説明

X線発生装置及び照射ユニット

【課題】 保守作業の簡略化を図るX線発生装置及び照射ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】 X線管及び電圧発生部を有する照射ユニット3をユニット装着部34に着脱自在に装着する構成とすることで、照射ユニット3の着脱を容易とし、X線管の寿命、電圧発生部の故障等の不具合が生じた場合には、照射ユニット3の交換、着脱を短時間で実施することを可能とする。これにより、保守作業の簡略化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を放射するX線発生装置及び照射ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線を出射するX線管を有するX線発生装置は、例えばIC(集積回路)、LCD(液晶表示装置)、PDP(プラズマディスプレイパネル)等の製造分野を始めとした幅広い分野において、静電気を除電する除電(静電気除去)装置として採用され、空気などの気体にX線を照射してイオンガスを生成し、被対象物の除電を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−6859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術では、長年の使用等により、X線管及びこのX線管を駆動させる電圧発生部等の保守作業が必要となることがあり、保守作業の簡略化が求められている。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、保守作業の簡略化を図るX線発生装置及び照射ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるX線発生装置は、X線を放射するX線管及びこのX線管を駆動させる電圧発生部を有する複数の照射ユニットと、照射ユニットに電力供給する電源と照射ユニットとを電気的に接続するコネクタと、一方向に延びる中空のバー状を成し、X線管、電圧発生部及びコネクタを収容する筐体と、を備え、複数の照射ユニットを筐体の長手方向に沿って並設させる複数のユニット装着部を有し、照射ユニットは、ユニット装着部に着脱自在に装着されていることを特徴としている。
【0006】
また、本発明による照射ユニットは、X線を放射するX線管と、このX線管を駆動させる電圧発生部と、を備え、上記ユニット装着部に着脱自在に装着されることを特徴としている。
【0007】
このようなX線発生装置及び照射ユニットによれば、X線管及び電圧発生部を有する照射ユニットが筐体のユニット装着部に着脱自在に装着されるため、照射ユニットの着脱が容易となり、X線管の寿命、電圧発生部の故障等の不具合が生じた場合には、照射ユニットの交換、着脱を短時間で実施することができる。これにより、保守作業の簡略化が可能となる。
【0008】
ここで、筐体は、ユニット装着部が形成された筐体本体を有し、照射ユニットは、筐体本体と共に筐体の外壁を構成するユニットカバーを備えた構成が挙げられる。
【0009】
また、ユニットカバーには、X線管から放射されたX線を筐体外に出射する出射開口部と、ユニット装着部に固定されるフランジ部と、が設けられ、照射ユニットは、フランジ部とユニット装着部とが面接触して固定されていると、X線管で発生した熱がユニットカバーに伝達され、ユニットカバーに伝達された熱がフランジ部を通じて面接触で効果的に筐体本体に伝達され、放熱が効率良く行われる。これにより、X線管の温度を適正に維持することが可能となり、X線発生装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、筐体本体には、ユニット装着部として、フランジ部の形状にならう凹部が形成され、ユニットカバーの外面は筐体本体の外面と略面一であると、凹部を形成する壁体とフランジ部とを接触させることにより、ユニットカバーと筐体本体との接触面積を増加させることが可能となり、放熱効率を向上させることができる。また、フランジ部の形状にならう凹部が形成されているため、この凹部がガイド機能を果たし、照射ユニットの位置決めが容易とされる。また、筐体の外面が面一となるので、取扱いが容易となる。
【0011】
