説明

invitro胚中心

本発明は、胚中心(GC)を三次元(3D)培養組織構築物(ETC)に組み込む。一実施形態では、本発明者等は、人口免疫システム(AIS)の設計にGCを組み込み、ワクチン及び他の化合物に対する免疫応答を調べている。in vitroのGCの発生は、ヒト被験体を用いることなく、正確に再生可能であるヒトBリンパ球によるin vitroヒト体液性応答を発生させることができるという点で、AISに機能性を付与している。本発明は、ワクチン、アレルゲン及び免疫原、並びに所定の抗原に特異的なヒトB細胞の活性化の評価も可能にし、したがってヒト抗体を生成するのに用いることができる。本発明の実施形態では、in vitroのGCの機能は、三次元ETCにFDC及び他の免疫細胞を入れることによって高められ、FDCはより長時間にわたってより効果的であると思われる(抗体産生は最大約14日間持続する)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連技術の相互参照]
本出願は、2005年12月21日に提出された米国仮特許出願第60/752,034号(参照により本明細書中にその全体が援用される)の利益を主張している。
【背景技術】
【0002】
本発明者等はこれまでに、ナイーブマウスB細胞を用いた機能的なin vitro胚中心(GC)を開発している。このモデルは、培養プレートにおいて二次元(2D)で研究した。これらのマウスのin vitroのGCにおいて、免疫グロブリン(Ig)クラススイッチ、体細胞超変異、高親和性B細胞の選択、及び親和性成熟が実証された。これらの活性は、in vitroでワクチンを研究するという目的に重要である。in vitroのGCにおいて、濾胞樹状細胞(FDC)は、T細胞−B細胞の相互作用を促進する機能、及びB細胞の生存率を高める機能の2つの主な機能を果たす。これらの機能の両方が、特異的なB細胞の活性化、抗体産生及びプラズマ細胞への分化を可能にし促進させる。
【0003】
1968年に、Szakal and Hanna(J. Immunol. 101, 949-962; Exp. Mol. Pathol. 8, 75-89)及びNossal et al.(J. Exp. Med. 127, 277-290)が、今では濾胞樹状細胞(FDC)として知られるものの最初の報告及び電子顕微鏡写真を公開した。両方のグループが125I標識抗原を用い、電子顕微鏡を用いて齧歯類の脾臓又はリンパ節における濾胞のオートラジオグラフを調べた。両方のグループによって、放射標識が特有の不規則な形をした真性染色質の(euchromatic)核を有する樹状型の細胞の非常に複雑な微細細胞突起の表面上又は表面の近くに残存したことが見出された。微細細胞突起が、通過リンパ球の周りに複雑な網状構造を形成し、広範な細胞間接触を可能にした。これらの細胞に対して、幾つかの名称が用いられているが、命名委員会は、「濾胞樹状細胞」という名称及び「FDC」という略称を推奨しており、これらが一般的に採用されている(Tew et al. (1982) J. Reticuloendothelial Soc. 31, 371-380)。
【0004】
濾胞におけるFDC位置と共に、抗原−抗体複合体を捕捉し維持するというFDCの能力によって、FDCは他の細胞、例えば他の樹状細胞(DC)から区別される。特異的な抗原を有するFDCが、完全なGCの開発に必要であり(Kosco et al. (1992) J. Immunol. 148, 2331-2339; Tew et al. (1990) Immunol. Rev. 117, 185-211)、Igのクラススイッチ、記憶B細胞の産生、高親和性レセプターを有する体細胞変異B細胞の選択、親和性成熟、二次抗体応答の誘導、及び高親和性抗体を有する血清IgGの調節に関与すると考えられている(Tew et al. (1990) Immunol Rev. 117, 185-211; Berek & Ziegner (1993) Immunol. Today 14, 400-404; MacLennan & Gray (1986) Immunol. Rev. 91, 61-85; Kraal et al. (1982) Nature 298, 377-379; Liu et al. (1996) Immunity 4, 241-250; Tsiagbe et al. (1992) Immunol. Rev. 126, 113-141)。多くの研究者が、in vivoのGCを模倣するという概念で、二次元における培養下においてFDCを用いて研究している。FDCの補助機能の評価及びこれらの機能の調節は、完全に機能的で成熟した抗体応答を理解するのに重要である。
【0005】
