説明

X線検査システム

【課題】X線画像データの保存に失敗するリスクを簡便な方法により低下することが可能なX線検査システムを提供する。
【解決手段】
X線検査装置と、バッファ手段であるRAMと、記憶手段である複数のHDD装置と、制御手段である制御部とを備えるX線検査システム。X線検査装置は、物品のX線画像データを得て、その得られたX線画像データによって物品の状態を検査する。RAMは、X線画像データを一時的に記憶する。HDD装置は、X線画像データを記憶する。制御部は、複数のHDD装置の中からX線画像データを記憶するHDD装置を選択する。制御部は、RAMに記憶されているX線画像データの数に基づいてX線画像データを記憶するHDD装置を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品などの商品の生産ラインにおいては、商品への異物混入や商品の割れ欠けがある場合にそのような商品を出荷しないために、X線検査が行われることがある。このX線検査では、連続搬送されてくる各被検査物品に対してX線を照射し、そのX線の透過状態をX線ラインセンサで検出する。そして、検出により得られたX線画像を解析し、異物混入などの商品の状態の良/不良が判別される。例えば、特許文献1(特開2002−098652号公報)には、連続搬送される物品のX線画像データをX線源及びX線ラインセンサにより得て、その得られたX線画像データによって物品の不良検査を行うX線検査装置が記載されている。
【0003】
X線画像データは、後で人手により確認等するために記録として保存されている。商品は、生産ライン上を連続して搬送されるため、そのX線画像データも連続的に生成され、大量のX線画像データが生成される。そこで、上記特許文献1に記載のX線検査装置は、得られた画像データのうち、不良品と判別された物品に係る画像データを、自動的に画像データファイルに記憶させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近頃、トレーサビリティの観点から、物品が不良品か否かに関わらず、全ての物品に係るX線検査装置により得られたX線画像データについて、ハードディスク装置等の記憶手段に保存することが要望されている。
【0005】
しかし、X線画像データは、一定の速度で生成されるのに対し、ハードディスク装置等の記憶手段は、負荷がかかると書き込み速度が低下し、書き込み遅延が起こる。例えば、ユーザーが閲覧しようとして、ハードディスク装置に記憶されているX線画像データにアクセスするとハードディスク装置に負荷がかかり、書き込み速度が低下する。すると、X線画像データが次々にバッファに滞留し、やがて、バッファがオーバーフローして保存されずに失われる画像データが発生する。この問題の1つの解決策としては、複数のハードディスク装置からなるRAIDを構成して、負荷分散することが考えられるが、RAIDを構成するには、高価な装置或いは複雑なソフトウェアが必要となる。
【0006】
そこで、X線画像データの保存に失敗するリスクを簡便な方法により低下することが可能な技術が、切望されている。
【0007】
本発明の課題は、X線画像データの保存に失敗するリスクを簡便な方法により低下することが可能なX線検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1観点に係るX線検査システムは、X線検査装置と、バッファ手段と、複数の記憶手段と、制御手段とを備える。X線検査装置は、物品のX線画像データを得て、その得られた前記X線画像データによって物品の状態を検査する。バッファ手段は、X線画像データを一時的に記憶する。記憶手段は、X線画像データを記憶する。制御手段は、複数の記憶手段の中からX線画像データを記憶する記憶手段を選択する。制御手段は、バッファ手段に記憶されているX線画像データの数に基づいてX線画像データを記憶する記憶手段を選択する。
【0009】
このX線検査システムでは、制御手段は、バッファ手段に一時的に記憶されているX線画像データの数に基づいて、複数の記憶手段の中からX線画像データを記憶する記憶手段を選択する。これにより、簡便な方法により負荷を複数の記憶手段に分散することができる。したがって、X線画像データの保存に失敗するリスクを簡便な方法により低下することが可能なX線検査システムを提供することができる。
【0010】
本発明の第2観点に係るX線検査システムは、第1観点に係るX線検査システムであって、制御手段は、バッファ手段に記憶されているX線画像データの数が第1の所定の数を超えていなければ、複数の記憶手段の1つである第1記憶手段にX線画像データを記憶させる。制御手段は、バッファ手段に記憶されているX線画像データの数が第1の所定の数を超えていれば、第1記憶手段とは異なる記憶手段にX線画像データを記憶させる。
