説明

X線CT装置および投影データの収集方法

【課題】呼吸に同期した断層画像を得る際の被曝線量を軽減する。
【解決手段】呼吸計で取得した被検者の呼吸に同期して、少なくとも1呼吸周期の断層画像を再構成するX線CT装置において、投影データを取得したときの被検者の呼吸が浅かったときに、この時よりも深い呼吸部分に相当する呼吸位相範囲の投影データのみを追加して取得し、追加して取得して投影データと先に取得した投影データとにより通常の呼吸に同期した断層画像を再構成するようにした。これにより、不足する位相範囲のみの投影データを追加して取得するので、被検体の被曝線量を軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の呼吸運動に同期した断層画像を再構成するX線CT装置に係り、特に投影データを収集する際の被曝線量の低減を図ることのできるX線CT装置および投影データの収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の頭部を始めとして、胸部や腹部の断層画像を得るX線CT装置が医療の現場で広く使用されており、このX線CT装置により被検者の呼吸運動に同期して胸部や腹部の撮影を行う、いわゆる呼吸同期スキャンが従来から実施されている。ところで、被検者の呼吸運動は不規則になりがちであり、同じ深さ、同じ周期で呼吸を続けることが困難な場合が多く、呼吸に同期した所望の断層画像を得たり、再現性のある断層画像を得たりすることを困難にしていた。
【0003】
そこで従来技術として、被検者に対して息を吸うタイミングと息を吐くタイミングとを知らせるように、呼吸位相の1周期を円運動として表現した画像を提示し、画像上の印が円の上に来たときに息を吸って、印が円の下に来たときに息を吐くことを繰り返してもらい、その動作が落ち着いたときにスキャンを実施するようにしたものが知られていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−136668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の技術では、被検者は提示された画像の指示に従って強制的に呼吸を強いられることになり、緊張感も強くスキャンを開始した後で呼吸を乱してしまい、収集した画像データによって呼吸に同期した所望の断層画像を得ることができなくなることが多々あった。このような場合には再度スキャンを実施しなければならず、被検者にとってはX線被曝量が増加してしまうことが大きな問題であった。またスキャンに時間がかかり、被検者や医療スタッフの負担も増加することも問題であった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、被検者の周りからX線を照射し、前記被検者を透過したX線を検出することにより、前記被検者の断層画像を再構成するX線CT装置において、前記被検者の呼吸情報を取得する呼吸情報取得手段と、この呼吸情報取得手段で取得した呼吸情報に同期して、前記被検者にX線を照射して、断層画像を再構成するための投影データを取得する投影データ取得手段と、この投影データ取得手段により投影データを取得したときの前記被検者の呼吸が浅かったときに、この時よりも深い呼吸部分に相当する呼吸位相範囲の投影データを取得し、先に取得した投影データとともに断層画像を再構成するように制御する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、X線CT装置によって被検者の呼吸運動に同期した断層画像を再構成するための投影データの収集方法であって、前記被検者の呼吸情報を取得して、基準とする呼吸位相を設定する第1のステップと、前記被検者の呼吸運動に同期して、少なくとも1呼吸周期分の投影データを収集する第2のステップと、この第2のステップで投影データを収集したときの前記被検者の呼吸位相を、前記第1のステップで設定した基準呼吸位相と比較する第3のステップと、この第3のステップでの比較結果、前記第2のステップで投影データを収集したときの呼吸位相が前記基準呼吸位相に対してずれていた場合に、ずれていた基準呼吸位相の範囲について、前記被検者の投影データを追加して収集する第4のステップと、から成り、第4のステップで収集した投影データと前記第2のステップで収集した投影データを含めて、前記被検者の基準呼吸位相に相当する1呼吸周期分の投影データとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、呼吸同期スキャンにおいて、例え呼吸不足などによって所望の呼吸位相範囲の投影データが収集されなかったとしても、スキャンをやり直して再度1呼吸分の投影データを収集することなく、不足している呼吸位相範囲の投影データだけを追加的に収集するようにして、これを最初に収集した投影データに合わせて、所望の標準とした1呼吸分の投影データとすることにより、呼吸に同期した1呼吸分の断層画像が得られ、被検者の被曝量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るX線CT装置の一実施例の概略的な構成を示したブロック図である。
