X線異物検出装置
【課題】異物検出感度を確認するためのテストピースを不要としながら、検出可能な異物の大きさを推定する。
【解決手段】異物サンプル画像生成部6は、所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線吸収画像を異物サンプル画像として生成する。画像合成部7は、被検査物WのX線吸収画像に対し、異物サンプル画像生成部6で生成された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力する。異物検出感度推定手段8aは、画像合成部7から出力される大きさの異なる複数の異物サンプル合成画像を画像処理した結果に基づいて検出可能な異物の大きさを推定する。
【解決手段】異物サンプル画像生成部6は、所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線吸収画像を異物サンプル画像として生成する。画像合成部7は、被検査物WのX線吸収画像に対し、異物サンプル画像生成部6で生成された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力する。異物検出感度推定手段8aは、画像合成部7から出力される大きさの異なる複数の異物サンプル合成画像を画像処理した結果に基づいて検出可能な異物の大きさを推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物に対する異物の混入の有無を検出するX線異物検出装置に関し、特に、被検査物ごとに行われる検出可能な異物を確認、調整する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば食品などの被検査物に対する異物(金属、ガラス、殻、骨など)の混入の有無を検出するために、従来からX線異物検出装置が用いられている。この種の従来のX線異物検出装置では、搬送される被検査物にX線を照射し、この照射したX線の透過量から被検査物中に異物が混入しているか否かを検出して異物の有無検査が行われる。また、この種のX線異物検出装置においては、異物の有無検査を始めるにあたって、被検査物ごとに、複数種類の異物を埋め込んだテストピースを被検査物に重ねて搬送させ、検出可能な異物(種類や大きさ)の確認乃至調整を行っている。そして、検出可能な異物の種類や大きさが決定すると、この決定された検出可能な異物(異物検出感度)を異物の有無検査の管理基準としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらに、異物検出感度を維持し検査の信頼性を高めるため、一般に、必要に応じて不具合や異常がないかどうかの動作確認がなされる。例えば、長期間不使用の後に使用する場合や、高い精度が要求される特別の場合に、使用開始前に検出可能な異物のテストピースを用いて、検出機能が正常か否かを動作確認している。
【0004】
また、この種のX線異物検出装置においては、被検査物から異物を高感度で検出するために、X線の透過量をデジタル化し、画像処理フィルタを用いて異物を強調する画像処理を施すことで異物の検出を行っている。この画像処理フィルタについては種々のフィルタがあるが、被検査物または異物それぞれの原子番号や密度、厚みが異なり、X線画像処理フィルタによっては被検査物の影響が良好に低減されず、異物が混入されていない被検査物から異物信号が抽出される場合がある。そのため、異物を高感度で検出するために、最適なX線画像処理フィルタを選ぶ方法として、異物が混入されていない良品のX線強度データに対して異物を強調するための複数種類のX線画像処理フィルタによる画像処理を実行し、X線画像処理フィルタごとに生成されたX線画像データの中でその最大画素値が最小となるX線画像を生成したX線画像処理フィルタを、最適なX線画像処理フィルタとして抽出して設定するX線画像処理フィルタ自動設定方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】国際公開番号WO2006/001465 A1
【特許文献2】特開2004−28891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最適なX画像処理フィルタを設定して被検査物から高感度で異物を検出することができたとしても、実際にどこまでの大きさの異物が検出できるか判らなかった。また、どこまでの大きさの異物を検出できるかを確認するには、被検査物ごとに複数種類のテストピースを被検査物とともに搬送させて確認するしかなく、被検査物ごとに管理基準として適切なテストピースの種類が異なり、使用するテストピースの種類が増える傾向にあるため、管理者にとって煩雑である。また、最良な状態でテストピースを保管するための場所も確保する必要がある。しかも、テストピースを用いて検出可能な異物を把握するまでに時間がかかり、オペレータにとっても作業が煩雑であるという問題が発生している。
【0006】
そこで、本発明は、前述のような従来の諸問題を解決し、異物検出感度を確認するためのテストピースを不要としながら、検出可能な異物の大きさを推定できるX線異物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたX線異物検出装置は、搬送される被検査物WにX線を照射したときに該被検査物を透過して検出されるX線の透過量に基づくX線画像に対し、異物を抽出するための画像処理を行う画像処理部8を備え、該画像処理部の画像処理結果に基づいて前記被検査物の中に異物が含まれているか否かを判定するX線異物検出装置1において、
所定のX線出力条件の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線画像を異物サンプル画像として生成する異物サンプル画像生成部6と、
前記X線画像に前記異物サンプル画像生成部によって生成された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力する画像合成部7と、
前記画像合成部から出力される大きさの異なる複数の異物サンプル合成画像を画像処理した結果に基づいて検出可能な大きさを推定する異物検出感度推定手段8aとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載されたX線異物検出装置は、請求項1のX線異物検出装置において、
前記異物サンプル画像生成部6は、前記所定のX線出力条件の基で検出した複数種類の異物の異物サンプル画像を記憶する記憶手段6aを含み、
前記異物検出感度推定手段8aは、異物の種類ごとに検出可能な異物の大きさを推定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載されたX線異物検出装置は、請求項2のX線異物検出装置において、
前記異物検出感度推定手段8aは、前記合成画像に対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を施し、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理を最適なフィルタとして選定することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載されたX線異物検出装置は、請求項1〜請求項3のいずれかのX線異物検出装置において、
前記X線画像を取得したときのX線出力条件に対応させて前記異物サンプル画像生成部6によって生成された異物サンプル画像を濃度変換して加工する加工手段7aを備え、
前記画像合成部7は、前記X線画像に前記加工手段で変換された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載されたX線異物検出装置は、請求項1〜請求項4のいずれかのX線異物検出装置において、
所定のX線出力条件の基で、所望の異物を搬送させたときに得られるX線画像を、前記異物に関する異物サンプル画像として前記記憶手段6aに登録記憶させることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載されたX線異物検出装置は、請求項1〜請求項5のいずれかのX線異物検出装置において、
前記被検査物Wの透過画像を表示する表示部10を備え、該表示部に表示される透過画像上で前記異物サンプル画像の合成位置を指定することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載されたX線異物検出装置は、請求項1〜請求項5のいずれかのX線異物検出装置において、
前記被検査物Wの透過画像の濃度分布に基づいて該透過画像に対する前記異物サンプル画像の合成位置を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るX線異物検出装置によれば、所定のX線出力条件の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線画像を異物サンプル画像として記憶しておき、この異物サンプル画像を被検査物画像に合成することにより、実際の異物サンプルを用いなくても、検出可能な異物の大きさを推定することができる。
【0015】
所定のX線出力条件の基で検出した複数種類の異物、すなわち材質や形状が異なる複数の異物サンプルに対応した異物サンプル画像を記憶しておくことにより、被検査物の種類(品種)に応じてその被検査物から異物として検出可能な異物の大きさの範囲を、異物の材質や形状ごとに推定することができる。
【0016】
複数種類の異物サンプル画像を記憶しておき、これらの異物サンプル画像をそれぞれ被検査物画像に合成して異物が抽出できるかを判定し、最適なフィルタを決定することにより、その被検査物で異物を高感度に検出できるフィルタを、実際に複数の異物サンプルを用いて試行しなくても設定することができる。
【0017】
被検査物の特性や搬送速度に応じて最適に設定されるX線発生器のX線出力条件に基いて、異物サンプル画像を濃度変換して加工することにより、被検査物の透過画像の濃度が変化する場合にも異物サンプル画像を適切な濃度で合成することができ、異物として抽出できるかの推定をより確からしくすることができる。
【0018】
任意のX線画像を異物サンプル画像として記憶することにより、ユーザが用意した任意の異物サンプルについて、その異物サンプルのX線画像を被検査物のX線画像に合成し、それを異物として抽出できるかを推定することができる。
【0019】
表示される透過画像上で異物サンプル画像の合成位置を指定できることにより、従来実施していた異物サンプルを実際に被検査物の各位置に付けて確認するのと同様に、ユーザが定めた所定の位置に異物サンプル画像を合成することができる。
【0020】
被検査物の透過画像の濃度分布から異物サンプル画像の合成位置を設定することにより、被検査物の特性に応じて異物サンプル画像を合成する位置を絞り込んで演算量や演算時間を減少でき、さらに異物が抽出できるかを適切に推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係るX線異物検出装置の第1実施形態のブロック構成図、図2は本発明に係るX線異物検出装置における被検査物のX線画像と異物サンプル画像との合成処理の概念図、図3(a),(b)は本発明に係るX線異物検出装置における被検査物の厚みと濃淡レベルの一例を示す図、図4は本発明に係るX線異物検出装置の第2実施形態のブロック構成図、図5〜図9は加工(大きさ変換や濃度変換)を施した異物サンプル画像と被検査物画像との合成画像の各種例を示す図、図10は本発明に係るX線異物検出装置の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理最適化による動作フローチャート、図11は本発明に係るX線異物検出装置の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理固定による動作フローチャート、図12(a)〜(e)は本発明に係るX線異物検出装置において濃度分布から合成位置を決定する処理に関する説明図、図13は本発明に係るX線異物検出装置の表示例を示す図、図14は本発明に係るX線異物検出装置において異物サンプル画像の合成位置を手動設定する場合の説明図、図15は被検査物に異物を合成した場合と異物のみの場合のX線の吸収度に関する説明図である。
【0022】
本発明に係るX線異物検出装置は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物が所定間隔をおいて順次搬送される製造ラインの一部として組み込まれ、被検査物に対して異物が混入しているか否かを検出するものである。
【0023】
本例のX線異物検出装置は、各種異物の異物サンプル画像を生成する機能、生成した異物サンプル画像を被検査物のX線吸収画像の所望の位置に重ね合わせた合成画像を作成し、その合成画像について異物検出処理を行い、検出可能な異物を特定して表示する機能、合成画像による異物検出処理結果に基づく最適な異物検出処理の動作確認を行う機能、被検査物のX線吸収画像に重ね合わせる異物サンプル画像の合成位置を決定する機能、任意の異物による異物サンプル画像を記憶させる機能などを備えている。
【0024】
そして、上記各機能を実現するため、図1や図2に示すように、X線異物検出装置1(1A,1B)は、搬送部2、操作入力部3、検出部4、画像記憶部5、異物サンプル画像生成部6、画像合成部7、画像処理部8、判定部9、表示部10を備えて概略構成される。
【0025】
まず、本発明に係るX線異物検出装置1の第1実施形態の構成について図1を参照しながら説明する。
【0026】
図1において、搬送部2は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの様々な品種の中から予め操作入力部3から設定入力される品種の被検査物Wを、所定間隔をおいて順次搬送している。図1の例では、装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアで搬送部2を構成しており、不図示の駆動モータの駆動により予め設定された所定の搬送速度で図1の矢印方向に前工程(搬入口)から搬入された被検査物Wを後工程(搬出口)へ搬出している。
【0027】
なお、搬送部2は、図1に示すベルトコンベアに限定されるものではなく、例えば特許文献1に開示されるように、例えばアサリ等の貝類の剥き身、魚のすり身、レトルト食品の具材、具材入りスープ等の被検査物Wを搬送ポンプによりパイプ内に順次流動搬送する構成としても良い。
