説明

X線CT装置

【課題】 ガントリ傾斜時における寝台の位置合わせを容易に行うためのユーザ支援機能を有するX線CT装置を提供する。
【解決手段】 X線CT装置1は、寝台3または寝台3に載置された被検体6とガントリ部2との接触を回避するための位置関係を表す干渉データ7を記憶装置403に予め保持する。システム制御装置401は現在のガントリ傾斜角と現在の寝台高さ位置とを取得し、ガントリ傾斜角及び寝台高さ位置と、上述の干渉データ7とに基づいて、寝台3の可動範囲及びガントリ部2の可動範囲を算出し、算出した可動範囲を提示するための表示データを生成して、例えばガントリ部2に設置された表示器213に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト撮影時の位置合わせにおけるユーザ支援機能を有するX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、X線CT装置を用いた頭部や頚椎の検査では、撮影空間となる開口部を備えたガントリを被検体の体軸に対して傾斜させたチルト撮影が行われている。チルト撮影では、位置決めを行なう際、操作者が装置の側に行き、位置決め用のガイド光を目視しながら手元の操作ボタン等を手動操作することによって寝台天板を体軸方向に水平移動及び上下動させ、また、ガントリを所望の角度に傾斜させて、目的部位を撮影位置に合わせている。この場合、操作者はガントリの開口部と寝台または被検体とが接触(干渉)しないように注意を払わねばならなかった。特に、ガントリ傾斜時は開口部と寝台との間隙が狭まるため、より一層の注意が必要であった。また、寝台の天板の送り出し量や被検体の体重に応じて天板に撓みが生じ、寝台の上下位置やガントリの傾斜角を精度よく位置合わせするのは非常に困難であり、操作者は微調整を何度も繰り返さざるを得なかった。
【0003】
上述のように困難な寝台位置決め操作を容易化するため、特許文献1には、天板が寝台から最大に送り出され、天板に最大荷重を掛けたときの天板底面とガントリ開口部の下部との距離が許容範囲の最小値になるときの寝台の高さを求めておき、実際の撮影の時には寝台がその高さになるとそれ以下には下がらないようにインターロック機能を動作させることが記載されている(特許文献1の段落[0009])。特許文献1には更に、ガントリを傾斜させる場合についても言及しており、安全のために予めある程度の余裕を持たせて設定された干渉回避チルト角に達すると、それ以上は傾斜しないようにインターロック機能が動作されることも記載されている(特許文献1の段落[0010])。また更に、特許文献1には、上述のインターロック機能を標準的な体型以外の被検体についても適用するために、ガントリ開口部と天板間あるいは天板上に載置される被検体間の距離を測位センサ等によって計測し、計測距離が許容範囲から外れた場合にインターロック機能を動作させる技術が開示されている(特許文献1の段落[0052]〜[0062])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−122548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、測位センサ等によってガントリ開口部と天板間或いは被検体間の距離を測定しつつガントリを傾斜する場合には、測位センサの位置によってはガントリ傾斜時に測位センサによる計測が行えないことがあった。その場合は、結局インターロック機能を十分に動作させることができないので、従来どおり、操作者は寝台位置を注意を払いながら微調整して位置決めすることとなっていた。
