X線透過画像の欠陥判定方法及び装置
【課題】人間の目の識別能力を考慮し、デジタル画像の特性を生かして識別性を向上することにより、デジタル化されたX線透過画像の欠陥判定を、これまでより容易、迅速且つ正確に行なえるようにする。
【解決手段】デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するに際して、X線透過画像を擬似立体化した後、該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定する。その際、擬似立体化を、微分フィルタの適用により行ない、検出対象欠陥を正常部より凹んでいるように見せることができる。
【解決手段】デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するに際して、X線透過画像を擬似立体化した後、該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定する。その際、擬似立体化を、微分フィルタの適用により行ない、検出対象欠陥を正常部より凹んでいるように見せることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線透過画像の欠陥判定方法及び装置に係り、特に、配管円周溶接継手の非破壊検査に用いるのに好適な、X線透過画像の欠陥判定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管円周溶接継手などの非破壊検査において、X線を用いる場合、従来はX線源に対して被検体の反対側に配置したX線フィルムを露光させ、該露光したX線フィルムの濃淡により判定者が目視で判定していた。
【0003】
一方、最近は、発明者が特許文献1で提案したように、X線センサによりX線透過画像をデジタル化して、モニタに映された映像で判定を行うデジタルX線検査技術もある。この場合、モニタに表示された画像から、透過度計や欠陥画像を識別し判断することになるが、画像濃度などの影響で欠陥や透過度計を識別できない場合がある。しかし、データとしては検出されているため、濃度やコントラストを強調することで検出が可能となる場合がある。即ち、物理的には検出されているが、判断する状況が異なることにより検出されてないと判断され、これらにより判定ミスになる可能性があった。
【0004】
配管円周溶接継手の非破壊検査のため、発明者は、特許文献1で提案したデジタルX線検査技術に、更に、波形記録式超音波自動探傷技術を組み合わせて、X線画像と超音波探傷データを同時に表示し、関連付けて判定することで、一台のシステムでX線検査と超音波検査を行えるようにしたハイブリッドデジタル検査技術を特許文献2や3で提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3730040号公報
【特許文献2】特許第3853751号公報
【特許文献3】特開2006−145278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にデジタル画像は複写しても画像は劣化しない。その反面、画像をモニタに表示した場合や印刷した場合には、かなりの劣化が見られアナログ画像と変わらない。問題となるのは判定時の画質であり、その画質の良し悪しは次の3要素で決まる。
(1)精密さ
(2)適正コントラスト&濃度
(3)低ノイズ
【0007】
そこで発明者は、(1)については高精度X線センサの開発、(2)については自動コントラスト調整機能の搭載、(3)についてはX線センサの低ノイズ化と積分回数増加のための高感度化等を行った。
【0008】
X線フィルムを使用した検査と比べて、デジタル画像は、拡大や画像濃度・コントラストの調整等が可能であるため、更なる欠陥検出性能の大幅な向上が期待できるはずであるが、実際には部分的な改善に留まっていた。
【0009】
X線検査において溶接部の傷の判定を行う場合、どのような場合でも、最初に画像の濃淡を人間の目で識別する必要がある。すなわち従来のX線検査では、人間による画像の濃淡の判別能力に全てを頼っている。
【0010】
しかしながら人間の濃淡識別能力はそれほど高いわけでなく、微小な変化は認識できない。判定資格を保有するには一定の視力を有する必要があるが、これは最低条件で、視力が良ければ微小な濃淡の変化を認識できるということではない。
【0011】
X線フィルムの判定作業では拡大鏡を用いることがある。しかし、これも微小で且つ一定以上の濃淡がある傷に対しては有効であるが、濃淡が少ないものに対しては効果が無く、逆に識別性を悪化させることも有る。これは、濃淡に応じて着色してカラー化した場合でも同様である。
【0012】
現在はX線フィルムを使用した方法からセンサによるデジタル画像を使った方法に移行する過程の一歩手前である。またデジタル画像ではフィルムと同等程度の画像を得ることは出来ても、人が観察するモニタに表示された時点で表示系の性能が支配的となり、画像は劣化し識別性が低下することは否めない。
【0013】
これまではセンサの高精度化、はたまた画像処理による濃淡の調整、ノイズの削除等により、かなりの部分を解決してきたが、前述した人間の目の識別能力については十分には考慮していなかった。
【0014】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、人間の目の識別能力を考慮し、デジタル画像の特性を生かして、識別性を向上することにより、デジタル化されたX線透過画像の欠陥判定を、これまでより容易、迅速且つ正確に行なえるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者は、まず、人間が識別しやすい画像について検討を行った。その結果を次に示す。
【0016】
人間は画像を目で見て脳内で像を構築する。自然状態は全て立体的であるため、たとえば家族の写真を見たときは立体的な家族の像を容易に脳内に構築でき家族であると認識する。
【0017】
しかしながら、たとえば溶接の透過写真を見た場合には、脳内に立体化した像を構築することが困難なため、単なるモザイク・模様として認識せざるを得ない。その画像を使って判定を行うため、脳内での処理が遅れて、迅速且つ正確な判断が難しくなる。いわゆる直感的にストレートには認識できないわけである。
【0018】
透過画像を脳内で立体化しやすい画像に処理して見せることで、これらの障害が無くなり、脳内での認識が迅速かつ正確に行なえる。即ち、人間は三次元世界で生活しているため、学習によって立体映像では脳の働きが活性して、直観力や機械以上の能力が発揮できる。従って、二次元の画像を立体化することで、脳の働きが活性化する。
【0019】
