現に用いる宿主細胞に適合する発現ベクターおよび発現調節配列を選択する。抗体の軽鎖の遺伝子および抗体の重鎖の遺伝子を別個のベクター内に挿入することができ、または、より一般的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクター内に挿入する。標準的な方法(たとえば、抗体遺伝子断片上およびベクター上の相補的な制限酵素認識部位のライゲーション、または制限酵素認識部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)によって、抗体遺伝子を発現ベクター内に挿入する。D2E7の軽鎖配列もしくは重鎖配列またはD2E7に関係があるそれらの配列を挿入する前に、発現ベクターが抗体の定常領域の配列を既に保持していてもよい。たとえば、D2E7のVH配列およびVL配列またはD2E7に関係があるそれらの配列を抗体の全長遺伝子に転換する一つのアプローチは、ベクター内の(単数または複数の)CHセグメントにVHセグメントが機能的に結合するように、かつベクター内のCLセグメントにVLセグメントが機能的に結合するように、重鎖定常領域および軽鎖定常領域のそれぞれを既にコードしている発現ベクター内にそれらの配列を挿入するというものである。さらにまたはあるいは、組み換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドがインフレームで抗体鎖遺伝子のアミノ末端に結合するように、この抗体鎖の遺伝子をベクター内にクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンのシグナルペプチドまたは異種のシグナルペプチド(すなわち非免疫グロブリンタンパク質に由来するシグナルペプチド)であり得る。
【0061】
抗体鎖の遺伝子に加えて、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞での抗体鎖の遺伝子の発現を調節する調節配列を保持する。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、および抗体鎖の遺伝子の転写または翻訳を調節する他の発現調節エレメント(たとえばポリアデニル化シグナル)を包含する意図である。このような調節配列は、たとえば、ゲッデル(Goeddel);遺伝子発現の技術(Gene Expression Technology):酵素学の方法(Methods in Enzymology)185、アカデミック・プレス(Academic Press)社、サンディエゴ、カリフォルニア州(1990)に記載されている。調節配列の選択を含めた発現ベクターの設計は、形質転換を受ける宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような因子によって決定されてもよいことを、当業者であれば認識できる。哺乳動物の宿主細胞の発現にとって好ましい調節配列としては、哺乳動物細胞においてタンパク質発現を高レベルに導くウイルスのエレメント(たとえば、サイトメガロウイルス(CMV)に由来するプロモーターおよび/またはエンハンサー(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)に由来するもの(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルスに由来するもの(アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)など)ならびにポリオーマウイルス)が挙げられる。ウイルスの調節エレメントおよびその配列についてのさらなる記載は、たとえば、スティンスキ(Stinski)による米国特許第5,168,062号、ベル(Bell)らによる米国特許第4,510,245号およびシャフナー(Schaffner)らによる米国特許第4,968,615号を参照すること。
【0062】
抗体鎖の遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組み換え発現ベクターは、追加の配列(たとえば、宿主細胞内でベクターの複製を調節する配列(複製起点など)および選択マーカー遺伝子)を保持してもよい。選択マーカー遺伝子によって、その中にベクターが導入された宿主細胞の選択が容易になる(たとえば、すべてがアクセル(Axel)らによる米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号を参照すること)。たとえば、一般的に選択マーカー遺伝子は、薬剤(たとえば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサート)に対する抵抗性を、その中にベクターが導入された宿主細胞に与える。好ましい選択マーカー遺伝子としては、(メトトレキサートによるdhfr宿主細胞の選択/増幅に用いるための)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子および(G418選択のための)neo遺伝子が挙げられる。
【0063】
軽鎖および重鎖の発現のためには、重鎖および軽鎖をコードする(単数または複数の)発現ベクターを、標準的な技術によって宿主細胞内にトランスフェクトする。「トランスフェクション」という用語の種々の形態は、外因性DNAを原核生物の宿主細胞内または真核生物の宿主細胞内に導入するために一般的に用いられている広範囲の技術(たとえば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE−デキストラントランスフェクト法など)を包含する意図である。原核生物の宿主細胞または真核生物の宿主細胞のいずれかにおいて本発明の抗体を発現させることは理論上はあり得るが、真核生物の細胞内で、特に好ましくは哺乳動物の宿主細胞内で抗体を発現させることが最も好ましい。というのは、このような真核生物の細胞、とりわけ哺乳動物細胞は、原核生物の細胞よりも、正確に折りたたまれた免疫学的に活性な抗体を構築し分泌しやすいからである。活性な抗体を高い収率で生産することにとって、原核生物での抗体遺伝子の発現は効果的ではないことが報告された(ボス,エム.エイ.およびウッド,シー.アール.(Boss,M.A.and Wood,C.R.)、(1985)Immunology Today :12−13)。
【0064】
本発明の組み換え型抗体の発現にとって好ましい哺乳動物の宿主細胞としては、(たとえばアール・ジェイ・カウフマンおよびピー・エイ・シャープ(R.J.Kaufman and P.A.Sharp)、(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載されたようなDHFR選択マーカー遺伝子を一緒に用いる、ウルラウブおよびチェイスン(Urlaub and Chasin)、(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されたdhfr−CHO細胞を含む)チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、NS0ミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターを哺乳動物の宿主細胞内に導入する場合、宿主細胞内で抗体の発現が可能となるのに十分な時間、またはより好ましくはその中で宿主細胞が成長する培地内に抗体が分泌されるのに十分な時間、宿主細胞を培養することによって抗体が生産される。標準的なタンパク質精製法を用いて、培地から抗体を回収することができる。
【0065】
宿主細胞を用いて、無傷の抗体の一部分、たとえばFab断片またはscFv分子を生産することもできる。上記の手法の変形物は本発明の範囲内であることが理解される。たとえば、本発明の抗体の軽鎖または重鎖の(両方ではなく)いずれかをコードするDNAによって宿主細胞のトランスフェクトを行うことが望ましい。軽鎖および重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAであって、hTNFαへの結合には必要でないDNAのいくつかまたはすべてを、組み換えDNA技術を用いて除去してもよい。このような切型のDNA分子から発現する分子も、本発明の抗体に包含される。さらに、標準的な化学的架橋法によって本発明の抗体を第二の抗体に架橋することによって、ある重鎖および軽鎖が本発明の抗体であり、そして別の重鎖および軽鎖がhTNFα以外の抗原に対して特異的であるという二官能性の抗体を生産してもよい。
【0066】
本発明の抗体またはその抗原結合部分の組み換え発現にとって好ましいシステムにおいては、リン酸カルシウムを介したトランスフェクトによって、抗体の重鎖および抗体の軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターをdhfr−CHO細胞内に導入する。組み換え発現ベクター内では、抗体の重鎖の遺伝子および軽鎖の遺伝子のそれぞれが、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントに機能的に結合して、遺伝子の高レベルの転写を促進する。組み換え発現ベクターもDHFR遺伝子を保持しており、このものによって、メトトレキサートの選択/増幅を利用して、ベクターがトランスフェクトされたCHO細胞の選択が可能となる。選択された、形質転換を受けた宿主細胞を、抗体の重鎖および軽鎖の発現が可能となるように培養し、そして無傷の抗体を培地から回収する。標準的な分子生物学の技術を用いて、組み換え発現ベクターの調製、宿主細胞のトランスフェクト、形質転換体の選択、宿主細胞の培養および培地からの抗体の回収を行う。
【0067】