また、筐体は、角筒状を成し、ユニットカバーは、出射開口部が形成された前壁部と、この前壁部に略直交すると共に互いに対向する一対の側壁部と、を有し、筐体本体には、ユニット装着部として、ユニットカバーの側壁部の形状にならう切欠き形状の凹部が形成されていると、ユニットカバーの側壁部を掴むことで、照射ユニットの筐体本体に対する脱着が容易となり、保守作業が一層簡略化される。
【0012】
また、照射ユニットは、ユニットカバーを含みX線管及び電圧発生部を保護する保護ケースと、コネクタと電気的に接続されるソケットと、を備え、保護ケースは、筐体の長手方向における外壁を構成しソケットを外面に固定するソケット固定壁と、筐体の長手方向において、ソケット固定壁より外方に突出するガイド壁とを有していることとしていると、照射ユニットを筐体に装着する際に、配線がガイド壁によって、ユニットカバーと反対側に案内され、配線が筐体と照射ユニットとの間に挟まれることが防止される。これにより、配線の損傷を防止することができると共に配線をスムーズに筐体内に収容することが可能となる。
【0013】
また、本発明のX線発生装置は、X線を放射するX線管及びこのX線管を駆動させる電圧発生部を有する複数の照射ユニットと、一方向に延びる中空のバー状を成し、X線管及び電圧発生部を収容する筐体と、を備え、複数の照射ユニットを筐体の長手方向に沿って並設させる複数のユニット装着部を有し、照射ユニットは、ユニット装着部に装着されていることを特徴としている。
【0014】
このようなX線発生装置によれば、X線管及び電圧発生部を有する照射ユニットが、バー状の筐体に並設されているため、並設された複数のX線管により長手方向のX線の照射範囲が拡大されると共に、各照射ユニットの間隔を容易に一定とすることが可能となりX線発生装置の取扱いが容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のX線発生装置及び照射ユニットによれば、照射ユニットの交換、着脱を短時間で実施できるため、X線発生装置における保守作業の簡略化が図られるX線発生装置及び照射ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明によるX線発生装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1は、本発明の第1実施形態に係るX線発生装置を下方から示す斜視図、図2は、図1に示すX線発生装置の分解側面図、図3は、図2中のX線管の断面図、図4は、図1中の照射ユニットを下方から示す斜視図、図5は、図4に示す照射ユニットの内部を示す平面図、図6は、図5示す照射ユニットのVI−VI矢視図、図7は、図1に示すユニット装着部を下方から示す斜視図である。なお、以下の説明において、「上」、「下」等の方向を示す語については各図の状態において言うものとする。
【0017】
図1に示すX線発生装置1は、例えば、大型ガラス等を取り扱う製造ラインにおいて、クリーンルーム等に設置され、X線を照射して大型ガラスの除電を行うフォトイオナイザ(光照射式静電除去装置)として採用されるものである。そして、X線発生装置1は、被対象物である大型ガラスの上方に設置され、上方から下方へX線を照射する。このX線発生装置1は、X線を出射するX線管2(図2及び図3参照)を備えた照射ユニット3を複数(本実施形態では3個)有し、これらの照射ユニット3を並設するバー状の筐体4を具備している。そして、X線発生装置1は、被対象物の搬送方向(図2における紙面垂直方向)に対して、筐体4の長手方向Lが直交するように配置される。
【0018】
先ず、図3に示すX線管2について詳説する。このX線管2は、コバールガラス製の円筒状バルブ11を有し、このバルブ11の末端(図示上端)には、排気管12を有するステム13が形成されている。排気管12は、組立終了後にX線管2内を排気して真空状態にするために利用される。また、バルブ11の開放端には、円筒状を成すコバール金属製の出力窓保持部14が融着接続されている。この出力窓保持部14には、その中央開口14aを塞ぐように円板状の出力窓15がAgロウ付け等により固定され、出力窓15の内面には、電子ビームの衝突によりX線を発生させるターゲット16が蒸着されている。また、出力窓保持部14の下端には、外方に突出する円環状の鍔部20が設けられている。
【0019】
