説明

Znを主成分とするPbフリーはんだ合金

【課題】 濡れ性、接合性、加工性、及び信頼性に優れた、300〜400℃程度の融点を有する高温用のZn系Pbフリーはんだ合金を提供する。
【解決手段】 Znを主成分とするPbフリーはんだ合金であって、Alを1.0〜9.0質量%、好ましくは3.0〜7.0質量%含有し、Pを0.002〜0.800質量%、好ましくは0.005〜0.500質量%含有し、残部が製造上、不可避的に含まれる元素を除きZnから成る。このPbフリーはんだ合金には、更にMg及びGeの少なくとも1種が、Mgの場合は0.3〜4.0質量%、Geの場合は0.3〜3.0質量%含まれていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pbを含まないいわゆるPbフリーはんだ合金に関し、特に高温用として好適なZnを主成分とするPbフリーはんだ合金に関する。
【背景技術】
【0002】
パワートランジスタ用素子のダイボンディングを始めとして、各種電子部品の組立工程におけるはんだ付では高温はんだ付が行われており、300〜400℃程度の比較的高温の融点を有するはんだ合金(以下、「高温用はんだ合金」とも称する)が用いられている。このような高温用はんだ合金としては、Pb−5質量%Sn合金に代表されるPb系はんだ合金が従来から主に用いられている。
【0003】
しかし、近年では環境汚染に対する配慮からPbの使用を制限する動きが強くなってきており、例えばRohs指令などではPbは規制対象物質になっている。こうした動きに対応して、電子部品などの組立の分野においても、Pbを含まない(無鉛)はんだ合金、即ちPbフリーはんだ合金の提供が求められている。
【0004】
中低温用(約140〜230℃)のはんだ合金に関しては、Snを主成分とするPbフリーのはんだ合金が既に実用化されている。例えば、特許文献1には、Snを主成分とし、Agを1.0〜4.0質量%、Cuを2.0質量%以下、Niを0.5質量%以下、Pを0.2質量%以下含有するPbフリーのはんだ合金が記載されている。また、特許文献2には、Agを0.5〜3.5質量%、Cuを0.5〜2.0質量%含有し、残部がSnからなるPbフリーのはんだ合金が記載されている。
【0005】
一方、高温用のはんだ合金に関しても、Pbフリーを実現するため、Bi系はんだ合金やZn系はんだ合金などがさまざまな機関で開発が行われている。例えばBi系はんだ合金では、特許文献3に、Biを30〜80質量%含有し、溶融温度が350〜500℃であるBi/Ag系のろう材が開示されている。また、特許文献4には、Biを含む共晶合金に2元共晶合金を加え、さらに添加元素を加えることによって、液相線温度の調整とばらつきの減少が可能な生産方法が開示されている。
【0006】
また、Zn系はんだ合金では、例えば特許文献5に、Znに融点を下げるべくAlが添加されたZn−Al合金を基本とし、これにGe又はMgを添加した高温用Zn系はんだ合金が記載されている。特許文献5には、さらにSn又はInを添加することによって、より一層融点を下げる効果があることも記載されている。
【0007】
具体的には、特許文献5には、Alを1〜9質量%、Geを0.05〜1質量%含み、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金;Alを5〜9質量%、Mgを0.01〜0.5質量%含み、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金;Alを1〜9質量%、Geを0.05〜1質量%、Mgを0.01〜0.5質量%含み、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金;Alを1〜9質量%、Geを0.05〜1質量%、Sn及び/又はInを0.1〜25質量%含み、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金;Alを1〜9質量%、Mgを0.01〜0.5質量%、In及び/又はnを0.1〜25質量%含み、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金;Alを1〜9質量%、Geを0.05〜1質量%、Mgを0.01〜0.5質量%、Sn及び/又はInを0.1〜25質量%含み、残部がZn及び不可避不純物からなるZn合金が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開1999−077366号公報