本明細書で開示されたD2E7もしくはその抗原結合部分またはD2E7に関係がある抗体に加えて、ヒトのリンパ球に由来するmRNAから作製されたヒトのVLおよびVHのcDNAを用いて調製された組み換え型の組合せ抗体ライブラリー、好ましくはscFvファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることによって、本発明の組み換え型ヒト抗体を単離することができる。このようなライブラリーを調製し、スクリーニングする方法論は、当該技術分野において公知である。ファージディスプレイライブラリーを作製するための市販のキット(たとえば、ファルマシア社の組み換え体ファージ抗体システム、カタログ番号27−9400−01;およびストラタジーン(Stratagene)社のSurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)に加えて、抗体のディスプレイライブラリーを作製しスクリーニングに特に供し得る方法および試薬の具体例を、次のものに見出すことができる:たとえば、ラドナー(Ladner)ら、米国特許第5,223,409号;カン(Kang)ら、PCT公報WO 92/18619号;ダウアー(Dower)ら、PCT公報WO 91/17271号;ウィンター(Winter)ら、PCT公報WO 92/20791号;マークランド(Markldand)ら、PCT公報WO 92/15679号;ブリートリング(Breitling)ら、PCT公報WO 93/01288号;マッカフェティーら、PCT公報WO 92/01047号;ガーラード(Garrard)ら、PCT公報WO 92/09690号;フックス(Fuchs)ら、(1991)Bio/Technology :1370−1372;ヘイ(Hay)ら、(1992)Hum Antibod Hybridomas :81−85;ヒューズ(Huse)ら、(1989)Science 246:1275−1281;マッカフェティーら、Nature (1990)348:552−554;グリフィスら(1993)EMBO J 12:725−734;ホーキンス(Hawkins)ら、(1992)J Mol Biol 226:889−896;クラックソン(Clackson)ら、(1991)Nature 352:624−628;グラム(Gram)ら、(1992) PNAS 89:3576−3580;ガーラードら、(1991)Bio/Technology :1373−1377;フーゲンブーム(Hoogenboom)ら、(1991)Nuc Acid Res 19:4133−4137;およびバルバス(Barbas)ら、(1991)PNAS 88:7978−7982。
【0068】
好ましい実施態様においては、hTNFαに対して高い親和性と小さい解離速度定数を有するヒト抗体を単離するために、hTNFαに対して高い親和性と小さい解離速度定数を有するネズミ抗hTNFα抗体(たとえばMAK 195、受託番号がECACC 87 050801のハイブリドーマ)をまず最初に用いて、hTNFαに対してよく似た結合活性を有するヒトの重鎖配列および軽鎖配列を、フーゲンブームらのPCT公報WO 93/06213号に記載されたエピトープインプリンティング法を利用して選択する。この方法で用いられる抗体ライブラリーは、マッカフェティーら、PCT公報WO 92/01047号、マッカフェティーら、Nature(1990)348:552−554;およびグリフィスら(1993)EMBO J 12:725−734に記載されたように調製され、スクリーニングされる好ましいscFvライブラリーである。抗原として組み換え型ヒトTNFαを用いてスクリーニングされるscFv抗体ライブラリーが好ましい。
【0069】
最初のヒトのVLセグメントおよびVHセグメントを一旦選択すれば、hTNFα結合のために、最初に選択したVLセグメントおよびVHセグメントの異なるペアをスクリーニングするという「ミックス・アンド・マッチ」実験を実施して、好ましいVL/VHのペアの組み合わせを選択する。さらに、hTNFαの結合についての親和性をさらに向上させるおよび/または解離速度定数をより小さくするために、自然のままの免疫応答の間に抗体の親和性成熟を引き起こすインビボでの体細胞変異プロセスとよく似たプロセスにおいて、好ましいVL/VHの(単数または複数の)ペアのVLセグメントおよびVHセグメントを、好ましくはVHおよび/またはVLのCDR3領域の範囲内で無作為に変異させることができる。VH CDR3またはVL CDR3に相補的なPCRプライマーを用いてVH領域およびVL領域をそれぞれ増幅することによって、このようなインビトロの親和性成熟を達成することができる。ここで、結果として生じるPCR産物が、VHセグメントおよびVLセグメント(VH CDR3領域および/またはVL CDR3領域内に導入されたランダム変異がそのセグメント内にある)をコードするように、これらのプライマーには、特定の位置において四種のヌクレオチド塩基の無作為混合物が「スパイクされて」いた。これらのランダム変異を受けたVHセグメントおよびVLセグメントを、hTNFαとの結合のために再度スクリーニングすることができる。そしてhTNFαの結合について高い親和性と遅い解離速度を示す配列を選択することができる。
【0070】
組み換え型免疫グロブリンディスプレイライブラリーから、本発明の抗hTNFα抗体をスクリーニングして単離した後に、ディスプレイパッケージから(たとえばファージのゲノムから)、選択された抗体をコードする核酸を回収し、そして標準的な組み換えDNA技術によって、別の発現ベクター内にサブクローニングすることができる。必要に応じて、核酸をさらに操作して、本発明の別の抗体の形態を作製することができる(たとえば、追加の定常領域などの追加の免疫グロブリンドメインをコードする核酸に結合したもの)。組合せライブラリーのスクリーニングによって単離された組み換え型ヒト抗体を発現させるためには、その抗体をコードするDNAを組み換え発現ベクター内にクローニングし、そして、上記のII部にさらなる詳細が記載されているように、哺乳動物の宿主細胞内に導入する。
【0071】
本発明の抗体および抗体の一部分ならびに自己免疫疾患の治療に有用な薬剤を、本明細書に記載された方法についての被験体への投与に適した医薬組成物内に別個にまたは一緒に組み込むことができる。典型的な医薬組成物は、本発明の抗体(もしくは抗体の一部分)および/または自己免疫疾患の治療に有用な一種以上の他の薬剤ならびに医薬適合性の担体を含む。本明細書で用いられる「医薬適合性の担体」としては、生理的に適合性を有し、かつ本明細書に記載された方法についての被験体への投与に適したありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。医薬適合性の担体の具体例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノールなどの一種以上、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。多くの場合、組成物内に等張性の物質、たとえば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムが含まれることは好ましい。医薬適合性の担体が、湿潤剤もしくは乳化剤、防腐剤または緩衝剤などの微量の補助的物質をさらに含んでもよく、これらのものは、抗体または抗体の一部分の保存性または有効性を高める。
【0072】
本発明の組成物は、種々の剤形であってもよい。たとえば、液体、半固体および固形の剤形(具体的には、溶液(たとえば注射可能な溶液および不溶性の溶液)、分散液もしくは懸濁液、錠剤、丸薬、粉剤、リポソームおよび座薬)が挙げられる。好ましい剤形は、意図される投与様式および治療上の用途に依存する。好ましい組成の典型例は、注射可能な溶液または不溶性の溶液の剤形(たとえば、他の抗体によるヒトの受動免疫化に用いられる組成とよく似た組成)である。好ましい投与様式は非経口である(たとえば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)。好ましい実施態様においては、抗体を含む医薬組成物を注射によって投与する。別の好ましい実施態様においては、抗体を筋肉注射によって投与する。特に好ましい実施態様においては、抗体を皮下注射によって投与する。
【0073】
医薬組成物は、一般的に、製造および保存の条件下で無菌かつ安定でなければならない。溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム、または他の指示された、高濃度の薬剤に適した構造として、組成物を製剤化することができる。活性化合物(すなわち抗体または抗体の一部分)を、必要に応じて上記に列挙された成分の一種または組み合わせたものと共に、必要な量の適切な溶媒内に組み込み、次いでろ過滅菌することによって、注射可能な無菌の溶液を調製することができる。基本的な分散媒と、上記に列挙されたものから必要な他の成分とを含む無菌の媒体内に、活性化合物を組み込むことによって分散液を調製するのが一般的である。注射可能な無菌の溶液を調製するための無菌の粉剤の場合において、好ましい調製方法とは、真空乾燥および凍結乾燥して、有効成分プラス既にろ過滅菌されたその溶液からの任意の所望の追加成分の粉剤を得ることである。たとえば、レシチンなどの被覆剤を用いることによって、分散液の場合は必要な粒子径を維持することによって、そして界面活性剤を用いることによって、溶液の適切な流動性を維持することができる。モノステアリン酸塩およびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を組成物内にを含めることによって、注射可能な組成物の持続的な吸収を成し遂げることができる。
【0074】
当該技術分野で公知の種々の方法によって、本発明の抗体および抗体の一部分を投与することができるが、多くの治療上の用途にとって好ましい投与経路/投与様式は皮下注射である。当業者であれば理解できるように、投与経路および/または投与様式は、所望の結果に応じて変化することになる。ある特定の実施態様においては、インプラント、経皮貼布、およびマイクロカプセル化送達システムを含めた制御放出製剤などの、化合物を急激な放出から保護するような担体を用いて活性化合物を調製してもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような製剤を調製するための多数の方法は特許が付与されているか、または当業者にとって周知のものである。たとえば、放出が制御された徐放性薬剤送達システム(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems)、ジェイ・アール・ロビンソン(J.R.Robinson)編、マルセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、ニューヨーク、1978を参照すること。
【0075】
特定の実施態様においては、本発明の抗体または抗体の一部分を、たとえば不活性な希釈剤または吸収可能な食用になる担体と共に経口投与してもよい。この化合物(および必要に応じて他の成分)を、硬質または軟質のゼラチンカプセル内に封入・圧縮して錠剤としてもよく、または被験体の食物に直接組み込んでもよい。治療のための経口投与に関して、化合物を賦形剤と一緒に組み込んで、そして摂取用の錠剤、舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、カシェ剤などの剤形で用いてもよい。非経口投与以外によって本発明の化合物を投与するためには、不活性化を防止する材料で化合物を被覆すること、または化合物を、不活性化を防止する材料と同時投与することが必要である。
【0076】
