説明

XYテーブルの原点復帰方法およびプログラム

【課題】X軸テーブルおよびY軸テーブルで原点センサを共用した場合にも、原点復帰処理を短時間に行うことを課題とする。
【解決手段】X軸スライダおよびY軸スライダを原点近傍センサに向かって原点方向に同時に移動させる復帰移動工程と、復帰移動工程の最終段階で、原点近傍センサが「ON」したら、X軸テーブルおよびY軸テーブルを駆動停止させた後、Y軸被検出子が原点近傍センサから外れるようにY軸スライダを反原点方向に所定の距離移動させて待機位置に位置させる停止・往動工程と、停止・往動工程により、原点近傍センサの「ON」が維持されたら、X軸テーブルの原点探査およびY軸テーブルの原点探査の順でX−Y原点探査を実行し、原点近傍センサが「OFF」したら、Y軸テーブルの原点探査およびX軸テーブルの原点探査の順でY−X原点探査を実行する原点探査工程とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X軸テーブルとX軸テーブルに搭載されたY軸テーブルとから成るXYテーブルの原点復帰方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、X軸テーブル(第1の移動ステージ)とX軸テーブルに搭載されたY軸テーブル(第2の移動ステージ)とから成るXYテーブル(二軸アクチュエータ装置)が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−14161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなXYテーブルでは、X軸テーブルおよびY軸テーブルの原点復帰処理を短時間で行うべく、両テーブルにそれぞれ専用の原点センサが設けることが好ましい。この点、Y軸テーブルの原点センサをY軸テーブル上に設置すると、それに伴う配線が必要となりX軸テーブルの負荷が過大となるおそれがある。そこで、X軸テーブルの負荷を軽減すべく、Y軸テーブルの原点センサを、Y軸テーブル上ではなくX軸テーブル上に取り付けることが考えられる。しかし、このようにすると、その分設置スペースが増大してしまい、現実的ではない。結局、X軸テーブルおよびY軸テーブルで原点センサを共用することになるが、この場合には、原点復帰処理をいかに短時間で行うかが問題となる。
【0004】
本発明は、X軸テーブルおよびY軸テーブルで原点センサを共用した場合にも、原点復帰処理を短時間に行うことができるXYテーブルの原点復帰方法およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のXYテーブルの原点復帰方法は、X軸テーブルとX軸テーブルに搭載されたY軸テーブルとから成るXYテーブルの原点復帰を、絶対固定の単一の原点近傍センサに、X軸テーブルのX軸スライダに接続したX軸被検出子およびY軸テーブルのY軸スライダに接続したY軸被検出子をそれぞれ臨ませることで行なうXYテーブルの原点復帰方法において、X軸スライダおよびY軸スライダを原点近傍センサに向かって原点方向に同時に移動させる復帰移動工程と、復帰移動工程の最終段階で、原点近傍センサが「ON」したら、X軸テーブルおよびY軸テーブルを駆動停止させた後、Y軸被検出子が原点近傍センサから外れるようにY軸スライダを反原点方向に所定の距離移動させて待機位置に位置させる第1停止・往動工程と、第1停止・往動工程により、原点近傍センサの「ON」が維持されたら、X軸テーブルの原点探査およびY軸テーブルの原点探査の順でX−Y原点探査を実行し、原点近傍センサが「OFF」したら、Y軸テーブルの原点探査およびX軸テーブルの原点探査の順でY−X原点探査を実行する第1原点探査工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、復帰移動工程において、X軸スライダおよびY軸スライダを原点近傍センサに向かって同時に移動させることで、両スライダのいずれも原点近傍センサに近づき、X軸被検出子およびY軸被検出子のの少なくとも一方が原点近傍センサに臨み「ON」となる。このとき、X軸テーブルおよびY軸テーブルのうち、被検出子が原点近傍センサに臨んでいる方から原点探査を行うと効率が良いが、いずれの被検出子が臨んでいるかは不明である。そこで、第1停止・往動工程において、Y軸スライダを待機位置に移動させる。原点近傍センサの「ON」が維持されている場合には、復帰移動工程の最終段階において、X軸被検出子によって原点センサが「ON」となっていたことになる。このため、第1原点探査工程において、まず、X軸テーブルの原点探査を行い、これに続いて、Y軸テーブルの原点探査を行う。この場合、X軸テーブルの原点探査が終了した時点で、Y軸スライダが原点近傍センサの近く(待機位置)に位置しているため、Y軸テーブルの原点探査に短時間で移行することができる。
