説明

VII因子ポリペプチド製剤を安定化する化合物

本発明は、式Iの新規化合物に関する:
【化9】


また、VIIa因子または他のVII因子ポリペプチド(特にその水性液体組成物)の安定化における、それらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、VIIa因子または他のVII因子ポリペプチド(下記参照)の(特にその水性の液体組成物の)安定化の分野に関する。
【0002】
[発明の背景]
血液凝固プロセスに関与する様々な物質(「因子」)が同定されており、これには血漿糖タンパク質であるVII因子(FVII)が含まれる。FVIIは主に単鎖酵素前駆体として血漿中に存在し、これが別のviz因子、Xa因子(FXa)によって切断されて、その2本鎖の活性型のVIIa因子(FVIIa)と称されるものが生じる。凝固は、総FVIIタンパク質の質量(mass)の約1%に相当する量で循環中に存在するFVIIaと、血管壁に対する傷害後に循環血液に暴露される組織因子(TF)との間の複合体の形成によって開始される。組換え活性型VIIa因子(rFVIIa)は、止血性(pro-haemostatic)の薬剤として開発されている。
【0003】
保存(storage)およびデリバリーの双方に適切なVIIa因子の投与形態を有することが望ましい。理想的には、薬物製品(drug product)は、液体として、貯蔵(stored)され、投与される。或いは、薬物製品は、凍結乾燥(即ち、フリーズドライ)され、次に患者に使用する前に適切な希釈剤を添加することによって再構成される。理想的には、薬物製品は、長期保存(例えば、6ヶ月以上)を可能とするために十分な安定性を有している。
【0004】
最終的な薬物製品を液体として維持するか又はフリーズドライするかの決定は、通常はそれらの形態におけるタンパク質薬物の安定性に基づきなされる。タンパク質の安定性は、とりわけ、イオン強度、pH、温度、凍結/解凍の反復サイクル、および剪断力への暴露などの因子によって影響され得る。活性タンパク質は、変性および/または凝集を経るなどの物理的な不安定性(可溶性および不溶性の凝集形成の両方)、同様に、化学的な不安定性(例えば、ほんの二、三例をあげるだけでも加水分解、脱アミド、および/または酸化が含まれる)の結果として損失されうる。そのうえ、VIIa因子(セリンプロテアーゼである)の場合において、自己消化による断片化が生じえる(酵素的デグラデーション)。タンパク質薬剤の安定性の一般的な論説に関しては、例えば、文献〔Manning, et al., Pharmaceutical Research 6:903-918 (1989)〕を参照されたい。
【0005】
タンパク質の不安定性が出現する可能性は広く認識されているが、特定のタンパク質に関して特定の不安定性の問題を予測することは一般的に非常に困難である。これらの不安定性の何れも、タンパク質の副産物または派生物(derivative)の形成を生じえる(これらは減少した活性、増加した毒性、および/または増加した免疫原性を有している)。
【0006】
以上のように、タンパク質の任意の組成物の安全性および有効性は、その安定性に直接的に関連する。液体形態で安定性を維持することは、一般的に凍結乾燥形態で維持することとは異なる課題である;というのも、分子運動(molecular motion)の可能性が大きく増大し、分子相互作用の可能性が増大するからである。また、濃縮された形態で安定性を維持することも、異なる課題である;というのも、増加したタンパク質濃度で凝集形成する性向(propensity)があるためである。VIIa因子は、幾つかの経路によるデグラデーション(degradation)を、特に凝集(二量体化/オリゴマー化)、酸化、および自己切断(ペプチドバックボーンのクリッピングまたは「重鎖デグラデーション」)をうける。さらにまた、沈殿が発生し得る。
【0007】
これらのプロセスの多くは、タンパク質から水を除去することにより有意に遅延させることができる。しかしながら、VIIa因子に関する水性組成物の開発は、再構成のエラーを排除する利点を有しており、これによって投薬(dosing)の正確性が増大し、同様に製品の臨床上の使用が単純化され、患者のコンプライアンスが増大する。理想的には、VIIa因子の組成物は、広い範囲のタンパク質濃度で、6ヶ月以上安定であるべきである。これによって、投与方法の融通性(flexibility)が認容される。一般に、より高度に濃縮化された形態によって、患者の観点から高度に望まれる低容量の投与が認容される。液体組成物は、投与および使用の簡便性に関して、フリーズドライ製品に対して多くの利点を有するだろう。
【0008】
今日、唯一の市販されている、組換え技術により生産されたFVIIポリペプチド組成物は、フリーズドライされたFVIIa因子製品(これは、使用前に再構成される)であり;この製品は、比較的低いVIIa因子濃度(例えば、約0.6mg/ml)を含有する。バイアル(1.2mg)のNovoSeven(登録商標)(Novo Nordisk A/S, デンマーク)は、1.2mgの組換え型のヒトVIIa因子(rhFVIIA)、5.84mgのNaCl、2.94mgのCaCl2.2H2O、2.64mgのグリシルグリシン(GlyGly)、0.14mgのポリソルベート80、および60.0mgのマンニトールを含有し;2.0mLの注射用水(WFI)を添加することによってpH5.5に再構成される。再構成された場合、前記タンパク質溶液は、使用に関して、室温で24時間安定である。以上のように、使用できる状態の液体の又は濃縮されたVII因子製品は、現時点で市販されていない。
【0009】
従って、FVIIポリペプチドの液体(特に水性液体)または固形の投与形態におけるデグラデーションを阻害する薬剤の開発が非常に望まれる。化学的および/または物理的なデグラデーションプロセス(例えば、上記で概説したもの)の認容される制御を提供するVII因子ポリペプチドの水性で液体の薬学的組成物を提供できることが非常に望まれる。
【0010】
[発明の概要]
本発明は、以下に記載の式Iの化合物を提供する:
【化3】

式中のR1, R2, R3, R4, R5, R7, A, V, W, m およびnは、以下で示す意味を有する。
【0011】
式Iの化合物は、血液凝固酵素VIIa因子(FVIIa)を可逆的に阻害する能力があり、製剤または組成物(特に、FVIIaまたは別のVII因子ポリペプチドを含んでいる水性の製剤または組成物)における安定化因子として機能しえる(下記参照)。この組み合わせにおいて、本発明の化合物は、水または他の水性の媒体中で頻繁に有利な溶解性を呈する。
【0012】
さらに、本発明は、とりわけ以下の発明に関する:
(i)式Iの化合物を調製するための方法(下記参照);
(ii)特に液体で水性の薬学的組成物であって、VII因子ポリペプチド(例えば、野生型のヒトFVIIa, 例えば、rhFVIIa, 又はそのバリアントもしくは誘導体)および式Iの化合物を含んでいる薬学的組成物;および
(iii)該当するVII因子ポリペプチド(例えば、野生型のヒトFVIIa, 例えば、rhFVIIa, 又はそのバリアントもしくは誘導体)の症状または障害の治療における係る薬学的組成物の使用。
【0013】
[発明の詳細な記述]
ある程度すでに説明したとおり、本発明の1つの側面は、以下で規定される式Iの化合物に関する:
【化4】

