説明

UV蛍光体を含む放電ランプ

本発明は、放電維持性組成物を含むガス充填物を含むガス放電容器を備え、該放電容器の壁の少なくとも一部が、式La1-xMgAl11O19:Lnx (式中、ランタニドLnは、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)の群から選ばれ;0.001≦x≦0.5である)のランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムを第1のUV-蛍光体として含む発光材料を備えたことを特徴とする放電ランプに関し、該放電ランプはガス放電を発生させ維持する手段をさらに備えている。発行材料が活性化剤としてガドリニウムを含む場合、そのようなランプは、狭帯域UV-B光線療法においてとりわけ有用である。また、本発明は、式La1-xMgAl11O19:Lnx (式中、ランタニドLnは、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)の群から選ばれ;0.001≦x≦0.5である)のランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムの形のUV蛍光体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、光透過性放電容器を含み、該放電容器が、ガス充填物から構成した放電スペースを気密方式で囲んでいることを特徴とする放電ランプに関する。上記ガス充填物は、放電維持性組成物中に少なくとも1種の放電維持成分を含む。上記放電容器の壁の少なくとも1部は、UV蛍光体を含み、上記の放電によって発生した高エネルギーVUV線をUV-BまたはUV-C線に変換するための発光材料の少なくとも1つの層を備えている。UV-B線は、280〜320nmの中位波長範囲内のUV線の部分である。そのようなUV-B線は、例えば、医療および化粧目的において有用である。UV-C線は、200〜280nmの波長範囲の部分であり、殺菌目的および光化学プロセスにおいてとりわけ有用である。
本発明は、とりわけ、UV-B光線療法において有用な狭帯域UV-B線を発出する特定のタイプの発光材料を有する放電ランプに関する。UV-B線を使用する光線療法は、ヒトの皮膚をUV-B線に暴露させることからなる。光線療法は、乾癬、白斑、湿疹および他の皮膚障害のようなある種の皮膚症状の治療において極めて有用であることが判明している。
【0002】
(背景技術)
UV-B線の治療効果を改善するために、光線療法において利用し得る殆どの蛍光ランプは、狭帯域UV-Bスペクトルを有するように設計されており、従って、310ナノメートル〜315ナノメートルの範囲内の狭帯域UV-B線を主として発出する。UVスペクトルのこの部分における最高波長が乾癬の治療においてとりわけ有効であることは、実証されている。さらにまた、日光皮膚炎を生ずるUV線の部分は、狭帯域UV-Bスペクトル中には存在しない。従って、患者の治療を、皮膚に日光皮膚炎を引起すことなく長期化し得る。
多くの一般的な光線療法ランプにおける狭帯域UV-B光発生用の発光材料は、185〜254nm励起下でのその高効率故に、GB 1 536 637号により知られているUV-B蛍光体LaB3O6:Bi,Gdを含む。この蛍光体は、約310〜313nmにおける最大発光ピークと10nm未満の半値幅を有する。
いずれの高出力蛍光体系装置とも同様に、UV-B蛍光体としてLaB3O6:Bi,Gdを含む狭帯域UV-Bランプは、短波UV線の作用による蛍光体劣化を受けやすい。UV-B光線療法において使用するような静的光強度操作は、蛍光体にとって致命的行為であり、耐用年数途中での電気光学効率の低下をもたらす。
さらにまた、ガス充填物が水銀を含む放電ランプ内では、蛍光体表面上での水銀イオンと電子との再結合または蛍光体層上での励起水銀原子と電子の発生は、蛍光体の放射性を時間途中で低下させる。
UV光出力の低下を小さくするために広く使用されている方法は、Al2O3 (alon-c)のナノ粒子の保護層を付加させることを含み、1〜8%のalon-cを上記発光材料に添加している。
はるかに良好な方法は、LaB3O6:Bi,Gdを、劣化する傾向の低い狭帯域UV蛍光体で置換えることであろう。
【0003】
(発明の開示)
本発明の目的は、とりわけ光線療法および殺菌目的の、高めのUV-BまたはUV-C出力、長期寿命および改良されたルーメン保持性を有する放電ランプを提供することである。
