説明

X線管

【課題】製造性を向上でき小型化が可能なX線管を提供する。
【解決手段】真空外囲器2内の真空コンデンサ8をフィラメント6と収束電極7との間に直列に接続する。真空コンデンサ8一対の平行平板11,12の内側面に仕事関数の低い金属の被覆層14を形成する。収束電極7に印加するバイアス電圧をフィラメント6の電圧の低下時に真空コンデンサ8に取り残される電荷で発生させる。バイアス電圧のオフ時に平行平板11,12の内側面に光ファイバ15からレーザ光を照射する。光電効果によって発生する光電子を利用して真空コンデンサ8を放電させて収束電極7の電位を制御する。軟X線波尾を遮断しながらパルス状のX線が発生可能なX線管1を実現できる。X線管1のコストダウンおよび小型化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極から放出された電子の陽極への入射によってX線を発生させるX線管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の格子制御型のX線管は、主として医療用レントゲン装置に用いられるものであって、陽極と陰極とが収容された真空容器を備えている。この真空容器内には、陰極から放出された電子を制御する制御格子が配設されている。この制御格子にバイアス電圧を印加してパルス状のX線発生を制御するための格子制御専用の電源が、真空容器の外側あるいは内側に設けられている。ところが、この格子制御型のX線管では、格子制御のための電源が大型となってしまうから、大型化および製造コストの上昇などの原因となってしまっている。
【0003】
また、医療用のX線管として、循環器の治療や診断用に多用されている3焦点を有するX線管の場合には、フィラメント電流を供給するコモン電極と格子電極とを合わせると、5本の陰極側高電圧導入端子がX線管容器に必要となる構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−240296号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、3焦点を有するX線管用として、一般的に広く用いられている4ピンの導入端子を持つ陰極用高圧ケーブルでは、2口の高圧ケーブルとソケットとが必要となりX線管容器の大型化を招いている。さらに、2本のカソード高圧ケーブルが障害となり、X線管を支持するアームにX線管を搭載する作業が容易ではなかったり、このアーム中を配線する高圧ケーブルの容積が邪魔になってアームのデザインに制約が発生したりするから、このX線装置全体の製造性の向上が容易ではないという問題を有している。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製造性を向上でき小型化が可能なX線管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器と、電子を放出する陰極と、前記容器内に設けられ前記陰極から放出される電子の入射にてX線を発生する陽極と、前記陰極から前記陽極に向けて放出される電子を制御する制御電極とを具備するX線管において、一方が前記陰極に電気的に接続され他方が前記制御電極に電気的に接続されたコンデンサと、このコンデンサの電荷を制御する電荷制御手段とを具備したものである。
【0007】
そして、電荷制御手段によりコンデンサの電荷の制御をすることにより、このコンデンサに光電子が発生し、この光電子がコンデンサを介して制御電極に供給される。この結果、制御電極と陰極との電位が等しくなり、この制御電極の電位が安定し、陰極から陽極に向けて電子が放出されてX線が発生する。次に、X線の放出を停止させるため高圧電源からの高圧印加を停止すると電荷の放出により陰極の電位が低下し、この陰極の電位の低下に伴って電荷制御手段によるコンデンサの電荷の制御を停止させることにより、このコンデンサに電荷が蓄えられたままの状態となる。そして、陰極の電位の低下によって、コンデンサに電位差が生じてしまうから、制御電極の陰極に対する電圧がマイナス状態となっていく。よって、陰極からの電子の放出が制御電極の電界によって抑制されて遮断状態となる。したがって、この制御電極に電圧を印加させる電源などを設けることなく、電荷制御手段によるコンデンサの電荷の制御にて制御電極と陰極との間の電圧のオフ制御ができるから、製造性を向上できるとともに、構成が簡略となるので、小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電荷制御手段によるコンデンサの電荷の制御により、制御電極と陰極との電位が等しくなり制御電極の電位が安定する。また、陰極の電位の低下に伴って電荷制御手段によるコンデンサの電荷の制御を停止させることにより、このコンデンサに電位差が生じ、陰極からの電子の放出が制御電極の電界によって抑制されて遮断状態となる。このため、容器内に制御電極に電圧を印加させる電源などを設けることなく、電荷制御手段によるコンデンサの電荷の制御にて制御電極と陰極との間の電圧のオフ制御ができるから、製造性を向上でき、構成が簡略となるので、小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のX線管の第1の実施の形態の構成を図面を参照して説明する。
