UV反射構造色
【課題】紫外線反射特性を有する構造色を提供する。
【解決手段】複数の交互性低屈折率材料スタックと高屈折率材料スタックを有する、非4分の1波長多層構造であり、この複数の交互スタックは紫外領域において電磁放射を反射し、可視領域において電磁放射の狭帯域を反射する。非4分の1波長多層構造、即ち、nLdL≠nHdH≠λ0/4は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]で表すことが可能で、ここで、p及びqはそれぞれ前記4分の1波長厚さL及びHの乗数であり、Hは前記の同じ所望の反射波長λ0に対する前記高屈折率材料の4分の1波長厚さ(λ0/4nH)であり、Lは低屈折率材料の4分の1波長厚さであり、Nは前記高屈折率材料の境界半層(0.5qH)間の全層数を表し、Gは基板を表し、Aは空気を表す。
【解決手段】複数の交互性低屈折率材料スタックと高屈折率材料スタックを有する、非4分の1波長多層構造であり、この複数の交互スタックは紫外領域において電磁放射を反射し、可視領域において電磁放射の狭帯域を反射する。非4分の1波長多層構造、即ち、nLdL≠nHdH≠λ0/4は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]で表すことが可能で、ここで、p及びqはそれぞれ前記4分の1波長厚さL及びHの乗数であり、Hは前記の同じ所望の反射波長λ0に対する前記高屈折率材料の4分の1波長厚さ(λ0/4nH)であり、Lは低屈折率材料の4分の1波長厚さであり、Nは前記高屈折率材料の境界半層(0.5qH)間の全層数を表し、Gは基板を表し、Aは空気を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造色に関し、更に特定すると、紫外反射特性を有する構造色に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光の、3.1eVから4.13eVの間の光エネルギーを有する近紫外(NUV)部分は、特にポリマーに対して有害である。これらのエネルギー光子は、光崩壊として知られるプロセスを介して有機材料中の炭素−水素結合を解離させる。光崩壊は通常、太陽光を取り込むため、近赤外(NIR)光によって生じる熱酸化が並行して起こり、若し何らの保護無しに直接光に晒されると2、3日か数週間内に、塗装系に壊滅的な損傷を引起す(1,2)。ポリエステル、シリコーンで修飾されたポリエステル、及びポリフッ化ビニリデンのような耐久性のある材料であっても、光崩壊によってチョーキングしがちである(3,4)。
【0003】
塗装産業では、ポリマーの寿命を延ばす一つの戦略として、カーボンブラックおよび/または2酸化チタンのような無機の紫外(UV)吸収体を塗料、ペンキ等に添加することがある。しかしながら、カーボンブラックおよび/または酸化チタンの添加は塗装の外見を低下させる。
【0004】
幾分関係の無い分野において、光崩壊に関与する同じ範囲の波長は、虫及び鳥の生物学的活動に対して重要な役割を果たす(5−8)。羽、皮膚等のような、照射を受けた動物の体の表面からの反射に基づく光信号であって340nm〜400nmの波長範囲を有する光信号は、交尾の誘引(9)、グループ内での優先度(10)、及び適応性(11)において、動物の意思伝達手段として広く使用されている。更に、構造色は通常、羽の年齢又は羽の品質の優れた指針であるため、UV反射率はオスとしての品質の状態依存性指標であり得る(12,13)。鳥および虫は、NUV範囲の光を吸収する少なくとも4種類の錐体視覚色素を有しており(14)、この問題に関する文献は、鳥によって示されるNUV視力に基づいて、NUV反射ペンキで塗装したタービンブレードは、年間の鳥の衝突回数を潜在的に減少させることができる(15)、と結論付けている。
【0005】
虫に関して、NUV反射プラスチックマルチが1990年代の初期に開発されており、これを使用して、スカッシュおよびその他の作物におけるアブラムシ由来のウイルス病の発生を成功裏に減少させており(16)、且つ、シルバーリーフコナジラミのコロニー形成を送らせてスカッシュシルバーリーフの発生を減少させている(17)。これらのマルチによるNUV光の反射によって、到来する有翅型アブラムシと成虫のコナジラミを混乱させて撃退し、これらの植物上への付着を減少させる(18,19)。
【0006】
このような“一般的ではない”応用に加えて、NUV反射塗装は、例えば、レーザ、光ファイバ、マイクロキャビティミラー或いは分布型ブラッグミラーのような多くの光学装置において望ましい(20−23)。
【0007】
魚類、蝶類および/または鳥に基づく自然界での明瞭(ブリリアント)な色彩は、生物学的周期ナノ構造によって反射される光の干渉による“構造色”の原理に基づいており(28)、このような構造色は、分子の吸収に基づく一般的な色における50−60%に比べて、容易に入射光の100%を反射する。更に、フォトニック結晶(PC)における最近の発見は、フォトニックバンドギャップ(PGB)内での電磁放射の制御を得るためにPGBを操作することに対して、大きな興味を引起している(24−26)。次元性(1D)PCは、潜在的な商業応用に対する単純なデザインに基づいて特に将来性があることが証明されており、且つ、可視領域の狭い範囲において光を反射するように設計された場合、構造色となり或いは構造色を示すことができる。このように、構造色を生成する自然の能力が、構造色を作り出す1DPCにつながっている。この1DPCは低及び高屈折率材料の交互スタックからなっている(27−30)。
【0008】
典型的な4分の1波長ブラッグ反射器は、光学的厚さが等しい低及び高屈折率材料の交互スタック、即ち、nLdL=nHdH=λ0/4から形成されており、ここで、λ0は動作自由空間波長であり、dL、dH及びnL、nHはそれぞれ低及び高屈折率材料の厚さ及び屈折率である。このような多層構造内の全ての層は、共通の位相厚さδ=2πnHdN/λ(又はδ=2πnLdL/λ)を有し、その結果、光に対して均等な二方向移動時間遅延を発生する。更に、δにおける転換マトリックスが周期性であるため、マルチバンド(多周波帯)ミラー特性がλ0の奇数倍において発生する。4分の1波長反射設計をAH(LH)NGだけ繰り返すことができ、この場合、A及びGは空気及びガラス(又は基板)を示し、Nはスタックペアの数であり、L及びHは低及び高屈折率層の厚さを表す。
【0009】
薄膜堆積のために最も一般に使用される方法は、化学的蒸着法(CVD)及び物理的蒸着法(PVD)である(33,34)。そして、これらの方法が充分に制御された薄膜成長を提供するけれども、高いコスト及びサイズ限界のために別の方法の探索に至る。ゾル−ゲル方法のような他の方法がこの方法の上記の限界を克服する一方で、このような方法は湾曲した基板上での均一性の限界を導入する。
【0010】
層毎(LbL)の製造方法は、コスト、サイズ及び制御ベースの限界を克服するために広く使用されている。更に、LbL方法は水性であり、二酸化炭素排出量が少ないので環境に優しい。最近、このアプローチの柔軟性及び制御性が、ポリマー・ポリマー(36)、ポリマー・ナノ粒子(37,38)及びナノ粒子・ナノ粒子(39,40)層を交互に堆積することによって示されている。これらの層は、pH及びナノ粒子サイズを静電相互作用を通して制御パラメータとして用いて、スタックすることができる。
【0011】
要約すれば、UV反射塗装は有用であることが知られており、構造色は見て美しいことが知られている。しかしながら、これまでに、構造色は適切なUV−反射特性を提供してはいない。そのため、UV反射性を示す構造色が望まれている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、複数の交互の低屈折率材料スタックと高屈折率材料スタックを有する、非4分の1波長多層構造を開示している。複数の交互スタックは、紫外領域の電磁放射と、可視領域の狭帯域電磁放射とを反射することができる。そのため、この多層構造は、紫外反射構造色であり得る。
【0013】
この非4分の1波長多層構造、即ち、nLdL≠nHdH≠λ0/4、は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]として表すことが可能で、ここで、qおよびpは高及び低屈折率材料それぞれの4分の1波長厚さに対する乗数であり、Hは高屈折率材料の4分の1波長厚さであり、Lは低屈折材料の4分の1波長厚さであり、Nは高屈折率材料の境界半層(0.5pH)間の全層数を示し、Gは基板を示し且つAは空気を示す。
【0014】
4分の1波長多層スタックとは異なって、非4分の1波長多層構造は、マルチバンド特性の位置と幅を操作することができる。例えば、乗数q及びpの変更は、紫外反射構造色の設計とその後の生産において柔軟性をもたらす。更に、この多層構造は、紫外領域の電磁放射の70%以上と、可視領域の狭帯域電磁放射の60%以上を反射することができる。
【0015】
低屈折率材料と高屈折率材料の複数の交互スタックは層毎のプロセスを使用して形成することができるが、これは必要とされない。幾つかの場合において、低屈折率材料はシリカ(SiO2)のナノ粒子から、高屈折率材料は酸化チタン(TiO2)のナノ粒子から作ることができる。更に、多層構造中に1個又はそれ以上の光学欠陥を組み込み、紫外および/または可視スペクトルにおいてマルチバンド特性を持たせることができる。
【0016】
多層構造は破片形状であり、この破片はペンキのための顔料となる。このため、低屈折率材料と高屈折率材料の複数の交互スタックの破片から形成された顔料を有するペンキ(塗料)は、紫外反射特性を有する構造色を提示することができる。この多層構造はその中に1個又はそれ以上の光学欠陥を組み込んで、2個の構造色のブレンド、干渉フィルタ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】本発明の一実施形態に係る多層スタックの屈折率形状を概略的に示す図である。
【図1B】紫外反射性の青、緑及び赤の構造色のための設計の、シミュレートされた反射スペクトルを示すグラフである。
【図2A】層毎の形成プロセスを用いてガラス上に堆積されたシリカ(SiO2)/ポリマー膜の、焼成前及び焼成後の成長曲線を示す図である。
【図2B】層毎の形成プロセスを用いてガラス上に堆積された酸化チタン(TiO2)/ポリマー膜の、焼成前及び焼成後の成長曲線を示す図である。
【図3】異なる厚さのSiO2膜上のTiO2膜の二つの原子間力顕微鏡法画像を示す図である。
【図4】近紫外(NUV)反射構造色を示す二つのサンプルの写真である。
【図5A】TiO2とSiO2の交互層の3,5,7,9及び11スタックを有する、NUV反射青−緑多層構造の測定された反射スペクトルを示すグラフである。