追加の活性化合物を組成物内に組み込んでもよい。ある特定の実施態様においては、本発明の抗体または抗体の一部分を、一種以上の追加の治療剤と共に製剤化したりおよび/またはかかる治療剤と同時投与する。たとえば、本発明の抗hTNFα抗体または抗体の一部分を、一種以上のDMARDもしくは一種以上のNSAID、もしくは他の標的と結合する一種以上のさらなる抗体(他のサイトカイン類または細胞表面分子と結合する抗体など)、一種以上のサイトカイン類、可溶性TNFα受容体(たとえばPCT公報WO 94/06476号を参照すること)および/またはhTNFαの生産または活性を阻害する一種以上の化学薬品(たとえばPCT公報WO 93/19751号に記載されているようなシクロヘキサン−イリデン誘導体)またはそれらの任意の組み合わせと共に製剤化および/または同時投与してもよい。そのうえ、本発明の一種以上の抗体を、二種以上の上記の治療剤と組み合わせて用いてもよい。このような多剤併用療法を、投与される治療剤の投与量がより少ない場合に利用することが有利かもしれず、したがって、種々の単剤療法と関係がある患者による、考えられる副作用、合併症または低いレベルの応答が避けられる。
【0077】
本発明の医薬組成物には、「治療的に有効な量」または「予防的に有効な量」の本発明の抗体または抗体の一部分および/または他の(単数または複数の)薬剤が含まれる。「治療的に有効な量」とは、所望の治療効果を達成するために必要な期間投与される有効な量という意味である。治療的に有効な量は、個体の病状、年齢、性別および体重、ならびに自己免疫疾患の治療に有用な抗体もしくは抗体の一部分または他の薬剤の持つ、個体において所望の応答を惹起させる能力などの因子に基づいて変化してもよい。治療的に有効な量とは、抗体もしくは抗体の一部分または他の(単数または複数の)薬剤の副作用よりも、治療的に有益な効果の方が上回る量でもある。「予防的に有効な量」とは、所望の予防効果を達成するために必要な期間投与される有効な量という意味である。疾患の前に、または疾患の早い段階で被験体に予防のための投与が行われることが通常なので、予防的に有効な量は治療的に有効な量よりも少量となる。
【0078】
所望の最適な応答(たとえば治療上の応答または予防上の応答)を提供するために、投与計画を調整してもよい。たとえば、単一の大きな丸薬を投与してもよく、長期の間に投与量をいくつかに分割して投与してもよく、または治療状況の緊急性で示されるように、投与量を比例的に減少もしくは増加させてもよい。投与が容易で投与量の均一な投与量単位の剤形にて非経口用組成物を製剤することは、特に有利である。本明細書で用いられる投与量単位の剤形とは、治療を受ける哺乳動物の被験体への単一の投与量として適する、物理的に独立した単位という意味である;必須の製剤用の担体と共に所望の治療効果を提供するために計算された、予め決められた量の活性化合物をそれぞれの単位が含んでいる。本発明の投与量単位の剤形についての詳細は、(a)活性化合物の独自の特性および達成される具体的な治療上のまたは予防上の効果、ならびに(b)個体における感受性を治療するためのそのような活性化合物の、合成技術的に内在する制限によって定められ、そしてそれらに直接影響を受ける。
【0079】
本発明の抗体または抗体の一部分の治療的にまたは予防的に有効な量についての典型的で限定されない範囲は、10から100mgであり、20から80mgがより好ましく、約40mgが特に好ましい。緩和される健康状態のタイプと重症度によって、投与量の値を変化させてもよいことに留意すべきである。個体の必要性、および組成物の投与を管理するかまたは監督する専門家の判断に従って、あらゆる特定の被験体についての具体的な投与計画を長期に亘って調整すべきであること、ならびに本明細書に記載された投与量の範囲は単なる例示であり、請求の範囲の組成物の範囲または実務を制限する意図がないことをさらに理解すべきである。
【0080】
本発明の抗体または抗体の一部分と組み合わせることができる慢性関節リウマチの治療剤の非限定的な具体例としては、次のものが挙げられる:(単数または複数の)非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs);(単数または複数の)サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAIDs);CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;セルテック/バイエル(Celltech/Bayer)社);cA2(キメラ抗TNFα抗体;セントコア社);75kdのTNFR−IgG(75kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;イミュネックス社;たとえば、Arthritis and Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照すること);55kdのTNFR−IgG(55kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;ホフマン・ラロシュ(Hoffmann−LaRoche)社);IDEC−CE9.1/SB 210396(非枯渇性霊長類化抗CD4抗体;アイディーイーシ/スミスクライン(IDEC/SmithKline)社;たとえばArthritis and Rheumatism(1995)Vol.38,S185を参照すること);DAB486−IL−2および/またはDAB389−IL−2(IL−2融合タンパク質;シーラジェン(Seragen)社;たとえばArthritis and Rheumatism(1993)Vol.36,1223を参照すること);抗Tac(ヒト化抗IL−2Rα;プロテイン・デザイン・ラブズ/ロシュ(Protein Design Labs/Roche)社);IL−4(抗炎症性サイトカイン;ディーエヌエイエックス/シェリング(DNAX/Schering)社);IL−10(SCH 52000;組み換え型IL−10、抗炎症性サイトカイン;ディーエヌエイエックス/シェリング社);IL−4アゴニスト;IL−10アゴニストおよび/またはIL−4アゴニスト(たとえばアゴニスト抗体);IL−1RA(IL−1受容体アンタゴニスト;シナージェン/アムジェン(Synergen/Amgen)社);TNF−bp/s−TNFR(可溶性TNF結合タンパク質;たとえば、Arthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S284;Amer.J.Physiol.− Heart and Circulatory Physiology(1995)Vol.268,pp.37−42を参照すること);R973401(IV型ホスホジエステラーゼ阻害剤;たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282を参照すること);MK−966(COX−2阻害剤;たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S81を参照すること);イロプロスト(たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S82を参照すること);メトトレキサート;サリドマイド(たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282を参照すること)およびサリドマイドに関係がある薬剤(たとえばセルジェン);レフルノミド(抗炎症性のサイトカイン阻害剤;たとえば、Arthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S131;Inflammation Research(1996)Vol.45,pp.103−107を参照すること);トラネキサム酸(プラスミノゲン活性化の阻害剤;たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S284を参照すること);T−614(サイトカイン阻害剤;たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S282を参照すること);プロスタグランジンE1(たとえばArthritis and Rheumatism (1996)Vol.39,No.9(補遺),S282を参照すること);テニダップ(非ステロイド性抗炎症薬;たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S280を参照すること);ナプロキセン(非ステロイド性抗炎症薬;たとえばNeuro Report(1996)Vol.,pp.1209−1213を参照すること);メロキシカム(非ステロイド性抗炎症薬);イブプロフェン(非ステロイド性抗炎症薬);ピロキシカム(非ステロイド性抗炎症薬);ジクロフェナク(非ステロイド性抗炎症薬);インドメタシン(非ステロイド性抗炎症薬);スルファサラジン(たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S281を参照すること);アザチオプリン(たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S281を参照すること);ICE阻害剤(酵素のインターロイキン−1β転換酵素の阻害剤);zap−70阻害剤および/またはlck阻害剤(チロシンキナーゼのzap−70またはlckの阻害剤);VEGF阻害剤および/またはVEGF−R阻害剤(血管内皮細胞増殖因子または血管内皮細胞増殖因子受容体の阻害剤;脈管形成の阻害剤);コルチコステロイド性抗炎症薬(たとえばSB203580);TNFコンバーターゼ阻害剤;抗IL−12抗体;インターロイキン−11(たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S296を参照すること);インターロイキン−13(たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S308を参照すること);インターロイキン−17阻害剤(たとえばArthritis and Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(補遺),S120を参照すること);金;ペニシラミン;クロロキン;ヒドロキシクロロキン;クロラムブシル;シクロホスファミド;シクロスポリン;全身リンパ節照射;抗胸腺細胞グロブリン;抗CD4抗体;CD5トキシン;経口投与用のペプチドおよびコラーゲン;ロベンザリット二ナトリウム;サイトカイン調節剤(CRA)のHP228およびHP466(ホートン・ファーマシューティカルズ社(Houghten Pharmaceuticals,Inc.));ICAM−1アンチセンス・ホスホロチオアート・オリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;イシス・ファーマシューティカルズ社(Isis Pharmaceuticals,Inc.));可溶性補体レセプター1(TP10;ティーセル・サイエンシス社(T Cell Sciences,Inc.));プレドニゾン;オルゴテイン;グリコサミノグリカンポリスルファート;ミノサイクリン;抗IL2R抗体;海産のおよび植物性の脂質(魚類のおよび植物種子の脂肪酸;たとえばデルーサ(DeLuca)ら、(1995)Rheum.Dis.Clin.North Am.21:759−777を参照すること);オーラノフィン;フェニルブタゾン;メクロフェナム酸;フルフェナム酸;静脈内の免疫グロブリン;ジロートン;ミコフェノール酸(RS−61443);タクロリムス(FK−506);シロリムス(ラパマイシン);アミプリロース(セラフェクチン);クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン);ならびにアザリビン。