式中で
mは、0, 1または2であり;
nは、0または1であり;
Aは、ハロゲンまたはヒドロキシであり;
Vは、NR6または酸素であり;
Wは、イオウまたは酸素であり;
R1は水素, ヒドロキシ, (C1-C12)-アルコキシカルボニル-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルコキシカルボニル-, および(C6-C14)-アリールオキシカルボニル-から選択され、前記アリール基の各々は非置換型であるか又は(C1-C12)-アルキル, ハロゲン, および(C1-C12)-アルコキシから選択される少なくとも1つの同一の又は異なる置換基によって置換され;
R2は水素, (C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, R20-(C1-C12)-アルキル-, R20-(C6-C14)-アリール-, および R20-(C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-から選択され、前記R20はヒドロキシカルボニル-, アミノカルボニル-, (C1-C12)-アルコキシカルボニル-, および(C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルコキシカルボニル-から選択され;
R3は水素, シアノ, ヒドロキシ, および(C1-C12)-アルキルから選択され;
R4は(C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, Het, およびHet-(C1-C4)-アルキル-から選択され、前記のアルキル, アリールおよびHet基は非置換型であるか又は少なくとも1つの同一の又は異なる置換基R10によって置換され;
R5は水素, (C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, Het, Het-(C1-C4)-アルキル-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-アミノカルボニル-, およびHet-(C1-C4)-アルキル-アミノカルボニル-から選択され、前記のアルキル, アリールおよびHet基は非置換型であるか又は少なくとも1つの同一の又は異なる置換基R10によって置換され;
R6およびR7は独立に水素および(C1-C8)-アルキルから選択され;
R10は(C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, (C1-C8)-アルコキシ, (C1-C4)-アルコキシ-( C2-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリールオキシ-, Het- オキシ-, Het-(C1-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリール, Het, Het-(C1-C4)-アルキル-, トリフルオロメトキシ, トリフルオロメチル, ハロゲン, オキソ, ヒドロキシ, アミノ, (C1-C12)-アルキルカルボニルアミノ-, アミノカルボニルアミノ-, (C6-C14)-アリールカルボニルアミノ-, Het-カルボニルアミノ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, Het-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, (C1-C8)-アルキルカルボニル-, (C6-C14)-アリールカルボニル-, (C1-C8)-アルキルアミノカルボニル-, (C6-C14)-アリールアミノカルボニル-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルアミノカルボニル-, Het-アミノカルボニル-, Het-(C1-C4)-アルキルアミノカルボニルアミノカルボニル-, (C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, シアノ, ニトロ, アミジノ, アセトイミノ, トリ-((C1-C4)-アルキル)アンモニオ-, (C1-C8)-アルキルアミノ-, ジ-((C1-C8)-アルキル)アミノ-, ヒドロキシカルボニルメトキシ-, (C1-C8)-アルキルスルホニル-, (C6-C14)-アリールスルホニル-, (C1-C8)-アルキルアミノスルホニル-, (C6-C14)-アリールアミノスルホニル-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルアミノスルホニル-, Het-アミノスルホニル-, Het-(C1-C4)-アルキルアミノスルホニル-, (C1-C8)-アルキルスルホニルアミノ-, (C6-C14)-アリールスルホニルアミノ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルスルホニルアミノ-, Het-スルホニルアミノ-, およびHet-(C1-C4)-アルキルスルホニルアミノ-から選択され、R10を表している(C1-C12)-アルキルカルボニルアミノ-は非置換型であるか又は前記アルキル基がアミノ, ヒドロキシおよび(C1-C4)-アルコキシから選択される置換基によって置換され;R10を表している(C1-C12)-アルキルおよび(C1-C8)-アルコキシは非置換型であるか又は(C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, およびアミノカルボニル-から選択される少なくとも1つの同一の又は異なる置換基によって置換され;
ここで、R10基における各々のアリール基およびHet基は非置換型であるか又はハロゲン, ニトロ, オキソ, ヒドロキシ, (C1-C8)-アルキル, (C1-C8)-アルコキシ, (C1-C4)-アルコキシ-(C2-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリールオキシ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルコキシ-, Het-オキシ-, Het-(C1-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリール, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, Het, Het-(C1-C4)-アルキル-, トリフルオロメチル, シアノ, トリフルオロメトキシ, (C1-C8)-アルキルスルホニル-, (C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, アミノカルボニル-, アミノ, (C1-C8)-アルキルアミノ-, ジ-((C1-C8)-アルキル)アミノ-, (C1-C8)-アルキルカルボニルアミノ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, (C6-C14)-アリールカルボニルアミノ-, Het-カルボニルアミノ-, Het-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, および(C1-C8)-アルキルカルボニル-から選択される少なくとも1つの同一の又は異なる置換基によって置換され、R10基中のアリール基またはHet基における置換基を表している(C1-C8)-アルキルおよび(C1-C8)-アルコキシは非置換型であるか又は(C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, およびアミノカルボニル-から選択される少なくとも1つの同一の又は異なる置換基によって置換され;
Hetは、飽和または不飽和の単環または二環の, 窒素, 酸素およびイオウから選択される1、2または3つの同一の又は異なる環状のヘテロ原子を含有している3員環から10員環の複素環系であり;
その任意の及び全ての立体異性の形態;
及び、2以上の式Iの係る化合物を任意の比率で含む任意の混合物;
及び、その生理的に容認される塩;
を含む、
但し、前記フェニル環におけるアミジノ基[即ち、-C(NHR1)=NH基]が前記フェニル環に結合されるNH部分[即ち、-NH-C(=W)-V-….部分中のNH部分]に対しパラで(即ち、4-ポジションに)あるとき、少なくとも1つの次の条件、即ち:Vが酸素であり, R7が(C1-C8)-アルキルである条件が適用され;
但し、更に、VがNR6で、R7が水素で、R10がアルキル基に結合するとき、その基は、(C1-C8)-アルコキシカルボニル-; ヒドロキシカルボニル-; アミノカルボニル-; (C1-C8)-アルキルアミノカルボニル-; (C1-C8)-アルキルアミノスルホニル-; または(C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, およびアミノカルボニル-から選択される1以上の同一の又は異なる置換基によって置換された(C1-C8)-アルキルのうちの1つではない。
【0014】
式Iの化合物に何回か生じえる全ての官能基、置換基、残基など(例えば、A、R10またはHet)は、各々が互いに独立して指摘された意味(meanings)を有してもよく、各場合において同一であっても異なっていてもよい。
【0015】
本明細書中に使用されるアルキルの用語は、最大限の広い意味で次のとおりの炭化水素残基を意味すると理解される;即ち、その炭化水素残基は、直鎖状(即ち、直線状の鎖)または分枝状であってもよく、非環状または環状の官能基であってもよく又は非環状および環状のサブユニットの任意の組み合わせを含みえるものである。さらに、本明細書中に使用されるアルキルの用語は、明示的に飽和の官能基と同様に不飽和の官能基を含み、後者の官能基は1以上(例えば、1、2、または3つの)の二重結合および/または三重結合を含有する(但し、二重結合は、芳香族系が生じるような様式で環状のアルキル基内に位置しない)。これらの記載の全ては次の場合にも適用される。つまり、アルキル基が、別の官能基における置換基として生じるか又はアルコキシ基(アルキル-O-), アルコキシカルボニル基またはアリールアルキル基などに置換される場合である。1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, または12の炭素原子を含有しているアルキル基の限定されることのない例は、メチル, エチル, プロピル, ブチル, ペンチル, ヘキシル, ヘプチル, オクチル, ノニル, デシル, ウンデシル, ドデシル, 全てのこれらの官能基のn-異性体, イソプロピル, イソブチル, 1-メチルブチル, イソペンチル, ネオペンチル, 2,2-ジメチルブチル, 2-メチルペンチル, 3-メチルペンチル, イソヘキシル, sec-ブチル, tert-ブチル, tert-ペンチル, 2,3,4-トリメチルヘキシル, およびイソデシルである。
【0016】
不飽和のアルキル基は、例えば、アルケニル基、例えば、ビニル, 1-プロペニル, 2-プロペニル(=アリル), 2-ブテニル, 3-ブテニル, 2-メチル-2-ブテニル, 3-メチル-2-ブテニル, 5-ヘキセニル, または1,3-ペンタジェニル, またはアルキニル基、例えば、エチニル, 1-プロピニル, 2-プロピニル(=プロパルギル), または2-ブチニルである。アルキル基は、それらが置換される場合に不飽和であってもよい。
【0017】
環状のアルキル基の限定されることのない例は、シクロプロピル, シクロブチル, シクロペンチル, シクロヘキシル, シクロヘプチル, またはシクロオクチルなどの3, 4, 5, 6, 7, または8環の炭素原子を含有しているシクロアルキル基であり、これらは置換されてもよい及び/又は不飽和であってもよい。不飽和の環状アルキル基および不飽和のシクロアルキル基(例えば、シクロペンテニルまたはシクロヘキセニル)は、任意の炭素原子を介して結合されてもよい。本明細書中に使用されるアルキルの用語は、シクロアルキル置換型のアルキル基、例えば、シクロプロピルメチル-, シクロブチルメチル-, シクロペンチルメチル-, シクロヘキシルメチル-, シクロヘプチルメチル-, 1-シクロプロピルエチル-, 1-シクロブチルエチル-, 1-シクロペンチルエチル-, 1-シクロヘキシルエチル-, 2-シクロプロピルエチル-, 2-シクロブチルエチル-, 2-シクロペンチルエチル-, 2-シクロヘキシルエチル-, 3-シクロプロピルプロピル-, 3-シクロブチルプロピル-, 3-シクロペンチルプロピル-, およびシクロアルキル亜族および非環状の亜族(subgroup)が不飽和型である及び/又は置換された他のものを含んでもよい。
【0018】
もちろん、環状のアルキル基は少なくとも3つの炭素原子を含有し、不飽和のアルキル基は少なくとも2つの炭素原子を含有しなければならない。従って、(C1-C8)-アルキルなどの官能基は、とりわけ、飽和で非環状の(C1-C8)-アルキル, (C3-C8)-シクロアルキル, (C3-C7)-シクロアルキル-(C1-C3)-アルキル-などのシクロアルキル-アルキル基(ここで炭素原子の全体数は、4から8の範囲でありえる)、および(C2-C8)-アルケニルまたは(C2-C8)-アルキニルなどの不飽和の(C2-C8)-アルキルを含んでいることを理解すべきである。同様に、(C1-C4)-アルキルなどの官能基は、とりわけ、飽和で非環状の(C1-C4)-アルキル, (C3-C4)-シクロアルキル, シクロプロピル-メチル-および(C2-C4)-アルケニルまたは(C2-C4)-アルキニルなどの不飽和の(C2-C4)-アルキルを含んでいることを理解すべきである。
【0019】
他に記載がなければ、本発明の一態様において、アルキルの用語は、1〜6つの炭素原子を有し、直鎖状または分枝状であってもよい非環状で飽和の炭化水素残基を含む。飽和で非環状のアルキル基の特定の基は、(C1-C4)-アルキル基、例えば、メチル, エチル, n-プロピル, イソプロピル, n-ブチル, イソブチル, sec-ブチルまたはtert-ブチルによって形成される。
【0020】
アルキル基に関連する上記の記載は、一価の残基のみに適用されるのではなく、アルカンジイル基, アルキレン基またはポリメチレン基などの二価の残基および多価の残基にも対応し、その幾つかの例はメチレン, 1,2-エチレン(=エタン-1,2-ジイル), 1,1-エチレン(=1-メチル-メチレン), 1-イソブチル-メチレン, 1,3-プロピレン, 2,2-ジメチル-1,3-プロピレン, 1,4-ブチレン, ブタ-2-エン-1,4-ジイル, 1,2-シクロプロピレン, 1,2-シクロヘキシレン, 1,3-シクロヘキシレン, および1,4-シクロヘキシレンである。
【0021】
(C1-C4)-アルコキシ-(C2-C4)-アルコキシ基の例は、2-メトキシエトキシ-, 2-エトキシエトキシ-, 2-イソプロポキシエトキシ-, 3-メトキシプロポキシ-, および4-エトキシブトキシ-である。
【0022】
アリールの用語は、少なくとも1つの環状炭素が存在し、共役型のpi電子系(conjugated pi electron system)を有する単環の又は多環の炭化水素残基を意味する(即ち、それは芳香環である)、その残基は共役型のpi電子系を有する環に含有された炭素原子を介して付着する。(C6-C14)-アリール基において、6〜14の環の炭素原子が存在する。(C6-C14)-アリール基の例は、フェニル, ナフチル, ビフェニリル, フルオレニル, アントラセニル, インデニル, インダニル, 1,2,3,4-テトラヒドロナフチルまたは2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾシクロヘプテニルである。(C6-C10)-アリール基の例は、フェニル, ナフチル, インデニル, インダニルまたは1,2,3,4-テトラヒドロナフチルである。他に記載がなければ、式Iの化合物の定義で指摘したアリール基に結合された任意の特定の置換基と無関係に、フェニル, ナフチルまたはフルオレニルなどのアリール基は、一般的に非置換型であるか又は1以上(例えば、1、2、3、または4)の同一の又は異なる置換基によって(例えば、以下にリストされる置換基によって)置換されてもよい。
【0023】
アリール基は、芳香環における任意の所望の位置を介して結合されえる。置換されたアリール基において、置換基は任意の所望の位置に局在してもよい。一置換のフェニル基において、前記置換基は、2位、3位または4位(例えば、3位または4位中に)に局在してもよい。フェニル基が2つの置換基を保持する場合、それらは2,3位, 2,4位, 2,5位, 2,6位, 3,4位または3,5位に局在してもよい。3つの置換基を保持しているフェニル基において、前記置換基は2,3,4位, 2,3,5位, 2,3,6位, 2,4,5位, 2,4,6位, または3,4,5位に局在してもよい。ナフチル基は、1-ナフチル(=ナフタレン-1−イル)および2-ナフチル(=ナフタレン-2−イル)であってもよい。置換されたナフチル基において、前記置換基は任意の位置に局在してもよく、例えば、一置換の1-ナフチル基において2-, 3-, 4-, 5-, 6-, 7-, または8位に、一置換の2-ナフチル基において1-, 3-, 4-, 5-, 6-, 7-, または8-位に局在してもよい。芳香環中の炭素原子を介して結合し、アリールの用語によって構成される場合、1,2,3,4-テトラヒドロナフチルは、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-5−イルまたは1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-6−イルであってもよい。ビフェニルイル基は、ビフェニル-2−イル, ビフェニル-3−イルまたはビフェニル-4−イルであってもよい。アリールの用語によって構成される場合、フルオレニル基は、1-, 2-, 3-, または4-位を介して、或いは1-, 2-, 3-, 4- または9-位を介して結合してもよい。本発明の一態様において、9-位を介して結合された一置換のフルオレニル基において、前記置換基は1-, 2-, 3- または4-位に存在してもよい。