画像処理は、その画像で判定作業を行なうため極端な立体化はできない。また処理に時間をかけることも避ける必要が有る。そのため、適正に設計したフィルターによって擬似立体化処理を行なう。
【0020】
以上を行なった結果、ほとんどの人が欠陥の識別が容易になったと感じ、更に透過度計識別度については25%以上の識別性の向上が確認出来た。
【0021】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するに際して、X線透過画像を擬似立体化した後、該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定するようにして、前記課題を解決したものである。
【0022】
本発明による処理を行なう前の濃淡画像の例を図1(A)、擬似立体化処理後の画像の例を図1(B)に示す。
【0023】
なお、擬似立体化に際しては、凸であると異物付着と誤解し易いので、欠陥を凹ませる方が傷と直感し易く判定が容易である。そこで、前記擬似立体化を、検出対象欠陥を正常部より凹んでいるように見せるものとすることができる。
【0024】
又、前記擬似立体化を、微分フィルタの適用により行なうことができる。
【0025】
又、前記微分フィルタを、検出対象欠陥の方向と異なる方向に微分するものとすることができる。
【0026】
又、前記擬似立体化された画像と、擬似立体化前の画像の両者を用いて被検体の欠陥を判定することができる。
【0027】
本発明は、また、デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するための欠陥判定装置において、X線透過画像を擬似立体化する手段と、該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定するための手段と、を備えたことを特徴とするX線透過画像の欠陥判定装置を提供するものである。
【0028】
更に、前記擬似立体化された画像と、擬似立体化前の画像の両者を表示する手段を備えることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、平面画像の濃淡認識や色認識に比べて判定が容易な擬似立体化を行なうことによって、直感的に且つ瞬間的に欠陥を識別でき、従来より容易、迅速且つ正確に欠陥判定を行なうことが可能となる。又、コピーされた擬似立体化画像も、デジタル画像であるため、劣化しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による処理前後の画像の例を比較して示す図
【図2】本発明を適用するのに好適なX線検査装置の実施形態の構成図
【図3】前記実施形態における画像入力装置と画像処理装置と最終処理装置の構成を示すブロック図
【図4】同じくスキャナ駆動部の構成を示す正面図
【図5】同じく側面図
【図6】同じく欠陥判定用カーソルの構成図
【図7】同じく検査状況を示す斜視図
【図8】前記実施形態の動作を示す流れ図
【図9】同じく表示部の画面表示例を示す図
【図10】前記実施形態で用いる擬似立体化用の微分処理フィルタの例を示す図
【図11】前記実施形態の欠陥を含む合成画像の表示例を示す図
【図12】同じく判定経過図の構成図
【図13】他のスキャナ駆動部の例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0032】
本発明を実施する為のX線検査装置の実施形態は、特許文献1と同様に、図2に示す如く、X線発生装置1と画像入力装置2と画像処理装置3と最終処理装置4を有する。
【0033】
X線発生装置1は電源装置5にX線制御部6とドラム7を介して接続され、検査する管8内を走行して溶接部にX線を照射する。
【0034】
画像入力装置2は、図3のブロック図に示すように、X線センサ9とスキャナ駆動部10とスキャナ制御部11を有する。X線センサ9はCCDセンサと蛍光体(例えばCdTe)からなり、発明者が特開平10−115605号で提案した超音波探傷用スキャナと同様のスキャナ駆動部10に、超音波自動探傷システムの超音波探触子とワンタッチで交換可能に搭載されている。スキャナ駆動部10は、図4の平面図及び図5の側面図に示すように、溶接用レール12上を走行するT字状のスキャナ本体13と、発明者が特開2009−122982号で提案した、大体の位置と画像の連結の確認に用いるための、例えばジグザグ線パターンと数字でなる確認帯15を有する。
【0035】
前記スキャナ本体13には、X線センサ9が設けられている。
【0036】
また、スキャナ本体13には、このスキャナ本体13を溶接部(溶接ビード)81の長手方向、本例では管8の円周方向に第1のピッチで移動させる第1移動部(図示省略)と、スキャナ本体13を溶接ビード81の長手方向に対して直角方向、本例では管8の中心軸線方向に第2のピッチで移動させる第2移動部(図示省略)が設けられている。
【0037】
管8は、溶接ビード81によって接続されている。溶接ビード81は、管8に取り付けられた溶接用レール12上を走行する溶接棒搬送手段(図示省略)によって溶接棒が搬送され、管8の突き合わせ部に設けられたV字状の開先に肉盛り溶接されることによって形成される。なお、溶接用レール12には、溶接棒搬送手段の走行距離を計測するためのラック(図示省略)が設けられている。
【0038】
図5において、17は、スキャナ本体13に取付けられた移動用パルスモータ、18はカバーである。
【0039】
確認帯15は一定寸法、例えば10mm単位の目盛を有し、管8の溶接部81近傍に巻回して取付けられる。スキャナ制御部11は画像処理装置3からの信号によりスキャナ駆動部10の動作を制御する。
【0040】
画像処理装置3は、図3に示すように、操作部23と演算処理部24と表示部25と判定支援部26と記憶部27と画像出力部28及び送信部29を有する。操作部23はキーボードとマウスを有し、検査者が各種情報を入力するとともに各種操作を行う。演算処理部24はX線センサ9から連続して送られる溶接部81のX線透過画像を積分処理してノイズを除去し、管8の1周分つなげた合成画像を形成して、形成した合成画像をX線センサ9で撮像した確認帯15の画像とともに表示部25に表示する。判定支援部26は検査者が入力した疵種に応じて欠陥判定用のカーソルを表示部25に表示し、入力した疵種と表示部25の各カーソルにより示された位置と寸法を示す判定経過図を作成する。欠陥判定用のカーソルは、図6に示すように、一定寸法、例えば各辺の長さが10mmの正方形と、正方形に外接する円からなり、検査者の操作により移動して、丸いブローホール等の1種欠陥の位置を示す1種欠陥判定用カーソル31と、複数の寸法、例えば3.0mm,2.0mm,1.0mm,0.7mm,0.5mmの直径を有する円からなり、検査者の操作により1種欠陥の位置に移動して欠陥の寸法を示す1種欠陥寸法判定用カーソル32及び細長いスラグ巻き込みや融合不良等に類する2種欠陥の両端を示し、その寸法を指定するための2種欠陥判定用カーソル33を有する。記憶部27は演算処理部24で形成した合成画像や各種欠陥情報を格納する。画像出力部28は合成画像や各種欠陥情報や撮像条件をプリンタ30に出力して印刷させる。送信部29は合成画像や各種欠陥情報を圧縮して最終処理装置4に送信する。
