説明

Y/C分離回路

【課題】A/D変換器を必要とせずに映像信号から輝度信号とクロマ信号を適切に抽出する。
【解決手段】垂直高域通過フィルタ機能並びに水平低域通過フィルタ機能を組み合わせた第1のスイッチド・キャパシタフィルタと、垂直低域通過フィルタ機能を有した第2のスイッチド・キャパシタフィルタと、第1及び第2のスイッチド・キャパシタフィルタの出力を重畳させて映像信号に含まれる輝度信号を抽出する輝度信号生成部と、垂直高域通過フィルタ機能並びに水平高域通過フィルタ機能を有し、垂直高域通過フィルタ機能の出力と水平高域通過フィルタ機能の出力を重畳させてクロマ信号を抽出する第3のスイッチド・キャパシタフィルタと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Y/C分離回路に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のアナログカラーテレビ方式のうち直角二相振幅変調の色差信号搬送方式を採用したものとしてNTSC(National Television Standards Committee)又はPAL(Phase Alternation by Line)が存在する。尚、直角二相振幅変調とは、周波数が等しく、位相が90度異なる2つの搬送波をそれぞれ振幅変調した後に合成するものである。
【0003】
NTSC又はPALに準拠した映像信号を送信する側では、テレビカメラで撮像したR(赤)、G(緑)、B(青)の映像信号をそのままの形で送信せず、その映像信号を、画面の明るさを構成する輝度信号Yと画面の色の濃淡度合いを構成するクロマ信号Cとに変換し、輝度信号Yとクロマ信号Cとを合成したコンポジット信号SCとして送信する。
【0004】
クロマ信号Cは、図8(a)に示すように、R信号及びB信号から輝度信号Yを差し引いた2つの色差信号R−Y、B−Yを、互いに直交するI・Q信号(NTSC方式の場合)又はU・V信号(PAL方式の場合)へ変換するとともに、それらを合成して振幅変調した信号である。クロマ信号Cには、搬送色信号CAの位相と振幅の基準とするカラーバースト信号BSと、位相が色相を示すとともに振幅が彩度を示す搬送色信号CAと、が含まれる。
【0005】
輝度信号Yは、図8(b)に示すように、水平同期信号HSYNCと輝度信号成分YAとが含まれる。水平同期信号HSYNCは、水平方向の1本の走査線の開始を示す信号であり、隣接する二つの水平同期信号HSYNCの間の期間は「1H期間(1水平走査期間)」と呼ばれている。輝度信号成分YAは、輝度の内容を示す信号である。
【0006】
コンポジット信号SCは、図8(c)に示すように、図8(a)に示したクロマ信号Cと、図8(b)に示した輝度信号Yと、を合成したものである。詳述すると、コンポジット信号SCは、クロマ信号Cのカラーバースト信号BSを、輝度信号Yのバックポーチへと重畳させるとともに、クロマ信号Cの搬送色信号CAを輝度信号成分YAに重畳させた波形となる。
【0007】
一方、NTSC又はPALに準拠した映像信号を受信して所定の信号処理を行う映像信号受信装置は、アンテナ2で受信したコンポジット信号SCよりクロマ信号Cと輝度信号Yを分離するY/C分離回路を具備する必要がある。
【0008】
図9は、従来のY/C分離回路の構成例を示した図である。従来のY/C分離回路は、アンテナ2で受信したコンポジット信号SCをデジタル信号に変換して出力するA/D変換器610と、A/D変換器610から出力されたデジタル信号のうちクロマ信号Cの周波数成分を抽出する1次元のBPF(Band Pass Filter)620と、A/D変換器610から出力されたデジタル信号からBPF620で抽出されたクロマ信号を減算することで輝度信号Yを生成して出力する減算器630と、から構成される。即ち、従来のY/C分離回路は、コンポジット信号SCからクロマ信号Cと輝度信号Yをデジタル信号処理によって分離する1次元のデジタルY/C分離方式を採用していた。
【特許文献1】特開2000−175219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来のY/C分離回路が採用する1次元のデジタルY/C分離方式によると、コンポジット信号SCから精度良くクロマ信号Cと輝度信号Yを分離すべく、A/D変換器の分解能を上げる必要があった。しかし、A/D変換器の分解能を上げた場合、A/D変換器の回路規模の増大化を招き、近年、小型化が要請されるY/C分離回路を含む映像信号受信装置にとって問題である。
【0010】