【0024】
アリール基に関連する上記の記載は、アリール基に由来する二価および多価の官能基に対応して適用され、例えば、フェニレン(非置換型または置換型の1,2-フェニレン, 1,3-フェニレンまたは1,4-フェニレンであってもよい)、またはナフチレン(非置換型または置換型の1,2-ナフタレンジイル, 1,3-ナフタレンジイル, 1,4-ナフタレンジイル, 1,5-ナフタレンジイル, 1,6-ナフタレンジイル, 1,7-ナフタレンジイル, 1,8-ナフタレンジイル, 2,3-ナフタレンジイル, 2,6-ナフタレンジイル, または2,7-ナフタレンジイルであってもよい)などのアリーレン基に適用される。上記の記載は、アリールアルキル基におけるアリール亜族にも対応して適用される。アリールアルキル基(非置換型であってもよく又はアリール亜族において同様にアルキル亜族において置換されていてもよい)の例は、ベンジル, 1-フェニルエチル, 2-フェニルエチル, 1-フェニルプロピル, 2-フェニルプロピル, 3-フェニルプロピル, 1-フェニルブチル, 4-フェニルブチル, 1 -メチル-3-フェニル-プロピル, 1-ナフチルメチル, 2-ナフチルメチル, 1-(1 -ナフチル)エチル, 1-(2-ナフチル)エチル, 2-(1-ナフチル)エチル, 2-(2-ナフチル)エチル, および9-フルオレニルメチルである。全ての上記の記載は、R4およびR5基とこれらの基が結合した炭素原子とによって形成される環へと縮合(又は融合)される芳香族環にも適用される。
【0025】
Het基は、親の単環または二環の複素環系において3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, または10の環原子(ring atoms)を含有している官能基を含む。単環のHet基において、複素環は3員, 4員, 5員, 6員または7員環(例えば、5員または6員環)を含んでもよい。二環のHet基において、2つの融合した環が存在してもよく、そのうちの1つは5員環または6員の複素環であり、そのうちの他のものは5員または6員の複素環または環状炭素(carbocyclic ring)である。例えば、二環の環状Hetは、8, 9または10の環原子(例えば、9または10の環原子)を含んでもよい。
【0026】
Hetは、環内に二重結合を含まない飽和の複素環を含み、同様に、1以上(例えば、1、2、3、4、または5つ)の二重結合を環内に含むモノ不飽和およびポリ不飽和の複素環系を含んでいる不飽和複素環系を含む(但し、生じた系は安定である)。不飽和環は部分的に不飽和または非芳香族であってもよい。或いは、不飽和環が芳香族であり、共役型のpi電子系が生じる様式で配置された二重結合を含んでもよい。Het基中の芳香族環は、5-員または6-員環であってもよい。例えば、Het基中の芳香族基は、5〜10の環原子を含有する。Het基中の芳香族基は、5-員および6-員の単環の複素環および2つの5-員環、1つの5-員環および1つの6-員環、または2つの6-員環から構成される二環の複素環を含む。Het基中の二環の芳香族基において、1つ又は両方の環は、ヘテロ原子を含みえる。また、芳香族のHet基は、Hetに関連する上記および下記の全ての定義および説明が対応して適用される慣例的なヘテロアリールの用語によって参照されえる。これらのHet基を表している複素環系(heterocyclic ring systems)における飽和/不飽和に関連する説明は、式Iの化合物中に存在しえる任意の他の複素環系に対応して適用され、例えば、R4およびR5とこれらの基が結合される炭素原子とで共に形成される環に及びこの環に縮合しえる環系に対応して適用される。
【0027】
Het基および任意の他の複素環基において、例えば、1または2つの同一の又は窒素、酸素およびイオウ原子から選択される異なる環のヘテロ原子が存在してもよい。一般的に、環状のヘテロ原子は、任意の所望の組み合わせで及び任意の互いに所望の位置で存在してもよい(但し、生じる複素環系は、当該技術分野において既知であり、原薬中で亜族として安定で適切である)。Het基 任意の他の複素環基が由来しえる複素環の親構造の例は、アジリジン, オキシラン, アゼチジン, ピロール, フラン, チオフェン, ジオキソール, イミダゾール, ピラゾール, オキサゾール, イソキサゾール, チアゾール, イソチアゾール, 1,2,3-トリアゾール, 1,2,4-トリアゾール, ピリジン, ピラン, チオピラン, ピリダジン, ピリミジン, ピラジン, 1,4-ダイオキシン, 1,2-オキサジン, 1,3-オキサジン, 1,4-オキサジン, 1,2-チアジン, 1,3-チアジン, 1,4-チアジン, 1,2,3-トリアジン, 1,2,4-トリアジン, 1,3,5-トリアジン, アゼピン, 1,2-ジアゼピン, 1,3-ジアゼピン, 1,4-ジアゼピン, インドール, イソインドール, ベンゾフラン, ベンゾチオフェン, 1,3-ベンゾジオキソール, ベンゾ[1,4]ダイオキシン, 4H-ベンゾ[1,4]オキサジン, インダゾール, ベンズイミダゾール, ベンゾキサゾール, ベンゾチアゾール, キノリン, イソキノリン, クロマン, イソクロマン, シンノリン, キナゾリン, キノキサリン, フタラジン, ピリドイミダゾール(pyridoimidazoles), ピリドピリジン(pyridopyridines), およびピリドピリミジン(pyridopyrimidines), 並びにリストされた複素環からのベンゾ融合, シクロペンタ融合, シクロヘキサ融合またはシクロヘプタ融合された誘導体などの環状炭素の融合(または凝縮)によって生じる他の環系である。
【0028】
多くの以前にリストされた複素環の名称が不飽和または芳香族の環系の化学名であるとの事実によって、Het基および他の複素環がそれぞれの不飽和の環系からのみ由来するだろうことは暗示(imply)されない。本明細書において前記名称は、環のサイズおよびヘテロ原子の数およびその相対的な位置に関して環系を記述することにのみに貢献する。上記で説明したとおり、例えば、Het基は、飽和または部分的に不飽和または芳香族であってもよく、前にリストされた複素環自身から由来しえるのみならず、妥当な場合には全てのそれらの部分的に又は完全に水素化されたアナログから同様に高度に不飽和のアナログからも由来しえる。Het基および任意の他の複素環基が由来しえる、前にリストされた複素環の完全に又は部分的に水素化されたアナログの例として、次のものを言及しえる、即ち:ピロリン, ピロリジン, テトラヒドロフラン, テトラヒドロチオフェン, ジヒドロピリジン, テトラヒドロピリジン, ピペリジン, 1,3-ジオキソラン, 2-イミダゾリン, イミダゾリジン, 4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾール, 1,3-オキサゾリジン, 4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾール, 1,3-チアゾリジン, ペルヒドロ-1,4-ダイオキシン (= 1,4-ジオキサン), ピペラジン, ペルヒドロ-1,4-オキサジン (= モルフォリン), 2,3-ジヒドロベンゾ[1,4]ダイオキシン (= 1,4-ベンゾジオキサン), 3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン, ペルヒドロ-1,4-チアジン (= チオモルホリン), ペルヒドロアゼピン, インドリン, イソインドリン, 1,2,3,4-テトラヒドロキノリン, および 1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリンなどである。
【0029】
他に指摘しない限り、Het基および任意の他の複素環基は、任意の環状の炭素原子を介して結合されてもよい;また、窒素の複素環の場合において、妥当な場合には任意の適切な環状の窒素原子を介して結合されてもよい。従って、例えば、ピロリル基はピロール-1−イル, ピロール-2−イルまたはピロール-3−イルであってもよく、ピロリジニル基はピロリジン-1−イル(=ピロリジノ), ピロリジン-2−イルまたはピロリジン-3−イルであってもよく、ピリジニル基はピリジン-2−イル, ピリジン-3−イルまたはピリジン-4−イルであってもよく、ピペリジニル基はピペリジン-1−イル(=ピペリジノ), ピペリジン-2−イル, ピペリジン-3−イルまたはピペリジン-3−イルであってもよい。フリルはフラン-2−イルまたはfur-3−イルであってもよく、チエニルはチオフェン-2−イルまたはチオフェン-3−イルであってもよく、イミダゾリルはイミダゾール-1−イル, イミダゾール-2−イル, イミダゾール-4−イル, またはイミダゾール-5−イルであってもよく、1,3-オキサゾリルは1,3-オキサゾール-2−イル, 1,3-オキサゾール-4−イルまたは1,3-オキサゾール-5−イルであってもよく、1,3-チアゾリルは1,3-チアゾール-2−イル, 1,3-チアゾール-4−イル, または1,3-チアゾール-5−イルであってもよく、ピリミジニルはピリミジン-2−イル, ピリミジン-4−イル(=ピリミジン-6−イル)またはピリミジン-5−イルであってもよく、ピペラジニルはピペラジン-1−イル(=ピペラジン-4−イル=ピペラジノ)またはピペラジン-2−イルであってもよい。インドリルはインドール-1−イル, インドール-2−イル, インドール-3−イル, インドール-4−イル, インドール-5−イル, インドール-6−イル, またはインドール-7−イルであってもよい。同様に、ベンゾイミダゾリル, ベンゾオキサゾリルおよびベンゾチアゾリル基は、2位を介して及び4, 5, 6, および7位のうちの任意を介して結合されてもよい;また、ベンゾイミダゾリルの場合において、1位を介して結合されてもよい。キノリニルはキノリン-2−イル, キノリン-3−イル, キノリン-4−イル, キノリン-5−イル, キノリン-6−イル, キノ
リン-7−イル, またはキノリン-8−イルであってもよく、イソキノリニルはイソキノリン-1−イル, イソキノリン-3−イル, イソキノリン-4−イル, イソキノリン-5−イル, イソキノリン-6−イル, イソキノリン-7−イル, またはイソキノリン-8−イルであってもよい。キノリニルおよびイソキノリニルに関して指摘された任意の位置を介して結合されることに加えて、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニルおよび1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニルはそれぞれ1位および2位において窒素原子を介して結合されてもよい。
【0030】
他に記載がなければ、式Iの化合物の定義で指摘されるアリール基、Het基または任意の他の複素環基中の任意の特定の置換基とは無関係に、アリール基、Het基および他の複素環基は、非置換型であるか又は環状の炭素原子において1以上(例えば、1、2、3、4、または5つの)の同一の又は異なる置換基で置換されてもよく、その置換基は、例えば、(C1-C4)-アルキル, (C1-C4)-アルコキシ, (C1-C4)-アルキルチオ, ハロゲン, ニトロ, アミノ, (C1-C4)-アルキルアミノ, ジ-((C1-C4)-アルキル)アミノ, ((C1-C4)-アルキル)-カルボニルアミノ、例えば、アセチルアミノ, トリフルオロメチル, トリフルオロメトキシ, ヒドロキシ, オキソ, ヒドロキシメチル, メチレンジオキシ, エチレンジオキシ, ホルミル, アセチル, シアノ, メチルスルホニル, 任意に置換されたフェニル, 任意に置換されたフェノキシ, フェニル基で任意に置換されるベンジル, フェニル基で任意に置換されるベンジルオキシなどである。前記置換基は、所望の位置に存在してもよい(但し、安定な分子が生じること)。オキソ置換基(=O)は、もちろん芳香環に存在しえないが、次の場合には存在しえる。つまり、Het基または任意の他の複素環または炭素環基が、飽和または部分的に不飽和である場合である。オキソ置換された複素環基の例は、4H-ベンゾ[1,4]オキサジン-3-オン, 3H-イソベンゾフラン-1-オン, ベンゾ[1,4]ダイオキシン-2-オン, クロマン-2-オンなどである。Het-オキシ-(即ち、官能基Het-O-)の例は、ピリジニルオキシ(ピリジン-3−イルオキシを含む)およびピリジン4−イルオキシ, ピリミジニルオキシ(ピリミジン-2−イルオキシを含む), ピペリジニルオキシ(ピペリジン-3−イルオキシを含む)および ピペリジン-4−イルオキシ, およびピロリジン-3−イルオキシである。発明の幾つかの態様において、2以下のニトロ基が式Iの化合物に存在する。
【0031】
さらに、他に記載がなければ、式Iの化合物の定義で指摘されるHet基または任意の他の複素環基中の任意の特定の置換基とは無関係に、Het基および他の複素環基は、各々適切な環状の窒素原子において互いに独立して非置換型(すなわち、水素原子を保持する)であるか又は例えば、(C1-C8)-アルキル, 例えば、(C1-C4)-アルキル, 例えば、メチルまたはエチル, 任意で置換型のフェニル, フェニル-(C1-C4)-アルキル-, 例えば、ベンジル(任意にフェニル基で置換された), ヒドロキシ-(C2-C4)-アルキル- 例えば、2-ヒドロキシエチル, アセチルまたは別のアシル基, メチルスルホニルまたは別のスルホニル基などで置換されてもよい。適切な環状の窒素原子上の置換基として生じえる別の官能基は、アセトイミノ基CH3-C(=NH)-である。また、適切な窒素複素環は、N-オキシドとして又は4級塩として存在しえる。環状のイオウ原子は、スルホキシドまたはスルホンに酸化されてもよい。従って、例えばテトラヒドロチエニル残基は、S,S-ジオキソテトラヒドロチエニル残基として存在してもよい。或いは、チオモルホリン4−イルなどのチオモルフォリニル残基は、1-オキソ-チオモルホリン4−イルまたは1,1-ジオキソ-チオモルホリン4−イルとして存在してもよい。
【0032】
Het基に関する説明は、任意の環状の炭素原子を介して(また、窒素複素環の場合においては、任意の炭素原子および任意の適切な環状の窒素原子を介して又は任意の適切な環状の窒素原子を介して)結合されえる二価および多価の芳香族複素環基を含む二価および多価のHet基に対応して適用される。例えば、ピリジンジイル基はピリジン-2,3-ジイル, ピリジン-2,4-ジイル, ピリジン-2,5-ジイル, ピリジン-2,6-ジイル, ピリジン-3,4-ジイル, またはピリジン-3,5-ジイルであってもよく、ピペリジンジイル基は、とりわけ、ピペリジン-1,2-ジイル, ピペリジン-1,3-ジイル, ピペリジン-1,4-ジイル, ピペリジン-2,3-ジイル, ピペリジン-2,4-ジイル, またはピペリジン-3,5-ジイルであってもよく、ピペラジンジイル基は、とりわけ、ピペラジン-1,3-ジイル, ピペラジン-1,4-ジイル, ピペラジン-2,3-ジイル, ピペラジン-2,5-ジイルなどであってもよい。上記の記載は、官能基Het-アルキル-におけるHet亜族にも対応して適用される。非置換であっても又はHet亜族において及びアルキル亜族において置換されてもよいHet-アルキルの例は、(ピリジン-2−イル)-メチル, (ピリジン-3−イル)-メチル, (ピリジン-4−イル)-メチル, 2-(ピリジン-2−イル)-エチル, 2-(ピリジン-3−イル)-エチル, および2-(ピリジン-4−イル)-エチルである。
【0033】
ハロゲンはフッ素, 塩素, 臭素 またはヨウ素であり、幾つかの態様においてフッ素, 塩素 または臭素(例えば、フッ素または塩素)である。
【0034】
式Iの化合物に存在するステレオジエン炭素原子(Stereogenic carbon atoms)は、互いに独立してR配置またはS配置を有しえる。式Iの化合物は、純粋なエナンチオマーまたは純粋なジアステレオマーの形態で又はエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物の形態で(例えば、ラセミ化合物の形態で)存在してもよい。本発明は、純粋なエナンチオマーおよびエナンチオマーの混合物並びに純粋なジアステレオマーおよびジアステレオマーの混合物に関する。本発明は、2または3以上の式Iの立体異性体(stereoisomers)の混合物を含む。また、本発明は、前記混合物における立体異性体の全ての比率を含む。式Iの化合物がE異性体またはZ異性体(またはシス異性体またはトランス異性体)として存在する場合、本発明は純粋なE異性体および純粋なZ異性体に及び全比率のE/Z混合物に関する。また、本発明は、式Iの化合物の全ての互変異性形態(tautomeric forms)を含み;例えば、式Iに示される官能基R1-NH-C(=NH)-の代わりに互変異性の官能基R1-N(=C)(-NH2)-が存在する形態である。
【0035】