【0041】
最終処理装置4は、遠距離伝達の場合に必要で、図3のブロック図に示すように、受信部34と記憶部35と判定確認部36と表示部37及び出力部38を有する。受信部34は画像処理装置3の送信部29から送信された合成画像や各種欠陥情報等を伸長して記憶部35に格納する。判定確認部36は記憶部35に格納された各溶接部81の合成画像と各種欠陥情報を確認して最終判定を行う。表示部37は判定確認部36で判定した結果を合成画像と各種欠陥情報等とともに表示し、出力部38は判定確認部36で判定した結果を合成画像と各種欠陥情報等とともに外部記憶装置等に出力する。ここでは、画像処理装置3と最終処理装置4が分けられているが、画像処理装置3と最終処理装置4は一体でも良く、特に、遠距離伝達が不要な場合は、最終処理装置4を省略することもできる。
【0042】
上記のように構成したX線検査装置で、図7に示すように管8の溶接部81を検査するときの動作を、図8の流れ図を参照して説明する。
【0043】
まず、図2に示すように、管8の検査する溶接部81の近傍に確認帯15を巻回して固定する。そして溶接用ガイドレール12にX線センサ9を取り付けたスキャナ本体13を配置し、X線発生装置1を管8内で走行させて溶接部81まで移動する。
【0044】
次に、検査者は画像処理装置3の操作部23から撮像条件や検査位置等の作業データを入力して記憶部27に格納し、図9の画面表示図に示すように、表示部25の条件設定領域41に表示する(ステップS1)。
【0045】
この状態で操作部23で検査開始を指示すると、X線発生装置1は溶接部81の内面にX線を照射し、演算処理部24は設定された作業データをスキャナ制御部11に送る。スキャナ制御部11は送られた作業データによりスキャナ駆動部10のスキャナ本体13を溶接用レール12に沿って移動させる。スキャナ本体13に取り付けられたX線センサ9は溶接部81に沿って移動しながらX線透過画像と確認帯15の画像を逐次撮像して演算処理部24に送る(ステップS2)。このX線センサ9でX線透過画像と確認帯15の画像を撮像するときに、X線センサ9はバネ(図示省略)を介して上下動できるように取り付けられ、両端部に位置決め用の車輪(図示省略)を有するセンサ固定部(図示省略)により、溶接部81と確認帯15から常に一定位置を保って移動することができる。
【0046】
演算処理部24はX線センサ9から連続して送られる溶接部81のX線透過画像を積分処理してノイズを除去して1周分つなげた合成画像を形成して、形成した合成画像をX線センサ9で撮像した確認帯15の画像とともに記憶部27に格納するとともに、図8に示すように、表示部25に合成画像42と確認帯15の画像43を表示する(ステップS3)。
【0047】
次いで、図10に例示するような微分フィルタを用いて、中央の画素に各位置の値を加算し、本発明による擬似立体化処理を行なう(ステップS4)。この擬似立体化処理は、図3の演算処理部24で行なわれる。本実施形態では、斜め方向で微分しているので、検出対象欠陥の方向と一致する可能性が少なく、上下方向のみ又は左右方向のみの微分よりも良好な結果を得ることができる。なお、検出対象欠陥の方向によっては、上下方向のみ又は左右方向のみの微分であっても良い。又、微分フィルタを用いることなく、濃淡画像を、例えば特開2002−297029号公報に記載されているように、所定方向にずらして加算したり、特開2007−4294号公報に記載されているような立体地図作成技術を流用することによって、擬似立体化を行うこともできる。
【0048】
X線センサ9から溶接部81の1周分のX線透過画像が入力し擬似立体化された合成画像が形成されると、検査者は操作部23を操作して判定作業を開始する(ステップS5)。
【0049】
判定作業に入ると、検査者は表示部25に表示された合成画像42を確認して欠陥の有無を判定する(ステップS6)。
【0050】
この確認の結果、表示部25に表示された合成画像42で欠陥を見出さないとき(ステップS6の判定結果N)、検査者は操作部23を操作して合成画像42を横にスクロールして次の画面を表示する(ステップS7)。
【0051】
また、検査者が合成画像42で欠陥を検出すると(ステップS6の判定結果Y)、欠陥の種類を確認し(ステップS8)、図11に示すように、丸いブローホール等の1種欠陥51を検出すると(ステップS8の判定結果Y)、操作部23を操作して欠陥の種類として1種欠陥を指定する(ステップS9)。
【0052】
判定支援部26は検査者が1種欠陥を指定すると、表示部25のカーソル表示領域44に1種欠陥判定用カーソル31を表示する。この表示された1種欠陥判定用カーソル31を検査者が操作部23のマウスにより合成画像42の1種欠陥51がある位置に移動し、1種欠陥51を覆うように回転して、図11に示すように、1種欠陥51がある領域を指定する。1種欠陥判定用カーソル31により1種欠陥51がある領域が指定されると、判定支援部26は表示部25のカーソル表示領域44に複数の1種欠陥寸法判定用カーソル32を表示する。検査者は表示された複数の1種欠陥寸法判定用カーソル32のなかから検出した各1種欠陥51を覆う1種欠陥寸法判定用カーソル32を選択して、操作部23のマウスにより、図11に示すように、各1種欠陥51の位置に選択した1種欠陥寸法判定用カーソル32を移動して欠陥の位置と大きさの判定を指示する。判定支援部26は1種欠陥判定用カーソル31の位置と確認帯15の画像43に示すスケールから1種欠陥51がある位置を判定し、各1種欠陥51を覆う1種欠陥寸法判定用カーソル32により各1種欠陥51の大きさを判定して、欠陥の種類とともに一時記憶する(ステップS10)。
【0053】
また、検査者が合成画像42で欠陥を検出して欠陥の種類を確認した結果(ステップS6,S8)、図11に示すように、細長いスラグ巻き込みや融合不良等に類する2種欠陥52を検出すると(ステップ8の判定結果N)、検査者は操作部23を操作して欠陥の種類として2種欠陥を指定する(ステップS11)。
【0054】