【0028】
操作入力部3は、搬送部2によって搬送させる被検査物Wの種類を特定する品種の設定、後述する異物サンプル画像生成部6から読み出す異物サンプル画像の異物の種類や大きさの設定、検出部4のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の設定、各種モードの選択設定、被検査物WのX線吸収画像Wpに対する異物サンプル画像Spの重ね合わせ位置(合成位置)の設定を含め、被検査物Wの異物検出に関する各種設定や指示を与えるための各種キー(キースイッチ、カーソルキー、ファンクションキー、矢印キー、テンキーなど)やスイッチ等で構成される。
【0029】
ここで、各種モードについて簡単に説明する。本例における各種モードとは、「異物サンプル検査モード」、「動作確認モード」、「異物サンプル記憶モード」、「運用モード」である。「異物サンプル検査モード」は、異物サンプル画像Spを被検査物WのX線吸収画像Wpに合成した合成画像Cp中の異物が検出できるか否かを検査するモードである。「動作確認モード」は、「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理による異物検出が正常に行えるか否かを確認するモードである。「異物サンプル記憶モード」は、ユーザが所望の異物を搬送させ、その異物が検出できるか否かを検査し、その異物に関する情報及び異物サンプル画像Spを後述する異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶させるモードである。「運用モード」は、通常の動作モードであり、被検査物Wに対する異物混入の有無を検査するモードである。
【0030】
検出部4は、X線発生器4aとX線検出器4bから構成される。X線発生器4aは、金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管を絶縁油により浸漬した構成であり、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成している。X線管は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向と直交するように設けられている。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出器に向けて、長手方向に沿ったスリットを介して、略円錐状のX線を略三角形状のスクリーン状にして曝射するようになっている。
【0031】
なお、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)は、操作入力部3から被検査物Wの特性や搬送速度に応じて任意に設定したり、固定値とすることができる。
【0032】
X線検出器4bは、被検査物Wに対してX線が曝射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線を検出し、この検出したX線の透過量に応じた電気信号を出力している。X線検出器4bには、例えば搬送部2をなすベルトコンベア上を搬送される被検査物Wの搬送方向と直交する方向にライン状に配列された複数のフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えたアレイ状のラインセンサが用いられる。
【0033】
そして、この検出部4では、被検査物Wに対してX線発生器4aからX線が曝射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線をX線検出器4bのシンチレータで受けて光に変換する。さらにシンチレータで変換された光は、その下部に配置されるX線検出器4bのフォトダイオードによって受光される。そして、各フォトダイオードは、受光した光を電気信号に変換して出力する(検出出力)。
【0034】
また、搬送部2の搬入口側には、被検査物Wの通過を検出するための位置検出部11が設けられている。この位置検出部11は、搬送部2としてのベルトコンベアの入口側に設けられる、例えば一対の投受光器からなるフォトセンサで構成される。これにより、被検査物Wがフォトセンサの前を通過している間では位置検出部11からオン信号が出力され、このオン信号の立ち上がりがタイミング信号として利用される。
【0035】
そして、被検査物Wやユーザが用意した異物に関するX線検出器4bからの電気信号に基づくX線の透過量を、位置検出部11からのタイミング信号によって被検査物Wやユーザが用意した異物に吸収されたX線吸収量に換算し、この換算によって得られる被検査物Wや異物のX線吸収画像を画像記憶部5に逐次記憶し、各種処理が実行されるようになっている。
【0036】
画像記憶部5は、X線検出器4bの検出出力に基づく被検査物WのX線透過画像におけるX線の透過量を被検査物Wに吸収されたX線吸収量に換算して求めた被検査物WのX線吸収画像や、ユーザが用意した異物を搬送させたときのX線検出器4bの検出出力に基づく異物のX線透過画像におけるX線の透過量を異物に吸収されたX線吸収量に換算して求めた異物のX線吸収画像を記憶している。
【0037】
ここで、X線吸収量について説明する。X線吸収画像は物体によるX線吸収量Tの2次元分布を示すものであり、X線の照射量I0 (X線の強さ)、X線の透過量をI(物体を透過した後の強さ)、X線の吸収率をμ、透過した物体の厚みをdとすると、減衰の法則(I/I0 =eの−μd乗)からX線吸収量Tは、logを自然対数とすると下記式(1)が成り立つ。
T=(logI0 −logI)=μd…式(1)
【0038】
また、X線の吸収率μは、X線の波長をλ、物体の密度をρ、原子番号をZ、定数をCとすると、下記式(2)の関係を有している。
μ=λ3 ρZC…式(2)
【0039】
式(1)は、X線吸収量が、それぞれ対数変換されたX線の照射量I0 とX線の透過量Iとの差分であることを示し、X線の照射量I0 はX線吸収量がゼロであるときのX線の透過量である。すなわち、搬送ベルト上に搬送物である被検査物が無い状態で検出したX線の透過量がX線の照射量I0 となる。
【0040】
したがって、被検査物のX線吸収量は、搬送ベルト上に被検査物が無い状態で検出したX線の透過量及び被検査物が存在する状態で検出したX線の透過量をそれぞれ対数変換した値の差分から求めることができる。
【0041】
また、異物サンプルも同様に、搬送ベルト上に被検査物が無い状態で検出したX線の透過量及び異物サンプルが存在する状態で検出したX線の透過量をそれぞれ対数変換した値の差分から求めることができる。
【0042】
一方、X線の波長はX線発生器4aの管電圧(X線管に印加する電圧)に依存し、X線の照射量はX線発生器4aの管電流に依存する。例えば、X線の波長が短いほど(管電圧を高くするほど)X線吸収量は小さくなる。したがって、式(1)及び式(2)から分かるように、X線の波長を可変することによって、密度と原子番号が異なる物品(被検査物と異物)ごとにX線吸収量の変動する度合いが異なる。X線異物検出装置1では、このことを利用して被検査物Wと異物の差異が出るようにX線発生器4aのX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)が設定されるようになっている。
【0043】
そして、後述する異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶されている所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した異物サンプル画像(異物のX線吸収画像)をS1、被検査物Wに対応して設定されたX線発生器4aのX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で取得された被検査物WのX線吸収画像をS2とすると、その合成画像Sは下記式(3)のようになる。
S=αS1+S2(但し、αは換算係数)…式(3)
【0044】
上記式(3)の換算係数αは、例えば、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)ごとに取得した異物サンプル画像の濃淡に対し、基準となる異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶されている所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した異物サンプル画像の濃淡との比率を予め求め、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)ごとに換算テーブルに記憶されている。
【0045】
異物サンプル画像生成部6は、予め設定された所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線吸収画像を異物サンプル画像Spとして生成している。
【0046】
また、異物サンプル画像生成部6は、所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)でX線を照射したときの異物の種類ごと、すなわち形状(大きさを含む)や材質(例えば金属、ガラス等)ごとの異物サンプル画像Spを記憶する記憶手段6aを有している。この異物サンプル画像Spは、予め設定された所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)で単体の異物にX線を照射したときのX線透過量をX線吸収量に換算したX線吸収画像、異なる形状(例えば、角、球、線など)で同じ材質(例えば、金属、ガラス、樹脂、骨など)の異物が所定間隔をおいて直線的に配置されたものに対して所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)でX線を照射したときのX線透過量をX線吸収量に換算したX線吸収画像等からなる。
【0047】
なお、記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像は、後述する加工手段7aによって加工処理を行う際に、加工時の基準となる異物マスタとして用いることができる。
【0048】
画像合成部7は、操作入力部3から「異物サンプル検査モード」が選択入力されたときに、図2の概念図に示すように、被検査物WのX線画像(X線吸収画像)Wpと、操作入力部3から設定された異物の種類及び大きさの異物サンプル画像Spとを所定位置で重ね合わせて合成しており、この合成画像Cpを画像処理部7に出力している。
【0049】
ここで、上記画像合成部7による画像合成処理の内容について更に詳細に説明する。この画像合成部7では、被検査物WのX線吸収画像Wpと、異物サンプル画像Spとを合成するにあたって、操作入力部3から設定された異物の種類及び大きさに対応して異物サンプル画像生成部6から読み出される異物サンプル画像Spの濃度を、現在設定されているX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に見合った濃度に変換する濃度変換処理を実行している。その後、画像合成部7は、X線吸収画像Wpと異物サンプル画像Spの両画像の濃度変換処理を実行している。
【0050】
被検査物W(製品)のX線吸収画像の濃淡レベルは、被検査物W(製品)の厚さに対して対数的に変化する。このため、通常、X線吸収画像を画像処理する際には、濃淡レベルの対数変換を行って変化分を補正している。
【0051】
従って、被検査物WのX線吸収画像Wpに合成される異物サンプル画像Spに関しても、被検査物Wの輝度に応じて画像処理する際に、濃淡レベルの対数変換を行って変化分を補正している。
【0052】
例えば図3に示す例の場合、logを自然対数とし、exp{}はeを底とする指数関数とした下記式(4)及び式(5)に基づいて被検査物Wの濃淡レベルが算出される。
被検査物Wの濃淡レベル=15×log(厚み)−14…式(4)
被検査物Wの厚み=exp{(濃淡レベル+14)/15}…式(5)
【0053】
具体的に、図3に示す被検査物Wの厚みと被検査物Wの濃淡レベルの例に対し、被検査物Wが無い状態で10の濃淡レベルを持つ異物サンプル画像Spを合成する場合には、上記式(4)及び式(5)によりそれぞれ異物サンプル画像Spの異物信号の輝度を補正し、被検査物WのX線吸収画像Wpに合成する。
【0054】
さらに説明すると、被検査物Wの濃淡レベルが20の場合、式(5)より、被検査物Wの厚みが10mmとなる。異物サンプル画像Spの異物信号は、被検査物Wの厚みによらず同じ値となるので、異物信号に厚み変換係数を掛け合わした値を、擬似的な異物厚み(=変換係数×異物濃淡信号レベル)とする。
【0055】
ここで、上記変換係数を0.5とした場合、10の異物濃淡レベルの擬似的厚みは5mmとなり、式(5)より算出された厚み10mmに異物信号5mmを加算し、合成厚み15mmを得る。
【0056】
これを式(4)に代入し、異物信号部分の濃淡レベル26を得る。そして、元の異物信号濃淡レベルは10、被検査物Wの濃淡レベルは20なので、異物信号自体は約0.6倍されて合成された計算になる。
【0057】
同様に、被検査物Wの厚みが20mm時は約0.33倍した信号が合成され、被検査物Wの厚みが40mm時は約0.31倍した信号が合成される。
【0058】
そして、ユーザが検査したい異物(例えば金属、ガラス、針金等)について、例えば図13の画面左側に示すように、種類別にサイズの異なる異物を並べるようにして、異物サンプル画像Spを、X線検出器4bから画像記憶部5に記憶された被検査物WのX線吸収画像Wpに合成すれば、ユーザが希望する異物に関して検出可能な異物を特定するための異物検出処理を実行することができる。
【0059】
画像処理部8は、搬送される被検査物WにX線を照射して検出する被検査物Wを透過したX線の透過量を被検査物Wに吸収されたX線吸収量に換算して求めたX線吸収画像や、画像合成部7からの異物サンプル合成画像に対し、異物を抽出するための画像処理を行い、その画像処理結果を判定部9及び表示部10に出力している。
【0060】
また、画像処理部8は、異物検出感度推定手段8aと異物抽出手段8bとを有している。異物検出感度推定手段8aは、画像合成部6から出力される異物サンプル合成画像を異物の種類ごとに画像処理し、その画像処理結果に基づいて検出可能な異物の種類を推定し、その結果を判定部9及び表示部10に出力している。また、異物検出感度推定手段8aは、画像合成部6からの異物サンプル合成画像に対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を施し、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理を最適なフィルタとして選定している。