ジアステレオマー(E/Z異性体を含む)を、個々の異性体にクロマトグラフィーなどによって分離することができる。ラセミ化合物は、慣習的な方法によって2つのエナンチオマーに分離することができる。その方法は、例えば、キラル相でのクロマトグラフィーによる又は光学活性な酸または塩基で得られるジアステレオ異性塩の結晶化による方法である。また、立体化学的に均一な式Iの化合物は、立体化学的に均一な出発原料を用いることによって又は立体選択的な反応を用いることによって得ることができる。
【0036】
式Iの化合物へのR立体配置またはS立体配置を有する構成要素(building block)(又は、アミノ酸の場合において、D-アミノ酸またはL-アミノ酸と称される構成要素を導入している式Iの化合物に存在する単位)の導入の選択は、例えば、式Iの化合物の所望の特性に依存しえる。例えば、D-アミノ酸構成要素の取り込みによって、インビトロまたはインビボにおける安定性が増加しえる。また、D-アミノ酸構成要素の取り込みによって、前記化合物の薬理学的な活性における所望の増加または減少を達成することができる。幾つかの場合において、前記化合物が僅か短期間の間に活性を維持することが望ましい。係る場合において、L-アミノ酸構成要素の前記化合物への取り込みによって、個々における内在性のペプチダーゼがインビボで前記化合物を消化させることができ、これによって個体に暴露される活性な化合物が制限される。また、類似する効果は、別の構成要素における立体配置をS立体配置からR立体配置へ又はその逆に変化させることによって、本発明の化合物において観察されえる。医学的な必要性を考慮して、当業者は、本発明の要求される化合物の望ましい特性(例えば、都合よい立体化学)を決定することができる。
【0037】
式Iの化合物の生理的に容認できる塩は、生理的に受け入れられる無毒の塩(例えば、薬学的に利用可能な塩)である。酸性基(例えば、カルボキシル基COOH)を含んでいる式Iの化合物の係る塩は、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩, カリウム塩, マグネシウム塩およびカルシウム塩, および生理的に容認できる四級アンモニウムイオン、例えば、テトラメチルアンモニウムまたはテトラエチルアンモニウムとの塩、およびアンモニアおよび生理的に容認できる有機物のアミン、例えば、メチルアミン, ジメチルアミン, トリメチルアミン, エチルアミン, トリエチルアミン, エタノールアミンまたはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミンとの酸付加塩である。式Iの化合物に含有される塩基性基(例えば、アミノ基またはアミジノ基)は、例えば、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、または燐酸、または有機酸のカルボン酸およびスルホン酸、例えば、蟻酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、またはp-トルエンスルフォン酸と酸付加塩を形成する。また、本発明には、式Iの化合物の酸付加塩が含まれ、例えば、1つの酸均等物(acid equivalent)又は2つの酸均等物を伴う2つの塩基性基が含まれる。
【0038】
式Iの化合物の塩は、当業者に公知の慣習的な方法によって得ることができる。例えば、式Iの化合物を無機または有機の酸または塩基と溶媒または希釈剤のなかで混合すること、又は他の塩から陽イオン交換または陰イオン交換によって得ることができる。また、本発明は、低い生理的な耐容性が理由で医薬への使用に直接的に適切可能ではないが、式Iの化合物の更なる化学的な修飾を行うための中間体として又は生理的に容認できる塩の調製のための出発原料としてなどに適切な式Iの化合物の全ての塩を含む。
【0039】
また、式Iの化合物の酸付加塩に存在しえる言及した酸の陰イオンは、次の場合においても式Iの化合物に存在しえる陰イオンの例である;その場合とは、それら化合物がトリアルキルアンモニオ置換基などの1以上の陽性荷電基〔即ち、R10を表すだろう、陽性に荷電した窒素原子を介して結合された式(アルキル)3N+の基〕を又は複素環基中に四級化した環状の窒素原子を含む場合である。通常、式Iの化合物は、次の場合において1以上の生理的に容認できる陰イオンまたは陰イオン均等物を対イオンとして含む;その場合とは、式Iの化合物がトリアルキルアンモニオなどの1以上の持続的に陽性に荷電した基を含有する場合である。また、塩基性基または陽性に荷電した基および酸性基(例えば、アミジノ基およびカルボキシル基)を同時に含む式Iの化合物は、双性イオン(またはベタインまたは分子内塩)として存在してもよい(これも本発明に同様に含まれる)。
【0040】
本発明は、さらに式Iの化合物の全ての溶媒和物、例えば、水和物または付加物(アルコールでの)を含む。
【0041】
式Iの化合物における構造要素(structural elements)は、他の要素の表示と独立して有しえる以下の例示的な表示を有する。
【0042】
パラメータm、即ち、式Iに示されるフェニレン基における置換基として存在するハロゲン原子またはヒドロキシ基の数は、0、1、または2の値を有しえる。本発明の化合物の幾つかの態様において、mは0または1、または0であってもよい。置換基Aを保持しない該当するフェニレン基において残存している位置は、水素原子を保持する。
【0043】
m=1の場合、置換基Aは既に示されたとおりハロゲンおよびヒドロキシ(例えば、ヒドロキシ)から選択される。m=2の場合、置換基Aは、同一又は異なっていてもよく、ハロゲンおよびヒドロキシから独立して選択される。本発明の化合物の幾つかの態様において、Aはフッ素、塩素、およびヒドロキシから選択されえる。
【0044】
パラメータ nは、0または1の値を有しえる。本発明の化合物の幾つかの態様において、nは0であってもよい。
【0045】
本発明の化合物の幾つかの態様において、WはO(即ち、酸素)であってもよい。
【0046】
本発明の化合物の幾つかの態様において、R1は水素、ヒドロキシ、および(C1-C12)-アルコキシカルボニル-から選択される。特定の態様において、R1は適切には水素であってもよい。
【0047】
R1に存在するアリール基が(C1-C12)-アルキル, ハロゲンおよび(C1-C12)-アルコキシから選択される1以上の同一の又は異なる置換基で置換される場合、その基は1、2、または3(例えば、1または2)の同一の又は異なる置換基(例えば、1つの置換基で)で置換されてもよい。R1における置換基に存在するアルキル基またはアルコキシ基は、それぞれ(C1-C4)-アルキル基または(C1-C4)-アルコキシ基であってもよい。
【0048】
本発明の化合物の幾つかの態様において、R2は水素, (C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール、および(C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-から、例えば、水素, (C1-C8)-アルキル, (C6-C10)-アリール、および(C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキル-から選択される。特定の態様において、R2は適切には水素であってもよい。
【0049】
本発明の化合物の幾つかの態様において、R3は適切には水素であってもよい。
【0050】
本発明の化合物の幾つかの態様において、R4は(C1-C8)-アルキル, (C6-C10)-アリール, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, Het および Het-(C1-C4)-アルキル-から選択される(ここで、アルキル、アリール、およびHet基は、非置換型であるか又は1以上の同一の又は異なる置換基R10で置換される)。特定の態様において、R4は(C6-C10)-アリールまたはHetであり、例えば(C6-C10)-アリール、例えばフェニルである(ここで、アリール、Het、およびフェニル基は、非置換型であるか又は1以上の同一の又は異なる置換基R10で置換される)。
【0051】
本発明の化合物の幾つかの態様において、R5は、水素, (C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, HetおよびHet-(C1-C4)-アルキル-、例えば、水素, (C1-C8)-アルキル, (C6-C10)-アリール, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, HetおよびHet-(C1-C4)-アルキル-, または、例えば、水素, (C1-C8)-アルキル, (C6-C10)-アリールおよび(C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキル-、または、例えば、水素, (C1-C4)-アルキルおよびフェニル, または、例えば、(C1-C4)-アルキルおよびフェニル、例えば、メチル, エチルおよびフェニルから選択される(ここで、前記アルキル、アリール、フェニル、およびHet基は、非置換型であるか又は1以上の同一の又は異なる置換基R10で置換される)。特定の態様において、R5は、(C1-C4)-アルキル、例えば、メチルまたはエチルである。
【0052】
本発明の化合物の幾つかの態様において、R6は、適切には水素または(C1-C4)-アルキル、例えば、水素であってもよい。
【0053】
本発明の化合物の幾つかの態様において、R7は、適切には水素または(C1-C4)-アルキル、例えば、水素であってもよい。
【0054】
本発明の化合物の幾つかの態様において、R4もしくはR5を表している、又はR4もしくはR5を表している(例えば、R4を表している基)アリールアルキル-またはHet-アルキル基のアリールまたはHet部分に存在しているアリール基またはHet基(例えば、アリール基)は、1以上の同一の又は異なる置換基R10で置換される。前記態様において、化合物の亜族は、次の化合物によって形成される;その化合物とは、R4もしくはR5を表している、又はR4もしくはR5を表しているアリールアルキル-またはHet-アルキル基のアリールまたはHet部分に存在しているアリール基またはHet基における置換基R10が、ハロゲン(例えば、フッ素, 塩素および臭素、例えば、臭素), (C1-C8)-アルキル, (C1-C8)-アルコキシ, (C6-C10)-アリールオキシ-および(C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルコキシ-から選択される化合物である(ここで、R10におけるアリール基の各々は、非置換型であるか又は上記の規定のとおり置換される)。本発明の化合物の前記態様における化合物の別の亜族は、次の化合物によって形成される;その化合物とは、R4もしくはR5を表している、又はR4もしくはR5を表しているアリールアルキル-またはHet-アルキル基のアリールまたはHet部分に存在しているアリール基またはHet基が、(C1-C8)-アルキルカルボニルアミノ-, (C6-C10)-アリールカルボニルアミノ-, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, Het-カルボニルアミノ-, Het-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, (C1-C8)-アルキルアミノカルボニル-, (C6-C10)-アリールアミノカルボニル-, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキルアミノカルボニル-, Het-アミノカルボニル-, Het-(C1-C4)-アルキルアミノカルボニル-, (C1-C8)-アルキルアミノスルホニル-, (C6-C10)-アリールアミノスルホニル-, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキルアミノスルホニル-, Het-アミノスルホニル-, Het-(C1-C4)-アルキルアミノスルホニル-, (C1-C8)-アルキルスルホニルアミノ-, (C6-C10)-アリールスルホニルアミノ-, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキルスルホニルアミノ-, Het-スルホニルアミノ- およびHet-(C1-C4)-アルキルスルホニルアミノ-から選択される1つの置換基R10で置換される並びにハロゲン(例えば、フッ素、塩素および臭素、例えば、臭素), (C1-C8)-アルキル, (C1-C8)-アルコキシ, (C6-C10)-アリールオキシ-および(C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルコキシ-から選択される0、1、または2つの同一の又は異なる置換基R10で置換される化合物である(ここで、R10におけるアリール基およびHet基の各々は、非置換型であるか又は上記で規定したとおり置換されている)。本発明の化合物の前記態様における化合物の更なる亜族は、次の化合物によって形成される;その化合物とは、R4もしくはR5を表している、又はR4もしくはR5を表しているアリールアルキル-またはHet-アルキル基のアリールまたはHet部分に存在しているアリール基またはHet基が、(C1-C8)-アルキルカルボニルアミノ-, (C6-C10)-アリールカルボニルアミノ-, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, Het-カルボニルアミノ- およびHet-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, または(C1-C8)-アルキルアミノカルボニル-, (C6-C10)-アリールアミノカルボニル-, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキルアミノカルボニル-, Het-アミノカルボニル- およびHet-(C1-C4)-アルキルアミノカルボニル-から, または(C1-C8)-アルキルアミノスルホニル-, (C6-C10)-アリールアミノスルホニル-, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキルアミノスルホニル-, Het-アミノスルホニル- およびHet-(C1-C4)-アルキルアミノスルホニル-から, または(C1-C8)-アルキルスルホニルアミノ-, (C6-C10)-アリールスルホニルアミノ-, (C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルキルスルホニルアミノ-, Het-スルホニルアミノ- およびHet-(C1-C4)-アルキルスルホニルアミノ-から選択される1つの置換基R10で置換される、並びに、これらの場合の各々において、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、および臭素、例えば、臭素), (C1-C8)-アルキル, (C1-C8)-アルコキシ, (C6-C10)-アリールオキシ- および(C6-C10)-アリール-(C1-C4)-アルコキシ-から選択される0、1又は2つの同一の又は異なる置換基R10で置換される化合物である(ここで、R10基におけるアリール基およびHet基の各々は、非置換型であるか又は上記の規定のとおり置換される)。
【0055】
本発明は、1以上の官能基が、上記に記載の何れかの態様として規定されるか又はそれらのそれぞれの規定において若しくはそれぞれの官能基における一般的な説明においてリストされる1以上の特定の表示を有する全ての式Iの化合物を包含し、係る特定の表示の全ての組合せが本発明の対象である。そのうえ、式Iの化合物の任意の及び全ての立体異性の形態、任意の比率での式Iの化合物の混合物(2以上を含む)、および式Iの化合物の生理的に容認される塩は、本発明の範囲内である。例えば、1つの群の化合物は、以下の規定の式Iの化合物によって構成される:
nは0であり;
R1は水素であり;
R3は水素であり;
R5はメチル, エチル, フリル, チエニル, ピリジルまたはフェニルであり(ここで、フリル, チエニル, ピリジルまたはフェニル基は非置換型であるか又は1以上の同一の又は異なる置換基R10で置換される);および
m, A, V, W, X, Y, Z, R2, R4, R6, R7およびR10は、それらの一般的な定義で又は上記の態様の何れかで規定される;
および、その任意の及び全ての立体異性の形態;
および、その混合物の任意の比率;
および、その生理的に容認される塩。
【0056】
化合物の別の群は、以下の規定の式Iの化合物によって構成される:
nは0であり;
mは0または1であり;
R1は水素であり;
R2は水素であり;
R3は水素であり;
R5はメチル, エチル, フリル, チエニル, ピリジルまたはフェニルであり(ここで、フリル, チエニル, ピリジルまたはフェニル基は非置換型であるか又は1以上の同一の又は異なる置換基R10で置換される);
R6は水素であり;
R7は水素または(C1-C4)-アルキル(例えば、メチル)であり;
Wは酸素であり;および
A, V, R4およびR10は、それらの一般的な定義で又は上記の態様の何れかで規定される;
および、その任意の及び全ての立体異性の形態;
および、その混合物の任意の比率;
および、その生理的に容認される塩。
【0057】
本発明の化合物の更なる群は、以下の式Iaの化合物によって構成される
【化5】

