説明

V型プーリ無段変速機

【課題】 入力軸と出力軸に配置された転がり軸受の寿命が長いV型プーリ無段変速機を提供すること。
【解決手段】 入力軸1における第1V型プーリ3の外側かつ第1固定部20側(エンジン配置側)に配置された第1転がり軸受8の分担トルク比を0.07以上に、入力軸1における第1V型プーリ3の外側かつ第1可動部21側(反エンジン配置側)に配置された第2転がり軸受9の分担トルク比を0.08以上に、出力軸2における第2V型プーリ4の外側かつ第2固定部22側(反エンジン配置側)に配置された第3転がり軸受10の分担トルク比を0.05以上に、出力軸2における第2V型プーリ4の外側かつ第2可動部23側(エンジン配置側)に配置された第4転がり軸受11の分担トルク比を0.09以上に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、V型プーリ無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、V型プーリ無段変速機としては特開2004−11712号公報(特許文献1)に記載されているものがある。
【0003】
このV型プーリ無段変速機は、入力軸と、この入力軸に固定された第1V型プーリと、出力軸と、この出力軸に固定された第2V型プーリと、上記第1V型プーリのV型溝と上記第2V型プーリのV型溝に掛け渡されたベルトと、4つの転がり軸受とを備えている。
【0004】
上記入力軸には、エンジンの回転動力が伝達されるようになっており、上記出力軸は、回転動力を車軸に伝達するようになっている。
【0005】
上記4つの転がり軸受は、上記入力軸上の上記第1V型プーリの両側に一つずつ配置されている第1転がり軸受および第2転がり軸受と、上記出力軸上の上記第2V型プーリの両側に一つずつ配置されている第3転がり軸受および第4転がり軸受とから構成されている。
【0006】
上記従来のV型プーリ無段変速機は、上記第1および第2V型プーリのV型溝の幅を適切に変動させることによって、上記ベルトを、上記第1V型プーリおよび上記第2V型プーリの半径方向に移動させることにより、出力軸の回転速度を適切に調整するようになっている。
【0007】
上記従来のV型プーリ無段変速機は、上述のように、入力軸と出力軸を所定位置に保持するために、入力軸上に二つの転がり軸受を配置すると共に、出力軸上に二つの転がり軸受を配置している。
【0008】
しかしながら、上記従来のV型プーリ無段変速機では、上記入力軸と出力軸に配置された上記4つの転がり軸受の寿命が計算寿命よりも短くなるという問題がある。
【0009】
CVT用オイルは、通常のギヤオイルなどの潤滑油と比べ低粘度油が使用され、かつベルトとプーリ部との摩擦によって発生する摩耗粉や2軸目から3軸目、3軸目から4軸目にトルクを伝達する歯車噛合い部での摩擦によって発生する摩耗粉が発生するため軸受転がり部の油膜形成能力が低く、軸受部の荷重と軸受の定格荷重によって決まる寿命に対し、短寿命になるケースが多い。
【0010】
その際、軸受そのものの定格荷重を大きくすべく軸受サイズを大きくしたいが、ユニットのコンパクト化要求からサイズアップが出来ないのが実情である。従って、異物に対する転がり部表面の体力を向上させるべく、軸受の内輪、外輪、転動体のいずれかもしくはすべてに特殊な熱処理を施し、表面に残留圧縮応力を付与し、軸受寿命を向上させている。
【0011】
ところが、このような対処をしてもなお軸受寿命を確保できないケースがある。その一つの要因がプーリを支持する軸受部の軸剛性やハウジング剛性が影響し、軸受部の負荷荷重分布が不均一になることであり、これが、最適な軸受設計を困難にしている。
【0012】
すなわち、上記4つの転がり軸受の寿命を延ばす手法がわからず、上記4つの転がり軸受の寿命を延ばす手法が確立されていないという問題がある。
【特許文献1】特開2004−11712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明の課題は、入力軸と出力軸に配置された転がり軸受の寿命が長いV型プーリ無段変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、この発明のV型プーリ無段変速機は、
入力軸と、
上記入力軸と平行に配置された出力軸と、
上記入力軸に固定された第1固定部と、上記入力軸上を軸方向に移動可能な第1可動部とを有し、上記第1固定部と上記第1可動部との間にV型溝が形成されている第1V型プーリと、
上記出力軸に固定された第2固定部と、上記出力軸上を軸方向に移動可能な第2可動部とを有し、上記第2固定部と上記第2可動部との間にV型溝が形成されている第2V型プーリと、
上記第1V型プーリの外側かつ上記第1固定部側に配置されて上記入力軸を支持すると共に、第1内輪と第1外輪と第1転動体とを有する第1転がり軸受と、
上記第1V型プーリの外側かつ上記第1可動部側に配置されて上記入力軸を支持すると共に、第2内輪と第2外輪と第2転動体とを有する第2転がり軸受と、
上記第2V型プーリの外側かつ上記第2固定部側に配置されて上記出力軸を支持すると共に、第3内輪と第3外輪と第3転動体とを有する第3転がり軸受と、
上記第2V型プーリの外側かつ上記第2可動部側に配置されて上記出力軸を支持すると共に、第4内輪と第4外輪と第4転動体とを有する第4転がり軸受と、
上記第1V型プーリのV型溝と上記第2V型プーリのV型溝に掛け渡されて上記第1V型プーリと上記第2V型プーリとの間でトルクを伝達すると共に、上記第1V型プーリおよび上記第2V型プーリの半径方向に摺動可能な可撓性の無端伝達部材と
を備え、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において動定格荷重をC[kN]、上記第1乃至第4の転がり軸受の夫々において内径をI[m]、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において分担トルクをS、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において転動体係数をp、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において軸受特性係数をa、上記第1転がり軸受と上記第2転がり軸受との軸受間距離をL[m]、上記第3転がり軸受と上記第4転がり軸受との軸受間距離をL[m]とし、