【0011】
このX線検査システムでは、バッファ手段に記憶されているX線画像データの数が第1の所定の数を超えていない限り、X線画像データは、第1記憶手段に記憶される。つまり、可能なかぎり1つの記憶手段にX線画像データが記憶される。これにより、記憶手段に記憶されているX線画像データのバックアップ作業をX線画像データの保存先として主に使用されている1つの記憶手段について集中的に行ない、その間に他の記憶手段をX線画像データの主な保存先として使用することが可能となる。したがって、簡便な方法により複数の記憶手段間で負荷分散することが可能となる。
【0012】
本発明の第3観点に係るX線検査システムは、第2観点に係るX線検査システムであって、制御手段は、バッファ手段に記憶されているX線画像データの数が第1の所定の数を超えており、かつ、第2の所定の数を超えていなければ、第2記憶手段にX線画像データを記憶させる。第2の所定の数は、第1の所定の数よりも大きい数である。第2記憶手段は、第1記憶手段とは異なる記憶手段である。制御手段は、バッファ手段に記憶されているX線画像データの数が第2の所定の数を超えていれば、第1記憶手段及び第2記憶手段とは異なる記憶手段にX線画像データを記憶させる。
【0013】
このX線検査システムでは、バッファ手段に記憶されているX線画像データの数が第1の所定の数を越えている場合には、第1記憶手段から第2記憶手段、さらには、第2の所定の数を超えている場合には、第1及び第2記憶手段とは異なる記憶手段にX線画像データを記憶する記憶手段が切り替えられる。これにより、複数ある記憶手段のうち、なるべく少数の記憶手段に集中的にX線画像データを保存することができる。したがって、記憶手段に記憶されているX線画像データのバックアップ作業もなるべく少数の記憶手段に対して集中的に行なうことが可能となり、その間に他の記憶手段をX線画像データの主な保存先として使用することが可能となる。したがって、簡便な方法により複数の記憶手段間で負荷分散することが可能となる。
【0014】
本発明の第4観点に係るX線検査システムは、第1観点から第3観点のいずれかに係るX線検査システムであって、X線検査装置が、制御手段及びバッファ手段を備える。
【0015】
このX線検査システムでは、X線検査装置が、制御手段及びバッファ手段を備えるので、システムの構成を簡素化できる。
【0016】
本発明の第5観点に係るX線検査システムは、第1観点から第3観点のいずれかに係るX線検査システムであって、制御手段を有する制御装置をさらに備える。
【0017】
このX線検査システムでは、制御手段は、制御装置が備えるので、X線検査装置と制御装置との間で負荷を分散することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るX線検査システムでは、X線画像データの保存に失敗するリスクを簡便な方法により低下することが可能なX線検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】物品生産ラインのイメージ図
【図2】システム構成図
【図3】制御フローチャート1
【図4】制御フローチャート2
【図5】変形例に係るシステム構成図1
【図6】変形例に係るシステム構成図2
【図7】変形例に係るシステム構成図3
【図8】物品生産ラインのブロック図
【図9】本発明の応用例に係る図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るX線検査システムは、X線検査装置と、バッファ手段と、複数の記憶手段と、制御手段とを備える。以下、図を参照しながらX線検査システムについて説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではない。
【0021】
(1)全体構成
<X線検査装置>
図1にX線検査が行われる物品生産ラインのイメージを示す。X線検査では、ベルトコンベア112上を連続して搬送されてくる複数の物品111の状態、例えば異物の混入等、がX線検査装置101により検査される。X線検査装置101は、X線照射器101aと、X線ラインセンサ101bとを備えている。X線照射器101aは、ベルトコンベア112上の物品より上方に位置するように設置されている。X線ラインセンサ101bは、ベルトコンベア112の物品搬送面の下に設置されている。X線照射器101aにより物品に対して上方からX線が照射され、そのX線の透過状態をX線ラインセンサ101bが検出する。物品111は、例えば、スナック菓子等の袋詰めされた食品である。X線ラインセンサ101bにより検出されたX線の透過状態は、X線画像として得られる。つまり、物品111の袋の中の状態のX線画像が得られる。