【0007】
他方、Y軸スライダを反原点方向に所定距離移動させたことで、原点近傍センサが「OFF」となった場合には、復帰移動工程の最終段階において、Y軸被検出子によって原点センサが「ON」となっていたことになる。このため、第1原点探査工程において、まず、Y軸テーブルの原点探査を行い、これに続いて、X軸テーブルの原点探査を行う。この場合も、Y軸テーブルの原点探査が終了した時点で、X軸スライダが原点近傍センサの近くに位置しているため、X軸テーブルの原点探査に短時間で移行することができる。以上のように、X軸テーブルおよびY軸テーブルで原点センサを共用した場合にも、両テーブルの原点復帰処理を同時並行的に行うことで、原点復帰処理を短時間に行うことができる。
【0008】
この場合、Y軸テーブルは、Y軸スライダが復動方向のメカニカルストッパに突き当たったことを検出する復動端検出手段を有しており、復帰移動工程の最終段階で、原点近傍センサが「OFF」の状態で復動端検出手段が「ON」したら、X軸テーブルおよびY軸テーブルを駆動停止させた後、Y軸スライダを反原点方向に所定の距離移動させて待機位置に位置させる第2停止・往動工程と、第2停止・往動工程の後、X軸テーブルの原点探査およびY軸テーブルの原点探査の順でX−Y原点探査を実行する第2原点探査工程と、を更に備えたことが好ましい。
【0009】
この構成によれば、復帰移動工程において、X軸スライダが原点近傍センサに達するまでにY軸スライダが復動端に達した場合にも、原点近傍センサおよび復動端検出手段により、かかる状態が検出される。その場合、第2停止・往動工程において、Y軸スライダを待機位置に移動させる。続いて、第2原点探査工程において、まず、X軸テーブルの原点探査を行い、これに続いて、Y軸テーブルの原点探査を行う。この場合、X軸テーブルの原点探査が終了した時点で、Y軸スライダが原点近傍センサの近く(待機位置)に位置しているため、Y軸テーブルの原点探査に短時間で移行することができる。したがって、X軸スライダが原点近傍センサに達するまでにY軸スライダが復動端に達した場合にも、原点復帰処理を適切且つ短時間に行うことができる。
【0010】
これらの場合、X−Y原点探査は、X軸スライダを原点方向に移動させ、原点近傍センサが「ON」したところで、X軸テーブルのX軸モータのZ相を探して原点を確定するX軸原点確定工程と、X軸原点確定工程の後、X軸被検出子が原点近傍センサから外れるようにX軸スライダを反原点方向に移動させるX軸スライダ退避工程と、X軸スライダ退避工程の後、Y軸スライダを原点方向に移動させ、原点近傍センサが「ON」したところで、Y軸テーブルのY軸モータのZ相を探して原点を確定するY軸原点確定工程と、から成ることが好ましい。
【0011】
またこの場合、Y−X原点探査は、Y軸スライダを原点方向に移動させ、原点近傍センサが「ON」したところで、Y軸テーブルのY軸モータのZ相を探して原点を確定するY軸原点確定工程と、Y軸原点確定工程の後、Y軸被検出子が原点近傍センサから外れるようにY軸スライダを反原点方向に移動させるY軸スライダ退避工程と、Y軸スライダ退避工程の後、X軸スライダを原点方向に移動させ、原点近傍センサが「ON」したところで、X軸テーブルのX軸モータのZ相を探して原点を確定するX軸原点確定工程と、から成ることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、X軸テーブルおよびY軸テーブルの原点確定を、各モータのZ相を探して行うことになる。このため、X軸テーブルおよびY軸テーブルの原点復帰処理を正確に行うことができる。
【0013】