【0061】
異物抽出手段8bは、「異物サンプル記憶モード」時に、画像記憶部5に記憶されている異物のX線吸収画像に対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を順次施してフィルタ処理ごとに設定された異物判定閾値を超える濃度の画像部分を異物画像として抽出しており、抽出結果(X線吸収画像上の位置ごとの抽出結果)を異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶させている。
【0062】
また、画像処理部8は、操作入力部3から選択入力されるモードに応じて、以下に説明する画像処理を実行している。
【0063】
「異物サンプル検査モード」時は、画像合成部7からの合成画像Cpに対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を順次施してフィルタ処理ごとに設定された異物判定閾値を超える濃度の画像部分を異物画像として抽出し、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理(異物が1種類の場合:最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理、異物が複数種類の場合:異物の種類ごとに最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理)を最適なフィルタ処理として選定している。
【0064】
「動作確認モード」時は、「異物サンプル検査モード」で検出可能とされた異物の種類と最小サイズについて、画像記憶部5からの被検査物WのX線吸収画像Wpを画像合成部7において合成した合成画像Cpに対し、「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理を実行し、その画像処理結果を判定部9に出力している。
【0065】
「運用モード」時は、画像記憶部5からの被検査物WのX線吸収画像Wpに対し、最適なフィルタ処理を実行し、その画像処理結果を判定部9に出力している。
【0066】
判定部9は、画像処理部8の異物検出感度推定手段8aによる推定結果に基づく表示部10の表示制御、画像処理部8の最適なフィルタ処理による画像処理結果に基づく被検査物Wに対する異物混入の有無の最終的な判定、「動作確認モード」時の動作確認結果の判定、表示部10に対する各種判定結果の表示制御等を行っている。
【0067】
表示部10は、例えば液晶表示器等で構成され、操作入力部3にて被検査物Wを特定する品種の設定、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の設定、各種モードの選択設定、被検査物WのX線吸収画像Wpに対して合成される異物サンプル画像Spの重ね合わせ位置の設定等の各種設定画面の表示、判定部8による判定結果に基づく各種表示(被検査物Wやユーザが用意した異物のX線透過画像・X線吸収画像表示の他、図13の画面右上に示す良否判定表示、総検査数、良品数、NG総数)等を行っている。
【0068】
また、表示部10は、上記表示の他、異物サンプル検査モードによる異物を特定するための異物検出処理の結果、検出可能な異物と判断された種類とその最小サイズを、図13の画面右下に示すように一覧表示している。また、表示部10の画面(図13の画面左側)には、上記一覧表示とともに被検査物WのX線吸収画像Wpと検出可能な異物を特定するために用いられた異物サンプル画像Spとの合成画像を表示し、検出可能な異物サンプルを強調表示(例えば黒や赤表示、異物の種類別に色分け表示)している。
【0069】
次に、本発明に係るX線異物検出装置1の第2実施形態の構成について図4を参照しながら説明する。なお、第2実施形態のX線異物検出装置1Bにおいて、上述した第1実施形態のX線異物検出装置1Aと概略同一の構成要素には同一番号を付し、その説明を省略している。
【0070】
この第2実施形態のX線異物検出装置1Bでは、X線吸収画像を取得したときのX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に対応させて異物サンプル画像生成部6によって生成された異物サンプル画像に対し、例えば大きさ変換(画像全体の拡大・縮小変換、画像の長さ変換)または濃度変換による加工を施す加工手段7aを画像合成部7に備えている。
【0071】
なお、加工元になる異物サンプル画像の選択設定、大きさの変換率や濃度の変換率の設定は、予め操作入力部3から合成処理前に行われる。また、異物サンプル画像を変換する際の大きさや濃度の変換率は、それぞれ複数のデフォルト値を予め記憶しておき、操作入力部3からの操作によってデフォルト値を表示部10に表示させて適宜選択したり、デフォルト値を任意に変更することも可能である。
【0072】
ここで、異物マスタとは、異物サンプル画像の加工時の基準として予め記憶されている異物データである。また、濃度の変換とは、厚さによる変換や照射するX線の発生条件による変換であり、管電圧が異なる場合には発生するX線の波長(エネルギー)が異なり、物質の吸収特性が変わるので、異物マスタを記憶したときの管電圧と異なる管電圧での感度推定には濃度変換が必要となる。
【0073】
次に、上述した加工手段7aによって加工された異物サンプル画像を被検査物WのX線吸収画像Wpに合成する場合の各例について図5〜図9を参照しながら説明する。
【0074】
図5の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像を異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMの大きさを、操作入力部3から設定された大きさの変換率で拡大・縮小変換している。図5の例では、異物マスタSpMを2種類の大きさで拡大・縮小変換している。そして、画像合成部7では、これら2種類の大きさの変換率で拡大・縮小変換された異物サンプル画像Sp1,Sp2を、それぞれ被検査物WのX線吸収画像Wpに合成し、2種類の合成画像Cp1,Cp2を画像処理部8に出力している。
【0075】
図6の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像を異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMのX線の濃度を、操作入力部3から設定された濃度の変換率で濃度変換している。図6の例では、異物マスタSpMを2種類の濃度で濃度変換している。そして、画像合成部7では、これら2種類の濃度の変換率で濃度変換された異物サンプル画像Sp3,Sp4を、それぞれ被検査物WのX線吸収画像Wpに合成し、2種類の合成画像Cp3,Cp4を画像処理部8に出力している。
【0076】
図7の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像を異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMの長さ(大きさ)を、操作入力部3から設定された長さの変換率で変換している。図7の例では、異物マスタSpMを2種類の長さで変化している。そして、画像合成部7では、これら2種類の長さに変換された異物サンプル画像Sp5,Sp6を、それぞれ被検査物WのX線吸収画像Wpに合成し、2種類の合成画像Cp5,Cp6を画像処理部8に出力している。
【0077】
図8の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像を異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMの大きさを、操作入力部3から設定された大きさの変換率で変換している。図8の例では、異物マスタSpMを2種類の大きさで拡大・縮小変換している。そして、画像合成部7では、これら2種類の大きさの変換率で拡大・縮小変換された異物サンプル画像Sp7,Sp8を合成し、この合成された異物サンプル画像Sp9を、被検査物WのX線吸収画像Wpと合成し、この合成画像Cp7を画像処理部8に出力している。
【0078】
図9の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに異物の種類ごとに複数記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された大きさに対し拡大・縮小の変換率が1に近い1つの異物サンプル画像Spを異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMの大きさを、その変換率で変換している。図9の例では、3種類の異物サンプル画像Spから1つの異物サンプル画像Spを異物マスタSpMとし、この異物マスタSpMを拡大・縮小変換している。そして、画像合成部7では、拡大・縮小変換された異物サンプル画像Sp10を、被検査物WのX線吸収画像Wpに合成し、この合成画像Cp10を画像処理部8に出力している。
【0079】
なお、図4の構成例では、加工手段7aが異物サンプル画像Spを異物マスタSpMとして所望の変換を行うものとして説明したが、所望変換(大きさ拡大・縮小変換、濃度変換)された異物サンプル画像を予め記憶手段6aに記憶しておき、操作入力部3から使用する異物サンプル画像を選択設定する構成としてもよい。
【0080】
次に、上記構成によるX異物検出装置1の各モード(異物サンプル検査モード、動作確認モード、異物サンプル記憶モード、運用モード)ごとの動作について説明する。なお、装置起動時は自動的に「運用モード」が選択されるようになっている。
【0081】
まず、異物サンプル検査モードの動作について図10及び図11のフローチャートを参照しながら説明する。図10はX線異物検出装置1の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理最適化による動作フローチャート、図11はX線異物検出装置1の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理固定による動作フローチャートである。なお、図10及び図11において、概略同一の動作には同一のステップ番号を付している。
【0082】
・異物サンプル検査モード
操作入力部3から「異物サンプル検査モード」が選択された状態で、搬送部2によって被検査物W(良品)を流し(ST1)、X線出力条件(X線発生器4aのX線の管電圧及び管電流)を決定する(ST2)。このST2の処理は、X線出力固定で、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)と同一条件で得た異物サンプル画像Spを使用する場合には不要な処理となる。
【0083】
次に、異物サンプル画像記憶手段5bから異物サンプル画像Spを読み込み(ST3)、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に応じて異物サンプル画像Spを換算する(ST4)。すなわち、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に見合うように異物サンプル画像Spの濃度変換処理を行う。このST4の処理は、X線出力固定で、X線出力条件と同一条件で得た異物サンプル画像Spを使用する場合には不要な処理となる。
【0084】
次に、異物サンプル画像Spと被検査物WのX線吸収画像Wpの両画像に前述した濃度変換処理を施した後、異物サンプル画像Spを被検査物WのX線吸収画像Wpの所定位置に合成する(ST5)。この合成処理は、総当たりのスキャン方式、濃度分布(ヒストグラム)、ユーザ指定の何れかによって合成位置Pを決定して実行される。以下、合成位置Pの決定方法について説明する。
【0085】
総当たりのスキャン方式では、被検査物WのX線吸収画像Wp上を端から端まで所定領域ごとに走査してX線吸収画像Wp上の全ての領域(全ての画素もしくは画素群ごと)を合成位置Pとして合成処理を行っている。
【0086】
濃度分布(ヒストグラム)では、例えば被検査物WのX線吸収画像Wpが図12(a),(b)に示すような濃度分布を示す場合、その濃度分布に応じて、図12(c)〜(e)の何れかに示すべく異物サンプル画像Spの合成位置Pを決定して合成処理を行っている。
【0087】
図12(c)の例では、被検査物WのX線吸収画像Wpの背景(ベルトの濃度)領域の数箇所(図示の例では2箇所)に合成位置Pを決定している。
【0088】
図12(d)の例では、被検査物WのX線吸収画像Wpの濃度が低い領域に格子状の合成位置Pを決定している。
【0089】
図12(e)の例では、被検査物WのX線吸収画像Wpの濃度が高い領域の複数箇所(図示の例では濃度が高い3つの領域の各3箇所)に合成位置Pを決定している。
【0090】
ユーザ指定では、例えば図14に示すような表示部9の異物サンプル画像Spの合成位置Pの指定画面において、ユーザが被検査物WのX線吸収画像Wpから任意の位置を合成位置Pとして合成処理を行っている。図14では、指定可能な異物サンプルの種類「金属、ガラス、針金」から「金属」を選択し、画面左側の被検査物WのX線吸収画像Wp上の4箇所(点線四角部分P)を合成位置として指定した例を示している。このユーザ指定によって合成位置Pを決定すれば、ユーザが希望する箇所のみを合成位置Pとして決定でき、効率的な異物検出精度の検査を行うことができる。
【0091】
次に、上述した合成位置Pの決定によりST5で合成された合成画像Cpに対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理から1つのフィルタ処理を設定し、この設定されたフィルタ処理を実行して異物を抽出し、その抽出結果を記憶する(ST6)。このST6の処理では、良品による被検査物WのX線吸収画像に濃度のバラツキがあっても異物が検出できるように、被検査物WのX線吸収画像Wpと合成画像Cpとの差分に基づいて異物判定リミットが各フィルタ処理ごとに設定されている。そして、設定されたフィルタ処理の異物判定リミットによって、合成画像Cpから異物として抽出できたか否かを判別し、その結果を記憶している。
【0092】
