説明

X線撮影装置

【課題】 殆どコストアップを伴うことなく、かつ、感度を低下させることなく、高い空間分解能のX線透視像もしくはX線断層像を得ることのできるX線撮影装置を提供する。【解決手段】 互いに対向配置されたX線発生装置1とX線検出器2の間に被写体Wを保持する保持部3が配置されたX線撮影装置において、X線検出器2、被写体WもしくはX線発生装置1のいずれかを、X線光軸に直交する平面上で、X線検出器2の画素ピッチの整数分の一のピッチで移動させる微動機構(例えば検出器微動機構5)を設け、これらのいずれかを上記整数分の一のピッチでずらせた複数の位置においてそれぞれX線透過データを取り込み、その全体を1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱ってX線像を構築することにより、X線検出器2の画素ピッチよりも高い空間分解能のX線像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は産業用のX線撮影装置に関し、具体的には、被写体のX線透視像を得るためのX線透視装置のほか、被写体の断層像を得るためのX線CT装置をも含むX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種工業製品等を非破壊のもとに観察する方法として、従来、X線透視装置やX線CT装置などのX線撮影装置を用いる方法が知られている。X線透視装置においては、図7に模式的に示すように、X線源71とX線検出器72とを対向配置するとともに、その間に被写体Wを保持するためのテーブル等の保持部73を配置した構成を採る(例えば特許文献1参照)。また、X線CT装置においては、図8に模式的に示すように、同じくX線源81とX線検出器82とを対向配置するとともに、その間に被写体Wを保持してX線光軸Lに直交する回転軸Rを中心とした回転を与えるための回転テーブル83を配置した構成を採る(例えば特許文献2参照)。
【0003】
これらの装置においては、X線源から発生したX線を被写体Wを透過させた後にX線検出器に入射させ、そのX線検出器の各画素出力であるX線透過データ、つまり各画素の濃淡情報を取り込む。X線透視装置ではそのX線検出器72の各画素の濃淡情報を当該各画素の位置に対応させて、表示器の表示画素の濃淡を決定して表示器に表示することによって被写体のX線透視像を構築する。
【0004】
一方、X線CT装置においては、回転テーブル83を駆動することによって被写体Wに回転軸Rを中心とする回転を与え、微小回転角度ごとにX線検出器82からのX線透過データを取り込み、通常は360°分のX線透過データを再構成演算することにより、回転軸Rに直交する平面で被写体をスライスした断層像を構築する。
【0005】
これらの装置における撮影倍率、つまり拡大率は、X線源(焦点)と被写体Wとの距離(SOD)と、X線源(焦点)とX線検出器との距離(SID)の比によって定まる。このような撮影倍率を自由に選択できるように、これらの装置においては、通常、保持部73ないしは回転テーブル83をX線光軸Lに沿った方向に移動させ、あるいはX線検出器72ないしは82を同方向に移動させ、更にはX線源71ないしは81を同方向に移動させる駆動機構を備えている。加えて、X線透視装置においては、保持部73をX線光軸Lに直交する平面上で移動させる移動機構を設けることにより、被写体Wの要観察部(注目部位)を透視像上の中心に位置させることができるようになっておいる。また、X線CT装置においては、回転テーブル83の上に、被写体Wを保持ないしは搭載して、X線光軸Lに直交する平面に沿って移動する移動テーブルを配置し、この移動テーブルの駆動により被写体Wを回転軸Rに対して移動させることにより、被写体Wの注目部位を中心とした断層像を得ることができるように構成されたものが多い。
【特許文献1】特開2004−170226号公報
【特許文献2】特開2004−184122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、X線検出器には様々なタイプのものがあるが、いずれも、決まった視野および画素数を有し、その出力は、最終的には各画素の濃度値とするデジタルデータとなる。この視野と画素数は、用いるX線検出器によって一意的に定まり、一定の視野中の画素数が多い検出器を用いることにより、高い分解能のX線透視像もしくはX線断層像が得られることになる反面、コストアップになるという問題がある。また、サイズの検出器であれば、画素数が増えることにより感度が低下することは避けられない。
【0007】
