説明

X線CT装置

【課題】 微小レベルの振動を抑制することができるX線CT装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 回転架台1に発生する振動と逆位相の振動を回転架台1に付与することにより、回転架台1に発生する振動を相殺する。例えば、回転架台1に発生する振動を検出する振動検出器30を設置し、回転架台1に発生する振動を検出し、位相計算回路31にてその振動と逆位相の振動を算出し、電動モータ20等により逆位相の振動を回転架台1に付与する。また、回転架台1の振動波形が周期的な場合は、回転架台1の回転角度に対応させた振動波形を予め測定して記憶装置に記憶しておき、回転架台の回転角度から振動レベルを求め、その振動と逆位相の振動を回転架台1に付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はX線CT装置に関し、特に、X線源及びX線検出器を搭載した回転架台(ガントリ)の振動を抑制することができるX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、一般的に、X線源及びX線検出器を内蔵した回転架台(ガントリ)と、被検体を寝かせる寝台と、回転架台及び寝台の動作を制御するとともにX線検出器にて収集したX線投影データを処理して画像を再構成する制御系と、を備えて構成されている。
【0003】
回転架台は、通常、被検体にX線を斜めに入射させるためのチルト機構を備えており、このチルト機構を使って回転架台を寝台に対してチルト可能としている。このチルト機構は、回転架台に形成された開口部に挿入される被検体に対し、回転架台を寝台側又はその反対側に傾斜させることで、被検体の体軸に対して様々な角度の断層撮影を可能とするものである(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特公平5−43380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、X線CT装置においては、X線源及びX線検出器等を内蔵した回転架台(ガントリ)のバランスの不均衡により、回転架台の回転に伴い、振動が発生する。従来においては、固定式のカウンターウエイトを設置してそのカウンターバランスを調整することにより、バランスを取って振動を抑制していた。
【0006】
しかしながら、カウンターウエイトでは微小の振動(例えば0.3〜0.5mmに含まれる範囲の振動)を抑制することができない。X線CT装置における検出器の多列化、高分解能化及び回転架台(ガントリ)の高速回転化に伴い、その微小な振動を無視できないレベルになってきている。カウンターウエイトでは、X線源、X線検出器及び診断部位の間の位置ずれの原因となる微小な振動を抑制することができないため、その位置ずれが原因となって断層像の画質劣化が発生し、結果として高分解能化の要求を満たすことができない。
【0007】
また、回転架台(ガントリ)の高速回転化に伴い更に回転架台の振動が増加するため、その振動増加を抑制するための対策が必要となる。さらに、チルト機構により回転架台が傾斜すると、回転架台の重心が変わるため、その重心変動によっても回転架台に振動が発生する。これと同様に、診断部位を変える際に回転架台内のウエッジを切り換えると、そのウエッジ切り替えによっても回転架台の重心が変わるため、その重心変動によっても回転架台に振動が発生する。X線CT装置においては、これらの振動を抑制する対策も必要となってくる。
【0008】
この発明は上記の問題を解決するものであり、回転架台(ガントリ)の振動の位相と逆位相の振動を回転架台に付与して振動を相殺することにより、高分解能化等で要求される微小レベルの振動を抑制することができるX線CT装置を提供することを目的とする。換言すると、微小振動の抑制を可能として高分解能化等の要求を満たすことが可能なX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、回転架台(ガントリ)に発生する振動と逆位相の振動を回転架台に付与することにより、回転架台に発生する振動を相殺するX線CT装置である。例えば、回転架台に発生する振動を検出する検出器を設置し、逐次、回転架台に発生する振動を検出してその振動と逆位相の振動を算出して回転架台に付与する。また、回転架台の振動波形が周期的な場合は、回転架台の回転角度(位相)に対応させた振動波形を予め測定して記憶装置に記憶しておき、回転架台の回転角度から振動レベルを求め、その振動と逆位相の振動を回転架台に付与する。このように、回転架台に発生する振動と逆位相の振動を回転架台に付与することにより回転架台に発生する振動を相殺することが可能となり、回転架台に発生する振動を抑制することが可能となる。この発明の具体的に態様について以下に示す。
【0010】