FDC発生はB細胞依存性であり、FDCは、例えばSCIDマウス、(B細胞を取り除くために)抗muで処理したマウス、又はmu鎖を欠失したマウス(B細胞が発生しない場合)では検出不可能である(MacLennan & Gray (1986) Immunol. Rev. 91, 61-85; Kapasi et al. (1993) J. Immunol. 150, 2648-2658)。T細胞欠損マウス(例えばヌードマウス)では、FDCが発生するにはするが、その発生は遅延され、FDCはあまり多くのFDCマーカーを発現しないと思われる(Tew et al. (1979) Aust. J. Exp. Biol. Med. Sci. 57, 401-414)。
【0006】
B細胞及びT細胞の両方が適合移植される場合、SCIDマウスにおいてFDCの再構築が最良に行われ、このことによりT細胞がFDC発生にも関与することが示唆される(Kapasi et al. (1993) J. Immunol. 150, 2648-2658)。LT/TNF又は同族レセプターの崩壊がリンパ節の器官形成を崩壊させ、FDC網目構造の発達を妨げる(De Togni et al. (1994) Science 264, 703-707; Rennert et al. (1996) J. Exp. Med. 184, 1999-2006; Chaplin & Fu (1998) Curr. Opin. Immunol. 10, 289-297; Endres et al. (1999) J. Exp. Med. 189, 159-168; Ansel et al. (2000) Nature 406, 309-314)。Debard et al. (1999)によって要約されたように、LTα、LTβ、TNFαR1、及びLTβRの欠失がFDC網目構造の発達を妨げることが知られている(Semin. Immunol, 11, 183-191)。B細胞は、LTα/βヘテロ三量体の重要な供給源であり、これはFDC発生がB細胞依存性であることを示すデータに一致している(Endres et al. (1999) J. Exp. Med. 189, 159-168; Ansel et al. (2000) Nature 406, 309-314; Fu et al. (1998) J. Exp. Med. 187, 1009-1018)。
【0007】
哺乳動物のリンパ節の機能的因子は濾胞であり、これは抗原によって刺激された場合にGCを発生する。GCはリンパ節における活性領域であり、効果的な体液性免疫応答の発生に対して重要な相互作用が起こる。抗原刺激の際、濾胞が複製され、活性ヒトリンパ節は、GCを機能させながら多くの活性濾胞を有し得る。B細胞、T細胞、及びFDC間の相互作用がGCで行われる。in vivoでのGCの様々な研究によって、以下の事象がGCで起こることが示される:
・免疫グロブリン(Ig)のクラススイッチ、
・迅速なB細胞増殖(GC暗帯)、
・記憶B細胞の産生、
・抗原特異的なT細胞及びB細胞の選択集団の蓄積、
・超変異、
・高親和性レセプターを有する体細胞突然変異B細胞の選択、
・低親和性B細胞のアポトーシス、
・親和性成熟、
・二次抗体応答の誘導、及び
・高親和性抗体を有する血清免疫グロブリンG(IgG)の調節。
【0008】
同様に、in vitroのGCモデルのデータによって、FDCが:
・マイトジェンでB細胞増殖を刺激すること(これは抗原(Ag)によっても実証され得る)、
・抗体の産生、例えば再生抗体応答を促進すること、
・B細胞を引き付けるケモカイン及び或る特定の集団のT細胞を産生すること、及び
・B細胞のアポトーシスを遮断すること
に関与することが示される。
【0009】
T細胞は、T細胞依存性抗原に対するB細胞応答に必要であるが、ほとんどのワクチンで要求される完全に機能的で成熟した抗体応答の発生には十分ではない。FDCは、B細胞がこれらの潜在性を完全に達成するのに必要な重要な補助を与える(Tew et al. (2001) Trends Immunol. 22, 361-367)。
【0010】
ワクチン評価における体液性応答は、人工免疫システム(AIS)を用いて調べることができる。濾胞樹状細胞の補助機能及びこれらの機能の調節は、完全に機能的で成熟した抗体応答を理解するのに重要である。
【0011】
重要な分子は、FDC又はB細胞上のリガンド及びレセプターを遮断することを特徴としている。FDCは抗原−抗体複合体を捕捉し、GCのB細胞上のB細胞レセプター(BCR)との相互作用に対して無傷抗原を与え、この抗原−BCRの相互作用が、B細胞の活性化及び分化に対して正のシグナルを与える。補体由来FDC−CD21LによるB細胞コレセプター複合体におけるCD21の係合が重要な補助シグナルを伝達する。BCR及びCD21の同時ライゲーション(Coligation)は、2つの受容体の連結を高め、CD19の細胞質尾部は、B細胞レセプター複合体に関連するチロシンキナーゼによってリン酸化される(Carter et al. (1997) J. Immunol. 158, 3062-3069)。この補助シグナルは、抗原によるBCRの係合によって伝達される刺激を劇的に高め、FDC−CD21Lの遮断によって免疫応答が約10倍〜約1000倍低減する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、動物被験体に投与せずに、アレルゲン、免疫原、免疫調節剤、免疫治療剤及び潜在的ワクチン剤の評価を可能にする人工免疫システムであって、