【0081】
本発明の抗体または抗体の一部分と組み合わせることができる炎症性腸疾患の治療剤の非限定的な具体例としては、次のものが挙げられる:ブデノサイド;上皮増殖因子;コルチコステロイド;シクロスポリン、スルファサラジン;アミノサリチル酸塩;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼ阻害剤;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;抗酸化剤;トロンボキサン阻害剤;IL−1受容体アンタゴニスト;抗IL−1βモノクローナル抗体;抗IL−6モノクローナル抗体;増殖因子;エラスターゼ阻害剤;ピリジニル−イミダゾール化合物;CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;セルテック/バイエル社);cA2(キメラ抗TNFα抗体;セントコア社);75kdのTNFR−IgG(75kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;イミュネックス社;たとえば、Arthritis and Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照すること);55kdのTNFR−IgG(55kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;ホフマン・ラロシュ社);インターロイキン−10(SCH 52000;シェリングプラウ(Schering Plough)社);IL−4アゴニスト;IL−10アゴニストおよび/またはIL−4アゴニスト(たとえばアゴニスト抗体);インターロイキン−11;プレドニゾロン、デキサメタゾンまたはブデソニドのグルクロニド複合化プロドラッグまたはデキストラン複合化プロドラッグ;ICAM−1アンチセンス・ホスホロチオアート・オリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;イシス・ファーマシューティカルズ社);可溶性補体レセプター1(TP10;ティーセル・サイエンシス社);徐放性メサラジン;メトトレキサート;血小板活性化因子(PAF)のアンタゴニスト;シプロフロキサシン;ならびにリグノカイン。
【0082】
本発明の抗体または抗体の一部分と組み合わせることができる多発性硬化症の治療剤の非限定的な具体例としては、次のものが挙げられる:コルチコステロイド;プレドニゾロン;メチルプレドニゾロン;アザチオプリン;シクロホスファミド;シクロスポリン;メトトレキサート;4−アミノピリジン;チザニジン;インターフェロン−β1a(Avonex(商標);バイオジェン(Biogen)社);インターフェロン−β1b(Betaseron(商標);カイロン/ベレックス(Chiron/Berlex)社);コポリマー1(Cop−1;Copaxone(商標);テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ社(Teva Pharmaceutical Industries,Inc.));高圧酸素;静脈内免疫グロブリン;クラブリビン;CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;セルテック/バイエル社);cA2(キメラ抗TNFα抗体;セントコア社);75kdのTNFR−IgG(75kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;イミュネックス社;たとえば、Arthritis and Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照すること);55kdのTNFR−IgG(55kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;ホフマン・ラロシュ社);IL−10;IL−4;およびIL−10アゴニストおよび/またはIL−4アゴニスト(たとえばアゴニスト抗体)。
【0083】
本発明の抗体または抗体の一部分と組み合わせることができる敗血症の治療剤の非限定的な具体例としては、次のものが挙げられる:高張食塩水;抗生物質;静脈内のガンマグロブリン;持続的血液ろ過;カルバペネム類(たとえばメロペネム);TNFα、IL−1β、IL−6および/またはIL−8などのサイトカイン類のアンタゴニスト;CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;セルテック/バイエル社);cA2(キメラ抗TNFα抗体;セントコア社);75kdのTNFR−IgG(75kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;イミュネックス社;たとえば、Arthritis and Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照すること);55kdのTNFR−IgG(55kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;ホフマン・ラロシュ社);サイトカイン調節剤(CRA)のHP228およびHP466(ホートン・ファーマシューティカルズ社);SK&F 107647(低分子量ペプチド;スミスクライン・ビーチャム(SmithKline Beecham)社);四価のグアニルヒドラゾンCNI−1493(ピコワー・インスティチュート(Picower Institute)社);組織因子経路阻害剤(TFPI;カイロン社);PHP(化学的に修飾されたヘモグロビン;エーピーイーエックス・バイオサイエンス(APEX Bioscience)社);ジエチレントリアミン五酢酸−鉄(III)複合体(DTPA鉄(III);モリケム・メディスンズ(Molichem Medicines)社)を含めた鉄キレーターおよびキレート;リソフィリン(メチルキサンチンの合成小分子;セル・セラピューティクス社(Cell Therapeutics,Inc.));PGG−グルカン(水溶性のβ1,3グルカン;アルファ−ベータ・テクノロジー(Alpha−Beta Technology)社);脂質と共に再構成されたアポリポタンパク質A−1;キラルなヒドロキサム酸(リピドAの生合成を阻害する合成抗菌剤);抗エンドトキシン抗体;E5531(リピドAの合成アンタゴニスト;エーザイ・アメリカ社(Eisai America,Inc.));rBPI21(ヒトの殺菌性・膜透過性亢進タンパク質の組み換え型N末端断片);ならびに抗エンドトキシン性合成ペプチド(SAEP;バイオシンス・リサーチ・ラボラトリーズ(BiosYnth Research Laboratories)社);
本発明の抗体または抗体の一部分と組み合わせることができる成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療剤の非限定的な具体例としては、次のものが挙げられる:抗IL−8抗体;サーファクタント置換療法;CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;セルテック/バイエル社);cA2(キメラ抗TNFα抗体;セントコア社);75kdのTNFR−IgG(75kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;イミュネックス社;たとえば、Arthritis and Rheumatism (1994) Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照すること);ならびに55kdのTNFR−IgG(55kDのTNF受容体−IgG融合タンパク質;ホフマン・ラロシュ社)。
【0084】
抗TNFα抗体と一種以上の他の薬剤とを組み合わせて用いることは、TNFαを阻害することによって障害が影響を受けるかどうかによって決まる。本明細書で用いられる「抗TNFα抗体の投与が有効であるところの障害」という用語は、障害に苦しむ被験体に存在するTNFαが、障害の病態生理学の原因もしくは障害の悪化に寄与する因子のいずれかであることが示されたかもしくは推測されている疾患および他の障害、または別の抗TNFα抗体もしくはその生物学的活性を有する部分を用いて疾患をうまく治療できたことが示された疾患および他の障害を含む意図である。従って、TNFα活性が有害であるところの障害は、TNFα活性の阻害によって、障害の症状および/または進行の軽減が予想される障害である。たとえば、障害に苦しむ被験体の生理学的体液中のTNFα濃度の上昇(たとえば、被験体の血清、血漿、滑液などにおけるTNFαの濃度の上昇)によって、このような障害を証明できるかもしれず、そしてこのことは、たとえば上記のような抗TNFα抗体を用いて検出することができる。TNFα活性が有害であるところの障害の具体例は、数多く存在する:
A.敗血症
腫瘍壊死因子には、低血圧、心筋抑制、血管漏出症候群、臓器の壊死、トキシック・セカンダリー・メディエータ放出の刺激および凝固カスケードの活性化を含む生物学的作用を伴った、敗血症の病態生理学における立証された役割がある(たとえば、トレーシー,ケイ.ジェイ.およびセラミ,エイ.、(1994)Annu.Rev.Med.45:491−503;ラッセル,ディー.およびトンプソン,アール.シー.(Russell,D and Thompson,R.C.)、(1993)Curr.Opin.Biotech.:714−721を参照すること)。従って、本発明のヒト抗体および抗体の一部分を用いて、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、グラム陰性敗血症およびトキシックショック症候群を含めたあらゆる臨床場面における敗血症を治療することができる。好ましくは、敗血症の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用である。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。敗血症の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましい。
