TWEAK関連状態を治療するための方法
【課題】本発明は、心臓、肝臓、腎臓、肺、脂肪、骨格、筋肉、神経、硬骨、および軟骨の状態等、TWEAK関連状態を治療するための方法および医薬品を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、本発明の、TWEAK関連状態を治療するためのTWEAKアゴニストまたはアンタゴニスト、およびそれらを同定する方法を提供することによって解決された。さらに、本発明は、TWEAKポリペプチド、もしくはそのフラグメント、類似体、または突然変異体タンパク質をコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物を提供する。さらに、本発明は、TWEAK発現に起因する疾患を診断する方法を提供する。さらに、本発明は、AKポリペプチド、アゴニスト、またはアンタゴニストを用いて前駆細胞の細胞分化に作用する方法を提供する。
【解決手段】上記課題は、本発明の、TWEAK関連状態を治療するためのTWEAKアゴニストまたはアンタゴニスト、およびそれらを同定する方法を提供することによって解決された。さらに、本発明は、TWEAKポリペプチド、もしくはそのフラグメント、類似体、または突然変異体タンパク質をコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物を提供する。さらに、本発明は、TWEAK発現に起因する疾患を診断する方法を提供する。さらに、本発明は、AKポリペプチド、アゴニスト、またはアンタゴニストを用いて前駆細胞の細胞分化に作用する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓、肝臓、腎臓、肺、脂肪質、骨格筋、神経、硬骨、軟骨、皮膚、胃腸、脾臓、生殖器官、および結合組織の疾患等、TWEAK関連状態を治療するための方法および医薬品に関する。また、本発明は、TWEAK関連状態を治療するためのTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法を提供する。また、本発明は、TWEAKポリペプチド、もしくはそのフラグメント、類似体、または突然変異体タンパク質をコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物と、そのような動物を用いてTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法とに関する。さらに、本発明は、TWEAK発現に起因する疾患を診断する方法に関する。さらに、本発明は、TWEAKポリペプチド、アゴニスト、またはアンタゴニストを用いて、前駆細胞の細胞増殖または分化に作用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造的類似性からTNF−αと呼ばれるリガンドの腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのメンバーは、炎症反応、細胞性免疫、およびアポトーシス等の多様なプロセスでの重要な構成要素である。TNFリガンドは、直接的な細胞間接触を介したII型膜結合タンパク質として、もしくは自己分泌、傍分泌、または内分泌機能を持つ分泌タンパク質として、局所的に作用可能である。TNFファミリーのメンバーは、C−末端細胞外ドメインを介してTNF受容体(TNF−R)ファミリーのメンバーと結合する。TNFファミリーのメンバーとして様々なものがあり、TNF、リンホトキシン(LT)、Fas、CD27、CD30、CD40、4−1BB、OX−40、TRAMP、CAR−1、TRAIL、GITR、HVEM、オステオプロテゲリン(破骨細胞形成抑制タンパク質)、NGF、TRAIN、Kay(FAFF)、APRIL 、およびTWEAK(TNF同系性および低細胞死誘導能)が挙げられる。
【0003】
このようなサイトカイン受容体ファミリーの決定的特徴は、異なる2つのTNF受容体を分子クローニングすることで最初に明らかにされた高システイン細胞外ドメインにある。このファミリーの遺伝子群は、細胞機能の活性化に関与する細胞質領域、単一膜貫通領域、および細胞外リガンド結合ドメインを有するI型膜貫通タンパク質の特徴を持つ糖タンパク質をコードする。高システイン・リガンド結合領域は、特定のファミリー構成要素に依存して複数回反復されている緊密(tightly knit)ジスフィルド結合コア・ドメインを示す。多くの受容体が4個のドメインを持つが、わずか1個だけであっても、あるいは6個以上あってもよい。
【0004】
TFFファミリーのメンバーは、細胞の生存および分化、ならびに炎症等の急性宿主防御系で免疫系の調節に重要な役割を担う。治療上の利益を得るためにTNFファミリーのメンバーを操作する努力を当該技術分野で続けることで、疾患を調節する独特の手段が提供される可能性がある。例えば、このファミリーのリガンドのいくつか(例えば、LT、TNF、Fasリガンド、およびTRAIL)は、多くの形質転換細胞でアポトーシスによる細胞死を直接誘導することができる。Fas、ならびに場合によってはTNFおよびCD30受容体の活性によって、免疫調節機能を示しうる非形質転換リンホサイトでの細胞死を誘導することができる。
【0005】
プログラム細胞死を誘導する能力が重要であり、TNFファミリーのいくつかのメンバーでその特徴が十分研究されている。Fas媒介アポトーシスは、末梢あるいは胸腺での自己反応性リンパ球の調節で重要な役割を果たすように見える。または、TNFおよびCD30系は、T細胞および大型細胞未分化リンパ種細胞株の生き残りに関係している。TNF、Fas、またはLT−β受容体シグナル伝達に応じたこの細胞株での死は、アポトーシスの特徴を有する。
【0006】
TNFファミリーのリガンドを、該リガンドの細胞死誘導能に基づいて3つのグループに分類することができる。最初に、TNF、Fasリガンド、およびTRAILは多くの細胞株で細胞死を効率的に誘導することができ、それらの受容体は良好な標準死(canonical death)ドメインを有する可能性が高い。おそらく、DR−3(TRAMP/WSL−1)に対するリガンドもこのカテゴリーに分類される。次に、少しの細胞に限られているより弱い死シグナルをトリガーするリガンド(例えば、TWEAK、CD30リガンド、およびLTalb2)がある。これらの系での研究によれば、別個のより弱い死シグナル伝達機構が存在することが示唆されている。最後に、効率的に死シグナルを伝達できないメンバーがある。おそらく全てのグループが、細胞分化の結果として生ずるいくつかの細胞種、例えばCD40に対して抗細胞増殖効果を及ぼす可能性がある。
【0007】
一般に、死は、TNF受容体の細胞質側に存在する死ドメインの集合に続いて引き起こされる。死ドメインは、カスパーゼ・カスケードの活性化に至るさまざまなシグナル伝達構成要素のアセンブリを組織化する。いくつかの受容体(例えば、LTb受容体およびCD30)は、標準的死ドメインが欠如しているけれども、より弱く細胞死を誘導することができる。逆に言えば、CD40等の他の経路を経由するシグナル伝達は、細胞生存を維持する上で必要である。TNFファミリー・メンバーの機能の同定および特徴付けがさらに求められており、それによってTNFファミリー関連疾患に対する新規治療の開発が促進される。
【0008】
TWEAKは、エリスロポイエチン・プローブにハイブリダイズしたRNAのスクリーニングで単離された。Chicheportiche et al.,J.Biol.Chem.272:32401−32410(1997)。マウスおよびヒトのペプチドは、著しく高度な保存性を持っており、例えば受容体結合ドメインではアミノ酸の同一性が93%である。TWEAK(細胞から効率的に分泌されたことが示される)は、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵、脾臓、リンパ節、胸腺、虫垂、および末梢血リンパ球等の多くの組織で多量に発現される。
【0009】
1つの既知のTWEAKレセプターはFn14、すなわち細胞外マトリックスへの細胞を減少させ、かつ血清刺激増殖および遊走を減らす、成長因子によって調節された前初期遺伝子である(Meighan−Mantha et al.,J.Biol.Chem.274:33166−33176(1999))。 Fn14は、FGF、牛血清、およびホルボール・エステル処理によって誘導され、心臓、腎臓、肺、皮膚、骨格筋、卵巣、および脾臓組織で、さらに肝細胞癌モジュール及び他のガン細胞株で、相対的に高発現される。
【0010】
TWEAKは、多くの生物学的プロセスにかかわってきた。例えば、IFN−γおよびTWEAKで処理したHT29細胞は、アポトーシスを引き起こすことが示され、アポトーシスを誘導するTWEAKの能力が弱まり、感受性を示す細胞種はわずかである。Chicheportiche et al.,J.Biol.Chem.272:32401−32410(1997)。対照的に、TWEAKは、VEGF非依存型経路での内皮細胞の増殖および脈管形成を誘導することも示されている。Lynch et al.,J.Biol.Chem.274:455−8459(1999)。神経膠星状細胞は、TWEAKによる特異的結合および刺激を受ける。TWEAKは、炎症を起こした脳に浸透して神経膠星状細胞行動に影響を与える。TWEAKにさらされた神経膠星状細胞は、高濃度のIL−6およびIL−8を分泌し、さらにICAM−1発現を上方調節する。Saas et al.,GLIA 32:102−107(2000)。
【0011】
TWEAKもまた免疫系調節にかかわる。IFN−γによる刺激を受けると、単球はTWEAK発現を急速に起こし、そのヒト扁平上皮癌細胞に対する細胞毒性効果が抗TWEAK抗体により部分的に阻害された。抗TWEAK抗体と抗TRAIL抗体との組み合わせによって、細胞毒性がほぼ完全に阻害された。Nakayama et al.,J.Exp.Med.192:1373−1379(2000)。対照的に、免疫炎症反応の誘導物質であるリポ多糖体(LPS)で処理されたマウスでは、TWEAKmRNAの消失が急速に起こった。さらに、マウスの自己免疫溶血性貧血および全身性エリテマートーデス・モデルでもTWEAKmRNAが減少した。これらのデータによれば、TWEAK発現の下方調節が急性および慢性の炎症にとって重要なイベントであることが示唆される。Chicheportiche et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.279:162−165(2000)。
【0012】
現在、当該技術分野では、TWEAKの発現および機能(炎症性および非炎症性の両方の状態でのTWEAKの役割を含む)にどのような状態または疾患が関係しているのかについて完全には理解されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要約)
本発明は、複数の組織および器官系の疾患を含む様々な病的状態の重症度および進行に関与しているTWEAKの役割に関する。そのような病的状態として、急性心臓外傷、慢性心不全、非炎症性拡張型心筋症、うっ血心不全、肝上皮細胞過形成、肝細胞死、肝線維症、肝細胞空胞化、他の肝臓損傷、胆管系状態が挙げられる。また、胆管系状態として、胆管過形成、多病巣性炎症等の炎症性腎状態、尿細管腎症等の非炎症性腎状態、尿細管過形成、糸球体嚢胞、糸球体腎炎、アルポート症候群、腎臓尿細管空胞化、腎臓ヒアリン円柱、腎線維症、および炎症性肺疾患が挙げられる。本発明は、TWEAK分子と、ある種の心臓、肝臓、腎臓、および肺疾患との因果関係を確立する。本明細書で開示された発明は、肝臓組織、尿細管、皮膚細胞、脂肪細胞、骨格筋、軟骨、および硬骨、さらに骨髄および線維芽細胞等にある間質細胞等の結合組織細胞型の前駆細胞の挙動との関係も確立する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、TWEAK関連状態、すなわち、疾患、FN14等のTWEAKの受容体が発現される組織の障害または病理学的状態のセッティングを治療するための方法に関する。これらの状態として、線維形成、心筋症、ならびに腎臓、肺、肝臓、皮膚、骨格筋、脂質代謝(例えば肥満)、胃腸管、膵、生殖器、神経組織(神経変性を含む)、軟骨、硬骨、および結合組織の疾患が挙げられる。好ましい実施形態では、TWEAK関連状態は自然状態では非炎症性である。別の好ましい実施形態では、本発明は、TWEAKポリペプチドとその細胞内受容体との相互作用による干渉によって、TWEAK関連状態を治療する方法に関する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストと、TWEAK関連状態の治療に用いるそれらの医薬組成物とに関する。そのようなTWEAKアゴニストまたはアンタゴニスト(すなわち、阻害剤)として、抗TWEAK抗体またはその誘導体、抗TWEAK受容体抗体またはその誘導体、TWEAKポリペプチド・フラグメント、TWEAKポリペプチド類似体、TWEAK突然変異タンパク質、TWEAK模倣体(mimetics)、TWEAK融合タンパク質、TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメント、TWEAK受容体ポリペプチド類似体、TWEAK受容体突然変異体タンパク質、TWEAK受容体模倣体、TWEAK受容体融合タンパク質、有機化合物、および無機化合物が考えられる。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、組織再生または置換を必要とする宿主の治療に有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストと医薬組成物とに関する。また、生体内(in vivo)または生体外(in vitro)で前駆細胞集団の挙動を調整するためのTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストの使用に関する。前駆細胞は、前駆細胞は、肝細胞型、尿細管、心筋細胞、肺細胞型、皮膚細胞型、骨格の筋細胞型、脂肪細胞、胃腸細胞型、膵臓細胞型、神経の組織細胞型、軟骨および硬骨細胞型、ならびに線維芽細胞および骨髄内の間質細胞を含む結合組織細胞型の前駆体であってもよい。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストと、該TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを含む医薬組成物を生体内(in vivo)投与して、限定されるものではないが、毒素、ウイルス、化学療法または放射線誘発性障害、および遺伝性疾患または退行性疾患等を含む疾患または組織損傷のセッティングでの組織再生および弛緩を促進する。別の実施形態では、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストおよびそれら医薬組成物は、幹細胞または前駆細胞による細胞療法と組み合わせて用いて、組織および器官系の再生をおこなうことが可能である。別の実施形態では、幹細胞または前駆細胞集団を、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストおよびその医薬組成物によって、生体外(in vitro)で増やすことが可能である。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストの使用を介して増殖した前駆細胞集団を、組織再生または置換の必要性に応じて宿主への移植に使用することが可能である。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、TWEAK関連状態を治療するための治療薬として有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法に関する。別の実施形態では、本発明はTWEAKポリペプチドをコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物に関する。この発明のさらなる実施形態は、疾患の分子マーカーとしてTWEAKを使用することを含む。
【0018】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
被験体中のTWEAK関連状態を治療するための方法であって、
前記被験体にTWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストを投与するステップを含み、
前記TWEAK関連状態は、
(a)線維症と、
(b)心臓疾患と、
(c)肝疾患と、
(d)肺疾患と、
(e)腎疾患と、
(f)皮膚疾患と、
(g)骨格筋疾患と、
(h)脂肪組織疾患と、
(i)消化管疾患と、
(j)膵臓疾患と、
(k)生殖器疾患と、
(l)神経疾患と、
(m)軟骨疾患と、
(n)硬骨疾患と、
(o)結合組織疾患と、
(p)細胞死と、
(q)TWEAK受容体を発現する組織の病的状態と、
からなる群より選択されることを特徴とする方法。
(項目2)
前記TWEAK関連状態は、非炎症性状態であることを特徴とする項目1記載の方法。
(項目3)
前記TWEAK関連状態は、非炎症性心筋症であることを特徴とする項目2記載の方法。
(項目4)
前記TWEAK受容体を発現する組織の病的状態は、
(a)線維症と、
(b)心筋症と、
(c)腎臓状態と、
(d)肺状態と、
(e)肝臓状態と、
(f)皮膚状態と、
(g)骨格筋状態と、
(h)脂肪組織状態と、
(i)消化管状態と、
(j)膵臓状態と、
(k)生殖器状態と、
(l)神経組織状態と、
(m)軟骨状態と、
(n)硬骨状態と、
(o)結合組織状態と、
からなる群より選択されることを特徴とする項目1または2記載の方法。
(項目5)
前記TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストは、
(a)抗TWEAK抗体と、
(b)抗TWEAK受容体抗体と、
(c)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(d)TWEAKポリペプチド類似体と、
(e)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(f)TWEAK模倣体と、
(g)TWEAK融合タンパク質と、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)有機化合物と、
(n)無機化合物と、
からなる群より選択されることを特徴とする項目1または2記載の方法。
(項目6)
前記TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストは、注射、経粘膜、経口、吸入、眼、直腸、ステント・インプランテーション、局所的、非経口、長時間作用インプランテーション、徐放性、遺伝子療法、および耳経路からなる群より選択される経路を介して前記被験体に投与されることを特徴とする項目1または2記載の方法。
(項目7)
前記TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストは、錠剤、丸薬、リポソーム、顆粒剤、球体、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤、ステント皮膜、および徐放性調合物からなる群より選択される送達調合物中にあることを特徴とする項目1または2記載の方法。
(項目8)
被験体中のTWEAK関連状態を治療するための方法であって、
細胞受容体、第2のTWEAKポリペプチド、およびTWEAK相互作用相手からなる群より選択される分子と第1のTWEAKポリペプチドとの相互作用に干渉することができるTWEAKアンタゴニストを前記被験体に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
(項目9)
TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストとして作用する化合物を同定するための方法であって、
(a)TWEAKポリペプチドあるいはそのフラグメントまたは突然変異体タンパク質をコードする外来DNAを発現する試験トランスジェニック動物を前記化合物に暴露するステップと、
(b)前記試験トランスジェニック動物由来の線維化、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質、消化管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、硬骨、または結合組織を、前記外来DNAを発現するが前記化合物には暴露されていない基準トランスジェニック動物由来の対応する器官または組織と比較するステップと、
(c)前記化合物が前記試験トランスジェニック動物の前記線維化、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質、消化管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、硬骨、または結合組織に影響を及ぼすかどうかを決定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
(項目10)
前記化合物は、
(a)TWEAKポリペプチドと、
(b)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(c)TWEAKポリペプチド類似体と、
(d)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(e)TWEAK模倣体と、
(f)TWEAK融合タンパク質と、
(g)TWEAK受容体ポリペプチドと、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)有機化合物と、
(n)無機化合物と、
からなる群より選択されることを特徴とする項目9記載の方法。
(項目11)
前記化合物は、
(a)TWEAKポリペプチドと、
(b)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(c)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(d)TWEAK模倣体と、
(e)TWEAK融合タンパク質と、
(f)TWEAK受容体ポリペプチドと、
(g)TWEAK受容体フラグメントと、
(h)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(i)TWEAK受容体模倣体と、
(j)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(k)TWEAKポリペプチド、そのフラグメント、突然変異体タンパク質、または融合タンパク質を発現する細胞と、
(l)TWEAK受容体ポリペプチド、そのフラグメント、突然変異体タンパク質、または融合タンパク質を発現する細胞と、
からなる群より選択される抗原に指向される抗体であることを特徴とする項目9記載の方法。
(項目12)
前記試験トランスジェニック動物および前記基準トランスジェニック動物はそれぞれ、
(a)マウス、
(b)ラット、
(c)ハムスター、
(d)ウサギ、
(e)イヌ、
(f)ネコ、
(g)ウシ、
(h)ブタ、
(i)ヤギ、
(j)ウマ、
(k)ヒツジ、
(l)テンジクネズミ、
(m)鳥、
(n)霊長類動物、
(o)魚、
(p)両生類動物、
(q)昆虫、および
(r)無脊椎動物
からなる群より選択されることを特徴とする項目9記載の方法。
(項目13)
項目9記載の方法によって同定される化合物であって、
前記化合物は、
(a)TWEAKポリペプチドと、
(b)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(c)TWEAKポリペプチド類似体と、
(d)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(e)TWEAK模倣体と、
(f)TWEAK融合タンパク質と、
(g)TWEAK受容体ポリペプチドと、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)TWEAKポリペプチド、あるいはそのフラグメント、類似体、突然変異体タンパク質、模倣体、または融合タンパク質に指向される抗体と、
(n)TWEAK受容体ポリペプチド、あるいはそのフラグメント、類似体、突然変異体タンパク質、模倣体、または融合タンパク質に指向される抗体と、
(o)有機化合物と、
(p)無機化合物と、
からなる群より選択されることを特徴とする化合物。
(項目14)
前記抗体は、ポリクローナル抗体である項目13記載の化合物。
(項目15)
前記抗体は、モノクローナル抗体である項目13記載の化合物。
(項目16)
前記モノクローナル抗体は、ヒト化抗体である項目15記載の化合物。
(項目17)
前記抗体は、異種抗体である項目14または15記載の化合物。
(項目18)
TWEAKポリペプチドをコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物であって、
前記発現は、
(a)線維症と、
(b)心筋症と、
(c)腎疾患と、
(d)肝疾患と、
(e)肺疾患と、
(f)皮膚疾患と、
(g)骨格筋疾患と、
(h)脂肪組織疾患と、
(i)消化管疾患と、
(j)膵臓疾患と、
(k)生殖器疾患と、
(l)神経疾患と、
(m)軟骨疾患と、
(n)硬骨疾患と、
(o)結合組織疾患と、
(p)細胞死と、
からなる群より選択される状態に起因することを特徴とするトランスジェニック動物。
(項目19)
前記トランスジェニック動物は、
(a)マウス、
(b)ラット、
(c)ハムスター、
(d)ウサギ、
(e)イヌ、
(f)ネコ、
(g)ウシ、
(h)ブタ、
(i)ヤギ、
(j)ウマ、
(k)ヒツジ、
(l)テンジクネズミ、
(m)鳥、
(n)霊長類動物、
(o)魚、
(p)両生類動物、
(q)昆虫、および
(r)無脊椎動物
からなる群より選択されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目20)
前記外来DNAは、構成性プロモーターから発現されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目21)
前記外来DNAは、誘導性プロモーターから発現されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目22)
前記外来DNAは、組織特異的プロモーターから発現されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目23)
前記TWEAKポリペプチドは、
(a)完全長TWEAKポリペプチドと、
(b)可溶性TWEAKポリペプチドと、
(c)突然変異体タンパク質と、
(d)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
からなる群より選択されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目24)
TWEAKポリペプチドをコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物であって、
前記外来DNAは、
(a)心臓、
(b)血管、
(c)肺、
(d)肝臓、
(e)腎臓、
(f)皮膚、
(g)神経、
(h)胎盤、
(i)骨格筋、
(j)膵臓、
(k)脾臓、
(l)リンパ液、
(m)胸腺、
(n)虫垂
(o)末梢血リンパ球、
(p)脂肪組織
(r)胃腸組織、
(s)軟骨、
(t)硬骨、および
(u)結合組織
からなる群より選択される器官または組織で発現されることを特徴とするトランスジェニック動物。
(項目25)
前記外来DNAは、構成性プロモーターから発現されることを特徴とする項目24記載のトランスジェニック動物。
(項目26)
前記外来DNAは、誘導性プロモーターから発現されることを特徴とする項目24記載のトランスジェニック動物。
(項目27)
前記外来DNAは、組織特異的プロモーターから発現されることを特徴とする項目24記載のトランスジェニック動物。
(項目28)
被験体中の拡張型心筋症を同定するための方法であって、
前記被験体中のTWEAKタンパク質発現、TWEAKタンパク質機能、TWEAK mRNA発現での変化、または染色体変化を検出するステップを含むことを特徴とする方法。
(項目29)
前記TWEAKタンパク質発現、TWEAKタンパク質機能、TWEAK mRNA発現での変化、または染色体変化は、
(a)免疫学的分析、
(b)免疫組織化学的分析、
(c)酵素または他のタンパク質機能アッセイ、
(d)ノーザンブロット、
(e)サザンブロット、
(f)一塩基多型分析、および
(g)蛍光in situハイブリダイゼーション分析
からなる群より選択される手段によって検出されることを特徴とする項目28記載の方法。
(項目30)
細胞増殖または分化に影響を及ぼすための方法であって、
TWEAKペプチド、TWEAKアゴニスト、またはTWEAKアンタゴニストに、前駆細胞を暴露することを含むことを特徴とする方法。
(項目31)
前記前駆細胞は、
(a)幹細胞、
(b)分化全能(totipotent)細胞、
(c)多能性(pluripotent)細胞、
(d)多能(multipotent)細胞、
(e)二分化能(bipotent)細胞、
(f)組織特異的細胞、
(g)胚細胞、および
(h)成体細胞、
からなる群より選択されることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目32)
前記前駆細胞は、未分化脂肪細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目33)
前記前駆細胞は、未分化筋原細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目34)
組織置換または再生を促進するための方法であって、
組織置換または再生の必要がある被験体に、
(a)抗TWEAK抗体と、
(b)抗TWEAK受容体抗体と、
(c)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(d)TWEAKポリペプチド類似体と、
(e)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(f)TWEAK模倣体と、
(g)TWEAK融合タンパク質と、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)有機TWEAKアゴニストと、
(n)有機TWEAKアンタゴニストと、
(o)無機TWEAKアゴニストと、
(p)無機TWEAKアンタゴニストと、
からなる群より選択される化合物を投与することを含むことを特徴とする方法。
(項目35)
前記方法は、前駆細胞または組織移植療法と組み合わせて用いられることを特徴とする請求項1、30、および34のいずれか1つに記載の方法。
(項目36)
前記前駆細胞または組織移植療法は、細胞の集団を増殖させることを特徴とする項目35記載の方法。
(項目37)
前記前駆細胞は、未分化軟骨細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目38)
前記前駆細胞は、未分化硬骨細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目39)
前記前駆細胞は、未分化結合組織細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目40)
被験体中のTWEAK関連状態の治療用の医薬組成物の製造のためのTWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストの使用であって、
前記TWEAK関連状態は、
(a)線維症と、
(b)心臓疾患と、
(c)肝疾患と、
(d)肺疾患と、
(e)腎疾患と、
(f)皮膚疾患と、
(g)骨格筋疾患と、
(h)脂肪組織疾患と、
(i)消化管疾患と、
(j)膵臓疾患と、
(k)生殖器疾患と、
(l)神経疾患と、
(m)軟骨疾患と、
(n)硬骨疾患と、
(o)結合組織疾患と、
(p)細胞死と、
(q)TWEAK受容体を発現する組織の病的状態と、
からなる群より選択されることを特徴とする使用。
(項目41)
前記TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストは、
(a)抗TWEAK抗体と、
(b)抗TWEAK受容体抗体と、
(c)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(d)TWEAKポリペプチド類似体と、
(e)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(f)TWEAK模倣体と、
(g)TWEAK融合タンパク質と、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)有機化合物と、
(n)無機化合物と、
からなる群より選択されることを特徴とする項目40記載の使用。
(項目42)
被験体中のTWEAK関連状態の治療用の医薬組成物の製造のためのTWEAKアンタゴニストの使用であって、
前記TWEAKアンタゴニストは、細胞受容体、第2のTWEAKポリペプチド、およびTWEAK相互作用相手からなる群より選択される分子と第1のTWEAKポリペプチドとの相互作用に干渉することができることを特徴とする使用。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】拡張型心筋症でのTWEAKの役割を示す。A. A FL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスは、右心房右心房および心室での血栓症とともに重度の拡張を示す。B. 比較用として正常な心臓を示す。
【図2】心臓内TWEAK過剰発現によって心臓リモデリングが誘発される。心臓の切片を、アデノウイルスGFP対照コンストラクトと比較して、C57BL/6マウス成体にsTWEAK DNAを含むアデノウイルス・ベクターを感染させた後に、20日目にヘマトキシリン/エオシン染色し、倍率10倍で観察している。
【図3】TWEAKは、2週目および7ヶ月目でFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスを非トランスジェニック(Tg)同腹仔と比較することで明らかなように、胆管および卵形細胞過形成を誘発する。
【図4】TWEAKは、非トランスジェニック(NTg)同腹仔と比較して、FL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスで胆管上皮および卵形細胞マーカーに対して特異的であるA6mAbによる染色が増加したことにより明らかなように、胆管および卵形細胞過形成を誘発する。
【図5】TWEAKは、FL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスの門脈域に巨大な卵形細胞が存在することから明らかなように、卵形細胞過形成を誘導する。
【図6】TWEAKは、非トランスジェニック(Ntg)同腹仔と比較して、FL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスに肝細胞空胞化を生ずる。
【図7】マウスTWEAK−DNAを含むアデノウイルス・ベクターが感染したマウスでの血清TWEAK濃度。
【図8】肝臓でのsTWEAK DNA過剰発現は、肝細胞死および導管過形成を誘発する。肝臓の切片を、アデノウイルスGFP対照コンストラクトと比較して、C57BL/6マウス成体にアデノウイルス・ベクターを感染させた後の3日目および11日目にヘマトキシリン/エオシン染色により倍率20倍で観察する。
【図9】マウスでCCl4により肝障害を起こした後に、TWEAK受容体Fn14が誘発される。正常マウス肝のFn14mRNAとCCl4誘発肝障害のFn14mRNAとをin situハイブリダイゼーションすることで、正常成体肝での検出可能な発現と障害後のFn14発現の顕著な誘発とがほとんど見られない。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色した切片は、対応する正常健康肝およびCCl14障害肝組織を示す。
【図10】Fn14発現は、in situハイブリダイゼーションを用いて、直接的にFn14に対する抗センスmRNAプローブによる染色の増加によって明らかなように、総胆管結紮のネズミモデルの胆管上皮細胞で上方調節される。ヘモトキシリンおよびエオシン(H&E)染色した切片は、明視野鏡検で対応の切片を示す。
【図11】週齢2週、週齢8週、および月齢7ヶ月の非トランスジェニック(Ntg)マウス腎臓と比較したFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウス腎臓の切片である。結果は、週齢8週目および月齢7ヶ月目のTWEAK−Tg腎臓で尿細管好塩基球増加と、月齢7ヶ月目の隣接好塩基性尿細管による糸球体(すなわち糸球体嚢胞)の尿路空間の拡大とを示す。
【図12】H&E染色したFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウス腎臓の切片。A.近隣の近位尿細管上皮の好塩基球増加を伴う糸球腎症が示されている。B.断片化糸球体間質富核、腎被膜栄養過多(hypertrophy of capsular epithelia)、および腎皮膜肥厚。
【図13】H&E(上)および黄色細胞核抗原(PCNA)(下)で2通りに染色したFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウス腎臓の一連の切片である。好塩基性尿細管は、PCNA、すなわち増殖尿細管と一致する。
【図14】H&E、T. Purpureas(近位尿細管のマーカー)由来のレクチン、および A.Hypogaea(遠位尿細管のマーカー)由来のレクチン。結果は、好塩基性尿細管がいずれの上皮マーカーも表現しないことを示している。
【図15】腎臓でのTWEAK過剰発現は、尿細管過形成および糸球体腎症を誘発する。ネズミsTWEAK DNAを含むアデノウイルス・ベクターを持つC57BL/6マウス成体を感染させて11日目にヘマトキシリン/エオシン染色により、腎臓の切片をアデノウイルスGFP対照コンストラクト倍率20倍および40倍で観察し、アデノウイルス−GFP対照コンストラクトと比較する。
【図16】TWEAK mRNAは、野生型マウス成体の腎全体に広く発現している。腎臓の切片をヘマトキシリン染色して倍率5倍で観察、もしくはセンスまたは抗センスTWEAKプローブとin situハイブリダイゼーションをおこなった後に暗視野顕微鏡下で観察する。
【図17】Fn14mRNAは、野生型マウス成体腎臓の外側髄質近位尿細管で発現される。腎臓の切片を、ヘマトキシリン染色、もしくはセンスまたは抗センスFn14プローブによるin situハイブリダイゼーション後に暗視野顕微鏡下で倍率5倍で観察する。
【図18】腎線維症でTWEAKが果たす役割は、アルポート症腎臓でのFn14mRNAの上方調節によって示唆される。週齢4、5、6、および7週目での野生型マウスを基準としたFn14mRNAレベルの倍増が、アルポート症疾患に至る突然変異を持つ2匹の個々のマウスで示される。mRNAレベルは、Fn14遺伝子の一部分に対応するヌクレオチド配列を含む遺伝子チップに対するハイブリダイゼーションによって決定した。4週および7週目の時点での、2匹のマウスの各々に対する反復試験結果を示す(マウス1の反復試験およびマウス2の反復試験をそれぞれの棒で示した)。7週目の時点で、Fn14mRNAが、疾患が阻害される2つのセッティング、すなわちsTGFβR−Fc処理およびVLA−1ノックアウト・マウス(3R−Fc処理およびVLA−1ノックアウト・マウス(sTGFβR−Fc処理した2匹の各々のマウス「(sTGFbR処理」によって図18に示す)または2匹の各々のアルポート/VLA−1KOマウス(「アルポート/VLA−1KO」))で、減少したようにみえる。