また、手動操作中に、どの程度寝台の上下位置やガントリ傾斜角に余裕があるのかを操作者がリアルタイムに容易に確認できれば、操作量を判断しやすくなるため位置合わせが容易となる。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、ガントリ傾斜時における寝台の位置合わせを容易に行うためのユーザ支援機能を有するX線CT装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために本発明は、撮影空間となる開口部を備え、操作者の操作に従って所定の傾斜角度に傾斜可能なガントリと、被検体を載置する天板を有し、操作者の操作に従って該天板を前記開口部内の所定位置に搬送するとともに所定高さに上下動する寝台と、を備えたX線CT装置であって、前記寝台または寝台に載置された被検体と前記ガントリとの接触を回避するための位置関係を表す干渉データを予め取得し、保持するデータ保持手段と、前記ガントリの位置及び前記天板の位置を取得する位置取得手段と、前記位置取得手段により取得した前記ガントリ及び前記寝台の各位置と前記干渉データとに基づいて前記ガントリ及び前記寝台の可動範囲を算出する演算手段と、前記演算手段により算出された可動範囲を前記操作者が操作中に視認可能な範囲に表示する表示手段と、を備えることを特徴とするX線CT装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ガントリ傾斜時における寝台の位置合わせを容易に行うためのユーザ支援機能を有するX線CT装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】X線CT装置1の全体構成を示す外観図
【図2】X線CT装置1全体のハードウエアブロック図
【図3】第1の実施の形態における可動範囲表示の一例を示す模式図
【図4】X線CT装置1が実行する可動範囲表示処理の流れを説明するためのフローチャート(第1の実施の形態)
【図5】干渉データ7の一例
【図6】第2の実施の形態における可動範囲表示の一例を示す模式図
【図7】X線CT装置1が実行する可動範囲表示処理の流れを説明するためのフローチャート(第2の実施の形態)
【図8】操作ガイダンス9の表示例
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係るX線CT装置について説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
まず、図1〜図2を参照して、本発明の第1の実施の形態のX線CT装置1の構成について説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、X線CT装置1は、ガントリ部2、寝台3、及び操作卓4を備える。
X線CT装置1は、寝台3上の天板5に載置される被検体6をガントリ部2の開口部204に搬入してスキャンすることにより、被検体6の透過X線データを取得する。
【0013】
ガントリ部2は、X線管201、X線制御装置202、コリメータ203、開口部204、X線検出器205、データ収集装置206、回転板207、ガントリ制御装置208、角度センサ209、操作盤210、及び表示器213を備える。
【0014】
X線管201はX線源であり、X線制御装置202により制御されて被検体6に対してX線を連続的または断続的に照射する。X線制御装置202は、操作卓4のシステム制御装置401により決定されたX線管電圧及びX線管電流に従って、X線管201に印加または供給するX線管電圧及びX線管電流を制御する。コリメータ203は、X線管201から放射されたX線を、例えばコーンビーム(円錐形または角錐形ビーム)等のX線として被検体6に照射させるものである。被検体6を透過したX線はX線検出器205に入射する。
【0015】
X線検出器205は、例えばシンチレータとフォトダイオードの組み合わせによって構成されるX線検出素子をチャネル方向(周回方向)に例えば1000個程度、列方向(体軸方向)に例えば1〜320個程度配列したものであり、被検体6を介してX線管201に対向するように配置される。X線検出器205はX線管201から放射されて被検体6を透過したX線を検出し、検出した透過X線データをデータ収集装置206に出力する。データ収集装置206は、X線検出器205に接続され、X線検出器205の個々のX線検出素子により検出される透過X線データを収集し、操作卓4の画像演算装置402に出力する。
回転板207には、X線管201、コリメータ203、X線検出器205、データ収集装置206が搭載される。回転板207は、ガントリ制御装置208の制御により図示しない回転板駆動装置から駆動伝達系を通じて伝達される駆動力によって回転する。また回転板207は、被検体体軸に対して直角に回転されるだけでなく、被検体体軸に対して非直角となるように傾斜される、いわゆるチルト動作を行なう。