【図5B】TiO2及びSiO2交互層の9スタックを有するNUV反射青−緑多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図5C】TiO2及びSiO2の交互層の11スタックを有するNUV反射青−緑多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図6】TiO2及びSiO2の交互層の11スタックを有する多層構造の、透過型電子顕微鏡法(TEM)による画像を示す。
【図7A】TiO2及びSiO2の交互層の3,5,7及び11スタックを有するNUV反射赤多層構造の、測定された反射スペクトルを示すグラフである。
【図7B】TiO2及びSiO2の交互層の5スタックを有するNUV反射赤多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図7C】TiO2及びSiO2の交互層の7スタックを有するNUV反射赤多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図8A】TiO2及びSiO2の交互層の9スタックを有する、光学欠陥を備えた多層構造のTEM画像を示す。
【図8B】TiO2及びSiO2の交互層の9スタックを有する、光学欠陥を備えたNUV反射多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図9】複数の反射ピーク間の一般的な関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、構造色であって紫外(UV)反射特性を示すことができる、非4分の1波長多層構造を開示している。そのため、本発明は、ペンキの顔料として有用性がある。更に、多層構造を設計しおよび/または製造するための柔軟なプロセスと、可視及びUV範囲で同時狭ピーク反射を達成することを開示している。
【0019】
非4分の1波長構造、即ち、nLdL≠nHdH≠λ0/4は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]として表すことが可能で、ここで、Aは空気を示し、qは高屈折率材料の4分の1波長厚さに対する乗数であり、Hは与えられたλ0に対する高屈折率材料の4分の1波長厚さであり、pは低屈折率材料の4分の1波長厚さに対する乗数であり、Lは同じλ0に対する低屈折材料の4分の1波長厚さであり、Nは高屈折率材料の境界半層(0.5qH)間の全層数を示し、Gは基板を示す。高屈折率材料の2個の半層(0.5qH)は、反射された放射の二次サイドバンドを取り除くために、多層構造の端部に加えることができる。
【0020】
図1Aに、非4分の1波長多層構造に対する典型的な屈折率プロファイルを示し、図1Bに、垂直入射において且つ転送行列法を用いて計算された、シミュレートされた反射スペクトルを示す。計算では、横電場(TE)及び縦磁場(TM)偏光の寄与を等しくしている。
【0021】
ある場合では、qは0.01と2.5の間であり、pは0.1と10の間であり、他の場合にはqは0.1と0.9の間であって、pは0.5と5の間である。更に別の事例では、qは0.1と0.5の間であり、pは1と4の間である。更に、層の全体の数Nは、3と35の間であり、幾つかの事例では3と29の間である。別の事例では、Nは5と21の間であり、更に別の事例では7と15の間である。
【0022】
非4分の1波長多層構造は、その中に、1個又はそれ以上の光学欠陥を組み込むことができる。例えば、且つ、例示目的のためのみに、高屈折率材料層のうちの1個および/または低屈折率材料層のうちの1個は、多層構造において、標準とは異なる厚さを有し、或いは、残りの高屈折率材料層および/または低屈折率材料層の1個の、通常の周期的な厚さを有する。表現[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]を参照して、9層(N=8)の非4分の1多層構造におけるこのような光学的欠陥は、[A0.5qHpL(qHpLqHpLxqHpLqHpL)0.5qHG]として表すことができ、ここでxはqH層の1個に対する乗数である。
【0023】
高屈折率材料と低屈折率材料は、2個の材料間の屈折率の相違が所望のマルチバンド反射を提供するような、当業者にとって既知の何れの材料であっても良い。例えば、且つ、説明目的のためのみに、以下の表に、使用可能な材料をその屈折率と共に示している。この表に示す様に、与えられた非4分の1波長多層構造を提供する交互層の屈折率間で、所望の差および/またはパーセント差を得るために、種々の材料を選択することができる。
【0024】
本多層構造は、一例として、化学的蒸着法(CVD)、物理的蒸着法(PVD)、ゾルゲル法、スピンコーティング、層毎のプロセス方法等を含む、1の材料層上に他の材料層を設けることができる、当業者に周知の全ての技術を使用して形成することができる。与えられた非4分の1波長多層構造を形成するために使用される実際のプロセス又は方法は変化するが、しかしながら、所望の構造を費用と時間効率の高い方法で形成することができる技術が強く望まれている。
【表1】
【0025】
本発明の1又はそれ以上の実施形態をより良く説明するため、及び、決してその範囲を限定することなく、非4分の1波長多層構造の事例とその特性を、以下に提供する。
事例
非4分の1波長多層構造の形成
【0026】
LbL形成プロセスが、多くの所望の非4分の1波長多層構造を形成するために使用された。LBL形成プロセスでは、シリカ(SiO2)と酸化チタン(TiO2)のナノ粒子溶液を使用する。負に帯電したSiO2のコロイドナノ粒子SM−30(水の中にSiO2を30wt%含む懸濁液、平均粒子サイズ7nm)をAldrichから入手し、pH9のバッファ液を使用して0.03wt%まで希釈した。
【0027】
正に帯電したTiO2ナノ粒子を、例えば、W.Choi,A.Termin,M.R.Hoffmannによる、1994年発行のJornal of Physical Chenistry,98,13669に教示されているように、チタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)の制御加水分解によって準備する。この技術を簡単に要約すると、1リットルの脱イオン水(>18MΩ・cm、Millipore Milli−Q)を4℃まで冷却し、且つ、そのpHを硝酸を用いて1.5に調整する。その後、4ミリリットルのTi(OCH(CH3)2)4を100ミリリットルの無水エタノール中に溶解させ、冷水中に滴下するようにして加える。このコロイド溶液(1.34g/リットル)を一晩かくはんし且つ4℃で貯蔵すると、7nmの平均粒子サイズを有する正に帯電したTiO2ナノ粒子となる。平均の粒子サイズは、ダイナミック光散乱(DLS)を使用して決定することができる。使用に先立って、この溶液を先ず0.2μmの注射器フィルタによってろ過し、その後、0.02μmの注射器フィルタでろ過し、更にその後、脱イオン水によって0.03wt%まで希釈する。この溶液のpHを、1.0Mの塩酸の添加によって2.0まで調整する。
【0028】
ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH、Mw=70,000)とポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩(PVS、工業銘柄、25%の水溶液、Mw=170,000)のポリマー溶液をSigma−Aldrichから購入する。このポリマー溶液は、繰り返し単位によって0.01M濃度まで希釈され、PAH溶液はpH7.5まで調整され、PVS溶液はそのpHが2.0まで調整された後0.2μm注射器フィルタによってろ過される。
【0029】
層毎のディッピング法は、NanoStrataスピンディッパーを使用することによって促進され、SiO2/ポリマー又はTiO2/ポリマーの2層膜が、予め清浄されたVWR顕微鏡スライド上に組み立てられる。このスライドは石鹸水中で洗浄され、その後、15分の超音波振動の間1MのNaOH溶液中に置くことによって、予め清浄されている。
【0030】
陽イオン(溶液pH)/陰イオン(溶液pH)ペアを示す命名法によって以降、[TiO2(2.0)/OVS(2.0)]nとして言及する、TiO2とPVSの二層体を次の手順で製造する。即ち、単一の二層体を形成する単一のサイクルは、(1)ガラス基板をTiO2溶液に1分間浸漬すること、(2)pH2.0の水の中で1回のリンスに1分間で3回リンスすること、(3)PVS溶液中に1分間浸漬すること、及び、(4)pH2.0の水の中に1回のリンスで1分間、3回リンスすることを含んでいる。この手順は、その後、要求された数(n)の二層体が形成されるまで繰り返される。本発明の目的に対して、二層体と言う用語は、例えば、TiO2/PVSのような、陽イオン/陰イオンペアとして定義され、上述したように単一のサイクルによって形成される。
【0031】
以降、[PAH(7.5)/SiO2(9.0)]nとして示される、PAHとSiO2の二層体は、同様の手順によって形成される。即ち、(1)PAH溶液中に(ガラス基板を)10分間浸漬し、(2)脱イオン水中で3回のリンス、即ち、第1回目のリンスは2分間、第2回目のリンスは1分間、及び第3回目のリンスは1分間のリンスを行い、(3)SiO2溶液中に10分間浸漬し、(4)脱イオン水中で3回のリンス、即ち、第1回目のリンスは2分間、第2回目のリンスは1分間、第3回目のリンスは1分間のリンスを行う。更に、[TiO2(2.0)/PVS(2.0)]n二層体に対して、このプロセスを要求された二層体の数(n)となるまで繰り返す。
【0032】
‘n’二層体を有するそれぞれの多層スタックが形成された後、ポリマーを取り除くためにこのスタックを、550℃の空気中で2時間焼成する。その後、このスタックを冷却し空気パージによって清浄する。ある場合には、焼成されたスタックを基板として使用してその上に次のスタックを形成する。
実験的測定機器及び手順
【0033】
上記の手順を用いて形成されたサンプルの実験的測定に関して、スタックの屈折率及び厚さはWoolham Co.の分光エリプソメーターを使用して計算される。300から900nmの範囲において、入射角を70°としてデータを獲得し、WVASE32ソフトウエアを用いて解析する。形状画像と粗さの値を、Veecoの原子間力顕微鏡をNanoscopeIII又はIVコントローラの何れかと共に用いて獲得し、その画像をNanoscope v710ソフトウエアを用いて解析する。反射率の測定は、VarianCary 5Eを用いて相対湿度20%で、紫外及び可視領域(200−800nm)において実施される。断面透過電子顕微鏡法(TEM)をJOEL2010Fによる分析電子顕微鏡法によって実施する。TEMサンプルの準備に対して、2個の比較的小さい破片を所望のスタック或いは多層構造からカットし、M−ボンドを使用して一体に貼り付ける。貼り付けられた破片は次に100℃で30分間加熱される。その後、このサンプルを、低温での1.5時間の機械的研削法及びイオンミリング法を使用して準備する。
