説明

X線撮影装置

【課題】可搬性向上、IF部の操作スペース確保、誤操作防止および保護、通信電波放射性の確保、有線接続部の保護ができるX線撮影装置を提供する。
【解決手段】X線撮影装置は、矩形の有効領域を有するX線センサを筐体11に内蔵し、X線照射面に隣接する側面に操作者が前記筐体11を把持するための把手13を有する撮影部を備え、前記撮影部の動作を制御するために操作するIF部16、前記撮影部が外部の制御部と無線通信を行うための無線電波放射窓18および前記撮影部の状態を表す表示手段17の少なくとも一つを、把持用の開口部14を囲む内側面のうち前記把手13の内側面と異なる内側面に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把手とユーザ操作部を有するX線撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被写体にX線を照射し、被写体を透過したX線の強度分布を検出して被写体のX線画像を得るX線撮影が知られている。今日、その方式は古来のフィルム・スクリーン法から、微小な光電変換素子とスイッチング素子からなる画素を格子状に配置した平面センサを用いた撮影装置(FPD;Flat Panel Detector)を用いたものに移行が進んでいる。この装置の利点は、従来の感光性フィルムに比べ非常に広いダイナミックレンジを有するためX線露光量が変動しても安定したX線画像が得られること、化学処理が不要なためX線画像を即時に得られることにある。
【0003】
一方、X線撮影装置を形態でみると、一般撮影室など所定の場所に設置される据置型と、自由に持ち運べる可搬型に分類される。近年では、可搬型のX線撮影装置(以下「電子カセッテ」)のニーズが高まっている。特に近年では、従前のフィルムカセッテ用設備はそのままに、撮影装置のみ置き換えられること(レトロフィット)が訴求点となっており、電子カセッテの外形サイズがJIS規格に定めるフィルムカセッテ同等の薄さ・平面サイズであることが重要である。
【0004】
従来の電子カセッテは、外部からの給電を目的とするケーブルで、制御部と電気的に接続されているが、ケーブルの処理が煩雑なため電子カセッテの取り回しや上記のレトロフィットに支障を来たすなどの不都合がある。
そこで、最近では給電ケーブルを廃しバッテリと無線通信用のアンテナを内蔵したワイアレスカセッテが登場し、X線撮影における自由度を飛躍的に高めるものと期待されている。現時点でワイアレスカセッテは高価で、重量もフィルムカセッテに比べれば大きいため、可搬性を向上させる目的で把手部を有するワイアレスカセッテが特許文献1および2にて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−237074号公報
【特許文献2】特開2010−75678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の電子カセッテでは把手部材に遮蔽物質が密着するとアンテナが使えなくなる上、アンテナ装置を物理的に保護しているとは言い難い。また、特許文献2の電子カセッテでは電子カセッテの状態を報知する手段が把手に設けられているが、ユーザが握ってしまえば見えなくなる虞がある。
【0007】
そこで本発明は、筐体が薄いことを最前提として、可搬性向上、IF部の操作スペース確保、誤操作防止および保護、通信電波放射性の確保、有線接続部の保護を全て満たす把手を有する撮影部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のX線撮影装置は、矩形の有効領域を有するX線センサを筐体に内蔵し、X線照射面に隣接する側面に操作者が前記筐体を把持するための把手を有する撮影部を備え、
前記撮影部の動作を制御するために操作するIF部、前記撮影部が外部の制御部と無線通信を行うための無線電波放射窓および前記撮影部の状態を表す表示手段の少なくとも一つを、把持用の開口部を囲む内側面のうち前記把手の内側面と異なる内側面に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作者によるIF部の誤操作を防止しつつ、その操作スペースを通信電波放射スペースも兼ねながら確保し、IF部や有線接続部を曲げや衝突などの外力から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係るX線撮影装置の模式図である。
【図2】第1の実施形態に係るX線撮影装置の模式図である。
【図3】第2の実施形態に係るX線撮影装置の模式図である。
【図4】第3の実施形態に係るX線撮影装置の模式図である。
【図5】第4の実施形態に係るX線撮影装置の模式図である。
【図6】第5の実施形態に係るX線撮影装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を添付図に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るX線撮影装置(以下、電子カセッテ10という)を、図1(a)正面図、(b)断面図および図2(a)正面図、(b)斜視図に示す。
電子カセッテ10のX線センサ筐体(筐体)11は、操作者が把持用の開口部14に手100を入れて把手13を握ることで保持される。これらの例によれば、センサ部の矩形の有効領域を有するX線照射面12を始めとする筐体外側面を避け、更にはユーザの手100に握られることが想定される把手内側面15を避けてユーザIF部16が配置されている。よって、ユーザIF部16がユーザの意図しないタイミングで操作されたり、何らかの外力を受けて破損するといった事象を生じ難くすることができる。また、把手13の外側面に他の物体を接設させた状態でも、把手開口部14によってユーザIF部16の操作スペースを確保することができる。