【0022】
さらに、X線検査装置101は、制御コンピュータ110を備えている。制御コンピュータ110は、得られたX線画像を解析し、異物の混入の有無等、物品の良/不良を検査する。物品の良/不良の検査は、トレース検出方式、二値化検出方式、及びマスク二値化検出方式、等により行われる。
【0023】
検査対象である物品111は、ベルトコンベア112上を例えば、1分間に約90〜120個搬送されてくる。したがって、物品のX線画像が、1分間に約90〜120生成されることになる。得られたX線画像は、全てX線画像データ(図2の107)として、後述するハードディスク装置(図2のHDD装置104)に記憶、即ち保存される。物品生産ラインのオペレータ等のユーザーは、HDD装置104に記憶されているX線画像データを参照することにより、物品の状態を確認することが出来る。
【0024】
図2は、本実施形態に係るX線検査システム100の構成を示す図である。X線検査装置101が備える上記制御コンピュータ110は、CPU102と、バッファ手段であるランダム・アクセス・メモリ(RAM103)と、記憶手段である複数のHDD装置104とを備える。CPU102、RAM103、及び複数のHDD装置104は、互いにバス(図示せず)により接続されている。
【0025】
CPU102は、制御プログラムを実行し、制御手段である制御部102となる。制御部102は、複数あるHDD装置104のうちの1つを選択し、選択したHDD装置104に物品111ごとに得られたX線画像をX線画像データ107として記憶させる。制御部102が行なうX線画像データ107のHDD装置104への転送の制御については、以下でさらに詳しく説明する。
【0026】
RAM103は、バッファとしてX線画像データ107がHDD装置104に記憶されるまでX線画像データ107を記憶する。
【0027】
HDD装置104は、磁性体が塗布されたディスクを有し、当該磁性体を磁化させることによりデータを当該ディスクに記録する。本実施形態では、X線検査装置101は、メイン104a、第1サブ104b、及び第2サブ104cの3つのHDD装置104を備えているが、これらのHDD装置104は、このような内蔵型のものでなくてもよい。USB等によりX線検査装置101に接続可能な外付け型のHDD装置104でもよい。また、HDD装置104は、安価なものでもよい。なお、以下では、X線画像データ107をHDD装置104に「記憶」させる、「保存」する、或いはHDD装置104がX線画像データ107を「書き込」むという記述を用いているが、それは、全て最終的には、X線画像データ107が、HDD装置104が有する上記ディスクに記録されることを意味する。
【0028】
(2)詳細構成
(2−1)制御フロー
図3及び図4に示すフローチャートを用いて、制御部が行なうX線画像データ107のHDD装置104への保存に係る制御について、詳述する。
【0029】
図3のフローチャートに示されている制御フローは、X線画像が撮られてX線画像データ107が1つ生成される度に行われる。したがって、当該制御フローは、開始された1つの制御フローが終了する前に別の制御フローが開始される場合がある。なお、3つのHDD装置104は、それぞれ異なるHDDドライブとして制御部101により識別されるように構成されている。また、RAM103は、容量が2ギガバイトであり、X線画像データ107を一時記憶するためのバッファとして使用できる容量は、512メガバイトであるとする。1つのX線画像データ107のサイズは、200キロバイトである。
【0030】
先ず、ステップS101では、制御部102は、RAM103にX線画像データ107を一時的に記憶させ、カウンタの数に1を加算する。カウンタとは、0以上の自然数を保持する変数である。カウンタは、X線検査システム100(本実施形態では、即ちX線検査装置101)の初期設定時、或いはリセット時に0に初期化される。次に、処理はステップS102へ進む。
【0031】
ステップS102では、カウンタの値が所定の値(第1の所定の数)を超えていないかどうかを判定する。第1の所定の数は、RAM103のバッファとして使用可能な容量(ここでは、512MB)を1つのX線画像データ107当たりのサイズ(ここでは、200KB)で割り算して得られる数(以下、最大記憶可能数とする)より小さい数であることが好ましい。例えば、第1の所定の数は、当該最大記憶可能数をX線検査システム100(本実施形態では、即ちX線検査装置101)が備えるHDD装置104の数で割り算して得られる数よりも小さい数であると好適である。ここでは、第1の所定の数は、100であるとする。カウンタの値が第1の所定の数を超えていなければ、メイン104aがX線画像データ107の保存先として選択され、処理はステップS104へ進む。カウンタの値が第1の所定の数を超えていれば、処理はステップS103へ進む。
