説明

X線異物検出装置

【課題】残留物の影響を受けずに被検査体の異物検出を開始し、正確な異物検出を可能にする。
【解決手段】X線異物検出装置1は、搬送手段3により搬送される被検査体にX線を照射し、そのX線透過量に基づいて被検査体に混入している異物を検出するものであり、X線透過量による濃度レベルの変化を監視し、濃度レベルの変化が安定したときに被検査体の異物検出の開始を指示する濃度レベル監視部8aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造ラインの一部に設けられ、搬送される被検査体にX線を照射して、その透過量に基づいて被検査体に混入している金属、ガラス、合成樹脂材などの異物を検出するX線異物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製造ラインの検査工程において、被検査体として各種食品等(例えばミンチ、パンやクッキーの生地、レトルト食品など)への異物(例えば金属、ガラス、殻、骨など)混入の有無を検出するため、下記特許文献1や特許文献2などに開示されるX線異物検出装置が用いられている。この種のX線異物検出装置は、製造ラインの一部に組み込まれ、被検査体を搬送手段で順次搬送しながら検査していく構成が採用される。また、搬送手段としては、パイプラインやベルトコンベアがあり、被検査体の種類に適したものが選択されるようになっている。
【0003】
ところで、この種のX線異物検出装置において、例えば製造ラインのロット切り替えなどにより被検査体の種類を変更して運転を開始する際、新たな被検査体として、変更前の被検査体とX線透過量による濃度レベルが大きく異なる被検査体をパイプ内に搬送すると、変更前の被検査体の残留物が新たな被検査体に紛れ込んでパイプ内を搬送されてしまうことがある。この場合、残留物のX線透過量による濃度レベルが検査結果に影響し、新たな被検査体に対する異物混入の有無を正確に検出できないという問題が生じる。
【0004】
このため、パイプ内に搬送される被検査体の種類を変更する場合、特にX線透過量による濃度レベルが大きく異なる被検査体に変更する場合には、測定を開始する前にパイプ内の清掃が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開番号WO2006/001465 A1
【特許文献2】特開2006−010512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パイプ内の清掃が不十分で変更前の被検査体の残留物がパイプ内に残っていれば、上述したように、例えば製造ラインのロット切り替えなどにより新たな被検査体をパイプ内に搬送した際、パイプ内の残留物が新たな被検査体に紛れ込んで搬送されるおそれがあった。
【0007】
そして、この残留物が被検査体に紛れ込んだ状態で搬送された場合には、残留物によるX線透過量が検査結果に影響し、被検査体に対する異物混入の有無を正確に検出することができなかった。
【0008】
また、パイプ内に変更前の被検査体の残留物が付着している場合には、新たな被検査体を搬送する際に、この残留物が邪魔して障害となり、新たな被検査体を安定して搬送することができないおそれもあった。これらの問題は、搬送手段としてパイプラインを使用した場合に限らず、ベルトコンベアを使用した場合でも、ベルトコンベアの表面に変更前の残留物が残っていたり付着していることで起こり得る。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、残留物の影響を受けずに被検査体の異物検出を開始することができるX線異物検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたX線異物検出装置は、搬送手段3により搬送される被検査体にX線を照射し、そのX線透過量に基づいて前記被検査体に混入している異物を検出するX線異物検出装置1において、
前記X線透過量による濃度レベルの変化を監視し、該濃度レベルの変化が安定したときに前記被検査体の異物検出の開始を指示する濃度レベル監視部8aを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載されたX線異物検出装置は、請求項1のX線異物検出装置において、
前記濃度レベル監視部8aは、前記濃度レベルが予め設定される閾値以下のレベルで所定時間継続して前記濃度レベルの変化が安定したときに、前記被検査体の異物検出の開始を指示することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載されたX線異物検出装置は、請求項1のX線異物検出装置において、