【図2】標準に設定した呼吸位相データの一例を示した説明図である。
【図3】呼吸失敗時の呼吸位相データの一例を示した説明図である。
【図4】追加して投影データを収集する位相範囲を説明するための説明図である。
【図5】不足している位相範囲の投影データを収集する際の、スキャン開始タイミングを説明した説明図である。
【図6】本発明の動作の流れを説明するために示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るX線CT装置および投影データの収集方法の一実施例について、図1ないし図6を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係るX線CT装置の一実施例の概略的な構成を示したブロック図である。このX線CT装置は大別すると、撮影部となる架台10と、架台10に被検者を位置づけるための寝台装置20と、架台10と寝台装置20の動作を制御するとともに、撮影によって得たデータを基に画像再構成処理などを行うための制御装置30と、被検者の呼吸の深さや周期など呼吸運動に関する情報を取得するための呼吸計40とから構成されている。
【0013】
架台10のほぼ中央部には開口部11が形成されている。そして架台10内には、図示しないが開口部11を囲むように環状の回転部が設けられており、この回転部に丁度開口部11を挟んで対向するように、X線管とX線検出器が配置されている。また、回転部にはX線管に管電流や管電圧を供給するための高電圧発生装置や、X線検出器で検出された透過データを積分してデジタル信号に変換するデータ収集システム(data acquisition system:以下、DASと略称する。)が設けられている。さらに、回転部を回転させるための回転駆動部も設けられている。
【0014】
なお、回転駆動部は、従来は架台10の固定部に設けた電動機から、ベルトや歯車などを介して回転部を回転駆動するものが一般的であった。しかし近時、X線CT装置の高速化、高機能化に伴い、ベルトや歯車を使用せずに、ダイレクトドライブ(DD)モータ駆動方式により回転部を駆動するようになってきた。このダイレクトドライブ(DD)モータ駆動方式は、回転部に巻線を設けるとともに、架台の固定部に磁石を設け、回転部の巻線に電流を供給することによって、固定部の磁石からの磁束と回転部の巻線から発生する磁束とが反撥し、回転部がモータの回転子として直接的に無接触で回転駆動されるものである(例えば、特開2002−78703号公報参照。)。この場合、固定部に巻線を設けるとともに、回転部に磁石を設けるように、巻線と磁石の設置対象を逆にしても同様のダイレクトドライブモータ駆動方式が構成されることは言うまでもない。
【0015】
寝台装置20の上面には、被検者を載置する天板21が設けられている。そして寝台装置20の内部には、天板21をスライドさせたり、寝台装置20自体を上下動させたりするためのモータが設けられていて、後述する制御装置30から供給される寝台制御信号に基づき、天板21を架台10の開口部11側へスライドさせて、被検者を所望のスライス位置へ位置づけたり、所定のスキャン範囲にわたって連続的に移動させたりする。
【0016】
制御装置30は、システム全体を有機的に制御するためのコンピュータを主体とした中央処理装置31と、各種制御プログラムが格納されているとともに、架台10内のDASで収集される所定角度ごとの投影データなどを格納する記憶部32と、架台10内の回転駆動部を制御する駆動制御部33と、設定されたスキャン条件でX線の曝射タイミングなどを制御するスキャン制御部34と、寝台装置20や天板21の動作を制御する寝台制御部35と、記憶部32に格納される投影データに対して所定のアルゴリズムで処理して断層画像を生成する画像再構成部36と、画像再構成部36で生成された断層画像を保存する画像メモリ37と、スキャン条件などの参照データや画像再構成された断層画像などを表示するモニタ38と、キーボートを始めマウスやトラックボール、ジョイスティックなどのポインティングデバイスを有し、操作者の各種指示を入力する入力部39を備えている。なお、入力部39にはスキャン開始を指示する際に押されるスキャン開始スイッチ39aが設けられている。
【0017】