【図19】著しく腎線維形成が減少した腎線維症のネズミモデルである片側性尿管閉塞症(UUO)でのTWEAKアンタゴニスト処理。トリクローム・マソン染色した腎臓パラフィン切片上の青色染色領域(線維症領域)の変性計量(metamorph quantitation)によって、コラーゲン含有量が、AB.G11(抗TWEAKモノクローナル抗体)処理腎試料で、sTGF−βR−Ig陽性対照試料で観察された含有量と同程度まで減少したことが示される。それとは対照的に、アイソタイプ−対照ハムスター抗体(HA4/8)処理腎臓は、媒体(PBS)処理腎臓と同様に、腎線維形成の減少がみられなかった。
【図20】TWEAKトランス遺伝子は、肺において肉芽腫性およびリンパ組織細胞性(lymphohistocytic)炎症を引き起こす。A.H&E染色したFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウス由来の肺切片。B.H&E染色したsTWEAKTg由来の肺切片。
【図21】TWEAmRNAは、野生型マウス成体肺の細気管支および肺胞に並んだ細胞で発現される。肺切片を、ヘマトキシリン染色により、もしくはセンスまたは抗センスTWEAKプローブによるin situハイブリダイゼーション後に暗視野顕微鏡下で、倍率10倍で観察する。
【図22】Fn14mRNAは、野生型マウス成体肺の細気管支および肺胞で発現する。肺切片を、ヘマトキシリン染色により、もしくはセンスまたは抗センスFn14プローブによるin situハイブリダイゼーション後に暗視野顕微鏡下で、倍率10倍で観察する。
【図23】生体(in vivo)での3T3−L1細胞脂肪細胞分化に対するTWEAKの阻害効果。標準のプロトコールを用いて、3T3−L1細胞の分化を誘導した。細胞を、未処理、もしくは対照試薬(組み換え型可溶性ヒトCD40L−FLAG 100ng/ml)、あるいは100ng/ml組み換え型可溶性ヒトTWEAKーFLAG、組み換え型可溶性ヒトTWEAK、Fc−ヒトTWEAK)で種々のバージョンのTWEAKで、デキサメサゾンおよびインスリンとともに0日目に処理し、さらに毎日継ぎ足した。一実験群では、ブロッキング抗TWEAKmAb AB.G11もFc−hTWEAKと同時に添加した。細胞をオイル・レッド・オー(O)で7日目に染色した。
【図24】生体内(in vitro)筋形成に対するTWEAKの阻害効果。C2C12筋芽細胞を、DMEMを主成分とする増殖培地でほぼ密集するまで増殖させ、0日目で、2%馬血清を含んだ低血清分化媒体に変えて、分化を引き起こす。細胞に対して、0日目で、Fc−hTWEAK(100ng/ml)による処理をおこなうか、または処理をおこなわなかった。位相差顕微鏡を用いて筋細管形成を調べ、分化の6日目に写真を撮った。別の実験群では、Fn14−Fcまたは中和抗TNF抗体をFc−hTWEAKと同時に添加することで、Fc−hTWEAKの阻害効果がTWEAK特異的であり、TNFを介したものではない。
【図25】TWEAKは、ヒト間葉性幹細胞に結合することができる。ヒト間葉性幹細胞(hMSC)を組み換え型FcTWEAKタンパク質とともにインキュベートした後、PE結合ヤギ抗ヒトFcまたは抗マウスFc第二抗体とともにインキュベートした。hMSC対するFcTWEAKの結合能は、蛍光発色セルソーター(FACS)分析を用いて測定した。バックグラウンド染色は、第二抗体染色(第2のみ)単独によって得た。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本明細書で特に規定されない限り、本発明に関連して用いられる科学および技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有する。さらに、文脈により特に要求されない限り、単数形の用語は、複数を包含し、複数形の用語は単数を包含する。一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ウイルス学、ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションの技術に関連して用いられる命名法は、当技術で周知かつ通常使用されているものである。本発明の方法および技術は、特に指示していない限り、当技術で周知の従来法に従って、かつ本明細書を通して引用および議論されている様々な一般的かつ特定の参考文献に記載されているように概ね実行される。例えばSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、およびHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照し、これらは参照により本明細書に組み込まれる。酵素反応および精製技術は、当技術で通常実施されるように、または本明細書に記載されるように、製造元の仕様書に従って実行される。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに薬用および製薬化学に関連して使用される命名法ならびに研究手順および技術は、当技術で周知かつ通常使用されているものである。化学合成、化学分析、製薬調製、配合、および送達、ならびに患者の治療に対しては、標準的技術を用いる。
【0021】
本明細書に記載される発明がより完全に理解されるために、以下に詳細な説明を述べる。この説明では、以下の用語が使用される。
【0022】
すなわち、「抗体」とは、インタクトな免疫グロブリンを指すか、または特異的結合に対してインタクトな抗体と競合するその抗原結合部分を指す。組み換えDNA技術、あるいはインタクトな抗体の酵素的または化学的切断によって抗原結合部分を生産する。抗原結合部分としては、特に、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、dAb、および相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体(diabody)、ならびにポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも部分を含有するポリペプチドが挙げられる。Fabフラグメントは、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価フラグメントである。F(ab’)2フラグメントは、ヒンジ領域で、ジスルフィド架橋に結合される2つのFabフラグメントを有する二価フラグメントである。Fdフラグメントは、VHおよびCH1ドメインからなる。Fvフラグメントは、抗体の単一腕のVLおよびVHドメインからなる。dAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341:544−546,1989)は、VHドメインからなる。一本鎖抗体(scFv)は、VLおよびVH領域が対になって、それらを単一タンパク質鎖として生成することが可能な合成リンカーを介して一価分子を形成する抗体である(Bird et al.,Science 242:423−426(1988)、およびHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,(1988))。二重特異性抗体は、二価の二重特異的な抗体であり、そのVHおよびVLドメインは、単一ポリペプチド鎖上で発現されるが、同一鎖上の2つのドメイン間ではペアリングすることができないほど短いリンカーを用いることで、そのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対にさせ、2つの抗原結合部位を生成させる(例えばHolliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)、およびPoljak et al.,Structure 2:1121−1123(1994)を参照せよ)。共有結合的にまたは非共有結合的に、1つ以上のCDRを分子に組み込んで、それを免疫付着因子(immunoadhesin)にすることが可能である。免疫付着因子は、より大きなポリペプチド鎖の部分としてCDRを組み込むことが可能であり、CDRを別のポリペプチド鎖と共有結合させることが可能であり、または非共有結合的にCDRを組み込むことが可能である。CDRによって、免疫付着因子が特定の対象抗原に特異的に結合することが可能になる。
【0023】
抗体は、1つ以上の結合部位を持つことが可能である。1つより多い結合部位が存在する場合、該結合部位は、互いに同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、天然に発生する免疫グロブリンが2つの同一結合部位を有し、一本鎖抗体またはFabフラグメントが1つの結合部位を有する一方で、「二重特異的」または「二官能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0024】
「抗体レパートリー(antibody repertoire)」とは、動物またはヒト中の全ての異なる抗体種の合計を指す。抗体レパートリーでの多様性は、特に、免疫グロブリン遺伝子組み換え、免疫グロブリン遺伝子結合多様性、末端デオキシトランスフェラーゼ活性、および体細胞過剰変異(somatic hypermutation)に起因する。
【0025】
「キメラ抗体」とは、その元の形態から変化され、別のタンパク質由来のアミノ酸配列を有するようになった抗体である。キメラ抗体は、元の抗体アミノ酸配列の少なくとも部分を保有し、通常、抗原結合領域(Fab)を含む部分を保有する。キメラ抗体の例としては、限定はされないが、二重特異的抗体、および他の非免疫グロブリン・タンパク質配列との融合体が挙げられる。
【0026】
「シス調節エレメント」とは、一般に、特定の条件下でまたは特定の細胞中で、遺伝子配列の誘導性または構成性発現を調節する配列を指す。発現制御配列が調節する細胞プロセスの例としては、限定はされないが、遺伝子転写、タンパク質翻訳、メッセンジャーRNAスプライシング、免疫グロブリン・アイソタイプ、スイッチング、タンパク質グリコシル化、タンパク質切断、タンパク質分泌、細胞内タンパク質局在化、および細胞外タンパク質ホーミングが挙げられる。
【0027】
「サイトカイン」とは、一般に、免疫系のシグナル伝達分子を指す。サイトカインとしては、限定はされないが、インターロイキン(IL)、形質転換成長因子(TGF)、腫瘍懐死因子(TNF)、リンホトキシン(LT)、インターフェロン、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージCSF、顆粒球CSF、および遊走阻止因子が挙げられる。
【0028】
「胚性幹(ES)細胞」とは、胚盤胞に注入すると、出生前、出生後、または成体動物の多数または全ての組織に寄与することができる多能性(pluripotentまたはmultipotent)細胞を指す。胚盤胞注入に起因する動物は、それらの体細胞および/または生殖細胞が多くの場合胚盤胞ドナーおよび注入ES細胞両方に由来することから、しばしば「キメラ」動物として言及される。ES細胞の1つの重要な特性は、動物の生殖細胞株に寄与して、キメラ動物子孫に継承すべき任意の所望の遺伝的特性を生じる能力である。不死化ES細胞は、内在遺伝子配列の標的破壊を有する動物を生成するための、または外来遺伝子(トランス遺伝子)を有する動物を生成するための強力な道具である。
【0029】
「発現制御配列」とは、特定の条件下でまたは特定の細胞中で、遺伝子配列の構成性または誘導性発現を可能にする配列を指す。発現制御配列が調節する細胞プロセスの例としては、限定はされないが、遺伝子転写、タンパク質翻訳、メッセンジャーRNAスプライシング、免疫グロブリン・アイソタイプ、スイッチング、タンパク質グリコシル化、タンパク質切断、タンパク質分泌、細胞内タンパク質局在化、および細胞外タンパク質ホーミングが挙げられる。
【0030】
「融合タンパク質」とは、2つ以上の異なるタンパク質のアミノ酸配列を有するキメラタンパク質を指す。通常、融合タンパク質は、当技術で周知の生体外(in vitro)組み換え技術に起因する。しかし、融合タンパク質は、生体内(in vivo)交叉または他の組み換え事象に起因してもよい。
【0031】
「ヒト免疫グロブリン分子」とは、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列にコードされる免疫グロブリン・タンパク質を指す。免疫グロブリン遺伝子配列は、任意の細胞、あるいは動物、ヒト、または非ヒト中で発現することが可能である。
【0032】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト種に由来する抗体であり、この際重鎖および軽鎖のフレームワークおよび定常ドメイン中の特定のアミノ酸は、ヒトでの免疫応答を回避または阻害するように突然変異させられている。また、ヒト抗体由来定常ドメインを非ヒト種の可変ドメインに融合することによって、ヒト化抗体を生産することも可能である。ヒト化抗体の作製方法の例は、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号、および第5,877,293号に見出される。
【0033】
「炎症」または「炎症性疾患」とは、障害、異常刺激、または生物学的物質に応答して、血管および近傍組織中で発生する細胞学的および組織学的反応からなる根本的な病理学的プロセスを指す。同様に、「非炎症性状態」または「非炎症性疾患」とは、本明細書で開示されるように、天然では炎症性でない任意の状態または疾患を指す。
【0034】
「単離タンパク質」または「単離ポリペプチド」とは、一般に、その起源または由来の出所によって、(1)ネイティブな状態でそれを伴う天然関連構成要素に関連しないか、(2)同一種由来の他のタンパク質を含まないか、(3)異なる種由来の細胞により発現されるか、または(4)天然では発生しないタンパク質またはポリペプチドを指す。従って、化学的に合成されるか、細胞を含まない生物学系(例えばウサギ網状赤血球ライセート)で合成されるか、またはポリペプチドが天然に生じる細胞とは異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、その天然関連構成要素から「単離」される。タンパク質は、当技術で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって、天然関連構成要素を実質的に含まないようにすることも可能である。
【0035】
「模倣体」または「ペプチド模倣体」とは、製薬産業で鋳型ペプチドと類似の特性を有する薬剤として通常用いられる非ペプチド類似体である。Fauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986);Veber and Freidinger,TINS p.392(1985);およびEvans et al.,J.Med.Chem.30:1229(1987)、これらは参照により本明細書に組み込まれる。模倣体は、しばしば、コンピューター化分子モデリングに補助されて開発される。治療上有用なペプチドに構造的に類似のペプチド模倣体を用いて、等価の治療または予防効果を生成することが可能である。一般に、模倣体は、TWEAK等の典型的ポリペプチド(すなわち、所望の生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、当技術で周知の方法を用いて、−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−CH2−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、および−CH2SO−−からなる群より選択される結合によって任意で置換される1つ以上のペプチド結合を有する。同一タイプのDアミノ酸を用いたコンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の系統的置換(例えばLリシンの代わりDリシン)を用いて、より安定なペプチドを生成することも可能である。さらに、当技術で周知の方法(Rizo and Gierasch,Ann.Rev.Biochem.61:387(1992)、参照により本明細書に組み込まれる)によって、例えばペプチドを環化する細胞内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を付加することによって、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変化を有するコンストレインド(constrained)ペプチドを生成することが可能である。
【0036】
「ポリペプチド類似体」とは、野生型ポリペプチドに由来するが、アミノ酸配列が異なるポリペプチドを指す。アミノ酸配列での変化を有するポリペプチドは、突然変異体タンパク質、融合タンパク質、または模倣体でもよい。ポリペプチド類似体は、野生型ポリペプチドと比較して非アミノ酸配列相違を有するポリペプチドも指す。これらの相違は、化学的または生化学的でもよく、限定はされないが、本明細書で特に記載される修飾のタイプを含む。
【0037】
「ポリペプチド・フラグメント」とは、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残りのアミノ酸配列が天然に発生する配列の対応する位置に同一であるポリペプチドを指す。フラグメントは、典型的には少なくとも5、6、8、または10アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも14アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり、通常は少なくとも50アミノ酸長、さらにより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。
【0038】
「前駆細胞」とは、1つ以上の細胞系統を誘発する細胞を指す。幹細胞、分化全能性細胞(totipotent cell)、多能性細胞(pluripotent cell)、多能細胞(multipotent cell)、二分化能細胞(bipotent cell)、胚細胞、または成体細胞が含まれる。限定はされないが、末端分化を受けることができる特定の系統に関与する細胞、組織内在細胞に由来する細胞、および特異的組織に在住する(home)循環細胞を含む組織特異的細胞も包含される。
【0039】
「被験体」とは、ヒトおよび非ヒト被験体である。被験体の例としては、患者である。
【0040】
「TWEAK関連状態」とは、異常性TWEAK機能または調節に起因する任意の状態を指す。該用語は、異常性TWEAK機能または調節に直接起因しないが、むしろ特定の他のメカニズムから生じる任意の状態も指し、この際破壊、増加、または変化TWEAK活性が該状態に関する検出可能な結果を有する。TWEAK関連状態は、天然では炎症性または非炎症性であってもよく、限定はされないが本明細書に特に記載される状態および疾患を含む。
【0041】
「ベクター」とは、対象DNA配列をそのネイティブな細胞外でクローニング、増殖、組み換え、突然変異、または発現させることを可能にするDNA分子を指す。しばしば、ベクターは、特定の条件下または特定の細胞中で、遺伝子配列の誘導性または構成性発現を可能にする発現制御配列を有する。ベクターの例としては、限定はされないが、プラスミド、酵母人工染色体(YAC)、ウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)由来エピソーム、バクテリオファージ、コスミド、およびファージミドが挙げられる。
【0042】
「異種(xenogeneic)動物」とは、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の実質的な部分を保持する動物を指す。しばしば、異種動物は、相同的に標的化される内在免疫グロブリン遺伝子座を保持し、該遺伝子座がその内在免疫グロブリン遺伝子を発現できなくなるようにする。例としては、ゼノマウス(XenoMouse)(商標)系統(Abgenix,Inc.,Fremont,California)のマウスが挙げられ、これは、トランスジェニック・ヒト免疫グロブリン遺伝子の体細胞再構成、ヒト可変遺伝子の過剰変異、免疫グロブリン遺伝子発現、および免疫グロブリン・アイソタイプ・スイッチングを可能にする。異種動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を利用した抗原免疫試験に効果的な体液性応答を与えることができる。異種動物で産生された抗体は、完全にヒト型であり、該動物自体またはその子孫から、該動物またはその子孫から抽出された培養細胞から、かつ異種Bリンパ球系統またはその子孫から生成されたハイブリドーマから単離されることができる。さらに、従来の組み換え技術によって、特異的抗原免疫試験に対して生じた免疫グロブリンをコードする再構成ヒト遺伝子配列を単離することができる。
【0043】
「異種(xenogeneic)抗体」とは、外来免疫グロブリン遺伝子座にコードされる抗体を指す。例えば、ゼノマウス(XenoMouse)(商標)系統のマウスでは、ヒト抗体遺伝子座は、異種抗体をコードする。
【0044】
「異種(xenogeneic)モノクローナル抗体」とは、クローン細胞、不死化細胞で、例えば異種動物に由来するハイブリドーマで産生される抗体の同種集団を指す。例えばゼノマウス(XenoMouse)(商標)系統のマウスから生成されたハイブリドーマは、異種抗体を産生する。
【0045】
疾患の理解および治療は、根本的に、分子メカニズムまたはそれを基礎とする生化学的経路の決定へと前進する。そのため、医師および研究者が医薬品を個別仕様に合わせる(tailor)こと、かつそれら分子メカニズムまたは生化学的経路を特異的に標的とする医薬組成物を処方することが可能になる。
【0046】
ヒトが羅患する最も複雑かつ消耗性の疾患のいくつかとしては、心臓、肝臓、腎臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質代謝、消化管、神経系、膵臓、生殖器、軟骨、硬骨、結合組織系、および前駆または幹細胞の疾患が挙げられる。本発明は、これらの疾患を理解する上で重要な前進を有利に提供する。より具体的には、本発明は、外来TWEAKタンパク質を発現し、かつTWEAKタンパク質発現と、心臓、肝臓、腎臓、および肺の特定の病的状態との相関関係を初めて実証するトランスジェニック動物を提供する。本発明は、該病的状態を治療または予防するための方法と、それら方法で用いるためのTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを同定するための方法とも提供する。本発明の方法に従って治療可能な病的状態としては、急性心臓外傷、慢性心不全、非炎症性拡張型心筋症、うっ血心不全、肝上皮細胞過形成、肝細胞死、肝線維症、肝細胞空胞形成、肝障害、胆管過形成を含む胆管系状態、腎臓多病性炎症等の炎症性腎状態、尿細管腎症等の非炎症性腎状態、尿細管過形成、糸球体嚢胞、腎臓過形成、腎臓皮膜肥厚、糸球体腎炎、アルポート症候群、腎臓尿細管空胞形成、腎臓ヒアリン円柱、腎線維症、および炎症性肺状態が挙げられる。本発明は、TWEAKタンパク質またはその機能、TWEAK抗体、およびTWEAK核酸を含む疾患の分子マーカーとしてのTWEAK構造または機能を検出するための方法をさらに提供する。
【0047】
TWEAK活性を変化させるか、あるいはTWEAKポリペプチドの膜結合または完全長形態とその細胞受容体との相互作用を破壊することができるTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、本明細書に記載されるTWEAK関連状態を治療する。また、該医薬品および治療方法は、TWEAKポリペプチドの膜結合または完全長形態と別のTWEAKポリペプチドとの相互作用を破壊する。このような干渉は、細胞表面上、固相へのまたは溶液中での細胞内、細胞外、またはin vitro結合で生じることが可能である。別の代替案では、医薬品および治療法は、TWEAKポリペプチドの膜結合または完全長形態とTWEAK相互作用相手との相互作用を破壊する。該相互作用相手は、タンパク質、核酸、糖類、脂質、脂肪酸、およびステロイドであってもよい。
【0048】
本発明の好適な実施形態では、TWEAK関連状態は、天然では非炎症性である。
【0049】
別の好適な実施形態では、TWEAK関連状態は、線維症、心筋症、腎疾患、肺疾患、または肝疾患である。
【0050】
別の好適な実施形態では、TWEAK関連状態は、骨格筋疾患、脂肪組織疾患、消化管疾患、膵臓疾患、生殖器疾患、神経組織疾患、細胞死、皮膚疾患、軟骨疾患、硬骨疾患、または結合組織疾患である。
【0051】
別の実施形態では、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、in vivoで前駆細胞を作用させることによって、組織置換または再生(例えば火傷被害者または放射線患者)を必要とする状態、疾患または障害を羅患する被験体を治療することが可能である。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、前駆細胞または組織移植療法と組み合わせて、in vivoで被験体を治療することも可能である。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、付加的な治療とともにまたはなしで、被験体へのその後の移植のためにin vivoで細胞集団を、またはin vitroで前駆細胞集団を増殖させることも可能である。in vivo細胞療法用またはin vitro増殖後に移植するために用いられる前駆細胞集団は、起源が胚または成体であってもよい。成体由来前駆細胞は、多能性(multipotent)または組織制限型であってもよい(Lagasse et al.,Immunity 14:425−436(2001);Jackson et al.J.Clin.Invest.107:1355−402(2001);Anversa and Nadal−Ginard,Nature 415:240−243(2002);Gussoni et al.,Nature 401:390−394(1999);Brazelton et al.,Science 290:1672−1674(2000);Peterson et al.,Science 284:1168−1170(1999);Lagasse et al.,Nature Medicine 6:1229−1234(2000))。
【0052】
心臓疾患は、先進国での障害および死亡の主な原因である。米国では、心臓疾患によって、全ての死亡率の約40%が引き起こされおり、年間約750,000件の死亡の原因となる。心臓機能に対して最も根本的なものは、心筋であり、分岐および吻合横紋筋細胞(心筋細胞)から主に構成されている。心筋細胞は、介在する間細胞よりはるかに大きく、心筋の体積の90%以上を占める。炎症性細胞はまれであり、正常心筋中にはコラーゲンが散在している。
【0053】
心筋疾患は、頻発するが、多数の異なる心臓状態で2次的に発生する。心筋疾患の例としては、炎症性疾患(例えば心筋炎)、ならびに拡張型心筋症、全身性代謝疾患、筋ジストロフィー、および心筋細胞の遺伝的異常等の非炎症性心臓状態が挙げられる。
【0054】
心筋症の主要タイプとしては、拡張型、肥大性、および拘束型心筋症が挙げられる。本発明の目的は、天然では通常非炎症性である拡張型心筋症の治療方法を提供することである。心筋疾患の臨床症例の約90%を占める非炎症性拡張型心筋症の場合、心臓は、進行性心臓肥大、拡張、および収縮性(収縮期性)機能不全によって特徴付けられる。拡張型心筋症は、いずれの年齢でも発生する可能性があるが、20歳から60歳の年齢範囲の人で最も発症する。多くの場合、非侵襲性心臓画像法を介して、特に二次元超音波心臓検査を介して診断を行う。拡張型心筋症の組織病理学は、軽度から中度の肥大を持つ変性筋細胞、非炎症性細胞の非存在、および間質線維症によって特徴付けられる。
【0055】
臨床的には、拡張型心筋症は、緩慢に進行するうっ血心不全とともに生じるが、患者は、急激に、代償性から非代償性機能状態に陥る可能性がある。心臓移植がしばしば要求される。患者の50パーセントが2年以内に死亡し、75パーセントが5年以内に死亡する。死亡原因は、通常、進行性心不全または不整脈であるが、心臓内血栓を除去したことによって引き起こされる塞栓症が発生することがある。
【0056】
拡張型心筋症に特徴付けられる心臓は、拡張および弛緩し、かつ正常心臓より2倍から3倍重くなる。全ての心室が拡張するとともに壁が薄くなり、線維化し、かつ通常壁在血栓となる。小数の拡張型心筋症では、僧帽弁または三尖弁閉鎖不全が左心室拡張から生じる。心筋細胞が拡張した核とともに肥大する。拡張型心筋症の原因のいくつかとしては、心筋炎、アルコールまたは他の毒物乱用、妊娠(産褥性心筋症)、虚血、冠動脈疾患、高血圧、および遺伝的作用が挙げられる。
【0057】
未知の病因の疾患である突発性拡張型心筋症(IDC)は、1つまたは両心室の拡張、収縮期機能不全、およびしばしばうっ血心不全への進行によって特徴付けられる。用語「IDC」とは、複数の当業者によって、用語「拡張型心筋症」と互換的に用いられ、IDCは、事実上アルコール乱用、毒性侵襲、または心筋炎の結果ではない拡張型心筋症の広義のカテゴリーであるということが示唆されることに注意する。
【0058】
顕微鏡により、IDCは、心筋肥大、核肥大、ならびに間質および血管周囲線維症によって特徴付けられる。心筋炎と対照的に、IDC患者では、その非炎症性病因の徴候である壊死および細胞浸潤は通常、顕著ではない。プレドニゾン等の抗炎症性薬剤はIDCを治療する上で大部分は有効ではないという事実は、病因と整合性がある。
【0059】
本発明の目的は、TWEAK活性に関連する拡張型心筋症を治療または予防する方法を提供することである。拡張型心筋症(例えばIDC)の原因が大部分は未知であることから、特有の治療は開発されていない。患者は、通常、症状を抑制するために、物理的、食事的、および薬理学的介入(例えばベータ・アドレナリン受容体アンタゴニスト、カルシウム・アンタゴニスト、および抗凝固剤)を用いて、心不全に対して治療される。また、利用可能であれば、心臓移植が用いられる。
【0060】
当業者は、IDCを診断するために用いることが可能である任意の免疫学的、組織化学的、形態学的、超微細構造的、または微生物学的マーカーを同定することができないでいた。しかし、疫学的証拠により、IDC素因は、遺伝的に基づく可能性があることが示唆される。IDC患者の20パーセントでは、第1血族もIDCの徴候を示しており、頻繁な家族性遺伝を示唆している。当業者は、潜伏性のまたは臨床上の心臓疾患患者でのIDCに対する分子遺伝マーカーを決定する必要性を認識していた。
【0061】
今日まで、拡張型心筋症に関連する遺伝子のリストには、心臓トロポニンT、d−サルコグリカン、心臓bミオシン重鎖、心臓アクチン、a−トロポミオシン、ラミンA/C、デスミン、心臓リアノジン受容体、デスモプラキン、プラコグロビン、ジストロフィン、およびタファジンが含まれている。拡張型心筋症に寄与する付加的な遺伝的要因を発見し、かつそれらを標的とする治療を設計する必要性が依然として存在する。本発明は、TWEAKおよび拡張型心筋症間の因果的関連性を初めて実証した。従って、本発明の目的は、TWEAKタンパク質発現、TWEAKタンパク質機能、TWEAK mRNA発現での変化、または染色体変化を検出することによって、患者に対して拡張型心筋症を同定するための方法を提供することである。疾患の該分子マーカーを検出するための方法および試薬は、当技術で既知であり、免疫学的または免疫組織化学的分析、酵素または他のタンパク質機能アッセイ、ならびにノーザンブロット、サザンブロット、一塩基多型(SNP)分析、および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析等の標準的なハイブリダイゼーションに基づくアッセイを伴う。
【0062】
非炎症性拡張型心筋症は、進行性心臓肥大、拡張、および収縮性機能不全によって特徴付けられることに注意すべきである。これとは対照的に、シャガス病は、心筋炎のまれな形態であり、これは、慢性クルーズ・トリパノソーマ感染に続いてヒトおよび実験動物で発症する炎症性心臓疾患である。中南米で蔓延しているシャガス病の研究によって、シャガス病患者の血清中で抗自己抗体が同定された。Joshua Wynne and Eugene Braunwald,Heart Disease,A Textbook of Cardiovascular Medicine,volume 2,Ch.41,pp.1442−1444(5th ed.1997)。本明細書に開示される方法は、より一般的なTWEAK活性に関連する非炎症型拡張型心筋症の治療に向けられている。
【0063】
成人腎臓は、1日で1700リットル以上の血液を処理しており、約1リットルの尿を生じる。腎臓は、内分泌系に寄与するとともに、排泄物、代謝、水分、塩、およびpHホメオスタシスで機能する。腎疾患は、死亡率より罹患率の原因であることが多く、米国では年間約35,000件の死亡率である。それとは対照的に、何百万もの人々が年間で、感染、腎臓結石、および尿障害等の非致死腎疾患に羅患している。
【0064】
一般的に、糸球体疾患は免疫学的疾患が原因であり、一方で、尿細管および間質疾患は、通常、毒物または感染因子が原因である。腎臓疾患の部分的リストには、急性腎炎症候群、無兆候性血尿またはタンパク尿、急性腎不全、慢性腎不全、腎臓尿細管欠損、尿路感染症、腎石症、尿路障害、および腎線維症が含まれる。
【0065】
尿細管を含む腎障害には、通常、間質も伴う。尿細管疾患は、天然では炎症性または非炎症性でもありえ、虚血性または毒性尿細管障害を含む。尿細管疾患の部分的リストには、急性尿細管壊死および急性腎不全と、尿細管または間質の炎症反応(尿細管間質性腎炎)と、尿細管過形成と、尿細管間質線維症(間質線維芽細胞、単核細胞、糸球体限外濾過液、サイトカイン、およびケモカイン成分を有する尿細管上皮細胞によって引き起こされる瘢痕性疾患)と、常染色体優性多嚢胞腎疾患(ADPKD)(尿細管および集合尿細管由来の大型の液で満たされた嚢胞によって特徴付けられ、かつPKD1またはPKD2遺伝子での突然変異によって引き起こされる遺伝疾患)とが含まれる。
【0066】
糸球体疾患は、最も脅威の腎疾患を代表する。例えば、慢性糸球体腎炎は、ヒトでの慢性腎不全の最も一般的な原因である。いわゆる2次的な糸球体疾患では、血管疾患、例えば高血圧および結節性多発性動脈炎と同様に、全身性エリテマトーデス(SLE)等の免疫学的疾患によって糸球体に障害が起こる。また、糖尿病(すなわち糖尿病性腎症)等の代謝性疾患およびファブリ病等の遺伝性状態は、糸球体に影響を及ぼす。原発性糸球体疾患としては、原発性糸球体腎炎および糸球体腎症が挙げられる。
【0067】
遺伝性腎炎の傘下にある疾患群としては、糸球体障害に主に関連する家族性腎疾患が挙げられる。アルポート症候群は、腎炎の一形態であり、神経性難聴ならびに水晶体脱臼、後発白内障、および角膜ジストロフィーを含む様々な眼疾患を伴う。該疾患は、その優性X連鎖性遺伝子型のために男性により蔓延している。しかし、幾人かの女性は、常染色体優性および劣性遺伝子型のために羅患している。アルポート腎臓の糸球体は、分節性増殖または硬化を示す。中性脂肪およびムコ多糖蓄積のために、上皮細胞が泡沫状の外観を得ることもある。糸球体および尿細管基底膜は、基底膜緻密層の割裂および積層とともに、肥厚または減弱の不規則な病巣を示す。
【0068】
腎疾患は、著しく臨床的重要性があるので、当業者は、その生理学的および遺伝的原因を理解する必要性を認識していた。当業者は、慢性および急性腎疾患の治療用の新規医薬品を開発する必要性をさらに認識する。本発明によって、TWEAKおよび腎疾患間の因果的関連性が始めて実証される。
【0069】
従って、一実施形態では、本発明は、腎疾患の治療方法を提供する。より好適な実施形態では、腎疾患は、アルポート症候群であってもよい。本発明の他のより好適な実施形態では、標的腎疾患は、多巣性炎症、尿細管腎症、尿細管過形成、嚢胞、糸球体腎症、尿細管空胞形成、線維症、またはヒアリン円柱によって特徴付けられることが可能である。
【0070】
肺疾患は、以前から蔓延している疾患であり、依然蔓延している。気管支炎、気管支肺炎、および他のタイプの肺炎等の原発性呼吸器感染は、通常臨床医によって治療されなければならない。肺疾患は、タバコの煙、空気汚染、および他の吸入剤等の環境的要因によって悪化する可能性がある。慢性気管支炎、肺気腫、肺線維症、および悪性腫瘍も非常に頻発している。肺水腫、無気肺、または気管支肺炎が最も臨床的に羅患している患者で見られるとともに、肺が多くの末期疾患にも2次的に関与している。
【0071】
喘息は、過反応性気道によって特徴付けられる慢性再発性炎症性疾患である。この症状は、通常、偶発的可逆性気管支収縮によって特徴付けられる。喘息は、様々な刺激への気管気管支系統樹の応答性の増大が原因であり、多くの場合、外部のアレルゲンへのIgE応答に関連する。
【0072】
喘息には2つの主要なタイプがある。第1のタイプは、外因性喘息であり、これは、外来的抗原に曝されて誘発される過敏性反応I型によって引き起こされる。外因性喘息状態のリストには、アトピー性(アレルギー性)喘息、職業的喘息、およびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症が含まれる。第2のタイプは、内因性喘息であり、これは、非免疫メカニズムに起因し、アスピリン摂取、肺感染、ストレス、風邪、吸入された吸入剤、および運動等の要因によって誘引される。
【0073】
当業者は、喘息等の非炎症性および炎症性両方に基づく疾患を含む肺疾患をより適切に理解する必要性を認識していた。理解が増すことによって、肺疾患の治療用の改良された医薬品の開発が促進される。
本発明によって、TWEAKおよび肺疾患間の因果的関連性およびその治療方法が始めて実証される。本発明のより好適な実施形態では、肺疾患は、肉芽腫性炎および/またはリンパ組織球炎症を含む炎症によって特徴付けられる。
【0074】
肝臓は、食事性アミノ酸、炭水化物、脂質、およびビタミンの処理とともに、血清タンパク質の合成、解毒、ならびに外来老廃物および汚染生体異物の胆汁への排泄を含む消化および代謝性ホメオスタシスの主要な調節因子である。従って、肝疾患は、通常、非常に重大であり、生命にかかわることもある。
【0075】
肝臓は、代謝性、毒性、微生物性、循環性、および新生物侵襲を含む多くのタイプの疾患を受けやすい。毒物または免疫学的疾患によって、肝細胞は、膨張され、不規則に凝集された細胞質および大型の空き空間を有する外観が浮腫状になる。また、保有される胆汁物質によって、肝細胞は、泡沫状になり膨張される。鉄、銅、および脂肪球(脂肪症)等の物質の蓄積は、肝細胞中で堆積することができる。妊娠期間のアルコール性肝疾患および急性脂肪肝の場合、核と置換されない微小球が発生する(微小胞脂肪症として知られる)。
【0076】
重大な肝障害に起因する肝細胞壊死は、特に、虚血性凝固性壊死によって特徴付けられ得る。多くの場合、毒性または免疫学的関連状態に由来する細胞死は、集合された肝細胞と、フラグメント化された核(アポトーシスに起因する)を含有する収縮された核濃縮性かつ非常にエオシン好性の「カウンシルマン小体」によって特徴付けられる。また、肝細胞は、浸透圧的に膨張し、破裂する(細胞溶解性壊死)。
【0077】
肝炎は、急性または慢性炎症性細胞の流入に関連する肝臓への特定の障害に起因する。肝細胞壊死は、炎症の発症を先導し、逆の場合も同様である。肝臓の損傷の不可逆的結果である線維症は、通常、炎症または直接的な毒性侵襲等の非炎症性メカニズムに起因する。コラーゲンの特有の沈着は、血流および肝細胞の潅流に影響を及ぼす。繊維症が継続するにつれて、肝臓は、周辺瘢痕組織(肝硬変)を有する再生肝細胞の小結節へと細分化される。
【0078】
