説明

X線検査装置

【課題】簡易な構造で、X線漏洩を防止することができるX線検査装置を提供することである。
【解決手段】X線検査装置100においては、ベルトコンベア800により商品900が搬送され、X線照射装置200から照射されるX線210によって、商品900が検査される。商品900を搬送するベルトコンベア800に一対の案内ガイド700が設けられ、商品900がベルトコンベア800上で誘導される。また、ベルトコンベア800の搬送上流側および搬送下流側の一対の案内ガイド700間にX線漏洩防止カーテン500が配設される。X線漏洩防止カーテン500は、水平軸506,507,606,607を中心に矢印R1の方向に回動するとともに、屈曲部AR12が部材505aに接触することにより、矢印−R1の方向への過度の回動が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物にX線を照射し、被検査物内の異物を検出するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査物内の異物を検出するためにX線検査装置等が使用されている。これらのX線検査装置に関して、日々研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、透過X線を検出することによって被検査物に含まれる異物の検出を行うX線異物検査装置であって、X線の不必要な漏洩を防止して作業者の安全を図るX線異物検査装置について開示されている。
【0004】
特許文献1記載のX線異物検査装置においては、透過X線によって、被検査物に含まれる異物の検出を行うX線異物検査装置において、被検査物を搬送する水平のコンベアと、該コンベアの始端部近傍および終端部近傍に配置され、被検査物の搬送により押し上げられて、該被検査物のサイズに従って該被検査物の通過空間が形成されるX線漏洩防護のれんであって、該X線漏洩防護のれんは上記通過空間が容易に形成されるように、垂直方向に分割されており、更に水平方向に多段階に屈折可能な構造のX線漏洩防護のれんを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−270174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、特許文献1記載のX線異物検査装置においては、水平方向に多段階に屈折可能な構造を有している。そのため、当該構造においては、多段階に屈折させるための回動軸が多数必要となり、数個では問題とならない回動軸の摩擦力も、個数が増大するに伴って、大きな力が必要となる。
【0007】
また、特許文献1記載の従来のX線異物検査装置におけるX線漏洩防護のれん(特許文献1の図9参照)では、鉛直方向に分割されたのれん(以下、短冊状のれんと呼ぶ。)の個々の揺れ戻しが大きくなり、X線漏洩が大きく発生することとなる。また、多段階に屈折させるため、当該多数の屈折部が屈折した際に生じる隙間を遮蔽する必要があり、構造が複雑化し、メンテナンスに不適である。また、X線は、不可視であるため、多数の屈折部に対する遮蔽を、特に留意する必要がある。
【0008】
本発明の目的は、簡易な構造で、X線漏洩を防止することができるX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
一の局面に従うX線検査装置は、搬送装置によって搬送される被検査物に検査室内でX線を照射して検査を行い、検査室の被検査物の搬入口または搬出口にX線の漏洩を防止するX線漏洩防止部材を備えたX線検査装置であって、X線漏洩防止部材は、回動軸を中心に回動可能であるとともに、被検査物の搬送方向とは反対の方向への回動を規制する揺れ戻し回動規制部を備えたものである。
【0010】
X線検査装置のX線漏洩防止部材は、回動軸を中心に回動可能であるとともに、揺れ戻し回動規制部により被検査物の搬送方向とは反対の方向への回動を規制するものである。
【0011】
この場合、被検査物が通過した後のX線漏洩防止部材の揺れ戻しによる回動を防止することができる。その結果、X線検査室からのX線の漏洩を防止することができる。
【0012】
(2)
回動軸は略水平に設けられており、X線漏洩防止部材は、回動軸を挟んで上方に延設された上部漏洩防止部材と、上部漏洩防止部材より長く、下方傾斜して延設された下部漏洩防止部材とからなることが好ましい。
【0013】
この場合、上部漏洩防止部材に揺れ戻し回動規制部を設けることができる。その結果、揺れ戻しによる回動を規制するとともに、回動軸より上方に上部漏洩防止部材を設けることで、回動軸近傍の隙間からのX線の漏洩を確実に防止することができる。
また、上部漏洩防止部材にバランスウェイト機能を持たせることで、垂直の板状部材を用いる場合と比較して、X線漏洩防止部材を容易に回動させることができる。
その結果、被検査物が軽量物の場合であっても、X線漏洩防止部材を容易に回動させて、確実に被検査物を検査室内に搬送することができる。また、垂直の板状部材を用いる場合と比較して、板状部材の回動中心を低くすることができる。
【0014】
(3)
X線漏洩防止部材は、回動軸を中心に回動する前において、X線漏洩防止部材の重心位置が回動軸よりも搬送装置の搬送方向側に存在し、かつ揺れ戻し回動規制部により回動が規制されていることが好ましい。
【0015】
この場合、X線漏洩防止部材が回動軸を中心に回動される前において、X線漏洩防止部材の重心位置が回動軸よりも搬送装置の搬送方向側に存在するので、X線漏洩防止部材が逆搬送方向へ回動する力が加わる。また、揺れ戻し規制部によりX線漏洩防止部材の過度の回動が規制されているので、X線漏洩防止部材がX線を遮蔽する位置に固定され、X線の漏洩を確実に防止することができる。
【0016】
(4)
X線漏洩防止部材は、回動軸を中心に回動した状態において、X線漏洩防止部材の重心位置が回動軸よりも搬送装置の搬送方向側に存在することが好ましい。
【0017】
この場合、X線漏洩防止部材が回動軸を中心に回動された状態において、X線漏洩防止部材の重心位置が回動軸よりも搬送装置の搬送方向側に存在するので、回動されたX線漏洩防止部材が回動する前のX線漏洩防止部材の位置に短時間で戻ろうとする。その結果、X線の漏洩を確実に防止することができる。
【0018】
(5)
X線漏洩防止部材は、下端側に曲げ形状部を有してもよい。
【0019】
この場合、X線漏洩防止部材の下端側に曲げ形状部が形成されているので、X線漏洩防止部材が搬送装置の搬送面に接触した場合でも、搬送装置の搬送面の損傷を防止することができる。
【0020】
(6)
X線漏洩防止部材は、搬送方向と直交する方向に複数個、互いに併設して設けられてもよい。
【0021】
この場合、X線漏洩防止部材は、複数のX線漏洩防止部材からなり、複数のX線漏洩防止部材が搬送方向と直交する方向に複数個互いに併設して設けられるので、被検査物の大きさに応じて、複数のX線漏洩防止部材のうち被検査物が当接した一部のX線漏洩防止部材のみが回動し、他のX線漏洩防止部材は、回動されない。その結果、余分な隙間が生じないので、X線照射装置からのX線の漏洩を低減することができる。
(7)
少なくともX線漏洩防止部材の下方傾斜部の横断面がコ字状からなることが好ましい。
【0022】
この場合、複数のX線漏洩防止部材のうち被検査物が当接した一部のX線漏洩防止部材が回動し、回動するX線漏洩防止部材に隣接する他のX線漏洩防止部材が回動されない場合であっても、断面コ字状により隣接するX線漏洩防止部材同士の隙間が発生しない。すなわち、断面コ字状のX線漏洩防止部材により、回動したX線漏洩防止部材と、回動しないX線漏洩防止部材との間の隙間を遮蔽することができる。その結果、X線照射装置からのX線の漏洩を確実に防止できる。なお、当該コ字状は、X線漏洩防止部材の回動量に応じた長さを有することが好ましい。
【0023】
(8)
X線漏洩防止部材は、垂直方向に複数個、互いに併設して設けられてもよい。
【0024】
この場合、X線漏洩防止部材が垂直方向に複数個、互いに併設して設けられているので、X線漏洩防止部材の複数段階における屈曲を行うことができる。さらに、垂直の板状部材を垂直方向に複数設けた場合と比較しても、X線漏洩防止部材を容易に回動させることができる。
【0025】
(9)
X線漏洩防止部材は、表面にエンボス加工が施されることが好ましい。
【0026】
この場合、X線漏洩防止部材の表面にエンボス加工が施されているので、被検査物がX線漏洩防止部材に当接した場合であっても、被検査物への影響を低減することができる。
【0027】
(10)
X線漏洩防止部材は、金属板からなってもよい。
【0028】
この場合、X線漏洩防止部材は、金属板からなってもよい。それによりX線照射装置からのX線の漏洩を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るX線検査装置によれば、簡易な構造で、X線漏洩を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るX線検査装置の一例を示す模式的外観図
【図2】本発明に係るX線検査装置の内部構造の一例を示す模式図
【図3】X線漏洩防止カーテンの一例を示す模式的平面図
【図4】X線漏洩防止カーテンの一例を示す模式的平面図
【図5】X線漏洩防止カーテンの複数の回動板を説明するための模式的斜視図
【図6】X線漏洩防止カーテンを商品が通過する状態を説明する模式図
【図7】X線漏洩防止カーテンを商品が通過する状態を説明する模式図
【図8】X線漏洩防止カーテンを商品が通過する状態を説明する模式図
【図9】X線漏洩防止カーテンを商品が通過する状態を説明する模式図
【図10】X線漏洩防止カーテンを商品が通過する状態を説明する模式図
【図11】X線漏洩防止カーテンの他の例を示す模式図
【図12】X線漏洩防止カーテンの複数の回動板を説明するための模式的斜視図
【図13】X線漏洩防止カーテンの他の例を示す模式図
【図14】X線漏洩防止カーテンの他の例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施の形態において図面を用いて説明する。
(一の実施の形態)
図1は、本発明に係るX線検査装置100の一例を示す模式的外観図であり、図2は、本発明に係るX線検査装置100の内部構造の一例を示す模式図である。
【0032】
図1に示すように、X線検査装置100には、内部にX線検査室300が形成されている。また、X線検査室内には、X線照射装置200が内蔵されており、図1に示すように、X線検査装置100のX線検査室を貫通するように、ベルトコンベア800が設けられている。
【0033】
また、図1のX線検査室の開口部からX線の漏洩を防止するX線漏洩防止カーテン500が設けられている。このX線漏洩防止カーテン500の詳細構造については、後述する。
【0034】
作業者は、図1に示すX線検査装置100のタッチパネル画面MTを操作することによりX線検査装置100を駆動させる。作業者は、ベルトコンベア800に被検査物である商品900(図2参照)を載置させて搬送させ、X線検査装置100のX線検査室内において異物混入等がないか否かの検査を行う。以下、X線検査装置100のX線検査室の内部構造について説明を行う。
【0035】
図2に示すように、本発明に係るX線検査室300は、主に、X線照射装置200、ラインセンサ220、X線漏洩防止カーテン500、案内ガイド700およびベルトコンベア800からなる。
【0036】
X線漏洩防止カーテン500は、X線検査室300の入口側のX線漏洩防止カーテン510および出口側のX線漏洩防止カーテン610からなる。入口側のX線漏洩防止カーテン510は、複数の回動板501,502を有し、出口側のX線漏洩防止カーテン610は、複数の回動板601,602を有する。また、入口側のX線漏洩防止カーテン510および出口側のX線漏洩防止カーテン610は同一の構成からなる。
【0037】
なお、本実施の形態においては、ベルトコンベア800における商品900が搬送され始め、入口側のX線漏洩防止カーテン510に接触するまで、少なくとも500mm以上の距離を搬送されることが好ましい。これにより、商品900の姿勢が安定し、X線検査室300における検査効率を高めることができる。
【0038】
また、ベルトコンベア800は、無端状のベルトが一対のローラに巻回されて設けられ、ベルトコンベア800の内部に、シンチレータおよびフォトダイオード素子からなるX線を検出するラインセンサ220が設けられている。
【0039】
さらに、ベルトコンベア800の上面には、案内ガイド700が設けられる。この案内ガイド700は、一対の部材から構成され、ベルトコンベア800上を搬送される商品900がベルトコンベア800上から落下しないよう、すなわち、こぼれ落ちないように防止するためのものである。
【0040】
図2に示すように、ベルトコンベア800上に被検査物の商品900が載せられる。そして、ベルトコンベア800が駆動され、ベルトコンベア800上に配設された案内ガイド700によってベルトコンベア800上からの落下が防止されつつ、商品900は矢印X1の方向に移動する。そして、商品900は、複数の回動板501の一部の回動板501を押し上げ、回動板501を通過した後、複数の回動板502の一部の回動板502を押し上げ、X線検査室300内に移動する。
【0041】
次いで、商品900に対して、X線照射装置200からX線210が照射され、商品900を透過したX線210がラインセンサ220に入射される。
【0042】
続いて、X線検査が行われた商品900は、複数の回動板601の一部の回動板601を押し上げ矢印X1の方向に移動し、回動板601を通過した後、回動板602の一部の回動板602を押し上げ、X線検査室300外に移動する。そして、商品900は、案内ガイド700によりベルとコンベア800からこぼれることなく、次工程のベルトコンベアに搬送される。
【0043】
なお、図2に示すように、複数の回動板501,502および複数の回動板601,602は、相対的に矢印X1の方向と垂直な方向(水平方向)にずらして設けられる。それにより、X線照射装置200からのX線210が、複数の回動板501の隙間および複数の回動板502の隙間を通過、または複数の回動板601の隙間および複数の回動板602の隙間を通過して漏洩することを防止することができる。
【0044】
続いて、図3はX線漏洩防止カーテン510の一例を示す模式的平面図であり、図4はX線漏洩防止カーテン610の一例を示す模式的平面図であり、図5はX線漏洩防止カーテン510,610の複数の回動板501,502,601,602を説明するための模式的斜視図である。
【0045】
図3に示すように、X線漏洩防止カーテン510は、複数の回動板501,502、台座505および水平軸506,507からなる。
【0046】
図3に示すように、台座505に水平軸506および水平軸507が所定の間隔Lで設けられている。当該間隔Lは、商品900の長さよりも長い間隔で設けられる。
【0047】
図3に示すように、軸支部503の孔に水平軸506が貫通して設けられ、複数の回動板501が水平軸506に併設される。同様に、軸支部504の孔に水平軸507が貫通して設けられ、複数の回動板502が水平軸507に併設される。
【0048】
ここで、図3に示すように、複数の回動板501,502の重心位置G1は、水平軸506,507の鉛直位置よりも搬送下流側に設けられる。それにより、複数の回動板501,502には、矢印R1の方向と逆の方向力が加わる。しかしながら、複数の回動板501,502は、後述する揺れ戻し防止部材である屈曲部AR12(図5参照)と台座505の部材505aとの接触により矢印−R1の方向に過度に回動しない構造を有する。
【0049】
また、図3に示すように、複数の回動板501,502が回動した場合の回動板501の,502の重心位置G2は、重心位置G1よりも上方で、さらに搬送下流側に移動する。したがって、後述するように、被検査物である商品900が通過した後、複数の回動板501,502は、短時間で元位置に戻る力が加わる。
【0050】
同様に、図4に示すように、X線漏洩防止カーテン610は、複数の回動板601,602、台座605および水平軸606,607からなる。
【0051】
図3と同様に、台座605に水平軸606および水平軸607が所定の間隔Lで設けられている。当該間隔Lは、商品900の長さよりも長い間隔で設けられる。
【0052】
図4に示すように、軸支部603の孔に水平軸606が貫通して設けられ、複数の回動板601が水平軸606に併設される。同様に、軸支部604の孔に水平軸607が貫通して設けられ、複数の回動板602が水平軸607に併設される。
【0053】
図4に示すX線漏洩防止カーテン610は、図3に示したX線漏洩防止カーテン510と同様に、重心位置G1,G2(図示省略)を有し、後述する揺れ戻し防止部材である屈曲部AR12(図5参照)と台座605の部材605aとの接触により矢印−R1の方向に過度に回動しない構造、および被検査物である商品900が通過した後、複数の回動板501,502は、短時間で元位置に戻る力が加わる構造を有する。
【0054】
ここで、複数の回動板501,502,601,602の構造について説明を行う。図5に示すように、複数の回動板501,502,601,602は、金属板からなる。また、複数の回動板501,502,601,602は、複数箇所屈曲された板部材からなる。以下、屈曲部で回動板の領域を区分し、当該領域毎の機能を説明する。
【0055】
図5に示すように、当該回動板501,502,601,602は、屈曲部毎に、領域AR1、領域AR2、領域AR3および領域AR4を有する。また、領域AR1と領域AR2の間に屈曲部AR12が設けられ、領域AR3および領域AR4の間には、R形状を有する屈曲部AR34が設けられる。
【0056】
まず、領域AR1は、水平軸506,507,606,607の上方向における空間を遮蔽する遮蔽効果を有する(図3および図4参照)。さらに、領域AR1は、回動板501,502,601,602が回動する際に、他の領域AR2、領域AR3および領域AR4と逆の回動モーメントが加わる。また、領域AR1は、領域AR2、領域AR3および領域AR4の合計よりも小さい領域からなる。その結果、領域AR1は、領域AR2、領域AR3および領域AR4に対するバランスウェイト的な効果を有する。
【0057】
図5に示すように、領域AR2の中央部近傍に、軸支部503,504,603,604が設けられている。軸支部503,504,603,604には、水平軸506,507,606,607のための孔が設けられている。
【0058】
領域AR3は、複数の回動板501,502,601,602が水平軸506,507,606,607に取り付けられた際にベルトコンベア800の搬送方向(矢印X1の方向)に向かって下方傾斜するように設けられる(図3および図4参照)。また、屈曲部AR34は、R形状により形成されている。
【0059】
領域AR4は、複数の回動板501,502,601,602が水平軸506,507,606,607に取り付けられた際に搬送面と並行(図3および図4参照)に設けられ、かつベルトコンベア800の搬送面に対して隙間Kを形成するように設けられる(図3および図4参照)。その結果、隙間Kの距離があるので、X線の漏洩防止が図られる。
【0060】
また、図3から図5に示すように、複数の回動板501,502,601,602は、互いに拘束されることなく、水平軸506,507,606,607の軸周りで矢印R1の方向および逆方向に回動自在に設けられている。
【0061】
以上の構成により、商品900が複数の回動板501,502,601,602に当接した場合、水平軸506,507,606,607を中心として複数の回動板501,502,601,602が、矢印R1の方向に回動可能となる。また、屈曲部AR12が矢印R1の方向と逆方向に回動した場合、台座505の部材505a(台座605の部材605a)と接触し、上記の領域AR4の先端部がベルトコンベア800の搬送面に接触しないように隙間Kが形成されている。すなわち、商品900が複数の回動板501,502,601,602から離間した場合、複数の回動板501,502,601,602が矢印R1の方向とは逆方向に回動する、いわゆる揺れ戻しが生じる。しかしながら、本実施の形態においては、屈曲部AR12および台座505の部材505a(台座605の部材605a)を接触させることにより、過度の揺れ戻しを規制することができる。
【0062】
次に、図6から図10は、X線漏洩防止カーテン510に対して商品900が通過する状態を説明する模式図である。図6から図10においては、直方体上の商品900を例示する。なお、商品900は、1固体からなるものではなく、複数の固体(図2参照)からなるものでも下記に記す同じ効果を得ることができる。
【0063】
まず、図6に示すように、商品900がベルトコンベア800上を矢印X1の方向に搬送される。そして、商品900がX線漏洩防止カーテン510の複数の回動板501の一部の回動板501に当接する。すなわち、商品900の幅に対応した回動板501に当接する。
【0064】
そして、図6に示すように、複数の回動板501の一部の回動板501が矢印R1の方向に回動し、商品900が通過する。この場合、全ての複数の回動板501が矢印R1の方向に回動するのではなく、商品900の幅に応じた回動板501のみが矢印R1の方向に回動する。ここで、回動板501の領域AR3が搬送面に対して傾斜して設けられているので、商品900に対する破損を防止することができる。同時に、この一部の回動板501は、領域AR1のバランスウェイト的な効果により、容易に矢印R1の方向に回動され、商品900に対する破損を防止することができる。また、商品900が軽量な場合であっても、円滑に一部の回動板501を矢印R1の方向に回動させることができる。
【0065】
続いて、図7に示すように、商品900が複数の回動板501を通過し終える場合、矢印R1の方向に回動した複数の回動板501の一部の回動板501の屈曲部AR34が商品900の天面等に接触する。この屈曲部AR34は、R形状からなるので、商品900への破損等を防止することができる。
【0066】
さらに、図8に示すように、商品900がベルトコンベア800により搬送された場合、矢印R1の方向に回動した複数の回動板501の一部の回動板501が、矢印R1と逆方向の矢印−R1の方向に回動する。この場合、一部の回動板501における重心位置G2は、水平軸506より搬送方向側(矢印X1の方向)に存在するので、一部の回動板501が矢印−R1の方向に回動し、一部の回動板501の屈曲部AR12が部材505aに接触して矢印−R1の方向への過度の回動が規制される。
【0067】
続いて、図8に示すように、複数の回動板502の一部の回動板502が矢印R1の方向に回動し、商品900が通過する。この場合、全ての複数の回動板502が矢印R1の方向に回動するのではなく、商品900の幅に応じた回動板502のみが矢印R1の方向に回動する。ここで、回動板502の領域AR3が搬送面に対して傾斜して設けられているので、商品900に対する破損を防止することができる。同時に、この一部の回動板502は、領域AR1のバランスウェイト的な効果により、商品900に対する破損を防止することができる。また、商品900が軽量な場合であっても、円滑に一部の回動板502を矢印R1の方向に回動させることができる。
【0068】
そして、図9に示すように、商品900が複数の回動板502を通過し終えた場合、矢印R1の方向に回動した複数の回動板502の一部の回動板502の屈曲部AR34が商品900の天面等に接触する。この屈曲部AR34は、R形状からなるので、商品900への破損等を防止することができる。
【0069】
最後に、図10に示すように、商品900がベルトコンベア800によりさらに矢印X1の方向に搬送された場合、矢印R1の方向に回動した複数の回動板502の一部の回動板502が、矢印R1と逆方向の矢印−R1の方向に回動する。この場合、一部の回動板502における重心位置G2が水平軸507よりも搬送方向下流側(矢印X1の方向)にあるので、一部の回動板502が矢印−R1の方向に回動し、一部の回動板502の屈曲部AR12が部材505aに接触して矢印−R1の方向への過度の回動が規制される。その結果、X線の漏洩が防止されつつ、X線検査室300内に商品900を搬送することができる。
【0070】
以上のように、本実施の形態に係るX線検査装置100においては、X線漏洩防止カーテン500の重心位置G1,G2が水平軸506,507,606,607よりもベルトコンベア800の矢印X1の方向側に存在するので、X線漏洩防止カーテン500が矢印−R1の方向へ回動する力が加わる。
【0071】
また、屈曲部AR12が部材505aに接触することによりX線漏洩防止カーテン500の過度の回動が規制されているので、X線漏洩防止カーテン500がX線を遮蔽する位置に固定される。一方、商品900が通過した場合には、回動されたX線漏洩防止カーテン500が回動する前のX線漏洩防止カーテン500の位置に短時間で戻ろうとする。その結果、X線検査室300からのX線の漏洩を防止することができる。
【0072】
また、水平軸506,507,606,607より上方に領域AR1を設けることで、水平軸506,507,606,607近傍の隙間からのX線の漏洩を確実に防止することができる。
【0073】
さらに、領域AR1にバランスウェイト機能を持たせることで、垂直の板状部材を用いる場合と比較して、X線漏洩防止カーテン500の回動力を確実に低下させることができる。その結果、商品900が軽量物の場合であっても、X線漏洩防止カーテン500を容易に回動させて、確実に商品900をX線検査室300内に搬送することができる。
【0074】
また、X線漏洩防止カーテン500の下端側に屈曲部AR34が形成されているので、仮にX線漏洩防止カーテン500がベルトコンベア800の搬送面に接触した場合でも、ベルトコンベア800の搬送面への損傷を防止することができる。さらに商品900に損傷を与えることを防止することができる。
【0075】
さらに、商品900の大きさに応じて、複数のX線漏洩防止カーテン500のうち商品900が当接した一部のX線漏洩防止カーテン500のみが回動し、他のX線漏洩防止カーテン500は、回動されない。その結果、余分な隙間が生じないので、X線の漏洩を低減することができる。
【0076】
(他の実施例)
次に、図11は、X線漏洩防止カーテン510の他の例を示す模式図である。
【0077】
図11に示すX線漏洩防止カーテン510aは、図3に示したX線漏洩防止カーテン510の回動板501,502を鉛直方向に複数段設けたものである。
【0078】
図11の回動板501の領域AR3に他の回動板501aの水平軸506aが設けられ、他の回動板501aの領域AR3にさらに他の回動板501bの水平軸506bが設けられる。さらに他の回動板501bの領域AR4がベルトコンベア800の搬送面と隙間Kを形成する。
【0079】
図11に示すように、回動板501の屈曲部AR12が部材505aと接触することにより過度の回動が規制され、回動板501aの屈曲部AR12aが回動板501の領域AR3と接触することにより過度の回動が規制され、回動板501bの屈曲部AR12bが回動板501aの領域AR3と接触することにより過度の回動が規制される。
【0080】
同様に、回動板502の領域AR3に他の回動板502aの水平軸507aが設けられ、他の回動板502aの領域AR3にさらに他の回動板502bの水平軸507bが設けられる。さらに他の回動板502bの領域AR4がベルトコンベア800の搬送面と隙間Kを形成する。
【0081】
また、回動板502の屈曲部AR12が部材505aと接触することにより過度の回動が規制され、回動板502aの屈曲部AR12aが回動板502の領域AR3と接触することにより過度の回動が規制され、回動板502bの屈曲部AR12bが回動板502aの領域AR3と接触することにより過度の回動が規制される。
【0082】
(さらに他の例)
図12は、X線漏洩防止カーテン510,610の複数の回動板501c,502c,601c,602cを説明するための模式的斜視図である。以下、図5の複数の回動板501,502,601,602と異なる点について主に説明を行う。
【0083】
図12に示すように、複数の回動板501c,502c,601c,602cは、図5の複数の回動板501,502,601,602にさらに遮蔽板RIB1を設け、複数の回動板501c,502c,601c,602cの断面が略コ字状となるように形成されている。
【0084】
複数の回動板501c,502c,601c,602cの遮蔽板RIB1は、商品900が回動板501c,502c,601c,602cに当接し、回動板501c,502c,601c,602cの一部が他の隣接する回動板501c,502c,601c,602cに対して、矢印R1の方向に回動した場合に生じる隙間を遮蔽することができるように設けられている。それにより、さらに確実にX線検査室300からのX線の漏洩を防止することができる。
【0085】
図13は、X線漏洩防止カーテン510,610の複数の回動板501x,502x,601x,602xを説明するための模式図であり、図14は、X線漏洩防止カーテン510,610の複数の回動板501z,502z,601z,602zを説明するための模式図である。
【0086】
図13に示すように、複数の回動板501x,502x,601x,602xは、大きなRを有する屈曲部AR34xを設けて、領域AR4を上方向に向けてもよい。それにより、仮にベルトコンベア800の搬送面に接触した場合であっても、搬送面の傷付けを防止することができる。また、領域AR2に対して領域AR3xの傾斜角度をさらに深くしてもよい。その結果、商品900の搬送方向への搬送し易さ、および搬送方向と逆方向への戻り難さを実現することができる。
【0087】
また、図14に示すように、複数の回動板501z,502z,601z,602zは、領域AR1の代わりに、領域AR2と直線状を成す領域AR1zを設けてもよい。この場合、バランスウェイト的効果は減少するが、屈曲部AR12が不要となるので、部材製造コストを下げることができる。
【0088】
なお、本実施の形態においては、複数の回動板501,502,601,602は、金属板からなることとしたが、これに限定されず、鉛を練り込んだ樹脂、その他、X線を遮蔽する部材からなってもよい。それによりX線の漏洩を防止することができる。さらに、複数の回動板501,502,601,602の表面は、エンボス加工等の表面処理が施されていてもよい。
【0089】
また、本実施の形態においては、屈曲部AR12および台座505の部材505aを接触させることとしたが、これに限定されず、領域AR1と台座505の部材505aとを接触させて過度の揺れ戻しを規制してもよく、領域AR2と台座505の部材505aとを接触させて過度の揺れ戻しを規制してもよい。
【0090】
また、本実施の形態においては、軸支部503,504,603,604に孔が形成されることとしているが、これに限定されず、長孔を設けて、複数の回動板501,502,601,602の回動を一定の径で回動させるのではなく、可変な径で可変させてもよい。また、長孔を設けて複数の回動板501,502,601,602の位置を微調整できるようにしてもよい。
【0091】
また、X線漏洩防止カーテン510,610において板幅を変更させてもよく、複数の回動板501,502,601,602を構成する個々の回動板の幅を変化させてもよい。
【0092】
なお、本実施の形態においては、複数の回動板501,502,601,602を複数個併設することとしているが、これに限定されず、他の任意の個数併設させることとしてもよい。
【0093】
また、図11において回動板501の領域AR3に他の回動板501aの水平軸506aが設けられ、他の回動板501aの領域AR3にさらに他の回動板501bの水平軸506bが設けられるとしたが、これに限定されず、領域AR2または領域AR4に設けてもよい。
【0094】
本実施の形態においては、ベルトコンベア800が搬送装置に相当し、商品900が被検査物に相当し、X線検査室300が検査室に相当し、X線漏洩防止カーテン500がX線漏洩防止部材に相当し、X線検査装置100がX線検査装置に相当し、水平軸506,507,606,607が回動軸に相当し、矢印X1の方向が被検査物の搬送方向に相当し、屈曲部AR12および部材505aが揺れ戻し回動規制部に相当し、領域AR1および領域AR2の一部が上部漏洩防止部材に相当し、領域AR2の一部、領域AR3、領域AR4が下部漏洩防止部材に相当し、図3の実線が、回動軸を中心に回動する前に相当し、重心位置G1,G2が重心位置に相当し、部材505aに屈曲部AR12が接触している状態が、揺れ戻し回動規制部により回動が規制されているに相当し、図3の破線が回動軸を中心に回動した状態に相当し、屈曲部AR34が曲げ形状部に相当し、図12の複数の回動板501c,502c,601c,602cが、横断面コ字状に相当し、図11のX線漏洩防止カーテン510aが垂直方向に複数個、互いに併設して設けられた状態に相当する。
【0095】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれらだけに制限されない。本発明の主旨と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0096】
100 X線検査装置
200 X線照射装置
220 ラインセンサ
300 X線検査室
510 入口側のX線漏洩防止カーテン
610 出口側のX線漏洩防止カーテン
506,507,606,607 水平軸
505a 部材
800 ベルトコンベア
900 商品



【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によって搬送される被検査物に検査室内でX線を照射して検査を行い、前記検査室の被検査物の搬入口または搬出口に前記X線の漏洩を防止するX線漏洩防止部材を備えたX線検査装置であって、
前記X線漏洩防止部材は、回動軸を中心に回動可能であるとともに、前記被検査物の搬送方向とは反対の方向への回動を規制する揺れ戻し回動規制部を備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記回動軸は略水平に設けられており、前記X線漏洩防止部材は、前記回動軸を挟んで上方に延設された上部漏洩防止部材と、前記上部漏洩防止部材より長く、下方傾斜して延設された下部漏洩防止部材とからなること特徴とする請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記X線漏洩防止部材は、前記回動軸を中心に回動する前において、前記X線漏洩防止部材の重心位置が前記回動軸よりも前記搬送装置の搬送方向側に存在し、かつ前記揺れ戻し回動規制部により回動が規制されていることを特徴とする請求項1または2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線漏洩防止部材は、前記回動軸を中心に回動した状態において、前記X線漏洩防止部材の重心位置が前記回動軸よりも前記搬送装置の搬送方向側に存在することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記X線漏洩部材は、下端側に曲げ形状部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記X線漏洩防止部材は、前記搬送方向と直交する方向に複数個、互いに併設して設けられたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
少なくとも前記X線漏洩防止部材の下方傾斜部の横断面がコ字状からなることを特徴とする請求項6に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記X線漏洩防止部材は、前記垂直方向に複数個、互いに併設して設けられたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記X線漏洩防止部材は、表面にエンボス加工が施されたことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記X線漏洩防止部材は、金属板からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のX線検査装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−191165(P2011−191165A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57201(P2010−57201)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】