判定支援部26は検査者が2種欠陥を指定すると、表示部25のカーソル表示領域44に2種欠陥判定用カーソル33を表示する。この表示された2種欠陥判定用カーソル33を検査者が操作部23のマウスにより合成画像42の2種欠陥52の一方の端部に移動して欠陥の始端位置を指定する。その後、検査者は2種欠陥判定用カーソル33を2種欠陥52の他方の端部に移動して欠陥の終端位置を指定する。判定支援部26は指定された2種欠陥判定用カーソル33の位置と確認帯15の画像43に示すスケールから2種欠陥52がある位置を判定し、2種欠陥判定用カーソル33で指定された欠陥の始端位置と終端位置から2種欠陥52の長さを判定して、欠陥の種類とともに一時記憶する(ステップS12)。
【0055】
この欠陥の検出と判定処理を合成画像42を横にスクロールしながら溶接部81の全ての範囲について繰り返す(ステップS13,S7,S6)。溶接部81の全ての範囲について欠陥の検出と判定処理を行ったら、判定支援部26は判定結果により、図12に示すように、各欠陥の種類と位置と大きさを示す判定経過図45を作成する(ステップS13,S14)。例えば、図11に示すように、表示部25に表示された合成画像42のある範囲に大きさが3mmと2mmの1種欠陥51と長さが2.5mmの2種欠陥52がある場合、各欠陥51,52の位置と大きさを示す判定経過図45を作成し、演算処理部24に送るとともに表示部25に合成画像42とともに表示する。演算処理部24は送られた判定経過図45を記憶部27に格納する。この表示部25に表示された合成画像42と判定経過図45を確認した検査者が操作部23によりプリント出力を指示すると、演算処理部24は記憶部27に格納された合成画像42と判定経過図45を撮像条件等とともに読み出して画像出力部28に送り、プリンタ30で記録紙に印刷させる。そして検査者が合成画像42等の送信を指示すると、演算処理部24は記憶部27に格納された合成画像42と判定経過図45を撮像条件等とともに読み出して送信部29に送る。送信部29は送られた合成画像42等の情報を圧縮して最終処理装置4に送信して、次の溶接部の検査に入る(ステップS15)。
【0056】
このように検査者が確認した欠陥の種類に応じた欠陥判定用のカーソル31,32,33を表示し、各カーソル31〜33により欠陥の位置と大きさを判定するから、欠陥の位置と大きさを迅速かつ精度良く判定することができる。
【0057】
なお、擬似立体化画像と擬似立体化前の通常の二次元画像をワンタッチで切換表示可能としたり、並べて表示可能として、判定精度を更に高めることもできる。
【0058】
最終処理装置4の受信部34は、画像処理装置3の送信部29から送信された合成画像42と判定経過図45等の各種欠陥情報等を伸長して記憶部35に格納する。この処理を各検査位置毎に繰り返して、各溶接部毎に各種欠陥情報等を記憶部35に格納する。所定の溶接部の画像入力と判定作業が終了した後、判定確認部36は、記憶部35に格納された各溶接部の各種欠陥情報等から最終判定を行い、各溶接部の欠陥の有無と欠陥の種類や大きさを示す一覧表を作成して各種条件と合成画像42や判定経過図45とともに表示部37に表示し、出力部38を介して外部記憶装置等に出力する。
【0059】
本実施形態においては、微分処理を行なっているため、濃淡差があまりなくても擬似立体化画像を構築できる。又、図10に例示するような微分フィルタを用いているので、時間がかからず、迅速確実である。なお、擬似立体化の方法は、これに限定されない。又、X線センサも、CdTeを用いたものに限定されない。
【0060】
本実施形態においては、X線センサ9が、発明者が特開平10−115605号で提案した超音波探傷用スキャナの超音波探触子とワンタッチで交換可能とされているので、構成が簡略である。なお、X線センサ専用のスキャナを設けることも可能である。
【0061】
又、上記実施形態は画像処理装置3から合成画像42と判定経過図45等を送信部29を介して最終処理装置4に送信する場合について説明したが、合成画像42と判定経過図45等を外部のハードディスク等に格納し、最終処理装置4はハードディスク等から合成画像42と判定経過図45等を読み出すようにしても良い。
【0062】
また、上記実施形態は溶接用レール12に沿ってスキャナ本体13を走行させる場合について説明したが、専用のガイドレールを設けたり、図13に示すように、スキャナ本体13aに例えば3個の磁気吸着方式のタイヤを有する車輪21を設け、3個の車輪21を管8の表面に吸着させながらスキャナ本体13aを走行させることにより、ガイドレールを使用しないで走行させるようにしても良い。
【0063】
前記実施形態においてはX線検査装置単体について説明していたが、本発明の適用対象は、これに限定されず、特許文献2や3で発明者が提案したハイブリッドデジタルシステムのX線検査部分として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…X線発生装置
2…画像入力装置
3…画像処理装置
4…最終処理装置
8…管
9…X線センサ
10…スキャナ駆動部
11…スキャナ制御部
13、13a…スキャナ本体
23…操作部
24…演算処理部
25…表示部
26…判定支援部
27…記憶部
28…画像出力部
81…溶接部(溶接ビード)
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線透過画像の欠陥判定方法及び装置に係り、特に、配管円周溶接継手の非破壊検査に用いるのに好適な、X線透過画像の欠陥判定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管円周溶接継手などの非破壊検査において、X線を用いる場合、従来はX線源に対して被検体の反対側に配置したX線フィルムを露光させ、該露光したX線フィルムの濃淡により判定者が目視で判定していた。
【0003】
一方、最近は、発明者が特許文献1で提案したように、X線センサによりX線透過画像をデジタル化して、モニタに映された映像で判定を行うデジタルX線検査技術もある。この場合、モニタに表示された画像から、透過度計や欠陥画像を識別し判断することになるが、画像濃度などの影響で欠陥や透過度計を識別できない場合がある。しかし、データとしては検出されているため、濃度やコントラストを強調することで検出が可能となる場合がある。即ち、物理的には検出されているが、判断する状況が異なることにより検出されてないと判断され、これらにより判定ミスになる可能性があった。
【0004】
配管円周溶接継手の非破壊検査のため、発明者は、特許文献1で提案したデジタルX線検査技術に、更に、波形記録式超音波自動探傷技術を組み合わせて、X線画像と超音波探傷データを同時に表示し、関連付けて判定することで、一台のシステムでX線検査と超音波検査を行えるようにしたハイブリッドデジタル検査技術を特許文献2や3で提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3730040号公報
【特許文献2】特許第3853751号公報