【0032】
ステップS103では、制御部102は、X線画像データ107の保存先として第1サブ104b或いは第2サブ104cを選択する。第1サブ104b及び第2サブ104c間の選択ロジックについては、図4にフローチャートとして示しており、これについては、後述する。次に処理は、ステップS104へ進む。
【0033】
ステップS104では、制御部102は、保存先として選択されたHDD装置104に対して当該X線画像データ107の記憶を命令する信号を送る。当該HDD装置104が当該命令を受信すると、RAM103に記憶されている当該X線画像データ107の当該HDD装置104への転送が開始される。処理はステップS105へ進む。
【0034】
ステップS105では、何らかの原因によりX線画像データ107の選択されたHDD装置104における記憶に失敗したか否かが判断される。制御部102にHDD装置104からエラーが送信された場合は、失敗と判断される。また、HDD装置104から所定の時間(例えば、60秒)経っても応答が無い場合も失敗と判断される。失敗と判断された場合は、処理は、ステップS106へ進む。それ以外の場合は、処理は、ステップS108へ進む。
【0035】
ステップS106では、制御部102は、X線画像データ107の保存先であるHDD装置104を変更する。例えば、変更前にX線画像データ107の保存先として選択されていたHDD装置104が、メイン104aであれば、X線画像データ107を記憶させるHDD装置104を第1サブ104bに変更する。第1サブ104bが選択されていた場合は、第2サブ104cに変更する。第2サブ104cが選択されていた場合は、メイン104aに変更する。次に処理は、S107へ進む。
【0036】
ステップS107では、制御部102は、ステップS106にて新たに選択されたHDD装置104に対してRAM103に記憶されている上記のX線画像データ107の記憶を命令する信号を送る。RAM103に記憶されている当該X線画像データ107の当該HDD装置104への転送が開始される。次に処理は、ステップS105へ進む。
【0037】
ステップS108では、X線画像データ107のHDD装置104への保存が完了したか否かが判断される。X線画像データ107の記憶が完了すると、HDD装置104は、制御部102にその旨を伝える信号を送信する。当該信号を受信した制御部102は、X線画像データ107のHDD装置104への保存が完了したと判断する。保存が完了したと判断された場合は、処理は、ステップS109へ進む。それ以外の場合は、処理は、ステップS105へ進む。
【0038】
ステップS109では、RAM103からHDD装置104が記憶を完了した上記X線画像データ107が削除される。制御部102は、カウンタの値を1減算する。
【0039】
これにて、処理は終了する。
【0040】
次に、カウンタの値が第1の所定の数を超えている場合に、上記ステップS102において行われるX線画像データ107の保存先をメイン104a以外のHDD装置104に変更する際に実行される上記S103にあたる制御フローについて図4を参照しながら説明する。
【0041】
先ず、ステップS201では、カウンタの値が第2の所定の数を超えているか否かを判定する。第2の所定の数は、第1の所定の数より大きい数であり、かつ、上記最大記憶可能数より小さいことが好ましい。例えば、本実施形態のようにHDD装置104の数が3の場合、最大記憶可能数の2/3以下の数が好適である。ここでは、第2の所定の数は、上記第1の所定の数である100の2倍の数である200とする。カウンタの値が200を超えていなければ、ステップS202へ進む。超えていれば、ステップS203へ進む。
【0042】
ステップS202では、第1サブ104bがX線画像データ107の保存先として選択される。
【0043】
ステップS203では、第2サブ104cがX線画像データ107の保存先として選択される。
【0044】
制御は、ステップS104へ進む。
【0045】
(3)全体動作
連続してベルトコンベア112上を搬送されてくる物品111それぞれのX線画像が、X線照射器101aによって照射されたX線の物品透過状態のX線ラインセンサ101bによる検出により得られる。得られた、X線画像は、X線画像データ107として複数のHDD装置104の内のいずれかに記憶される。X線画像データ107は、HDD装置104への保存が完了するまでの間、RAM103に一時的に記憶される。複数のHDD装置104のうちいずれに当該X線画像データ107を記憶させるかは、制御部102により決められる。制御部102は、カウンタの値に基づいてX線画像データ107の保存先となるHDD装置104を選択する。即ち、カウンタの値が第1の所定の数以内であれば、複数のHDD装置104の内のメイン104aを選択する。カウンタの値は、1つのX線画像データ107がRAM103に記憶されると1加算され、1つのX線画像データ107がRAM103から削除されると1減算される。つまり、カウンタの値は、RAM103に記憶されているX線画像データ107の数を表す。