卵形細胞は、卵形核および乏しい好塩基性細胞質を有する小型の増殖上皮細胞としてのその形態学的外観のためにそのように呼ばれる。卵形細胞は、通常、肝細胞索を有する門脈三管に位置する肝内胆管を結びつける末端細胆管に存在する。これら細胞は、内在する肝臓前駆細胞または肝臓に循環および居住(home)する骨髄前駆細胞に由来する可能性がある。これらの小管前駆細胞は、胆管上皮細胞および肝細胞両方に分化する潜在能力を有する。本発明は、マウスでのTWEAKトランス遺伝子の発現が小管前駆細胞の集団を増殖させる能力を有することを実証する。
【0079】
肝疾患が原因の高度の羅患率および死亡率のために、当技術では、その疾患の分子的および遺伝的基盤を明らかにしなければならないことが認識されていた。原因因子の同定によって、慢性および急性肝疾患の治療用医薬品の発見が促進される。本発明は、TWEAKおよび肝疾患間の因果的関連性を実証し、その治療方法を有利に提供する。より好適な実施形態では、肝疾患は、上皮過形成、肝細胞空胞形成、線維症を生じる胆管障害、肝細胞死、または肝障害である。
【0080】
骨格筋系は、体位および歩行にとって重要である。骨格筋は、廃用性に応じて萎縮することができ、これは神経または血液供給欠乏およびグルココルチコイド等の薬物暴露の状態に2次的なものであり得る。骨格筋は、遺伝的または退行性疾患の状態でも萎縮することができる。これらの状態または疾患は、天然では炎症性または非炎症性であり得る。筋ジストロフィーは、神経疾患が存在しない際の萎縮および筋繊維の喪失によって特徴付けられる遺伝性筋障害の大きなグループを占める。このグループに含まれる1つの共通形態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーである。先天性筋疾患は、酸性マルターゼ欠乏症等の糖原病の状況でも発生することが可能であり、これによって、弱筋肉、乏しい運動神経、肥大心臓、および多くの場合は心不全に由来する早期死亡を持つ新生児が生まれる。筋萎縮症に至る先天性疾患としては、限定はされないが、ミトコンドリア筋障害、脂質筋障害、中枢神経系尿細管筋障害、および横紋筋融解症も挙げられる。筋障害状態は、成体でも発症することが可能で、最も一般的に観察されるものの1つは、アルコール性筋障害である。骨格筋消耗は、限定はされないが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経細胞疾患の構成要素としても生じることが可能である。さらに、カヘキシーとしても知られる骨格筋消耗は、最も末期の羅患癌患者で見られる重大な病的状態であり、多くの場合、患者の死亡の直接的な原因となる。炎症または自己免疫の状況で発生する骨格筋疾患としては、多発性筋炎、炎症性筋障害、およびグルココルチコイド誘因性萎縮症が挙げられる。本発明は、TWEAKと筋管に分化する筋芽細胞の能力との間の関連性を確立する。従って、本発明の目的は、生体内(in vitro)または生体外(in vitro)手法を用いて骨格筋再生を促進することによって、骨格筋疾患の治療方法を提供することである。
【0081】
脂肪細胞の蓄積は、糖尿病II型等の代謝疾患に関連する肥満を含む肥満状態で発生する。脂肪細胞の器官への内殖、いわゆる脂肪浸潤は、種々のセッティングで発生し、筋ジストロフィーの病理学的構成要素である。本発明は、TWEAKと脂肪細胞へ分化する前脂肪細胞の能力との間の関連性を実証した。従って、本発明の目的は、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはその医薬組成物を用いて脂肪細胞分化を調節することによって、脂肪細胞の蓄積または不足に関連する疾患の治療方法を提供することである。
【0082】
本発明に従ってTWEAK関連状態を治療する方法は、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらを有する組成物を利用する。本発明に従ってTWEAK関連状態を治療する上で有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストは、本明細書に記載されており、かつ当技術で既知である。このような因子としては、例えばPCT国際公開番号WO 98/05783、WO 98/35061、WO 99/19490、WO 00/42073、およびWO 01/45730に開示されているものが挙げられ、それら全てが参照により本明細書に組み込まれる。本発明の方法で有用なTWEAKアンタゴニストとしては、本明細書に記載されるように、ヒト、非ヒト、ヒト化、または異種抗体、およびポリクローナル、モノクローナル、または合成抗体等の抗TWEAK抗体が挙げられる。さらに、該抗体は、完全長、そのフラグメント、または抗原認識配列を含む融合タンパク質であってもよい。
【0083】
本発明の方法で有用なTWEAKアンタゴニストとしては、抗TWEAK受容体抗体も挙げられる。ここで、TWEAK受容体は、FN14またはTWEAKが結合するTNF−Rファミリーの他のメンバーであってもよい。TWEAK受容体に対する抗体は、本明細書に記載されるように、ヒト、非ヒト、ヒト化、または異種であってもよく、かつポリクローナル、モノクローナル、または合成であってもよい。さらに、該抗体は、完全長、そのフラグメント、または抗原認識配列を含む融合タンパク質であってもよい。
【0084】
当業者に公知の任意の方法によって、TWEAKまたはTWEAK受容体抗原を用いた動物の免疫化を実行することが可能である。例えばHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press,1990を参照せよ。マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ等の非ヒト動物を免疫化するための方法は等技術で周知である。例えばHarlow and Laneおよび米国特許第5,994,619号を参照せよ。好適な実施形態では、免疫応答を促進するためのアジュバントを用いてまたはなしで抗原を投与する。このようなアジュバントとしては、特に、フロイントの完全または不完全アジュバント、RIBI(ムラミル・ジペプチド)、またはISCOM(免疫刺激複合体)が挙げられる。
【0085】
免疫化用に選択される抗原は、以下のものの任意の1つであり得る。すなわち、TWEAKポリペプチドか、TWEAKポリペプチド・フラグメントか、TWEAK突然変異体タンパク質か、TWEAK模倣体か、TWEAK融合タンパク質か、TWEAK受容体ポリペプチドか、TWEAK受容体フラグメントか、TWEAK受容体突然変異体タンパク質か、TWEAK受容体模倣体か、TWEAK受容体融合タンパク質か、TWEAKポリペプチド、そのフラグメント、突然変異体タンパク質、または融合タンパク質を発現する細胞か、あるいはTWEAK受容体ポリペプチド、そのフラグメント、突然変異体タンパク質、または融合タンパク質を発現する細胞かである。血清、乳汁、腹水、脾臓、胸腺、末梢血液細胞、胎児肝臓、骨髄、腹膜、およびかなりの免疫グロブリン濃度を有する任意の他の組織または体液を含む該動物の様々な組織または体液から、免疫化によって動物で生成された免疫グロブリンを回収することが可能である。また、媒体に分泌されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製および単離することができる。
【0086】
本発明の好適な実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはヒト化抗体である。より好適な実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト抗体定常および/またはフレームワーク領域を有する。別の好適な実施形態では、抗体は異種抗体である。より好適な実施形態では、異種抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。
【0087】
異種抗体は、完全に異なる種で発現される1つの種の完全な抗体である。例えば、マウスが、完全ヒト抗体を産生するために必要なDNAを発現する場合、得られる抗体は異種である(すなわちマウス中で産生されたヒト抗体)。標的化不活性化(ノックアウト)技術によって、内在免疫グロブリン遺伝子の動物での正常発現を破壊する機会が提供される。トランスジェニック動物技術によって、異種免疫グロブリン・タンパク質を産生する非ヒト動物を生産する機会が提供される。このような異種動物を上述の免疫グロブリン・ノックアウト動物と交配させ、異種免疫グロブリンのみを産生し、内在免疫グロブリンを産生しない動物を生じることができる。
【0088】
異種免疫グロブリン遺伝子の発現によって、モノクローナル抗体を含むヒト抗体の高度に多様なレパートリーの生成が可能になる。この理由は、(1)外来免疫グロブリン遺伝子は、そのシス調節エレメントを保有し、かつ宿主動物の正常可変(V)、多様性(D)、および接合(J)組み換え事象を受けやすいから、(2)外来免疫グロブリン遺伝子は、内在免疫グロブリン遺伝子座と類似の方法で発現されるから、ならびに(3)得られる抗体は、正常Bリンパ球発達および体液性応答を明白に支持するからである。
【0089】
外来免疫グロブリン遺伝子を、完全免疫グロブリン遺伝子座として、免疫グロブリンの部分として、または「小形遺伝子座(minilocus)」として動物に導入することが可能であり、この際より完全な外来Ig遺伝子座を、そのIg遺伝子座由来の個々の遺伝子の少数の包含を介して模倣する。さらに、トランスジェニック動物を操作して、一本鎖抗体またはキメラ抗体等の修飾抗体をコードするトランス遺伝子を発現させることが可能である。
【0090】
本発明の方法で有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストは、TWEAKポリペプチド、あるいはそのフラグメント、類似体、突然変異体タンパク質、または模倣体であってもよい。類似体は、天然に発生するTWEAKアミノ酸配列とは異なること、または該配列を含まない方法で異なることが可能であり、あるいは両方が可能である。好適な実施形態では、TWEAKポリペプチド類似体は、突然変異体タンパク質である。突然変異体タンパク質を生成する方法は、分子生物学の技術で周知であり、ランダムな突然変異生成、部位指向性突然変異生成、欠失、および切断によってDNA分子を変化させることを含む。DNAを突然変異させる技術は、当技術で周知であり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)突然変異生成、飽和(すなわち化学的または放射線)突然変異生成、化学的DNA合成、アラニン・スキャニング突然変異生成、オリゴヌクレオチド媒介突然変異生成(in vitroでのDNAテンプレートへのハイブリダイゼーション後の酵素的伸長)、カセット(組み換え)突然変異生成、および組み合わせ突然変異生成(TWEAK DNAへのランダムな縮重配列の導入)を含む。
【0091】
TWEAKポリペプチドは、TWEAK受容体に、他のTWEAKポリペプチドに、または他のTWEAK相互作用相手に結合する。TWEAKフラグメントは、膜結合型であってもよく、かつリポソームあるいは他の細胞または偽細胞送達系を有する医薬組成物中で送達されることが可能である。TWEAKフラグメントは、膜貫通ドメインを除去する切断または内部欠失を含有する可溶性TWEAKポリペプチドであってもよい。さらに、本発明の方法で有用なTWEAKポリペプチドは、TWEAK応答または変化TWEAK応答を生じないことが可能である。このようなTWEAKポリペプチドの例としては、欠失または切断突然変異体、1つ以上のアミノ酸置換を含有するペプチド、TWEAK模倣体、および非アミノ酸配列修飾TWEAKポリペプチドを含むTWEAKタンパク質の類似体がある。
【0092】
ここに述べられているように、本発明の方法に有用なTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、TWEAKレセプター・ポリペプチド、あるいはフラグメント、類似物質、突然変異タンパク質、またはその擬似物質を供することができる。TWEAKポリペプチドはTWEAKレセプター・ポリペプチドに結合し、TWEAKレセプター・ポリペプチドは他のTWEAKレセプター・ポリペプチドあるいは他のTWEAKレセプター・結合パートナーに結合する。TWEAKレセプター・フラグメントは、膜に結合することができ、リポソームあるいは他の細胞デリバリー・システムまたは偽細胞デリバリー・システムを有する医薬組成物で運ぶことができる。また、TWEAKレセプター・フラグメントは、膜貫通ドメインを取り除いたような切断または内部欠失がある可溶性TWEAKレセプター・ポリペプチドである可能性がある。さらに、本発明の方法に有用なTWEAKレセプター・ポリペプチドは、TWEAK応答が無いか変更されるという結果に帰着させることができる。そのようなTWEAKレセプター・ポリペプチドの例としては、非アミノ酸配列修飾されたTWEAKレセプター・ポリペプチドの他に、欠失または切断変異、1つ以上のアミノ酸が置換したペプチド、TWEAKレセプター擬似物質を含むTWEAKレセプター・タンパク質の類似物質が挙げられる。
【0093】
さらに、本発明の方法に有用なTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは有機化合物または無機化合物である可能性がある。有機化合物は、例えば当業者によく知られている化学物質ライブラリーに収録されているような小さな有機化合物を供することができる。ここに挙げるものに限定されるわけではないが、他の有機化合物としては、核酸、ペプチド、糖、脂質および脂肪酸、ステロイド、あるいはそれらに由来する物質が挙げられる。無機化合物には、シリカまたはその他の無機物および塩を供することができる。ここに述べられているように、有機化合物または無機化合物は、TWEAKポリペプチド、TWEAKレセプター・ポリペプチド、あるいは他のTWEAK結合パートナーに結合することができる。
【0094】
TWEAKあるいはTWEAKレセプター・ポリペプチドの非配列修飾は、生体内(in vivo)あるいは生体外(in vitro)でポリペプチドが化学誘導体化(ここに挙げるものに限定されるわけではないが、例えばアセチル化、メチル化、リン酸化、カルボキシル化、酸化状態あるいはグリコシル化による変化)することによって起こりうる。さらに、化学誘導体化は、有機ポリマー(例えばポリエチレン・グリコール(PEG))または医療業界でよく知られている他のポリマーとの結合を含む可能性がある。したがって、TWEAKポリペプチド類似物質は、非アミノ酸配列修飾により生成できる。
【0095】
TWEAKあるいはTWEAKポリペプチドは融合タンパク質として発現する可能性がある。融合タンパク質は、当業者によく知られている。当業者は、原核生物または真核生物に由来するものを含む多様な融合パートナー群から選択することができる。
【0096】
本発明を用いると、ヒトおよび動物のいかなる個体であっても、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの薬剤を含む組成物を、薬学的に有効な分量でTWEAK関連疾患を治療するのに十分な期間投与して、薬学的に可能な方法で治療できる。あるいは、TWEAK関連疾患予防に有効な分量のTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの薬剤を含む組成物の投与を受けることができる。本発明の方法に有用なTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、ここで述べられている方法で医薬組成物として処方することができ、非経口の方法と、注射による方法と、粘膜経由(transmucosal)の方法と、経口による方法と、吸入による方法と、眼を経由する方法と、直腸を経由する方法と、持続効果のある移植による方法と、局所的な方法と、徐放性物質またはステントでコーティングされたものを経由する方法とを用いて運ぶことができる。TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストの投与には種々の従来技術を用いることができる。例えば、溶液あるいは懸濁液、スラリー、ゲル、クリーム、バルム、エマルジョン、ローション、粉末、スプレー、泡、ペースト、オイントメント、軟膏、および点滴剤といった、個体、半個体および液体の投薬形態が挙げられる
さらに、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストを遺伝子治療の経路で運ぶことができる。簡潔に述べると、タンパク質をコードしているかアンチセンス分子を発現している核酸分子は、当業者によく知られている、対象となる組織あるいは器官に核酸分子を運ぶのに適したベクターを利用して対象に運ばれる。一般的なベクターとしては、リポソーム、プラスミド、およびウイルス・ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。
【0097】
TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物の投与および用法の最も有用な形態は、目的とする効果、薬歴、あれば個体の健康状態、疾患そのものの状態、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストに対する応答、および担当医の判断により変わる。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの薬剤を含む組成物は、一度に、あるいは治療のたびごとに、医薬製剤または獣医薬製剤として利用可能ないかなる形態によっても投与できる。
【0098】
特定の投与形態、特定のTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニスト、あるいは組成物、服用レベル、および服用頻度により、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物の適用量は変わる。一般的に、製剤はTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物を約0.01%〜約99%(w/w)、望ましいものなら約1%〜約50%(w/w)含んでいる。
【0099】
治療あるいは予防に有効な、模範的、限定されない範囲のTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストの分量は体重あたり約0.005〜10.00mg/kg、より好ましい量は約0.05〜1.0mg/kgである。
【0100】
TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物は、単独で、あるいは医薬製剤または獣医薬製剤の一部として、ないしは予防製剤の一部として、アジュバンドの有無を問わずに投与することができる。それら製剤は非経口あるいは経口投与することができる。例えばそれら製剤は、口を経由して、肺、鼻、耳、肛門、皮膚、眼、静脈、筋肉内、動脈、腹腔内、粘膜、舌下、皮下、経皮、局所、あるいは頭蓋内を経由して、ないしは口腔に入れて投与することができる。医薬としても、獣医薬としても、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストはどのような上皮表面にも局所的に投与することができる。そのような表面としては、口、眼、耳、肛門、および鼻の表面が挙げられる。医薬組成物は、従来技術の混和、溶解、グラニュレイト、糖衣形成、研和、乳化、カプセル化、エントラップメント、あるいは凍結乾燥により生成することができる。
【0101】
本発明で用いる医薬組成物は、生理的に利用可能な1つ以上の担体(医薬として使用することができる製剤中に活性化合物を取り込むことを促進する賦形剤および助剤から成る)を用いて、従来法により処方することができる。適切な処方は投与経路に依存する。
【0102】
粘膜を通して投与するには、浸透する仕切りに適切な浸透剤を処方では用いる。そのような浸透剤は当業者に一般によく知られている。眼から投与する場合、当業者に知られているように、適切な生理食塩水溶液を有する懸濁液が用いられる。
【0103】
経口投与をするには、アクティブ・エージェントを従来の医薬として利用可能な担体と結合させて、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストを即座に処方することができる。TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、錠剤、ピル、リポソーム、顆粒、球、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などの形で処方し、治療を受ける患者が経口摂取するようにすることができる。
【0104】
また、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物は従来から医薬製剤あるいは獣医薬製剤で用いられてきた担体またはアジュバンドを含むことができる。それら担体およびアジュバンドの例として、フロイント(Freund)アジュバンド、イオン交換、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、緩衝物質(リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水など)、塩あるいは電解質(硫酸プロタミン、リン酸2ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダル・シリカ、マグネシウム、三珪酸塩、セルロース由来の物質、ポリエチレン・グリコールなど)が挙げられる。アジュバンドの局所的あるいはゲルの基礎形式としては、例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム,ポリアクリル酸塩,ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体,ポリエチレン・グリコールおよびウッド・ワックスアルコールが挙げられる。
【0105】
経口投与するための医薬組成物は、固形の賦形剤として得ることができる。必要に応じて適切な助剤を加え、生成された混合物を粉砕し、顆粒の混合物を処理して錠剤または糖衣錠の中身を得ることができる。適切な賦形剤としては、糖類(例えば、ラクトース、ショ糖、マンニトール、あるいはソルビトール)、セルロース製剤(例えば、トウモロコシ・デンプン、コムギ・デンプン、イネ・デンプン、ジャガイモ・デンプン、ゼラチン、トラガカント・ゴム、メチルセルロース、ヒドロキシ、プロピルメチル・セルロース、カルボキシメチル・セルロース・ナトリウム、および/またはポリビニール・ピロリドン(PVP))が挙げられる。必要に応じて、交差結合されたポリビニール・ピロリドン、寒天、あるいは アルギン酸またはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤が加えられる。
【0106】
糖衣錠の中核は適切にコーティングされている。この目的のため、任意にアラビア・ゴム、タルク、ポリビニール・ピロリドン、カーボポール・ゲル、ポリエチレン・グリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合液を含む、糖の濃縮溶液を使うことができる。識別あるいは異なる活性化合物の組み合わせを用いていることを特徴づけつるため、染料または顔料を錠剤または糖衣錠のコーティングに加えることができる。
【0107】
経口投与される医薬組成物としては、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールあるいはソルビトール)でできたソフトな、密封されたカプセル剤とともに、ゼラチンでできた押し込み型カプセル剤が挙げられる。前記の押し込み型カプセル剤は、ラクトースなどの賦形剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクあるいはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、ならびに必要に応じて安定剤を混合したものに有効成分を含むことができる。ソフト・カプセル剤では、活性化合物は適切な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィン、あるいは液体ポリエチレン・グリコール)に溶解または懸濁することができる。さらに、安定剤を加えることができる。経口投与される組成物は全てそのような投与に適した分量でなければならない。
【0108】
経口投与する場合、前記の組成物は、従来の方法により処方される錠剤またはトローチ剤の形態をとることができる。
【0109】
吸入法により投与する場合、適切な高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を用いて加圧パックあるいは噴霧器から放出されるエアゾールスプレーの形態で、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストはタイミングよく運ばれる。加圧エアゾールの場合、バルブを操作してメーターの量を送ることにより1単位用量を決める。例えばゼラチンなどのカプセル剤およびカートリッジをインヘラーまたは吸入器で利用する場合、化合物の粉末混合物、およびラクトースあるいはデンプンなどの適切な粉末ベースを含む形態をとることができる。
【0110】
TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、例えばボーラス注射などの注射による非経口投与による形態も、持続注入による形態もとることができる。前記の薬剤は水溶液、水性懸濁液、油性懸濁液、あるいはエマルジョンの中に含むことが可能であり、懸濁、安定および/または分散剤などの薬剤を含むことができる。注射で処方する場合、例えばアンプルあるいはマルチドース・コンテナで添加した保存料とともに1単位用量が示される。
【0111】
一般的に水溶液の処方としては、ハンクス液、リンガー溶液、あるいは生理食塩水緩衝液などの生理的に利用可能な緩衝液が挙げられる。一般的に油性懸濁液は、脂溶性溶媒あるいはビヒクルを含むことができ、それら脂溶性溶媒あるいはビヒクルはゴマ油、または合成脂肪酸エステ(例えば、オレイン酸エチルあるいはトリグリセリド、またはリポソーム)などの脂肪油を含む。典型的油性一時的停止は、胡麻油または合成脂肪酸エステル(例えばエチル・オレイン酸塩またはトリグリセリド)のような脂肪油を含む脂肪親和性溶媒または媒介者を含む可能性があるまたはリポソーム。注射水性懸濁液には、カルボキシルセルロースナトリウム、ソルビトール、あるいはデキストランなどの懸濁液の粘度を増す物質を含めることができる。必要に応じて、前記の懸濁液には、化合物の溶解度を高めて高濃度で製剤を使用できるように、適切な安定剤あるいは薬剤を含めることができる。あるいは、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、使用前にピロゲン・フリー滅菌水などの適切なビヒクルと組み合わせて粉末状にしておくことができる。
【0112】
また、前記のTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、座薬あるいはリテンション浣腸剤(例えば、カカオバターあるいは他のグリセリドなど、従来の座薬の主成分を含む)などの直腸組成物の形態をとることができる。
【0113】
前記の処方に加えて、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは持続性製剤の形態をとることもできる。そのような持続効果のある薬剤は、移植(例えば皮下あるいは筋肉内に)または筋肉への注射により投与することができる。 したがって、例えば前記の化合物は、適切なポリマーあるいは疎水性物質(例えばアクセプタブル・オイル中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、ないしはやや溶けにくい派生物(例えばやや溶けにくい塩として)と組み合わせることができる。
【0114】
疎水性であるTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストの薬剤担体はコソルベント・システムであり、ベンジル・アルコール、無極性界面活性剤、水混和性の有機ポリマー、および水相により構成される。前記のコソルベント・システムはVPDコソルベント・システムである可能性がある。VPDは3%w/v ベンジル・アルコール、8% w/v 無極性界面活性剤ポリソルベート 80、および65% w/v ポリエチレン・グリコール 300の溶液であり、無水エタノールで容積を合わせている。前記のVPDコソルベント・システム(VPD:SW)は、水溶液中で5% D型グルコースにより1:1に希釈されたVPDにより形成される。このコソルベント・システムは疎水性化合物をよく溶かすことが可能であり、体系的に投与してもそれ自身は毒性が弱い。当然、溶解度および毒性の特徴を損なうことなく、コソルベント・システムの割合を大きく変えることができる。さらに、コソルベント化合物のアイデンティティーを変えることができる(例えば、他の毒性が弱い無極性界面活性剤をポリソルベート 80の代わりに用いることができる)。ポリエチレン・グリコールの分量は変えることができる(例えばポリビニール・ピロリドンなど、他の生体適合性ポリマーをポリエチレン・グリコールの代わりに用いることが可能である)。他の糖または多糖はD型グルコースに換えることができる。
【0115】
あるいは、疎水性の医薬化合物のための他のデリバリー・システムを利用することができる。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬品を運ぶためのビヒクルまたは担体の例である。ジメチルスルホキシドなど特定の有機溶媒を用いることもできる。しかし、それら有機溶媒は非常に強い毒性を示す。
【0116】
さらに、治療薬を含む固形の疎水性ポリマーの半透明マトリクスなどの徐放性システムを用いて、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストを運ぶことができる。種々の徐放性物質が入手可能であり、当業者によく知られている。化学的性質に応じて、徐放性カプセルは化合物を2、3週間から100日間放出する。
【0117】
TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストの化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質の安定化のために別の手法を用いることができる。
【0118】
また、医薬組成物には適当な固相あるいはゲル相の担体または賦形剤を含めることができる。そのような担体あるいは賦形剤の実施例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、多様な糖、デンプン、セルロース派生物、ゼラチン、およびポリエチレン・グリコールなどのポリマーを含むが、ここに挙げたものに限らない。
【0119】
TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、薬剤として利用可能な対イオンをもつ塩として供することができる。薬剤として利用可能な塩は、それに限定されるわけではないが、塩化水素、硫黄、酢、乳、酒石、リンゴ酸、コハク酸などの多くの酸から構成しうる。塩は水あるいは他の遊離塩基に対応するプロトン酸溶媒によく溶ける傾向がある。
【0120】
また、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、コーティング・ステント、TWEAK関連心臓疾患の治療に有用な医薬組成物の形態をとることができる。
【0121】
本発明も、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストを識別する方法に関する。そのようなTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、TWEAK関連疾患(つまり病気)、損傷のセッティングあるいは例えばFN14などTWEAKのレセプターが発現する組織の病理的疾患の治療に有用である。それらの疾患の例としては、線維症および心臓(例えば心筋ミオパチー)、腎臓、肺、肝臓、皮膚、骨格筋、脂質代謝(例えば肥満)、胃腸管、膵臓、生殖器、神経組織(神経変性など)、軟骨、骨、および結合組織の疾患が挙げられる。本発明によると、そのようなTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、生体内(in vivo)または生体外(in vitro)で前駆細胞のふるまいを調節して組織の交代を促進するのにも有用である。
【0122】
TWEAKアンタゴニストを認識する、以下のステップを有する1つの実施形態。
1)TWEAKポリペプチド、断片、類似物質、突然変異タンパク質、あるいはその擬似物質をコードしている外因性のDNAを発現している遺伝子組換え実験動物を、TWEAKアンタゴニスト候補である化合物にさらす。
2)遺伝子組換え実験動物から得た線維化した組織、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質、胃腸管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、骨の組織あるいは結合組織を、外因性のDNAを発現しているが化合物にさらされていないレファレンス動物から得た同じ器官または組織と比較する。
【0123】
その後、3)化合物が線維化した組織、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質、胃腸管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、骨の組織あるいは結合組織に影響を及ぼしたかを判定する。もう1つの実施形態では、ここに述べられているように遺伝子組換え実験動物は哺乳類であるか哺乳類でないかを問わない。
【0124】
ここに述べた遺伝子組換え動物は、発現するとTWEAK関連疾患に罹患するTWEAKポリペプチドをコードする外因性のDNA5を発現する。本実施例では、外因性のTWEAKタンパク質を、途切れた状態、可溶状態、あるいは全長がそろった状態、膜に結合した状態のいずれかの形態で発現する遺伝子組換えマウスを発生させた。外因性のTWEAKタンパク質を発現するマウスにより、以下の表現型が明らかになった。すなわち、非炎症型拡張心筋ミオパチー、鬱血性心不全、肝臓上皮細胞肥厚化;肝細胞空胞化、多病巣性炎症などの肝臓傷害および炎症性腎臓疾患、尿細管ネフロパシーなどの非炎症性腎臓疾患、嚢胞、糸球体ネフロパシー、腎臓尿細管肥厚化、腎臓線維症および炎症性肺疾患などである。さらに、外因性のTWEAKタンパク質を発現するウイルス・ベクターに感染したワイルドタイプのマウスも、同様に管状肥厚化、肝細胞死、肝臓線維症および肝臓傷害の症状を示した。
【0125】
これらの実験動物を保有すれば、当業者は創薬を強力に推し進めることができるようになる。具体的には、外因性のTWEAKタンパク質を発現する実験動物は、ここで述べたTWEAK関連疾患の予防あるいは治療に有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを探し当てる方法を実現するためのモデル・システムを表している。
【0126】
好ましい実施形態では、これらモデル・システムに有用な動物は哺乳類であるか哺乳類でないかを問わない。より好ましい実施形態では、哺乳動物はマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、および霊長類を指す。他のより好ましい実施形態では、哺乳類でない動物は鳥類、魚類、両生類、昆虫、および無脊椎動物を指す。
【0127】
動物にとって外因性のDNAの発現を調節する発現調節配列を通じて、遺伝子組換え動物のTWEAKポリペプチドをコードする外因性のDNAは発現する。転写を調節する発現調節配列としては、例えば、プロモーター、エンハンサー転写終了部位、ローカス調節領域、RNAポリメラーゼ・プロセッシビリティー・シグナル、およびクロマチン・リモデリング因子などが挙げられる。後転写イベントを調節する発現調節配列としては、スプライス・ドナーおよびアクセプター部位ならびに転写されたRNAの半減期を改変する、例えば、ポリA付加あるいはRNA結合タンパク質の結合部位を示す配列などが挙げられる。翻訳を調節する発現調節配列には、リボソーム結合部位、目標となるポリペプチドの発現または特定の細胞区画の配列、ならびに翻訳の速度や効率を改変する5’および3’のUTRの配列が挙げられる。
【0128】
遺伝子組換え動物でTWEAKを発現するための好ましい発現調節配列は、例えばレトロウイルスLTR由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、サイトメガロ・ウイルス(CMV)(CMV プロモーター/エンハンサーなど)、シミアン・ウイルス 40(SV40)(SV40 プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス、(例えば、アデノウイルス・メジャーレート・プロモーター(AdMLP)),ポリオーマなどのタンパク質の大量発現を誘導するウイルス因子および強力な、ネイティブ免疫グロブリンとアクチン・プロモーターなどの哺乳類プロモーターを含む。1つの実施形態では、TWEAKポリペプチドをコードするDNAはアルファ・アンチトリプシン(AAT)プロモーターに制御されている。ウイルスの発現調節因子および配列そのものについての詳細な説明は、例えば米国特許第5168062号;第4510245号;および第4968615号を参照。
【0129】
プロモーターを含む組織特異的発現制御因子由来のトランスジェニック動物中で、外来DNAを発現させることも可能である。組織特異的発現制御因子は、当技術で既知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、肝臓特異的アルブミン・プロモーター(Pinkert et al.,Genes Dev.1:268−277(1987))、リンパ系特異的プロモーター(例えばCalame and Eaton,Adv.Immunol.43:235−275(1988);Winoto and Baltimore,EMBO J.8:729−733(1989);Banerji et al.,Cell 33:729−740(1983);およびQueen and Baltimore,Cell 33:741−748.(1983))、神経細胞特異的プロモーター(例えばByrne and Ruddle Proc.Natl.Acad.Sc.i.USA 86:5473−5477(1989))、膵臓特異的プロモーター(例えばEdlund et al.,Science 230:912−916(1985))、乳腺特異的プロモーター(例えば米国特許番号第4,873,316号および欧州特許出願第264,166号)、および発生的調節(developmentally−regulated)プロモーター(例えばKessel and Gruss,Science 249:374−379(1990);Campes and Tilghman,Genes Dev.3:537−546(1989))が挙げられる。組織特異的プロモーターの他の非限定的な例としては、心臓組織プロモーター・アルファ・ミオシン重鎖プロモーター(αMHC)、皮膚組織プロモーター・ケラチン−14(K14)、肺組織プロモーター界面活性剤タンパク質C(SPC)、ならびに腎臓組織プロモーターKsp−カドヘリンおよび腎臓アンドロゲン調節タンパク質(KAP)が挙げられる。メタロチオニン(MT)プロモーター等の誘導性真核細胞プロモーターまたは当技術で既知の他の誘導性真核細胞プロモーターから外来DNAを発現することも可能である。
【0130】
本発明の一実施形態では、本発明のトランスジェニック動物中で発現されるTWEAKポリペプチドは、完全長TWEAKポリペプチドでもよい。別の実施形態では、トランスジェニック動物中で発現される該ポリペプチドは、TWEAKポリペプチドのフラグメントである。好適な実施形態では、TWEAKポリペプチド・フラグメントは、可溶性TWEAKポリペプチドである。