そこで、従来の1次元のデジタルY/C分離方式をアナログ信号処理(アナログY/C分離方式)によって実現しようとした場合、今度は輝度信号Yの抽出とクロマ信号Cの抽出の非独立性に依拠した演算誤差の問題が顕在化する。即ち、従来の1次元のデジタルY/C分離方式とは、コンポジット信号SCからクロマ信号Cを減算して輝度信号Yを得る方式である。このため、クロマ信号を抽出する際に発生する演算誤差が、輝度信号Yを求める際に発生する演算誤差に影響を与えてしまい、抽出された輝度信号Yにクロマ信号Cの成分が残存する恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための主たる発明は、輝度信号とクロマ信号を含む映像信号から前記輝度信号と前記クロマ信号を分離するY/C分離回路において、所定の垂直空間周波数成分よりも高い垂直空間周波数成分を前記映像信号より抽出する垂直高域通過フィルタ機能、並びに所定の水平空間周波数成分よりも低い水平空間周波数成分を前記映像信号より抽出する水平低域通過フィルタ機能を組み合わせた第1のスイッチド・キャパシタフィルタと、前記所定の垂直空間周波数成分よりも低い垂直空間周波数成分を前記映像信号より抽出する垂直低域通過フィルタ機能を有した第2のスイッチド・キャパシタフィルタと、前記第1のスイッチド・キャパシタフィルタの出力と前記第2のスイッチド・キャパシタフィルタの出力を重畳させて前記映像信号に含まれる前記輝度信号を抽出する輝度信号生成部と、前記所定の垂直空間周波数成分よりも高い垂直空間周波数成分を前記映像信号より抽出する垂直高域通過フィルタ機能、並びに前記所定の水平空間周波数成分よりも高い水平空間周波数成分を前記映像信号より抽出する水平高域通過フィルタ機能を有し、前記垂直高域通過フィルタ機能の出力と前記水平高域通過フィルタ機能の出力を重畳させて前記映像信号に含まれる前記クロマ信号を抽出する第3のスイッチド・キャパシタフィルタと、を有することとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、A/D変換器を必要とせずに映像信号から輝度信号とクロマ信号を適切に抽出するY/C分離回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<<<映像信号受信装置の構成>>>
図1は、本発明の一実施形態に係る映像信号受信装置の構成図である。尚、以下に示す実施形態では、種々のアナログカラーテレビ方式のうちNTSCに準拠しており、クロマ信号Cが1H期間で180度の位相差を有する場合とする。尚、詳細は後述するが、本発明では、1H期間で90度の位相差を有するPALを採用してもよい。
【0014】
チューナ4は、アンテナ2で受信したNTSCに準拠した映像信号の中から、受信対象チャンネルの信号を抽出した後に増幅出力する。
【0015】
フィルタ6は、チューナ4の出力から中間周波信号IFを抽出し、更に、当該中間周波信号IFを検波してコンポジット信号SCを抽出する。
【0016】
遅延回路8は、フィルタ6により抽出されたコンポジット信号SCをそのまま出力する他に、コンポジット信号SCを1H期間分遅延させて出力する1H遅延回路82と、1H遅延回路82の出力をさらに1H期間分遅延させて出力する1H遅延回路84と、を具備する。尚、1H期間は、図8に示したとおり、隣接する二つの水平同期信号HSYNCの間の1水平走査期間である。本実施形態の1H遅延回路82、84は、これまで主に用いられてきたCCD(Charged Coupled Device)遅延素子よりも安価であり且つこれまでアナログフィルタとして専ら利用されていた図5乃至図7に示すようなダイレクト・チャージ型のスイッチド・キャパシタ遅延回路を用いて構成する。勿論、ダイレクト・チャージ型に限定されず、バッファ型や電荷転送型のスイッチド・キャパシタ遅延回路(例えば、特開2007−97020号公報の図4や図8等を参照)を用いて構成してもよい。
【0017】
従って、遅延回路8は、ディスプレイ22の表示画面中、水平方向の任意の1本の走査線を示す1H期間分のコンポジット信号SC(本発明に係る「第1の映像信号」である。以下、「0H信号又は単に0H」という。)と、0H信号を1H期間分遅延させた信号(本発明に係る「第2の映像信号」である。以下、「1H信号又は単に1H」という。)と、1H信号を1H期間分遅延させた信号(本発明に係る「第3の映像信号」である。以下、「2H信号又は単に2H」という。)と、を出力する。尚、0H、1H、2H信号は、ディスプレイ22の表示画面中、垂直方向に連続した3本の走査線を表しており、0H、1H信号間、1H、2H信号間は、それぞれ180度の位相差を持っている。