培養組織構築物、並びに
培養組織構築物内に包埋されるか、又はその上に固定される少なくとも1つの三次元人工胚中心であって、
濾胞樹状細胞、
B細胞、及び
T細胞
を含む、少なくとも1つの三次元人工胚中心
を含む、動物被験体に投与せずに、アレルゲン、免疫原、免疫調節剤、免疫治療剤及び潜在的ワクチン剤の評価を可能にする人工免疫システムに関する。
【0013】
本発明の人工免疫システムは、作用物質に対する動物の潜在的な反応を評価する方法で用いることができる。このような方法は、作用物質を本発明の人工免疫システムに投与すること、及び当該作用物質に対するB細胞及び/又はT細胞の応答を評価することを含む。
【0014】
本発明の人工免疫システムは、作用物質に特異的な抗体を産生する方法で用いることもできる。このような方法は、作用物質を本発明の人工免疫システムに投与すること、及び当該作用物質に特異的な抗体を人工免疫システムから単離することを含む。同様に、作用物質に特異的な抗体を産生するB細胞、又は作用物質に特異的なT細胞も、本発明の人工免疫システムから単離することができる。単離B細胞(対象の作用物質に対してモノクローナルであり得る)は、単離、クローン化及び不死化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、GCを三次元(3D)組織培養構築物(ETC)に組み込むというこれまでに報告された研究に対する改善である。本発明の一実施形態では、本発明者等は人工免疫システム(AIS)の設計でGCを組み込み、ワクチン、アレルゲン、免疫原、免疫調節剤、免疫治療剤及び他の作用物質に対する免疫(特に体液性)応答を調べている。本発明の一実施形態では、in vitroでのGCの発生によって、ヒト被験体を用いることなく正確に再生可能であるヒトBリンパ球による、in vitroヒト体液性応答を発生することができるという点で、AISに機能性が付与される。本発明は、例えばワクチン、アレルゲン、免疫調節剤、免疫治療剤(immunogherapies)及び免疫原、並びに他の作用物質を評価し、また所与の抗原に特異的なヒトB細胞を活性化し、それからそれを用いて抗体を生成することもできる。本発明の一実施形態では、in vitroでのGCの機能は、3D ETC中にFDC及び他の免疫細胞を入れることによって高まり、FDCは長時間にわたってより有効になると思われる(抗体産生は最大14日間持続される)。
【0016】
本発明の実施形態は、FDCが三次元で発生することができる、ETC、例えばコラーゲンクッション、ゼラチン、ヒアルロン酸、小腸粘膜下組織、膀胱粘膜、PLGA、ヒドロゲル、コラーゲンで覆われたプレート、マイクロキャリア、反転性コロイド結晶マトリクス、他の合成または天然の細胞外マトリクス材料中にFDCを入れることを含む。ほとんどの免疫システムの細胞がそうであるように、in vivo環境下でのFDCはコラーゲン繊維と接着し、循環しない。したがって、例えばコラーゲンマトリクス中にFDCを入れることは、よりin vivo様であるはずである。他の実施形態では、三次元でGCを作製することに加えて、ETCマトリクスによって与えられる足場(scaffolding)においてGC、T細胞帯、B細胞帯を有する濾胞を発達させることができる。固定FDCが中心を形成し、FDCが分泌するケモカインが、活性濾胞の基本的特性を明らかにするのを助けることができる。
【0017】
生産性の体液性免疫応答に重要な事象が起こる濾胞を再構築できるということは、ワクチンを評価するのに重要なことである。例えば、特定のワクチンに対する非応答者が見つかることは珍しくなく、このような人々は生ワクチンが与えられると危険にさらされる可能性がある。本発明の一実施形態では、このような非応答者は、in vitroで免疫システムのモデルを確立すること、及び非応答状態又は低応答状態(poorly responsive state)を確定することによって、これらの個体が害を及ぼす危険性のある生ワクチンでチャレンジされる前に同定することができる。本発明の別の実施形態では、このような応答性の低い個体を良好な応答者に変えることができる免疫調節剤を同定し、in vivoでの使用のために処方することができる。このようなアプローチには、ワクチン開発の時間及び費用を削減し、またワクチン効率を改善し、動物モデルに対する依存を減らす可能性がある。
【0018】