【特許文献2】特開平8−215880号公報
【特許文献3】特開2002−160089号公報
【特許文献4】特開2006−167790号公報
【特許文献5】特許第3850135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的な電子部品や基板の材料には熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが多用されているため、接合時の作業温度は400℃未満が望ましく、370℃以下がより望ましい。しかしながら、特許文献3のBi/Ag系ろう材は、液相線温度が400〜700℃と高いため、接合時の作業温度も400〜700℃以上になると推測され、接合される電子部品や基板が耐えうる温度を超えていると考えられる。また、特許文献4の方法は、液相線の温度調整のみで4元系以上の多元系はんだ合金になるうえ、Biの脆弱な機械的特性については効果的な改善がされていない。
【0010】
さらに、特許文献5に開示されているZn系はんだ合金は、その組成の範囲内では合金の濡れ性が不十分である場合が多い。つまり、主成分であるZnは還元性が強いため自らは酸化されやすく、その結果、濡れ性が極めて悪くなることが問題となっている。さらにAlはZnよりも還元性が強いため、例えば1重量%以上添加した場合、濡れ性を大きく低下させてしまう。そして、これら酸化したZnやAlに対してはGeやSnが添加されていても還元することができず、濡れ性を向上させることはできないのである。
【0011】
以上説明したように、Zn−Al系合金は、融点については300〜400℃程度(Zn−Al共晶温度:381℃)と好ましい範囲にあるものの、濡れ性の観点からは好ましくない合金である。さらにZn−Al合金にMgなどが添加されると金属間化合物を生成して極めて硬くなり、良好な加工性が得られない場合が生じ得る。例えばMgを5質量%以上含有した場合、加工の困難なワイヤ状やシート状などに加工することが実質的にできなくなる。
【0012】
以上述べたように、高温用のPbフリーはんだ合金、特にZnを主成分とするPbフリーはんだ合金については、加工性等の諸特性とのバランスを取りながら、主として濡れ性を改善することが大きな課題となっているが、未だこの課題は解決されていない。このように、従来のPb−5質量%Sn合金に代表されるPb系はんだ合金を代替できる高温用はんだ合金は未だ実用化されていないのが実状である。
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、電子部品の組立などで用いるのに好適な300〜400℃程度の融点を有し、濡れ性を主として、接合性、加工性、信頼性に優れ、Pbを含まず且つZnを主成分とする高温用のPbフリーZn系はんだ合金を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明が提供するZnを主成分とするPbフリーはんだ合金は、Alを1.0〜9.0質量%含有し、Pを0.002〜0.800質量%含有し、残部が製造上、不可避的に含まれる元素を除きZnから成ることを特徴とする。
【0015】
また、上記本発明のZnを主成分とするPbフリーはんだ合金は、Alの含有率が3.0〜7.0質量%、Pの含有率が0.005〜0.500質量%であることが好ましく、更にMg及びGeの少なくとも1種が、Mgの場合は0.3〜4.0質量%、Geの場合は0.3〜3.0質量%含まれていてもよい。これにより、濡れ性や加工性等においてさらに優れたはんだ合金となり得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、とくに濡れ性に優れ、接合性、加工性及び信頼性等にも優れると同時に、300℃程度のリフロー温度に十分耐えることができ、パワートランジスタ用素子のダイボンディングなど各種電子部品の組立工程でのはんだ付に好適な高温用のPbフリーはんだ合金を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によるZnを主成分とするPbフリーはんだ合金は、Pbを含まず、AlとPを含有し、残部が製造上、不可避的に含まれる元素を除きZnから成る。Znは融点が419℃と電子部品等の接合温度である300〜400℃に対し高すぎるうえ、還元性が強いため酸化しやすく濡れ性が悪いという欠点がある。このようなZnの欠点に対して、本発明においては、Alを含有させることにより融点をはんだとして使い易い温度まで下げるとともに、かかるZnへのAlの添加によってより一層低下したZn−Al合金の濡れ性をPの添加によって格段に向上させている。