【0016】
ガントリ制御装置208は、システム制御装置401からの制御信号に応じて回転板207を所定速度で回転させ、また所定の傾斜角度(以下、ガントリ傾斜角という)に傾斜させる。回転板207の回転の中心は撮影空間の中心であり、また、ガントリ傾斜の中心である。ガントリ傾斜角は、ガントリ部2が被検体体軸に直角に位置する場合を基準(0度)とし、基準から寝台3側に傾斜する方向をプラス、基準から寝台3と反対方向へ傾斜する方向をマイナスとして、プラス方向及びマイナス方向に例えば30度程度まで傾斜できるようになっている。ガントリ傾斜角の大きさは、角度センサ209によって計測され、システム制御装置401に出力される。なお、ガントリ傾斜角のプラス方向及びマイナス方向を上述の方向とは逆に定義してもよい。
本実施の形態のX線CT装置1では、ガントリ部2に設けられる操作盤210の傾斜角調整ボタンの操作によりガントリ傾斜角度の調整が行なわれる。
【0017】
表示器213は、液晶パネル等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、操作卓4のシステム制御装置401から入力される表示データに基づく表示を行う。表示器213は、ガントリ部2の例えば開口部204の上部に設けられる。例えば、本発明では、ガントリ傾斜角や寝台高さ位置の可動範囲が表示器213に表示される(図3参照)。操作者は寝台位置等の位置合わせを行う際、寝台3の近傍で作業するため、操作中に表示器213の表示内容を確認できる。
【0018】
なお、図示しないがX線CT装置1は、位置決め用のガイド光を照射する投光器を備える。操作者は、ガイド光を目視しつつ目的部位を位置合わせする。投光器は例えばガントリ部2の開口部204の周囲の複数方向に設けられ、それぞれ高さ位置、体軸位置、及び断面位置の各ガイド光を照射するもの等とすればよい。
また、ガントリ部2の開口部204の周囲にタッチセンサを設置し、タッチセンサが被検体6や天板5との接触を感知した場合にガントリの傾斜或いは寝台の移動を停止するよう制御されることが望ましい。
【0019】
寝台3は、被検体6が載置される天板5、寝台制御装置31、上下動位置検出装置311、前後動位置検出装置312、及び寝台位置変更ボタン32、図示しない上下動装置及び天板駆動装置を備える。
【0020】
寝台制御装置31は、モータやエアシリンダ等により構成される上下動装置を制御して寝台3の高さ位置(上下位置)を変更する。また、ステッピングモータ等により構成される天板駆動装置を制御して天板5を体軸方向に前後動させる。寝台3の高さ位置や天板5の前後動位置は、システム制御装置401からの制御信号に従って移動する。或いは、寝台3に設けられる寝台位置変更ボタン32の操作に従って移動する。寝台位置変更ボタン32は、寝台3の位置合わせを行なう際に操作者によって操作されるスイッチボタンである。
【0021】
上下動位置検出装置311は、例えばエンコーダまたはポテンショメータ等により構成され、寝台3の高さ位置(上下動位置)を検出し、寝台制御装置31を介してシステム制御装置401に出力する。
前後動位置検出装置312は、例えばエンコーダまたはポテンショメータ等により構成され、天板5の体軸方向の移動量(前後動位置)を検出し、寝台制御装置31を介してシステム制御装置401に出力する。
【0022】
操作卓4は、システム制御装置401、画像演算装置402、記憶装置403、表示装置407、及び操作装置408を備える。
【0023】
システム制御装置401は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。システム制御装置401は、操作卓4内の各装置の他、ガントリ部2内のX線制御装置202、ガントリ制御装置208、表示器213、寝台3内の寝台制御装置31に接続され、これらの各装置を制御する。
また、本実施の形態において、システム制御装置401は、後述する可動範囲表示処理(図4参照)を実行する。可動範囲表示処理については後述する。
【0024】
画像演算装置402は、システム制御装置401の制御によってガントリ部2内のデータ収集装置206が収集した透過X線データを取得し、データ収集装置206が収集した複数ビューの透過X線データを用いて断層像を再構成する。