【特許文献3】特開2006−145278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にデジタル画像は複写しても画像は劣化しない。その反面、画像をモニタに表示した場合や印刷した場合には、かなりの劣化が見られアナログ画像と変わらない。問題となるのは判定時の画質であり、その画質の良し悪しは次の3要素で決まる。
(1)精密さ
(2)適正コントラスト&濃度
(3)低ノイズ
【0007】
そこで発明者は、(1)については高精度X線センサの開発、(2)については自動コントラスト調整機能の搭載、(3)についてはX線センサの低ノイズ化と積分回数増加のための高感度化等を行った。
【0008】
X線フィルムを使用した検査と比べて、デジタル画像は、拡大や画像濃度・コントラストの調整等が可能であるため、更なる欠陥検出性能の大幅な向上が期待できるはずであるが、実際には部分的な改善に留まっていた。
【0009】
X線検査において溶接部の傷の判定を行う場合、どのような場合でも、最初に画像の濃淡を人間の目で識別する必要がある。すなわち従来のX線検査では、人間による画像の濃淡の判別能力に全てを頼っている。
【0010】
しかしながら人間の濃淡識別能力はそれほど高いわけでなく、微小な変化は認識できない。判定資格を保有するには一定の視力を有する必要があるが、これは最低条件で、視力が良ければ微小な濃淡の変化を認識できるということではない。
【0011】
X線フィルムの判定作業では拡大鏡を用いることがある。しかし、これも微小で且つ一定以上の濃淡がある傷に対しては有効であるが、濃淡が少ないものに対しては効果が無く、逆に識別性を悪化させることも有る。これは、濃淡に応じて着色してカラー化した場合でも同様である。
【0012】
現在はX線フィルムを使用した方法からセンサによるデジタル画像を使った方法に移行する過程の一歩手前である。またデジタル画像ではフィルムと同等程度の画像を得ることは出来ても、人が観察するモニタに表示された時点で表示系の性能が支配的となり、画像は劣化し識別性が低下することは否めない。
【0013】
これまではセンサの高精度化、はたまた画像処理による濃淡の調整、ノイズの削除等により、かなりの部分を解決してきたが、前述した人間の目の識別能力については十分には考慮していなかった。
【0014】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、人間の目の識別能力を考慮し、デジタル画像の特性を生かして、識別性を向上することにより、デジタル化されたX線透過画像の欠陥判定を、これまでより容易、迅速且つ正確に行なえるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者は、まず、人間が識別しやすい画像について検討を行った。その結果を次に示す。
【0016】
人間は画像を目で見て脳内で像を構築する。自然状態は全て立体的であるため、たとえば家族の写真を見たときは立体的な家族の像を容易に脳内に構築でき家族であると認識する。
【0017】
しかしながら、たとえば溶接の透過写真を見た場合には、脳内に立体化した像を構築することが困難なため、単なるモザイク・模様として認識せざるを得ない。その画像を使って判定を行うため、脳内での処理が遅れて、迅速且つ正確な判断が難しくなる。いわゆる直感的にストレートには認識できないわけである。
【0018】
透過画像を脳内で立体化しやすい画像に処理して見せることで、これらの障害が無くなり、脳内での認識が迅速かつ正確に行なえる。即ち、人間は三次元世界で生活しているため、学習によって立体映像では脳の働きが活性して、直観力や機械以上の能力が発揮できる。従って、二次元の画像を立体化することで、脳の働きが活性化する。
【0019】
画像処理は、その画像で判定作業を行なうため極端な立体化はできない。また処理に時間をかけることも避ける必要が有る。そのため、適正に設計したフィルターによって擬似立体化処理を行なう。
【0020】
以上を行なった結果、ほとんどの人が欠陥の識別が容易になったと感じ、更に透過度計識別度については25%以上の識別性の向上が確認出来た。
【0021】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するに際して、X線透過画像を擬似立体化した後、該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定するようにして、前記課題を解決したものである。
【0022】
本発明による処理を行なう前の濃淡画像の例を図1(A)、擬似立体化処理後の画像の例を図1(B)に示す。
【0023】
なお、擬似立体化に際しては、凸であると異物付着と誤解し易いので、欠陥を凹ませる方が傷と直感し易く判定が容易である。そこで、前記擬似立体化を、検出対象欠陥を正常部より凹んでいるように見せるものとすることができる。
【0024】
又、前記擬似立体化を、微分フィルタの適用により行なうことができる。
【0025】
又、前記微分フィルタを、検出対象欠陥の方向と異なる方向に微分するものとすることができる。
【0026】
又、前記擬似立体化された画像と、擬似立体化前の画像の両者を用いて被検体の欠陥を判定することができる。
【0027】
本発明は、また、デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するための欠陥判定装置において、X線透過画像を擬似立体化する手段と、該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定するための手段と、を備えたことを特徴とするX線透過画像の欠陥判定装置を提供するものである。
【0028】
更に、前記擬似立体化された画像と、擬似立体化前の画像の両者を表示する手段を備えることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、平面画像の濃淡認識や色認識に比べて判定が容易な擬似立体化を行なうことによって、直感的に且つ瞬間的に欠陥を識別でき、従来より容易、迅速且つ正確に欠陥判定を行なうことが可能となる。又、コピーされた擬似立体化画像も、デジタル画像であるため、劣化しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による処理前後の画像の例を比較して示す図
【図2】本発明を適用するのに好適なX線検査装置の実施形態の構成図
【図3】前記実施形態における画像入力装置と画像処理装置と最終処理装置の構成を示すブロック図
【図4】同じくスキャナ駆動部の構成を示す正面図
【図5】同じく側面図
【図6】同じく欠陥判定用カーソルの構成図
【図7】同じく検査状況を示す斜視図