式中のV, R3, R4, R5およびR7 は、それらの一般的な定義で又は上記の態様の何れかで規定される;
および、その任意の及び全ての立体異性の形態;
および、その混合物の任意の比率;
および、その生理的に容認される塩。
【0058】
式Iの化合物は、VII因子ポリペプチドの可逆的な阻害剤である(その活性型において)。好ましくは、それらの化合物は、VII因子ポリペプチドの特異的な阻害剤である。VIIa因子活性の阻害に関連して使用する場合に本明細書中に使用される特異的の用語は、式Iの化合物が、Xa因子、プラスミン、トロンビン、IXa因子、XIa因子、XIIa因子、および組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)(同じ濃度の阻害剤を用いて)などの血液凝固および/またはフィブリン溶解経路に関与する他の特異的なプロテアーゼの活性を実質的に阻害することなく、VII因子活性を阻害できることを意味する。
【0059】
本明細書は、血液凝固および/またはフィブリン溶解経路に関与するVII因子ポリペプチドおよび他の特異的なプロテアーゼに関する阻害定数(Ki)を決定するためのアッセイおよび方法(以下を参照)を記載する。
【0060】
本発明の好適な態様において、式Iの化合物は少なくとも1つの以下の性質を呈する:
● Ki(Xa因子)の1/10以下(例えば、1/20以下, 1/50以下, 1/100以下, 1/200以下, 1/500以下, 1/2〜1/10, 1/10〜1/20, 1/10〜1/50, 1/20〜1/100, 1/50〜1/200, 1/100〜1/500, 1/100〜1/1000, 1/200〜1/1000)のKi(活性化されたVII因子ポリペプチド)(同じ濃度の阻害剤を用いて);
● Ki(プラスミン)の1/10以下(例えば、1/20以下, 1/50以下, 1/100以下, 1/200以下, 1/500以下, 1/2〜1/10, 1/10〜1/20, 1/10〜1/50, 1/20〜1/100, 1/50〜1/200, 1/100〜1/500, 1/100〜1/1000, 1/200〜1/1000)のKi(活性化されたVII因子ポリペプチド)(同じ濃度の阻害剤を用いて);
● Ki(トロンビン)の1/10以下(例えば、1/20以下, 1/50以下, 1/100以下, 1/200以下, 1/500以下, 1/2〜1/10, 1/10〜1/20, 1/10〜1/50, 1/20〜1/100, 1/50〜1/200, 1/100〜1/500, 1/100〜1/1000, 1/200〜1/1000)のKi(活性化されたVII因子ポリペプチド)(同じ濃度の阻害剤を用いて);
● Ki(IXa因子)の1/10以下(例えば、1/20以下, 1/50以下, 1/100以下, 1/200以下, 1/500以下, 1/2〜1/10, 1/10〜1/20, 1/10〜1/50, 1/20〜1/100, 1/50〜1/200, 1/100〜1/500, 1/100〜1/1000, 1/200〜1/1000)のKi(活性化されたVII因子ポリペプチド)(同じ濃度の阻害剤を用いて);
● Ki(XIa因子)の1/10以下(例えば、1/20以下, 1/50以下, 1/100以下, 1/200以下, 1/500以下, 1/2〜1/10, 1/10〜1/20, 1/10〜1/50, 1/20〜1/100, 1/50〜1/200, 1/100〜1/500, 1/100〜1/1000, 1/200〜1/1000)のKi(活性化されたVII因子ポリペプチド)(同じ濃度の阻害剤を用いて);
● Ki(XIIa因子)の1/10以下(例えば、1/20以下, 1/50以下, 1/100以下, 1/200以下, 1/500以下, 1/2〜1/10, 1/10〜1/20, 1/10〜1/50, 1/20〜1/100, 1/50〜1/200, 1/100〜1/500, 1/100〜1/1000, 1/200〜1/1000)のKi(活性化されたVII因子ポリペプチド)(同じ濃度の阻害剤を用いて);
● Ki(tPA)の1/10以下(例えば、1/20以下, 1/50以下, 1/100以下, 1/200以下, 1/500以下, 1/2〜1/10, 1/10〜1/20, 1/10〜1/50, 1/20〜1/100, 1/50〜1/200, 1/100〜1/500, 1/100〜1/1000, 1/200〜1/1000)のKi(活性化されたVII因子ポリペプチド)(同じ濃度の阻害剤を用いて)。
【0061】
VII因子ポリペプチド
本明細書に使用される「VII因子ポリペプチド(Factor VII polypeptide)」の用語は、野生型VII因子(即ち、米国特許第4,784,950号に開示されたアミノ酸配列を有しているタンパク質)、同様に、野生型VII因子と比較して、実質的に同じか又は改善された生物活性を呈しているVII因子のバリアント(variants)、誘導体(derivatives)、および抱合体(conjugates)を包含する。さらに前記用語は、係るポリペプチドの未切断(酵素前駆体)の形態、並びにタンパク質分解性にプロセスされてこれらのそれぞれの生理活性の形態(例えば、VIIa因子)に産生されたものを包含することが意図される。典型的には、VII因子は、アミノ酸残基152および153の間で切断されてVIIa因子を産出する。VII因子の係るバリアント、誘導体、および抱合体は、ヒトVII因子と比較して、安定性、リン脂質結合、変更された比活性などを含む異なる特性を示してもよい。
【0062】
上記の定義内の「VII因子(Factor VII)」または「VIIa因子(Factor VIIa)」には、1つの個体から別の個体へと存続し、出現するであろう、天然の対立形質の変異(allelic variation)も含まれる。また、糖鎖形成または他の翻訳後修飾の程度および位置は、選ばれた宿主細胞および宿主細胞環境の性質に応じて変動しえる。
【0063】
本発明においてVII因子のバリアントは、1つ又は複数のアミノ酸の挿入、欠失、または置換によって野生型VII因子の配列と異なるアミノ酸配列を有しているポリペプチドを含む(配列バリアント)。
【0064】
本明細書中に使用される「VII因子誘導体(Factor VII derivative)」の用語は、野生型VII因子と比べて実質的に同じか又は改善された生物活性を呈しているFVIIポリペプチドを意味することを意図しており、ここで親ペプチドの1以上のアミノ酸は、例えば、アルキル化、糖鎖形成、PEG化(PEGylation)、アシル化、エステル形成またはアミド形成などによって遺伝的および/または化学的および/または酵素的に修飾されている。これにはPEG化ヒトVIIa因子、システイン―PEG化ヒトVIIa因子及びそのバリアントが含まれるが、これらに限定されない。VII因子誘導体の非限定的な例には、WO03/31464および米国特許出願US 20040043446, US 20040063911, US 20040142856, US 20040137557, および US 20040132640 (Neose Technologies, Inc.)に開示された糖PEG化(GlycoPegylated)FVII誘導体;WO 01/04287, 米国特許出願20030165996, WO 01/58935, WO 03/93465 (Maxygen ApS)およびWO 02/02764, 米国特許出願20030211094(ミネソタ大学)に開示されたFVII抱合体が含まれる。「PEG化ヒトVIIa因子(PEGylated human Factor VIIa)」の用語は、ヒトVIIa因子ポリペプチドに結合されたPEG分子を有しているヒトVIIa因子を意味する。前記PEG分子は、VIIa因子ポリペプチドの任意のアミノ酸残基または炭水化物部分を含むVIIa因子ポリペプチドの任意の部分に付着しえることが理解される。「システイン―PEG化ヒトVIIa因子(cysteine-PEGylated human Factor VIIa)」の用語は、ヒトVIIa因子に導入されたシステインのスルフヒドリル基に結合させたPEG分子を有しているVIIa因子を意味する。本発明のVII因子誘導体の例には、少なくとも1つの有機の置換基が1以上のアミノ酸残基に結合されるVII因子ポリペプチド(例えば、VII因子またはVIIa因子)の誘導体、例えば、必要とする被験者(例えば、ヒト患者)に該当する誘導体の投与後にVII因子ポリペプチドの持続時間の遅延などを達成するために、VII因子ポリペプチドが、脂肪酸(該当する誘導体はアシル化されたVII因子ポリペプチド誘導体である)、アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン、または水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などの分子に抱合された誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
「改善された生物活性(improved biological activity)」の用語は、i)組換え型の野生型ヒトVIIa因子と比較して実質的に同じか又は増加したタンパク分解活性を有するFVIIポリペプチドを、又はii)組換え型の野生型ヒトVIIa因子と比較して実質的に同じか又は増加したTF結合活性を有するFVIIポリペプチドを、又はiii)組換え型の野生型ヒトVIIa因子と比較して実質的に同じか又は増加した血漿中の半減期を有するFVIIポリペプチドを意味する。
【0066】
組換え型の野生型ヒトVIIa因子と比較して、活性化型(FVIIa)の形態で実質的に同じ又は増加したタンパク分解活性を有しているVII因子(FVII)バリアントの非限定の例には、S52A-FVIIa, S60A-FVIIa ( Lino et al., Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998);米国特許第5,580,560号に開示された増加したタンパク分解の安定性を呈しているFVIIaバリアント;残基290および291の間または残基315および316の間でタンパク質分解性に切断されているVIIa因子(Mollerup et al., Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995);VIIa因子の酸化型(Kornfelt et al., Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999);PCT/DK02/00189(WO02/077218に対応する)に開示されたFVIIバリアント;およびWO02/38162(Scripps Research Institute)に開示された増加したタンパク分解の安定性を呈しているFVIIバリアント;WO99/20767, 米国特許US6017882およびUS6747003, 米国特許出願第20030100506(ミネソタ大学)およびWO00/66753, 米国特許出願第US20010018414, US 2004220106, およびUS 200131005, 米国特許US6762286およびUS6693075(ミネソタ大学)に開示された修飾型Glaドメインを有している及び増強した膜結合を呈しているFVIIバリアント;およびWO01/58935, US特許US6806063, US特許出願20030096338 (Maxygen ApS), WO03/93465 (Maxygen ApS), WO04/029091(Maxygen ApS), WO04/083361(Maxygen ApS), およびWO04/111242(Maxygen ApS), 同様にWO04/108763(Canadian Blood Services)に開示されたFVIIバリアントが含まれる。
【0067】
活性化型(FVIIa)の形態において、野生型FVIIaと比較して増加した生物活性を有しているFVIIバリアントの限定されることのない例には、WO 01/83725, WO 02/22776, WO 02/077218, PCT/DK02/00635 (WO 03/027147に対応する), デンマーク国特許出願PA 2002 01423 (WO 04/029090に対応する), デンマーク国特許出願PA2001 01627 (WO 03/027147に対応する); WO 02/38162 (Scripps Research Institute)に開示されたFVIIバリアント;およびJP2001061479(Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)に開示された増強活性を有するFVIIaバリアントが含まれる。
【0068】
VII因子のバリアントの例には、限定されることなく以下のものが含まれる、即ち、P10Q-FVII, K32E-FVII, P10Q/K32E-FVII, L305V-FVII, L305V/M306D/D309S-FVII, L305I-FVII, L305T-FVII, F374P-FVII, V158T/M298Q-FVII, V158D/E296V/M298Q-FVII, K337A-FVII, M298Q-FVII, V158D/M298Q-FVII, L305V/K337A-FVII, V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII, V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII, K157A-FVII, E296V-FVII, E296V/M298Q-FVII, V158D/E296V-FVII, V158D/M298K-FVII, およびS336G-FVII, L305V/K337A-FVII, L305V/V158D-FVII, L305V/E296V-FVII, L305V/M298Q-FVII, L305V/V158T-FVII, L305V/K337A/V158T-FVII, L305V/K337A/M298Q-FVII, L305V/K337A/E296V-FVII, L305V/K337A/V158D-FVII, L305V/V158D/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V-FVII, L305V/V158T/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V-FVII, L305V/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, S314E/K316H-FVII, S314E/K316Q-FVII, S314E/L305V-FVII, S314E/K337A-FVII, S314E/V158D-FVII, S314E/E296V-FVII, S314E/M298Q-FVII, S314E/V158T-FVII, K316H/L305V-FVII, K316H/K337A-FVII, K316H/V158D-FVII, K316H/E296V-FVII, K316H/M298Q-FVII, K316H/V158T-FVII, K316Q/L305V-FVII, K316Q/K337A-FVII, K316Q/V158D-FVII, K316Q/E296V-FVII, K316Q/M298Q-FVII, K316Q/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D-FVII, S314E/L305V/E296V-FVII, S314E/L305V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A/V158T-FVII, S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/K337A/E296V-FVII, S314E/L305V/K337A/V158D-FVII, S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V-FVII, S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V-FVII, S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316H/L305V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D-FVII, K316H/L305V/E296V-FVII, K316H/L305V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T-FVII, K316H/L305V/K337A/V158T-FVII, K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/K337A/E296V-FVII, K316H/L305V/K337A/V158D-FVII, K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V-FVII, K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V-FVII, K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/K337A -FVII, K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316Q/L305V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D-FVII, K316Q/L305V/E296V-FVII, K316Q/L305V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T-FVII, K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII, K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII, K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII, K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII, K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII, K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A -FVII, K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/K337A-FVII, F374Y/V158D-FVII, F374Y/E296V-FVII, F374Y/M298Q-FVII, F374Y/V158T-FVII, F374Y/S314E-FVII, F374Y/L305V-FVII, F374Y/L305V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D-FVII, F374Y/L305V/E296V-FVII, F374Y/L305V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158T-FVII, F374Y/L305V/S314E-FVII, F374Y/K337A/S314E-FVII, F374Y/K337A/V158T-FVII, F374Y/K337A/M298Q-FVII, F374Y/K337A/E296V-FVII, F374Y/K337A/V158D-FVII, F374Y/V158D/S314E-FVII, F374Y/V158D/M298Q-FVII, F374Y/V158D/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E-FVII, F374Y/V158T/M298Q-FVII, F374Y/V158T/E296V-FVII, F374Y/E296V/S314E-FVII, F374Y/S314E/M298Q-FVII, F374Y/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/K337A/V158D-FVII, F374Y/L305V/K337A/E296V-FVII, F374Y/L305V/K337A/M298Q-FVII, F374Y/L305V/K337A/V158T-FVII, F374Y/L305V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158D/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/E296V/V158T-FVII, F374Y/L305V/E296V/S314E-FVII, F374Y/L305V/M298Q/V158T-FVII, F374Y/L305V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/S314E-FVII, F374Y/K337A/S314E/V158T-FVII, F374Y/K337A/S314E/M298Q-FVII, F374Y/K337A/S314E/E296V-FVII, F374Y/K337A/S314E/V158D-FVII, F374Y/K337A/V158T/M298Q-FVII, F374Y/K337A/V158T/E296V-FVII, F374Y/K337A/M298Q/E296V-FVII, F374Y/K337A/M298Q/V158D-FVII, F374Y/K337A/E296V/V158D-FVII, F374Y/V158D/S314E/M298Q-FVII, F374Y/V158D/S314E/E296V-FVII, F374Y/V158D/M298Q/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E/E296V-FVII, F374Y/V158T/S314E/M298Q-FVII, F374Y/V158T/M298Q/E296V-FVII, F374Y/E296V/S314E/M298Q-FVII, F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A -FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/S314E-FVII, F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII, F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E-FVII, F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T-FVII, F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E-FVII, F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E-FVII, F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E-FVII, S52A-VII因子, S60A-VII因子; R152E-VII因子, S344A-VII因子, T106N-FVII, K143N/N145T-FVII, V253N-FVII, R290N/A292T-FVII, G291N-FVII, R315N/V317T-FVII, K143N/N145T/R315N/V317T-FVII;およびアミノ酸配列の233Thr〜240Asnに置換、付加、又は欠失を有しているFVII;アミノ酸配列の304Arg〜329Cysに置換、付加、又は欠失を有しているFVII;およびアミノ酸配列の153Ile〜223Argに置換、付加、又は欠失を有しているFVIIである。
【0069】
従って、VII因子ポリペプチドの置換バリアント(substitution variants)には、限定されることなく、ポジションP10, K32, L305, M306, D309, L305, L305, F374, V158, M298, V158, E296, K337, M298, M298, S336, S314, K316, K316, F374, S52, S60, R152, S344, T106, K143, N145, V253, R290, A292, G291, R315, V317における置換、およびアミノ酸配列T233〜N240またはR304〜C329;またはI153〜R223, 又はその組み合わせにおける置換、付加、または欠失、特に、P10Q, K32E, L305V, M306D, D309S, L305I, L305T, F374P, V158T, M298Q, V158D, E296V, K337A, M298Q, M298K, S336G, S314E, K316H, K316Q, F374Y, S52A, S60A, R152E, S344A, T106N, K143N, N145T, V253N, R290N, A292T, G291N, R315N, V317Tなどのバリアント、およびアミノ酸配列T233〜N240, またはR304〜C329, またはI153〜R223又はその組み合わせにおける置換、付加、または欠失が含まれる。
【0070】
血液凝固におけるVII因子(VIIa因子として)の生物活性は、これが(i)組織因子(TF)に結合する能力、および(ii)IX因子またはX因子のタンパク質分解性の切断を触媒して活性化されたIX因子またはX因子(それぞれIXa因子またはXa因子)を産生する能力による。ヒトVIIa因子の生物活性は、たとえば米国特許第5,997,864号に記載されているとおり、VII因子が欠乏した血漿およびトロンボプラスチンを用いて、調製物が血液凝固を促進する能力を測定するアッセイによって定量しえる。このアッセイ法において、生物活性は、対照サンプル(control sample)と比較した凝固時間の減少として表され、1単位/mlのVII因子活性を含むプールされたヒト血清標準と比べることにより「VII因子単位(Factor VII units)」に換算される。代わりに、VII因子ポリペプチドを、1段階凝固アッセイを用いることによって特異的な活性(「血餅活性(clot activity)」)に関してアッセイしてもよい。この目的のために、試験されるサンプルは50mM PIPES-緩衝液(pH7.5), 0.1%BSAに希釈され、そして40μlが40μlのVII因子欠乏血漿および80μlのヒト組換え型組織因子(10mMのCa2+および合成リン脂質を含有する)でインキュベーションされる。凝固の時間(凝固時間)が、測定され、参照標準を用いて標準曲線と平行線アッセイ(parallel line assay)で比較される。代わりに、VIIa因子の生物活性を、(i)脂質膜に包埋(embedded)されたTFおよびX因子を含む系において、VIIa因子がXa因子を産生する能力を測定すること(Persson et al., J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997);(ii)水性系におけるX因子の加水分解を測定すること;(iii)表面プラスモン共鳴に基づいた機器を使用して、そのTFに対する物理的な結合を測定すること(Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997);および(iv)合成基質の加水分解を測定することによって定量してもよい。
【0071】
野生型VIIa因子と比較して実質的に同じ又は改善された生物活性を活性化型(FVIIa)の形態において有しているVII因子バリアントは、上記の通りに凝固アッセイ法、タンパク質分解アッセイ法、またはTF結合実験の1つまたは複数において試験したときに、同じ細胞タイプにおいて産生されたVIIa因子の比活性(specific activity)の少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、なおより好ましくは少なくとも約75%、および最も好ましくは少なくとも約90%を示す活性を包含する。
【0072】
本発明の化合物を調製する方法
式Iの化合物を調製するための適切な方法には、US6,743,790B2に記載されたものと類似する方法が含まれる。
【0073】
本発明による式Iの化合物は、一般的に以下に記載される処置(procedures)によって調製しえる:
式Iの化合物は、一般的に式Iから逆合成で誘導できる2以上の断片(または構成要素)の連結(linkage)によって調製することができる。式Iの化合物の調製において望まれない反応または副反応へと導くだろう官能基を合成工程で導入する場合、一般的に最初に係る官能基を、後に所望の官能基へ転換される前駆体の形態で導入することが有利である又は必要である。
【0074】
前駆体基(precursor groups)の例として言及されるものは、シアノ基(アミジノ基へと転換されえる)およびニトロ基(アミノ基へと転換されえる)である。ヒドロキシ, カルボン酸, アミノまたはアミジノ基に関する保護基として官能基に存在しえる保護基(またはブロッキング基)には、アリル, tert-ブチル, ベンジル, アリルオキシカルボニル(Alloc), tert-ブトキシカルボニル(Boc), ベンジルオキシカルボニル(Z)および9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)が含まれる。
【0075】
式Iの化合物の調製において、構成要素は、1以上の凝縮反応および/または付加反応、例えば、アミドカップリングまたは(チオノ)カルバメートまたは(チオ)尿素の形成を行うことによって、例えば、1つの構成要素のカルボン酸基と別の構成要素のアミノ基との間でアミド結合を形成させることによって、又は2つの構成要素の2つのアミノ基の間に(チオ)尿素連結を樹立することによって連結することができる。例えば、式Iの化合物は、式II、III、およびIVの構成要素(以下を参照されたい)を、当業者に既知の方法で、式IIのG1と式IIIのG2との間に(チオ)尿素架橋を形成して連結することによって、及び同様に当業者に既知の方法で、式IIIのカルボン酸誘導体基-C(=O)Qと式IVのNHR7基との間にアミド結合を形成させることによって、調製することができる。
【化6】

