説明

X線撮影装置

【課題】撮影上適切な被験者の体の位置を容易に把握でき、また、体との接触面における違和感を軽減できるX線撮影装置を提供する。
【解決手段】撮像部121の撮像面13を覆うクッション部材122の面14の中央部が、左右の縁部に比べて内側へ凹む方向に湾曲しており、この湾曲した中央部が撮像面13の中央部と対応する位置に設けられている。従って、面14の左右の縁に被験者の左右の肩を当接させるとともにその湾曲した中央部に被験者の胸部の中央を当接させるようにすることで、被験者の胸部の中央と撮像面13の中央部とを容易に合わせることができる。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生源から照射されて被検者の体を透過したX線の画像を撮像するX線撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体を透過するX線を撮影することによって体内の臓器や骨格等を簡易に画像化できるX線撮影装置は、医療分野において古くから用いられており、撮影する部位や用途に応じた様々な形態のものが実用化されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−127624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
立位姿勢で胸部を撮影するX線撮影装置は、一般に、X線撮像体を内包する板状のカセッテが収容されたホルダを支柱に沿って上下へ移動可能に保持した構造となっている。撮影を行う場合は、カセッテのホルダを被験者の胸部の高さに合わせて固定し、ホルダの平らな面に被験者の胸部を密着させた状態で、被験者の背面からX線が照射される。
【0005】
ところが、従来のX線撮影装置では、被験者の胸部を接触させる面が平らであるため、被験者がどの位置に胸部を当てれば適切に撮影を行えるのかを把握し難いという問題があった。また、この接触面が弾力性のない硬い材料で形成されているため、胸部等の骨が当たるなどして被験者に違和感を与えるという問題もあった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮影上適切な被験者の体の位置を容易に把握でき、また、体との接触面における違和感を軽減できるX線撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するために、本発明のX線撮影装置は、被験者の体を透過したX線が入射する撮像面を備え、前記撮像面に入射したX線の画像を撮像する撮像部と、前記撮像面を覆う弾力性を持ったクッション部材とを有し、前記クッション部材は、左右の縁部に比べて中央部が内側へ凹む方向若しくは外側へ突出する方向に湾曲した第1の面を備え、前記被験者の左右の肩が前記左右の縁部に当接され、前記被験者の胸部の中央が前記中央部に当接される。
【0008】
好適に、前記第1の面の湾曲した前記中央部が、前記撮像面の中央部と対応する位置に設けられている。
【0009】
好適に、前記クッション部材は、前記第1の面の上辺に沿って前記第1の面と垂直に形成された第2の面を備え、前記第1の面の中央部に対応する前記第2の面の中央部には、内側へ凹んだ湾曲部が設けられており、前記被験者の顎部が前記第2の面の前記湾曲部に当接される。
【0010】
好適に、前記クッション部材は、前記第1の面の内側に弾力性を持った材料が充填されている、若しくは、気体が充填されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮像部の撮像面を覆う弾力性を持ったクッション部材に湾曲した面が設けられており、その湾曲面の左右の縁に被験者の左右の肩を当接させるとともに湾曲面の中央部に被験者の胸部を当接させるように構成されているため、被験者の体を撮影上適切な位置に容易に配置させることができる。また、体との接触面が弾力性を持ったクッション部材で覆われているため、違和感を効果的に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るX線撮影装置の構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、X線検出部の構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、X線検出部の他の構成例を示す図であり、X線検出部を上側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態として、立位姿勢の被験者の胸部等にX線を照射してその画像を撮影するX線撮影装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るX線撮影装置1の構成の一例を示す図である。図1に示すX線撮影装置1は、X線発生部11と、X線検出部12を有する。