前記濃度レベル監視部8aは、前記濃度レベルが予め設定される閾値範囲内に所定時間継続して収まって前記濃度レベルの変化が安定したときに、前記被検査体の異物検出の開始を指示することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載されたX線異物検出装置は、請求項1のX線異物検出装置において、
前記搬送手段3がパイプラインからなり、
前記濃度レベル監視部8aは、前記濃度レベルが、前記被検査体を透過するX線を検出するX線検出部の各素子毎の所定時間内における濃度レベルの積算値の変化が安定したときに、前記被検査体の異物検出の開始を指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被検査体の異物検出を行う前(異物検出の終了後を含む)に、搬送手段の搬送状態を監視し、濃度レベルの変化が安定した状態で異物検出を開始するので、前回の被検査体の残留物の影響を受けずに異物検出を開始でき、正確な異物検出を行うことができる。
【0015】
また、搬送手段の清掃を行った場合には、濃度レベルの変化が安定した状態として、搬送手段に前回の被検査体の残留物が無い状態で被検査体の異物検出を開始することができる。さらに、搬送手段により継続して異なる被検査体を搬送した場合には、濃度レベルの変化が安定した状態として、搬送手段に被検査体が十分に満たされた状態で被検査体の異物検出を開始することができる。
【0016】
また、搬送手段としてパイプラインを用い、濃度レベル監視部が演算する濃度レベルとして、X線検出部の素子全体(又は素子の一部)の所定時間内における濃度データによる濃度レベルの積算値の変化量を用いれば、パイプラインの断面形状を問わずに使用することができる。特に、X線が透過する検出位置において、放射状に照射されるX線がパイプラインを透過する透過長さが位置によって異なる断面円形のパイプを使用した場合であっても、濃度レベル監視部が演算する濃度レベル(濃度積算値)の変化が安定するので、パイプライン内の残留物の有無を含めた搬送状態を高精度に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るX線異物検出装置のブロック構成図である。
【図2】本発明に係るX線異物検出装置の外観を示す正面図である。
【図3】本発明に係るX線異物検出装置の外観を示す平面図である。
【図4】本発明に係るX線異物検出装置においてパイプライン内を清掃した際の状態遷移を示す概略図である。
【図5】図4の状態遷移に対応したパイプライン内の濃度レベルの変化を示す図である。
【図6】本発明に係るX線異物検出装置においてパイプライン内に新たな被検査体を流動搬送した際の状態遷移を示す概略図である。
【図7】図6の状態遷移に対応したパイプライン内の濃度レベルの変化を示す図である。
【図8】本発明に係るX線異物検出装置の異物検出処理に関するフローチャートである。
【図9】本発明に係るX線異物検出装置の状態判別処理に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれる。
【0019】
図1は本発明に係るX線異物検出装置のブロック構成図、図2は本発明に係るX線異物検出装置の外観を示す正面図、図3は本発明に係るX線異物検出装置の外観を示す平面図、図4は本発明に係るX線異物検出装置においてパイプライン内を清掃した際の状態遷移を示す概略図、図5は図4の状態遷移に対応したパイプライン内の濃度レベルの変化を示す図、図6は本発明に係るX線異物検出装置においてパイプライン内に新たな被検査体を流動搬送した際の状態遷移を示す概略図、図7は図6の状態遷移に対応したパイプライン内の濃度レベルの変化を示す図、図8は本発明に係るX線異物検出装置の異物検出処理に関するフローチャート、図9は本発明に係るX線異物検出装置の状態判別処理に関するフローチャートである。
【0020】
本発明に係るX線異物検出装置は、製造ラインの一部に設けられ、パイプラインやベルトコンベアなどの搬送手段を介して順次搬送される被検査体(例えばミンチ、パンやクッキーの生地、レトルト食品など)にX線を照射して、その透過量に基づいて被検査体に混入している金属、ガラス、合成樹脂材などの異物を検出するものである。
【0021】
以下では、パイプラインを搬送手段として使用したX線異物検出装置の構成を例にとって説明する。なお、例えば具材入スープ等のように、被検査体自身が流動性を有している場合には、被検査体がそのままパイプライン内に搬送される。これに対し、例えばアサリやシジミ等の貝類の剥き身、レトルト食品の具材等のように、被検査体自身が流動性を有していない場合には、例えば水や空気等の搬送用流体によりパイプライン内に搬送される。