請求項1に記載の発明は、X線源及びX線検出器を内蔵し、開口部を有し、前記X線源及び前記X線検出器を回転させながら前記開口部に挿入された被検体にX線を照射する回転架台と、前記回転架台をチルト可能に支持する支持部と、前記支持部と前記回転架台との間に介在し、前記回転架台を傾ける駆動部と、前記回転架台に発生する振動と逆位相の振動を前記回転架台に付与する加振手段と、を有することを特徴とするX線CT装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線CT装置であって、前記回転架台に発生する振動を検出する検出器と、前記検出器により検出された振動と逆位相の信号を算出する演算手段と、を更に有し、前記加振手段は、前記演算手段により算出された逆位相の信号に応じて前記回転架台に振動を付与することを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のX線CT装置であって、前記検出器は前記回転架台のチルト方向に発生する振動を検出し、前記加振手段は、前記回転架台のチルト方向に逆位相の振動を付与することを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3のいずれかに記載のX線CT装置であって、前記検出器は、前記回転架台の回転方向に沿って移動可能に設置され、前記加振手段により前記回転架台に逆位相の振動が付与される回転角度に対して、前記回転架台の回転角度がずれた位置の振動を検出することを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は請求項3のいずれかにに記載のX線CT装置であって、前記加振手段は、前記検出器による振動の検出タイミングに対してタイミングをずらして前記回転架台に逆位相の振動を付与することを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のX線CT装置であって、前記回転架台に発生する振動を、前記回転架台の回転角度に対応付けて予め記憶する記憶装置を更に有し、前記加振手段は、前記対応付けに従って所定の回転角度における逆位相の振動を前記回転架台に付与することを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のX線CT装置であって、前記加振手段は、前記回転架台の剛性に応じて前記回転架台に付与する振動の大きさを変えることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のX線CT装置であって、前記加振手段は、前記回転架台において剛性が低い部分ほど大きい振動を付与することを特徴とするものである。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のX線CT装置であって、前記加振手段は、前記回転架台の振動が所定レベル以上になった場合に、前記回転架台に逆位相の振動を付与することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によると、回転架台に発生する振動と逆位相の振動をその回転架台に付与して、回転架台に発生する振動を相殺することにより、回転架台に発生する振動を抑制することが可能となる。そのことにより、高分解能化等で要求される微小レベルの振動を抑制することが可能となり、画質劣化を防止することが可能となる。
【0020】
請求項2に記載の発明によると、回転架台に発生する振動を検出し、その振動と逆位相の振動を回転架台に付与して、回転架台に発生する振動を相殺することにより、回転架台に発生する振動を抑制することが可能となる。そのことにより、高分解能化等で要求される微小レベルの振動を抑制することが可能となり、画質劣化を防止することが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明によると、回転架台のチルト方向に発生する振動を検出し、そのチルト方向に逆位相の振動を付与ことにより、振動の主な原因であるチルト方向の振動を抑制することが可能となり、その結果、回転架台の振動を抑制することが可能となる。
【0022】
請求項4に記載の発明によると、回転架台の回転方向に検出器をずらして設置し、回転架台の回転角度がずれた位置の振動を検出することにより、加振手段による逆位相の振動を付与するタイミングのずれを補正することが可能となる。また、請求項5に記載の発明によると、検出器による振動の検出タイミングに対して回転架台に逆位相の振動を付与するタイミングをずらすことにより、振動付与のタイミングのずれを補正することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の発明によると、回転架台に発生する振動を回転架台の回転角度(位相)と対応付けて予め記憶し、その対応付けに従って所定の回転角度における逆位相の振動を回転架台に付与して、回転架台に発生する振動を相殺することにより、回転架台に発生する振動を抑制することが可能となる。そのことにより、高分解能化等で要求される微小レベルの振動を抑制することが可能となり、画質劣化を防止することが可能となる。
【0024】
請求項7に記載の発明によると、回転架台の剛性に応じて回転架台に付与する逆位相の振動の大きさを変えることで、回転架台に発生する振動を相殺することが可能なレベルの逆位相の振動を付与することが可能となる。また、請求項8に記載の発明によると、剛性が低い部分ほど大きいレベルの振動を付与することにより、回転架台に発生する振動を適切に相殺することが可能となる。
【0025】
請求項9に記載の発明によると、回転架台の振動が所定レベル以上になった場合に逆位相の振動を加えることにより、特にレベルの高い振動を相殺して回転架台の振動を抑制することが可能となる。そのことにより、高分解能化等の妨げになるレベルの高い振動を抑制することができ、高分解能化等の要求を満たすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施形態に係るX線CT装置について、図1乃至図6を参照しつつ説明する。
【0027】
(構成)
この発明の実施形態に係るX線CT装置の構成について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。図1は、この発明の実施形態に係るX線CT装置の回転架台の構成を示す分解斜視図である。図2は図1に示す回転架台の後方からみた背面図である。図3及び図4は、図1に示す回転架台を側面からみた側面図である。