この場合、Y軸テーブルは、Y軸モータと、Y軸モータから回転動力を伝達され、X軸テーブルと平行に延在するベルト設置部の両端部およびY軸テーブルの両端部を周回するベルト伝動機構と、Y軸テーブル上のベルト伝動機構のベルトの一部に固定したY軸スライダと、から成り、X軸原点確定工程では、Y軸スライダが待機位置を維持するように、X軸スライダの原点方向への移動に同期して、X軸スライダの移動量に対応したY軸モータの駆動を行い、X軸スライダ退避工程では、Y軸スライダが待機位置を維持するように、X軸スライダの反原点方向への移動に同期して、X軸スライダの移動量に対応したY軸モータの駆動を行うことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、X軸原点確定工程およびX軸スライダ退避工程において、X軸スライダを移動させると、それに伴って、Y軸モータを駆動しなくともベルト伝達機構のベルトが回転し、Y軸スライダが移動するが、その移動を補正するように、Y軸モータを駆動する。これにより、Y軸スライダを待機位置の位置に維持させておくことができ、原点復帰処理を適切に行うことができる。
【0015】
本発明のプログラムは、コンピュータに、上記したXYテーブルの原点復帰方法の各工程を実行させることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、XYテーブルにおいて、X軸テーブルおよびY軸テーブルで原点センサを共用した場合にも、両テーブルの原点復帰処理を同時並行的に行うことで、原点復帰処理を短時間に行うことが可能とするプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係るXYテーブルの原点復帰方法について説明する。このXYテーブルは、X軸テーブルにY軸テーブルが搭載されたものであり、X軸モータの負荷を軽減すべく、Y軸テーブルの軽量化を図ったものである。すなわち、Y軸モータをY軸テーブル外に取り付けると共に、Y軸テーブルに専用の原点近傍センサを設けずに、X軸テーブルの原点近傍センサと共用するようにしたものである。
【0018】
図1に示すように、XYテーブル11は、X軸テーブル12と、X軸テーブル12に搭載されたY軸テーブル13と、X軸テーブル12の一方の端部近傍に絶対固定され、X軸テーブル12およびY軸テーブル13の原点復帰を行うための単一の近接センサ14(原点近傍センサ)と、X軸テーブル12に隣接してこれと平行に延在し、後述するY軸タイミングベルト39が設置されるベルト設置部15と、装置全体を統括制御するコントローラ16(コンピュータ)とから構成されている。
【0019】
なお、以下では、X軸テーブル12の往動方向を図1の左側(+X方向)、復動方向を右側(−X方向)とする。また、Y軸テーブル13の往動方向を図1の上側(+Y方向)、復動方向を下側(−Y方向)とする。さらに、X軸テーブル12およびY軸テーブル13において、後述するX軸スライダ23およびY軸スライダ33が近接センサ14に向かう方向(−X方向、−Y方向)を、それぞれ原点方向、近接センサ14から離れる方向(+X方向、+Y方向)を、それぞれ反原点方向ともいう。
【0020】
X軸テーブル12は、一方の端部(−X方向側)に設けられたX軸モータ21と、X軸モータ21から回転動力を伝達されるX軸ベルト伝達機構22と、X軸ベルト伝達機構22のX軸タイミングベルト29の一部に固定されたX軸スライダ23とで構成されており、X軸スライダ23には、Y軸テーブル13の端部が固定されている。さらに、X軸テーブル12は、Y軸スライダ13の近接センサ14側(−X方向側)に固定され、Y軸テーブル13を介してX軸スライダ23に接続されたX軸金属板24(X軸被検出子)を備えている。
【0021】
X軸モータ21は、正逆回転可能なサーボモータ等で構成されており、コントローラ16(後述する)からX軸モータドライバ25にパルス信号が出力されると、X軸モータドライバ25がそれに応答してX軸モータ21を駆動制御する。また、X軸モータ21には、基準位置からの1回転毎にZ相パルスを発生するX軸ロータリーエンコーダ26が内蔵されている。
【0022】
X軸ベルト伝達機構22は、X軸モータ21に接続された駆動プーリー27と、駆動プーリー27と反対側のX軸テーブル12の端部(+X方向側)に設けられた従動プーリー28と、両プーリー27,28間に掛け渡されたX軸タイミングベルト29とを有している。そして、X軸モータ21が駆動すると、X軸タイミングベルト29を介してX軸スライダ23がX軸方向に往復移動し、これに固定されたY軸テーブル13がX軸方向に往復移動する。