【0022】
図1乃至図3に示すように、本例のX線異物検出装置1は、装置本体をなす筐体2に対し、被検査体を連続的に流動搬送するパイプライン3と、被検査体の搬送方向を切り替える切替弁部4とが設けられ、X線発生部5、X線検出部6、操作部7、制御部8、表示装置9を備えて概略構成される。
【0023】
図2及び図3に示すように、パイプライン3は、予め複数のパイプが配管接続されたもので、被検査体供給用パイプ3a、検出用パイプ3b、NG品吐出用パイプ3c、未検出品吐出用パイプ3d、良品吐出用パイプ3eから構成される。また、切替弁部4は、検出用パイプ3bと良品吐出用パイプ3eとの間に設けられ、三方バルブ4aと切替バルブ4bから構成される。
【0024】
被検査体供給用パイプ3aは、筐体2の上流側に配管され、不図示の搬送ポンプにより被検査体が連続的に流動搬送される。検出用パイプ3bは、一端が被検査体供給用パイプ3aに接続され、他端が三方バルブ4aの流入側に接続されている。検出用パイプ3bの略中央部分には、検出用パイプ3bを介してX線発生部5とX線検出部6とが所定間隔をおいて対向配置されている。検出用パイプ3bでは、異物有無の検出がなされた被検査体を三方バルブ4aに流入搬送している。NG品吐出用パイプ3cは、筐体2の下流側で三方バルブ4aの側方に分岐した一方の出口に接続され、NG品と判別された被検査体を吐出する。切替バルブ4bは、三方バルブ4aの他方の出口に接続され、未検出品吐出用パイプ3dと良品吐出用パイプ3eの切り替えを行っている。未検出品吐出用パイプ3dは、切替バルブ4bの側方の出口に分岐して接続され、例えば選別確認用にテスト搬送される被検査体や感度補正時の未検出品の被検査体等を吐出する。良品吐出用パイプ3eは、切替バルブ4bの他方の出口に接続され、良品と判別された被検査体を不図示の製品受け箱や充填装置等に吐出する。
【0025】
なお、三方バルブ4aは、検出結果に応じて所定のタイミングで流路を切り替えることができ、検出した異物を含む被検査体をNG品吐出用パイプ3cから排出することができる。また、切替バルブ4bは、被検査体のテスト搬送時や感度補正時等に手動で切り替えることができ、選別確認用にテスト搬送される被検査体や感度補正時の未検出品の被検査体等を未検出品吐出用パイプ3dから再度被検査体供給用パイプ3aの供給元側に送り戻すことができる。
【0026】
また、図示はしないが、検出用パイプ3bとしては、その上面側がなだらかなV字形に変形され、X線が透過する検査位置に対応する中央部分の断面形状がパイプの円形断面から細長い略矩形に変形したものを採用することができる。この検出用パイプ3bを採用した場合には、X線が透過する検査位置において、放射状に照射されるX線が検出用パイプ3bを透過する透過長さが位置に係わらずに一定になる。
【0027】
X線発生部5は、検出用パイプ3bの上方に所定高さ離れて設けられる。X線発生部5は、金属製の箱体内部に設けられる円筒状のX線管を不図示の絶縁油により浸漬した構成であり、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射させてX線を生成している。X線管は、その長手方向が被検査体Wの搬送方向(X方向)となるように配置されている。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出部6に向けて、不図示のスリットにより略三角形状のスクリーン状となって搬送方向(X方向)を横切るように照射されるようになっている。
【0028】
X線検出部6は、検出用パイプ3bの下方にX線発生部5と対向して設けられ、被検査体へのX線の照射領域平面上で被検査体の搬送方向Xと直交するY方向に複数の素子が一直線上に配置されたものである。複数の素子は、ライン状に整列して配設された複数のフォトダイオードと、ライン状のフォトダイオード上に設けられたシンチレータとから構成され、被検査体へのX線の照射に伴って被検査体を透過してくるX線をシンチレータで受けて光に変換し、この変換された光を対応するフォトダイオードで受光し、受光した光を電気信号に変換して出力する。
【0029】
このように、X線検出部6は、受けたX線の強さに対応したレベルを有した電気信号を出力するものであり、Y方向に直線状に配置された複数の素子を1ラインとして各素子毎に被検査体を透過するX線を検出し、各素子が検出したX線透過量を1ラインのX線データとして、被検査体の搬送に伴って1ライン毎に順次出力を繰り返している。
【0030】