式II、III、およびIVの化合物において、前記パラメータおよびm, n, A, R2, R3, R4, R5およびR7は上記で規定されている。R0は、アミジノ基R1NH-C(=NH)-(式中のR1は上記で規定されている)、又はその保護された形態又はその前駆体基、例えば、最終的な式Iの化合物に存在するR1NH-C(=NH)-基へと引き続いて転換されるシアノ基である。一般的に、式II、III、およびIVの化合物における上記の基および置換基の表示にくわえて、官能基は式Iの化合物に存在する基へと後に転換される前駆体基の形態でも存在できる又は保護された形態で存在できる。
【0076】
最終的な式Iの化合物における官能基VがNR6基である場合、式IIの化合物の構成要素におけるG1基は適切には遊離アミノ(即ち、-NH2)であってもよく、式IIIの構成要素におけるG2基は(チオ)尿素架橋の形成のために適切に官能性を持たせたアミノ基である、又は官能性を持たせた基、例えば、イソ(チオ)シアナト基(R6が水素である場合)または(C1-C6)-アルコキシカルボニルアミノ基またはトリクロロメチルカルボニルアミノ基またはアゾリル-N-(チオ)カルボニルアミノ基、例えば、イミダゾール-1−イル(チオ)カルボニルアミノ基に転換される(ここで、官能性を持たせたG2基は、付加的にR6基を又はR6基の保護された形態又は前駆体基を含有する)。或いは、式IIIの構成要素におけるG2基は-NHR6基であってもよく、式IIの構成要素におけるG1基は(チオ)尿素架橋の形成のために適切に官能性を持たせたアミノ基であるか又は官能性を持たせた基、例えば、イソ(チオ)シアナト基または(C1-C6)-アルコキシカルボニルアミノ基またはトリクロロメチルカルボニルアミノ基またはアゾリル-N-(チオ)カルボニルアミノ基、例えば、イミダゾール-1−イル(チオ)カルボニルアミノ基に転換される。
【0077】
最終的な式Iの化合物における官能基Vが酸素原子である場合、式IIの構成要素におけるG1基は、適切には遊離アミノ(即ち、-NH2)又は(チオノ)カルバメート架橋の形成のために適切に官能性を持たせたアミノ基であってもよい、又は官能性を持たせた基、例えば、イソ(チオ)シアナト基または(C1-C6)-アルコキシカルボニルアミノ基またはトリクロロメチルカルボニルアミノ基またはアゾリル-N-(チオ)カルボニルアミノ基、例えば、イミダゾール-1−イル(チオ)カルボニルアミノ基に転換される。式IIIの構成要素におけるG2基は、遊離ヒドロキシ基または(チオノ)カルバメート架橋の形成のために適切に官能性を持たせたヒドロキシ基であるか又は官能性を持たせた基、例えば、クロロ(チオノ)ホルマート基に転換される。
【0078】
式IIIの化合物におけるQ基は、ヒドロキシまたは求核置換脱離基(nucleophilically substitutable leaving group)である。即ち、式IIIの化合物における-C(=O)Q基は、カルボン酸基(-COOH)又はカルボン酸基の活性化誘導体、例えば、酸塩化物、エステル[例えば、(C1-C4)-アルキルエステル]または活性化エステル、または混成無水物(mixed anhydride)である。
【0079】
式II、III、およびIVの出発化合物、同様に、特定の構造単位を導入するために式Iの化合物の合成に使用される他の化合物は、商業的に利用可能である又は商業的に利用可能な化合物から以下に記載の又は当業者に容易に利用可能な文献に記載の処置(又は類似する処置)によって容易に調製することができる。
【0080】
式Iの化合物の調製のために、式IIおよびIIIの化合物を最初に連結してもよく、生じた中間生成物を次に式IVの化合物と縮合して、式Iの化合物を作出してもよい。或いは、式IIIおよびIVの化合物を最初に縮合してもよく、生じた中間生成物を次に式IIの化合物と連結して、式Iの化合物を作出してもよい。係る合成の過程における任意の係る反応工程の後に、保護および脱保護する工程および前駆体基を所望の最終的な基への転換を行ってもよく、さらに修飾してもよい。
【0081】
式IIおよびIIIの構成要素間の(チオ)尿素架橋を、例えば、式IIの化合物においてアミノ基(-NH2基)であるG1基を官能性を持たせたアミノ基へと転換することによって達成することができる。この基は、例えば、(チオ)ホスゲンまたはホスゲン均等物(トリホスゲンのような)との反応によって形成されるイソ(チオ)シアナト基、または4-ニトロフェニルクロロホルマートなどのクロロホルマート(chloroformate)との反応によって形成される(C1-C6)-アルコキシカルボニルアミノ基または(C1-C6)-アリールオキシカルボニルアミノ基、またはN,N'-(チオ)カルボニルジ-イミダゾールとの反応によって形成されるイミダゾール-1−イル(チオ)カルボニルアミノ基、または塩化トリクロロアセチルとの反応によって形成されるトリクロロメチルカルボニルアミノ基であり;生じた中間体を次に式IIIの化合物であって、G2が、イソ(チオ)シアナト基へ付加された又はそれぞれイミダゾリル基、アルコキシ基、もしくはトリクロロメチル基を置換した遊離-NHR6基である化合物と反応させる。或いは、上記で既に概要を述べたとおり、式IIIの化合物において-NHR6基であるG2 基は、官能性を持たされて、イソ(チオ)シアナト基(R6が水素である場合)、(C1-C6)-アルコキシカルボニルアミノ基、イミダゾール-1−イル(チオ)カルボニル基またはトリクロロメチルカルボニルアミノ基を生じる。その後、生じた中間体を、G1が遊離NH2基である式IIの化合物と反応させてもよい。アミノ基のイソ(チオ)シアナト基、(C1-C6)-アルコキシカルボニルアミノ基、イミダゾール-1−イル(チオ)カルボニル基またはトリクロロメチルカルボニルアミノ基への転換、同様に、引き続く中間体のアミンとの反応は、当業者に周知の標準的な処置にしたがって容易に実施しえる。式IIおよびIIIの構成要素間の(チオノ)カルバメート架橋を、例えば、式IIの化合物においてアミノ基(-NH2基)であるG1基を官能性を持たせたアミノ基へと転換することによって達成することができる。この基は、例えば、(チオ)ホスゲンまたはホスゲン均等物(トリホスゲンのような)との反応によって形成されるイソ(チオ)シアナト基、または4-ニトロフェニルクロロホルマートなどのクロロホルマー
ト(chloroformate)との反応によって形成される(C1-C6)-アルコキシカルボニルアミノ基または(C1-C6)-アリールオキシカルボニルアミノ基、またはN,N'-(チオ)カルボニルジ-イミダゾールとの反応によって形成されるイミダゾール-1−イル(チオ)カルボニルアミノ基、または塩化トリクロロアセチルとの反応によって形成されるトリクロロメチルカルボニルアミノ基であり;生じた中間体を次に、G2が遊離ヒドロキシ基である式IIIの化合物と反応させる。或いは、上記で既に概要を述べたとおり、式IIIの化合物においてOH基であるG2基は、官能性を持たされて、例えば、クロロ(チオノ)ホルマート基を生じる。その後、生じた中間体を、G1が遊離NH2基である式IIの化合物と反応させてもよい。アミノ基のイソ(チオ)シアナト基、(C1-C6)-アルコキシカルボニルアミノ基、イミダゾール-1−イル(チオ)カルボニル基またはトリクロロメチルカルボニルアミノ基への転換、またはヒドロキシ基の例えばクロロ(チオノ)ホルマート基への転換、同様に、引き続く中間体のアミンとの反応は、当業者に周知の標準的な処置にしたがって容易に実施しえる。
【0082】
式Iの化合物の合成に使用することができるアミド結合を形成するための様々な一般的な方法は、ペプチド化学の分野などの技術における当業者に周知である。アミドカップリング工程は、例えば、遊離カルボン酸(即ち、式IIIの化合物または中間カップリング産物)などを使用することによって実施することができる。この工程において、反応している-C(=O)Q基はCOOH基であり、インサイチューなどでそのカルボン酸基を、カルボジイミド、例えば、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDCI)またはジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、またはN,N'-カルボニルジアゾール、例えば、N,N'-カルボニルジイミダゾール、またはウロニウム塩、例えば、テトラフルオロほう酸O-((シアノ(エトキシカルボニル)-メチレン)-アミノ)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム(TOTU)またはヘキサフルオロ燐酸O-(7-アザベンゾトリアゾール-1−イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム(HATU)、またはクロロ蟻酸エステル、例えば、エチルクロロホルマートまたはイソブチルクロロホルマート、または塩化トシル、またはプロピルホスホン酸無水物などの標準のカップリング試薬の手段によって活性化し、活性化カルボン酸誘導体を式IVのアミノ化合物と反応させる。また、アミド結合は、アミノ化合物を、ハロゲン化カルボン酸(carboxylic acid halide)、例えば、塩化カルボン酸(カルボン酸および、例えば、塩化チオニルから別々の工程で又はインサイチューで調製することができる), またはカルボン酸エステルまたはチオエステル、例えば、メチルエステル, エチルエステル, フェニルエステル, ニトロフェニルエステル, ペンタフルオロフェニルエステル, メチルチオエステル, フェニルチオエステルまたはピリジン-2-イルチオエステルで、即ち、式IIIの化合物またはQを塩素, メトキシ, エトキシ, 任意で置換されたフェノキシ, メチルチオ, フェニルチオまたはピリジン-2-イルチオである中間カップリング産物で反応させることによって形成することができる。
【0083】
通常、活性化反応およびカップリング反応は、不活性な溶媒(または希釈剤)の存在下で、例えば、非プロトン溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF), テトラヒドロフラン(THF), ジメチルスルホキシド(DMSO), ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT), 1,2-ジメトキシエタン(DME), ジオキサンなどの存在下で又は係る溶媒の混合物中で実施される。特定のプロセスに応じて、反応温度は、広範囲にわたり変動しえる;また、例えば、約-20°C〜溶媒または希釈剤の沸点付近であってもよい。特定のプロセスに応じて、pHを調整する又は形成された酸を中和するための又は酸付加塩またはN-ヒドロキシアゾール、例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、または触媒、例えば、4-ジメチルアミノピリジンの形態で用いられるアミノ化合物の遊離塩基を遊離させるための、適切な量の1以上の補助的な薬剤、例えば、塩基、例えば、三級アミン、例えば、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン、またはアルカリ金属アルコラート(alkali metal alcoholate)、例えば、ナトリウムメトキシドまたはカリウムtert-ブトキシドを加えることは必要または有利でありえる。活性化カルボン酸誘導体の調製およびアミド結合およびエステル結合の形成のための方法の詳細、同様に、元の文献(source literature)は、様々な標準的な文献、例えば、J. March, Advanced Organic Chemistry, 4th ed., John Wiley & Sons, 1992;またはHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg Thieme Verlagなどに提供される。
【0084】
前記カップリング反応において得られた産物中になお存在しえる保護基は、標準的な処置で除去される。例えば、tert-ブトキシカルボニル保護基は、トリフルオロ酢酸で切断することができる。従って、アミジノ基またはアミノ基の保護された形態であるtert-ブトキシカルボニル置換されたアミジノ基またはアミノ基は、脱保護することができる(即ち、アミジノ基またはアミノ基へとトリフルオロ酢酸で処理することによって転換される)。既述のように、官能基は、適切な前駆体基からカップリング反応後に作出することもできる。加えて、式Iの化合物の生理的に容認される塩への転換は、既知の方法によって実施しえる。
【0085】
言及しえる特定の官能基の導入の例としては、アミジノ基、即ち、R10基などをも表す、H2N-C(=NH)-基(アミノ-イミノ-メチル-基またはカルバムイミドイル基としても知られる)の導入に関する処置である。アミジンは、シアノ化合物から酸性の無水条件下でアルコールを付加することによって調製することができる(例えば、塩化水素で飽和させたメタノールまたはエタノール中で行う、引き続いてアンモニア分解を行う)。アミジンを調製する更なる方法は、硫化水素をシアノ基に付加し、生じたチオアミドをアセチル化し、アンモニアと反応させる方法である。別の方法は、ヒドロキシルアミンをシアノ基へ付加することであり、これによってヒドロキシアミジノ基の形成が導かれる;所望であれば、後者ヒドロキシアミジンにおけるN-O結合を、触媒による水素付加などにより切断し、アミジンを生じさせることができる。
【0086】
通常、式Iの最終的な化合物または中間体を含有している反応混合物が、精密検査される。そして所望であれば、産物を、当業者に周知の処置により精製しえる。例えば、合成された化合物は、結晶化、クロマトグラフィーまたは逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)などの方法または化合物のサイズ、電荷または疎水性などに基づく他の分離法を用いて精製することができる。同様に、アミノ酸配列分析、NMR、IRおよび質量分析(MS)などの周知の方法を、本発明の化合物の特性決定に使用することができる。
【0087】
式Iの化合物を合成するための上記および下記の反応は、一般に液相での化学的な方法に基づいて行うことができる。
【0088】
VII因子ポリペプチドの薬学的製剤および投与
通常、本発明の水性で液体のVII因子ポリペプチド製剤または組成物(本発明の水性の薬学的組成物)は、水性の製剤が最初から水性の液体形態で存在するか或いは実質的に固形の製剤(例えば、凍結乾燥された調製物)を水または別の水性の担体またはビヒクルを添加することによる溶解/再構成によって産生されるかとは無関係に、通常は、適切に非経口的(即ち、静脈内、皮下、または筋肉内)に又は連続的又はパルス状(pulsatile)の輸液によって投与される。
【0089】
ヒトの対象における使用に関して、非経口投与のための本発明のVII因子ポリペプチド組成物は、適切な濃度での式Iの化合物又はその生理的に容認できる塩に加えて、一般的にはVII因子ポリペプチドを薬学的に許容される水性の担体と組み合わせた(好ましくは、溶解した)ものを含む。水、緩衝水(buffered water)、0.4%塩類溶液(saline)、0.3%グリシンなどの種々の水溶性担体を使用してもよい。また、本発明のVII因子ポリペプチドは、傷害の部位に対してデリバリーまたはターゲティングするために、リポソーム調製物(liposome preparations)に製剤化することもできる。リポソーム調製物は、例えば、US 4,837,028, US 4,501,728 およびUS 4,975,282に一般的に記載されている。前記組成物は、従来のよく知られた滅菌法技術で殺菌し得る。生じる水溶液は、それ自体の使用のためにパックされるか又は無菌条件下で濾過して凍結乾燥され、凍結乾燥された調製物は投与の前に滅菌水溶液(担体、ビヒクル)と混合される。前記組成物は、更に生理的な条件に近づけるために及び/又は前記組成物の化学的な及び/又は物理的な安定性を増強するために必要とされる薬学的に許容される補助的な物質を含んでいてもよい。これらには、次のものが含まれる:
pH調整および/または緩衝剤、例えば、クエン酸塩(ナトリウムまたはカリウム), アセテート(アンモニウム, ナトリウムまたはカルシウム), ヒスチジン(L-ヒスチジン), リンゴ酸, リン酸塩(ナトリウムまたはカリウム), 酒石酸, コハク酸, MES(2-N-モルホリンo-エタンスルホン酸), HEPES(4-(2-ヒドロキシ-エチル)-ピペラジン-1-エタン-スルホン酸), イミダゾール, TRIS[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン], 乳酸, およびグルタミン酸。緩衝剤濃度の範囲は、溶液の好適なpHを維持するために選択される。前記緩衝剤は、混合物が特定範囲のpH値を提供することができるように2以上の緩衝剤の混合物(例えば、2つのこのような薬剤の混合物)であってもよい。一態様において、前記緩衝剤は、クエン酸塩の混合物および少なくとも1つの緩衝液 酢酸(アンモニウム, ナトリウム またはカルシウム), ヒスチジン(L-ヒスチジン), リンゴ酸, リン酸(ナトリウムまたはカリウム), 酒石酸, コハク酸, MES, HEPES, イミダゾール, TRIS, 乳酸およびグルタミン酸である。緩衝剤の総濃度(total concentration)は、典型的には約1 mM〜約100 mM、例えば、約1 mM〜約50 mM, しばしば約1 mM〜約25 mM、例えば、約2 mM〜約20 mMの範囲である。
【0090】
カルシウム塩: 前記組成物は、最初に液体、凍結乾燥された、又は再構成された形態であるかにかかわらず、任意でカルシウム塩を含有しえる。前記カルシウム塩は、低濃度、例えば、約0.1 mM〜約5 mMで存在してもよく;中等度の濃度、例えば、約5 mM〜約15 mMで存在してもよく;または高濃度、例えば、約15 mM〜約1000 mMで存在してもよい。一側面において、前記カルシウム塩は、塩化カルシウム, 酢酸カルシウム, グルコン酸カルシウムおよびレブレートカルシウム(calcium laevulate), 及びその2以上の混合物から選択される。或いは、前記組成物におけるカルシウムイオンの濃度は、0.1mM未満であってもよい。
【0091】
張性調整剤(製剤の重量モル浸透圧濃度に寄与する張性修飾物質)、例えば、アミノ酸、小ペプチド(例えば、2〜5アミノ酸残基を有している)、中性塩、モノまたはジサッカライド、ポリサッカライド、糖アルコール、又は少なくとも2つの係る物質の混合物。特定の例には、塩化ナトリウム, 塩化カリウム, クエン酸ナトリウム, スクロース, グルコース, およびマンニトールが含まれるが、これらに限定されない。張性調整剤の濃度は、製剤中に存在する他の構成成分に応じて、等張付近に調整される。通常、張性調整剤(tonicity-adjusting agents)は、存在する他の構成成分に応じて、約1〜約500mM、例えば、約1〜約300mM、しばしば約10〜約200mM、例えば、約20〜約150mMの濃度で導入される。中性塩(例えば、塩化ナトリウム又は塩化カリウム)を、使用してもよい。「中性塩(neutral salt)」の用語は、実質的に酸性でも塩基性でもない塩を指摘する;即ち、溶解された場合に製剤のpHに若干の影響を与えるか又は与えないものである;
界面活性剤、典型的には非イオン性界面活性剤, 適切にはポリソルベートまたはTween TM型(例えば、PolysorbateTM 20または80, またはTweenTM80), またはポロキサマーまたはPluronicTM 型(例えば、PoloxamerTM 188または407)である。導入される界面活性剤の量は、典型的には約0.005〜約1%重量/重量(w/w)、約0.005〜約0.1% w/w、例えば、約0.005〜0.02% w/wが典型的に好適な範囲でありえる。いくつかの状況において、相対的に高い濃度(例えば、約0.5%w/wまで)が、タンパク質の安定性を維持するために望ましい。しかしながら、実際の実施に使用される界面活性剤のレベルは、臨床上の実施で慣例的に制限されている;
抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸, システイン, ホモシステイン, シスチン, シスタチオニン, メチオニン, グルタチオン, またはシステイン またはメチオニン; メチオニン, 特に L-メチオニンを含有しているペプチドが典型的に非常に適切な抗酸化剤である。抗酸化剤は、約 0.1〜約 2 mg/mlの濃度で導入される;
保存剤〔微生物の成長を遅延させるための製剤に含められ、これによって、例えば、FVIIポリペプチドの「複数の使用(multiple use)」のパッケージングが許容される〕、例えば、フェノール, ベンジルアルコール, オルト−クレゾール, メタ−クレゾール, パラ-クレゾール, メチルパラベン, プロピルパラベン, 塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム。保存剤は、約 0.1〜約 2 mg/mlの濃度で導入される;
組成物中のVII因子ポリペプチドの濃度は、典型的には約0.01% w/w〜約2% w/w(即ち、約0.1 mg/ml〜約20 mg/ml)、例えば、約0.05% w/w〜約1.5% w/w(即ち、約0.5 mg/l〜約15 mg/ml)、例えば、約0.05% w/w〜約1% w/w(即ち、約0.5 mg/ml〜約10 mg/ml)で広く変動してもよく;特定の選択された投与のモードで、流体の容量、粘性などに主に基づいて選択される。VIIa因子の場合において、濃度はmg/mlとして又は国際単位/ml(IU/ml)として頻繁に表現される。1mgのFVIIaは、通常43000-56000IU以上に相当する。
【0092】
本発明の液体で水性の薬学的組成物中の本発明の式Iの化合物(または複数の化合物)の濃度は、典型的には少なくとも1μMである。望ましい(または必要な)濃度は、典型的には選択された化合物(または複数の化合物)に依存し、より具体的にはVII因子ポリペプチドに対する選択された化合物の結合親和性に依存する。様々な態様において、式Iの化合物は、少なくとも5μM, 少なくとも10μM, 少なくとも20μM, 少なくとも50μM, 少なくとも100μM, 少なくとも150μM, 少なくとも250μM, 少なくとも500μM, 少なくとも1 mM, 少なくとも2 mM, 少なくとも4 mM, 少なくとも5 mM, 少なくとも8 mM, 少なくとも9 mM, 少なくとも10 mM, 少なくとも15 mM, または少なくとも20 mM、例えば、次の範囲1〜10000μM , 10〜10000μM, 20〜10000μM, 50〜10000μM, 10〜5000μM, 10〜2000μM, 20〜5000μM, 20〜2000μM, 50〜5000μM, 0.1〜100 mM, 0.1〜75 mM, 0.1〜50 mM, 0.1〜10 mM, 0.2〜75 mM, 0.2〜50 mM, 0.2〜20 mM, 0.5〜75 mM または0.5〜50 mMの濃度で存在してもよい。
【0093】
様々な態様において、式Iの化合物およびFVIIポリペプチドの間のモル比は、0.1以上, 0.5以上, 1以上, 2以上, 5以上, 10以上, 25以上, 100以上, 250以上, 1000以上, 2500以上, または5000以上, 例えば、0.1〜10000, 0.1〜5000, 0.1〜2500, 0.1〜1000, 0.1〜250, 0.1〜100, 0.1〜25, 0.1〜10, 0.5〜10000, 0.5〜5000, 0.5〜2500, 0.5〜1000, 0.5〜250, 0.5〜100, 0.5〜25, 0.5〜10, 1〜10000, 1〜5000, 1〜2500, 1〜1000, 1〜250, 1〜100; 1〜25; 1〜10, 10〜10000, 10〜5000, 10〜250, 1000〜10000, または1000〜5000などの範囲であってもよい。
【0094】
非経口的に投与可能な組成物を調製するための方法は、当業者に知られている又は明らかであり、例えば、文献〔Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, PA (1990)〕に更に詳細に記載されている。
計画的な介入(deliberate interventions)に関連した治療(例えば、外科的な処置)のために、VII因子ポリペプチドは、典型的には介入を行う前の約24時間以内に、およびその後に7日以上の間投与される。凝固剤としての投与は、本明細書に記載されているような様々な経路によるものであってもよい。VII因子ポリペプチド(例えば、rhFVIIa)の用量は、通常では被検者の体重および症状の重篤さに応じて、初回の及び維持の量(loading and maintenance doses)として、70kgの被検者について約0.05 mg/日〜500 mg/日、好ましくは約1 mg/日〜約200 mg/日、より好ましくは約10 mg/日〜約175 mg/日の範囲である。
【0095】
VII因子ポリペプチドを含有している組成物は、予防的(prophylactic)および/または治療的な処置に対して投与されてもよい。治療的な適用において、組成物は、すでに症状を患っている被検者に対して、症状(condition)およびその合併症(complications)を治癒する(cure)、軽減する(alleviate)、または部分的に抑える(partially arrest)ために十分な量で、上記の通りに投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療上効果的な量(therapeutically effective amount)」と規定される。当業者に理解されるであろうとおり、本目的のために効果的な量は、症状または傷害の重篤さ、並びに被検者の体重および一般的な身体の状態に依存する。
【0096】
FVIIポリペプチド(例えば、rhFVIIa)の薬学的組成物が、一般に、生命を危うくするか又は潜在的に生命を危うくする医学的な症状または状態(states)と関連して用いられ、係る状況において(外来性の物質の量を最低限にすること及びヒトVII因子ポリペプチドの免疫原性の一般的な欠乏を考慮することに関連する一般的な効果の観点において)、該当するVII因子ポリペプチドを実質的に過剰に投与することが、可能で、医師が望ましいと感じるだろうことを心に留めるべきである。
【0097】
予防的適用において、VII因子ポリペプチドを含有している組成物は、被験者自身の凝固能力を増強するために、疾病状態または傷害に感受性があるか又はさもなければリスクのある被験者に投与される。係る目的で使用される用量〔この用量は「予防上効果的な用量(prophylactically effective dose)」の用語で表してもよい〕は、被験者の体重および健康の一般的な状態に依存するが、70キログラムの被験者に対して一般的には約0.05 mg/日〜約500 mg/日, より一般的には約1.0 mg/日〜約200 mg/日の範囲である。
【0098】
特に、rhFVIIaがヒト被験者に投与される場合において、用量レベルは一般に約 90〜120μg/kg体重/用量の範囲である。しかしながら、150μg/kg体重の過剰の用量などの幾つかの高用量(および幾つかの場合において、約250〜300μg/kgの用量)が現行では優先される。
【0099】
該当する組成物の一回または複数回の投与は、治療する医師により選択される用量レベル(dose levels)及び投薬計画(dosing regimens)で実施しえる。一日の維持レベル(daily maintenance levels)を必要とする外来患者に対し、VII因子ポリペプチドを、連続的な点滴(例えば、携帯型のポンプシステムを用いた)により投与してもよい。
【0100】
VII因子ポリペプチドの局所的投与(例えば、局所的適用)は、例えば、噴霧、灌流、二重バルーンカテーテルまたはステントの使用、血管グラフト(vascular grafts)またはステントへの組み込み、バルーンカテーテルを被覆するためにヒドロゲルの形態で、またはその他のよく確立された方法によって行ってもよい。いずれにしても、該当する薬学的組成物は、被験者を効果的に治療するために十分なVII因子ポリペプチドの量を提供するべきである。
【0101】
[発明の更なる側面]
ある程度すでに説明したとおり、本発明の更なる側面には、以下が含まれる:
● 本発明の1以上の化合物又はその生理的に容認される塩;およびVII因子ポリペプチド(例えば、野生型のヒトFVIIa、例えば、rhFVIIa)を含んでいる薬学的組成物(例えば、液体で水性の薬学的組成物);
● VII因子ポリペプチド(例えば、野生型のヒトFVIIa、例えば、rhFVIIa)を含んでいる組成物を調製する方法であって:本発明の化合物又はその生理的に容認される塩を、前記VII因子ポリペプチドを含有しているサンプルに添加すること;又は前記VII因子ポリペプチドを、本発明の化合物又はその生理的に容認される塩を含有しているサンプルに添加すること;を備え、このタイプの方法において、前記化合物又はその塩および/または前記VII因子ポリペプチドは、液体で水性の媒体中に存在してもよい
● 係る組成物を調製するための本発明の方法によって調製された薬学的組成物;
● VII因子ポリペプチド(例えば、野生型のヒトFVIIa、例えば、rhFVIIa)を阻害する方法であって:本発明の化合物又はその生理的に容認される塩を、前記VII因子ポリペプチドを含有しているサンプルに添加すること;又は前記VII因子ポリペプチドを、本発明の化合物又はその生理的に容認される塩を含有しているサンプルに添加すること;を備え、このタイプの方法において、前記化合物又はその塩および/または前記VII因子ポリペプチドは、液体で水性の媒体に存在してもよい
● 該当するVII因子ポリペプチドが効果的である症状または障害の治療における本発明の薬学的組成物の使用。
【0102】
実験部分
略語:
Boc2O ジ(1,1-ジメチルエチル)ジカーボネート
BSA ウシ血清アルブミン
DIPEA N,N-ジイソプロピル-N-エチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDCl 1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(塩酸塩として)
HOBt N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
PEG ポリエチレングリコール
PIPES 1,4-ピペラジンビス(エタンスルホン酸)
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
TFA トリフルオロ酢酸
例1 (S)-(4-カルバムイミドイルフェニル)カルバミン酸[1-(3-メトキシフェニル)エチルカルバモイル]メチルエステルの合成
【化7】