測定
【0034】
与えられた非4分の1波長多層構造を形成するためにスタックを交互に組み立てる前に、ナノ粒子多層体を屈折率の値、成長トレンド及び表面形状に関して観察することができる。この目的のために、ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)(PVS)とポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)とをそれぞれ補助高分子電解質として用いて、TiO2又はSiO2のナノ粒子多層体が形成される。
【0035】
ナノ粒子パッキングに対する粒子サイズと高分子電解質選択の役割を、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム4)(SPS)と同じバッチのpH2におけるTiO2ナノ粒子を用いる膜に対して調査することができる。[TiO2(2.0)/SPS(2.0)]n膜の焼成後、多孔度は42%であること及び屈折率が1.83であることが見出された。[TiO2(2.0)/PVS(2.0)]nシステムの場合において、PVSは組み立てられたフィルムの体積分率のかなりを占めるが、しかしながら、焼成によってポリマーを除去した後はTiO2ナノ粒子は崩壊してより密にパックされる。そのため、[TiO2(2.0)/PVS(2.0)]nシステムにおけるTiO2二層体の厚さは、図2Aに示す様に、形成された時の2.2nmから焼成後の1.1nmへ減少する。更に、焼成された膜は最終のボイド体積24%を有し、且つ、形成され且つ焼成されたTiO2膜のX線回折解析は、焼成後において(データは図示されていない)アナターゼナノ結晶のより顕著な成長を示唆している。
【0036】
ガラス基板上に形成されたSiO2多層体に関して、SiO2ナノ粒子は、同じサイズのナノ粒子によって形成されたTiO2多層体よりも緩くパックされる。エリプソメトリー測定法によって、屈折率の値は、焼成の前後でそれぞれ1.28と1.25であることが見出された。SiO2多層システムにおいて、ポリマーは全体の体積の小部分(10%)を占め、多層体の厚さとナノ粒子によって占められる体積は、ポリマーの除去によって大きく変化することは無い。そのため、多層体の形成プロセスの間に確立されたナノ粒子のパッキングは、ポリマーの除去後もほぼ同じであり、屈折率は比較的一定の値、約1.25を維持する。二層体依存の厚さプロファイルを図2Bに示しており、焼成後において、二層体厚さは8.2から7.5nmに減少しているが、多孔度測定法を使用して測定した場合、ナノ粒子体積は50%から54%に変化している。
【0037】
構成要素である二層体の成長と屈折率特性を特徴付けることに加えて、他方の上に形成された1個の多層システムを有するSiO2とTiO2多層スタック間の拡散を調査することができる。そのため、第1のスタックとして、SiO2又はTiO2二層体の何れかを有する2−スタック膜が形成され、分光エリプソメーターのデータは、個々のスタックの屈折率の値が550℃2時間の熱処理の結果として変化しないこと、且つ、その値が個々のスタックの値に類似したものであることを明らかにする。
【0038】
異なる基板上および他のスタック上に形成された多層スタックの表面粗さもまた、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて調査された。特に、厚さ330nmの焼成されたSiO2多層スタックは、5−10nmの間の二乗平均平方根(RMS)の粗さの値を有する、比較的スムースな表面を示している。TiO2多層スタックに関して、AFM解析は、TiO2多層スタックを非常に薄い(27nm)SiO2多層スタック上に形成した場合と非常に厚い(550nm)SiO2多層スタック上に形成した場合とで、TiO2多層スタックの厚さに関わりなく、スムースな表面を提示することを示している。例えば、27nm厚さのSiO2多層スタック上に堆積された15nmのTiO2多層スタックは、図3で‘(a)’を付された画像において示す様に、支持ベースガラス基板の粗さ値4.2nmと比較して、平均のRMS粗さ値5nmを提示する。更に、15nm厚さのTiO2多層スタックを550nm厚さのSiO2多層スタック上に形成した場合、図3の‘(b)’が付された画像に示す様に、RMS粗さ度は11nmのみ増加する。
【0039】
光学特性のシミュレーションを用いると、約10nmまでの粗さ値は、非4分の1波長設計の反射スペクトルをあまり変えないことを示している。従って、高及び低屈折率材料スタックは光学的にスムースであると見なされる。しかしながら、より厚いSiO2多層体(厚さ>550nm)上に形成された非常に薄いTiO2多層体は、20nm以上のRMS表面粗さ度を示すことを理解すべきである。
【0040】
非4分の1波長構造色は、300〜400nmの範囲に追加のUV反射を有する狭帯域構造色を生成するように設計されている。設計プロセスは、3個の異なる色に対する横断マトリックス法に基づいた光子の計算機シミュレーションを含んでいる。このシミュレーションと各屈折率と表面形状とに基づいて、シリカと酸化チタン膜の全11層の集合体が青−緑及び赤の色に対して形成される。これらの集合体の評価は以下に議論される。
【0041】
高屈折率材料(例えばTiO2スタック=2.1)と低屈折率剤(例えばSiO2スタック=1.25)の交互層から形成されるLbL構造に対して測定された屈折率を用いて、3個のUV反射構造色が形成された。特に、青(λ0=450nm)、緑(λ0=450nm)、及び赤(λ0=690nm)の構造色が製作された。マルチバンド効果、即ち、可視範囲のバンド及びNUV範囲のバンドを反射する構造を提示するために、青色に対してq=0.37及びp=3.46の値を選択し、緑色に対してq=0.29及びp=1.79の値を選択し、赤色に対してq=0.243及びp=1.73の値を選択する。
【0042】
TiO2及びSiO2交互の11スタックを有する多重スタックアレイの青−緑(q=0.32とp=3.6)と赤(q=0.24とp=1.73)構造色コーティングを形成することが可能である。カラー画像において青−緑及び赤として見える2個のサンプルの写真画像を図4にそれぞれ示している。赤のサンプルは、黄色の範囲に向かう可視反射ピークの予期された広がりに基づく、オレンジ様の色を示している。これら2個のコーティングの光学特性をUV−可視分光器を用いて検査し、そして、横断マトリックス法から得られえたシミュレーションと比較することができる。
【0043】
図5Aは、3から11のスタックを有する、青−緑TiO2/SiO2多層スタック(q=0.32及びp=3.60)の測定反射スペクトルを示している。これらのコーティングはスペクトルの青−緑領域の色を反射しその結果、トルコ石の色を呈する。TiO2多層スタックは、18−20nmのスタック厚さに対応する、18個の[TiO2(2.0)/PVS(2.0)]二層体を堆積することによって達成され、SiO2多層体は48の[PAH(7.5)/SiO2(9.0)]二層体によって360nmの厚さとなる。これらのサンプルの反射スペクトルは、スペクトルのNUVと可視領域において2個のはっきり区別できる反射バンドを提示する。NUVピークは300−400nmの範囲に位置し、一方、可視ピークは、図2A及び2Bに示す設計によって期待されるように、約500nmに中心を有する。
【0044】
スタックの数を3から11に増加させることによって、最大反射率及び500nmにおけるピークバンド幅に関して、その反射特性を大きく変化させることができる。更に、スタックペアそれぞれを追加することによって、このピークの僅かな青へのシフトを観察することができる。11スタックによって、バンド幅は50nmにまで減少し、且つ、反射率は75%に達し、その結果、図4に示すサンプルのカラー写真に見られるような光り輝く構造色効果を得ることができる。TiO2スタックの追加及びそのUV吸収によって、反射率はスタック数の増加に伴って増加しない。したがって、340nmに中心を有するNUV反射は、5スタックの後でも実質的に同じ値を維持する。
【0045】
形成されたスタックの均一性及び厚さを検査するために、多層構造から断面TEM画像を得ることが可能であり、サンプルは、変形アーチファクトを最小とするためにイオンミリングの工程を通して液体N2温度に隔離される。TEM画像のための断面スライスは、ガラス基板に隣接してほぼ100nm厚さであり、一方、エポキシに隣接して30nm厚さであり得る。TEM画像において、TiO2スペクトルの幾つかに隣接して薄くて色の濃いストリップを見ることができ、これらは矢印によって強調されており、サンプル幅内のTiO2とSiO2スタック間の3D層干渉の2D投影であると推定される。この推定は、サンプル厚さの視角を変化させた結果ダークストリップの厚さが変化するという事実によって、確認されている。
【0046】
スタックの厚さを推定するために、TiO2及びSiO2多層スタックの両者について5回の測定を記録することができる。SiO2多層スタックは348±30nmの厚さであることが見出されており、一方、TiO2層スタックは26±30nmの厚さであり、これは、上述したように、幾つかの領域で粗さの値が膜厚の50%以上であるという例外を伴っている。
【0047】
TEM画像によって明らかにされるスタック構造は、UV−可視及びシミュレーションデータと一致しており、更に、LbLプロセスによって提供されるナノ粒子の形成に対する優れた制御を立証している。高屈折率及び低屈折率スタック間の界面幅は20nm以下であると推測され、これは光の反射波長よりも遥かに小さく、それによって、界面散乱に基づく光エネルギーの大きな損失が無いことを確認することができる。
【0048】
多重スタックフィルムに対する厚さと屈折率との制御を明示するために、青−緑色のサンプルそれぞれの反射率に対するシミュレーションを、実験データと比較する。このシミュレーションのために、エリプソメトリー測定による屈折率の値が使用される。即ち、630nmにおいて、SiO2の多層スタックに対して屈折率1.25及びTiO2多層スタックに対して2.05が使用される。図5Bと5Cは、9及び11スタックのサンプルそれぞれに対する、シミュレーション結果と実験データとの比較を示している。図5Bに示す様に、可視領域の反射率は予想したとおりのものが得られたが、300と400nm間のUV領域で反射率の減少が観測されている。UV領域におけるこのような減少は、TiO2多層スタックのUV吸収によるものと考えられ、更に、スタック数の増加と共にNUVピーク強度に減少が観察されることによって確認されている。更に、200−300nm間の第2のUVピークが、300nm以下でのガラス基板のUV吸収に基づいて、存在しない。
【0049】