なお、合成画像Cp上の場所ごとの異物抽出の可否や異物抽出率(抽出可能数/全体合成位置数)を判別(○、△、×等による判別)し、その結果を記憶しても良い。また、図11によるフィルタ処理固定の動作では、ST6において、予め固定設定されたフィルタ処理を実行して異物を抽出し、その抽出結果を記憶する。
【0093】
次に、最後の合成位置Pか否かを判別し(ST7)、最後の合成位置Pでないと判別すると(ST7−No)、ST5の処理に戻る。これに対し、最後の合成位置Pであると判別すると(ST7−Yes)、異物サンプル画像Spが最後の大きさか否かを判別する(ST8)。そして、異物サンプル画像Spが最後の大きさでないと判別すると(ST8−No)、ST3の処理に戻る。これに対し、異物サンプル画像Spが最後の大きさであると判別すると(ST8−Yes)、最後の異物サンプル画像Spか否かを判別し(ST9)、最後の異物サンプル画像Spでないと判別すると(ST9−No)、ST3の処理に戻る。
【0094】
そして、最後の異物サンプル画像Spであると判別すると(ST9−Yes)、既に実行されたフィルタ処理の中から最適なフィルタ処理を選定する(ST10)。この最適なフィルタ処理としては、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理(異物が1種類の場合:最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理、異物が複数種類の場合:異物の種類ごとに最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理)が選定される。
【0095】
そして、最適なフィルタ処理が選定されると(ST10)、この最適なフィルタ処理で検出可能な異物サイズを推定し(ST11)、異物抽出結果を例えば図13に示すような形式で表示部10に表示する(ST12)。図13の例では、検出可能な異物の種類及び最小サイズとして、金属:φ1、樹脂:φ2、ガラス:φ4、針金:φ1×3を表示している。
【0096】
なお、図11によるフィルタ処理固定の動作では、図10におけるST10の処理が省略され、予め固定設定されたフィルタ処理で検出可能な異物サイズをを推定し(ST11)、異物抽出結果を例えば図13に示すような形式で表示部10に表示する。
【0097】
・動作確認モード
操作入力部3から「動作確認モード」が選択されると、画像処理部8は、上述した「異物サンプル検査モード」で検出可能とされた異物の種類と最小サイズについて、画像記憶部5からの被検査物WのX線吸収画像Wpを画像合成部7において合成した合成画像Cpに対し、「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理を実行する。そして、判定部9は、画像処理部8の画像処理結果と「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理に対応する異物判定閾値に基づいて、「異物サンプル検査モード」で検出可能とされた異物の種類と最小サイズの異物の全てについての検出が正常に行えたか否かを判別する。これにより、「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理による異物検出が正常に動作するか否か確認することができる。
【0098】
・異物サンプル記憶モード
操作入力部3から「異物サンプル記憶モード」が選択された状態で、搬送部2から所望の異物を搬送させると、この異物に対してX線が照射され、このX線の照射に伴う異物のX線吸収画像が画像記憶部5に記憶される。そして、画像処理部8の異物抽出手段8bが、この画像記憶部5に記憶された異物のX線吸収画像に対し、所定のフィルタ処理により異物として抽出すると、この異物の情報及びX線吸収画像を異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶する。これにより、ユーザが所望とする異物の検出感度や異物情報(異物サンプル画像)を登録することができる。
【0099】
・運用モード
操作入力部3から「運用モード」が選択されると、搬送部2から順次搬送される被検査物WにX線が照射され、このX線の照射に伴う被検査物WのX線吸収画像Wpが画像記憶部5に記憶される。そして、画像処理部8は、X線の透過量を被検査物Wに吸収されたX線吸収量に換算して画像記憶部5に記憶された被検査物WのX線吸収画像Wpに対し、選定された最適なフィルタ処理を実行する。そして、判定部9は、画像処理部8の画像処理結果と選定された最適なフィルタ処理に対応する異物判定閾値に基づいて、異物混入の有無を判定し、その判定結果を表示部10に表示する。
【0100】
このように、本例のX線異物検出装置によれば、所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線吸収画像を異物サンプル画像として記憶しておき、この異物サンプル画像を被検査物のX線吸収画像に合成するので、実際の異物サンプルを用いなくても、被検査物に異物が混入したときの透過画像を生成し、その画像を画像処理することにより、検出可能な異物の大きさを推定することができる。
【0101】
異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに複数種類の異物サンプル画像を記憶しておき、それぞれの異物サンプル画像を被検査物のX線吸収画像に合成し、これらの合成画像に異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を施して異物が抽出できるかを判別し、この判別結果から最適なフィルタ処理を決定すれば、その被検査物で異物を高感度に検出できるフィルタ処理を、実際に複数の異物サンプルを用いて試行しなくても設定することができる。
【0102】
異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aは、異物の種類及び大きさごとの異物サンプル画像(X線吸収画像)、すなわち材質や形状及びサイズが異なる異物に対応した異物サンプル画像を記憶している。これにより、被検査物の種類(品種)に応じてその被検査物から異物として抽出できる大きさの範囲を、異物の材質や形状ごとに推定することができる。
【0103】
異物サンプル記憶モード時には、ユーザが所望する任意の異物のX線吸収画像を異物サンプル画像として記憶手段6aに登録記憶でき、ユーザが用意した任意の異物について、その異物のX線吸収画像を異物サンプル画像として被検査物のX線吸収画像に合成し、それを異物として抽出できるかを推定することができる。
【0104】
被検査物の特性や搬送速度に応じて最適に設定されるX線発生器のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に基づいて、記憶しているX線吸収画像の濃度を換算している。これにより、被検査物のX線吸収画像の濃度が変化する場合にも異物サンプル画像を適切な濃度で合成することができ、異物として抽出できるかの推定をより確からしくすることができる。
【0105】
合成画像中に異物が含まれているか否かの判別結果に基づいて検出可能な異物に関する情報を表示部9に表示しているので、表示部9の内容を直接確認するだけで、その装置で検出可能な異物に関する情報を把握することができる。
【0106】
表示部9に表示される被検査物のX線透過画像上で異物サンプル画像の合成位置を指定して設定すれば、従来実施していた異物サンプルを実際に被検査物の各位置に付けて確認するのと同様に、ユーザが定めた所定の位置に異物サンプル画像を合成することができる。
【0107】
被検査物のX線透過画像の濃度分布から異物サンプル画像の合成位置を設定すれば、被検査物の特性に応じて異物サンプル画像を合成する位置を絞り込んで演算量や演算時間を減少でき、さらに異物が抽出できるかを適切に推定することができる。
【0108】
図4に示すような加工手段7aを備えた構成によれば、被検査物の特性や搬送速度に応じて最適に設定されるX線発生器4aのX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に基いて、異物サンプル画像を濃度変換して加工するので、被検査物の透過画像の濃度が変化する場合にも異物サンプル画像を適切な濃度で合成することができ、異物として抽出できるかの推定をより確からしくすることができる。
【0109】
ところで、上述した実施の形態では、搬送部2上に被検査物Wや所望の異物を搬送させたときのX線吸収画像を画像記憶部5に記憶させ、また各種異物のX線吸収画像による異物サンプル画像を異物サンプル画像生成部6で生成し、これらX線の吸収画像を用いて合成処理を行う構成について説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば搬送部2上に被検査物Wや所望の異物を搬送させたときのX線透過画像を画像記憶部5に記憶させ、また各種異物のX線透過画像による異物サンプル画像を異物サンプル画像生成部6で生成し、画像合成部7や画像処理部8で画像処理する際にX線透過画像からX線吸収画像に換算して処理したり、X線透過画像を用いて合成処理をすることも可能である。但し、X線吸収画像を用いて合成処理すれば、図15に示すように、0を起点として被検査物WのX線吸収画像と異物サンプル画像(異物のX線吸収画像)とを合成でき、X線の透過画像を用いた場合よりも合成処理に係る手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係るX線異物検出装置の第1実施形態のブロック構成図である。
【図2】本発明に係るX線異物検出装置における被検査物のX線画像と異物サンプル画像との合成処理の概念図である。
【図3】(a),(b) 本発明に係るX線異物検出装置における被検査物の厚みと濃淡レベルの一例を示す図である。
【図4】本発明に係るX線異物検出装置の第2実施形態のブロック構成図である。
【図5】1種類の異物サンプル画像に加工(大きさ変換、濃度変換)を施して被検査物画像と合成したときの合成画像の各種例を示す図である。
【図6】1種類の異物サンプル画像に加工(大きさ変換、濃度変換)を施して被検査物画像と合成したときの合成画像の各種例を示す図である。
【図7】1種類の異物サンプル画像に加工(大きさ変換、濃度変換)を施して被検査物画像と合成したときの合成画像の各種例を示す図である。
【図8】1種類の異物サンプル画像に加工(大きさ変換)を施して合成したものをさらに被検査物画像と合成したときの合成画像の例を示す図である。
【図9】複数種類の異物サンプル画像から1種類の異物サンプル画像を選択し加工(大きさ変換)を施して被検査物画像と合成したときの合成画像の例を示す図である。
【図10】本発明に係るX線異物検出装置の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理最適化による動作フローチャートである。
【図11】本発明に係るX線異物検出装置の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理固定による動作フローチャートである。
【図12】(a)〜(e) 本発明に係るX線異物検出装置において濃度分布から合成位置を決定する処理に関する説明図である。
【図13】本発明に係るX線異物検出装置の表示例を示す図である。
【図14】本発明に係るX線異物検出装置において異物サンプル画像の合成位置を手動設定する場合の説明図である。
【図15】被検査物に異物を合成した場合と異物のみの場合のX線の吸収度に関する説明図である。
【符号の説明】
【0111】
1 X線異物検出装置
2 搬送部
3 操作入力部
4 検出部
4a X線発生器
4b X線検出器
5 画像記憶部
6 異物サンプル画像生成部
6a 記憶手段
7 画像合成部
8 画像処理部
8a 異物検出感度推定手段
8b 異物抽出手段
9 判定部
10 表示部
11 位置検出部
W 被検査物
Wp 被検査物のX線吸収画像
Sp 異物サンプル画像
Cp 合成画像
P 合成位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物に対する異物の混入の有無を検出するX線異物検出装置に関し、特に、被検査物ごとに行われる検出可能な異物を確認、調整する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば食品などの被検査物に対する異物(金属、ガラス、殻、骨など)の混入の有無を検出するために、従来からX線異物検出装置が用いられている。この種の従来のX線異物検出装置では、搬送される被検査物にX線を照射し、この照射したX線の透過量から被検査物中に異物が混入しているか否かを検出して異物の有無検査が行われる。また、この種のX線異物検出装置においては、異物の有無検査を始めるにあたって、被検査物ごとに、複数種類の異物を埋め込んだテストピースを被検査物に重ねて搬送させ、検出可能な異物(種類や大きさ)の確認乃至調整を行っている。そして、検出可能な異物の種類や大きさが決定すると、この決定された検出可能な異物(異物検出感度)を異物の有無検査の管理基準としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらに、異物検出感度を維持し検査の信頼性を高めるため、一般に、必要に応じて不具合や異常がないかどうかの動作確認がなされる。例えば、長期間不使用の後に使用する場合や、高い精度が要求される特別の場合に、使用開始前に検出可能な異物のテストピースを用いて、検出機能が正常か否かを動作確認している。
【0004】
また、この種のX線異物検出装置においては、被検査物から異物を高感度で検出するために、X線の透過量をデジタル化し、画像処理フィルタを用いて異物を強調する画像処理を施すことで異物の検出を行っている。この画像処理フィルタについては種々のフィルタがあるが、被検査物または異物それぞれの原子番号や密度、厚みが異なり、X線画像処理フィルタによっては被検査物の影響が良好に低減されず、異物が混入されていない被検査物から異物信号が抽出される場合がある。そのため、異物を高感度で検出するために、最適なX線画像処理フィルタを選ぶ方法として、異物が混入されていない良品のX線強度データに対して異物を強調するための複数種類のX線画像処理フィルタによる画像処理を実行し、X線画像処理フィルタごとに生成されたX線画像データの中でその最大画素値が最小となるX線画像を生成したX線画像処理フィルタを、最適なX線画像処理フィルタとして抽出して設定するX線画像処理フィルタ自動設定方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】国際公開番号WO2006/001465 A1