更に、ステム13には2本のステムピン17,17が挿着され、バルブ11内には、所定の電圧で電子ビームを放出するカソードとしてのフィラメント18が設けられ、このフィラメント18は、ステムピン17の先端(図示下端)に固定されている。これらのステムピン17のうちの一方のステムピンには、円筒状を成すステンレス製のフォーカス19がフィラメント18を囲繞するようにして固定されている。このような構成を有するX線管2の出射窓保持部14は、コバール金属により形成されているので熱伝導性及び導電性が良好であると共に、アースされた筐体4に電気的に接続されるので接地電位に維持されている。
【0020】
そして、X線管2のステムピン17に、後述する電圧発生部から−9.5kVの高電位を供給し、接地電位のターゲット16から電子ビームを出射する。このとき、電子ビームの衝突によりターゲット16からX線が放射される。なお、使用時において、X線管2は高温になっており、X線の発生効率の維持やターゲット16の破損防止のために、ターゲット16の熱を外部に適切に逃がす必要がある。
【0021】
次に、このように構成されたX線管2を備えた照射ユニット3について詳説する。この照射ユニット3は、図4に示すように、箱型を成す保護ケース21を有し、この保護ケース21内に、図5及び図6に示すように、X線管2、このX線管2を駆動させる電圧発生部22及び回路基板23を収容している。
【0022】
保護ケース21は、図4に示すように、図示下側の壁体を構成すると共に筐体4(図1参照)の壁体の一部を構成するユニットカバー24と、このユニットカバー24に直交すると共に、長手方向Lに対向する一対の壁体25c,25dを有するベースプレート25と、ユニットカバー24に対向する壁体32a及びこの壁体32aに直交する共に長手方向Lに延在する一対の壁体32b,32bを有する保護カバー32と、を具備している。
【0023】
ユニットカバー24は、熱伝導性の良好な金属から構成され、矩形平板状を成すユニットカバー本体(前壁部)24aを備えている。このユニットカバー本体24aの長手方向Lの両端部には、照射ユニット3を筐体4に着脱自在に固定するためのフランジ部24bがユニットカバー本体24aと面一を成し延出するように各々設けられ、このフランジ部24bには、照射ユニット3を固定するためのネジ44(図1参照)を挿通させる開口部24cが設けられている。また、ユニットカバー本体24aの一方の端部近傍でX線管2に対向する位置には円形の開口が形成され、この開口はX線管2からのX線を筐体4外へ出射する出射開口部24dとされている。更に、ユニットカバー本体24aの幅方向(長手方向Lに直交する方向;図5における上下方向)の端部には、ユニットカバー本体24aに直交すると共に互いに対向する一対の掴み部(側壁部)24eが立設されている。照射ユニット3の筐体4への脱着の際には、この掴み部24eを掴んで照射ユニット3を抜き差しする。また、掴み部24eの内面には、図5に示すように、保護カバー32を係合するための複数の凸部24fが形成されている。
【0024】
ベースプレート25は、図5及び図6に示すように、ユニットカバー24の内面に固定され、回路基板23を搭載するものである。このベースプレート25は長手方向Lに延在し、ユニットカバー本体24aの内面に面接触するベースプレート本体25aを備え、このベースプレート本体25aには、図6に示すように、ユニットカバー24の出射開口部24dに対応する位置に、開口25bが形成されている。この開口25bの径は、出射開口24dの径より大きくされている。
【0025】
また、ベースプレート本体25aの長手方向Lの両端部は、図5及び図6に示すように、図6における上方に屈曲されて、ベースプレート本体25aに直交する壁体25c,25dを形成している。更に、開口25bから遠い方の壁体(固定壁)25dの外面には、図4〜図6に示すように、筐体4外の外部電源(不図示)と電気的に接続するためのソケット26が取り付けられている。ここで、保護カバー32を構成する壁体32b及びユニットカバー本体24aは長手方向Lにおいて壁体25dの外面から突出している。この壁体25dより突出する壁体32b及びユニットカバー本体24aの部分が本発明のガイド壁を構成している。そして、壁体25dに固定されたソケット26は、ユニットカバー本体24a、対向する壁体32b,32b及び壁体25dにより形成されるガイド空間S内に位置している。筐体4に対して照射ユニット3を装着するには、ソケット26と、筐体4の内部に備えられた配線40(後述する)とを電気的に接続した後、照射ユニット3を筐体4に挿入して固定する。その際、壁体25dから突出するユニットカバー本体24a、壁体32b,32bにより、配線40がガイドされて、配線40の保護カバー32の外側への回りこみが防止される。このため、配線40が筐体4の内面と保護カバー32との間で挟み込まれることが防止され、配線40の破損が予防されると共に、照射ユニット3の筐体4への装着作業が容易になる。また、ソケット26を接続口がユニットカバー本体24aと反対の方向(ユニットカバー本体24a、壁体32b,32bと対向しない方向)を向くように固定するので、更に配線40の破損が予防され、装着作業が容易となる。
