X線検査装置の評価もしくは調整のためのチャート、およびそのチャートを用いたX線検査装置の評価または調整方法
【課題】X線検査装置による検査対象物の検査に先立って行う像の明るさと検査対象物の厚さとの関係の評価や空間分解能の評価を、従来に比して容易化すると同時に誤差を少なくすることのできるチャートを提供する。
【解決手段】検査対象物の表面もしくは内部に、当該検査対象物と同じ材質で、X線検査装置の調整もしくは解像度の評価を行うためのパターン31,32を一体に形成することにより、調整・評価のためのチャートと検査対象物とのテーブル等の上への載せ変え等を不要とし、検査対象物と同じ材質によるチャートにより検査装置の調整・評価を行うが故に、例えば明るさと厚さの関係において用いる係数の変換が不要となり、変換に伴う誤差を抑制することができ、更に、チャートの観察時に設定したX線条件をそのまま検査対象物のX線条件として採用することを可能とする。
【解決手段】検査対象物の表面もしくは内部に、当該検査対象物と同じ材質で、X線検査装置の調整もしくは解像度の評価を行うためのパターン31,32を一体に形成することにより、調整・評価のためのチャートと検査対象物とのテーブル等の上への載せ変え等を不要とし、検査対象物と同じ材質によるチャートにより検査装置の調整・評価を行うが故に、例えば明るさと厚さの関係において用いる係数の変換が不要となり、変換に伴う誤差を抑制することができ、更に、チャートの観察時に設定したX線条件をそのまま検査対象物のX線条件として採用することを可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置を調整ないしは評価するためのチャートと、そのチャートを用いてX線検査装置を評価または調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物にX線を照射して得られるX線透過データを用いて、検査対象物のX線透視像やX線断層像を構築し、その像に基づいて検査対象物の欠陥の有無や厚さを検査するX線検査装置においては、ある撮像条件においての透視像や断層像の分解能、つまり解像度を評価したり、あるいは、最適な撮像条件を設定するための調整を行う場合、例えば基板うえに既知寸法のパターンを形成したチャート(試験片)を用い、そのチャートの透視像や断層像を得て、評価や調整を行っている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなX線検査装置の評価・調整用のチャートは、例えばマイクロチャート(商品名:日本検査機器工業会製)等の名称のもとに汎用の製品として市販に供されている。
【0004】
また、金属管の腐食部分の残存肉厚をX線透視像から判定する検査方法において、検査対象物である金属管と同じ材質により試験体を製作し、その試験体には深さの異なる孔を形成し、その試験体を被検査物に隣接して配置した状態で同一視やのもとにこれらをX線撮像し、試験体の各孔の像から残存肉厚と像の明るさとの関係を求め、検査対象物の腐食部分の残存肉厚を求める方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
汎用のチャートを用いてX線検査装置の調整や評価を行う方法の例を図14に示すフローチャートを参照しつつ説明する。この例では、チャートのパターンがアルミニウムにより形成され、図15に模式的斜視図で示すような、X線照射方向への厚さの相違する階段状の3次元パターンであるとし、このチャートでX線検査装置を調整した後、銅のパターンが形成された基板を検査対象物として、その厚さを推測する場合を示している。
【0006】
まず、階段状パターが形成されたチャートを試料テーブル等の上に搭載した後、そのチャートをX線視野内に位置決めし、X線発生装置の管電圧および管電流等のX線条件を調整し、チャートを撮像する。次に、その撮像されたX線像において、厚さと明るさの関係を求めるのに必要な像の明るさの要件を満たしているか否かを判断し、満たしていない場合にはX線条件を再度調整する。像の明るさが要件を満たしていれば、階段状のパターンの各厚さd[1]〜d[4]における像の明るさI[1]〜I[4]を用いて、像の明るさIと厚さdとの関係を以下の式(1)に例示するように求める。ここで、式(1)においてI[0]はエアの撮像時における像の明るさであり、μ[Al]はチャートパターンを形成する材質であるアルミニウムのX線吸収係数である。
I=I[0]exp(−μ[Al]・d) ・・(1)
【0007】
その後、検査対象物を試料テーブル上に搭載して注目部位をX線視野内に位置決めし、X線の管電圧および管電流等を調整し、検査対象物を撮像する。次に、その撮像されたX線像において、検査をするために必要な像の明るさの要件を満たしているか否かを判断し、満たしていない場合にはX線条件を再調整する。像の明るさが要件を満たしていれば検査対象物の像の明るさから検査対象物の厚さを推測する。検査対象物が回路基板であり、その回路の材質が銅であるとすると、厚さの推測には前記した(1)式ではなく、銅のX線吸収係数μ[Cu]を用いた下記の式(2)が採用される。
I=I[0]exp(−μ[Cu]・d) ・・(2)
【特許文献1】特開2004−12459号公報
【特許文献2】特開2001−124708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、以上の従来の技術のうち、汎用のチャートを用いる方法では、一般的な検査対象物に対する装置性能を定量化するためには有効であるが、特定の検査対象物には有効ではない。なぜなら、これらのチャートは検査対象物とは異なる材質で作られている場合が多く、そのため、像の明るさから厚さ等を推測する場合に、前記したようにチャートで求めた厚さと明るさの関係の変換が必要となり、誤差が増大するという問題があり、加えて、検査対象物とチャートとの撮像条件が異なるため、チャートの撮像条件のままで検査対象物を撮像したとき、その条件は最適な条件とは言いがたく、必要に応じて撮像条件を変更しなければならず、手間がかかるという問題がある。
【0009】
また、前記した特許文献2に記載されているように、チャートを検査対象物と同一の材質で作る場合においても、検査対象物と試験片のディメンジョンが異なる場合が多く、検査対象物に最適な撮像条件になっていない可能性がある。
【0010】