本発明によれば、この目的は、放電維持性組成物を含むガス充填物を含むガス放電容器を備え、該放電容器の壁の少なくとも一部が、式La1-xMgAl11O19:Lnx (式中、ランタニドLnは、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)の群から選ばれ;0.001 ≦ x ≦ 0.5である)のランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムを第1のUV-蛍光体として含む発光材料を備えているガス放電ランプによって達成され、該放電ランプは、放電を発生させ維持する手段をさらに備えている。
本発明は、ホスト結晶構造内の不純物または欠陥物と反応する傾向を有するのがLaB3O6:Bi,Gdのホスト格子内で増感剤として使用するビスマスであるという認識に基づく。静的長時間使用により増幅されると、ビスマスのこの反応は、UV-Bランプの光出力を急速に低下させる。
本発明に従う蛍光体は、ホスト格子内にランタンを含む。ランタンは、発光において増感機能も有するが、結晶欠陥およびレドックス反応に対してビスマスよりも感受性がはるかに低い。
上記蛍光体は、高維持性、即ち、VUV線下での操作時間に亘っての収量および色座(color locus)の維持性を示す。さらに、上記蛍光体は、可視範囲の発光が殆どまたは全くない、放電ランプの有効性の点で最適である狭帯域UV発出を示す。
発光材料の高い光化学安定性故に、本発明に従うランプは、蛍光体の光分解または熱失活により装置性能が制限されているUV線の全ての応用分野において、例えば、高負荷蛍光ランプにおいて有用である。
【0004】
本発明の好ましい実施態様によれば、上記放電ランプは、放電維持性組成物中に水銀を含む。本発明に従う放電ランプは、式La1-xMgAl11O19:Lnx (式中、ランタニドLnは、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)の群から選ばれ;0.001≦x≦0.5である)のランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムを第1のUV-蛍光体として含む発光材料を含み、低圧水銀蒸気放電ランプの放電容器内で操作中に拡散している水銀-希ガス雰囲気の作用に対して極めて良好に耐性であるようである。結果として、水銀とUV蛍光体間の相互作用による暗色化は低減し、維持性の改良をもたらす。放電ランプの耐用年数の間、少ない量の水銀しか放電によって離脱せず、さらに、放電ランプの水銀消費量の削減が得られ、低圧水銀蒸気放電ランプの製造においては、少なめの水銀使用量で十分となる。
本発明のもう1つのさらなる好ましい実施態様によれば、上記放電ランプの放電維持性組成物は、キセノンのようなエキシマー形成剤を含む。近年、エキシマー放射線を発出する放電ランプが知られてきている。エキシマーは、正常状態においては、結合していないまたは弱く結合した基底状態を有する分子の不安定な励起複合体である。エキシマー複合体は、励起状態においてのみ存在し、マイクロ秒未満で分解する。その崩壊中に、エキシマー複合体は、その結合エネルギーを狭帯域放射線の形で発出する。
本発明に従う蛍光体は、エキシマー形成性組成物によりその狭いバンドギャップによって生じた狭帯域放射線によって励起させたときにとりわけ有用である。
また、上記発光材料は、ランプスペクトルを調整するための第2の蛍光体を含むことが好ましくあり得る。そのようなUV蛍光体は、SrAl12O19:Ce、(La1-xGdx)PO4:Ceまたはこれらのブレンドの群から選択し得る。
また、上記発光材料は、上記各蛍光体および上記放電容器のガラス壁上でのスパッタリングを減じるためのAl2O3、MgO、MgAl2O4およびY2O3の群から選ばれる添加剤をさらに含むことが好ましくあり得る。
本発明に従う放電ランプは、好ましくは医療目的においてであるが、化粧および殺菌目的並びに光化学プロセスにおいても使用し得る。
【0005】
本発明の第2の局面によれば、式La1-xMgAl11O19:Lnx (式中、ランタニドLnが、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)の群から選ばれ;0.001 ≦ x ≦ 0.5である)であるランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムであるUV-蛍光体を提供する。
ホスト格子内にセリウム、プラセオジム、ネオジムまたはガドリニウムのいずれかを活性化剤として、さらに、増感剤としてのランタン(III)を含むUV蛍光体は、極めて光輝性のある結晶性蛍光体である、即ち、このUV線発光性蛍光体は、VUV範囲における極めて良好な吸収性と80%を越える極めて高い発光量子収量を併せ持つ。他のUV蛍光体とは異なり、この蛍光体は、VUV線によって分解されることは殆どない。この蛍光体は、ビスマスを含有していないにもかかわらず、長い寿命と改良された輝度を有する。