【特許文献2】特開2004−28891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最適なX画像処理フィルタを設定して被検査物から高感度で異物を検出することができたとしても、実際にどこまでの大きさの異物が検出できるか判らなかった。また、どこまでの大きさの異物を検出できるかを確認するには、被検査物ごとに複数種類のテストピースを被検査物とともに搬送させて確認するしかなく、被検査物ごとに管理基準として適切なテストピースの種類が異なり、使用するテストピースの種類が増える傾向にあるため、管理者にとって煩雑である。また、最良な状態でテストピースを保管するための場所も確保する必要がある。しかも、テストピースを用いて検出可能な異物を把握するまでに時間がかかり、オペレータにとっても作業が煩雑であるという問題が発生している。
【0006】
そこで、本発明は、前述のような従来の諸問題を解決し、異物検出感度を確認するためのテストピースを不要としながら、検出可能な異物の大きさを推定できるX線異物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたX線異物検出装置は、搬送される被検査物WにX線を照射したときに該被検査物を透過して検出されるX線の透過量に基づくX線画像に対し、異物を抽出するための画像処理を行う画像処理部8を備え、該画像処理部の画像処理結果に基づいて前記被検査物の中に異物が含まれているか否かを判定するX線異物検出装置1において、
所定のX線出力条件の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線画像を異物サンプル画像として生成する異物サンプル画像生成部6と、
前記X線画像に前記異物サンプル画像生成部によって生成された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力する画像合成部7と、
前記画像合成部から出力される大きさの異なる複数の異物サンプル合成画像を画像処理した結果に基づいて検出可能な大きさを推定する異物検出感度推定手段8aとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載されたX線異物検出装置は、請求項1のX線異物検出装置において、
前記異物サンプル画像生成部6は、前記所定のX線出力条件の基で検出した複数種類の異物の異物サンプル画像を記憶する記憶手段6aを含み、
前記異物検出感度推定手段8aは、異物の種類ごとに検出可能な異物の大きさを推定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載されたX線異物検出装置は、請求項2のX線異物検出装置において、
前記異物検出感度推定手段8aは、前記合成画像に対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を施し、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理を最適なフィルタとして選定することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載されたX線異物検出装置は、請求項1〜請求項3のいずれかのX線異物検出装置において、
前記X線画像を取得したときのX線出力条件に対応させて前記異物サンプル画像生成部6によって生成された異物サンプル画像を濃度変換して加工する加工手段7aを備え、
前記画像合成部7は、前記X線画像に前記加工手段で変換された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載されたX線異物検出装置は、請求項1〜請求項4のいずれかのX線異物検出装置において、
所定のX線出力条件の基で、所望の異物を搬送させたときに得られるX線画像を、前記異物に関する異物サンプル画像として前記記憶手段6aに登録記憶させることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載されたX線異物検出装置は、請求項1〜請求項5のいずれかのX線異物検出装置において、
前記被検査物Wの透過画像を表示する表示部10を備え、該表示部に表示される透過画像上で前記異物サンプル画像の合成位置を指定することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載されたX線異物検出装置は、請求項1〜請求項5のいずれかのX線異物検出装置において、
前記被検査物Wの透過画像の濃度分布に基づいて該透過画像に対する前記異物サンプル画像の合成位置を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るX線異物検出装置によれば、所定のX線出力条件の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線画像を異物サンプル画像として記憶しておき、この異物サンプル画像を被検査物画像に合成することにより、実際の異物サンプルを用いなくても、検出可能な異物の大きさを推定することができる。
【0015】
所定のX線出力条件の基で検出した複数種類の異物、すなわち材質や形状が異なる複数の異物サンプルに対応した異物サンプル画像を記憶しておくことにより、被検査物の種類(品種)に応じてその被検査物から異物として検出可能な異物の大きさの範囲を、異物の材質や形状ごとに推定することができる。
【0016】
複数種類の異物サンプル画像を記憶しておき、これらの異物サンプル画像をそれぞれ被検査物画像に合成して異物が抽出できるかを判定し、最適なフィルタを決定することにより、その被検査物で異物を高感度に検出できるフィルタを、実際に複数の異物サンプルを用いて試行しなくても設定することができる。
【0017】
被検査物の特性や搬送速度に応じて最適に設定されるX線発生器のX線出力条件に基いて、異物サンプル画像を濃度変換して加工することにより、被検査物の透過画像の濃度が変化する場合にも異物サンプル画像を適切な濃度で合成することができ、異物として抽出できるかの推定をより確からしくすることができる。
【0018】
任意のX線画像を異物サンプル画像として記憶することにより、ユーザが用意した任意の異物サンプルについて、その異物サンプルのX線画像を被検査物のX線画像に合成し、それを異物として抽出できるかを推定することができる。
【0019】
表示される透過画像上で異物サンプル画像の合成位置を指定できることにより、従来実施していた異物サンプルを実際に被検査物の各位置に付けて確認するのと同様に、ユーザが定めた所定の位置に異物サンプル画像を合成することができる。
【0020】
被検査物の透過画像の濃度分布から異物サンプル画像の合成位置を設定することにより、被検査物の特性に応じて異物サンプル画像を合成する位置を絞り込んで演算量や演算時間を減少でき、さらに異物が抽出できるかを適切に推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係るX線異物検出装置の第1実施形態のブロック構成図、図2は本発明に係るX線異物検出装置における被検査物のX線画像と異物サンプル画像との合成処理の概念図、図3(a),(b)は本発明に係るX線異物検出装置における被検査物の厚みと濃淡レベルの一例を示す図、図4は本発明に係るX線異物検出装置の第2実施形態のブロック構成図、図5〜図9は加工(大きさ変換や濃度変換)を施した異物サンプル画像と被検査物画像との合成画像の各種例を示す図、図10は本発明に係るX線異物検出装置の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理最適化による動作フローチャート、図11は本発明に係るX線異物検出装置の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理固定による動作フローチャート、図12(a)〜(e)は本発明に係るX線異物検出装置において濃度分布から合成位置を決定する処理に関する説明図、図13は本発明に係るX線異物検出装置の表示例を示す図、図14は本発明に係るX線異物検出装置において異物サンプル画像の合成位置を手動設定する場合の説明図、図15は被検査物に異物を合成した場合と異物のみの場合のX線の吸収度に関する説明図である。
【0022】
本発明に係るX線異物検出装置は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物が所定間隔をおいて順次搬送される製造ラインの一部として組み込まれ、被検査物に対して異物が混入しているか否かを検出するものである。
【0023】
本例のX線異物検出装置は、各種異物の異物サンプル画像を生成する機能、生成した異物サンプル画像を被検査物のX線吸収画像の所望の位置に重ね合わせた合成画像を作成し、その合成画像について異物検出処理を行い、検出可能な異物を特定して表示する機能、合成画像による異物検出処理結果に基づく最適な異物検出処理の動作確認を行う機能、被検査物のX線吸収画像に重ね合わせる異物サンプル画像の合成位置を決定する機能、任意の異物による異物サンプル画像を記憶させる機能などを備えている。
【0024】
そして、上記各機能を実現するため、図1や図2に示すように、X線異物検出装置1(1A,1B)は、搬送部2、操作入力部3、検出部4、画像記憶部5、異物サンプル画像生成部6、画像合成部7、画像処理部8、判定部9、表示部10を備えて概略構成される。
【0025】
まず、本発明に係るX線異物検出装置1の第1実施形態の構成について図1を参照しながら説明する。
【0026】
図1において、搬送部2は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの様々な品種の中から予め操作入力部3から設定入力される品種の被検査物Wを、所定間隔をおいて順次搬送している。図1の例では、装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアで搬送部2を構成しており、不図示の駆動モータの駆動により予め設定された所定の搬送速度で図1の矢印方向に前工程(搬入口)から搬入された被検査物Wを後工程(搬出口)へ搬出している。
【0027】
なお、搬送部2は、図1に示すベルトコンベアに限定されるものではなく、例えば特許文献1に開示されるように、例えばアサリ等の貝類の剥き身、魚のすり身、レトルト食品の具材、具材入りスープ等の被検査物Wを搬送ポンプによりパイプ内に順次流動搬送する構成としても良い。
【0028】
操作入力部3は、搬送部2によって搬送させる被検査物Wの種類を特定する品種の設定、後述する異物サンプル画像生成部6から読み出す異物サンプル画像の異物の種類や大きさの設定、検出部4のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の設定、各種モードの選択設定、被検査物WのX線吸収画像Wpに対する異物サンプル画像Spの重ね合わせ位置(合成位置)の設定を含め、被検査物Wの異物検出に関する各種設定や指示を与えるための各種キー(キースイッチ、カーソルキー、ファンクションキー、矢印キー、テンキーなど)やスイッチ等で構成される。
【0029】
ここで、各種モードについて簡単に説明する。本例における各種モードとは、「異物サンプル検査モード」、「動作確認モード」、「異物サンプル記憶モード」、「運用モード」である。「異物サンプル検査モード」は、異物サンプル画像Spを被検査物WのX線吸収画像Wpに合成した合成画像Cp中の異物が検出できるか否かを検査するモードである。「動作確認モード」は、「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理による異物検出が正常に行えるか否かを確認するモードである。「異物サンプル記憶モード」は、ユーザが所望の異物を搬送させ、その異物が検出できるか否かを検査し、その異物に関する情報及び異物サンプル画像Spを後述する異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶させるモードである。「運用モード」は、通常の動作モードであり、被検査物Wに対する異物混入の有無を検査するモードである。
【0030】
検出部4は、X線発生器4aとX線検出器4bから構成される。X線発生器4aは、金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管を絶縁油により浸漬した構成であり、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成している。X線管は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向と直交するように設けられている。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出器に向けて、長手方向に沿ったスリットを介して、略円錐状のX線を略三角形状のスクリーン状にして曝射するようになっている。
【0031】
なお、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)は、操作入力部3から被検査物Wの特性や搬送速度に応じて任意に設定したり、固定値とすることができる。
【0032】
X線検出器4bは、被検査物Wに対してX線が曝射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線を検出し、この検出したX線の透過量に応じた電気信号を出力している。X線検出器4bには、例えば搬送部2をなすベルトコンベア上を搬送される被検査物Wの搬送方向と直交する方向にライン状に配列された複数のフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えたアレイ状のラインセンサが用いられる。
【0033】
そして、この検出部4では、被検査物Wに対してX線発生器4aからX線が曝射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線をX線検出器4bのシンチレータで受けて光に変換する。さらにシンチレータで変換された光は、その下部に配置されるX線検出器4bのフォトダイオードによって受光される。そして、各フォトダイオードは、受光した光を電気信号に変換して出力する(検出出力)。