【0028】
図1乃至図3に示すX線CT装置は、X線源及びX線検出器等を内蔵し、チルト駆動可能な回転架台1(ガントリ)を備えている。この回転架台1は、その骨組みの中心を成すメインフレーム2を有する。このメインフレーム2は、略半円状のフレーム板2aの端部の周囲に帯状のサイド板2bを一体的に取り付けるとともに、フレーム板2aの中心部に所定径の孔を形成し、その孔を案内するように筐体2cを取り付けた構成を有する。この筐体2cにより、被検体を寝台に載せたまま挿入するための開口部3が形成されている。そして、回転架台1は、制御装置(図示しない)からの制御信号により、図2に示すように矢印Aの方向に回転させられる。
【0029】
サイド板2bには、軸方向(開口部3の軸方向、つまり、被検体の体軸に沿う方向)側面の下側(図1における下側)の位置に、円弧状のセクタギア4、5が各々一体的に取り付けられている。これにより、セクタギア4、5は、メインフレーム2の両側下端で軸方向に延設される。セクタギア4、5の下面には、各々、ギア4a、5aが円弧状に形成されている。この円弧状のギア4a、5aの曲率は、回転架台1(ガントリ)が軸方向に対して所定点Oを中心にチルト(傾き)可能なように設定されている。
【0030】
セクタギア4、5の外側には、各々、ギア4a、5aの回転中心の一致した円弧状のガイド6(以下、Rガイド6と称する)及びレール7が設置されている。各Rガイド6は、円弧状のレール部6aに沿ってナット部6bを案内する構造を有し、そのレール部6aはセクタギア4の外側側面に一体的に取り付けられている。ナット部6bはレール6aにより、円弧状の方向に沿って移動可能となっている。
【0031】
なお、回転架台1(ガントリ)には、X線照射のためのX線源(図示しない)及び被検体を透過したX線を検出するX線検出器(図示しない)が備えられている。
【0032】
このように構成される回転架台1(ガントリ)は、支持部10によりチルト可能に支持されている。この支持部10がこの発明の「支持部」に相当する。支持部10には、長方形状の枠体を成すベース11と、このベース11の軸方向両側で一体的に立設させられたスタンド12、13とを備えて構成されている。スタンド12、13は、各々、軸方向に延びる板状部材である。この実施形態においては、スタンド12の内側上端寄りには、ガイド6のナット部6bが固設されている。また、スタンド13の内側上端寄りには、レール7の軌道上下端に沿うように、カムフォロア8が回動自在に取り付けられている。これにより、スタンド12、13がガイド6及びレール7を介してメインフレーム2(即ち回転架台1)の重量を受けるとともに、メインフレーム2(即ち回転架台1)をチルト可能に支持している。
【0033】
さらに、ベース11及びスタンド12、13には、チルト駆動を担う各種の機構が取り付けられている。ベース11の軸方向に直交する方向の架台後端部(図1の手前側端部)には、制御装置(図示しない)から駆動信号を受ける電動モータ20が設けられている。
【0034】
電動モータ20の出力軸にはピニオン20bが取り付けられており、このピニオン20bが、両方のスタンド12、13に回転可能に軸支されている駆動軸21の第1のギア21aに噛合している。つまり、スタンド12、13は、駆動軸21を回転可能に支持している。この駆動軸21には、その両端部の位置に第2及び第3のギア21b、21cが一体に取り付けられている。また、一方のスタンド12の内側には相互に噛合するギア22、23が取り付けられており、そのうちの一方のギア22が駆動軸21の第2のギア21bに噛合し、他方のギア23がセクタギア4のギア4aに噛合するようになっている。同様に、他方のスタンド13の内側にも相互に噛合するギア24、25が取り付けられており、このうち一方のギア24が駆動軸21の第3のギア21cに噛合し、他方のギア25がセクタギア5のギア5aに噛合するようになっている。
【0035】
これにより、電動モータ20の回転が駆動軸21に伝わり、その駆動軸21から両サイドのギア系21b、22、23及び21c、24、25を介してセクタギア4、5のギア4a、5aに伝達する。この結果、電動モータ20により、メインフレーム2(回転架台1)を軸方向に対して図3に示す仮想線K1、K2に示すようにチルトさせることができる。つまり、図3に示す矢印Cの方向に回転架台1を傾けることができる。この矢印Cの方向を以下、チルト方向と称することがある。
【0036】
また、駆動軸21には、スタンド13の外側の位置に、制御装置(図示しない)からの制御信号で作動するブレーキ26が設けられ、このブレーキ26により駆動軸21に制動を掛けられるようになっている。なお、シャフト27は、ギア22、23を回動自在に支持するベアリング内蔵のシャフトであり、ベアリング28は駆動軸21を回転自在に支持するベアリングである。
【0037】
回転架台1(ガントリ)に発生する振動を検出する振動検出器30は、例えば、図2の背面図に示すように、メインフレーム2の上側端部に対して非接触に設置され、回転架台1のチルト方向(図3に示す矢印Cの方向)に発生する振動を検出する。この振動検出器30は、例えば、レーザ、超音波、渦電流等を利用した非接触センサーからなり、振動検出器30との間の距離を測定することにより、回転架台1に発生する振動を検出する。また、振動検出器30として加速度センサーを用いて回転架台1の加速度を測定することにより、回転架台1に発生する振動を検出する。この振動検出器30がこの発明の「検出器」に相当する。
【0038】
