説明

TeO2−ZnO−B2O3系光学ガラス

【課題】低ガラス転移点特性を有し、モールドプレス成形性に優れることから量産が可能であり、しかも低分散であり高屈折率特性を達成しやすいTeO−ZnO−B系光学ガラスを提供する。
【解決手段】組成として、モル%でTeOを0.1〜40%未満、ZnOを16〜40%、Bを必須成分として含有し、かつZnO+Bが68%以下、ZrO+Ta+Laが10%以上であるTeO−ZnO−B系光学ガラスであって、アッベ数νdが30以上であることを特徴とするTeO−ZnO−B系光学ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTeO−ZnO−B系光学ガラスに関する。詳細には、屈折率ndおよびアッベ数νdが高く、各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、ビデオカメラ、一般のカメラの撮影用レンズ等に用いられるモールドプレス成形用光学ガラスとして好適なTeO−ZnO−B系光学ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機等の撮像用レンズ、光通信に使用される送受信用レンズ等の用途に使用される光学ガラスとして、低分散高屈折率光学ガラスが求められている。この種のレンズとしては、非球面形状のレンズが広く用いられている。その作製方法としては、例えば以下のような方法が知られている。
【0003】
まず、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して、液滴状ガラスを作製し(液滴成形)、研削、研磨、洗浄を行いプリフォームガラス(モールドプレス成形用硝材)を作製する。または、溶融ガラスを急冷鋳造して、一旦ガラスインゴットを作製し、研削、研磨、洗浄を行いプリフォームガラスを作製する。続いて、プリフォームガラスを加熱して軟化させ、高精度な成形表面を持つ金型によって加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写してレンズを作製する。このような成形方法は、一般にモールドプレス成形法と呼ばれており、大量生産に適した方法として近年広く採用されている。
【0004】
ところで、モールドプレス成形が可能な低ガラス転移点特性を有し、かつ高屈折率特性を比較的容易に達成できるガラス組成系として、TeOを含むテルライト系ガラスが知られている。例えば、特許文献1にはガラス転移点Tgが510℃以下で、屈折率ndが1.97を超えるテルライト系ガラスが開示されている。また、特許文献2にも、1.9程度の高い屈折率ndを有するテルライト系ガラスが開示されている。
【特許文献1】特開2006―182577号公報
【特許文献2】特公平1―44651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のテルライト系ガラスは、高屈折率を有するが、アッベ数νdが29以下と低く高分散である。特許文献2には、屈折率ndまたはアッベ数νdが比較的高いテルライト系ガラスが記載されているが、両特性とも所望のレベルを満たすガラスは開示されていない。
【0006】
ところで、TeOは屈折率を高める反面、アッベ数を大きく低下させる傾向があるため、一般的にテルライト系ガラスでは低分散なガラスは得られにくい。また、テルライト系ガラスに低分散特性を付与しうるBとZnOをガラス組成中に多量に含有させると、ガラス化が不安定になり失透しやすくなるという問題がある。
【0007】
以上のような従来技術の問題点に鑑み、本発明は、低ガラス転移点特性を有し、モールドプレス成形性に優れることから量産が可能であり、しかも低分散であり高屈折率特性を達成しやすいTeO−ZnO−B系光学ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は鋭意検討を行った結果、テルライト系ガラスのTeOの含有量を制限するとともに、他のガラス成分の含有量を特定の範囲に規定することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。
【0009】
すなわち、本発明は、組成として、モル%でTeOを0.1〜40%未満、ZnOを16〜40%、Bを必須成分として含有し、かつZnO+Bが68%以下、ZrO+Ta+Laが10%以上であるTeO−ZnO−B系光学ガラスであって、アッベ数νdが30以上であることを特徴とするTeO−ZnO−B系光学ガラスに関する。ここで、「Bを必須成分として含有」するとは、Bを0.1%以上含有することをいう。
【0010】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、ZnOを16%以上含有することから、モールドプレス成形に好適な低いガラス転移点Tgおよび液相温度TLを達成しやすい。また、TeOを含有しているため、モールドプレス可能な低ガラス転移点特性を得られやすい。
【0011】
また本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、ガラスを高屈折率化するTeOとガラスを低分散化させるZnOとBを必須成分として含有する。さらに、TeOに比べて、分散をより低下させやすいLa、ZrO、Taの少なくともいずれか一種を含有する。このため、アッベ数νdが30以上と低分散特性を有し、高屈折率特性も達成しやすく、光学機器を小型化、高機能化することが可能な光学レンズを作製することが可能である。
【0012】
したがって、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機等の撮像用レンズ、光通信に使用される送受信用レンズ等といった光学レンズ用のモールドプレス成形用硝材として好適である。
【0013】
第二に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、屈折率ndが1.82以上であることを特徴とする。