【0085】
そのうえ、敗血症を治療するために、本発明の抗hTNFα抗体または抗体の一部分を、敗血症をさらに緩和するかもしれない一種以上の追加の治療剤(たとえば、インターロイキン−1阻害剤(PCT公報WO 92/16221号およびWO 92/17583号に記載されたものなど)、サイトカインであるインターロイキン−6(たとえばPCT公報WO 93/11793を参照すること)、または血小板活性化因子のアンタゴニスト(たとえば欧州特許公開公報EP 374 510号を参照すること))と同時投与することができる。
【0086】
さらに、好ましい実施態様においては、治療の時点での血清または血漿のIL−6濃度が500pg/mLを超える、より好ましくは1000pg/mLを超える敗血症患者の下位群の範囲内のヒトの被験体に、本発明の抗TNFα抗体または抗体の一部分を投与する(ドーム,エル.(Daum,L.)らによるPCT公報WO 95/20978号を参照すること)。
【0087】
B.自己免疫疾患
腫瘍壊死因子は、種々の自己免疫疾患の病態生理学における役割を果たすことに関与してきている。たとえば、慢性関節リウマチにおいて、組織の炎症を活性化することおよび関節の破壊を引き起こすことにTNFαは関与した(たとえば、上掲のトレーシーおよびセラミ;アレント,ダブリュ.ピー.およびデイヤー,ジェイ−エム.(Arend,W.P.and Dayer,J−M.)、(1995) Arth.Rheum.38:151−160;フェイバ,アール.エイ.(Fava,R.A.)ら、(1993)Clin.Exp.Immunol.94:261−266を参照すること)。糖尿病において、島細胞の死滅を促進することおよびインスリン抵抗性を仲介することにもTNFαは関与した(たとえば、上掲のトレーシーおよびセラミ;PCT公報WO 94/08609号を参照すること)。多発性硬化症において、乏突起膠細胞への細胞毒性を仲介することおよび炎症性のプラークを誘導することにもTNFαは関与した(たとえば上掲のトレーシーおよびセラミを参照すること)。キメラのヒト化マウス抗hTNFα抗体は、慢性関節リウマチの治療についての臨床試験を経験した(たとえば、エリオット,エム.ジェイ.ら、(1994) Lancet 344:1125−1127;エリオット,エム.ジェイ.ら、(1994) Lancet 344:1105−1110;ランキン,イー.シー.(Rankin,E.C.)ら、(1995)Br.J.Rheumatol.34:334−342を参照すること)。
【0088】
本発明のヒト抗体および抗体の一部分を用いて自己免疫疾患を治療することができる。好ましくは、自己免疫疾患の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用である。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。自己免疫疾患の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましい。とりわけ、慢性関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症および痛風性関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎ならびにネフローゼ症候群を含めた炎症に関係するものである。特定の障害について、抗体または抗体の一部分を全身投与することが通常ではあるが、抗体または抗体の一部分の炎症部位での局所投与も有用かもしれない(たとえば、単独でのまたはPCT公報WO 93/19751号に記載されたようなシクロヘキサン−イリデン誘導体と組み合わせての、慢性関節リウマチにおける関節への局所投与または糖尿病性潰瘍への局所適用)。
【0089】
C.感染症
腫瘍壊死因子は、種々の感染症において見られる生物学的作用を仲介することに関与してきた。たとえば、マラリアにおいて、脳の炎症および毛細血管の血栓症、ならびに梗塞の形成を仲介することにTNFαは関与した(たとえば上掲のトレーシーおよびセラミを参照すること)。髄膜炎において、脳の炎症を仲介すること、血液脳関門の破壊を誘導すること、敗血症性ショック症候群を引き起こすことおよび静脈の梗塞を活性化させることにもTNFαは関与した(たとえば上掲のトレーシーおよびセラミを参照すること)。後天性免疫不全症候群(AIDS)において、悪液質を誘導すること、ウイルス増殖を刺激することおよび中枢神経系の損傷を仲介することにもTNFαは関与している(たとえば上掲のトレーシーおよびセラミを参照すること)。従って、本発明の抗体および抗体の一部分を感染症の治療に用いることができる。好ましくは、感染症の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用である。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。感染症の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましい。とりわけ、移植後の、細菌性髄膜炎(たとえば欧州特許公開公報EP 585 705号を参照すること)、脳マラリア、AIDSおよびAIDS関連症候群(ARC)(たとえば欧州特許公開公報EP 230 574号を参照すること)、ならびにサイトメガロウイルス感染(たとえばフィーツ,イー.(Fietze,E.)ら、(1994) Transplantation 58:675−680を参照すること)。本発明の抗体および抗体の一部分を用いて、(インフルエンザなどの)感染が原因の発熱および筋肉痛および感染後の(たとえばAIDSまたはARCの後の)悪液質を含めた、感染症と関係がある症状を軽減することもできる。
【0090】
D.移植
腫瘍壊死因子は、同種移植の拒絶反応および移植片対宿主疾患(GVHD)の主要なメディエータとして、T細胞受容体のCD3複合体に対して向けられたラットの抗体OKT3を用いて、腎移植の拒絶を抑制する場合に見られる有害反応を仲介することに関与してきた(たとえば、上掲のトレーシーおよびセラミ;イーソン,ジェイ.ディー.(Eason,J.D.)ら、(1995)Transplantation 59:300−305;サザンチラン,エム.およびストーム,ティー.ビー.(Suthanthiran,M.and Strom,T.B.)、(1994)New Engl.J.Med.331:365−375を参照すること)。従って、本発明の抗体および抗体の一部分を用いて、同種移植および異種移植の拒絶反応を含めた移植片の拒絶反応、およびGVHDを抑制することができる。好ましくは、移植片の拒絶反応の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用である。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。移植片の拒絶反応の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましい。たとえば、一つの実施態様においては、本発明の抗体または抗体の一部分をOKT3と組み合わせて用いて、OKT3に誘導される反応を阻害する。別の実施態様においては、本発明の抗体または抗体の一部分を、免疫応答を調節することに関わる別の標的(たとえば、細胞表面分子CD25(インターロイキン−2受容体−α)、CD11a(LFA−1)、CD54(ICAM−1)、CD4、CD45、CD28/CTLA4、CD80(B7−1)および/またはCD86(B7−2))に向けられた一種以上の抗体と組み合わせて用いる。さらに別の実施態様においては、本発明の抗体または抗体の一部分を一種以上の一般的な免疫抑制剤、たとえばシクロスポリンAまたはFK506と組み合わせて用いる。
【0091】
E.悪性腫瘍
腫瘍壊死因子は、悪液質を生じさせること、腫瘍の増殖を刺激すること、転移の可能性を高めることおよび悪性腫瘍における細胞毒性を仲介することに関与してきた(たとえば上掲のトレーシーおよびセラミを参照すること)。従って、本発明の抗体および抗体の一部分を悪性腫瘍の治療に用いて、腫瘍の増殖または転移を抑制することおよび/または悪性腫瘍に副次的な悪液質を軽減することができる。好ましくは、悪性腫瘍の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用であり、これによって腫瘍の増殖または転移を抑制および/または悪性腫瘍に副次的な悪液質を軽減する。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。悪性腫瘍の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましく、これによって腫瘍の増殖または転移を抑制および/または悪性腫瘍に副次的な悪液質を軽減する。抗体もしくは抗体の一部分を全身投与してもよく、または腫瘍の部位に局所投与してもよい。
【0092】
F.肺疾患
腫瘍壊死因子は、白血球内皮活性化を刺激すること、肺細胞へ細胞毒性を導くことおよび血管漏出症候群を誘導することを含めた成人呼吸窮迫症候群の病態生理に関与してきた(たとえば上掲のレーシーおよびセラミを参照すること)。従って、本発明の抗体および抗体の一部分を用いて種々の肺疾患を治療することができる。好ましくは、肺疾患の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用である。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。肺疾患の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましい。とりわけ、成人呼吸窮迫症候群(たとえばPCT公報WO 91/04054号を参照すること)、ショック肺、慢性炎症性肺疾患、肺サルコイドーシス、肺線維症およびケイ肺症である。抗体もしくは抗体の一部分を全身投与してもよく、または肺の表面に、たとえばエアゾールとして局所投与してもよい。
【0093】
G.腸疾患
腫瘍壊死因子は、炎症性腸疾患の病態生理に関与してきた(たとえば、トレーシー,ケイ.ジェイ.(Tracy,K.J.)ら、(1986)Science 234:470−474;スン,エックス−エム.(Sun,X−M.)ら、(1988)J.Clin.Invest.81:1328−1331;マクドナルド,ティー.ティー.(MacDonald,T.T.)ら、(1990)Clin.EXP.Immunol.81:301−305を参照すること)。キメラのネズミ抗hTNFα抗体は、クローン病の治療についての臨床試験を経験した(バンドルメン,エイチ.エム.(van Dullemen,H.M.)ら、(1995)Gastroenterology 109:129−135)。本発明のヒト抗体および抗体の一部分を用いて腸疾患を治療することもできる。好ましくは、腸疾患の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用である。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。腸疾患の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましい。とりわけ、特発性炎症性腸疾患、このものには二種の症候群が含まれ、クローン病および潰瘍性大腸炎である。