ここで、回転架台1に発生する振動を抑制するための機構について、図4を参照しつつ説明する。図4はこの実施形態に係る回転架台の側面図であり、図1乃至図3に示す回転架台を簡略して振動を抑制する機構のみを示している。図4(a)に示す回転架台1においては、図1乃至図3に示したように、電動モータ20によりギア系(22、23等)を回転させ、そのギア系の回転をセクタギア4(5)に伝達させてメインフレーム2(回転架台1)をチルト方向(矢印Cの方向)に回転させている。また、図4(b)に示す回転架台1においては、電動モータ20によりウオームギア32を回転させ、そのウオームギア32の回転をセクタギア4(5)に伝達させてメインフレーム2(回転架台1)をチルト方向(矢印Cの方向)に回転させている。
【0039】
また、図4(c)に示す回転架台1は、油圧によりメインフレーム2(回転架台1)をチルトさせる場合の概略構成を示す図である。図4(c)に示す回転架台1においては、メインフレーム2はスタンド36に立設された支柱35によりチルト可能に支持されている。また、油圧器(油圧ポンプ)33により、伸縮器34を矢印Dの方向に伸縮させることで、メインフレーム2(回転架台1)を矢印Cの方向に傾けている。
【0040】
また、電動モータ20及び油圧ポンプ33の他に、電動パワーシリンダや空気圧等を用いてメインフレーム2(回転架台1)をチルトさせても良い。この電動モータ20及び油圧ポンプ33等がこの発明の「駆動部」に相当し、更にこの発明の「加振手段」に相当する。
【0041】
なお、図4において、被検体を載置した寝台(図示しない)は制御装置(図示しない)から制御信号を受けて矢印Bの方向に移動し、回転架台1及びメインフレーム2の開口部3に挿入される。
【0042】
図4に示すように、振動検出器30はメインフレーム2の上側端部に対して非接触に設置されている。この振動検出器30は回転架台1の回転角度(位相)ごとの振動を検出する。振動検出器30により検出された回転架台1に発生する振動を示す信号は、位相計算回路31に出力される。
【0043】
位相計算回路31は振動検出器30から回転架台1に発生する振動を示す信号を受け、その振動波形に対して位相処理を施す。例えば、位相計算回路31は回転架台1の振動波形に対して反転処理を施し、逆位相の波形を抽出する。このとき、位相計算回路31は、逆位相の振動の振幅が元の振動の振幅と同じ大きさとなるように計算を行う。そして、図4(a)、(b)に示す回転架台1の場合は、位相計算回路31により位相処理が施された信号は電動モータ20に出力される。電動モータ20はその位相処理が施された信号を受けると、その信号に応じてギア(ウオームギア32)を回転させる。この回転がセクタギア4に伝達され、メインフレーム2(回転架台1)には、位相処理が施された振動が加えられた状態で回転動作を行うことになる。つまり、回転架台1のチルト方向に逆位相の振動(振幅の大きさが元の振動波形と同じ)が付与されて回転動作が行われることになる。なお、位相計算回路31がこの発明の「演算手段」に相当する。
【0044】
一方、図4(c)に示す回転架台1の場合は、位相計算回路1により位相処理が施された信号は油圧ポンプ33に出力される。油圧ポンプ33はその位相処理が施された信号を受けると、その信号に応じて伸縮器34を伸縮させる。この伸縮がセクタギア4に伝達され、メインフレーム2(回転架台1)は、位相処理が施された振動が加えられた状態で回転動作を行うことになる。
【0045】
(動作)
次に、この発明の実施形態に係るX線CT装置の動作について、図4及び図5を参照しつつ説明する。図5は、この発明の実施形態に係るX線CT装置に設置された振動検出器により検出された振動波形を示す図である。
【0046】
例えば、ヘリカルスキャンにより被検体の断層画像を収集する場合、制御装置(図示しない)からの制御信号を受けて回転架台1(ガントリ)が所定の速度で回転させられ、さらに、その回転に合わせて被検体を載置した寝台(図示しない)が図4に示す矢印Bの方向に移動させられる。このように、寝台(図示しない)を矢印Bの方向に移動させながら回転架台1を回転させる。そして、回転架台1内に設置されたX線源(図示しない)からX線を照射し、被検体を透過したX線をX線源に対向する位置に設置されたX線検出器(図示しない)により検出する。このように、寝台(図示しない)を移動させながらX線を照射することで、連続的にX線投影データが収集される。
【0047】
斜めの方向から被検体の断層画像を収集する場合は、例えば図4(a)に示す電動モータ20によりギアを回転させ、その回転をセクタギア4に伝達させてメインフレーム2(回転架台1)をチルト方向(矢印Cの方向)にチルトさせる。このように、メインフレーム2(回転架台1)をチルトさせた状態でX線源(図示しない)からX線を照射することで、斜めの方向から被検体の断層画像を収集することができる。
【0048】
回転架台1(ガントリ)が回転させられると、振動検出器30は回転架台1に発生する振動を検出し始める。上述したように、レーザや超音波等を用いて振動検出器30と回転架台1との間の距離を測定したり、加速度センサーにより回転架台1の加速度を測定したりして、回転架台1のチルト方向(矢印Cの方向)に発生する振動を検出する。
【0049】
振動検出器30により検出された回転架台1の振動波形の1例について、図5を参照しつつ説明する。図5に示すグラフにおいて、横軸は回転架台1の回転角度(位相)を示し、縦軸は回転架台1の振動のレベル(振幅の大きさ)を示している。図5に示す「1周期(1回転)」とは、回転架台1が360°回転したことを意味する。回転架台1に発生する振動の原因は回転架台1の回転によるため、振動波形は1周期(1回転:360°)ごとに同じ波形が繰り返される。
【0050】