【0012】
図1では把手内側面15に隣接する開口部内側面にユーザIF部16が配置されており、電子カセッテ10をバランスよく保持するには把手13の中央付近を握るため、ユーザIF部16から手が遠くなり、誤操作防止効果が大きい。
一方、図2では把手内側面15と相対する開口部内側面にユーザIF部16が配置されており、電子カセッテ10を架台やベッドに挿入した際のユーザIF部16へのアクセスし易さの点で、図1より優れている。
【0013】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の電子カセッテを図3(a)正面図、(b)斜視図に示す。ユーザIF部16が配置された開口部内側面に、電子カセッテ10の状態(電源、センサ状態、内蔵バッテリ残量)を示す状態表示手段17、外部制御部(図には明示せず)との無線通信に使用するアンテナのための無線電波放射窓18が並んで配置されている。無線電波放射窓18とは、金属製のX線センサ筐体11の側面を一部開口させ、そこに無線電波が透過する樹脂などの材質でできた別部材を嵌めこんだものであるが、手など遮蔽物質で覆われると無線電波が透過できないため無線通信ができなくなってしまう。
本実施形態によれば、第1の実施形態で上述したユーザIF部16の操作スペース確保に加え、ユーザが把手13を握った状態でも電子カセッテの状態を確認できる、無線電波放射窓18に物体が近接しづらいため安定した送受信が可能になるといった効果がある。
また、上記3要素をX線センサ筐体11において把手13と同じ側面もしくは同じ方向に配置することによって、残る3側面に部材を配置する必要がない。したがって、筐体外形から内蔵するX線センサの有効画素端までの距離を、筐体強度を確保し得る必要最低限に抑えることができる。これにより、これら3側面を所望の部位に密着させた撮影が可能となる。
【0014】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の電子カセッテを図4(a)正面図、(b)斜視図に示す。第2の実施形態の図3に対し、電子カセッテ10が外部制御部(図に明示せず)とケーブルを介して接続されている点が異なる。すなわち、本実施形態は、外部から給電を受け外部の制御部と通信を行うためのケーブルが着脱可能に接続される接続部を有する。
臨床現場では、被験者または撮影環境に起因して無線通信ができない場合があり、このような場合でも正常な撮影を行うのに必要な形態である。この場合、有線接続コネクタ19に状態表示手段17と同じ方向からアクセスできる。したがって、電子カセッテ10が取得画像を外部制御部に転送している場合など通信接続を分断してはならないタイミングで外付けコネクタ30が有線接続コネクタ19から外されないよう状態表示手段17に表示させることでユーザに注意を喚起することができる。
【0015】
斜視図では便宜上表示していないが、有線接続コネクタ19からX線センサ筐体11外形までの開口部はフタ部材21で覆うことで外付けコネクタ30およびケーブルを引き回すスペースを構造的強度を有した密閉空間とする。
これにより、有線接続コネクタ19に筐体厚さ方向の曲げ荷重が直接かからないため、コネクタ破損のリスクを低減することができる。ただし、十分な強度確保には内蔵するX線センサの略外形からある程度突出させる必要があるため、有線接続コネクタ19を把手13に並べて配置することは、残る3側面を内蔵するX線センサ外形に極力近づけられる点で有効である。
これは、第2の実施形態で上述したように、側面を所望の部位に密着させた撮影が可能となるからである。
【0016】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る電子カセッテは、X線センサを内蔵するX線センサ筐体11と把手付枠体20に分離可能である(図5参照)。X線センサ筐体11は、その外形がフィルムカセッテと略一致するため、フィルムカセッテ用に作られた枠体(架台装置)にそのまま装着できる。
X線センサ筐体11のX線照射面12に隣接する1つの側面には、ユーザIF部16、電子カセッテの状態表示手段17、無線電波放射窓18、外付けコネクタ30が嵌合する有線接続コネクタ19が設けられている。したがって、把手を必要としないユーザにとっては撮影機能を果たす必要最低限の構成・重量の電子カセッテとすることができる。
【0017】
ここで、無線電波放射窓18を通して電波を放射するアンテナと有線接続コネクタ19を同じ辺に配置している。したがって、X線センサ筐体11に内蔵された制御部(不図示)からそれぞれへの配線を簡素化できるため、部品そのものの重量や部品点数、組立容易性の点で優位である。
更に、X線センサ筐体11側面のうち3面では無線電波放射窓18を始めとする金属筐体の切欠きを設ける必要がないため、切欠きで生じる強度低下を筐体全体として最低限に抑えることができる。
【0018】
把手付枠体20は、X線センサ筐体11が着脱可能に構成され、X線センサ筐体11が固定されると、X線センサ筐体11上の有線接続コネクタ19に装着された外付けコネクタ30のケーブルを引き回し固定する構造を有している。したがって、ケーブルが引っ張られても外付けコネクタ30に直接張力がかからないようになっている。