【0034】
また、搬送部2の搬入口側には、被検査物Wの通過を検出するための位置検出部11が設けられている。この位置検出部11は、搬送部2としてのベルトコンベアの入口側に設けられる、例えば一対の投受光器からなるフォトセンサで構成される。これにより、被検査物Wがフォトセンサの前を通過している間では位置検出部11からオン信号が出力され、このオン信号の立ち上がりがタイミング信号として利用される。
【0035】
そして、被検査物Wやユーザが用意した異物に関するX線検出器4bからの電気信号に基づくX線の透過量を、位置検出部11からのタイミング信号によって被検査物Wやユーザが用意した異物に吸収されたX線吸収量に換算し、この換算によって得られる被検査物Wや異物のX線吸収画像を画像記憶部5に逐次記憶し、各種処理が実行されるようになっている。
【0036】
画像記憶部5は、X線検出器4bの検出出力に基づく被検査物WのX線透過画像におけるX線の透過量を被検査物Wに吸収されたX線吸収量に換算して求めた被検査物WのX線吸収画像や、ユーザが用意した異物を搬送させたときのX線検出器4bの検出出力に基づく異物のX線透過画像におけるX線の透過量を異物に吸収されたX線吸収量に換算して求めた異物のX線吸収画像を記憶している。
【0037】
ここで、X線吸収量について説明する。X線吸収画像は物体によるX線吸収量Tの2次元分布を示すものであり、X線の照射量I0 (X線の強さ)、X線の透過量をI(物体を透過した後の強さ)、X線の吸収率をμ、透過した物体の厚みをdとすると、減衰の法則(I/I0 =eの−μd乗)からX線吸収量Tは、logを自然対数とすると下記式(1)が成り立つ。
T=(logI0 −logI)=μd…式(1)
【0038】
また、X線の吸収率μは、X線の波長をλ、物体の密度をρ、原子番号をZ、定数をCとすると、下記式(2)の関係を有している。
μ=λ3 ρZC…式(2)
【0039】
式(1)は、X線吸収量が、それぞれ対数変換されたX線の照射量I0 とX線の透過量Iとの差分であることを示し、X線の照射量I0 はX線吸収量がゼロであるときのX線の透過量である。すなわち、搬送ベルト上に搬送物である被検査物が無い状態で検出したX線の透過量がX線の照射量I0 となる。
【0040】
したがって、被検査物のX線吸収量は、搬送ベルト上に被検査物が無い状態で検出したX線の透過量及び被検査物が存在する状態で検出したX線の透過量をそれぞれ対数変換した値の差分から求めることができる。
【0041】
また、異物サンプルも同様に、搬送ベルト上に被検査物が無い状態で検出したX線の透過量及び異物サンプルが存在する状態で検出したX線の透過量をそれぞれ対数変換した値の差分から求めることができる。
【0042】
一方、X線の波長はX線発生器4aの管電圧(X線管に印加する電圧)に依存し、X線の照射量はX線発生器4aの管電流に依存する。例えば、X線の波長が短いほど(管電圧を高くするほど)X線吸収量は小さくなる。したがって、式(1)及び式(2)から分かるように、X線の波長を可変することによって、密度と原子番号が異なる物品(被検査物と異物)ごとにX線吸収量の変動する度合いが異なる。X線異物検出装置1では、このことを利用して被検査物Wと異物の差異が出るようにX線発生器4aのX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)が設定されるようになっている。
【0043】
そして、後述する異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶されている所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した異物サンプル画像(異物のX線吸収画像)をS1、被検査物Wに対応して設定されたX線発生器4aのX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で取得された被検査物WのX線吸収画像をS2とすると、その合成画像Sは下記式(3)のようになる。
S=αS1+S2(但し、αは換算係数)…式(3)
【0044】
上記式(3)の換算係数αは、例えば、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)ごとに取得した異物サンプル画像の濃淡に対し、基準となる異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶されている所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した異物サンプル画像の濃淡との比率を予め求め、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)ごとに換算テーブルに記憶されている。
【0045】
異物サンプル画像生成部6は、予め設定された所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線吸収画像を異物サンプル画像Spとして生成している。
【0046】
また、異物サンプル画像生成部6は、所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)でX線を照射したときの異物の種類ごと、すなわち形状(大きさを含む)や材質(例えば金属、ガラス等)ごとの異物サンプル画像Spを記憶する記憶手段6aを有している。この異物サンプル画像Spは、予め設定された所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)で単体の異物にX線を照射したときのX線透過量をX線吸収量に換算したX線吸収画像、異なる形状(例えば、角、球、線など)で同じ材質(例えば、金属、ガラス、樹脂、骨など)の異物が所定間隔をおいて直線的に配置されたものに対して所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)でX線を照射したときのX線透過量をX線吸収量に換算したX線吸収画像等からなる。
【0047】
なお、記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像は、後述する加工手段7aによって加工処理を行う際に、加工時の基準となる異物マスタとして用いることができる。
【0048】
画像合成部7は、操作入力部3から「異物サンプル検査モード」が選択入力されたときに、図2の概念図に示すように、被検査物WのX線画像(X線吸収画像)Wpと、操作入力部3から設定された異物の種類及び大きさの異物サンプル画像Spとを所定位置で重ね合わせて合成しており、この合成画像Cpを画像処理部7に出力している。
【0049】
ここで、上記画像合成部7による画像合成処理の内容について更に詳細に説明する。この画像合成部7では、被検査物WのX線吸収画像Wpと、異物サンプル画像Spとを合成するにあたって、操作入力部3から設定された異物の種類及び大きさに対応して異物サンプル画像生成部6から読み出される異物サンプル画像Spの濃度を、現在設定されているX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に見合った濃度に変換する濃度変換処理を実行している。その後、画像合成部7は、X線吸収画像Wpと異物サンプル画像Spの両画像の濃度変換処理を実行している。
【0050】
被検査物W(製品)のX線吸収画像の濃淡レベルは、被検査物W(製品)の厚さに対して対数的に変化する。このため、通常、X線吸収画像を画像処理する際には、濃淡レベルの対数変換を行って変化分を補正している。
【0051】
従って、被検査物WのX線吸収画像Wpに合成される異物サンプル画像Spに関しても、被検査物Wの輝度に応じて画像処理する際に、濃淡レベルの対数変換を行って変化分を補正している。
【0052】
例えば図3に示す例の場合、logを自然対数とし、exp{}はeを底とする指数関数とした下記式(4)及び式(5)に基づいて被検査物Wの濃淡レベルが算出される。
被検査物Wの濃淡レベル=15×log(厚み)−14…式(4)
被検査物Wの厚み=exp{(濃淡レベル+14)/15}…式(5)
【0053】
具体的に、図3に示す被検査物Wの厚みと被検査物Wの濃淡レベルの例に対し、被検査物Wが無い状態で10の濃淡レベルを持つ異物サンプル画像Spを合成する場合には、上記式(4)及び式(5)によりそれぞれ異物サンプル画像Spの異物信号の輝度を補正し、被検査物WのX線吸収画像Wpに合成する。
【0054】
さらに説明すると、被検査物Wの濃淡レベルが20の場合、式(5)より、被検査物Wの厚みが10mmとなる。異物サンプル画像Spの異物信号は、被検査物Wの厚みによらず同じ値となるので、異物信号に厚み変換係数を掛け合わした値を、擬似的な異物厚み(=変換係数×異物濃淡信号レベル)とする。
【0055】
ここで、上記変換係数を0.5とした場合、10の異物濃淡レベルの擬似的厚みは5mmとなり、式(5)より算出された厚み10mmに異物信号5mmを加算し、合成厚み15mmを得る。
【0056】
これを式(4)に代入し、異物信号部分の濃淡レベル26を得る。そして、元の異物信号濃淡レベルは10、被検査物Wの濃淡レベルは20なので、異物信号自体は約0.6倍されて合成された計算になる。
【0057】
同様に、被検査物Wの厚みが20mm時は約0.33倍した信号が合成され、被検査物Wの厚みが40mm時は約0.31倍した信号が合成される。
【0058】
そして、ユーザが検査したい異物(例えば金属、ガラス、針金等)について、例えば図13の画面左側に示すように、種類別にサイズの異なる異物を並べるようにして、異物サンプル画像Spを、X線検出器4bから画像記憶部5に記憶された被検査物WのX線吸収画像Wpに合成すれば、ユーザが希望する異物に関して検出可能な異物を特定するための異物検出処理を実行することができる。
【0059】
画像処理部8は、搬送される被検査物WにX線を照射して検出する被検査物Wを透過したX線の透過量を被検査物Wに吸収されたX線吸収量に換算して求めたX線吸収画像や、画像合成部7からの異物サンプル合成画像に対し、異物を抽出するための画像処理を行い、その画像処理結果を判定部9及び表示部10に出力している。
【0060】
また、画像処理部8は、異物検出感度推定手段8aと異物抽出手段8bとを有している。異物検出感度推定手段8aは、画像合成部6から出力される異物サンプル合成画像を異物の種類ごとに画像処理し、その画像処理結果に基づいて検出可能な異物の種類を推定し、その結果を判定部9及び表示部10に出力している。また、異物検出感度推定手段8aは、画像合成部6からの異物サンプル合成画像に対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を施し、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理を最適なフィルタとして選定している。
【0061】
異物抽出手段8bは、「異物サンプル記憶モード」時に、画像記憶部5に記憶されている異物のX線吸収画像に対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を順次施してフィルタ処理ごとに設定された異物判定閾値を超える濃度の画像部分を異物画像として抽出しており、抽出結果(X線吸収画像上の位置ごとの抽出結果)を異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶させている。
【0062】
また、画像処理部8は、操作入力部3から選択入力されるモードに応じて、以下に説明する画像処理を実行している。
【0063】
「異物サンプル検査モード」時は、画像合成部7からの合成画像Cpに対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を順次施してフィルタ処理ごとに設定された異物判定閾値を超える濃度の画像部分を異物画像として抽出し、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理(異物が1種類の場合:最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理、異物が複数種類の場合:異物の種類ごとに最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理)を最適なフィルタ処理として選定している。
【0064】
「動作確認モード」時は、「異物サンプル検査モード」で検出可能とされた異物の種類と最小サイズについて、画像記憶部5からの被検査物WのX線吸収画像Wpを画像合成部7において合成した合成画像Cpに対し、「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理を実行し、その画像処理結果を判定部9に出力している。
【0065】
「運用モード」時は、画像記憶部5からの被検査物WのX線吸収画像Wpに対し、最適なフィルタ処理を実行し、その画像処理結果を判定部9に出力している。
【0066】
判定部9は、画像処理部8の異物検出感度推定手段8aによる推定結果に基づく表示部10の表示制御、画像処理部8の最適なフィルタ処理による画像処理結果に基づく被検査物Wに対する異物混入の有無の最終的な判定、「動作確認モード」時の動作確認結果の判定、表示部10に対する各種判定結果の表示制御等を行っている。
【0067】
表示部10は、例えば液晶表示器等で構成され、操作入力部3にて被検査物Wを特定する品種の設定、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の設定、各種モードの選択設定、被検査物WのX線吸収画像Wpに対して合成される異物サンプル画像Spの重ね合わせ位置の設定等の各種設定画面の表示、判定部8による判定結果に基づく各種表示(被検査物Wやユーザが用意した異物のX線透過画像・X線吸収画像表示の他、図13の画面右上に示す良否判定表示、総検査数、良品数、NG総数)等を行っている。
【0068】
また、表示部10は、上記表示の他、異物サンプル検査モードによる異物を特定するための異物検出処理の結果、検出可能な異物と判断された種類とその最小サイズを、図13の画面右下に示すように一覧表示している。また、表示部10の画面(図13の画面左側)には、上記一覧表示とともに被検査物WのX線吸収画像Wpと検出可能な異物を特定するために用いられた異物サンプル画像Spとの合成画像を表示し、検出可能な異物サンプルを強調表示(例えば黒や赤表示、異物の種類別に色分け表示)している。