振動検出器30から図5に示すような振動波形を示す信号が位相計算回路31に出力される。位相計算回路31は、振動検出器30からその振動波形を示す信号を受けると、その振動波形に対して位相処理を施す。位相計算回路31は、例えば振動波形に反転処理を施し、その振動波形と逆位相の波形を算出する。このとき、位相計算回路31は、逆位相の波形における振幅が、元の振動の振幅と同じ大きさになるように計算する。このようにして算出された逆位相の波形を示す信号が電動モータ20等に出力される。
【0051】
図4(a)、(b)に示すX線CT装置の場合は、位相計算回路31にて算出された逆位相の波形を示す信号は電動モータ20に出力される。電動モータ20はその逆位相の波形を示す信号を受けると、その信号のレベルに従ってギア系を回転させる。そのギア系による回転がセクタギア4に伝達され、メインフレーム2(回転架台1)に対してチルト方向(矢印Cの方向)に、振動波形と逆位相の振動(振幅の大きさが振動波形と同じ)が付与される。このように、振動波形と逆位相の振動(振幅の大きさが同じ)をメインフレーム2(回転架台1)に対して付与することにより、回転架台1の振動を相殺して振動を抑制することが可能となる。
【0052】
また、図4(c)に示すX線CT装置の場合は、位相計算回路31にて算出された逆位相の振動を示す信号は油圧ポンプ33に出力される。油圧ポンプ33はその逆位相の振動(振幅の大きさが振動波形と同じ)を示す信号を受けると、その信号のレベルに従って伸縮器34を伸縮させる。その伸縮器34による伸縮により、メインフレーム2(回転架台1)に対してチルト方向(矢印Cの方向)に振動波形と逆位相の振動が付与され、図4(a)、(b)に示すX線CT装置と同様に、回転架台1の振動が相殺されて振動が抑制されることになる。
【0053】
このとき、回転架台1の各回転角度(位相)における振動を検出し、その振動と逆位相の振動を算出して回転架台1に付与すると、その計算及び付与に要する時間の分だけ回転架台1が更に回転するため、付与すべき回転角度(位相)とは異なる回転角度(位相)の時に回転架台1に逆位相の振動を付与してしまう場合がある。つまり、計算等の時間分だけ、逆位相の振動を付与するタイミングが遅れてしまい、各回転角度(位相)に対応した逆位相の振動を適切に付与することができず、適切に回転架台1の振動を相殺することができない場合がある。
【0054】
一方、回転架台1に発生する振動の原因は回転架台1の回転によるため、図5に示すように、振動波形は1周期(1回転:360°)ごとに同じ波形が繰り返される。このように回転架台1は周期的に振動するため、ある回転角度(位相)における振動のレベルを予測することが可能となる。この予測を行うため、X線CT装置に記憶装置(図示しない)を設け、振動検出器30にて検出された回転架台1の振動波形を回転架台1の回転角度(位相)と対応付けてその記憶装置に記憶させる。
【0055】
回転架台1は制御装置(図示しない)の制御により回転させられているため、その制御装置(図示しない)は回転架台1の回転角度(位相)を把握している。従って、記憶装置は、制御装置から回転架台1の回転角度(位相)の信号を受け、振動検出器30から回転架台1の振動波形の信号を受け、振動波形を回転角度(位相)と対応付けて記憶する。
【0056】
このように、振動波形と回転角度(位相)とを対応付けて記憶装置に記憶させておくことにより、位相計算回路31は、任意の回転角度(位相)における振動のレベルを予測することが可能となる。つまり、振動検出器30による振動検出時から実際に逆位相の振動を回転架台1に付与する時までの間の時間分だけ位相をずらし、そのずらした位相における振動のレベルを記憶装置に記憶されている振動波形から求め、その求められた振動レベルと逆位相の振動を回転架台1に付与する。このように、振動検出時から実際に逆位相の振動を付与する時までの時間のずれに相当する位相をずらして、タイミングのずれを補正する。
【0057】
タイミングを補正する処理について図5を参照しつつ具体的に説明する。例えば、振動検出器30が位相Aにおける振動を検出したとする。このときの振動のレベルをレベルCとする。そして、タイミングのずれにより実際に回転架台1に逆位相の振動が付与される時を位相Bとする。タイミングのずれは位相計算回路31や電動モータ20等の特性により予め判明しているものであるため、位相Aから実際に振動が付与される位相Bが求められる。そして、上述したように回転架台1は周期的に振動するため、予め検出しておき記憶装置に記憶しておいた図5に示す振動波形から位相Bにおける振動レベルを求める。例えば、図5に示すように、位相Bにおける振動レベルをレベルDとする。
【0058】
つまり、位相Aに基づいて実際に逆位相の振動が付与されるタイミングである位相Bが求められ、記憶装置に記憶されている周期的な振動波形から位相Bにおける振動レベルDが求められる。位相計算回路31はこの位相Bにおける振動レベルDを算出し、更に、振動レベルDと逆位相の振動(振幅の大きさが元の振動波形と同じ)を求め、電動モータ20又は油圧ポンプ33に逆位相の振動を示す信号を出力する。そして、電動モータ20等はその信号のレベルに従って回転架台1に振動を付与することで、適切なタイミングで振動を相殺できる逆位相の振動を付与することが可能となる。このように、逆位相の振動を付与するタイミングが遅れる場合であっても、振動波形から回転架台1の振動のレベルを予測することにより、振動の相殺が可能な逆位相の振動を適切に付与することが可能となる。
【0059】