さらに、上記第1V型プーリの中心から上記第1転がり軸受の中心までの距離をn[m]、上記第1V型プーリの中心から上記第2転がり軸受の中心までの距離をm[m]、上記第2V型プーリの中心から上記第3転がり軸受の中心までの距離をn[m]、上記第2V型プーリの中心から上記第4転がり軸受の中心までの距離をm[m]としたとき、上記第1転がり軸受の上記分担トルクSをm/L、上記第2転がり軸受の上記分担トルクSをn/L、上記第3転がり軸受の上記分担トルクSをm/L、上記第4転がり軸受の上記分担トルクSをn/Lとし、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々の上記転動体係数pを、転動体が玉の場合を3、転動体がころの場合を10/3とし、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々の上記軸受特性係数aを、内輪、外輪および転動体のいずれにも特殊熱処理が施されてない場合を1、外輪および転動体に特殊熱処理が施されていない一方、内輪に特殊熱処理が施されている場合を2、外輪に特殊熱処理が施されていない一方、内輪および転動体に殊熱処理が施されている場合を4、内輪、外輪および転動体に殊熱処理が施されている場合を10とし、
分担トルク比STRを、
STR=(C×a1/p×I)/(S×L)としたとき、
ただし、ここでは入力軸についてはL=L、出力軸についてはL=Lとして、
上記第1転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、
上記第2転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、
上記第3転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、
上記第4転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.09以上であることを特徴としている。
【0015】
上記入力軸と、第1固定部は一体成形されていても良いし、上記入力軸に、上記入力軸と別部材の第1固定部を固定する形式であっても良い。また、出力軸と、第2固定部は一体成形されていても良いし、上記出力軸に、上記出力軸と別部材の第2固定部を固定する形式であっても良い。
【0016】
また、上記ころには、円筒ころと円錐ころとが含まれる。
【0017】
また、上記特殊熱処理とは、浸炭処理、窒化処理または浸炭窒化処理をいうものとする。
【0018】
また、上記第1転がり軸受と上記第2転がり軸受との軸受間距離Lを、第1転がり軸受の中心軸上の点で、かつ、第1転がり軸受の軸方向の中心の点と、第2転がり軸受の中心軸上の点で、かつ、第2転がり軸受の軸方向の中心の点との距離として定義する。また、同様に、上記第3転がり軸受と上記第4転がり軸受との軸受間距離Lを、第3転がり軸受の中心軸上の点で、かつ、第3転がり軸受の軸方向の中心の点と、第4転がり軸受の中心軸上の点で、かつ、第4転がり軸受の軸方向の中心の点との距離として定義する。
【0019】
本発明者は、様々な種類の軸受において、上記入力軸の第1固定部側に配置されている上記第1転がり軸受、上記入力軸の第1可動部側に配置されている上記第2転がり軸受、上記出力軸の第2固定部側に配置されている上記第3転がり軸受、および、上記出力軸の第2可動部側に配置されている上記第4転がり軸受の夫々について、上記分担トルク比STRと、記第1乃至第4転がり軸受の計算寿命に対する実寿命の比との関係を詳細に調べ、上記分担トルク比STRと、上記比の値との間に、相関関係があることを発見した。
【0020】
詳細には、上記第1転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.07より小さい場合には、上記第1転がり軸受の上記比の値が、0.2以下の小さい値である一方、上記第1転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.07以上に設定すると、上記第1転がり軸受の上記比の値が、1.5以上に格段に大きくなることを発見した。
【0021】
また、上記第2転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.08より小さい場合には、上記第2転がり軸受の上記比の値が、0.2以下の小さい値である一方、上記第2がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.08以上に設定すると、上記第2転がり軸受の上記比の値が、1.9以上に格段に大きくなることを発見した。
【0022】
また、上記第3転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.05より小さい場合には、上記第3転がり軸受の上記比の値が、0.2以下の小さい値である一方、上記第3転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.05以上に設定すると、上記第3転がり軸受の上記比の値が、1.8以上に格段に大きくなることを発見した。
【0023】
また、上記第4転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.09より小さい場合には、上記第4転がり軸受の上記比の値が、0.2以下の小さい値である一方、上記第4転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.09以上に設定すると、上記第4転がり軸受の上記比の値が、2.0以上に格段に大きくなることを発見した。
【0024】
本発明によれば、上記第1転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、上記第2転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、上記第3転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、上記第4転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.09以上であるので、上記第1乃至第4転がり軸受の寿命を、格段に長くすることができる。
【0025】
また、本発明のV型プーリ無段変速機は、