とりわけ有用なUV蛍光体は、La1-xMgAl11O19:Cex、La1-xMgAl11O19:Prx、La1-xMgAl11O19:Ndx、La1-xMgAl11O19:Gdx、La1-xMgAl11O19:(Ce,Gd)x、La1-xMgAl11O19:(Pr,Gd)x、La1-xMgAl11O19:(Nd,Gd)xであり、0.001 ≦ x ≦ 0.5である。
Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)のアルミン酸ランタンマグネシウムの群から選ばれたランタニドによる活性化が、短波真空紫外線並びに陰極線およびX線によって励起し得る極めて有効な発光物質を生じることを見出している。本発明に従う発光スクリーンは、上記発光性アルミン酸塩が電磁スペクトルの可視範囲における発光帯域を殆んどまたは全く有していないという利点を有する。
本発明の好ましい実施態様によれば、上記UV蛍光体は、1μm < d < 20μmの粒度を有する。
1μm < d < 20μmの範囲の粒度dを有するUV蛍光体を含有する蛍光体層は、該蛍光体を水銀プラズマから満足裏に隠蔽する極めて濃密な層を形成する。さらに、この極めて濃密な層は、蛍光体層の表面上での水銀イオンと電子の再結合を低減させる。
本発明のこれらおよび他の局面は、以下で説明する実施態様から明らかであろうし、また、それら実施態様を参照すれば明瞭となろう。
【0006】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明の蛍光体の使用は、給水場および下水処理場における滅菌、各種タイプの気体および液体の滅菌のような一般的な化粧、医療および殺菌目的並びにラッカーのような製品の製造、加工および処理のための光化学プロセッシングを意図するけれども、本発明を、とりわけ高量の狭帯域UV発光によるスペクトルを必要とする光線療法目的の低圧放電ランプに関連して説明し、これらのランプにおける特定の用途を探究する。
典型的には、UVランプは、低圧水銀蒸気放電ランプである。これらUVランプの照光原理は、他の既知の蛍光ランプの原理と完全に同じである。上記UVランプは、典型的な蛍光ランプとは、上記UVランプがUV蛍光体フィルムを使用している点およびその放電容器が良好な紫外線透過性を有するガラスからまたは石英ガラスから製造されている点においてのみ異なる。そのような紫外線ランプにおいては、励起水銀原子は、遠赤外線を発出し、これを、UV蛍光体によりUV-BおよびUV-C線に変換する。
現在知られており商業的に入手可能なUVランプの大多数は、低圧水銀蒸気放電ランプタイプである。しかしながら、水銀は高毒性の物質であるので、新規なタイプのランプが最近開発されてきている。水銀充填ランプに代る1つの有望な候補は、誘電体バリア放電(DBD)ランプである。水銀を排除する以外に、このランプは、長寿命および無視し得る起動時間の利点も提供する。
DBDランプの操作原理は、イオン化可能な放電媒質中でのガス放電に基づく。
さらに、誘電体バリア放電ランプは、少なくとも1個のいわゆる誘電体バリア電極を必要とする。誘電体バリア電極は、放電スペースから誘電体によって分離されている。この誘電体は、例えば、電極を覆う誘電体層として設計し得、或いは、ランプ自体の放電容器として、電極を該放電容器の壁の外側に配置する場合には形成させ得る。
DBDランプのイオン化可能な放電媒質は、典型的には、希ガス、例えば、キセノンまたはガス混合物から通常なるエキシマー形成剤を含む。好ましくはパルス操作法によって操作するガス放電中に、エキシマーが形成される。エキシマーは、励起分子、例えば、Xe2*であり、一般に結合していない基底状態に戻ったときに電磁線を発出する。エキシマーの電磁線は、発光材料によって、水銀充填蛍光ランプにおいて生じるのと同じ物理的プロセスにおいてより長めの波長の放射線に変換される。
【0007】
図1は、本発明に従う誘電体バリア放電ランプの断面図である。放電容器は、真空気密方式で密閉されており、ガラス製であり、エキシマーを形成するガス混合物を放電スペース(3)内に含む。ガラス容器の平行な壁(4、5)は、2mmの壁厚を有し、放電スペース(3)から離れた表面(6、7)に平面電極(8、9)を備えている。電極(8)は、発生した放射線に対して透明である金属グリッドからなる(例えば、金グリッド電極、メッシュ1.5mm)。電極(9)は、蒸着ミラーリングアルミニウム電極である。壁(4、5)の内表面(10、11)間の間隔は、有効距離(striking distance) dである。壁(4、5)の線寸法は、励起の及ぶ距離dと比較して大きい。内表面(10、11)は、発光材料を含む層(12、13)を備えている。