更に、有線接続コネクタ19から把手付枠体20外形までの開口部がフタ部材21(斜視図では不図示)で覆うことで外付けコネクタ30およびケーブルを引き回すスペースを略密閉し構造的強度を持たせることができる。これにより、有線接続コネクタ19にあらゆる方向の曲げ荷重が直接かからないため、コネクタ破損のリスクを低減することができる。
【0019】
一方、ユーザIF部16、状態表示手段17、無線電波放射窓18はユーザの手100が入るだけの間隔をおいて把手内側面15と相対するため、把手13により外力から保護される。同時に、ユーザIF部16の操作スペース、状態表示手段17の視認性、無線電波放射窓18からの電波放射スペースがいずれも確保される。また、有線接続コネクタ19に状態表示手段17と同じ方向からアクセスできる。したがって、電子カセッテ10が取得画像を外部制御部に転送している場合など通信接続を分断してはならないタイミングで外付けコネクタ30が有線接続コネクタ19から外されないよう状態表示手段17に表示させることでユーザに注意を喚起することができる。
【0020】
(第5の実施形態)
本実施形態は、図6に示す形態によって実現される。電子カセッテ10は、X線センサ筐体11の直交する2つの側面にユーザIF部16・22、電子カセッテ10の状態表示手段17・23、無線電波放射窓18・24、有線接続コネクタ19・25をそれぞれ有する。X線センサ筐体11を着脱可能に可搬性を向上させる部材には、図6(a)に示したX線センサ筐体11の長辺側面と把手13が相対する把手付枠体20と、図6(b)に示したX線センサ筐体11の短辺側面と把手13が相対する把手付枠体26がある。したがって、撮影部位や姿勢に応じてX線センサ筐体11に装着することができる。
【0021】
X線センサ筐体11に上記2種類のうちどちらかの把手付枠体を装着する。このようにすることで、X線センサ筐体11の側面のうち把手13と相対しない面に配置されたユーザIF部、状態表示手段、無線電波放射窓、有線接続コネクタは、X線センサ筐体11に内蔵された制御部(不図示)により動作しないよう制御される。これにより、ユーザIF部の誤操作を防止できる上、枠体側辺に遮られるなどして機能が果たせないアンテナや状態表示手段に通電しないことで、無駄な電力消費を抑えることができる。なお、上記通電制御を行う側面を決定する手段としては、無線通信状態の良し悪しで把手13と相対する側面を検知することができる。その他、外付けコネクタ30が装着された有線接続コネクタまたは所定時間内に2回連続して操作されたユーザIF部を検出し把手13との相対面を検知する、枠体側辺に設けられた突起またはマーカを検出して枠体側辺と相対する面を検知する、などが挙げられる。
【0022】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えば、第4および第5の実施形態では、X線センサ筐体と把手付枠体とが着脱する形態について説明したが、この場合に限られず、X線センサ筐体と把手とが着脱する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
10:電子カセッテ 11:X線センサ筐体 12:X線照射面 13:把手 14:把手開口部 15:把手内側面 16・22:ユーザIF部 17・23:電子カセッテの状態表示手段 18・24:無線電波放射窓 19・25:有線接続コネクタ 20・26:把手付枠体 21・27:フタ部材 30:外付けコネクタ 100:ユーザの手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の有効領域を有するX線センサを筐体に内蔵し、X線照射面に隣接する側面に操作者が前記筐体を把持するための把手を有する撮影部を備え、
前記撮影部の動作を制御するために操作するIF部、前記撮影部が外部の制御部と無線通信を行うための無線電波放射窓および前記撮影部の状態を表す表示手段の少なくとも一つを、把持用の開口部を囲む内側面のうち前記把手の内側面と異なる内側面に配置されていることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
前記撮影部は、外部から給電を受け外部の制御部と通信を行うためのケーブルとが着脱可能に接続される接続部を、前記把手を設けた側面に有することを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記撮影部は、前記X線センサを内蔵するセンサ部と、前記把手または前記把手を含み前記撮影部の外形と略一致する枠体に分離可能であることを特徴とする請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記センサ部は、4つの側面のうち直交する2つの側面に前記IF部および/または前記無線電波放射窓および/または前記表示手段および/または外部から給電を受け外部の制御部と通信を行うためのケーブルとが着脱可能に接続される接続部を有し、
前記センサ部を前記把手または前記枠体に装着した際、前記把手と隣接する側面に設けられた前記IF部および/または前記無線電波放射窓および/または前記表示手段および/または前記接続部のみを動作させることを特徴とする請求項3に記載のX線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−44792(P2013−44792A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180636(P2011−180636)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】