入力軸と、
上記入力軸と略平行に配置された出力軸と、
上記入力軸に固定された第1固定部と、上記入力軸上を軸方向に移動可能な第1可動部とを有し、上記第1固定部と上記第1可動部との間にV型溝が形成されている第1V型プーリと、
上記出力軸に固定された第2固定部と、上記出力軸上を軸方向に移動可能な第2可動部とを有し、上記第2固定部と上記第2可動部との間にV型溝が形成されている第2V型プーリと、
上記第1V型プーリの外側かつ回転動力源配置側に配置されて上記入力軸を支持すると共に、第1内輪と第1外輪と第1転動体とを有する第1転がり軸受と、
上記第1V型プーリの外側かつ上記回転動力源配置側と反対側に配置されて上記入力軸を支持すると共に、第2内輪と第2外輪と第2転動体とを有する第2転がり軸受と、
上記第2V型プーリの外側かつ上記回転動力源配置側と反対側に配置されて上記出力軸を支持すると共に、第3内輪と第3外輪と第3転動体とを有する第3転がり軸受と、
上記第2V型プーリの外側かつ上記回転動力源配置側に配置されて上記出力軸を支持すると共に、第4内輪と第4外輪と第4転動体とを有する第4転がり軸受と、
上記第1V型プーリのV型溝と上記第2V型プーリのV型溝に掛け渡されて上記第1V型プーリと上記第2V型プーリとの間でトルクを伝達すると共に、上記第1V型プーリおよび上記第2V型プーリの半径方向に摺動可能な可撓性の無端伝達部材と
を備え、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において動定格荷重をC[kN]、上記第1乃至第4の転がり軸受の夫々において内径をI[m]、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において分担トルクをS、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において転動体係数をp、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において軸受特性係数をa、上記第1転がり軸受と上記第2転がり軸受との軸受間距離をL[m]、上記第3転がり軸受と上記第4転がり軸受との軸受間距離をL[m]とし、
さらに、上記第1V型プーリの中心から上記第1転がり軸受の中心までの距離をn[m]、上記第1V型プーリの中心から上記第2転がり軸受の中心までの距離をm[m]、上記第2V型プーリの中心から上記第3転がり軸受の中心までの距離をn[m]、上記第2V型プーリの中心から上記第4転がり軸受の中心までの距離をm[m]としたとき、上記第1転がり軸受の上記分担トルクSをm/L、上記第2転がり軸受の上記分担トルクSをn/L、上記第3転がり軸受の上記分担トルクSをm/L、上記第4転がり軸受の上記分担トルクSをn/Lとし、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々の上記転動体係数pを、転動体が玉の場合を3、転動体がころの場合を10/3とし、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々の上記軸受特性係数aを、内輪、外輪および転動体のいずれにも特殊熱処理が施されてない場合を1、外輪および転動体に特殊熱処理が施されていない一方、内輪に特殊熱処理が施されている場合を2、外輪に特殊熱処理が施されていない一方、内輪および転動体に殊熱処理が施されている場合4、内輪、外輪および転動体に殊熱処理が施されている場合を10とし、
分担トルク比STRを、
STR=(C×a1/p×I)/(S×L)としたとき、
ただし、ここでは入力軸についてはL=L、出力軸についてはL=Lとして、
上記第1転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、
上記第2転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、
上記第3転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、
上記第4転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.09以上であることを特徴としている。
【0026】
上記入力軸と、第1固定部は一体成形されていても良いし、上記入力軸に上記入力軸と別部材の第1固定部を固定する形式であっても良い。また、出力軸と、第2固定部は一体成形されていても良いし、上記出力軸に上記出力軸と別部材の第2固定部を固定する形式であっても良い。
【0027】
また、上記ころには、円筒ころと円錐ころとが含まれる。
【0028】
また、上記特殊熱処理とは、浸炭処理、窒化処理または浸炭窒化処理をいうものとする。
【0029】
また、上記第1転がり軸受と上記第2転がり軸受との軸受間距離Lを、第1転がり軸受の中心軸上の点で、かつ、第1転がり軸受の軸方向の中心の点と、第2転がり軸受の中心軸上の点で、かつ、第2転がり軸受の軸方向の中心の点との距離として定義する。また、同様に、上記第3転がり軸受と上記第4転がり軸受との軸受間距離Lを、第3転がり軸受の中心軸上の点で、かつ、第3転がり軸受の軸方向の中心の点と、第4転がり軸受の中心軸上の点で、かつ、第4転がり軸受の軸方向の中心の点との距離として定義する。
【0030】
また、上記回転動力源側とは、上記第1V型プーリまたは上記第2V型プーリに対して回転動力源が配置されている側を言う。上記回転動力源側は、上記第1V型プーリまたは上記第2V型プーリと、回転動力源との空間的な配置関係によって一意に決定されることは勿論である。
【0031】
本発明者は、様々な種類の軸受において、上記入力軸の回転動力源配置側に配置されている上記第1転がり軸受、上記入力軸の回転動力源配置側と反対側に配置されている上記第2転がり軸受、上記出力軸の回転動力源配置側と反対側に配置されている上記第3転がり軸受、上記出力軸の回転動力源配置側に配置されている上記第4転がり軸受の夫々について、上記分担トルク比STRと、記第1乃至第4転がり軸受の計算寿命に対する実寿命の比との関係を詳細に調べ、上記分担トルク比STRと、上記比の値との間に、相関関係があることを発見した。
【0032】
