説明

X線発生装置

【課題】 X線のノイズを低減させて、かつ正規のX線が制限されることなくX線を発生させることができるX線発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 陰極11からの電子ビームBのターゲット12への衝突によりX線を発生させるX線管1において、ターゲット12の陰極11側とは反対側のX線発生側には、ターゲット12に近接して遮蔽アパーチャ19を配設しており、この遮蔽アパーチャ19はX線通過孔19aを有している。X線検出器2の有効面積Sに相当したX線有効照射領域Tを少なくとも通すようにX線通過孔19aを形成している。このように形成することで、X線のノイズを低減させて、かつ正規のX線が制限されることなくX線を発生させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工業分野、医療分野などに用いられるX線発生装置に係り、特に、X線発生装置内に配置されたターゲットから発生したX線を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線発生装置では、電子銃を構成する陰極(電子源)から発生した電子ビームを加速させてターゲットに衝突することでX線を発生させる。X線を発生させる際には、ターゲットに電子ビームを衝突させるまでに、光学の集束レンズと同様に集束コイル(集束手段)によって電子ビームを集束させる。近年において、実用上の理由により分解能の選択を可能とするために、複数の集束コイルを備えている。なお、集束コイルには、電子ビームを絞る絞り孔を有したアパーチャを配置している(例えば、特許文献1参照)。したがって、図6に示すように、電子ビームBの一部はアパーチャ101の絞り孔102を通ってターゲット103に衝突するが、残りはアパーチャ101に衝突してアパーチャ101からもX線が発生する。また、集束コイル104内にパイプ(『ライナーチューブ』とも言う)105が収容されており、電子ビームBはこのパイプ105内をターゲット103に向かって進むが、電子ビームBの一部がパイプ105に衝突してパイプ105からもX線が発生する。
【0003】
しかしながら、アパーチャやパイプから発生したX線がアパーチャを透過して、X線画像にノイズとなって重畳する場合がある。このようなノイズを低減させるために、図7に示すように、アパーチャ101の厚みを厚くすることが考えられる。しかし、電子ビームBが絞り孔102を通っている間も電子ビームBは広がっており、絞り孔102の内側面がアパーチャ101に対して垂直になっているので、広がった電子ビームBの一部が絞り孔102の内側面に衝突してX線が発生する場合がある。このようにアパーチャ101の厚みを厚くしても、絞り孔102の内側面に衝突して発生したX線が絞り孔102を通って、X線画像にノイズとなって重畳する。
【特許文献1】特開2003−344596号公報(第3−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなX線を制限するアパーチャを別に備えると、X線検出器(X線検出手段)で検出すべき、正規のX線までが上述したアパーチャによって制限されて、X線検出器で正確に検出することができなくなってしまう。
【0005】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、X線のノイズを低減させて、かつ正規のX線が制限されることなくX線を発生させることができるX線発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、電子ビームを発生させる電子源と、前記電子源に対向配置され、電子源からの電子ビームの衝突によりX線を発生させるターゲットとを備えたX線発生装置であって、前記ターゲットの電子源側とは反対側のX線発生側に通過部材を配設し、この通過部材は、前記発生して照射されたX線を検出するX線検出手段の有効面積に相当したX線有効照射領域を少なくとも通すX線通過孔を有することを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、電子源から発生した電子ビームはターゲットに衝突して、X線が発生する。発生したX線の一部は、通過部材のX線通過孔を通って、残りは通過部材のX線通過孔以外の領域に遮られる。また、X線のノイズも通過部材のX線通過孔以外の領域に遮られる。X線通過孔は、X線を検出するX線検出手段の有効面積に相当したX線有効照射領域を少なくとも通す大きさの孔であるので、X線通過孔を通ったX線の一部は、X線検出手段が検出すべき正規のX線である。したがって、正規のX線以外のノイズなどは通過部材のX線通過孔以外の領域に遮られて、正規のX線はX線通過孔を通過する。その結果、X線のノイズを低減させて、かつ正規のX線が制限されることなくX線を発生させることができる。