【0018】
Y/C分離回路10は、遅延回路8から出力された0H、1H、2H信号を用いて、後述の2次元のアナログY/C分離方式に基づいて、輝度信号Yとクロマ信号Cとに分離する。尚、本実施形態のY/C分離回路10は、2次元のアナログY/C分離方式を実現するための各種2次元フィルタを構成するにあたり、図5乃至図7に示すようなダイレクト・チャージ型のスイッチド・キャパシタ遅延回路を用いて構成する。勿論、上記の1H遅延回路82、84と同様に、バッファ型や電荷転送型のスイッチド・キャパシタ遅延回路を用いて構成してもよい。
【0019】
輝度信号処理回路12は、Y/C分離回路10から供給される輝度信号Yのコントラスト調整やブランキング調整を行う。
【0020】
クロマ信号処理回路14は、Y/C分離回路10から供給されるクロマ信号Cのチャネル毎のゲイン調整やカラーキラー等の処理を行う。
【0021】
色復調処理回路16は、主に、クロマ信号処理回路14での各種処理が施されたクロマ信号Cに基づいて色差信号R−Y、B−Yを復調する。
【0022】
マトリクス回路18は、色復調処理回路16で復調された色差信号R−Y、B−Yと、輝度信号処理回路12での各種処理が施された輝度信号Yを合成して、3つのR信号、G信号、B信号から成る映像信号を復元する。
【0023】
RGBドライバ20は、マトリクス回路18から供給された3つのR信号、G信号、B信号に基づいて、ディスプレイ22に所望のカラー映像を再現するための駆動信号ROUT、GOUT、BOUTを生成する。
【0024】
<<<Y/C分離回路>>>
===2次元のアナログY/C分離方式===
Y/C分離回路10は、図2に示すように、コンポジット信号SCの水平空間周波数成分Hを表す水平軸と垂直空間周波数成分Vを表す垂直軸とにより構成される2次元空間を想定したスイッチド・キャパシタフィルタを用いた2次元のアナログY/C分離方式を採用したものである。
【0025】
尚、輝度信号Yの抽出に際して、所定の垂直空間周波数成分V1よりも高く且つ所定の垂直空間周波数成分V2(>V1)よりも低い垂直空間周波数成分を抽出する垂直帯域通過フィルタ機能(以下、V−BPF機能という。)、並びに所定の水平空間周波数成分H1(<H2)よりも低い水平空間周波数成分を抽出する水平低域通過フィルタ機能(以下、H−LPF機能という。)を組み合わせた第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100と、垂直空間周波数成分V1よりも低い垂直空間周波数成分を抽出する垂直低域通過フィルタ機能(以下、V−LPF機能という。)である第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200と、を組み合わせて使用する。尚、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100は、上記V−BPF機能の代わりに、垂直空間周波数成分V1よりも高い垂直空間周波数成分を抽出する垂直高域通過フィルタ機能(以下、V−HPF機能という。)を上記H−LPF機能と組み合わせて構成してもよい。
【0026】
また、クロマ信号Cの抽出に際して、垂直空間周波数成分V1よりも高く且つ垂直空間周波数成分V2よりも低い垂直空間周波数成分を抽出するV−BPF機能、並びに水平空間周波数成分H1よりも高い水平空間周波数成分を抽出する水平高域通過フィルタ機能(以下、H−HPF機能という。)を組み合わせた第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300を使用する。尚、第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300は、上記V−BPF機能の代わりに、垂直空間周波数成分V1よりも高い垂直空間周波数成分を抽出するV−HPF機能を上記H−HPF機能と組み合わせて構成してもよい。
【0027】
===第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100===
図3、図5、図6を用いて、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100の詳細な構成について説明する。尚、図3に示す中で、以下の記号(A)のブロックは、n(n=1〜3)サンプリング周期分遅延させるスイッチド・キャパシタを表している。

