説明

X線撮影装置

【課題】被検者が撮影台への乗り降りを容易にするため、術者が撮影台を下降させると、X線管が上昇し、被検者とコリメータとの衝突を回避するX線撮影装置を提供する。
【解決手段】高さ検知手段11が位置検出手段8の出力電圧(撮影台6の高さ位置)が所定の高さ(電圧)以下になったことを検知した場合に、あるいは時間検知手段12が撮影台6が下降中の間計数される時間が所定の時間以上になったことを検知した場合に、あるいは距離検知手段13が撮影台6の下側への移動距離が所定の距離(電圧)以上になったことを検知した場合に、X線管上下制御部14はX線管上下駆動部5に対しX線管3を上方に移動するように指令する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影装置に係り、特に撮影前後に被検者が撮影台に乗り降りする際、被検者とX線管の下部に保持されたコリメータとの衝突防止のため、X線管を待避させる制御手段に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮影装置は、図2に示すとおり、焦点3aを有するX線管3を懸架し、かつ上下駆動するX線管上下駆動部5を備えたX線管懸架装置1と、X線管3の下部に設置され、被検者を載架する撮影台6と、被検者を透過したX線の画像を得るフィルム・カセット4と、この撮影台6を上下駆動する撮影台上下駆動部7と、撮影台6の高さ位置を検出する位置検出手段8を備えたX線撮影台装置2などで構成される。
【0003】
X線管3の高さ位置は、手動による操作で上下に移動可能であり、またX線管上下駆動部5に配設されたモーターによっても上下に移動可能である。被検者を載架する撮影台6はモーターにより上下に昇降可能な構成になっており、図示しないフットスイッチの上昇ボタンを押すと撮影台6はフィルム・カセット4とともに上昇し、下降ボタンを押すと撮影台6はフィルム・カセット4とともに下降する。X線管懸架装置1に配設された図示しない操作部の連動スイッチを押すと、撮影台6の高さ位置を変化させた場合、焦点3aとフィルム・カセット4の検出面との距離(撮影距離)が事前に設定されている撮影距離を維持するようにX線管3の高さ位置が制御される。
【0004】
撮影に際し、術者は撮影台6に載架される被検者のために撮影台6の高さ位置を下降させる。次に術者は撮影前に被検者の撮影部位の位置合わせを行うため、撮影台6の高さ位置を術者に都合の良い位置に上昇させる。このように撮影台6の高さ位置を変化させても、前記連動スイッチを押すことにより、事前に設定されている撮影距離を維持するようにX線管3の高さ位置が制御される。被検者を撮影台6上に横に寝かせて行うX線撮影の撮影距離は一般的に1m前後に設定されることが多い。このため、撮影後すぐに被検者が起き上がるとX線管3の下部に保持されたコリメータとの衝突を生起する恐れがある。また、撮影台6の位置が高く被検者が撮影台6から降りる際に落下の危険があるため、術者は撮影台6を下降させる。
【0005】
一方、フィルム・カセットを撮影台の上部に置くような一般撮影の場合は、撮影術式の選択に連動して、撮影距離の算定にフィルム・カセットの位置が異なることを識別して、この高さの違いを考慮した撮影距離の算定が行われることにより、異なる撮影術式に対応して自動的に適正な撮影距離の設定が行われるX線撮影装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−68487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被検者が撮影台6への乗り降りを容易にするため術者は撮影台6を下降させるとともに、被検者とコリメータとの衝突を避けるため、あるいは被検者の起き上がりを容易にするために術者はX線管3を上昇させる必要がある。X線管3の上昇操作を術者が失念した場合、被検者とコリメータとの衝突の危険が生起する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、X線管を懸架し、かつ上下駆動するX線管上下駆動部を備えたX線管懸架装置と、前記X線管の下部に設置され、被検者を載架する撮影台と、この撮影台を上下駆動する撮影台上下駆動部と、前記撮影台の高さ位置を検出する位置検出手段とを有するX線撮影台装置を備えたX線撮影装置において、前記位置検出手段に接続される高さ検知手段と、前記高さ検知手段が前記撮影台の高さが所定の高さ以下であることを検知した場合に、前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるX線管上下制御部を備えるものである。
【0009】
さらに本発明は、X線管を懸架し、かつ上下駆動するX線管上下駆動部を備えたX線管懸架装置と、前記X線管の下部に設置され、被検者を載架する撮影台と、この撮影台を上下駆動する撮影台上下駆動部とを有するX線撮影台装置を備えたX線撮影装置において、前記撮影台が下降中の時間を計数する時間検知手段と、前記時間検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の時間以上移動したことを検知した場合に、前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるX線管上下制御部を備えるものである。