本発明は、作用物質に特異的な抗体、作用物質に特異的な抗体を産生するB細胞、及び/又は作用物質に特異的なT細胞を産生するのに用いることもできる。このような実施形態では、作用物質(すなわち、ワクチン、アジュバント、免疫治療剤候補、化粧品、薬剤、生物製剤、炎症促進剤、化合物、アレルゲン、免疫原又は免疫調節剤)は、本発明の人工免疫システムに投与される。人工免疫システムが作用物質に対する免疫応答を生じるために十分な時間が経過した後に、作用物質に特異的な抗体、作用物質に特異的な抗体を産生するB細胞、及び/又は作用物質に特異的なT細胞が人工免疫システムから単離される。作用物質に特異的な抗体(任意でモノクローナル抗体)を産生する単離B細胞、及び抗原に特異的な単離T細胞をクローン化及び不死化することができる。B細胞及びT細胞を不死化する方法は当業者に周知である。例えば、Aguirre et al., (2000) J. Virol. 74(2): 735-743; and Robek et al. (1999) J. Viol. 73(6): 4856-4865を参照されたい。
【0019】
加えて、幾つかの治療剤及び工業用化学薬品は免疫システムに対して毒性があり、他の実施形態では、in vitro胚中心を含むin vitro免疫システムを用いて、ヒト免疫システムモデルに関して、免疫毒性及びアレルゲンの効果を評価することができる。本発明を用いて、免疫応答者を非応答者に変えることができる治療剤を評価することができ、これは抗体媒介性自己免疫障害の治療に有益であろう。
【0020】
LTβR−Igで動物を処置することによって、免疫複合体(IC)を保有するFDCの能力が壊され、このことがB細胞由来LTα/βヘテロ三量体に対する競合に起因しており、このようにしてFDCを刺激する能力が低減することが観察された(Mackay & Browning (1998) Nature 395, 26-27)。これらの条件下で、FDCは、活性化表現型を失うと考えられ、ICは消失する傾向にある。本発明者等は、in vitroにおいて同様の結果を得ており、細胞がLTβR−Igとインキュベートされる場合に、抗体産生を促進し、B細胞アポトーシスを遮断するFDCの機能が悪影響を受けることを示している。
【0021】
本発明者等のデータは、LT又はTNFの刺激の欠如の結果としてFDCが死滅しないこと、及びFDCは休止状態で長期間存在することができることを示す。実際、抗原性表現型(DRC−1、CD21、CD23、CD35に対して陽性)がわずか数日後に消失したが、増殖せずに細胞培養下で数ヶ月間、B細胞の非存在下でヒトFDCが生存することが報告されている(Tsunoda et al. (1990) Virchows. Arch. B Cell. Pathol. Incl. Mol. Pathol. 59, 95-105)。マウスFDCも、培養下で数ヶ月間生存することができ、in vitroのGCで存在する場合、マウスFDCはT細胞、B細胞、及び機能性免疫システムを維持する(Qin et al. (1999) J. Immunol. Methods 226, 19-27)。本発明者等は、精製マウスFDCが、他の細胞の非存在下で長期間(少なくとも6週間)生存することができることを見出した。しかし、これらの休止FDCは、IC及び補体と共に、T細胞及びB細胞によるFDCの刺激によって活性化することができると考えられる。
【0022】
本発明者等は、FDCがCD40を発現し、新たに単離したFDCに対するレベルがB細胞に対するレベルよりも高いと考えられることを見出しており、このことはGCのT細胞がCD40Lに対する誘引性レセプターを有し得ることを示唆している。CD40の係合は、B細胞、樹状細胞及びマクロファージを活性化することが知られる。これらの免疫学的に関連した細胞の活性化におけるCD40の重要性を考慮すると、FDC−CD40は、FDC活性化にも関与し得る(Caux et al. (1994) J. Exp. Med. 180, 1263-1272)。幾つかのFDCマーカー(例えば、CD23)がT細胞依存性であると考えられ、活性GCにおけるT細胞上のCD40LによるFDC−CD40の係合は、活性FDC表現型の完全な発現に重要である可能性がある。FDC−M2抗原及びCD21Lの発現は補体依存性である。今ではFDC−M2抗原はC4断片であることが知られており、これはFDC上でICと共有結合する(Marie Kosco-Vilbois, personal communication)。同様に、C3断片はICと共有結合して、CD21Lを形成する(Qin et al. (1998) J. Immunol. 161, 4549-4554)。したがって、FDCの発生、成熟及び完全な活性化には、B細胞、T細胞及び補体が必要である。
【0023】
本発明者等は、FDCの補助分子及び補助機能も調べている。FDC、B細胞及びT細胞はGCで共に集合化され、本発明者等は依然として半透膜を越えて良好に働くFDC補助活性を見出していないので、細胞間接触は重要であると考えられる(Wu el al. (1996) J. Immunol. 157, 3404-3411; Tew et al. (1997) Immunol. Rev. 156, 39-52)。FDCは重要なサイトカインを産生することができるが、明らかに細胞表面分子はこれらの細胞間相互作用に重要である。幾つかの本発明者等のデータの総説がこれまでに公開された(Tew et al. (2001) Trends Immunol. 22, 361-367)。
【0024】
免疫原は、前免疫(複数可)由来の免疫動物に残る抗体によって、免疫複合体(IC)に迅速に変わり、一次抗体が産生されるとすぐに一次応答でICが形成される。これらのICはFDCによって捕捉され、これによってGCが形成される。免疫複合体はin vitroでは免疫原性が低いが、最少量の抗原(in vivoでICに変わる)によって、潜在的再生応答が引き起こされる。
【0025】
本発明者等の結果は、FDCによってICの免疫原性が高くなることを示している。実際、FDCの存在下で、ICは遊離抗原よりも免疫原性が高い(Tew et al. (2001) Trends Immunol. 22, 361-367)。FDC上の高密度のFcγRIIBは、ICのIg−Fcと結合し、その結果、B細胞−FcγRIIBを介して伝達されるITIM(免疫受容体チロシン系抑制モチーフ)シグナルが遮断され得る。BCRと架橋する抗原−抗体複合体が、この抑制シグナル及びB細胞上のFcγRIIBを引き起こす。BCRはこのモデルではB細胞のFcγRIIBと架橋せず、したがってFDC上の高濃度のFcγRIIBはB細胞に対する負のシグナルを最小にする。加えて、FDCは、B細胞によって非常に良好である(palatable)ことが見出されるICに覆われたボディ(イコソーム(iccosomes))を与える。イコソーム膜は、抗原、CD21L及び接着したIg−Fcを有するFDC膜に由来する。イコソームはB細胞と強く結合し、迅速にエンドサイトーシスを行う(Szakal et al. (1988) J. Immunol. 140, 341-353)。イコソームの抗原−CD21L−Ig−Fc複合体とのB細胞のBCR及びCD21の結合は、エンドサイトーシスプロセスに重要であると考えられる。B細胞は、このFDC由来抗原を処理し、提示し、これによりT細胞ヘルプが得られる(Kosco et al. (1988) J. Immunol. 140, 354-360)。したがって、これらのリガンド−レセプターの相互作用はB細胞が刺激されるのを助け、T細胞によって与えられる補助を超えた補助が与えられる。
【0026】
FDC機能に関連した別の重要な分子はCD23である。本発明者等は、血清IgEが、高レベルのCD23がFDC及びB細胞及び幾つかのT細胞で発現される、CD23トランスジェニックマウスで抑制されることを見出した(Payet-Jamroz et al. (2001) J. Immunol. 166, 4863-4869)。精製トランスジェニックBリンパ球をin vitroでのB細胞増殖及びIgE合成アッセイにおける対照と比較したが、この2つは区別できなかった。同様に、リンフォカイン産生の研究によって、トランスジェニック動物のT細胞機能が正常であったことが示唆された。しかし、養子免疫伝達(adoptive transfer)研究によって、放射線耐性トランスジェニックFDCにおけるCD23レベルが高いトランスジェニックマウスを再構築するのに正常なリンパ球を用いた場合、IgE産生が劇的に抑制されることが示された。さらに、FDCがトランスジェニックマウスから単離された場合、細胞培養下でのFDC依存性IgG産生は正常に近かったが、IgE産生は劇的に低減し、これによってFDCにおける高レベルのCD23はIgE応答を選択的に抑制することが示唆された(Payet-Jamroz et al. (2001) J. Immunol. 166, 4863-4869)。興味深いことに、IL−4はB細胞においてCD23を誘導するが、FDCにおいてはCD23を誘導しないと考えられる。しかし、完全フロインドアジュバンド(CFA)を用いて免疫したマウスでは、FDCにおけるCD23のレベルが劇的に増大する(Maeda et al. (1991) In 「リンフォイド組織の樹状細胞(Dendritic Cells in Lymphoid Tissues)」 Y. Imai, J. G. Tew & E. C. M. Hoefsmit, eds. Elsevier Science, Amsterdam, pp. 261-269)。CD23が上昇すると、FDCにおける非占有CD23がB細胞表面−IgEと結合し、このことがIgE産生の阻害をもたらし得る。このように、CD23レベルが高いFDCは、特異的なIgE応答を選択的に下方調節する可能性があり、このことによってCFA免疫動物におけるIgE応答が比較的低い理由が説明できる。さらに、CFAとの関連性によって、FDCにおけるCD23がTh−1リンフォカインによって調節され得ることが示唆される。