【0014】
[X線発生部11]
図1の例において、X線発生部11は、X線撮影室の天井から支柱130によって吊り下げられている。支柱130は伸縮自在に構成されており、後述する操作パネル27の操作に応じて不図示のアクチュエータが作動することにより伸縮する。また、支柱130の末端部は、天井に敷設された不図示のレールに連結されており、図の左右方向やその垂直方向へ移動可能である。
【0015】
図1に示すX線発生部11は、円柱状のX線管21と、このX線管21に接続された箱状のX線絞り器23と、操作部パネル27と、操作ハンドル29を有する。
【0016】
X線管21は、陰極のフィラメントと陽極のターゲットを有する。フィラメントとターゲットの間に高電圧が印加されることにより、フィラメントから放出された電子がターゲットに衝突して、X線が発生する。
X線絞り器23は、X線を遮蔽する複数の鉛板製の絞り羽根を有する。各絞り羽根を変位させることで、X線管21が発生したX線の照射範囲を限定する。
【0017】
操作パネル27は、複数の操作ボタン及び表示部を備えたており、X線撮影装置1の操作に用いられる。
操作ハンドル29は、X線発生部11を手動で移動させる際に用いられる。
【0018】
[X線検出部12]
X線検出部12はX線発生部11から照射されるX線を検出する装置であり、X線撮影室の床面に立てられた支柱140に取り付けられている。支柱140は、X線検出部12を保持しながら上下方向へ移動させる可動機構を備える。
【0019】
X線検出部12は、X線画像を撮像する撮像部121と、その撮像部121を覆うクッション部材122を有する。
【0020】
撮像部121は、被験者の体を透過したX線が入射する撮像面を備えており、撮像面に入射するX線の強度に応じた2次元の画像を撮像する。撮像部121は、具体的には、2次元的なX線の強度を検出する撮像デバイスと、この撮像デバイスを収容するホルダを含む。ホルダは、支柱140の可動機構に固定され、撮像デバイスを収容した状態で上下方向に移動可能となっている。
撮像デバイスは、例えば、FPD(フラットパネルディテクタ)を用いて構成される。FPDは、画素毎に構成された複数のTFT(薄膜トランジスタ)がマトリックス状に配列されたアクティブマトリックス基板上に、アモルファスシリコン(a−Si)やアモルファスセレン(a−Se)などの光電変換層が形成された検出器である。FPDは、各画素に蓄積された電荷をTFTによって読み出すことにより、X線の2次元的な強度に応じた画像の情報を出力する。この撮像デバイスには、上述したFPDの他、画像記録媒体として輝尽性蛍光体を利用したIP(イメージングプレート)や、X線感光フイルム等を用いてもよい。
【0021】
クッション部材122は、撮像部121の撮像面を覆うカバーであり、例えばゴムやウレタンフォーム、スポンジなどの弾力性を持った材料を用いて構成される。具体的には、クッション部材122の表面は、例えばビニールや布などの柔軟性のあるシート材で形成され、その内部に弾力性のある材料が充填される。
【0022】
図2は、X線検出部12の構成の一例を示す図である。図2(A)はX線検出部12を上側から見た図であり、図2(B)はX線検出部12を撮像部121の撮像面13に対して垂直な方向から見た図である。
【0023】
図2(A)に示すように、クッション部材122は、左右の縁部に比べて中央部が内側へ凹む方向(撮像面13と垂直な方向)に湾曲した面14(第1の面)を備える。クッション部材122の面14の湾曲した中央部は、撮像部121の撮像面13の中央部と対応する位置に設けられている。従って、被験者の撮影部位(例えば胸部)の中央を面14の湾曲した中央部に合わせることにより、撮影部位の中央を撮像面13の中央部に合わせることができる。
【0024】
また、図2(B)に示すように、クッション部材122は、面14の上辺に沿って面14と垂直に形成された面15(第2の面)を備える。面14の湾曲した中央部に対応する面15の中央部には、内側へ凹んだ湾曲部16が設けられている。この湾曲部16には、被験者の顎部を置くことができる。
【0025】
上述したX線撮影装置1によって胸部撮影を行う場合は、まず、被験者の顎部がクッション部材122の湾曲部16と無理なく当接するように、X線検出部12を支柱140に沿って上下にスライドさせて、X線検出部12の床面からの高さを調節する。また、X線絞り器23から照射されるX線が撮像部121の撮像面13へ適切に照射されるように、支柱130を伸縮させてX線発生部11の床面からの高さを調節する。
次いで、被験者の顎部をクッション部材122の湾曲部16に当接させ、被験者の左右の肩を面14の左右の縁に当接させるとともに、被験者の胸部の中央を面14の湾曲した中央部に当接させて、胸部全体を面14にぴったりと密着させる。