操作部7は、例えば複数の操作ボタンや操作キーなどを備えた操作パネルからなる。操作部7は、ユーザの入力操作により、表示装置9に不図示の設定入力画面を表示させ、パイプライン3内を搬送される被検査体の種類、異物判別用の異物毎の閾値、X線検出部6から濃度データを取得するためのサンプリング周期、パイプライン3内の状態判別用の閾値、搬送速度など異物検出や状態判別に必要な各種条件設定を行っている。
【0031】
尚、状態判別用の閾値は、パイプライン3内に被検査体が無い状態でのX線透過量による濃度レベルの上限値、パイプライン3内に搬送する被検査体の種類毎のX線透過量による濃度レベルの上下限値範囲であり、状態判別部8aで演算される濃度レベル毎に予め必要に応じて設定されている。また、異物判別用の閾値としては、例えばX線データに基づくX線原画像に異物を強調するフィルタ(Sobel、メディアン、ラプラシアン、平滑化等)などの画像処理を施し、その結果得られる異物を強調した異物強調画像に対し、上限値、下限値、上下限値範囲を閾値として必要に応じて予め設定されている。
【0032】
制御部8は、例えばCPUで構成され、操作部7からの操作情報に応じてパイプライン3内の搬送状態の監視及び被検査体の異物検出に関する制御を行っており、濃度レベル監視部8a、異物判別部8b、排出制御部8cを備えている。
【0033】
濃度レベル監視部8aは、X線検出部6からのX線透過量による濃度レベルの変化を監視しており、濃度レベルの変化が安定したときに被検査体の異物検出の開始を指示している。さらに説明すると、濃度レベル監視部8aは、X線検出部6から1ライン毎のX線データを取得し、この取得したX線データから被検査体Wに吸収されたX線量が輝度(濃度)となるように濃度レベルを演算し、この演算した濃度レベルに基づいてパイプライン3内の搬送状態を判別している。濃度レベル監視部8aが演算する濃度レベルは、X線検出部6の各素子毎のX線データによる濃度レベル、X線検出部6の各素子毎の所定時間内におけるX線データによる濃度レベルの変化量、X線検出部6の素子全体(又は素子の一部)のX線データによる濃度レベルの積算値、X線検出部6の素子全体(又は素子の一部)の所定時間内におけるX線データによる濃度レベルの積算値の変化量である。これら濃度レベルの演算は、操作部7からの操作により選択可能であり、使用される濃度レベルに応じた状態判別用の閾値(閾値濃度レベル、閾値濃度レベル範囲)もそれぞれ適宜設定される。
【0034】
濃度レベル監視部8aは、上述した演算によって得られる濃度レベルと予め設定された状態判別用の閾値とを比較し、この比較の結果に基づいてパイプライン3内の搬送状態、すなわちパイプライン3内が前回の被検査体の残留物を含む搬送状態である否か、又はパイプライン3内が今回検査対象とする被検査体で満たされた搬送状態であるか否かを判別している。
【0035】
さらに説明すると、濃度レベル監視部8aは、図4に示すように、パイプライン3内に通水して清掃を行った場合、演算によって得られる濃度レベルと状態判別用の閾値(上限値)とを比較し、図5に示すように、濃度レベルが閾値(上限値)以下を所定時間t以上継続していれば、パイプライン3内が前回の被検査体の残留物を含まない搬送状態(パイプライン3内が空状態)であって、濃度レベルの変化が安定したと判別している。
【0036】
また、濃度レベル監視部8aは、図6に示すように、パイプライン3内に新たな被検査体を流動搬送させた場合、演算によって得られる濃度レベルと状態判別用の閾値(上下限値範囲)とを比較し、図7に示すように、濃度レベルが閾値の上下限値範囲内に所定時間t以上継続して収まっていれば、パイプライン3内が今回検査対象となる被検査体で満たされた搬送状態であって、濃度レベルの変化が安定したと判別している。
【0037】
そして、濃度レベル監視部8aは、濃度レベルの変化が安定したと判別したとき(パイプライン3内が前回の被検査体の残留物を含まない搬送状態であると判別したとき、又はパイプライン3内が今回検査対象となる被検査体で満たされた搬送状態であると判別した)に、被検査体の異物検出を開始するべく異物判別部8bに異物検出の開始の指示を出力している。
【0038】
異物判別部8bは、濃度レベル監視部8aから異物検出の開始の指示が入力されたときに、X線検出部5bから出力されるX線データに画像処理を施して得られる異物強調画像と予め設定された異物判別用の閾値とを比較し、この比較の結果に基づいて被検査体に対する異物混入の有無を判別している。
【0039】
排出制御部8cは、異物判別部8bの判別結果に基づき、切替弁部4の三方バルブ4a及び切替バルブ4bの切替制御及び弁の開閉制御を行っている。
【0040】
表示装置9は、操作部7からの所定のキー操作により、不図示の設定入力画面の表示の他、異物判別部8bの判別結果に基づき、検出用パイプ3b内に搬送される被検査体を平面視したX線透過画像、「OK」や「NG」の良否判定結果、総検査数、良品数、NG総数などの検査結果を表示している。