【0027】
FDCで捕捉されたICによってGCが形成される。GC形成には、記憶B細胞の産生、体細胞超変異、高親和性レセプターによる体細胞変異したB細胞の選択、親和性成熟、及び高親和性抗体による血清IgGの調節が関与する(Tew et al. (1990) Immunol. Rev. 1 17, 185-211; Berek & Ziegner (1993) Immunol. Today 14, 400-404; MacLennan & Gray (1986) Immunol. Rev. 91, 61-85; Kraal et al. (1982) Nature 298, 377-379; Liu et al. (1996) Immunity 4, 241-250; Tsiagbe et al. (1992) Immunol. Rev. 126, 113-141)。
【0028】
GCは記憶B細胞の産生の中心として一般的に認識され、本発明者等は、形質細胞系の細胞も産生されることを見出している(Kosco et al. (1989) Immunol. 68, 312-318; DiLosa et al. (1991) J. Immunol. 1460, 4071-4077; Tew et al. (1992) Immunol. Rev. 126, 1-14)。GCにおける抗体形成細胞(AFC)の数は初期段階の間に最大になり(二次抗原チャレンジ後、約3〜約5日)、それから減少する。GCの大きさが最大に達する約10日までに、AFCはほとんど存在しなくなる(Kosco et al. (1989) Immunol. 68, 312-318)。初期段階の間、GCのB細胞が、AFCになるのに必要なシグナルを受け取る。GCが浮腫状になり、AFCは離れ、胸管リンパ中及び血中に見られるようになる。これらのGCのAFCが成熟する場合、骨髄に存在し、大部分の血清抗体を産生する(DiLosa et al. (1991) J. Immunol. 1460, 4071-4077; Tew et al. (1992) Immunol. Rev. 126, 1-14; Benner et al. (1981) Clin. Exp. Immunol. 46, 1-8)。チャレンジ後、約10〜14日で最大になる第2段階において、GCが大きくなり、記憶B細胞プールが回復し拡大する。これにより、記憶B細胞の産生及び完全に機能的で成熟した抗体応答には、GCとFDCとが必要であると考えられる。
【0029】
FDCの有無に関わらず、B細胞の生存率を上げ、in vitroでのGCの有効性を高めることができる。方法は、線維芽細胞又は他の間質細胞、例えば滑膜組織由来間質細胞株を加えることであり、この効果は細胞間の共刺激によってin vitroでのB細胞の生存を延ばすことである(例えば、Hayashida et al. (2000) J. Immunol, 164, 1110-1116)。ナイーブB細胞及び記憶B細胞の生存率を増大させることが示されている別の可溶性作用物質は還元型グルタチオン(GSH)であり、おそらくは抗酸化活性による(Jeong et al. (2004) Mol. Cells 17, 430-437を参照されたい)。Jeong et al.は、GCのB細胞の生存率を増大しなかったが、線維芽細胞及びGSHは、ナイーブB細胞及び記憶B細胞を大いに高め、末梢Bリンパ球を用いて、in vitroでGCを集合化することができることを示唆した。他の可溶性因子、例えばIL−4、CD40L及び抗CD40はB細胞の生存率を高めることが示されている(L. Mosquera's work and M. Grdisa (2003) Leuk. Res. 27, 951-956)。FDCの有無に関わらずB細胞の生存率を増大させる付属因子及び細胞が、in vitroでのGC性能を高める。
【0030】
他の白血球に比べて、FDCはほとんど注目を浴びていない。FDCの理解は、Bリンパ球の成熟及び抗体産生を理解するために重要である。このFDCに対する情報の不足は、これらの細胞が珍しく、壊れやすいためであろう。より典型的な白血球の知識は主に、単離集団のin vitro研究から得られている。
【0031】
本発明者等は、FDCを用いて単離研究する技法を開発し、FDC−リンパ球の相互作用はこれより、抗原、抗原−抗体複合体、及びポリクローナルB細胞活性因子と共にin vitroで研究され得る。B細胞と相互作用する場合、適切なICを有するFDCは顕著な補助活性を有し:
・B細胞のアポトーシスを遮断し(Schwarz et al. (1999) J. Immunol 163, 6442-6447; Qin et al. (1999) J. Immunol. Methods 226, 19-27)、
・ICで刺激したB細胞のITIM(免疫受容体チロシン系抑制モチーフ)シグナル伝達を遮断し(Aydar et al. (2004) Eur. J. Immunol. 34, 98-107)、