また、予め回転架台1の振動を検出しておき、その振動を回転架台1の回転角度(位相)と対応付けて記憶装置に記憶しておくことで、振動検出器30を設置して逐次、回転架台1の振動を検出する必要がなくなる。上述したように、回転架台1の振動波形は1回転(1周期)ごとに同じ波形が繰り返される。従って、回転架台1の回転角度(位相)と記憶装置に記憶されている振動波形とから、所定の回転角度における振動レベルを算出することができる。
【0060】
回転架台1の回転を制御する制御装置(図示しない)から回転架台1の回転角度(位相)の情報が位相計算回路31に出力され、位相計算回路31は記憶装置(図示しない)に記憶されている振動波形を参照し、制御装置から受けた回転角度(位相)の情報に基づき、その回転角度(位相)における振動レベルを求める。そして、その振動レベルから逆位相の振動を算出し、その逆位相の振動を示す信号を電動モータ20等に出力する。このとき、位相計算回路1は、逆位相の振動の振幅が元の振動波形の振幅と同じ大きさになるように計算を行う。電動モータ20等はその逆位相の振動を示す信号に従って、回転架台1に振動を相殺する逆位相の振動(振幅の大きさが元の振動波形と同じ)を付与する。このように回転角度(位相)と振動とを対応付けた振動波形を記憶装置に記憶しておくことで、適切なタイミングで逆位相の振動を回転架台1に付与することができ、適切に回転架台1の振動を相殺することが可能となる。
【0061】
また、回転架台1の振動を予め検出して振動波形を求めておき、その振動波形を記憶した記憶装置を用いて振動の相殺を行うことにより、振動を逐次検出する必要がないため、振動検出器30を設置する必要がなくなる。そのことにより、高価なセンサー等の振動検出器30をX線CT装置に設置する必要がなくなるため、X線CT装置の製造コストを削減することが可能となる。
【0062】
また、振動の検出と逆位相の振動付与とのタイミングのずれを補正する方法として、振動検出器30をそのタイミングのずれ分だけずらして設置するようにしても良い。この補正のための機構について図6を参照しつつ説明する。図6は図1に示す回転架台を後方からみた背面図である。
【0063】
図6に示すように、上述した実施形態においては、振動検出器30は回転架台1の回転角度(位相)が例えば「0°」の位置に設置され、回転架台1が矢印Aの方向に回転することで、各回転角度(位相)における振動を検出している。
【0064】
これに対して、タイミングのずれを補正するために、振動検出器30の設置位置から位相をずらして、振動検出器を設置する。例えば、回転架台1に発生する振動を検出してから実際に逆位相の振動が付与されるまで、回転角度(位相)が「10°」ずれる場合は、予め「10°」分ずらして振動検出器を設置しておき、その振動検出器にて回転架台1に発生する振動を検出する。
【0065】
図6に示す振動検出器30a及び振動検出器30bは、振動検出器30が設置されている位置から「10°」ずれた位置に設置されている。これにより、振動検出器30a及び振動検出器30bは、振動検出器30よりも「10°」分だけずれた回転角度(位相)の振動を検出することになる。
【0066】
例えば、回転架台1が矢印A1の方向に回転する場合においては、振動検出器30が回転角度(位相)「0°」の振動を検出している時に、振動検出器30aは位相「10°」の振動を検出している。この振動検出器30aにて検出された振動と逆位相の振動(振幅の大きさは元の振動波形と同じ)を回転架台1に付与すると、付与するまで角度(位相)が「10°」ずれるため、丁度、位相「10°」の時点で逆位相の振動を付与することができる。
【0067】
これと同様に、回転架台1が矢印A2の方向に回転する場合においては、振動検出器30が回転角度(位相)「0°」の振動を検出している時に、振動検出器30bは位相「10°」の振動を検出している。上述したように、この振動検出器30bにて検出された振動と逆位相の振動を回転架台1に付与することで、丁度、位相「10°」の時点で逆位相の振動を付与することができる。
【0068】
以上のように、振動検出から逆位相の振動付与までに生じるタイミングのずれ分に応じて、振動検出器をずらして設置して振動を検出することにより、検出から付与までに生じるタイミングのずれを補正することが可能となる。そのことにより、適切なタイミングで逆位相の振動を回転架台1に付与することができ、適切に回転架台1の振動を抑制することが可能となる。
【0069】
また、全ての回転角度(位相)において振動と逆位相の振動を回転架台1に付与せずに、部分的に逆位相の振動を付与しても良い。例えば、図5に示す振動波形のように、ある一部分の回転角度(位相E)における振動のレベルが高い場合(振動レベルF)は、その回転角度(位相E)においてのみ逆位相の振動を回転架台1に付与する。高分解能化等を図るにあたって、無視できるようなレベルの振動に対しては逆位相の振動を付与せず、高分解能化等に影響を与えるレベルの振動に対して逆位相の振動を付与する。このように部分的に逆位相の振動を付与しても、回転架台に発生する振動を適切に抑制することが可能となる。
【0070】
例えば、振動検出器30から出力される振動のレベルを受けて、その振動レベルの大きさ(つまり、振幅の大きさ)を比較判断する比較部(図示しない)を設ける。その比較部は、予め設定されている所定のレベル(設定値)と、振動検出器30にて検出された振動のレベルとを比較する。この所定のレベル(設定値)は、高分解能化等の妨げとなるレベルを示すものとする。この所定のレベル(設定値)以上のレベルの振動が回転架台1に発生すると、高分解能化等の妨げとなる。一方、所定のレベル(設定値)より小さいレベルの振動については、無視しても高分解能化等に影響を与えない。この所定のレベル(設定値)は予め求められているものであり、例えば、メモリ等からなる記憶装置に記憶しておく。
【0071】