【0131】
別の実施形態では、本発明は、心臓、血管、肺、肝臓、腎臓、脳、胎盤、骨格筋、膵臓、脾臓、リンパ液、胸腺、虫垂、末梢血リンパ球、消化管、神経細胞、皮膚、脂肪細胞、軟骨、硬骨、結合組織からなる群より選択される組織で、TWEAKポリペプチドをコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物に関連する。一実施形態では、TWEAK DNAは、構成性プロモーターから発現される。別の実施形態では、該DNAは、誘導性プロモーターから発現される。別の実施形態では、該DNAは、組織特異的プロモーターから発現される。
【0132】
本発明は、TWEAK関連状態の治療用の医薬品として作用することが可能なTWEAKアゴニスト化合物を同定する方法、あるいは本発明に従って生体内(in vitro)または生体外(in vitro)で前駆細胞の挙動を調節することによって組織置換を促進するための方法にも関連する。正常動物にアゴニスト候補化合物を投与して、器官系でのその効果を評価することが可能である。その後、治療動物由来の線維化、心臓、肝臓、腎臓、肺、皮膚、骨格筋、脂肪、消化管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、硬骨、または結合組織を、未治療動物由来の同一組織と比較する。それによって、該化合物が任意の該組織中で生物学的効果を誘発したかどうかが決定される。
【0133】
本発明は、TWEAK関連状態の治療用の治療標的として作用することが可能なTWEAK調節遺伝子を同定する方法にも関連する。例えば、様々な組織での正常動物と比較して、TWEAKトランスジェニック動物でRNAプロファイリングを実行することが可能であり、これによって薬物標的が同定される。
【0134】
本発明の更なる目的は、筋肉細胞、軟骨、硬骨、または基質細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞、および皮膚細胞等の結合組織細胞タイプを生じる間葉幹細胞タイプの増殖または分化を含む前駆幹細胞増殖または分化に影響を及ぶす方法を提供することである。本発明の目的は、胆管上皮細胞または肝細胞および尿細管上皮を生じる腎臓前駆細胞を生じる卵形細胞の増殖または分化能力に影響を及ぼす方法を提供することでもある。
【実施例】
【0135】
この発明をよりよく理解するために、以下の実施例を説明する。これらの実施例は、説明することのみを目的とするもので、いかなるかたちであっても本発明の範囲を制限するものと解釈することはできない。
【0136】
(実施例1)
(TWEAKトランスジェニック・マウスの生成)
TWEAK活性および生体内(invivo)において、TWEAKシグナル伝達に関する生物学的帰結の対象臓器を同定するために、標準的トランスジェニック技術を使用して2匹のマウスTWEAK発現コンストラクトを生成して、正常なマウス(C57Bl/6xDBA/2)F1および(C57Bl/6xSJL/J)F2にTWEAKペプチドを過剰発現させるために用いた。R.S.Williams and P.D.Wagner,J.Applied Physiology 88:1119−1126(2000)。使用したTWEAK発現コンストラクトは以下の通りである。(1)マウスIgGシグナル配列の下流に可溶型マウスTWEAK(指定sTWEAK)をコードするアミノ酸配列番号1の101〜249からのTWEAKcDNAを、ヒトα抗トリプシン(AAT)プロモーターとβ−グロブリン・イントロンの下流にあり、ヒト成長ホルモン(hGH)polyA配列の上流にあるCH269発現ベクター(SV40 polyA付加配列を含むベクター誘導体PCDEP4(Invitrogen)に注入した。(2)アミノ酸配列番号1の1〜249に相当するタンパク質(指定FL−TWEAK)の完全長、膜貫通型をコードするcDNAを、FL−TWEAK配列+SV40 polyA付加部位が含まれるpBlueScript発現ベクターに注入した。(Desplat−Jego et al.,J.Neuroimmunology 133:116−123(2002)の記載に準拠)。次に上記+polyA付加部位を単離し、もう一方のベクター中にクローニングした。ApoEエンハンサー−ヒトAATプロモーターが含まれるフラグメントの調節領域を上流側に注入し、発現ベクターCA300を生成した。AATプロモーターは、主に肝臓と、腎臓を含む他の組織の下位とにおいて転写を誘発していることが明らかになった。P.Koopman et al.,Genes Dev.3:16−25(1989)
sTWEAKトランス遺伝子コンストラクトに関しては、ヌクレオチド468〜488(5’プライマー)配列およびヌクレオチド配列番号2番の693〜713(3’プライマー)の相補鎖配列に相当するプローブを用いて、23匹の創始トランスジェニック・マウスをそれぞれtail DNA PCR法で同定した。また、TWEAK用の血清ELIZA法によって、23匹の創始動物のうち10匹からは血清中に検出可能なレベルのTWEAKが0.06〜3.0mcg/mlの範囲で存在することが明らかになった。さらに、残り13匹の創始マウスから血清TWEAKを検出することは不可能であった。すなわち、血清TWEAKが10ng/ml以下であったことを示す。PCR+、血清TWEAK+の創始マウス10匹のうちの9匹は、月齢約4〜5ヶ月で健康障害が認められたことが判明した。これらのマウスには、体重の減少、背中の曲がり、粗毛および眼球突出がみられた。このうち5匹が突然死亡した。従って、疾患の兆候が見られた残りの4匹が健康障害の兆候をもつ検体となった。これとは対照的に、13匹のPCR+血清陰性である創始マウスのうち1匹のみに健康障害あるいは死亡が確認された。
【0137】
FL−TWEAKトランス遺伝子コンストラクトに関しては、2匹のトランスジェニック創始マウスがそれぞれ、肝臓のTWEAK mRNA発現に用いるtail DNA PCR法およびNorthern blot分析によって同定された。さらに、TWEAK用の血清ELIZA法によって、これらの創始(foundrs)動物は二匹の血清中には検出可能なレベルのTWEAKは存在しないことが明らかになった。すなわち、10ナノグラム/ml以下であった。FL−TWEAK Tg創始(founder)マウスには、臨床的に確認できる表現型は見られなかった。
【0138】
(実施例2)
(sTWEAKをコードする外来DNAを搬送するアデノウイルス・ベクターに感染させたマウスのTWEAK過剰発現)
生体内(in vivo)のTWEAK過剰発現による生物学的影響を同定するために、週齢8〜10週のメスのC57BL/6マウス成体を、Tao et al.,Molecular Therapy 3:28−35(2001)に記載の標準アデノウイルス技術を使用して、sTWEAK(「アデノ−TWEAK」)または緑色に発光する発光クラゲのタンパク質(「GFP」)に対しcDNAを活性するサイトメガロ・ウイルス(CMV)プロモーターを持つ複製欠損アデノウイルス・ベクターに感染させた。GFP(「アデノ−GFP」)を含むアデノベクターは、陰性の対照として使用された。マウスをアデノ−TWEAKコンストラクトに感染させることに成功したかどうかを確認するため、標準ELIZAアッセイを用いて血清中のTWEAKタンパク質のレベルを測定し、様々な時点で観察を行った。
【0139】
マウス成体におけるマウスsTWEAKの規則的な過剰発現は、少なくとも3つの主要臓器である肝臓、腎臓、心臓の組織変化を誘発した。表1を参照。アデノウイルス発現マウスコンストラクトの表現型を実施例1に記載の表1のTWEAK Tgマウスの表現型と比較した。これらの観察については、以下の複数の実施例中で詳細を述べる。
【0140】
(表1.TWEAK過剰発現によるマウス成体の組織リモデリングの誘発)
【0141】
【表1】
【0142】
(実施例3)
(sTWEAKおよびFL−TWEAK誘導性拡張型心筋症)
実施例1で生き残った4匹のPCR+、血清sTWEAK+創始マウスを殺し、全体に渡って形態的異常を調べた。表2を参照。検死時の顕微鏡検査よって、正常なマウスと比較した場合、上記マウスには2〜3倍に肥大した認拡張型心筋症が認められた。複数のsTWEAKトランスジェニック創始マウスにはそれぞれ拡張型心筋症の表現型が認められたため、個別の追加事象が原因である可能性は低いと考えられる。さらに、sTWEAKトランスジェニック・マウスを血液生化学検査によって分析した結果、心筋特異的クレアチンキナーゼが上昇していることが明らかになった。
【0143】
(表2.sTWEAKトランスジェニック・マウス)
【0144】
【表2】
【0145】
C57BL/6株に連続的に戻し交配をすることによって作製されたFL−TWEAKトランス遺伝子系からのマウスには、拡張型心筋症の表現型が認められた。表3を参照。FL−TWEAK陰性のトランス遺伝子の同腹仔には、心臓の異常は認められなかった。
【0146】
(表3.FL−TWEAKトランスジェニック・マウス)
【0147】
【表3】
【0148】
これらのことを統合して考えると、データが示すように、心臓の表現型はTWEAKに依存していることが明確になった。
【0149】
sTWEAKトランスジェニック・マウスおよびFL−TWEAKトランスジェニック・マウスの心臓の組織病理分析の結果は同様のものであった。FL−TWEAKトランスジェニック・マウスの心臓(「Tg」)と非トランスジェニック(「NTg」)同腹仔の正常な心臓との比較を低倍率顕微鏡で検査した結果は、図1の通りである。記載されているFL−TWEAKトランスゲニックマウスの心臓は、TWEAKトランスジェニック・マウス(PCR+、血清TWEAK+)から摘出されたTWEAKトランジェニックマウスの心臓の典型である。トランジェニックマウスの心臓には、拡張型心筋症が認められ、心室および心房の肥大が確認された。これらの心臓欠陥と一致するように、上記動物には心房および心室の血栓症が多く見られた(図1)。肺および肝組織の分析から、数種の動物の組織には鬱血があることが認められた。
【0150】
高倍率顕微鏡による検査により、心筋細胞肥大および巨大核を含む心臓に関して、他の組織病理学的な結果が判明した。組織病理学的に分析した結果、TWEAKトランスジェニック・マウスの心室には、炎症の兆候は明らかに認められなかった。従って、TWEAK関連状態が見られる心筋症は本質的には非炎症性である。
【0151】
sTWEAKトランスジェニック・マウス(創始マウス3匹および孫マウス1匹)の末血を血液生化学検査した結果、特に心臓内(すなわち、MB型CK)のクレアチンキナーゼ(CK)の濃度が異常に高く、心臓圧迫、心臓損傷をもつ可能性が高いことを示した。
【0152】
アデノTWEAK感染させた週齢8〜10週のメスのC57BL/6マウス(実施例2を参照)は、アデノウイルスGFP感染陰性の対照マウスと比較すると、感染後3週間目に拡張型心筋症になっていることが明らかである。組織病理学(図2)からも明らかであるように、TWEAK感染マウスの心臓は、拡張型心筋症であることが明確になった。
【0153】
これらのことを統合して考えると、TWEAKは、拡張型心筋症および鬱血性心不全(CHF)を含む心筋症に関し、重要な役割を果たしていることが明らかになった。
【0154】
(実施例4)
(TWEAKによって生じる肝上皮細胞過形成、肝細胞空胞形成、肝細胞死、胆管過形成、肝線維症および肝障害)
肝上皮過形成および肝細胞空胞形成においてのTWEAKの働きは、sTWEAKポリペプチドを発現するDNAを持つアデノウイルスで感染させた野生型マウスの損傷と同様に、sTWEAKおよびFL−TWEAKトランスジェニック・マウスの損傷でも確認された。
【0155】
実施例1から得られたTWEAK Tgマウスの肝臓は、NTgマウスと比べて、2週間の年齢で顕著な胆管および卵形細胞過形成を示した。(図3を参照せよ。)
表4に示すように、10ng/ml以下の血清TWEAK濃度であっても、2つの創始FL−TWEAKトランスジェニック・マウスの肝臓は、緩やかな胆管および卵形細胞過形成を示した。C57BL/6バックグラウンドでのFL−TWEAKトランスジェニック・マウスの戻し交配で、顕著な胆管および卵形細胞過形成が認められた。(表4)
(表4.FL−TWEAK トランスジェニック・マウス)
【0156】
【表4】
【0157】
同様に、0.2および3.0μg/ml間のTWEAK血清レベルを有するsTWEAKトランスジェニック創始細胞は、顕著な胆管および卵形細胞過形成が認められた。(表5)
(表5.sTWEAK トランスジェニック・マウス)
【0158】
【表5−1】
【0159】
【表5−2】
【0160】
胆管の上皮細胞および卵形細胞と肝細胞を区別するA6mAbを有する実施例1のTgマウスから得られるFL−TWEAK Tg肝臓断面の免疫組織化学(IHC)染色により、この胆管および卵管過形成が確認された。(Engelhardt et al.,Differentiation 45:29−37(1990))
図4はNTgマウスと比較して、FL−TWEAK Tgの肝実質までの拡大と同様に、門脈域に関連するA6陽性細胞の増加も示す。FL−TWEAK Tgマウスからのヘマトキシリンおよびエオシン染色部のより大きな拡張もまた、門脈域の胆管に隣接する卵形細胞の存在下で、明らかに著しい増加を示す。(図5)増殖する細胞核抗原(PCNA)の免疫組織化学によって、早ければ2週間の年齢でNTgマウスと比較したTWEAK Tgマウスの胆管および卵形細胞の増殖頻度の増加が確認された。後になって、つまり8週間および7ヵ月の間の年齢で、NTgマウスと比較したTWEAK Tgマウスの肝細胞の増殖頻度の増加が観察された。(図示せず)さらにNTg同腹仔と比較すると、FL−TWEAKおよびsTWEAKの双方は、実施例1から得られた7ヵ月のTgマウスの肝細胞空胞変性を誘導した。(図6)
実施例2に記載のアデノ−TWEAKウイルスを用いたsTWEAKを過剰発現している8−10週間の年齢のC57BL/6およびBALB/c SLIDマウスは、顕著な血清TWEAK濃度を示した。図7を見ると、血清TWEAK濃度の測定におけるアデノウイルスの異なる量の分娩効果を示す。静脈内のマウス(「B’’線によって表される)につき、どちらかのアデノウイルスの1011粒子、静脈内のマウス(「J’’線によって表される)につきアデノウイルスの1010粒子、あるいは筋肉注射のマウス(「H’’線によって表される)につきアデノウイルスの1011粒子によってマウスが感染した。3日目から7日目のC57BL/6バックグラウンドのマウスおよび3日目から4日目のBALE/c SLIDバックグラウンドのマウスに認められる血清黄疸によって、アデノ−sTWEAKに感染したマウスは肝障害を引き起こした。何匹かのBALE/c SLIDマウスは、4日目に死亡した。
【0161】
さらに、3日目までの対照GFPに感染した肝臓(アデノ−GFP)と比較したTWEAKに感染した肝臓(アデノ−sTWEAK)において、高いレベルのスパラギン酸塩アミノトランスフェラーゼ(「AST」)およびアラニン・アミノトランスフェラーゼ(「ALT」)の肝酵素マーカーで示されるように、実施例2に記載されたアデノ−sTWEAKに感染したC57BL/6マウスもまた早ければ投与後2−3日目に現れる肝細胞死を発現した。(表6および図8)。単独でアデノウイルス・ベクターが炎症を誘導することが予想されるように、感染後7日目までに双方の肝酵素もまたアデノ−GFP治療したマウスで増加した。収集した肝細胞および断片化された核を含む強めに濃縮したエオシン好性の「議員体(Councilman bodies)」により特徴づけられ、組織学的形態で示されるように、肝細胞死もまたTWEAK−感染した肝臓において顕著に見られた(図8)。アデノ−sTWEAKで治療したマウスは、さらにはっきりと管の過形成反応を示した。感染後7日目にピークに達し、11日目も速やかに顕著な反応を示した(図8)。TWEAK感染した肝臓において、明視野顕微鏡法で識別することにより、胆管の上皮および卵形細胞に固有なA6マーカーを発現する過形成構造が認められた。
【0162】
(表6.Ad−TWEAK およびAd−GFP 動物の肝酵素値)
【0163】
【表6】
【0164】
細胞TWEAKレセプターであることを示すFn14は、ガラクトサミン(GalN)および四塩化炭素(CCl4)のような肝毒素へ露出した後、誘導された。図9は、Fn14および暗視野顕微鏡法のための放射性同位元素で標識されたプローブを用いて、in situでのハイブリダイゼーション(ISH)によって測定される通常の成体マウス肝臓では、Fn14が検出可能でないことが明らかにされた。しかし、Fn14は以下のCCl4損傷を大きく誘導した。類似した結果は、Ga1N損傷の後に得られた(図示せず)。
【0165】
アデノ−GFP対照肝臓と比較して、アデノ−sTWEAK肝臓に見られるように、実施例2に記載されたアデノ−TWEAKに感染したC57BL/6マウスもまた、肝細胞および若干の過形成構造におけるFn14の上方調節を示した。(データは示されない)
Liu et al.,Hepatology 28:1260−1268(1999)およびOlynyc et al.,Am.J.Pathol.152:347−352(1998)に記載されているように、10週間目のC57BL/6マウスの肝臓損傷が胆管のライゲーションによって誘導された2つのダクト・モデルにおいて、さらにFn14の役割は示された。一般の胆管は、0日目の手術によって結紮され、10週間の年齢で5匹のC57BL/6マウスはそれから術後4日目から8日目に安楽死した。肝臓のパラフィン断面はその後に調整され、完全なFn14遺伝子を含む放射性同位元素で識別されたネズミのTWEAKおよびFn14アンチセンス・プローブを用いて、TWEAKおよびFn14の発現はin situでのハイブリダイゼーションによって決定された。図10に示すように、4日目までにFn14は胆管の上皮細胞において強く発現したが、肝細胞においては発現しなかった。8日目までのFn14発現で、胆管の上皮細胞はかなり減少するが、若干の低いレベルのマウスではまだ検出可能であった。(データは示されない)しかしTWEAK発現は変化せず、この胆管結紮モデルで検出可能ではなかった。これらの結果は、Fn14発現が特定の肝臓損傷に応答する胆管の上皮細胞においてアップレギュレーションされ、このように肝線維症で重要な役割を果たすことを示す。
【0166】
総合すればこれらの観察から、TWEAKが肝臓の上皮細胞過形成、肝細胞空胞形成、肝障害、肝細胞死、胆管過形成および肝線維症の重要な要因であることが確認された。
【0167】
(実施例5)
(FL−TWEAKおよびsTWEAKは腎疾患を引き起こす)
実施例1から得たFL−TWEAKトランスジェニック・マウスは、軽度の多巣性炎症を含む顕著な腎疾患、尿細管腎症、嚢胞、糸球体腎症、尿細管好塩基球増加、尿細管拡大、尿細管空胞形成、およびヒアリン円柱を示した。
【0168】
実施例2に記載されるように、週齢10週のアデノ−TWEAK感染C57BL/6マウスは、陰性対照アデノ−GFP感染マウスと比較して、糸球体腎症および尿細管過形成を示した。また、アルポート疾患のマウス・モデル中のFn14発現の増加によってアルポート症候群でのTWEAKの役割が示された。さらに、TWEAKアンタゴニストを用いた治療によって、片側性尿管閉塞症誘発腎線維症のマウス・モデルで、腎線維症でのTWEAKの役割が実証された。
【0169】
皮質間質の増殖は、通常、急性または慢性炎症性細胞および線維化組織とともに水腫または浸潤が原因である。実施例1から得たFL−TWEAKトランスジェニック・マウスは、尿細管腎症および軽度の多巣生間質性炎症を示した。より具体的には、FL−TWEAKトランスジェニック・マウスと非トランスジェニック・マウスを比較する腎臓切片は、週齢8週で明白な尿細管好塩基球増加を示した(図11、中央パネル)。
【0170】
糸球体腎症は、白血球、すなわち好中球および単球両方の浸潤、ならびに内皮、上皮、およびメサンギウム細胞の増殖によって特徴付けられ得る。実施例1に記載されるFL−TWEAKトランスジェニック・マウスは、メサンギウム細胞の細胞増多、ならびに近隣の尿細管上皮の好塩基球増加を有する皮膜上皮の肥大および軽度の皮膜肥厚によって証明されたように、顕著な糸球体腎症を示した(図12)。また、正常マウス糸球体形態(図11、右上パネル)と比較したとき、FL−TWEAKトランスジェニック・マウスは、軽度の糸球体周囲線維化とともに糸球体嚢胞形成に至る尿路空間の拡大を示した(図11、右下パネル)。
【0171】
FL−TWEAK Tgマウスで認められた尿細管好塩基球増加は、これらの尿細管細胞の細胞質中のRNAの増加、すなわち転写活性を示し、それらが増殖性細胞であるということを示唆する。増殖性細胞核抗原(PCNA)染色によって、実施例1に記載されるように、TWEAK−Tgマウスの腎臓中で増殖する尿細管細胞のサブセットがあること、およびこれらは好塩基性尿細管に対応することが確認された(図13)。好塩基性尿細管が近位または遠位尿細管であるかどうかを決定するために、(1)好塩基性尿細管を局在化するヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を用いて、(2)近位尿細管に特異的なレクチン(T.プルプレア(T.Purpureas)由来レクチン)を用いて、かつ(3)遠位尿細管に特異的なレクチンを用いて、TWEAK Tgマウス由来の3つの連続組織切片を染色した。図14は、実施例1に示すようなTWEAK Tgマウス中の好塩基性(増殖性)尿細管は、近位または遠位尿細管上皮マーカーを発現しないことを示す。
【0172】
TWEAK Tgマウス中の少なくともいくつかの上皮マーカーを持たない増殖性尿細管の存在は、腎臓障害のセッティング用のモデルと整合性があり、この際近位尿細管のS3切片に由来する細胞は、前駆細胞の特性を示す、すなわちそれらは増殖し、分化の指標である間葉細胞マーカーを発現し始める。これらの細胞のその後の分化は、新しい尿細管の再生を介して組織修復で役割を果たすことが可能である(Witzgall et al.,J.Clin.Invest.93:2175−2188(1994))。また、S3領域に存在する既存の前駆細胞集団の増殖および分化が起こり得る。
【0173】
TWEAK Tgマウス中のいくつかの上皮マーカーを持たない増殖性細胞の存在は、腎臓発達用のモデルとも整合性があり、この際上皮尿細管は、分化を受ける間葉前駆細胞から形成されることから、上皮マーカーおよび尿細管に特徴的な特性を獲得する。
【0174】
同様に、実施例2に記載されるように、アデノ−sTWEAKウイルスでの10週齢C57BL/6マウスの感染は、感染後11日で、糸球体皮膜の不定期な肥厚および過形成とともに、糸球体腎症および尿細管上皮の好塩基球増加を誘発する(図15)。これは、陰性対照アデノ−GFP感染マウスで認められる正常組織構造とは対照的であった。さらに、上皮細胞増殖の指標である好塩基球増加は、3日目に識別できたが、投与後1週間付近がピークであった。
【0175】
放射線標識TWEAKおよびFn14アンチセンス・プローブを用いたin situハイブリダイゼーション(ISH)によって示され、かつ暗視野顕微鏡によって明らかにされたように、腎疾患でのTWEAKの役割と整合して、TWEAK mRNAは、成体C57BL/6マウス腎臓中で広範に発現されることが示され(図16)、Fn14 mRNAは、内部皮質/外側髄質の近位尿細管中で発現されることが示された(図17)。また、Fn14 mRNAは、アルポート症候群に対するマウス・モデルの腎臓中で誘発されることが示された。これは、週齢4から7週のアルポート・マウスでの疾患進行のように、野生型動物と比較した2つの個々のアルポート・マウス中のFn14 mRNA中の倍増として図18に示されている。
【0176】
TWEAKアンタゴニスト、すなわちマウスFn14−Fc融合タンパク質を用いて処理することによって、アルポート疾患のマウス・モデルでのTWEAKの役割を直接試験した。対照IgG2a(muP1.17)またはmuFN14−Fc融合タンパク質(Biogen(Cambridge)によって調製)を用いて、Cosgrove et al.,Genes Dev.10(23):2981−2992(1996)に従って調製された5つのアルポート・ノックアウト(KO)マウスの2つの群を試験した。使用した対照IgG2aは、ハイブリドーマから産生され、標準的mAb精製手順によって精製されたマウス骨髄腫タンパク質P1.17である。muFN14−Fcは、マウスFn14の細胞外ドメインおよびマウスIgG2aのFc領域の融合タンパク質である。ヒト293胎児腎臓細胞で、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で融合タンパク質を生成して、標準的mAb精製手順によって精製した。第1の処理は、週齢3週で、腹腔内(IP)経路によるタンパク質100マイクログラムの投与量を用いた。同投与量を1週間に2度投与して次の4週間処理を継続した。マウスを7週目(7週齢)の終わりに屠殺した。腎臓を回収して、パラフィンに包埋し凍結した。パラフィン切片のH&E染色から得た糸球体形態、平滑筋アクチン染色での活性化筋線維芽細胞、および凍結切片のCD11b染色による活性化単球によって、腎線維症および炎症の程度をスコアリングした。平滑筋アクチンおよびCD11b染色切片を用いて、ポジティブに染色された領域を定量して、MetaMorphコンピューター・プログラムによって線維症および炎症の程度をそれぞれ評価した。分析結果は、FN14−Fc処理マウス中の糸球体の健康状態は、大幅に改善された(処理Fn14−Fc中で病状を有する39%のみに対して、処理対照Ig中の病状を有する59%の糸球体、P値=0.03)ことを示す。糸球体病状は、半月体および/または糸球体線維症の存在によって特徴付けられる。さらに、処理マウス中の腎臓の皮質領域での線維症は、アルファ平滑筋アクチン染色、p値=0.04によって測定されたように著しく減少された。FN14−Fc処理マウス中の単球浸潤の減少での一般的傾向もあった。これらの結果によって、アルポート・マウスのFN14−Fc処理は、腎臓の皮質領域での線維症を減少させ、糸球体の一般的形態を改善することが顕著に示される。
【0177】
TWEAKアンタゴニスト、すなわちハムスター抗TWEAKモノクローナル抗体を用いた処理によって、片側性尿管閉塞症誘発腎線維症のマウス・モデルでもTWEAKの役割を試験した。腎線維症進行に対するマウス・モデルでは、尿管を結紮して、片側性尿管閉塞症(UUO)を引き起こした(Klahr et al.,Am J Kidney Dis 18:689−699(1991);Moriyama et al.,Kidney Int 54(1):110−119(1998)。障害のない腎臓は、比較的正常な腎臓機能を維持することができるので、UUOは、マウスで短期の腎臓不全なしで進行性腎硬化症を引き起こす。障害のある腎臓は、急激な広域の線維症を被る一方で、障害のない腎臓は、適応肥大を受ける。
【0178】
UUO誘発腎線維症に対するTWEAKアンタゴニスト処理の影響を形態計測学的に定量した。週齢8〜10週の8つのウイルス抗原非含有C57BL/6雄マウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor ME)の4つの群を用いた。該マウスを以下の集団に区分した。すなわち、PBS単独(VEH)、対照ハムスター抗キーホール・リンペット・ヘモシアニン(Keyhole Limpet Hemocyanin)(KLH) 抗体(HA4/8;BD Biosciences(San Jose)から購入)、ハムスター抗マウスTWEAK抗体(AB.G11;Biogen(Cambridge)により調製)、可溶性マウスTGF−β受容体Ig(TGF−βR、陽性対照;Biogen(Cambridge)により調製)、および非操作(UNOP)である。
【0179】
腎線維症を誘発するために、Hammad et al.,Kidney Int 58:242−250(2000)に記載されるように、0日目に、左尿管を無菌的に単離して、操作側の腎臓で結紮した。以下の群、すなわちPBS、HA4/8、およびAB.G11(抗TWEAK mAb)を外科手術後2、6、および9日で、かつsTGF−βR−Ig群を1、3、6、および8日で付加的に処理した。外科手術後10日で、左結紮腎臓を除去し、腎盤の中央を介して横断的に等分して、パラフィン切片化用に調製した。
【0180】
コラーゲンに特異的なトリクローム・マソン染色を用いてパラフィン処理腎臓切片を染色した。操作腎臓中の線維症の程度を評価するために、Metamorphプログラムを用いて、トリクローム・マソン・スライド中の青色染色領域を測定して、コラーゲン含有量を定量した(図19)。
【0181】
驚くべきことに、抗TWEAKモノクローナル(AB.G11)抗体処理動物由来の腎臓切片は、PBS処理動物と比較してコラーゲン含有量での42%の減少、および対照(HA4/8)抗体処理動物と比較してコラーゲン含有量での30%の減少を示した。これとは対照的に、可溶性TGF−β受容体Ig処理(TGF−βR)動物由来の腎臓は、PBS処理動物と比較してコラーゲン含有量での33%の減少、および対照(HA4/8)抗体処理動物と比較してコラーゲン含有量での19%の減少のみを示した。これらの結果によって、抗TWEAKモノクローナル抗体等のTWEAKアンタゴニストでの処理は、可溶性TGF−β受容体Ig(TGF−βR)によって示される減少よりも高程度で腎線維症を著しく減少させることが顕著に示される。
【0182】
以上のことをまとめて考えると、本明細書で提供される結果によって、TWEAKが、多巣性炎症等の炎症性腎臓状態と、尿細管腎症、嚢胞、糸球体腎症、アルポート症候群、尿細管好塩基球増加、尿細管拡大、尿細管空胞形成、ヒアリン円柱、尿細管過形成および腎線維症等の非炎症性腎臓状態とで重要な役割を果たすことが示される。
【0183】
(実施例6)
(TWEAKは肺の炎症を引き起こす)
実施例1に記載されているFL−TWEAKトランスジェニック・マウスおよび対照マウスからの肺の横断切片で、FL−TWEAKマウス Tgマウス、およびsTWEAK Tgマウスの両方(図20)に、著しい肉芽腫性炎症およびリンパ組織球性炎症が示された。また、ラジオ標識されたTWEAKアンチセンス・プローブを用いたイン・サイチュウ・ハイブリダイゼーション(in situ hybridization)(ISH)によって示され、かつ暗視野(ISH)顕微鏡法(図21)で明らかにされるように、正常なマウスの細気管支および肺胞を裏打ちする肺の細胞における内在性TWEAK発現が明らかになった。
【0184】
肺病におけるTWEAKの役割と一致して、成体C57ΒL/6マウスの肺で、Fn14 mRNΑが広く発現されている(図22)ことが、ラジオ標識されたFn14アンチセンス・プローブを用いたISHによって示され、かつ暗視野顕微鏡法で明らかにされた。
【0185】
まとめるとこれらのデータは、TWEAKが、肉芽腫性炎症およびリンパ組織球性炎症を含む炎症性の肺の状態を媒介する重要因子であることを示す。
【0186】
(実施例7)
(TWEAKは脂質生成および筋形成の両方を阻害する)
細胞分化へのTWEAKの効果を、当技術分野で周知である脂質生成および筋形成の2つの生体外(in vitro)モデルを用いて調査した。(Green and Meuth,Cell 3:127−133(1974);Yaffe and Saxel,Nature 270:725−727(1977))。
【0187】
脂質生成に関しては、3T3−L1細胞を、まずダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)ベースの増殖培地で集密状態に増殖し、その後、当技術分野で公知の方法にしたがって、脂質生成を行うように誘導した。Green and Kehinde,Cell 5:19−27(1976)。簡潔には、細胞を0日目に、デキサメサゾン、インスリン、およびIBMXを含有したDMEMベースのMDIメディアで2日間、それに続き、さらに2日間インスリンのみのDMEM培地で刺激した。5日目に、細胞を通常のDMEMベースの増殖培地で培養し、脂質生成は7日目にオイル・レッド染色によって評価した。
【0188】
筋形成に関しては、C2C12細胞をDMEMベースの増殖培地で近集密状態に増殖し、0日目に、2%のウマ血清を含有した低血清分化培地に切り換え、分化の引き金とした(Yaffe and Saxel,Nature 270:725−727(1977))。筋管形成を位相差顕微鏡を用いて調べ、写真を分化6日目に撮影した。
これらの2つの分化経路へのTWEAKの効果を調べるために、組換型ヒトTWEAK(TWEAK−FLAG、TWEAK、またはFc−TWEAK)の様々なバージョンを0日目に100ng/mlの終末濃度で添加し、補給を毎日行った。TWEAKは、両方の系(図23および24)で、脂質生成および筋形成の両方を阻害した。TWEAKの阻害作用の特異性は、ハムスターの抗TWEAKモノクローナル抗体AB.G11、またはhFn14−Fcを中和試薬として用いることで確認した。
【0189】
これらの結果は、TWEAKが細胞分化で重要な役割を果たすことを示す。
したがって本発明は、ここに開示したTWEAKポリペプチド、ペプチド、アゴニスト、またはアンタゴニストを用いて、ここに開示した前駆細胞の細胞分化に影響を与えるための方法を提供する。
【0190】
(実施例8)
(TWEAKはヒト間葉系幹細胞に結合する)
ヒト間葉系幹細胞(hMSCs)(Cambrex Corp.,East Rutherford,NJ)をMSCGM培地(Cambrex)で培養し、それらを5mMEDTAを含有するPBSでインキュベートすることによって採取し、蛍光活性化セル・ソーティング(FACS)分析用に調整した。
【0191】
細胞を、PBSおよび1%FBS、ならびに100ng/mLのFc−TWEAKを含むFACS緩衝液中で、氷上に1時間インキュベートした。
FACS緩衝液で2回洗浄した後、1:200希釈のフィコエリトリン結合ヤギ抗ヒトFc、またはヤギ抗マウスFcの二次抗体で細胞をインキュベートした(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)(図25)。バックグランド染色は二次抗体染色のみで測定し、破線によって示されている。
【0192】
図25で示されるように、TWEAKはヒト間葉系細胞に結合し、Fc−TWEAKの染色プロファイルが二次抗体のみと比較して移動していることによって明らかにされている。即ち、TWEAKが間葉系細胞(筋肉細胞と同様に、ストロマ細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞、および真皮細胞などの結合組織細胞型、軟骨、ならびに骨に分化することができる前駆細胞型)に結合できるということによって、TWEAKが、正常モデルと病気モデルとの両方において、これらの細胞形の分化での重要な役割を果たしていることが示されている。
【0193】
(実施例9)
(Fn14は神経幹細胞で発現される)
Fn14の発現は、C57ΒL/6および129/Sveバックグランドの両方のミクスチャー(mixture)に関して、胚13.5日目のマウスからの脳で調べた。その脳で、Fn14アンチセンス・プローブを用いてイン・サイチュウ・ハイブリダイゼーションを行った。陽性のシグナルが、神経幹細胞の位置と相関して、胚脳室の脳室下領域で検出可能であった(データは示されていない)。これらの結果は、Fn14が神経の細胞分化で重要な役割を果たすことを示す。
【0194】
(実施例10)
(TWEAK関連状態治療用の治療薬を同定する方法)
本発明によるTWEAK関連状態治療用の治療薬として作用するTWEAKアンタゴニスト化合物を同定するために、TWEAKポリペプチド、あるいは、そのフラグメント、類似体、突然変異タンパク質、または模倣体をコードする外因性DNAを発現する、マウスなどの試験動物を得る。それらの動物は、その後TWEAK関連状態用の治療薬として機能する可能性のある候補化合物に曝露される。その後、試験動物からの線維化、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂肪、胃腸、膵臓、生殖器、神経、軟骨、骨、または結合組織を、それら外因性DNAを発現するが候補化合物にさらされていない基準動物からの同一組織と比較し、候補化合物が線維化、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂肪、胃腸、膵臓、生殖器、神経、軟骨、骨、または結合組織のTWEAK関連状態に影響を与えたかを判定する。
【0195】
本発明によるTWEAK関連状態治療用の治療薬として作用するTWEAKアゴニスト化合物を同定するために、TWEAKポリペプチド、あるいは、そのフラグメント、類似体、突然変異タンパク質、または模倣体をコードする外因性DNAを発現する試験動物、または発現しない試験動物を、TWEAK関連状態用の治療薬として機能する可能性のある候補化合物に曝露することが可能である。その後、試験動物からの線維化、心臓、腎臓、肝臓、または肺組織を、候補化合物に暴露されていない基準動物からの同一組織と比較し、ここに記載されているように、生体内(in vivo)でのTWEAKシグナリングによって、候補化合物が前記組織になんらかの生物学的変化を誘導したかを判定する。
【0196】
この明細書で引用されたすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願それぞれが引用によって組み込まれるように特異的かつ個別的に明示される場合と同様に、引用によってここに組み込まれる。
【0197】
理解の明快さを目的として、以上の発明を、実施例および例示の方法によってある程度詳細に説明したが、この発明が教示するところの観点から、付随する請求の範囲を含む本明細書における開示の精神の範囲から逸脱することなく、この発明になんらかの変更および改善が加えられてもよいことは当業者にとって容易に明らかになるだろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓、肝臓、腎臓、肺、脂肪質、骨格筋、神経、硬骨、軟骨、皮膚、胃腸、脾臓、生殖器官、および結合組織の疾患等、TWEAK関連状態を治療するための方法および医薬品に関する。また、本発明は、TWEAK関連状態を治療するためのTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法を提供する。また、本発明は、TWEAKポリペプチド、もしくはそのフラグメント、類似体、または突然変異体タンパク質をコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物と、そのような動物を用いてTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法とに関する。さらに、本発明は、TWEAK発現に起因する疾患を診断する方法に関する。さらに、本発明は、TWEAKポリペプチド、アゴニスト、またはアンタゴニストを用いて、前駆細胞の細胞増殖または分化に作用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造的類似性からTNF−αと呼ばれるリガンドの腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのメンバーは、炎症反応、細胞性免疫、およびアポトーシス等の多様なプロセスでの重要な構成要素である。TNFリガンドは、直接的な細胞間接触を介したII型膜結合タンパク質として、もしくは自己分泌、傍分泌、または内分泌機能を持つ分泌タンパク質として、局所的に作用可能である。TNFファミリーのメンバーは、C−末端細胞外ドメインを介してTNF受容体(TNF−R)ファミリーのメンバーと結合する。TNFファミリーのメンバーとして様々なものがあり、TNF、リンホトキシン(LT)、Fas、CD27、CD30、CD40、4−1BB、OX−40、TRAMP、CAR−1、TRAIL、GITR、HVEM、オステオプロテゲリン(破骨細胞形成抑制タンパク質)、NGF、TRAIN、Kay(FAFF)、APRIL 、およびTWEAK(TNF同系性および低細胞死誘導能)が挙げられる。