この状態で、X線発生部11から所定強度のX線を放出させ、被験者の胸部を透過したX線の画像をX線検出部12の撮像部121において撮像する。
【0026】
このように、本実施形態に係るX線撮影装置1によれば、撮像部121の撮像面13を覆うクッション部材122の面14の中央部が、左右の縁部に比べて内側へ凹む方向に湾曲しており、この湾曲した中央部が撮像面13の中央部と対応する位置に設けられている。従って、面14の左右の縁に被験者の左右の肩を当接させるとともにその湾曲した中央部に被験者の胸部の中央を当接させるようにすることで、被験者の胸部の中央と撮像面13の中央部とを容易に合わせることができる。すなわち、被験者の胸部を撮影上適切な位置に容易に配置させることができる。
【0027】
また、本実施形態に係るX線撮影装置1によれば、被験者の体と当接する面14,15が弾力性のあるクッション部材122によって覆われているため、撮影部位の骨等が当たることによる違和感を効果的に軽減できる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0029】
例えば、図2の例では、撮像面13を覆う面14の中央部が内側に凹む方向に湾曲しているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、例えば図3において示すように、面14の中央部が外側へ突出する方向に湾曲していてもよい。撮影を行う場合は、面14の左右の縁部に被験者の左右の肩が当接するまで、胸部の中央を面14の中央部へ押し付けるようにする。この場合も、湾曲した面14の中央部を被験者の胸部の中央に合わせることによって、被験者の胸部を撮影上適切な位置に容易に配置させることができる。
【0030】
また、上述した実施形態では、クッション部材122の内部に弾力性のある材料を充填する例を挙げているが、本発明の他の実施形態では、弾力性のある材料の代わりに空気などの気体を充填してもよい。この場合、クッション部材122の外面をビニール等の伸縮性のあるシート材で形成することによって、クッション部材122の弾力性を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、人若しくは他の生物の体を透過したX線の画像を撮影するX線撮影装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
11…X線発生部、12…X線検出部、121…撮像部、122…クッション部材、13…撮像面、14…第1の面,15…第2の面、16…湾曲部、21…X線管、23…X線絞り器、27…操作パネル、29…操作ハンドル、130、140…支柱


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の体を透過したX線が入射する撮像面を備え、前記撮像面に入射したX線の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像面を覆う弾力性を持ったクッション部材と、
を有し、
前記クッション部材は、左右の縁部に比べて中央部が内側へ凹む方向若しくは外側へ突出する方向に湾曲した第1の面を備え、
前記被験者の左右の肩が前記左右の縁部に当接され、前記被験者の胸部の中央が前記中央部に当接される、
X線撮影装置。
【請求項2】
前記第1の面の湾曲した前記中央部が、前記撮像面の中央部と対応する位置に設けられている、
請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記クッション部材は、前記第1の面の上辺に沿って前記第1の面と垂直に形成された第2の面を備え、
前記第1の面の中央部に対応する前記第2の面の中央部には、内側へ凹んだ湾曲部が設けられており、
前記被験者の顎部が前記第2の面の前記湾曲部に当接される、
請求項2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記クッション部材は、前記第1の面の内側に弾力性を持った材料が充填されている、若しくは、気体が充填されている、
請求項2又は3に記載のX線撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−242756(P2012−242756A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115057(P2011−115057)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(591283903)吉田電材工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】