【図8】前記実施形態の動作を示す流れ図
【図9】同じく表示部の画面表示例を示す図
【図10】前記実施形態で用いる擬似立体化用の微分処理フィルタの例を示す図
【図11】前記実施形態の欠陥を含む合成画像の表示例を示す図
【図12】同じく判定経過図の構成図
【図13】他のスキャナ駆動部の例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0032】
本発明を実施する為のX線検査装置の実施形態は、特許文献1と同様に、図2に示す如く、X線発生装置1と画像入力装置2と画像処理装置3と最終処理装置4を有する。
【0033】
X線発生装置1は電源装置5にX線制御部6とドラム7を介して接続され、検査する管8内を走行して溶接部にX線を照射する。
【0034】
画像入力装置2は、図3のブロック図に示すように、X線センサ9とスキャナ駆動部10とスキャナ制御部11を有する。X線センサ9はCCDセンサと蛍光体(例えばCdTe)からなり、発明者が特開平10−115605号で提案した超音波探傷用スキャナと同様のスキャナ駆動部10に、超音波自動探傷システムの超音波探触子とワンタッチで交換可能に搭載されている。スキャナ駆動部10は、図4の平面図及び図5の側面図に示すように、溶接用レール12上を走行するT字状のスキャナ本体13と、発明者が特開2009−122982号で提案した、大体の位置と画像の連結の確認に用いるための、例えばジグザグ線パターンと数字でなる確認帯15を有する。
【0035】
前記スキャナ本体13には、X線センサ9が設けられている。
【0036】
また、スキャナ本体13には、このスキャナ本体13を溶接部(溶接ビード)81の長手方向、本例では管8の円周方向に第1のピッチで移動させる第1移動部(図示省略)と、スキャナ本体13を溶接ビード81の長手方向に対して直角方向、本例では管8の中心軸線方向に第2のピッチで移動させる第2移動部(図示省略)が設けられている。
【0037】
管8は、溶接ビード81によって接続されている。溶接ビード81は、管8に取り付けられた溶接用レール12上を走行する溶接棒搬送手段(図示省略)によって溶接棒が搬送され、管8の突き合わせ部に設けられたV字状の開先に肉盛り溶接されることによって形成される。なお、溶接用レール12には、溶接棒搬送手段の走行距離を計測するためのラック(図示省略)が設けられている。
【0038】
図5において、17は、スキャナ本体13に取付けられた移動用パルスモータ、18はカバーである。
【0039】
確認帯15は一定寸法、例えば10mm単位の目盛を有し、管8の溶接部81近傍に巻回して取付けられる。スキャナ制御部11は画像処理装置3からの信号によりスキャナ駆動部10の動作を制御する。
【0040】
画像処理装置3は、図3に示すように、操作部23と演算処理部24と表示部25と判定支援部26と記憶部27と画像出力部28及び送信部29を有する。操作部23はキーボードとマウスを有し、検査者が各種情報を入力するとともに各種操作を行う。演算処理部24はX線センサ9から連続して送られる溶接部81のX線透過画像を積分処理してノイズを除去し、管8の1周分つなげた合成画像を形成して、形成した合成画像をX線センサ9で撮像した確認帯15の画像とともに表示部25に表示する。判定支援部26は検査者が入力した疵種に応じて欠陥判定用のカーソルを表示部25に表示し、入力した疵種と表示部25の各カーソルにより示された位置と寸法を示す判定経過図を作成する。欠陥判定用のカーソルは、図6に示すように、一定寸法、例えば各辺の長さが10mmの正方形と、正方形に外接する円からなり、検査者の操作により移動して、丸いブローホール等の1種欠陥の位置を示す1種欠陥判定用カーソル31と、複数の寸法、例えば3.0mm,2.0mm,1.0mm,0.7mm,0.5mmの直径を有する円からなり、検査者の操作により1種欠陥の位置に移動して欠陥の寸法を示す1種欠陥寸法判定用カーソル32及び細長いスラグ巻き込みや融合不良等に類する2種欠陥の両端を示し、その寸法を指定するための2種欠陥判定用カーソル33を有する。記憶部27は演算処理部24で形成した合成画像や各種欠陥情報を格納する。画像出力部28は合成画像や各種欠陥情報や撮像条件をプリンタ30に出力して印刷させる。送信部29は合成画像や各種欠陥情報を圧縮して最終処理装置4に送信する。
【0041】
最終処理装置4は、遠距離伝達の場合に必要で、図3のブロック図に示すように、受信部34と記憶部35と判定確認部36と表示部37及び出力部38を有する。受信部34は画像処理装置3の送信部29から送信された合成画像や各種欠陥情報等を伸長して記憶部35に格納する。判定確認部36は記憶部35に格納された各溶接部81の合成画像と各種欠陥情報を確認して最終判定を行う。表示部37は判定確認部36で判定した結果を合成画像と各種欠陥情報等とともに表示し、出力部38は判定確認部36で判定した結果を合成画像と各種欠陥情報等とともに外部記憶装置等に出力する。ここでは、画像処理装置3と最終処理装置4が分けられているが、画像処理装置3と最終処理装置4は一体でも良く、特に、遠距離伝達が不要な場合は、最終処理装置4を省略することもできる。
【0042】
上記のように構成したX線検査装置で、図7に示すように管8の溶接部81を検査するときの動作を、図8の流れ図を参照して説明する。
【0043】
まず、図2に示すように、管8の検査する溶接部81の近傍に確認帯15を巻回して固定する。そして溶接用ガイドレール12にX線センサ9を取り付けたスキャナ本体13を配置し、X線発生装置1を管8内で走行させて溶接部81まで移動する。
【0044】
次に、検査者は画像処理装置3の操作部23から撮像条件や検査位置等の作業データを入力して記憶部27に格納し、図9の画面表示図に示すように、表示部25の条件設定領域41に表示する(ステップS1)。
【0045】
この状態で操作部23で検査開始を指示すると、X線発生装置1は溶接部81の内面にX線を照射し、演算処理部24は設定された作業データをスキャナ制御部11に送る。スキャナ制御部11は送られた作業データによりスキャナ駆動部10のスキャナ本体13を溶接用レール12に沿って移動させる。スキャナ本体13に取り付けられたX線センサ9は溶接部81に沿って移動しながらX線透過画像と確認帯15の画像を逐次撮像して演算処理部24に送る(ステップS2)。このX線センサ9でX線透過画像と確認帯15の画像を撮像するときに、X線センサ9はバネ(図示省略)を介して上下動できるように取り付けられ、両端部に位置決め用の車輪(図示省略)を有するセンサ固定部(図示省略)により、溶接部81と確認帯15から常に一定位置を保って移動することができる。
【0046】