【0003】
このようなサイトカイン受容体ファミリーの決定的特徴は、異なる2つのTNF受容体を分子クローニングすることで最初に明らかにされた高システイン細胞外ドメインにある。このファミリーの遺伝子群は、細胞機能の活性化に関与する細胞質領域、単一膜貫通領域、および細胞外リガンド結合ドメインを有するI型膜貫通タンパク質の特徴を持つ糖タンパク質をコードする。高システイン・リガンド結合領域は、特定のファミリー構成要素に依存して複数回反復されている緊密(tightly knit)ジスフィルド結合コア・ドメインを示す。多くの受容体が4個のドメインを持つが、わずか1個だけであっても、あるいは6個以上あってもよい。
【0004】
TFFファミリーのメンバーは、細胞の生存および分化、ならびに炎症等の急性宿主防御系で免疫系の調節に重要な役割を担う。治療上の利益を得るためにTNFファミリーのメンバーを操作する努力を当該技術分野で続けることで、疾患を調節する独特の手段が提供される可能性がある。例えば、このファミリーのリガンドのいくつか(例えば、LT、TNF、Fasリガンド、およびTRAIL)は、多くの形質転換細胞でアポトーシスによる細胞死を直接誘導することができる。Fas、ならびに場合によってはTNFおよびCD30受容体の活性によって、免疫調節機能を示しうる非形質転換リンホサイトでの細胞死を誘導することができる。
【0005】
プログラム細胞死を誘導する能力が重要であり、TNFファミリーのいくつかのメンバーでその特徴が十分研究されている。Fas媒介アポトーシスは、末梢あるいは胸腺での自己反応性リンパ球の調節で重要な役割を果たすように見える。または、TNFおよびCD30系は、T細胞および大型細胞未分化リンパ種細胞株の生き残りに関係している。TNF、Fas、またはLT−β受容体シグナル伝達に応じたこの細胞株での死は、アポトーシスの特徴を有する。
【0006】
TNFファミリーのリガンドを、該リガンドの細胞死誘導能に基づいて3つのグループに分類することができる。最初に、TNF、Fasリガンド、およびTRAILは多くの細胞株で細胞死を効率的に誘導することができ、それらの受容体は良好な標準死(canonical death)ドメインを有する可能性が高い。おそらく、DR−3(TRAMP/WSL−1)に対するリガンドもこのカテゴリーに分類される。次に、少しの細胞に限られているより弱い死シグナルをトリガーするリガンド(例えば、TWEAK、CD30リガンド、およびLTalb2)がある。これらの系での研究によれば、別個のより弱い死シグナル伝達機構が存在することが示唆されている。最後に、効率的に死シグナルを伝達できないメンバーがある。おそらく全てのグループが、細胞分化の結果として生ずるいくつかの細胞種、例えばCD40に対して抗細胞増殖効果を及ぼす可能性がある。
【0007】
一般に、死は、TNF受容体の細胞質側に存在する死ドメインの集合に続いて引き起こされる。死ドメインは、カスパーゼ・カスケードの活性化に至るさまざまなシグナル伝達構成要素のアセンブリを組織化する。いくつかの受容体(例えば、LTb受容体およびCD30)は、標準的死ドメインが欠如しているけれども、より弱く細胞死を誘導することができる。逆に言えば、CD40等の他の経路を経由するシグナル伝達は、細胞生存を維持する上で必要である。TNFファミリー・メンバーの機能の同定および特徴付けがさらに求められており、それによってTNFファミリー関連疾患に対する新規治療の開発が促進される。
【0008】
TWEAKは、エリスロポイエチン・プローブにハイブリダイズしたRNAのスクリーニングで単離された。Chicheportiche et al.,J.Biol.Chem.272:32401−32410(1997)。マウスおよびヒトのペプチドは、著しく高度な保存性を持っており、例えば受容体結合ドメインではアミノ酸の同一性が93%である。TWEAK(細胞から効率的に分泌されたことが示される)は、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵、脾臓、リンパ節、胸腺、虫垂、および末梢血リンパ球等の多くの組織で多量に発現される。
【0009】
1つの既知のTWEAKレセプターはFn14、すなわち細胞外マトリックスへの細胞を減少させ、かつ血清刺激増殖および遊走を減らす、成長因子によって調節された前初期遺伝子である(Meighan−Mantha et al.,J.Biol.Chem.274:33166−33176(1999))。 Fn14は、FGF、牛血清、およびホルボール・エステル処理によって誘導され、心臓、腎臓、肺、皮膚、骨格筋、卵巣、および脾臓組織で、さらに肝細胞癌モジュール及び他のガン細胞株で、相対的に高発現される。
【0010】
TWEAKは、多くの生物学的プロセスにかかわってきた。例えば、IFN−γおよびTWEAKで処理したHT29細胞は、アポトーシスを引き起こすことが示され、アポトーシスを誘導するTWEAKの能力が弱まり、感受性を示す細胞種はわずかである。Chicheportiche et al.,J.Biol.Chem.272:32401−32410(1997)。対照的に、TWEAKは、VEGF非依存型経路での内皮細胞の増殖および脈管形成を誘導することも示されている。Lynch et al.,J.Biol.Chem.274:455−8459(1999)。神経膠星状細胞は、TWEAKによる特異的結合および刺激を受ける。TWEAKは、炎症を起こした脳に浸透して神経膠星状細胞行動に影響を与える。TWEAKにさらされた神経膠星状細胞は、高濃度のIL−6およびIL−8を分泌し、さらにICAM−1発現を上方調節する。Saas et al.,GLIA 32:102−107(2000)。
【0011】
TWEAKもまた免疫系調節にかかわる。IFN−γによる刺激を受けると、単球はTWEAK発現を急速に起こし、そのヒト扁平上皮癌細胞に対する細胞毒性効果が抗TWEAK抗体により部分的に阻害された。抗TWEAK抗体と抗TRAIL抗体との組み合わせによって、細胞毒性がほぼ完全に阻害された。Nakayama et al.,J.Exp.Med.192:1373−1379(2000)。対照的に、免疫炎症反応の誘導物質であるリポ多糖体(LPS)で処理されたマウスでは、TWEAKmRNAの消失が急速に起こった。さらに、マウスの自己免疫溶血性貧血および全身性エリテマートーデス・モデルでもTWEAKmRNAが減少した。これらのデータによれば、TWEAK発現の下方調節が急性および慢性の炎症にとって重要なイベントであることが示唆される。Chicheportiche et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.279:162−165(2000)。
【0012】
現在、当該技術分野では、TWEAKの発現および機能(炎症性および非炎症性の両方の状態でのTWEAKの役割を含む)にどのような状態または疾患が関係しているのかについて完全には理解されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要約)
本発明は、複数の組織および器官系の疾患を含む様々な病的状態の重症度および進行に関与しているTWEAKの役割に関する。そのような病的状態として、急性心臓外傷、慢性心不全、非炎症性拡張型心筋症、うっ血心不全、肝上皮細胞過形成、肝細胞死、肝線維症、肝細胞空胞化、他の肝臓損傷、胆管系状態が挙げられる。また、胆管系状態として、胆管過形成、多病巣性炎症等の炎症性腎状態、尿細管腎症等の非炎症性腎状態、尿細管過形成、糸球体嚢胞、糸球体腎炎、アルポート症候群、腎臓尿細管空胞化、腎臓ヒアリン円柱、腎線維症、および炎症性肺疾患が挙げられる。本発明は、TWEAK分子と、ある種の心臓、肝臓、腎臓、および肺疾患との因果関係を確立する。本明細書で開示された発明は、肝臓組織、尿細管、皮膚細胞、脂肪細胞、骨格筋、軟骨、および硬骨、さらに骨髄および線維芽細胞等にある間質細胞等の結合組織細胞型の前駆細胞の挙動との関係も確立する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、TWEAK関連状態、すなわち、疾患、FN14等のTWEAKの受容体が発現される組織の障害または病理学的状態のセッティングを治療するための方法に関する。これらの状態として、線維形成、心筋症、ならびに腎臓、肺、肝臓、皮膚、骨格筋、脂質代謝(例えば肥満)、胃腸管、膵、生殖器、神経組織(神経変性を含む)、軟骨、硬骨、および結合組織の疾患が挙げられる。好ましい実施形態では、TWEAK関連状態は自然状態では非炎症性である。別の好ましい実施形態では、本発明は、TWEAKポリペプチドとその細胞内受容体との相互作用による干渉によって、TWEAK関連状態を治療する方法に関する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストと、TWEAK関連状態の治療に用いるそれらの医薬組成物とに関する。そのようなTWEAKアゴニストまたはアンタゴニスト(すなわち、阻害剤)として、抗TWEAK抗体またはその誘導体、抗TWEAK受容体抗体またはその誘導体、TWEAKポリペプチド・フラグメント、TWEAKポリペプチド類似体、TWEAK突然変異タンパク質、TWEAK模倣体(mimetics)、TWEAK融合タンパク質、TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメント、TWEAK受容体ポリペプチド類似体、TWEAK受容体突然変異体タンパク質、TWEAK受容体模倣体、TWEAK受容体融合タンパク質、有機化合物、および無機化合物が考えられる。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、組織再生または置換を必要とする宿主の治療に有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストと医薬組成物とに関する。また、生体内(in vivo)または生体外(in vitro)で前駆細胞集団の挙動を調整するためのTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストの使用に関する。前駆細胞は、前駆細胞は、肝細胞型、尿細管、心筋細胞、肺細胞型、皮膚細胞型、骨格の筋細胞型、脂肪細胞、胃腸細胞型、膵臓細胞型、神経の組織細胞型、軟骨および硬骨細胞型、ならびに線維芽細胞および骨髄内の間質細胞を含む結合組織細胞型の前駆体であってもよい。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストと、該TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを含む医薬組成物を生体内(in vivo)投与して、限定されるものではないが、毒素、ウイルス、化学療法または放射線誘発性障害、および遺伝性疾患または退行性疾患等を含む疾患または組織損傷のセッティングでの組織再生および弛緩を促進する。別の実施形態では、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストおよびそれら医薬組成物は、幹細胞または前駆細胞による細胞療法と組み合わせて用いて、組織および器官系の再生をおこなうことが可能である。別の実施形態では、幹細胞または前駆細胞集団を、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストおよびその医薬組成物によって、生体外(in vitro)で増やすことが可能である。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストの使用を介して増殖した前駆細胞集団を、組織再生または置換の必要性に応じて宿主への移植に使用することが可能である。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、TWEAK関連状態を治療するための治療薬として有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを同定する方法に関する。別の実施形態では、本発明はTWEAKポリペプチドをコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物に関する。この発明のさらなる実施形態は、疾患の分子マーカーとしてTWEAKを使用することを含む。
【0018】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
被験体中のTWEAK関連状態を治療するための方法であって、
前記被験体にTWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストを投与するステップを含み、
前記TWEAK関連状態は、
(a)線維症と、
(b)心臓疾患と、
(c)肝疾患と、
(d)肺疾患と、
(e)腎疾患と、
(f)皮膚疾患と、
(g)骨格筋疾患と、
(h)脂肪組織疾患と、
(i)消化管疾患と、
(j)膵臓疾患と、
(k)生殖器疾患と、
(l)神経疾患と、
(m)軟骨疾患と、
(n)硬骨疾患と、
(o)結合組織疾患と、
(p)細胞死と、
(q)TWEAK受容体を発現する組織の病的状態と、
からなる群より選択されることを特徴とする方法。
(項目2)
前記TWEAK関連状態は、非炎症性状態であることを特徴とする項目1記載の方法。
(項目3)
前記TWEAK関連状態は、非炎症性心筋症であることを特徴とする項目2記載の方法。
(項目4)
前記TWEAK受容体を発現する組織の病的状態は、
(a)線維症と、
(b)心筋症と、
(c)腎臓状態と、
(d)肺状態と、
(e)肝臓状態と、
(f)皮膚状態と、
(g)骨格筋状態と、
(h)脂肪組織状態と、
(i)消化管状態と、
(j)膵臓状態と、
(k)生殖器状態と、
(l)神経組織状態と、
(m)軟骨状態と、
(n)硬骨状態と、
(o)結合組織状態と、
からなる群より選択されることを特徴とする項目1または2記載の方法。
(項目5)
前記TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストは、
(a)抗TWEAK抗体と、
(b)抗TWEAK受容体抗体と、
(c)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(d)TWEAKポリペプチド類似体と、
(e)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(f)TWEAK模倣体と、
(g)TWEAK融合タンパク質と、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)有機化合物と、
(n)無機化合物と、
からなる群より選択されることを特徴とする項目1または2記載の方法。
(項目6)
前記TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストは、注射、経粘膜、経口、吸入、眼、直腸、ステント・インプランテーション、局所的、非経口、長時間作用インプランテーション、徐放性、遺伝子療法、および耳経路からなる群より選択される経路を介して前記被験体に投与されることを特徴とする項目1または2記載の方法。
(項目7)
前記TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストは、錠剤、丸薬、リポソーム、顆粒剤、球体、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤、ステント皮膜、および徐放性調合物からなる群より選択される送達調合物中にあることを特徴とする項目1または2記載の方法。
(項目8)
被験体中のTWEAK関連状態を治療するための方法であって、
細胞受容体、第2のTWEAKポリペプチド、およびTWEAK相互作用相手からなる群より選択される分子と第1のTWEAKポリペプチドとの相互作用に干渉することができるTWEAKアンタゴニストを前記被験体に投与するステップを含むことを特徴とする方法。
(項目9)
TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストとして作用する化合物を同定するための方法であって、
(a)TWEAKポリペプチドあるいはそのフラグメントまたは突然変異体タンパク質をコードする外来DNAを発現する試験トランスジェニック動物を前記化合物に暴露するステップと、
(b)前記試験トランスジェニック動物由来の線維化、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質、消化管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、硬骨、または結合組織を、前記外来DNAを発現するが前記化合物には暴露されていない基準トランスジェニック動物由来の対応する器官または組織と比較するステップと、
(c)前記化合物が前記試験トランスジェニック動物の前記線維化、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質、消化管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、硬骨、または結合組織に影響を及ぼすかどうかを決定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
(項目10)
前記化合物は、
(a)TWEAKポリペプチドと、
(b)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(c)TWEAKポリペプチド類似体と、
(d)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(e)TWEAK模倣体と、
(f)TWEAK融合タンパク質と、
(g)TWEAK受容体ポリペプチドと、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)有機化合物と、
(n)無機化合物と、
からなる群より選択されることを特徴とする項目9記載の方法。
(項目11)
前記化合物は、
(a)TWEAKポリペプチドと、
(b)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(c)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(d)TWEAK模倣体と、
(e)TWEAK融合タンパク質と、
(f)TWEAK受容体ポリペプチドと、
(g)TWEAK受容体フラグメントと、
(h)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(i)TWEAK受容体模倣体と、
(j)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(k)TWEAKポリペプチド、そのフラグメント、突然変異体タンパク質、または融合タンパク質を発現する細胞と、
(l)TWEAK受容体ポリペプチド、そのフラグメント、突然変異体タンパク質、または融合タンパク質を発現する細胞と、
からなる群より選択される抗原に指向される抗体であることを特徴とする項目9記載の方法。
(項目12)
前記試験トランスジェニック動物および前記基準トランスジェニック動物はそれぞれ、
(a)マウス、
(b)ラット、
(c)ハムスター、
(d)ウサギ、
(e)イヌ、
(f)ネコ、
(g)ウシ、
(h)ブタ、
(i)ヤギ、
(j)ウマ、
(k)ヒツジ、
(l)テンジクネズミ、
(m)鳥、
(n)霊長類動物、
(o)魚、
(p)両生類動物、
(q)昆虫、および
(r)無脊椎動物
からなる群より選択されることを特徴とする項目9記載の方法。
(項目13)
項目9記載の方法によって同定される化合物であって、
前記化合物は、
(a)TWEAKポリペプチドと、
(b)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(c)TWEAKポリペプチド類似体と、
(d)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(e)TWEAK模倣体と、
(f)TWEAK融合タンパク質と、
(g)TWEAK受容体ポリペプチドと、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)TWEAKポリペプチド、あるいはそのフラグメント、類似体、突然変異体タンパク質、模倣体、または融合タンパク質に指向される抗体と、
(n)TWEAK受容体ポリペプチド、あるいはそのフラグメント、類似体、突然変異体タンパク質、模倣体、または融合タンパク質に指向される抗体と、
(o)有機化合物と、
(p)無機化合物と、
からなる群より選択されることを特徴とする化合物。
(項目14)
前記抗体は、ポリクローナル抗体である項目13記載の化合物。
(項目15)
前記抗体は、モノクローナル抗体である項目13記載の化合物。
(項目16)
前記モノクローナル抗体は、ヒト化抗体である項目15記載の化合物。
(項目17)
前記抗体は、異種抗体である項目14または15記載の化合物。
(項目18)
TWEAKポリペプチドをコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物であって、
前記発現は、
(a)線維症と、
(b)心筋症と、
(c)腎疾患と、
(d)肝疾患と、
(e)肺疾患と、
(f)皮膚疾患と、
(g)骨格筋疾患と、
(h)脂肪組織疾患と、
(i)消化管疾患と、
(j)膵臓疾患と、
(k)生殖器疾患と、
(l)神経疾患と、
(m)軟骨疾患と、
(n)硬骨疾患と、
(o)結合組織疾患と、
(p)細胞死と、
からなる群より選択される状態に起因することを特徴とするトランスジェニック動物。
(項目19)
前記トランスジェニック動物は、
(a)マウス、
(b)ラット、
(c)ハムスター、
(d)ウサギ、
(e)イヌ、
(f)ネコ、
(g)ウシ、
(h)ブタ、
(i)ヤギ、
(j)ウマ、
(k)ヒツジ、
(l)テンジクネズミ、
(m)鳥、
(n)霊長類動物、
(o)魚、
(p)両生類動物、
(q)昆虫、および
(r)無脊椎動物
からなる群より選択されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目20)
前記外来DNAは、構成性プロモーターから発現されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目21)
前記外来DNAは、誘導性プロモーターから発現されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目22)
前記外来DNAは、組織特異的プロモーターから発現されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目23)
前記TWEAKポリペプチドは、
(a)完全長TWEAKポリペプチドと、
(b)可溶性TWEAKポリペプチドと、
(c)突然変異体タンパク質と、
(d)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
からなる群より選択されることを特徴とする項目18記載のトランスジェニック動物。
(項目24)
TWEAKポリペプチドをコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物であって、
前記外来DNAは、
(a)心臓、
(b)血管、
(c)肺、
(d)肝臓、
(e)腎臓、
(f)皮膚、
(g)神経、
(h)胎盤、
(i)骨格筋、
(j)膵臓、
(k)脾臓、
(l)リンパ液、
(m)胸腺、
(n)虫垂
(o)末梢血リンパ球、
(p)脂肪組織
(r)胃腸組織、
(s)軟骨、
(t)硬骨、および
(u)結合組織
からなる群より選択される器官または組織で発現されることを特徴とするトランスジェニック動物。
(項目25)
前記外来DNAは、構成性プロモーターから発現されることを特徴とする項目24記載のトランスジェニック動物。
(項目26)
前記外来DNAは、誘導性プロモーターから発現されることを特徴とする項目24記載のトランスジェニック動物。
(項目27)
前記外来DNAは、組織特異的プロモーターから発現されることを特徴とする項目24記載のトランスジェニック動物。
(項目28)
被験体中の拡張型心筋症を同定するための方法であって、
前記被験体中のTWEAKタンパク質発現、TWEAKタンパク質機能、TWEAK mRNA発現での変化、または染色体変化を検出するステップを含むことを特徴とする方法。
(項目29)
前記TWEAKタンパク質発現、TWEAKタンパク質機能、TWEAK mRNA発現での変化、または染色体変化は、
(a)免疫学的分析、
(b)免疫組織化学的分析、
(c)酵素または他のタンパク質機能アッセイ、
(d)ノーザンブロット、
(e)サザンブロット、
(f)一塩基多型分析、および
(g)蛍光in situハイブリダイゼーション分析
からなる群より選択される手段によって検出されることを特徴とする項目28記載の方法。
(項目30)
細胞増殖または分化に影響を及ぼすための方法であって、
TWEAKペプチド、TWEAKアゴニスト、またはTWEAKアンタゴニストに、前駆細胞を暴露することを含むことを特徴とする方法。
(項目31)
前記前駆細胞は、
(a)幹細胞、
(b)分化全能(totipotent)細胞、
(c)多能性(pluripotent)細胞、
(d)多能(multipotent)細胞、
(e)二分化能(bipotent)細胞、
(f)組織特異的細胞、
(g)胚細胞、および
(h)成体細胞、
からなる群より選択されることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目32)
前記前駆細胞は、未分化脂肪細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目33)
前記前駆細胞は、未分化筋原細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目34)
組織置換または再生を促進するための方法であって、
組織置換または再生の必要がある被験体に、
(a)抗TWEAK抗体と、
(b)抗TWEAK受容体抗体と、
(c)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(d)TWEAKポリペプチド類似体と、
(e)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(f)TWEAK模倣体と、
(g)TWEAK融合タンパク質と、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)有機TWEAKアゴニストと、
(n)有機TWEAKアンタゴニストと、
(o)無機TWEAKアゴニストと、
(p)無機TWEAKアンタゴニストと、
からなる群より選択される化合物を投与することを含むことを特徴とする方法。
(項目35)
前記方法は、前駆細胞または組織移植療法と組み合わせて用いられることを特徴とする請求項1、30、および34のいずれか1つに記載の方法。
(項目36)
前記前駆細胞または組織移植療法は、細胞の集団を増殖させることを特徴とする項目35記載の方法。
(項目37)
前記前駆細胞は、未分化軟骨細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目38)
前記前駆細胞は、未分化硬骨細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目39)
前記前駆細胞は、未分化結合組織細胞であることを特徴とする項目30記載の方法。
(項目40)
被験体中のTWEAK関連状態の治療用の医薬組成物の製造のためのTWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストの使用であって、
前記TWEAK関連状態は、
(a)線維症と、
(b)心臓疾患と、
(c)肝疾患と、
(d)肺疾患と、
(e)腎疾患と、
(f)皮膚疾患と、
(g)骨格筋疾患と、
(h)脂肪組織疾患と、
(i)消化管疾患と、
(j)膵臓疾患と、
(k)生殖器疾患と、
(l)神経疾患と、
(m)軟骨疾患と、
(n)硬骨疾患と、
(o)結合組織疾患と、
(p)細胞死と、
(q)TWEAK受容体を発現する組織の病的状態と、
からなる群より選択されることを特徴とする使用。
(項目41)
前記TWEAKアゴニストまたはTWEAKアンタゴニストは、
(a)抗TWEAK抗体と、
(b)抗TWEAK受容体抗体と、
(c)TWEAKポリペプチド・フラグメントと、
(d)TWEAKポリペプチド類似体と、
(e)TWEAK突然変異体タンパク質と、
(f)TWEAK模倣体と、
(g)TWEAK融合タンパク質と、
(h)TWEAK受容体ポリペプチド・フラグメントと、
(i)TWEAK受容体ポリペプチド類似体と、
(j)TWEAK受容体突然変異体タンパク質と、
(k)TWEAK受容体模倣体と、
(l)TWEAK受容体融合タンパク質と、
(m)有機化合物と、
(n)無機化合物と、
からなる群より選択されることを特徴とする項目40記載の使用。
(項目42)
被験体中のTWEAK関連状態の治療用の医薬組成物の製造のためのTWEAKアンタゴニストの使用であって、
前記TWEAKアンタゴニストは、細胞受容体、第2のTWEAKポリペプチド、およびTWEAK相互作用相手からなる群より選択される分子と第1のTWEAKポリペプチドとの相互作用に干渉することができることを特徴とする使用。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】拡張型心筋症でのTWEAKの役割を示す。A. A FL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスは、右心房右心房および心室での血栓症とともに重度の拡張を示す。B. 比較用として正常な心臓を示す。
【図2】心臓内TWEAK過剰発現によって心臓リモデリングが誘発される。心臓の切片を、アデノウイルスGFP対照コンストラクトと比較して、C57BL/6マウス成体にsTWEAK DNAを含むアデノウイルス・ベクターを感染させた後に、20日目にヘマトキシリン/エオシン染色し、倍率10倍で観察している。
【図3】TWEAKは、2週目および7ヶ月目でFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスを非トランスジェニック(Tg)同腹仔と比較することで明らかなように、胆管および卵形細胞過形成を誘発する。
【図4】TWEAKは、非トランスジェニック(NTg)同腹仔と比較して、FL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスで胆管上皮および卵形細胞マーカーに対して特異的であるA6mAbによる染色が増加したことにより明らかなように、胆管および卵形細胞過形成を誘発する。
【図5】TWEAKは、FL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスの門脈域に巨大な卵形細胞が存在することから明らかなように、卵形細胞過形成を誘導する。
【図6】TWEAKは、非トランスジェニック(Ntg)同腹仔と比較して、FL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウスに肝細胞空胞化を生ずる。
【図7】マウスTWEAK−DNAを含むアデノウイルス・ベクターが感染したマウスでの血清TWEAK濃度。
【図8】肝臓でのsTWEAK DNA過剰発現は、肝細胞死および導管過形成を誘発する。肝臓の切片を、アデノウイルスGFP対照コンストラクトと比較して、C57BL/6マウス成体にアデノウイルス・ベクターを感染させた後の3日目および11日目にヘマトキシリン/エオシン染色により倍率20倍で観察する。
【図9】マウスでCCl4により肝障害を起こした後に、TWEAK受容体Fn14が誘発される。正常マウス肝のFn14mRNAとCCl4誘発肝障害のFn14mRNAとをin situハイブリダイゼーションすることで、正常成体肝での検出可能な発現と障害後のFn14発現の顕著な誘発とがほとんど見られない。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色した切片は、対応する正常健康肝およびCCl14障害肝組織を示す。
【図10】Fn14発現は、in situハイブリダイゼーションを用いて、直接的にFn14に対する抗センスmRNAプローブによる染色の増加によって明らかなように、総胆管結紮のネズミモデルの胆管上皮細胞で上方調節される。ヘモトキシリンおよびエオシン(H&E)染色した切片は、明視野鏡検で対応の切片を示す。
【図11】週齢2週、週齢8週、および月齢7ヶ月の非トランスジェニック(Ntg)マウス腎臓と比較したFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウス腎臓の切片である。結果は、週齢8週目および月齢7ヶ月目のTWEAK−Tg腎臓で尿細管好塩基球増加と、月齢7ヶ月目の隣接好塩基性尿細管による糸球体(すなわち糸球体嚢胞)の尿路空間の拡大とを示す。
【図12】H&E染色したFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウス腎臓の切片。A.近隣の近位尿細管上皮の好塩基球増加を伴う糸球腎症が示されている。B.断片化糸球体間質富核、腎被膜栄養過多(hypertrophy of capsular epithelia)、および腎皮膜肥厚。
【図13】H&E(上)および黄色細胞核抗原(PCNA)(下)で2通りに染色したFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウス腎臓の一連の切片である。好塩基性尿細管は、PCNA、すなわち増殖尿細管と一致する。
【図14】H&E、T. Purpureas(近位尿細管のマーカー)由来のレクチン、および A.Hypogaea(遠位尿細管のマーカー)由来のレクチン。結果は、好塩基性尿細管がいずれの上皮マーカーも表現しないことを示している。
【図15】腎臓でのTWEAK過剰発現は、尿細管過形成および糸球体腎症を誘発する。ネズミsTWEAK DNAを含むアデノウイルス・ベクターを持つC57BL/6マウス成体を感染させて11日目にヘマトキシリン/エオシン染色により、腎臓の切片をアデノウイルスGFP対照コンストラクト倍率20倍および40倍で観察し、アデノウイルス−GFP対照コンストラクトと比較する。
【図16】TWEAK mRNAは、野生型マウス成体の腎全体に広く発現している。腎臓の切片をヘマトキシリン染色して倍率5倍で観察、もしくはセンスまたは抗センスTWEAKプローブとin situハイブリダイゼーションをおこなった後に暗視野顕微鏡下で観察する。
【図17】Fn14mRNAは、野生型マウス成体腎臓の外側髄質近位尿細管で発現される。腎臓の切片を、ヘマトキシリン染色、もしくはセンスまたは抗センスFn14プローブによるin situハイブリダイゼーション後に暗視野顕微鏡下で倍率5倍で観察する。
【図18】腎線維症でTWEAKが果たす役割は、アルポート症腎臓でのFn14mRNAの上方調節によって示唆される。週齢4、5、6、および7週目での野生型マウスを基準としたFn14mRNAレベルの倍増が、アルポート症疾患に至る突然変異を持つ2匹の個々のマウスで示される。mRNAレベルは、Fn14遺伝子の一部分に対応するヌクレオチド配列を含む遺伝子チップに対するハイブリダイゼーションによって決定した。4週および7週目の時点での、2匹のマウスの各々に対する反復試験結果を示す(マウス1の反復試験およびマウス2の反復試験をそれぞれの棒で示した)。7週目の時点で、Fn14mRNAが、疾患が阻害される2つのセッティング、すなわちsTGFβR−Fc処理およびVLA−1ノックアウト・マウス(3R−Fc処理およびVLA−1ノックアウト・マウス(sTGFβR−Fc処理した2匹の各々のマウス「(sTGFbR処理」によって図18に示す)または2匹の各々のアルポート/VLA−1KOマウス(「アルポート/VLA−1KO」))で、減少したようにみえる。
【図19】著しく腎線維形成が減少した腎線維症のネズミモデルである片側性尿管閉塞症(UUO)でのTWEAKアンタゴニスト処理。トリクローム・マソン染色した腎臓パラフィン切片上の青色染色領域(線維症領域)の変性計量(metamorph quantitation)によって、コラーゲン含有量が、AB.G11(抗TWEAKモノクローナル抗体)処理腎試料で、sTGF−βR−Ig陽性対照試料で観察された含有量と同程度まで減少したことが示される。それとは対照的に、アイソタイプ−対照ハムスター抗体(HA4/8)処理腎臓は、媒体(PBS)処理腎臓と同様に、腎線維形成の減少がみられなかった。
【図20】TWEAKトランス遺伝子は、肺において肉芽腫性およびリンパ組織細胞性(lymphohistocytic)炎症を引き起こす。A.H&E染色したFL−TWEAKトランスジェニック(Tg)マウス由来の肺切片。B.H&E染色したsTWEAKTg由来の肺切片。
【図21】TWEAmRNAは、野生型マウス成体肺の細気管支および肺胞に並んだ細胞で発現される。肺切片を、ヘマトキシリン染色により、もしくはセンスまたは抗センスTWEAKプローブによるin situハイブリダイゼーション後に暗視野顕微鏡下で、倍率10倍で観察する。
【図22】Fn14mRNAは、野生型マウス成体肺の細気管支および肺胞で発現する。肺切片を、ヘマトキシリン染色により、もしくはセンスまたは抗センスFn14プローブによるin situハイブリダイゼーション後に暗視野顕微鏡下で、倍率10倍で観察する。
【図23】生体(in vivo)での3T3−L1細胞脂肪細胞分化に対するTWEAKの阻害効果。標準のプロトコールを用いて、3T3−L1細胞の分化を誘導した。細胞を、未処理、もしくは対照試薬(組み換え型可溶性ヒトCD40L−FLAG 100ng/ml)、あるいは100ng/ml組み換え型可溶性ヒトTWEAKーFLAG、組み換え型可溶性ヒトTWEAK、Fc−ヒトTWEAK)で種々のバージョンのTWEAKで、デキサメサゾンおよびインスリンとともに0日目に処理し、さらに毎日継ぎ足した。一実験群では、ブロッキング抗TWEAKmAb AB.G11もFc−hTWEAKと同時に添加した。細胞をオイル・レッド・オー(O)で7日目に染色した。
【図24】生体内(in vitro)筋形成に対するTWEAKの阻害効果。C2C12筋芽細胞を、DMEMを主成分とする増殖培地でほぼ密集するまで増殖させ、0日目で、2%馬血清を含んだ低血清分化媒体に変えて、分化を引き起こす。細胞に対して、0日目で、Fc−hTWEAK(100ng/ml)による処理をおこなうか、または処理をおこなわなかった。位相差顕微鏡を用いて筋細管形成を調べ、分化の6日目に写真を撮った。別の実験群では、Fn14−Fcまたは中和抗TNF抗体をFc−hTWEAKと同時に添加することで、Fc−hTWEAKの阻害効果がTWEAK特異的であり、TNFを介したものではない。