【0026】
図6に示すように、ベースプレート25には、回路基板23をベースプレート本体25aと離間して支持するための複数(本実施形態では4個)の支持片25eが立設され、この支持片25eに固定された回路基板23とユニットカバー24との間には、絶縁空間27が形成されている。また、回路基板23はソケット26と電気的に接続されている。更に、回路基板23は、複数のX線管2のX線量を略一定とすべく調整されたものとされている。
【0027】
電圧発生部22は、回路基板23上に搭載され、−9.5kVの高電位をステムピン17に供給して、X線管2を駆動させるものである。先ず、電圧発生部22内の低電圧発生部位で−1kVまで電位を上げ、次に高電圧発生部位で−9.5kVまで電位を上げている。そして、電圧発生部22の高電圧発生部位からの配線28は、X線管2のステムピン17に結線され、この状態で、X線管2のバルブ11には、ステムピン17を覆う円筒状のキャップ29が装着されている。なお、キャップ29内には、配線28とステムピン17との結線後、シリコン樹脂Pが充填される。
【0028】
図5及び図6に示すように、照射ユニット3は、X線管2をユニットカバー24に固定するためのX線管ホルダ30を備えている。X線管ホルダ30には、矩形の板材から形成され、X線管2を挿通させる開口30aと、X線管ホルダ30をネジ止め固定するための開口30bとが設けられている。そして、X線管2は、ベースプレート25の開口25b内に、出力窓保持部14の鍔部20が配置され、この鍔部20は、X線管ホルダ30によって上方から押圧され、鍔部20の下端面が、ユニットカバー24の出射開口部24dを形成する周縁部の内面(図示上側の面)に面接触してネジ固定される。
【0029】
保護カバー32は、アルミ等から形成され、図4〜図6に示すようにユニットカバー24上に配置されたX線管2、電圧発生部22及び回路基板23を保護するものである。保護カバー32を構成する壁体32bの下端部には、図5に示すように、ユニットカバー24の掴み部24eの凸部24fに係合する複数の開口32cを有している。保護カバー32は、その開口32cが凸部24fに各々係合し着脱可能にユニットカバー24に装着されている。
【0030】
次に、このように構成された照射ユニット3を着脱可能に装着する筐体4について詳説する。この筐体4は、図2に示すように、一方向(図示左右方向;長手方向L)に延びる中空の箱型を成し、複数の照射ユニット3を長手方向Lに沿って並設させる複数のユニット装着部34を有し、内部に照射ユニット3のX線管2及び電圧発生部22、照射ユニット3と外部電源とを電気的に接続するための配線40及びこの配線40の一方の端部に設けられソケット26に電気的に接続されるコネクタ41を収容している。ここで「中空」とは、筐体4の内部に少なくとも照射ユニット3の一部を収容する空間を有していることを指し、各照射ユニット3を収容する空間が連続して形成されているか否かは問わない。そして、筐体4は、ユニット装着部34が形成された筐体本体35と、この筐体本体35のユニット装着部34に装着された上記照射ユニット3のユニットカバー24によって、その外壁が構成されている。
【0031】
筐体本体35は、下部側を構成するヘッドカバー36と、上部側を構成する筐体ベース37とを備えている。具体的には、筐体ベース37は、図1及び図2に示すように、筐体本体35の上側の壁体37a及びこの壁体37aに直交すると共に長手方向Lに対向する一対の壁体37b,37bを有し、ヘッドカバー36は、筐体本体35の下側の壁体36a及びこの壁体36aに直交すると共に長手方向Lに延在して互いに対向する一対の壁体36b,36bを有する構成とされている。
【0032】
筐体ベース37の壁体37bには、図1に示すように、L字型の取付部材38が固定されている。取付部材38は、ネジを挿通するための開口部38aを有し、X線発生装置1を所定の設置面にネジ固定する。また、図2に示すように、図示左側の壁体37bは、外部電源と電気的に接続される端子39を有し、この端子39は、配線40、コネクタ41を介してソケット26と電気的に接続されている。そして、筐体ベース37とヘッドカバー36とが連結固定されることにより、筐体本体35が構成されている。