【0094】
H.心疾患
本発明の抗体および抗体の一部分を用いて、心臓の虚血(たとえば欧州特許公開公報EP 453 898号を参照すること)および心不全(心筋の衰弱)(たとえばPCT公報WO 94/20139号を参照すること)を含めた種々の心疾患を治療することができる。好ましくは、心疾患の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用である。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。心疾患の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましい。
【0095】
I.神経疾患
本発明の抗体および抗体の一部分を用いて神経疾患を治療することができる。好ましくは、神経疾患の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用である。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。神経疾患の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましい。
【0096】
実験に基づく証拠から、ニューロン組織に対する損傷によって、過剰なレベルのTNFが放出されることが示されている。従って、TNFアンタゴニストを用いると、これらの神経の状態が改善するという結果になる。脱髄性疾患(多発性硬化症など)、免疫疾患、炎症、外傷、または圧迫症に起因する神経疾患が、解剖学的な部位および生理的な問題の原因と性質の履歴に左右される、臨床上の異なった形態で生じる。これらの障害のすべてに共通することは、これらによって永続的な神経の損傷が生じる可能性があるという事実であり、この損傷は急激に生じかつ不可逆となる可能性があり、そして外科手術および/または薬理学的な物質の使用をしばしば必要とする、これらの状態の最新の治療は十分ではなく、完全に成功しないことがよくある。これらの神経の状態としては、急性脊髄損傷、脊髄圧迫症、脊髄の血腫、脊髄挫傷(これらの症例は通常、オートバイの事故またはスポーツでの負傷などのように外傷性である);神経圧迫、その最も一般的な状態は坐骨神経の圧迫、ニューロパシー、および疼痛を引き起こす椎間板ヘルニアである;首の神経圧迫を引き起こす頸椎椎間板ヘルニアも含まれる;手根管症候群(非RA);ガンによる急性または慢性の脊髄の圧迫(このことは、前立腺ガン、乳ガンまたは肺ガンなどから棘への転移に起因することが多い);神経系の自己免疫疾患;ならびに脱髄性疾患、その最も一般的な状態は多発性硬化症である、が挙げられる。
【0097】
神経疾患の治療に有用な別の薬剤の具体例は、上記の神経学上の問題および状態を治療するために用いられるコルチゾンなどのステロイド剤である。神経疾患、外傷、負傷および圧迫症の治療のために用いられる、種々の有機構造および代謝機能を有する薬理学上の化学物質、化合物および薬剤のさらなる具体例が、たとえば米国特許第5,756,482号および第5,574,022号(これらのものは、その全体が本明細書中に参考として援用されている)に開示されている。ここでは、負傷のあとで、プレグネノロンおよび硫酸プレグネノロンなどのステロイドホルモンまたはステロイド前駆体を、インドメタシンなどの非ステロイド系抗炎症性物質と組み合わせて用いることで、神経系および脊髄への物理的損傷を緩和する方法が開示されている。
【0098】
J.他の疾患
本発明の抗体および抗体の一部分を用いて、TNFα活性が有害である他の種々の疾患を治療することができる。TNFα活性が病態生理に関与し、従って本発明の抗体または抗体の一部分を用いて治療が可能である他の疾患および障害の具体例としては、炎症性の骨疾患および骨吸収の疾患(たとえば、ベルトリーニ,ディー.アール.(Bertolini,D.R.)ら、(1986)Nature 319:516−518;ケーニヒ,エイ.(Konig,A.)ら、(1988)J.Bone Miner.Res.:621−627;レーナー,ユー.エイチ.およびオーリン,エイ.(Lerner,U.H.and Ohlin,A.)、(1993)J.Bone Miner.Res.:147−155;ならびにシャンカー,ジー.およびスターン,ピー.エイチ.(Shankar,G.and Stern,P.H.)、(1993)Bone 14:871−876を参照すること)、アルコール性肝炎(たとえば、マッククライン,シー.ジェイ.およびコーエン,ディー.エイ.(McClain,C.J.and Cohen,D.A.)、(1989)Hepatology :349−351;フェルバー,エム.イー.(Felver,M.E.)ら、(1990)Alcohol.Clin.Exp.Res.14:255−259;およびハンセン,ジェイ.(Hansen,J.)ら、(1994) Hepatology 20:461−474を参照すること)およびウイルス性肝炎(シェロン,エヌ.(Sheron,N.)ら、(1991)J.Hepatol.12:241−245;およびフサイン,エム.ジェイ.(Hussain,M.J.)ら、(1994)J.Clin.Pathol.47:1112−1115)を含めた肝炎、凝固障害(たとえば、バンデルポール,ティー.(van der Poll,T.)ら、(1990)N.Engl.J.Med.322:1622−1627;およびバンデルポール,ティー.ら、(1991)Prog.Clin.Biol.Res.367:55−60を参照すること)、火傷(たとえば、ジロール,ビー.ピー.(Giroir,B.P.)ら、(1994)Ain.J.Physio.267:H118−124;およびリウ,エックス.エス.(Liu,X.S.)ら、(1994)Burns 20:40−44を参照すること)、再灌流障害(たとえば、スケイルス,ダブリュ.イー.(Scales,W.E.)ら、(1994)Am.J.Physio.267:G1122−1127;シェリック,シー.(Serrick,C.)ら、(1994) Transplantation 58:1158−1162;およびヤオ,ワイ.エム.(Yao,Y.M.)ら、(1995)Resuscitation 29:157−168を参照すること)、ケロイド形成(たとえばマックコーリー,アール.エル.(McCauley,R.L.)ら、(1992)J.Clin.Immunol.12:300−308を参照すること)、瘢痕組織の形成ならびに発熱が挙げられる。好ましくは、それぞれの障害または疾患の治療に有用な別の薬剤と併用する抗体および抗体の一部分が有用である。抗体がD2E7であることがさらに好ましい。それぞれの障害または疾患の治療に有用な一種以上の他の薬剤と共に、D2E7を40mgの投与量にて隔週で皮下に投与することがさらに好ましい。
【0099】
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、制限するものと解釈すべきではない。本出願を通して列挙された参考文献、特許および公開された特許出願のすべての内容は、本明細書中に参考として援用されている。上記の開示および以下の開示の組み合わせを適用でき、かつ可能である場合、たとえその組み合わせの言葉自体が記載されていなくても、そのような組み合わせは本発明の範囲内である。
【実施例】
【0100】
(承認されたDMARD、NSAIDまたはステロイド剤を含めた)最新の抗リウマチ療法で適切な治療を受けていないRA疾患の患者に、隔週にてD2E7を40mg投与することの安全性と有効性とを調査するために、一つの研究を設計し、そして実施した;この研究は、最新の抗リウマチ療法で適切な治療を受けていない慢性関節リウマチ(RA)疾患の患者に、隔週にてD2E7を40mgの投与量で24週目まで皮下(sc)投与するという、マルチセンター無作為化二重盲検プラシーボ管理研究であった。抗リウマチ療法では、承認された疾患修飾化抗リウマチ薬(DMARD)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)またはステロイド剤を含む研究期間中の使用が許可された。抗リウマチ療法を利用したのにも関わらず、スクリーニング・ビジットおよびベースライン・ビジットの両方にて記録される活発な疾患を、患者は経験しなければならなかった。スクリーニングに先立つ少なくとも28日間を安定とするためには、併用するプレドニゾン(一日あたり10mg以下)およびNSAIDだけでなく、DMARDの投与が必要であった。さらに、アザチオプリンおよび/またはシクロスポリンを用いている患者は、これらの療法を中止してスクリーニングの前に28日間の洗い流し期間を経験した。ベースライン・ビジットにおいて、患者をD2E7またはプラシーボに無作為化し、そしてこのことが24週間のプラシーボ管理期間の開始を意味した。研究の2週目、4週目、8週目、12週目、16週目、20週目および24週目において、患者の検査を行った。米国リウマチ学会の20%の改善(ACR20)応答を満たせなかったかまたは維持できなかった患者には、ノール医療用モニターを用いての立会い診察の後で、DMARDおよび/またはステロイド療法の投与量を一回増加させるか、研究に参加してから3ヵ月後に別のDMARDでの治療を行うか、または投与量をさらに調節した。
【0101】
750(750)名の患者を登録し、636名の患者を無作為化し、578名の患者が完了し、そして636名の患者を分析した。
【0102】
対照的に、すべての無作為化患者が人口統計学上の分析および安全性の分析に算入された。
【0103】
患者は少なくとも3ヶ月間、(1987年に改訂されたACRの判断基準で規定された)RAの確定診断のままで過ごし、そしてACRの機能クラスI、II、またはIIIとした。最新の抗リウマチ療法による患者の治療は十分でなく、6以上の関節の腫れおよび9以上の圧痛のある関節として規定される活発なRAを有していた。さらに、投与量が10mg/日以下のプレドニゾンと等価であり、少なくとも28日間は変化がなかったことを維持した場合の糖質コルチコイドを用いるその患者が、研究への参加を許された。
【0104】