【図25】TWEAKは、ヒト間葉性幹細胞に結合することができる。ヒト間葉性幹細胞(hMSC)を組み換え型FcTWEAKタンパク質とともにインキュベートした後、PE結合ヤギ抗ヒトFcまたは抗マウスFc第二抗体とともにインキュベートした。hMSC対するFcTWEAKの結合能は、蛍光発色セルソーター(FACS)分析を用いて測定した。バックグラウンド染色は、第二抗体染色(第2のみ)単独によって得た。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本明細書で特に規定されない限り、本発明に関連して用いられる科学および技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有する。さらに、文脈により特に要求されない限り、単数形の用語は、複数を包含し、複数形の用語は単数を包含する。一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ウイルス学、ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションの技術に関連して用いられる命名法は、当技術で周知かつ通常使用されているものである。本発明の方法および技術は、特に指示していない限り、当技術で周知の従来法に従って、かつ本明細書を通して引用および議論されている様々な一般的かつ特定の参考文献に記載されているように概ね実行される。例えばSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、およびHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照し、これらは参照により本明細書に組み込まれる。酵素反応および精製技術は、当技術で通常実施されるように、または本明細書に記載されるように、製造元の仕様書に従って実行される。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに薬用および製薬化学に関連して使用される命名法ならびに研究手順および技術は、当技術で周知かつ通常使用されているものである。化学合成、化学分析、製薬調製、配合、および送達、ならびに患者の治療に対しては、標準的技術を用いる。
【0021】
本明細書に記載される発明がより完全に理解されるために、以下に詳細な説明を述べる。この説明では、以下の用語が使用される。
【0022】
すなわち、「抗体」とは、インタクトな免疫グロブリンを指すか、または特異的結合に対してインタクトな抗体と競合するその抗原結合部分を指す。組み換えDNA技術、あるいはインタクトな抗体の酵素的または化学的切断によって抗原結合部分を生産する。抗原結合部分としては、特に、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、dAb、および相補性決定領域(CDR)フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体(diabody)、ならびにポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも部分を含有するポリペプチドが挙げられる。Fabフラグメントは、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価フラグメントである。F(ab’)2フラグメントは、ヒンジ領域で、ジスルフィド架橋に結合される2つのFabフラグメントを有する二価フラグメントである。Fdフラグメントは、VHおよびCH1ドメインからなる。Fvフラグメントは、抗体の単一腕のVLおよびVHドメインからなる。dAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341:544−546,1989)は、VHドメインからなる。一本鎖抗体(scFv)は、VLおよびVH領域が対になって、それらを単一タンパク質鎖として生成することが可能な合成リンカーを介して一価分子を形成する抗体である(Bird et al.,Science 242:423−426(1988)、およびHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,(1988))。二重特異性抗体は、二価の二重特異的な抗体であり、そのVHおよびVLドメインは、単一ポリペプチド鎖上で発現されるが、同一鎖上の2つのドメイン間ではペアリングすることができないほど短いリンカーを用いることで、そのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対にさせ、2つの抗原結合部位を生成させる(例えばHolliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)、およびPoljak et al.,Structure 2:1121−1123(1994)を参照せよ)。共有結合的にまたは非共有結合的に、1つ以上のCDRを分子に組み込んで、それを免疫付着因子(immunoadhesin)にすることが可能である。免疫付着因子は、より大きなポリペプチド鎖の部分としてCDRを組み込むことが可能であり、CDRを別のポリペプチド鎖と共有結合させることが可能であり、または非共有結合的にCDRを組み込むことが可能である。CDRによって、免疫付着因子が特定の対象抗原に特異的に結合することが可能になる。
【0023】
抗体は、1つ以上の結合部位を持つことが可能である。1つより多い結合部位が存在する場合、該結合部位は、互いに同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、天然に発生する免疫グロブリンが2つの同一結合部位を有し、一本鎖抗体またはFabフラグメントが1つの結合部位を有する一方で、「二重特異的」または「二官能性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。
【0024】
「抗体レパートリー(antibody repertoire)」とは、動物またはヒト中の全ての異なる抗体種の合計を指す。抗体レパートリーでの多様性は、特に、免疫グロブリン遺伝子組み換え、免疫グロブリン遺伝子結合多様性、末端デオキシトランスフェラーゼ活性、および体細胞過剰変異(somatic hypermutation)に起因する。
【0025】
「キメラ抗体」とは、その元の形態から変化され、別のタンパク質由来のアミノ酸配列を有するようになった抗体である。キメラ抗体は、元の抗体アミノ酸配列の少なくとも部分を保有し、通常、抗原結合領域(Fab)を含む部分を保有する。キメラ抗体の例としては、限定はされないが、二重特異的抗体、および他の非免疫グロブリン・タンパク質配列との融合体が挙げられる。
【0026】
「シス調節エレメント」とは、一般に、特定の条件下でまたは特定の細胞中で、遺伝子配列の誘導性または構成性発現を調節する配列を指す。発現制御配列が調節する細胞プロセスの例としては、限定はされないが、遺伝子転写、タンパク質翻訳、メッセンジャーRNAスプライシング、免疫グロブリン・アイソタイプ、スイッチング、タンパク質グリコシル化、タンパク質切断、タンパク質分泌、細胞内タンパク質局在化、および細胞外タンパク質ホーミングが挙げられる。
【0027】
「サイトカイン」とは、一般に、免疫系のシグナル伝達分子を指す。サイトカインとしては、限定はされないが、インターロイキン(IL)、形質転換成長因子(TGF)、腫瘍懐死因子(TNF)、リンホトキシン(LT)、インターフェロン、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージCSF、顆粒球CSF、および遊走阻止因子が挙げられる。
【0028】
「胚性幹(ES)細胞」とは、胚盤胞に注入すると、出生前、出生後、または成体動物の多数または全ての組織に寄与することができる多能性(pluripotentまたはmultipotent)細胞を指す。胚盤胞注入に起因する動物は、それらの体細胞および/または生殖細胞が多くの場合胚盤胞ドナーおよび注入ES細胞両方に由来することから、しばしば「キメラ」動物として言及される。ES細胞の1つの重要な特性は、動物の生殖細胞株に寄与して、キメラ動物子孫に継承すべき任意の所望の遺伝的特性を生じる能力である。不死化ES細胞は、内在遺伝子配列の標的破壊を有する動物を生成するための、または外来遺伝子(トランス遺伝子)を有する動物を生成するための強力な道具である。
【0029】
「発現制御配列」とは、特定の条件下でまたは特定の細胞中で、遺伝子配列の構成性または誘導性発現を可能にする配列を指す。発現制御配列が調節する細胞プロセスの例としては、限定はされないが、遺伝子転写、タンパク質翻訳、メッセンジャーRNAスプライシング、免疫グロブリン・アイソタイプ、スイッチング、タンパク質グリコシル化、タンパク質切断、タンパク質分泌、細胞内タンパク質局在化、および細胞外タンパク質ホーミングが挙げられる。
【0030】
「融合タンパク質」とは、2つ以上の異なるタンパク質のアミノ酸配列を有するキメラタンパク質を指す。通常、融合タンパク質は、当技術で周知の生体外(in vitro)組み換え技術に起因する。しかし、融合タンパク質は、生体内(in vivo)交叉または他の組み換え事象に起因してもよい。
【0031】
「ヒト免疫グロブリン分子」とは、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列にコードされる免疫グロブリン・タンパク質を指す。免疫グロブリン遺伝子配列は、任意の細胞、あるいは動物、ヒト、または非ヒト中で発現することが可能である。
【0032】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト種に由来する抗体であり、この際重鎖および軽鎖のフレームワークおよび定常ドメイン中の特定のアミノ酸は、ヒトでの免疫応答を回避または阻害するように突然変異させられている。また、ヒト抗体由来定常ドメインを非ヒト種の可変ドメインに融合することによって、ヒト化抗体を生産することも可能である。ヒト化抗体の作製方法の例は、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号、および第5,877,293号に見出される。
【0033】
「炎症」または「炎症性疾患」とは、障害、異常刺激、または生物学的物質に応答して、血管および近傍組織中で発生する細胞学的および組織学的反応からなる根本的な病理学的プロセスを指す。同様に、「非炎症性状態」または「非炎症性疾患」とは、本明細書で開示されるように、天然では炎症性でない任意の状態または疾患を指す。
【0034】
「単離タンパク質」または「単離ポリペプチド」とは、一般に、その起源または由来の出所によって、(1)ネイティブな状態でそれを伴う天然関連構成要素に関連しないか、(2)同一種由来の他のタンパク質を含まないか、(3)異なる種由来の細胞により発現されるか、または(4)天然では発生しないタンパク質またはポリペプチドを指す。従って、化学的に合成されるか、細胞を含まない生物学系(例えばウサギ網状赤血球ライセート)で合成されるか、またはポリペプチドが天然に生じる細胞とは異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、その天然関連構成要素から「単離」される。タンパク質は、当技術で周知のタンパク質精製技術を用いて、単離によって、天然関連構成要素を実質的に含まないようにすることも可能である。
【0035】
「模倣体」または「ペプチド模倣体」とは、製薬産業で鋳型ペプチドと類似の特性を有する薬剤として通常用いられる非ペプチド類似体である。Fauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986);Veber and Freidinger,TINS p.392(1985);およびEvans et al.,J.Med.Chem.30:1229(1987)、これらは参照により本明細書に組み込まれる。模倣体は、しばしば、コンピューター化分子モデリングに補助されて開発される。治療上有用なペプチドに構造的に類似のペプチド模倣体を用いて、等価の治療または予防効果を生成することが可能である。一般に、模倣体は、TWEAK等の典型的ポリペプチド(すなわち、所望の生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、当技術で周知の方法を用いて、−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−CH2−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、および−CH2SO−−からなる群より選択される結合によって任意で置換される1つ以上のペプチド結合を有する。同一タイプのDアミノ酸を用いたコンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸の系統的置換(例えばLリシンの代わりDリシン)を用いて、より安定なペプチドを生成することも可能である。さらに、当技術で周知の方法(Rizo and Gierasch,Ann.Rev.Biochem.61:387(1992)、参照により本明細書に組み込まれる)によって、例えばペプチドを環化する細胞内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を付加することによって、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列変化を有するコンストレインド(constrained)ペプチドを生成することが可能である。
【0036】
「ポリペプチド類似体」とは、野生型ポリペプチドに由来するが、アミノ酸配列が異なるポリペプチドを指す。アミノ酸配列での変化を有するポリペプチドは、突然変異体タンパク質、融合タンパク質、または模倣体でもよい。ポリペプチド類似体は、野生型ポリペプチドと比較して非アミノ酸配列相違を有するポリペプチドも指す。これらの相違は、化学的または生化学的でもよく、限定はされないが、本明細書で特に記載される修飾のタイプを含む。
【0037】
「ポリペプチド・フラグメント」とは、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残りのアミノ酸配列が天然に発生する配列の対応する位置に同一であるポリペプチドを指す。フラグメントは、典型的には少なくとも5、6、8、または10アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも14アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり、通常は少なくとも50アミノ酸長、さらにより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。
【0038】
「前駆細胞」とは、1つ以上の細胞系統を誘発する細胞を指す。幹細胞、分化全能性細胞(totipotent cell)、多能性細胞(pluripotent cell)、多能細胞(multipotent cell)、二分化能細胞(bipotent cell)、胚細胞、または成体細胞が含まれる。限定はされないが、末端分化を受けることができる特定の系統に関与する細胞、組織内在細胞に由来する細胞、および特異的組織に在住する(home)循環細胞を含む組織特異的細胞も包含される。
【0039】
「被験体」とは、ヒトおよび非ヒト被験体である。被験体の例としては、患者である。
【0040】
「TWEAK関連状態」とは、異常性TWEAK機能または調節に起因する任意の状態を指す。該用語は、異常性TWEAK機能または調節に直接起因しないが、むしろ特定の他のメカニズムから生じる任意の状態も指し、この際破壊、増加、または変化TWEAK活性が該状態に関する検出可能な結果を有する。TWEAK関連状態は、天然では炎症性または非炎症性であってもよく、限定はされないが本明細書に特に記載される状態および疾患を含む。
【0041】
「ベクター」とは、対象DNA配列をそのネイティブな細胞外でクローニング、増殖、組み換え、突然変異、または発現させることを可能にするDNA分子を指す。しばしば、ベクターは、特定の条件下または特定の細胞中で、遺伝子配列の誘導性または構成性発現を可能にする発現制御配列を有する。ベクターの例としては、限定はされないが、プラスミド、酵母人工染色体(YAC)、ウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)由来エピソーム、バクテリオファージ、コスミド、およびファージミドが挙げられる。
【0042】
「異種(xenogeneic)動物」とは、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の実質的な部分を保持する動物を指す。しばしば、異種動物は、相同的に標的化される内在免疫グロブリン遺伝子座を保持し、該遺伝子座がその内在免疫グロブリン遺伝子を発現できなくなるようにする。例としては、ゼノマウス(XenoMouse)(商標)系統(Abgenix,Inc.,Fremont,California)のマウスが挙げられ、これは、トランスジェニック・ヒト免疫グロブリン遺伝子の体細胞再構成、ヒト可変遺伝子の過剰変異、免疫グロブリン遺伝子発現、および免疫グロブリン・アイソタイプ・スイッチングを可能にする。異種動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を利用した抗原免疫試験に効果的な体液性応答を与えることができる。異種動物で産生された抗体は、完全にヒト型であり、該動物自体またはその子孫から、該動物またはその子孫から抽出された培養細胞から、かつ異種Bリンパ球系統またはその子孫から生成されたハイブリドーマから単離されることができる。さらに、従来の組み換え技術によって、特異的抗原免疫試験に対して生じた免疫グロブリンをコードする再構成ヒト遺伝子配列を単離することができる。
【0043】
「異種(xenogeneic)抗体」とは、外来免疫グロブリン遺伝子座にコードされる抗体を指す。例えば、ゼノマウス(XenoMouse)(商標)系統のマウスでは、ヒト抗体遺伝子座は、異種抗体をコードする。
【0044】
「異種(xenogeneic)モノクローナル抗体」とは、クローン細胞、不死化細胞で、例えば異種動物に由来するハイブリドーマで産生される抗体の同種集団を指す。例えばゼノマウス(XenoMouse)(商標)系統のマウスから生成されたハイブリドーマは、異種抗体を産生する。
【0045】
疾患の理解および治療は、根本的に、分子メカニズムまたはそれを基礎とする生化学的経路の決定へと前進する。そのため、医師および研究者が医薬品を個別仕様に合わせる(tailor)こと、かつそれら分子メカニズムまたは生化学的経路を特異的に標的とする医薬組成物を処方することが可能になる。
【0046】
ヒトが羅患する最も複雑かつ消耗性の疾患のいくつかとしては、心臓、肝臓、腎臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質代謝、消化管、神経系、膵臓、生殖器、軟骨、硬骨、結合組織系、および前駆または幹細胞の疾患が挙げられる。本発明は、これらの疾患を理解する上で重要な前進を有利に提供する。より具体的には、本発明は、外来TWEAKタンパク質を発現し、かつTWEAKタンパク質発現と、心臓、肝臓、腎臓、および肺の特定の病的状態との相関関係を初めて実証するトランスジェニック動物を提供する。本発明は、該病的状態を治療または予防するための方法と、それら方法で用いるためのTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを同定するための方法とも提供する。本発明の方法に従って治療可能な病的状態としては、急性心臓外傷、慢性心不全、非炎症性拡張型心筋症、うっ血心不全、肝上皮細胞過形成、肝細胞死、肝線維症、肝細胞空胞形成、肝障害、胆管過形成を含む胆管系状態、腎臓多病性炎症等の炎症性腎状態、尿細管腎症等の非炎症性腎状態、尿細管過形成、糸球体嚢胞、腎臓過形成、腎臓皮膜肥厚、糸球体腎炎、アルポート症候群、腎臓尿細管空胞形成、腎臓ヒアリン円柱、腎線維症、および炎症性肺状態が挙げられる。本発明は、TWEAKタンパク質またはその機能、TWEAK抗体、およびTWEAK核酸を含む疾患の分子マーカーとしてのTWEAK構造または機能を検出するための方法をさらに提供する。
【0047】
TWEAK活性を変化させるか、あるいはTWEAKポリペプチドの膜結合または完全長形態とその細胞受容体との相互作用を破壊することができるTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、本明細書に記載されるTWEAK関連状態を治療する。また、該医薬品および治療方法は、TWEAKポリペプチドの膜結合または完全長形態と別のTWEAKポリペプチドとの相互作用を破壊する。このような干渉は、細胞表面上、固相へのまたは溶液中での細胞内、細胞外、またはin vitro結合で生じることが可能である。別の代替案では、医薬品および治療法は、TWEAKポリペプチドの膜結合または完全長形態とTWEAK相互作用相手との相互作用を破壊する。該相互作用相手は、タンパク質、核酸、糖類、脂質、脂肪酸、およびステロイドであってもよい。
【0048】
本発明の好適な実施形態では、TWEAK関連状態は、天然では非炎症性である。
【0049】
別の好適な実施形態では、TWEAK関連状態は、線維症、心筋症、腎疾患、肺疾患、または肝疾患である。
【0050】
別の好適な実施形態では、TWEAK関連状態は、骨格筋疾患、脂肪組織疾患、消化管疾患、膵臓疾患、生殖器疾患、神経組織疾患、細胞死、皮膚疾患、軟骨疾患、硬骨疾患、または結合組織疾患である。
【0051】
別の実施形態では、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、in vivoで前駆細胞を作用させることによって、組織置換または再生(例えば火傷被害者または放射線患者)を必要とする状態、疾患または障害を羅患する被験体を治療することが可能である。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、前駆細胞または組織移植療法と組み合わせて、in vivoで被験体を治療することも可能である。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを用いて、付加的な治療とともにまたはなしで、被験体へのその後の移植のためにin vivoで細胞集団を、またはin vitroで前駆細胞集団を増殖させることも可能である。in vivo細胞療法用またはin vitro増殖後に移植するために用いられる前駆細胞集団は、起源が胚または成体であってもよい。成体由来前駆細胞は、多能性(multipotent)または組織制限型であってもよい(Lagasse et al.,Immunity 14:425−436(2001);Jackson et al.J.Clin.Invest.107:1355−402(2001);Anversa and Nadal−Ginard,Nature 415:240−243(2002);Gussoni et al.,Nature 401:390−394(1999);Brazelton et al.,Science 290:1672−1674(2000);Peterson et al.,Science 284:1168−1170(1999);Lagasse et al.,Nature Medicine 6:1229−1234(2000))。
【0052】
心臓疾患は、先進国での障害および死亡の主な原因である。米国では、心臓疾患によって、全ての死亡率の約40%が引き起こされおり、年間約750,000件の死亡の原因となる。心臓機能に対して最も根本的なものは、心筋であり、分岐および吻合横紋筋細胞(心筋細胞)から主に構成されている。心筋細胞は、介在する間細胞よりはるかに大きく、心筋の体積の90%以上を占める。炎症性細胞はまれであり、正常心筋中にはコラーゲンが散在している。
【0053】
心筋疾患は、頻発するが、多数の異なる心臓状態で2次的に発生する。心筋疾患の例としては、炎症性疾患(例えば心筋炎)、ならびに拡張型心筋症、全身性代謝疾患、筋ジストロフィー、および心筋細胞の遺伝的異常等の非炎症性心臓状態が挙げられる。
【0054】
心筋症の主要タイプとしては、拡張型、肥大性、および拘束型心筋症が挙げられる。本発明の目的は、天然では通常非炎症性である拡張型心筋症の治療方法を提供することである。心筋疾患の臨床症例の約90%を占める非炎症性拡張型心筋症の場合、心臓は、進行性心臓肥大、拡張、および収縮性(収縮期性)機能不全によって特徴付けられる。拡張型心筋症は、いずれの年齢でも発生する可能性があるが、20歳から60歳の年齢範囲の人で最も発症する。多くの場合、非侵襲性心臓画像法を介して、特に二次元超音波心臓検査を介して診断を行う。拡張型心筋症の組織病理学は、軽度から中度の肥大を持つ変性筋細胞、非炎症性細胞の非存在、および間質線維症によって特徴付けられる。
【0055】
臨床的には、拡張型心筋症は、緩慢に進行するうっ血心不全とともに生じるが、患者は、急激に、代償性から非代償性機能状態に陥る可能性がある。心臓移植がしばしば要求される。患者の50パーセントが2年以内に死亡し、75パーセントが5年以内に死亡する。死亡原因は、通常、進行性心不全または不整脈であるが、心臓内血栓を除去したことによって引き起こされる塞栓症が発生することがある。
【0056】
拡張型心筋症に特徴付けられる心臓は、拡張および弛緩し、かつ正常心臓より2倍から3倍重くなる。全ての心室が拡張するとともに壁が薄くなり、線維化し、かつ通常壁在血栓となる。小数の拡張型心筋症では、僧帽弁または三尖弁閉鎖不全が左心室拡張から生じる。心筋細胞が拡張した核とともに肥大する。拡張型心筋症の原因のいくつかとしては、心筋炎、アルコールまたは他の毒物乱用、妊娠(産褥性心筋症)、虚血、冠動脈疾患、高血圧、および遺伝的作用が挙げられる。
【0057】
未知の病因の疾患である突発性拡張型心筋症(IDC)は、1つまたは両心室の拡張、収縮期機能不全、およびしばしばうっ血心不全への進行によって特徴付けられる。用語「IDC」とは、複数の当業者によって、用語「拡張型心筋症」と互換的に用いられ、IDCは、事実上アルコール乱用、毒性侵襲、または心筋炎の結果ではない拡張型心筋症の広義のカテゴリーであるということが示唆されることに注意する。
【0058】
顕微鏡により、IDCは、心筋肥大、核肥大、ならびに間質および血管周囲線維症によって特徴付けられる。心筋炎と対照的に、IDC患者では、その非炎症性病因の徴候である壊死および細胞浸潤は通常、顕著ではない。プレドニゾン等の抗炎症性薬剤はIDCを治療する上で大部分は有効ではないという事実は、病因と整合性がある。
【0059】
本発明の目的は、TWEAK活性に関連する拡張型心筋症を治療または予防する方法を提供することである。拡張型心筋症(例えばIDC)の原因が大部分は未知であることから、特有の治療は開発されていない。患者は、通常、症状を抑制するために、物理的、食事的、および薬理学的介入(例えばベータ・アドレナリン受容体アンタゴニスト、カルシウム・アンタゴニスト、および抗凝固剤)を用いて、心不全に対して治療される。また、利用可能であれば、心臓移植が用いられる。
【0060】
当業者は、IDCを診断するために用いることが可能である任意の免疫学的、組織化学的、形態学的、超微細構造的、または微生物学的マーカーを同定することができないでいた。しかし、疫学的証拠により、IDC素因は、遺伝的に基づく可能性があることが示唆される。IDC患者の20パーセントでは、第1血族もIDCの徴候を示しており、頻繁な家族性遺伝を示唆している。当業者は、潜伏性のまたは臨床上の心臓疾患患者でのIDCに対する分子遺伝マーカーを決定する必要性を認識していた。
【0061】
今日まで、拡張型心筋症に関連する遺伝子のリストには、心臓トロポニンT、d−サルコグリカン、心臓bミオシン重鎖、心臓アクチン、a−トロポミオシン、ラミンA/C、デスミン、心臓リアノジン受容体、デスモプラキン、プラコグロビン、ジストロフィン、およびタファジンが含まれている。拡張型心筋症に寄与する付加的な遺伝的要因を発見し、かつそれらを標的とする治療を設計する必要性が依然として存在する。本発明は、TWEAKおよび拡張型心筋症間の因果的関連性を初めて実証した。従って、本発明の目的は、TWEAKタンパク質発現、TWEAKタンパク質機能、TWEAK mRNA発現での変化、または染色体変化を検出することによって、患者に対して拡張型心筋症を同定するための方法を提供することである。疾患の該分子マーカーを検出するための方法および試薬は、当技術で既知であり、免疫学的または免疫組織化学的分析、酵素または他のタンパク質機能アッセイ、ならびにノーザンブロット、サザンブロット、一塩基多型(SNP)分析、および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析等の標準的なハイブリダイゼーションに基づくアッセイを伴う。
【0062】
非炎症性拡張型心筋症は、進行性心臓肥大、拡張、および収縮性機能不全によって特徴付けられることに注意すべきである。これとは対照的に、シャガス病は、心筋炎のまれな形態であり、これは、慢性クルーズ・トリパノソーマ感染に続いてヒトおよび実験動物で発症する炎症性心臓疾患である。中南米で蔓延しているシャガス病の研究によって、シャガス病患者の血清中で抗自己抗体が同定された。Joshua Wynne and Eugene Braunwald,Heart Disease,A Textbook of Cardiovascular Medicine,volume 2,Ch.41,pp.1442−1444(5th ed.1997)。本明細書に開示される方法は、より一般的なTWEAK活性に関連する非炎症型拡張型心筋症の治療に向けられている。
【0063】
成人腎臓は、1日で1700リットル以上の血液を処理しており、約1リットルの尿を生じる。腎臓は、内分泌系に寄与するとともに、排泄物、代謝、水分、塩、およびpHホメオスタシスで機能する。腎疾患は、死亡率より罹患率の原因であることが多く、米国では年間約35,000件の死亡率である。それとは対照的に、何百万もの人々が年間で、感染、腎臓結石、および尿障害等の非致死腎疾患に羅患している。
【0064】
一般的に、糸球体疾患は免疫学的疾患が原因であり、一方で、尿細管および間質疾患は、通常、毒物または感染因子が原因である。腎臓疾患の部分的リストには、急性腎炎症候群、無兆候性血尿またはタンパク尿、急性腎不全、慢性腎不全、腎臓尿細管欠損、尿路感染症、腎石症、尿路障害、および腎線維症が含まれる。
【0065】
尿細管を含む腎障害には、通常、間質も伴う。尿細管疾患は、天然では炎症性または非炎症性でもありえ、虚血性または毒性尿細管障害を含む。尿細管疾患の部分的リストには、急性尿細管壊死および急性腎不全と、尿細管または間質の炎症反応(尿細管間質性腎炎)と、尿細管過形成と、尿細管間質線維症(間質線維芽細胞、単核細胞、糸球体限外濾過液、サイトカイン、およびケモカイン成分を有する尿細管上皮細胞によって引き起こされる瘢痕性疾患)と、常染色体優性多嚢胞腎疾患(ADPKD)(尿細管および集合尿細管由来の大型の液で満たされた嚢胞によって特徴付けられ、かつPKD1またはPKD2遺伝子での突然変異によって引き起こされる遺伝疾患)とが含まれる。
【0066】
糸球体疾患は、最も脅威の腎疾患を代表する。例えば、慢性糸球体腎炎は、ヒトでの慢性腎不全の最も一般的な原因である。いわゆる2次的な糸球体疾患では、血管疾患、例えば高血圧および結節性多発性動脈炎と同様に、全身性エリテマトーデス(SLE)等の免疫学的疾患によって糸球体に障害が起こる。また、糖尿病(すなわち糖尿病性腎症)等の代謝性疾患およびファブリ病等の遺伝性状態は、糸球体に影響を及ぼす。原発性糸球体疾患としては、原発性糸球体腎炎および糸球体腎症が挙げられる。
【0067】
遺伝性腎炎の傘下にある疾患群としては、糸球体障害に主に関連する家族性腎疾患が挙げられる。アルポート症候群は、腎炎の一形態であり、神経性難聴ならびに水晶体脱臼、後発白内障、および角膜ジストロフィーを含む様々な眼疾患を伴う。該疾患は、その優性X連鎖性遺伝子型のために男性により蔓延している。しかし、幾人かの女性は、常染色体優性および劣性遺伝子型のために羅患している。アルポート腎臓の糸球体は、分節性増殖または硬化を示す。中性脂肪およびムコ多糖蓄積のために、上皮細胞が泡沫状の外観を得ることもある。糸球体および尿細管基底膜は、基底膜緻密層の割裂および積層とともに、肥厚または減弱の不規則な病巣を示す。
【0068】
腎疾患は、著しく臨床的重要性があるので、当業者は、その生理学的および遺伝的原因を理解する必要性を認識していた。当業者は、慢性および急性腎疾患の治療用の新規医薬品を開発する必要性をさらに認識する。本発明によって、TWEAKおよび腎疾患間の因果的関連性が始めて実証される。
【0069】
従って、一実施形態では、本発明は、腎疾患の治療方法を提供する。より好適な実施形態では、腎疾患は、アルポート症候群であってもよい。本発明の他のより好適な実施形態では、標的腎疾患は、多巣性炎症、尿細管腎症、尿細管過形成、嚢胞、糸球体腎症、尿細管空胞形成、線維症、またはヒアリン円柱によって特徴付けられることが可能である。
【0070】
肺疾患は、以前から蔓延している疾患であり、依然蔓延している。気管支炎、気管支肺炎、および他のタイプの肺炎等の原発性呼吸器感染は、通常臨床医によって治療されなければならない。肺疾患は、タバコの煙、空気汚染、および他の吸入剤等の環境的要因によって悪化する可能性がある。慢性気管支炎、肺気腫、肺線維症、および悪性腫瘍も非常に頻発している。肺水腫、無気肺、または気管支肺炎が最も臨床的に羅患している患者で見られるとともに、肺が多くの末期疾患にも2次的に関与している。
【0071】
喘息は、過反応性気道によって特徴付けられる慢性再発性炎症性疾患である。この症状は、通常、偶発的可逆性気管支収縮によって特徴付けられる。喘息は、様々な刺激への気管気管支系統樹の応答性の増大が原因であり、多くの場合、外部のアレルゲンへのIgE応答に関連する。
【0072】
喘息には2つの主要なタイプがある。第1のタイプは、外因性喘息であり、これは、外来的抗原に曝されて誘発される過敏性反応I型によって引き起こされる。外因性喘息状態のリストには、アトピー性(アレルギー性)喘息、職業的喘息、およびアレルギー性気管支肺アスペルギルス症が含まれる。第2のタイプは、内因性喘息であり、これは、非免疫メカニズムに起因し、アスピリン摂取、肺感染、ストレス、風邪、吸入された吸入剤、および運動等の要因によって誘引される。
【0073】
当業者は、喘息等の非炎症性および炎症性両方に基づく疾患を含む肺疾患をより適切に理解する必要性を認識していた。理解が増すことによって、肺疾患の治療用の改良された医薬品の開発が促進される。
本発明によって、TWEAKおよび肺疾患間の因果的関連性およびその治療方法が始めて実証される。本発明のより好適な実施形態では、肺疾患は、肉芽腫性炎および/またはリンパ組織球炎症を含む炎症によって特徴付けられる。
【0074】
肝臓は、食事性アミノ酸、炭水化物、脂質、およびビタミンの処理とともに、血清タンパク質の合成、解毒、ならびに外来老廃物および汚染生体異物の胆汁への排泄を含む消化および代謝性ホメオスタシスの主要な調節因子である。従って、肝疾患は、通常、非常に重大であり、生命にかかわることもある。
【0075】
肝臓は、代謝性、毒性、微生物性、循環性、および新生物侵襲を含む多くのタイプの疾患を受けやすい。毒物または免疫学的疾患によって、肝細胞は、膨張され、不規則に凝集された細胞質および大型の空き空間を有する外観が浮腫状になる。また、保有される胆汁物質によって、肝細胞は、泡沫状になり膨張される。鉄、銅、および脂肪球(脂肪症)等の物質の蓄積は、肝細胞中で堆積することができる。妊娠期間のアルコール性肝疾患および急性脂肪肝の場合、核と置換されない微小球が発生する(微小胞脂肪症として知られる)。
【0076】
重大な肝障害に起因する肝細胞壊死は、特に、虚血性凝固性壊死によって特徴付けられ得る。多くの場合、毒性または免疫学的関連状態に由来する細胞死は、集合された肝細胞と、フラグメント化された核(アポトーシスに起因する)を含有する収縮された核濃縮性かつ非常にエオシン好性の「カウンシルマン小体」によって特徴付けられる。また、肝細胞は、浸透圧的に膨張し、破裂する(細胞溶解性壊死)。
【0077】
肝炎は、急性または慢性炎症性細胞の流入に関連する肝臓への特定の障害に起因する。肝細胞壊死は、炎症の発症を先導し、逆の場合も同様である。肝臓の損傷の不可逆的結果である線維症は、通常、炎症または直接的な毒性侵襲等の非炎症性メカニズムに起因する。コラーゲンの特有の沈着は、血流および肝細胞の潅流に影響を及ぼす。繊維症が継続するにつれて、肝臓は、周辺瘢痕組織(肝硬変)を有する再生肝細胞の小結節へと細分化される。
【0078】
卵形細胞は、卵形核および乏しい好塩基性細胞質を有する小型の増殖上皮細胞としてのその形態学的外観のためにそのように呼ばれる。卵形細胞は、通常、肝細胞索を有する門脈三管に位置する肝内胆管を結びつける末端細胆管に存在する。これら細胞は、内在する肝臓前駆細胞または肝臓に循環および居住(home)する骨髄前駆細胞に由来する可能性がある。これらの小管前駆細胞は、胆管上皮細胞および肝細胞両方に分化する潜在能力を有する。本発明は、マウスでのTWEAKトランス遺伝子の発現が小管前駆細胞の集団を増殖させる能力を有することを実証する。
【0079】
肝疾患が原因の高度の羅患率および死亡率のために、当技術では、その疾患の分子的および遺伝的基盤を明らかにしなければならないことが認識されていた。原因因子の同定によって、慢性および急性肝疾患の治療用医薬品の発見が促進される。本発明は、TWEAKおよび肝疾患間の因果的関連性を実証し、その治療方法を有利に提供する。より好適な実施形態では、肝疾患は、上皮過形成、肝細胞空胞形成、線維症を生じる胆管障害、肝細胞死、または肝障害である。
【0080】
骨格筋系は、体位および歩行にとって重要である。骨格筋は、廃用性に応じて萎縮することができ、これは神経または血液供給欠乏およびグルココルチコイド等の薬物暴露の状態に2次的なものであり得る。骨格筋は、遺伝的または退行性疾患の状態でも萎縮することができる。これらの状態または疾患は、天然では炎症性または非炎症性であり得る。筋ジストロフィーは、神経疾患が存在しない際の萎縮および筋繊維の喪失によって特徴付けられる遺伝性筋障害の大きなグループを占める。このグループに含まれる1つの共通形態は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーである。先天性筋疾患は、酸性マルターゼ欠乏症等の糖原病の状況でも発生することが可能であり、これによって、弱筋肉、乏しい運動神経、肥大心臓、および多くの場合は心不全に由来する早期死亡を持つ新生児が生まれる。筋萎縮症に至る先天性疾患としては、限定はされないが、ミトコンドリア筋障害、脂質筋障害、中枢神経系尿細管筋障害、および横紋筋融解症も挙げられる。筋障害状態は、成体でも発症することが可能で、最も一般的に観察されるものの1つは、アルコール性筋障害である。骨格筋消耗は、限定はされないが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経細胞疾患の構成要素としても生じることが可能である。さらに、カヘキシーとしても知られる骨格筋消耗は、最も末期の羅患癌患者で見られる重大な病的状態であり、多くの場合、患者の死亡の直接的な原因となる。炎症または自己免疫の状況で発生する骨格筋疾患としては、多発性筋炎、炎症性筋障害、およびグルココルチコイド誘因性萎縮症が挙げられる。本発明は、TWEAKと筋管に分化する筋芽細胞の能力との間の関連性を確立する。従って、本発明の目的は、生体内(in vitro)または生体外(in vitro)手法を用いて骨格筋再生を促進することによって、骨格筋疾患の治療方法を提供することである。
【0081】
脂肪細胞の蓄積は、糖尿病II型等の代謝疾患に関連する肥満を含む肥満状態で発生する。脂肪細胞の器官への内殖、いわゆる脂肪浸潤は、種々のセッティングで発生し、筋ジストロフィーの病理学的構成要素である。本発明は、TWEAKと脂肪細胞へ分化する前脂肪細胞の能力との間の関連性を実証した。従って、本発明の目的は、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはその医薬組成物を用いて脂肪細胞分化を調節することによって、脂肪細胞の蓄積または不足に関連する疾患の治療方法を提供することである。
【0082】
本発明に従ってTWEAK関連状態を治療する方法は、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらを有する組成物を利用する。本発明に従ってTWEAK関連状態を治療する上で有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストは、本明細書に記載されており、かつ当技術で既知である。このような因子としては、例えばPCT国際公開番号WO 98/05783、WO 98/35061、WO 99/19490、WO 00/42073、およびWO 01/45730に開示されているものが挙げられ、それら全てが参照により本明細書に組み込まれる。本発明の方法で有用なTWEAKアンタゴニストとしては、本明細書に記載されるように、ヒト、非ヒト、ヒト化、または異種抗体、およびポリクローナル、モノクローナル、または合成抗体等の抗TWEAK抗体が挙げられる。さらに、該抗体は、完全長、そのフラグメント、または抗原認識配列を含む融合タンパク質であってもよい。