演算処理部24はX線センサ9から連続して送られる溶接部81のX線透過画像を積分処理してノイズを除去して1周分つなげた合成画像を形成して、形成した合成画像をX線センサ9で撮像した確認帯15の画像とともに記憶部27に格納するとともに、図8に示すように、表示部25に合成画像42と確認帯15の画像43を表示する(ステップS3)。
【0047】
次いで、図10に例示するような微分フィルタを用いて、中央の画素に各位置の値を加算し、本発明による擬似立体化処理を行なう(ステップS4)。この擬似立体化処理は、図3の演算処理部24で行なわれる。本実施形態では、斜め方向で微分しているので、検出対象欠陥の方向と一致する可能性が少なく、上下方向のみ又は左右方向のみの微分よりも良好な結果を得ることができる。なお、検出対象欠陥の方向によっては、上下方向のみ又は左右方向のみの微分であっても良い。又、微分フィルタを用いることなく、濃淡画像を、例えば特開2002−297029号公報に記載されているように、所定方向にずらして加算したり、特開2007−4294号公報に記載されているような立体地図作成技術を流用することによって、擬似立体化を行うこともできる。
【0048】
X線センサ9から溶接部81の1周分のX線透過画像が入力し擬似立体化された合成画像が形成されると、検査者は操作部23を操作して判定作業を開始する(ステップS5)。
【0049】
判定作業に入ると、検査者は表示部25に表示された合成画像42を確認して欠陥の有無を判定する(ステップS6)。
【0050】
この確認の結果、表示部25に表示された合成画像42で欠陥を見出さないとき(ステップS6の判定結果N)、検査者は操作部23を操作して合成画像42を横にスクロールして次の画面を表示する(ステップS7)。
【0051】
また、検査者が合成画像42で欠陥を検出すると(ステップS6の判定結果Y)、欠陥の種類を確認し(ステップS8)、図11に示すように、丸いブローホール等の1種欠陥51を検出すると(ステップS8の判定結果Y)、操作部23を操作して欠陥の種類として1種欠陥を指定する(ステップS9)。
【0052】
判定支援部26は検査者が1種欠陥を指定すると、表示部25のカーソル表示領域44に1種欠陥判定用カーソル31を表示する。この表示された1種欠陥判定用カーソル31を検査者が操作部23のマウスにより合成画像42の1種欠陥51がある位置に移動し、1種欠陥51を覆うように回転して、図11に示すように、1種欠陥51がある領域を指定する。1種欠陥判定用カーソル31により1種欠陥51がある領域が指定されると、判定支援部26は表示部25のカーソル表示領域44に複数の1種欠陥寸法判定用カーソル32を表示する。検査者は表示された複数の1種欠陥寸法判定用カーソル32のなかから検出した各1種欠陥51を覆う1種欠陥寸法判定用カーソル32を選択して、操作部23のマウスにより、図11に示すように、各1種欠陥51の位置に選択した1種欠陥寸法判定用カーソル32を移動して欠陥の位置と大きさの判定を指示する。判定支援部26は1種欠陥判定用カーソル31の位置と確認帯15の画像43に示すスケールから1種欠陥51がある位置を判定し、各1種欠陥51を覆う1種欠陥寸法判定用カーソル32により各1種欠陥51の大きさを判定して、欠陥の種類とともに一時記憶する(ステップS10)。
【0053】
また、検査者が合成画像42で欠陥を検出して欠陥の種類を確認した結果(ステップS6,S8)、図11に示すように、細長いスラグ巻き込みや融合不良等に類する2種欠陥52を検出すると(ステップ8の判定結果N)、検査者は操作部23を操作して欠陥の種類として2種欠陥を指定する(ステップS11)。
【0054】
判定支援部26は検査者が2種欠陥を指定すると、表示部25のカーソル表示領域44に2種欠陥判定用カーソル33を表示する。この表示された2種欠陥判定用カーソル33を検査者が操作部23のマウスにより合成画像42の2種欠陥52の一方の端部に移動して欠陥の始端位置を指定する。その後、検査者は2種欠陥判定用カーソル33を2種欠陥52の他方の端部に移動して欠陥の終端位置を指定する。判定支援部26は指定された2種欠陥判定用カーソル33の位置と確認帯15の画像43に示すスケールから2種欠陥52がある位置を判定し、2種欠陥判定用カーソル33で指定された欠陥の始端位置と終端位置から2種欠陥52の長さを判定して、欠陥の種類とともに一時記憶する(ステップS12)。
【0055】
この欠陥の検出と判定処理を合成画像42を横にスクロールしながら溶接部81の全ての範囲について繰り返す(ステップS13,S7,S6)。溶接部81の全ての範囲について欠陥の検出と判定処理を行ったら、判定支援部26は判定結果により、図12に示すように、各欠陥の種類と位置と大きさを示す判定経過図45を作成する(ステップS13,S14)。例えば、図11に示すように、表示部25に表示された合成画像42のある範囲に大きさが3mmと2mmの1種欠陥51と長さが2.5mmの2種欠陥52がある場合、各欠陥51,52の位置と大きさを示す判定経過図45を作成し、演算処理部24に送るとともに表示部25に合成画像42とともに表示する。演算処理部24は送られた判定経過図45を記憶部27に格納する。この表示部25に表示された合成画像42と判定経過図45を確認した検査者が操作部23によりプリント出力を指示すると、演算処理部24は記憶部27に格納された合成画像42と判定経過図45を撮像条件等とともに読み出して画像出力部28に送り、プリンタ30で記録紙に印刷させる。そして検査者が合成画像42等の送信を指示すると、演算処理部24は記憶部27に格納された合成画像42と判定経過図45を撮像条件等とともに読み出して送信部29に送る。送信部29は送られた合成画像42等の情報を圧縮して最終処理装置4に送信して、次の溶接部の検査に入る(ステップS15)。
【0056】
このように検査者が確認した欠陥の種類に応じた欠陥判定用のカーソル31,32,33を表示し、各カーソル31〜33により欠陥の位置と大きさを判定するから、欠陥の位置と大きさを迅速かつ精度良く判定することができる。
【0057】
なお、擬似立体化画像と擬似立体化前の通常の二次元画像をワンタッチで切換表示可能としたり、並べて表示可能として、判定精度を更に高めることもできる。
【0058】
最終処理装置4の受信部34は、画像処理装置3の送信部29から送信された合成画像42と判定経過図45等の各種欠陥情報等を伸長して記憶部35に格納する。この処理を各検査位置毎に繰り返して、各溶接部毎に各種欠陥情報等を記憶部35に格納する。所定の溶接部の画像入力と判定作業が終了した後、判定確認部36は、記憶部35に格納された各溶接部の各種欠陥情報等から最終判定を行い、各溶接部の欠陥の有無と欠陥の種類や大きさを示す一覧表を作成して各種条件と合成画像42や判定経過図45とともに表示部37に表示し、出力部38を介して外部記憶装置等に出力する。