図1に示す平坦設計は、皮膚障害の光線療法処置にとりわけ適している。
1つの好ましい実施態様においては、本発明に従うDBDランプは、キセノンを、典型的には50〜200ミリバール、好ましくは100〜150ミリバールの範囲内の充填圧で充填する。ガス混合物内でのグロー放電によって発生するエキシマー線は、放電スペース内のガスの組成に従って変化する。30容量%未満のキセノンを含有するガス混合物は、147nmにおいて実質的に共鳴放射線を発出する。30容量%よりも多いキセノンを含有する好ましいガス混合物は、172nmにおいてエキシマー線を発出する。
UV発光低圧水銀放電ランプと比較したDBDランプの利点は、ランプ形状の自由な設計(湾曲、平坦、管状等)、長ランプ寿命、200〜800nm範囲の波長における望ましくない性能低下発光の無いこと、高効率および非汚染性である。
【0008】
上記発光材料は、放電の一次放射線による励起時にUV-B線および/またはUV-C線を発出し、式La1-xMgAl11O19:Lnx (式中、ランタニドLnは、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)の群から選ばれ;0.001≦x≦0.5である)のランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムを含む。
種々の紫外線スペクトルエネルギー分布が、本発明に従うUV蛍光体を既知の発光材料と混合することによって容易に得られ、そのようにして種々の放射線強度を発生させて、一般目的における所望のスペクトルを発生させるコーティーングを提供する。
とりわけ、SrAl12O19:Ceおよび(La1-xGdx)PO4:Ceは、UV-A線を発生させるためのSrB4O7:EuまたはLaMgAl11O19:Ceと同様に、広帯域UV-B線を発生させるための周知の蛍光体材料である。
これらの周知のUV発生性蛍光蛍光体材料は、種々の割合で混合して、所望のUV線比および強度、ひいては、所定の光線療法または殺菌強度を発生させ得る。また、蛍光体コーティーングは、ガス放電容器の内壁上の二重蛍光体層からなり得、この蛍光体層は、1つの層中に本発明に従うUV蛍光体を、第2の層中に第2の蛍光体を含有する。
本発明の第2の局面は、式La1-xMgAl11O19:Lnx (式中、ランタニドLnは、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)の群から選ばれ;0.001≦x≦0.5である)のランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムからなるUV蛍光体を中心とする。
本発明に従うUV蛍光体は、基本ホスト格子としてアルミン酸ランタンマグネシウムLaMgAl11O19を含む。
アルミン酸ランタンマグネシウムLaMgAl11O19は、特徴的な六方晶結晶構造を有し、基本的には、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)、またはこれらの混合物の群から選ばれるランタニドによる活性化時に維持される。
この六方晶結晶構造は、鉱物マグネットプランバイトの結晶構造またはβ-アルミナの結晶構造と大きな類似を示す。これら2つの六方晶構造は、密接に関連する。
【0009】
ホスト格子LaMgAl11O19は、その光学バンドギャップがおよそ180nmにあり(図2)、該格子が200〜400nmの範囲において高度に反射性であるので、好ましくは180nmよりも高いVUV光子を吸収するのに適する。大きいバンドギャップ故に、上記ホスト格子は、活性化剤から発出された放射線を吸収しない。そして、上記ホスト格子は比較的剛性であり、結果として、有効性を低下させる非放射緩和に至る格子振動は、容易に励起されることはない。
アルミン酸ランタンマグネシウムLaMgAl11O19の三次元ネットワーク内には、活性化剤イオンを取込ませ、ランタンの1部と置換える。Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)活性化剤イオンは、単一金属または2種以上の金属の混合物として存在し得る。
本発明に従う蛍光体の励起バンドは、120〜200nmの広いバンドであることが判明している。従って、該蛍光体は、波長185nm(Hg)および172nm(Xe)の放射線によって効率的に励起させ得ることは明白である。即ち、該発光材料は、水銀アーク放電またはキセノンエキシマー放電のVUV線をUV-BまたはUV-C線に変換するための理想的な特徴を有する。
活性化剤または活性化剤の組合せを適切に選択することにより、上記放電ランプから発出した放射線は、UV-BまたはUV-C範囲の任意の所望波長を与え得る。例えば、上記材料は、本出願の添付図面の図3および4に示しているように、高Pr(III)濃度においては250nmの範囲内で、高Gd(III)濃度においては310nm範囲内でピークを有する狭いバンドを発出することを見出している。
【0010】
とりわけ、ガドリニウムは、その基底状態および励起状態の双方がホスト格子の約6eVバンドギャップ内にあるので、優れた活性化剤である。
ガドリニウムは、4f-5df遷移、即ち、f軌道エネルギー準位に関与する電子遷移を介して放射線を吸収し、発出する。f-f遷移は量子力学的に抑制されて弱い発出強度を生じるものの、Gd(III)のようなある種の希土類イオンは、許容4f-5df遷移により(d軌道/f軌道混合により)放射線を強力に吸収し、結果として、電磁スペクトルのUV-B範囲内の高発出強度を発生させる。
従って、Gd(III)でドーピングしたLaMgAl11O19は、ホスト格子が放電からの入射UV光子を効率的に吸収し、その後、エネルギーをGd(III)活性化剤に移動するので、Xeエキシマー放電ランプにおいて何らのさらなる増感を行うことなく使用し得る。
ホスト格子 + hv → (ホスト格子)*
ホスト格子 + Gd(III) → (ホスト格子) + Gd3+*
Gd3+* → Gd3+ + hv (310〜312 nm)
しかしながら、Gd(III)活性化発光材料のさらなる増感は、これらの発光材料を水銀放電ランプにおいて使用する場合には必要である;何故ならば、この活性化剤は、何らの電荷移動または4f5d状態を、4f7配置の8S基底状態値よりも高い70,000cm-1まで有さないからである。従って、上記発光材料は、低圧水銀放電からの254nmを吸収できない。対照的に、化学的に安定なCe(III)、Pr(III)およびNd(III)は、この目的において適切な増感剤である。これらは、4f2配置の基底状態(3H4)よりも高い4f15d1配置のエネルギー位置故に、増感剤として使用し得る。例えば、自由Pr(III)イオンにおいては、これら2つの状態間のエネルギーギャップは、160nmに相応する62,000 cm-1である。このエネルギーギャップは、結晶環境においては、電子雲膨張(nephelauxetic)効果(共有原子価)および5d軌道の結晶場分裂のために低下する。
【0011】
従って、本発明のこの局面は、1部には、ガドリニウムが、ホスト材料中に一緒に取込ませた場合に、Ce(III)、Pr(III)およびNd(III)によって効率的に増感されるという発見にある。このさらなる増感は、Gd(III)活性化アルミン酸ランタンマグネシウムの254nmおよび172nmでの吸収強度を増強する。増感方式は、下記のように説明し得る:
Me3+ + hv → Me3+* (Me = Ce、Pr、Nd)
Me3+* + Gd3+ → Me3+ + Gd3+*
Gd3+* → Gd3+ + hv (310〜312 nm)
活性化剤としてのガドリニウムと増感剤としてのプラセオジムを含むUV-B蛍光体の発光スペクトルは、活性化剤としてのガドリニウムと増感剤としてのビスマスを含むUV-B蛍光体の発光スペクトルと類似している、即ち、該蛍光体は、Gd(III)の4f-4f遷移により、311nmでの狭発光帯域および20nm未満の半値幅を示す。
本発明に従うとりわけ有用な狭帯域UV-B蛍光体は、La1-xMgAl11O19:Cex、La1-xMgAl11O19:Prx、La1-xMgAl11O19:Ndx、La1-xMgAl11O19:Gdx、La1-xMgAl11O19:(Ce,Gd)x、La1-xMgAl11O19:(Pr,Gd)x、La1-xMgAl11O19:(Nd,Gd)xであり、0.001≦x≦0.5である。
好ましくは、上記UV蛍光体は、ホスト格子中のランタンカチオンに対して0.001〜50モル%の量の上記活性化剤およびホスト格子中のランタンカチオンに対して0.001〜2モル%の量の上記増感剤を含む。
【0012】
これらのUV蛍光体は、好ましくは、1〜20μmの平均粒度を有する粒度分布で使用する。粒度は、UV線を吸収する、さらに可視放射線を吸収し散乱させる蛍光体の性質によって、さらにまた、ガラス壁に良好に結合する蛍光コーティーングを形成させる必要性によって決まる。後者の要件は極めて小さい粒度によってのみ満たされるが、その光出力は、僅かに大きめの粒度の光出力よりも小さい。