【0018】
なお、Alを含有することによって、Znとの共晶合金を形成させて融点を約400℃以下に下げると同時に、結晶を微細化させて加工性を向上させるという効果を得ることもできる。PはZnやAlよりも還元性が強く、接合時に気体の酸化燐として接合面やはんだ中から酸素を持ち去ってくれるため、濡れ性を向上させるには最も適した元素である。当然、PはCu基板やNiメッキCu基板の表面酸化膜も還元除去できるため、接合時にフォーミングガス(基板等の酸化を進行させないため、水素を含有させたガス)を使用しなくても濡れ性を向上させることができるのである。
【0019】
また、上記Znを主成分とするPbフリーはんだ合金に、更にMg及びGeの少なくとも1種を含有することによって、融点、濡れ性、接合強度、そして信頼性等を目的に合わせて適宜調整することが可能となる。このような本発明のZn系はんだ合金に添加される各元素について、以下に詳細に説明する。
【0020】
<Al>
Alは本発明のZnを主成分とするPbフリーはんだ合金において重要な役割を果たす必須元素であり、その含有量は、1.0質量%以上9.0質量%以下とする。Alの含有量が1.0質量%未満では、他の元素を添加したとしても融点の低下が不十分となるため、接合性が低下してしまう。一方、Alの含有量が9.0質量%を超えると、Zn−Al合金の液相線温度が高くなりすぎ、電子部品等の実際の接合温度では十分に溶融せず、ボイド率が高くなりすぎたり接合部の合金化が不十分となったりするため、実用に耐えうる接合ができなくなる。
【0021】
Alの含有量は、3.0質量%以上7.0質量%以下であるとさらに好ましい。なぜなら、Alの含有量がこの範囲内であれば、Zn−Al二元系合金の共晶組成(Zn=95質量%、Al=5質量%)に近くなって融点が下がる上、結晶も微細化して加工性が向上し、使い易いはんだに近づくからであ。
【0022】
<P>
PはAlと同様に本発明のZnを主成分とするPbフリーはんだ合金の必須元素であり、その効果は濡れ性の向上にある。Pが濡れ性を向上させるメカニズムは以下のとおりである。Pは還元性が強く、自ら酸化することによりはんだ合金表面の酸化を抑制する。特に本発明では酸化しやすいZnが主成分であり、さらにZnより酸化し易いAlが含有しているため、Pの含有による濡れ性向上の役割は大きい。
【0023】
また、Pの含有により接合時にボイドの発生を低減させる効果も得られる。即ち、すでに述べているようにPは自らが酸化しやすいため、接合時にはんだ合金の主成分であるZnやAlよりも優先的に酸化が進む。その結果、はんだ母相の酸化を防ぎ、電子部品等の接合面を還元して濡れ性を確保することができる。そしてこの接合の際、はんだや接合面表面の酸化物がなくなるため、酸化膜によって形成される隙間(ボイド)が発生しにくくなり、接合性や信頼性等を向上させるのである。なお、PはZnやAl等のはんだ合金や基板を還元して酸化物になると気化して雰囲気ガスに流され、はんだや基板等に残らない。このため、Pの残渣が信頼性等に悪影響を及ぼす可能性はなく、この点からも優れた元素と言える。
【0024】
Pの含有量は、0.002質量%以上0.800質量%以下が好ましい。Pは非常に還元性が強いため、少なくとも0.002質量%含有すれば濡れ性向上の効果が得られる。0.800質量%を超えて含有しても、濡れ性向上の効果はあまり変わらず、過剰な含有によってPやP酸化物の気体が多量に発生してボイド率を上げてしまったり、Pが脆弱な相を形成して偏析し、はんだ接合部を脆化して信頼性を低下させたりする恐れがある。特にワイヤなどを加工する場合に、断線の原因になりやすいことが確認されている。Pの含有量が0.005質量%以上0.500質量%以下であれば、還元効果を発揮するとともに脆いP化合物を生成することもなく、さらに好ましい。
【0025】
<Mg>
Mgは本発明のZnを主成分とするPbフリーはんだ合金の諸特性を目的に合わせて調整する際に適宜添加される元素である。Mgを含有することよって得られる効果は以下のとおりである。MgはZnとの共晶合金を2つの組成で作り、それらの共晶温度は341℃と364℃である。このようにZn−Al合金よりも低い共晶温度を2点有するため、はんだ合金の融点をさらに下げたい場合に添加する。
【0026】