【0025】
記憶装置403は、ハードディスク等により構成されるものであり、システム制御装置401に接続される。記憶装置403には、画像演算装置402が生成する断層像やX線CT装置1の機能を実現するためのプログラム、データ等が記憶される。
また、記憶装置403は、干渉データ7(図5参照)を保持する。干渉データ7とは、寝台3または寝台3に載置された被検体6とガントリ部2との接触を回避するための位置関係を表すデータであり、予め計測され、記憶装置403に記憶されている。干渉データ7は、寝台高さやガントリ傾斜角の可動範囲を算出する際に参照される。干渉データ7の詳細については後述する。本明細書において、干渉とは、寝台天板5或いは被検体6と、ガントリ部2の開口部204との接触を意味するものとする。
【0026】
表示装置407は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、システム制御装置401に接続される。表示装置407は画像演算装置402から出力される再構成画像、並びにシステム制御装置401が取り扱う種々の情報を表示するものである。操作装置408は、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置、及び各種スイッチボタン等により構成され、操作者によって入力される各種の指示や情報をシステム制御装置401に出力する。操作者は、表示装置407及び操作装置408を使用して対話的にX線CT装置1を操作する。
【0027】
次に、図3〜図5を参照して、X線CT装置1の実行する可動範囲表示処理の動作について説明する。
【0028】
図3に示すように、ガントリ部2を傾斜させて被検体6の目的部位を撮影位置に位置合わせする際、システム制御装置401は現在のガントリ傾斜角と現在の寝台高さ位置とを取得し、ガントリ傾斜角及び寝台高さ位置と、予め記憶している干渉データ7と、に基づいて、寝台3の可動範囲及びガントリ部2の可動範囲を算出し、算出した可動範囲を提示するための表示データを生成して、操作者の視認可能な範囲に設置されている表示器(例えばガントリ部2に設置された表示器213)に表示する。
【0029】
図4を参照して、具体的な処理の流れを説明する。
ガントリ部2は、操作盤210の操作により所望の傾斜角またはそれに近い傾斜角まで傾斜された状態となっているものとする。この状態で、ガントリ部2の開口部204内に、寝台3の天板5に載せられた被検体6が搬送される。このとき操作者は、被検体6の体厚の中心が撮影中心に合うように、ガイド用レーザ等を用いて天板5の送り量(前後動)と寝台3の高さ位置とを調整する(ステップS101)。
システム制御装置401は、寝台3の上下動位置検出装置311から現在の寝台高さ位置を読み込む(ステップS102)。また、システム制御装置401は、ガントリ部2に設けられている角度センサ209から現在のガントリ傾斜角を読み込む(ステップS103)。
【0030】
次に、システム制御装置401は、ステップS102及びステップS103にて取得した現在の寝台高さ位置及びガントリ傾斜角と、記憶装置403に記憶されている干渉データ7とに基づいてガントリ部2及び寝台3の可動範囲を算出する(ステップS104)。そして、システム制御装置401は、算出されたガントリ部2及び寝台3の可動範囲を操作者が視認可能な位置に設置された表示器213に表示する(ステップS105、ステップS106)。表示器213には現在の寝台高さ位置及びガントリ傾斜角も表示されるものとしてもよい。
【0031】
ここで、干渉データ7について説明する。
図5は干渉データ7の一例を示す図である。
図5のグラフの縦軸は寝台高さを示し、単位は[mm]である。また、横軸はガントリ傾斜角の可動範囲を示し、単位は[deg]である。ガントリ部2が寝台の水平方向に対して垂直にあるときを0[deg]としている。グラフ中に太線で示された値が、ガントリ傾斜角に対する寝台高さの限界値(干渉を回避するための限界の寝台高さ位置)である。
【0032】