【0028】
第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100の一機能であるV−BPF機能は、0H、2H信号を論理反転した上で、0H、1H、2H信号の重み付け加算平均を演算することにより実現できる。本実施形態では、最小限の回路規模で実現すべく、つぎの式(1)に示すように、フィルタ長が3であり、一部が負のフィルタ係数(−1、+2、−1)を用いたFIR(Finite Impulse Responce)形式のBPFを採用する。尚、「FIR形式」と記載したのは、本実施形態では、FIRというデジタルフィルタの概念をDSP(Digital Signal Processor)等のデジタル回路で構成するのではなく、後述のスイッチド・キャパシタを用いたアナログ回路によって構成するからである。以下のFIR形式の記載についても同様である。

【0029】
第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100のもう一つの機能であるH−LPF機能(以下の式(4)を参照)は、上記の式(1)によって構成されるV−BPF1機能(以下の式(2)を参照)、V−BPF2(以下の式(3)を参照)を設ける。そして、V−BPF1機能並びにV−BPF2機能の各出力に対して+1を掛け算して加算することによって、フィルタ長が2であり、全て正のフィルタ係数(+1、+1)を用いたFIR形式のLPFが構成される。

【0030】
尚、式(2)〜式(4)の中で、上記の記号(B)の部分は、k(k=0〜2)H信号をn(n=1、3)サンプリング周期遅延させたことを表している。式(4)で表現されるH−LPF機能は、結果的に、上記のV−BPF機能並びにH−LPF機能の二つの機能を包含した第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100を表現したものとなる。そして、式(4)をブロック図的に表現すると、図3に示す第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100の中身となる。
【0031】
第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100中のV−BPF1機能において、101〜104は、式(2)中の各記号(B)に該当し、入力IN(0H、1H、2H)をクロックCLKに基づき1サンプリング周期分遅延させた出力OUTを出力する後述の第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500(図5参照)である。105、106は、式(2)中の負の係数(−1)を実現する論理反転部である。107〜109は、式(2)中の各記号(B)を加算する加算部である。尚、本実施形態において、論理反転部105、106は、詳細は後述するが、インバータ素子を用いて実現するのではなく、第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500の結線変更により実現している。また、加算部107〜109は、加算器を用いて実現するのではなく、図3に示すように、信号線の短絡によって実現している。
【0032】
第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100中のV−BPF2機能において、121〜124は、式(3)中の各記号(B)に該当し、入力IN(0H、1H、2H)をクロックCLKに基づき3サンプリング周期分遅延させた出力OUTを出力する後述の第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520(図6参照)である。125、126は、式(3)中の負の係数(−1)を実現する論理反転部である。127〜129は、式(3)中の各記号(B)を加算する加算部である。尚、上記のV−BPF1と同様に、論理反転部125、126は、第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520の結線変更により実現し、加算部127〜129は、信号線の短絡によって実現する。
【0033】
130は、V−BPF1機能の出力とV−BPF2機能の出力を加算する加算部である。即ち、加算部130は、式(4)中の前半の因数と後半の因数の加算部分に該当し、FIR形式のLPFを実現するための要件となる。
【0034】
===第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200===
図3、図7を用いて、第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200の詳細な構成について説明する。
【0035】
第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200の機能であるV−LPF機能は、0H、1H、2H信号の重み付け加算平均として構成することができる。本実施形態では、つぎの式(5)に示すように、最小限の回路規模で実現すべく、フィルタ長が3であり、全て正のフィルタ係数(+1、+2、+1)を用いたFIR形式のLPFを採用する。