本発明の課題は、殆どコストアップを伴うことなく、かつ、感度を低下させることなく、高分解能のX線透視像もしくはX線断層像を得ることのできるX線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明のX線撮影装置は、互いに対向配置されたX線源とX線検出器の間に、被写体を保持する保持部が配置されているとともに、その保持部に保持された被写体にX線を照射して上記X線検出器の出力を取り込む撮影動作により得られるX線透過データを用いて、被写体のX線像を構築する画像形成手段を備えたX線撮影装置において、上記X線検出器を、上記X線源からのX線光軸に直交する平面上で、当該X線検出器の画素ピッチの整数分の一のピッチで移動させることのできる検出器移動機構を備え、上記X線画像形成手段は、その検出器移動機構によりX線検出器を上記整数分の一のピッチでずらせた複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱って被写体のX線像を構築することによって特徴づけられる。
【0009】
ここで、請求項1に係る発明においては、上記X線検出器をフラットパネル型のX線検出器とすること(請求項2)が好ましい。
【0010】
また、請求項1に係る発明においては、上記X線検出器をイメージインテンシファイアとCCDカメラとからなるX線検出器とすることもでき、その場合、上記検出器移動機構は、CCDカメラを当該CCDカメラの画素ピッチの整数分の一のピッチで移動させることのできる機構とする(請求項3)。
【0011】
また、同じ課題を解決するため、請求項4に係る発明においては、上記検出器移動機構に代えて、上記X線源を、当該X線源からのX線光軸に直交する平面上で、上記X線検出器の画素ピッチの整数分の一のピッチで移動させることのできるX線源移動機構を設け、上記X線画像形成手段は、そのX線源移動機構により上記整数分の一のピッチでX線源をずらせた複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱って被写体のX線像を構築する。
【0012】
更に、同じ課題を解決するため、請求項5に係る発明においては、上記検出器移動機構またはX線源移動機構に代えて、上記保持部を、上記X線源からはのX線光軸に直交する平面上で、上記X線検出器の画素ピッチの整数分の一のピッチで移動させることのできる保持部移動機構を設け、上記X線画像形成手段は、その保持部移動機構により上記整数分の一のピッチでずらせた複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱って被写体のX線像を構築する。
【0013】
そして、以上の各発明において、上記画像形成手段が上記X線透過データを用いて被写体のX線透過像を形成する手段である場合、つまり上記した各発明をX線透視装置に適用する場合には、画像形成手段は、上記複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを合成して1枚のX線透過像を形成する(請求項6)。
【0014】
一方、以上の各発明において、上記保持部に保持された被写体に上記X線光軸に直交する回転軸を中心とした回転を与える回転駆動手段を備えるとともに、上記撮影動作が、X線を照射しつつ被写体を回転させ、その微小回転角度ごとにX線透過データを取り込む動作であり、上記画像形成手段が、その撮影動作により取り込んだX線透過データを再構成して上記回転軸に直交する被写体の断層像を構築する手段である場合、つまり上記した各発明をX線CT装置に適用する場合には、上記画像形成手段は、上記複数の位置においてそれぞれ被写体を回転させて取り込んだX線透過データを、1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱って被写体の断層像を構築する(請求項7)。
【0015】
本発明は、X線源、被写体の保持部、およびX線検出器のうちのいずれか一つを、X線源からのX線光軸に直交する平面上で、X線検出器の画素ピッチの整数分の一のピッチで他の二つに対して相対的にずらせた複数の位置で取り込んだX線透過データを、1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱うことにより、課題を解決しようとするものである。
【0016】
すなわち、X線源、被写体の保持部、およびX線検出器のいずれか一つを他の二つに対して、例えばX線検出器の画素ピッチの1/2のピッチでX線光軸に直交する平面上で互いに直交する2方向にそれぞれずらせた合計4箇所において取り込んだX線透過データを、1回の撮影により得られるX線透過データとして取り扱ってX線透視像ないしはX線断層像を構築すると、これらの画像の空間分解能はX線検出器が本来的に有している空間分解能に比して4倍に向上し、かつ、感度はX線検出器が本来的に有しているものと変わらない。
【0017】