VおよびWの双方の基が酸素である例1の化合物に関連する式Iの化合物の付加的な例(例2〜10)は、以下の表1にリストされる。例2〜10の全ての化合物は、容易に利用可能な以下の出発材料を用いて、上記の例1のものと類似する処置によって合成されえる:
【表1】

例11 (S)-2-[3-(4-カルバムイミドイルフェニル)ウレイド]-N-(1-フェニルエチル)アセトアミド
【化8】

VがNHであり、Wが酸素である例11の化合物に関連する式Iの化合物の付加的な例(例12〜17)は、以下の表2にリストされる。全ての化合物は、上記の例11のものと類似する処置によって合成されえる:
【表2】

アッセイ処置
(1)酵素阻害(概要)
VIIa因子または他の酵素/因子(例えば、Xa因子, トロンビン, プラスミンまたはトリプシン)を阻害するための式Iの化合物の能力は、問題の酵素/因子の活性を50%(即ち、阻害定数Kiに関連するIC50値)まで阻害する式Iの化合物の濃度を決定することによって評価される。精製された酵素が、色素生産性アッセイ(chromogenic assay)に使用される。適切な基質の加水分解速度の50%減少を生じる阻害剤(式Iの化合物)の濃度は、加水分解の相対比(非阻害の対照と比較して)を式Iの化合物の濃度の対数に対してプロットした後の直線回帰によって決定される。
【0103】
阻害定数Kiを計算するために、基質との競合に関するIC50値の補正を以下の式を用いることによって行う:
Ki=IC50/{1+(基質濃度/Km)},
式中のKmは、ミカエリスメンテンの定数である[Chen and Prusoff, Biochem. Pharmacol. 22 (1973), 3099-3108; I. H. Segal, Enzyme Kinetics, 1975, John Wiley & Sons, New York, 100-125;これらの文献の双方はその全体が参照によって援用される]。
【0104】
(1)a VIIa因子(FVIIa)アッセイ
VIIa因子/組織因子の活性に対する式Iの化合物の阻害活性[阻害定数Ki(FVIIa)として表される]は、基本的に以前に記載されたとおり色素生産性アッセイを用いて決定しえる[J. A. Ostrem et al., Biochemistry 37 (1998) 1053-1059,この文献はその全体が参照によって援用される]。反応速度論アッセイ(Kinetic assays)を、半分の領域のマイクロタイタープレート(Costar Corp., Cambridge, Mass.)中で、キネティックプレートリーダー(Molecular Devices Spectramax 250)を用いて25°Cで行う。典型的なアッセイにおいて、25μlのrhFVIIaおよびTF(それぞれの最終的な濃度5nMおよび10nM)を、40μlの阻害剤希釈物〔10%DMSO/TBS-PEG緩衝液(50 mM Tris, 15 mM NaCl, 5 mM CaCl2, 0.05% PEG 8000, pH 8.15)中に含まれる〕と混合する。次の15分間のプレインキュベーションに続いて、アッセイを、35μlの色素生産性基質S-2288(D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド, Pharmacia Hepar Inc., 500μMの終濃度)を添加することによって開始する。
【0105】
次のアッセイを行なって、特定の他の凝固酵素および他のセリンプロテアーゼの、式Iの化合物による阻害の可能性を調査し、式Iの化合物の特異性を決定しえる。
【0106】
(I)b Xa因子アッセイ
TBS-PEG緩衝液〔該緩衝液は、50 mM Tris-Cl, pH 7.8, 200 mM NaCl, 0.05% (w/v) PEG-8000, 0.02% (w/v) NaN3)の組成である〕を、本アッセイに使用する。IC50を、以下を混合することによって決定する、即ち:
25μlのヒトXa因子(Enzyme Research Laboratories, Inc.; South Bend, Ind.)をTBS-PEG緩衝液中に含むもの;
40μlの10%(v/v)DMSOをTBS-PEG緩衝液中に含むもの(非阻害の対照)又は様々な濃度の試験すべき前記化合物を10%(v/v)DMSO TBS-PEG中に希釈したもの;および
基質 S-2765[N(α)-ベンジルオキシカルボニル-D-Arg-Gly-L-Arg-p-ニトロアニリド; Kabi Pharmacia, Inc.; Franklin, Ohio)をTBS-PEGに含むもの
以上をCostarの半領域マイクロタイタープレートの適切なウェルに含む。
【0107】
前記アッセイを、式Iの化合物に酵素をくわえて10 minの間プレインキュベーションすることによって行なった。次に、アッセイを、基質を最終容量の100μlまで添加することによって開始する。色素生産性基質の加水分解の初速度を、時間経過の直線部分の間(通常、基質の添加の1.5min後)に、Bio-tek Instrumentsのキネティックプレートリーダー(Ceres UV900HDi)を用いて25°Cで、405nmでの吸光度の変化によって測定する。酵素濃度は0.5nMであり、基質濃度は140μMである。
【0108】
(1)c トロンビン アッセイ
TBS-PEG緩衝液を、本アッセイに同様に使用する。IC50を、Xa因子アッセイに関して上記のとおり決定する;但し、使用する基質はS-2366 (L-PyroGlu-L-Pro-L-Arg-p-ニトロアニリド; Kabi)であり、酵素はヒトのトロンビン(Enzyme Research Laboratories, Inc.; South Bend, Ind.)である。酵素濃度は175μMである。
【0109】
(1)d プラスミン アッセイ
TBS-PEG緩衝液を、本アッセイに同様に使用する。IC50を、Xa因子アッセイに関して上記のとおり決定する;但し、使用する基質はS-2251 (D-Val-L-Leu-L-Lys-p-ニトロアニリド; Kabi)であり、酵素はヒトのプラスミン(Kabi)である。酵素濃度は5nMであり、基質濃度は300μMである。
【0110】
(1)e トリプシン アッセイ
10mM CaCl2を含有しているTBS-PEG緩衝液を、本アッセイに使用する。IC50 を、Xa因子アッセイに関して上記のとおり決定する;但し、使用する基質はBAPNA (ベンゾイル-L-Arg-p-ニトロアニリド; Sigma Chemical Co.; St. Louis, Mo.)であり、酵素はウシ膵臓トリプシン(タイプXIII, TPCK処理; Sigma)である。酵素濃度は50nMであり、基質濃度は300μMである。
【0111】
(2)a FIXaおよびtPAに関するアミドリティック アッセイ(Amidolytic assays)
酵素および基質は、American Diagnosticaから入手; FIXa(cat no 449b), FIXa基質(cat no 299F), tPA(cat no 170)およびtPA基質(cat no 444LF)。
【0112】
基質299Fおよび444LFの加水分解に続き、Spectramax Fluorimeterで360nmで励起および440nmで放射させる。基質251およびS-2288の加水分解に続き、Spectramax分光光度計で405nmで行なう。
【0113】
全アッセイを、緩衝液(50mM Hepes pH 7.4, 100mM NaCl, 5mM CaCl2, 0.01% Tween80からなる緩衝液)中で行なう。インヒビターを、10, 20, 50, 100, 200μMの濃度で使用する。FIXaアッセイを100μMの基質を用いて行い、tPAアッセイを10μMの基質を用いて行う。
【0114】
(2)b FXIaおよびFXIIaに関するアミドリティック アッセイ
酵素FXIaおよびFXIIaはAmerican Diagnosticaから;FXIa(cat no 4011a), FXIIa(cat no 412HA)およびトリプシン(cat no 20465)はLife Technologyから入手された。使用する色素生産性の基質(Chromogenix)は、FXIaに関して2288、FXIIaに関して2765である。
【0115】
色素生産性の基質の加水分解は、Spectramax分光光度計で405nmで、酵素に応じて10-20minの間、5-20secのインターバルで行なう。
【0116】
全アッセイを、緩衝液(50mM Hepes pH 7.4, 100mM NaCl, 5mM CaCl2, 0.01%BSAからなる緩衝液)中で行なう。但し、FIXaアッセイに関して、エチレングリコールを更に最終濃度40%にまで添加する。前記アッセイにおいて、基質濃度50, 100, 200, 500, 1000μMを各阻害剤濃度:25, 50, 100, 500μMに対して使用する。
【0117】
(2)c データ分析
単一の基質濃度で行なわれるアッセイに関して、KIは、式V0/VI=1+I/KI(S<<Kmに関して有効)を用い、幾つかの異なる阻害剤濃度で決定された値で直線的にフィッティングすることによって決定される。V0は阻害剤なしの加水分解の値であり、VIは阻害剤の存在下での加水分解の値であり、Iは阻害剤濃度である。
【0118】
各阻害剤濃度に対する1/v対1/sの二重逆数プロットから、勾配(Km(app)/V)が決定される。これに続いて、阻害剤濃度に対してKm(app)/Vのプロットをとる。Kiは、i軸での直線の切片として決定される。
【0119】
FVIIaにおける式Iの化合物の安定化効果
血餅アッセイ/1段階凝固アッセイ:
VII因子ポリペプチド(例えば、FVIIa)の生物活性は、1段階凝固アッセイを用いて測定しえる。この目的のために、試験されるサンプルは、50mM PIPES-緩衝液(pH7.5), 0.1%BSAに希釈され、そして40μlが40μlのVII因子欠乏血漿および80μlのヒト組換え型組織因子(10mMのCa2+および合成リン脂質を含有する)でインキュベーションされる。凝固の時間が、測定され、参照標準(reference standard)を用いて標準曲線と平行線アッセイで比較される。
【0120】
(S)-(4-カルバムイミドイルフェニル)カルバミン酸[1-(3-メトキシフェニル)エチルカルバモイル]メチルエステル(即ち、上記の例1の化合物)のrhFVIIa安定性における効果を調査するために、以下の処方1および2を調製した:
処方1:
1.0mg/mL rhFVIIa(Novo Nordisk A/S, Denmarkにより製造)
10mM ヒスチジン
10mM グリシルグリシン
50mM 塩化ナトリウム
10mM 塩化カルシウム
1mMの(S)-(4-カルバムイミドイルフェニル)カルバミン酸[1-(3-メトキシフェニル)エチルカルバモイル]メチルエステル
pH=6.5
処方2:
1.0mg/ml rhFVIIa
10mM ヒスチジン
10mM グリシルグリシン
50mM 塩化ナトリウム
10mM 塩化カルシウム
pH=6.5
前記処方を、rhFVIIaバルク溶液、賦形剤のプラセボ溶液、および(S)-(4-カルバムイミドイルフェニル)カルバミン酸[1-(3-メトキシフェニル)エチルカルバモイル]メチルエステルのストック溶液を混合することによって調製し、上記の濃度を得た。pHを、最終的に6.5に、1M水酸化ナトリウム/塩化水素で調整した。
【0121】
前記処方を、それぞれ5°Cおよび25°Cの温度で保存した。また、血餅活性に関する分析を、以下の表3に記載の時間ポイントで行なった:
【表3】

結果は、問題の試験化合物(本発明の化合物)が、FVIIaの活性の保持に関して著しい安定性効果を発揮することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、その任意の及び全ての立体異性の形態を含んでいる化合物;及び、2以上の式Iの係る化合物を任意の比率で含む任意の混合物;及び、その生理的に容認される塩:
【化1】

式中で
mは、0, 1または2であり;
nは、0または1であり;
Aは、ハロゲンまたはヒドロキシであり;
Vは、NR6または酸素であり;
Wは、イオウまたは酸素であり;
R1は水素, ヒドロキシ, (C1-C12)-アルコキシカルボニル-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルコキシカルボニル-, および(C6-C14)-アリールオキシカルボニル-から選択され、前記アリール基の各々は非置換型であるか又は(C1-C12)-アルキル, ハロゲン, および(C1-C12)-アルコキシから選択される少なくとも1つの同一の又は異なる置換基によって置換され;
R2は水素, (C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, R20-(C1-C12)-アルキル-, R20-(C6-C14)-アリール-, および R20-(C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-から選択され、前記R20はヒドロキシカルボニル-, アミノカルボニル-, (C1-C12)-アルコキシカルボニル-, および(C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルコキシカルボニル-から選択され;
R3は水素, シアノ, ヒドロキシ, および(C1-C12)-アルキルから選択され;
R4は(C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, Het, およびHet-(C1-C4)-アルキル-から選択され、前記のアルキル, アリールおよびHet基は非置換型であるか又は少なくとも1つの同一の又は異なる置換基R10によって置換され;
R5は水素, (C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, Het, Het-(C1-C4)-アルキル-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-アミノカルボニル-, およびHet-(C1-C4)-アルキル-アミノカルボニル-から選択され、前記のアルキル, アリールおよびHet基は非置換型であるか又は少なくとも1つの同一の又は異なる置換基R10によって置換され;
R6およびR7は独立に水素および(C1-C8)-アルキルから選択され;
R10は(C1-C12)-アルキル, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, (C1-C8)-アルコキシ, (C1-C4)-アルコキシ-( C2-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリールオキシ-, Het- オキシ-, Het-(C1-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリール, Het, Het-(C1-C4)-アルキル-, トリフルオロメトキシ, トリフルオロメチル, ハロゲン, オキソ, ヒドロキシ, アミノ, (C1-C12)-アルキルカルボニルアミノ-, アミノカルボニルアミノ-, (C6-C14)-アリールカルボニルアミノ-, Het-カルボニルアミノ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, Het-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, (C1-C8)-アルキルカルボニル-, (C6-C14)-アリールカルボニル-, (C1-C8)-アルキルアミノカルボニル-, (C6-C14)-アリールアミノカルボニル-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルアミノカルボニル-, Het-アミノカルボニル-, Het-(C1-C4)-アルキルアミノカルボニルアミノカルボニル-, (C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, シアノ, ニトロ, アミジノ, アセトイミノ, トリ-((C1-C4)-アルキル)アンモニオ-, (C1-C8)-アルキルアミノ-, ジ-((C1-C8)-アルキル)アミノ-, ヒドロキシカルボニルメトキシ-, (C1-C8)-アルキルスルホニル-, (C6-C14)-アリールスルホニル-, (C1-C8)-アルキルアミノスルホニル-, (C6-C14)-アリールアミノスルホニル-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルアミノスルホニル-, Het-アミノスルホニル-, Het-(C1-C4)-アルキルアミノスルホニル-, (C1-C8)-アルキルスルホニルアミノ-, (C6-C14)-アリールスルホニルアミノ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルスルホニルアミノ-, Het-スルホニルアミノ-, およびHet-(C1-C4)-アルキルスルホニルアミノ-から選択され、R10を表している(C1-C12)-アルキルカルボニルアミノ-は非置換型であるか又は前記アルキル基がアミノ, ヒドロキシおよび(C1-C4)-アルコキシから選択される置換基によって置換され;R10を表している(C1-C12)-アルキルおよび(C1-C8)-アルコキシは非置換型であるか又は(C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, およびアミノカルボニル-から選択される少なくとも1つの同一の又は異なる置換基によって置換され;
ここで、R10基における各々のアリール基およびHet基は非置換型であるか又はハロゲン, ニトロ, オキソ, ヒドロキシ, (C1-C8)-アルキル, (C1-C8)-アルコキシ, (C1-C4)-アルコキシ-(C2-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリールオキシ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルコキシ-, Het-オキシ-, Het-(C1-C4)-アルコキシ-, (C6-C14)-アリール, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキル-, Het, Het-(C1-C4)-アルキル-, トリフルオロメチル, シアノ, トリフルオロメトキシ, (C1-C8)-アルキルスルホニル-, (C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, アミノカルボニル-, アミノ, (C1-C8)-アルキルアミノ-, ジ-((C1-C8)-アルキル)アミノ-, (C1-C8)-アルキルカルボニルアミノ-, (C6-C14)-アリール-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, (C6-C14)-アリールカルボニルアミノ-, Het-カルボニルアミノ-, Het-(C1-C4)-アルキルカルボニルアミノ-, および(C1-C8)-アルキルカルボニル-から選択される少なくとも1つの同一の又は異なる置換基によって置換され、R10基中のアリール基またはHet基における置換基を表している(C1-C8)-アルキルおよび(C1-C8)-アルコキシは非置換型であるか又は(C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, およびアミノカルボニル-から選択される少なくとも1つの同一の又は異なる置換基によって置換され;
Hetは、飽和または不飽和の単環または二環の, 窒素, 酸素およびイオウから選択される1、2または3つの同一の又は異なる環状のヘテロ原子を含有している3員環から10員環の複素環系である;
但し、前記フェニル環におけるアミジノ基が前記フェニル環に結合されるNH部分に対しパラであるとき、少なくとも1つの次の条件、即ち:Vが酸素であり, R7が(C1-C8)-アルキルである条件が適用され;
但し、更に、VがNR6で、R7が水素で、R10がアルキル基に結合するとき、その基は、(C1-C8)-アルコキシカルボニル-; ヒドロキシカルボニル-; アミノカルボニル-; (C1-C8)-アルキルアミノカルボニル-; (C1-C8)-アルキルアミノスルホニル-; または(C1-C8)-アルコキシカルボニル-, ヒドロキシカルボニル-, およびアミノカルボニル-から選択される1以上の同一の又は異なる置換基によって置換された(C1-C8)-アルキルのうちの1つではない。
【請求項2】
請求項1記載の化合物であって、Wは酸素であり;
その任意の及び全ての立体異性の形態を含んでいる化合物;
及び、2以上の式Iの係る化合物を任意の比率で含む任意の混合物;
および、その生理的に容認される塩。
【請求項3】
式Iaを有している、請求項1に記載の化合物であって:
【化2】

式中のV, R3, R4, R5およびR7 は請求項1の規定のとおりであり、
その任意の及び全ての立体異性の形態を含んでいる化合物;
及び、2以上の式Iaの係る化合物を任意の比率で含む任意の混合物;
及び、その生理的に容認される塩。
【請求項4】
請求項1に記載の1以上の化合物又はその生理的に容認される塩;およびVII因子ポリペプチドを含んでいる薬学的組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の薬学的組成物であって、前記VII因子ポリペプチドが、野生型のヒトVIIa因子;VII因子バリアント;およびVII因子誘導体から選択される薬学的組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の薬学的組成物であって、更に薬学的に許容される担体または希釈剤を含んでいる薬学的組成物。
【請求項7】
液体で水性の組成物である、請求項4〜6の何れか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
VII因子ポリペプチドを含んでいる組成物を調製する方法であって:請求項1に記載の化合物又はその生理的に容認される塩を、前記VII因子ポリペプチドを含有しているサンプルに添加すること;又は前記VII因子ポリペプチドを、請求項1に記載の化合物又はその生理的に容認される塩を含有しているサンプルに添加することを備える方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記VII因子ポリペプチドが、野生型のヒトVIIa因子;VII因子バリアント;およびVII因子誘導体から選択される方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法であって、前記化合物又はその塩および/または前記VII因子ポリペプチドが液体で水性の媒体中に存在する方法。
【請求項11】
請求項8〜10の何れか1項に記載の方法によって調製される薬学的組成物。
【請求項12】
VII因子ポリペプチドを阻害する方法であって:請求項1に記載の化合物又はその生理的に容認される塩を、前記VII因子ポリペプチドを含有しているサンプルに添加すること;又は前記VII因子ポリペプチドを、請求項1に記載の化合物又はその生理的に容認される塩を含有しているサンプルに添加することを備える方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記VII因子ポリペプチドが、野生型のヒトVIIa因子;VII因子バリアント;およびVII因子誘導体から選択される方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法であって、前記化合物又はその塩および/または前記VII因子ポリペプチドが液体で水性の媒体中に存在する方法。
【請求項15】
請求項4〜7または11の何れか1項に記載の薬学的組成物の、前記VII因子ポリペプチドが効果的である症状または障害の治療における使用。

【公表番号】特表2008−531523(P2008−531523A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556617(P2007−556617)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060269
【国際公開番号】WO2006/089952
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(501497563)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】