図5を参照すると、例えば、ガントリ傾斜角が−2〜+4[deg]の範囲で寝台高さを780[mm]に下げると、開口部204と天板5とが接触(干渉)する。また例えば、ガントリ傾斜角が−20〜−21[deg]の範囲にあるときは、寝台高さを860[mm]に下げると、開口部204と天板5とが接触(干渉)する。また例えば、ガントリ傾斜角が+20〜+21[deg]の範囲にあるときは、寝台高さを875[mm]に下げると、開口部204と天板5とが接触(干渉)する。
【0033】
なお、図5の干渉データ7は一例として標準体型の被検体6を天板5に載置して計測されたものであり、同程度の体型の被検体6に適用されることが望ましい。ここでは、標準体型として体厚200[mm]としているが、この値に限定されるものではない。また、縦軸及び横軸の数値も一例であり、各装置によって異なる。
【0034】
また、干渉データ7は図5のようなグラフの形式に限定されず、干渉する限界位置を示すガントリ傾斜角と寝台高さ位置との位置関係を示すデータ列やデータテーブルの形式で保持されるものとしてもよい。
【0035】
また、干渉データ7は、天板5や寝台3のサイズやガントリ開口部204のサイズ、またはそれらの設置位置等により異なるものであるので、装置毎にそれぞれ予め取得されることが望ましい。また、干渉データ7は、被検体6の体格によっても異なるものであるため、装置毎に更に被検体6の体型に応じて複数用意されることが望ましい。例えば、標準的な体型、大きめの体格、小さめの体格について、それぞれ干渉データ7を用意したり、小児用、乳児用、男性用、女性用のように、性別や年齢等に応じて複数の異なる干渉データ7を取得しておくことが望ましい。
【0036】
ステップS104において寝台上下動の可動範囲を算出する際、システム制御装置401は、寝台上下動可動範囲の上限値及び下限値を算出する。具体的には、システム制御装置401は干渉データ7を参照して現在のガントリ傾斜角における寝台高さの限界値を取得し、現在の寝台高さ位置とその限界値との差を求め、寝台上下動可動範囲の下限値とする。また、現在の寝台高さ位置に被検体の体厚(標準体型で例えば200[mm]とする)を加えた値とガントリ傾斜角に応じた開口部204の上部高さとの差を求め、寝台上下動可動範囲の上限値とする。ガントリ傾斜角に応じた開口部204の上部高さは予め算出され、干渉データ7とともに記憶装置402に保持されていることとする。
【0037】
例えば、現在のガントリ傾斜角が−5[deg]、現在の寝台高さ位置が900[mm]、このガントリ傾斜角での開口部204の上部高さが1050[mm]とした場合、干渉データ7からこのガントリ傾斜角での寝台高さの限界値は800[mm]であるので、寝台上下動可動範囲の下限値は800−900=−100[mm]である。また、寝台上下動可動範囲の上限値は1050−900=150[mm]である。すなわち、寝台上下動可動範囲は、「−100[mm]〜+150[mm]」となる。
【0038】
また、ステップS104においてガントリ傾斜の可動範囲を算出する際、システム制御装置401はガントリ傾斜可動範囲(プラス方向への移動限界値及びマイナス方向への移動限界値)を算出する。具体的には、システム制御装置401は干渉データ7を参照して現在の寝台高さにおけるガントリ傾斜角の限界値を取得し、現在のガントリ傾斜角と限界値との差を求め、ガントリ傾斜可動範囲のプラス方向への移動限界値とマイナス方向への移動限界値とを算出する。
【0039】
例えば、現在のガントリ傾斜角が−5[deg]、現在の寝台高さ位置が900[mm]の場合は、干渉データ7からこの寝台高さにおけるガントリ傾斜角の限界値は、−24[deg]または+25[deg]であるので、マイナス方向への移動限界値は、−24−(−5)=−19[deg]であり、プラス方向への移動限界値は、25−(−5)=+30[deg]である。すなわち、ガントリ傾斜可動範囲は−19〜+30[deg]となる。
【0040】
なお、干渉データ7が記憶装置403に複数種類記憶されている場合は、システム制御装置401は、被検体の体格、体位、年齢、装置のサイズ等に応じて、最適な干渉データ7を選択し、演算に使用するものとする。操作卓4では、被検体の体格、体位、年齢等を入力するためのユーザインターフェイスを備えることが望ましい。すなわち、検査の被検者情報を入力するための被験者情報登録画面を表示装置407に表示し、操作装置408を用いて被検者の体格等の情報を入力できるようにすることが望ましい。
【0041】
ステップS104の演算によって算出された寝台上下動可動範囲と、ガントリ傾斜可動範囲とは、ガントリ部2の表示器213に表示される。操作者は表示器213に表示される可動範囲を参照して、目的とするガントリ傾斜角に移動可能であるかを判断し、目的角度までガントリ部2を傾斜する(ステップS107)。または、寝台高さ位置を調製する。
【0042】
システム制御装置401は、ガントリ部2の傾斜角または寝台3の高さを変更する都度、ステップS102〜ステップS106を繰り返す。表示器213の表示内容は、ガントリ部2の傾斜角または寝台3の高さが変更される都度、リアルタイムに更新される。
【0043】
以上説明したように、X線CT装置1のシステム制御装置401は現在のガントリ傾斜角と現在の寝台高さ位置とを取得し、ガントリ傾斜角及び寝台高さ位置と予め記憶している干渉データ7とに基づいて、寝台3の可動範囲及びガントリ部2の可動範囲を算出し、算出した可動範囲を提示するための表示データを生成して、操作者の視認可能な範囲に設置されている表示器(例えばガントリ部2に設置された表示器213)に表示する。
これにより、ガントリ部2の表示器213に、現在のガントリ傾斜角及び寝台高さに応じたガントリ傾斜角の可動範囲と寝台高さの可動範囲とが表示される。そのため、操作者はガントリ傾斜角の調整または寝台高さの調整を行う際に、表示器213の表示内容を参考にしながら位置合わせを行うことができる。表示される可動範囲は、ガントリ開口部204と寝台3または被検体6とが干渉しないように算出されているため、可動範囲内であれば安全に調整できる。
【0044】
[第2の実施の形態]
次に、図6〜図8を参照して、本発明の第2の実施の形態のX線CT装置1について説明する。なお、第2の実施の形態のX線CT装置1において、第1の実施の形態のX線CT装置1と同一の各部については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
第1の実施の形態では、説明のため、天板5の撓みを固定値として寝台3及びガントリ部2の可動範囲を算出する例を示した。しかし、実際には図6に示すように、天板5が送り出された状態では、被検体6の体重によって天板5が撓むことがある。このため、第2の実施の形態では、天板の撓み量を考慮して寝台3及びガントリ部2の可動範囲を算出する。
【0046】
具体的な処理の流れを図7を参照して説明する。
図7に示すように、第2の実施の形態のX線CT装置1は、まず第1の実施の形態の可動範囲表示処理(図4)のステップS101〜ステップS103と同様の処理を行う。すなわち、ガントリ部2の開口部204内に、寝台3の天板5に載せられた被検体6がガイド用レーザを用いて体厚の中心が撮影中心に合うように搬送される(ステップS201)。システム制御装置401は、寝台3の上下動位置検出装置311から現在の寝台高さ位置を読み込む(ステップS202)。また、システム制御装置401は、ガントリ部2に設けられている角度センサ209から現在のガントリ傾斜角を読み込む(ステップS203)。
【0047】
更に、第2の実施の形態ではシステム制御装置401は、寝台3の前後動位置検出装置312から現在の天板移動距離Lを読み込む(ステップS204)。また、システム制御装置401は、予め操作卓4にて操作者により入力されている被検者情報から、被検者の体重Wを読み込む(ステップS205)。また、撮影プロトコルとして設定された被検者の体位を読み込む(ステップS206)。
【0048】
ここで、システム制御装置401は、天板5の撓み量Vmaxを計算する(ステップS207)。
撓み量Vmaxは、例えば以下の式(1)から算出できる。
【0049】
Vmax=WL/3EI ・・・(1)
【0050】
式(1)において、Wは被検者の体重、Lは天板移動距離、Eは天板5の弾性係数、Iは断面2次モーメントである。
なお、上述の式(1)は、標準体型の大人が頭部検査(体位「ヘッドファースト」)を行う場合に適した式である。ただし、被検者の体型や体位(検査部位)や年齢等によって荷重の重心が異なるため、上述の式(1)を用いて算出した撓み量Vmaxに、更に体型、検査部位、体位、年齢等に応じた係数を乗ずるようにしてもよい。