【0014】
第三に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスにおいて、B/ZnOが0.76〜1.5であることが好ましい。
【0015】
第四に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、ZnOを26〜40%含有することが好ましい。
【0016】
第五に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、Bを2〜50%含有することが好ましい。
【0017】
第六に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、さらに、Nb、Gd、Y、Yb、SiO、Al、WO、TiO、CaO、BaO、SrO、LiO、NaOおよびKOから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0018】
第七に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、Nbの含有量が7%未満であることが好ましい。
【0019】
ガラス組成におけるNbの含有量をこのように限定することにより、高アッベ数を達成しやすくなる。
【0020】
第八に、本発明は、別の形態として、モル%で、TeO 0.1〜40%未満、La 0〜40%、ZnO 16〜40%、B 2〜50%(ただし、B/ZnOが0.76〜1.5、かつZnO+Bが68%以下)、Nb 0〜25%、WO 0〜45%、TiO 0〜10%、ZrO 0〜20%、SiO 0〜5%、Al 0〜5%、Ta 0〜15%、CaO 0〜5%、BaO 0〜5%、SrO 0〜5%、LiO 0〜5%、NaO 0〜5%、KO 0〜5%の組成を含有し、PbO、TlOおよびHfOを実質的に含有しないことを特徴とするTeO−ZnO−B系光学ガラスに関する。
【0021】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、モールドプレス成形に好適な低ガラス転移点Tgおよび液相温度TLを達成しやすく、モールドプレス成形な低ガラス転移点特性を有するため、プリフォームガラスの量産性に優れるという特徴を有する。また、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、低分散かつ高屈折率を達成しやすく、光学機器を小型化、高機能化することが可能な光学レンズを作製することが可能である。
【0022】
なお、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、PbO、TlOおよびHfOといった環境負荷物質を実質的に含有しないため、環境の面からも好ましい。ここで、「PbO、TlOおよびHfOを実質的に含有しない」とは、これらの成分が各々0.001%以下であることをいう。
【0023】
第九に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、Laを0.1〜40%含有することが好ましい。
【0024】
第十に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、ガラス転移点Tgが630℃以下であることが好ましい。
【0025】
第十一に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、液相温度TLが1050℃以下であることが好ましい。
【0026】
第十二に、本発明のモールドプレス成形用硝材は、前記いずれかのTeO−ZnO−B系光学ガラスからなることを特徴とする。
【0027】
第十三に、本発明の光学レンズは、前記モールドプレス成形用硝材からなることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、組成として、モル%でTeOを0.1〜40%未満、ZnOを16〜40%、Bを必須成分として含有する。
【0029】
以下に、各成分の含有量を上記のように限定した理由を説明する。なお、特に断りが無い場合、以下の「%」は「モル%」を意味する。
【0030】
TeOは高屈折率のガラスを得るのに有効な成分であり、またガラス転移点Tgを下げる成分でもある。さらに、ガラス化を容易にする働きもある。TeOの含有量は0.1〜40%未満、好ましくは1〜30%、より好ましくは3〜20%、さらに好ましくは5〜20%である。また、低ガラス転移点特性が得られにくくなる。TeOの含有量が0.1%未満であると、高屈折率のガラスが得られにくい。一方、TeOの含有量が40%以上であると、モールドプレス金型が劣化しやすく寿命が短くなる傾向がある。また、低分散特性が得られにくくなる。
【0031】
なお、TeOの含有量を少なくすると、ガラスの高屈折率化が難しくなる場合があるが、後述するように、屈折率ndの不足は、その他の成分、例えばNb、Ta、WO、TiOおよびZrO等を適宜添加することにより補うことができる。同じくTeOの含有量を少なくすると、ガラス転移点Tgが上昇する傾向があるが、例えばLiO、KO、NaO、BaO、CaO、SrO等を添加することによりガラス転移点Tgを低下させることができる。
【0032】
ZnOはガラスを低分散化させ、またガラス転移点Tgを下げる成分である。ZnOの含有量は16〜40%、好ましくは20〜40%、より好ましくは26〜40%、さらに好ましくは26〜35%である。ZnOの含有量が16%未満であると、前記効果が得られにくい。一方、ZnOの含有量が40%を超えると、ガラス化を著しく妨げる傾向がある。
【0033】
もガラスを低分散化させるとともに、ガラス転移点Tgを下げる成分である。またガラスを安定化させる成分でもある。Bは必須成分として含有され、その含有量は、好ましくは2〜50%、より好ましくは10〜50%、さらに好ましくは25〜50%、特に好ましくは25〜40%である。Bの含有量が2%未満であると、前記効果が得られにくい。一方、Bの含有量が50%を超えると、ガラスの屈折率ndが低下し、例えば屈折率nd1.82以上の高屈折率特性を維持することが困難になる。
【0034】
TeO−ZnO−B系光学ガラスにおいて、低分散のガラスを得る観点から、ZnOとBをできる限り多く含有させることが好ましいが、ZnOとBの含有量を増加させていくとガラスの安定性が損なわれ、ガラスが容易に失透したり、あるいはガラス化が困難になる傾向がある。このような観点から、ZnO+Bは68%以下、好ましくは65%以下、より好ましくは60%以下に制限される。なお、十分な低分散化効果を得る観点から、ZnO+Bは好ましくは30%以上、より好ましくは43%以上、さらに好ましくは50%以上である。
【0035】
ZnOとBの含有量の増加に伴うガラスの不安定化を抑制するために、BとZnOの含有量の比率を制限することが有効である。具体的には、B/ZnOが好ましくは0.76〜1.5、より好ましくは0.77〜1.5、さらに好ましくは0.78〜1.2、特に好ましくは0.8〜1.2に制限される。
【0036】
なお、後述するように、BとZnOに加えて、例えばLa、Gd、Y、Yb、SiO、Al等を必要に応じて適宜添加することにより、ガラスの低分散化の効果を補うことも可能である。
【0037】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、上記成分に加えてさらにLaを含有することができる。Laは高屈折率を維持しつつ低分散化を達成するために有効な成分である。Laの含有量は0〜40%、好ましくは0.1〜40%、より好ましくは0.1〜30%、さらに好ましくは5〜25%、特に好ましくは8〜20%である。Laの含有量を増やすことにより、低分散特性、具体的にはアッベ数νdを30以上にすることが容易になるが、Laの含有量が40%を超えると、ガラス化が困難になる傾向がある。
【0038】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、さらにNb、Ta、WO、TiOおよびZrOから選ばれる少なくとも1種を含有することができる。これらの成分は屈折率ndを高める効果がある。以下、各成分について説明する。
【0039】
Nbはガラスの屈折率ndを高める効果が大きい成分である。ただし、多量に含有すると失透しやすくなり、またアッベ数νdが低下する傾向がある。したがって、Nbの含有量は0〜25%、好ましくは0.1〜15%、より好ましくは1〜10%である。特に、高アッベ数のガラスを得るためには、Nbの含有量は7%未満であることが好ましい。
【0040】
Taはガラスの屈折率ndを高める成分である。ただし、多量に含有するとガラス化を著しく妨げる傾向がある。したがって、Taの含有量は0〜15%、好ましくは0.1〜10%である。
【0041】
WOはガラスの屈折率ndを高めるとともに、ガラスを安定化する成分である。ただし、多量に含有するとガラスが熱的に不安定になる傾向がある。したがって、WOの含有量は0〜45%、好ましくは0〜20%、より好ましくは0.1〜10%である。
【0042】
TiOはガラスの屈折率ndを高める効果が顕著な成分である。ただし、多量に含有するとガラス化を著しく妨げる傾向がある。したがって、TiOの含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜5%である。
【0043】
ZrOはガラスの屈折率ndを高める成分である。ただし、多量に含有するとガラス化を著しく妨げる傾向がある。したがって、ZrOの含有量は0〜20%、好ましくは0〜10%、より好ましくは0.1〜5%である。
【0044】
なお、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスにおいて、ZrO+Ta+Laは10%以上、好ましくは15%以上に制限される。ZrO+Ta+Laが10%未満であると、高屈折率と低分散の両特性がともに所望のレベルを満たすガラスが得られにくくなる。
【0045】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、上記成分に加えてさらにGd、Y、Yb、SiOおよびAlから選ばれる少なくとも1種を含有することができる。これらの成分は、ガラスを低分散化させる効果がある。以下、各成分について説明する。
【0046】
Gdは高屈折率を維持しつつ低分散化を達成するために有効な成分である。Gdの含有量は0〜15%、好ましくは0〜10%、より好ましくは0.1〜5%である。
【0047】
はガラスを低分散化させる成分である。Yの含有量は0〜15%、好ましくは0〜10%、より好ましくは0.1〜5%である。
【0048】
Ybもガラスを低分散化させる成分である。Ybの含有量は0〜15%、好ましくは0〜10%、より好ましくは0.1〜5%である。
【0049】
SiOもガラスを低分散化させる効果があるが、含有量の増加に伴い、ガラスが熱的に不安定になる傾向がある。したがって、SiOの含有量は0〜5%、好ましくは0.1〜2%である。
【0050】
Alもガラスを低分散化させる効果があるが、含有量の増加に伴い、ガラスが熱的に不安定になる傾向がある。したがって、Alの含有量は0〜5%、好ましくは0.1〜2%である。
【0051】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、上記成分に加えてさらにLiO、KO、NaO、BaO、CaO、SrOから選ばれる少なくとも1種を含有することができる。これらの成分は、屈折率ndやガラス転移点Tgの微調整に利用することができる。しかし、いずれの成分も少量の添加で屈折率ndが大きく低下するため、多く含有させることは好ましくない。これらの成分の含有量は各々0〜5%、好ましくは0.1〜3%である。
【0052】
また本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、上記成分以外にもさらに種々の成分を添加することが可能である。例えば、GeO、P、Ga添加できる。
【0053】
GeOはガラスの安定化や屈折率向上の効果を得る目的で添加することができる。しかし、稀少原料であるため、多量に含有させると原料コストの高騰にも繋がる。よって、使用するとしても、その含有量は制限される。具体的には、GeOの含有量は0〜5%、好ましくは0〜3%、より好ましくは0〜1%である。特に0.001%以下であることが好ましい。
【0054】
はガラス転移点Tgや粘度の調整の目的で添加することができる。しかし、多量に含有すると、ガラスの耐候性の低下や失透が生じやすくなる。よって、使用するとしても、その含有量は制限される。具体的には、Pの含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜5%である。
【0055】
Gaはガラスの安定化や屈折率調整の目的で添加することができる。しかし、稀少原料で高価であるため、多量に含有させると原料コストの高騰にも繋がる。よって、量産性の観点から、その含有量は3%未満、好ましくは1%以下、より好ましくは0.001%以下である。
【0056】
なお、Erはガラス着色の原因になるため、実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、Er換算含有量で0.001%以下であることが好ましい。
【0057】
また、PbO、TlOおよびHfOは環境負荷物質であるため、実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、これらの成分は各々0.001%以下であることが好ましい。
【0058】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、アッベ数νdが30以上、好ましくは34以上、より好ましくは35以上、さらに好ましくは36以上、特に好ましくは37以上である。
【0059】
また、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、屈折率ndが好ましくは1.82以上、より好ましくは1.84以上、さらに好ましくは1.86以上、特に好ましくは1.87以上である。
【0060】
本発明は、別の形態として、モル%で、TeO 0.1〜40%未満、La 0〜40%、ZnO 16〜40%、B 2〜50%(ただし、B/ZnOが0.76〜1.5、かつZnO+Bが68%以下)、Nb 0〜25%、WO 0〜45%、TiO 0〜10%、ZrO 0〜20%、SiO 0〜5%、Al 0〜5%、Ta 0〜15%、CaO 0〜5%、BaO 0〜5%、SrO 0〜5%、LiO 0〜5%、NaO 0〜5%、KO 0〜5%の組成を含有し、PbO、TlOおよびHfOを実質的に含有しないことを特徴とするTeO−ZnO−B系光学ガラスに関する。
【0061】
このようにガラス組成を限定した理由は前記と同様である。
【0062】
また、このガラス組成において、より好ましい範囲は、モル%で、TeO 0.1〜20%、La 0.1〜30%、ZnO 26〜40%、B 25〜50%、(ただし、B/ZnOの値が0.76〜1.5、かつZnO+Bが68%以下)、Nb 0〜25%、WO 0〜45%、TiO 0〜10%、ZrO 0〜10%、SiO 0〜5%、Al 0〜5%、Ta 0〜9%、CaO 0〜5%、BaO 0〜5%、SrO 0〜5%、LiO 0〜5%、NaO 0〜5%、KO 0〜5%を含有し、PbO、TlOおよびHfOを実質的に含有しないものが挙げられる。
【0063】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、ガラス転移点Tgが好ましくは630℃以下、より好ましくは600℃以下である。また、液相温度TLは1050℃以下、より好ましくは1040℃以下である。ガラス転移点Tgまたは液相温度TLが当該範囲を満たすことがプリフォームガラス量産性の面から好ましい。
【0064】
次に、本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスを用いて光ピックアップレンズや撮影用レンズ等の光学ガラスを製造する方法を述べる。
【0065】
まず、所望の組成になるようにガラス原料を調合した後、ガラス溶融炉で溶融する。
【0066】
次に、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して一旦液滴状ガラスを作製し、プリフォームガラスを得る。または、溶融ガラスを急冷鋳造して一旦ガラスブロックを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを得る。
【0067】
続いて、精密加工を施した金型中にプリフォームガラスを投入し、軟化状態となるまで加熱しながら加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写させる。このようにして光ピックアップレンズや撮影用レンズを得ることができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
表1〜3は本発明の実施例1〜12および比較例1〜5を示している。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
各試料は、以下のようにして作製した。
【0074】
まず、表1〜3に記載の組成となるように調合したガラス原料を白金ルツボに入れ、1080℃でそれぞれ2時間溶融した。次に、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、冷却固化した後、アニールしてガラス試料を作製した。このようにして得られたガラス試料について、各種特性を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0075】
なお屈折率ndは、屈折率計(カルニュー製 KPR−200)を用いて、ヘリウムランプのd線(波長:587.6nm)における測定値で示した。
【0076】
アッベ数νdは、屈折率計(カルニュー製 KPR−200)を用いて、ヘリウムランプのd線、水素ランプのF線(波長:486.1nm)、および水素ランプのC線(波長:656.3nm)における屈折率の測定値を、それぞれnd、nF、nCとした際の{(nd−1)/(nF−nC)}の値とした。
【0077】
液相温度TLは、ガラス試料を300〜500μmの粒径となるように粉砕し、これを白金ボート中に投入し、温度勾配炉で12時間熱処理した後のガラス中の失透物(結晶異物)の観察された温度として示した。
【0078】
ガラス転移点Tgは、熱膨張曲線における低温度域の直線と高温度域の直線の交点より求めた。
【0079】
表1〜3から明らかなように、実施例1〜12ではアッベ数νdが30.0〜39.1、屈折率ndが1.860〜1.972と、低分散特性および高屈折率特性をともに満たしていることがわかる。また、ガラス転移点Tgは528〜578℃であり、モールドプレス成形が十分可能であることが確認できた。さらに、液相温度TLは1050℃以下と良好であった。
【0080】
一方、比較例1および3はTeOを40%以上と多量に含有しており、比較例4はZnOの含有量が16%より少ないため、いずれもアッベ数νdが低く高分散であった。比較例2はZnOの含有量が16%より少なく、BとZnOの割合B/ZnOが0.76〜1.5の範囲外であるため、一部結晶が析出した。比較例5は、ZnO+Bが68%より大きいため、ガラス化しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のTeO−ZnO−B系光学ガラスは、CD、MD、DVD、その他各種光ディスクシステムの光ピックアップレンズ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機等の撮像用レンズ、光通信に使用される送受信用レンズ等といった光学レンズの硝材用ガラスとして好適である。特に、モールドプレス成形を利用して作製される光学レンズの硝材用ガラスとして好適である。また、モールドプレス成形以外の成形方法で成形されるガラス硝材として使用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成として、モル%でTeOを0.1〜40%未満、ZnOを16〜40%、Bを必須成分として含有し、かつZnO+Bが68%以下、ZrO+Ta+Laが10%以上であるTeO−ZnO−B系光学ガラスであって、アッベ数νdが30以上であることを特徴とするTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項2】
屈折率ndが1.82以上であることを特徴とする請求項1に記載のTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項3】
/ZnOが0.76〜1.5であることを特徴とする請求項1または2に記載のTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項4】
ZnOを26〜40%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項5】
を2〜50%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項6】
さらに、Nb、Gd、Y、Yb、SiO、Al、WO、TiO、CaO、BaO、SrO、LiO、NaOおよびKOから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項7】
Nbの含有量が7%未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項8】
モル%で、TeO 0.1〜40%未満、La 0〜40%、ZnO 16〜40%、B 2〜50%(ただし、B/ZnOが0.76〜1.5、かつZnO+Bが68%以下)、Nb 0〜25%、WO 0〜45%、TiO 0〜10%、ZrO 0〜20%、SiO 0〜5%、Al 0〜5%、Ta 0〜15%、CaO 0〜5%、BaO 0〜5%、SrO 0〜5%、LiO 0〜5%、NaO 0〜5%、KO 0〜5%の組成を含有し、PbO、TlOおよびHfOを実質的に含有しないことを特徴とするTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項9】
Laを0.1〜40%含有することを特徴とする請求項8に記載のTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項10】
ガラス転移点Tgが630℃以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項11】
液相温度TLが1050℃以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のTeO−ZnO−B系光学ガラス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のTeO−ZnO−B系光学ガラスからなることを特徴とするモールドプレス成形用硝材。
【請求項13】
請求項12に記載のモールドプレス成形用硝材からなることを特徴とする光学レンズ。

【公開番号】特開2010−52954(P2010−52954A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216322(P2008−216322)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】