【0041】
尚、本例において、表示装置9を操作部7と別体に構成して説明したが、表示装置9を操作部7の操作パネルに組み込んだ構成としても良い。
【0042】
次に、上記構成によるX線異物検出装置1の動作について図8及び図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0043】
まず、被検査体供給用パイプ3aから検出用パイプ3b内へ被検査体を連続的に流動搬送し、この流動搬送される被検査体に対してX線発生器5aからX線の照射を開始する(ST1)。続いて、図9に示す状態判別処理を実行する(ST2)。この状態判別処理を実行するにあたっては、X線検出部6からX線データを取得するためのサンプリング周期、取得したX線データから演算した濃度レベルと比較する閾値などのデータ取得条件が予め設定されている。
【0044】
状態判別処理では、X線検出部6から1ライン毎のX線データを取得し(ST11)、取得したX線データから濃度レベルを演算する(ST12)。濃度レベルは、X線検出部6の各素子毎のX線データによる濃度レベル、X線検出部6の各素子毎の所定時間内におけるX線データによる濃度レベルの変化量、X線検出部6の素子全体(又は素子の一部)のX線データによる濃度レベルの積算値、X線検出部6の素子全体(又は素子の一部)の所定時間内におけるX線データによる濃度レベルの積算値の変化量として演算される。そして、濃度レベル監視部8aは、演算した濃度レベルと予め設定された閾値とを比較し、その比較の結果からパイプライン3内の搬送状態を判別する(ST13)。
【0045】
ここで、上記状態判別処理の具体的な例について図4〜図7を参照しながら説明する。尚、各図において、説明の便宜上、状態判別処理前、異物検出終了後、異物検出時に切替弁部4を排出弁(開)とし、異物が検出されないときは切替弁部4を排出弁(閉)として図示している。
【0046】
図4(a)〜(d)はパイプライン3内に通水して清掃を行った後、パイプライン3内に前回の被検査体の残留物が残っていない搬送状態を確認してから異物検出に移行するまでの状態遷移の一例を示している。また、図5は図4(a)〜(d)の状態遷移において演算される濃度レベルの変化を示している。
【0047】
パイプライン3内に洗浄水を通水して清掃を行った場合、図4(a)→図4(b)→図4(c)→図4(d)の流れで状態が逐次遷移する。そして、パイプライン3内の清掃が十分に行われて図4(d)の状態で落ち着くと、状態判別処理において演算された濃度レベルが閾値の上限値DL以下を所定時間以上継続することになり、濃度レベル監視部8aは、前回の被検査体の残留物を含まない搬送状態であって、濃度レベルの変化が安定したと判別し、異物検出の開始の指示を異物判別部8bに出力する。
【0048】
図6(a)〜(d)はパイプライン3内に新たな被検査体を流動搬送させた際に、パイプライン3内が新たな被検査体で満たされた搬送状態を確認してから異物検出に移行するまでの状態遷移の一例を示している。また、図7は図6(a)〜(d)の状態遷移において演算される濃度レベルの変化を示している。
【0049】
例えば製造ラインのロット切り替えなどにより被検査体の種類を変更した場合には、図6(a)→図6(b)→図6(c)→図6(d)の流れで状態が逐次遷移する。そして、パイプライン3内に新たな被検査体が十分に流動搬送されて図6(d)の状態で落ち着くと、状態判別処理において演算された濃度レベルが閾値範囲DS内に所定時間t以上継続して収まることになり、濃度レベル監視部8aは、パイプライン3内が今回検査対象となる被検査体で満たされた搬送状態であって、濃度レベルの変化が安定したと判別し、異物検出の開始の指示を異物判別部8bに出力する。
【0050】
そして、上述した状態判別処理により、濃度レベルの変化が安定したと判別(パイプライン3内に前回の被検査体の残留物を含まない搬送状態と判別、又はパイプライン3内が今回検査対象となる被検査体で満たされた搬送状態と判別)すると、被検査体の異物検出を開始する(ST3)。
【0051】
被検査体の異物検出が開始されると、X線検出センサ5bから出力されるX線データに画像処理を施して得られる異物強調画像と、予め設定された異物判別用の閾値とを比較し、この比較結果に基づいて被検査体への異物混入の有無による異物判別処理がなされ(ST4)、この異物判別処理の結果に応じて排出制御部が切替弁部4の三方バルブ4aと切替バルブ4bを制御する。これにより、良品と判別された被検査体が良品吐出用パイプ3eに吐出され、不良品と判別された異物を含む被検査体がNG吐出用パイプ3cに吐出される。
【0052】