【0046】
ユーザーが、メイン104aに記憶されているX線画像データ107にアクセスする等し、メイン104aに負荷がかかると、メイン104aがX線画像データ107を記憶する速度が低下する。すると、RAM103に記憶されているX線画像データ107の数が増加し、カウンタの値が第1の所定の数を超えるようになる。カウンタの値が第1の所定の数を超えているが、第2の所定の数を超えていない状態では、制御部102は、X線画像データ107の保存先として第1サブ104bを選択する。
【0047】
ユーザーが、第1サブ104bに記憶されているX線画像データ107にアクセスする等し、第1サブ104bに負荷がかかると、第1サブ104bがX線画像データ107を記憶する速度が低下する。すると、RAM103に記憶されているX線画像データ107の数がさらに増加し、カウンタの値がさらに第2の所定の数を超えるようになる。カウンタの値が第2の所定の数を超えている状態では、制御部102は、X線画像データ107の保存先として第2サブ104cを選択する。
【0048】
HDD装置104の負荷が軽減し、RAM103に記憶されているX線画像データ107が、RAM103に新たなX線画像データ107が追加されるよりも速くいずれかのHDD装置104に記憶されるようになると、RAM103に記憶されているX線画像データ107の数が減る。すると、カウンタの値も減る。カウンタの値が、第1の所定の数よりは大きいが、第2の所定の数を超えないようになると、X線画像データ107の保存先は、第1サブ104bに切り替えられる。さらに、カウンタの値が、第1の所定の数を超えていないと、X線画像データ107の保存先は、メイン104aに戻される。
【0049】
(4)特徴
(4−1)
上記実施形態では、制御部102は、カウンタの値に基づいて複数あるHDD装置104のうち、どのHDD装置104にX線画像データ107を記憶させるか選択している。カウンタの値は、バッファ手段であるRAM103にX線画像データ107が記憶されると1加算される。RAM103に記憶されているX線画像データ107がHDD装置104に記憶され、RAM103から削除されると、カウンタの値は、1減算される。つまり、カウンタの値は、RAM103に記憶されているX線画像データ107の数を表す。
【0050】
これにより、上記実施形態では、メイン104aに負荷がかかり、書き込み速度が低下し、RAM103にHDD装置104への保存待ちのX線画像データ107が蓄積されていき、第1の所定の数を超えると、X線画像データ107の保存先をメイン104aから他のHDD装置104へ変更される。したがって、X線画像データ107の保存に失敗するリスクを簡便な方法により低下することが可能なX線検査システム100を提供するができている。
【0051】
(4−2)
上記実施形態では、RAM103に記憶されているX線画像データ107の数を表すカウンタの値が第1の所定の数を超えている場合に、さらに第2の所定の数を超えていない場合は、第1サブ104bにX線画像データ107が記憶される。カウンタの値が、第2の所定の数を超えている場合には、第2サブ104cにX線画像データ107が記憶される。これにより、複数あるHDD装置104のうち、なるべくメイン104aに集中的にX線画像データ107を保存することができている。したがって、記憶されているX線画像データ107の数は、メイン104a、第1サブ104b、第2サブ104cの順に多くなるから、バックアップ作業も3つのHDD装置104のうち、メイン104a、第1サブ104b、第2サブ104cの順に時間を要することになる。すなわち、メイン104a、或いは、メイン104aを含むなるべく少ない数のHDD装置104を対象に集中的にバックアップ作業を行なうことが可能となり、その間に他のHDD装置104をX線画像データ107の主な保存先として使用することが可能となる。したがって、簡便な方法により複数のHDD装置104間で負荷分散することが可能となっている。
【0052】
(4−3)
上記実施形態では、X線検査装置101が、制御手段である制御部102及びバッファ手段であるRAM104を備えている。したがって、X線検査システム100の構成を簡素化できている。
【0053】
(4−4)