2mLのガラスビン内にD2E7を供給した(それぞれのビンにおけるD2E7の濃度は25mg/mLであった(すなわち40mg/1.6mL))。それぞれは、1.6mLの注射用溶液あたり40mgのD2E7を含んでいた。D2E7は、オーストリアのウンターラッハにあるエベーウェ・アルツナイミッテル株式会社(Ebewe Arzneimittel GmbH)で製造され提供を受けた。米国メリーランド州のロックビルにあるマケッソン・エイチビーオーシ・バイオサイエンシズ(McKesson,HBOC Biosciences)社で、D2E7が包装され、ラベルを付けられ、貯蔵され、そしてこの研究のための各地における研究者に送られた。24週間の期間中、隔週で行う40mgの一回の皮下注射としてD2E7が自己管理された。研究用の薬剤の濃度は25mg/mLであった。24週間の期間中、隔週で行う一回の皮下注射としてプラシーボ/1.6mL(D2E7が含まれないクエン酸−リン酸緩衝液)が自己管理された。
【0105】
抗リウマチ療法の研究前の投与量を患者は受け続けた。研究期間中、抗リウマチ療法の使用が許されたのは、DMARD(ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、注射用金製剤、経口用金製剤およびスルファサラジンもしくはそれらの任意の組み合わせまたは他のDMARD)、NSAIDおよびステロイド剤が含まれた。スクリーニングに先立つ少なくとも28日間を安定とするためには、併用するプレドニゾン(一日あたり10mg以下)およびNSAIDだけでなく、DMARDを投与しなければならなかった。
【0106】
24週間のプラシーボ管理期間中、この研究における患者を保護することに、すべての努力が向けられた。最新の臨床上の実務を反映させてこのプロトコールを設計したので、次のような付加的な治療および投与量の調節も可能であった。
【0107】
本研究の最初の3ヶ月間は、最大で3回まで関節内にステロイドを注射することが許された。(一回または複数回)注射された関節は、それぞれの注射から28日間は関節の試験について評価されなかった。
【0108】
耐性の問題のために、バックグラウンドのDMARDおよび/またはステロイド剤またはNSAIDの治療の投与量を研究期間中に一度調整することができた。さらなる投与量の調整は、ノール医療用モニターを用いての立会い診察後にのみ行うように定められた。
【0109】
有効性の欠如が記録された場合(すなわちベースラインと比べてACR20応答が達成できなかった場合)、次のことが生じる可能性があった。
【0110】
−バックグラウンドのDMARDおよび/またはステロイド剤の治療の投与量の一回分の増加(供給される残りのプレドニゾンの投与量は10mg/日以下のままであった)。
【0111】
−3ヶ月目以降、上記に列挙された別のDMARD療法での治療の開始。
【0112】
−以前に認められた、バックグラウンドの抗リウマチ薬の投与量の、ノール医療用モニターから判断されるさらなる調整。
【0113】
アザチオプリンおよび/またはシクロスポリンを投与されている患者は、これらの療法を中止してスクリーニング・ビジット前の28日間の洗い流し期間に参加することが求められた。本研究の期間中はこれらの療法を用いてはならなかった。
【0114】
併用療法は、ベースラインで用いられ、かつ研究期間中に続けられる療法として、または研究期間中に開始される療法として規定された。無作為化されたすべての患者に関する採用術語および処理群によって、併用療法が示される。
【0115】
研究者によってCRF上に記入された指標に従って、併用療法は、「RA特異的」および「RA非特異的」に分けられた。研究の間、すべての患者はRA特異的併用投薬(DMARDまたは非DMARD)のいくつかの形式の上にあった。
【0116】
RA特異的DMARD併用療法:
表1において、無作為化されたすべての患者に関する採用術語および処理群によって、DMARD併用療法を示す。
【0117】
【表1】

【0118】
無作為化患者の大部分(636名中の531名[83.5%])が、研究期間中に一種以上のDMARD併用療法を用いた(318名のD2E7処理を受けた患者中の261名[82.1%]と、318名のプラシーボ処理を受けた患者中の270名[84.9%])。合計で105名(636名中の16.5%)の患者はDMARDを用いなかった(318名のD2E7処理を受けた患者中の57名[17.9%]と、318名のプラシーボ処理を受けた患者中の48名[15.1%])。356名(636名中の56.0%)の患者は一種のDMARDを用いた(318名のD2E7処理を受けた患者中の184名[57.9%]と、318名のプラシーボ処理を受けた患者名中の172名[54.1%])。そして175名の患者(636名中の27.5%)は二から四種の異なるDMARDを用いた(318名のD2E7処理を受けた患者中の77名[24.2%]と、318名のプラシーボ処理を受けた患者中の98名[30.8%])。
【0119】
研究期間中、D2E7処理群では、平均で1.10の異なるDMARDを用いたのに対して、プラシーボ処理群では、平均で1.21の異なるDMARDを用いた。
【0120】
最も高頻度で報告されたDMARD併用療法はメトトレキサートであった。このものは、636名の患者中の377名(59.3%)(318名のD2E7処理を受けた患者中の178名[56.0%]と、318名のプラシーボ処理を受けた患者中の199名[62.6%])によって用いられた。次に続く三種の最も広く用いられたDMARD併用療法は、抗マラリア薬(すなわちクロロキン、ヒドロキシクロロキン)(636名の患者の24.7%:318名のD2E7処理を受けた患者の23.6%および318名のプラシーボ処理を受けた患者の25.8%)、レフルノミド(636名の患者の13.8%:318名のD2E7処理を受けた患者の13.2%および318名のプラシーボ処理を受けた患者の14.5%)、そしてスルファサラジン(636名の患者の9.7%:318名のD2E7処理を受けた患者の9.1%および318名のプラシーボ処理を受けた患者の10.4%)であった。D2E7治療を受けた患者とプラシーボ処理を受けた患者との間には、RA特異的DMARD併用療法を用いた頻度についての関連性のある違いはなかった。
【0121】
RA特異的非DMARD併用療法:
表2において、無作為化されたすべての患者に関する採用術語および処理群によって、RA特異的非DMARD併用療法を示す。
【0122】
【表2】

【0123】
636名の無作為化患者中の合計で619名(97.3%)(318名のD2E7処理を受けた患者中の315名[99.1%]と、318名のプラシーボ処理を受けた患者中の304名[95.6%])が、研究期間中に一種以上のRA特異的非DMARD併用療法を用いた。
【0124】
最も高頻度で報告されたRA特異的非DMARD併用療法はプレドニゾンであった。このものは、636名の患者中の287名(45.1%)(318名のD2E7処理を受けた患者中の141名[44.3%]と、318名のプラシーボ処理を受けた患者中の146名[45.9%])によって用いられた。次に続く最も広く用いられた非DMARD併用療法は葉酸であった(636名の患者の27.4%:318名のD2E7処理を受けた患者の27.7%および318名のプラシーボ処理を受けた患者の27.0%)。CRFに記載された指示に従って、葉酸はRA特異的非DMARD療法または非RA特異的療法に分類された。RA以外のすべての指示に関しては、葉酸は非RA特異的療法に分類された。セレコキシブ(636名の患者の25.2%:318名のD2E7処理を受けた患者の24.2%および318名のプラシーボ処理を受けた患者の26.1%)およびロフェコキシブ(636名の患者の13.2%:318名のD2E7処理を受けた患者の14.2%および318名のプラシーボ処理を受けた患者の12.3%)が、次に続く最も頻繁に用いられたRA特異的非DMARD併用療法であった。D2E7治療を受けた患者とプラシーボ処理を受けた患者との間には、RA特異的非DMARD併用療法を用いた頻度についての関連性のある違いはなかった。
【0125】
RA非特異的併用療法:
無作為化されたすべての患者に関する採用術語および処理群によって、RA非特異的併用療法を示す。
【0126】
636名の無作為化患者中の合計で614名(96.5%)(318名のD2E7処理を受けた患者中の306名[96.2%]と、318名のプラシーボ処理を受けた患者中の308名[96.9%])が、一種以上の非RA特異的併用療法を用いた。
【0127】
最も高頻度で報告された非RA特異的併用療法は総合ビタミン類であった。このものは、636名の患者中の166名(26.1%)(318名のD2E7処理を受けた患者中の78名[24.5%]および318名のプラシーボ処理を受けた患者中の88名[27.7%])によって用いられた。次に続く三種の最も広く用いられた併用療法は、カルシウム(636名の患者の24.4%:318名のD2E7処理を受けた患者の23.6%および318名のプラシーボ処理を受けた患者の25.2%)、葉酸(636名の患者の22.2%:318名のD2E7処理を受けた患者の21.4%および318名のプラシーボ処理を受けた患者の23.0%)ならびにインフルエンザウイルスの多価ワクチン(636名の患者の14.2%:318名のD2E7処理を受けた患者の14.2%および318名のプラシーボ処理を受けた患者の14.2%)であった。(CRFに記載された指示に従って、葉酸はRA特異的非DMARD療法または非RA特異的療法に分類された。RA以外のすべての指示に関しては、葉酸は非RA特異的療法に分類された。)D2E7治療を受けた患者とプラシーボ処理を受けた患者との間には、非RA特異的併用療法を用いた頻度についての関連性のある違いはなかった。
【0128】
有効性の指標としては:24週目でのACR20応答;24週目でのACR50およびACR70;ベースラインから24週目までのACR20、ACR50およびACR70のAUC(曲線下面積);ACR20、ACR50およびACR70についての最初の応答までの時間;ACRの数値(ACR−N);ベースラインから24週目までの、ACR応答の判断基準の構成要素の変化(圧痛のある関節の総数[TJC]、腫れた関節の総数[SJC]、患者による疼痛の評価、患者および主治医による疾患の活動の総合評価、HAQおよびC反応性タンパク質[CRP]);SF−36、ヘルス・ユーティリティーズ・インデックス(HUI)、慢性病の治療の疲労の機能評価(FACIT)の度合いによって測定される、ベースラインから24週目までの肉体機能の変化;Euro−QoL質問表;疲労の多次元評価(MAF)の度合い;被験体の簡易調査;バックグラウンドのDMARDおよび/またはステロイド剤の治療の際の投与量増加までの発生率および時間;臨床上の応答を欠くことによる新規DMARD療法の設定;リウマチ因子(RF);ならびに朝の硬直が挙げられる。
【0129】