【0033】
次に、ヘッドカバー36に形成されたユニット装着部34について説明する。ユニット装着部34は、図7に示すように、ユニットカバー24に対応する形状とされ、壁体36aに、ユニットカバー本体24aに対応する大きさの矩形の開口43aが形成され、この開口43aの長手方向Lの両側に、フランジ24bが収容配置される凹部43b,43bが形成され、壁体36bに、掴み部24eに対応する形状の切欠き部(切欠き形状の凹部)43cが形成されている。このユニット装着部34は、長手方向Lにおいて照射ユニット3の向きを逆にしても装着が可能である。
【0034】
凹部43bは、図8に示すように、フランジ24bの厚さに対応する深さとされ、フランジ24bの上側の面と面接触する設置面43dを有し、この設置面43dには照射ユニット3を固定するための雌螺子部43eが形成されている。そして、図1に示すように、ネジ44をフランジ24bの開口に挿通して雌螺子部43eに螺合することで、照射ユニット3がユニット装着部43に着脱自在に装着されている。図1に示すように、ここでは、左側及び中央のユニット装着部43に対して、照射ユニット3の出射開口部24dを左側に配置して照射ユニット3を装着し、右側のユニット装着部43に対して、照射ユニット3の出射開口部24dを右側に配置して照射ユニット3を装着している。この照射ユニット3の装着状態において、フランジ部24bは、設置面43dに面接触していると共に、フランジ部24bを含むユニットカバー24の外面は、筐体本体35の外面と略面一となっている。更に、複数の出射開口部24dの間隔は、略同じとなっている。これにより、長手方向Lに亘って一様にX線を照射することが可能な構成となっている。
【0035】
このように、X線管2及び電圧発生部22を有する照射ユニット3が、バー状の筐体4に並設されているため、並設された複数のX線管2により長手方向LのX線の照射範囲が拡大されると共に、各照射ユニット3の間隔を容易に一定とすることが可能となりX線発生装置1の取扱いが容易とされている。
【0036】
このようなX線発生装置1では、外部電源により、端子39、配線40、コネクタ41及びソケット26を介して、照射ユニット3に電力が供給され、X線管2からX線が放射されて出射開口部24dから筐体4外へ出射される。これにより、周囲の空気がイオン化され、被対象物の除電を行うことができる。また、X線管2が所定のX線量になるように調整された回路基板23を備えているため、X線管2の性能にばらつきがある場合においても、各照射ユニット3から照射されるX線量を略同一とすることができる。
【0037】
ここで、X線管2の寿命等により照射ユニット3の交換等の保守作業が必要となった場合、照射ユニット3を固定しているネジ44を緩め、ユニットカバー24の掴み部24eを掴んで、照射ユニット3を下方に引き出した後、コネクタ41をソケット26から取外して、照射ユニット3と筐体4とを分離し、照射ユニット3の交換を行う。
【0038】
このように本実施形態のX線発生装置1及び照射ユニット3では、照射ユニット3がユニット装着部34に着脱自在に装着されているため、照射ユニット3の着脱が容易となり、X線管2の寿命、電圧発生部22の故障等の不具合が生じた場合には、照射ユニット3の交換、着脱を短時間で実施することができる。これにより、保守作業が簡略化されている。また、フランジ部24bの形状にならう凹部43bが形成されているため、この凹部43bがガイド機能を果たし、照射ユニット3の位置決めが容易とされている。
【0039】
また、X線発生装置1にあっては、筐体4は、ユニット装着部34が形成された筐体本体35を有し、照射ユニット3は、筐体本体35と共に筐体4の外壁を構成するユニットカバー24を備え、ユニットカバー24には、X線管2から放射されたX線を筐体4外に出射する出射開口部24dと、ユニット装着部24dに固定されるフランジ部24bと、が設けられ、照射ユニット3は、フランジ部24bとユニット装着部34とが面接触して固定されているため、X線管2で発生した熱がユニットカバー24に伝達され、ユニットカバー24に伝達された熱がフランジ部24bを通じて面接触で効果的に筐体本体35に伝達され、放熱が効率良く行われる。これにより、X線管2の温度が適正に維持され、X線発生装置1の信頼性が向上されている。