呼吸計40は、例えば、被検者に接着した電極を介して、被検者の体動を検出したり、或いは、被検者の胸部、腹部などの撮影部位の側面からレーザー光線や赤外線カメラによって、被検者の体動を検出したりすることによって、被検者の呼吸の深さや周期など呼吸に関する情報(以下、呼吸位相データと称する。)を取得するものである。そして、被検者の気持ちが落ち着いて最も自然な無理のない呼吸の状態のときにスキャンを開始できるようにするため、呼吸計40の出力は制御装置30へ供給されるとともに、モニタ38に呼吸曲線として表示して操作者が確認できるようになっている。
【0018】
なお、X線CT装置によって呼吸同期スキャンを実施するに際しては、天板21上に寝かされて撮影準備の整った状態で、被検者に呼吸練習をしてもらい、気持ちを落ち着かせて最も自然な無理のない呼吸の状態であることが望まれる。
【0019】
そのような理由から本発明では、制御装置30に、呼吸練習によって最も自然な無理のない状態での呼吸位相データを、基準の呼吸データとして記録するとともに、スキャンを実施したときの実際の呼吸位相データを記録する呼吸メモリ41と、呼吸同期スキャンを実施したときの実際の呼吸位相データを、呼吸メモリ41に記録されている基準の呼吸位相データと比較する呼吸比較器42が設けられている。
【0020】
次に、上記のように構成された本発明に係るX線CT装置において、特に呼吸同期スキャンを実施する際の動作について説明する。
【0021】
呼吸同期スキャンでは、息を吸ってから吐き終わるまでの、少なくとも1呼吸期間の全ての呼吸位相について投影データを収集し、その間の断層画像を再構成する。従って、例えば腹部のある部位を撮影する場合、息を吸って腹部を膨らませ、その後息を吐き出して腹部の膨らみを元の状態に戻すまでの数秒間にわたって、同一部位の投影データの収集が続けられる。そのため、撮影準備の整った状態で被検者に呼吸練習をしてもらい、気持ちを落ち着かせて最も自然な無理のない呼吸の状態を維持してもらうことになる。
【0022】
なお、被検者の呼吸の状態は呼吸計40によって取得されるので、呼吸練習によって最も自然だと思われる呼吸の状態での呼吸位相データを呼吸メモリ41に記録し、このときの呼吸位相データを標準とする。この標準とした呼吸位相データの一例を示すと、図2のように、呼気と吸気を滑らかに繰り返す波形の曲線Dで表され、縦軸は位相(p)、横軸は時間(t)であり、呼吸の深さはPであるとする。
【0023】
そこで、モニタ38に表示されている呼吸の曲線から、被検者の呼吸が落ち着いていると判断したときに操作者は入力部39のスキャン開始スイッチ39aをオンにする。このオン信号をトリガーとして、中央処理装置31は呼吸計40によって取得される呼吸位相において、呼気から吸気に転換する時点でスキャンを開始させ、1呼吸分後にスキャンを停止させるようにスキャン制御部34を動作させる。このようにして収集された、呼吸に同期した1呼吸分の投影データは記憶部32に格納され、その投影データを基に画像再構成部36において画像再構成処理が施されて、再構成された断層画像が画像メモリ37に保存されるとともにモニタ38に表示される。そして、スキャン時の呼吸位相データは呼吸メモリ41に記録される。
【0024】
ところで、被検者の呼吸が落ち着いたと判断して操作者が入力部39のスキャン開始スイッチ39aをオンにしてスキャンを開始したときに、何らかの原因で被検者の呼吸が乱れてしまい、標準に設定した呼吸位相データDよりも浅い呼吸状態でスキャンが実施されたものとする。図3は、呼吸失敗時すなわち標準よりも浅い呼吸をしたときの呼吸位相データDを示した、図2に対応する図であり、この場合は標準時の呼吸の深さPに対して、Pだけ呼吸が不足していることを表している。
【0025】
このような場合従来は、スキャンをやり直して再度1呼吸分の投影データを収集していたので、被検者は2スキャン分のX線被曝を受けることになっていた。そこで本発明では、スキャンをやり直す際に、1呼吸分の投影データ全てを再度収集するのではなく、不足している呼吸位相範囲の投影データだけを収集し、これを最初に収集した投影データに合わせて、所望の標準とした1呼吸分の投影データとすることによって、被曝量の低減を図るようにしている。
【0026】
図4は、スキャンを実施したものの呼吸に失敗した時の呼吸位相データD(破線で示す)と標準とした呼吸位相データD(実線で示す)とを重ねて表示したものである。なお図4では、時間Tで呼吸位相データDとDとも呼気から吸気に変換する位相に一致させてあり、その後の位相変化を時間の経過で見ると、呼吸位相データDの吸気から呼気へ変換する位相は時間T、次の呼気から吸気へ変換する位相は時間T、呼吸位相データDの次の呼気から吸気へ変換する位相は時間Tとなっている。
【0027】
ここで図4を見ると、時間Tから時間Tまでの呼吸位相データDは呼吸位相データDと同等であり、時間Tから時間Tまでの呼吸位相データDは時間Tから時間Tまでの呼吸位相データDと同等であることが分かる。従って、呼吸位相データDに同期するものとしてこの位相範囲に収集した投影データは、呼吸位相データDに同期して収集する時間Tから時間Tまでの位相範囲と、時間Tから時間Tまでの位相範囲との投影データに相当している。