さらにMgはZn、Alよりも酸化し易いため、少量の含有量で濡れ性を向上させる効果も有する。ただし、Mgが多量に含有されるとはんだ表面に強固な酸化膜を形成してしまうため、その添加量には注意を要する。接合条件は様々であるものの以上述べた融点低下効果と濡れ性向上効果を考慮し、その含有量は0.3質量%以上4.0質量%以下が好ましい。この含有量が0.3質量%未満では少なすぎてMgの効果を十分発揮させることができない。一方、4.0質量%を超えると、逆に濡れ性が低下したり液相線温度が高くなりすぎたりするなどの問題を起こしてしまう。
【0027】
<Ge>
GeもMgと同様に本発明のZnを主成分とするPbフリーはんだ合金の諸特性を目的に合わせて調整する際に適宜添加される元素である。GeもZnと共晶合金を作るが、Mgよりも優れる点として、Zn−Mgが金属間化合物を生成するのに対し、Zn−Geは金属間化合物を作らないため加工性に優れている点を挙げることができる。さらにZn−Ge二元系合金の共晶温度は394℃であり、Mgには劣るものの融点を下げる効果を十分有する元素である。
【0028】
Geの含有量は0.3質量%以上3.0質量%以下が好ましい。この含有量が0.3質量%未満では少なすぎてGeの効果を十分発揮させることができない。一方、Geの含有量が3.0質量%を超えてもGeの添加効果は維持されるが、本発明者は高価なGeを3.0質量%を超えて含有させてもはんだ合金の価格が高くなり過ぎるだけであって、実用的なはんだ材料になり得ないと考え、3.0質量%を添加量の上限値とした。
【実施例】
【0029】
原料として、それぞれ純度99.9質量%以上のZn、Al、P、Mg及びGeを準備した。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく、均一になるように留意しながら、切断及び粉砕などにより3mm以下の大きさに細かくした。次に、これら原料から所定量を秤量して、高周波溶解炉用のグラファイト製坩堝に入れた。
【0030】
上記各原料の入った坩堝を高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7リットル/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融しはじめたら混合棒でよく撹拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混ぜた。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかに坩堝を取り出し、坩堝内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。鋳型は、はんだ母合金の製造の際に一般的に使用している形状と同様のものを使用した。
【0031】
このようにして、上記各原料の混合比率を変えることにより、試料1〜19のZn系はんだ母合金を作製した。得られた試料1〜19の各はんだ母合金について、固相線温度を測定した。さらに試料1〜19の組成をICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて分析した。得られた分析結果をはんだ組成として固相線温度とともに下記表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
次に、上記試料1〜19の各はんだ母合金について、下記のごとく圧延機でシート状に加工し、Znを主成分とするPbフリーはんだ合金の加工性を評価した。また、シート状に加工した各はんだ合金について、下記の方法により濡れ性(接合性)の評価及びヒートサイクル試験による信頼性の評価を行った。なお、はんだの濡れ性ないし接合性等の評価は、はんだ形状に依存しないためワイヤ、ボール、ペーストなどの形状で評価してもよいが、本実施例においてはシートの形状で評価した。
【0034】
<加工性の評価>
表1に示す試料1〜19の各はんだ母合金(厚さ5mmの板状インゴット)を、圧延機を用いて厚さ0.08mmまで圧延した。その際、インゴットの送り速度を調整しながら圧延していき、その後スリッター加工により25mmの幅に裁断した。このようにしてシート状に加工した後、得られたシート状のZn系はんだ合金を観察し、傷やクラックが全くなかった場合を「○」、シート長さ10m当たり割れやクラックが1〜3箇所ある場合を「△」、4箇所以上ある場合を「×」とした。
【0035】
<濡れ性(接合性)の評価>