【0040】
また、筐体本体35には、ユニット装着部34として、フランジ部24bの形状にならう凹部43bが形成され、ユニットカバー24の外面は筐体本体35の外面と略面一であるため、凹部43bを形成する設置面43dとフランジ部24bとを接触させることにより、ユニットカバー24と筐体本体35との接触面積が増加し、放熱効率が向上されている。また、筐体4の外面が面一となるので、取扱いが容易されている。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態に係るX線発生装置51について、図9を参照しながら説明する。この第2実施形態のX線発生装置51が第1実施形態のX線発生装置1と違う点は、フランジ部54b及びこのフランジ部54bが配置される凹部53bの位置を変えた点である。
【0042】
照射ユニット55は、ユニットカバー54の掴み部54eの長手方向Lにおける両端部にフランジ部54b,54bを備えている。また、筐体56は、長手方向Lに延在する壁体56bに凹部53bを備えている。そして、照射ユニット55は、そのフランジ部54bが筐体56の凹部53bに配置されて、ネジ57によりユニット装着部53に着脱自在に固定されている。このように構成しても第1実施形態のX線発生装置1及び照射ユニット3と同様な作用・効果を奏すると共に、ネジ57が筐体56の側面を構成する壁体56b側に設置されているため、ネジ57の着脱が容易となり、作業性が向上されている。
【0043】
次に、本発明の第3実施形態に係るX線発生装置について、図10を参照しながら説明する。この第3の実施形態のX線発生装置が第1実施形態のX線発生装置1と違う点は、ユニットカバー24のフランジ部24bに対する筐体の取り付け構造を変更した点である。具体的には、凹部61を、雌螺子部62aが形成された第1の壁部62と、フランジ部24bにならう形状の切欠き部63aが形成された第2の壁部63とを張り合わせた2重板64により構成した点である。そして、凹部61にユニットカバー24のフランジ部24bが配置され、ネジ44が雌螺子部62aに螺合することで、照射ユニットが着脱可能にユニット装着部に装着されている。このように構成しても第1実施形態のX線発生装置1及び照射ユニット3と同様な作用・効果を奏する。なお、図11に示すように、第2の壁部を無くし、構造をシンプルにしても良い。また、図12に示すように、雌螺子部62aが形成された第1の壁部62に代えて、開口部65aが形成された第1の壁部65を備え、ナット66を第1の壁部65の内面(図示上側)に溶接固定し、第1の壁部65及び第2の壁部63により形成される凹部61にユニットカバー24のフランジ部24bを配置し、ネジ44をナット66に螺合するようにしても良い。
【0044】
更に、照射ユニットを溶接等によりユニット装着部に固定しても良い。このようなX線発生装置では、X線管及び電圧発生部を有する照射ユニットが、バー状の筐体に並設されるため、並設された複数のX線管により長手方向のX線の照射範囲が拡大されると共に、各照射ユニットの間隔を容易に一定とすることが可能となりX線発生装置の取扱いが容易とされる。
【0045】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態において、照射ユニット3は、フランジ部24bを備える構造としているが、フランジ部24bを備えず、着脱可能に筐体に装着される構造としても良い。
【0046】
なお、X線発生装置の設置方向は限定されず、その他の方向にX線を照射するように、設置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線発生装置を下方から示す斜視図である。
【図2】図1に示すX線発生装置の分解側面図である。
【図3】図2中のX線管の断面図である。
【図4】図1中の照射ユニットを下方から示す斜視図である。
【図5】図4に示す照射ユニットの内部を示す平面図である。
【図6】図5示す照射ユニットのVI−VI矢視図である。
【図7】図1に示すユニット装着部を下方から示す斜視図である。
【図8】ユニット装着部の要部をフランジ部と共に示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るX線発生装置を下方から示す斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るX線発生装置のユニット装着部の要部をフランジ部と共に示す断面図である。