【0051】
次に、システム制御装置401は、ステップS202及びステップS203にて取得した現在の寝台高さ位置及びガントリ傾斜角と、記憶装置403に記憶されている干渉データ7と、天板の撓み量Vmaxとに基づいてガントリ部2及び寝台3の可動範囲を算出する(ステップS208)。そして、システム制御装置401は、算出されたガントリ部2及び寝台3の可動範囲を操作者が視認可能な位置に設置された表示器213に表示する(ステップS209、ステップS210)。
【0052】
ステップS208の可動範囲算出処理において、システム制御装置401は、天板5の撓み量Vmaxだけ寝台高さ位置が下がったものとして、寝台高さの可動範囲を演算する。
具体的には、ステップS202にて読み込んだ現在の寝台高さ位置から天板5の撓み量Vmaxを減じた値(以下、撓み量Vmaxを加味した寝台高さ位置という)を算出し、撓み量Vmaxを加味した寝台高さ位置を、第1の実施の形態でいうところの現在の寝台高さ位置とみなして、寝台上下動可動範囲の下限値及び上限値を算出する。
【0053】
すなわち、システム制御装置401は干渉データ7を参照して現在のガントリ傾斜角における寝台高さの限界値を取得し、撓み量Vmaxを加味した寝台高さ位置とその限界値との差を求め、寝台上下動可動範囲の下限値とする。また、撓み量Vmaxを加味した寝台高さ位置に被検体の体厚(標準体型で例えば200[mm]とする)を加えた値とガントリ傾斜角に応じた開口部204の上部高さとの差を求め、寝台上下動可動範囲の上限値とする。
【0054】
また、ステップS208においてガントリ傾斜の可動範囲を算出する際、システム制御装置401は干渉データ7を参照してガントリ傾斜可動範囲(プラス方向への移動限界値及びマイナス方向への移動限界値)を算出する。具体的には、システム制御装置401は干渉データ7を参照して撓み量Vmaxを加味した寝台高さにおけるガントリ傾斜角の限界値を取得し、現在のガントリ傾斜角と限界値との差を求め、ガントリ傾斜可動範囲のプラス方向への移動限界値とマイナス方向への移動限界値とを算出する。
【0055】
第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、干渉データ7は被検体の体格、体位、年齢、装置のサイズ等に応じて、記憶装置403に複数記憶されていることが望ましい。また、操作卓4では、被検体の体格等の被検者情報を入力するためのユーザインターフェイスを備えることが望ましい。
【0056】
図6及び図8に可動範囲の表示例を示す。
図6に示す例では、ガントリ部2の表示器213の可動範囲表示領域82に、「現在の寝台高さ」、「現在のガントリ傾斜角」、「撓み量」、「寝台上下動可動範囲」、「ガントリ傾斜可動範囲」、「体重」、「体位」等がテキスト表示される。
また、図8に示す例では、図6に示す情報の他、操作ガイダンス9が表示される。操作ガイダンス9には、例えば、現在の寝台3及びガントリ部2の位置関係が反映されたガイド画像91と、ガントリ部2の可動範囲93と寝台3の可動範囲94とが矢印、テキスト等により表示される。ガイド画像91は静止画または動画のいずれでもよい。
【0057】
更に、操作ガイダンス9として、システム制御装置401は、寝台3及びガントリ部2の最適な移動量及び移動方向を示す推奨移動量95を算出し、提示することが望ましい。すなわち、システム制御装置401は、現在の寝台高さ位置、現在のガントリ傾斜角、及び撓み量Vmaxに基づいて、目的部位の撮影中心からのずれ量を算出し、ずれを補正するための最適な寝台3またはガントリ部2の移動量及び移動方向を算出する。この移動量及び移動方向を推奨移動量95として表示器213に表示する。図8に示す例では、推奨移動量95は文字及び数字で表現されているが、これに限定されず、ガイド画像91のような画像を生成するようにしてもよい。
【0058】
以上の処理によって寝台3及びガントリ部2の可動範囲や最適な移動量が表示器213に表示されると、操作者は表示された可動範囲を参照して、目的とするガントリ傾斜角に移動可能であるかを判断し、目的角度までガントリ部2を傾斜させる(ステップS211)。または、寝台高さ位置を調整する。
【0059】