上記実施形態では、複数のHDD装置104は、安価な装置でもよい。したがって、X線画像データ107の保存に失敗するリスクを安価に低下することが可能なX線検査システム100を提供するができている。
【0054】
(4−5)
上記実施形態では、何らかの原因により1つのHDD装置104がX線画像データ107の記憶に失敗すると、制御部102は、X線画像データ107の保存先を他のHDD装置104に変更する。したがって、HDD装置104が容量不足或いは断線等によりX線画像データ107の記憶を失敗しても、他のHDD装置104にX線画像データ107を記憶させることが出来る。これにより、耐障害性の増したX線検査システム100を提供することができている。
【0055】
(5)変形例
(5−1)変形例1A
上記実施形態では、X線検査装置101が、制御部102、バッファ手段であるRAM103、及び制御手段であるHDD装置104を備えており、X線検査システム100は、X線検査装置101より構成されていた。しかし、他の実施形態においては、制御手段、バッファ手段、及び記憶手段の一部又は全てをX線検査装置101の外に配置してもよい。
【0056】
例えば、図5に示されているX線検査システム200のように、X線検査装置101に備えられたHDD装置104の代わりに、X線検査装置201とLAN等のネットワーク105により接続された複数のネットワーク・アタッチド・ストレージ(NAS114)を記憶手段としてもよい。この場合、それぞれのNAS114は、異なるIPアドレスを有するように構成される。画像データ107は、X線検査装置201からNAS114へネットワーク105を介してファイル共有プロトコル等により送信される。画像データ107は、NAS114への送信が完了するまでX線検査装置201のRAM103に一時的に記憶される。
【0057】
また、別の例では、図6に示されているX線検査システム300のように、X線検査装置301とLAN等のネットワーク105により接続されたコンピュータ(PC106)に制御部102、RAM103、及びHDD装置104を備えてもよい。この場合、それぞれのHDD装置104は、PC106のOSに異なるドライブとして認識されるように構成される。画像データ107は、X線検査装置301からPC106へネットワーク105を介してソケット通信により送信される。上述した図3及び図4の制御フローは、PC106が備える制御部102により行われる。画像データ107は、HDD装置104による記憶が完了するまでPC106が備えるRAM103に一時的に記憶される。これにより、X線検査装置301とPC106との間で負荷を分散することができる。
【0058】
また、別の例では、図7に示されているX線検査システム400のように、PC406に制御部102及びRAM103を備え、制御手段として複数のNAS114を用いてもよい。この場合、X線検査装置401と、PC406と、NAS114とは、LAN等のネットワーク105により接続される。この場合、画像データ107は、X線検査装置401からPC406へネットワーク105を介して送信される。上述した図3及び図4の制御フローは、PC406が備える制御部102により行われる。それぞれのNAS114は、異なるIPアドレスを有するように構成される。画像データ107は、PC406からNAS114へネットワーク105を介してソケット通信により送信される。画像データ107は、NAS114への送信が完了するまでPC406が備えるRAM103に一時的に記憶される。これにより、X線検査装置401とPC406との間で負荷を分散することができる。
【0059】
(5−2)変形例1B
上記実施形態では、3つのHDD装置104を記憶手段として用いたが、記憶手段であるHDD装置104の数は、2以上であればよく、他の実施形態においては、2つ或いは4つ若しくはそれ以上のHDD装置104を用いてもよい。この場合、HDD装置104の数より1少ない数の所定の数を設ければ良い。例えば、HDD装置104の数が4つの場合、第1の所定の数、第2の所定の数、及び第3の所定の数というように3つの所定の数を設ければ良い。
【0060】
(5−3)変形例1C
上記実施形態では、RAM103に記憶されているX線画像データ107の数が、第1の所定の数を超えた場合に、X線画像データ107の保存先をメイン104a以外のHDD装置104に変更していた。しかし、他の実施形態においては、新たなX線画像データ107が生成される度に、当該X線画像データ107を複数のHDD装置104のうち、毎回異なる1つに順番に記憶させてもよい。
【0061】
(6)他の画像検査システムへの応用