検出された振動レベルが設定値以上である場合(振幅の大きさが設定値以上の場合)は、比較部は、逆位相の振動を付与するとの判断を行い、その比較判断結果を位相計算回路31に出力する。位相計算回路31は、その比較判断結果を受けて、逆位相の振動を付与するとの判断結果だった場合は、振動検出器30から出力される振動と逆位相の振動を求める。このとき、位相計算回路31は、逆位相の振動の振幅が元の振動波形の振幅と同じ大きさになるように計算を行う。そして、位相計算回路31は、その逆位相の振動を示す信号を電動モータ20等に出力し、電動モータ20等は上述したように逆位相の振動(振幅の大きさが元の振動波形と同じ)を回転架台1に付与する。これにより、回転架台1における振動は相殺されて、高分解能化等に影響を与える振動を抑制することが可能となり、高分解能化等の要求を満たすことが可能となる。
【0072】
一方、振動検出器30にて検出された振動レベルが設定値よりも小さい場合は、比較部は、逆位相の振動を付与しないとの判断を行い、その比較判断結果を位相計算回路31に出力する。位相計算回路31は、その比較判断結果を受けて、逆位相の振動を付与しないとの判断結果だった場合は、逆位相の計算をせず、処理は終了する。結果として、回転架台1に対して逆位相の振動が付与されることはない。
【0073】
例えば、図5に示すように、所定のレベル(設定値)をレベルGとする。比較部は、このレベルG(設定値)と振動検出器30にて検出された振動のレベルとを比較する。検出された振動のレベルがレベルG(設定値)以上であった場合は、回転架台1に逆位相の振動(振幅の大きさが元の振動波形と同じ)が付与され、検出された振動のレベルがレベルG(設定値)より小さい場合は、逆位相の振動を付与しない。
【0074】
図5に示す例においては、位相Eにおける振動のレベルはレベルFとなり、レベルG(設定値)以上となっているため、位相Eにおいては、検出された振動と逆位相の振動が回転架台1に付与される。一方、位相Aにおける振動のレベルはレベルCとなり、レベルG(設定値)より小さいため、その位相Aにおいては、逆位相の振動は付与されない。同様に、位相Bにおける振動のレベルはレベルDとなり、レベルG(設定値)より小さいため、その移送Bにおいては、逆位相の振動は付与されない。
【0075】
以上のように所定レベル以上(所定の振幅の大きさ以上)の振動が検出された場合に、逆位相の振動を回転架台1に付与することで、高分解能化等の妨げとなる振動を抑制することが可能となり、高分解能化等の要求を満たすことが可能となる。
【0076】
また、逆位相の振動が付与される回転架台1は場所によってその剛性が変わっている。例えば、X線源やX線検出器等が内蔵されている部分とそれ以外の部分とでは、剛性が変わり、力の伝わり方も異なってくる。そのため、同じ振動のレベルであっても、剛性が異なると、適切に回転架台1の振動を相殺することができない場合がある。同じ振動のレベルであっても、剛性が高い部分においては、弱い力を付与しても振動を相殺することができるが、剛性が低い部分においては、同じ力を付与しても力が伝わりにくいため、振動を相殺することができない。また、剛性が高い部分において、強い力を付与すると余計な振動を回転架台1に与えることになり、振動を適切に相殺することができない。従って、同じ振動のレベルであっても、回転架台1の剛性に応じて付与する振動のレベルを変える必要がある。
【0077】
例えば、振動検出器30により検出された振動の逆位相の振動に対して、重み付けを行ってから回転架台1に逆位相の振動を付与する。回転架台1の剛性を回転架台1の場所(位相)ごとに予め測定し、回転角度(位相)と剛性とを対応付けて、記憶装置に記憶しておく。位相計算回路31により逆位相の振動が算出された後、その逆位相の振動に対して、その回転角度(位相)における剛性に従った重み付けを行い、その回転角度(位相)における逆位相の振動のレベルを求める。そして、重み付けされた逆位相の振動を回転架台1に付与することで、その部分(位相)に対応した振動を付与することができる。
【0078】
具体的には、剛性が高い部分(位相)においては、重み付けの値を小さくすることにより、逆位相の振動のレベルを小さくして回転架台1に付与する。つまり、逆位相の振動の振幅の大きさを小さくする。一方、剛性が低い部分(位相)においては、重み付けの値を大きくすることにより、逆位相の振動のレベルを高くして回転架台1に付与する。つまり、逆位相の振動の振幅の大きさを大きくする。このように、剛性に応じて逆位相の振動のレベルに重み付けを行ってその振動を回転架台1に付与することで、回転架台1の振動を適切に相殺することが可能となる。
【0079】
図5を参照しつつ更に具体的に説明する。例えば、位相Aにおける回転架台1の振動のレベルはレベルCであり、位相Hにおける回転架台1の振動のレベルもレベルCとなっている。位相Aにおける回転架台1の剛性と位相Hにおける回転架台1の剛性とが同じ場合であれば、位相Aにおいて付与すべき逆位相の振動のレベルと、位相Hにおいて付与すべき逆位相の振動のレベルとは同じレベルになる。同じレベルの振動を位相A及び位相Hにおいて回転架台1に付与することにより、位相A及び位相Hにおいて回転架台1の振動を適切に相殺することができる。
【0080】
ところが、位相Aにおける回転架台1の剛性と、位相Hにおける回転架台1の剛性とが異なる場合は、位相Aと位相Hとで同じレベルの振動を付与しても、同じように回転架台1の振動を相殺することができない。つまり、同じ大きさの振幅を有する振動を付与しても、回転架台1の振動を相殺することができない。例えば、位相Aにおける回転架台1の剛性が位相Hにおける回転架台1の剛性よりも高い場合は、位相Aにおいて付与すべき振動のレベルよりも、位相Hにおいて付与すべき振動のレベルを高くする必要がある。つまり、位相Hにおける振動の振幅の大きさを位相Aよりも大きくする必要がある。