詳細には、上記第1転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.07より小さい場合には、上記第1転がり軸受の上記比の値が、0.2以下の小さい値である一方、上記第1転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.07以上に設定すると、上記第1転がり軸受の上記比の値が、1.5以上に格段に大きくなることを発見した。
【0033】
また、上記第2転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.08より小さい場合には、上記第2転がり軸受の上記比の値が、0.2以下の小さい値である一方、上記第2がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.08以上に設定すると、上記第2転がり軸受の上記比の値が、1.9以上に格段に大きくなることを発見した。
【0034】
また、上記第3転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.05より小さい場合には、上記第3転がり軸受の上記比の値が、0.2以下の小さい値である一方、上記第3転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.05以上に設定すると、上記第3転がり軸受の上記比の値が、1.8以上に格段に大きくなることを発見した。
【0035】
また、上記第4転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.09より小さい場合には、上記第4転がり軸受の上記比の値が、0.2以下の小さい値である一方、上記第4転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.09以上に設定すると、上記第4転がり軸受の上記比の値が、2.0以上に格段に大きくなることを発見した。
【0036】
本発明によれば、上記第1転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、上記第2転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、上記第3転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、上記第4転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.09以上であるので、上記第1乃至第4転がり軸受の寿命を、格段に長くすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明のV型プーリ無段変速機によれば、入力軸を支持すると共に、第1V型プーリの外側かつ第1固定部側に配置された第1転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、入力軸を支持すると共に、第1V型プーリの外側かつ第1可動部側に配置された第2転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、出力軸を支持すると共に、第2V型プーリの外側かつ第2固定部側に配置された第3転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、出力軸を支持すると共に、第2V型プーリの外側かつ第2可動部側に配置された第4転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.09以上であるので、上記第1乃至第4転がり軸受の寿命を、格段に長くすることができる。
【0038】
また、本発明のV型プーリ無段変速機によれば、入力軸を支持すると共に、第1V型プーリの外側かつ回転動力源配置側に配置された第1転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、入力軸を支持すると共に、第1V型プーリの外側かつ反回転動力源配置側に配置された第2転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、出力軸を支持すると共に、第2V型プーリの外側かつ反回転動力源配置側に配置された第3転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、出力軸を支持すると共に、第2V型プーリの外側かつ回転動力源配置側に配置された第4転がり軸受の分担トルク比STRの値が、0.09以上であるので、上記第1乃至第4転がり軸受の寿命を、格段に長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0040】
図1は、この発明のV型プーリ無段変速機の一実施形態を示す図である。
【0041】
このV型プーリ無段変速機は、入力軸1と、出力軸2と、第1V型プーリ3と、第2V型プーリ4と、無端伝達部材の一例としてのベルト5とを備える。尚、この実施形態では、無端伝達部材としてベルト5を使用するが、無端伝達部材としてベルト5のかわりにチェーンを使用しても良い。
【0042】
上記入力軸1には、図示しない回転動力源としてのエンジンからの回転動力が伝達されるようになっている。また、上記出力軸2は、入力軸1と平行に配置されている。尚、この実施形態では、回転動力源としてエンジンを使用するが、回転動力源として電気モータ等を使用しても良い。
【0043】
上記第1V型プーリ3は、入力軸1に固定されている第1固定部20と、入力軸1上を矢印αに示す方向に軸方向に移動可能な第1可動部21とから構成されている。上記第1固定部20と第1可動部21との間には、V型溝25が形成されている。上記第1可動部21を、入力軸1上を矢印αに示す方向に適切に移動させることによって、V型溝25の幅を適切な値に調整するようになっている。
【0044】
上記第2V型プーリ4は、出力軸2に固定されている第2固定部22と、出力軸上を矢印βに示す方向に軸方向に移動可能な第2可動部23とから構成されている。上記第2固定部22と第2可動部23との間には、V型溝26が形成されている。上記第2可動部23を、出力軸2上を矢印βに示す方向に適切に移動させることによって、V型溝26の幅を適切な値に調整するようになっている。また、上記V型溝26は、V型溝25に対向配置されている。
【0045】