・抗原又はマイトジェンで刺激したB細胞増殖を促進し(Burton et al.(1993) J. Immunol. 150, 31-38)、
・再生応答を促進し(Tew et al. (2001) Trends Immunol. 22, 361-367)、
・IgMを産生するようにバージンB細胞を誘導し、IgGへのクラススイッチを促進し(Kraal et al. (1982) Nature 298, 377-379; Liu et al. (1996) Immunity 4, 241-250; Aydar et al. (2005) J. Immunol. 174, 5358-5366)、
・体細胞超変異及び高親和性抗体の発生を促進する(Aydar et al (2005) J. Immunol. 174, 5358-5366)
ことができる。これらは、体液性免疫応答の重要な特性である。
【0032】
in vivoのFDCはコラーゲンとコラーゲン関連分子とが連結した網目構造に存在する。この連結によって、FDC網目構造を同じ状態に保つことができ、一方で、B細胞及びT細胞がFDC及び関連抗原と接触するように、また接触しないように動く。この配置は本発明のin vitroのGCで再構築されている。
【0033】
本発明者等は、FDCがI型コラーゲン、IV型コラーゲン、ラミニン、ビグリカン、フィブロネクチン、及びヒアルロン酸に接着する能力を有することを立証している。さらに、本発明者等は、コラーゲンに接着するFDCが相互連結プロセスで細網(reticulum)を再生することを立証している。このコラーゲン及びコラーゲン関連分子に接着する能力は、プラスチック又はガラスに直接接着する能力の欠如と対照的である。本発明者等のデータは、FDCがコラーゲン及びコラーゲン関連分子と接着する場合に抗体応答が改善されることを示す。
【0034】
ワクチン接種部位モデル
樹状細胞(DC)は最も強力な抗原提示細胞(APC)の1つであり、一次免疫応答においてナイーブT細胞を刺激する能力がある細胞株で唯一知られているものである。末梢血単球は、in vitroでのDC生成のための前駆細胞の確かな供給源として広く認知されている。このような単球由来のDC(mo−DC)は、in vivoのDCで見出される全表現型及び抗原提示能を有する(posses)。
【0035】
mo−DCに一般的な生成技法は、5日間、サイトカインGM−CSF及びIL−4を用いることに基づき、未成熟表現型の細胞をもたらす。その後2日間の抗原の初回刺激(priming)の後、mo−DCは共刺激能及び抗原提示能を増大し、成熟と呼ばれる状態になる。
【0036】
興味深いことに、Randolph et al.は、単球の経内皮移動の自然発生的に起こり得るプロセスが、外因性サイトカインを加えずにちょうど2日でDCに分化するプロセスを誘導することを見出した。このプロセスは、管腔方向から管腔外(abluminal)方向へ内皮細胞の単層を横切る単球から始まり、その後細胞外マトリクス(特異的な抗原を含有しやすい)内での静止(相互作用)の48時間後、管腔表面に逆移動する。
【0037】
本発明の実施形態において、ワクチン接種部位モデルは、I型ウシコラーゲンマトリクス(クッション)を超えるコンフルエンシーまで培養した単層の内皮細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞、HUVEC)を含む。コラーゲンの代わりに様々なECM材料を用いて、他のワクチン接種部位モデルを利用することもできる。本発明の実施形態では、ECMは、クッション又は膜配置、或いはポリカーボネート又は他の膜(例えばトランスウェル)上で培養した内皮中に存在し得る。全単球分化プロセスは、組織への単球の自然発生的漏出が、管腔外方向から管腔方向に内皮細胞を横切ることによってリンパ管の管腔へと抜ける組織耐性マクロファージ及び移動性樹状細胞を発生させる場合にin vivoで起こると考えられるものに類似している。他の実施形態では、DC成熟は、マトリクス中に包埋された刺激物の存在に基づき達成することができる。
【0038】
本発明者等は、移動性末梢血単球から未成熟DCを生成するin vitroシステムを開発している。本発明の実施形態では、このシステムには、内皮細胞のコンフルエント単層で各側面を封止するコラーゲン膜が含まれる。集積バイオリアクターにおけるこのin vitroワクチン接種部位(VS)の集合化によって、独立した液体流を有する2室装置(bicameral device)が作製される。上のチャンバは連続循環単球を含有し、下のチャンバはin situでいつでも抗原的に初回刺激できるように移動性未成熟DCを受ける。所定期間後、抗原的に活性化したmo−DCは再局在化し(例えば、ゆっくりした流れ又はケモカイン誘引によって)、特異的免疫応答の誘導のために予め準備された(pre-established)リンパ組織等価物(LTE)に残存し得る。これらのmo−DCはGCも含有するLTEにおいて免疫応答を誘導する。