また、式(5)を上記の記号(B)と同様の記号(C)を用いて表現すると、つぎの式(6)となる。

【0036】
尚、式(6)をブロック図的に表現すると、図3に示す第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200の中身となる。第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200中のV−LPF機能において、201〜204は、式(6)中の各記号(B)に該当し、入力IN(0H、1H、2H)をクロックCLKに基づき2サンプリング周期分遅延させた出力OUTを出力する後述の第2のスイッチド・キャパシタ遅延回路540(図7参照)である。205〜207は、式(6)中の各記号(B)を加算する加算部である。尚、加算部205〜207は、加算器を用いて実現するのではなく、図3に示すように、信号線の短絡によって実現している。
【0037】
250は、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100の出力と第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200の出力を加算し、その加算結果を輝度信号Yとして出力する輝度信号生成部である。
【0038】
===第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300===
図4、図5、図6を用いて、第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300の詳細な構成について説明する。
【0039】
第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300の一機能であるV−BPF機能は、上記の式(1)によって構成する。第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300のもう一つの機能であるH−HPF機能は、上記の式(1)によって構成されるV−BPF1機能(式(2)参照)並びにV−BPF2機能(式(3)参照)を設けておき、V−BPF1機能並びにV−BPF2機能の各出力を減算することによって、フィルタ長が2となるFIR形のHPFとして構成される。