上記ベルト5は、上記対向配置されたV型溝25とV型溝26に掛け渡されて第1V型プーリ3と第2V型プーリ4との間でトルクを伝達するようになっている。上記ベルト5は、上述の方法によりV型溝25,26の幅を変化させると、第1V型プーリ3および第2V型プーリ4の半径方向に摺動するようになっている。
【0046】
また、このV型プーリ無段変速機は、第1転がり軸受8と、第2転がり軸受9と、第3転がり軸受10と、第4転がり軸受11とを備えている。
【0047】
上記第1転がり軸受8は、入力軸1上の第1V型プーリ3の外側かつ第1固定部20側に固定されている。上記第1転がり軸受8は、第1外輪(図示せず)と、第1内輪(図示せず)と、上記第1外輪と上記第1内輪との間に配置された第1転動体(図示せず)とを有する。
【0048】
上記第2転がり軸受9は、入力軸1上の第1V型プーリ3の外側かつ第1可動部21側に固定されている。上記第2転がり軸受9は、第2外輪(図示せず)と、第2内輪(図示せず)と、上記第2外輪と上記第2内輪との間に配置された第2転動体(図示せず)とを有する。
【0049】
上記第3転がり軸受10は、出力軸2上の第2V型プーリ4の外側かつ第2固定部22側に固定されている。上記第3転がり軸受10は、第3外輪(図示せず)と、第3内輪(図示せず)と、上記第3外輪と上記第3内輪との間に配置された第3転動体(図示せず)とを有する。
【0050】
上記第4転がり軸受11は、出力軸2上の第2V型プーリ4の外側かつ第2可動部23側に固定されている。上記第4転がり軸受11は、第4外輪(図示せず)と、第4内輪(図示せず)と、上記第4外輪と上記第4内輪との間に配置された第4転動体(図示せず)とを有する。
【0051】
図1に示すように、この実施形態のV型プーリ無段変速機では、ベルト5を境にして2つに分けられる領域の一方の同じ側に、第1V型プーリ3の第1固定部20と第2V型プーリ4の第2可動部23が配置されている。また、ベルト5を境にして2つに分けられる領域の他方の同じ側に、第1V型プーリ3の第1可動部21と第2V型プーリ4の第2固定部22が配置されている。
【0052】
上記第1転がり軸受8における第1固定部20側と反対側の領域、また、第4転がり軸受11における第2可動部23側と反対側の領域には、図示しないエンジンが配置されている。
【0053】
図2は、上記入力軸1上の第1V型プーリ3、第1転がり軸受8および第2転がり軸受9の配置関係を示す模式図である。
【0054】
図2において、矢印30は、第1V型プーリ3に作用する入力トルクの向きおよび大きさを示し、矢印31は、上記入力トルクが第1転がり軸受と第2転がり軸受に分担支持されると仮定した場合における第1転がり軸受8にかかるトルクの向きおよび大きさを示し、矢印32は、同様に仮定した場合における第2転がり軸受9にかかるトルクの向きおよび大きさを示している。なお、実際にこれらの転がり軸受が支持するのは上記入力トルクに起因するラジアル荷重であり、第1、第2転がり軸受に等分支持される。上記転がり軸受にかかるトルクとは夫々の転がり軸受で支持されるラジアル荷重に夫々の軸受の回転半径をかけた値となる。
【0055】
図2に示すように、第1転がり軸受8と第2転がり軸受9との軸受間距離は、L[m]に設定されている。また、第1V型プーリ3と第1転がり軸受8との距離はn[m]に設定されており、第1V型プーリ3と第2転がり軸受9との距離はm[m]に設定されている。
【0056】
図2に示すように、上記nとmとを適切に設定することにより、第1転がり軸受8にかかるトルクの大きさと、第2転がり軸受9にかかるトルクの大きさを所望の値に設定するようにしている。
【0057】
また、図示はしないが、図2に示された入力軸1と同様に、出力軸2上において、第3転がり軸受10と第4転がり軸受11との軸受間距離は、L[m]に設定されている。また、第2V型プーリ4と第3転がり軸受8との距離はn[m]に設定されており、第2V型プーリ4と第4転がり軸受9との距離はm[m]に設定されている。
【0058】
また、上記第1転がり軸受8は、以下に詳細を示す分担トルク比STRが、0.07以上に設定され、第2転がり軸受9は、分担トルク比STRが、0.08以上に設定され、第3転がり軸受10は、分担トルク比STRが、0.05以上に設定され、第4転がり軸受11は、分担トルク比STRが、0.09以上に設定されている。
【0059】
ここで、動定格荷重をC[kN]、内径をI[m]、分担トルクをS、転動体係数をp、軸受特性係数をaとしたとき、分担トルク比STRを次の(1)式で定義する。
STR=(C×a1/p×I)/(S×L)・・・(1)
【0060】
ただし、ここでは入力軸1に設定される第1および第2転がり軸受8,9についてはL=L、出力軸2に設定される第3および第4転がり軸受10,11についてはL=Lとする。
【0061】
また、上記(1)式において、
上記第1転がり軸受8の分担トルクSをm/L、第2転がり軸受9の分担トルクSをn/L、第3転がり軸受10の分担トルクSをm/L、第4転がり軸受11の上記分担トルクSをn/Lと定義する。
【0062】
また、上記第1乃至第4転がり軸受8,9,10,11において、上記転動体係数pは、転動体が玉の場合3、転動体がころの場合10/3である。
【0063】
また、上記第1乃至第4転がり軸受8,9,10,11において、上記軸受特性係数aを、内輪、外輪および転動体のいずれにも特殊熱処理が施されてない場合を1、外輪および転動体に特殊熱処理が施されていない一方、内輪に特殊熱処理が施されている場合を2、外輪に特殊熱処理が施されていない一方、内輪および転動体に殊熱処理が施されている場合を4、内輪、外輪および転動体に殊熱処理が施されている場合を10と定義する。
【0064】
上記構成において、上記実施形態のV型プーリ無段変速機は、V型溝25,26の幅を調整することによって、上記ベルト5を、第1V型プーリ3および第2V型プーリ4の半径方向に摺動させて、エンジンからの回転動力によって回転している入力軸1の回転速度を変換し、出力軸2の回転速度を適切に調整するようになっている。
【0065】
本発明者は、分担トルク比を換えた様々な種類の多数のV型プーリ無段変速機について、転がり軸受の耐久試験を行った。
【0066】
図3は、この耐久試験に用いた試験装置を示す模式図である。
【0067】
図3に示すように、この試験装置は、駆動モータ50と、負荷吸収ダイナモ55とを備えている。
【0068】
耐久試験は、以下のようにして行われる。
【0069】