【0009】
上述した発明において、電子源とターゲットとの間に配置され、電子ビームを絞る絞り孔を有したアパーチャを備え、通過部材のX線通過孔の径が、そのアパーチャの絞り孔の径よりも小さくなるようにそれぞれを構成するのが好ましい(請求項2に記載の発明)。このように構成することで、従来ではアパーチャの絞り孔の径で外部に透過していたX線が、通過部材のX線通過孔の径に制限されるので、X線通過孔を通るX線のノイズをより低減させることができる。
【0010】
また、電子源とターゲットとの間に配置され、電子ビームを集束させる集束手段が、磁界を発生させて集束させるタイプの場合には、通過部材が磁性体のときには集束手段の磁場が通過部材による悪影響を受ける。したがって、通過部材を非磁性体で構成するのが好ましい(請求項3に記載の発明)。このように構成することで、集束手段の磁場が通過部材による悪影響を受けない。
【0011】
なお、本明細書は、次のようなX線撮像装置に係る発明も開示している。
【0012】
(1)X線を発生させて照射するX線発生手段と、照射されたX線を検出するX線検出手段とを備え、検出されたX線に基づいてX線画像を撮像するX線撮像装置であって、前記X線発生手段は、電子ビームを発生させる電子源と、前記電子源に対向配置され、電子源からの電子ビームの衝突によりX線を発生させるターゲットとを備え、前記ターゲットの電子源側とは反対側のX線発生側に通過部材を配設し、この通過部材は、前記発生して照射されたX線を検出するX線検出手段の有効面積に相当したX線有効照射領域を少なくとも通すX線通過孔を有することを特徴とするX線撮像装置。
【0013】
前記(1)に記載の発明によれば、X線発生手段から照射されたX線をX線検出手段が検出することで、検出されたX線に基づいてX線画像を撮像する。このX線発生手段において、発生したX線の一部は、通過部材のX線通過孔を通って、残りは通過部材のX線通過孔以外の領域に遮られるとともに、X線のノイズも通過部材のX線通過孔以外の領域に遮られる。X線通過孔は、X線を検出するX線検出手段の有効面積に相当したX線有効照射領域を少なくとも通す大きさの孔であるので、X線通過孔を通ったX線の一部は、X線検出手段が検出すべき正規のX線である。その結果、X線のノイズを低減させて、かつ正規のX線が制限されることなくX線を発生させることができる。そして、X線のノイズの低減によってX線画像に重畳するX線のノイズをも低減させることができ、また、正規のX線をX線検出手段が検出するのでS/N比のよいX線画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るX線発生装置によれば、発生したX線の一部は、通過部材のX線通過孔を通って、残りは通過部材のX線通過孔以外の領域に遮られるとともに、X線のノイズも通過部材のX線通過孔以外の領域に遮られる。X線通過孔は、X線を検出するX線検出手段の有効面積に相当したX線有効照射領域を少なくとも通す大きさの孔であるので、X線通過孔を通ったX線の一部は、X線検出手段が検出すべき正規のX線である。その結果、X線のノイズを低減させて、かつ正規のX線が制限されることなくX線を発生させることができる。
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
【0016】
図1は、実施例に係るX線管の構成を示す概略断面図であり、図2は、X線管内のターゲット以外のパイプから発生したX線のノイズの照射状況を示す概略図であり、図3は、ターゲット以外のビーム制御アパーチャから発生したX線のノイズの照射状況を示す概略図である。
【0017】
図1に示すX線管1はX線非破壊検査機器など代表されるX線撮像装置に用いられ、X線撮像装置は、X線管1と、X線管1から照射されたX線を検出するX線検出器2とを備えている。X線検出器2は、例えばイメージインテンシファイア(I.I)やフラットパネル型X線検出器(FPD)などがある。X線管1から照射されたX線をX線検出器2が検出することで、検出されたX線に基づいてX線画像を撮像する。X線管1はこの発明におけるX線発生装置に相当し、この発明におけるX線発生手段にも相当する。また、X線検出器2は、この発明におけるX線検出手段に相当する。
【0018】
X線管1は、電子ビームBを発生させる陰極(カソード)11と、この陰極11に対向配置され、陰極11からの電子ビームBの衝突によりX線を発生させるターゲット12と、陰極11とターゲット12との間に配置され、電子ビームBを集束させる2つの集束コイル13を備えている。つまり、本実施例では、集束コイル13を2段に設けている。本明細書中では、陰極11側の集束コイル13を『第1集束コイル131』とし、ターゲット12側の集束コイル13を『第2集束コイル132』とする。なお、特に断りがないときには『集束コイル13』で統一して以下を説明する。