システム制御装置401は、ガントリ部2の傾斜角または寝台3の高さを変更する都度、ステップS202〜ステップS210を繰り返す。表示器213の表示内容は、ガントリ部2の傾斜角または寝台3の高さが変更される都度、リアルタイムに更新される。
【0060】
以上説明したように、第2の実施の形態のX線CT装置1のシステム制御装置401は、現在のガントリ傾斜角と現在の寝台高さ位置とを取得し、また天板5の前後の移動距離、被検者体重、体位等に基づいて天板5の撓み量Vmaxを算出し、現在のガントリ傾斜角及び寝台高さ位置と予め記憶している干渉データ7と撓み量Vmaxとに基づいて、寝台3の可動範囲及びガントリ部2の可動範囲を算出し、算出した可動範囲を提示するための表示データを生成して、操作者の視認可能な範囲に設置されている表示器(例えばガントリ部2に設置された表示器213)に表示する。
これにより、第2の実施の形態では、第1の実施の形態のX線CT装置1の効果に加え、更に精度よく位置合わせを行うためのユーザ支援を行える。
【0061】
以上、本発明に係るX線CT装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、第1の実施の形態においても、図8に示すものと同様の操作ガイダンス表示91を行うようにしてもよい。その他、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0062】
1・・・・・X線CT装置
2・・・・・ガントリ部
3・・・・・寝台
5・・・・・天板
4・・・・・操作卓
6・・・・・被検体
7・・・・・干渉データ
201・・・X線管(X線源)
202・・・X線制御装置
204・・・開口部
205・・・X線検出器
206・・・データ収集装置
207・・・回転板
208・・・ガントリ制御装置
209・・・角度センサ
210・・・操作盤
213・・・表示器
31・・・・寝台制御装置
312・・・上下動位置検出装置
313・・・前後動位置検出装置
401・・・システム制御装置
402・・・画像演算装置
403・・・記憶装置
407・・・表示装置
408・・・操作装置
81・・・・可動範囲の表示データ
82・・・・可動範囲表示領域
9・・・・・操作ガイダンス
91・・・・ガイド画像
93・・・・ガントリ部2の可動範囲
94・・・・寝台3の可動範囲
95・・・・推奨移動量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影空間となる開口部を備え、操作者の操作に従って所定の傾斜角度に傾斜可能なガントリと、被検体を載置する天板を有し、操作者の操作に従って該天板を前記開口部内の所定位置に搬送するとともに所定高さに上下動する寝台と、を備えたX線CT装置であって、
前記寝台または寝台に載置された被検体と前記ガントリとの接触を回避するための位置関係を表す干渉データを予め取得し、保持するデータ保持手段と、
前記ガントリの位置及び前記天板の位置を取得する位置取得手段と、
前記位置取得手段により取得した前記ガントリ及び前記寝台の各位置と前記干渉データとに基づいて前記ガントリ及び前記寝台の可動範囲を算出する演算手段と、
前記演算手段により算出された可動範囲を前記操作者が操作中に視認可能な範囲に表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記演算手段は、更に、被検体の体重による前記天板の撓み量を加味して前記ガントリ及び前記寝台の可動範囲を算出することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、被検体の体型、体位、年齢、性別、及び装置サイズのうち少なくともいずれか一つの要因に応じて異なる干渉データを複数保持することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記表示手段は、更に、
前記可動範囲に基づいて、操作ガイダンス表示データを生成し、表示するガイダンス表示手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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