【0081】
この場合、予め位相Aと位相Hにおける剛性を予め求めておき、その剛性に応じて逆位相の振動のレベルに重み付けを行い、重み付けされた振動を回転架台1に付与する。この例においては、位相Hにおける重み付けを高くすることにより、逆位相の振動のレベルを高めて回転架台1に付与する。そのことにより、回転架台1の振動を相殺するための適切な振動が付与され、振動が適切に相殺される。
【0082】
また、上述した実施形態においては、電動モータ20又は油圧ポンプ33を用いて回転架台1をチルトさせ、更に、回転架台1の振動と逆位相の振動を回転架台1に付与しているが、その他、電動パワーシリンダや空気圧等を用いて逆位相の振動を回転架台1に付与しても良い。さらに、上述した実施形態においては、回転架台1をチルトさせる手段である電動モータ20又は油圧ポンプ33を用いて、回転架台1に逆位相の振動を付与しているが、逆位相の振動を付与するためのモータ等を別途設けても良い。つまり、回転架台1をチルトさせるための電動モータ20等を逆位相の振動を付与するための手段として兼用せずに、逆位相の振動を付与するためだけのモータ等を別途設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の実施形態に係るX線CT装置の回転架台の構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す回転架台を後方からみた背面図である。
【図3】図1に示す回転架台を側面からみた側面図である。
【図4】図1に示す回転架台を側面からみた側面図である。
【図5】この発明の実施形態に係るX線CT装置に設置された振動検出器により検出された振動波形を示す図である。
【図6】図1に示す回転架台を後方からみた背面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 回転架台
2 メインフレーム
3 開口部
4 セクタギア
6 Rガイド
10 支持部
20 モータ
30、30a、30b 振動検出器
31 位相計算回路
32 ウオームギア
33 油圧器(油圧ポンプ)
34 伸縮器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源及びX線検出器を内蔵し、開口部を有し、前記X線源及び前記X線検出器を回転させながら前記開口部に挿入された被検体にX線を照射する回転架台と、
前記回転架台をチルト可能に支持する支持部と、
前記支持部と前記回転架台との間に介在し、前記回転架台をチルトさせる駆動部と、
前記回転架台に発生する振動と逆位相の振動を前記回転架台に付与する加振手段と、
を有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記回転架台に発生する振動を検出する検出器と、
前記検出器により検出された振動と逆位相の信号を算出する演算手段と、を更に有し、
前記加振手段は、前記演算手段により算出された逆位相の信号に応じて前記回転架台に振動を付与することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記検出器は前記回転架台のチルト方向に発生する振動を検出し、
前記加振手段は、前記回転架台のチルト方向に前記検出した振動と逆位相の振動を付与することを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記回転架台の回転方向に沿って移動可能に設置され、前記加振手段により前記回転架台に逆位相の振動が付与される回転角度に対して、前記回転架台の回転角度がずれた位置の振動を検出することを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記加振手段は、前記検出器による振動の検出タイミングに対してタイミングをずらして前記回転架台に逆位相の振動を付与することを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記回転架台に発生する振動を、前記回転架台の回転角度に対応付けて予め記憶する記憶装置を更に有し、
前記加振手段は、前記対応付けに従って所定の回転角度における逆位相の振動を前記回転架台に付与することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記加振手段は、前記回転架台の剛性に応じて前記回転架台に付与する振動の大きさを変えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記加振手段は、前記回転架台において剛性が低い部分ほど大きい振動を付与することを特徴とする請求項7に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記加振手段は、前記回転架台の振動が所定レベル以上になった場合に、前記回転架台に逆位相の振動を付与することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかにに記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−255066(P2006−255066A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74681(P2005−74681)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】