尚、式(7)をブロック図的に表現すると、図4に示す第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300の中身となる。
【0040】
第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300中のV−BPF1機能において、301〜304は、式(2)中の各記号(B)に該当し、入力IN(0H、1H、2H)をクロックCLKに基づき1サンプリング周期分遅延させた出力OUTを出力する第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500(図5参照)である。305、306は、式(2)中の負の係数(−1)を実現する論理反転部である。307〜309は、式(2)中の各記号(B)を加算する加算部である。尚、論理反転部305、306は、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100のV−BPF1機能と同様に、第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500の結線変更により実現し、加算部307〜309は、信号線の短絡によって実現している。
【0041】
第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300中のV−BPF2機能において、321〜324は、式(3)中の各記号(B)に該当し、入力IN(0H、1H、2H)をクロックCLKに基づき3サンプリング周期分遅延させた出力OUTを出力する第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520(図6参照)である。325、326は、式(3)中の負の係数(−1)を実現する論理反転部である。327〜329は、式(3)中の各記号(B)を加算する加算部である。尚、論理反転部325、326は、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100のV−BPF2機能と同様に、第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520の結線変更により実現し、加算部327〜329は、信号線の短絡によって実現する。
【0042】
330は、V−BPF2機能の出力を論理反転する論理反転部であり、350は、V−BPF1機能と論理反転部330により論理反転させたV−BPF2機能の出力を加算するクロマ信号生成部である。即ち、論理反転部330とクロマ信号生成部350は、式(7)中の前半の因数と後半の因数の減算部分に該当し、FIR形式のHPFを実現するための要件となる。
【0043】
===第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500===
図5は、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100及び第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300に用いられる第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500の詳細な構成を示した図である。
【0044】
スイッチド・キャパシタ基本回路501は、キャパシタC1と、キャパシタC1を出力段のオペアンプのフィードバックループに取り込むための第1のスイッチング素子(M1、M2)と、入力INのレベルに応じた電荷を当該キャパシタC1に蓄積させるための第2のスイッチング素子(M3、M4)と、により構成される。尚、スイッチド・キャパシタ基本回路501のNMOSトランジスタM3、M4のゲートは短絡され、次段のスイッチド・キャパシタ基本回路502のNMOSトランジスタM5、M6のゲートに共通に接続される。
【0045】
詳述すると、NMOSトランジスタM1、M3は、キャパシタC1の一端を、入力IN又はオペアンプ506の出力OUTのいずれか一方と接続させるために相補的にオンオフする。NMOSトランジスタM2、M4は、キャパシタC1の他端を、オペアンプ506の反転入力端子又は接地のいずれか一方に接続させるために相補的にオンオフする。従って、NMOSトランジスタM3、M4がオンしたときには入力INのレベルに応じた電荷がキャパシタC1に保持され、NMOSトランジスタM1、M2がオンしたときにはキャパシタC1がオペアンプ506のフィードバックループに取り込まれる。
スイッチド・キャパシタ基本回路502は、スイッチド・キャパシタ基本回路501と同様の構成且つ動作となるので説明を省略する。
【0046】
シフトレジスタ505は、1サンプリング周期を持つクロックCLKに基づいて、(1、0)、(0、1)を繰り返す制御信号P0、P1を出力する。尚、制御信号P0が1のとき、スイッチド・キャパシタ基本回路501側の第1のスイッチング素子(M1、M2)がオンし、スイッチド・キャパシタ基本回路502側の第2のスイッチング素子(M7、M8)がオンする。また、制御信号P1が1のとき、スイッチド・キャパシタ基本回路501の第2のスイッチング素子(M3、M4)がオンし、スイッチド・キャパシタ基本回路502の第1のスイッチング素子(M5、M6)がオンする。以上より、シフトレジスタ505から出力される制御信号P0、P1に基づいて、キャパシタC1又はC2のいずれか一つにおいて1サンプリング周期前に蓄積された電荷に応じた電圧が、オペアンプ506より出力される。
【0047】
尚、前述した論理反転部105、106、125、126は、第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500の結線変更により実現できる。具体的には、NMOSトランジスタM1、M5のドレインをオペアンプ506の反転入力端子と接続し、NMOSトランジスタM2、M6のソースをオペアンプ506の出力と接続する。
【0048】
===第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520===
図6は、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100及び第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300に用いられる第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520の詳細な構成を示した図である。第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500との相違点は、第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520は4個のスイッチド・キャパシタ基本回路521〜524を多段接続した構成となる点である。また、シフトレジスタ525が、クロックCLKの1サンプリング周期毎に、(1000)、(0100)、(0010)、(0001)と切り替わる4つの制御信号P0〜P3を出力する点が相違する。第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520は、これらの4つの制御信号P0〜P3に基づいて、キャパシタC1〜C4のいずれか一つにおいて3サンプリング周期前に蓄積された電荷に応じた電圧が、オペアンプ526より出力される。