そして、被検査体の異物検出が終了したか否かを判別し(ST5)、被検査体の異物検出が終了すると、搬送手段としてのパイプライン3による被検査体の流動搬送が停止するとともに、X線発生部からのX線の照射が停止する(ST6)。
【0053】
このように、本例のX線異物検出装置は、被検査体の異物検出を行う前(異物検出の終了後を含む)に、パイプライン3(検出用パイプ3b)内の搬送状態を監視し、濃度レベルの変化が安定した状態、すなわちパイプライン3内の搬送状態が安定した状態で異物検出を開始するので、前回の被検査体の残留物の影響を受けずに異物検出を開始でき、正確な異物検出を行うことができる。
【0054】
具体的に、パイプライン3内の清掃を行った場合には、濃度レベルの変化が安定した状態として、パイプライン3内に前回の被検査体の残留物が無い状態で被検査体の異物検出を開始することができる。また、パイプライン3内に継続して異なる被検査体を流動搬送した場合には、濃度レベルの変化が安定した状態として、パイプライン3内に被検査体が十分に満たされた状態で被検査体の異物検出を開始することができる。
【0055】
また、濃度レベル監視部8aが演算する濃度レベルとして、X線検出部6の素子全体(又は素子の一部)の所定時間内における濃度データによる濃度レベルの積算値の変化量を用いれば、検出用パイプ3bを含め、被検査体を搬送するパイプライン3の断面形状を問わずに使用することができる。特に、X線が透過する検出位置において、放射状に照射されるX線が検出用パイプ3bを透過する透過長さが位置によって異なる断面円形のパイプを検出用パイプ3bとして使用した場合であっても、濃度レベル監視部8aが演算する濃度レベル(濃度積算値)が安定するので、検出用パイプ3b内の残留物の有無を含めた搬送状態を高精度に監視することができる。
【0056】
ところで、上述した実施の形態では、搬送手段としてパイプライン3を使用したX線異物検出装置の構成を例にとって説明したが、ベルトコンベアを搬送手段として使用したX線異物検出装置にも同様の効果を奏する。例えば、ベルトコンベアによって搬送されるミンチなどの粘着性のある被検査体を検査する場合などベルトに被検査体の残留物が付着し易いとき、特に有効である。また、濃度レベルの変化が安定した状態から被検査体の異物検出を開始するので、搬送開始時の被検査体の層厚やパイプ内の密度が不安定で検査結果に影響するような場合であっても、正確な異物検出を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 X線異物検出装置
2 筐体
3 パイプライン(搬送手段)
4 切替弁部
5 X線発生部
6 X線検出部
7 操作部
8 制御部
8a 濃度レベル監視部
8b 異物判別部
8c 排出制御部
9 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段(3)により搬送される被検査体にX線を照射し、そのX線透過量に基づいて前記被検査体に混入している異物を検出するX線異物検出装置(1)において、
前記X線透過量による濃度レベルの変化を監視し、該濃度レベルの変化が安定したときに前記被検査体の異物検出の開始を指示する濃度レベル監視部(8a)を備えたことを特徴とするX線異物検出装置。
【請求項2】
前記濃度レベル監視部(8a)は、前記濃度レベルが予め設定される閾値以下のレベルで所定時間継続して前記濃度レベルの変化が安定したときに、前記被検査体の異物検出の開始を指示することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。
【請求項3】
前記濃度レベル監視部(8a)は、前記濃度レベルが予め設定される閾値範囲内に所定時間継続して収まって前記濃度レベルの変化が安定したときに、前記被検査体の異物検出の開始を指示することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。
【請求項4】
前記搬送手段(3)がパイプラインからなり、
前記濃度レベル監視部(8a)は、前記濃度レベルが、前記被検査体を透過するX線を検出するX線検出部の各素子毎の所定時間内における濃度レベルの積算値の変化が安定したときに、前記被検査体の異物検出の開始を指示することを特徴とする請求項1記載のX線異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−185069(P2012−185069A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49150(P2011−49150)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)
【Fターム(参考)】