【0010】
さらに本発明は、X線管を懸架し、かつ上下駆動するX線管上下駆動部を備えたX線管懸架装置と、前記X線管の下部に設置され、被検者を載架する撮影台と、この撮影台を上下駆動する撮影台上下駆動部と、前記撮影台の高さ位置を検出する位置検出手段とを有するX線撮影台装置を備えたX線撮影装置において、前記位置検出手段に接続される距離検知手段と、前記距離検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の距離以上移動したことを検知した場合に、前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるX線管上下制御部を備えるものである。
【0011】
さらに本発明は、前記高さ検知手段が前記撮影台の高さが所定の高さ以下であることを検知し、かつ前記時間検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の時間以上移動したことを検知したとき前記X線管上下制御部は前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるものである。
【0012】
さらに本発明は、前記時間検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の時間以上移動したことを検知し、かつ前記距離検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の距離以上移動したことを検知したとき前記X線管上下制御部は前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるものである。
【0013】
さらに本発明は、前記高さ検知手段が前記撮影台の高さが所定の高さ以下であることを検知し、かつ前記距離検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の距離以上移動したことを検知したとき前記X線管上下制御部は前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるものである。
【0014】
さらに本発明は、前記高さ検知手段が前記撮影台の高さが所定の高さ以下であることを検知し、かつ前記時間検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の時間以上移動したことを検知し、かつ前記距離検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の距離以上移動したことを検知したとき前記X線管上下制御部は前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるものである。
【0015】
したがって、(1)撮影台の高さを所定の高さ以下にした場合、(2)撮影台の高さを下側に所定の時間以上移動した場合、(3)撮影台の高さを下側に所定の距離以上移動した場合のおのおのの場合X線管は上側へ移動する。あるいは上記3つの場合の内2つまたは3つが同時に生起したときX線管は上側へ移動する。
【発明の効果】
【0016】
被検者が撮影台への乗り降りを容易にするため術者が撮影台を下降させると、X線管は自動的に上昇し、被検者とコリメータとの衝突を回避できるとともに、被検者が容易に起き上がることができる空間ができる。術者は被検者の安全のために従来行っていたX線管の上昇操作を実行する必要がなく診断に専念できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例によるX線撮影装置の概略構成を示す図である。
【図2】従来のX線撮影装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、被検者が撮影台への乗り降りの際、コリメータとの衝突を回避するためにX線管を待避させる制御手段を備えたX線撮影装置に関するものである。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例について図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施例によるX線撮影装置の概略構成を示す図である。本発明の実施例によるX線撮影装置は、図1に示すとおり、焦点3aを有するX線管3を懸架し、かつ上下駆動するX線管上下駆動部5を備えたX線管懸架装置1と、X線管3の下部に設置され、被検者を載架する撮影台6と、被検者を透過したX線の画像を得るフィルム・カセット4と、この撮影台6を上下駆動する撮影台上下駆動部7と、撮影台6の高さ位置を検出する位置検出手段8を備えたX線撮影台装置2と、位置検出手段8またはフットスイッチ9からの入力信号をそれぞれ信号処理し所定の値と比較して検知した結果によりX線管上下駆動部5を制御する制御部10などで構成される。
【0020】