【0069】
次に、本発明に係るX線異物検出装置1の第2実施形態の構成について図4を参照しながら説明する。なお、第2実施形態のX線異物検出装置1Bにおいて、上述した第1実施形態のX線異物検出装置1Aと概略同一の構成要素には同一番号を付し、その説明を省略している。
【0070】
この第2実施形態のX線異物検出装置1Bでは、X線吸収画像を取得したときのX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に対応させて異物サンプル画像生成部6によって生成された異物サンプル画像に対し、例えば大きさ変換(画像全体の拡大・縮小変換、画像の長さ変換)または濃度変換による加工を施す加工手段7aを画像合成部7に備えている。
【0071】
なお、加工元になる異物サンプル画像の選択設定、大きさの変換率や濃度の変換率の設定は、予め操作入力部3から合成処理前に行われる。また、異物サンプル画像を変換する際の大きさや濃度の変換率は、それぞれ複数のデフォルト値を予め記憶しておき、操作入力部3からの操作によってデフォルト値を表示部10に表示させて適宜選択したり、デフォルト値を任意に変更することも可能である。
【0072】
ここで、異物マスタとは、異物サンプル画像の加工時の基準として予め記憶されている異物データである。また、濃度の変換とは、厚さによる変換や照射するX線の発生条件による変換であり、管電圧が異なる場合には発生するX線の波長(エネルギー)が異なり、物質の吸収特性が変わるので、異物マスタを記憶したときの管電圧と異なる管電圧での感度推定には濃度変換が必要となる。
【0073】
次に、上述した加工手段7aによって加工された異物サンプル画像を被検査物WのX線吸収画像Wpに合成する場合の各例について図5〜図9を参照しながら説明する。
【0074】
図5の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像を異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMの大きさを、操作入力部3から設定された大きさの変換率で拡大・縮小変換している。図5の例では、異物マスタSpMを2種類の大きさで拡大・縮小変換している。そして、画像合成部7では、これら2種類の大きさの変換率で拡大・縮小変換された異物サンプル画像Sp1,Sp2を、それぞれ被検査物WのX線吸収画像Wpに合成し、2種類の合成画像Cp1,Cp2を画像処理部8に出力している。
【0075】
図6の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像を異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMのX線の濃度を、操作入力部3から設定された濃度の変換率で濃度変換している。図6の例では、異物マスタSpMを2種類の濃度で濃度変換している。そして、画像合成部7では、これら2種類の濃度の変換率で濃度変換された異物サンプル画像Sp3,Sp4を、それぞれ被検査物WのX線吸収画像Wpに合成し、2種類の合成画像Cp3,Cp4を画像処理部8に出力している。
【0076】
図7の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像を異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMの長さ(大きさ)を、操作入力部3から設定された長さの変換率で変換している。図7の例では、異物マスタSpMを2種類の長さで変化している。そして、画像合成部7では、これら2種類の長さに変換された異物サンプル画像Sp5,Sp6を、それぞれ被検査物WのX線吸収画像Wpに合成し、2種類の合成画像Cp5,Cp6を画像処理部8に出力している。
【0077】
図8の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された異物サンプル画像を異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMの大きさを、操作入力部3から設定された大きさの変換率で変換している。図8の例では、異物マスタSpMを2種類の大きさで拡大・縮小変換している。そして、画像合成部7では、これら2種類の大きさの変換率で拡大・縮小変換された異物サンプル画像Sp7,Sp8を合成し、この合成された異物サンプル画像Sp9を、被検査物WのX線吸収画像Wpと合成し、この合成画像Cp7を画像処理部8に出力している。
【0078】
図9の例において、加工手段7aは、異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに異物の種類ごとに複数記憶された異物サンプル画像Spのうち、操作入力部3から設定された大きさに対し拡大・縮小の変換率が1に近い1つの異物サンプル画像Spを異物マスタSpMとして読み出し、この異物マスタSpMの大きさを、その変換率で変換している。図9の例では、3種類の異物サンプル画像Spから1つの異物サンプル画像Spを異物マスタSpMとし、この異物マスタSpMを拡大・縮小変換している。そして、画像合成部7では、拡大・縮小変換された異物サンプル画像Sp10を、被検査物WのX線吸収画像Wpに合成し、この合成画像Cp10を画像処理部8に出力している。
【0079】
なお、図4の構成例では、加工手段7aが異物サンプル画像Spを異物マスタSpMとして所望の変換を行うものとして説明したが、所望変換(大きさ拡大・縮小変換、濃度変換)された異物サンプル画像を予め記憶手段6aに記憶しておき、操作入力部3から使用する異物サンプル画像を選択設定する構成としてもよい。
【0080】
次に、上記構成によるX異物検出装置1の各モード(異物サンプル検査モード、動作確認モード、異物サンプル記憶モード、運用モード)ごとの動作について説明する。なお、装置起動時は自動的に「運用モード」が選択されるようになっている。
【0081】
まず、異物サンプル検査モードの動作について図10及び図11のフローチャートを参照しながら説明する。図10はX線異物検出装置1の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理最適化による動作フローチャート、図11はX線異物検出装置1の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理固定による動作フローチャートである。なお、図10及び図11において、概略同一の動作には同一のステップ番号を付している。
【0082】
・異物サンプル検査モード
操作入力部3から「異物サンプル検査モード」が選択された状態で、搬送部2によって被検査物W(良品)を流し(ST1)、X線出力条件(X線発生器4aのX線の管電圧及び管電流)を決定する(ST2)。このST2の処理は、X線出力固定で、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)と同一条件で得た異物サンプル画像Spを使用する場合には不要な処理となる。
【0083】
次に、異物サンプル画像記憶手段5bから異物サンプル画像Spを読み込み(ST3)、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に応じて異物サンプル画像Spを換算する(ST4)。すなわち、X線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に見合うように異物サンプル画像Spの濃度変換処理を行う。このST4の処理は、X線出力固定で、X線出力条件と同一条件で得た異物サンプル画像Spを使用する場合には不要な処理となる。
【0084】
次に、異物サンプル画像Spと被検査物WのX線吸収画像Wpの両画像に前述した濃度変換処理を施した後、異物サンプル画像Spを被検査物WのX線吸収画像Wpの所定位置に合成する(ST5)。この合成処理は、総当たりのスキャン方式、濃度分布(ヒストグラム)、ユーザ指定の何れかによって合成位置Pを決定して実行される。以下、合成位置Pの決定方法について説明する。
【0085】
総当たりのスキャン方式では、被検査物WのX線吸収画像Wp上を端から端まで所定領域ごとに走査してX線吸収画像Wp上の全ての領域(全ての画素もしくは画素群ごと)を合成位置Pとして合成処理を行っている。
【0086】
濃度分布(ヒストグラム)では、例えば被検査物WのX線吸収画像Wpが図12(a),(b)に示すような濃度分布を示す場合、その濃度分布に応じて、図12(c)〜(e)の何れかに示すべく異物サンプル画像Spの合成位置Pを決定して合成処理を行っている。
【0087】
図12(c)の例では、被検査物WのX線吸収画像Wpの背景(ベルトの濃度)領域の数箇所(図示の例では2箇所)に合成位置Pを決定している。
【0088】
図12(d)の例では、被検査物WのX線吸収画像Wpの濃度が低い領域に格子状の合成位置Pを決定している。
【0089】
図12(e)の例では、被検査物WのX線吸収画像Wpの濃度が高い領域の複数箇所(図示の例では濃度が高い3つの領域の各3箇所)に合成位置Pを決定している。
【0090】
ユーザ指定では、例えば図14に示すような表示部9の異物サンプル画像Spの合成位置Pの指定画面において、ユーザが被検査物WのX線吸収画像Wpから任意の位置を合成位置Pとして合成処理を行っている。図14では、指定可能な異物サンプルの種類「金属、ガラス、針金」から「金属」を選択し、画面左側の被検査物WのX線吸収画像Wp上の4箇所(点線四角部分P)を合成位置として指定した例を示している。このユーザ指定によって合成位置Pを決定すれば、ユーザが希望する箇所のみを合成位置Pとして決定でき、効率的な異物検出精度の検査を行うことができる。
【0091】
次に、上述した合成位置Pの決定によりST5で合成された合成画像Cpに対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理から1つのフィルタ処理を設定し、この設定されたフィルタ処理を実行して異物を抽出し、その抽出結果を記憶する(ST6)。このST6の処理では、良品による被検査物WのX線吸収画像に濃度のバラツキがあっても異物が検出できるように、被検査物WのX線吸収画像Wpと合成画像Cpとの差分に基づいて異物判定リミットが各フィルタ処理ごとに設定されている。そして、設定されたフィルタ処理の異物判定リミットによって、合成画像Cpから異物として抽出できたか否かを判別し、その結果を記憶している。
【0092】
なお、合成画像Cp上の場所ごとの異物抽出の可否や異物抽出率(抽出可能数/全体合成位置数)を判別(○、△、×等による判別)し、その結果を記憶しても良い。また、図11によるフィルタ処理固定の動作では、ST6において、予め固定設定されたフィルタ処理を実行して異物を抽出し、その抽出結果を記憶する。
【0093】
次に、最後の合成位置Pか否かを判別し(ST7)、最後の合成位置Pでないと判別すると(ST7−No)、ST5の処理に戻る。これに対し、最後の合成位置Pであると判別すると(ST7−Yes)、異物サンプル画像Spが最後の大きさか否かを判別する(ST8)。そして、異物サンプル画像Spが最後の大きさでないと判別すると(ST8−No)、ST3の処理に戻る。これに対し、異物サンプル画像Spが最後の大きさであると判別すると(ST8−Yes)、最後の異物サンプル画像Spか否かを判別し(ST9)、最後の異物サンプル画像Spでないと判別すると(ST9−No)、ST3の処理に戻る。
【0094】
そして、最後の異物サンプル画像Spであると判別すると(ST9−Yes)、既に実行されたフィルタ処理の中から最適なフィルタ処理を選定する(ST10)。この最適なフィルタ処理としては、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理(異物が1種類の場合:最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理、異物が複数種類の場合:異物の種類ごとに最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理)が選定される。
【0095】
そして、最適なフィルタ処理が選定されると(ST10)、この最適なフィルタ処理で検出可能な異物サイズを推定し(ST11)、異物抽出結果を例えば図13に示すような形式で表示部10に表示する(ST12)。図13の例では、検出可能な異物の種類及び最小サイズとして、金属:φ1、樹脂:φ2、ガラス:φ4、針金:φ1×3を表示している。
【0096】
なお、図11によるフィルタ処理固定の動作では、図10におけるST10の処理が省略され、予め固定設定されたフィルタ処理で検出可能な異物サイズをを推定し(ST11)、異物抽出結果を例えば図13に示すような形式で表示部10に表示する。
【0097】
・動作確認モード
操作入力部3から「動作確認モード」が選択されると、画像処理部8は、上述した「異物サンプル検査モード」で検出可能とされた異物の種類と最小サイズについて、画像記憶部5からの被検査物WのX線吸収画像Wpを画像合成部7において合成した合成画像Cpに対し、「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理を実行する。そして、判定部9は、画像処理部8の画像処理結果と「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理に対応する異物判定閾値に基づいて、「異物サンプル検査モード」で検出可能とされた異物の種類と最小サイズの異物の全てについての検出が正常に行えたか否かを判別する。これにより、「異物サンプル検査モード」で選定された最適なフィルタ処理による異物検出が正常に動作するか否か確認することができる。
【0098】
・異物サンプル記憶モード
操作入力部3から「異物サンプル記憶モード」が選択された状態で、搬送部2から所望の異物を搬送させると、この異物に対してX線が照射され、このX線の照射に伴う異物のX線吸収画像が画像記憶部5に記憶される。そして、画像処理部8の異物抽出手段8bが、この画像記憶部5に記憶された異物のX線吸収画像に対し、所定のフィルタ処理により異物として抽出すると、この異物の情報及びX線吸収画像を異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに記憶する。これにより、ユーザが所望とする異物の検出感度や異物情報(異物サンプル画像)を登録することができる。