【0010】
図1において、1はX線管で、このX線管1は、主として医療用のレントゲン装置などに用いられる格子制御型のグリッド制御X線管である。そして、このX線管1は、内部が高真空な状態に保たれた真空容器としての管球である真空外囲器2を備えている。この真空外囲器2は、内部を真空保持する。さらに、この真空外囲器2の一側面には、外部から真空外囲器2内へと通電させる一対の真空導入端子3,4が設けられている。
【0011】
そして、この真空外囲器2内には、電子としての熱電子の入射にてX線を発生させるアノードとしての陽極5が設けられて収容されている。この陽極5は、真空外囲器2中であるとともに、一対の真空導入端子3,4が設けられている真空外囲器2の一側面の反対側に位置する他側に収容されている。さらに、この陽極5には、図示しない4ピンの高圧ケーブルが電気的に接続されており、この高圧ケーブルから高電圧が印加されるように構成されている。
【0012】
また、この真空外囲器2内には、陽極5から絶縁されてカソードの電子放出源となる陰極構造体としての熱電子放出用のフィラメント6が設けられて収容されている。さらに、この真空外囲器2内には、制御格子を兼ねた制御電極としての収束電極7が設けられて収容されて配置されている。この収束電極7は、フィラメント6から放出された熱電子を電界にて収束させる。すなわち、この収束電極7は、フィラメント6に対して離間されて配設されており、このフィラメント6に対して電気的に絶縁されている。
【0013】
ここで、このフィラメント6の両側のそれぞれは、真空導入端子3,4に電気的に接続されている。そして、このフィラメント6は、陽極5に対向して熱電子を放出できる位置に設けられている。さらに、このフィラメント6は、図示しない陰極高圧電源に電気的に接続され、この陰極高圧電源にて通電されて高温となると熱電子を放出する。そして、この熱電子は、収束電極7にて収束されながら、陽極5とフィラメント6との間に外部の図示しない電源にて印加された高電圧のバイアス電圧による電界によって加速されて陽極5に向かい、この陽極5を衝撃するときの制動輻射によってX線が発生する。言い換えると、フィラメント6から放出された熱電子を、外部の電源から陽極5とフィラメント6との間に印加させた高電圧によって加速させて、陽極5に衝突させて、この熱電子の陽極5への衝撃によってX線が発生する。
【0014】
さらに、真空外囲器2内には、真空コンデンサ8が収容されて設置されている。この真空コンデンサ8は、収束電極7とフィラメント6との間に電気的に直列に接続されている。そして、この真空コンデンサ8は、一対の導体としての電極である平行平板11,12を真空中で空間を保って配置することによって構成されている。言い換えると、これら一対の平行平板11,12は、間隙を設けて向かい合わされて配置されている。すなわち、これら一対の平行平板11,12は、真空ギャップ(Gap)を持たせて向かい合わされている。そして、この真空コンデンサ8は、一対の平行平板11,12間に発生する静電容量を介してフィラメント6と収束電極7とを電気的に結合させている。
【0015】
また、この真空コンデンサ8の一方の平行平板11は、収束電源側電極であって、収束電極7に電気的に接続されている。このため、この収束電極7は、フィラメント6の電位に対して電気的に浮いた状態となっている。また、この真空コンデンサ8の他方の平行平板12は、フィラメント側電極であって、フィラメント6の一方の電極であるコモン電極13に電気的に接続されている。
【0016】
そして、この真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12は、所定の間隙を介して互いに向かい合った側面である表面としての内側面が平行となるように配設されている。さらに、この真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12それぞれの内側面には、仕事関数が低く光電子放出係数の高い金属、例えばセシウム(Cs)などのアルカリ金属などがコーティングされて高光電子放出係数層としての被覆層14が設けられている。
【0017】