更に、同一の材質で作られたチャートを用いる場合においても、検査対象物とチャートとが別物体であるため、検査対象物の傍らに位置決めして配置したり、あるいは、被写体を試料テーブル上に載せる装置にあっては、チャートと検査対象物をテーブル上に載せ代えるという作業が必要となる場合もある。
【0011】
更にまた、装置の最適な条件設定は検査対象物にも依存するので、検査対象物と画像データを一定数保存しておくことにより、ある程度のトレーサビリティの向上が期待されるのであるが、その場合、検査対象物を保存するには保管場所が必要となる。
本発明は以上のような諸問題点を一挙に解決することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明のX線検査装置の調整もしくは評価のためのチャートは、検査対象物にX線を照射して得られるX線透過データを用いて当該検査対象物のX線像を構築し、そのX線像に基づいて検査対象物の検査を行うX線検査装置に適用され、当該X線検査装置の調整もしくは解像度の評価を行うべく、既知寸法の2次元もしくは3次元パターンが形成されてなるチャートであって、検査対象物の表面もしくは内部に、当該検査対象物と同じ材質で上記パターンが一体に形成されていることによって特徴づけられる(請求項1)。
【0013】
ここで、本発明のチャートにおいては、上記パターンが、検査対象物から切り離し自在な位置に形成されている構成(請求項2)を好適に採用することができる。
【0014】
また、本発明のX線検査装置の評価方法は、請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の評価方法であって、上記パターンが2次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置をX線視野内に視野内に収めて検査を実行する前に、上記2次元パターンをX線視野内に収めて当該2次元パターンのX線透視像を得て、そのX線透視像に基づいて当該検査装置によるX線透視像の解像度を求めることによって特徴づけられる(請求項3)。
【0015】
また、本発明のX線検査装置の他の評価方法は、請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の評価方法で、このX線検査装置がX線断層像を撮像する装置であって、上記パターンが互いに異なる複数の材質を積層してなる3次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置の断層像を得て検査を実行する前に、上記3次元パターンのX線断層像を得て、そのX線断層像に基づいて当該検査装置による断層像の厚さ方向への解像度を求めることによって特徴づけられる(請求項4)。
【0016】
更に、本発明のX線検査装置の調整方法は、請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の調整方法であって、上記パターンが厚さの相違する部位を含む3次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置をX線視野内に収める前に、上記3次元パターンをX線視野内に収めて当該3次元パターンのX線透視像を得て、そのX線透視像に基づいてX線条件を調整するとともに、明るさと厚さの関係を得ることによって特徴づけられる(請求項5)。
【0017】
本発明は、X線検査装置の評価や調整に用いるチャートを、検査対象物と同じ材質で、当該検査対象物に一体に形成することで、課題を解決しようとするものである。
【0018】
すなわち、検査対象物の表面または内部に、検査対象物と同じ材質のパターンを形成してチャートとする構成の採用により、例えば検査対象物を試料テーブル上に載せて、検査部位の観察に先立ってチャートを観察することで、X線条件を維持したまま検査対象物の検査に移行することができると同時に、例えば検査対象物の厚さを推測する場合において、前記したような係数の変換が不要となる。また、例えば試料テーブル上に検査対象物を載せてX線撮像を行う装置等においては、試料テーブルを移動させて視野を変更することで、チャートと検査対象部位との位置決めが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、視野を移動させることにより、X線検査装置の評価ないしは調整を行うためのチャートと検査対象部位を随意に撮像することができ、装置の評価や調整に余分な手間がかかることがなく、しかも、チャートの撮像時のX線条件をそのまま用いて検査対象部位の撮像ができるとともに、例えば厚さの推測に際してはチャートで得た厚さと像の明るさとの関係をそのまま用いることができるため、誤差の増大を防止することができる。
また、検査対象物に形成されたチャートを、請求項2に係る発明のように随意に切り離しできる位置としておくことで、必要に応じてチャートを切り離してそのX線像とともに保存しておくことで、トレーサビリティの向上に繋がるとともに、一部分を切り離して保管するが故に、保管場所を圧縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の平面図であり、検査対象物が回路基板である場合の例を示している。
【0021】
この例において、基板1の表面に、検査の対象となる回路パターン2が形成されているとともに、基板1の一端部の表面には、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31と、空間分解能評価用チャートパターン32が形成され、これらでチャート3を構成している。回路パターン2が例えば銅である場合には、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31および空間分解能評価用チャートパターン32も同じく銅によって形成されている。
【0022】
明るさ/厚さ評価用チャートパターン31は、前記した図15に例示したものと同等のパターンであり、X線照射(透視)方向への厚さが相違する複数の部位を備えた階段状の3次元パターンである。また、空間分解能評価用チャートパターン32は、一様な厚さの複数本の直線を所定の間隔を開けて互いに平行に配置したパターンを、直線の伸びる方向を互いに直交させて2組備えたものであり、これらによって基板1の広がり方向への2次元の空間分解能を評価する。
【0023】
次に、以上の実施の形態を用いてX線検査装置を評価し、あるいは調整する手法の例について説明する。
この例において用いるX線検査装置は、例えば図2に示す構成をしているものとする。
【0024】
すなわち、X線発生装置101とX線検出器102とが対向配置され、これらの間に検査対象物Wを搭載するための試料テーブル103が配置されている。X線発生装置101からのX線は試料テーブル103上の検査対象物Wを透過してX線検出器102に入射する。X線検出器102の出力、従って検査対象物Wを透過したX線の強度データは画像データ取り込み回路104を介してパーソナルコンピュータを主体とする制御装置105に取り込まれる。制御装置105では、そのX線透過データを用いて検査対象物WのX線透過像を構築し、表示器106に表示する。X線発生装置101の管電圧や管電流等のX線条件はX線コントローラ107によってコントロールされ、また、試料テーブル103は、移動機構108の駆動により互いに直交するx,y,z方向に移動する。制御装置105には、マウスやキーボード、およびジョイスティック等からなる操作部109が接続されており、この操作部109を操作することにより、X線条件を随意に設定・変更したり、あるいは試料テーブル103を任意の方向に移動させることができる。
【0025】
さて、前記した図1に示した回路基板は、検査対象物Wとして試料テーブル103の上に搭載され、図3にフローチャートを示す手順によってり装置の評価・調整に供されるとともに、回路パターン2が検査される。
【0026】
すなわち。図1に示した回路基板を試料ステージ103の上に載せた後、試料テーブル103の移動により、X線透視の視野内にチャートパターン31,32が収まるように位置決めする。その状態で管電圧、管電流等のX線条件を調整し、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31および空間分解能評価用チャートパターン32を撮像する。次に、前記した図14の手順と同様に、その撮像により得られたX線像において、厚さと明るさの関係、あるいは空間分解能を求めるのに必要な像の明るさの要件を満たしているか否かを判断し、満たしていない場合にはX線条件を再度調整する。像の明るさが要件を満たしていれば、その透視像は必要に応じて保存しておく。ただし、調整回数をカウントしておき、ある一定以上の回数で調整できない場合は、調整エラーを報知する。
【0027】
像の明るさが要件を満たした状態で、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31の各厚さの部位における明るさから、明るさと厚さとの関係を求めるとともに、空間分解能評価用チャートパターン32から空間分解能を求める。
【0028】
明るさIと厚さdの関係は、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31が銅によって形成されているため、そのX線吸収係数をμ[Cu]とすると、
I=I[0]exp(−μ[Cu]・d) ・・(3)
あるいは、
I=f(μ[Cu]・d) ・・(4)
等によって表すことができる。
【0029】
また、空間分解能評価用チャートパターン32のX線透視像から、装置の空間分解能を評価する。その評価方法は、互いに直交するx,y方向に伸びる各直線のパターンの像について、それぞれに直交する方向への、図4に実線で例示するラインプロファイルを用いた公知の方法、例えばMTF,CTF,OTFなど、また画像全体からはウィナースペクトル(WS),PSFなどの評価方法により評価を行う。なお、図4には分解能評価用チャートパターン32の一方の直線群の断面を同寸法で破線で重ねて図示している。
【0030】
次に、検査の対象である回路パターン2がX線透視の視野内に収まるように試料テーブル103を移動して撮像する。このとき、チャートパターン31,32が回路パターン2と同じ材質で、同じ基板1上に形成されているため、チャートパターン31,32の撮像時に調整したX線条件がそのまま最適条件として適用することができる。そして、この回路パターン2のX線透視像の明るさと、先に求めた明るさと厚さの関係から、回路パターン2の厚さや欠陥・異物の存在の有無等を判定する。この判定に当たっても、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31は回路パターン2と同じ材質で同じ基板1上に形成されているため、先に求めた明るさと厚さの関係をそのまま用いて回路パターン2の厚さを推測することができ、従来に比して推測誤差を抑制することができる。なお、回路パターン2のX線透視像は必要に応じて保存する。
【0031】
また、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31および空間分解能評価用チャートパターン32は、基板1の一端部に形成されているので、上記の検査終了後、このチャートの形成部位を図1に破線で示す位置において切断して基板1から切り離し、トレーサビリティのために保管することもできる。
【0032】
次に、本発明の他の実施の形態について述べる。本発明のチャートに用いるパターンは、以上の明るさ/厚さ評価用チャートパターンや空間分解能評価用チャートパターンのほか、図5に例示するようなスターパターン型分解能評価パターンや、図6に例示するような厚さ方向分解能試験のための明るさ/厚さ評価用チャートパターンを用いることができる。この厚さ方向分解能試験のための明るさ/厚さ評価用チャートパターンは、X線CTによる積層基板等の検査において有効なパターンであり、図6において61は回路パターンを形成する材料と同じ例えば銅であり、その間に基板材料62を挟み込んだ構造を有している。このようなチャートを撮像して断層像を構築することにより、基板の厚さ方向への空間分解能を容易に評価することができる。
【0033】
また、図7に平面図(A)と正面図(B)で模式的に示すような、一方のリード71上にチップ72を配置し、そのチップ72と他方のリード73とをボンディングワイヤ74で接続し、チップ72とボンディングワイヤ74を含む領域をモールド75で覆った構造のICの検査に際しては、図8に平面図(A)と正面図(B)で模式的に示すようなチャートを採用することができる。このチャートは、リード71,73およびモールド75は検査対象物であるICと同じであり、ボンディングワイヤ74を複数本設けてラインアンドスペースを形成して分解能を評価できるように考慮されている。なお、このチャートにおいてチップはあってもなくてもよい。
【0034】
以上のようなチャートを、図9に例示するように、複数個の検査対象物Wからなるロットごとに、1個ずつ挿入しておけばよく、また、検査終了後にチャートCを切り離して保管しておくことが望ましい。
【0035】
更に、BGAやフリップチップ等、図10に平面図(A)および正面図(B)で模式的に示すような半田バンプ81が基板82上に載ったチップを検査対象とする場合、図11に平面図(A)および正面図(B)に示すように先の例と同等の明るさ/厚さ評価用チャートパターン31と、空間分解能評価用チャートパターン32を基板82上に形成する。
【0036】
そして、図12に示すように、多数のチップ91を形成したダイシング前のウエハ92を、個々のチップ91について検査を行うような検査作業において、ウエハ92上に1個だけチャートパターンを形成したチャート93を設けておくことで、このウエハ92上の各チップ91の検査に先立ってチャート93を撮像して前記した調整・評価を行うことができ、検査後はチャート93をダイシングして回収・保管することで、このウエハ上に形成した全てのチップについてのトレーサビリティの向上に寄与することができる。
【0037】
また、管状、あるいはロッド状の検査対象物の欠陥等の有無を検査する場合の例を図13に示す。この例では、管状の検査対象物Wの一端部に、階段状の明るさ/厚さ評価用チャートパターンCを形成している。この階段状のチャートパターンCは管状の検査対象物Wから切り離し可能であり、検査後に切り離される。このような管状ないしはロッド状の検査対象物においても、チャートパターンCは検査対象物Wと同じ材質で一体に形成されることにより、検査装置の調整・評価時の位置決めが容易となると同時に、明るさと厚さの関係を推定する際の誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を回路基板に適用した実施の形態の平面図である。
【図2】図1の基板の検査に用いるX線検査装置の構成例を示す図である。
【図3】図2のX線装置を用いた検査の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態の空間分解能評価用チャートパターンの像のラインプロファイルの例を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に用いられるチャートパターンの例の説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態において用いられる厚さ方向空間分解能試験のための明るさ/厚さ評価用チャートパターンの説明図である。
【図7】本発明を適用して検査するICの構造の模式的説明図で、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【図8】図7のICの検査時に用いるチャートの例の模式的説明図で、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【図9】図8のチャートの形成部位の例の説明図である。
【図10】本発明を適用して検査するチップの構造の模式的説明図で、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【図11】図10のチップの検査時に当該チップに一体に形成されるチャートの例の模式的説明図で、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【図12】本発明を適用してウエハ上に多数個形成された個々のチップの検査時に、形成されるチャートの形成位置の例の説明図である。
【図13】本発明を適用して管状、あるいはロッド状の検査対象物の欠陥等の有無を検査する場合の例の説明図である。
【図14】汎用のチャートを用いてX線検査装置の調整や評価を行う従来の方法の例を示すフローチャートである。
【図15】図14の例において用いられるチャートの構造の例の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 基板
2 回路パターン
3 チャートパターン
31 明るさ/厚さ評価用チャートパターン
32 空間分解能評価用チャートパターン
101 X線発生装置
102 X線検出器
103 試料ステージ
104 画像データ取り込み回路
105 制御装置
106 表示器
107 X線コントローラ
108 移動機構
109 操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置を調整ないしは評価するためのチャートと、そのチャートを用いてX線検査装置を評価または調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物にX線を照射して得られるX線透過データを用いて、検査対象物のX線透視像やX線断層像を構築し、その像に基づいて検査対象物の欠陥の有無や厚さを検査するX線検査装置においては、ある撮像条件においての透視像や断層像の分解能、つまり解像度を評価したり、あるいは、最適な撮像条件を設定するための調整を行う場合、例えば基板うえに既知寸法のパターンを形成したチャート(試験片)を用い、そのチャートの透視像や断層像を得て、評価や調整を行っている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなX線検査装置の評価・調整用のチャートは、例えばマイクロチャート(商品名:日本検査機器工業会製)等の名称のもとに汎用の製品として市販に供されている。
【0004】
また、金属管の腐食部分の残存肉厚をX線透視像から判定する検査方法において、検査対象物である金属管と同じ材質により試験体を製作し、その試験体には深さの異なる孔を形成し、その試験体を被検査物に隣接して配置した状態で同一視やのもとにこれらをX線撮像し、試験体の各孔の像から残存肉厚と像の明るさとの関係を求め、検査対象物の腐食部分の残存肉厚を求める方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
汎用のチャートを用いてX線検査装置の調整や評価を行う方法の例を図14に示すフローチャートを参照しつつ説明する。この例では、チャートのパターンがアルミニウムにより形成され、図15に模式的斜視図で示すような、X線照射方向への厚さの相違する階段状の3次元パターンであるとし、このチャートでX線検査装置を調整した後、銅のパターンが形成された基板を検査対象物として、その厚さを推測する場合を示している。
【0006】
まず、階段状パターが形成されたチャートを試料テーブル等の上に搭載した後、そのチャートをX線視野内に位置決めし、X線発生装置の管電圧および管電流等のX線条件を調整し、チャートを撮像する。次に、その撮像されたX線像において、厚さと明るさの関係を求めるのに必要な像の明るさの要件を満たしているか否かを判断し、満たしていない場合にはX線条件を再度調整する。像の明るさが要件を満たしていれば、階段状のパターンの各厚さd[1]〜d[4]における像の明るさI[1]〜I[4]を用いて、像の明るさIと厚さdとの関係を以下の式(1)に例示するように求める。ここで、式(1)においてI[0]はエアの撮像時における像の明るさであり、μ[Al]はチャートパターンを形成する材質であるアルミニウムのX線吸収係数である。
I=I[0]exp(−μ[Al]・d) ・・(1)
【0007】
その後、検査対象物を試料テーブル上に搭載して注目部位をX線視野内に位置決めし、X線の管電圧および管電流等を調整し、検査対象物を撮像する。次に、その撮像されたX線像において、検査をするために必要な像の明るさの要件を満たしているか否かを判断し、満たしていない場合にはX線条件を再調整する。像の明るさが要件を満たしていれば検査対象物の像の明るさから検査対象物の厚さを推測する。検査対象物が回路基板であり、その回路の材質が銅であるとすると、厚さの推測には前記した(1)式ではなく、銅のX線吸収係数μ[Cu]を用いた下記の式(2)が採用される。
I=I[0]exp(−μ[Cu]・d) ・・(2)
【特許文献1】特開2004−12459号公報
【特許文献2】特開2001−124708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、以上の従来の技術のうち、汎用のチャートを用いる方法では、一般的な検査対象物に対する装置性能を定量化するためには有効であるが、特定の検査対象物には有効ではない。なぜなら、これらのチャートは検査対象物とは異なる材質で作られている場合が多く、そのため、像の明るさから厚さ等を推測する場合に、前記したようにチャートで求めた厚さと明るさの関係の変換が必要となり、誤差が増大するという問題があり、加えて、検査対象物とチャートとの撮像条件が異なるため、チャートの撮像条件のままで検査対象物を撮像したとき、その条件は最適な条件とは言いがたく、必要に応じて撮像条件を変更しなければならず、手間がかかるという問題がある。
【0009】
また、前記した特許文献2に記載されているように、チャートを検査対象物と同一の材質で作る場合においても、検査対象物と試験片のディメンジョンが異なる場合が多く、検査対象物に最適な撮像条件になっていない可能性がある。
【0010】
更に、同一の材質で作られたチャートを用いる場合においても、検査対象物とチャートとが別物体であるため、検査対象物の傍らに位置決めして配置したり、あるいは、被写体を試料テーブル上に載せる装置にあっては、チャートと検査対象物をテーブル上に載せ代えるという作業が必要となる場合もある。
【0011】
更にまた、装置の最適な条件設定は検査対象物にも依存するので、検査対象物と画像データを一定数保存しておくことにより、ある程度のトレーサビリティの向上が期待されるのであるが、その場合、検査対象物を保存するには保管場所が必要となる。
本発明は以上のような諸問題点を一挙に解決することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明のX線検査装置の調整もしくは評価のためのチャートは、検査対象物にX線を照射して得られるX線透過データを用いて当該検査対象物のX線像を構築し、そのX線像に基づいて検査対象物の検査を行うX線検査装置に適用され、当該X線検査装置の調整もしくは解像度の評価を行うべく、既知寸法の2次元もしくは3次元パターンが形成されてなるチャートであって、検査対象物の表面もしくは内部に、当該検査対象物と同じ材質で上記パターンが一体に形成されていることによって特徴づけられる(請求項1)。
【0013】
ここで、本発明のチャートにおいては、上記パターンが、検査対象物から切り離し自在な位置に形成されている構成(請求項2)を好適に採用することができる。
【0014】
また、本発明のX線検査装置の評価方法は、請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の評価方法であって、上記パターンが2次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置をX線視野内に視野内に収めて検査を実行する前に、上記2次元パターンをX線視野内に収めて当該2次元パターンのX線透視像を得て、そのX線透視像に基づいて当該検査装置によるX線透視像の解像度を求めることによって特徴づけられる(請求項3)。
【0015】
また、本発明のX線検査装置の他の評価方法は、請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の評価方法で、このX線検査装置がX線断層像を撮像する装置であって、上記パターンが互いに異なる複数の材質を積層してなる3次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置の断層像を得て検査を実行する前に、上記3次元パターンのX線断層像を得て、そのX線断層像に基づいて当該検査装置による断層像の厚さ方向への解像度を求めることによって特徴づけられる(請求項4)。
【0016】
更に、本発明のX線検査装置の調整方法は、請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の調整方法であって、上記パターンが厚さの相違する部位を含む3次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置をX線視野内に収める前に、上記3次元パターンをX線視野内に収めて当該3次元パターンのX線透視像を得て、そのX線透視像に基づいてX線条件を調整するとともに、明るさと厚さの関係を得ることによって特徴づけられる(請求項5)。
【0017】
本発明は、X線検査装置の評価や調整に用いるチャートを、検査対象物と同じ材質で、当該検査対象物に一体に形成することで、課題を解決しようとするものである。
【0018】
すなわち、検査対象物の表面または内部に、検査対象物と同じ材質のパターンを形成してチャートとする構成の採用により、例えば検査対象物を試料テーブル上に載せて、検査部位の観察に先立ってチャートを観察することで、X線条件を維持したまま検査対象物の検査に移行することができると同時に、例えば検査対象物の厚さを推測する場合において、前記したような係数の変換が不要となる。また、例えば試料テーブル上に検査対象物を載せてX線撮像を行う装置等においては、試料テーブルを移動させて視野を変更することで、チャートと検査対象部位との位置決めが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、視野を移動させることにより、X線検査装置の評価ないしは調整を行うためのチャートと検査対象部位を随意に撮像することができ、装置の評価や調整に余分な手間がかかることがなく、しかも、チャートの撮像時のX線条件をそのまま用いて検査対象部位の撮像ができるとともに、例えば厚さの推測に際してはチャートで得た厚さと像の明るさとの関係をそのまま用いることができるため、誤差の増大を防止することができる。
また、検査対象物に形成されたチャートを、請求項2に係る発明のように随意に切り離しできる位置としておくことで、必要に応じてチャートを切り離してそのX線像とともに保存しておくことで、トレーサビリティの向上に繋がるとともに、一部分を切り離して保管するが故に、保管場所を圧縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の平面図であり、検査対象物が回路基板である場合の例を示している。
【0021】
この例において、基板1の表面に、検査の対象となる回路パターン2が形成されているとともに、基板1の一端部の表面には、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31と、空間分解能評価用チャートパターン32が形成され、これらでチャート3を構成している。回路パターン2が例えば銅である場合には、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31および空間分解能評価用チャートパターン32も同じく銅によって形成されている。
【0022】
明るさ/厚さ評価用チャートパターン31は、前記した図15に例示したものと同等のパターンであり、X線照射(透視)方向への厚さが相違する複数の部位を備えた階段状の3次元パターンである。また、空間分解能評価用チャートパターン32は、一様な厚さの複数本の直線を所定の間隔を開けて互いに平行に配置したパターンを、直線の伸びる方向を互いに直交させて2組備えたものであり、これらによって基板1の広がり方向への2次元の空間分解能を評価する。
【0023】
次に、以上の実施の形態を用いてX線検査装置を評価し、あるいは調整する手法の例について説明する。
この例において用いるX線検査装置は、例えば図2に示す構成をしているものとする。
【0024】
すなわち、X線発生装置101とX線検出器102とが対向配置され、これらの間に検査対象物Wを搭載するための試料テーブル103が配置されている。X線発生装置101からのX線は試料テーブル103上の検査対象物Wを透過してX線検出器102に入射する。X線検出器102の出力、従って検査対象物Wを透過したX線の強度データは画像データ取り込み回路104を介してパーソナルコンピュータを主体とする制御装置105に取り込まれる。制御装置105では、そのX線透過データを用いて検査対象物WのX線透過像を構築し、表示器106に表示する。X線発生装置101の管電圧や管電流等のX線条件はX線コントローラ107によってコントロールされ、また、試料テーブル103は、移動機構108の駆動により互いに直交するx,y,z方向に移動する。制御装置105には、マウスやキーボード、およびジョイスティック等からなる操作部109が接続されており、この操作部109を操作することにより、X線条件を随意に設定・変更したり、あるいは試料テーブル103を任意の方向に移動させることができる。
【0025】
さて、前記した図1に示した回路基板は、検査対象物Wとして試料テーブル103の上に搭載され、図3にフローチャートを示す手順によってり装置の評価・調整に供されるとともに、回路パターン2が検査される。
【0026】
すなわち。図1に示した回路基板を試料ステージ103の上に載せた後、試料テーブル103の移動により、X線透視の視野内にチャートパターン31,32が収まるように位置決めする。その状態で管電圧、管電流等のX線条件を調整し、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31および空間分解能評価用チャートパターン32を撮像する。次に、前記した図14の手順と同様に、その撮像により得られたX線像において、厚さと明るさの関係、あるいは空間分解能を求めるのに必要な像の明るさの要件を満たしているか否かを判断し、満たしていない場合にはX線条件を再度調整する。像の明るさが要件を満たしていれば、その透視像は必要に応じて保存しておく。ただし、調整回数をカウントしておき、ある一定以上の回数で調整できない場合は、調整エラーを報知する。
【0027】
像の明るさが要件を満たした状態で、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31の各厚さの部位における明るさから、明るさと厚さとの関係を求めるとともに、空間分解能評価用チャートパターン32から空間分解能を求める。
【0028】
明るさIと厚さdの関係は、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31が銅によって形成されているため、そのX線吸収係数をμ[Cu]とすると、
I=I[0]exp(−μ[Cu]・d) ・・(3)
あるいは、
I=f(μ[Cu]・d) ・・(4)
等によって表すことができる。
【0029】
また、空間分解能評価用チャートパターン32のX線透視像から、装置の空間分解能を評価する。その評価方法は、互いに直交するx,y方向に伸びる各直線のパターンの像について、それぞれに直交する方向への、図4に実線で例示するラインプロファイルを用いた公知の方法、例えばMTF,CTF,OTFなど、また画像全体からはウィナースペクトル(WS),PSFなどの評価方法により評価を行う。なお、図4には分解能評価用チャートパターン32の一方の直線群の断面を同寸法で破線で重ねて図示している。
【0030】
次に、検査の対象である回路パターン2がX線透視の視野内に収まるように試料テーブル103を移動して撮像する。このとき、チャートパターン31,32が回路パターン2と同じ材質で、同じ基板1上に形成されているため、チャートパターン31,32の撮像時に調整したX線条件がそのまま最適条件として適用することができる。そして、この回路パターン2のX線透視像の明るさと、先に求めた明るさと厚さの関係から、回路パターン2の厚さや欠陥・異物の存在の有無等を判定する。この判定に当たっても、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31は回路パターン2と同じ材質で同じ基板1上に形成されているため、先に求めた明るさと厚さの関係をそのまま用いて回路パターン2の厚さを推測することができ、従来に比して推測誤差を抑制することができる。なお、回路パターン2のX線透視像は必要に応じて保存する。
【0031】
また、明るさ/厚さ評価用チャートパターン31および空間分解能評価用チャートパターン32は、基板1の一端部に形成されているので、上記の検査終了後、このチャートの形成部位を図1に破線で示す位置において切断して基板1から切り離し、トレーサビリティのために保管することもできる。
【0032】
次に、本発明の他の実施の形態について述べる。本発明のチャートに用いるパターンは、以上の明るさ/厚さ評価用チャートパターンや空間分解能評価用チャートパターンのほか、図5に例示するようなスターパターン型分解能評価パターンや、図6に例示するような厚さ方向分解能試験のための明るさ/厚さ評価用チャートパターンを用いることができる。この厚さ方向分解能試験のための明るさ/厚さ評価用チャートパターンは、X線CTによる積層基板等の検査において有効なパターンであり、図6において61は回路パターンを形成する材料と同じ例えば銅であり、その間に基板材料62を挟み込んだ構造を有している。このようなチャートを撮像して断層像を構築することにより、基板の厚さ方向への空間分解能を容易に評価することができる。
【0033】
また、図7に平面図(A)と正面図(B)で模式的に示すような、一方のリード71上にチップ72を配置し、そのチップ72と他方のリード73とをボンディングワイヤ74で接続し、チップ72とボンディングワイヤ74を含む領域をモールド75で覆った構造のICの検査に際しては、図8に平面図(A)と正面図(B)で模式的に示すようなチャートを採用することができる。このチャートは、リード71,73およびモールド75は検査対象物であるICと同じであり、ボンディングワイヤ74を複数本設けてラインアンドスペースを形成して分解能を評価できるように考慮されている。なお、このチャートにおいてチップはあってもなくてもよい。
【0034】
以上のようなチャートを、図9に例示するように、複数個の検査対象物Wからなるロットごとに、1個ずつ挿入しておけばよく、また、検査終了後にチャートCを切り離して保管しておくことが望ましい。
【0035】
更に、BGAやフリップチップ等、図10に平面図(A)および正面図(B)で模式的に示すような半田バンプ81が基板82上に載ったチップを検査対象とする場合、図11に平面図(A)および正面図(B)に示すように先の例と同等の明るさ/厚さ評価用チャートパターン31と、空間分解能評価用チャートパターン32を基板82上に形成する。
【0036】
そして、図12に示すように、多数のチップ91を形成したダイシング前のウエハ92を、個々のチップ91について検査を行うような検査作業において、ウエハ92上に1個だけチャートパターンを形成したチャート93を設けておくことで、このウエハ92上の各チップ91の検査に先立ってチャート93を撮像して前記した調整・評価を行うことができ、検査後はチャート93をダイシングして回収・保管することで、このウエハ上に形成した全てのチップについてのトレーサビリティの向上に寄与することができる。
【0037】
また、管状、あるいはロッド状の検査対象物の欠陥等の有無を検査する場合の例を図13に示す。この例では、管状の検査対象物Wの一端部に、階段状の明るさ/厚さ評価用チャートパターンCを形成している。この階段状のチャートパターンCは管状の検査対象物Wから切り離し可能であり、検査後に切り離される。このような管状ないしはロッド状の検査対象物においても、チャートパターンCは検査対象物Wと同じ材質で一体に形成されることにより、検査装置の調整・評価時の位置決めが容易となると同時に、明るさと厚さの関係を推定する際の誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を回路基板に適用した実施の形態の平面図である。
【図2】図1の基板の検査に用いるX線検査装置の構成例を示す図である。
【図3】図2のX線装置を用いた検査の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態の空間分解能評価用チャートパターンの像のラインプロファイルの例を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に用いられるチャートパターンの例の説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態において用いられる厚さ方向空間分解能試験のための明るさ/厚さ評価用チャートパターンの説明図である。
【図7】本発明を適用して検査するICの構造の模式的説明図で、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【図8】図7のICの検査時に用いるチャートの例の模式的説明図で、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【図9】図8のチャートの形成部位の例の説明図である。
【図10】本発明を適用して検査するチップの構造の模式的説明図で、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【図11】図10のチップの検査時に当該チップに一体に形成されるチャートの例の模式的説明図で、(A)は平面図であり、(B)は正面図である。