X線管3の高さ位置は、手動による操作で上下に移動可能であり、またX線管上下駆動部5に配設されたモーターによっても上下に移動可能である。被検者を載架した撮影台6はモーターにより上下に昇降可能な構成になっており、フットスイッチ9の上昇ボタンを押すと撮影台6はフィルム・カセット4とともに上昇し、下降ボタンを押すと撮影台6はフィルム・カセット4とともに下降する。X線管懸架装置1に配設された図示しない操作部の連動スイッチを押すと、撮影台6の高さ位置を変化させた場合、焦点3aとフィルム・カセット4の検出面との距離(撮影距離)が事前に設定されている撮影距離を維持するようにX線管3の高さ位置が制御される。この撮影距離は1m近傍に設定されることが多い。
【0021】
位置検出手段8は、例えば撮影台6の上下駆動機構に軸着されたポテンショメータの抵抗値が撮影台6の高さ位置に一対一で対応するように構成され、該抵抗値は電圧に変換され出力される。制御部10は、高さ検知手段11と、時間検知手段12と、距離検知手段13と、X線管上下制御部14などで構成される。
【0022】
高さ検知手段11は、制御部10に保存されている所定の高さ(電圧)と位置検出手段8の出力電圧を比較する比較回路で構成される。高さ検知手段11が位置検出手段8の出力電圧が所定の高さ(電圧)以下であることを検知した場合に、X線管上下制御部14はX線管上下駆動部5に対しX線管3を上方に移動するように指令する。該所定の高さ(電圧)は、被検者が撮影台6に乗り降り容易な高さの近傍の値をもとに予め定められ制御部10に保存される。
【0023】
時間検知手段12は、フットスイッチ9の下降ボタンが押されている間、時間を計数する時計と、該時計の計数時間と予め決められ制御部10に保存されている所定の時間とを比較する比較器で構成される。時間検知手段12が該時計の計数時間が所定の時間以上になったことを検知した場合に、X線管上下制御部14はX線管上下駆動部5に対しX線管3を上方に移動するように指令する。該所定の時間は、予め定められ制御部10に保存される。
【0024】
距離検知手段13は、フットスイッチ9の下降ボタンが押されたときの位置検出手段8の出力電圧を記憶する記憶回路と、該記憶された電圧から位置検出手段8の出力電圧を減算し下側に移動した距離(電圧)を出力する減算回路と、制御部10に保存されている所定の距離(電圧)と減算回路の出力電圧とを比較する比較回路で構成される。距離検知手段13が該減算回路の出力電圧が所定の距離(電圧)以上になったことを検知した場合に、X線管上下制御部14はX線管上下駆動部5に対しX線管3を上方に移動するように指令する。該所定の距離(電圧)は、予め定められ制御部10に保存される。
【0025】
本発明は、以上の構成であるから、X線撮影完了後、撮影台6に載架された被検者が撮影台6から降りやすくするために、術者がフットスイッチ9の下降ボタンを押し撮影台6の高さ位置を下降させると、撮影台6の高さ位置が(1)所定の高さ以下になった場合、(2)下側に所定の時間以上移動した場合、(3)下側に所定の距離以上移動した場合、のずれかの場合が制御部10により検知され、X線管3を上側へ移動させ、被検者とコリメータとの衝突を回避する。術者は、X線管3と撮影台6との距離が十分開いたことを確認した後、撮影台6上の被検者に起き上がるよう指示する。
【0026】
上述のように、術者は被検者とコリメータとの衝突を回避するためにX線管3を上側へ移動させる操作が不要となるため、この操作にともなう時間が不要となり、被検者が起き上がるまでの時間が短縮可能であり、診察の効率化が期待できる。一方、術者が被検者の撮影部位の位置合わせを行うため、撮影台6の高さ位置を都合の良い高い位置に合わせるために上昇・下降操作をした場合は、制御部10は上述の(1)、(2)、(3)のいずれの場合をも検知することはなく、X線管3は上側へ移動しない。
【0027】
図に示す実施例においては、X線管上下制御部14は、高さ検知手段11、時間検知手段12、あるいは距離検知手段13からの検知信号を受けるとそれぞれ個々にX線管上下駆動部5を介してX線管3を上方に移動させているが、検知信号が、高さ検知手段11と時間検知手段12から同時に発信されたとき、あるいは時間検知手段12と距離検知手段13から同時に発信されたとき、あるいは高さ検知手段11と距離検知手段13から同時に発信されたとき、X線管上下制御部14はX線管上下駆動部5を介してX線管3を上方に移動させる構成でも本発明は適用可能である。あるいは検知信号が、高さ検知手段11および時間検知手段12および距離検知手段13から同時に発信されたとき、X線管上下制御部14はX線管上下駆動部5を介してX線管3を上方に移動させても本発明は適用可能である。
【0028】
また、実施例においては、X線撮影完了後、撮影台6に載架された被検者が撮影台6から降りやすくするために撮影台6を降下させたときにX線管3を上方に移動させているが、X線撮影の前、被検者が撮影台6に乗り易いように撮影台6を降下させるときにX線管3を上方に移動させる場合についても本発明は適用可能である。上述のとおり本発明は図示例に限定されるものではなく種々の変形例を包含する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、X線撮影装置に係り、特に撮影前後に被検者が撮影台に乗り降りする際、被検者とX線管の下部に保持されたコリメータとの衝突防止のため、X線管を待避させる制御手段に利用の可能性がある。
【符号の説明】
【0030】
1 X線管懸架装置