【0023】
Y軸テーブル13は、Y軸テーブル13の基端側(−Y方向側)に配設されたベルト設置部15の一方の端部(−X方向側)に固定されたY軸モータ31と、Y軸モータ31から回転動力を伝達され、ベルト設置部15の両端部およびY軸テーブル13の両端部を周回するY軸ベルト伝達機構32と、Y軸テーブル13上のY軸ベルト伝達機構32のY軸タイミングベルト39の一部に固定されたY軸スライダ33と、Y軸スライダ33の近接センサ14側(−X方向側)に垂設するように固定されたY軸金属板34(Y軸被検出子)とを備えている。Y軸金属板34は、X軸金属板24と略同一の高さ位置に取り付けられているが、相互に物理的に干渉しないように、X軸金属板24よりもさらに近接センサ14側に張り出すように設けられている。
【0024】
Y軸モータ31は、X軸モータ21と同様に、正逆回転可能なサーボモータ等で構成されており、コントローラ16からY軸モータドライバ35にパルス信号が出力されると、Y軸モータドライバ35がそれに応答してY軸モータ31を駆動制御する。また、Y軸モータ31には、基準位置からの1回転毎にZ相パルスを発生するY軸ロータリーエンコーダ36と、トルクを検出するトルクセンサ37とが内蔵されている。
【0025】
Y軸ベルト伝達機構32は、Y軸モータ31に接続された第1プーリー41と、第1プーリー41と反対側のベルト設置部15の端部(+X方向側)に設けられた第2プーリー42と、Y軸テーブル13の先端側(+Y方向側)に設けられた第3プーリー43と、Y軸テーブル13の基端側(−Y方向側)に設けられた第4プーリー44および第5プーリー45と、第4・第5プーリー44,45により経路変更される共に、第1〜第3プーリー41〜43間にT字状に掛け渡されたY軸タイミングベルト39とを有している。なお、ベルト設置部15は、Y軸テーブル13の基端側(−Y方向)に設けられているが、先端側(+Y方向)に設けてもよい。
【0026】
そして、Y軸モータ31が駆動すると、Y軸タイミングベルト39を介してY軸スライダ33がY軸方向に往復移動し、これに固定された移動対象物(図示省略)がY軸方向に往復移動する。Y軸テーブル13のX軸テーブル12側の端部(−Y方向側)には、Y軸スライダ33のメカニカルストッパ46が設けられている。そして、Y軸スライダ33が復動方向(−Y方向)に移動してメカニカルストッパ46に突き当たると、Y軸モータ31のトルクセンサ37によりトルク量変化が検出され、突き当たったことが検出されるようになっている。
【0027】
このように、Y軸テーブル13は、ベルト設置部15の両端部およびY軸テーブル13の両端部を周回するY軸ベルト伝達機構32により構成されているため、Y軸モータ31を回転させた場合のみならず、X軸モータ21を回転させた場合にも、Y軸スライダ33が移動する。すなわち、X軸モータ21を回転させてY軸テーブル13が−X方向に移動すると、Y軸スライダ33が所定の分解能をもって+Y方向に移動する。このため、Y軸スライダ33の位置を維持したままY軸テーブル13のみを移動させたい場合には、X軸スライダ23の移動(X軸モータ21の駆動)に同期して、X軸スライダ23の移動量に対応した(所定の分解能を考慮した)Y軸モータ31の駆動(Y軸位置保持補正)を行うようにする。
【0028】
近接センサ14は、X軸金属板24やY軸金属板34が接近したことを検出することで、X軸スライダ23やY軸スライダ33が原点近傍に位置するか否かを検出するものである。すなわち、電磁誘導を利用した高周波形のもので構成されており、X軸金属板24やY軸金属板34がこれに接近する(臨む)ときに、これらの金属体内に発生する誘導うず電流を検出し、検出信号をコントローラ16に出力するようになっている。近接センサ14の検出距離は、例えば数mm〜数十mmである。もちろん、このような近接センサ14のほか、X軸スライダ23やY軸スライダ33に固定された検出子の有無を検出できるものであればよく、光センサ(フォトインタラプタ)等を用いてもよい。この場合には、検出子として、金属板以外のものを適宜使用可能である。
【0029】
コントローラ16は、CPU、後述する原点復帰処理を実行するためのプログラムを記憶したメモリ、パルス発生回路等で構成されており、近接センサ14からの検出信号、X軸・Y軸ロータリーエンコーダ26・36からのZ相パルス、トルクセンサ37からの検出信号等に応答して、X軸モータ21やY軸モータ31を駆動させるためのパルス信号をX軸モータドライバ25やY軸モータドライバ35に出力することで、X軸スライダ23およびY軸スライダ33の移動を制御している。