【図12】本発明を適用してウエハ上に多数個形成された個々のチップの検査時に、形成されるチャートの形成位置の例の説明図である。
【図13】本発明を適用して管状、あるいはロッド状の検査対象物の欠陥等の有無を検査する場合の例の説明図である。
【図14】汎用のチャートを用いてX線検査装置の調整や評価を行う従来の方法の例を示すフローチャートである。
【図15】図14の例において用いられるチャートの構造の例の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 基板
2 回路パターン
3 チャートパターン
31 明るさ/厚さ評価用チャートパターン
32 空間分解能評価用チャートパターン
101 X線発生装置
102 X線検出器
103 試料ステージ
104 画像データ取り込み回路
105 制御装置
106 表示器
107 X線コントローラ
108 移動機構
109 操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物にX線を照射して得られるX線透過データを用いて当該検査対象物のX線像を構築し、そのX線像に基づいて検査対象物の検査を行うX線検査装置に適用され、当該X線検査装置の調整もしくは解像度の評価を行うべく、既知寸法の2次元もしくは3次元パターンが形成されてなるチャートであって、
検査対象物の表面もしくは内部に、当該検査対象物と同じ材質で上記パターンが一体に形成されていることを特徴とするX線検査装置の調整もしくは評価のためのチャート。
【請求項2】
上記パターンが、検査対象物から切り離し自在な位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置の調整もしくは評価のためのチャート。
【請求項3】
請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の評価方法であって、上記パターンが2次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置をX線視野内に視野内に収めて検査を実行する前に、上記2次元パターンをX線視野内に収めて当該2次元パターンのX線透視像を得て、そのX線透視像に基づいて当該検査装置によるX線透視像の解像度を求めることを特徴とするX線検査装置の評価方法。
【請求項4】
請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の評価方法で、このX線検査装置がX線断層像を撮像する装置であって、上記パターンが互いに異なる複数の材質を積層してなる3次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置の断層像を得て検査を実行する前に、上記3次元パターンのX線断層像を得て、そのX線断層像に基づいて当該検査装置による断層像の厚さ方向への解像度を求めることを特徴とするX線検査装置の評価方法。
【請求項5】
請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の調整方法であって、上記パターンが厚さの相違する部位を含む3次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置をX線視野内に収める前に、上記3次元パターンをX線視野内に収めて当該3次元パターンのX線透視像を得て、そのX線透視像に基づいてX線条件を調整するとともに、明るさと厚さの関係を得ることを特徴とするX線検査装置の調整方法。
【請求項1】
検査対象物にX線を照射して得られるX線透過データを用いて当該検査対象物のX線像を構築し、そのX線像に基づいて検査対象物の検査を行うX線検査装置に適用され、当該X線検査装置の調整もしくは解像度の評価を行うべく、既知寸法の2次元もしくは3次元パターンが形成されてなるチャートであって、
検査対象物の表面もしくは内部に、当該検査対象物と同じ材質で上記パターンが一体に形成されていることを特徴とするX線検査装置の調整もしくは評価のためのチャート。
【請求項2】
上記パターンが、検査対象物から切り離し自在な位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置の調整もしくは評価のためのチャート。
【請求項3】
請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の評価方法であって、上記パターンが2次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置をX線視野内に視野内に収めて検査を実行する前に、上記2次元パターンをX線視野内に収めて当該2次元パターンのX線透視像を得て、そのX線透視像に基づいて当該検査装置によるX線透視像の解像度を求めることを特徴とするX線検査装置の評価方法。
【請求項4】
請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の評価方法で、このX線検査装置がX線断層像を撮像する装置であって、上記パターンが互いに異なる複数の材質を積層してなる3次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置の断層像を得て検査を実行する前に、上記3次元パターンのX線断層像を得て、そのX線断層像に基づいて当該検査装置による断層像の厚さ方向への解像度を求めることを特徴とするX線検査装置の評価方法。
【請求項5】
請求項1もしくは2に記載のチャートを用いたX線検査装置の調整方法であって、上記パターンが厚さの相違する部位を含む3次元パターンを含み、検査対象物上の検査位置をX線視野内に収める前に、上記3次元パターンをX線視野内に収めて当該3次元パターンのX線透視像を得て、そのX線透視像に基づいてX線条件を調整するとともに、明るさと厚さの関係を得ることを特徴とするX線検査装置の調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−54201(P2010−54201A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216153(P2008−216153)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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