先ず、被検査装置であるV型プーリ無段変速機の入力軸を、試験装置の駆動モータ50の回転軸51に連結し、かつ、V型プーリ無段変速機の出力軸を、試験装置の負荷吸収ダイナモ55の回転軸57に連結する。
【0070】
次に、駆動モータ50を所定の回転速度で回転させてV型プーリ無段変速機に所定の入力トルクを付加して、V型プーリ無段変速機の入力軸を回転させ、V型プーリ無段変速機の出力軸から出力される回転動力を負荷吸収ダイナモ55で吸収する。
【0071】
次に、V型プーリ無段変速機を運転している状態で(試験を行っている状態で)、V型プーリ無段変速機に設置されている4つの転がり軸受の夫々について、転がり軸受の焼付の有無と、転がり軸受の異常振動の有無を観察する。
【0072】
そして、4つの転がり軸受の夫々について、V型プーリ無段変速機を始動させた時間(試験を始めた時間)から異常振動が起こった時間までの間を測定し、その測定した時間をその転がり軸受の寿命とする。
【0073】
最後に、当業者間で一般に使用される以下に(2)式で示す計算寿命Lに対する上記測定した実寿命の比を算出して、上記比の値が1以上の転がり軸受を信頼性が高い転がり軸受と判断する一方、上記比の値が1より小さい転がり軸受を信頼性が低い転がり軸受と判断する。
=(C/S×a・・・(2)

【0074】
ここで、Cは動定格加重[kN]であり、Sは上記定義された分担トルクであり、aは上記定義された軸受特性係数であり、pは上記定義された転動体係数である。
【0075】
以下の表1は、入力軸における第1V型プーリの外側かつ第1固定部側(エンジン配置側)に配置された第1転がり軸受の耐久試験結果を示す表である。また、図4は、表1の結果を図示したものである。
【0076】
[表1]

【0077】
表1に示されているように、計算寿命比が1より小さく信頼性に乏しい試料1,7,12の第1転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.063以下になっている一方、計算寿命比が1.5以上と非常に大きく信頼性が非常に高い試料2,3,4,5,6,8,9,10,11,13の第1転がり軸受は、分担トルク比STRの値が全て0.07以上になっている。
【0078】
また、図4に傾向が顕著に示されているように、第1転がり軸受においては、分担トルク比の値が0.07を境にして、計算寿命比の値が急激に変化していることがわかり、具体的には、分担トルク比の値が0.07より小さい第1転がり軸受は、計算寿命比の値が0.2以下と非常に小さいのに対し、分担トルク比の値が0.07以上の第1転がり軸受は、計算寿命比が1.5以上と非常に大きくなっている。
【0079】
このことから、第1転がり軸受の分担トルク比の値を0.07以上に設定すると、第1転がり軸受の寿命を格段に長くできて、信頼性を格段に向上できる。
【0080】
表2は、入力軸における第1V型プーリの外側かつ第1可動部側(反エンジン配置側)に配置された第2転がり軸受の耐久試験結果を示す表である。また、図5は、表2の結果を図示したものである。
【0081】
[表2]


【0082】
表2に示されているように、計算寿命比が1より小さく信頼性に乏しい試料5,10の第2転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.067以下になっている一方、計算寿命比が1.9以上と非常に大きく信頼性が非常に高い試料1,2,3,4,6,7,8,9の第1転がり軸受は、分担トルク比STRの値が全て0.086以上になっている。
【0083】
また、図5に傾向が顕著に示されているように、第2転がり軸受においては、分担トルク比の値が0.08を境にして、計算寿命比の値が急激に変化していることがわかり、具体的には、分担トルク比の値が0.08より小さい第2転がり軸受は、計算寿命比の値が0.2以下と非常に小さいのに対し、分担トルク比の値が0.08以上の第2転がり軸受は、計算寿命比が1.9以上と非常に大きくなっている。
【0084】
このことから、第2転がり軸受の分担トルク比の値を0.08以上に設定すると、第2転がり軸受の寿命を格段に長くできて、信頼性を格段に向上できる。
【0085】
表3は、出力軸における第2V型プーリの外側かつ第2固定部側(反エンジン配置側)に配置された第3転がり軸受の耐久試験結果を示す表である。また、図6は、表3の結果を図示したものである。
【0086】
[表3]


【0087】
表3に示されているように、計算寿命比が1より小さく信頼性に乏しい試料5,10の第3転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.037以下になっている一方、計算寿命比が1.8以上と非常に大きく信頼性が非常に高い試料1,2,3,4,6,7,8,9の第3転がり軸受は、分担トルク比STRの値が全て0.056以上になっている。
【0088】
また、図6に傾向が顕著に示されているように、第3転がり軸受においては、分担トルク比の値が0.05を境にして、計算寿命比の値が急激に変化していることがわかり、具体的には、分担トルク比の値が0.05より小さい第3転がり軸受は、計算寿命比の値が0.2以下と非常に小さいのに対し、分担トルク比の値が0.08以上の第2転がり軸受は、計算寿命比が1.8以上と非常に大きくなっている。
【0089】
このことから、第3転がり軸受の分担トルク比の値を0.05以上に設定すると、第3転がり軸受の寿命を格段に長くできて、信頼性を格段に向上できる。
【0090】
表4は、出力軸における第2V型プーリの外側かつ第2可動部側(エンジン配置側)に配置された第4転がり軸受の耐久試験結果を示す表である。また、図7は、表4の結果を図示したものである。
【0091】
[表4]


【0092】
表4に示されているように、計算寿命比が1より小さく信頼性に乏しい試料6,8の第4転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.08以下になっている一方、計算寿命比が2.0以上と非常に大きく信頼性が非常に高い試料1,2,3,4,5,7,9の第4転がり軸受は、分担トルク比STRの値が全て0.100以上になっている。
【0093】
また、図7に傾向が顕著に示されているように、第4転がり軸受においては、分担トルク比の値が0.09を境にして、計算寿命比の値が急激に変化していることがわかり、具体的には、分担トルク比の値が0.09より小さい第4転がり軸受は、計算寿命比の値が0.2以下と非常に小さいのに対し、分担トルク比の値が0.09以上の第4転がり軸受は、計算寿命比が2.0以上と非常に大きくなっている。
【0094】
このことから、第4転がり軸受の分担トルク比の値を0.09以上に設定すると、第4転がり軸受の寿命を格段に長くできて、信頼性を格段に向上できる。
【0095】
上記実施形態のV型プーリ無段変速機によれば、入力軸1上における第1V型プーリ3の外側かつ第1固定部20側に配置された第1転がり軸受8の分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、入力軸1上における第1V型プーリ3の外側かつ第1可動部21側に配置された第2転がり軸受9の分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、出力軸2上における第2V型プーリ4の外側かつ第2固定部22側に配置された第3転がり軸受10の分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、出力軸2上における第2V型プーリ4の外側かつ第2可動部23側に配置された第4転がり軸受11の分担トルク比STRの値が、0.09以上であるので、第1乃至第4転がり軸受8,9,10,11の焼付およびガタツキを防止できて、第1乃至第4転がり軸受8,9,10,11の寿命を、格段に長くすることができて、第1乃至第4転がり軸受8,9,10,11の信頼性を格段に向上させることができる。したがって、V型プーリ無段変速機の寿命および性能を格段に向上させることができる。
【0096】
また、上記実施形態のV型プーリ無段変速機によれば、入力軸1上における第1V型プーリ3の外側かつエンジン配置側に配置された第1転がり軸受8の分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、入力軸1上における第1V型プーリ3の外側かつ反エンジン配置側に配置された第2転がり軸受9の分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、出力軸2上における第2V型プーリ4の外側かつ反エンジン配置側に配置された第3転がり軸受10の分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、出力軸2上における第2V型プーリ4の外側かつエンジン配置側に配置された第4転がり軸受11の分担トルク比STRの値が、0.09以上であるので、第1乃至第4転がり軸受8,9,10,11の焼付およびガタツキを防止できて、第1乃至第4転がり軸受8,9,10,11の寿命を、格段に長くすることができて、第1乃至第4転がり軸受8,9,10,11の信頼性を格段に向上させることができる。したがって、V型プーリ無段変速機の寿命および性能を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明のV型プーリ無段変速機の一実施形態を示す図である。
【図2】上記実施形態のV型プーリ無段変速機が備える入力軸上の第1V型プーリ、第1転がり軸受および第2転がり軸受の配置関係を示す模式図である。
【図3】第1乃至第4転がり軸受の耐久試験に用いた試験装置を示す模式図である。
【図4】入力軸における第1V型プーリの外側かつ第1固定部側(エンジン配置側)に配置された第1転がり軸受の耐久試験結果を示す図である。
【図5】入力軸における第1V型プーリの外側かつ第1可動部側(反エンジン配置側)に配置された第2転がり軸受の耐久試験結果を示す図である。
【図6】出力軸における第2V型プーリの外側かつ第2固定部側(反エンジン配置側)に配置された第3転がり軸受の耐久試験結果を示す図である。
【図7】出力軸における第2V型プーリの外側かつ第2可動部側(エンジン配置側)に配置された第4転がり軸受の耐久試験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1 入力軸
2 出力軸
3 第1V型プーリ
4 第2V型プーリ
5 ベルト
8 第1転がり軸受
9 第2転がり軸受
10 第3転がり軸受
11 第4転がり軸受
20 第1固定部
21 第1可動部
22 第2固定部
23 第2可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、
上記入力軸と平行に配置された出力軸と、
上記入力軸に固定された第1固定部と、上記入力軸上を軸方向に移動可能な第1可動部とを有し、上記第1固定部と上記第1可動部との間にV型溝が形成されている第1V型プーリと、
上記出力軸に固定された第2固定部と、上記出力軸上を軸方向に移動可能な第2可動部とを有し、上記第2固定部と上記第2可動部との間にV型溝が形成されている第2V型プーリと、
上記第1V型プーリの外側かつ上記第1固定部側に配置されて上記入力軸を支持すると共に、第1内輪と第1外輪と第1転動体とを有する第1転がり軸受と、
上記第1V型プーリの外側かつ上記第1可動部側に配置されて上記入力軸を支持すると共に、第2内輪と第2外輪と第2転動体とを有する第2転がり軸受と、
上記第2V型プーリの外側かつ上記第2固定部側に配置されて上記出力軸を支持すると共に、第3内輪と第3外輪と第3転動体とを有する第3転がり軸受と、
上記第2V型プーリの外側かつ上記第2可動部側に配置されて上記出力軸を支持すると共に、第4内輪と第4外輪と第4転動体とを有する第4転がり軸受と、
上記第1V型プーリのV型溝と上記第2V型プーリのV型溝に掛け渡されて上記第1V型プーリと上記第2V型プーリとの間でトルクを伝達すると共に、上記第1V型プーリおよび上記第2V型プーリの半径方向に摺動可能な可撓性の無端伝達部材と
を備え、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において動定格荷重をC[kN]、上記第1乃至第4の転がり軸受の夫々において内径をI[m]、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において分担トルクをS、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において転動体係数をp、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において軸受特性係数をa、上記第1転がり軸受と上記第2転がり軸受との軸受間距離をL[m]、上記第3転がり軸受と上記第4転がり軸受との軸受間距離をL[m]とし、
さらに、上記第1V型プーリの中心から上記第1転がり軸受の中心までの距離をn[m]、上記第1V型プーリの中心から上記第2転がり軸受の中心までの距離をm[m]、上記第2V型プーリの中心から上記第3転がり軸受の中心までの距離をn[m]、上記第2V型プーリの中心から上記第4転がり軸受の中心までの距離をm[m]としたとき、上記第1転がり軸受の上記分担トルクSをm/L、上記第2転がり軸受の上記分担トルクSをn/L、上記第3転がり軸受の上記分担トルクSをm/L、上記第4転がり軸受の上記分担トルクSをn/Lとし、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々の上記転動体係数pを、転動体が玉の場合を3、転動体がころの場合を10/3とし、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々の上記軸受特性係数aを、内輪、外輪および転動体のいずれにも特殊熱処理が施されてない場合を1、外輪および転動体に特殊熱処理が施されていない一方、内輪に特殊熱処理が施されている場合を2、外輪に特殊熱処理が施されていない一方、内輪および転動体に殊熱処理が施されている場合を4、内輪、外輪および転動体に殊熱処理が施されている場合を10とし、
分担トルク比STRを、
STR=(C×a1/p×I)/(S×L)としたとき、
ただし、ここでは入力軸についてはL=L、出力軸についてはL=Lとして、
上記第1転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、
上記第2転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、
上記第3転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、
上記第4転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.09以上であることを特徴とするV型プーリ無段変速機。
【請求項2】
入力軸と、
上記入力軸と略平行に配置された出力軸と、
上記入力軸に固定された第1固定部と、上記入力軸上を軸方向に移動可能な第1可動部とを有し、上記第1固定部と上記第1可動部との間にV型溝が形成されている第1V型プーリと、
上記出力軸に固定された第2固定部と、上記出力軸上を軸方向に移動可能な第2可動部とを有し、上記第2固定部と上記第2可動部との間にV型溝が形成されている第2V型プーリと、
上記第1V型プーリの外側かつ回転動力源配置側に配置されて上記入力軸を支持すると共に、第1内輪と第1外輪と第1転動体とを有する第1転がり軸受と、
上記第1V型プーリの外側かつ上記回転動力源配置側と反対側に配置されて上記入力軸を支持すると共に、第2内輪と第2外輪と第2転動体とを有する第2転がり軸受と、
上記第2V型プーリの外側かつ上記回転動力源配置側と反対側に配置されて上記出力軸を支持すると共に、第3内輪と第3外輪と第3転動体とを有する第3転がり軸受と、
上記第2V型プーリの外側かつ上記回転動力源配置側に配置されて上記出力軸を支持すると共に、第4内輪と第4外輪と第4転動体とを有する第4転がり軸受と、
上記第1V型プーリのV型溝と上記第2V型プーリのV型溝に掛け渡されて上記第1V型プーリと上記第2V型プーリとの間でトルクを伝達すると共に、上記第1V型プーリおよび上記第2V型プーリの半径方向に摺動可能な可撓性の無端伝達部材と
を備え、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において動定格荷重をC[kN]、上記第1乃至第4の転がり軸受の夫々において内径をI[m]、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において分担トルクをS、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において転動体係数をp、上記第1乃至第4転がり軸受の夫々において軸受特性係数をa、上記第1転がり軸受と上記第2転がり軸受との軸受間距離をL[m]、上記第3転がり軸受と上記第4転がり軸受との軸受間距離をL[m]とし、
さらに、上記第1V型プーリの中心から上記第1転がり軸受の中心までの距離をn[m]、上記第1V型プーリの中心から上記第2転がり軸受の中心までの距離をm[m]、上記第2V型プーリの中心から上記第3転がり軸受の中心までの距離をn[m]、上記第2V型プーリの中心から上記第4転がり軸受の中心までの距離をm[m]としたとき、上記第1転がり軸受の上記分担トルクSをm/L、上記第2転がり軸受の上記分担トルクSをn/L、上記第3転がり軸受の上記分担トルクSをm/L、上記第4転がり軸受の上記分担トルクSをn/Lとし、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々の上記転動体係数pを、転動体が玉の場合を3、転動体がころの場合を10/3とし、
上記第1乃至第4転がり軸受の夫々の上記軸受特性係数aを、内輪、外輪および転動体のいずれにも特殊熱処理が施されてない場合を1、外輪および転動体に特殊熱処理が施されていない一方、内輪に特殊熱処理が施されている場合を2、外輪に特殊熱処理が施されていない一方、内輪および転動体に殊熱処理が施されている場合を4、内輪、外輪および転動体に殊熱処理が施されている場合を10とし、
分担トルク比STRを、
STR=(C×a1/p×I)/(S×L)としたとき、
ただし、ここでは入力軸についてはL=L、出力軸についてはL=Lとして、
上記第1転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.07以上であり、
上記第2転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.08以上であり、
上記第3転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.05以上であり、
上記第4転がり軸受は、分担トルク比STRの値が、0.09以上であることを特徴とするV型プーリ無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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