説明

X線照射方向明示器、X線照射方向明示器を備えた照射筒、及びX線照射方向明示器を備えたX線発生装置

【課題】この発明は、照光された可視光を患部表面の皮膚に投影しながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができるX線照射方向明示器、X線照射方向明示器を備えた照射筒、及びX線照射方向明示器を備えたX線発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】色の異なる可視光ビーム100を照光する赤色円形可視光源31及び青色円形可視光源32を、赤色円形可視光源31及び青色円形可視光源32から照光する赤色円形可視光ビーム101,青色円形可視光ビーム102が、X線ヘッド10から前方に向けて照射するX線ビーム200のX線照射軸200L上で交差するように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、歯科診療において口腔内を撮影する口内法X線撮影装置を用いて患部のX線写真を撮影する際において、予めX線の照射方向を明示するX線照射方向明示器、X線照射方向明示器を備えた照射筒、及びX線照射方向明示器を備えたX線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科診療において、口腔内をX線で撮影した画像を確認し、疾患の程度や、治療の結果を判断することが重要である。例えば、そのためのX線撮影装置として、パノラマX線撮影装置、X線CT撮影装置、セファロX線撮影装置、断層撮影装置、あるいはデンタルX線撮影装置といわれる口内法X線撮影装置等がある。
なお、上述の診療は、診断、診察及び治療を含む概念である。
【0003】
これらのX線撮影装置のうち口内法X線撮影装置は、口腔内にデンタルX線フィルム等のX線検出器を挿入し、X線発生装置を患部に対して位置調整する。そして、X線発生装置からX線を照射し、口腔内に挿入したX線検出器で撮影する。
【0004】
なお、X線発生装置から照射されるX線の照射方向がX線検出器に対してずれていると、正確な画像を取得できず、再撮影を余儀なくされることから、X線被曝線量が増えるという問題があった
そこで、X線発生装置のX線照射方向の前方に備えられた円筒状の照射筒の先端付近において、前方に可視光を照光する複数の導光体を、可視光がX線の照射軸上で交差するように周方向に等間隔で配置した照射筒が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この照射筒をX線発生装置に装着し、導光体から照光される可視光の交差部分を患部に合わせることにより、予めX線発生装置から照射されるX線の照射方向を設定できるとともに、X線発生装置から患部までの適切な距離を合わせることができるとされている。
【0006】
しかしながら、可視光が投影される患部表面の皮膚は立体形状であり、可視光の交差部分を正確に患部に合わせることは困難であった。詳述すると、照射筒において、円筒状の周方向に等間隔に配置された導光体のそれぞれから照光された可視光は、X線照射軸上の交差部分に向かって近づいていき、交差部分を過ぎると、X線照射軸に対して軸対称とした配置で離れていく。
【0007】
そうすると、患部表面の皮膚において可視光が複数投影された状態では、交差部分より手前側で可視光が投影されている、つまり距離が所定距離より短いということなのか、逆に、交差部分より奥側で可視光が投影されている、つまり距離が所定距離より長いということなのか判断することができず、投影された可視光を確認しながら、X線発生装置を少しづつ移動させて交差部分を探し、適切な位置に移動する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭58−1405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、照光された可視光を患部表面の皮膚に投影しながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができるX線照射方向明示器、X線照射方向明示器を備えた照射筒、及びX線照射方向明示器を備えたX線発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、異なる照光形式で可視光を照光する複数の照光手段を、該照光手段から照光する照光軸が、X線発生装置から前方に向けて照射するX線のX線照射軸と軸対称とし、且つX線照射軸上で交差するように配置したX線照射方向明示器であることを特徴とする。
【0011】
上述の照光形式は、光の色、形状、明度、発光パターン、強度(照度)、例えば、レーザ光を照射するレーザ照射源とLED発光装置のように異なる光源による光の種類、あるいはこれらの組み合わせとすることができる。
【0012】
上述のX線照射方向明示器は、X線発生装置に組み付けたX線照射方向明示器、X線発生装置に装着する部品に組み付けたX線照射方向明示器、あるいは、X線発生装置や装着する部品に対して取り付けるX線照射方向明示器とすることができる。
なお、複数の照光手段から照光された可視光のX線照射軸上における交差部分は、X線発生装置に対する患部表面の皮膚までの距離の目安となる。
【0013】
この発明により、照光された可視光を患部表面の皮膚に投影しながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができる。
詳しくは、複数の照光手段から照光された可視光は、X線照射軸上の交差部分に向かって近づいていき、交差部分を過ぎると、X線照射軸に対して軸対称とした位置関係で離れていくが、それぞれの照光手段から照光された可視光は異なる照光形式であるため、患部表面の皮膚に投影された可視光の位置関係を確認するだけで容易に交差部分に対する前後関係を把握することができる。
【0014】
具体的には、患部表面の皮膚に投影された可視光がひとつである、つまり複数の照光手段から照光された可視光が合成されていれば交差部分に対応する適切な位置であることを示し、異なる照光形式の可視光がX線照射方向明示器に配置されたままの位置関係で投影されている場合は、交差部分より手前側で可視光が投影されている、つまり距離が所定距離より短いということとなる。
【0015】
これに対し、患部表面の皮膚に投影された異なる照光形式の可視光がX線照射方向明示器に配置された位置関係と比べ、X線照射軸に対して軸対称な位置関係であれば、交差部分より奥側で可視光が投影されている、つまり距離が所定距離より長いということを判断することができる。
【0016】
このように、それぞれの照光手段から照光された可視光を異なる照光形式で照光しているため、患部表面の皮膚に投影された可視光の位置関係を確認することで、容易に交差部分に対する前後関係を把握することができ、照光された可視光を患部表面の皮膚に投影しながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができる。
したがって、効率よくX線検出器で正確な画像を撮影し、正確な画像に基づいて適確な診療を行うことができる。
【0017】
この発明の態様として、前記複数の照光手段を、前記X線照射軸を中心として等間隔に配置することができる。
この発明により、照光軸がX線照射軸と軸対称となるように、且つX線照射軸上で確実に交差するように複数の照光手段を配置することができる。詳しくは、各照光手段のX線照射軸に対する照光方向を同方向とし、照光手段を前記X線照射軸を中心として軸対称となるようにX線照射筒又はX線発生器に等間隔に配置するだけで容易、且つ確実に、照光軸がX線照射軸上で確実に交差するように複数の照光手段を配置することができる。
【0018】
また、患部表面の皮膚に投影された可視光の間隔を確認することによって、X線発生装置の患部表面に対する傾斜方向を確認することができる。
詳しくは、例えば、3以上の照光手段を、X線照射軸を中心として等間隔で配置した場合、患部表面の皮膚に投影された可視光の位置関係が等間隔でなければ、X線照射軸が患部表面に対して傾斜する方向であることが確認できる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記異なる照光形式を、光の色、断面形状、明度及び発光パターンのうちいずれかひとつ、あるいはそれらを組み合わせた形式とすることができる。
【0020】
なお、上述の異なる照光形式は、各照光手段から照光された可視光のすべてが、光の色、断面形状、明度及び発光パターンのうちいずれかひとつ、あるいはそれらを組み合わせた形式で異なる場合のみならず、例えば、3以上の照光手段を備えた場合において、ある可視光の組み合わせでは光の色が異なり、別の可視光の組み合わせでは断面形状が異なるといったように、各照光手段から照光された可視光を識別できるような照光形式の異なるパターンを含む概念とする。
【0021】
この発明により、それぞれの照光手段から投影された可視光を目視で容易に識別し、患部表面の皮膚に投影された可視光の位置関係を確実に把握し、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、効率よく位置調整することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記異なる照光形式が、交差状態において合成して所望の照光形式を構成する照光形式であることを特徴とすることができる。
上述の交差状態において合成して所望の照光形式を構成するということは、例えば、各照光手段から異なる色の可視光を照光し、交差部分における各可視光の合成により所望の色を構成する、異なる形状の可視光を照光し、交差部分における各可視光の合成により所望の形状を構成する、あるいは、点滅タイミングを相互にずらし、交差部分において連続点灯状態の可視光とするなどの、交差部分において投影された可視光の合成により所望の照光形式とすることができる。
この発明により、容易に交差部分を認識し、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、さらに効率よく位置調整することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記照光手段の照光角度を調整する角度調整手段を備えることができる。
この発明により、X線照射軸上における交差部分のX線発生装置に対する距離を所望の距離に調整することができる。例えば、患部の状態や、X線発生装置に装着する照射筒の長さ等に応じて、X線照射軸上におけるX線発生装置に対する交差部分の位置を調整する場合があるため、前記照光手段の照光角度を調整する角度調整手段を備えることにより、利便性が向上する。
【0024】
またこの発明の態様として、前記照光手段から照光する可視光を肌色に非類似の色で照光することを特徴とすることができる。
上記肌色に非類似の色は、黄色成分の少ない色の可視光とすることができる。
【0025】
この発明により、患部表面の皮膚に投影された可視光を目視で容易に識別することができる。詳しくは、照光手段から照光された可視光が肌色に類似する色で照光された場合、肌色である患部表面の皮膚に投影された可視光の視認性が低いが、肌色に非類似の色で照光することにより、患部表面の皮膚に投影された可視光の視認性を向上することができる。
【0026】
またこの発明は、前記X線発生装置のX線照射口に設けられるとともに、X線照射方向に貫通する貫通空間を有する筒状に形成された照射筒であって、上述のX線照射方向明示器を備えた照射筒であることを特徴とする。
上記照射筒は、X線発生装置のX線照射口に固定された照射筒、又は脱着自在にX線照射口に装着される照射筒とすることができる。
【0027】
この発明により、例えば、X線照射方向明示器を備えていないX線発生装置に対しても、X線照射方向明示器を備えた照射筒を装着することにより、照光された可視光を患部表面の皮膚に投影しながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができる。
【0028】
また、例えば、照射筒の筒長さや筒径に応じた照光方向にセットした照射手段を備えた照射筒を用意することにより、その照射筒に適した位置に、X線発生装置を位置調整することができる。
【0029】
この発明の態様として、前記照光手段を、前記照光軸が前記貫通空間内側を通り、筒先より前方のX線照射軸上で交差するように配置することができる。
この発明により、照光軸が照射筒の外側を通り、筒先より前方のX線照射軸上で交差する場合と比較して、筒先より交差部分までの距離の設定範囲が拡大し、汎用性が高まる。
【0030】
またこの発明は、X線発生手段を備え、該X線発生手段の前方のX線照射口に、X線照射方向に貫通する貫通空間を有する筒状に形成された照射筒を備えるとともに、上述のX線照射方向明示器を備えたX線発生装置であることを特徴とする。
【0031】
上記照射筒は、X線発生装置のX線照射口において一体構成された照射筒、あるいは別体構成された照射筒を含み、さらには脱着自在にX線照射口に装着される照射筒とすることができる。
【0032】
この発明により、X線照射方向明示器から照光された可視光を患部表面の皮膚に投影しながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができる。
【0033】
この発明の態様として、前記照光手段を、前記照光軸が前記貫通空間内側を通り、前記照射筒の筒先より前方のX線照射軸上で交差するように配置することができる。
【0034】
この発明により、照光軸が照射筒の外側を通り、筒先より前方のX線照射軸上で交差する場合と比較して、筒先より交差部分までの距離の設定範囲が広がり、汎用性が高まる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記照射筒を、前記X線照射口に対して着脱自在に構成し、前記照射筒の種類に応じて、前記照光手段の照光角度を自動調整する角度自動調整手段を備えることができる。
【0036】
この発明により、撮影条件に適した筒長さや筒径で構成する様々な種類の照射筒を用意することにより、状況に応じて適した照射筒を用いてX線撮影することができる。
【0037】
また、前記照射筒の種類に応じて、前記照光手段の照光角度を自動調整する角度自動調整手段を備えたことにより、状況に応じて選択した照射筒に合わせてX線照射軸上における交差部分のX線発生装置に対する距離を自動調整することができる。したがって、照光手段の照光角度が調整できない場合や、装着した照射筒に合わせて手動で照光手段の照光角度を調整する場合に比べて、操作性を向上することができる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記照射筒を、透光性を有する透光性樹脂で構成することができる。
上記透光性は、透明だけでなく、不透明であっても、外部から可視光を視認できる程度に透けたものも含む概念である。
【0039】
この発明により、外部より、照光手段から照光される可視光を視認することができる。したがって、不透光性の照射筒の場合において可視光の視認できる位置に回り込んで、投影された可視光を確認して位置調整する等の無駄がなく、安全且つ速やかに、投影された可視光を確認しながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記照光手段を、2つの照光手段で構成し、前記X線照射軸に対して軸対称に配置し、且つ前記照光軸が水平となるように配置することができる。
この発明により、水平方向に照光され、患部表面の皮膚に投影された可視光を確認しながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができる。
【0041】
詳しくは、一般的に、X線発生装置は、上下方向に回動する回動軸が水平を維持したまま、位置調整することができる。そのように水平状態を維持したまま位置調整可能なX線発生装置において、2つの照光手段を前記X線照射軸に対して軸対称に配置するとともに、前記照光軸が水平となるように配置することによって、常に、水平に照光される可視光を患部表面の皮膚に投影させながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができる。
【0042】
またこの発明の態様として、前記照光手段のON/OFFを制御する制御部と、前記照光手段をON操作する操作スイッチとを備え、前記操作スイッチを、面状の接触感知スイッチで構成するとともに、前記照射筒を含む前記X線発生装置の表面の少なくとも一部に配置し、前記制御部を、前記操作スイッチのON操作に応じて、前記照光手段をON制御し、所定時間経過後にOFF制御する構成とすることができる。
【0043】
この発明により、容易に位置調整し、かつ安全にX線発生装置からX線を照射させて撮影することができる。
詳しくは、照光手段をON操作する操作スイッチを面状の接触感知スイッチで構成するとともに、前記照射筒を含む前記X線発生装置の表面の少なくとも一部に配置したため、照光手段から照光された可視光を見ながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に位置調整するために、前記X線発生装置に接触する際に、面状の接触感知スイッチをON操作することができる。したがって、別の操作スイッチを設けた場合と比較して、操作性が向上する。
【0044】
また、制御部が操作スイッチのON操作に基づいて照光手段をON制御するとともに、所定時間経過後にOFF制御するため、照光手段から照光された可視光が投影された状態でX線発生装置からX線を照射させてX線撮影することを防止できる。
【発明の効果】
【0045】
この発明により、照光された可視光を患部表面の皮膚に投影しながら、X線発生装置を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができるX線照射方向明示器、X線照射方向明示器を備えた照射筒、及びX線照射方向明示器を備えたX線発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】口内法X線撮影装置の斜視図。
【図2】X線ヘッドについての斜視図。
【図3】可視光ビームについての説明図。
【図4】X線ヘッドに内蔵した可視光源の照光方向調整手段についての説明図。
【図5】X線ヘッドに内蔵した可視光源の別パターンの照光方向調整手段についての説明図。
【図6】X線ヘッドに内蔵した可視光源の別パターンの照光方向調整手段についての説明図。
【図7】X線ヘッドの前面に可視光源を装備したX線ヘッドの斜視図。
【図8】X線ヘッドの前面に装備した可視光源の照光方向調整手段についての説明図。
【図9】可視光源を内蔵した照射筒についての説明図。
【図10】3つの可視光源を装備したX線ヘッドの背面側からの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は口内法X線撮影装置1の斜視図を示し、図2はX線ヘッド10の斜視図を示し、図3は可視光ビーム100についての説明図を示している。詳しくは、
図3(a),(b)は可視光源30から照光する可視光ビーム100についての投影形状についての概略図を示している。なお、図3(a)は、赤色円形可視光ビーム101を照光する赤色円形可視光源31と、青色円形可視光ビーム102を照光する青色円形可視光源32とで照光した場合についての概略図を示している。これに対し、図3(b)は、投影形状が逆D型である逆D型可視光ビーム103を照光する逆D型可視光源33と、投影形状がD型であるD型可視光ビーム104を照光するD型可視光源34とで照光した場合についての概略図を示している。
【0048】
デンタルX線撮影装置といわれる口内法X線撮影装置1は、図1に示すように、例えば、床面に載置される基台2と、基台2の上面2aに配置され、患者が着座するシート3と、基台2の上面2aに植設され、支柱として機能するスタンドポール4と、スタンドポール4の上端に回動可能に接続されたアーム5と、アーム5の先端において後述するX線ヘッド10を吊り下げ支持するヘッドサポート6と、ヘッドサポート6に対して回動可能に接続されたX線ヘッド10と、スタンドポール4のシート3側に固定されたバックレスト7と、スタンドポール4におけるシート3と反対側に固定されたインバータボックス8とで構成している。
【0049】
シート3は、平面視円形の座面クッション部3aを、基台2に対して高さ調整可能に構成している。スタンドポール4は四角柱状であり、シート3の座面クッション部3aに着座した普通人の頭部より高くなる高さで形成している。したがって、スタンドポール4のシート3側に固定されたバックレスト7は、シート3に着座した患者の背もたれとして機能する。なお、シート3とバックレスト7は患者の腰や背中を支持する被写体支持手段の構成例であるが、他に、背もたれと座部を一体にした椅子を用いても良い。
【0050】
アーム5は、スタンドポール4の上端部4aに対して、鉛直方向の回動軸を中心として回動する水平方向の第1アーム5aと、第1アーム5aの先端部5aaに対して、鉛直方向の回動軸を中心として回動する斜め下向きの第2アーム5bとで構成している。
【0051】
ヘッドサポート6は、第2アーム5bの先端部5baに対して、鉛直方向の回動軸を中心として回動する下向き逆L字型に形成し、下端部6aでX線ヘッド10の側面10bに対して水平方向の回動軸6axを中心として回転支持する構成であり、X線ヘッド10の前面10aに装着される照射筒20が上下方向に揺動可能である。なお、アーム5とヘッドサポート6は、X線発生装置であるX線ヘッド10を支持するX線発生装置支持手段の構成例である。
【0052】
X線発生装置に対応するX線ヘッド10は、平面視縦長且つ高さの低い直方体形状で形成され、内部にX線管球や高圧発生部等を配置し、X線遮蔽部材で覆ったX線照射手段12(図2)を備え、前面10aに照射筒20の装着を許容し、X線照射口に対応する照射筒装着口11を設けるとともに、上面10cの後端側隅角部に後述する可視光源30をON操作する面状操作スイッチ40を設けている。そして、X線ヘッド10の照射筒装着口11に中空円筒形状であり、透明性を有する透明樹脂で形成した照射筒20を着脱自在に装着している。
【0053】
なお、スタンドポール4において、シート3と反対側に固定されたインバータボックス8の内部には、X線ヘッド10から照射するX線を照射制御する制御部を内蔵している。
【0054】
このように構成された口内法X線撮影装置1では、X線ヘッド10からX線を照射し、患者の口腔内にセットしたCCDセンサやMOSセンサ、CMOSセンサ、その他の固体撮像素子やイメージングプレートを用いたX線撮像手段やX線フィルム等の検出器(図示省略)で患部のX線写真を撮影することができる。
【0055】
また、その撮影のため、X線ヘッド10は、アーム5及びヘッドサポート6により、シート3に着座した患者の患部に対して、水平方向に移動可能であるとともに向きを調整することができる。
【0056】
また、ヘッドサポート6は、第2アーム5bの先端部5baに対して、鉛直方向の回動軸を中心として回動するとともに、ヘッドサポート6の下端部6aでX線ヘッド10の側面10bに対して水平方向の回動軸6axを中心として上下方向に回転支持することができる。したがって、アーム5やヘッドサポート6によって、X線ヘッド10の位置や向きを調整することができる。
なお、上述の口内法X線撮影装置1では、スタンドポール4を基台2に立設し、基台2に患者が着座するシート3を備えたが、スタンドポール4が直接床や壁に固定されるような形態であっても良い。また、X線ヘッド10を天井や壁からアーム機構を介して移動自在に配置したり、スタンドポール4を立設した基台2の下にキャスターを付けて移動自在とする構成等の従来の口内法X線撮影装置の構成のいずれも採用することができる。
【0057】
続いて、X線ヘッド10について詳述する。前面10aの照射筒装着口11に装着した照射筒20の貫通空間20aを通過してX線ビーム200を患部に向かって照射するX線ヘッド10は、内部にX線ビーム200を発生させるX線発生手段12と、照光手段に対応し、可視光ビーム100を照光する可視光源30を備えている。
【0058】
詳しくは、X線照射手段12は、X線ヘッド10の前面10aに設けた照射筒装着口11を通過して前方(図2において右下方向)に向かってX線ビーム200を照射する。このX線照射手段12から照射されたX線ビーム200の光軸をX線照射軸200Lとしている。
【0059】
可視光源30は、照射筒装着口11のX線ヘッド10内部に配置され、可視光ビーム100を前方に向かって照光する。この可視光源30から照射された可視光ビーム100の光軸を可視光照光軸100L(図3参照)とする。
【0060】
この可視光源30は、図3(a)に示すように、X線照射軸200Lに対して軸対称に2つ配置するとともに、それぞれの可視光源30から照光される可視光ビーム100の可視光照光軸100LがX線照射軸200L上の交差ポイントPで交差する向きで、つまりX線照射軸200Lの前方に向かって平面視ハ字状に配置している。
【0061】
なお、この可視光源30の照光制御は、例えば、図2に示すように、X線ヘッド10を位置付けする際に無意識に触れるX線ヘッド10の上面10cに設けられた面状の接触感知スイッチで構成する操作スイッチ40による接触ON操作に基づき、インバータボックス8に内蔵した制御部(図示省略する)によってON制御されるとともに、所定時間経過後にOFF制御されるようにすれば、いちいち照光及び消灯のためのスイッチ操作をする必要がないため利便性が向上する。
また、上述の交差ポイントPは、X線ヘッド10に対する患部表面の皮膚までの距離であるとともに、X線撮影に適した距離の目安となる。
【0062】
続いて、X線ヘッド10の内部において水平方向且つ、X線照射軸200Lに対して軸対称に配置され、X線照射方向明示器を構成する2つの可視光源30、つまり前記X線照射軸を中心として等間隔に配置された可視光源30について、図3とともに詳述する。なお、図3において、ハッチングで示す図は、ハッチングの図が、投影面が配置されたそれぞれの位置における、可視光源30から照光される可視光が投影される垂直な投影面での投影形状を示している。
【0063】
2つの可視光源30は、異なる照光形式で可視光ビーム100を照光している。例えば、図3(a)で示すパターンでは、可視光ビーム100の色が異なるように、X線照射軸200Lの照射方向前方に向かって左側の可視光源30を、赤色円形可視光ビーム101を照光する赤色円形可視光源31で構成し、右側の可視光源30を、青色円形可視光ビーム102を照光する青色円形可視光源32で構成している。
【0064】
この場合、X線照射軸200Lの左側の赤色円形可視光源31からは、赤色円形の可視光ビームが照光され、X線照射軸200Lの右側の青色円形可視光源32からは、青色円形の可視光ビームが照光される。そして、X線照射軸200Lの交差ポイントPでは、赤色円形可視光ビーム101と青色円形可視光ビーム102とが合成し、赤色と青色の円形が重なってマゼンダ色の一つの円形となる投影形状の可視光ビームとなり、交差ポイントPより照光方向前方(Hf)では、赤色円形可視光ビーム101はX線照射軸200Lに対して右側、青色円形可視光ビーム102はX線照射軸200Lに対して左側となり、その間隔は徐々に広がっていく。
なお、可視光源30から交差ポイントPまでの範囲を近接範囲Hn、交差ポイントPより照光方向前方を遠隔範囲Hfとしている。
【0065】
このように、2つの可視光源30を、X線照射軸200Lに対して左側の赤色円形可視光源31と、右側の青色円形可視光源32とで構成することによって、可視光源30(31,32)から可視光ビーム100(101,102)を患部表面の皮膚に対して投影した状態において、マゼンダ色のほぼ円形の投影形状の可視光ビーム100が投影されると患部表面の皮膚は交差ポイントPの位置にあり、さらに、赤色円形可視光ビーム101が左側、青色円形可視光ビーム102が右側に投影されると、可視光源30に対する患部表面の皮膚までの距離は近接範囲Hnであり、赤色円形可視光ビーム101が右側、青色円形可視光ビーム102が左側に投影されると、可視光源30に対する患部表面の皮膚までの距離は遠隔範囲Hfであることがわかる。
【0066】
なお、赤色円形可視光源31から照光される赤色円形可視光ビーム101の赤色、青色円形可視光源32から照光される青色円形可視光ビーム102の青色、及び赤色円形可視光ビーム101及び青色円形可視光ビーム102が交差ポイントPで合成されたマゼンダ色は、いずれも肌色に非類似の色であるため、患部表面の皮膚に投影した状態で視認性が高い。
【0067】
このように、患部表面の皮膚に投影された状態において視認性の高く肌色に非類似の色としては、黄色成分の少ない色の可視光であり、上述の赤色及び青色並びにその合成されたマゼンダ色の組み合わせ以外に、緑色及び青色並びに、その合成されたシアン色等の組み合わせであってもよい。
【0068】
また、2つの可視光源30が異なる照光形式で可視光ビーム100を照光する別のパターンとしては、図3(b)で示すように、可視光ビーム100の投影形状が異なるように、左側の可視光源30を、投影形状が逆D型である逆D型可視光ビーム103を照光する逆D型可視光源33で構成し、右側の可視光源30を投影形状がD型であるD型可視光ビーム104を照光するD型可視光源34で構成することができる。また、皮膚表面に照光された投影形状により、右側または左側の可視光ビーム100のどちらか一方なのか、あるいは両者が交差したもの(交差ポイントP)であるのかどうかがわかる。
【0069】
このように、2つの可視光源30をX線照射軸200Lに対して左側の逆D型可視光源33と、右側のD型可視光源34とで構成することによって、可視光源30から可視光ビーム100を投影した状態において、交差ポイントPでは、逆D型可視光ビーム103とD型可視光ビーム104とが合成されて投影形状が円形となる。つまり、交差ポイントPで投影される投影形状、つまり交差ポイントPに対して照光される照光形状が、交差ポイントPで所望の円形となるように、各可視光源30(33,34)から照光される可視光ビーム100の照光形状(投影形状)を逆D型とD型に設定している。
【0070】
したがって、可視光源30(33,34)から可視光ビーム100(103,104)を患部表面の皮膚に対して投影した状態において、円形の可視光ビーム100が投影されると患部表面の皮膚は交差ポイントPの位置にあり、さらに、逆D型の逆D型可視光ビーム103が左側、D型のD型可視光ビーム104が右側に投影されると、可視光源30に対する患部表面の皮膚までの距離は近接範囲Hnであり、逆D型の逆D型可視光ビーム103が右側、D型のD型可視光ビーム104が左側に投影されると、可視光源30に対する患部表面の皮膚までの距離は遠隔範囲Hfであることがわかる。このように、D型と逆D型の可視光ビームとを組み合わせれば、色を異ならせなくとも患部表面の皮膚までの距離が把握できる。また、これらについても色を異ならせるようにしても良いことは言うまでも無い。
【0071】
なお、上述の説明では、2つの可視光源30から照光される可視光ビーム100の照光形式として、可視光源30から照光される可視光ビーム100の色や照光形状(投影形状)を異ならせたが、色と照光形状(投影形状)以外でも、明度、発光パターン、強度(照度)を異ならせてもよく、さらにはこれらの組み合わせでもよい。なお、発光パターンを異ならせる場合、例えば一方の光を点滅照射してもよいし、双方の光を点滅照射してその点滅パターンを異ならせるようにしてもよい。
【0072】
このように、異なる照光形式で照光する可視光源30(31,32あるいは33,34)を備えたX線ヘッド10を有する口内法X線撮影装置1では、X線ヘッド10で患部に対してX線ビーム200を照射してX線撮影する前に、可視光源30から照光された可視光ビーム100を患部表面の皮膚に投影させ、患部表面の皮膚に対して適切な位置、つまり所望の照光形式で投影される交差ポイントPとなるようにX線ヘッド10を調整することができる。
【0073】
具体的には、照光形式の異なる可視光源30から可視光ビーム100を照光し、患部表面の皮膚に投影させる。そのとき、投影形式(照光形式:色や形状)が、X線照射軸200Lに対する2つの可視光源30の配置と同配置であれば、患部表面の皮膚に対するX線ヘッド10までの距離が近接範囲Hnであるため、患部表面の皮膚が交差ポイントPとなるように、X線ヘッド10を患部表面の皮膚から離す方向に位置調整する。
【0074】
これに対し、投影形式(照光形式:色や形状)が、X線照射軸200Lに対する2つの可視光源30の配置と比べて逆配置であれば、患部表面の皮膚に対するX線ヘッド10までの距離が遠隔範囲Hfであるため、患部表面の皮膚が交差ポイントPとなるように、X線ヘッド10を患部表面の皮膚に近づける方向に位置調整する。
【0075】
このように、2つの可視光源30から照光された可視光ビーム100を患部表面の皮膚に投影し、そのX線照射軸200Lに対する位置関係を確認することによって、患部表面の皮膚に対するX線ヘッド10の距離が近接範囲Hnにあるのか、それとも遠隔範囲Hfにあるのか直ちに確認することができる。
【0076】
また、2つの可視光源30を、X線照射軸200Lに対して、軸対称且つ水平となるように配置しているため、アーム5及びヘッドサポート6によって、X線ヘッド10は回動軸6axについて水平を維持しながら位置調整できるため、患部表面の皮膚に投影された2つの可視光ビーム100も常に水平状態であり、患部表面の皮膚に対するX線ヘッド10の位置調整を容易に行うことができる。
【0077】
また、透明な照射筒20を装着しているため、外部より、可視光源30から照光される可視光ビーム100を視認することができる。したがって、透明でない不透明な照射筒の場合において可視光ビーム100の視認できる位置に回り込んで、投影された可視光ビーム100を確認してX線ヘッド10の位置調整を行う等の無駄がなく、安全且つ速やかに、投影された可視光ビーム100を確認しながら、X線ヘッド10を患部に対して適切な位置に、容易に位置調整することができる。
したがって、CCDセンサやイメージングプレート等の検出器で効率よく、且つ正確な画像を撮影し、正確な画像に基づいて適確な診療を行うことができる。
【0078】
また、2つの可視光源30を、可視光照光軸100Lが照射筒20の貫通空間20aを通り、照射筒20の筒先より前方のX線照射軸200L上で交差するように配置しているため、可視光照光軸100Lが照射筒20の外側を通り、筒先より前方のX線照射軸200L上で交差する場合と比較して、筒先より交差ポイントPまでの距離の設定範囲が広がり、汎用性が高まる。
【0079】
続いて、2つの可視光源30の照光角度を、照射筒20の種類(筒長さ)に応じて自動調整する角度自動調整手段に対応する照光角度自動調整機構50について、図4乃至6とともに説明する。
【0080】
なお、図4乃至図6において、(a)は筒長さの短い短照射筒21を装着した場合の断面図を示し、(b)は筒長さの長い長照射筒22を装着した場合の断面図を示している。
【0081】
可視光源30の照光角度は、2つの可視光源30から照光された可視光照光軸100LがX線照射軸200L上で交差する交差ポイントPまでのX線ヘッド10からの距離によって定まるものであり、患者の年齢や撮影部位等の患部表面の皮膚の状況、あるいは照射筒20の筒長さによって、照光角度を調整し、交差ポイントPまでの距離を適宜設定することは、X線ヘッド10の利便性向上につながるものである。そのなかでも、ここで説明する照光角度自動調整機構50は、照射筒20の筒長さに応じて、可視光源30の照光角度を自動調整するものである。
【0082】
X線ヘッド10に対して脱着可能に装着する照射筒20は、照射筒20の後ろ側(図4乃至6において図面下側)を縮径し、照射筒装着口11に挿入する挿入縮径部23を備えている。そして、図4に示す照光角度自動調整機構50aでは、短照射筒21の挿入縮径部23のX線照射軸方向の長さを長照射筒22の挿入縮径部23より長く形成している。
【0083】
照光角度自動調整機構50の例として、図4に示す照光角度自動調整機構50aは、可視光ビーム100を照光する可視光源30の後端部分に、可視光源30を水平面状に枢動可能に軸支する枢動軸51をX線ヘッド10の内部の適宜部位に固定して設けるとともに、可視光源30の前端を幅方向外側に付勢するコイルばね52と、可視光源30の前端から斜め前方に挿入縮径部23の後端面に向かって延びるアーム53とを備えている。
【0084】
この構成により、照光角度自動調整機構50aは、照射筒装着口11に挿入縮径部23を挿入して照射筒20(21,22)を装着すると、挿入縮径部23の後端面がアーム53を後方に押し付けるため、可視光源30はコイルばね52の付勢力に抗して、枢動軸51を軸として可視光源30の前方を幅方向内側に枢動する。
【0085】
このとき、短照射筒21の挿入縮径部23に比べ、長照射筒22の挿入縮径部23は長さが短いため、アーム53を後方に押し付ける押し付け量が少なく、幅方向内側向きの枢動量が少なくなり、短照射筒21に比べて、可視光源30の可視光照光軸100Lの照光方向は浅くなり、照射筒20の筒先から交差ポイントPまでの距離を長く設定することができる。
【0086】
照光角度自動調整機構50の例として、図5に示す第2の照光角度自動調整機構50bは、可視光ビーム100を照光する可視光源30の後端部分に、可視光源30を水平面状に枢動可能に軸支する枢動軸51を設けるとともに、左右の可視光源30の前端同士を連結する連結部材54を備えている。
【0087】
そして、上述の照光角度自動調整機構50aとは異なり、短照射筒21の挿入縮径部23も長照射筒22の挿入縮径部23も同じ長さで形成しているが、短照射筒21の挿入縮径部23の幅方向中央部には、連結部材54の中央部分を後方に押し付ける押し付け凸部24を備えている。なお、左右の可視光源30の前端同士を連結する連結部材54は、可撓性及び弾性を有している。
【0088】
この構成により、第2の照光角度自動調整機構50bは、照射筒装着口11に挿入縮径部23を挿入して照射筒20(21,22)を装着すると、短照射筒21の押し付け凸部24は、連結部材54の中央部分を後方に押し付けるため、連結部材54は後方に突な湾曲状態で撓み、左右の可視光源30は枢動軸51を軸として前方を幅方向内側に枢動する。これに対し、長照射筒22は押し付け凸部24を備えていないため、連結部材54は撓まず、可視光源30は枢動しない。
【0089】
なお、連結部材54は可撓性及び弾性を有しているため、短照射筒21を取り外すと、押し付け凸部24による撓みは解消され、連結部材54の自己弾性力によって可視光源30を元の状態に枢動して復元する。また、上述の説明では、長照射筒22に押し付け凸部24を備えていなかったが、短照射筒21の押し付け凸部24に比べて後方への突出量の少ない押し付け凸部24を備えてもよい。
【0090】
照光角度自動調整機構50の例として、図6に示す第3の照光角度自動調整機構50cは、可視光ビーム100を照光する可視光源30の後端部分に、可視光源30を水平面状に枢動可能に軸支する枢動軸51を設けるとともに、可視光源30における前端付近に前方に突出する突出片55を備え、さらに突出片55を幅方向外側に向かって引っ張り方向に付勢するねじりバネ56を備えている。
【0091】
そして、短照射筒21の挿入縮径部23を長照射筒22の挿入縮径部23よりも長く形成するとともに、ともに挿入縮径部23の後端内側部分に、突出片55の当接を許容するテーパ部23aを形成している。また、テーパ部23aに当接する突出片55の当接部分55aを円弧状に形成している。なお、図示省略するが、光源30はバネ等の付勢手段によって突出片55側に向いて付勢されている。また、枢動軸51を設けずに突出片55に光源30を固定するようにしてもよい。
【0092】
この構成により、第3の照光角度自動調整機構50cは、照射筒装着口11に挿入縮径部23を挿入して照射筒20(21,22)を装着すると、挿入縮径部23のテーパ部23aは、突出片55の当接部分55aに当接し、突出片55を介して可視光源30を後方に押し付ける。
【0093】
このとき、テーパ部23aと当接部分55aとは、前後方向に対して交差する方向に当接しているため、ねじりバネ56の付勢力に抗し、枢動軸51を軸として可視光源30の前方を幅方向内側に枢動する。このテーパ部23aによる突出片55を介した押し込み量が長照射筒22に比べて短照射筒21の方が大きいため、短照射筒21による可視光源30の枢動量は大きくなる。なお、図4乃至6では可視光源30を可動させる例について説明したが、可視光源30を固定とし、長照射筒、短照射筒に設けられたミラー(またはプリズム等の光学手段)の角度を異ならせることによって照光角度を自動調整する構成であってもよい。
【0094】
これまで、図4乃至6とともに、可視光源30をX線ヘッド10の内部に配置し、照射筒20の貫通空間20aを可視光照光軸100Lが通過してX線照射軸200L上で交差するように可視光照光軸100Lを照光する可視光源30の照光角度自動調整機構50について説明したが、続いて、照光角度自動調整機構50の例として、図7に示すように、可視光源30をX線ヘッド10の前面10aに配置し、照射筒20の外側から可視光ビーム100を照光する場合における第4の照光角度自動調整機構50dについて説明する。
【0095】
なお、図7、図8(a)、図8(b)は、X線ヘッド10の前面10aに可視光源30を配置したX線ヘッド10の斜視図を示し、図8(a)は筒長さの短い短照射筒21を装着した場合の断面図を示し、図8(b)は筒長さの長い長照射筒22を装着した場合の断面図を示している。
【0096】
X線ヘッド10の前面10aに可視光源30を装着する場合、前面10aに設けた貫通孔30aを介して装着する。
第4の照光角度自動調整機構50dでは、可視光ビーム100を照光する可視光源30の長手方向中央前方寄りに、可視光源30を水平面状に枢動可能に軸支する枢動軸51を設けるとともに、可視光源30における後端付近に幅方向中央に向かって突出する突出片57を備えている。さらに、図示省略する付勢手段によって、可視光源30の前方を幅方向外側向きに、つまり突出片57を前方向きに付勢している。
そして、長照射筒22の挿入縮径部23の後端側には、挿入縮径部23の肉厚を薄く形成した薄肉部23bを形成している。
【0097】
この構成により、第4の照光角度自動調整機構50dは、照射筒装着口11に挿入縮径部23を挿入して照射筒20(21,22)を装着すると、挿入縮径部23が突出片57に当接して後方に押し付け、枢動軸51を軸として可視光源30の前方を幅方向内側に枢動する。このとき、長照射筒22の挿入縮径部23の後端には薄肉部23bを備えているため、薄肉部23bによる突出片57の押し込み量が短照射筒21の挿入縮径部23に比べて少なくなり、長照射筒22による可視光源30の枢動量は小さくなる。
【0098】
このように、可視光源30の照光方向、つまり可視光源30の照光角度を、照射筒20の種類に応じて自動的に調整する照光角度自動調整機構50(50a,50b,50c,50d)を備えたことにより、撮影条件に適した筒長さや筒径で構成する様々な種類の照射筒20(21,22)を、状況に応じて選択して用いてX線撮影することができるとともに、その選択した照射筒20(21,22)に合わせてX線照射軸200L上における交差ポイントPのX線ヘッド10や照射筒20に対する距離を自動調整することができる。したがって、可視光源30の照光角度が調整できない場合や、装着した照射筒20に合わせて手動で照射筒20の照光角度を調整する場合に比べて、操作性を向上することができる。
【0099】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明の異なる照光形式は、可視光源30から照光される可視光ビーム100の色や投影形状に対応し、
以下同様に、
可視光は、可視光ビーム100、後述する可視平行光100’、赤色円形可視光ビーム101、青色円形可視光ビーム102、逆D型可視光ビーム103、D型可視光ビーム104及び緑色可視光ビーム105に対応し、
照光手段は、可視光源30,赤色円形可視光源31,青色円形可視光源32,逆D型可視光源33,D型可視光源34あるいは後述する緑色可視光源35に対応し、
照光軸は、可視光照光軸100Lに対応し、
X線発生装置は、X線ヘッド10に対応し、
X線は、X線ビーム200に対応し、
X線照射方向明示器は、それぞれから照光する可視光ビーム100がX線照射軸200L上で交差する照光角度に装着された2つの可視光源30で構成し、
角度調整手段は、照光角度自動調整機構50,50a,50b,50c,50dに対応し、
肌色に非類似の色は、赤色、青色、マゼンダ、シアン、あるいは、後述する緑色、や白色に対応し、
X線照射口は、照射筒装着口11に対応し、
照射筒は、照射筒20、短照射筒21及び長照射筒22、あるいは後述する可視光源付照射筒26、可視光源付短照射筒26a、及び可視光源付長照射筒26bに対応し、
透光性樹脂は、透明樹脂に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではない。
【0100】
例えば、本実施形態では、可視光源30を、X線ヘッド10に装着したが、可視光源30を備えないX線ヘッド10に可視光源30を装着するために、X線ヘッド10への取付け手段を備えた可視光源30を構成し、X線ヘッド10に対して後付で装着してもよい。
【0101】
具体的には、可視光源30を、必ずしもX線ヘッド10または照射筒20に固定的に設けなくてもよく、図示省略するが、例えば可視光源30のみをリング状の部材に設けて、そのリング状部材を照射筒20に着脱自在にして装着するようにしてもよい。
【0102】
また、図9に示すように、照射筒20自体に可視光源30を装着した可視光源付照射筒26(26a,26b)をX線ヘッド10に装着してもよい。なお、図9(a)は可視光源付短照射筒26aの断面図を示し、図9(b)は可視光源付長照射筒26bの断面図を示している。
【0103】
可視光源付照射筒26(26a,26b)は、前方の筒本体の厚みを、内部に可視光源30を装着できる肉厚で構成し、厚み方向中央付近に、可視光源30の装着を許容する装着孔25を設け、装着孔25に可視光源30を挿入固定する。このとき、可視光源30の照光角度を可視光源付短照射筒26aと可視光源付長照射筒26bとで同じ角度に設定してもよく、図9に示すように、角度を変えてもよい。
【0104】
このように、照射筒20の本体に可視光源30を装着することで可視光源30を備えていないX線ヘッド10に対しても、照射筒20の代わりに可視光源付照射筒26(26a,26b)を装着することで、可視光源30が照光する可視光ビーム100を用いて、X線ヘッド10から照射するX線ビーム200が患部に対して適切な位置となるようにX線ヘッド10を位置調整することができる。
【0105】
なお、可視光源付照射筒26を用いる場合、電源として電池を照射筒に内蔵していても良い。
また、照射筒20は、X線ヘッド10と別体でなくとも、X線ヘッド10の一部を構成するように一体として設けてもよい。この場合、照射筒20の交換はできないが、例えば上述の短照射筒21のような照射筒部がX線ヘッド10の一部を構成するようにしてもよいし、上述の長照射筒22のような照射筒部がX線ヘッド10の一部を構成するようにしてもよい。いずれにしても、上述の可視光源30が、固定でまたは照光角度自動調整機構50を伴って設けられる。
【0106】
また、上述の説明では、X線ヘッド10において、X線照射軸200Lに対して軸対称且つ水平方向となるように2つの可視光源30を配置したが、3つ以上の可視光源30を軸対称に配置してもよい。
【0107】
例えば、3つの可視光源30を配置する場合、図10(a)に示すように、周方向においてX線照射軸200Lに対して軸対称に等間隔に配置するとともに、上側の2つの可視光源30が水平となるように、逆正三角形状に配置する。なお、図10(a),(b)は3つの可視光源30を装着したX線ヘッド10の背面側からの斜視図を示している。
【0108】
このとき、3つの可視光源30は、赤色円形可視光ビーム101を照光する赤色円形可視光源31と、青色円形可視光ビーム102を照光する青色円形可視光源32と、緑色可視光ビーム105を照光する緑色可視光源35を配置している。
【0109】
このように構成することにより、赤色円形可視光ビーム101、青色円形可視光ビーム102、及び緑色可視光ビーム105とが交差ポイントPで合成され、白色に投影される。そのため、患部表面の皮膚に投影した状態において、各可視光ビーム100(101,102,105)及び交差ポイントPで合成された投影された白色の可視光も視認性が高く、より正確に、X線ヘッド10を位置調整することができる。
【0110】
また、患部表面の皮膚に投影された可視光ビーム100(101,102,105)の間隔を確認することによって、X線ヘッド10の患部表面の皮膚に対する傾斜方向を確認することができる。
詳しくは、例えば、3以上の可視光源30を、X線照射軸200Lを中心として等間隔で配置した場合、患部表面の皮膚に投影された可視光ビーム100(101,102,105)の位置関係が等間隔でなければ、X線照射軸200Lが患部表面の皮膚に対して傾斜する方向であることが確認できる。
【0111】
なお、色の組み合わせは、上記組み合わせに限らず、ある程度の波長の離れた色の組み合わせであれば、上述のように交差ポイントPで投影される可視光は白色となるため、様々な組み合わせを設定することができる。
【0112】
また、3つの可視光源30をX線ヘッド10に装着する別のパターンとして、図10(b)に示すように、上述の図10(a)に示す3つの可視光源30と同じ配置とし、さらには、下側の可視光源30に前方にコリメートレンズを配置する。
【0113】
この構成により、上の2つの可視光源30からX線照射軸200L上で交差する可視光ビーム100を照光するとともに、コリメートレンズを介して、下の可視光源30から、X線照射軸200Lに沿った垂直方向の面状の可視平行光100’を照光することができる。
【0114】
これにより、常に水平状態を維持できるX線ヘッド10から照光された垂直方向の可視平行光100’と、X線照射軸200L上で交差する可視光ビーム100とを確認しながら、患部表面の皮膚に対してX線ヘッド10を更に精度良く位置調整することができる。
【符号の説明】
【0115】
10…X線ヘッド
11…照射筒装着口
12…X線照射手段
20…照射筒
20a…貫通空間
21…短照射筒
22…長照射筒
26…可視光源付照射筒
26a…可視光源付短照射筒
26b…可視光源付長照射筒
30…可視光源
31…赤色円形可視光源
32…青色円形可視光源
33…逆D型可視光源
34…D型可視光源
35…緑色可視光源
40…操作スイッチ
50,50a,50b,50c,50d…照光角度自動調整機構
100…可視光ビーム
100’…可視平行光
100L…可視光照光軸
101…赤色円形可視光ビーム
102…青色円形可視光ビーム
103…逆D型可視光ビーム
104…D型可視光ビーム
105…緑色可視光ビーム
200…X線ビーム
200L…X線照射軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる照光形式で可視光を照光する複数の照光手段を、
該照光手段から照光する照光軸が、X線発生装置から前方に向けて照射するX線のX線照射軸と軸対称とし、且つX線照射軸上で交差するように配置した
X線照射方向明示器。
【請求項2】
前記複数の照光手段を、
前記X線照射軸を中心として等間隔に配置した
請求項1に記載のX線照射方向明示器。
【請求項3】
前記異なる照光形式を、
光の色、断面形状、明度及び発光パターンのうちいずれかひとつ、あるいはそれらを組み合わせた形式とした
請求項1又は2に記載のX線照射方向明示器。
【請求項4】
前記異なる照光形式が、
交差状態において合成して所望の照光形式を構成する照光形式であることを特徴とする
請求項1乃至3のうちいずれかに記載のX線照射方向明示器。
【請求項5】
前記照光手段の照光角度を調整する角度調整手段を備えた
請求項1乃至4のうちいずれかに記載のX線照射方向明示器。
【請求項6】
前記照光手段から照光する可視光を肌色に非類似の色で照光することを特徴とする
請求項1乃至5のうちいずれかに記載のX線照射方向明示器。
【請求項7】
前記X線発生装置のX線照射口に設けられるとともに、X線照射方向に貫通する貫通空間を有する筒状に形成された照射筒であって、
請求項1乃至6のうちいずれかに記載のX線照射方向明示器を備えた
照射筒。
【請求項8】
前記照光手段を、
前記照光軸が前記貫通空間内側を通り、筒先より前方のX線照射軸上で交差するように配置した
請求項7に記載の照射筒。
【請求項9】
X線発生手段を備え、該X線発生手段の前方のX線照射口に、X線照射方向に貫通する貫通空間を有する筒状に形成された照射筒を備えるとともに、
請求項1乃至6のうちいずれかに記載のX線照射方向明示器を備えた
X線発生装置。
【請求項10】
前記照光手段を、
前記照光軸が前記貫通空間内側を通り、前記照射筒の筒先より前方のX線照射軸上で交差するように配置した
請求項9に記載のX線発生装置。
【請求項11】
前記照射筒を、前記X線照射口に対して着脱自在に構成し、
前記照射筒の種類に応じて、前記照光手段の照光角度を自動調整する角度自動調整手段を備えた
請求項9または10に記載のX線発生装置。
【請求項12】
前記照射筒を、透光性を有する透光性樹脂で構成した
請求項9乃至11のうちいずれかひとつに記載のX線発生装置。
【請求項13】
前記照光手段を、2つの照光手段で構成し、
前記X線照射軸に対して軸対称に配置し、且つ前記照光軸が水平となるように配置した
請求項9乃至12のうちいずれかひとつに記載のX線発生装置。
【請求項14】
前記照光手段のON/OFFを制御する制御部と、
前記照光手段をON操作する操作スイッチとを備え、
前記操作スイッチを、面状の接触感知スイッチで構成するとともに、前記照射筒を含む前記X線発生装置の表面の少なくとも一部に配置し、
前記制御部を、前記操作スイッチのON操作に応じて、前記照光手段をON制御し、所定時間経過後にOFF制御する構成とした
請求項9乃至13のうちいずれかひとつに記載のX線発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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