【0059】
本実施形態においては、微分処理を行なっているため、濃淡差があまりなくても擬似立体化画像を構築できる。又、図10に例示するような微分フィルタを用いているので、時間がかからず、迅速確実である。なお、擬似立体化の方法は、これに限定されない。又、X線センサも、CdTeを用いたものに限定されない。
【0060】
本実施形態においては、X線センサ9が、発明者が特開平10−115605号で提案した超音波探傷用スキャナの超音波探触子とワンタッチで交換可能とされているので、構成が簡略である。なお、X線センサ専用のスキャナを設けることも可能である。
【0061】
又、上記実施形態は画像処理装置3から合成画像42と判定経過図45等を送信部29を介して最終処理装置4に送信する場合について説明したが、合成画像42と判定経過図45等を外部のハードディスク等に格納し、最終処理装置4はハードディスク等から合成画像42と判定経過図45等を読み出すようにしても良い。
【0062】
また、上記実施形態は溶接用レール12に沿ってスキャナ本体13を走行させる場合について説明したが、専用のガイドレールを設けたり、図13に示すように、スキャナ本体13aに例えば3個の磁気吸着方式のタイヤを有する車輪21を設け、3個の車輪21を管8の表面に吸着させながらスキャナ本体13aを走行させることにより、ガイドレールを使用しないで走行させるようにしても良い。
【0063】
前記実施形態においてはX線検査装置単体について説明していたが、本発明の適用対象は、これに限定されず、特許文献2や3で発明者が提案したハイブリッドデジタルシステムのX線検査部分として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…X線発生装置
2…画像入力装置
3…画像処理装置
4…最終処理装置
8…管
9…X線センサ
10…スキャナ駆動部
11…スキャナ制御部
13、13a…スキャナ本体
23…操作部
24…演算処理部
25…表示部
26…判定支援部
27…記憶部
28…画像出力部
81…溶接部(溶接ビード)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するに際して、
X線透過画像を擬似立体化した後、
該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定することを特徴とするX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項2】
前記擬似立体化が、検出対象欠陥を正常部より凹んでいるように見せるものであることを特徴とする請求項1に記載のX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項3】
前記擬似立体化を、微分フィルタの適用により行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載のX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項4】
前記微分フィルタが、検出対象欠陥の方向と異なる方向に微分するものであることを特徴とする請求項3に記載のX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項5】
前記擬似立体化された画像と、擬似立体化前の画像の両者を用いて被検体の欠陥を判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項6】
デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するための欠陥判定装置において、
X線透過画像を擬似立体化する手段と、
該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定するための手段と、
を備えたことを特徴とするX線透過画像の欠陥判定装置。
【請求項7】
前記擬似立体化された画像と、擬似立体化前の画像の両者を表示する手段を更に備えたことを特徴とする請求項6に記載のX線透過画像の欠陥判定装置。
【請求項1】
デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するに際して、
X線透過画像を擬似立体化した後、
該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定することを特徴とするX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項2】
前記擬似立体化が、検出対象欠陥を正常部より凹んでいるように見せるものであることを特徴とする請求項1に記載のX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項3】
前記擬似立体化を、微分フィルタの適用により行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載のX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項4】
前記微分フィルタが、検出対象欠陥の方向と異なる方向に微分するものであることを特徴とする請求項3に記載のX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項5】
前記擬似立体化された画像と、擬似立体化前の画像の両者を用いて被検体の欠陥を判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のX線透過画像の欠陥判定方法。
【請求項6】
デジタル化されたX線透過画像から被検体の欠陥を判定するための欠陥判定装置において、
X線透過画像を擬似立体化する手段と、
該擬似立体化された画像を用いて被検体の欠陥を判定するための手段と、
を備えたことを特徴とするX線透過画像の欠陥判定装置。
【請求項7】
前記擬似立体化された画像と、擬似立体化前の画像の両者を表示する手段を更に備えたことを特徴とする請求項6に記載のX線透過画像の欠陥判定装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【公開番号】特開2011−127921(P2011−127921A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284231(P2009−284231)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】
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