さらに、真空外囲器2内には、この真空外囲器2内へと光を導く光ファイバ15が導入されて設置されている。この光ファイバ15は、真空コンデンサ8の電荷を制御する電荷制御手段としての光照射手段に備えられている。そして、この光ファイバ15の基端は、真空外囲器2の外部に設置された図示しない半導体レーザ光源に接続されている。また、この光ファイバ15の先端は、真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12の互いに向かい合う内側面に対向して配設されており、これら一対の平行平板11,12のうち、収束電極7に電気的に接続されている側の平行平板11の内側面にレーザ光が照射できるように配置されている。すなわち、この光ファイバ15は、収束電極7に電気的に接続されている側の平行平板11の内側面に向けてレーザ光を照射させる。言い換えると、この光ファイバ15は、真空外囲器2の外部から、この真空外囲器2内に導入した光を、真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12間に照射可能な位置に配設されている。
【0018】
また、真空外囲器2内には、遮蔽手段としての遮蔽板であるX線遮蔽カバー16が設置されている。このX線遮蔽カバー16は、ガス放出の少ない原子番号の大きな遮蔽用金属、例えばタングステン(W)やモリブデン(Mo)などにて構成されている。さらに、このX線遮蔽カバー16は、真空外囲器2内において真空コンデンサ8および光ファイバ15を囲っている。すなわち、このX線遮蔽カバー16は、真空外囲器2内で発生する直接X線や散乱X線や焦点外X線など真空コンデンサ8や光ファイバ15に当たらないように構成されている。言い換えると、このX線遮蔽カバー16は、真空外囲器2内で発生するX線の照射によって光ファイバ15が色中心による着色で劣化したり、X線による光電効果で真空コンデンサ8の誤動作が発生したりすることを防止する。さらに、このX線遮蔽カバー16は、光制御によってパルス状のX線発生動作ができるように構成されている。
【0019】
次に、上記第1の実施の形態のX線管の作用について説明する。
【0020】
まず、陰極高圧電源にてフィラメント6を通電させて、このフィラメント6が高温になると、このフィラメント6から熱電子が放出される。
【0021】
そして、この熱電子は、収束電極7にて収束されながら、陽極5とフィラメント6との間に外部の電源から印加された高電圧によって形成されるバイアス電界によって加速されて、陽極5へと向けられて、この陽極5に衝突する。
【0022】
このとき、この熱電子が陽極5に衝突する時の衝撃による制動輻射によって、この陽極5からX線が発生する。
【0023】
次いで、X線を曝射する場合の動作について説明する。
【0024】
まず、陰極高圧電源からのフィラメント6へのX線曝射のための管電圧印加によって、このフィラメント6の電位Vcが、陰極高圧電源からの陰極電位に伴って上昇する。
【0025】
このとき、収束電極7が真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12によって電位的に浮いている。このため、この収束電極7の電位Vgが、フィラメント6の電位上昇に追従して上昇しない。
【0026】
そこで、図2に示すように、真空外囲器2の外部から内部へと導入させた光ファイバ15によって、真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12の互いに向かい合う内側面にレーザ光Lを照射する。
【0027】
このとき、これら一対の平行平板11,12の内側面には、仕事関数の低い材質がコーティングされて被覆層14が形成されている。このため、図3に示すように、この被覆層14へのレーザ光Lの照射によって光電子eが発生する。
【0028】
そして、図4に示すように、フィラメント6に電気的に接続されたフィラメント6側の平行平板12から放出された光電子eが、これら一対の平行平板11,12間の真空ギャップを介して、収束電極7に電気的に接続されている収束電極7側の平行平板11に供給される。
【0029】
この結果、図5に示すように、真空コンデンサ8のフィラメント6側の平行平板12の電位Vcと、この真空コンデンサ8の収束電極7側の平行平板11の電位Vgとが等しくなる。したがって、この収束電極7に電荷がディスチャージされ、この収束電極7の電位が安定し、フィラメント6から陽極5に向けて熱電子が放出されてX線が発生する。
【0030】
次いで、X線を収束電極7にて遮断する場合の動作について説明する。
【0031】
まず、X線の発生を停止するために、陰極高圧電源からの高圧印加の出力を停止させると、フィラメント6の陰極電位の低下が始まる。これに伴って、真空コンデンサ8のフィラメント6側の平行平板12の電位Vcが低下する。
【0032】
このとき、図6に示すように、陰極高圧電源からの出力の停止に同期させて、光ファイバ15からのレーザ光Lの供給を停止させると、真空コンデンサ8の収束電極7側の平行平板11が、この真空コンデンサ8の空隙によって電気的に絶縁されているため、陽極5に高圧を印加した時の電荷が取り残されて、この電荷を蓄えたままの状態となる。
【0033】
そして、図7に示すように、フィラメント6の電位Vcがアース電位へと低下するため、これら収束電極7の電位Vgとフィラメント6の電位Vcとの間に電位差が生じる。