【0019】
本実施例では、陰極11として6ホウ化ランタン(LaB6)や6ホウ化セリウム(CeB6)などで形成された単結晶あるいは焼結体のチップを用いている。このチップは、タングステンで形成されたフィラメントと比較すると消耗や切断に強い。陰極11は、この発明における電子源に相当し、ターゲット12は、この発明におけるターゲットに相当する。
【0020】
集束コイル13は円環状に構成されており、その中心には電子ビームBを絞る絞り孔14を有したビーム制御アパーチャ15を配設している。図1〜図3の各図では、第2集束コイル132のビーム制御アパーチャ15のみを図示する。各集束コイル13は、図示を省略する各レンズ電源から集束コイル13に電流を流すことで磁界を発生させて、光学の集束レンズと同様に集束コイル13は電子ビームBを集束させる。なお、集束コイル13は、それに流す電流、すなわち励起強度を変えることで電子ビームBの焦点距離を自在に変えることができる。絞り孔14は、この発明における絞り孔に相当し、ビーム制御アパーチャ15は、この発明におけるアパーチャに相当する。
【0021】
陰極11と第1集束コイル131との間には、陰極11から第1集束コイル131に向かう電子ビームBの照射方向に、ウェネルト電極16,陽極(アノード)17を順に配設している。なお、陽極17は、通常では接地電位となっている。
【0022】
ウェネルト電極16は、陽極17によって引き出される陰極11からの電子ビームBの電子ビーム量(『エミッション電流値』とも呼ばれる)を制御するもので、ウェネルト電極16の電位によって電子ビーム量が変化する。陽極17は、陰極11から発生する電子ビームBを引き出す。この陽極17による引き出しで電子ビームBはターゲット12に向かって加速する。上述したこれらの陰極11とウェネルト電極16と陽極17とで電子銃を構成している。また、集束コイル13内にパイプ18を収容しており、電子ビームBはこのパイプ18内をターゲット12に向かって進む。
【0023】
ターゲット12の陰極11側とは反対側のX線発生側には、ターゲット12に近接して遮蔽アパーチャ19を配設している。この遮蔽アパーチャ19は、X線通過孔19aを有している。遮蔽アパーチャ19は、この発明における通過部材に相当し、X線通過孔19aは、この発明におけるX線通過孔に相当する。
【0024】
ビーム制御アパーチャ15の絞り孔14の径(直径)をφ1とし、遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19aの径(直径)をφ2とすると、遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19aの径φ2を、ビーム制御アパーチャ15の絞り孔14の径φ1よりも十分に小さく設定する。本実施例では、ビーム径を1μm程度、絞り孔14の径φ1を500μm程度とすると、X線通過孔19aの径φ2を例えば100μm程度に設定する。
【0025】
ターゲット12は、ベリリウム(Be)やアルミニウム(Al)などのX線吸収の少ない軽金属を基材とし、陰極11側(X線発生側の反対側)にタングステン(W)やモリブデン(Mo)などのX線発生の効率のよい重金属が薄膜化されて、接合あるいは成膜されている。一方、遮蔽アパーチャ19は、上述したタングステンや鉛(Pb)などの重金属で形成されている。なお、タングステンや鉛は非磁性体であるので、この非磁性体で遮蔽アパーチャ19を形成することになる。
【0026】
この他に、陰極11と第2集束コイル132との間には、図示を省略する偏向コイルを備えており、電子ビームBの照射を偏向する。そして、この偏向コイルに電流を流すことで磁界を発生させて偏向を行う。偏向コイルの配設箇所や、配設個数については特に限定されず、陰極11と第2集束コイル132との間であれば、電子ビームBの照射状況に応じて適宜変更することができる。
【0027】
次に、ターゲット12以外の箇所から発生したX線のノイズの照射状況について、図2、図3を参照して説明する。第1集束コイル131のビーム制御アパーチャ(図示省略)などによって散乱した電子ビームBが、図2に示すように、パイプ18の地点αに衝突してX線Nが発生する。一方、電子ビームBの一部が、図3に示すように、第2集束コイル132のビーム制御アパーチャ15の地点βに衝突してX線Nが発生する。パイプ18の地点αから発生したX線Nについては、図2に示すように、ビーム制御アパーチャ15の絞り孔14の径φ1(図1を参照)で決定される立体角θAの分が、ターゲット12よりも外部に漏れ出す。一方、ビーム制御アパーチャ15の地点βで発生したX線Nについては、図3に示すように、図2の立体角θAよりもさらに広い立体角θBの分が、ターゲット12よりも外部に漏れ出す。これらの漏れ出したX線Nが、ターゲット12から発生した正規のX線にノイズとなって重畳する。
【0028】
なお、X線検出器2が検出すべき正規のX線については、図1〜図3に示すX線検出器2の有効面積Sに正規のX線が少なくとも照射されていればよい。したがって、X線検出器2の有効面積Sの各端部とターゲット12のX線発生位置20とを結んで形成される領域、すなわち有効面積Sに相当したX線有効照射領域Tを少なくとも通すようにX線通過孔19aの径φ2を形成すればよい。
【0029】
本実施例の場合には、ターゲット12に近接して遮蔽アパーチャ19を配設し、ビーム径を1μm程度、X線通過孔19aの径φ2を100μm程度に設定することで、X線通過孔19aは、有効面積Sに相当したX線有効照射領域Tを少なくとも通す。また、X線通過孔19aの径φ2を、絞り孔14の径φ1の500μm程度の大きさよりも十分に小さく設定しているので、パイプ18の地点αから発生したX線Nにおける立体角θAの分のノイズ、およびビーム制御アパーチャ15の地点βで発生したX線Nにおける立体角θBの分のノイズが、遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19a以外の重金属の領域に吸収される。そして、これらのノイズの多くがX線通過孔19a以外の領域によって遮られる。
【0030】
以上のように構成されたX線管1によれば、陰極11から発生した電子ビームBはターゲット12に衝突して、X線が発生する。発生したX線の一部は、遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19aを通って、残りは遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19a以外の領域に遮られる。また、X線のノイズも遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19a以外の領域に遮られる。X線通過孔19aは、X線を検出するX線検出器2の有効面積Sに相当したX線有効照射領域Tを少なくとも通す大きさの孔であるので、X線通過孔19aを通ったX線の一部は、X線検出器2が検出すべき正規のX線である。したがって、ビーム制御アパーチャ15やパイプ18などへの衝突で発生した正規のX線以外のノイズなどは遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19a以外の領域に遮られて、正規のX線はX線通過孔19aを通過する。その結果、X線のノイズを低減させて、かつ正規のX線が制限されることなくX線を発生させることができる。
【0031】
また、X線管1を備えたX線撮像装置によれば、X線のノイズを低減させて、かつ正規のX線が制限されることなくX線を発生させることができる。そして、X線のノイズの低減によってX線画像に重畳するX線のノイズをも低減させることができ、また、正規のX線をX線検出器2が検出するのでS/N比のよいX線画像を得ることができる。
【0032】
また、本実施例では、遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19aの径φ2が、ビーム制御アパーチャ15の絞り孔14の径φ1よりも小さくなるようにそれぞれを設定している。このように設定することで、従来ではビーム制御アパーチャ15の絞り孔14の径φ1で外部に透過していたX線が、遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19aの径φ2に制限されるので、X線通過孔19aを通るX線のノイズをより低減させることができる。
【0033】
また、電子ビームBを集束させる集束コイル13が、磁界を発生させて集束させるタイプの場合には、遮蔽アパーチャ19が磁性体のときには集束コイル13の磁場(『ポールピース磁場』とも呼ばれている)が遮蔽アパーチャ19による悪影響を受ける。例えば、通常、集束コイル13は『内磁型』と呼ばれる構造を採用しており、磁場を内部に収容するポールピース(図示省略)を備えている。このとき、ポールピースの設計によって集束コイル13の構造を決定して、さらに集束コイル13に流す励起強度によって集束コイル13を操作するが、遮蔽アパーチャ19が磁性体の場合には、その遮蔽アパーチャ19が近傍にあることで、遮蔽アパーチャ19による磁場の影響でポールピースの設計が狂う。したがって、本実施例では上述したように遮蔽アパーチャ19をタングステンやモリブデンなどに代表される非磁性体で形成している。このように形成することで、集束コイル13の磁場が遮蔽アパーチャ19による悪影響を受けない。
【0034】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0035】