【0030】
ここで、図2ないし図4のフローチャートを参照しつつ、XYテーブル11の原点復帰方法について説明する。まず、X軸スライダ23およびY軸スライダ33を近接センサ14に向かって原点方向(−X方向、−Y方向)に同時に移動させる(復帰移動工程;S11)。これにより、X軸スライダ23およびY軸スライダ33がそれぞれ近接センサ14に近づく。
【0031】
この復帰移動工程の最終段階で、近接センサ14が「ON」となったら(S12;ON)、X軸テーブル12およびY軸テーブル13を駆動停止させる(S13)。このとき、X軸金属板24およびY軸金属板34の少なくとも一方が近接センサ14に臨み「ON」となる。このとき、X軸テーブル12およびY軸テーブル13のうち、金属板が近接センサ14に臨んでいる方から原点探査を行うと効率が良いが、いずれの金属板が臨んでいるかは不明である。そこで、駆動停止後、Y軸金属板34が近接センサ14から外れるように(検出距離から外れるように)、Y軸スライダ33を反原点方向(+Y方向)に所定の距離移動させる(S14;第1停止・往動工程)。なお、図1の符号50は、Y軸スライダ33を所定の距離移動させたときに位置する待機位置を示している。
【0032】
この第1停止・往動工程により、近接センサ14の「ON」が維持された場合には(S15;ON),復帰移動工程の最終段階(S12)では、X軸金属板24が近接センサ14に検出されていたことになる。そこで、X−Y原点探査を実行する。すなわち、まず、X軸金属板24が近接センサ14から外れるように一旦X軸スライダ23を反原点方向(+X方向)に移動させ(S16)、その後、X軸テーブル12の原点探査を行う(S17;X軸原点確定工程)。このとき、Y軸スライダ33は、近接センサ14の近く(待機位置50)に位置している。X軸原点探査の後、X軸金属板24が近接センサ14から外れるようにX軸スライダ23を反原点方向(+X方向)に移動させ(X軸スライダ退避工程;S18)、さらにY軸テーブル13の原点探査(S19;Y軸原点確定工程)を行う。
【0033】
X軸テーブル12の原点探査は、X軸スライダ23を原点方向(−X方向)に移動させ(S31)、近接センサ14が「ON」となったら(S32;ON)、X軸スライダ23の原点方向への移動速度を低速にし(S33)、X軸モータ21(X軸ロータリーエンコーダ26)のZ相が「ON」となったら(S34;ON)、X軸の原点を確定する(S35)。
【0034】
同様に、Y軸テーブル13の原点探査は、まず、Y軸スライダ33を原点方向(−Y方向)に移動させ(S36)、近接センサ14が「ON」となったら(S37;ON)、Y軸スライダ33の原点方向への移動速度を低速にし(S38)、Y軸モータ31(Y軸ロータリーエンコーダ36)のZ相が「ON」となったら(S39;ON)、Y軸の原点を確定する(S40)。このように、X軸テーブル12およびY軸テーブル13の原点確定を、各モータのZ相を探して行うことで、原点復帰処理を正確に行うことができる。
【0035】
ここで、X−Y原点探査において、X軸スライダ23を反原点方向および原点方向に移動させる際(S16,S31,S33,S18)には、Y軸スライダ33が待機位置50を維持するように、上記のY軸位置保持補正を行うようにする。これにより、Y軸スライダ33を待機位置50の位置に維持させておくことができ、原点復帰処理を適切に行うことができる。
【0036】
以上のように、X軸テーブル12の原点探査が行われ、これに続いて、Y軸テーブル13の原点探査が行われるが、X軸テーブル12の原点探査が終了した時点で、Y軸スライダ33が近接センサ14の近く(待機位置50)に位置しているため、Y軸テーブル13の原点探査に短時間で移行することができる。
【0037】