【0083】
本発明の方法で有用なTWEAKアンタゴニストとしては、抗TWEAK受容体抗体も挙げられる。ここで、TWEAK受容体は、FN14またはTWEAKが結合するTNF−Rファミリーの他のメンバーであってもよい。TWEAK受容体に対する抗体は、本明細書に記載されるように、ヒト、非ヒト、ヒト化、または異種であってもよく、かつポリクローナル、モノクローナル、または合成であってもよい。さらに、該抗体は、完全長、そのフラグメント、または抗原認識配列を含む融合タンパク質であってもよい。
【0084】
当業者に公知の任意の方法によって、TWEAKまたはTWEAK受容体抗原を用いた動物の免疫化を実行することが可能である。例えばHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press,1990を参照せよ。マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ等の非ヒト動物を免疫化するための方法は等技術で周知である。例えばHarlow and Laneおよび米国特許第5,994,619号を参照せよ。好適な実施形態では、免疫応答を促進するためのアジュバントを用いてまたはなしで抗原を投与する。このようなアジュバントとしては、特に、フロイントの完全または不完全アジュバント、RIBI(ムラミル・ジペプチド)、またはISCOM(免疫刺激複合体)が挙げられる。
【0085】
免疫化用に選択される抗原は、以下のものの任意の1つであり得る。すなわち、TWEAKポリペプチドか、TWEAKポリペプチド・フラグメントか、TWEAK突然変異体タンパク質か、TWEAK模倣体か、TWEAK融合タンパク質か、TWEAK受容体ポリペプチドか、TWEAK受容体フラグメントか、TWEAK受容体突然変異体タンパク質か、TWEAK受容体模倣体か、TWEAK受容体融合タンパク質か、TWEAKポリペプチド、そのフラグメント、突然変異体タンパク質、または融合タンパク質を発現する細胞か、あるいはTWEAK受容体ポリペプチド、そのフラグメント、突然変異体タンパク質、または融合タンパク質を発現する細胞かである。血清、乳汁、腹水、脾臓、胸腺、末梢血液細胞、胎児肝臓、骨髄、腹膜、およびかなりの免疫グロブリン濃度を有する任意の他の組織または体液を含む該動物の様々な組織または体液から、免疫化によって動物で生成された免疫グロブリンを回収することが可能である。また、媒体に分泌されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製および単離することができる。
【0086】
本発明の好適な実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、またはヒト化抗体である。より好適な実施形態では、ヒト化抗体は、ヒト抗体定常および/またはフレームワーク領域を有する。別の好適な実施形態では、抗体は異種抗体である。より好適な実施形態では、異種抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。
【0087】
異種抗体は、完全に異なる種で発現される1つの種の完全な抗体である。例えば、マウスが、完全ヒト抗体を産生するために必要なDNAを発現する場合、得られる抗体は異種である(すなわちマウス中で産生されたヒト抗体)。標的化不活性化(ノックアウト)技術によって、内在免疫グロブリン遺伝子の動物での正常発現を破壊する機会が提供される。トランスジェニック動物技術によって、異種免疫グロブリン・タンパク質を産生する非ヒト動物を生産する機会が提供される。このような異種動物を上述の免疫グロブリン・ノックアウト動物と交配させ、異種免疫グロブリンのみを産生し、内在免疫グロブリンを産生しない動物を生じることができる。
【0088】
異種免疫グロブリン遺伝子の発現によって、モノクローナル抗体を含むヒト抗体の高度に多様なレパートリーの生成が可能になる。この理由は、(1)外来免疫グロブリン遺伝子は、そのシス調節エレメントを保有し、かつ宿主動物の正常可変(V)、多様性(D)、および接合(J)組み換え事象を受けやすいから、(2)外来免疫グロブリン遺伝子は、内在免疫グロブリン遺伝子座と類似の方法で発現されるから、ならびに(3)得られる抗体は、正常Bリンパ球発達および体液性応答を明白に支持するからである。
【0089】
外来免疫グロブリン遺伝子を、完全免疫グロブリン遺伝子座として、免疫グロブリンの部分として、または「小形遺伝子座(minilocus)」として動物に導入することが可能であり、この際より完全な外来Ig遺伝子座を、そのIg遺伝子座由来の個々の遺伝子の少数の包含を介して模倣する。さらに、トランスジェニック動物を操作して、一本鎖抗体またはキメラ抗体等の修飾抗体をコードするトランス遺伝子を発現させることが可能である。
【0090】
本発明の方法で有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストは、TWEAKポリペプチド、あるいはそのフラグメント、類似体、突然変異体タンパク質、または模倣体であってもよい。類似体は、天然に発生するTWEAKアミノ酸配列とは異なること、または該配列を含まない方法で異なることが可能であり、あるいは両方が可能である。好適な実施形態では、TWEAKポリペプチド類似体は、突然変異体タンパク質である。突然変異体タンパク質を生成する方法は、分子生物学の技術で周知であり、ランダムな突然変異生成、部位指向性突然変異生成、欠失、および切断によってDNA分子を変化させることを含む。DNAを突然変異させる技術は、当技術で周知であり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)突然変異生成、飽和(すなわち化学的または放射線)突然変異生成、化学的DNA合成、アラニン・スキャニング突然変異生成、オリゴヌクレオチド媒介突然変異生成(in vitroでのDNAテンプレートへのハイブリダイゼーション後の酵素的伸長)、カセット(組み換え)突然変異生成、および組み合わせ突然変異生成(TWEAK DNAへのランダムな縮重配列の導入)を含む。
【0091】
TWEAKポリペプチドは、TWEAK受容体に、他のTWEAKポリペプチドに、または他のTWEAK相互作用相手に結合する。TWEAKフラグメントは、膜結合型であってもよく、かつリポソームあるいは他の細胞または偽細胞送達系を有する医薬組成物中で送達されることが可能である。TWEAKフラグメントは、膜貫通ドメインを除去する切断または内部欠失を含有する可溶性TWEAKポリペプチドであってもよい。さらに、本発明の方法で有用なTWEAKポリペプチドは、TWEAK応答または変化TWEAK応答を生じないことが可能である。このようなTWEAKポリペプチドの例としては、欠失または切断突然変異体、1つ以上のアミノ酸置換を含有するペプチド、TWEAK模倣体、および非アミノ酸配列修飾TWEAKポリペプチドを含むTWEAKタンパク質の類似体がある。
【0092】
ここに述べられているように、本発明の方法に有用なTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、TWEAKレセプター・ポリペプチド、あるいはフラグメント、類似物質、突然変異タンパク質、またはその擬似物質を供することができる。TWEAKポリペプチドはTWEAKレセプター・ポリペプチドに結合し、TWEAKレセプター・ポリペプチドは他のTWEAKレセプター・ポリペプチドあるいは他のTWEAKレセプター・結合パートナーに結合する。TWEAKレセプター・フラグメントは、膜に結合することができ、リポソームあるいは他の細胞デリバリー・システムまたは偽細胞デリバリー・システムを有する医薬組成物で運ぶことができる。また、TWEAKレセプター・フラグメントは、膜貫通ドメインを取り除いたような切断または内部欠失がある可溶性TWEAKレセプター・ポリペプチドである可能性がある。さらに、本発明の方法に有用なTWEAKレセプター・ポリペプチドは、TWEAK応答が無いか変更されるという結果に帰着させることができる。そのようなTWEAKレセプター・ポリペプチドの例としては、非アミノ酸配列修飾されたTWEAKレセプター・ポリペプチドの他に、欠失または切断変異、1つ以上のアミノ酸が置換したペプチド、TWEAKレセプター擬似物質を含むTWEAKレセプター・タンパク質の類似物質が挙げられる。
【0093】
さらに、本発明の方法に有用なTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは有機化合物または無機化合物である可能性がある。有機化合物は、例えば当業者によく知られている化学物質ライブラリーに収録されているような小さな有機化合物を供することができる。ここに挙げるものに限定されるわけではないが、他の有機化合物としては、核酸、ペプチド、糖、脂質および脂肪酸、ステロイド、あるいはそれらに由来する物質が挙げられる。無機化合物には、シリカまたはその他の無機物および塩を供することができる。ここに述べられているように、有機化合物または無機化合物は、TWEAKポリペプチド、TWEAKレセプター・ポリペプチド、あるいは他のTWEAK結合パートナーに結合することができる。
【0094】
TWEAKあるいはTWEAKレセプター・ポリペプチドの非配列修飾は、生体内(in vivo)あるいは生体外(in vitro)でポリペプチドが化学誘導体化(ここに挙げるものに限定されるわけではないが、例えばアセチル化、メチル化、リン酸化、カルボキシル化、酸化状態あるいはグリコシル化による変化)することによって起こりうる。さらに、化学誘導体化は、有機ポリマー(例えばポリエチレン・グリコール(PEG))または医療業界でよく知られている他のポリマーとの結合を含む可能性がある。したがって、TWEAKポリペプチド類似物質は、非アミノ酸配列修飾により生成できる。
【0095】
TWEAKあるいはTWEAKポリペプチドは融合タンパク質として発現する可能性がある。融合タンパク質は、当業者によく知られている。当業者は、原核生物または真核生物に由来するものを含む多様な融合パートナー群から選択することができる。
【0096】
本発明を用いると、ヒトおよび動物のいかなる個体であっても、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの薬剤を含む組成物を、薬学的に有効な分量でTWEAK関連疾患を治療するのに十分な期間投与して、薬学的に可能な方法で治療できる。あるいは、TWEAK関連疾患予防に有効な分量のTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの薬剤を含む組成物の投与を受けることができる。本発明の方法に有用なTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、ここで述べられている方法で医薬組成物として処方することができ、非経口の方法と、注射による方法と、粘膜経由(transmucosal)の方法と、経口による方法と、吸入による方法と、眼を経由する方法と、直腸を経由する方法と、持続効果のある移植による方法と、局所的な方法と、徐放性物質またはステントでコーティングされたものを経由する方法とを用いて運ぶことができる。TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストの投与には種々の従来技術を用いることができる。例えば、溶液あるいは懸濁液、スラリー、ゲル、クリーム、バルム、エマルジョン、ローション、粉末、スプレー、泡、ペースト、オイントメント、軟膏、および点滴剤といった、個体、半個体および液体の投薬形態が挙げられる
さらに、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストを遺伝子治療の経路で運ぶことができる。簡潔に述べると、タンパク質をコードしているかアンチセンス分子を発現している核酸分子は、当業者によく知られている、対象となる組織あるいは器官に核酸分子を運ぶのに適したベクターを利用して対象に運ばれる。一般的なベクターとしては、リポソーム、プラスミド、およびウイルス・ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。
【0097】
TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物の投与および用法の最も有用な形態は、目的とする効果、薬歴、あれば個体の健康状態、疾患そのものの状態、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストに対する応答、および担当医の判断により変わる。TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの薬剤を含む組成物は、一度に、あるいは治療のたびごとに、医薬製剤または獣医薬製剤として利用可能ないかなる形態によっても投与できる。
【0098】
特定の投与形態、特定のTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニスト、あるいは組成物、服用レベル、および服用頻度により、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物の適用量は変わる。一般的に、製剤はTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物を約0.01%〜約99%(w/w)、望ましいものなら約1%〜約50%(w/w)含んでいる。
【0099】
治療あるいは予防に有効な、模範的、限定されない範囲のTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストの分量は体重あたり約0.005〜10.00mg/kg、より好ましい量は約0.05〜1.0mg/kgである。
【0100】
TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物は、単独で、あるいは医薬製剤または獣医薬製剤の一部として、ないしは予防製剤の一部として、アジュバンドの有無を問わずに投与することができる。それら製剤は非経口あるいは経口投与することができる。例えばそれら製剤は、口を経由して、肺、鼻、耳、肛門、皮膚、眼、静脈、筋肉内、動脈、腹腔内、粘膜、舌下、皮下、経皮、局所、あるいは頭蓋内を経由して、ないしは口腔に入れて投与することができる。医薬としても、獣医薬としても、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストはどのような上皮表面にも局所的に投与することができる。そのような表面としては、口、眼、耳、肛門、および鼻の表面が挙げられる。医薬組成物は、従来技術の混和、溶解、グラニュレイト、糖衣形成、研和、乳化、カプセル化、エントラップメント、あるいは凍結乾燥により生成することができる。
【0101】
本発明で用いる医薬組成物は、生理的に利用可能な1つ以上の担体(医薬として使用することができる製剤中に活性化合物を取り込むことを促進する賦形剤および助剤から成る)を用いて、従来法により処方することができる。適切な処方は投与経路に依存する。
【0102】
粘膜を通して投与するには、浸透する仕切りに適切な浸透剤を処方では用いる。そのような浸透剤は当業者に一般によく知られている。眼から投与する場合、当業者に知られているように、適切な生理食塩水溶液を有する懸濁液が用いられる。
【0103】
経口投与をするには、アクティブ・エージェントを従来の医薬として利用可能な担体と結合させて、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストを即座に処方することができる。TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、錠剤、ピル、リポソーム、顆粒、球、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などの形で処方し、治療を受ける患者が経口摂取するようにすることができる。
【0104】
また、TWEAKアゴニストまたはアンタゴニストあるいはそれらの組成物は従来から医薬製剤あるいは獣医薬製剤で用いられてきた担体またはアジュバンドを含むことができる。それら担体およびアジュバンドの例として、フロイント(Freund)アジュバンド、イオン交換、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、緩衝物質(リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水など)、塩あるいは電解質(硫酸プロタミン、リン酸2ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダル・シリカ、マグネシウム、三珪酸塩、セルロース由来の物質、ポリエチレン・グリコールなど)が挙げられる。アジュバンドの局所的あるいはゲルの基礎形式としては、例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム,ポリアクリル酸塩,ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体,ポリエチレン・グリコールおよびウッド・ワックスアルコールが挙げられる。
【0105】
経口投与するための医薬組成物は、固形の賦形剤として得ることができる。必要に応じて適切な助剤を加え、生成された混合物を粉砕し、顆粒の混合物を処理して錠剤または糖衣錠の中身を得ることができる。適切な賦形剤としては、糖類(例えば、ラクトース、ショ糖、マンニトール、あるいはソルビトール)、セルロース製剤(例えば、トウモロコシ・デンプン、コムギ・デンプン、イネ・デンプン、ジャガイモ・デンプン、ゼラチン、トラガカント・ゴム、メチルセルロース、ヒドロキシ、プロピルメチル・セルロース、カルボキシメチル・セルロース・ナトリウム、および/またはポリビニール・ピロリドン(PVP))が挙げられる。必要に応じて、交差結合されたポリビニール・ピロリドン、寒天、あるいは アルギン酸またはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤が加えられる。
【0106】
糖衣錠の中核は適切にコーティングされている。この目的のため、任意にアラビア・ゴム、タルク、ポリビニール・ピロリドン、カーボポール・ゲル、ポリエチレン・グリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合液を含む、糖の濃縮溶液を使うことができる。識別あるいは異なる活性化合物の組み合わせを用いていることを特徴づけつるため、染料または顔料を錠剤または糖衣錠のコーティングに加えることができる。
【0107】
経口投与される医薬組成物としては、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールあるいはソルビトール)でできたソフトな、密封されたカプセル剤とともに、ゼラチンでできた押し込み型カプセル剤が挙げられる。前記の押し込み型カプセル剤は、ラクトースなどの賦形剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクあるいはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、ならびに必要に応じて安定剤を混合したものに有効成分を含むことができる。ソフト・カプセル剤では、活性化合物は適切な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィン、あるいは液体ポリエチレン・グリコール)に溶解または懸濁することができる。さらに、安定剤を加えることができる。経口投与される組成物は全てそのような投与に適した分量でなければならない。
【0108】
経口投与する場合、前記の組成物は、従来の方法により処方される錠剤またはトローチ剤の形態をとることができる。
【0109】
吸入法により投与する場合、適切な高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガス)を用いて加圧パックあるいは噴霧器から放出されるエアゾールスプレーの形態で、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストはタイミングよく運ばれる。加圧エアゾールの場合、バルブを操作してメーターの量を送ることにより1単位用量を決める。例えばゼラチンなどのカプセル剤およびカートリッジをインヘラーまたは吸入器で利用する場合、化合物の粉末混合物、およびラクトースあるいはデンプンなどの適切な粉末ベースを含む形態をとることができる。
【0110】
TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、例えばボーラス注射などの注射による非経口投与による形態も、持続注入による形態もとることができる。前記の薬剤は水溶液、水性懸濁液、油性懸濁液、あるいはエマルジョンの中に含むことが可能であり、懸濁、安定および/または分散剤などの薬剤を含むことができる。注射で処方する場合、例えばアンプルあるいはマルチドース・コンテナで添加した保存料とともに1単位用量が示される。
【0111】
一般的に水溶液の処方としては、ハンクス液、リンガー溶液、あるいは生理食塩水緩衝液などの生理的に利用可能な緩衝液が挙げられる。一般的に油性懸濁液は、脂溶性溶媒あるいはビヒクルを含むことができ、それら脂溶性溶媒あるいはビヒクルはゴマ油、または合成脂肪酸エステ(例えば、オレイン酸エチルあるいはトリグリセリド、またはリポソーム)などの脂肪油を含む。典型的油性一時的停止は、胡麻油または合成脂肪酸エステル(例えばエチル・オレイン酸塩またはトリグリセリド)のような脂肪油を含む脂肪親和性溶媒または媒介者を含む可能性があるまたはリポソーム。注射水性懸濁液には、カルボキシルセルロースナトリウム、ソルビトール、あるいはデキストランなどの懸濁液の粘度を増す物質を含めることができる。必要に応じて、前記の懸濁液には、化合物の溶解度を高めて高濃度で製剤を使用できるように、適切な安定剤あるいは薬剤を含めることができる。あるいは、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、使用前にピロゲン・フリー滅菌水などの適切なビヒクルと組み合わせて粉末状にしておくことができる。
【0112】
また、前記のTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、座薬あるいはリテンション浣腸剤(例えば、カカオバターあるいは他のグリセリドなど、従来の座薬の主成分を含む)などの直腸組成物の形態をとることができる。
【0113】
前記の処方に加えて、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは持続性製剤の形態をとることもできる。そのような持続効果のある薬剤は、移植(例えば皮下あるいは筋肉内に)または筋肉への注射により投与することができる。 したがって、例えば前記の化合物は、適切なポリマーあるいは疎水性物質(例えばアクセプタブル・オイル中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、ないしはやや溶けにくい派生物(例えばやや溶けにくい塩として)と組み合わせることができる。
【0114】
疎水性であるTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストの薬剤担体はコソルベント・システムであり、ベンジル・アルコール、無極性界面活性剤、水混和性の有機ポリマー、および水相により構成される。前記のコソルベント・システムはVPDコソルベント・システムである可能性がある。VPDは3%w/v ベンジル・アルコール、8% w/v 無極性界面活性剤ポリソルベート 80、および65% w/v ポリエチレン・グリコール 300の溶液であり、無水エタノールで容積を合わせている。前記のVPDコソルベント・システム(VPD:SW)は、水溶液中で5% D型グルコースにより1:1に希釈されたVPDにより形成される。このコソルベント・システムは疎水性化合物をよく溶かすことが可能であり、体系的に投与してもそれ自身は毒性が弱い。当然、溶解度および毒性の特徴を損なうことなく、コソルベント・システムの割合を大きく変えることができる。さらに、コソルベント化合物のアイデンティティーを変えることができる(例えば、他の毒性が弱い無極性界面活性剤をポリソルベート 80の代わりに用いることができる)。ポリエチレン・グリコールの分量は変えることができる(例えばポリビニール・ピロリドンなど、他の生体適合性ポリマーをポリエチレン・グリコールの代わりに用いることが可能である)。他の糖または多糖はD型グルコースに換えることができる。
【0115】
あるいは、疎水性の医薬化合物のための他のデリバリー・システムを利用することができる。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬品を運ぶためのビヒクルまたは担体の例である。ジメチルスルホキシドなど特定の有機溶媒を用いることもできる。しかし、それら有機溶媒は非常に強い毒性を示す。
【0116】
さらに、治療薬を含む固形の疎水性ポリマーの半透明マトリクスなどの徐放性システムを用いて、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストを運ぶことができる。種々の徐放性物質が入手可能であり、当業者によく知られている。化学的性質に応じて、徐放性カプセルは化合物を2、3週間から100日間放出する。
【0117】
TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストの化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質の安定化のために別の手法を用いることができる。
【0118】
また、医薬組成物には適当な固相あるいはゲル相の担体または賦形剤を含めることができる。そのような担体あるいは賦形剤の実施例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、多様な糖、デンプン、セルロース派生物、ゼラチン、およびポリエチレン・グリコールなどのポリマーを含むが、ここに挙げたものに限らない。
【0119】
TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、薬剤として利用可能な対イオンをもつ塩として供することができる。薬剤として利用可能な塩は、それに限定されるわけではないが、塩化水素、硫黄、酢、乳、酒石、リンゴ酸、コハク酸などの多くの酸から構成しうる。塩は水あるいは他の遊離塩基に対応するプロトン酸溶媒によく溶ける傾向がある。
【0120】
また、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、コーティング・ステント、TWEAK関連心臓疾患の治療に有用な医薬組成物の形態をとることができる。
【0121】
本発明も、TWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストを識別する方法に関する。そのようなTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、TWEAK関連疾患(つまり病気)、損傷のセッティングあるいは例えばFN14などTWEAKのレセプターが発現する組織の病理的疾患の治療に有用である。それらの疾患の例としては、線維症および心臓(例えば心筋ミオパチー)、腎臓、肺、肝臓、皮膚、骨格筋、脂質代謝(例えば肥満)、胃腸管、膵臓、生殖器、神経組織(神経変性など)、軟骨、骨、および結合組織の疾患が挙げられる。本発明によると、そのようなTWEAKアゴニストあるいはアンタゴニストは、生体内(in vivo)または生体外(in vitro)で前駆細胞のふるまいを調節して組織の交代を促進するのにも有用である。
【0122】
TWEAKアンタゴニストを認識する、以下のステップを有する1つの実施形態。
1)TWEAKポリペプチド、断片、類似物質、突然変異タンパク質、あるいはその擬似物質をコードしている外因性のDNAを発現している遺伝子組換え実験動物を、TWEAKアンタゴニスト候補である化合物にさらす。
2)遺伝子組換え実験動物から得た線維化した組織、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質、胃腸管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、骨の組織あるいは結合組織を、外因性のDNAを発現しているが化合物にさらされていないレファレンス動物から得た同じ器官または組織と比較する。
【0123】
その後、3)化合物が線維化した組織、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂質、胃腸管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、骨の組織あるいは結合組織に影響を及ぼしたかを判定する。もう1つの実施形態では、ここに述べられているように遺伝子組換え実験動物は哺乳類であるか哺乳類でないかを問わない。
【0124】
ここに述べた遺伝子組換え動物は、発現するとTWEAK関連疾患に罹患するTWEAKポリペプチドをコードする外因性のDNA5を発現する。本実施例では、外因性のTWEAKタンパク質を、途切れた状態、可溶状態、あるいは全長がそろった状態、膜に結合した状態のいずれかの形態で発現する遺伝子組換えマウスを発生させた。外因性のTWEAKタンパク質を発現するマウスにより、以下の表現型が明らかになった。すなわち、非炎症型拡張心筋ミオパチー、鬱血性心不全、肝臓上皮細胞肥厚化;肝細胞空胞化、多病巣性炎症などの肝臓傷害および炎症性腎臓疾患、尿細管ネフロパシーなどの非炎症性腎臓疾患、嚢胞、糸球体ネフロパシー、腎臓尿細管肥厚化、腎臓線維症および炎症性肺疾患などである。さらに、外因性のTWEAKタンパク質を発現するウイルス・ベクターに感染したワイルドタイプのマウスも、同様に管状肥厚化、肝細胞死、肝臓線維症および肝臓傷害の症状を示した。
【0125】
これらの実験動物を保有すれば、当業者は創薬を強力に推し進めることができるようになる。具体的には、外因性のTWEAKタンパク質を発現する実験動物は、ここで述べたTWEAK関連疾患の予防あるいは治療に有用なTWEAKアゴニストまたはアンタゴニストを探し当てる方法を実現するためのモデル・システムを表している。
【0126】
好ましい実施形態では、これらモデル・システムに有用な動物は哺乳類であるか哺乳類でないかを問わない。より好ましい実施形態では、哺乳動物はマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、モルモット、および霊長類を指す。他のより好ましい実施形態では、哺乳類でない動物は鳥類、魚類、両生類、昆虫、および無脊椎動物を指す。
【0127】
動物にとって外因性のDNAの発現を調節する発現調節配列を通じて、遺伝子組換え動物のTWEAKポリペプチドをコードする外因性のDNAは発現する。転写を調節する発現調節配列としては、例えば、プロモーター、エンハンサー転写終了部位、ローカス調節領域、RNAポリメラーゼ・プロセッシビリティー・シグナル、およびクロマチン・リモデリング因子などが挙げられる。後転写イベントを調節する発現調節配列としては、スプライス・ドナーおよびアクセプター部位ならびに転写されたRNAの半減期を改変する、例えば、ポリA付加あるいはRNA結合タンパク質の結合部位を示す配列などが挙げられる。翻訳を調節する発現調節配列には、リボソーム結合部位、目標となるポリペプチドの発現または特定の細胞区画の配列、ならびに翻訳の速度や効率を改変する5’および3’のUTRの配列が挙げられる。
【0128】
遺伝子組換え動物でTWEAKを発現するための好ましい発現調節配列は、例えばレトロウイルスLTR由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、サイトメガロ・ウイルス(CMV)(CMV プロモーター/エンハンサーなど)、シミアン・ウイルス 40(SV40)(SV40 プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス、(例えば、アデノウイルス・メジャーレート・プロモーター(AdMLP)),ポリオーマなどのタンパク質の大量発現を誘導するウイルス因子および強力な、ネイティブ免疫グロブリンとアクチン・プロモーターなどの哺乳類プロモーターを含む。1つの実施形態では、TWEAKポリペプチドをコードするDNAはアルファ・アンチトリプシン(AAT)プロモーターに制御されている。ウイルスの発現調節因子および配列そのものについての詳細な説明は、例えば米国特許第5168062号;第4510245号;および第4968615号を参照。
【0129】
プロモーターを含む組織特異的発現制御因子由来のトランスジェニック動物中で、外来DNAを発現させることも可能である。組織特異的発現制御因子は、当技術で既知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、肝臓特異的アルブミン・プロモーター(Pinkert et al.,Genes Dev.1:268−277(1987))、リンパ系特異的プロモーター(例えばCalame and Eaton,Adv.Immunol.43:235−275(1988);Winoto and Baltimore,EMBO J.8:729−733(1989);Banerji et al.,Cell 33:729−740(1983);およびQueen and Baltimore,Cell 33:741−748.(1983))、神経細胞特異的プロモーター(例えばByrne and Ruddle Proc.Natl.Acad.Sc.i.USA 86:5473−5477(1989))、膵臓特異的プロモーター(例えばEdlund et al.,Science 230:912−916(1985))、乳腺特異的プロモーター(例えば米国特許番号第4,873,316号および欧州特許出願第264,166号)、および発生的調節(developmentally−regulated)プロモーター(例えばKessel and Gruss,Science 249:374−379(1990);Campes and Tilghman,Genes Dev.3:537−546(1989))が挙げられる。組織特異的プロモーターの他の非限定的な例としては、心臓組織プロモーター・アルファ・ミオシン重鎖プロモーター(αMHC)、皮膚組織プロモーター・ケラチン−14(K14)、肺組織プロモーター界面活性剤タンパク質C(SPC)、ならびに腎臓組織プロモーターKsp−カドヘリンおよび腎臓アンドロゲン調節タンパク質(KAP)が挙げられる。メタロチオニン(MT)プロモーター等の誘導性真核細胞プロモーターまたは当技術で既知の他の誘導性真核細胞プロモーターから外来DNAを発現することも可能である。
【0130】
本発明の一実施形態では、本発明のトランスジェニック動物中で発現されるTWEAKポリペプチドは、完全長TWEAKポリペプチドでもよい。別の実施形態では、トランスジェニック動物中で発現される該ポリペプチドは、TWEAKポリペプチドのフラグメントである。好適な実施形態では、TWEAKポリペプチド・フラグメントは、可溶性TWEAKポリペプチドである。
【0131】
別の実施形態では、本発明は、心臓、血管、肺、肝臓、腎臓、脳、胎盤、骨格筋、膵臓、脾臓、リンパ液、胸腺、虫垂、末梢血リンパ球、消化管、神経細胞、皮膚、脂肪細胞、軟骨、硬骨、結合組織からなる群より選択される組織で、TWEAKポリペプチドをコードする外来DNAを発現するトランスジェニック動物に関連する。一実施形態では、TWEAK DNAは、構成性プロモーターから発現される。別の実施形態では、該DNAは、誘導性プロモーターから発現される。別の実施形態では、該DNAは、組織特異的プロモーターから発現される。
【0132】
本発明は、TWEAK関連状態の治療用の医薬品として作用することが可能なTWEAKアゴニスト化合物を同定する方法、あるいは本発明に従って生体内(in vitro)または生体外(in vitro)で前駆細胞の挙動を調節することによって組織置換を促進するための方法にも関連する。正常動物にアゴニスト候補化合物を投与して、器官系でのその効果を評価することが可能である。その後、治療動物由来の線維化、心臓、肝臓、腎臓、肺、皮膚、骨格筋、脂肪、消化管、膵臓、生殖器、神経、軟骨、硬骨、または結合組織を、未治療動物由来の同一組織と比較する。それによって、該化合物が任意の該組織中で生物学的効果を誘発したかどうかが決定される。
【0133】
本発明は、TWEAK関連状態の治療用の治療標的として作用することが可能なTWEAK調節遺伝子を同定する方法にも関連する。例えば、様々な組織での正常動物と比較して、TWEAKトランスジェニック動物でRNAプロファイリングを実行することが可能であり、これによって薬物標的が同定される。
【0134】
本発明の更なる目的は、筋肉細胞、軟骨、硬骨、または基質細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞、および皮膚細胞等の結合組織細胞タイプを生じる間葉幹細胞タイプの増殖または分化を含む前駆幹細胞増殖または分化に影響を及ぶす方法を提供することである。本発明の目的は、胆管上皮細胞または肝細胞および尿細管上皮を生じる腎臓前駆細胞を生じる卵形細胞の増殖または分化能力に影響を及ぼす方法を提供することでもある。
【実施例】
【0135】
この発明をよりよく理解するために、以下の実施例を説明する。これらの実施例は、説明することのみを目的とするもので、いかなるかたちであっても本発明の範囲を制限するものと解釈することはできない。
【0136】
(実施例1)
(TWEAKトランスジェニック・マウスの生成)
TWEAK活性および生体内(invivo)において、TWEAKシグナル伝達に関する生物学的帰結の対象臓器を同定するために、標準的トランスジェニック技術を使用して2匹のマウスTWEAK発現コンストラクトを生成して、正常なマウス(C57Bl/6xDBA/2)F1および(C57Bl/6xSJL/J)F2にTWEAKペプチドを過剰発現させるために用いた。R.S.Williams and P.D.Wagner,J.Applied Physiology 88:1119−1126(2000)。使用したTWEAK発現コンストラクトは以下の通りである。(1)マウスIgGシグナル配列の下流に可溶型マウスTWEAK(指定sTWEAK)をコードするアミノ酸配列番号1の101〜249からのTWEAKcDNAを、ヒトα抗トリプシン(AAT)プロモーターとβ−グロブリン・イントロンの下流にあり、ヒト成長ホルモン(hGH)polyA配列の上流にあるCH269発現ベクター(SV40 polyA付加配列を含むベクター誘導体PCDEP4(Invitrogen)に注入した。(2)アミノ酸配列番号1の1〜249に相当するタンパク質(指定FL−TWEAK)の完全長、膜貫通型をコードするcDNAを、FL−TWEAK配列+SV40 polyA付加部位が含まれるpBlueScript発現ベクターに注入した。(Desplat−Jego et al.,J.Neuroimmunology 133:116−123(2002)の記載に準拠)。次に上記+polyA付加部位を単離し、もう一方のベクター中にクローニングした。ApoEエンハンサー−ヒトAATプロモーターが含まれるフラグメントの調節領域を上流側に注入し、発現ベクターCA300を生成した。AATプロモーターは、主に肝臓と、腎臓を含む他の組織の下位とにおいて転写を誘発していることが明らかになった。P.Koopman et al.,Genes Dev.3:16−25(1989)