【0099】
・運用モード
操作入力部3から「運用モード」が選択されると、搬送部2から順次搬送される被検査物WにX線が照射され、このX線の照射に伴う被検査物WのX線吸収画像Wpが画像記憶部5に記憶される。そして、画像処理部8は、X線の透過量を被検査物Wに吸収されたX線吸収量に換算して画像記憶部5に記憶された被検査物WのX線吸収画像Wpに対し、選定された最適なフィルタ処理を実行する。そして、判定部9は、画像処理部8の画像処理結果と選定された最適なフィルタ処理に対応する異物判定閾値に基づいて、異物混入の有無を判定し、その判定結果を表示部10に表示する。
【0100】
このように、本例のX線異物検出装置によれば、所定のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線吸収画像を異物サンプル画像として記憶しておき、この異物サンプル画像を被検査物のX線吸収画像に合成するので、実際の異物サンプルを用いなくても、被検査物に異物が混入したときの透過画像を生成し、その画像を画像処理することにより、検出可能な異物の大きさを推定することができる。
【0101】
異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aに複数種類の異物サンプル画像を記憶しておき、それぞれの異物サンプル画像を被検査物のX線吸収画像に合成し、これらの合成画像に異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を施して異物が抽出できるかを判別し、この判別結果から最適なフィルタ処理を決定すれば、その被検査物で異物を高感度に検出できるフィルタ処理を、実際に複数の異物サンプルを用いて試行しなくても設定することができる。
【0102】
異物サンプル画像生成部6の記憶手段6aは、異物の種類及び大きさごとの異物サンプル画像(X線吸収画像)、すなわち材質や形状及びサイズが異なる異物に対応した異物サンプル画像を記憶している。これにより、被検査物の種類(品種)に応じてその被検査物から異物として抽出できる大きさの範囲を、異物の材質や形状ごとに推定することができる。
【0103】
異物サンプル記憶モード時には、ユーザが所望する任意の異物のX線吸収画像を異物サンプル画像として記憶手段6aに登録記憶でき、ユーザが用意した任意の異物について、その異物のX線吸収画像を異物サンプル画像として被検査物のX線吸収画像に合成し、それを異物として抽出できるかを推定することができる。
【0104】
被検査物の特性や搬送速度に応じて最適に設定されるX線発生器のX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に基づいて、記憶しているX線吸収画像の濃度を換算している。これにより、被検査物のX線吸収画像の濃度が変化する場合にも異物サンプル画像を適切な濃度で合成することができ、異物として抽出できるかの推定をより確からしくすることができる。
【0105】
合成画像中に異物が含まれているか否かの判別結果に基づいて検出可能な異物に関する情報を表示部9に表示しているので、表示部9の内容を直接確認するだけで、その装置で検出可能な異物に関する情報を把握することができる。
【0106】
表示部9に表示される被検査物のX線透過画像上で異物サンプル画像の合成位置を指定して設定すれば、従来実施していた異物サンプルを実際に被検査物の各位置に付けて確認するのと同様に、ユーザが定めた所定の位置に異物サンプル画像を合成することができる。
【0107】
被検査物のX線透過画像の濃度分布から異物サンプル画像の合成位置を設定すれば、被検査物の特性に応じて異物サンプル画像を合成する位置を絞り込んで演算量や演算時間を減少でき、さらに異物が抽出できるかを適切に推定することができる。
【0108】
図4に示すような加工手段7aを備えた構成によれば、被検査物の特性や搬送速度に応じて最適に設定されるX線発生器4aのX線出力条件(X線の管電圧及び管電流)に基いて、異物サンプル画像を濃度変換して加工するので、被検査物の透過画像の濃度が変化する場合にも異物サンプル画像を適切な濃度で合成することができ、異物として抽出できるかの推定をより確からしくすることができる。
【0109】
ところで、上述した実施の形態では、搬送部2上に被検査物Wや所望の異物を搬送させたときのX線吸収画像を画像記憶部5に記憶させ、また各種異物のX線吸収画像による異物サンプル画像を異物サンプル画像生成部6で生成し、これらX線の吸収画像を用いて合成処理を行う構成について説明したが、この構成に限定されるものではない。例えば搬送部2上に被検査物Wや所望の異物を搬送させたときのX線透過画像を画像記憶部5に記憶させ、また各種異物のX線透過画像による異物サンプル画像を異物サンプル画像生成部6で生成し、画像合成部7や画像処理部8で画像処理する際にX線透過画像からX線吸収画像に換算して処理したり、X線透過画像を用いて合成処理をすることも可能である。但し、X線吸収画像を用いて合成処理すれば、図15に示すように、0を起点として被検査物WのX線吸収画像と異物サンプル画像(異物のX線吸収画像)とを合成でき、X線の透過画像を用いた場合よりも合成処理に係る手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係るX線異物検出装置の第1実施形態のブロック構成図である。
【図2】本発明に係るX線異物検出装置における被検査物のX線画像と異物サンプル画像との合成処理の概念図である。
【図3】(a),(b) 本発明に係るX線異物検出装置における被検査物の厚みと濃淡レベルの一例を示す図である。
【図4】本発明に係るX線異物検出装置の第2実施形態のブロック構成図である。
【図5】1種類の異物サンプル画像に加工(大きさ変換、濃度変換)を施して被検査物画像と合成したときの合成画像の各種例を示す図である。
【図6】1種類の異物サンプル画像に加工(大きさ変換、濃度変換)を施して被検査物画像と合成したときの合成画像の各種例を示す図である。
【図7】1種類の異物サンプル画像に加工(大きさ変換、濃度変換)を施して被検査物画像と合成したときの合成画像の各種例を示す図である。
【図8】1種類の異物サンプル画像に加工(大きさ変換)を施して合成したものをさらに被検査物画像と合成したときの合成画像の例を示す図である。
【図9】複数種類の異物サンプル画像から1種類の異物サンプル画像を選択し加工(大きさ変換)を施して被検査物画像と合成したときの合成画像の例を示す図である。
【図10】本発明に係るX線異物検出装置の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理最適化による動作フローチャートである。
【図11】本発明に係るX線異物検出装置の異物サンプル検査モード時のフィルタ処理固定による動作フローチャートである。
【図12】(a)〜(e) 本発明に係るX線異物検出装置において濃度分布から合成位置を決定する処理に関する説明図である。
【図13】本発明に係るX線異物検出装置の表示例を示す図である。
【図14】本発明に係るX線異物検出装置において異物サンプル画像の合成位置を手動設定する場合の説明図である。
【図15】被検査物に異物を合成した場合と異物のみの場合のX線の吸収度に関する説明図である。
【符号の説明】
【0111】
1 X線異物検出装置
2 搬送部
3 操作入力部
4 検出部
4a X線発生器
4b X線検出器
5 画像記憶部
6 異物サンプル画像生成部
6a 記憶手段
7 画像合成部
8 画像処理部
8a 異物検出感度推定手段
8b 異物抽出手段
9 判定部
10 表示部
11 位置検出部
W 被検査物
Wp 被検査物のX線吸収画像
Sp 異物サンプル画像
Cp 合成画像
P 合成位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被検査物(W)にX線を照射したときに該被検査物を透過して検出されるX線の透過量に基づくX線画像に対し、異物を抽出するための画像処理を行う画像処理部(8)を備え、該画像処理部の画像処理結果に基づいて前記被検査物の中に異物が含まれているか否かを判定するX線異物検出装置(1)において、
所定のX線出力条件の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線画像を異物サンプル画像として生成する異物サンプル画像生成部(6)と、
前記X線画像に前記異物サンプル画像生成部によって生成された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力する画像合成部(7)と、
前記画像合成部から出力される大きさの異なる複数の異物サンプル合成画像を画像処理した結果に基づいて検出可能な大きさを推定する異物検出感度推定手段(8a)とを備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記異物サンプル画像生成部(6)は、前記所定のX線出力条件の基で検出した複数種類の異物の異物サンプル画像を記憶する記憶手段(6a)を含み、
前記異物検出感度推定手段(8a)は、異物の種類ごとに検出可能な異物の大きさを推定することを特徴とする請求項1に記載のX線異物検出装置。
【請求項3】
前記異物検出感度推定手段(8a)は、前記合成画像に対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を施し、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理を最適なフィルタとして選定することを特徴とする請求項2に記載のX線異物検出装置。
【請求項4】
前記X線画像を取得したときのX線出力条件に対応させて前記異物サンプル画像生成部(6)によって生成された異物サンプル画像を濃度変換して加工する加工手段(7a)を備え、
前記画像合成部(7)は、前記X線画像に前記加工手段で変換された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のX線異物検出装置。
【請求項5】
所定のX線出力条件の基で、所望の異物を搬送させたときに得られるX線画像を、前記異物に関する異物サンプル画像として前記記憶手段(6a)に登録記憶させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のX線異物検出装置。
【請求項6】
前記被検査物(W)の透過画像を表示する表示部(10)を備え、該表示部に表示される透過画像上で前記異物サンプル画像の合成位置を指定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のX線異物検出装置。
【請求項7】
前記被検査物(W)の透過画像の濃度分布に基づいて該透過画像に対する前記異物サンプル画像の合成位置を決定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のX線異物検出装置。
【請求項1】
搬送される被検査物(W)にX線を照射したときに該被検査物を透過して検出されるX線の透過量に基づくX線画像に対し、異物を抽出するための画像処理を行う画像処理部(8)を備え、該画像処理部の画像処理結果に基づいて前記被検査物の中に異物が含まれているか否かを判定するX線異物検出装置(1)において、
所定のX線出力条件の基で検出した大きさの異なる複数の異物サンプルのX線画像を異物サンプル画像として生成する異物サンプル画像生成部(6)と、
前記X線画像に前記異物サンプル画像生成部によって生成された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力する画像合成部(7)と、
前記画像合成部から出力される大きさの異なる複数の異物サンプル合成画像を画像処理した結果に基づいて検出可能な大きさを推定する異物検出感度推定手段(8a)とを備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記異物サンプル画像生成部(6)は、前記所定のX線出力条件の基で検出した複数種類の異物の異物サンプル画像を記憶する記憶手段(6a)を含み、
前記異物検出感度推定手段(8a)は、異物の種類ごとに検出可能な異物の大きさを推定することを特徴とする請求項1に記載のX線異物検出装置。
【請求項3】
前記異物検出感度推定手段(8a)は、前記合成画像に対し、異物の種類ごとに用意されたフィルタ処理を施し、最も小さな異物が抽出できたフィルタ処理を最適なフィルタとして選定することを特徴とする請求項2に記載のX線異物検出装置。
【請求項4】
前記X線画像を取得したときのX線出力条件に対応させて前記異物サンプル画像生成部(6)によって生成された異物サンプル画像を濃度変換して加工する加工手段(7a)を備え、
前記画像合成部(7)は、前記X線画像に前記加工手段で変換された異物サンプル画像を所望の位置で重ね合わせた合成画像を出力することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のX線異物検出装置。
【請求項5】
所定のX線出力条件の基で、所望の異物を搬送させたときに得られるX線画像を、前記異物に関する異物サンプル画像として前記記憶手段(6a)に登録記憶させることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のX線異物検出装置。
【請求項6】
前記被検査物(W)の透過画像を表示する表示部(10)を備え、該表示部に表示される透過画像上で前記異物サンプル画像の合成位置を指定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のX線異物検出装置。
【請求項7】
前記被検査物(W)の透過画像の濃度分布に基づいて該透過画像に対する前記異物サンプル画像の合成位置を決定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のX線異物検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−168740(P2009−168740A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9427(P2008−9427)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】
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