説明

TRPM8およびカルモジュリンのポリペプチド複合体ならびにそれらのその用途

本発明は、哺乳動物TRPM8がカルモジュリンに結合することを発見した。本発明は、冷・メントール受容体(TRPM8)またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体、およびカルモジュリンまたはカルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体を含んでなるポリペプチド複合体、ならびに該ポリペプチド複合体の用途を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、2005年10月31日出願の出願第60/731,818号(その内容全体は本明細書に引用することにより組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は冷覚および疼痛の調節に関する。より具体的には、本発明は、冷・メントール受容体(TRPM8)またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体およびカルモジュリンまたはカルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体を含んでなるポリペプチド複合体、ならびに該ポリペプチド複合体の用途に関する。
【背景技術】
【0003】
一過性受容体電位(TRP)陽イオンチャンネルは哺乳動物の温度知覚(thermosensation)に関与する。これらのチャンネルは後根神経節(DRG)若しくは三叉神経節(TG)の知覚ニューロン上に位置する。それらは熱刺激を検出しかつ電気信号すなわち活動電位に変換する。該電気信号はその後末梢組織から脊髄および脳に伝播され、そこでそれらは統合されかつ適切な反射および認知応答を誘発するよう解釈される(非特許文献1)。特定の温度により活性化されかつ特異的パターンで発現される異なるTRPチャンネルが同定されている。TRPチャンネルの組合せ効果は、哺乳動物が広範囲の温度刺激、すなわち不快である、有害である、熱い若しくは冷たいものを感知することを可能にする。従って、これらの温度受容体は、多様な痛みを伴う状態の処置若しくは組織冷却が望ましい他の状態での使用のための高度に有望な標的を表す。
【0004】
CMR1すなわち冷・メントール受容体ともまた呼ばれるTRPM8すなわち一過性受容体電位チャンネル(メラノスタチンサブファミリー)タイプ8は、Ca2+に浸透性の非選択的陽イオンチャンネルである。TRPM8は、温度の低下、およびメントール、ユーカリプトール、イシリンのような冷却化合物双方により活性化される知覚ニューロンの亜集団で発現される(非特許文献2)。TRPM8は低温認識の基礎的生物学への興味深い洞察を提供する。TRPM8の調節は治療応用に適切であり得る。例えば低温処置は鎮痛の方法としてしばしば使用される。TRPM8受容体は、低温、ならびに低温様知覚を模倣するメントールおよびイシリンのような化合物に応答性であるため、TRPM8活性の調節は、鎮痛またはうっ血性鼻炎、咳若しくは気管支喘息のような他の解消の方法として低温若しくはメントール処置を使用する治療応用に適切であることが予期される。TRPM8タンパク質の機能若しくは発現の調節は、皮膚の炎症、ならびに日焼けおよびかみそり負けを包含する皮膚火傷のような皮膚若しくは粘膜の状態を有する患者にもまた有用であり得る。TRPM8活性の調節は、高血圧症から冷感異痛症を引き起こす低温までに苦しめられている患者でさらに適切であり得る。加えて、TRPM8活性の調節は、急性疼痛、例えば歯痛(toothache)(歯痛(odontalgia))、ならびに三叉神経痛(疼痛チック)および顎関節痛のような他の三叉神経で分布される疼痛を処置するのにもまた適切であり得る。ヒトTRPM8は腫瘍増殖と関連するマーカーとして同定された(非特許文献3)ため、TRPM8の調節は多様な細胞増殖障害の診断にもまた有用であり得る。
【0005】
多くのイオンチャンネルのように、TRPM8はカルシウムにより調節される。例えば、(EDTAの注入により)in vivoで細胞外Ca2+濃度を低下させること、若しくは単離された灌流される調製物に該チャンネルを浸積することは、該受容体の活性を強く増大させる一方、細胞外Ca2+濃度を上げることは、スパイク頻度およびバースト発火パターンに対するメントールの作用に拮抗する。加えて、冷却若しくは人工的誘導いずれかからの細胞内Ca2+濃度の上昇は、低温およびメントール活性化電流の温度感受性を移動させることにより低温適応を誘発する(非特許文献4)。細胞内Ca2+濃度の一過性の上昇および下落は局所若しくは全体的Ca2+スパークとして表れ、そして多数の生理学的事象を制御する。しかしながら、細胞質中の長期の高Ca2+の存在は細胞を死滅させる。
【0006】
カルモジュリン(CaM)は、多くのシグナル伝達経路に関与して細胞内Ca2+濃度レベルを解読することが見出されている。ヒト属(Homo)からゾウリムシ属(Paramecium)までの広範な種で見出される多様なイオンチャンネルは、それらの構成的若しくは解離可能なCa2+感知サブユニットとしてカルモジュリン(CaM)を使用する(非特許文献5)。CaMは、偏在性に発現される小型の酸性かつ高度に保存された可溶性カルシウム結合タンパク質である。CaMは、単量体としてCa2+を2対のEFハンド(一般的カルシウム結合モチーフである)で結合する。Ca2+を結合することに際して、CaMはより伸長されたようになり、そのEFハンドの各対が開放して、標的と結合しかつ「それを活性化する」ために利用可能である疎水性パッチを示す(非特許文献5)。活性化される標的は、タンパク質リン酸化、環状ヌクレオチド代謝、カルシウム恒常性などに関与するものを包含する。
【0007】
数種のTRPタンパク質はCa2+依存性の様式でカルモジュリンと相互作用することが見出された(非特許文献6)。例えば、CaM結合はTRP4タンパク質の細胞質C末端領域内の2ドメインで発生する(非特許文献7)。TRP3のC末端のCaM結合部位の存在もまた報告されている(非特許文献8)。
【0008】
TRPM8の活性を潜在的に増大若しくは低下させる化合物を同定かつ試験するのに使用し得る系に対する必要性が存在する。こうした化合物の同定および試験は、慢性疼痛を伴う多様な障害の処置、および組織冷却が望ましい他の状態での用途についてを可能にするとみられる。
【非特許文献1】Jordtら、Curr Opin Neurobiol.2003、13(4):487−92
【非特許文献2】McKemyら、Nature、2002、416:52−58
【非特許文献3】Tsavaler,L.ら Cancer Res.、2002、61:3760−3769
【非特許文献4】Reidら、J.Physiol.、2002、545:595−614
【非特許文献5】Saimiら、Annu Rev Physiol.2002、64:289−311
【非特許文献6】Tangら、J.Biol.Chem.2001、276:21303−21310
【非特許文献7】Trostら、2001、Biochem J.355(Pt 3):663−70
【非特許文献8】Zhangら、Proc Natl Acad Sci U S A.2001、98(6):3168−73
【発明の開示】
【0009】
[発明の要約]
哺乳動物のTRPM8がカルモジュリンに結合することが今や発見された。
【0010】
一局面において、本発明は、2)カルモジュリンまたはカルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体と相互作用する1)TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体を含んでなる、単離されたポリペプチド複合体を提供する。
【0011】
別の局面において、本発明は、a)2)のタンパク質と相互作用する1)のタンパク質を含んでなるポリペプチド複合体の形成を可能にする条件下で、2)カルモジュリンまたはカルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体と1)TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体を接触させる段階であって、1)および2)のタンパク質の少なくとも一方が単離された形態にあるか若しくは組換え発現されており;ならびにb)該ポリペプチド複合体を単離する段階を含んでなる、ポリペプチド複合体の製造方法を提供する。
【0012】
なお別の局面において、本発明は、a)2)のタンパク質と相互作用する1)のタンパク質を含んでなるポリペプチド複合体の形成を可能にする条件下で、2)カルモジュリンまたはカルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体と1)TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体を接触させる段階;b)試験化合物を1)および2)のタンパク質の少なくとも一方と接触させる段階;c)形成されるポリペプチド複合体の量を測定する段階;d)段階a)およびc)を反復する段階;e)段階b)から決定されるところの形成されるポリペプチド複合体の量を段階d)からのものと比較する段階を含んでなる、TRPM8−カルモジュリンポリペプチド複合体の調節物質の同定方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、TRPM8−カルモジュリンポリペプチド複合体の調節物質を同定する段階を含んでなる、疼痛を処置するのに有用な化合物の同定方法も提供する。
【0014】
本発明は、TRPM8−カルモジュリンポリペプチド複合体の調節物質である化合物の有効量を被験体に投与する段階を含んでなる、被験体における疼痛の低減方法をさらに提供する。
【0015】
本発明の他の局面は、カルモジュリンに結合するTRPM8の活性フラグメントに関する単離されたタンパク質、単離された核酸分子、発現ベクターおよび組換え細胞を包含する。
【0016】
[発明の詳細な記述]
本明細書で引用される全部の刊行物はここに引用することにより組み込まれる。別の方法で定義されない限り、本明細書で使用される全部の技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されると同一の意味を有する。
【0017】
本明細書で使用されるところの「含んでなること」、「含有すること」、「有すること」および「包含すること」という用語は、それらの制約のない制限しない意味で使用する。
【0018】
以下は本明細で時折使用される略語である:
bp=塩基対
cDNA=相補DNA
Ca2+=カルシウム
CaM=カルモジュリン
CMR1=低温およびメントール感受性受容体1;
DRG=後根神経節
FRET=蛍光共鳴エネルギー転移
FP=蛍光偏光
kb=キロベース;1000塩基対
PAGE=ポリアクリルアミドゲル電気泳動
PCR=ポリメラーゼ連鎖反応
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム
TG=三叉神経節
TRPM8=一過性受容体電位チャンネル(メラノスタチンサブファミリー)タイプ8
【0019】
「結合活性」は、相互と結合若しくは相互作用のいずれかをする2種若しくはそれ以上の分子実体の能力を指す。
【0020】
「カルモジュリン」若しくは「CaM」は、偏在性に発現される小型の酸性かつ高度に保存された可溶性カルシウム結合タンパク質を指す。Ca2+を結合することに際して、CaMは標的ポリペプチドにもまた結合し得、そして従って該標的ポリペプチドの生物学的活性を調節する。CaMはサイトゾル若しくはサイトゾルに面する膜でのその存在により、およびカルシウムに対する高親和性により同定し得る。カルモジュリンの機能は、成長および細胞周期、ならびにシグナル伝達ならびに神経伝達物質の合成および放出における役割を包含する。例示的一CaMは、149アミノ酸および4個のカルシウム結合ドメインを有する、配列番号1に描かれるアミノ酸配列を有する。例示的CaMは、配列番号1に描かれるCaMタンパク質の構造的および機能的多形もまた包含する。「多形」は集団中の個体間の特定の一遺伝子座での一組の遺伝子バリアントを指す。
【0021】
本明細書で使用されるところの「カルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体」は、タンパク質−タンパク質相互作用の標準的測定技術に従ってin vivo若しくはin vitroで測定されるところの、完全長のカルモジュリンのものに類似の様式でTRPM8に結合するその能力を維持する、カルモジュリンのその部分、若しくはカルモジュリンのその部分を含んでなるCaM以外のポリペプチドを指す。カルモジュリンの例示的一活性フラグメント若しくは誘導体はカルモジュリンのTRPM8相互作用ドメインである。
【0022】
「細胞」は検出方法の感度に適切な最低1個の細胞若しくは複数の細胞を指す。本発明に適する細胞は細菌でありうるが、しかし好ましくは真核生物であり、そして最も好ましくは哺乳動物である。
【0023】
「低温およびメントール感受性受容体」、「CMR1」、「一過性受容体電位チャンネル(メラノスタチンサブファミリー)タイプ8」若しくは「TRP8」は、それぞれ、低温、若しくは限定されるものでないがメントールおよびイシリンを挙げることができる冷覚を惹起する化合物のような低温刺激を感知かつ伝達することが可能であるタンパク質を指す。「TRPM8」は、低温、若しくは冷覚を惹起する化合物により活性化され得る興奮性イオンチャンネルすなわちTRPM8チャンネルを形成し得る。活性化されたTRPM8チャンネルは該チャンネルを通るCa++イオンの流入をゲートして膜脱分極をもたらす。TRPM8は、配列番号2に描かれるヒトTRPM8タンパク質(NP_076985)に対する約80%以上のアミノ酸配列同一性を有し得る。ヒトTRPM8は前立腺特異的転写物として以前に同定されており、そして、前立腺、黒色腫、結腸直腸および乳癌を包含する多様な腫瘍組織で発現されることもまた見出された(Tsavaler,L.ら Cancer Res.2002、61:3760−3769)。いくつかの態様において、TRPM8は配列番号2に対する約85、90若しくは95%以上のアミノ酸配列同一性を有する。例示的TRPM8は、配列番号2に描かれるヒトTRPM8タンパク質の構造的および機能的多形を包含する。TRPM8はまた、ラット、マウス、ブタ、イヌおよびサルを包含する他の動物でのヒトTRPM8のオルソログも包含する(例えば、ラットTRPM8(配列番号3、GenBankタンパク質ID:NP_599198、McKemy,D.D.ら 2002、上記)若しくはマウスTRPM8(配列番号4、GenBankタンパク質ID:NP_599013、Peier,A.M.ら、2002、Cell 108:705−715)の構造的および機能的多形)。
【0024】
本明細書で使用されるところの「TRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体」は、タンパク質−タンパク質相互作用の標準的測定技術に従ってin vivo若しくはin vitroで測定されるところの、完全長のTRPM8のものに類似の様式でCaMに結合するその能力を維持する、TRPM8のその部分、若しくはTRPM8のその部分を含んでなるTRPM8以外のポリペプチドを指す。TRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体はTRPM8のカルモジュリン相互作用ドメインであり得る。TRPM8の例示的活性フラグメント若しくは誘導体は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9のアミノ酸配列、カルモジュリンと相互作用することが見出されたラットTRPM8のフラグメントを有し得る。
【0025】
「ヌクレオチド配列」は、一若しくは二本鎖いずれかの形態のポリマー中のデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドいずれかの残基の配置を指す。核酸配列は、以下の塩基、すなわちチミジン、アデニン、シトシン、グアニンおよびウラシル(それぞれT、A、C、GおよびUと略記される)の天然のヌクレオチド、ならびに/若しくは天然のヌクレオチドの合成アナログから構成され得る。
【0026】
「単離された」核酸分子は、該核酸の天然の供給源に存在する他の核酸分子の最低1種から実質的に分離されているか、または該核酸分子が化学合成される場合は化学的前駆体若しくは他の化学物質の最低1種を実質的に含まないものである。「単離された」核酸分子は、例えば、該核酸が由来する生物体のゲノムDNA中でその5’および3’端で該核酸分子と天然に隣接するヌクレオチド配列の最低1種を実質的に含まない核酸分子でもまたあり得る。核酸分子は、約30%、20%、10%若しくは5%未満(乾燥重量で)の他の核酸分子(1種若しくは複数)または他の化学物質(1種若しくは複数)(「汚染する核酸分子」若しくは「汚染する化学物質」ともまた称される)が存在する場合に、該核酸分子の調製物中で他の核酸分子(1種若しくは複数)または他の化学物質(1種若しくは複数)「から実質的に分離されている」若しくは「を実質的に含まない」。
【0027】
単離された核酸分子は、他の配列に依存しない別個の核酸分子(例えば、PCR若しくは制限エンドヌクレアーゼ処理により製造されるcDNA若しくはゲノムDNAフラグメント)、ならびに、ベクター、自律複製プラスミド、ウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルス若しくはヘルペスウイルス)または原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれている核酸分子を制限なしに包含する。加えて、単離された核酸分子はハイブリッド若しくは融合核酸分子の一部である核酸分子を包含し得る。単離された核酸分子は:(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりin vitroで増幅されるか;(ii)例えば化学合成により合成されるか;(iii)クローニングにより組換え製造されるか;または(iv)切断および電気泳動若しくはクロマトグラフィー分離によるように精製される、核酸配列であり得る。
【0028】
「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」という用語は、アミノ酸残基がペプチド結合若しくは改変ペプチド結合により連結されているアミノ酸鎖を指すのに本明細書で互換性に使用する。アミノ酸鎖は2アミノ酸より長いいかなる長さのものでもあり得る。別の方法で明記されない限り、「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」という用語はそれらの多様な改変された形態もまた包含する。こうした改変された形態は天然に存在する形態若しくは化学修飾された形態でありうる。修飾された形態の例は、限定されるものでないが、グリコシル化された形態、リン酸化された形態、ミリストイル化された形態、パルミトイル化された形態、リボシル化された形態、アセチル化された形態、ユビキチン化された形態などを挙げることができる。修飾は、分子内架橋、および脂質、フラビン、ビオチン、ポリエチレングリコール若しくはそれらの誘導体のような多様な部分への共有結合などもまた包含する。加えて、修飾は環化、分枝および架橋もまた包含しうる。さらに、遺伝子のコドンによりコードされる慣習的な20種のアミノ酸以外のアミノ酸もまたポリペプチドに包含しうる。
【0029】
「単離されたタンパク質」は、該タンパク質の天然の供給源に存在する他のタンパク質の最低1種から実質的に分離されているか、または該タンパク質が化学合成される場合は化学的前駆体若しくは他の化学物質の最低1種を実質的に含まないものである。タンパク質は、約30%、20%、10%若しくは5%未満(乾燥重量で)の他のタンパク質(1種若しくは複数)または他の化学物質(1種若しくは複数)(「汚染するタンパク質」若しくは「汚染する化学物質」ともまた本明細書で称される)が存在する場合に、該タンパク質の調製物中で他のタンパク質(1種若しくは複数)または他の化学物質(1種若しくは複数)「から実質的に分離されている」若しくは「を実質的に含まない」。
【0030】
単離されたタンパク質は数種の異なる物理的形態を有し得る。単離されたタンパク質は、完全長の新生すなわちプロセシングされていないポリペプチド、または部分的にプロセシングされたポリペプチド、あるいはプロセシングされたポリペプチドの組合せとして存在し得る。完全長の新生ポリペプチドは、該完全長の新生ポリペプチドのフラグメントの形成をもたらす特異的タンパク質分解性切断事象により翻訳後修飾され得る。フラグメント若しくはフラグメントの物理的会合は、完全長ポリペプチドと関連した生物学的活性を有し得るが;しかしながら、個々のフラグメントに関連する生物学的活性の程度は変動し得る。
【0031】
単離されたポリペプチドは天然に存在しないポリペプチドであり得る。例えば「単離されたポリペプチド」は「ハイブリッドポリペプチド」であり得る。「単離されたポリペプチド」は、アミノ酸の付加若しくは欠失若しくは置換により天然に存在するポリペプチドから派生するポリペプチドでもまたあり得る。単離されたポリペプチドは「精製されたポリペプチド」でもまたあり得、これは、他の細胞成分、他のポリペプチド、ウイルス物質、若しくは培地、または該ポリペプチドが化学合成される場合は該化学合成に関連する化学的前駆体若しくは副生成物を実質的に含まない実質的に均質な調製物中の指定されるポリペプチドを意味するために本明細書で使用する。「精製されたポリペプチド」は、当業者に明らかであろうとおり、標準的精製技術若しくは化学合成により天然若しくは組換えの宿主細胞から得ることができる。
【0032】
「ハイブリッドタンパク質」、「ハイブリッドポリペプチド」、「ハイブリッドペプチド」、「融合タンパク質」、「融合ポリペプチド」および「融合ペプチド」という用語は、指定されるポリペプチド分子が、指定されるポリペプチドに天然に連結しない1種若しくはそれ以上の他のポリペプチド分子に共有結合されている、天然に存在しないポリペプチド若しくは単離されたポリペプチドを意味するために本明細書で互換性に使用する。従って、「ハイブリッドタンパク質」は、共有結合により一緒に連結された2種の天然に存在するタンパク質若しくはそれらのフラグメントであり得る。「ハイブリッドタンパク質」は、2種の人工的ポリペプチドを一緒に共有結合することにより形成されるタンパク質でもまたあり得る。典型的には、しかし必ずではなく、2種若しくはそれ以上のポリペプチド分子は、単一の非分枝状ポリペプチド鎖を形成するペプチド結合により一緒に連結すなわち「融合」される。
【0033】
本明細書で使用されるところの「相互作用すること」若しくは「相互作用」という用語は、2種のタンパク質ドメイン、フラグメント若しくは完全なタンパク質が、2種の「相互作用する」タンパク質ドメイン、フラグメント若しくはタンパク質を相互に物理的に近接にもたらすように相互に対する十分な物理的親和性を表すことを意味している。相互作用は、該2種の相互作用する実体の継続的かつ安定な近接をもたらす1個若しくはそれ以上の化学結合の形成からであり得る。相互作用は、共局在する2種のタンパク質中で等しく効果的であり得る物理的親和性のみに基づくこともまたできる。物理的親和性および化学結合の例は、限定されるものでないが、電荷の差違により引き起こされる力、疎水性、水素結合、ファンデルワールス力、イオン力、共有結合およびそれらの組合せを挙げることができる。相互作用ドメイン、フラグメント、タンパク質若しくは実体間の近接の状態は、一過性若しくは永続的、可逆的若しくは不可逆的であり得る。いかなる場合も、それは、2種の実体の天然の無作為の動きにより引き起こされる接触と対照的かつ識別可能である。典型的には、必ずしもでないとは言え、「相互作用」は相互作用ドメイン、フラグメント、タンパク質若しくは実体間の結合により表される。相互作用の例は、抗原と抗体、リガンドと受容体、酵素と基質の間などの特異的相互作用を包含する。
【0034】
本明細書で使用されるところの「タンパク質複合体」若しくは「ポリペプチド複合体」という用語は、タンパク質間の相互作用により形成される2種若しくはそれ以上のタンパク質の組合せである混成単位を意味している。典型的には、しかし必ずではなく、「タンパク質複合体」は、特異的非共有結合親和性による2種若しくはそれ以上のタンパク質の一緒の結合により形成される。しかしながら、共有結合は相互作用パートナー間でもまた存在しうる。例えば、2種の相互作用パートナーは、該タンパク質複合体がより安定になるように共有架橋され得る。
【0035】
「単離されたタンパク質複合体」という用語は、その天然のすなわち元の細胞若しくは生物学的環境で天然に見出されるものと異なる組成若しくは環境で存在するタンパク質複合体を意味している。「単離されたタンパク質複合体」は天然に見出されないタンパク質複合体でもまたあり得る。
【0036】
本明細書で使用されるところの「タンパク質フラグメント」という用語はあるタンパク質の一部分を表すポリペプチドを意味している。タンパク質フラグメントが別のタンパク質若しくはタンパク質フラグメントとの相互作用を表す場合、該2種の実体は該実体内に含有される相互作用ドメインにより相互作用すると言われる。相互作用ドメインは、タンパク質の一次配列中で相互に近接しているアミノ酸残基により形成される小型の構造であり得る。あるいは、相互作用ドメインは、一次配列中で相互と接近していないがしかしポリペプチド鎖の三次折り畳みにより一緒にもたらされるポリペプチド鎖の部分からのアミノ酸残基により構成され得る。
【0037】
本明細書で使用されるところの「ドメイン」という用語はタンパク質若しくはポリペプチドの機能的部分、セグメント若しくは領域を意味している。「相互作用ドメイン」は、とりわけ、別のタンパク質、タンパク質フラグメント若しくは単離されたドメインに対するそのタンパク質、タンパク質フラグメント若しくは単離されたドメインの物理的親和性の原因である、タンパク質、ポリペプチド若しくはタンパク質フラグメントの一部分、セグメント若しくは領域を指す。
【0038】
「組換えの」は、分子生物学技術を使用してその天然の状態以外の何かに改変された、核酸、核酸によりコードされるタンパク質、細胞若しくはウイルス粒子を指す。例えば、組換え細胞は、天然の(組換えでない)形態の該細胞内で見出されないヌクレオチド配列を含有し得るか、またはそうでなければ異常に発現されるか、過小発現されるか若しくは全く発現されない天然の遺伝子を発現し得る。組換え細胞は、遺伝子が人工的手段により改変されかつ細胞に再導入されている天然の形態の細胞中で見出される遺伝子もまた含有し得る。該用語は、細胞から核酸を除去することなく改変された内因性核酸を含有する細胞もまた包含し;こうした改変は、例えば遺伝子置換および部位特異的突然変異により得られるものを包含する。
【0039】
「組換え宿主細胞」は組換えDNA配列をそれに導入させた細胞である。組換えDNA配列は、例えば電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、微小注入法、形質転換、遺伝子銃およびウイルス感染を包含するいずれかの適する方法を使用して宿主細胞に導入し得る。組換えDNAは、細胞のゲノムを構成する染色体DNAに組込まれ(共有結合され)ても若しくは組込まれなくてもよい。例えば、組換えDNAはプラスミドのようなエピソーム要素に維持され得る。あるいは、安定に形質転換若しくはトランスフェクトされる細胞に関して、組換えDNAは、それが染色体複製により娘細胞により遺伝されるように染色体中に組込まれたようになっている。この安定性は、安定に形質転換若しくはトランスフェクトされた細胞の、外因性DNAを含有する娘細胞の集団から構成される細胞株若しくはクローンを樹立する能力により示される。組換え宿主細胞は、大腸菌(E.coli)のような細菌、酵母のような真菌細胞、ヒト、ウシ、ブタ、サルおよびげっ歯類起源の細胞株のような哺乳動物細胞、ならびにショウジョウバエおよびカイコ由来細胞株のような昆虫細胞を包含する原核生物若しくは真核生物でありうる。「組換え宿主細胞」という用語が、特定の主題の細胞のみならずしかしまたこうした細胞の子孫若しくは潜在的子孫も指すことがさらに理解される。突然変異若しくは環境の影響いずれかにより後に続く世代である種の改変が起こりえるため、こうした子孫は実際には親細胞に同一でないかもしれないが、しかし、本明細書で使用されるところの該用語の範囲内になお包含される。
【0040】
「レポーター遺伝子」はレポーター遺伝子産物をコードする核酸配列を指す。当該技術分野で既知であるとおり、レポーター遺伝子産物は典型的には標準的方法により容易に検出可能である。例示的な適するレポーター遺伝子は、限定されるものでないが、ルシフェラーゼ(lux)、β−ガラクトシダーゼ(lacZ)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−グルクロニダーゼ、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、およびグアニンキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。
【0041】
「ベクター」は異種核酸が導入され得る若しくは導入されている核酸分子を指す。数種のベクターは、該ベクターの複製、または該ベクター若しくは構築物によりコードされるタンパク質の発現を見込む宿主細胞に導入し得る。ベクターは、典型的に、選択可能なマーカー、例えば、薬剤耐性、複製起点配列、および異種配列の挿入を見込むマルチクローニング部位を見込むタンパク質をコードする遺伝子を有する。ベクターは、典型的にはプラスミドに基づき、そして小文字の「p」次いで文字および/若しくは数字の組合せにより示される。本明細書に開示される出発プラスミドは、商業的に入手可能であるか、制限されずに公的に入手可能であるか、若しくは入手可能なプラスミドから当該技術分野で既知の手順の応用により構築し得る。本発明で使用し得る多くのプラスミドならびに他のクローニングおよび発現ベクターは公知でありかつ当業者に容易に入手可能である。さらに、当業者は、本発明での使用に適するいずれかの数の他のプラスミドを容易に構築しうる。本発明におけるこうしたプラスミドならびに他のベクターの特性、構築および使用は、本開示から当業者に容易に明らかであろう。
【0042】
「配列」は、モノマーがポリマー中で存在する直線的順序、例えばポリペプチド中のアミノ酸の順序若しくはポリヌクレオチド中のヌクレオチドの順序を意味している。
【0043】
本発明の実施において、分子生物学、微生物学および組換えDNAの多くの慣習的技術を使用する。これらの技術は公知であり、そして、例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.I、IIおよびIII、F.M.Ausubel編(1977);ならびにSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2001)に説明されている。
【0044】
一局面において、本発明は、2)カルモジュリンまたはカルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体と相互作用する1)TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体を含んでなる、単離されたポリペプチド複合体を提供する。
【0045】
従って、一態様において、本発明は、in vivoで見出される天然に存在する複合体を表す完全長のTRPM8とカルモジュリンタンパク質の間で形成される単離されたタンパク質複合体を提供する。完全長タンパク質のフラグメント間の相互作用は、一般に、こうしたフラグメントを含有する対応する完全長タンパク質間で形成される相互作用を暗示することが、タンパク質−タンパク質相互作用の分野で広く受け入れられている。従って、本明細書に提供される開示を鑑みれば、当業者は、完全長タンパク質のものに類似の様式で相互作用するTRPM8およびCaMタンパク質の活性フラグメント若しくは誘導体を予想するとみられる。従って、別の態様において、本発明は、完全長タンパク質のものに類似の様式で相互作用する、TRPM8およびCaMタンパク質の活性フラグメント若しくは誘導体から構成される多数の他のタンパク質複合体を提供する。
【0046】
本発明のタンパク質複合体は、該タンパク質複合体を形成するのに必要とされる必要な相互作用ドメインを包含するポリペプチドを含んでなる。場合によっては保存されたアミノ酸残基を同定するための複数配列のアライメントおよび連続するアミノ酸残基の伸長の解析により指図される実験法を使用して、CaM若しくはTRPM8タンパク質の最小相互作用フラグメントを定義し得る。TRPM8のますますより短いフラグメントをCaMと相互作用するそれらの能力について試験し得る。こうした実験法は、しばしば、CaMおよびTRPM8タンパク質の一方若しくは双方のより短い部分を系統的および漸進的に必要とする。こうした切断型フラグメントがなお相互作用するかどうかを決定するためのその後の試験は、相互作用パートナーと相互作用することがなお可能な最小相互作用フラグメントの解明に予測的に至ることができる。
【0047】
例えば、CaMとヒトTRPM8の大きなN末端フラグメント(配列番号5)の間の結合を検出した後に、より小さいヒトTRPM8フラグメントを、CaMを結合するそれらの能力について試験した。該大きなN末端フラグメント内で、53アミノ酸残基からなる小さいヒトTRPM8フラグメント(配列番号9)はCaMに結合することがなお可能であったことが発見された。配列比較は、このフラグメントが動物間で高度に保存されていることを示した。ヒト、イヌ、ラットおよびマウスからのTRPM8の配列はこの53アミノ酸伸長を包含するおよび取り巻く領域中で100%同一である。従って、本発明の例示的一タンパク質複合体は、配列番号9により定義されるアミノ酸残基を含有するTRPM8タンパク質フラグメントを含んでなる。本発明の他の例示的タンパク質複合体は、配列番号9のいずれか若しくは双方の端に付加的なアミノ酸残基を有するTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体を含んでなる。
【0048】
分子生物学およびタンパク質−タンパク質相互作用の当業者は、慣例の実験法を使用して、CaM、TRPM8またはそれらの活性フラグメント若しくは誘導体にアミノ酸配列変動を導入し得る。変動可能なアミノ酸残基を同定するための複数配列のアライメントの解析により場合によっては指図されて、当業者は、部位特異的突然変異を使用して、相互作用パートナーポリペプチドのアミノ酸配列中に特定の変化を導入しかつそれによりCaM若しくはTRPM8またはそれらのいずれかの相互作用フラグメントの「合成ホモログ」を製造し得る。例えば、当業者は、オルソログタンパク質中で変動することが見出された特定のアミノ酸残基をコードするコドンに変化を導入し得る。同様に、当業者は、特定のアミノ酸残基をコードするコドンに変化を導入し得、それはそれらのアミノ酸残基の保存的置換をもたらす。例えば、こうした方法を使用して、当業者は、「CTT」コドンを「ATT」コドンに変更する部位特異的突然変異を導入して、それにより天然のポリペプチド中の1ロイシン残基を合成ホモログ中でイソロイシン残基により置換させる。第一の近似へ、発現されるポリペプチド中のこうした保存的置換はそのパートナータンパク質と相互作用する合成ホモログの能力を排除することが期待されないとみられ、そして、それは事実、相互作用の親和性を増大させうる(Graversenら、J.Biol.Chem.275:37390−37396(2000)を参照されたい)。
【0049】
本発明のタンパク質複合体の特定の一態様において、CaMおよびTRPM8タンパク質、またはそれらの活性フラグメント若しくは誘導体は、一緒に直接融合、若しくはペプチドリンカーにより一緒に共有結合されて、単一の非分枝状ポリペプチド鎖を有するハイブリッドタンパク質を形成し得る。従って、タンパク質複合体はハイブリッドタンパク質の2部分間の「分子内」相互作用により形成されうる。再度、このタンパク質複合体中の融合若しくは連結された相互作用パートナーの一方若しくは双方は、天然のタンパク質、または天然のタンパク質のホモログ、誘導体若しくはフラグメントでありうる。
【0050】
本発明のタンパク質複合体は改変された形態にもまたあり得る。例えば、タンパク質複合体と選択的に免疫反応性の抗体をタンパク質複合体に結合し得る。別の例において、タンパク質複合体中の相互作用パートナー間の相互作用を高めることが可能な抗体以外の調節物質を包含しうる。あるいは、タンパク質複合体中のタンパク質メンバーを安定化の目的上架橋し得る。多様な架橋法を使用しうる。例えば、R−S−S−R’の形態の二官能性試薬(式中RおよびR’基はタンパク質複合体中のある種のアミノ酸側鎖と反応し得る)を使用して共有結合を形成しうる。例えば、Trautら、Creighton編、Protein Function:A Practical Approach、IRL Press、オックスフォード、1989中;Bairdら、J.Biol.Chem.、251:6953−6962(1976)を参照されたい。他の有用な架橋剤は、例えば、Denny−Jaffee試薬すなわちアゾ結合により切断可能なヘテロ二官能性光活性化型部分(Dennyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:5286−5290(1984)を参照されたい)、およびシステイン特異的光架橋試薬125I−{S−[N−(3−ヨード−4−アジドサリチル)システアミニル]−2−チオピリジン(Chenら、Science、265:90−92(1994)を参照されたい)を包含する。
【0051】
いくつかの態様において、本発明の単離されたタンパク質複合体は、単離された膜調製物と会合しているTRPM8を含んでなる。該膜調製物は、その細胞表面上にTRPM8を発現する天然の宿主細胞、例えばDRG若しくはTG細胞から単離し得る。膜調製物は、その細胞表面上でTRPM8を組換え的に発現する組換え宿主細胞、例えばCHO若しくはCOS細胞からもまた単離し得る。膜調製物は、TRPM8チャンネルを含んでなる組織膜、原形質膜、細胞膜若しくは内的オルガネラ膜のような生物学的膜からさらに調製し得る。生物学的膜調製物の単離および調製方法が当業者に既知である。例えば、こうした方法は、組織若しくは細胞の機械的若しくは酵素的破壊、膜を他の成分から分離するための遠心分離、および膜断片若しくは小胞を適する緩衝溶液に再懸濁することの段階を包含し得る。あるいは膜含有調製物は人工膜由来でもまたあり得る。精製されたTRPM8タンパク質を脂質二重層中に再構成して人工的膜小胞を形成しうる(Chenら、1996、J.Gen.Physiol.108:237−250を参照されたい)。こうした型の膜小胞は目的のチャンネルに非常に特異的であり得、他のチャンネルでの汚染の問題を回避する。人工的膜小胞の製造方法は当業者に既知である。
【0052】
別の一般的局面において、本発明は本発明のタンパク質複合体の製造方法を提供する。本発明のタンパク質複合体は多様な方法により製造し得る。具体的には、タンパク質複合体は、該タンパク質複合体を含有する動物組織サンプル、例えばヒト組織サンプルから直接単離し得る。タンパク質複合体は、該タンパク質複合体のメンバーを組換え発現する宿主細胞からもまた単離し得る。あるいは、タンパク質複合体は、該タンパク質複合体の個々のメンバーを組合せることによりin vitroで構成し得る。
【0053】
一態様において、本発明のタンパク質複合体は、相互作用するタンパク質パートナーと免疫反応性の抗体、若しくは、好ましくは、下に詳細に論考されるであろうところの該タンパク質複合体と選択的に免疫反応性の抗体を使用する共免疫沈降により、組織サンプル若しくは組換え宿主細胞から製造し得る。該抗体はモノクローナル若しくはポリクローナルであり得る。共免疫沈降は結合したタンパク質を単離若しくは検出するために当該技術分野で一般に使用される方法である。この手順では、一般に、血清サンプルまたは組織若しくは細胞ライセートを適する抗体と混合する。抗体に結合されたタンパク質複合体を沈殿させかつ洗浄する。結合したタンパク質複合体をその後溶離する。
【0054】
あるいは、免疫親和性クロマトグラフィーおよび免疫ブロッティング技術もまた、相互作用するタンパク質パートナーと免疫反応性の抗体、若しくは、好ましくは該タンパク質複合体と選択的に免疫反応性の抗体を使用する天然の組織サンプル若しくは組換え宿主細胞からのタンパク質複合体の単離において使用し得る。例えば、タンパク質免疫親和性クロマトグラフィーにおいて、抗体をマトリックス(例えばセファロース)に共有若しくは非共有結合し、それをその後カラムに充填する。組織サンプルからの抽出液若しくは組換え細胞からのライセートにカラムを通過させ、そこでそれはマトリックスに結合された抗体と接触する。カラムをその後低塩溶液で洗浄して、結合していない若しくはゆるく(非特異的に)結合した成分を洗い流す。カラム中に保持されているタンパク質複合体をその後、高塩溶液、該抗体の競合抗原、カオトロピック溶媒若しくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などを使用してカラムから溶離し得る。イムノブロット法においては、組織サンプル抽出液若しくは組換え宿主細胞ライセートからの粗タンパク質サンプルをポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分画し、そしてその後メンブレン例えばニトロセルロースに転写する。タンパク質複合体の成分の位置をその後メンブレン上で突き止め、そして多様な技術、例えば特異的抗体でのプロービングにより同定し得る。
【0055】
なお別の態様において、本発明のタンパク質複合体は、タンパク質アフィニティークロマトグラフィー若しくは親和性ブロット法により、組織サンプル若しくは組換え宿主細胞または他の適する供給源から調製しうる。すなわち、相互作用するタンパク質パートナーの1種を使用して、結合親和性により他の相互作用するタンパク質パートナー(1種若しくは複数)を単離し、従ってタンパク質複合体を形成する。従って、組織サンプルからの精製、または組換え発現若しくは化学合成により製造した相互作用するタンパク質パートナーを、マトリックス、例えばセファロースに共有若しくは非共有結合することができ、これをその後クロマトグラフィーカラムに充填する。組織サンプル抽出液若しくは組換え細胞からの細胞ライセートをその後、マトリックス上の結合されたタンパク質と接触させ得る。低塩溶液を使用して、結合していない若しくはゆるく結合した成分を洗い落とし、そして高塩溶液をその後使用してカラム中の結合したタンパク質複合体を溶離する。親和性ブロット法においては、組織サンプル若しくは組換え宿主細胞ライセートからの粗タンパク質サンプルをポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により分画し、そしてその後メンブレン例えばニトロセルロースに転写し得る。精製された相互作用するタンパク質メンバーをその後、メンブレン上のその相互作用するタンパク質パートナー(1種若しくは複数)に結合させてタンパク質複合体を形成し、それをその後メンブレンから単離する。
【0056】
別の態様において、個別の相互作用するタンパク質パートナーを、上述されたと類似の方法を使用して組織サンプル若しくは組換え宿主細胞から独立に単離若しくは精製し得る。個々の相互作用するタンパク質パートナーは、当業者に既知のin vitroポリペプチド合成法を使用してもまた合成し得る。個々の相互作用するタンパク質パートナーをその後、それらの相互作用に対し伝導性の条件下で組合せ、それにより本発明のタンパク質複合体を形成する。異なるタンパク質−タンパク質相互作用は異なる条件を必要としうることが注目される。温度、pH、塩濃度、還元剤などを包含する数種の異なるパラメータを変動させ得る。何らかの小さな程度の実験法が至適のインキュベーション条件を決定するために必要とされることがあり、これは本開示を一旦知らされれば当業者の能力内に十分にある。
【0057】
いかなる組換え発現法も、タンパク質複合体若しくは個々の相互作用タンパク質を発現するという目的上、本発明で使用しうることが当業者に明らかであろう。一般に、一方若しくは双方いずれかのCaMおよびTRPM8をコードする核酸を適する宿主細胞に導入し得る。本発明で使用し得る例示的核酸分子は、配列番号10のような完全長CaMをコードするcDNAを包含する。および、ヒト(配列番号11)、マウス(配列番号12)若しくはラット(配列番号13)からの完全長TRPM8をコードするもの。本発明で使用し得る他の核酸分子は、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9の配列を有する活性のラットTRPM8フラグメントをコードするもののような、CaM若しくはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体をコードするcDNAを包含する。
【0058】
典型的には、好ましくはDNAの形態の核酸をベクターに組み込み、宿主細胞に一旦導入されれば相互作用するタンパク質メンバー(1種若しくは複数)の産生を指図することが可能な発現ベクターを形成する。多くの型のベクターが本発明のため使用し得る。本発明の目的上の発現ベクターの構築方法は、本開示を知らされる当業者に明らかであるはずである。(全般として、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.2、Ausubelら編、Greene Publish.Assoc.& Wiley Intersciencs、第13章、1988;Glover、DNA Cloning、Vol.II、IRL Press、ワシントンDC、第3章、1986;Bitterら、Methods in Enzymology中153:516−544(1987);The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces、Strathernら編、Cold Spring Harbor Press、Vol.IおよびII、1982;ならびにSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、1989を参照されたい。)
【0059】
一般に、発現ベクターは相互作用するタンパク質メンバーをコードするDNAに作動可能に連結されたプロモーターを有する発現カセットを包含する。プロモーターは天然のプロモーター、すなわち該細胞中の相互作用するタンパク質メンバーの発現を司ることが天然に存在する細胞中で見出されたプロモーターであり得る。あるいは、発現カセットはキメラの(すなわち天然に存在する細胞中の該相互作用するタンパク質メンバーの発現を司る天然のプロモーターでない異種プロモーターを有する)ものであり得る。発現ベクターは、宿主細胞中の該ベクターの複製のためのDNA複製起点をさらに包含しうる。好ましくは、発現ベクターは、例えば大腸菌(E.coli)中の該ベクターの増幅のための複製起点、および発現ベクターを内部に持つ宿主細胞のみを選択かつ維持するための選択マーカー(1種若しくは複数)もまた包含する。加えて、発現カセットは、好ましくは、相互作用するタンパク質メンバーをコードするDNAからの転写を制御するよう機能する誘導可能な要素もまた含有する。転写エンハンサー配列および翻訳調節配列(例えばシャイン・ダルガノ配列)のような他の制御配列もまた発現カセット中に作動可能に包含し得る。ウシ成長ホルモン、SV40、lacZおよびAcMNPV多角体タンパク質遺伝子からのポリアデニル化シグナルのような終止配列もまた、発現カセット中で、相互作用するタンパク質メンバーをコードするDNAに作動可能に連結しうる。発現されたタンパク質の検出および/若しくは精製のためのエピトープ標識コーディング配列もまた、融合タンパク質が発現されるような、相互作用するタンパク質メンバーをコードするDNAに作動可能に連結し得る。有用なエピトープ標識の例は、限定されるものでないが、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、SV5(V5)、ポリヒスチジン(6×His)、c−myc、lacZ、GSTなどを挙げることができる。ポリヒスチジン標識をもつタンパク質はNiアフィニティーカラムで容易に検出かつ/若しくは精製し得る一方、多くのエピトープ標識と免疫反応性の特異的抗体が一般に商業的に入手可能である。発現ベクターは、発現されたタンパク質を細胞外に若しくは特定の細胞内区画に向ける成分もまた含有しうる。シグナルペプチド、核局在化配列、小胞体保持シグナル、ミトコンドリア局在化配列、ミリストイル化シグナル、パルミトイル化シグナルおよび膜貫通配列は、発現されたタンパク質の目的地を決定し得る任意のベクター成分の例である。単一宿主細胞中で2種若しくはそれ以上の相互作用するタンパク質メンバーを発現することが望ましい場合は、相互作用するタンパク質メンバーをコードするDNAフラグメントを単一ベクターに組み込んでも若しくは異なるベクターに組み込んでもよい。
【0060】
かように構築された発現ベクターを、当該技術分野で既知のいずれかの技術、例えば直接DNA形質転換、微小注入法、電気穿孔法、ウイルス感染、リポフェクション、遺伝子銃などにより宿主細胞に導入し得る。相互作用するタンパク質メンバーの発現は一過性でも若しくは安定でもよい。発現ベクターは、染色体外状態で、すなわち自己複製するプラスミド若しくはウイルスとして宿主細胞中で維持され得る。あるいは、発現ベクターは、安定細胞株の選択若しくは部位特異的組換えのような慣習的技術により、宿主細胞の染色体に組込み得る。安定細胞株では、発現ベクターの少なくとも発現カセット部分が宿主細胞の染色体に組込まれる。
【0061】
ベクター構築物は、限定されるものでないが細菌、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、ならびに哺乳動物およびヒト細胞を挙げることができる多様な宿主細胞中の発現に適するように設計し得る。多様な宿主細胞中の発現のための発現ベクターの製造方法は当業者に明らかであるはずである。
【0062】
天然の相互作用するタンパク質メンバーのホモログおよびフラグメントもまた、上述された組換え方法を使用して容易に発現し得る。例えば、タンパク質フラグメントを発現するために、それが該タンパク質フラグメントのみをコードするような発現ベクターに組み込まれたDNAフラグメントを選択し得る。同様に、特定のハイブリッドタンパク質は、該ハイブリッドタンパク質をコードする組換えDNAを使用して発現し得る。同様に、ホモログタンパク質は該ホモログタンパク質をコードするDNA配列から発現させうる。ホモログをコードするDNA配列は、組換えDNA技術を使用して、天然のタンパク質をコードする配列を操作することにより得ることができる。この目的上、無作為若しくは部位特異的突然変異誘発を、当該技術分野で公知の技術を使用して実施し得る。タンパク質誘導体を作成するため、例えば、天然の相互作用するタンパク質メンバーのアミノ酸配列を、例えばタンパク質キナーゼによるリン酸化、グリコシル化、リボシル化、ミリストイル化、パルミトイル化、ユビキチン化などのためのコンセンサス配列を創製若しくは除去するように、部位特異的DNA突然変異誘発により、予め決定された様式で変化させうる。あるいは、非天然のアミノ酸を、組換え宿主細胞中のタンパク質の合成の間に、相互作用するタンパク質メンバーに組み込み得る。例えば、光反応性リシン誘導体を、修飾リシル−tRNAを使用することにより、相互作用するタンパク質メンバーに翻訳の間に組み込み得る。(例えば、Wiedmannら、Nature、328:830−833(1989);Muschら、Cell、69:343−352(1992)を参照されたい。他の光反応性アミノ酸誘導体もまた類似の様式で組み込み得る。例えば、Highら、J.Biol.Chem.、368:28745−28751(1993)を参照されたい)。事実、相互作用するタンパク質メンバーにかように組み込まれた光反応性アミノ酸誘導体は、予め決められた条件下で、タンパク質複合体中のその相互作用するタンパク質パートナーに該タンパク質を架橋するよう機能し得る。
【0063】
加えて、本発明の天然の相互作用するタンパク質メンバーの誘導体は、ある部分を天然のタンパク質のアミノ酸側鎖に化学結合することによってもまた製造し得る。
【0064】
所望の場合は、かように生成されたホモログおよび誘導体を、それらがそれらの意図されるパートナーと相互作用してタンパク質複合体を形成する能力があるかどうかを決定するために試験し得る。試験は、例えば、酵母2ハイブリッド系、若しくはタンパク質−タンパク質相互作用を検出するために当該技術分野で既知の他の方法により実施し得る。
【0065】
ペプチド結合若しくはペプチドリンカーにより一緒に共有結合された本発明のタンパク質複合体のいずれかの相互作用する対、またはそのホモログ、誘導体若しくはフラグメントを有する上述されたところのハイブリッドタンパク質は、該融合タンパク質をコードするキメラ核酸、例えばDNA若しくはmRNAフラグメントから組換え発現し得る。従って本発明は本発明のハイブリッドタンパク質をコードする核酸もまた提供する。加えて、本発明のハイブリッドタンパク質をコードする核酸をその中に組み込んでいる発現ベクターもまた提供される。こうしたキメラ核酸およびそれらを含有する発現ベクターの作成方法は、本開示を知らされた当業者に明らかであろう。
【0066】
発現されたタンパク質の精製は、当業者に公知の慣習的生化学的および免疫化学的方法により達成される。トランスフェクトされた真核生物細胞若しくは生物学的組織サンプルを均質化し得、そして多様な細胞成分を分離することができる適切な条件で分画し得る。典型的には、細胞ライセートを、大きさおよび密度に基づき細胞成分を分離することができるショ糖勾配若しくは他の物質上で操作する。細胞内画分を、イムノブロット法若しくは免疫沈降法のような当業者に公知の方法を使用して、適切な抗体を用いて目的のタンパク質の存在について分析する。
【0067】
精製されたタンパク質をその後アフィニティークロマトグラフィー研究に使用する。すなわち、それをマトリックスに固定しかつカラムに負荷する。培養細胞からの抽出液若しくは均質化した組織サンプルをその後、適切な緩衝液中でカラムに負荷し、そして結合しないタンパク質を溶離する。徹底的な洗浄の後に、結合するタンパク質若しくはタンパク質複合体を、pHの勾配若しくは塩濃度の勾配のような多様な方法を使用して溶離する。溶離されたタンパク質をその後二次元ゲル電気泳動により分離し、ゲルから溶離し、そしてマイクロシークェンシングにより同定する。これらの方法の全部は当業者に公知である。
【0068】
個別に若しくは複合体の、目的の精製されたタンパク質は、ウサギ、マウス、ラット、ニワトリ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、モルモット、ウシおよびウマで抗体を生成するのにもまた使用し得る。抗体の生成および特徴付けに使用される方法は当業者に公知である。モノクローナル抗体もまた慣習的技術により生成する。一本鎖抗体1Gを慣習的技術によりさらに製造する。
【0069】
本発明の別の局面は、患者サンプル若しくは下述される化合物スクリーニングアッセイにおける本発明のタンパク質複合体の測定若しくは検出方法に関する。
【0070】
一態様において、本発明のタンパク質複合体の濃度は、患者の細胞、組織若しくは器官で測定される。例えば、タンパク質複合体を、患者の細胞、組織若しくは器官から得た患者サンプルから単離若しくは精製し、そしてその量を測定する。上述されたとおり、タンパク質複合体を、相互作用するタンパク質メンバーと免疫反応性の抗体、タンパク質複合体の2種若しくはそれ以上の相互作用するタンパク質メンバーと反応性である二官能性抗体、または、好ましくはタンパク質複合体と選択的に免疫反応性の抗体を使用する共免疫沈降により、細胞、組織若しくは器官サンプルから調製し得る。二官能性抗体、若しくは遊離の相互作用するタンパク質メンバーのみと免疫反応性の抗体を使用する場合、他のタンパク質と複合体形成されない個々の相互作用するタンパク質メンバーもまた、こうした個々のタンパク質を含有するタンパク質複合体と一緒に単離しうる。しかしながら、それらは、当該技術分野で既知の方法、例えばゲル濾過のような大きさに基づく分離方法を使用して、若しくは別の個々の相互作用するタンパク質メンバーに特異的な抗体を使用して該混合物からタンパク質複合体を差し引くことにより、タンパク質複合体から容易に分離し得る。加えて、サンプル中のタンパク質はポリアクリルアミドゲルのようなゲル中で分離し得、そしてその後、該タンパク質複合体と免疫反応性の抗体を使用してイムノブロットし得る。
【0071】
あるいは、タンパク質複合体の濃度を分離、単離若しくは精製なしでサンプル中で測定し得る。この目的上、特定のタンパク質複合体と選択的に免疫反応性の抗体をイムノアッセイで使用することが好ましい。例えば免疫細胞化学的方法を使用し得る。例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫放射測定アッセイ(IRMA)、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイおよび免疫酵素アッセイ(EMA)を包含する、他の公知の抗体に基づく技術もまた使用し得る。例えば、米国特許第4,376,110号および同第4,486,530号明細書(それらの双方は引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0072】
加えて、特定のタンパク質複合体の個々の相互作用するタンパク質メンバーの濃度を患者サンプル中で測定し得、それをその後、該サンプル中のタンパク質複合体の濃度の合理的に正確な指標として使用し得る。この目的上、特定の複合体の個々の相互作用するタンパク質メンバーに対する抗体を、上述された方法のいずれか1つで使用し得る。好ましい一態様において、タンパク質複合体の相互作用するタンパク質メンバーのそれぞれの濃度を患者サンプル中で測定し、そして該タンパク質複合体の相対濃度をその後推定する。
【0073】
加えて、患者中の相対タンパク質複合体濃度は、タンパク質複合体の相互作用するタンパク質メンバーをコードするmRNAの濃度を測定することによってもまた測定し得る。好ましくは、患者サンプル中の各相互作用するタンパク質メンバーのmRNA濃度を測定する。この目的上、当該技術分野で公知のmRNA濃度の測定方法を全部使用しうる。こうした方法の例は、例えば、ノーザンブロットアッセイ、ドットブロットアッセイ、PCRアッセイ(好ましくは定量的PCRアッセイ)、in situハイブリダイゼーションアッセイなどを包含する。
【0074】
本発明のCaMおよびTRPM8タンパク質複合体の発見は、CaM−TRPM8タンパク質複合体が生物学的過程および疾患の経路に関与し得ることを示唆する。従って、該タンパク質複合体若しくは該複合体の個々のタンパク質の異常、および該異常の程度は、疾患若しくは障害の指標となりうる。これらの異常は、疾患若しくは障害の1種を分類かつ/若しくは段階分けするためのパラメータとして使用しうる。加えて、これらの異常は薬物療法に対する患者の応答の指標ともまたなりうる。
【0075】
生理学的状態(例えば、生理学的障害、障害に対する素因、疾患状態、薬物療法に対する応答、若しくは他の生理学的現象または表現型)と、本発明のタンパク質複合体若しくはその個々の相互作用するメンバー中の特定の異常の間の関連は、正常集団および異常すなわち冒された集団でのタンパク質複合体および/若しくはその相互作用するメンバーの比較分析により、容易に決定し得る。従って、例えば、正常集団および特定の生理学的障害に冒された集団双方で、CaM−CRM1タンパク質複合体の濃度、局在化および分布、該タンパク質複合体の相互作用するタンパク質メンバーの突然変異、ならびに/若しくは相互作用するタンパク質メンバー間の結合親和性を研究し得る。該研究結果は統計学的手段により比較かつ解析し得る。2集団でのいずれかの検出された統計学的有意差は関連を示すとみられる。例えば、タンパク質複合体の濃度が正常集団でより冒された集団で統計学的に有意により高い場合には、タンパク質複合体のより高濃度が該生理学的障害と関連していると合理的に結論づけ得る。
【0076】
本発明のタンパク質複合体若しくはその相互作用するタンパク質メンバーの特定の型の異常と、生理学的障害若しくは疾患または該生理学的障害若しくは疾患に対する素因の間に一旦関連が確立されれば、該特定の生理学的障害若しくは疾患または該生理学的障害若しくは疾患に対する素因を、患者が該特定の異常を有するかどうかを決定することにより診断若しくは検出し得る。
【0077】
従って、本発明は、本発明のCaM−TRPM8タンパク質複合体に関して患者にいずれかの異常が存在するかどうかを決定することにより、患者における疾患若しくは生理学的障害または該疾患若しくは障害に対する素因の診断方法もまた提供する。同一のタンパク質複合体を正常個体で分析しかつ患者で得られた結果と比較する。この様式で、患者でのいかなるタンパク質複合体の異常も検出し得る。
【0078】
本明細書で使用されるところの、本発明のタンパク質複合体の情況で使用される場合の「異常」という用語は、特定の細胞若しくは組織若しくは器官または全身での該タンパク質複合体の増大若しくは減少された濃度、細胞区画または組織若しくは器官の場所での該タンパク質複合体の変えられた局在、該タンパク質複合体の相互作用するタンパク質メンバーの結合親和性の変化、相互作用するタンパク質メンバー若しくは該タンパク質をコードする遺伝子中の突然変異などを包含する、タンパク質複合体のいかなる変化も意味している。当業者に明らかであろうとおり、「異常」という用語は相対的意味で使用される。すなわちある異常は正常の状態に関する。
【0079】
本明細書で使用されるところの「診断」という用語は、疾患若しくは障害を検出することまたは疾患若しくは障害の段階若しくは程度を決定することを意味している。「診断」という用語は、疾患若しくは障害に対する素因を検出すること、薬物療法の治療効果を決定すること、または薬物療法への応答のパターンすなわち薬物動態を予測することもまた包含する。本発明の診断方法は、独立に、または特定の疾患若しくは障害について医学の技術分野で既知の他の診断および/若しくは段階分け方法と組合せで使用しうる。
【0080】
従って、一態様において、診断方法は、上述された方法のいずれか1つを使用してCaM−TRPM8タンパク質複合体の濃度を患者において検出すること、および該患者が該タンパク質複合体の異常な濃度を有するかどうかを決定することにより実施する。
【0081】
診断は、本発明のタンパク質複合体の1種若しくはそれ以上の相互作用するタンパク質メンバーの濃度(タンパク質、cDNA若しくはmRNAレベルで)の測定に基づいてもまたよい。相互作用するタンパク質メンバーの異常な濃度は、生理学的障害若しくは生理学的障害に対する素因を示しうる。
【0082】
別の態様において、診断方法は、本発明のタンパク質複合体の細胞局在化または組織若しくは器官分布を患者で測定すること、および該患者が該タンパク質複合体の異常な局在若しくは分布を有するかどうかを決定することを含んでなる。例えば、免疫細胞化学的若しくは免疫組織化学的アッセイは、本発明のタンパク質複合体と選択的に免疫反応性の抗体を使用して、患者からの細胞、組織若しくは器官サンプルで実施し得る。個別の相互作用するタンパク質メンバーおよび該タンパク質メンバーを含有するタンパク質複合体の双方と免疫反応性の抗体もまた使用することができ、この場合には他の相互作用するタンパク質メンバーと免疫反応性の抗体もまた該アッセイで使用することが好ましい。加えて、核酸プローブを、タンパク質複合体の相互作用するタンパク質メンバーをコードするmRNAの局在若しくは分布を検出するためのin situハイブリダイゼーションアッセイでもまた使用しうる。好ましくは、タンパク質複合体の各相互作用するタンパク質メンバーをコードするmRNAは同時に検出される。
【0083】
なお別の態様において、本発明の診断方法は、本発明のタンパク質複合体の1種若しくはそれ以上の相互作用するタンパク質メンバー中のいかなる突然変異も検出することを含んでなる。とりわけ、該相互作用するタンパク質メンバーが、タンパク質の機能的活性の変化、若しくは本発明のタンパク質複合体の形成における他の相互作用するタンパク質メンバーに対するそれらの結合親和性の変化につながる若しくはそれらと関連することができるいずれかの突然変異を有するかどうかを決定することが望ましい。こうした突然変異の例は、限定されるものでないが、該タンパク質メンバーをコードする遺伝子中の欠失、挿入および再配列、ならびにヌクレオチド若しくはアミノ酸置換などを挙げることができる。好ましい一態様において、タンパク質−タンパク質相互作用の原因でありかつタンパク質複合体形成につながる相互作用するタンパク質メンバーのドメインを、その中のいかなる突然変異も検出するためスクリーニングする。例えば、相互作用するタンパク質メンバーをコードするゲノムDNA若しくはcDNAを患者サンプルから調製かつシークェンシングし得る。かように得られた配列を既知の野生型配列と比較していかなる突然変異も同定しうる。あるいは、相互作用するタンパク質メンバーを、患者サンプルから精製しかつタンパク質シークェンシング若しくは質量分析により分析していかなるアミノ酸配列の変化も検出しうる。本開示を知らされた当業者に明らかであろうとおり、突然変異を検出するための当該技術分野で既知のいかなる方法も使用しうる。
【0084】
別の態様において、診断方法は、1種若しくはそれ以上のタンパク質複合体の相互作用するタンパク質メンバーの結合定数を決定することを包含する。例えば、相互作用するタンパク質メンバーを、直接精製により、または該相互作用するタンパク質メンバーをコードする、患者サンプルから調製したゲノムDNA若しくはcDNAからの組換え発現により、患者から得ることができる。結合定数は、タンパク質複合体中の相互作用するタンパク質メンバー間のタンパク質−タンパク質相互作用の強さを表す。従って、結合定数を測定することにより、結合親和性のわずかな異常を検出しうる。
【0085】
タンパク質−タンパク質相互作用における結合定数を推定かつ決定するための当該技術分野で既知の多数の方法が、(PhizickyとFieldsら、Microbiol.Rev.、59:94−123(1995))(引用することにより本明細書に組み込まれる)に総説されている。例えば、タンパク質アフィニティークロマトグラフィーを使用しうる。最初に、多様な濃度の相互作用するタンパク質メンバー(カラムに共有結合されている)を用いてカラムを調製する。その後、相互作用するタンパク質パートナーの調製物をカラムに通しかつ緩衝液で洗浄する。カラムに連結された相互作用するタンパク質メンバーに結合された相互作用するタンパク質パートナーをその後溶離する。結合定数をその後、結合したタンパク質および溶離されたタンパク質の濃度に基づき推定する。あるいは、勾配を通す沈降方法は、グリセロール若しくはショ糖の勾配を通るタンパク質混合物の沈降の速度を監視する。結合定数より上の濃度で、タンパク質はタンパク質複合体として沈降し得る。従って結合定数を濃度に基づき計算し得る。結合定数を推定するための当該技術分野で既知の他の適する方法は、限定されるものでないが、非平衡「小領域(small−zone)」ゲル濾過カラムのようなゲル濾過カラム(例えばGillら、J.Mol.Biol.220:307−324(1991)を参照されたい)、Hummel−Dreyerの平衡ゲル濾過法(例えばHummelとDreyer、Biochim.Biophys.Acta、63:530−532(1962)を参照されたい)、および大領域平衡ゲル濾過(例えばGilbertとKellett、J.Biol.Chem.、246:6079−6086(1971)を参照されたい)、沈降平衡(例えばRivasとMinton、Trends Biochem.、18:284−287(1993)を参照されたい)、蛍光スペクトル(例えばOtto−Brucら、Biochemistry、32:8632−8645(1993)を参照されたい)および蛍光偏光のような蛍光法、若しくは標識分子を用いる異方性(例えばWeielとHershey、Biochemistry、20:5859−5865(1981)を参照されたい)、固定した結合タンパク質を用いて測定する溶液平衡(例えばNelsonとLong、Biochemistry、30:2384−2390(1991)を参照されたい)、ならびに表面プラズモン共鳴(例えばPanayotouら、Mol.Cell.Biol.、13:3567−3576(1993)を参照されたい)を挙げることができる。
【0086】
別の態様において、本発明の診断方法は、酵母2ハイブリッド系のような機能的アッセイ系でタンパク質−タンパク質相互作用を検出することを含んでなる。従って、正常個体において通常タンパク質複合体を形成する2種の相互作用するタンパク質メンバー間のタンパク質−タンパク質相互作用を測定するために、相互作用するタンパク質メンバーをコードするcDNAを診断されるべき患者から単離し得る。かようにクローン化したcDNA若しくはそのフラグメントを、酵母2ハイブリッド系での使用のためベクターにサブクローニングし得る。好ましくは、タンパク質間の相互作用の失敗が陽性に検出されうるような逆酵母2ハイブリッド系を使用する。酵母2ハイブリッド系、若しくはタンパク質−タンパク質相互作用を検出するための他の系の使用は、当該技術分野で既知でありかつ下述する。
【0087】
本発明の診断方法を実施するためにキットを使用しうる。典型的には、キットは、担体若しくは区画化された容器中に、該診断方法の上述された態様のいずれかで有用な試薬を含有すべきである。担体は、例えば袋、箱、管、棚の形態の容器若しくは支持体であり得、そして場合によっては区画化されている。担体は、輸送および保管の間に安全性の目的上閉鎖された閉じ込めを規定しうる。一態様において、キットは、本発明のタンパク質複合体と選択的に免疫反応性の抗体を包含する。加えて、タンパク質複合体の個々の相互作用するタンパク質メンバーに対する抗体もまた包含しうる。抗体は、放射活性同位元素または酵素若しくは蛍光マーカーのような検出可能なマーカーで標識しうる。あるいは、標識抗IgGなどのような二次抗体を検出の目的上包含しうる。場合によっては、キットは、正常個体、またはタンパク質複合体若しくはそれらの相互作用するタンパク質メンバーの異常と関連する生理学的障害で悩まされている個体から調製若しくは精製した、本発明のタンパク質複合体の1種若しくはそれ以上を包含し得る。加えて、キットは、正常個体、または該タンパク質複合体若しくはそれらの相互作用するタンパク質メンバーの異常と関連する生理学的障害で悩まされている個体から調製若しくは精製した、本発明のタンパク質複合体の相互作用するタンパク質メンバーの1種若しくはそれ以上をさらに包含しうる。相互作用するタンパク質メンバーの遺伝子若しくはcDNAの増幅で有用な適するオリゴヌクレオチドプライマーもまたキット中に提供されうる。とりわけ、好ましい一態様において、該キットは、タンパク質の相互作用する対の1メンバーをコードするmRNA若しくはcDNAに選択的にハイブリダイズ可能な第一のオリゴヌクレオチド、および該相互作用する対の他方をコードするmRNA若しくはcDNAに選択的にハイブリダイズ可能な第二のオリゴヌクレオチドを包含する。タンパク質の相互作用する対をコードする遺伝子の一領域にハイブリダイズする付加的なオリゴヌクレオチドもまた包含しうる。こうしたオリゴヌクレオチドは、例えば相互作用するタンパク質をコードするmRNAの定量的PCR増幅のためのPCRプライマーとして、若しくは該mRNAを検出するためのハイブリダイズするプローブとして使用しうる。該オリゴヌクレオチドは約8ヌクレオチドから約100ヌクレオチドまで、好ましくは約12から約50ヌクレオチドまで、およびより好ましくは約15から約30ヌクレオチドまでの長さを有しうる。加えて、該キットは、相互作用するタンパク質メンバーをコードするcDNA若しくはmRNAを検出するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用し得るオリゴヌクレオチドもまた含有しうる。好ましくは、キット若しくはその中に含有される試薬の使用説明書もまたキットに包含される。
【0088】
本発明のCaMおよびTRPM8タンパク質複合体の発見は、疼痛、炎症および皮膚障害の処置において有用な薬物の同定のための治療標的としてはたらき得る侵害受容器、TRPM8の生物学的活性を増大若しくは減少する化合物の新規同定方法の設計を可能にする。本発見は、煩雑であり得るTRPM8チャンネルの伝導性の測定を利用しないスクリーニングアッセイが設定されることを可能にする。結果、本発明の付加的な一般的一局面は、TRPM8の生物学的活性を順に増大若しくは減少させる、CaM−TRPM8タンパク質複合体の調節物質の同定方法に関する。
【0089】
「調節物質」という用語は、例えばそれらの生物学的活性を高める若しくは低下させること、それらの安定性を増大若しくは減少させること、ある種の他の生物学的分子に対するそれらの親和性若しくは特異性を変えることなどを包含する、CaM−TRPM8タンパク質複合体の生物学的活性若しくは機能のいずれかの形態の変化を引き起こし得るいかなる化合物も包含する。例えば、調節物質は「相互作用アンタゴニスト」若しくは「相互作用アゴニスト」であり得る。本明細書で使用されるところの「相互作用アンタゴニスト」という用語は、タンパク質−タンパク質相互作用を妨害、阻害、破壊若しくは不安定化する;タンパク質複合体の形成を阻害若しくは妨害する;または既存のタンパク質複合体を不安定化、破壊若しくは解離させる化合物を意味している。本明細書で使用されるところの「相互作用アゴニスト」という用語は、タンパク質−タンパク質相互作用の形成を誘発、開始、伝播する、その核となる、若しくは別の方法で高める;タンパク質複合体の形成を誘発、開始、伝播する、その核となる、若しくは別の方法で高める;または既存のタンパク質複合体を安定化する化合物を意味している。
【0090】
該化合物同定方法は、慣習的実験室形式を使用して、若しくはハイスループットに適合されたアッセイで実施し得る。「ハイスループット」という用語は、複数のサンプルの容易なスクリーニングを同時にかつ/若しくは迅速な連続で可能にするアッセイ設計を指し、そしてロボット操作の能力を包含し得る。ハイスループットアッセイの別の所望の特徴は、所望の分析を達成するための試薬の使用を低減する若しくは操作の数を最少限にするよう至適化されているアッセイ設計である。アッセイ形式の例は、液体を取り扱う実験に使用される96ウェル若しくは384ウェルプレート、空中浮遊液滴、および「ラボチップ(lab on a chip)」マイクロチャンネルチップを包含する。プラスチック型および液体取り扱い装置の小型化が進められる際に、若しくは改良されたアッセイ装置が設計される際に、より多数のサンプルを本発明の設計を使用して処理し得ることが当業者により公知である。
【0091】
いかなる試験化合物も、本発明のタンパク質複合体の調節物質を選択するために本発明のスクリーニングアッセイでスクリーニングしうる。化合物を「選択すること」若しくは「選択する」という用語により、(a)タンパク質複合体若しくはその相互作用するタンパク質メンバーの調節物質であることが以前に未知の群から化合物を選ぶこと;ならびに(b)タンパク質複合体若しくはその相互作用するタンパク質メンバーを結合する若しくはその機能および活性を調節することが可能であることが既知である化合物を試験することの双方を包含することを意図している。双方の型の化合物は一般に本明細書で「試験化合物」若しくは「候補化合物」と称される。候補化合物は、限定されるものでないが、小有機若しくは無機化合物、抗体、タンパク質若しくはそれらのフラグメント、アンチセンスヌクレオチド、干渉RNA(iRNA)およびリボザイム、ならびにそれらの誘導体、模倣物およびアナログのような天然若しくは合成分子を挙げることができる、多数の化学分類を包含する。好ましくは、それらは小有機分子、すなわち10,000ダルトンを超えない、より好ましくは5,000ダルトン未満の分子量を有するものである。好ましくは、試験化合物は当該技術分野で既知のライブラリーの形式で、例えば、化学合成ライブラリー(全般として、Gordanら J.Med.Chem.、37:1385−1401(1994)を参照されたい)、組換え発現ライブラリー(例えばファージディスプレイライブラリー)、およびin vivo翻訳に基づくライブラリー(例えばリボソームディスプレイライブラリー)で提供される。
【0092】
候補化合物は、ポリペプチドとの構造的相互作用に必要な官能性化学基を含んでなり、そして、典型的には最低1個のアミン、カルボニル、ヒドロキシル若しくはカルボキシル基、好ましくは官能性化学基の最低2個、およびより好ましくは官能性化学基の最低3個を包含する。候補化合物は、上で同定された官能基の1個若しくはそれ以上で置換された環状炭素若しくは複素環構造および/または芳香族若しくは多環芳香族構造を含み得る。候補化合物は、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロール、イソプレノイド、プリン、ピリミジン、上の誘導体若しくは構造アナログのような生体分子、またはそれらの組合せなどでもまたあり得る。化合物が核酸である場合、該化合物は典型的にDNA若しくはRNA分子であるとは言え、非天然の結合若しくはサブユニットを有する修飾核酸もまた企図している。
【0093】
候補化合物は、合成若しくは天然の化合物のライブラリーを包含する多様な供給源から得られる。例えば、無作為化オリゴヌクレオチドの発現、合成有機コンビナトリアルライブラリー、ランダムペプチドのファージディスプレイライブラリーなどを包含する、多様な有機化合物および生体分子の無作為および定方向合成に多数の手段が利用可能である。候補化合物は、生物学的ライブラリー;空間的に接近可能な同時固相若しくは溶液相ライブラリー:デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を包含する、当該技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリー法の多数のアプローチのいずれを使用してもまた得ることができる(Lam(1997)AntiCancer Drug Des.12:145)。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然の化合物のライブラリーを利用可能であるか、若しくは慣例で製造しうる。加えて、天然のおよび合成で製造したライブラリーおよび化合物は、慣習的な化学的、物理的および生化学的手段により慣例に改変し得る。
【0094】
さらに、既知の薬理学的剤を、該剤の構造アナログを製造するために、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような定方向若しくは無作為化学修飾にかけることができる。候補化合物は、無作為に選択し得るか、またはTRPM8に結合かつ/若しくはその活性の機能を調節する既存の化合物に基づくことができる。従って、候補の剤の供給源は、より多い若しくは少ない化学的部分または多様な化学的部分を含有するように該分子の1個若しくはそれ以上の位置で該化合物の構造が変えられている、TRPM8チャンネルの伝導性を増大若しくは減少する1種若しくは1種以上の既知化合物に基づく分子の1種若しくは1種以上のライブラリーである。類似の活性化物質/阻害剤のライブラリーの創製において該分子になされる構造変化は、定方向、無作為、または定方向および無作為双方の置換および/若しくは付加の組合せであり得る。コンビナトリアルライブラリーの製造の当業者は、既存の化合物に基づくこうしたライブラリーを容易に製造し得る。
【0095】
多様な他の試薬もまた混合物に包含し得る。これらは、至適のタンパク質−タンパク質および/若しくはタンパク質−核酸結合を助長するのに使用し得る、塩、緩衝剤、中性タンパク質(例えばアルブミン)、洗剤などのような試薬を包含する。こうした試薬はまた、反応成分の非特異的なすなわちバックグラウンドの相互作用も低下させ得る。ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などのようなアッセイの効率を向上させる他の試薬もまた使用し得る。
【0096】
分子ライブラリーの合成方法の例は、当該技術分野で、例えばZuckermannら、(1994).J.Med.Chem.37:2678に見出し得る。化合物のライブラリーは、溶液中で(例えばHoughten(1992)Biotechniques 13:412−421)、またはビーズ(Lam(1991)Nature 354:82−84)、チップ(Fodor(1993)、Nature 364:555−556)、細菌(米国特許第5,223,409号明細書)、胞子(米国特許第5,571,698号明細書)、プラスミド(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)若しくはファージ(例えばScottとSmith(1990)Science 249:386−390を参照されたい)上に提示し得る。
【0097】
選択された化合物は、本発明のタンパク質複合体のTRPM8とCaMの間の相互作用を調節(すなわち妨害若しくは強化)するそれらの能力について試験し得る。該化合物は、TRPM8のチャンネル伝導性を増大若しくは減少させるそれらの能力についてさらに試験し得る。加えて、該化合物は疼痛、炎症若しくは皮膚障害などの動物モデルで試験し得る。
【0098】
2種のタンパク質ドメイン、フラグメント若しくは完全なタンパク質間の「相互作用」は多数の方法により測定し得る。例えば、相互作用は酵母2ハイブリッド系のような機能アッセイを包含するいずれかの一般に受け入れられているアプローチにより検出可能である。タンパク質−タンパク質相互作用は、2種の相互作用パートナー間の親和性結合に基づく多様な生物物理学的および生化学的アプローチによってもまた決定し得る。当該技術分野で公知のこうした方法は、限定されるものでないが、タンパク質アフィニティークロマトグラフィー、親和性ブロット法、共免疫沈降、大分子複合体の細胞内分画および単離などを挙げることができる。これらの方法のそれぞれは十分に特徴付けられており、そして当業者により容易に実施し得る。例えば、米国特許第5,622,852号および同第5,773,218号、ならびにPCT公開特許出願第WO 97/27296号および同第WO 99/65939号明細書(それらのそれぞれは引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。相互作用の強さ若しくは質を反映する2種の相互作用タンパク質の結合定数は、表面プラズモン共鳴および等温滴定熱量測定結合分析を包含する当該技術分野で既知の方法を使用してもまた測定し得る。PhizickyとFields、Microbiol.Rev.、59:94−123(1995)を参照されたい。
【0099】
試験化合物は、本発明のCaM−TRPM8タンパク質複合体を結合することが可能な化合物を同定するためのin vitroアッセイでスクリーニングしうる。この目的上、試験化合物を、試験化合物と標的成分の間の特異的相互作用が起こることを可能にするのに十分な条件でかつ時間、タンパク質複合体と接触させ、それにより標的への化合物の結合および複合体の形成をもたらす。その後結合事象を検出する。
【0100】
特定の一態様において、タンパク質複合体を(タンパク質マイクロチップのような)固体支持体若しくは細胞表面に固定する。例えば、タンパク質複合体は、ガラス製スライドガラス若しくはマルチウェルプレートのようなマイクロチップ支持体に、中和しない抗体、すなわち該複合体に結合することが可能であるがしかしその生物学的活性に実質的に影響を及ぼさない抗体を使用して、直接固定し得る。試験化合物を、標準的結合アッセイ条件下で、固定したタンパク質複合体と接触させて結合を起こさせることができる。試験化合物は公知の標識技術を使用して検出可能なマーカーで標識し得る。例えば、米国特許第5,741,713号明細書はNMR活性同位元素で標識した生化学的化合物のコンビナトリアルライブラリーを開示する。タンパク質複合体に結合する化合物を同定するため、化合物上の標識を測定し得る。有機のペプチド以外の核酸以外の化合物のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする場合、標識若しくはコードされた(すなわち「標識された(tagged)」)コンビナトリアルライブラリーを使用してリード構造の迅速な解読を可能にすることが好ましい。これは、生物学的ライブラリーと異なり、化学的ライブラリーで見出される個々の化合物は自己増幅により増幅され得ないため、とりわけ重要である。標識コンビナトリアルライブラリーは、例えばBorchardtとStill、J.Am.Chem.Soc.、116:373−374(1994)およびMoranら、J.Am.Chem.Soc.、117:10787−10788(1995)(それらの双方は引用することにより本明細書に組み込まれる)に提供される。
【0101】
代替の一態様において、試験化合物は、例えば試験化合物のマイクロアレイを形成する固体支持体上に固定し得る。タンパク質複合体をその後試験化合物と接触する。タンパク質複合体はいずれかの適する検出マーカーで標識し得る。例えば、複合体は、結合反応が起こる前に放射活性同位元素若しくは蛍光マーカーで標識し得る。あるいは、結合反応後に、複合体と免疫反応性でありかつ放射活性物質、蛍光マーカー、酵素若しくは標識二次抗Ig抗体で標識されている抗体を使用していかなる結合した化合物も検出し、かように結合化合物を同定し得る。本態様の一例はタンパク質プロービング法である。すなわち、本発明により提供されるタンパク質複合体を、タンパク質若しくはランダムペプチドの発現ライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用する。発現ライブラリーは、ファージディスプレイライブラリー、in vitro翻訳に基づくライブラリー若しくは通常の発現cDNAライブラリーであり得る。ライブラリーはニトロセルロースフィルターのような固体支持体に固定しうる。例えば、SikelaとHahn、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84:3038−3042(1987)を参照されたい。プローブは放射活性同位元素若しくは蛍光マーカーで標識しうる。あるいは、プローブをビオチニル化しかつストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ複合物で検出し得る。より便宜的には、結合したプローブを抗体で検出しうる。
【0102】
本発明のタンパク質複合体中のCaMとTRPM8の間の相互作用を増大若しくは減少することが可能な化合物を同定するためのin vitroアッセイもまた実施し得る。該アッセイは上述された結合アッセイに類似の様式で実施し得る。例えば、CaM−TRPM8タンパク質複合体のレベルは、それら2種のタンパク質により形成されたタンパク質複合体と選択的に免疫反応性の抗体により検出し得る。従って、CaM−TRPM8タンパク質複合体の試験化合物とのインキュベーション後に、該抗体を用いて免疫沈降アッセイを実施し得る。試験化合物がタンパク質複合体を破壊する場合には、このアッセイでの免疫沈降されるタンパク質複合体の量が、同一タンパク質複合体を試験化合物と接触しない対照アッセイでのものより有意により少ないことができる。同様に、2種のタンパク質すなわちCaMおよびTRPM8またはそれらの活性フラグメント若しくは誘導体を試験化合物と一緒にインキュベートし得る。該2種のタンパク質により形成されたタンパク質複合体を選択的免疫反応性抗体により検出し得る。タンパク質複合体の量を、試験化合物の非存在下で形成されたものと比較し得る。試験化合物がタンパク質複合体の形成を高める場合には、このアッセイでの免疫沈降されるタンパク質複合体の量は、該2種のタンパク質が試験化合物と接触されない対照アッセイでのものより有意により多いことができる。多様な他の検出方法が、上述されたところのCaM−TRPM8タンパク質複合体のレベルを測定するのに適する。
【0103】
特定の一態様において、単離された細胞膜中のTRPM8およびを試験化合物と接触させる。カルモジュリンは、当該技術分野で既知の標識技術を使用して放射活性物質若しくは蛍光マーカーのような検出可能なマーカーで標識し得る。標識したCaMをTRPM8に接触させる。結合しないCaMを洗い流した後に、形成されたTRPM8−CaMタンパク質複合体のレベルを細胞膜上の標識により検出する。CaMとTRPM8の間の相互作用を調節する試験化合物の能力は、TRPM8を試験化合物と接触させる場合に形成されるTRPM8−CaM複合体のレベルを試験化合物の非存在下で形成されるレベルと比較することにより決定する。あるいは、当業者に明らかであろうとおり、形成されるTRPM8−CaMタンパク質複合体のレベルは、CaMに対する標識抗体を用いて、若しくはCaMに融合されているポリペプチドに特異的な抗体によってもまた検出し得る。
【0104】
検出可能なエピトープ標識を、本発明のタンパク質複合体の検出を容易にするために、CaM、TRPM8、またはそれらの活性フラグメント若しくは誘導体に融合し得る。こうしたエピトープ標識の適する例は、例えば、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、SV5(V5)、ポリヒスチジン(6×His)、c−myc、lacZ、GSTなど由来の配列を包含する。
【0105】
別の態様において、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を使用して本発明のタンパク質複合体の調節物質についてスクリーニングする。FRETアッセイは、蛍光標識の別の蛍光標識へのエネルギー転移を測定する。蛍光標識は、一波長で優先的に光を吸収し、そして第二の波長で優先的に光を発する。FRETアッセイは、アクセプターフルオロフォアと呼ばれる第二の標識が優先的に光を吸収する波長で優先的に光を発する、ドナーフルオロフォアと呼ばれる蛍光標識を選択することにより、この特徴を利用する。ドナーおよびアクセプターフルオロフォアの近接は、ドナーフルオロフォアからアクセプターフルオロフォアへのエネルギー転移を測定することにより測定し得る。エネルギー転移を測定することは、ドナーフルオロフォアが光を吸収する波長でアクセプターおよびドナーフルオロフォアを含有する溶液に光を照射すること、ならびにアクセプターフルオロフォアが光を発する波長で蛍光を測定することにより実施する。アクセプターフルオロフォアの蛍光の量は、ドナーおよびアクセプターフルオロフォアの近接を示す。
【0106】
具体的に説明するFRETアッセイにおいて、TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体をTP3+のようなドナーフルオロフォアで標識し、また、CaMまたはCaMの活性フラグメント若しくは誘導体を、BODIPY−TMRのようなアクセプターフルオロフォアで標識する。本発明のタンパク質複合体のこれらの蛍光標識したメンバーを溶液に一緒に入れる。TP3+が優先的に吸収する波長の光を該溶液に照射し、そしてBODIPY−TMRが優先的に発光する波長で溶液の蛍光を測定する。試験化合物をその後該溶液に添加する。TP3+が優先的に吸収する波長の光を該溶液に照射し、そしてBODIPY−TMRが優先的に発光する波長で溶液の蛍光を測定する。試験化合物が、試験化合物を伴わないものに比較して該溶液の蛍光を低下させる場合は、該試験化合物はCaMとTRPM8の間の相互作用を低下させる。
【0107】
別の態様において、本発明のタンパク質複合体の調節物質についてスクリーニングするのに蛍光偏光(FP)測定を使用する。FP測定は、分子の向きおよび移動性、ならびに受容体−リガンド相互作用、タンパク質分解、タンパク質−DNA相互作用、膜流動性および筋収縮を包含するそれらを調節する過程に関する情報を提供するのに使用されている。FP測定は、長い間、膜脂質移動性、ミオシン再配向およびタンパク質−タンパク質相互作用のような過程を分子レベルで検討するための貴重な生物物理学研究ツールであった(例えば、Jamesonら、Methods Enzymol、1995、246:283−300を参照されたい)。臨床診断のため開発されかつ広範囲に使用されているイムノアッセイは生物分析の応用の最大の群を表す。偏光光学系を備えたマイクロプレートリーダーのより最近の出現は、ハイスループットスクリーニングのための読み出し様式としての蛍光偏光の採用に至った。
【0108】
例示的FPアッセイでは、直線的に偏光された光の電気ベクトル(垂直ページ軸に沿って)に平行に整列されたそれらの吸収遷移ベクトルをもつ色素分子を選択的に励起する。小型の迅速に回転する分子に結合された色素について、最初に光選択される方向分布が発光前に無作為化されたようになり、低蛍光偏光をもたらす。逆に、大型のゆっくりと回転する分子への低分子量トレーサーの結合は高蛍光偏光をもたらす。蛍光偏光は、従って、タンパク質、核酸および他の生体高分子へのトレーサー結合の程度の直接の読み出しを提供する。FPアッセイのための色素および他の試薬は例えばInvitrogenから商業的に入手可能である。
【0109】
好ましい一態様において、酵母2ハイブリッド系またはそれらの類似物若しくは派生物の形態の1種を、CaM−TRPM8タンパク質複合体の調節物質を同定するのに使用し得る。当該技術分野で既知の適する2ハイブリッド系の例は、限定されるものでないが、米国特許第5,283,173号;同第5,525,490号;同第5,585,245号;同第5,637,463号;同第5,695,941号;同第5,733,726号;同第5,776,689号;同第5,885,779号;同第5,905,025号;同第6,037,136号;同第6,057,101号;同第6,114,111号明細書;およびBartelとFields編、The Yeast Two−Hybrid System、Oxford University Press、ニューヨーク州ニューヨーク、1997(それらの全部は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示されるものを挙げることができる。
【0110】
典型的には、古典的な転写に基づく2ハイブリッドアッセイにおいて、2種の融合タンパク質をコードする2種のキメラ遺伝子を製造する。すなわち、一方は本発明のタンパク質複合体の相互作用するタンパク質メンバーまたは相互作用するタンパク質メンバーの相互作用ドメイン若しくはフラグメントに融合された転写活性化ドメインを含有する一方、他方の融合タンパク質は、タンパク質複合体の別の相互作用するタンパク質メンバーまたはそのフラグメント若しくは相互作用ドメインに融合されたDNA結合ドメインを包含する。便宜さの目的上、該2種の相互作用するタンパク質メンバー、それらのフラグメント若しくは相互作用ドメインは、それぞれ「バイト融合タンパク質」および「プレイ融合タンパク質」と称される。該融合タンパク質をコードするキメラ遺伝子はそれぞれ「バイトキメラ遺伝子」および「プレイキメラ遺伝子」と命名される。典型的には、「バイトベクター」および「プレイベクター」が、それぞれバイトキメラ遺伝子およびプレイキメラ遺伝子の発現のため提供される。
【0111】
多くの型のベクターを転写に基づく2ハイブリッドアッセイで使用し得る。バイトベクターおよびプレイベクターの構築方法は、本開示を知らされた当業者に明らかであるはずである。全般として、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.2、Ausubelら編、Greene Publish.Assoc.& Wiley Interscience、第13章、1988;Glover、DNA Cloning、Vol.II、IRL Press、ワシントンDC、第3章、1986;Bitterら、Methods in Enzymology中、153:516−544(1987);The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces、Strathernら編、Cold Spring Harbor Press、Vol.IおよびII、1982;ならびにRothstein DNA Cloning:A Practical Approach、Vol.11、DM Glover編、IRL Press、ワシントンDC、1986中を参照されたい。
【0112】
一般に、バイトおよびプレイベクターは、キメラ遺伝子の転写のためキメラ遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターを有する発現カセットを包含する。該ベクターは、宿主細胞中でのベクターの複製のためのDNA複製起点、および例えば大腸菌(E.coli)中でのベクターの増幅のための複製起点、ならびに該ベクターを内部に持つ宿主細胞のみを選択かつ維持するための選択マーカー(1種若しくは複数)もまた包含しうる。加えて、該発現カセットは、好ましくは、キメラ遺伝子の発現を制御するよう機能する誘導可能な要素もまた含有する。キメラ遺伝子の発現を誘導可能かつ制御可能にすることは、融合タンパク質若しくはその成分が宿主細胞に対し毒性である場合にとりわけ重要である。転写エンハンサー配列および翻訳調節配列(例えばシャイン・ダルガノ配列)のような他の制御配列もまた発現カセット中に包含し得る。ウシ成長ホルモン、SV40、lacZおよびAcMNPV多角体のポリアデニル化シグナルのような終止配列もまた、発現カセット中でキメラ遺伝子に作動可能に連結しうる。融合タンパク質の検出および/若しくは精製のためのエピトープ標識コーディング配列もまた、発現カセット中で該キメラ遺伝子に作動可能に連結し得る。有用なエピトープ標識の例は、限定されるものでないが、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)、SV5(V5)、ポリヒスチジン(6×His)、c−myc、lacZ、GSTなどを挙げることができる。ポリヒスチジン標識をもつタンパク質はNiアフィニティーカラムで容易に検出かつ/若しくは精製し得る一方、多くのエピトープ標識に対する特異的抗体が一般に商業的に入手可能である。該ベクターは、当該技術分野で既知のいずれかの技術、例えば直接DNA形質転換、微小注入法、電気穿孔法、ウイルス感染、リポフェクション、遺伝子銃などにより宿主細胞に導入し得る。バイトおよびプレイベクターは、宿主細胞中で染色体外の状態で、すなわち自己複製プラスミド若しくはウイルスとして維持され得る。あるいは、一方若しくは双方のベクターを、安定細胞株の選択若しくは部位特異的組換えのような慣習的技術により、宿主細胞の染色体に組込み得る。
【0113】
2ハイブリッドアッセイは酵母で発したとは言え、類似のアッセイがそれ以来、限定されるものでないが細菌、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を挙げることができる多くの異なる宿主細胞で実施されるように開発された。当業者は、ベクターの設計が使用される宿主細胞とともに変動し得ることを認識するであろう。
【0114】
一態様において、該アッセイは、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ属(Salmonella)、クレブシエラ属(Klebsiella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、カウロバクター属(Caulobacter)およびリゾビウム属(Rhizobium)のような原核生物細胞で実施する。本発明の本態様で有用な発現ベクターの適する複製起点は、例えばColE1、pSC101およびM13複製起点を包含する。適するプロモーターの例は、例えばT7プロモーター、lacZプロモーターなどを包含する。加えて、誘導可能なプロモーターはキメラ遺伝子の発現の調節においてもまた有用である。例えば、バクテリオファージλ plac5からのlacオペロンが当該技術分野で公知であり、そして増殖培地へのIPTGの添加により誘導可能である。細菌の発現系で有用な他の既知の誘導可能なプロモーターは、バクテリオファージλのpL、trpプロモーター、およびtacプロモーターのようなハイブリッドプロモーターなどを包含する。
【0115】
加えて、所望の融合タンパク質を発現するそれらの原核生物細胞のみを選択かつ維持するための選択マーカー配列もまた該発現ベクターに組み込まれるべきである。栄養要求性マーカーおよび抗生物質耐性マーカーを包含する多数の選択マーカーが当該技術分野で既知であり、そして全部本発明の目的上有用であり得る。例えば、アンピシリン耐性を賦与するbla遺伝子は原核生物発現ベクター中で最も一般も使用される選択マーカーである。他の適するマーカーは、宿主細胞にネオマイシン、カナマイシン若しくはハイグロマイシン耐性を賦与する遺伝子を包含する。事実、多くのベクターは、カリフォルニア州カールズバッドのInvitrogen Corp.、カリフォルニア州パロアルトのClontech Corp.、およびカリフォルニア州ラホヤのStratagene Corp.、ならびにウィスコンシン州マディソンのPromega Corp.のような供給元から商業的に入手可能である。これらの商業的に入手可能なベクター、例えばpBR322、pSPORT、pBluescriptIlSK、pcDNAIおよびpcDNAIIは、全部、慣習的組換え技術を使用して本発明のキメラ遺伝子を便宜的に挿入し得るマルチクローニング部位を有する。構築された発現ベクターは、当該技術分野で公知の多様な形質転換若しくはトランスフェクション技術により宿主細胞に導入し得る。
【0116】
別の態様において、哺乳動物細胞を、融合タンパク質の発現およびタンパク質−タンパク質相互作用の検出のための宿主細胞として使用する。この目的上、正常組織細胞、安定細胞株および形質転換腫瘍細胞を包含する事実上いかなる哺乳動物細胞も使用し得る。便宜的には、CHO細胞、Jurkat T細胞、NIH 3T3細胞、HEK−293細胞、CV−1細胞、COS−1細胞、HeLa細胞、VERO細胞、MDCK細胞、WI38細胞などのような哺乳動物細胞株を使用する。哺乳動物発現ベクターは当該技術分野で公知であり、そして多くが商業的に入手可能である。哺乳動物細胞中のキメラ遺伝子の転写のための適するプロモーターの例は、アデノウイルス、SV40(例えばSV40の初期および後期プロモーター)、ライウス肉腫ウイルス(RSV)ならびにサイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMV前初期プロモーター)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(例えば末端反復配列(LTR))、ワクシニアウイルス(例えば7.5Kプロモーター)ならびに単純疱疹ウイルス(HSV)(例えばチミジンキナーゼプロモーター)由来のウイルス転写プロモーターを包含する。誘導可能なプロモーターもまた使用し得る。適する誘導可能なプロモーターは、例えば、テトラサイクリン応答エレメント(TRE)(Gossenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:5547−5551(1992)を参照されたい)、メタロチオネインIIAプロモーター、エクダイソン応答性プロモーターおよび熱ショックプロモーターを包含する。哺乳動物細胞中の発現ベクターの複製および維持のための適する複製起点は、例えばエプスタイン−バー核抗原の存在下のエプスタイン−バーウイルス複製起点(Sugdenら、Mole.Cell.Biol.、5:410−413(1985)を参照されたい)およびSV40 T抗原(COS−1およびCOS−7細胞中に存在する)の存在下のSV40複製起点(Margolskeeら、Mole.Cell.Biol.、8:2837(1988)を参照されたい)を包含する。適する選択マーカーは、限定されるものでないがネオマイシン、ハイグロマイシン、ゼオシンなどに対する耐性を賦与する遺伝子を挙げることができる。例えばpCEP4、pcDNAI、pIND、pSecTag2、pVAX1、pcDNA3.1およびpBI−EGFPならびにpDisplayを包含する多くの商業的に入手可能な哺乳動物発現ベクターが本発明に有用でありうる。該ベクターは、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、電気穿孔法などのようないずれかの既知の技術を使用して哺乳動物細胞に導入し得る。バイトベクターおよびプレイベクターは、同一細胞に共形質転換し得るか、または、あるいは、2種の異なる細胞に導入し得、それらをその後細胞融合若しくは他の適する技術により一緒に融合する。
【0117】
ウイルス感染による細胞への組換え遺伝子の導入を可能にするウイルス発現ベクターもまた融合タンパク質の発現に使用し得る。当該技術分野で公知のウイルス発現ベクターは、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、MFGウイルスおよびレトロウイルスに基づくウイルスベクターを包含する。Sarverら、Mol.Cell.Biol.,1:486(1981);LoganとShenk、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:3655−3659(1984);Mackettら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79:7415−7419(1982);Mackettら、J.Virol.、49:857−864(1984);Panicaliら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79:4927−4931(1982);ConeとMulligan、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6349−6353(1984);Mannら、Cell、33:153−159(1993);Pearら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:8392−8396(1993);Kitamuraら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92:9146−9150(1995);Kinsellaら、Human Gene Therapy、7:1405−1413(1996);Hofmannら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:5185−5190(1996);Choateら、Human Gene Therapy、7:2247(1996);第WO 94/19478号明細書;Hawleyら、Gene Therapy、1:136(1994)およびRivereら、Genetics、92:6733(1995)(それらの全部は引用することにより組み込まれる)を参照されたい。
【0118】
一般に、ウイルスベクターを構築するため、本発明のキメラ遺伝子を適するプロモーターに作動可能に連結し得る。プロモーター−キメラ遺伝子構築物をその後、ウイルスベクターの非必須領域、典型的には改変ウイルスゲノムに挿入する。これは、感染した宿主細胞中で該キメラ遺伝子によりコードされる融合タンパク質を発現することが可能な生存可能な組換えウイルスをもたらす。一旦宿主細胞中にあれば、組換えウイルスは典型的に宿主細胞のゲノムに組込まれる、しかしながら、組換えウシパピローマウイルスは典型的に染色体外要素として複製しかつ留まる。
【0119】
別の態様において、本発明の検出アッセイは植物細胞系で実施される。植物細胞中での外因性タンパク質の発現方法は当該技術分野で公知である。全般として、WeissbachとWeissbach、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、ニューヨーク、1988;GriersonとCorey、Plant Molecular Biology、第2版、Blackie、ロンドン、1988を参照されたい。例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)若しくはタバコモザイクウイルス(TMV)に基づく組換えウイルス発現ベクターは全部使用し得る。あるいは、TiプラスミドベクターおよびR1プラスミドベクターのような組換えプラスミド発現ベクターもまた有用である。本発明の融合タンパク質をコードするキメラ遺伝子は、発現ベクターに便宜的にクローン化し得、かつ、CaMVの35S RNAおよび19S RNAプロモーター若しくはTMVのコートタンパク質プロモーターのようなウイルスプロモーター、または植物プロモーター、例えばRUBISCOの小サブユニットのプロモーター、ならびに熱ショックプロモーター(例えばダイズhsp17.5−E若しくはhsp17.3−B)の制御下に置くことができる。
【0120】
加えて、本発明のin vivoアッセイは、バキュロウイルス発現系を使用して昆虫細胞、例えばスポドプテラ フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中でもまた実施し得る。この系で有用な発現ベクターおよび宿主細胞は当該技術分野で公知でありかつ多様な商業的供給元から一般に入手可能である。例えば、本発明のキメラ遺伝子は、オートグラファ カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)ベクターの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)に便宜的にクローン化し得、そしてAcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーターの制御下に置くことができる。かように生成される非包埋組換えウイルスを、キメラ遺伝子がその中で発現されるスポドプテラ フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のような宿主細胞を感染させるのに使用し得る。米国特許第4,215,051号明細書を参照されたい。
【0121】
本発明の好ましい一態様において、融合タンパク質は、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピキア パストリス(Pichia pastoris)およびシゾサッカロミセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のような酵母を宿主細胞として使用する酵母発現系で発現される。酵母での組換えタンパク質の発現は十分に開発された領域であり、そして、この点に関して有用な技術は、The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces、Strathemら編、Vol.IおよびII、Cold Spring Harbor Press、1982;Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、ニューヨーク、Wiley、1994;ならびにGuthrieとFink、Guide to Yeast Genetics and Molecular BiologyMethods in Enzymology、Vol.194、1991中(それらの全部は引用することにより本明細書に組み込まれる)に詳細に開示されている。Sudbery、Curr.Opin.Biotech.、7:517−524(1996)は、多様な酵母種での組換えタンパク質の発現の当該技術分野での成功を総説し;該内容全体およびその中で引用される参考文献は引用することにより本明細書に組み込まれる。加えて、BartelとFields編、The Yeast Two−Hybrid System、Oxford University Press、ニューヨーク州ニューヨーク、1997は、多様な酵母2ハイブリッド系の情況での酵母中の融合タンパク質の組換え発現の広範囲の考察を含有し、かつ、多数の関連する参考文献を引用する。これらおよび当該技術分野で既知の他の方法は全部本発明の目的上使用し得る。本発明へのこうした方法の応用は、本開示を知らされる当業者に明らかであるはずである。
【0122】
一般に、2種のキメラ遺伝子のそれぞれは別個の発現ベクター(バイトベクターおよびプレイベクター)に包含される。双方のベクターは単一の酵母宿主細胞に共形質転換し得る。当業者に明らかであろうとおり、双方のキメラ遺伝子を単一ベクターから発現させることもまた可能である。好ましい一態様において、バイトベクターおよびプレイベクターを、相反する接合型、例えばそれぞれa型およびα型の2種の半数体酵母細胞に導入する。該2種の半数体細胞を所望の時点で接合させ、双方のキメラ遺伝子を発現する二倍体細胞を形成し得る。
【0123】
一般に、酵母中の組換え発現のためのバイトおよびプレイベクターは、酵母細胞中のベクターの複製および維持のための2μ起点若しくはARSH4配列のような酵母の複製起点を包含する。好ましくは、該ベクターは細菌の複製起点(例えばColE1)および細菌の選択マーカー(例えばampマーカーすなわちbla遺伝子)もまた有する。場合によっては、CEN6セントロメア配列を酵母細胞中のベクターの複製を制御するために包含する。酵母細胞中の遺伝子転写を駆動することが可能ないかなる構成的若しくは誘導可能なプロモーターも、該キメラ遺伝子の発現を制御するのに使用しうる。こうしたプロモーターはキメラ遺伝子に作動可能に連結される。適する構成的プロモーターの例は、限定されるものでないが酵母ADH1、PGK1、TEF2、GPD1、HIS3およびCYC1プロモーターを挙げることができる。適する誘導可能なプロモーターの例は、限定されるものでないが酵母GAL1(ガラクトースにより誘導可能)、CUP1(Cu++により誘導可能)およびFUS1(フェロモンにより誘導可能)プロモーター;H.ポリモルファ(H.polymorpha)およびP.パストリス(P.pastoris)からのAOX/MOXプロモーター(グルコース若しくはエタノールにより抑制されかつメタノールにより誘導される);LexAオペレーターを含有するもののようなキメラプロモーター(LexAを含有する転写因子により誘導可能)などを挙げることができる。誘導可能なプロモーターは、該キメラ遺伝子によりコードされる融合タンパク質が宿主細胞に対し毒性である場合に好ましい。それが望ましい場合、SPO13プロモーターからの上流抑制配列(URS)のようなある種の転写抑制配列を、プロモーター配列、例えばプロモーター領域の5’端に作動可能に連結し得る。こうした上流抑制配列は、キメラ遺伝子の発現レベルを微調整するように機能する。
【0124】
好ましくは、転写終止シグナルをベクター中のキメラ遺伝子に作動可能に連結する。一般に、例えばCYC1およびADH1遺伝子由来の転写終止シグナル配列を使用し得る。
【0125】
加えて、バイトベクターおよびプレイベクターが、一方若しくは双方のキメラ遺伝子を内部に持つ酵母細胞のみの選択および維持のための1種若しくはそれ以上の選択可能なマーカーを含有することが好ましい。当該技術分野で既知のいかなる選択可能なマーカーも、キメラ遺伝子(1種若しくは複数)を発現する酵母細胞が陽性に同定若しくは陰性に選択され得る限りは、本発明の目的上使用し得る。陽性に同定され得るマーカーの例は、lacZ遺伝子(β−ガラクトシダーゼをコードする)、ホタルルシフェラーゼ遺伝子、分泌型アルカリホスファターゼ、ワサビペルオキシダーゼ、青色蛍光タンパク質(BFP)および緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を包含する色アッセイに基づくものである(Cubittら、Trens Biochem.Sci.、20:448−455(1995)を参照されたい)。蛍光、化学発光、UV吸収、赤外放射などによる検出を可能にする他のマーカーもまた使用し得る。限定されるものでないがURA3、HIS3、TRP1、LEU2、LYS2、ADE2などを挙げることができる栄養要求性マーカーが、選択され得るマーカーのひとつである。典型的には、栄養要求性選択の目的上、バイトベクターおよび/若しくはプレイベクターで形質転換した酵母宿主細胞を、特定の栄養素を欠く培地で培養する。他の選択可能なマーカーは栄養要求性に基づかないが、しかしむしろ、抗生物質に対する耐性若しくは感受性または他の薬物動態に基づく。こうしたマーカーの例は、限定されるものでないが、クロラムフェニコールに対する耐性を賦与するクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子;アルギニンパーミアーゼをコードしかつそれにより細胞をカナバニンに対し感受性にするCAN1遺伝子(Sikorskiら、Meth.Enzymol.、194;302−318(1991)を参照されたい);真核生物細胞をアミノグリコシドG418に対し耐性にする細菌のカナマイシン耐性遺伝子(kan)(Wachら、Yeast、10:1793−1808(1994)を参照されたい);およびシクロヘキシミドに対する感受性を賦与するCYH2遺伝子(Sikorskiら、Meth.Enzymol.、194:302−318(1991)を参照されたい)を挙げることができる。加えて、メタロチオネインをコードしかつそれにより銅に対する耐性を賦与するCUP1遺伝子もまた適する選択マーカーである。上の選択マーカーのそれぞれは単独で若しくは組合せで使用しうる。1種若しくはそれ以上の選択マーカーを1種の特定のバイト若しくはプレイベクターに包含し得る。バイトベクターおよびプレイベクターは同一若しくは異なる選択マーカーを有しうる。加えて、半数体酵母細胞を接合する前若しくは後いずれかに、選択圧を形質転換宿主細胞にかけることができる。
【0126】
明らかであろうとおり、使用される選択マーカーは、バイトおよび/若しくはプレイベクターが発現される宿主株を補うべきである。言い換えれば、遺伝子を選択マーカー遺伝子として使用する場合、該選択マーカー遺伝子を欠く(若しくは対応する遺伝子中に突然変異を有する)酵母株を宿主細胞として使用すべきである。多様な選択マーカーに対応する多数の酵母株若しくは誘導体株が当該技術分野で既知である。それらの多くは特にある種の酵母2ハイブリッド系のため開発された。本発明に関してのこうした株の応用および任意の改変は、本開示を知らされた当業者に明らかであろう。遺伝子交差若しくは組換え突然変異誘発を使用する酵母株の遺伝子操作方法は当該技術分野で公知である。例えばRothstein、Meth.Enzymol.、101:202−211(1983)を参照されたい。例として、以下の酵母株が当該技術分野で公知であり、そして必要な改変および調節に際して本発明で使用し得る。
・遺伝子型MATa his3Δ 200 trp1−901 leu2−3,112 ade2 LYS2::(lexAop)4−HIS3 URA3::(lexAop)8−lacZを有するL40株;
・遺伝子型MATαtrp1 his3 ura3 6ops−LEU2を有するEGY48株;および
・遺伝子型MATαura3−52 leu2−3,112 trp1−901 his3Δ200 ade2−101 gal4Δ gal80Δ SPAL10::URA3 GAL1::HIS3::lys2を有するMaV103株(Kumarら、J.Biol.Chem.272:13548−13554(1997);Vidalら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:10315−10320(1996)を参照されたい)。こうした株は研究界で一般に入手可能であり、そして単純な酵母遺伝子操作によってもまた得ることができる。例えば、The Yeast Two−Hybrid System、BartelとFields編、173−182ページ、Oxford University Press、ニューヨーク州ニューヨーク、1997を参照されたい。
【0127】
加えて、以下の酵母株が商業的に入手可能である:
・Clontech、カリフォルニア州パロアルトから入手可能であり、かつ、遺伝子型MATa gal4 gal80 his3Δ200 trp1−901 ade2−101 ura3−52 leu2−3,112 URA3::GAL1−lacZ LYS2::GAL1−HIS3 cyhを有するY190株;および
・Stratagene、カリフォルニア州ラホヤから入手可能であり、かつ、遺伝子型MATαura3−52 his3−200 ade2−101 lys2−801 trp1−901 leu2−3,112 gal4−542 gal80−538LYS2::GAL1−HIS3 URA3::GAL1/CYC1−lacZを有するYRG−2株。
【0128】
事実、特に酵母2ハイブリッド系分析のため設計されたベクターおよび宿主株の多様なバージョンが、Clontech、カリフォルニア州パロアルトおよびStratagene、カリフォルニア州ラホヤのような商業的供給元からキットで入手可能であり、それらの全部は本発明での使用のため改変し得る。
【0129】
相互作用アンタゴニストのスクリーニングアッセイにおいて、CaMまたはその活性フラグメント若しくは誘導体、およびTRPM8またはその活性フラグメント若しくは誘導体を、2ハイブリッドアッセイの目的上、上述されたところの融合タンパク質の形態で発現された試験タンパク質として使用する。該融合タンパク質は宿主細胞中で発現され、そして1種若しくはそれ以上の試験化合物の存在下で相互と相互作用することを可能にされる。
【0130】
好ましい一態様において、対選択可能な(counterselectable)マーカーを、試験化合物が2種の試験タンパク質間の相互作用を妨害することが可能である場合にのみ検出可能なシグナル(例えば色若しくは蛍光の出現または細胞の生存)が存在するようなレポーターとして使用する。この点に関して、当該技術分野で既知の多様な「逆2ハイブリッド系」で使用されるレポーターを使用しうる。逆2ハイブリッド系は、例えば、米国特許第5,525,490号;同第5,733,726号;同第5,885,779号明細書;Vidalら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:10315−10320(1996);およびVidalら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:10321−10326(1996)(それらの全部は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0131】
酵母の系で有用な適する対選択可能なレポーターの例は、URA3遺伝子(5−フルオロオロト酸(5−FOA)を毒性の代謝物5−フルオロウラシルに転化するオロチジン−5’−デカルボキシラーゼをコードする)、CAN1遺伝子(毒性のアルギンアナログカナバニンを酵母細胞に輸送するアルギニンパーミアーゼをコードする)、GAL1遺伝子(2−デオキシガラクトースの毒性の2−デオキシガラクトース−1−リン酸への転化を触媒するガラクトキナーゼをコードする)、LYS2遺伝子(単独の窒素源としてα−アミノアジピン酸を含有する培地で酵母細胞が増殖することを不可能にするα−アミノアジピン酸還元酵素をコードする)、MET15遺伝子(酵母細胞にメチル水銀に対する感受性を賦与するO−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼをコードする)、およびCYH2遺伝子(シクロヘキシミドに対する感受性を賦与するL29リボソームタンパク質をコードする)を包含する。加えて、ジフテリア毒素(DTA)触媒ドメインのような細胞傷害性タンパク質を包含するいかなる既知の細胞傷害剤もまた対選択可能なレポーターとして使用し得る。米国特許第5,733,726号明細書を参照されたい。DTAは、伸長因子−2のADP−リボシル化を引き起こし、そして従ってタンパク質合成を阻害しかつ細胞死を引き起こす。細胞傷害剤の他の例は、リシン、志賀毒素、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の内毒素Aを包含する。
【0132】
例えば、URA3遺伝子を対選択可能なレポーター遺伝子として使用する場合、変異体URA3遺伝子を含有する酵母細胞を、in vivoアッセイの宿主細胞(UraFoa表現型)として使用し得る。こうした細胞は、URA3にコードされる機能的オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(ウラシルの生合成に必要とされる酵素)を欠く。結果として、該細胞はウラシルを欠く培地で増殖することが不可能である。しかしながら、野生型オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼの非存在により、該酵母細胞は非毒性の5−フルオロオロト酸(5−FOA)を毒性の生成物5−フルオロウラシルに転化し得ない。従ってこうした酵母細胞は5−FOAに耐性でありかつ5−FOAを含有する培地で増殖し得る。従って、例えば、APOA1(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)あるいは変異体の形態のAPOA1(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)と、PRA1(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)あるいは変異体の形態のPRA1(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)の間の相互作用を破壊することが可能な化合物についてスクリーニングするために、APOA1(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)を、適する転写活性化因子のDNA結合ドメインとの融合タンパク質として発現させる一方、PRA1(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)を、適する転写活性化因子の転写活性化ドメインとの融合タンパク質として発現する。該宿主株中で、レポーターURA3遺伝子は、転写活性化ドメインおよびDNA結合ドメインの会合に特異的に応答性のプロモーターに作動可能に連結しうる。融合タンパク質がUraFoa酵母細胞中で発現された後に、試験化合物の存在下でin vivoスクリーニングアッセイを実施し得、該酵母細胞はウラシルおよび5−FOAを含有する培地で培養する。試験化合物がAPOA1とPRA1の間の相互作用を破壊しない場合は、活性のURA3遺伝子産物、すなわち5−FOAを毒性の5−フルオロウラシルに転化するオロチジン−5’−デカルボキシラーゼが発現される。結果として該酵母細胞は増殖し得ない。他方、試験化合物がAPOA1とPRA1の間の相互作用を破壊する場合、活性のオロチジン−5’−デカルボキシラーゼは宿主酵母細胞中で産生されない。結果、該酵母細胞は生存しかつ5−FOA含有培地で増殖することができる。従って、APOA1とPRA1の間の相互作用を妨害若しくは解離することが可能な化合物を、従ってコロニー形成に基づき同定し得る。
【0133】
明らかであろうとおり、本発明のスクリーニングアッセイは大スケールスクリーニングに適切な形式で適用し得る。例えば、コンビナトリアル技術を使用して、小有機分子若しくは小ペプチドのコンビナトリアルライブラリーを構築し得る。全般として、例えば、Kenanら、Trends Biochem.Sc.、19:57−64(1994);Gallopら、J.Med.Chem.、37:1233−1251(1994);Gordonら、J.Med.Chem.、37:1385−1401(1994);Eckerら、Biotechnology、13:351−360(1995)を参照されたい。化合物のこうしたコンビナトリアルライブラリーは、特定のタンパク質−タンパク質相互作用の特異的調節物質を単離するために本発明のスクリーニングアッセイに適用し得る。ランダムペプチドライブラリーの場合、ランダムペプチドを本発明の融合タンパク質と宿主細胞中で共発現しかつin vivoでアッセイし得る。例えばYangら、Nucl.Acids Res.、23:1152−1156(1995)を参照されたい。あるいは、それらを宿主細胞による取り込みのため培地に添加し得る。
【0134】
便宜上、酵母の接合をin vivoスクリーニングアッセイで使用する。例えば、上述されたところの一方の融合タンパク質を発現するa接合型の半数体細胞を、他方の融合タンパク質を発現するα接合型の半数体細胞と接合させる。接合に際して、二倍体細胞が適する培地上に広がり菌叢を形成する。試験化合物の滴を菌叢の多様な領域に置くことができる。該菌叢を適切な時間培養した後、融合タンパク質中の特定の試験タンパク質間の相互作用を調節することが可能な化合物を含有する滴を、該滴の近傍の増殖の刺激若しくは阻害により同定し得る。
【0135】
タンパク質−タンパク質相互作用を調節することが可能な化合物を同定するための本発明のスクリーニングアッセイはまた、陽性および陰性選択の閾値すなわち感度を調節するための多様な技術によっても微調整し得る。それらの活性を調節するために突然変異をレポータータンパク質に導入し得る。宿主細胞による試験化合物の取り込みもまた調節し得る。例えば、erg6変異体株のような酵母高取り込み変異体は試験化合物の酵母取り込みを容易にし得る。Gaberら、Mole.Cell.Biol.、9:3447−3456(1989)を参照されたい。同様に、5−FOA、2−デオキシガラクトース、シクロヘキシミド、α−アミノアジピン酸などのような選択化合物の取り込みもまた微調整し得る。
【0136】
一般に、上のスクリーニングアッセイを試験化合物の非存在下で実施する対照アッセイを実施する。このアッセイの結果をその後、該試験化合物の存在下で得られたものと比較する。
【0137】
相互作用アゴニストのスクリーニングアッセイにおいて、アッセイは、陽性に選択可能なマーカーを使用することを除き、相互作用アンタゴニストについて上述されたと同一の様式で実施し得る。CaMまたはその活性フラグメント若しくは誘導体およびTRPM8またはその活性フラグメント若しくは誘導体を、2ハイブリッドアッセイの目的上、上述されたところの融合タンパク質の形態で発現される試験タンパク質として使用する。該融合タンパク質は宿主細胞中で発現され、そして1種若しくはそれ以上の試験化合物の存在下で相互と相互作用することを可能にされる。
【0138】
第一のタンパク質(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)あるいは変異体の形態の第一のタンパク質(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)と、第二のタンパク質(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)あるいは変異体の形態の第二のもの(またはそのホモログ、フラグメント若しくは誘導体)の間の相互作用を試験化合物が可能にするか、高めるか若しくは強化する場合にβ−ガラクトシダーゼが発現されるようなレポーター遺伝子として、β−ガラクトシダーゼのような陽性に選択可能なマーカーをコードする遺伝子を使用しうる。結果として、該化合物は、X−Galを含有する培地中で宿主細胞を培養する場合に、青色の出現に基づき同定しうる。
【0139】
一般に、上のスクリーニングアッセイを試験化合物の非存在下で実施する対照アッセイを実施する。このアッセイの結果をその後、該試験化合物の存在下で得られたものと比較する。
【0140】
タンパク質複合体中のCaMとTRPM8の間の相互作用を調節することが可能である試験化合物が一旦選択されれば、該試験化合物を第二のアッセイで試験してその特異性および効果を確認し得る。例示的二次アッセイは細胞に基づくアッセイ若しくは動物に基づくアッセイである。
【0141】
一態様において、試験化合物は、TRPM8チャンネルのイオン伝導性を増大若しくは減少させるその能力についてさらに評価し得る。例えば細胞脱分極の刺激若しくは細胞内カルシウムイオン濃度の増大を介する、TRPM8チャンネル伝導性の測定方法が当業者に既知である。細胞内カルシウムの濃度は、カルシウムイオン感受性蛍光色素のようなカルシウムイオン感受性蛍光指示薬を使用して評価し得る。適するカルシウムイオン感受性蛍光色素は、例えばquin−2(例えばTsienら、J Cell BioL、94:325、1982を参照されたい)、fura−2(例えばGrynkiewiczら、J BioL Chem.、260:3440、1985を参照されたい)、fluo−3(例えばKaoら、J BioL−43 Chem.、264:8179、1989を参照されたい)およびrhod−2(例えばTsienら、J Biol.Chem.、Abstract 89a、1987を参照されたい)を包含する。適するカルシウムイオン感受性蛍光色素は、例えばMolecular Probes(オレゴン州ユージーン)から商業的に入手可能である。細胞の蛍光は、蛍光計、若しくは蛍光ランプおよび検出器を有するフローサイトメーターを使用してもまたモニターし得る。
【0142】
TRPM8陽イオンチャンネルは二価の陽イオン例えばCa++のみならずしかしまた一価の陽イオン例えばNa若しくはKも輸送するよう機能する。従って、一価の陽イオンの輸送の変化を測定するためのアッセイもまた、TRPM8チャンネルの伝導性を測定するために実施し得る。NaおよびK感受性色素は当該技術分野で既知であり、そして例えばMolecular Probes(オレゴン州ユージーン)から商業的に入手可能である。
【0143】
TRPM8チャンネルの伝導性はパッチクランプのような電気生理学的技術によってもまた測定し得る。パッチクランプ技術は、細胞、細胞膜および単離された組織中の電気的活動を研究するのに慣例に使用される。それは、マイクロピペットと原形質膜の間で電気的に密接した高抵抗シールを形成することを必要とする。原形質膜内の個々のイオンチャンネルを通って流れる電流をその後測定し得る。該技術に対する多様な変形は、原形質膜の多様な表面が、浴する媒体に曝露されることを可能にする。4種の最も一般的な変形は、オンセル(on−cell)パッチ、インサイドアウト(inside−out)パッチ、アウトサイドアウト(outside−out)パッチおよび全細胞クランプを包含する。
【0144】
パッチクランプ法は、膜を横切る電圧を制御しかつ電流を測定する電圧クランプとともに一般に使用される。電圧クランプ過程の間に、微小電極を細胞中に挿入し、そして、いずれかの予め定義されたレベルで細胞膜電位を保持するように電極を通して電流を注入する。パッチクランプ法は、電流を制御しかつ電圧を測定する電流クランプ法とともにもまた使用し得る。
【0145】
別の態様において、試験化合物はそれを生存動物に投与することによりさらに評価し得る。これは、投薬レジメンを確立するために重要な毒性および他の薬理学的パラメータを確立するのに有用であり得る。例えば、化合物を、イヌでの該化合物の多様な薬理学的局面を検査するためにイヌに投与し得る。イヌ、とりわけ大型品種は、ラット若しくはマウスに比較してヒトに体重がより近く、そして従ってヒト投薬量を推定するためのより適する動物モデルを提供するため、イヌの試験はヒトでの投薬レジメンを同定かつ確立するのにとりわけ有利であり得る。
【0146】
化合物は、侵害受容過程を変える化合物の能力を評価するためにもまた動物に投与し得る。疼痛の多様な動物モデル、例えば、KimとChung(Pain、50:355−363、1992)により開発されたラットにおける神経因性疼痛モデルである、神経傷害の脊髄神経結紮(SNL)モデルが存在する。
【0147】
疼痛の他の適する動物モデルを本明細書の教示とともに利用し得る。神経因性疼痛の一般に研究されるげっ歯類モデルは、慢性絞扼性神経傷害(CCI)すなわちBennettモデル;神経腫若しくは軸索切断モデル;および部分的座骨神経離断モデルすなわちSeltzerモデル(Shirら、Neurosci.Lett.、115:62−67、1990)を包含する。例示的神経因性疼痛モデルは、数種の外傷性神経傷害調製物(Bennettら、Pain 33:87−107、1988;Decosterdら、Pain 87:149−58、2000;Kimら、Pain 50:355−363、1992;Shirら、Neurosci Lett 115:62−7、1990)、神経炎症モデル(Chacurら、Pain 94:231−44、2001;Milliganら、Brain Res 861:105−16、2000)糖尿病性ニューロパシー(Calcuttら、Br J Pharmacol 122:1478−82、1997)、ウイルス誘発性ニューロパシー(Fleetwood−Walkerら、J Gen Virol 80:2433−6、1999)、ビンクリスチンニューロパシー(Aleyら、Neuroscience 73:259−65、1996;Nozaki−Taguchiら、Pain 93:69−76、2001)、およびパクリタキセルニューロパシー(Cavalettiら、Exp Neurol 133:64−72、1995)、ならびに急性侵害受容試験モデルおよび炎症性モデル(Brennann,T.J.ら Pain 64:493、1996;D’Amour,F.E.とSmith,D.L.J Pharmacol 72:74−79、1941;Eddy,N.B.ら J Pharmacol Exp Ther 98:121、1950;Haffner,F.Dtsch Med Wochenschr 55:731、1929;Hargreaves,K.ら Pain 32:77−88、1988;Hunskaar,S.ら J Neurosci Meth 14:69、1985;Randall,L.O.とSelitto,J.J.Arch.Int.Pharmacodyn 111:409−419、1957;Siegmund,E.ら Proc Soc Exp Bio Med 95:729、1957)を包含する。
【0148】
加えて、タンパク質複合体中のCaMおよびTRPM8の相互作用を調節することが可能である試験化合物を一旦選択すれば、該試験化合物の同一性若しくは特徴を定義するデータを包含するデータ組を生成し得る。該データ組は、選択した試験化合物の特性、例えば化学構造、キラリティー、分子量、融点などに関する情報を包含しうる。あるいは、該データ組は、スクリーニングアッセイを実施する研究者、および/若しくは特定の試験化合物を表すところの該データ組を受領する研究者により理解される、割り当てられたID番号を単純に包含しうる。該データ若しくは情報は、他の研究者、とりわけ異なる国の研究者に通信若しくは伝達し得る伝達可能な形態で投げることができる。こうした伝達可能な形態は変動し得、そして有形若しくは無形であり得る。例えば、1種若しくはそれ以上の選択した試験化合物を定義するデータ組は、文章、表、図式、分子構造、写真、図表、画像若しくはいずれかの他の視覚的形態で例示し得る。データ若しくは情報は、紙のような有形の媒体に記録し得るか、またはコンピュータで読み出し可能な形態(例えば電子、電磁、光学若しくは他の信号)で例示し得る。コンピュータで読み出し可能な形態のデータは、コンピュータで使用可能な記憶媒体(例えばフロッピーディスク、磁気テープ、光ディスクなど)に保存し得るか、若しくは通信基幹設備を通じて直接伝達し得る。とりわけ、電子信号で例示されるデータは、電子メールの形式で送信し得るか、若しくはインターネット若しくはイントラネット上のウェブサイトに投稿し得る。加えて、選択した試験化合物に関する情報若しくはデータは音声の形態でもまた記録し得、そして電話、ファクシミリ、携帯電話、インターネット電話などを介し、いずれかの適する媒体、例えばアナログ若しくはディジタルケーブル回線、光ファイバーケーブルなどを通じて伝達し得る。
【0149】
従って、上述されたスクリーニングアッセイで、若しくは下述されるところの仮想スクリーニングにより選択された試験化合物に関する情報およびデータは、世界中どこでも生じさせ得かつ異なる場所に伝達し得る。例えば、スクリーニングアッセイを海外で実施する場合、選択した試験化合物に関する情報およびデータを生成しかつ上述されたところの伝達可能な形態で投げることができる。伝達可能な形態のデータおよび情報は、従って、米国に輸入され得るか若しくはいずれかの他の国に伝達し得、そこで、該選択した試験化合物のさらなる試験ならびに/若しくは臨床試験で試験するためのリード化合物を開発するための選択した試験化合物の修飾および至適化において、該データおよび情報を使用しうる。
【0150】
化合物は、標的タンパク質若しくはタンパク質複合体および/または試験化合物の構造モデルに基づいてもまた選択し得る。加えて、有効な化合物が一旦同定されれば、その構造アナログ若しくは模倣物を、薬物の有効性および安定性を向上させかつ副作用を低下させるという目的を伴い、合理的ドラッグデザインに基づき製造し得る。当該技術分野で既知の合理的ドラッグデザイン方法を本発明で使用し得る。例えば、Hodgsonら、Bio/Technology、9:19−21(1991);米国特許第5,800,998号および同第5,891,628号明細書(それらの全部は引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0151】
この点に関して、標的タンパク質若しくはタンパク質複合体に関する構造の情報が得られる。好ましくは、該タンパク質複合体の三次元構造を定義する原子座標を得ることができる。例えば、相互作用するTRPM8−CaM複合体を、例えばX線結晶学、NMR、コンピュータモデル化、質量分析などを包含する多様な生物物理学的技術を使用して研究し得る。同様に、構造情報は、相互作用するタンパク質、および該タンパク質の相互作用を開始若しくは安定化する化合物により形成されるタンパク質複合体からもまた得ることができる。X線結晶学、NMRなどによりこうした原子座標を得る方法は当該技術分野で既知であり、そして本発明の標的タンパク質若しくはタンパク質複合体へのそれらの応用は、構造生物学の当業者に明らかであるはずである。SmythとMartin、Mol.Pathol.、53:8−14(2000);OakleyとWilce、Clin.Exp.Pharmacol.Physiol.、27(3):145−151(2000);FerentzとWagner,Q.Rev.Biophys.、33:29−65(2000);Hicks、Curr.Med.Chem.、8(6):627−650(2001);およびRoberts、Curr.Opin.Biotechnol.、10:42−47(1999)を参照されたい。
【0152】
加えて、調節物質の存在若しくは非存在下でのタンパク質複合体間の相互作用の理解は、酵母2ハイブリッド系、若しくはタンパク質−タンパク質相互作用の他の検出方法を使用する突然変異誘発分析によってもまた導き得る。この点に関して、相互作用するタンパク質に多様な突然変異を導入し得、そしてタンパク質−タンパク質相互作用に対する該突然変異の影響を、酵母2ハイブリッド系のような適する方法により検査し得る。アミノ酸置換、欠失および挿入を包含する多様な突然変異を、慣習的組換えDNA技術を使用してタンパク質配列に導入し得る。一般に、タンパク質結合部位を解読することがとりわけ望ましい。従って、導入される突然変異が、タンパク質−タンパク質相互作用に影響を及ぼしかつ最小限の構造破壊を引き起こすのみであることが重要である。突然変異は、好ましくは相互作用タンパク質の三次元構造の知識に基づき設計する。好ましくは、イオン相互作用および疎水性相互作用がしばしばタンパク質−タンパク質相互作用に関与するため、突然変異は該タンパク質の表面に露出された荷電したアミノ酸若しくは疎水性アミノ酸を変えるように導入する。あるいは、「アラニン走査突然変異誘発」技術を使用する。Wellsら、Methods Enzymol.、202:301−306(1991);Bassら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:4498−4502(1991);Bennetら、J.Biol.Chem.、266:5191−5201(1991);Diamondら、J.Virol.、68:863−876(1994)を参照されたい。この技術を使用して、相互作用タンパク質の荷電した若しくは疎水性アミノ酸残基をアラニンにより置換し、そしてタンパク質間の相互作用に対する影響を例えば酵母2ハイブリッド系を使用して分析する。例えば、タンパク質配列全体を5アミノ酸のウィンドウで走査し得る。2個若しくはそれ以上の荷電した若しくは疎水性のアミノ酸が1ウィンドウに出現する場合、該荷電した若しくは疎水性のアミノ酸を、標準的組換えDNA技術を使用してアラニンに変化させる。かように突然変異させたタンパク質を、タンパク質−タンパク質相互作用に対する該突然変異の影響を検査するため、上述された2ハイブリッドアッセイで「試験タンパク質」として使用する。好ましくは、突然変異分析は同定された調節物質化合物の存在および非存在下双方で実施する。この様式で、タンパク質−タンパク質相互作用および/若しくは調節物質化合物と相互作用タンパク質の間の相互作用に重要なタンパク質のドメイン若しくは残基を同定し得る。
【0153】
得られる情報に基づき、相互作用タンパク質間、ならびに同定された調節物質と相互作用タンパク質の間の構造の関係が解明される。例えば、同定された調節物質(すなわちリード化合物)について、相互作用タンパク質に対するそれらの調節効果に決定的に重要な三次元構造および化学的部分が示される。この情報、および分子モデル化の当該技術分野で既知の多様な技術(すなわちシミュレーテッドアニーリング)を使用して、医薬品化学者はその後、本発明のタンパク質−タンパク質相互作用のより効果的な調節物質でありうるアナログ化合物を設計し得る。例えば、該アナログ化合物はそれらの標的へのより特異的若しくはより強固な結合を示すことができ、そしてそれによりより少ない副作用を表しうるか、またはより望ましい薬理学的特徴(例えばより大きな溶解性)を有しうる。
【0154】
加えて、リード化合物がペプチドである場合、それは、特定のタンパク質−タンパク質相互作用に対するその調節効果に重要な該ペプチドのドメイン若しくは残基を決定するために、アラニン走査技術および/若しくは2ハイブリッドアッセイによってもまた分析し得る。該ペプチド化合物は、小有機分子若しくはペプチド模倣物の合理的設計のためのリード分子として使用し得る。Huberら、Curr.Med.Chem.、1:13−34(1994)を参照されたい。
【0155】
同定された化合物の調節効果に決定的に重要なドメイン、残基若しくは部分は、その「ファルマコフォア」として知られる該化合物の活性領域を構成する。ファルマコフォアが一旦解明されれば、NMR分析、X線回折データ、アラニン走査、分光学的技術などからのデータを組み込みうるモデル化過程により、構造モデルを確立し得る。コンピュータ解析(例えば分子モデル化およびシミュレーテッドアニーリング)、類似性マッピングなどを包含する多様な技術を全部このモデル化過程で使用し得る。例えば、Perryら、OSAR:Quantitative Structure−Activity Relationships in Drug Design中、pp.189−193、Alan R.Liss,Inc.、1989;Rotivinenら、Acta Pharmaceutical Fennica、97:159−166(1988);Lewisら、Proc.R.Soc.Lond.、236:125−140(1989);McKinalyら、Annu.Rev.Pharmacol.Toxiciol.、29:111−122(1989)を参照されたい。Polygen Corpration、マサチューセッツ州ウォルサムから入手可能な商業的分子モデル化システムは、エネルギー最小化および分子動力学機能を実行するCHARMmプログラム、ならびに、分子構造の構築、グラフィックモデル化および解析を実行するQUANTAプログラムを包含する。こうしたプログラムは分子の相互作用の構築、改変および視覚化を可能にする。他のコンピュータモデル化プログラムが、BioDesign,Inc.(カリフォルニア州パサディナ)、Hypercube,Inc.(オンタリオ州ケンブリッジ)およびAllelix,Inc.(カナダ・オンタリオ州ミシサーガ)からもまた入手可能である。
【0156】