X線源、被写体の保持部、およびX線検出器のうち、X線検出器を移動させる構成を採用すると、X線源からのX線照射角に起因する画像の歪みが生じないという利点がある。そして、X線検出器として、イメージインテンシファイアとCCDカメラを用いる場合には実際にはCCDカメラを移動させる。その際、イメージインテンシファイアを用いるが故の画像の歪みは計算により補正することができる。一方、フラットパネルディテクタ(以下、FPDと称する)を用いると検出器による歪みは生じず上記の補正演算が不要となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、同じX線検出器を用いても、従来のX線撮影装置に比してより解像度の高いX線透視像もしくはX線断層像を得ることができ、しかも、感度の低下もない。これにより、安価で高解像度のX線透視装置もしくはX線CT装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明をX線透視装置に適用した実施の形態の構成図であり、機械的構成を表す模式図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【0020】
X線源発生装置1はその焦点1aからコーン状のX線を出力する。このX線発生装置1に対向して2次元の検出面を持つX線検出器2が配置されている。このX線検出器2はFPDである。これらのX線発生装置1とX線検出器2の間に、被写体Wを保持する被写体保持部3が配置されている。
【0021】
この被写体保持部3は、保持部移動機構4によりX線光軸Lの方向(z軸方向)と、そのz軸方向に直交する平面上で互いに直交するx,y軸方向の合計3軸方向に移動させることができる。この保持部移動機構4の駆動による被写体保持部3のz軸方向への移動によりSODが変化し、撮影倍率を変化させることができ、また、x,y軸方向への移動により、被写体W上での撮影領域を変化させることができる。
【0022】
この実施の形態における機構上の特徴は、X線検出器2をX線光軸Lに直交する平面上、つまりx,y軸方向に微動させる検出器微動機構5を備えている点である。この検出器微動機構5により、X線検出器2をその画素ピッチの整数分の一、例えば1/2のピッチでx,y軸方向に微動させることができる。
【0023】
X線検出器2からの各画素出力、つまりX線透過データは、キャプチャーボード等の画像データ取り込み回路10を介してパーソナルコンピュータ11に取り込まれて記憶される。パーソナルコンピュータ11では、その記憶したX線透過データを用いて後述するように被写体WのX線透視像を形成し、表示器12に表示する。
【0024】
また、パーソナルコンピュータ11には、マウスやキーボード、ジョイスティック等の操作部13が接続されているとともに、上記した保持部移動機構4および検出器微動機構5に対してそれぞれの駆動信号を供給するための保持部移動機構駆動回路14および検出器微動機構駆動回路15が接続されており、これらの駆動回路14,15はこのパーソナルコンピュータ11の制御下に置かれている。そして、操作部13の操作により、保持部移動機構4を駆動して被写体保持部3をx,y,z軸方向に随意に移動させることができ、また、この操作部13の操作によりX線透視像の撮影モードとして、通常モードと高解像度モードのいずれかを選択できるようになっている。
【0025】
通常モードを選択した場合には、X線発生装置1からX線を照射して被写体保持部3を移動させて所要位置に位置決めすることにより、従来のX線透視装置と同様に、X線検出器2の各画素からのX線透過データを各画素の配列に対応して画面上で配列することにより、被写体WのX線透視像を構築して表示器12に表示する。
【0026】
一方、高解像度モードを選択した場合には、X線発生装置1からのX線を照射して被写体保持部3を位置決めした後、その旨を操作部13で入力することにより、以下の手順により検出器微動機構5を自動的に駆動しつつ、各画素からのX線透過データを取り込む。
【0027】
すなわち、X線検出器2の画素ピッチが図2(A)に示すように、x,y軸方向にそれぞれaであったとすると、まず、初期位置において各画素PからのX線透過データを取り込んで記憶し(1回目の撮影)、次に、自動的にx軸方向に+a/2だけX線検出器2を移動させた後、各画素PからのX線透過データを取り込んで記憶し(2回目の撮影)、更に自動的にy軸方向にa/2だけX線検出器2を移動させた後、各画素PからのX線透過データを取り込んで記憶し(3回目の撮影)、更にまた自動的にx軸方向にX線検出器2を−a/2だけ移動させた後、各画素PからのX線透過データを取り込んで記憶する(4回目の撮影)。
【0028】
図2(B)は、以上の撮影動作により得られるX線透過データの空間分布を示す図であり、1〜4回目の撮影により得られるX線透過データをT1〜T4で表して模式的に示している。この図に示されるように、合計4回の撮影により得られるX線透過データの合計の空間分解能は、画素ピッチがa/2のX線検出器により得られるデータの空間分解能と等価となる。