【0034】
すなわち、図8および図9に示すように、真空コンデンサ8のフィラメント6に対する収束電極7の電圧がマイナスの状態になっていく。したがって、この収束電極7には逆バイアス電圧が印加されることとなる。
【0035】
そして、この電圧が、格子遮断電圧(Vcが1kV以上3kV以下程度低下した電圧)を超えた時点で、フィラメント6からの熱電子放出が収束電極7からの電界によって抑制されて遮断状態となり、図示しない高圧ケーブルの浮遊容量の電荷放出が停止し、この浮遊容量による軟X線波尾がカットオフされて遮断される。
【0036】
この結果、電源オン/オフに同期して光ファイバ15からレーザ光をパルス状に真空コンデンサ8に照射することによって、軟X線波尾の遮断を繰り返しながらパルス状のX線のオン/オフ制御が可能となる。
【0037】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、収束電極7を陽極5から絶縁させるとともに、この真空外囲器2内に真空コンデンサ8を内蔵させて、この真空コンデンサ8をフィラメント6と収束電極7との間に直列に接続させる。さらに、この真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12の真空ギャップ間にレーザ光Lを照射させる光ファイバ15を真空外囲器2内へと導入させるとともに、この真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12の内側面に仕事関数の低い金属をコーティングして被覆層14を形成させる。
【0038】
そして、収束電極7に印加するバイアス電圧をフィラメント6の電圧の低下時に真空コンデンサ8に取り残される電荷によって発生させる。さらに、このバイアス電圧をオフする場合に、真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12間である真空ギャップ間に光ファイバ15からレーザ光を照射して、光電効果によって発生する光電子eを利用して真空コンデンサ8を放電させて、収束電極7の電位を制御する。
【0039】
この結果、この光ファイバ15と、陽極5に電気的に接続されている4ピンの高圧ケーブル1本とによる制御によって、軟X線波尾を遮断しながらパルス状のX線が発生可能な3焦点を有するグリッド制御方式のX線管1を実現できる。したがって、このX線管1を駆動させる図示しないシステム側に制御用の電源を設ける必要がなくなるとともに、レーザ光Lを使用してバイアス電圧のオフ制御が可能となる。
【0040】
このため、図示しないX線管容器のカソード側の高圧ケーブルが1本になることによって、このX線管容器の構成が簡略になるから、このX線管容器の小型化が可能となる。さらに、このX線管容器を支持する図示しないアームの、高圧ケーブルの通線に必要なスペースを減少できるから、このアームも小型化できるとともに、このアームにX線管1を搭載させる作業が容易となり、このアーム中を配線する高圧ケーブルの容積が邪魔にならなくなるので、このアームのデザインの制約が少なくなる。よって、X線管1のコストダウンおよび小型化が可能となり、デザイン上の制約を少なくできる。すなわち、このX線管1の製造性を向上できつつ、小型化できる。
【0041】
なお、上記第1の実施の形態では、真空コンデンサ8に蓄えられた電荷が、フィラメント6からの熱電子の放出や、このフィラメント6の絶縁部分からのリーク電流によって徐々に放電されるから、X線を遮断する時間内に格子遮断電圧を維持するだけの容量が必要である。そして、この容量を確保するために、真空コンデンサ8を構成する一対の平行平板11,12の形状としては、直径が空隙分異なるパイプ状の電極を同心円状や多層に配置した構造などとしても良い。
【0042】
また、X線を曝射する際の真空コンデンサ8での放電として、光電効果を用いる代わりに、真空外囲器2の外側や内側に図示しない放電ギャップスイッチを設けるとともに、真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12間にスパークギャップとしての放電ギャップを設けた電荷制御手段とすることもできる。この場合、収束電極7の電圧が規定以上に上昇した場合に放電ギャップスイッチをオンして、真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12間に電子を衝突させてスパークさせて放電させる。
【0043】
この場合、真空外囲器2内へと導入された光ファイバ15にて真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12間にレーザ光Lを照射させたが、この真空外囲器2に窓部としての図示しない光学窓を取り付けて、この光学窓を介して真空外囲器2の外部から真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12間にレーザ光Lを照射させることもできる。ここで、この光学窓は、真空外囲器2の外側から内側に向けてレーザ光Lが透過可能に構成されている。さらに、この光学窓は、真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12間へとレーザ光を照射できるように光軸が設定されている。