三価のセリウム、プラセオジム、ネオジム、ガドリニウムまたはこれらの混合物によって活性化するアルミン酸ランタンマグネシウムは、一般に、所望の組成を有する配合物に適する量の所望元素の酸化物または酸化物生成性プレカーサーを含む出発混合物の高温での固相反応によって製造し得る。プラセオジムを活性化剤として使用する場合、この反応は、弱還元性雰囲気(例えば、1〜10容量%の水素または一酸化炭素を含有する窒素)中で生じるべきである。反応温度は、所望のアルミネート相に形成のために重要であることが判明している。この温度は、1100℃〜1400℃でなければならない。さらに、溶融性塩または融剤の使用(例えば、必要なマグネシウムの1部のフッ化マグネシウムの形での使用)も推奨される。
上記蛍光体をガス放電容器の壁に適用するには、通常、フローコーティーング法を使用する。フローコーティーング法用のコーティーング懸濁液は、溶媒として、水または酢酸ブチルのような有機溶媒を含有する。懸濁液は、助剤、例えば、セルロース誘導体、ポリメタクリル酸またはポリプロピレンオキシドを添加することによって安定化し、その流動特性を操作する。通常は、分散剤、消泡剤および粉末状態調節剤のようなさらなる添加剤、例えば、酸化アルミニウム、アルミニウム酸窒化物またはホウ酸も使用する。蛍光体懸濁液は、ガス放電容器の内面上に、注入法、フラッシング法またはスプレー法によって薄層として施す。その後、コーティーングを高温空気によって乾燥させ、およそ600℃で焼付ける。層は、一般に、1〜50μmの範囲内の厚さを有する。
【0013】
特定の実施態様1
a. LaMgAl11O19:4%Prの合成
UV-C蛍光体LaMgAl11O19:4%Prを製造するために、出発材料:2.047g (6.282ミリモルl)のLa2O3、0.422g (10.470ミリモル)のMgO、0.163g (2.618ミリモル)のMgF2、7.339g (71.982ミリモル)のAl2O3および0.0891g (0.0872ミリモル)のPr6O11を100℃で乾燥させ、ミリングし、その後、CO雰囲気内で、1000℃で1時間アニーリングする。十分な粉砕工程の後、粉末を、CO雰囲気内で、断続的に粉砕しながら1400℃で4時間2回アニーリングする。
最後に、粉末を再度ミリングし、60℃の650mlの水中で数時間洗浄し、100℃で乾燥させる。当該LaMgAl11O19:4%Prは、結晶性であり、3〜4マイクロメートルの平均粒度を有する。
図3は、LaMgAl11O19:4%Prの発光、励起および反射スペクトルを示す。
b. LaMgAl11O19:4%Prを含むUV-Cランプ
LaMgAl11O19:4%Prおよび1% alon-cを含む酢酸ブチル系蛍光体懸濁液を調製し、36μmメッシュにより篩分けする。フローコーティーング関連手順を使用して、懸濁液を、290 (?) ガラス管の内壁に適用する。懸濁液の粘度は、得られる蛍光体層が0.5〜3.0mg/cm2のスクリーン質量を有するように調整する。
コーティーング工程の後、有機残留物(バインダー等)を、550〜600℃でのアニーリング工程により除去する。その後、ランプを数ミリバールのアルゴンおよび1〜50mgのHgで充填する。最後に、電極をランプに連結し、管を密閉する。
【0014】
特定の実施態様2
a. LaMgAl11O19:15%Gdの合成
UV-B蛍光体LaMgAl11O19:15%Gdを製造するために、出発材料:1.785g (5.478ミリモル)のLa2O3、0.421g (10.433ミリモル)のMgO、0.163g (2.608ミリモル)のMgF2、7.314g (71.731ミリモル)のAl2O3および0.378g (1.043ミリモル)のGd2O3を、メノウ乳鉢内で十分に混合する。得られた粉末を乾燥させ、ミリングし、その後、空気雰囲気内で、断続的に粉砕しながら1400℃で数時間2回アニーリングする。その後、粉末を再度ミリングし、空気中で、1400℃で2時間アニーリングする。最後に、粉末を再度ミリングし、60℃の650mlの水中で数時間洗浄し、100℃で乾燥させる。当該LaMgAl11O19:15%Gdは、結晶性であり、3マイクロメートルの平均粒度を有する。
図4は、LaMgAl11O19:15%Gdの発光、励起および反射スペクトルを示す。
b. LaMgAl11O19:15%Gdを含むUV-Bランプ
LaMgAl11O19:15%Gdおよび1% alon-cを含む酢酸ブチル系蛍光体懸濁液を調製し、36μmメッシュにより篩分けする。フローコーティーング関連手順を使用して、懸濁液を、290 (?) ガラス管の内壁に適用する。懸濁液の粘度は、得られる蛍光体層が0.5〜3.0mg/cm2のスクリーン質量を有するように調整する。