【0029】
パーソナルコンピュータ11では、以上のように合計4回の撮影により取り込んだ全てのX線透過データT1〜T4を用いて被写体WのX線透過像を構築して表示器12に表示する。このようにして得られるX線透過像は、従って、実質的に画素ピッチがa/2のX線検出器を用いて撮影して構築したX線透過像と等しくなり、その空間分解能は実際のX線検出器2により上記した通常モードで撮影・構築したX線透過像の4倍となる。しかも、X線検出器2の実際の画素ピッチはaであるため、画素ピッチa/2のX線検出器を用いて撮影する場合に比して、その感度は高いものとなる。
【0030】
ここで、以上の実施の形態においては、X線検出器2をx,y軸方向に微動させる場合の例について述べたが、これに代えて、被写体保持部3もしくはX線源(焦点1a)をx,y,z軸方向に移動させても同等の作用効果を奏することができる。
【0031】
被写体保持部3を微動させる場合には、保持部移動機構4のx,y軸方向への移動機能をそのまま用いることができる。また、X線源(焦点1a)を微動させる場合には、図3に模式的構成図を示すように、X線発生装置1をx,y軸方向に微動させるX線源微動機構6を設ければよい。
【0032】
被写体WもしくはX線生装置1を微動させる場合には、図4に模式的に示すように、微動前後の撮影により、被写体Wの同じ位置Wpを異なる方向から透視したデータが得られることになり、微動前後の画像に若干の歪みが生じることになるが、被写体Wの位置(座標)があらかじめわかっている場合には、公知の手法によりこの歪みを計算により補正することができ、z軸方向のある座標を通るx−y平面において歪みのない画像を作ることができる。また、X線の照射角度が狭い場合には、この歪みを無視することができる。
【0033】
次に、本発明をX線CT装置に適用した実施の形態について説明する。
図5はその実施の形態の構成図であり、機械的構成を表す模式的正面図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図で、図6には機械的構成の模式的平面図を示す。
【0034】
X線発生装置21とX線検出器22とが対向配置されており、これらの間に被写体Wを保持して回転を与えるための回転テーブル23が配置されている。X線発生装置21は、この例においても焦点21aからコーン状にX線を発生する。また、X線検出器22についても、先の例と同様に2次元の検出面を持つFPDである。
【0035】
回転テーブル23の回転軸Rは、X線発生装置21からのX線光軸L(x軸方向)に直交するz軸方向に沿っている。この回転テーブル23は、テーブル移動機構24により、X線光軸方向であるx軸方向と、そのx軸に直交するy,z軸方向に移動させることができるようになっている。
【0036】
この例においては、回転テーブル23の上に、被写体Wを搭載保持してX線光軸Lに直交するy,z軸方向に微動させる被写体微動機構25が配置されている。この被写体微動機構25により、被写体WをX線検出器22の画素ピッチaの整数分の一、例えば1/2のピッチでy軸方向およびz軸方向に微動させることができる。
【0037】
回転テーブル23は回転テーブル駆動回路31からの駆動信号により回転し、また、テーブル移動機構24および被写体微動機構25は、それぞれテーブル移動機構駆動回路32および被写体微動機構駆動回路33からの信号によって駆動制御される。これらの回転テーブル駆動回路31、テーブル移動機構駆動回路32および被写体微動機構駆動回路33はパーソナルコンピュータ34の制御下に置かれている。このパーソナルコンピュータ34には断層像再構成演算装置35が接続されているとともに、マウスやキーボード、あるいはジョイスティック等からなる操作部36と、断層像等を表示するための表示器37が接続されている。
【0038】
CT撮影に際しては、回転テーブル23上の被写体微動機構25上に載せられた被写体Wに対してX線を照射しながら、その被写体Wを回転軸Rの回りに微小角度ずつ回転させ、その各回転角度ごとにX線検出器2の各画素出力であるX線透過データを断層像再構成演算装置35に取り込む。この断層像再構成演算装置35では、その取り込んだX線透過データを後述するように再構成することにより、操作部36を通じて設定されるスライス面(z軸方向任意の位置におけるx−y平面)に沿った被写体Wの断層像を構築し、表示器37に表示する。
【0039】
また、CT撮影に先立ち、操作部36の操作によりテーブル移動機構34を移動させてSODの設定による撮影倍率の設定、あるいは被写体Wの注目領域を視野中心に移動させる等を行うとともに、同じく操作部36の操作によりCT撮影のモードとして、通常モードと高解像度モードを選択できるようになっている。