11スタックサンプルにおいて、可視反射率に僅かな減少が存在する。反射率の減少に対する表面形状の効果を理解するために、AFMを用いて11スタックコーティングを分析することができる。RMS粗さ度分析の結果は、11スタックの表面は27nmの粗さ度を有し、反射率の減少の原因であり得ると言うものである。9及び7スタックサンプルを粗さ度について分析した時、これらのサンプルは、RMS粗さ度の値がそれぞれ16nmと14nmと、比較的滑らかな表面を示している。
【0050】
青−緑サンプルに加えて、690nmに中心を持つ可視反射ピークを有する多層体を構成することができる。このような多層構造の写真画像を、図4に赤のサンプルとして示す。青−緑サンプルで観察された殆どの特性が赤のサンプルで同様に観察され、図7Aは3,5,7及び11スタックのための測定された反射スペクトルを示している。この図に示す様に、スタックを更に追加することによって、僅かな青シフトと同様に、可視反射バンドの強度が増加する結果を生じた。11スタックサンプルにおいて、反射率ピークは65%反射率の約100nmのバンド幅を示しており、このバンド幅は、サンプルのカラー写真画像において見ることができるオレンジ様の色を説明している。NUV領域における2次のブラックピークは、青−緑サンプルにおいて観測されるピークと本質的に同じである。
【0051】
5及び7スタックサンプルの反射特性が、図7B及び7Cそれぞれにおいて、シミュレーションと比較されている。5スタックサンプルにおいて、実験データは、可視及びNUV領域の両方のピークに対してシミュレーションと良く一致している。この場合も先と同様に、拡散散乱によって誘起された表面粗さおよび/またはTiO2多層体によるUV光の吸収の結果として生じる反射率の僅かな減少が、スタックの増加と共に観察されている。
【0052】
図8A及び8Bを参照すると、スタック構造の周期性は、9スタック構造の中心に光学的欠陥として厚いSiO2多層スタックを導入することにより、破壊される。9スタック構造は27nmTiO2スタックによって始まり且つ終了し、4番目のスタックは一般に400nm厚さのSiO2スタックを伴う欠陥層を含んでいる。与えられたライン(図示せず)に沿ったそれぞれのスタックの典型的な厚さの値は次の通りである:ガラス基板からスタートして、dH=27nm、dL=154nm、dH=27nm、dL=400nm、dH=18nm、dL=190nm、dH=18nm、dL=109nm、及びdH=27nmである。これらの値及び図8AにおけるTEM画像によって示される様に、小規模な非周期性が残りのスタック中に存在し、このスタックは光学欠陥を含まない。
【0053】
図8Aに示す構造のUV−可視反射スペクトルを図8Bに示す。このスペクトルはかなり複雑であるが、475nm近辺で観察される反射率の落ち込みは、添加されたSiO2欠陥層の直接の結果である。更に、TEMデータから抽出された厚さ値を用いて計算された反射スペクトルは、可視領域でよく一致するがNUV領域ではあまり良く一致しない。UV領域(<300nm)における実験とシミュレーションとの間のあまりよくない一致は、支持ガラス基板に起因するUV吸収に基づくものとすることができる。
【0054】
qおよびpの別の値を、他のUV反射スペクトル色を提供するために選択することができる。更に、q及びpの選択は、このような色の設計に対して柔軟な工程を提供する。あるqおよび/またはpの選択プロセスが、次に続く。
【0055】
複数の反射ピーク間の一般的な関係を示す図9を参照すると、q及びpは、以下の様に表すことができる。
2nLdLpcos(θL)+2nHdHqcos(θH)=Mλ、M=1,2,3・・・ (1)
ここで、q及びpは上記で定義した通りであり、Mは整数であり、したがってMλは多重反射ピークであり得る。q=p=1であれば、λ=λ0である。標準の電磁波入射に対して、式(1)は次のように要約される。
2nLdLp+2nHdHq=Mλ (2)
更に、
【数1】
したがって、上記の例に対して、且つ、説明目的のみのために、q=0.37且つp=3.46が青色(λ0=450nm)に対して選択され、q=0.29及びp=1.79が緑色(λ0=580nm)に対して選択され、q=0.243及びp=1.73が赤色(λ0=690nm)に対して選択された。更に、一旦、q及びpが選択されると、多重反射ピークの位置が式(2)をλに対して解くことによって予想される。特に、青に対して、λ=1.914λ0(1/M)であり、λ=861nm(M=1)、430nm(M=2)及び287nm(M=3)においてピークが予想される。同じことを、緑及び赤の色に対して同様に行うことができる。
【0056】
この方法において、UV反射構造色である多層構造体を設計しおよび/または製造するための柔軟なプロセスは、(1)反射すべき所望の色/波長(λ0)を選択すること、(2)所望の低屈折率材料を選択すること、(3)所望の高屈折率材料を選択すること、(4)λ=λ0に対して式(2)を満足するq及びpを選択すること、(5)2個の材料の交互層がそれぞれ、上記で定義したように、pL及びqHの厚さを有するように、低屈折率材料と高屈折率材料から多層構造を製造すること、を含む。これらのステップが上記のような正確な順序で実施される必要は無く、更に、別のステップを追加することが可能であり、また、含まれているステップの1個又はそれ以上を省略することができることは当然である。
【0057】
前述の図面、議論及び説明は本発明の特定の実施形態を示すものであるが、それらはその実施における限定を意味するものではない。本発明の数多くの修正及び変形は、ここに提示した教示を参照することによって、当業者にとって明らかである。全ての均等物を含んで本発明の範囲を定義するのは、以下の請求の範囲である。
【技術分野】
【0001】
本発明は構造色に関し、更に特定すると、紫外反射特性を有する構造色に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光の、3.1eVから4.13eVの間の光エネルギーを有する近紫外(NUV)部分は、特にポリマーに対して有害である。これらのエネルギー光子は、光崩壊として知られるプロセスを介して有機材料中の炭素−水素結合を解離させる。光崩壊は通常、太陽光を取り込むため、近赤外(NIR)光によって生じる熱酸化が並行して起こり、若し何らの保護無しに直接光に晒されると2、3日か数週間内に、塗装系に壊滅的な損傷を引起す(1,2)。ポリエステル、シリコーンで修飾されたポリエステル、及びポリフッ化ビニリデンのような耐久性のある材料であっても、光崩壊によってチョーキングしがちである(3,4)。
【0003】
塗装産業では、ポリマーの寿命を延ばす一つの戦略として、カーボンブラックおよび/または2酸化チタンのような無機の紫外(UV)吸収体を塗料、ペンキ等に添加することがある。しかしながら、カーボンブラックおよび/または酸化チタンの添加は塗装の外見を低下させる。
【0004】
幾分関係の無い分野において、光崩壊に関与する同じ範囲の波長は、虫及び鳥の生物学的活動に対して重要な役割を果たす(5−8)。羽、皮膚等のような、照射を受けた動物の体の表面からの反射に基づく光信号であって340nm〜400nmの波長範囲を有する光信号は、交尾の誘引(9)、グループ内での優先度(10)、及び適応性(11)において、動物の意思伝達手段として広く使用されている。更に、構造色は通常、羽の年齢又は羽の品質の優れた指針であるため、UV反射率はオスとしての品質の状態依存性指標であり得る(12,13)。鳥および虫は、NUV範囲の光を吸収する少なくとも4種類の錐体視覚色素を有しており(14)、この問題に関する文献は、鳥によって示されるNUV視力に基づいて、NUV反射ペンキで塗装したタービンブレードは、年間の鳥の衝突回数を潜在的に減少させることができる(15)、と結論付けている。
【0005】
虫に関して、NUV反射プラスチックマルチが1990年代の初期に開発されており、これを使用して、スカッシュおよびその他の作物におけるアブラムシ由来のウイルス病の発生を成功裏に減少させており(16)、且つ、シルバーリーフコナジラミのコロニー形成を送らせてスカッシュシルバーリーフの発生を減少させている(17)。これらのマルチによるNUV光の反射によって、到来する有翅型アブラムシと成虫のコナジラミを混乱させて撃退し、これらの植物上への付着を減少させる(18,19)。
【0006】
このような“一般的ではない”応用に加えて、NUV反射塗装は、例えば、レーザ、光ファイバ、マイクロキャビティミラー或いは分布型ブラッグミラーのような多くの光学装置において望ましい(20−23)。
【0007】
魚類、蝶類および/または鳥に基づく自然界での明瞭(ブリリアント)な色彩は、生物学的周期ナノ構造によって反射される光の干渉による“構造色”の原理に基づいており(28)、このような構造色は、分子の吸収に基づく一般的な色における50−60%に比べて、容易に入射光の100%を反射する。更に、フォトニック結晶(PC)における最近の発見は、フォトニックバンドギャップ(PGB)内での電磁放射の制御を得るためにPGBを操作することに対して、大きな興味を引起している(24−26)。次元性(1D)PCは、潜在的な商業応用に対する単純なデザインに基づいて特に将来性があることが証明されており、且つ、可視領域の狭い範囲において光を反射するように設計された場合、構造色となり或いは構造色を示すことができる。このように、構造色を生成する自然の能力が、構造色を作り出す1DPCにつながっている。この1DPCは低及び高屈折率材料の交互スタックからなっている(27−30)。
【0008】
典型的な4分の1波長ブラッグ反射器は、光学的厚さが等しい低及び高屈折率材料の交互スタック、即ち、nLdL=nHdH=λ0/4から形成されており、ここで、λ0は動作自由空間波長であり、dL、dH及びnL、nHはそれぞれ低及び高屈折率材料の厚さ及び屈折率である。このような多層構造内の全ての層は、共通の位相厚さδ=2πnHdN/λ(又はδ=2πnLdL/λ)を有し、その結果、光に対して均等な二方向移動時間遅延を発生する。更に、δにおける転換マトリックスが周期性であるため、マルチバンド(多周波帯)ミラー特性がλ0の奇数倍において発生する。4分の1波長反射設計をAH(LH)NGだけ繰り返すことができ、この場合、A及びGは空気及びガラス(又は基板)を示し、Nはスタックペアの数であり、L及びHは低及び高屈折率層の厚さを表す。
【0009】
薄膜堆積のために最も一般に使用される方法は、化学的蒸着法(CVD)及び物理的蒸着法(PVD)である(33,34)。そして、これらの方法が充分に制御された薄膜成長を提供するけれども、高いコスト及びサイズ限界のために別の方法の探索に至る。ゾル−ゲル方法のような他の方法がこの方法の上記の限界を克服する一方で、このような方法は湾曲した基板上での均一性の限界を導入する。
【0010】