【0028】
よって、呼吸位相データDに同期して時間Tから時間Tまでの位相範囲の投影データを追加して収集すれば、呼吸位相データDに同期する全ての位相範囲の投影データが得られることになる。このようにして、失敗した呼吸位相データDに同期して収集した投影データを無駄にすることなく、不足している分だけの投影データを追加して収集すれば、所望の1呼吸周期分の投影データを得ることができ、被曝線量も軽減することができる訳である。
【0029】
次に、不足している呼吸位相データDに同期した時間Tから時間Tまでの位相範囲の投影データを追加して収集する場合の動作について説明する。
【0030】
図4から分かるように、時間Tから時間Tまでの位相範囲における呼吸位相データDと呼吸位相データDとの傾き(すなわち、呼吸の速度)は、ほぼ同じく急峻に推移するものの、時間Tに近づくと呼吸位相データDは吸気から呼気へ変換する位相になるため、データの傾きは急激に緩やかになり、時間Tにおいて呼吸位相データDの傾きはゼロになる。これに対して、時間Tにおける呼吸位相データDの傾きは急峻のままである。
【0031】
そこで本発明では、不足している呼吸位相データDに同期した位相範囲の投影データを収集する際のスキャン開始タイミングを、例えば、呼吸位相データDの位相速度に対して呼吸位相データDの傾きが急激に緩やかになり始める時点とするものとし、その時点の検出の仕方の一例を、図5を参照して説明する。
【0032】
すなわち、呼吸メモリ41に記録されている失敗した呼吸でスキャンを実施したときの呼吸位相データDを読み出しておき、この呼吸位相データDの傾きを、呼吸計40から得られる再スキャン時の呼吸位相データDの傾きと呼吸比較器42で比較する。このとき、図4でも説明したとおり、時間Tから時間Tまでの間では呼吸位相データDと呼吸位相データDの傾きはほぼ同じであり、この傾きを図5に線Aで示してある。ところが、時間Tに近づくとある時点から呼吸位相データDの傾きが緩やかになり始める。線Bはこの緩やかになり始めたときの呼吸位相データDの傾きを示したものである。そして、線Aと線Bとの交点が呼吸位相データDの傾きが緩やかになり始めた時点である。このようにして、呼吸位相データDの傾きが緩やかになり始める時点が検出されるので、この時点から再スキャンを開始させるものとする。なお、再スキャンを停止する時点は、再スキャンを開始してからの経過時間を設定しておいたり、呼吸位相データDの傾きが次にゼロになる時点に設定しておいたりするなど、適宜の手段が採用できる。
【0033】
上述した本発明の動作をフローチャートで示すと図6のようになる。
【0034】
先ずステップ1として、被検者を寝台装置20の天板21に寝かせて位置を合わせるなど、X線CT装置によるスキャンの準備を整える。次に、被検者に気持ちを落ち着けて最も自然な無理のない呼吸を繰り返すように、呼吸練習をしてもらう(ステップ2)。被検者の呼吸位相データは、呼吸計40で取得されてモニタ38に表示されるので、操作者はモニタ38の表示内容や被検者の様子などを観察し、呼吸が安定したかどうかを判断する(ステップ3)。
【0035】
ここで、呼吸が安定していないと判断したときはステップ2へ戻って、落ち着くまで呼吸の練習を続けてもらい、呼吸が安定していると判断したときはステップ4へ進み、操作者は入力部39から当該被検者の標準とする呼吸位相データを呼吸メモリ41に保存させる。さらに、被検者には同じような呼吸を続けてもらい、操作者はタイミングを図ってスキャン開始スイッチ39aを投入する(ステップ5)。これによってX線CT装置は、スキャンを開始し、予め設定されているシーケンスに従って、被検者の呼吸に同期した少なくとも1呼吸分の投影データを収集する。そして、このとき取得した投影データは記憶部32に、呼吸位相データは呼吸メモリ41に関連付けて保存される(ステップ6)。
【0036】
スキャン時の呼吸位相データは、呼吸メモリ41に保存されている標準とした呼吸位相データと呼吸比較器42で比較され、所望の呼吸でのスキャンが実行されたか否かが判断される(ステップ7)。そして、スキャン時の呼吸位相データと標準とした呼吸位相データとの差が許容範囲以内であれば、呼吸同期スキャンは成功と判断され、その投影データを基に画像再構成部36において画像再構成処理が施されて、再構成された断層画像が画像メモリ37に保存されるとともにモニタ38に表示され、スキャンは終了する。
【0037】
ただし、ステップ7において、スキャン時の呼吸位相データと標準とした呼吸位相データとの差が許容範囲を外れていると判断された場合は、ステップ9へ進み、操作者は入力部39を操作して、中央処理装置31に対して、追加スキャンによって投影データを収集すべき呼吸位相範囲を決定するように指示する。この指示を受けて中央処理装置31は、失敗したスキャン時の呼吸位相データと標準とした呼吸位相データとから、追加スキャンによって投影データを収集すべき呼吸位相範囲を演算して決定する。