【0044】
さらに、光電効果を用いる場合でも、X線管1の動作が不安定な場合に発生する意図しないインピーダンスの急激な変化により発生するサージ電圧からフィラメント6や真空コンデンサ8を保護するため、図10に示す第2の実施の形態のように、真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12のそれぞれに、融点が高くガス放出が少ない金属、例えばタングステン(W)やモリブデン(Mo)を主成分とする金属で構成した拡大部としての球状部21を設けることもできる。
【0045】
そして、これら球状部21は、一対の平行平板11,12それぞれの長手方向の一端部に設けられている円状の円状構造部である。また、これら球状部21は、一対の平行平板11,12の厚さ寸法より大きさ直径寸法を有する球状に形成されている。そして、これら球状部21は、これら球状部21間の間隙である放電ギャップを、一対の平行平板11,12間の間隙である真空ギャップよりも小さくさせる。
【0046】
すなわち、これら球状部21は、一対の平行平板11,12間の間隙より小さい間隙を介して向かい合わされて配設されている。よって、これら球状部21間の放電ギャップは、静電容量を構成する一対の平行平板11,12の真空ギャップより短い空間距離とされている。
【0047】
したがって、真空コンデンサ8の一対の平行平板11,12間にある想定電圧である規定以上の電圧が発生した場合に、高融点金属にて形成された球状部21間をスパークギャップとして動作させて、これら球状部21間の放電ギャップにて放電させて真空コンデンサ8を放電させる構成とすることによって、真空コンデンサ8のより安定した動作が可能となる。このとき、これら球状部21間の放電ギャップを真空ギャップとして用いて、この真空ギャップに光ファイバ15からレーザ光Lを照射させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のX線管の第1の実施の形態を示す説明図である。
【図2】同上X線管の曝射時にコンデンサにレーザ光を照射した状態を示す説明図である。
【図3】同上X線管のレーザ光照射時のコンデンサでの光電子の発生状態を示す説明図である。
【図4】同上X線管のコンデンサでの光電子の供給状態を示す説明図である。
【図5】同上X線管の曝射時の陰極の電位(Vc)および制御電極の電位(Vg)の変化を示すグラフである。
【図6】同上X線管の遮断時にコンデンサへのレーザ光の照射を停止した状態を示す説明図である。
【図7】同上X線管のレーザ光停止時のコンデンサの状態を示す説明図である。
【図8】同上X線管のコンデンサの電位Vcが低下した状態を示す説明図である。
【図9】同上X線管の遮断時の陰極の電位(Vc)および制御電極の電位(Vg)の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施の形態のX線管の一部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 X線管
2 容器としての真空外囲器
5 陽極
6 陰極としてのフィラメント
7 制御電極としての収束電極
8 コンデンサとしての真空コンデンサ
14 高光電子放出係数層としての被覆層
15 電荷制御手段としての光ファイバ
16 遮蔽手段としてのX線遮蔽カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
電子を放出する陰極と、
前記容器内に設けられ陰極から放出される電子の入射にてX線を発生する陽極と、
前記陰極から前記陽極に向けて放出される電子を制御する制御電極と、
一方が前記陰極に電気的に接続され他方が前記制御電極に電気的に接続されたコンデンサと、
このコンデンサの電荷を制御する電荷制御手段と
を具備したことを特徴としたX線管。
【請求項2】
電荷制御手段は、コンデンサに光を照射する光ファイバを有した
ことを特徴とした請求項1記載のX線管。
【請求項3】
コンデンサを構成する互いに向かい合った電極の一側面には、光電子放出係数が高い高光電子放出係数層が設けられている
ことを特徴とした請求項1または2記載のX線管。
【請求項4】
コンデンサは、X線管内で発生するX線が当たらないように遮蔽手段にて覆われている
ことを特徴とした請求項1ないし3いずれか記載のX線管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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