層毎(LbL)の製造方法は、コスト、サイズ及び制御ベースの限界を克服するために広く使用されている。更に、LbL方法は水性であり、二酸化炭素排出量が少ないので環境に優しい。最近、このアプローチの柔軟性及び制御性が、ポリマー・ポリマー(36)、ポリマー・ナノ粒子(37,38)及びナノ粒子・ナノ粒子(39,40)層を交互に堆積することによって示されている。これらの層は、pH及びナノ粒子サイズを静電相互作用を通して制御パラメータとして用いて、スタックすることができる。
【0011】
要約すれば、UV反射塗装は有用であることが知られており、構造色は見て美しいことが知られている。しかしながら、これまでに、構造色は適切なUV−反射特性を提供してはいない。そのため、UV反射性を示す構造色が望まれている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、複数の交互の低屈折率材料スタックと高屈折率材料スタックを有する、非4分の1波長多層構造を開示している。複数の交互スタックは、紫外領域の電磁放射と、可視領域の狭帯域電磁放射とを反射することができる。そのため、この多層構造は、紫外反射構造色であり得る。
【0013】
この非4分の1波長多層構造、即ち、nLdL≠nHdH≠λ0/4、は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]として表すことが可能で、ここで、qおよびpは高及び低屈折率材料それぞれの4分の1波長厚さに対する乗数であり、Hは高屈折率材料の4分の1波長厚さであり、Lは低屈折材料の4分の1波長厚さであり、Nは高屈折率材料の境界半層(0.5pH)間の全層数を示し、Gは基板を示し且つAは空気を示す。
【0014】
4分の1波長多層スタックとは異なって、非4分の1波長多層構造は、マルチバンド特性の位置と幅を操作することができる。例えば、乗数q及びpの変更は、紫外反射構造色の設計とその後の生産において柔軟性をもたらす。更に、この多層構造は、紫外領域の電磁放射の70%以上と、可視領域の狭帯域電磁放射の60%以上を反射することができる。
【0015】
低屈折率材料と高屈折率材料の複数の交互スタックは層毎のプロセスを使用して形成することができるが、これは必要とされない。幾つかの場合において、低屈折率材料はシリカ(SiO2)のナノ粒子から、高屈折率材料は酸化チタン(TiO2)のナノ粒子から作ることができる。更に、多層構造中に1個又はそれ以上の光学欠陥を組み込み、紫外および/または可視スペクトルにおいてマルチバンド特性を持たせることができる。
【0016】
多層構造は破片形状であり、この破片はペンキのための顔料となる。このため、低屈折率材料と高屈折率材料の複数の交互スタックの破片から形成された顔料を有するペンキ(塗料)は、紫外反射特性を有する構造色を提示することができる。この多層構造はその中に1個又はそれ以上の光学欠陥を組み込んで、2個の構造色のブレンド、干渉フィルタ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】本発明の一実施形態に係る多層スタックの屈折率形状を概略的に示す図である。
【図1B】紫外反射性の青、緑及び赤の構造色のための設計の、シミュレートされた反射スペクトルを示すグラフである。
【図2A】層毎の形成プロセスを用いてガラス上に堆積されたシリカ(SiO2)/ポリマー膜の、焼成前及び焼成後の成長曲線を示す図である。
【図2B】層毎の形成プロセスを用いてガラス上に堆積された酸化チタン(TiO2)/ポリマー膜の、焼成前及び焼成後の成長曲線を示す図である。
【図3】異なる厚さのSiO2膜上のTiO2膜の二つの原子間力顕微鏡法画像を示す図である。
【図4】近紫外(NUV)反射構造色を示す二つのサンプルの写真である。
【図5A】TiO2とSiO2の交互層の3,5,7,9及び11スタックを有する、NUV反射青−緑多層構造の測定された反射スペクトルを示すグラフである。
【図5B】TiO2及びSiO2交互層の9スタックを有するNUV反射青−緑多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図5C】TiO2及びSiO2の交互層の11スタックを有するNUV反射青−緑多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図6】TiO2及びSiO2の交互層の11スタックを有する多層構造の、透過型電子顕微鏡法(TEM)による画像を示す。
【図7A】TiO2及びSiO2の交互層の3,5,7及び11スタックを有するNUV反射赤多層構造の、測定された反射スペクトルを示すグラフである。
【図7B】TiO2及びSiO2の交互層の5スタックを有するNUV反射赤多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図7C】TiO2及びSiO2の交互層の7スタックを有するNUV反射赤多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図8A】TiO2及びSiO2の交互層の9スタックを有する、光学欠陥を備えた多層構造のTEM画像を示す。
【図8B】TiO2及びSiO2の交互層の9スタックを有する、光学欠陥を備えたNUV反射多層構造の実験的に測定された反射スペクトルを、シミュレートされた反射スペクトルと比較して示すグラフである。
【図9】複数の反射ピーク間の一般的な関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、構造色であって紫外(UV)反射特性を示すことができる、非4分の1波長多層構造を開示している。そのため、本発明は、ペンキの顔料として有用性がある。更に、多層構造を設計しおよび/または製造するための柔軟なプロセスと、可視及びUV範囲で同時狭ピーク反射を達成することを開示している。
【0019】
非4分の1波長構造、即ち、nLdL≠nHdH≠λ0/4は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]として表すことが可能で、ここで、Aは空気を示し、qは高屈折率材料の4分の1波長厚さに対する乗数であり、Hは与えられたλ0に対する高屈折率材料の4分の1波長厚さであり、pは低屈折率材料の4分の1波長厚さに対する乗数であり、Lは同じλ0に対する低屈折材料の4分の1波長厚さであり、Nは高屈折率材料の境界半層(0.5qH)間の全層数を示し、Gは基板を示す。高屈折率材料の2個の半層(0.5qH)は、反射された放射の二次サイドバンドを取り除くために、多層構造の端部に加えることができる。
【0020】
図1Aに、非4分の1波長多層構造に対する典型的な屈折率プロファイルを示し、図1Bに、垂直入射において且つ転送行列法を用いて計算された、シミュレートされた反射スペクトルを示す。計算では、横電場(TE)及び縦磁場(TM)偏光の寄与を等しくしている。
【0021】
ある場合では、qは0.01と2.5の間であり、pは0.1と10の間であり、他の場合にはqは0.1と0.9の間であって、pは0.5と5の間である。更に別の事例では、qは0.1と0.5の間であり、pは1と4の間である。更に、層の全体の数Nは、3と35の間であり、幾つかの事例では3と29の間である。別の事例では、Nは5と21の間であり、更に別の事例では7と15の間である。
【0022】
非4分の1波長多層構造は、その中に、1個又はそれ以上の光学欠陥を組み込むことができる。例えば、且つ、例示目的のためのみに、高屈折率材料層のうちの1個および/または低屈折率材料層のうちの1個は、多層構造において、標準とは異なる厚さを有し、或いは、残りの高屈折率材料層および/または低屈折率材料層の1個の、通常の周期的な厚さを有する。表現[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]を参照して、9層(N=8)の非4分の1多層構造におけるこのような光学的欠陥は、[A0.5qHpL(qHpLqHpLxqHpLqHpL)0.5qHG]として表すことができ、ここでxはqH層の1個に対する乗数である。
【0023】
高屈折率材料と低屈折率材料は、2個の材料間の屈折率の相違が所望のマルチバンド反射を提供するような、当業者にとって既知の何れの材料であっても良い。例えば、且つ、説明目的のためのみに、以下の表に、使用可能な材料をその屈折率と共に示している。この表に示す様に、与えられた非4分の1波長多層構造を提供する交互層の屈折率間で、所望の差および/またはパーセント差を得るために、種々の材料を選択することができる。
【0024】
本多層構造は、一例として、化学的蒸着法(CVD)、物理的蒸着法(PVD)、ゾルゲル法、スピンコーティング、層毎のプロセス方法等を含む、1の材料層上に他の材料層を設けることができる、当業者に周知の全ての技術を使用して形成することができる。与えられた非4分の1波長多層構造を形成するために使用される実際のプロセス又は方法は変化するが、しかしながら、所望の構造を費用と時間効率の高い方法で形成することができる技術が強く望まれている。
【表1】
【0025】
本発明の1又はそれ以上の実施形態をより良く説明するため、及び、決してその範囲を限定することなく、非4分の1波長多層構造の事例とその特性を、以下に提供する。
事例
非4分の1波長多層構造の形成
【0026】
LbL形成プロセスが、多くの所望の非4分の1波長多層構造を形成するために使用された。LBL形成プロセスでは、シリカ(SiO2)と酸化チタン(TiO2)のナノ粒子溶液を使用する。負に帯電したSiO2のコロイドナノ粒子SM−30(水の中にSiO2を30wt%含む懸濁液、平均粒子サイズ7nm)をAldrichから入手し、pH9のバッファ液を使用して0.03wt%まで希釈した。
【0027】
正に帯電したTiO2ナノ粒子を、例えば、W.Choi,A.Termin,M.R.Hoffmannによる、1994年発行のJornal of Physical Chenistry,98,13669に教示されているように、チタンテトライソプロポキシド(Ti(OCH(CH3)2)4)の制御加水分解によって準備する。この技術を簡単に要約すると、1リットルの脱イオン水(>18MΩ・cm、Millipore Milli−Q)を4℃まで冷却し、且つ、そのpHを硝酸を用いて1.5に調整する。その後、4ミリリットルのTi(OCH(CH3)2)4を100ミリリットルの無水エタノール中に溶解させ、冷水中に滴下するようにして加える。このコロイド溶液(1.34g/リットル)を一晩かくはんし且つ4℃で貯蔵すると、7nmの平均粒子サイズを有する正に帯電したTiO2ナノ粒子となる。平均の粒子サイズは、ダイナミック光散乱(DLS)を使用して決定することができる。使用に先立って、この溶液を先ず0.2μmの注射器フィルタによってろ過し、その後、0.02μmの注射器フィルタでろ過し、更にその後、脱イオン水によって0.03wt%まで希釈する。この溶液のpHを、1.0Mの塩酸の添加によって2.0まで調整する。
【0028】
ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH、Mw=70,000)とポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩(PVS、工業銘柄、25%の水溶液、Mw=170,000)のポリマー溶液をSigma−Aldrichから購入する。このポリマー溶液は、繰り返し単位によって0.01M濃度まで希釈され、PAH溶液はpH7.5まで調整され、PVS溶液はそのpHが2.0まで調整された後0.2μm注射器フィルタによってろ過される。
【0029】
層毎のディッピング法は、NanoStrataスピンディッパーを使用することによって促進され、SiO2/ポリマー又はTiO2/ポリマーの2層膜が、予め清浄されたVWR顕微鏡スライド上に組み立てられる。このスライドは石鹸水中で洗浄され、その後、15分の超音波振動の間1MのNaOH溶液中に置くことによって、予め清浄されている。
【0030】
陽イオン(溶液pH)/陰イオン(溶液pH)ペアを示す命名法によって以降、[TiO2(2.0)/OVS(2.0)]nとして言及する、TiO2とPVSの二層体を次の手順で製造する。即ち、単一の二層体を形成する単一のサイクルは、(1)ガラス基板をTiO2溶液に1分間浸漬すること、(2)pH2.0の水の中で1回のリンスに1分間で3回リンスすること、(3)PVS溶液中に1分間浸漬すること、及び、(4)pH2.0の水の中に1回のリンスで1分間、3回リンスすることを含んでいる。この手順は、その後、要求された数(n)の二層体が形成されるまで繰り返される。本発明の目的に対して、二層体と言う用語は、例えば、TiO2/PVSのような、陽イオン/陰イオンペアとして定義され、上述したように単一のサイクルによって形成される。
【0031】
以降、[PAH(7.5)/SiO2(9.0)]nとして示される、PAHとSiO2の二層体は、同様の手順によって形成される。即ち、(1)PAH溶液中に(ガラス基板を)10分間浸漬し、(2)脱イオン水中で3回のリンス、即ち、第1回目のリンスは2分間、第2回目のリンスは1分間、及び第3回目のリンスは1分間のリンスを行い、(3)SiO2溶液中に10分間浸漬し、(4)脱イオン水中で3回のリンス、即ち、第1回目のリンスは2分間、第2回目のリンスは1分間、第3回目のリンスは1分間のリンスを行う。更に、[TiO2(2.0)/PVS(2.0)]n二層体に対して、このプロセスを要求された二層体の数(n)となるまで繰り返す。
【0032】
‘n’二層体を有するそれぞれの多層スタックが形成された後、ポリマーを取り除くためにこのスタックを、550℃の空気中で2時間焼成する。その後、このスタックを冷却し空気パージによって清浄する。ある場合には、焼成されたスタックを基板として使用してその上に次のスタックを形成する。
実験的測定機器及び手順
【0033】
上記の手順を用いて形成されたサンプルの実験的測定に関して、スタックの屈折率及び厚さはWoolham Co.の分光エリプソメーターを使用して計算される。300から900nmの範囲において、入射角を70°としてデータを獲得し、WVASE32ソフトウエアを用いて解析する。形状画像と粗さの値を、Veecoの原子間力顕微鏡をNanoscopeIII又はIVコントローラの何れかと共に用いて獲得し、その画像をNanoscope v710ソフトウエアを用いて解析する。反射率の測定は、VarianCary 5Eを用いて相対湿度20%で、紫外及び可視領域(200−800nm)において実施される。断面透過電子顕微鏡法(TEM)をJOEL2010Fによる分析電子顕微鏡法によって実施する。TEMサンプルの準備に対して、2個の比較的小さい破片を所望のスタック或いは多層構造からカットし、M−ボンドを使用して一体に貼り付ける。貼り付けられた破片は次に100℃で30分間加熱される。その後、このサンプルを、低温での1.5時間の機械的研削法及びイオンミリング法を使用して準備する。
測定
【0034】
与えられた非4分の1波長多層構造を形成するためにスタックを交互に組み立てる前に、ナノ粒子多層体を屈折率の値、成長トレンド及び表面形状に関して観察することができる。この目的のために、ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム塩)(PVS)とポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH)とをそれぞれ補助高分子電解質として用いて、TiO2又はSiO2のナノ粒子多層体が形成される。
【0035】
ナノ粒子パッキングに対する粒子サイズと高分子電解質選択の役割を、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム4)(SPS)と同じバッチのpH2におけるTiO2ナノ粒子を用いる膜に対して調査することができる。[TiO2(2.0)/SPS(2.0)]n膜の焼成後、多孔度は42%であること及び屈折率が1.83であることが見出された。[TiO2(2.0)/PVS(2.0)]nシステムの場合において、PVSは組み立てられたフィルムの体積分率のかなりを占めるが、しかしながら、焼成によってポリマーを除去した後はTiO2ナノ粒子は崩壊してより密にパックされる。そのため、[TiO2(2.0)/PVS(2.0)]nシステムにおけるTiO2二層体の厚さは、図2Aに示す様に、形成された時の2.2nmから焼成後の1.1nmへ減少する。更に、焼成された膜は最終のボイド体積24%を有し、且つ、形成され且つ焼成されたTiO2膜のX線回折解析は、焼成後において(データは図示されていない)アナターゼナノ結晶のより顕著な成長を示唆している。
【0036】
ガラス基板上に形成されたSiO2多層体に関して、SiO2ナノ粒子は、同じサイズのナノ粒子によって形成されたTiO2多層体よりも緩くパックされる。エリプソメトリー測定法によって、屈折率の値は、焼成の前後でそれぞれ1.28と1.25であることが見出された。SiO2多層システムにおいて、ポリマーは全体の体積の小部分(10%)を占め、多層体の厚さとナノ粒子によって占められる体積は、ポリマーの除去によって大きく変化することは無い。そのため、多層体の形成プロセスの間に確立されたナノ粒子のパッキングは、ポリマーの除去後もほぼ同じであり、屈折率は比較的一定の値、約1.25を維持する。二層体依存の厚さプロファイルを図2Bに示しており、焼成後において、二層体厚さは8.2から7.5nmに減少しているが、多孔度測定法を使用して測定した場合、ナノ粒子体積は50%から54%に変化している。
【0037】
構成要素である二層体の成長と屈折率特性を特徴付けることに加えて、他方の上に形成された1個の多層システムを有するSiO2とTiO2多層スタック間の拡散を調査することができる。そのため、第1のスタックとして、SiO2又はTiO2二層体の何れかを有する2−スタック膜が形成され、分光エリプソメーターのデータは、個々のスタックの屈折率の値が550℃2時間の熱処理の結果として変化しないこと、且つ、その値が個々のスタックの値に類似したものであることを明らかにする。
【0038】
異なる基板上および他のスタック上に形成された多層スタックの表面粗さもまた、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて調査された。特に、厚さ330nmの焼成されたSiO2多層スタックは、5−10nmの間の二乗平均平方根(RMS)の粗さの値を有する、比較的スムースな表面を示している。TiO2多層スタックに関して、AFM解析は、TiO2多層スタックを非常に薄い(27nm)SiO2多層スタック上に形成した場合と非常に厚い(550nm)SiO2多層スタック上に形成した場合とで、TiO2多層スタックの厚さに関わりなく、スムースな表面を提示することを示している。例えば、27nm厚さのSiO2多層スタック上に堆積された15nmのTiO2多層スタックは、図3で‘(a)’を付された画像において示す様に、支持ベースガラス基板の粗さ値4.2nmと比較して、平均のRMS粗さ値5nmを提示する。更に、15nm厚さのTiO2多層スタックを550nm厚さのSiO2多層スタック上に形成した場合、図3の‘(b)’が付された画像に示す様に、RMS粗さ度は11nmのみ増加する。
【0039】
光学特性のシミュレーションを用いると、約10nmまでの粗さ値は、非4分の1波長設計の反射スペクトルをあまり変えないことを示している。従って、高及び低屈折率材料スタックは光学的にスムースであると見なされる。しかしながら、より厚いSiO2多層体(厚さ>550nm)上に形成された非常に薄いTiO2多層体は、20nm以上のRMS表面粗さ度を示すことを理解すべきである。
【0040】
非4分の1波長構造色は、300〜400nmの範囲に追加のUV反射を有する狭帯域構造色を生成するように設計されている。設計プロセスは、3個の異なる色に対する横断マトリックス法に基づいた光子の計算機シミュレーションを含んでいる。このシミュレーションと各屈折率と表面形状とに基づいて、シリカと酸化チタン膜の全11層の集合体が青−緑及び赤の色に対して形成される。これらの集合体の評価は以下に議論される。
【0041】
高屈折率材料(例えばTiO2スタック=2.1)と低屈折率剤(例えばSiO2スタック=1.25)の交互層から形成されるLbL構造に対して測定された屈折率を用いて、3個のUV反射構造色が形成された。特に、青(λ0=450nm)、緑(λ0=450nm)、及び赤(λ0=690nm)の構造色が製作された。マルチバンド効果、即ち、可視範囲のバンド及びNUV範囲のバンドを反射する構造を提示するために、青色に対してq=0.37及びp=3.46の値を選択し、緑色に対してq=0.29及びp=1.79の値を選択し、赤色に対してq=0.243及びp=1.73の値を選択する。
【0042】
TiO2及びSiO2交互の11スタックを有する多重スタックアレイの青−緑(q=0.32とp=3.6)と赤(q=0.24とp=1.73)構造色コーティングを形成することが可能である。カラー画像において青−緑及び赤として見える2個のサンプルの写真画像を図4にそれぞれ示している。赤のサンプルは、黄色の範囲に向かう可視反射ピークの予期された広がりに基づく、オレンジ様の色を示している。これら2個のコーティングの光学特性をUV−可視分光器を用いて検査し、そして、横断マトリックス法から得られえたシミュレーションと比較することができる。
【0043】
図5Aは、3から11のスタックを有する、青−緑TiO2/SiO2多層スタック(q=0.32及びp=3.60)の測定反射スペクトルを示している。これらのコーティングはスペクトルの青−緑領域の色を反射しその結果、トルコ石の色を呈する。TiO2多層スタックは、18−20nmのスタック厚さに対応する、18個の[TiO2(2.0)/PVS(2.0)]二層体を堆積することによって達成され、SiO2多層体は48の[PAH(7.5)/SiO2(9.0)]二層体によって360nmの厚さとなる。これらのサンプルの反射スペクトルは、スペクトルのNUVと可視領域において2個のはっきり区別できる反射バンドを提示する。NUVピークは300−400nmの範囲に位置し、一方、可視ピークは、図2A及び2Bに示す設計によって期待されるように、約500nmに中心を有する。