上記のごとくシート状に加工した各はんだ合金を、濡れ性試験機(装置名:雰囲気制御式濡れ性試験機)を用いて評価した。即ち、濡れ性試験機のヒーター部に2重のカバーをして、ヒーター部の周囲4箇所から窒素を12リットル/分の流量で流しながら、ヒーター設定温度を各試料の融点より約10℃高い温度に設定して加熱した。設定したヒーター温度が安定した後、Cu基板(板厚:約0.70mm)をヒーター部にセッティングして25秒間加熱した。
【0036】
次に、各試料のはんだ合金をCu基板の上に載せ、25秒加熱した。加熱が完了した後、Cu基板をヒーター部から取り上げ、その横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦設置して冷却した。十分に冷却した後、大気中に取り出して接合部分を確認した。各試料のはんだ合金とCu基板との接合部分を目視で確認し、接合できなかった場合を「×」、接合できたが濡れ広がりが悪い場合(はんだが広がらなかった場合)を「△」、接合でき且つ濡れ広がりが良い場合(はんだが薄く濡れ広がった状態)を「○」と評価した。
【0037】
<ヒートサイクル試験>
はんだ接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験を行った。なお、この試験は、上記した濡れ性の評価においてはんだ合金がCu基板に接合できた試料(濡れ性の評価が○又は△の試料)を各々2個ずつ用いて行った。即ち、各試料のはんだ合金が接合されたCu基板2個のうちの1個に対しては、−40℃の冷却と+150℃の加熱を1サイクルとするヒートサイクル試験を途中確認のため300サイクルまで繰り返し、残る1個に対しては同様のヒートサイクル試験を500サイクルまで繰り返した。
【0038】
その後、300サイクル及び500サイクルのヒートサイクル試験を実施した各試料について、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(装置名:HITACHI S−4800)により接合面の観察を行った。この観察の結果、接合面に剥がれが生じするか又ははんだにクラックが入った場合を×、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を○とした。これらの評価結果を下記の表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
上記の表1〜2から分るように、試料1〜13の各はんだ合金は、全ての評価項目において良好な特性を示している。即ち、シート状に加工しても傷やクラックの発生が無く、濡れ性及び信頼性も良好であった。特に濡れ性における良好な結果は、Zn−Al合金にPが添加されたことにより、濡れ性を阻害する酸化膜の形成が抑制され、はんだ合金がCu基板に接触した瞬間に基板上に濡れ広がるためと考えられる。更に、ヒートサイクル試験においても500回まで割れなどが発生せず、良好な接合性と信頼性を示した。
【0041】
一方、試料14〜19の各はんだ合金は、Al、Pの含有量が適切でないか、またはMg、Geの含有量が適切でなかったため、いずれか1つ以上の評価で好ましくない結果となった。具体的には、加工性の評価において全ての試料で傷やクラックが発生し、濡れ性についても半分の試料が好ましくない結果となり、特にヒートサイクル試験では試料19を除いた全ての試料(接合できなかった試料15を除く)で300回までに不良が発生した。そして、試料19においても500回までに不良が発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alを1.0〜9.0質量%含有し、Pを0.002〜0.800質量%含有し、残部が製造上、不可避的に含まれる元素を除きZnから成ることを特徴とするZnを主成分とするPbフリーはんだ合金。
【請求項2】
Alを3.0〜7.0質量%含有し、Pを0.005〜0.500質量%含有し、更にMg及びGeの少なくとも1種を、Mgの場合は0.3〜4.0質量%、Geの場合は0.3〜3.0質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載のZnを主成分とするPbフリーはんだ合金。

【公開番号】特開2012−121053(P2012−121053A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274134(P2010−274134)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】