【図11】他のユニット装着部の要部をフランジ部と共に示す断面図である。
【図12】更に他のユニット装着部の要部をフランジ部と共に示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1,51…X線発生装置、2…X線管、3,55…照射ユニット、4,56…筐体、22…電圧発生部、24,54…ユニットカバー、24a…ユニットカバー本体(前壁部)、24b,54b…フランジ部、24d…出射開口部、24e,54e…掴み部(側壁部)、35…筐体本体、42…コネクタ、43,53…ユニット装着部、43b,53b,61…凹部、43c…切欠き部(切欠き形状の凹部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を放射するX線管及びこのX線管を駆動させる電圧発生部を有する複数の照射ユニットと、
前記照射ユニットに電力供給する電源と前記照射ユニットとを電気的に接続するコネクタと、
一方向に延びる中空のバー状を成し、前記X線管、前記電圧発生部及び前記コネクタを収容する筐体と、を備え、
前記筐体は、前記複数の照射ユニットを前記筐体の長手方向に沿って並設させる複数のユニット装着部を有し、
前記照射ユニットは、前記ユニット装着部に着脱自在に装着されていることを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記ユニット装着部が形成された筐体本体を有し、
前記照射ユニットは、前記筐体本体と共に前記筐体の外壁を構成するユニットカバーを備えたことを特徴とする請求項1記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記ユニットカバーには、前記X線管から放射されたX線を前記筐体外に出射する出射開口部と、
前記ユニット装着部に固定されるフランジ部と、が設けられ、
前記照射ユニットは、前記フランジ部が前記ユニット装着部に面接触して固定されていることを特徴とする請求項2記載のX線発生装置。
【請求項4】
前記筐体本体には、前記ユニット装着部として、前記フランジ部の形状にならう凹部が形成され、
前記ユニットカバーの外面は前記筐体本体の外面と略面一であることを特徴とする請求項2又は3記載のX線発生装置。
【請求項5】
前記筐体は、角筒状を成し、
前記ユニットカバーは、前記出射開口部が形成された前壁部と、この前壁部に略直交すると共に互いに対向する一対の側壁部と、を有し、
前記筐体本体には、前記ユニット装着部として、前記ユニットカバーの側壁部の形状にならう切欠き形状の凹部が形成されていることを特徴とする請求項2〜4記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記照射ユニットは、前記ユニットカバーを含み前記X線管及び前記電圧発生部を保護する保護ケースと、
前記コネクタと電気的に接続されるソケットと、を備え、
前記保護ケースは、前記筐体の長手方向における外壁を構成し前記ソケットを外面に固定するソケット固定壁と、
前記筐体の長手方向において、前記ソケット固定壁より外方に突出するガイド壁とを有していることを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載のX線発生装置。
【請求項7】
X線を放射するX線管と、
このX線管を駆動させる電圧発生部と、を備え、
請求項1〜6の何れか一項に記載されたユニット装着部に着脱自在に装着される照射ユニット。
【請求項8】
X線を放射するX線管及びこのX線管を駆動させる電圧発生部を有する複数の照射ユニットと、
一方向に延びる中空のバー状を成し、前記X線管及び前記電圧発生部を収容する筐体と、を備え、
前記筐体は、前記複数の照射ユニットを前記筐体の長手方向に沿って並設させる複数のユニット装着部を有し、
前記照射ユニットは、前記ユニット装着部に装着されていることを特徴とするX線発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−338965(P2006−338965A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160578(P2005−160578)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】