【0044】
スタックの数を3から11に増加させることによって、最大反射率及び500nmにおけるピークバンド幅に関して、その反射特性を大きく変化させることができる。更に、スタックペアそれぞれを追加することによって、このピークの僅かな青へのシフトを観察することができる。11スタックによって、バンド幅は50nmにまで減少し、且つ、反射率は75%に達し、その結果、図4に示すサンプルのカラー写真に見られるような光り輝く構造色効果を得ることができる。TiO2スタックの追加及びそのUV吸収によって、反射率はスタック数の増加に伴って増加しない。したがって、340nmに中心を有するNUV反射は、5スタックの後でも実質的に同じ値を維持する。
【0045】
形成されたスタックの均一性及び厚さを検査するために、多層構造から断面TEM画像を得ることが可能であり、サンプルは、変形アーチファクトを最小とするためにイオンミリングの工程を通して液体N2温度に隔離される。TEM画像のための断面スライスは、ガラス基板に隣接してほぼ100nm厚さであり、一方、エポキシに隣接して30nm厚さであり得る。TEM画像において、TiO2スペクトルの幾つかに隣接して薄くて色の濃いストリップを見ることができ、これらは矢印によって強調されており、サンプル幅内のTiO2とSiO2スタック間の3D層干渉の2D投影であると推定される。この推定は、サンプル厚さの視角を変化させた結果ダークストリップの厚さが変化するという事実によって、確認されている。
【0046】
スタックの厚さを推定するために、TiO2及びSiO2多層スタックの両者について5回の測定を記録することができる。SiO2多層スタックは348±30nmの厚さであることが見出されており、一方、TiO2層スタックは26±30nmの厚さであり、これは、上述したように、幾つかの領域で粗さの値が膜厚の50%以上であるという例外を伴っている。
【0047】
TEM画像によって明らかにされるスタック構造は、UV−可視及びシミュレーションデータと一致しており、更に、LbLプロセスによって提供されるナノ粒子の形成に対する優れた制御を立証している。高屈折率及び低屈折率スタック間の界面幅は20nm以下であると推測され、これは光の反射波長よりも遥かに小さく、それによって、界面散乱に基づく光エネルギーの大きな損失が無いことを確認することができる。
【0048】
多重スタックフィルムに対する厚さと屈折率との制御を明示するために、青−緑色のサンプルそれぞれの反射率に対するシミュレーションを、実験データと比較する。このシミュレーションのために、エリプソメトリー測定による屈折率の値が使用される。即ち、630nmにおいて、SiO2の多層スタックに対して屈折率1.25及びTiO2多層スタックに対して2.05が使用される。図5Bと5Cは、9及び11スタックのサンプルそれぞれに対する、シミュレーション結果と実験データとの比較を示している。図5Bに示す様に、可視領域の反射率は予想したとおりのものが得られたが、300と400nm間のUV領域で反射率の減少が観測されている。UV領域におけるこのような減少は、TiO2多層スタックのUV吸収によるものと考えられ、更に、スタック数の増加と共にNUVピーク強度に減少が観察されることによって確認されている。更に、200−300nm間の第2のUVピークが、300nm以下でのガラス基板のUV吸収に基づいて、存在しない。
【0049】
11スタックサンプルにおいて、可視反射率に僅かな減少が存在する。反射率の減少に対する表面形状の効果を理解するために、AFMを用いて11スタックコーティングを分析することができる。RMS粗さ度分析の結果は、11スタックの表面は27nmの粗さ度を有し、反射率の減少の原因であり得ると言うものである。9及び7スタックサンプルを粗さ度について分析した時、これらのサンプルは、RMS粗さ度の値がそれぞれ16nmと14nmと、比較的滑らかな表面を示している。
【0050】
青−緑サンプルに加えて、690nmに中心を持つ可視反射ピークを有する多層体を構成することができる。このような多層構造の写真画像を、図4に赤のサンプルとして示す。青−緑サンプルで観察された殆どの特性が赤のサンプルで同様に観察され、図7Aは3,5,7及び11スタックのための測定された反射スペクトルを示している。この図に示す様に、スタックを更に追加することによって、僅かな青シフトと同様に、可視反射バンドの強度が増加する結果を生じた。11スタックサンプルにおいて、反射率ピークは65%反射率の約100nmのバンド幅を示しており、このバンド幅は、サンプルのカラー写真画像において見ることができるオレンジ様の色を説明している。NUV領域における2次のブラックピークは、青−緑サンプルにおいて観測されるピークと本質的に同じである。
【0051】
5及び7スタックサンプルの反射特性が、図7B及び7Cそれぞれにおいて、シミュレーションと比較されている。5スタックサンプルにおいて、実験データは、可視及びNUV領域の両方のピークに対してシミュレーションと良く一致している。この場合も先と同様に、拡散散乱によって誘起された表面粗さおよび/またはTiO2多層体によるUV光の吸収の結果として生じる反射率の僅かな減少が、スタックの増加と共に観察されている。
【0052】
図8A及び8Bを参照すると、スタック構造の周期性は、9スタック構造の中心に光学的欠陥として厚いSiO2多層スタックを導入することにより、破壊される。9スタック構造は27nmTiO2スタックによって始まり且つ終了し、4番目のスタックは一般に400nm厚さのSiO2スタックを伴う欠陥層を含んでいる。与えられたライン(図示せず)に沿ったそれぞれのスタックの典型的な厚さの値は次の通りである:ガラス基板からスタートして、dH=27nm、dL=154nm、dH=27nm、dL=400nm、dH=18nm、dL=190nm、dH=18nm、dL=109nm、及びdH=27nmである。これらの値及び図8AにおけるTEM画像によって示される様に、小規模な非周期性が残りのスタック中に存在し、このスタックは光学欠陥を含まない。
【0053】
図8Aに示す構造のUV−可視反射スペクトルを図8Bに示す。このスペクトルはかなり複雑であるが、475nm近辺で観察される反射率の落ち込みは、添加されたSiO2欠陥層の直接の結果である。更に、TEMデータから抽出された厚さ値を用いて計算された反射スペクトルは、可視領域でよく一致するがNUV領域ではあまり良く一致しない。UV領域(<300nm)における実験とシミュレーションとの間のあまりよくない一致は、支持ガラス基板に起因するUV吸収に基づくものとすることができる。
【0054】
qおよびpの別の値を、他のUV反射スペクトル色を提供するために選択することができる。更に、q及びpの選択は、このような色の設計に対して柔軟な工程を提供する。あるqおよび/またはpの選択プロセスが、次に続く。
【0055】
複数の反射ピーク間の一般的な関係を示す図9を参照すると、q及びpは、以下の様に表すことができる。
2nLdLpcos(θL)+2nHdHqcos(θH)=Mλ、M=1,2,3・・・ (1)
ここで、q及びpは上記で定義した通りであり、Mは整数であり、したがってMλは多重反射ピークであり得る。q=p=1であれば、λ=λ0である。標準の電磁波入射に対して、式(1)は次のように要約される。
2nLdLp+2nHdHq=Mλ (2)
更に、
【数1】
したがって、上記の例に対して、且つ、説明目的のみのために、q=0.37且つp=3.46が青色(λ0=450nm)に対して選択され、q=0.29及びp=1.79が緑色(λ0=580nm)に対して選択され、q=0.243及びp=1.73が赤色(λ0=690nm)に対して選択された。更に、一旦、q及びpが選択されると、多重反射ピークの位置が式(2)をλに対して解くことによって予想される。特に、青に対して、λ=1.914λ0(1/M)であり、λ=861nm(M=1)、430nm(M=2)及び287nm(M=3)においてピークが予想される。同じことを、緑及び赤の色に対して同様に行うことができる。
【0056】
この方法において、UV反射構造色である多層構造体を設計しおよび/または製造するための柔軟なプロセスは、(1)反射すべき所望の色/波長(λ0)を選択すること、(2)所望の低屈折率材料を選択すること、(3)所望の高屈折率材料を選択すること、(4)λ=λ0に対して式(2)を満足するq及びpを選択すること、(5)2個の材料の交互層がそれぞれ、上記で定義したように、pL及びqHの厚さを有するように、低屈折率材料と高屈折率材料から多層構造を製造すること、を含む。これらのステップが上記のような正確な順序で実施される必要は無く、更に、別のステップを追加することが可能であり、また、含まれているステップの1個又はそれ以上を省略することができることは当然である。
【0057】
前述の図面、議論及び説明は本発明の特定の実施形態を示すものであるが、それらはその実施における限定を意味するものではない。本発明の数多くの修正及び変形は、ここに提示した教示を参照することによって、当業者にとって明らかである。全ての均等物を含んで本発明の範囲を定義するのは、以下の請求の範囲である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低屈折率材料と高屈折率材料の複数の交互層を含み、
前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は紫外領域において電磁放射を、且つ、可視領域において電磁放射の狭帯域を反射する、多層構造。
【請求項2】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、それぞれ、非4分の1波長厚さを有する、多層構造。
【請求項3】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]で記載される層構造を有し、ここで、
Aは空気を表し、
qは前記高屈折率材料の4分の1波長厚さの乗数であり、
Hは与えられた波長λ0に対する高屈折率材料の4分の1波長厚さであり、
pは前記低屈折率材料の4分の1波長厚さの乗数であり、
Lは前記与えられた波長λ0に対する低屈折率材料の厚さであり、
Nは前記高屈折率材料の境界半層間の全層数を表し、更に、
Gは基板を表す、多層構造。
【請求項4】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、紫外領域において前記電磁放射の70%以上を反射し、可視領域において前記電磁放射の狭帯域の60%以上を反射する、多層構造。
【請求項5】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、層毎のプロセスによって形成される、多層構造。