【0049】
===第2のスイッチド・キャパシタ遅延回路540===
図7は、第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200に用いられる第2のスイッチド・キャパシタ遅延回路540の詳細な構成を示した図である。第2のスイッチド・キャパシタ遅延回路540は、スイッチド・キャパシタ基本回路541〜543、シフトレジスタ545、オペアンプ546によって構成される。第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500並びに第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520との相違点は、3個のスイッチド・キャパシタ基本回路541〜543を多段接続した点である。また、シフトレジスタ545は、クロックCLKの1サンプリング周期毎に(100)、(010)、(001)と切り替わる3つの制御信号P0〜P2を出力する点が相違する。第2のスイッチド・キャパシタ遅延回路540は、これらの3つの制御信号P0〜P2に基づいて、キャパシタC1〜C3のいずれか一つにおいて2サンプリング周期前に蓄積された電荷に応じた電圧が、オペアンプ546より出力される。
【0050】
以上、本発明によれば、第1及び第2のスイッチド・キャパシタフィルタ100、200によって輝度信号Yの抽出を行う処理と、第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300によってクロマ信号Cの抽出を行う処理と、がそれぞれ独立して行われる。この結果、クロマ信号Cの抽出処理の際に生じた演算誤差が、輝度信号Yの抽出処理の際に影響を与えることがなくなるため、コンポジット信号SC(映像信号)から輝度信号Yとクロマ信号Cにそれぞれ分離する際の精度劣化が最小限に抑えられる。
【0051】
また、アナログ回路である第1乃至第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路500、520、540等を用いた第1乃至第3のスイッチド・キャパシタフィルタ100、200、300によって2次元のアナログY/C分離が行われる。このため、従来の1次元のデジタルY/C分離方式のようにA/D変換器を用いなくて済むので、回路規模の増大化を抑えることができる。また、従来の1次元のデジタルY/C分離方式の場合のようにA/D変換器の分解能による入力INのレベル制限を受けなくて済む。さらに、アナログ回路でY/C分離処理を行っているので外部の周辺回路への輻射ノイズの低減化が図られる。
【0052】
また、第1乃至第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路500、520、540の各サンプリング周期は、シフトレジスタ505、525、545のクロックCLKの周期の変更によって自由な調整が可能となる。さらに、従来の1次元のデジタルY/C分離方式の場合のようにデジタルフィルタ(例えば、図9に示したBPF620)を用いるのではなく、アナログ回路である第1乃至第3のスイッチド・キャパシタフィルタ100、200、300を用いる。このため、遅延処理と演算処理が個別に行われるのではなく、遅延処理と演算処理が一体的に行われるので、回路規模の増大化を抑えられる。
【0053】
また、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100は、1サンプリング周期遅延の第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500と、3サンプリング周期遅延の第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520を用いて構成される。そこで、第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200は、第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500(1サンプリング周期)と第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520(3サンプリング周期)の各サンプリング周期の平均となる2サンプリング周期の第2のスイッチド・キャパシタ遅延回路540を用いて構成する。即ち、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100は、サンプリング周期のそれぞれ異なる第1乃至第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路500、520、540によって構成される。このように構成した結果、スイッチド・キャパシタ遅延回路の総数を最小限に抑えつつ、輝度信号生成部250において生成される輝度信号Yに含まれる遅延誤差を平均化して抑制することができる。
【0054】
また、第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300は、サンプリング周期の異なる第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路500(1サンプリング周期遅延)と第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路520(3サンプリング周期遅延)を用いて構成される。このように、スイッチド・キャパシタ遅延回路の総数を最小限に抑えて第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300を構成できる。
【0055】
以上、本実施の形態について説明したが、前述した実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0056】
例えば、本発明に係る映像信号受信装置は、クロマ信号Cが1H期間毎に90度の位相差を持つPALにも準拠させてもよい。PALに準拠させた場合、遅延回路8は、0H信号の他に、0H信号から2H期間分遅延させた2H信号と、当該0H信号を4H期間分遅延させた4H信号を生成して、Y/C分離回路10に出力する。ここで、0H、2H信号間と、2H、4H信号間で180度の位相差を持つことになるので、Y/C分離回路10は、1H、2H信号の代わりに2H、4H信号を用いる以外、NTSCの場合と同様の構成を採用できる。具体的には、k(k=0、2、4)H信号をn(n=1、3)サンプリング周期遅延させたことを表す記号(D)を用いて、第1のスイッチド・キャパシタフィルタ100はつぎの式(8)で表現され、第2のスイッチド・キャパシタフィルタ200はつぎの式(9)で表現され、第3のスイッチド・キャパシタフィルタ300はつぎの式(10)で表現される。