【0040】
通常モードを選択した場合には、上記したようにX線を照射しながら被写体Wを微小角度ずつ360°にわたって回転させ、断層像再構成演算装置35では、従来のX線CT装置と同様に、その各回転角度ごとにX線検出器2からの各画素出力を取り込んで記憶し、これらを用いた再構成演算により、被写体Wの断層像を構築する。
【0041】
一方、高解像度モードを選択した場合には、断層像再構成演算装置35は当初の位置において上記と同様にX線検出器2の各画素からのX線透過データを取り込んで記憶し(1回目のCT撮影)、次に、パーソナルコンピュータ34から供給される制御信号のもとに被写体微動機構25を駆動して、被写体WをX線検出器2の画素ピッチaの1/2だけy軸方向に自動的に移動させた後、同様にX線検出器2の各画素からのX線透過データを取り込んで記憶し(2回目のCT撮影)、更に被写体微動機構25の駆動により被写体Wを自動的にz軸方向にa/2だけ移動させた後、各画素からのX線透過データを取り込んで記憶し(3回目のCT撮影)、更にまた被写体微動機構25の駆動により自動的に被写体Wをy軸方向に上記とは逆向きにa/2だけ移動させた後、各画素からのX線透過データを取り込んで記憶する(4回目のCT撮影)。
【0042】
以上の4回のCT撮影により得られるX線透過データの合計は、前記した図2(B)で示すように、本来のX線検出器2の空間分解能の4倍の空間分解能のX線透過データとなる。断層像再構成演算装置35では、この合計4回のCT撮影により得られた全てのX線透過データを一体として取扱い、つまり実質的に1回のCT撮影により得られたX線透過データとして取扱い、被写体Wの断層像を再構成する。従って、得られる断層像は、前記した通常モードでCT撮影して得られる断層像、換言すればX線検出器22と同じ空間分解能のX線検出器を用いた従来のX線CT装置で得られる断層像に比して、空間分解能が4倍に向上する。
【0043】
ここで、以上の実施の形態においては、回転テーブル23の上に被写体Wを微動させるための被写体微動機構25を設けて、被写体WをX線検出器22の画素ピッチの1/2のピッチでずらせてCT撮影した例を示したが、X線検出器22をy,z軸方向に画素ピッチの1/2のピッチでずらせてCT撮影しても、同等の作用効果を奏することができ、また、X線発生装置21(焦点21a)を同様のピッチでy,z軸方向にずらせてCT撮影しても同等の効果を奏することができる。
【0044】
なお、上記した各例においては、X線検出器としていずれもFPDを用いたが、イメージインテンシファイアとCCDとを組み合わせたX線検出器を用いてもよい。この場合、X線検出器の微動に際しては、実際にはCCDを微動させることがよく、また、イメージインテンシファイアへの入射位置の相違に起因して生じる画像の歪みについては、必要に応じて公知の計算方法によりにより補正を行えばよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明をX線透視装置に適用した実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図2】本発明の実施の形態による撮影動作で得られるX線透過データの説明図で、(A)はX線検出器2の画素の配列例の説明図であり、(B)は(A)のX線検出器2を微動させて4回にわたる撮影により得られるX線透過データの空間分布の説明図である。
【図3】本発明をX線透視装置に適用した他の実施の形態の機械的構成を表す模式図である。
【図4】本発明においてX線源もしくは被写体を微動させる場合に、その微動前後の撮影により被写体Wの同じ位置Wpを透過したX線が入射するX線検出器の位置の説明図である。
【図5】本発明をX線CT装置に適用した実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式的正面図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図6】図5における機械的構成の模式的平面図である。
【図7】従来のX線透視装置の基本的構成例を示す模式図である。
【図8】従来のX線CT装置の基本的構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0046】
1,21 X線発生装置
1a,21a 焦点(X線源)
2,22 X線検出器
3 被写体保持部
4 保持部移動機構
5 検出器微動機構
10 画像データ取り込み回路
11 パーソナルコンピュータ
12 表示器
13 操作部
14 保持部移動機構駆動回路
15 検出器微動機構駆動回路
23 回転テーブル
24 テーブル移動機構
25 被写体微動機構
31 回転テーブル駆動回路