2 X線撮影台装置
3 X線管
3a 焦点
4 フィルム・カセット
5 X線管上下駆動部
6 撮影台
7 撮影台上下駆動部
8 位置検出手段
9 フットスイッチ
10 制御部
11 高さ検知手段
12 時間検知手段
13 距離検知手段
14 X線管上下制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管を懸架し、かつ上下駆動するX線管上下駆動部を備えたX線管懸架装置と、前記X線管の下部に設置され、被検者を載架する撮影台と、この撮影台を上下駆動する撮影台上下駆動部と、前記撮影台の高さ位置を検出する位置検出手段とを有するX線撮影台装置を備えたX線撮影装置において、前記位置検出手段に接続される高さ検知手段と、前記高さ検知手段が前記撮影台の高さが所定の高さ以下であることを検知した場合に、前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるX線管上下制御部を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
X線管を懸架し、かつ上下駆動するX線管上下駆動部を備えたX線管懸架装置と、前記X線管の下部に設置され、被検者を載架する撮影台と、この撮影台を上下駆動する撮影台上下駆動部とを有するX線撮影台装置を備えたX線撮影装置において、前記撮影台が下降中の時間を計数する時間検知手段と、前記時間検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の時間以上移動したことを検知した場合に、前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるX線管上下制御部を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項3】
X線管を懸架し、かつ上下駆動するX線管上下駆動部を備えたX線管懸架装置と、前記X線管の下部に設置され、被検者を載架する撮影台と、この撮影台を上下駆動する撮影台上下駆動部と、前記撮影台の高さ位置を検出する位置検出手段とを有するX線撮影台装置を備えたX線撮影装置において、前記位置検出手段に接続される距離検知手段と、前記距離検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の距離以上移動したことを検知した場合に、前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させるX線管上下制御部を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項4】
前記高さ検知手段が前記撮影台の高さが所定の高さ以下であることを検知し、かつ前記時間検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の時間以上移動したことを検知したとき前記X線管上下制御部は前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させることを特徴とする請求項1および2項記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記時間検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の時間以上移動したことを検知し、かつ前記距離検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の距離以上移動したことを検知したとき前記X線管上下制御部は前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させることを特徴とする請求項2および3項記載のX線撮影装置。
【請求項6】
前記高さ検知手段が前記撮影台の高さが所定の高さ以下であることを検知し、かつ前記距離検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の距離以上移動したことを検知したとき前記X線管上下制御部は前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させることを特徴とする請求項1および3項記載のX線撮影装置。
【請求項7】
前記高さ検知手段が前記撮影台の高さが所定の高さ以下であることを検知し、かつ前記時間検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の時間以上移動したことを検知し、かつ前記距離検知手段が前記撮影台の高さが下側に所定の距離以上移動したことを検知したとき前記X線管上下制御部は前記X線管上下駆動部を介して前記X線管を上側へ移動させることを特徴とする請求項1、2項および3項記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−72343(P2011−72343A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223954(P2009−223954)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】