一方、第1停止・往動工程により、近接センサ14が「OFF」となった場合には(S15;OFF),復帰移動工程の最終段階(S12)では、Y軸金属板34が近接センサ14に検出されていたことになる。そこで、Y−X原点探査を実行する。すなわち、まず、Y軸テーブル13の原点探査を行う(S20;Y軸原点確定工程)。このとき、X軸スライダ23は、近接センサ14の近くに位置している。Y軸原点探査の後、Y軸金属板34が近接センサ14から外れるようにY軸スライダ33を反原点方向(+Y方向)に移動させ(S21;Y軸スライダ退避工程)、さらにX軸テーブル12の原点探査(S22;X軸原点確定工程)を行う。Y軸テーブル13の原点探査およびX軸テーブル12の原点探査は、上記のX−Y原点探査の場合と同様に行う。そして、この場合も、Y軸テーブル13の原点探査が終了した時点で、X軸スライダ23が近接センサ14の近くに位置しているため、X軸テーブル12の原点探査に短時間で移行することができる。
【0038】
以上のように、X軸テーブル12およびY軸テーブル13で近接センサ14を共用した場合にも、両テーブル12,13の原点復帰処理を同時並行的に行うことで、原点復帰処理を短時間に行うことができる。
【0039】
ところで、原点復帰処理開始時におけるX軸スライダ23およびY軸スライダ33の位置によっては、X軸スライダ23が近接センサ14に達するまでにY軸スライダ33が復動端に達する場合があり、復帰移動工程の最終段階において、近接センサ14が「OFF」の状態(S12;OFF)で、トルクセンサ37により、Y軸スライダ33の突き当たりが検出される(S23;ON)。この場合、X軸テーブル12およびY軸テーブル13を駆動停止させた後(S24)、Y軸スライダ33を反原点方向(+Y方向)に所定の距離移動させて(S25)、待機位置50に位置させる第2停止・往動工程を行う。なお、この場合の待機位置50は、第1停止・往動工程における待機位置50と相違していてもよい。
【0040】
第2停止・往動工程の後は、上記と同様にして、X軸テーブル12の原点探査(S17)、X軸スライダ23の退避(S18)、およびY軸テーブル13の原点探査(S19)を、この順で行う。この場合も、X軸テーブル12の原点探査が終了した時点で、Y軸スライダ33が近接センサ14の近く(待機位置50)に位置しているため、引き続いて行われるY軸テーブル13の原点探査に短時間で移行することができる。したがって、X軸スライダ23が近接センサ14に達するまでにY軸スライダ33が復動端に達した場合にも、原点復帰処理を適切且つ短時間に行うことができる。
【0041】
なお、本実施形態では、Y軸テーブル13が、Y軸モータ31をY軸テーブル13外に設けると共に、ベルト設置部15の両端部およびY軸テーブル13の両端部を周回するY軸ベルト伝達機構32により構成されているものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、Y軸モータ31がY軸テーブル13上に固定された構成であってもよい。なお、この場合には、X軸スライダ23が移動することでY軸スライダ33が移動することはないため、上記のY軸位置保持補正は不要となる。
【0042】
さらに、本発明の構成を、XYZテーブルに適用することも可能である。すなわち、X軸テーブル、Y軸テーブルおよびZ軸テーブルで原点近傍センサを共用し、これらのテーブルの原点復帰処理を同時並行的に行うことで、原点復帰処理を短時間に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係るXYテーブルの平面模式図である。
【図2】XYテーブルの原点復帰方法を説明するフローチャートである。
【図3】XYテーブルの原点復帰方法の一部の工程を説明するフローチャートである。
【図4】図3と同様に、XYテーブルの原点復帰方法の一部の工程を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
11…XYテーブル 12…X軸テーブル 13…Y軸テーブル 14…近接センサ 15…ベルト設置部 16…コントローラ 21…X軸モータ 23…X軸スライダ 24…X軸金属板 31…Y軸モータ 32…Y軸ベルト伝達機構 33…Y軸スライダ 34…Y軸金属板 46…メカニカルストッパ 50…待機位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸テーブルと前記X軸テーブルに搭載されたY軸テーブルとから成るXYテーブルの原点復帰を、絶対固定の単一の原点近傍センサに、前記X軸テーブルのX軸スライダに接続したX軸被検出子および前記Y軸テーブルのY軸スライダに接続したY軸被検出子をそれぞれ臨ませることで行なうXYテーブルの原点復帰方法において、