32 テーブル移動機構駆動回路
33 被写体微動機構駆動回路
34 パーソナルコンピュータ
35 断層像再構成演算装置
36 操作部
37 表示器
L X線光軸
R 回転軸
W 被写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置されたX線源とX線検出器の間に、被写体を保持する保持部が配置されているとともに、その保持部に保持された被写体にX線を照射して上記X線検出器の出力を取り込む撮影動作により得られるX線透過データを用いて、被写体のX線像を構築する画像形成手段を備えたX線撮影装置において、
上記X線検出器を、上記X線源からのX線光軸に直交する平面上で、当該X線検出器の画素ピッチの整数分の一のピッチで移動させることのできる検出器移動機構を備え、上記X線画像形成手段は、その検出器移動機構によりX線検出器を上記整数分の一のピッチでずらせた複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱って被写体のX線像を構築することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
上記X線検出器がフラットパネル型のX線検出器であることを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
上記X線検出器がイメージインテンシファイアとCCDカメラとからなるX線検出器であって、上記検出器移動機構は、CCDカメラを当該CCDカメラの画素ピッチの規定分の一の距離だけずらせることを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
互いに対向配置されたX線源とX線検出器の間に、被写体を保持する保持部が配置されているとともに、その保持部に保持された被写体にX線を照射して上記X線検出器の出力を取り込む撮影動作により得られるX線透過データを用いて、被写体のX線像を構築する画像形成手段を備えたX線撮影装置において、
上記X線源を、当該X線源からのX線光軸に直交する平面上で、上記X線検出器の画素ピッチの整数分の一のピッチで移動させることのできるX線源移動機構を設け、上記X線画像形成手段は、そのX線源移動機構により上記整数分の一のピッチでX線源をずらせた複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱って被写体のX線像を構築することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項5】
互いに対向配置されたX線源とX線検出器の間に、被写体を保持する保持部が配置されているとともに、その保持部に保持された被写体にX線を照射して上記X線検出器の出力を取り込む撮影動作により得られるX線透過データを用いて、被写体のX線像を構築する画像形成手段を備えたX線撮影装置において、
上記保持部を、上記X線源からのX線光軸に直交する平面上で、上記X線検出器の画素ピッチの整数分の一のピッチで移動させることのできる保持部移動機構を設け、上記X線画像形成手段は、その保持部移動機構により上記整数分の一のピッチで保持部をずらせた複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱って被写体のX線像を構築することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項6】
上記画像形成手段が、上記X線透過データを用いて被写体のX線透過像を形成する手段であり、上記複数の位置においてそれぞれ取り込んだX線透過データを合成して1枚のX線透過像を形成することを特徴とする請求項1、2、3、4、または5に記載のX線撮影装置。
【請求項7】
上記保持部に保持された被写体に上記X線光軸に直交する回転軸を中心とした回転を与える回転駆動手段を備えるとともに、上記撮影動作が、X線を照射しつつ被写体を回転させ、その微小回転角度ごとにX線透過データを取り込む動作であり、上記画像形成手段が、その撮影動作により取り込んだX線透過データを再構成して上記回転軸に直交する被写体の断層像を構築する手段であって、上記複数の位置においてそれぞれ被写体を回転させて取り込んだX線透過データを、1回の撮影動作により得られるX線透過データとして取り扱って被写体の断層像を構築することを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−317249(P2006−317249A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139486(P2005−139486)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】