確立されたモデルに基づき鋳型を形成し得る。多様な化合物をその後、多様な化学基若しくは部分を該鋳型に結び付けることにより設計し得る。該鋳型の多様な部分は置換もまたし得る。加えて、ペプチドリード化合物の場合は、安定性を増大させるため、ペプチド若しくはその模倣物を、例えばN末端およびC末端を一緒に連結することにより環化し得る。これらの合理的に設計した化合物をさらに試験する。こうして、改良された有効性および低下された副作用を伴う薬理学的に許容できかつ安定な化合物を開発し得る。本発明により同定される化合物は、個体への投与に適する製薬学的製剤に組み込み得る。
【0157】
加えて、標的タンパク質若しくはタンパク質複合体の三次元構造を定義する構造モデル若しくは原子座標は、標的タンパク質若しくはタンパク質複合体を調節することが可能な化合物を選択するための仮想スクリーニングでもまた使用し得る。原子座標を使用する多様なコンピュータに基づく仮想スクリーニング方法が当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,798,247号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる)は、有機化合物と、標的タンパク質内の結合洞(binding cavity)の結合部位の間の結合相互作用を測定することによる化合物(具体的にはインターロイキン変換酵素阻害剤)の同定方法を開示する。該結合部位は原子座標により定義される。
【0158】
合理的ドラッグデザイン若しくは仮想スクリーニングに基づき設計若しくは選択される化合物を、本発明のタンパク質複合体内の相互作用パートナー間の相互作用を調節(妨害若しくは強化)するそれらの能力について試験し得る。加えて、該化合物は、上述されたところのTRPM8チャンネル伝導性アッセイ若しくは動物モデルでさらに試験し得る。
【0159】
上に開示された方法による所望の化合物の選択後に、本発明の方法は、選択した化合物の製造をさらに提供する。該化合物はさらなる実験的研究若しくは治療的使用のため製造し得る。本発明のスクリーニング方法で同定される化合物は、疼痛、炎症および皮膚障害のような、CaM−TRPM8タンパク質複合体若しくはその相互作用するメンバーにより引き起こされるか若しくはそれと関連する疾患、障害若しくは症状を予防若しくは改善するための治療若しくは予防上有効な薬物にすることができる。
【実施例】
【0160】
タンパク質構築および製造
TRPM8のCaM結合部位の位置を正確に示すため、ラットTRPM8 cDNAのフラグメントを、in vitro翻訳によりタンパク質を35S−メチオニン標識するため、若しくは細菌中でGST融合タンパク質を発現させるため、それぞれpAGA3若しくはpGEX−4T1N発現ベクターにサブクローニングした。これらのサブクローンは、いくらかの重なりを伴う多様なラットTRPM8フラグメントをコードする(表1を参照されたい)。
【0161】
【表1】

【0162】
構築物TRPM8−1/pAGA3およびTRPM8−4/pAGA3を、慣習的制限消化およびライゲーション技術により構築した。TRPM8−1/pAGA3を得るため、完全長のラットTRPM8 cDNAを保有するTRPM8/pAGA3をHindIIIで消化して、ラットTRPM8のカルボキシル末端をコードするcDNAフラグメントを除去した。ラットTRPM8のアミノ末端をコードするcDNAフラグメントを保有するプラスミドの残存する部分を再連結して、TRPM8−1/pAGA3を創製した。TRPM8−4/pAGA3の構築のため、ラットTRPM8のカルボキシル末端をコードする1.5kbのDNAフラグメントを、TRPM8/pAGA3をEcoRVおよびXbaIで消化した後にTRPM8/pAGA3から単離した。該1.5kbのフラグメントをその後、そのEcoRVおよびXbaI部位でpAGA3にサブクローニングして、TRPM8−4/pAGA3を生成した。
【0163】
他の構築物は、ラットTRPM8 cDNAフラグメントのPCR増幅(表2)、次いで適切な発現ベクターへのサブクローニングにより構築した。PCR条件は:AdvantageTM−HF2 DNAポリメラーゼ(Clontech)を用いる30周期の94℃30秒間(変性)、55℃30秒間(アニーリング)および72℃2分間(伸長)であった。その後のサブクローニング段階を容易にするため、SalI若しくはNcoIのような適切な制限消化部位をPCRプライマーに包含した(表3)。PCR増幅したrTRPM8 cDNAフラグメントをゲル精製し、適切な制限酵素で消化し、そして標準的分子クローニング技術に従って、pAGA3(rTRPM8−2およびrTRPM8−6ないしrTRPM8−10について)若しくはpGEX−4T−1N(rTRPM8−11およびrTRPM8−12について)いずれかの発現ベクターにクローン化した。
【0164】
【表2】

【0165】
【表3】

【0166】
35S−メチオニン標識したTRPM8フラグメントは、供給元に推奨されるプロトコルに従って、TnT(R) T7 Quick Coupled Transcription/Translation系(Promega)を使用して合成した。簡潔には、0.1μg/μlのpAGA3に基づくTRPM8構築物(表1に列挙される)10μlを、2μlの[35S]−メチオニン(10mCi/mlで1000Ci/mmol)を含む90μlのTNT Quickマスターミックスに添加した。反応混合物を30℃で90分間インキュベートした。インキュベーション混合物のアリコートを、所望の大きさのタンパク質の合成を確認するためのSDS/PAGEによる、またはGST若しくはGST−CaMに結合する能力についてのいずれかの分析に直接使用した。
【0167】
GST−CaM融合プラスミドはpGEX−4T−1(Amersham Pharmacia)に基づいた。CaMをGSTのC末端に融合した。大腸菌(Eschelichia coli)BL21への形質転換後に単一コロニーを拾い、そして600nmで1.0のODまでbrow培地中で増殖させた。融合タンパク質の合成を0.2mMイソプロピルβ−D−チオガラクトシド(IPTG)で誘導した。27℃でIPTGの存在下に2〜3時間増殖させた後、細胞を遠心分離により収集し、NETN溶解緩衝液(0.5% Nonidet P−40/1mM EDTA/20mM トリス−HCl、pH8.0/100mM NaCl;培地20mlあたり緩衝液1ml)に再懸濁し、そして超音波処理により溶解した。細胞ライセートを、4℃で10,000gでの10分間の遠心分離により細胞破片から分離した。細胞ライセート中のGST−CaMをアガロース−グルタチオン(GSH)ビーズ(Amersham Pharmacia)に室温で30分間吸着させた(ライセート1容量/NETN中アガロース−GSHビーズの50%(容量/容量)スラリー1容量)。ビーズを結合緩衝液(20mMトリス−HCl、pH7.5/100mM NaCl/2mM CaCl/0.5% Tween 20)で洗浄した。
【0168】
GST−CaM融合について上述された手順に同様に、TRPM8フラグメントTRPM8−11若しくはTRPM8−12をGSTのC末端に融合し、そして形質転換した大腸菌(Eschelichia coli)BL21から発現かつ精製した。
【0169】
タンパク質−タンパク質相互作用
約1μgのGST若しくはGST−CaMと結合したアガロース−GSHビーズ(50%(容量/容量))を、最終容量200μlの結合緩衝液中で10μlの35S標識TRPM8フラグメントと室温で30分間インキュベートした。インキュベーションの終了時にビーズを1.0mlの結合緩衝液で3回洗浄し、そして20μlの2×laemmliのサンプル負荷緩衝液に再懸濁した。GST−CaM融合タンパク質、およびおそらくGST−CaM融合タンパク質と相互作用する35S標識TRPM8フラグメントを包含するビーズに結合したタンパク質(1種若しくは複数)を、SDS/PAGE、次いでオートラジオグラフィーにより分離した。
【0170】
図1に示されるとおり、ラットTRPM8のN末端の432アミノ酸残基よりなるTRPM8−1フラグメントはCaMに結合することが見出された(TRPM8−2およびTRPM8−4フラグメントはしない)。N末端の432アミノ酸残基を含むより小さいTRPM8フラグメントを、CaMに結合するそれらの能力についてさらに試験した。図2に示されるとおり、TRPM8−6、TRPM8−7、TRPM8−11およびTRPM8−12はCaMを結合することが見出された。該結果に基づき、CaM相互作用ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を有するTRPM8−12中に存することがありそうである。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】GST−CaM融合タンパク質に結合したTRPM8フラグメントを検出するプルダウンアッセイの結果を具体的に説明する。(A)TRPM8フラグメントおよびCaMへのそれらの結合の直線的図解。すなわち(+)結合が検出された;(−)結合が検出されなかった。(B)35S−メチオニン標識TRPM8フラグメントを示すオートラジオグラフの写真。GST:TRPM8フラグメントはGSTと相互作用することが見出されなかった;CaM:いくらかのTRPM8フラグメントがGST−CaM融合タンパク質と相互作用することが見出された;および入力:該アッセイで試験したTRPM8フラグメント。
【図2】CaMに結合したより小さいN末端TRPM8フラグメントを検出するプルダウンアッセイの結果を具体的に説明する。(A)TRPM8フラグメントおよびCaMへのそれらの結合の直線的図解。すなわち(+)結合が検出された;(−)結合が検出されなかった。(B)GST−CaMを伴うアッセイで試験した放射標識TRPM8フラグメントを示すオートラジオグラフの写真。(C)放射標識TRPM8フラグメントを示すオートラジオグラフの写真。GST:TRPM8フラグメントはGSTと相互作用することが見出されなかった;CaM:いくらかのTRPM8フラグメントがGST−CaM融合タンパク質と相互作用することが見出された。(D)GST−TRPM8フラグメントすなわちGST−TRPM8−11およびGST−TRPM8−12の融合を伴う相互結合アッセイでの放射標識CaMが、35S−メチオニン標識CaMと相互作用することもまた見出されたことを示す、オートラジオグラフの写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2)カルモジュリンまたはカルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体と相互作用する1)TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体を含んでなる、単離されたポリペプチド複合体。
【請求項2】
TRPM8が単離された膜と会合している、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項3】
前記TRPM8またはTRPM8の前記活性フラグメント若しくは誘導体が配列番号9のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項4】
前記TRPM8が、配列番号2、配列番号3若しくは配列番号4のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項5】
TRPM8の前記活性フラグメント若しくは誘導体が、配列番号5、配列番号6若しくは配列番号7、配列番号8または配列番号9のアミノ酸配列より本質的になる、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項6】
前記カルモジュリンが配列番号1のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項7】
a.2)のタンパク質と相互作用する1)のタンパク質を含んでなるポリペプチド複合体の形成を可能にする条件下で、2)カルモジュリンまたはカルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体と1)TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体を接触させる段階であって、1)および2)のタンパク質の少なくとも一方が単離された形態にあるか若しくは組換え発現されておる、段階;ならびに
b.該ポリペプチド複合体を単離する段階
を含んでなる、ポリペプチド複合体の製造方法。
【請求項8】
TRPM8が単離された細胞膜と会合している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体が細胞中に存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
細胞が培養ニューロンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞が、TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体を組換え発現する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
細胞が、配列番号9のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する発現ベクターを含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体が単離された形態にある、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体が配列番号9のアミノ酸配列を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
カルモジュリンが単離された形態にある、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
カルモジュリンが細胞中に存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
細胞がカルモジュリンを組換え発現する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細胞が、配列番号1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を有する発現ベクターを含んでなる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
a.2)のタンパク質と相互作用する1)のタンパク質を含んでなるポリペプチド複合体の形成を可能にする条件下で、2)カルモジュリンまたはカルモジュリンの活性フラグメント若しくは誘導体と1)TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体を接触させる段階;
b.試験化合物を1)および2)のタンパク質の少なくとも一方と接触させる段階;
c.形成されるポリペプチド複合体内の1)のタンパク質と2)のタンパク質の間の相互作用を測定する段階;
d.段階a)およびc)を反復する段階;
e.段階b)からの検出されたタンパク質−タンパク質相互作用を段階d)からのものと比較する段階
を含んでなる、TRPM8−カルモジュリンポリペプチド複合体の調節物質の同定方法。
【請求項20】
段階a)が段階b)の前に実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
段階a)が段階b)の後に実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
段階a)およびb)が同時に実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
TRPM8が単離された膜と会合している、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体が細胞中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
TRPM8またはTRPM8の活性フラグメント若しくは誘導体が単離された形態にある、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記TRPM8またはTRPM8の前記活性フラグメント若しくは誘導体が配列番号9のアミノ酸配列を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
TRPM8の前記活性フラグメント若しくは誘導体が、配列番号5、配列番号6若しくは配列番号7、配列番号8または配列番号9のアミノ酸配列より本質的になる、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記TRPM8が、配列番号2、配列番号3若しくは配列番号4のアミノ酸配列を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記カルモジュリンが配列番号1のアミノ酸配列を含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記カルモジュリンが細胞中に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記カルモジュリンが単離された形態にある、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
形成されるポリペプチド複合体内の1)のタンパク質と2)のタンパク質の間の相互作用が、酵母2ハイブリッド系若しくはその類似の系を使用して測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
形成されるポリペプチド複合体内の1)のタンパク質と2)のタンパク質の間の相互作用が、蛍光偏光アッセイを使用して測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
形成されるポリペプチド複合体内の1)のタンパク質と2)のタンパク質の間の相互作用が、蛍光共鳴エネルギー転移アッセイを使用して測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
TRPM8−カルモジュリンポリペプチド複合体の調節物質を同定する段階を含んでなる、疼痛を処置するのに有用な化合物の同定方法。
【請求項36】
a.同定された調節物質をTRPM8と接触させる段階;および
b.同定された調節物質がTRPM8のチャンネル伝導性を変える程度を決定する段階
をさらに含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
a.同定された調節物質を動物に投与する段階;および
b.該調節物質が該動物の侵害受容応答を変える程度を決定する段階
をさらに含んでなる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
TRPM8−カルモジュリンポリペプチド複合体の調節物質である化合物の有効量を被験体に投与する段階を含んでなる、被験体における疼痛の低減方法。
【請求項39】
配列番号9のアミノ酸配列を含んでなるTRPM8の単離された活性フラグメントであるが、但し該活性フラグメントが完全長CMR1でない、上記活性フラグメント。
【請求項40】
配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9のアミノ酸配列より本質的になる、請求項39に記載のTRPM8の単離された活性フラグメント。
【請求項41】
配列番号3のアミノ酸配列を含んでなるTRPM8の活性フラグメントをコードする単離された核酸分子であるが、但し該活性フラグメントが完全長CMR1でない、上記核酸分子。
【請求項42】
配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8若しくは配列番号9のアミノ酸配列より本質的になるTRPM8の活性フラグメントをコードする、請求項41に記載の単離された核酸分子。
【請求項43】
配列番号3のアミノ酸配列を含んでなるTRPM8の活性フラグメントをコードするヌクレオチド配列を含んでなる発現ベクターであるが、但し、該活性フラグメントが完全長CMR1でない、上記発現ベクター。
【請求項44】
請求項44に記載の発現ベクターを含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項45】
TRPM8の活性フラグメントが組換え発現される条件下で、請求項45の組換え細胞を培養する段階を含んでなる、TRPM8の活性フラグメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−514529(P2009−514529A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538954(P2008−538954)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/042361
【国際公開番号】WO2007/053570
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】