本発明は、他の画像検査システム或いは装置に応用可能である。例えば、図8は、上記実施形態に係るX線検査システム100を含む物品生産ライン500の一部のブロック図である。当該図中の製袋包装機521は、フィルムから袋を製造するとともに当該袋に食品等の品物を袋詰めする機械であるが、当該袋に製造年月日等の印字も行なう。製袋包装機521は、カメラユニットを備えており、画像センサカメラによって撮影された画像をグレーサーチ或いはフレームサーチ等の方法により解析し、製造年月日等の印字の状態等を検査する。本発明は、次のように当該カメラユニットにおいて画像センサカメラによって得られる画像データを記憶手段に保存するのに適用可能である。
【0062】
図9は、製袋包装機521のカメラユニット522のブロック図である。カメラユニット522は、袋の製造年月日やロット番号等の印字状態を撮影する画像センサカメラ523と、撮影された画像を解析するコントローラ524を有する。コントローラ524は、CPUからなる制御部525、RAM526、及び複数(図9の例では3つ)のHDD装置527を有する。画像センサカメラ523により連続して生成される画像データ528は、HDD装置527に記憶される。制御部525は、画像データ528がHDD装置527に記憶されるまで、画像データ528をRAM526に一時的に記憶させる。制御部525は、上記実施形態にかかる図3及び図4記載の制御フロー(ステップS101〜S203)を実行し、画像データ528を記憶するHDD装置527を選択する。選択されたHDD装置527が画像データ528を記憶する。このような簡便な方法により、負荷によりHDD装置527の画像データ528のディスクへの書き込み速度が低下しても、他のHDD装置527に負荷を分散することにより、連続して生成される画像データ528をなるべく失敗せずに保存することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、連続的に生成される画像データを記憶装置に保存するのに有効である。
【符号の説明】
【0064】
100、200、300、400 X線検査システム
101、201、301、401 X線検査装置
102 制御部(制御手段)
103 RAM(バッファ手段)
104 HDD装置(記憶手段)
104a メイン(第1記憶手段)
104b 第1サブ(第2記憶手段)
106、406 PC(制御装置)
107 X線画像データ
114 NAS(記憶手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2002−098652号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品のX線画像データを得て、その得られた前記X線画像データによって物品の状態を検査するX線検査装置と、
前記X線画像データを一時的に記憶するバッファ手段と、
前記X線画像データを記憶する複数の記憶手段と、
前記複数の記憶手段の中から前記X線画像データを記憶する前記記憶手段を選択する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記バッファ手段に記憶されている前記X線画像データの数に基づいて前記X線画像データを記憶する前記記憶手段を選択する、
X線検査システム。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記バッファ手段に記憶されている前記X線画像データの数が第1の所定の数を超えていなければ、前記複数の記憶手段の1つである第1記憶手段に前記X線画像データを記憶させ、
前記バッファ手段に記憶されている前記X線画像データの数が前記第1の所定の数を超えていれば、前記第1記憶手段とは異なる前記記憶手段に前記X線画像データを記憶させる、
請求項1に記載のX線検査システム。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記バッファ手段に記憶されている前記X線画像データの数が前記第1の所定の数を超えており、かつ、前記第1の所定の数よりも大きい数である第2の所定の数を超えていなければ、前記第1記憶手段とは異なる前記記憶手段である第2記憶手段に前記X線画像データを記憶させ、
前記バッファ手段に記憶されている前記X線画像データの数が前記第2の所定の数を超えていれば、前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段とは異なる前記記憶手段に前記X線画像データを記憶させる、
請求項2に記載のX線検査システム。
【請求項4】
前記X線検査装置が、前記制御手段及び前記バッファ手段を備えた、
請求項1〜3のいずれかに記載のX線検査システム。
【請求項5】
前記制御手段を有する制御装置をさらに備えた、
請求項1〜3のいずれかに記載のX線検査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate