説明

UV光活性化可能な硬化性塗料配合物およびその硬化被膜

UV照射により基材に所望の外観の硬化塗料被覆をもたらすUV光活性化可能な硬化性塗料配合物は、UV硬化性塗膜形成化合物、UV光開始剤、粒状UV反射材料を、硬化塗料被覆の得られた所望の外観に影響を与えることなく有効率の硬化向上量で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV光活性化可能な硬化性塗料配合物、それから硬化被膜を製造する方法および前記硬化被膜に関する。特に、UV放射線により前記硬化配合物で被覆された車両表面の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
UV照射により基材に硬化塗料被膜をもたらすUV光活性化可能な硬化性塗料配合物が知られている。これらの従来技術の配合物は、UV硬化性塗膜形成化合物と、UV放射線の作用下で前記塗膜形成化合物の高分子反応を開始するUV光開始剤とを含む。
【0003】
そのような配合物は、クリアコートが望ましい場合は顔料を含有しなくてもよく、白色、着色、金属または他の効果の外観が望ましい場合は顔料や染料などを含有してもよい。したがって、粒状金属を含む金属塗料が知られており、粒状金属は、得られる所望の外観を提供するために存在する。
【0004】
硬化性塗料配合物の適切な硬化が妥当な期間に得られることが一般に望ましいことが容易に理解される。このことは、塗装部門における車両の処理速度が製造工程全体に対して相当の運転費用を有する可能性がある製造組立ラインにおける車体およびその一部の表面被覆などの、商業的な環境において極めて望ましい。
【0005】
Frey、Thomasらの2008年2月7日公開の米国特許出願公開第2008/0032037A1号に対応する2006年11月24日公開のPCT/EPO5/005517号は、着色被膜材料は、その透明な対応物と異なり、これらが含む顔料が放射線を吸収および反射し、それにより、実際には照射エネルギーのごく一部しか有効に硬化をもたらすことができないので、それ自体、放射線により硬化することが困難であることを認めている。したがって着色被膜および不透明被膜の放射線硬化の使用は、使用される顔料と放射線の相互作用により妨げられ、その強度は減衰される。被膜が使用不能になるところまで着色することにより、特に被膜の下面、すなわち基材に至るまでの被膜の体積硬化(volume curing)が低減する可能性がある。更に、前述の米国特許出願公開第2008/0032037A1号は、放射線硬化を着色被膜材料に適用する試みが十分であったことを指摘している。そのような試みには、被膜材料を、体積硬化をもたらすと示唆されている経験データの時間にわたって放射線に曝露することが含まれていた。
【0006】
前述の欠点に対処するため、米国特許出願公開第2008/0032037A1号は、一方では被膜の特定の着色に対する放射線硬化の適合または不適合を予測することを可能にし、他方では、十分な体積硬化が期待されるように放射線硬化の不確定要素の決定を可能にする方法を記載している。この目的は、少なくとも1つの顔料P、少なくとも1つの結合剤Bおよび少なくとも1つの光開始剤Iを含む放射線硬化性着色被膜材料を基材上で放射線硬化する条件を決定する方法であって、実際に複数の確定パラメーターを決定する段階を含む上記方法により達成される。
【0007】
前述の方法の期待される利点は、一連の実験試験の範囲を大きく低減できること、露光部の利用を最適化できることおよび不適切な放射による規格外バッチを回避できることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0032037A1号明細書
【特許文献2】PCT/EPO5/005517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、例えば化学処理、熱(焼付け)処理またはUV、IRによる放射および/もしくはマイクロ波処理であろうとなかろうと、硬化方法の性質に関わりなく硬化性塗料配合物の硬化速度を向上させる必要性が常に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一態様において、UV放射により基材に所望の外観の硬化塗料被膜をもたらすUV光活性化可能な硬化性塗料配合物であって、UV硬化性塗膜形成化合物、UV光開始剤、粒状UV反射材料を、前記硬化塗料被膜の得られた所望の外観に影響を与えることなく有効率の硬化向上量で含む配合物を提供する。
【0011】
最も好ましくは、配合物は顔料を含む。
【0012】
粒状UV反射材料は、好ましくは、例えばアルミニウムまたはその合金などの金属であり、好ましくは小板または球体の一般形態である。
【0013】
好ましい配合物は、0.1%〜1.0%W/Wの粒状材料を含み、最も好ましい配合物は、0.5%〜0.8%W/Wを含む。
【0014】
更なる態様において、本発明は、硬化塗料被膜基材を製造する方法であって、(i)基材を本明細書上記に定義された塗料配合物で被覆する段階、および(ii)前記配合物にUV放射線を照射して硬化を実施し、前記硬化塗料被覆基材を製造する段階を含む方法を提供する。
【0015】
幾つかの実施形態において、照射段階は、約5〜約25秒間、より好ましくは約10〜約20秒間実施することができるが、他の時間帯を用いることもできる。
【0016】
更なる態様において、本発明は、本明細書上記に定義された塗料配合物に対するUV照射により製造された硬化被膜を有する被覆基材を提供する。
【0017】
更なる態様において、本発明は、本明細書上記に定義された方法により作製される、塗料配合物に対するUV照射により製造される硬化被膜を有する被覆基材を提供する。
【0018】