頻度、パーセンテージならびに100名の患者の年間あたりの割合によって、有害事象を要約した。ピアソンのカイ二乗(χ)検定を用いて、D2E7群とプラシーボ群との間での統計的な比較を行った。統計的な特性ならびに異常値の頻度によって、理学的検査、研究室のパラメータおよび胸部x線の変化を記述した。シフトテーブルも提供された。統計的な特性によってバイタルサインを記述した。24週目のACR20の応答(ベースラインからの変化)を最初の有効性変数と規定した。有意水準αが0.05のピアソンのχ両側検定を利用して、D2E7群とプラシーボ群との間のACR20の応答速度を比較した。他のすべての有効性変数を記述的に要約し(統計的な特性、頻度、パーセンテージ、信頼区間)、統計的両側検定によって予備的に分析した。カテゴリーデータについてはピアソンのχ検定を用い、連続的なデータについては、因子として処理群を、そして共変動としてそれぞれのベースライン値を含む共分散分析法(ANCOVA)モデルを用いた。連続型変数についてはウィルコクソンの順位和検定を用いて、そして離散型変数についてはピアソンのχ検定を用いて、D2E7群とプラシーボ群との間の人口統計的な特性およびベースライン特性を比較した。
【0130】
有効性の結果:
主要な有効性の指標であるACR20応答は、最新の抗リウマチ療法にD2E7が追加された患者における、プラシーボと比較しての統計的に有意な大幅な改善(D2E7については53.0%であるのに対してプラシーボについては34.9%)に関連していた。
【0131】
【表3】

【0132】
D2E7による治療は、二次的な有効性の指標であるACR50、ACR70、ACR−N、圧痛のある関節の総数、腫れた関節の総数、患者および主治医による疾患の活動の総合評価、患者による疼痛の評価、HAQの障害指数、C反応性タンパク質、朝の硬直、朝の硬直の継続時間、FACITの疲労の度合い、SF−36の10ドメインのうちの9ならびにHUIの16ドメインの7に関する統計的に有意な改善に関連していた。
【0133】
D2E7によって、ACR20、ACR50、およびACR70についての応答までの時間;ACR20、ACR50、ACR70およびACR−NについてのAUC;Euro−QoL、RF、ならびにMAFのスケールといった指標についての治療上の応答が、プラシーボを超えて改善したことも実証された。
【0134】
下位群の分析からは、メトトレキサート、抗マラリア薬治療、スルファサラジン、他のDMARD、またはDMARDの併用数(すなわち0、1、2、または3以上)を併用して与えられたD2E7の患者について、プラシーボの患者と比較して、ACR20、ACR50、ACR70、ACR−Nのパラメータ、およびACR20、ACR50、ACR70、およびACR−NのAUCのスコアが大きく改善したことが実証された。レフルノミドの併用は、試験を行ったすべてのパラメータについてプラシーボによく似ていた。
【0135】
【表4】

【0136】
【表5】

【0137】
【表6】

【0138】
【表7】

【0139】
結論:
患者の既存のDMARD療法(たとえば、メトトレキサート、抗マラリア薬〔クロロキン/ヒドロキシクロロキン〕、レフルノミド、およびスルファサラジン)に追加した場合、D2E7は一般的に耐性が良好であった。その追加は、有害事象の発生率またはプロフィールのあらゆる重大な変化とは関係がなかった。さらに、有害事象のプロフィールは、患者に用いられる、併用するDMARDの総数(すなわち0、1、2、または3以上)に関連はしないことであった。
【0140】
全体として、D2E7の投与量が40mgでは、単独で用いてもまたは他のDMARDと組み合わせて用いても安全であることが実証された。
【0141】
D2E7の治療は、その疾患が既存のDMARD療法による治療では不十分である患者におけるRAの有意な改善と関連した。メトトレキサート、抗マラリア薬の治療、スルファサラジン、他のDMARD、またはDMARDの併用数(すなわち0、1、2、または3以上)と組み合わせて用いた場合、D2E7はプラシーボと比較するとより高い応答と関連した。最後に、応答速度の改善は、用いるDMARDのタイプまたは回数とは、一般的に無関係であった。
【0142】
均等物
当業者であれば、ルーチンな実験を利用して、本明細書に記載された本発明の特定の実施態様に関する多数の均等物を認識するか、または確認できる。次の請求の範囲は、そのような均等物を包含することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFα抗体またはその抗原結合断片により治療可能な疾患を患うヒト被験体における障害を治療する方法であって、その障害が治療されるように隔週で投与する計画に基づいて、それが必要な該ヒト被験体に抗TNFα抗体またはその抗原結合部分を含有する組成物を投与すること、および一種以上の他の薬剤を投与すること、を包含する方法。
【請求項2】
抗TNFα抗体またはその抗原結合部分を含有する組成物の投与が皮下注射によるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗TNFα抗体またはその抗原結合部分がヒト抗TNFα抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト抗体がD2E7である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
40mgのD2E7を投与する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
疾患が自己免疫疾患である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
自己免疫疾患が慢性関節リウマチである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
他の薬剤が、疾患修飾化抗リウマチ薬(DMARD)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド剤またはそれらの任意の組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
DMARDが、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、注射用金製剤、経口用金製剤、スルファサラジンまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
NSAIDが、プレドニゾン、葉酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パラセタモール、ナプロキセン、イブプロフェン、メチルプレドニゾロン、トラマドール、ジ−ゲシック、ジクロフェナク、バイコジン、トリアムシノロン、リドカインまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
他の薬剤が、総合ビタミン類、カルシウム、葉酸、インフルエンザウイルスの多価ワクチンまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
40mgのD2E7、一種以上の他の薬剤および医薬適合性の担体を含有する医薬組成物。
【請求項13】
他の薬剤が、疾患修飾化抗リウマチ薬(DMARD)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド剤またはそれらの任意の組み合わせである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
DMARDが、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、注射用金製剤、経口用金製剤、スルファサラジンまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
NSAIDが、プレドニゾン、葉酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パラセタモール、ナプロキセン、イブプロフェン、メチルプレドニゾロン、トラマドール、ジ−ゲシック、ジクロフェナク、バイコジン、トリアムシノロン、リドカインまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
他の薬剤が、総合ビタミン類、カルシウム、葉酸、インフルエンザウイルスの多価ワクチンまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項17】
a)抗TNFα抗体および医薬適合性の担体を含有する医薬組成物;
b)一種以上の医薬組成物であって、それぞれの組成物が一種以上の他の薬剤および医薬適合性の担体を含有する医薬組成物;ならびに
c)抗TNFα抗体またはその結合部位が治療に有効である障害の治療のための医薬組成物を隔週投与するための取扱説明書、
を含む処方を含むキット。
【請求項18】
抗体を含有する組成物が40mgのD2E7であり、取扱説明書が慢性関節リウマチの治療に関するものである、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
他の組成物が、疾患修飾化抗リウマチ薬(DMARD)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ステロイド剤またはそれらの任意の組み合わせを含有する、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
DMARDが、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、注射用金製剤、経口用金製剤、スルファサラジンまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
NSAIDが、プレドニゾン、葉酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パラセタモール、ナプロキセン、イブプロフェン、メチルプレドニゾロン、トラマドール、ジ−ゲシック、ジクロフェナク、バイコジン、トリアムシノロン、リドカインまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項19に記載のキット。
【請求項22】
他の薬剤が、総合ビタミン類、カルシウム、葉酸、インフルエンザウイルスの多価ワクチンまたはそれらの任意の組み合わせである、請求項18に記載のキット。

【公開番号】特開2010−248199(P2010−248199A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−118647(P2010−118647)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【分割の表示】特願2004−519536(P2004−519536)の分割
【原出願日】平成15年4月24日(2003.4.24)
【出願人】(503448572)アボツト・バイオテクノロジー・リミテツド (30)
【Fターム(参考)】