コーティーング工程の後、有機残留物(バインダー等)を、550〜600℃でのアニーリング工程により除去する。その後、ランプを数ミリバールのアルゴンおよび1〜50mgのHgで充填する。最後に、電極をランプに連結し、管を密閉する。
【0015】
当業者であれば、上記の説明から、本発明の広範な教示を種々の形で実施し得ることを理解するであろう。従って、本発明をその特定の例に関連して説明してきたけれども、本発明の真の範囲は、他の修正が、図面、明細書および特許請求の範囲を検討すれば、当業者にとって明白になるであろうから、それらの例に限定すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従う誘電体バリア放電ランプを略図的に断面で示す。
【図2】LaMgAl11O19の反射ダイアグラムを示す。
【図3】LaMgAl11O19:4%Prの発光、励起および反射スペクトルを示す。
【図4】LaMgAl11O19:15%Gdの発光、励起および反射スペクトルを示す。
【符号の説明】
【0017】
1 誘電体バリア放電ランプ
2 放電容器
3 放電スペース
4、5 放電容器壁
6、7 放電スペースから離れた表面
8、9 平面電極
10、11 壁の内表面
12、13 発光材料を含む層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電維持性組成物を含むガス充填物を含むガス放電容器を備え、該放電容器の壁の少なくとも一部が、式La1-xMgAl11O19:Lnx (式中、ランタニドLnは、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)の群から選ばれ;0.001 ≦ x ≦ 0.5である)のランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムを第1のUV-蛍光体として含む発光材料を備えている放電ランプであって、ガス放電を発生させ維持する手段をさらに備えている放電ランプ。
【請求項2】
前記放電維持性組成物が、水銀を含む、請求項1記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記放電維持性組成物が、エキシマー形成剤を含む、請求項1記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記発光材料が、第2のUV-蛍光体も含む、請求項1記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記第2のUV-蛍光体が、SrAl12O19:Ce、(La1-xGdx)PO4:Ceまたはこれらのブレンドの群から選ばれる、請求項4記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記発光材料が、Al2O3、MgO、MgAl2O4およびY2O3の群から選ばれる添加剤をさらに含む、請求項1記載の放電ランプ。
【請求項7】
請求項1記載の放電ランプの、化粧、医療および殺菌目的並びに光化学プロセスにおける使用。
【請求項8】
式La1-xMgAl11O19:Lnx (式中、ランタニドLnが、Ce(III)、Pr(III)、Nd(III)およびGd(III)の群から選ばれ;0.001 ≦ x ≦ 0.5である)のランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムからなるUV-蛍光体。
【請求項9】
式La1-xMgAl11O19:Cex、La1-xMgAl11O19:Prx、La1-xMgAl11O19:Ndx、La1-xMgAl11O19:Gdx、La1-xMgAl11O19:(Ce,Gd)x、La1-xMgAl11O19:(Pr,Gd)x、La1-xMgAl11O19:(Nd,Gd)xの群から選ばれるランタニド活性化アルミン酸ランタンマグネシウムからなり、0.001 ≦ x ≦ 0.5である、請求項8記載のUV-蛍光体。
【請求項10】
1μm < d < 20μmの粒度を有する、請求項9記載のUV-蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−533812(P2009−533812A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504863(P2009−504863)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051089
【国際公開番号】WO2007/116331
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】