本発明は、塗装された車両表面およびその一部の製造において特に価値がある。車両の塗装における生産率の向上をもたらすことに加えて、本発明は、塗装装置の資本コストの低減ももたらす。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施では、多様な量の粒状アルミニウム小板が分配されている標準的な基礎溶剤塗料配合物を調製した。
【0020】
Table 1(表1)は、成分およびその量を提示し、
オリゴマーは、アクリル化ポリエステル−ウレタン(BOMAR SPECIALITIES)であり、
モノマーは、トリメチルアクリレート(Petrochem)であり、
光開始剤は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819(登録商標)−CIBA/BASF)であり、
アルミニウムは、(Algon 500(商標)−Toyal America)であり、
充填剤は、IRGANOX(商標)−IRGANOXであり、
顔料は、
(i)黒色塗料配合物では、カーボンブラックであり、
(ii)白色塗料配合物では、二酸化チタンであり、
(iii)銀色塗料配合物では、二酸化チタンおよびアルミニウム粉末であり、
分散剤は、BYKP−1045(BYK)であり、
光安定剤の(A)は、50% Tinuvin 400(商標)(CIBA)であり、(B)は、50% Tinuvin 292(CIBA)であり、
溶剤は、比率が20/10/10/15/3のメチルエチルケトン/メチルイソブチルケトン/酢酸ブチル/酢酸エチル/キシレンであった。
【0021】
アルミニウムには、3〜60、5〜40および9〜34ミクロンのいずれかの値の範囲の粒径を有するフレーク、球体または他の形状の粒子が含まれうるが、他の材料を用いることもできる。
【0022】
試験配合物の被覆を、Table 2(表2)に示されている膜厚(μ)で金属基材に適用した。UV放射線を、被膜表面から53mmの距離で配置されたFUSION F300(商標)Focused−Beam Lampにより12秒の曝露時間で被膜に適用した。
【0023】
Table 2(表2)は、膜表面および膜の本体下部において得られた硬度および樹脂変換値を示す。
【0024】
各試験試料は、メチルイソブチルケトンによる二重摩擦においてそれぞれ溶剤耐性を有し(ASTM D5402−06)、アルミニウム添加なしの白色および黒色試料ではいくらかのしみを示し、他の全てではしみを示さなかった。
【0025】
0.1%、0.2%、0.8%、1.0%および2.0%W/Wのアルミニウム量による追加的な試験は、0.5〜0.8%W/Wから選択された好ましいアルミニウム量が、硬化塗装基材に望ましくないまたは不要な外観変化を与えることなく著しく有利な硬化率の向上をもたらすことを示した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
本開示は本発明の特定の好ましい実施形態を記載し、例示してきたが、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、本発明は、記載し、例示されてきた特定の実施形態および特徴の機能的または機械的均等物である全ての実施形態を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV照射により基材に所望の外観の硬化塗料被膜をもたらすUV光活性化可能な硬化性塗料配合物であって、UV硬化性塗膜形成化合物、UV光開始剤、粒状UV反射材料を、前記硬化塗料被膜の得られた所望の外観に影響を与えることなく有効率の硬化向上量で含む配合物。
【請求項2】
顔料を含む、請求項1に記載の塗料配合物。
【請求項3】
前記粒状UV反射材料が金属である、請求項1または2に記載の塗料配合物。
【請求項4】
前記金属がアルミニウムまたはその合金である、請求項1から3のいずれか一項に記載の塗料配合物。
【請求項5】
前記金属粒子が小板または球体の一般形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の塗料配合物。
【請求項6】
前記基材が、車両の表面またはその一部である、請求項1から5のいずれか一項に記載の塗料配合物。
【請求項7】
0.1%〜1.0%W/Wの粒状材料を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の塗料配合物。
【請求項8】
0.5%〜0.8%W/Wの粒状材料を含む、請求項7に記載の塗料配合物。
【請求項9】
硬化塗料被覆基材を製造する方法であって、(i)基材を請求項1〜8のいずれか一項に記載の塗料配合物で被覆する段階、および(ii)前記配合物にUV放射線を照射して硬化を実施し、前記硬化塗料被覆基材を製造する段階を含む方法。
【請求項10】
照射段階が約5〜約25秒間実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
照射段階が約10〜約20秒間実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載の塗料配合物に対するUV照射により製造される硬化被膜を有する被覆基材。
【請求項13】
請求項9から11のいずれか一項に記載の方法により作製される、塗料配合物に対するUV照射により製造される硬化被膜を有する被覆基材。

【公表番号】特表2012−531479(P2012−531479A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516458(P2012−516458)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001035
【国際公開番号】WO2011/000111
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】