sTWEAKトランス遺伝子コンストラクトに関しては、ヌクレオチド468〜488(5’プライマー)配列およびヌクレオチド配列番号2番の693〜713(3’プライマー)の相補鎖配列に相当するプローブを用いて、23匹の創始トランスジェニック・マウスをそれぞれtail DNA PCR法で同定した。また、TWEAK用の血清ELIZA法によって、23匹の創始動物のうち10匹からは血清中に検出可能なレベルのTWEAKが0.06〜3.0mcg/mlの範囲で存在することが明らかになった。さらに、残り13匹の創始マウスから血清TWEAKを検出することは不可能であった。すなわち、血清TWEAKが10ng/ml以下であったことを示す。PCR+、血清TWEAK+の創始マウス10匹のうちの9匹は、月齢約4〜5ヶ月で健康障害が認められたことが判明した。これらのマウスには、体重の減少、背中の曲がり、粗毛および眼球突出がみられた。このうち5匹が突然死亡した。従って、疾患の兆候が見られた残りの4匹が健康障害の兆候をもつ検体となった。これとは対照的に、13匹のPCR+血清陰性である創始マウスのうち1匹のみに健康障害あるいは死亡が確認された。
【0137】
FL−TWEAKトランス遺伝子コンストラクトに関しては、2匹のトランスジェニック創始マウスがそれぞれ、肝臓のTWEAK mRNA発現に用いるtail DNA PCR法およびNorthern blot分析によって同定された。さらに、TWEAK用の血清ELIZA法によって、これらの創始(foundrs)動物は二匹の血清中には検出可能なレベルのTWEAKは存在しないことが明らかになった。すなわち、10ナノグラム/ml以下であった。FL−TWEAK Tg創始(founder)マウスには、臨床的に確認できる表現型は見られなかった。
【0138】
(実施例2)
(sTWEAKをコードする外来DNAを搬送するアデノウイルス・ベクターに感染させたマウスのTWEAK過剰発現)
生体内(in vivo)のTWEAK過剰発現による生物学的影響を同定するために、週齢8〜10週のメスのC57BL/6マウス成体を、Tao et al.,Molecular Therapy 3:28−35(2001)に記載の標準アデノウイルス技術を使用して、sTWEAK(「アデノ−TWEAK」)または緑色に発光する発光クラゲのタンパク質(「GFP」)に対しcDNAを活性するサイトメガロ・ウイルス(CMV)プロモーターを持つ複製欠損アデノウイルス・ベクターに感染させた。GFP(「アデノ−GFP」)を含むアデノベクターは、陰性の対照として使用された。マウスをアデノ−TWEAKコンストラクトに感染させることに成功したかどうかを確認するため、標準ELIZAアッセイを用いて血清中のTWEAKタンパク質のレベルを測定し、様々な時点で観察を行った。
【0139】
マウス成体におけるマウスsTWEAKの規則的な過剰発現は、少なくとも3つの主要臓器である肝臓、腎臓、心臓の組織変化を誘発した。表1を参照。アデノウイルス発現マウスコンストラクトの表現型を実施例1に記載の表1のTWEAK Tgマウスの表現型と比較した。これらの観察については、以下の複数の実施例中で詳細を述べる。
【0140】
(表1.TWEAK過剰発現によるマウス成体の組織リモデリングの誘発)
【0141】
【表1】
【0142】
(実施例3)
(sTWEAKおよびFL−TWEAK誘導性拡張型心筋症)
実施例1で生き残った4匹のPCR+、血清sTWEAK+創始マウスを殺し、全体に渡って形態的異常を調べた。表2を参照。検死時の顕微鏡検査よって、正常なマウスと比較した場合、上記マウスには2〜3倍に肥大した認拡張型心筋症が認められた。複数のsTWEAKトランスジェニック創始マウスにはそれぞれ拡張型心筋症の表現型が認められたため、個別の追加事象が原因である可能性は低いと考えられる。さらに、sTWEAKトランスジェニック・マウスを血液生化学検査によって分析した結果、心筋特異的クレアチンキナーゼが上昇していることが明らかになった。
【0143】
(表2.sTWEAKトランスジェニック・マウス)
【0144】
【表2】
【0145】
C57BL/6株に連続的に戻し交配をすることによって作製されたFL−TWEAKトランス遺伝子系からのマウスには、拡張型心筋症の表現型が認められた。表3を参照。FL−TWEAK陰性のトランス遺伝子の同腹仔には、心臓の異常は認められなかった。
【0146】
(表3.FL−TWEAKトランスジェニック・マウス)
【0147】
【表3】
【0148】
これらのことを統合して考えると、データが示すように、心臓の表現型はTWEAKに依存していることが明確になった。
【0149】
sTWEAKトランスジェニック・マウスおよびFL−TWEAKトランスジェニック・マウスの心臓の組織病理分析の結果は同様のものであった。FL−TWEAKトランスジェニック・マウスの心臓(「Tg」)と非トランスジェニック(「NTg」)同腹仔の正常な心臓との比較を低倍率顕微鏡で検査した結果は、図1の通りである。記載されているFL−TWEAKトランスゲニックマウスの心臓は、TWEAKトランスジェニック・マウス(PCR+、血清TWEAK+)から摘出されたTWEAKトランジェニックマウスの心臓の典型である。トランジェニックマウスの心臓には、拡張型心筋症が認められ、心室および心房の肥大が確認された。これらの心臓欠陥と一致するように、上記動物には心房および心室の血栓症が多く見られた(図1)。肺および肝組織の分析から、数種の動物の組織には鬱血があることが認められた。
【0150】
高倍率顕微鏡による検査により、心筋細胞肥大および巨大核を含む心臓に関して、他の組織病理学的な結果が判明した。組織病理学的に分析した結果、TWEAKトランスジェニック・マウスの心室には、炎症の兆候は明らかに認められなかった。従って、TWEAK関連状態が見られる心筋症は本質的には非炎症性である。
【0151】
sTWEAKトランスジェニック・マウス(創始マウス3匹および孫マウス1匹)の末血を血液生化学検査した結果、特に心臓内(すなわち、MB型CK)のクレアチンキナーゼ(CK)の濃度が異常に高く、心臓圧迫、心臓損傷をもつ可能性が高いことを示した。
【0152】
アデノTWEAK感染させた週齢8〜10週のメスのC57BL/6マウス(実施例2を参照)は、アデノウイルスGFP感染陰性の対照マウスと比較すると、感染後3週間目に拡張型心筋症になっていることが明らかである。組織病理学(図2)からも明らかであるように、TWEAK感染マウスの心臓は、拡張型心筋症であることが明確になった。
【0153】
これらのことを統合して考えると、TWEAKは、拡張型心筋症および鬱血性心不全(CHF)を含む心筋症に関し、重要な役割を果たしていることが明らかになった。
【0154】
(実施例4)
(TWEAKによって生じる肝上皮細胞過形成、肝細胞空胞形成、肝細胞死、胆管過形成、肝線維症および肝障害)
肝上皮過形成および肝細胞空胞形成においてのTWEAKの働きは、sTWEAKポリペプチドを発現するDNAを持つアデノウイルスで感染させた野生型マウスの損傷と同様に、sTWEAKおよびFL−TWEAKトランスジェニック・マウスの損傷でも確認された。
【0155】
実施例1から得られたTWEAK Tgマウスの肝臓は、NTgマウスと比べて、2週間の年齢で顕著な胆管および卵形細胞過形成を示した。(図3を参照せよ。)
表4に示すように、10ng/ml以下の血清TWEAK濃度であっても、2つの創始FL−TWEAKトランスジェニック・マウスの肝臓は、緩やかな胆管および卵形細胞過形成を示した。C57BL/6バックグラウンドでのFL−TWEAKトランスジェニック・マウスの戻し交配で、顕著な胆管および卵形細胞過形成が認められた。(表4)
(表4.FL−TWEAK トランスジェニック・マウス)
【0156】
【表4】
【0157】
同様に、0.2および3.0μg/ml間のTWEAK血清レベルを有するsTWEAKトランスジェニック創始細胞は、顕著な胆管および卵形細胞過形成が認められた。(表5)
(表5.sTWEAK トランスジェニック・マウス)
【0158】
【表5−1】
【0159】
【表5−2】
【0160】
胆管の上皮細胞および卵形細胞と肝細胞を区別するA6mAbを有する実施例1のTgマウスから得られるFL−TWEAK Tg肝臓断面の免疫組織化学(IHC)染色により、この胆管および卵管過形成が確認された。(Engelhardt et al.,Differentiation 45:29−37(1990))
図4はNTgマウスと比較して、FL−TWEAK Tgの肝実質までの拡大と同様に、門脈域に関連するA6陽性細胞の増加も示す。FL−TWEAK Tgマウスからのヘマトキシリンおよびエオシン染色部のより大きな拡張もまた、門脈域の胆管に隣接する卵形細胞の存在下で、明らかに著しい増加を示す。(図5)増殖する細胞核抗原(PCNA)の免疫組織化学によって、早ければ2週間の年齢でNTgマウスと比較したTWEAK Tgマウスの胆管および卵形細胞の増殖頻度の増加が確認された。後になって、つまり8週間および7ヵ月の間の年齢で、NTgマウスと比較したTWEAK Tgマウスの肝細胞の増殖頻度の増加が観察された。(図示せず)さらにNTg同腹仔と比較すると、FL−TWEAKおよびsTWEAKの双方は、実施例1から得られた7ヵ月のTgマウスの肝細胞空胞変性を誘導した。(図6)
実施例2に記載のアデノ−TWEAKウイルスを用いたsTWEAKを過剰発現している8−10週間の年齢のC57BL/6およびBALB/c SLIDマウスは、顕著な血清TWEAK濃度を示した。図7を見ると、血清TWEAK濃度の測定におけるアデノウイルスの異なる量の分娩効果を示す。静脈内のマウス(「B’’線によって表される)につき、どちらかのアデノウイルスの1011粒子、静脈内のマウス(「J’’線によって表される)につきアデノウイルスの1010粒子、あるいは筋肉注射のマウス(「H’’線によって表される)につきアデノウイルスの1011粒子によってマウスが感染した。3日目から7日目のC57BL/6バックグラウンドのマウスおよび3日目から4日目のBALE/c SLIDバックグラウンドのマウスに認められる血清黄疸によって、アデノ−sTWEAKに感染したマウスは肝障害を引き起こした。何匹かのBALE/c SLIDマウスは、4日目に死亡した。
【0161】
さらに、3日目までの対照GFPに感染した肝臓(アデノ−GFP)と比較したTWEAKに感染した肝臓(アデノ−sTWEAK)において、高いレベルのスパラギン酸塩アミノトランスフェラーゼ(「AST」)およびアラニン・アミノトランスフェラーゼ(「ALT」)の肝酵素マーカーで示されるように、実施例2に記載されたアデノ−sTWEAKに感染したC57BL/6マウスもまた早ければ投与後2−3日目に現れる肝細胞死を発現した。(表6および図8)。単独でアデノウイルス・ベクターが炎症を誘導することが予想されるように、感染後7日目までに双方の肝酵素もまたアデノ−GFP治療したマウスで増加した。収集した肝細胞および断片化された核を含む強めに濃縮したエオシン好性の「議員体(Councilman bodies)」により特徴づけられ、組織学的形態で示されるように、肝細胞死もまたTWEAK−感染した肝臓において顕著に見られた(図8)。アデノ−sTWEAKで治療したマウスは、さらにはっきりと管の過形成反応を示した。感染後7日目にピークに達し、11日目も速やかに顕著な反応を示した(図8)。TWEAK感染した肝臓において、明視野顕微鏡法で識別することにより、胆管の上皮および卵形細胞に固有なA6マーカーを発現する過形成構造が認められた。
【0162】
(表6.Ad−TWEAK およびAd−GFP 動物の肝酵素値)
【0163】
【表6】
【0164】
細胞TWEAKレセプターであることを示すFn14は、ガラクトサミン(GalN)および四塩化炭素(CCl4)のような肝毒素へ露出した後、誘導された。図9は、Fn14および暗視野顕微鏡法のための放射性同位元素で標識されたプローブを用いて、in situでのハイブリダイゼーション(ISH)によって測定される通常の成体マウス肝臓では、Fn14が検出可能でないことが明らかにされた。しかし、Fn14は以下のCCl4損傷を大きく誘導した。類似した結果は、Ga1N損傷の後に得られた(図示せず)。
【0165】
アデノ−GFP対照肝臓と比較して、アデノ−sTWEAK肝臓に見られるように、実施例2に記載されたアデノ−TWEAKに感染したC57BL/6マウスもまた、肝細胞および若干の過形成構造におけるFn14の上方調節を示した。(データは示されない)
Liu et al.,Hepatology 28:1260−1268(1999)およびOlynyc et al.,Am.J.Pathol.152:347−352(1998)に記載されているように、10週間目のC57BL/6マウスの肝臓損傷が胆管のライゲーションによって誘導された2つのダクト・モデルにおいて、さらにFn14の役割は示された。一般の胆管は、0日目の手術によって結紮され、10週間の年齢で5匹のC57BL/6マウスはそれから術後4日目から8日目に安楽死した。肝臓のパラフィン断面はその後に調整され、完全なFn14遺伝子を含む放射性同位元素で識別されたネズミのTWEAKおよびFn14アンチセンス・プローブを用いて、TWEAKおよびFn14の発現はin situでのハイブリダイゼーションによって決定された。図10に示すように、4日目までにFn14は胆管の上皮細胞において強く発現したが、肝細胞においては発現しなかった。8日目までのFn14発現で、胆管の上皮細胞はかなり減少するが、若干の低いレベルのマウスではまだ検出可能であった。(データは示されない)しかしTWEAK発現は変化せず、この胆管結紮モデルで検出可能ではなかった。これらの結果は、Fn14発現が特定の肝臓損傷に応答する胆管の上皮細胞においてアップレギュレーションされ、このように肝線維症で重要な役割を果たすことを示す。
【0166】
総合すればこれらの観察から、TWEAKが肝臓の上皮細胞過形成、肝細胞空胞形成、肝障害、肝細胞死、胆管過形成および肝線維症の重要な要因であることが確認された。
【0167】
(実施例5)
(FL−TWEAKおよびsTWEAKは腎疾患を引き起こす)
実施例1から得たFL−TWEAKトランスジェニック・マウスは、軽度の多巣性炎症を含む顕著な腎疾患、尿細管腎症、嚢胞、糸球体腎症、尿細管好塩基球増加、尿細管拡大、尿細管空胞形成、およびヒアリン円柱を示した。
【0168】
実施例2に記載されるように、週齢10週のアデノ−TWEAK感染C57BL/6マウスは、陰性対照アデノ−GFP感染マウスと比較して、糸球体腎症および尿細管過形成を示した。また、アルポート疾患のマウス・モデル中のFn14発現の増加によってアルポート症候群でのTWEAKの役割が示された。さらに、TWEAKアンタゴニストを用いた治療によって、片側性尿管閉塞症誘発腎線維症のマウス・モデルで、腎線維症でのTWEAKの役割が実証された。
【0169】
皮質間質の増殖は、通常、急性または慢性炎症性細胞および線維化組織とともに水腫または浸潤が原因である。実施例1から得たFL−TWEAKトランスジェニック・マウスは、尿細管腎症および軽度の多巣生間質性炎症を示した。より具体的には、FL−TWEAKトランスジェニック・マウスと非トランスジェニック・マウスを比較する腎臓切片は、週齢8週で明白な尿細管好塩基球増加を示した(図11、中央パネル)。
【0170】
糸球体腎症は、白血球、すなわち好中球および単球両方の浸潤、ならびに内皮、上皮、およびメサンギウム細胞の増殖によって特徴付けられ得る。実施例1に記載されるFL−TWEAKトランスジェニック・マウスは、メサンギウム細胞の細胞増多、ならびに近隣の尿細管上皮の好塩基球増加を有する皮膜上皮の肥大および軽度の皮膜肥厚によって証明されたように、顕著な糸球体腎症を示した(図12)。また、正常マウス糸球体形態(図11、右上パネル)と比較したとき、FL−TWEAKトランスジェニック・マウスは、軽度の糸球体周囲線維化とともに糸球体嚢胞形成に至る尿路空間の拡大を示した(図11、右下パネル)。
【0171】
FL−TWEAK Tgマウスで認められた尿細管好塩基球増加は、これらの尿細管細胞の細胞質中のRNAの増加、すなわち転写活性を示し、それらが増殖性細胞であるということを示唆する。増殖性細胞核抗原(PCNA)染色によって、実施例1に記載されるように、TWEAK−Tgマウスの腎臓中で増殖する尿細管細胞のサブセットがあること、およびこれらは好塩基性尿細管に対応することが確認された(図13)。好塩基性尿細管が近位または遠位尿細管であるかどうかを決定するために、(1)好塩基性尿細管を局在化するヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を用いて、(2)近位尿細管に特異的なレクチン(T.プルプレア(T.Purpureas)由来レクチン)を用いて、かつ(3)遠位尿細管に特異的なレクチンを用いて、TWEAK Tgマウス由来の3つの連続組織切片を染色した。図14は、実施例1に示すようなTWEAK Tgマウス中の好塩基性(増殖性)尿細管は、近位または遠位尿細管上皮マーカーを発現しないことを示す。
【0172】
TWEAK Tgマウス中の少なくともいくつかの上皮マーカーを持たない増殖性尿細管の存在は、腎臓障害のセッティング用のモデルと整合性があり、この際近位尿細管のS3切片に由来する細胞は、前駆細胞の特性を示す、すなわちそれらは増殖し、分化の指標である間葉細胞マーカーを発現し始める。これらの細胞のその後の分化は、新しい尿細管の再生を介して組織修復で役割を果たすことが可能である(Witzgall et al.,J.Clin.Invest.93:2175−2188(1994))。また、S3領域に存在する既存の前駆細胞集団の増殖および分化が起こり得る。
【0173】
TWEAK Tgマウス中のいくつかの上皮マーカーを持たない増殖性細胞の存在は、腎臓発達用のモデルとも整合性があり、この際上皮尿細管は、分化を受ける間葉前駆細胞から形成されることから、上皮マーカーおよび尿細管に特徴的な特性を獲得する。
【0174】
同様に、実施例2に記載されるように、アデノ−sTWEAKウイルスでの10週齢C57BL/6マウスの感染は、感染後11日で、糸球体皮膜の不定期な肥厚および過形成とともに、糸球体腎症および尿細管上皮の好塩基球増加を誘発する(図15)。これは、陰性対照アデノ−GFP感染マウスで認められる正常組織構造とは対照的であった。さらに、上皮細胞増殖の指標である好塩基球増加は、3日目に識別できたが、投与後1週間付近がピークであった。
【0175】
放射線標識TWEAKおよびFn14アンチセンス・プローブを用いたin situハイブリダイゼーション(ISH)によって示され、かつ暗視野顕微鏡によって明らかにされたように、腎疾患でのTWEAKの役割と整合して、TWEAK mRNAは、成体C57BL/6マウス腎臓中で広範に発現されることが示され(図16)、Fn14 mRNAは、内部皮質/外側髄質の近位尿細管中で発現されることが示された(図17)。また、Fn14 mRNAは、アルポート症候群に対するマウス・モデルの腎臓中で誘発されることが示された。これは、週齢4から7週のアルポート・マウスでの疾患進行のように、野生型動物と比較した2つの個々のアルポート・マウス中のFn14 mRNA中の倍増として図18に示されている。
【0176】
TWEAKアンタゴニスト、すなわちマウスFn14−Fc融合タンパク質を用いて処理することによって、アルポート疾患のマウス・モデルでのTWEAKの役割を直接試験した。対照IgG2a(muP1.17)またはmuFN14−Fc融合タンパク質(Biogen(Cambridge)によって調製)を用いて、Cosgrove et al.,Genes Dev.10(23):2981−2992(1996)に従って調製された5つのアルポート・ノックアウト(KO)マウスの2つの群を試験した。使用した対照IgG2aは、ハイブリドーマから産生され、標準的mAb精製手順によって精製されたマウス骨髄腫タンパク質P1.17である。muFN14−Fcは、マウスFn14の細胞外ドメインおよびマウスIgG2aのFc領域の融合タンパク質である。ヒト293胎児腎臓細胞で、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で融合タンパク質を生成して、標準的mAb精製手順によって精製した。第1の処理は、週齢3週で、腹腔内(IP)経路によるタンパク質100マイクログラムの投与量を用いた。同投与量を1週間に2度投与して次の4週間処理を継続した。マウスを7週目(7週齢)の終わりに屠殺した。腎臓を回収して、パラフィンに包埋し凍結した。パラフィン切片のH&E染色から得た糸球体形態、平滑筋アクチン染色での活性化筋線維芽細胞、および凍結切片のCD11b染色による活性化単球によって、腎線維症および炎症の程度をスコアリングした。平滑筋アクチンおよびCD11b染色切片を用いて、ポジティブに染色された領域を定量して、MetaMorphコンピューター・プログラムによって線維症および炎症の程度をそれぞれ評価した。分析結果は、FN14−Fc処理マウス中の糸球体の健康状態は、大幅に改善された(処理Fn14−Fc中で病状を有する39%のみに対して、処理対照Ig中の病状を有する59%の糸球体、P値=0.03)ことを示す。糸球体病状は、半月体および/または糸球体線維症の存在によって特徴付けられる。さらに、処理マウス中の腎臓の皮質領域での線維症は、アルファ平滑筋アクチン染色、p値=0.04によって測定されたように著しく減少された。FN14−Fc処理マウス中の単球浸潤の減少での一般的傾向もあった。これらの結果によって、アルポート・マウスのFN14−Fc処理は、腎臓の皮質領域での線維症を減少させ、糸球体の一般的形態を改善することが顕著に示される。
【0177】
TWEAKアンタゴニスト、すなわちハムスター抗TWEAKモノクローナル抗体を用いた処理によって、片側性尿管閉塞症誘発腎線維症のマウス・モデルでもTWEAKの役割を試験した。腎線維症進行に対するマウス・モデルでは、尿管を結紮して、片側性尿管閉塞症(UUO)を引き起こした(Klahr et al.,Am J Kidney Dis 18:689−699(1991);Moriyama et al.,Kidney Int 54(1):110−119(1998)。障害のない腎臓は、比較的正常な腎臓機能を維持することができるので、UUOは、マウスで短期の腎臓不全なしで進行性腎硬化症を引き起こす。障害のある腎臓は、急激な広域の線維症を被る一方で、障害のない腎臓は、適応肥大を受ける。
【0178】
UUO誘発腎線維症に対するTWEAKアンタゴニスト処理の影響を形態計測学的に定量した。週齢8〜10週の8つのウイルス抗原非含有C57BL/6雄マウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor ME)の4つの群を用いた。該マウスを以下の集団に区分した。すなわち、PBS単独(VEH)、対照ハムスター抗キーホール・リンペット・ヘモシアニン(Keyhole Limpet Hemocyanin)(KLH) 抗体(HA4/8;BD Biosciences(San Jose)から購入)、ハムスター抗マウスTWEAK抗体(AB.G11;Biogen(Cambridge)により調製)、可溶性マウスTGF−β受容体Ig(TGF−βR、陽性対照;Biogen(Cambridge)により調製)、および非操作(UNOP)である。
【0179】
腎線維症を誘発するために、Hammad et al.,Kidney Int 58:242−250(2000)に記載されるように、0日目に、左尿管を無菌的に単離して、操作側の腎臓で結紮した。以下の群、すなわちPBS、HA4/8、およびAB.G11(抗TWEAK mAb)を外科手術後2、6、および9日で、かつsTGF−βR−Ig群を1、3、6、および8日で付加的に処理した。外科手術後10日で、左結紮腎臓を除去し、腎盤の中央を介して横断的に等分して、パラフィン切片化用に調製した。
【0180】
コラーゲンに特異的なトリクローム・マソン染色を用いてパラフィン処理腎臓切片を染色した。操作腎臓中の線維症の程度を評価するために、Metamorphプログラムを用いて、トリクローム・マソン・スライド中の青色染色領域を測定して、コラーゲン含有量を定量した(図19)。
【0181】
驚くべきことに、抗TWEAKモノクローナル(AB.G11)抗体処理動物由来の腎臓切片は、PBS処理動物と比較してコラーゲン含有量での42%の減少、および対照(HA4/8)抗体処理動物と比較してコラーゲン含有量での30%の減少を示した。これとは対照的に、可溶性TGF−β受容体Ig処理(TGF−βR)動物由来の腎臓は、PBS処理動物と比較してコラーゲン含有量での33%の減少、および対照(HA4/8)抗体処理動物と比較してコラーゲン含有量での19%の減少のみを示した。これらの結果によって、抗TWEAKモノクローナル抗体等のTWEAKアンタゴニストでの処理は、可溶性TGF−β受容体Ig(TGF−βR)によって示される減少よりも高程度で腎線維症を著しく減少させることが顕著に示される。
【0182】
以上のことをまとめて考えると、本明細書で提供される結果によって、TWEAKが、多巣性炎症等の炎症性腎臓状態と、尿細管腎症、嚢胞、糸球体腎症、アルポート症候群、尿細管好塩基球増加、尿細管拡大、尿細管空胞形成、ヒアリン円柱、尿細管過形成および腎線維症等の非炎症性腎臓状態とで重要な役割を果たすことが示される。
【0183】
(実施例6)
(TWEAKは肺の炎症を引き起こす)
実施例1に記載されているFL−TWEAKトランスジェニック・マウスおよび対照マウスからの肺の横断切片で、FL−TWEAKマウス Tgマウス、およびsTWEAK Tgマウスの両方(図20)に、著しい肉芽腫性炎症およびリンパ組織球性炎症が示された。また、ラジオ標識されたTWEAKアンチセンス・プローブを用いたイン・サイチュウ・ハイブリダイゼーション(in situ hybridization)(ISH)によって示され、かつ暗視野(ISH)顕微鏡法(図21)で明らかにされるように、正常なマウスの細気管支および肺胞を裏打ちする肺の細胞における内在性TWEAK発現が明らかになった。
【0184】
肺病におけるTWEAKの役割と一致して、成体C57ΒL/6マウスの肺で、Fn14 mRNΑが広く発現されている(図22)ことが、ラジオ標識されたFn14アンチセンス・プローブを用いたISHによって示され、かつ暗視野顕微鏡法で明らかにされた。
【0185】
まとめるとこれらのデータは、TWEAKが、肉芽腫性炎症およびリンパ組織球性炎症を含む炎症性の肺の状態を媒介する重要因子であることを示す。
【0186】
(実施例7)
(TWEAKは脂質生成および筋形成の両方を阻害する)
細胞分化へのTWEAKの効果を、当技術分野で周知である脂質生成および筋形成の2つの生体外(in vitro)モデルを用いて調査した。(Green and Meuth,Cell 3:127−133(1974);Yaffe and Saxel,Nature 270:725−727(1977))。
【0187】
脂質生成に関しては、3T3−L1細胞を、まずダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)ベースの増殖培地で集密状態に増殖し、その後、当技術分野で公知の方法にしたがって、脂質生成を行うように誘導した。Green and Kehinde,Cell 5:19−27(1976)。簡潔には、細胞を0日目に、デキサメサゾン、インスリン、およびIBMXを含有したDMEMベースのMDIメディアで2日間、それに続き、さらに2日間インスリンのみのDMEM培地で刺激した。5日目に、細胞を通常のDMEMベースの増殖培地で培養し、脂質生成は7日目にオイル・レッド染色によって評価した。
【0188】
筋形成に関しては、C2C12細胞をDMEMベースの増殖培地で近集密状態に増殖し、0日目に、2%のウマ血清を含有した低血清分化培地に切り換え、分化の引き金とした(Yaffe and Saxel,Nature 270:725−727(1977))。筋管形成を位相差顕微鏡を用いて調べ、写真を分化6日目に撮影した。
これらの2つの分化経路へのTWEAKの効果を調べるために、組換型ヒトTWEAK(TWEAK−FLAG、TWEAK、またはFc−TWEAK)の様々なバージョンを0日目に100ng/mlの終末濃度で添加し、補給を毎日行った。TWEAKは、両方の系(図23および24)で、脂質生成および筋形成の両方を阻害した。TWEAKの阻害作用の特異性は、ハムスターの抗TWEAKモノクローナル抗体AB.G11、またはhFn14−Fcを中和試薬として用いることで確認した。
【0189】
これらの結果は、TWEAKが細胞分化で重要な役割を果たすことを示す。
したがって本発明は、ここに開示したTWEAKポリペプチド、ペプチド、アゴニスト、またはアンタゴニストを用いて、ここに開示した前駆細胞の細胞分化に影響を与えるための方法を提供する。
【0190】
(実施例8)
(TWEAKはヒト間葉系幹細胞に結合する)
ヒト間葉系幹細胞(hMSCs)(Cambrex Corp.,East Rutherford,NJ)をMSCGM培地(Cambrex)で培養し、それらを5mMEDTAを含有するPBSでインキュベートすることによって採取し、蛍光活性化セル・ソーティング(FACS)分析用に調整した。
【0191】
細胞を、PBSおよび1%FBS、ならびに100ng/mLのFc−TWEAKを含むFACS緩衝液中で、氷上に1時間インキュベートした。
FACS緩衝液で2回洗浄した後、1:200希釈のフィコエリトリン結合ヤギ抗ヒトFc、またはヤギ抗マウスFcの二次抗体で細胞をインキュベートした(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)(図25)。バックグランド染色は二次抗体染色のみで測定し、破線によって示されている。
【0192】
図25で示されるように、TWEAKはヒト間葉系細胞に結合し、Fc−TWEAKの染色プロファイルが二次抗体のみと比較して移動していることによって明らかにされている。即ち、TWEAKが間葉系細胞(筋肉細胞と同様に、ストロマ細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞、および真皮細胞などの結合組織細胞型、軟骨、ならびに骨に分化することができる前駆細胞型)に結合できるということによって、TWEAKが、正常モデルと病気モデルとの両方において、これらの細胞形の分化での重要な役割を果たしていることが示されている。
【0193】
(実施例9)
(Fn14は神経幹細胞で発現される)
Fn14の発現は、C57ΒL/6および129/Sveバックグランドの両方のミクスチャー(mixture)に関して、胚13.5日目のマウスからの脳で調べた。その脳で、Fn14アンチセンス・プローブを用いてイン・サイチュウ・ハイブリダイゼーションを行った。陽性のシグナルが、神経幹細胞の位置と相関して、胚脳室の脳室下領域で検出可能であった(データは示されていない)。これらの結果は、Fn14が神経の細胞分化で重要な役割を果たすことを示す。
【0194】
(実施例10)
(TWEAK関連状態治療用の治療薬を同定する方法)
本発明によるTWEAK関連状態治療用の治療薬として作用するTWEAKアンタゴニスト化合物を同定するために、TWEAKポリペプチド、あるいは、そのフラグメント、類似体、突然変異タンパク質、または模倣体をコードする外因性DNAを発現する、マウスなどの試験動物を得る。それらの動物は、その後TWEAK関連状態用の治療薬として機能する可能性のある候補化合物に曝露される。その後、試験動物からの線維化、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂肪、胃腸、膵臓、生殖器、神経、軟骨、骨、または結合組織を、それら外因性DNAを発現するが候補化合物にさらされていない基準動物からの同一組織と比較し、候補化合物が線維化、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚、骨格筋、脂肪、胃腸、膵臓、生殖器、神経、軟骨、骨、または結合組織のTWEAK関連状態に影響を与えたかを判定する。
【0195】
本発明によるTWEAK関連状態治療用の治療薬として作用するTWEAKアゴニスト化合物を同定するために、TWEAKポリペプチド、あるいは、そのフラグメント、類似体、突然変異タンパク質、または模倣体をコードする外因性DNAを発現する試験動物、または発現しない試験動物を、TWEAK関連状態用の治療薬として機能する可能性のある候補化合物に曝露することが可能である。その後、試験動物からの線維化、心臓、腎臓、肝臓、または肺組織を、候補化合物に暴露されていない基準動物からの同一組織と比較し、ここに記載されているように、生体内(in vivo)でのTWEAKシグナリングによって、候補化合物が前記組織になんらかの生物学的変化を誘導したかを判定する。
【0196】
この明細書で引用されたすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願それぞれが引用によって組み込まれるように特異的かつ個別的に明示される場合と同様に、引用によってここに組み込まれる。
【0197】
理解の明快さを目的として、以上の発明を、実施例および例示の方法によってある程度詳細に説明したが、この発明が教示するところの観点から、付随する請求の範囲を含む本明細書における開示の精神の範囲から逸脱することなく、この発明になんらかの変更および改善が加えられてもよいことは当業者にとって容易に明らかになるだろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張型心筋症を処置または予防することを必要とする被験体において、拡張型心筋症を処置または予防するための組成物であって、該組成物は、TWEAKアンタゴニストを含み、ここで該TWEAKアンタゴニストは、(a)抗TWEAK抗体またはその抗原結合部分;(b)抗TWEAKレセプター抗体またはその抗原結合部分;あるいは(c)可溶性TWEAKレセプターである、組成物。
【請求項2】
前記TWEAKアンタゴニストが、TWEAKとその細胞レセプターとの相互作用に介入する能力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記TWEAKアンタゴニストが、抗TWEAK抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記TWEAKアンタゴニストが、抗TWEAKレセプター抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗体が合成抗体である、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗体が全長のものである、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗体が、抗体フラグメント、または抗体の抗原結合部分を含む融合タンパク質である、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記TWEAKアンタゴニストが、可溶性TWEAKレセプターである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記可溶性TWEAKレセプターが、Fnl4−Fcを含むタンパク質である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、注射、経粘膜、経口、吸入、眼、直腸、ステント・インプランテーション、局所的、非経口、長時間作用インプランテーション、徐放性、遺伝子療法、および耳経路からなる群より選択される経路を介して投与されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、非経口経路を介して投与されることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記TWEAKアンタゴニストは、錠剤、丸薬、リポソーム、顆粒剤、球体、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤、ステント被膜、および徐放性調合物からなる群より選択される送達調合物中にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記被験体がヒトである、請求項1に記載の組成物。
【請求項1】
拡張型心筋症を処置または予防することを必要とする被験体において、拡張型心筋症を処置または予防するための組成物であって、該組成物は、TWEAKアンタゴニストを含み、ここで該TWEAKアンタゴニストは、(a)抗TWEAK抗体またはその抗原結合部分;(b)抗TWEAKレセプター抗体またはその抗原結合部分;あるいは(c)可溶性TWEAKレセプターである、組成物。
【請求項2】
前記TWEAKアンタゴニストが、TWEAKとその細胞レセプターとの相互作用に介入する能力を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記TWEAKアンタゴニストが、抗TWEAK抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記TWEAKアンタゴニストが、抗TWEAKレセプター抗体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗体が合成抗体である、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗体が全長のものである、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗体が、抗体フラグメント、または抗体の抗原結合部分を含む融合タンパク質である、請求項3または請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記TWEAKアンタゴニストが、可溶性TWEAKレセプターである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記可溶性TWEAKレセプターが、Fnl4−Fcを含むタンパク質である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、注射、経粘膜、経口、吸入、眼、直腸、ステント・インプランテーション、局所的、非経口、長時間作用インプランテーション、徐放性、遺伝子療法、および耳経路からなる群より選択される経路を介して投与されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、非経口経路を介して投与されることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記TWEAKアンタゴニストは、錠剤、丸薬、リポソーム、顆粒剤、球体、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤、ステント被膜、および徐放性調合物からなる群より選択される送達調合物中にあることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記被験体がヒトである、請求項1に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−21014(P2012−21014A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196571(P2011−196571)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【分割の表示】特願2009−202035(P2009−202035)の分割
【原出願日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【分割の表示】特願2009−202035(P2009−202035)の分割
【原出願日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]