【0038】
続いて、再度被検者に呼吸練習をしてもらい(ステップ10)、呼吸が安定したかどうかを判断する(ステップ11)。そして、呼吸が安定していると判断されたときはステップ12へ進み、操作者は入力部39のスキャン開始スイッチ39aを投入する。これにより中央処理装置31は、再スキャンのための動作を実行し、ステップ9において設定された呼吸位相範囲の投影データを収集し(ステップ13)、ここで収集された投影データは記憶部32に、呼吸位相データは呼吸メモリ41に関連付けて記録される(ステップ14)。
【0039】
これにより、標準とした呼吸位相範囲の投影データが収集されたことになるので、ステップ15へ進み、ステップ6で収集されステップ7で失敗と判断された呼吸位相範囲での投影データと、ステップ13で再スキャンにより取得した不足分の呼吸位相範囲の投影データとから、画像再構成部36において標準とした呼吸位相に同期した1呼吸分の断層画像が再構成される。なお、生成された断層画像は画像メモリ37に保存されるとともに、モニタ38に表示される。
【0040】
以上詳述したように本発明によれば、被検者の呼吸位相に同期した1呼吸分の断層画像を得る呼吸同期スキャンを実施した場合に、例え呼吸不足などによって所望の呼吸位相範囲の投影データが収集されなかったとしても、スキャンをやり直して再度1呼吸分の投影データを収集することなく、不足している呼吸位相範囲の投影データだけを追加的に収集するようにして、これを最初に収集した投影データに合わせて、所望の標準とした1呼吸分の投影データとし、呼吸に同期した1呼吸分の断層画像を得ることができる。これによって、被検者の被曝量を低減することができる。
【0041】
本発明は、上述の一実施例に限定されることなく要旨の範囲内で種々の態様での実施が可能であることは言うまでもない。例えば、回転駆動部の駆動はダイレクトドライブモータ駆動方式に限るものではなく、従来型の駆動方式であっても良い。
【符号の説明】
【0042】
10 架台
20 寝台装置
30 制御装置
40 呼吸計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の周りからX線を照射し、前記被検者を透過したX線を検出することにより、前記被検者の断層画像を再構成するX線CT装置において、
前記被検者の呼吸情報を取得する呼吸情報取得手段と、
この呼吸情報取得手段で取得した呼吸情報に同期して、前記被検者にX線を照射して、断層画像を再構成するための投影データを取得する投影データ取得手段と、
この投影データ取得手段により投影データを取得したときの前記被検者の呼吸が浅かったときに、この時よりも深い呼吸部分に相当する呼吸位相範囲の投影データを取得し、先に取得した投影データとともに断層画像を再構成するように制御する制御手段と、
を具備することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
X線CT装置によって被検者の呼吸運動に同期した断層画像を再構成するための投影データの収集方法であって、
前記被検者の呼吸情報を取得して、基準とする呼吸位相を設定する第1のステップと、
前記被検者の呼吸運動に同期して、少なくとも1呼吸周期分の投影データを収集する第2のステップと、
この第2のステップで投影データを収集したときの前記被検者の呼吸位相を、前記第1のステップで設定した基準呼吸位相と比較する第3のステップと、
この第3のステップでの比較結果、前記第2のステップで投影データを収集したときの呼吸位相が前記基準呼吸位相に対してずれていた場合に、ずれていた基準呼吸位相の範囲について、前記被検者の投影データを追加して収集する第4のステップと、
から成り、第4のステップで収集した投影データと前記第2のステップで収集した投影データを含めて、前記被検者の基準呼吸位相に相当する1呼吸周期分の投影データとすることを特徴とする投影データの収集方法。
【請求項3】
前記第4のステップとして追加して投影データを収集するときの開始位置は、第2のステップで投影データを収集したときの呼吸位相の速度に対して、そのときの呼吸位相の速度が速くなった時点とすることを特徴とする請求項2に記載の投影データの収集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−172804(P2011−172804A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40375(P2010−40375)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】