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る映像信号受信装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る2次元のアナログY/C分離方式を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る第1並びに第2のスイッチド・キャパシタフィルタのブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る第3のスイッチド・キャパシタフィルタのブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路の構成を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路の構成を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る第2のスイッチド・キャパシタ遅延回路の構成を示す図である。
【図8】クロマ信号C、輝度信号Y、コンポジット信号SCの波形図の一例を示す図である。
【図9】従来のY/C分離回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
2 アンテナ
4 チューナ
6 フィルタ
8 遅延回路
82、84 1H遅延回路
10 Y/C分離回路
12 輝度信号処理回路
14 クロマ信号処理回路
16 色復調処理回路
18 マトリクス回路
20 RGBドライバ
22 ディスプレイ
100 第1のスイッチド・キャパシタフィルタ
101〜104、121〜124 スイッチド・キャパシタ遅延回路
105〜106、125〜126 論理反転部
107〜109、127〜129、130 加算部
200 第2のスイッチド・キャパシタフィルタ
201〜204 スイッチド・キャパシタ遅延回路
205〜207 論理反転部
250 輝度信号生成部
300 第3のスイッチド・キャパシタフィルタ
301〜304、321〜324 スイッチド・キャパシタ遅延回路
305〜306、325〜326、330 論理反転部
307〜309、327〜329 加算部
350 クロマ信号生成部
500 第1のスイッチド・キャパシタ遅延回路
520 第3のスイッチド・キャパシタ遅延回路
540 第2のスイッチド・キャパシタ遅延回路
505、525、545 シフトレジスタ
506、526、546 オペアンプ
610 A/D変換器
620 BPF
630 減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝度信号とクロマ信号を含む映像信号から前記輝度信号と前記クロマ信号を分離するY/C分離回路において、
所定の垂直空間周波数成分よりも高い垂直空間周波数成分を前記映像信号より抽出する垂直高域通過フィルタ機能、並びに所定の水平空間周波数成分よりも低い水平空間周波数成分を前記映像信号より抽出する水平低域通過フィルタ機能を組み合わせた第1のスイッチド・キャパシタフィルタと、
前記所定の垂直空間周波数成分よりも低い垂直空間周波数成分を前記映像信号より抽出する垂直低域通過フィルタ機能を有した第2のスイッチド・キャパシタフィルタと、
前記第1のスイッチド・キャパシタフィルタの出力と前記第2のスイッチド・キャパシタフィルタの出力を重畳させて前記映像信号に含まれる前記輝度信号を抽出する輝度信号生成部と、
前記所定の垂直空間周波数成分よりも高い垂直空間周波数成分を前記映像信号より抽出する垂直高域通過フィルタ機能、並びに前記所定の水平空間周波数成分よりも高い水平空間周波数成分を前記映像信号より抽出する水平高域通過フィルタ機能を有し、前記垂直高域通過フィルタ機能の出力と前記水平高域通過フィルタ機能の出力を重畳させて前記映像信号に含まれる前記クロマ信号を抽出する第3のスイッチド・キャパシタフィルタと、
を有することを特徴とするY/C分離回路。
【請求項2】
請求項1に記載のY/C分離回路において、
前記映像信号として入力された第1の映像信号と、当該第1の映像信号を遅延させて得られた当該第1の映像信号と位相が180度異なる第2の映像信号と、当該第2の映像信号を更に遅延させて得られる当該第2の映像信号と位相が180度異なる第3の映像信号と、を用いて、
前記第1のスイッチド・キャパシタフィルタは、
前記第1及び前記第3の映像信号を論理反転させて前記第1乃至前記第3の映像信号を重み付け加算することにより構成された前記垂直高域通過フィルタ機能を二つ具備し、二つの当該垂直高域通過フィルタ機能の出力を加算して前記水平低域通過フィルタ機能を構成し、
前記第2のスイッチド・キャパシタフィルタは、
前記第1乃至前記第3の映像信号を重み付け加算することにより前記垂直低域通過フィルタ機能を構成し、
前記第3のスイッチド・キャパシタフィルタは、
前記第1及び前記第3の映像信号を論理反転させて前記第1乃至前記第3の映像信号を重み付け加算することにより構成された前記垂直高域通過フィルタ機能を二つ具備し、二つの当該垂直高域通過フィルタ機能の出力を減算して前記水平高域通過フィルタ機能を構成したこと、
を特徴とするY/C分離回路。
【請求項3】
請求項2に記載のY/C分離回路において、前記第1のスイッチド・キャパシタフィルタにおける二つの前記垂直高域通過フィルタ機能、並びに前記第2のスイッチド・キャパシタフィルタにおける前記垂直低域通過フィルタ機能それぞれのサンプリング周期を異ならせたこと、を特徴とするY/C分離回路。
【請求項4】
請求項3に記載のY/C分離回路において、前記第3のスイッチド・キャパシタフィルタにおける二つの前記垂直高域通過フィルタ機能それぞれのサンプリング周期を異ならせたこと、を特徴とするY/C分離回路。
【請求項5】
請求項4に記載のY/C分離回路において、
前記第1の映像信号を0H、前記第1の映像信号を1水平走査期間分遅延させた前記第2の映像信号を1H、前記第2の映像信号を1水平走査期間分遅延させた前記第3の映像信号を2Hと表し、k(k=0〜2)H信号をn(n=1〜3)サンプリング周期遅延させたことを表す記号、

を用いて、前記第1のスイッチド・キャパシタフィルタは、

によって表現され、前記第2のスイッチド・キャパシタフィルタは、

によって表現され、前記第3のスイッチド・キャパシタフィルタは、

によって表現されること、を特徴とするY/C分離回路。
【請求項6】
請求項4に記載のY/C分離回路において、
前記第1の映像信号を0H、前記第1の映像信号を2水平走査期間分遅延させた前記第2の映像信号を2H、前記第2の映像信号を2水平走査期間分遅延させた前記第3の映像信号を4Hと表し、k(k=0、2、4)H信号をn(n=1〜3)サンプリング周期遅延させたことを表す記号、

を用いて、前記第1のスイッチド・キャパシタフィルタは、

によって表現され、前記第2のスイッチド・キャパシタフィルタは、

によって表現され、前記第3のスイッチド・キャパシタフィルタは、

によって表現されること、を特徴とするY/C分離回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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