(1)上述した実施例では、非破壊検査機器などの工業用装置を例に採ってX線撮像装置を説明したが、この発明は、X線診断装置などの医用装置にも適用することができる。
【0036】
(2)上述した実施例では、電子源として、消耗や切断に強い単結晶あるいは焼結体のチップを用いたが、タングステンで形成されたフィラメントを用いてもよい。
【0037】
(3)上述した実施例では、集束コイル13はいわゆる2段式であったが、3段以上であってもよい。また1段のみでもよい。
【0038】
(4)上述した実施例では、遮蔽アパーチャ19のX線通過孔19aの径φ2を、ビーム制御アパーチャ15の絞り孔14の径φ1よりも十分に小さく設定したが、X線検出器2の有効面積Sに相当したX線有効照射領域Tを少なくともX線通過孔19aが通すのであれば、X線通過孔19aの径φ2の大きさについては特に限定されない。ただ、X線のノイズをより低減させるのであれば、X線のノイズは、立体角θA,θBの分のノイズがターゲット12の外部に漏れ出した分であって、これらのノイズの多くは絞り孔14を通るので、X線通過孔19aの径φ2を絞り孔14の径φ1よりも小さく設定するのがより好ましい。
【0039】
(5)上述した実施例では、ターゲット12に近接して遮蔽アパーチャ19を配設したが、ターゲット12を保持する保持部材として遮蔽アパーチャ19を配設してもよい。また、ターゲット12に直接的に接触して遮蔽アパーチャ19を配設してもよい。ターゲット12に直接的に接触する場合には、図4に示すようにターゲット12と一体的に遮蔽アパーチャ19を配設してもよいし、図5に示すようにターゲット12とは別の部材で遮蔽アパーチャ19を配設してもよい。
【0040】
(6)上述した実施例では、遮蔽アパーチャ19を非磁性体で形成したが、遮蔽アパーチャ19による悪影響を集束コイル13が受けない、あるいは悪影響が少ない場合には、遮蔽アパーチャ19を必ずしも非磁性体で形成する必要はない。
【0041】
(7)上述した実施例では、X線管1とX線検出器2とは別体であったが、X線管1の中にX線検出器2を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例に係るX線管の構成を示す概略断面図である。
【図2】X線管内のターゲット以外のパイプから発生したX線のノイズの照射状況を示す概略図である。
【図3】ターゲット以外のビーム制御アパーチャから発生したX線のノイズの照射状況を示す概略図である。
【図4】変形例に係るターゲットおよび遮蔽アパーチャの概略断面図である。
【図5】さらなる変形例に係るターゲットおよび遮蔽アパーチャの概略断面図である。
【図6】従来のX線管におけるX線のノイズの照射状況を示す概略図である。
【図7】従来のX線管のアパーチャ付近でのX線のノイズの照射状況を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1 … X線管
2 … X線検出器
11 … 陰極
12 … ターゲット
14 … 絞り孔
15 … ビーム制御アパーチャ
19 … 遮蔽アパーチャ
19a … X線通過孔
φ1 … 絞り孔の径
φ2 … X線通過孔の径
B … 電子ビーム
S … 有効面積
T … X線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを発生させる電子源と、前記電子源に対向配置され、電子源からの電子ビームの衝突によりX線を発生させるターゲットとを備えたX線発生装置であって、前記ターゲットの電子源側とは反対側のX線発生側に通過部材を配設し、この通過部材は、前記発生して照射されたX線を検出するX線検出手段の有効面積に相当したX線有効照射領域を少なくとも通すX線通過孔を有することを特徴とするX線発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線発生装置において、前記電子源と前記ターゲットとの間に配置され、電子ビームを絞る絞り孔を有したアパーチャを備え、前記通過部材のX線通過孔の径が、そのアパーチャの絞り孔の径よりも小さいことを特徴とするX線発生装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のX線発生装置において、前記通過部材が非磁性体であることを特徴とするX線発生装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−10335(P2006−10335A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183826(P2004−183826)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】