【請求項6】
請求項5に記載の多層構造において、前記低屈折率材料はSiO2のナノ粒子から形成され、前記高屈折率材料はTiO2のナノ粒子から形成される、多層構造。
【請求項7】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、破片の形状である、多層構造。
【請求項8】
請求項7に記載の多層構造において、前記破片はペンキの顔料である、多層構造。
【請求項9】
低屈折率材料と高屈折率材料の複数の交互層を備え、
前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]で記載される層構造を有し、ここで、
Aは空気を表し、
qは前記高屈折率材料の4分の1波長厚さの乗数であり、
Hは与えられた波長λ0に対する高屈折率材料の4分の1波長厚さであり、
pは前記低屈折率材料の4分の1波長厚さの乗数であり、
Lは前記与えられた波長λ0に対する低屈折率材料の4分の1波長厚さであり、
Nは前記高屈折率材料の境界半層間の全層数を表し、更に、
Gは基板を表し、
前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、更に、紫外領域において電磁放射を、可視領域において電磁放射の狭帯域を反射するように動作する、多層構造。
【請求項10】
請求項9に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、紫外領域において前記電磁放射の70%以上を、前記電磁放射の狭帯域において60%以上を反射する、多層構造。
【請求項11】
請求項9に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、層毎のプロセスによって形成される、多層構造。
【請求項12】
請求項11に記載の多層構造において、前記低屈折率材料はSiO2ナノ粒子で形成され、前記高屈折率材料はTiO2ナノ粒子で形成される、多層構造。
【請求項13】
請求項9に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、破片の形状である、多層構造。
【請求項14】
請求項13に記載の多層構造において、前記破片はペンキの顔料である、多層構造。
【請求項15】
請求項14に記載の多層構造において、前記ペンキは紫外反射構造色である、多層構造。
【請求項16】
紫外反射構造色である多層構造を形成するための方法において、
低屈折率材料と高屈折率材料を提供し、
前記低屈折率材料から第1の層を形成し、
前記第1の層に隣接し且つ接触して前記高屈折率材料から第2の層を形成する、各ステップを含み、
前記第1の層と第2の層はそれぞれpLとqHの厚さを有し、ここで、
Lは所望の反射波長λ0に対する前記低屈折率材料の4分の1波長厚さ(λ0/4nL)であり、
Hは前記の同じ所望の反射波長λ0に対する前記高屈折率材料の4分の1波長厚さ(λ0/4nH)であり、
p及びqはそれぞれ前記4分の1波長厚さL及びHの乗数であり、更に、
p及びqは次の表現、
2nLLpcos(θL)+2nHHqcos(θH)=Mλ
を満足し、ここで、
nLは前記低屈折率材料の屈折率、
nHは前記高屈折率材料の屈折率、
θLは前記低屈折率材料に対する屈折角、
θHは前記高屈折率材料に対する屈折角、
Mは整数(1,2,3・・・)、及び
λは反射すべきピーク、である、多層構造を形成するための方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、更に、複数の前記第1と第2の交互層を形成するステップを備える、多層構造を形成するための方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、複数の前記第1と第2の交互層は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]で記載され、ここで、
Aは空気を表し、
Nは前記高屈折率材料の境界半層間の全層数を表し、更に、
Gは基板を表す、多層構造を形成するための方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記複数の第1の層と第2の層は層毎のプロセスによって形成される、多層構造を形成するための方法。
【請求項1】
低屈折率材料と高屈折率材料の複数の交互層を含み、
前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は紫外領域において電磁放射を、且つ、可視領域において電磁放射の狭帯域を反射する、多層構造。
【請求項2】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、それぞれ、非4分の1波長厚さを有する、多層構造。
【請求項3】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]で記載される層構造を有し、ここで、
Aは空気を表し、
qは前記高屈折率材料の4分の1波長厚さの乗数であり、
Hは与えられた波長λ0に対する高屈折率材料の4分の1波長厚さであり、
pは前記低屈折率材料の4分の1波長厚さの乗数であり、
Lは前記与えられた波長λ0に対する低屈折率材料の厚さであり、
Nは前記高屈折率材料の境界半層間の全層数を表し、更に、
Gは基板を表す、多層構造。
【請求項4】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、紫外領域において前記電磁放射の70%以上を反射し、可視領域において前記電磁放射の狭帯域の60%以上を反射する、多層構造。
【請求項5】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、層毎のプロセスによって形成される、多層構造。
【請求項6】
請求項5に記載の多層構造において、前記低屈折率材料はSiO2のナノ粒子から形成され、前記高屈折率材料はTiO2のナノ粒子から形成される、多層構造。
【請求項7】
請求項1に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と前記高屈折率材料の前記複数の交互層は、破片の形状である、多層構造。
【請求項8】
請求項7に記載の多層構造において、前記破片はペンキの顔料である、多層構造。
【請求項9】
低屈折率材料と高屈折率材料の複数の交互層を備え、
前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]で記載される層構造を有し、ここで、
Aは空気を表し、
qは前記高屈折率材料の4分の1波長厚さの乗数であり、
Hは与えられた波長λ0に対する高屈折率材料の4分の1波長厚さであり、
pは前記低屈折率材料の4分の1波長厚さの乗数であり、
Lは前記与えられた波長λ0に対する低屈折率材料の4分の1波長厚さであり、
Nは前記高屈折率材料の境界半層間の全層数を表し、更に、
Gは基板を表し、
前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、更に、紫外領域において電磁放射を、可視領域において電磁放射の狭帯域を反射するように動作する、多層構造。
【請求項10】
請求項9に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、紫外領域において前記電磁放射の70%以上を、前記電磁放射の狭帯域において60%以上を反射する、多層構造。
【請求項11】
請求項9に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、層毎のプロセスによって形成される、多層構造。
【請求項12】
請求項11に記載の多層構造において、前記低屈折率材料はSiO2ナノ粒子で形成され、前記高屈折率材料はTiO2ナノ粒子で形成される、多層構造。
【請求項13】
請求項9に記載の多層構造において、前記低屈折率材料と高屈折率材料の前記複数の交互層は、破片の形状である、多層構造。
【請求項14】
請求項13に記載の多層構造において、前記破片はペンキの顔料である、多層構造。
【請求項15】
請求項14に記載の多層構造において、前記ペンキは紫外反射構造色である、多層構造。
【請求項16】
紫外反射構造色である多層構造を形成するための方法において、
低屈折率材料と高屈折率材料を提供し、
前記低屈折率材料から第1の層を形成し、
前記第1の層に隣接し且つ接触して前記高屈折率材料から第2の層を形成する、各ステップを含み、
前記第1の層と第2の層はそれぞれpLとqHの厚さを有し、ここで、
Lは所望の反射波長λ0に対する前記低屈折率材料の4分の1波長厚さ(λ0/4nL)であり、
Hは前記の同じ所望の反射波長λ0に対する前記高屈折率材料の4分の1波長厚さ(λ0/4nH)であり、
p及びqはそれぞれ前記4分の1波長厚さL及びHの乗数であり、更に、
p及びqは次の表現、
2nLLpcos(θL)+2nHHqcos(θH)=Mλ
を満足し、ここで、
nLは前記低屈折率材料の屈折率、
nHは前記高屈折率材料の屈折率、
θLは前記低屈折率材料に対する屈折角、
θHは前記高屈折率材料に対する屈折角、
Mは整数(1,2,3・・・)、及び
λは反射すべきピーク、である、多層構造を形成するための方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、更に、複数の前記第1と第2の交互層を形成するステップを備える、多層構造を形成するための方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、複数の前記第1と第2の交互層は、[A0.5qHpL(qHpL)N0.5qHG]で記載され、ここで、
Aは空気を表し、
Nは前記高屈折率材料の境界半層間の全層数を表し、更に、
Gは基板を表す、多層構造を形成するための方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記複数の第1の層と第2の層は層毎のプロセスによって形成される、多層構造を形成するための方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公開番号】特開2010−264755(P2010−264755A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−114777(P2010−114777)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114777(P2010−114777)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
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