前記X軸スライダおよび前記Y軸スライダを前記原点近傍センサに向かって原点方向に同時に移動させる復帰移動工程と、
前記復帰移動工程の最終段階で、前記原点近傍センサが「ON」したら、前記X軸テーブルおよび前記Y軸テーブルを駆動停止させた後、前記Y軸被検出子が原点近傍センサから外れるように前記Y軸スライダを反原点方向に所定の距離移動させて待機位置に位置させる第1停止・往動工程と、
前記第1停止・往動工程により、前記原点近傍センサの「ON」が維持されたら、前記X軸テーブルの原点探査および前記Y軸テーブルの原点探査の順でX−Y原点探査を実行し、前記原点近傍センサが「OFF」したら、前記Y軸テーブルの原点探査および前記X軸テーブルの原点探査の順でY−X原点探査を実行する第1原点探査工程と、を備えたことを特徴とするXYテーブルの原点復帰方法。
【請求項2】
前記Y軸テーブルは、前記Y軸スライダが復動方向のメカニカルストッパに突き当たったことを検出する復動端検出手段を有しており、
前記復帰移動工程の最終段階で、前記原点近傍センサが「OFF」の状態で前記復動端検出手段が「ON」したら、前記X軸テーブルおよび前記Y軸テーブルを駆動停止させた後、前記Y軸スライダを反原点方向に所定の距離移動させて待機位置に位置させる第2停止・往動工程と、
前記第2停止・往動工程の後、前記X軸テーブルの原点探査および前記Y軸テーブルの原点探査の順でX−Y原点探査を実行する第2原点探査工程と、を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のXYテーブルの原点復帰方法。
【請求項3】
前記X−Y原点探査は、前記X軸スライダを原点方向に移動させ、前記原点近傍センサが「ON」したところで、前記X軸テーブルのX軸モータのZ相を探して原点を確定するX軸原点確定工程と、
前記X軸原点確定工程の後、前記X軸被検出子が前記原点近傍センサから外れるように前記X軸スライダを反原点方向に移動させるX軸スライダ退避工程と、
前記X軸スライダ退避工程の後、前記Y軸スライダを原点方向に移動させ、前記原点近傍センサが「ON」したところで、前記Y軸テーブルのY軸モータのZ相を探して原点を確定するY軸原点確定工程と、から成ることを特徴とする請求項1または2に記載のXYテーブルの原点復帰方法。
【請求項4】
前記Y−X原点探査は、前記Y軸スライダを原点方向に移動させ、前記原点近傍センサが「ON」したところで、前記Y軸テーブルのY軸モータのZ相を探して原点を確定するY軸原点確定工程と、
前記Y軸原点確定工程の後、前記Y軸被検出子が前記原点近傍センサから外れるように前記Y軸スライダを反原点方向に移動させるY軸スライダ退避工程と、
前記Y軸スライダ退避工程の後、前記X軸スライダを原点方向に移動させ、前記原点近傍センサが「ON」したところで、前記X軸テーブルのX軸モータのZ相を探して原点を確定するX軸原点確定工程と、から成ることを特徴とする請求項1に記載のXYテーブルの原点復帰方法。
【請求項5】
前記Y軸テーブルは、Y軸モータと、前記Y軸モータから回転動力を伝達され、前記X軸テーブルと平行に延在するベルト設置部の両端部および前記Y軸テーブルの両端部を周回するベルト伝動機構と、前記Y軸テーブル上の前記ベルト伝動機構のベルトの一部に固定したY軸スライダと、から成り、
前記X軸原点確定工程では、前記Y軸スライダが前記待機位置を維持するように、前記X軸スライダの原点方向への移動に同期して、前記X軸スライダの移動量に対応した前記Y軸モータの駆動を行い、
前記X軸スライダ退避工程では、前記Y軸スライダが前記待機位置を維持するように、前記X軸スライダの反原点方向への移動に同期して、前記X軸スライダの移動量に対応した前記Y軸モータの駆動を行うことを特徴とする請求項3に記載のXYテーブルの原点復帰方法。
【請求項6】
コンピュータに、請求項1ないし5のいずれかに記載のXYテーブルの原点復帰方法の各工程を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−233429(P2007−233429A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50496(P2006−50496)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】