【実施例】
【0039】
特に指示がない限り、全ての培養条件を反復し(検定力に従って3〜6反復)、遮断抗体をある範囲の濃度(典型的には約1、約10、約100μg/mL)で用い、実験は再現性が確立されるまで繰り返した。典型的には、抗原−抗体複合体における抗原の用量は約10〜約50ng/mLであり、わずかに抗原が過剰なこれらの抗原−抗体複合体を予め作製し、刺激活性を最適にする。ELISAを用いて、抗体(抗NIP、抗TT、又は全IgG)のレベルを測定する(1mL当たりの抗体(ng)として表される)。
【0040】
所定の抗原特異性を有するB細胞の頻度は、Crotty et al. (2004) J. Immunol. Meths. 286, 111-122で記載されるような改良ELISPOTアッセイで求めることができる。簡潔には、AISから単離したB細胞は、ELISPOTプレートにおいてプレート結合抗原で約5時間刺激する。特定の抗原に特異的な活性化B細胞は抗体を分泌し、プレート結合タンパク質上で捕捉する。捕捉抗体は比色検定で検出することができ、スポットの数によって、応答細胞の頻度が高感度で求められる。分泌サイトカインへの類似のELISPOTに基づいたアプローチを用いて、AIS内で産生した抗原特異的T細胞の数を推測することもできる。別の実施形態では、抗原特異的刺激後に産生されるサイトカインに対する細胞内標的化が同様の読み出し(readout)を与え得る。破傷風トキソイド等の明確な抗原に対して、特定のペプチドを有するMHC分子の三量体複合体を用いて、T細胞レセプター自体の直接検出によって、抗原特異的T細胞の頻度を求めることができる。
【0041】
活性化B細胞及びT細胞の直接分析は、抗原遭遇後の様々な時点で、リンパ球を培養組織構築物(ETC)マトリクスから単離することによっても行うことができる。様々なETC材料が細胞をマトリクスから解離させる異なるアプローチを必要とする。例えば、コラゲナーゼを用いて、コラーゲン足場(collagen scaffold)を破壊することができる。
【0042】
B細胞及びT細胞の活性化の特性は、抗原遭遇後に細胞が迅速に増殖することである。リンパ球応答の強度を調べるために、蛍光色素CFSEで細胞を予め標的化した後に、in vitroのリンパ節と考えられ得るリンパ組織等価物(LTE)に細胞を導入することによって、B細胞及びT細胞の増殖を追跡することができる。CFSEは、酵素反応を介して細胞質タンパク質と結合する安定で長寿命の分子である。この分裂高感度色素は、細胞分裂後の娘細胞間で等しく分配され、したがってそれぞれの分裂細胞は親細胞のCFSE蛍光強度の半分である。フローサイトメトリ分析によって、増殖細胞集団内で最大で約8〜約10個の細胞分裂を検出することができる。
【0043】
リンパ球の活性化は、B細胞及びT細胞の機能を調節する膜タンパク質の発現の変化にも関連する。ナイーブB細胞の活性化の特徴は、表面のIgMから他の抗体クラス(特にIgG)への発現の切り替えである。さらに、表面のMHC及び補助分子、例えばCD54、CD58、CD80及びCD86の上方調節発現がB細胞の活性化を示唆し、表面のCD27の発現の増大が、B細胞における記憶表現型の獲得の特徴となる。T細胞の活性化は、分子の移動(CD11a、CD62L)及び活性化(CD28、CD25)を調節する分子の発現の変化に関連する。これらの表面分子の発現パターンの変化は、標準的なフローサイトメトリ技法及び市販の抗体(例えば、BD Pharmingen, CA製の抗体)を用いてモニタリングすることができる。
【0044】
可溶性増殖因子の産生を用いて、抗原特異的なリンパ球応答の誘導を評価することができる。分泌サイトカイン(IL−2、IFN−γ、TNF−α、IL−4、IL−6及びIL−10が含まれるが、これらに限定されない)は、抗原遭遇後に検出することができる。特定のT細胞亜集団だけによって発現される或る特定のサイトカインプロファイル、例えばIL−4及びIL−10の発現によって、生じる適応応答の質の手掛かりが与えられ得る。現在、市販の反応試薬によって、pg/mL範囲の濃度で可溶性サイトカインの検出が可能である。
【0045】
抗原投与後、約7日〜約14日にAISのリンパ組織等価物(LTE)内の適応免疫応答の発生を調べることができるが、典型的にこの時間がin vivo応答及びin vitro応答中の測定可能な保護免疫の導入に必要となる。B細胞及びT細胞の活性化/分化の指標となる可溶性タンパク質の発現パターンの変化は、LTEから回収した上清において調べることができる。具体的には、B細胞の活性化が、市販の反応試薬(例えば、Bethyl Laboratories, TX製の反応試薬)を用いたELISAによって定量化することができる分泌抗体分子の産生を誘発する。この高感度技法を用い、様々なIgクラス(IgM、IgG等)の発現を調べることによって、B細胞の成熟/分化の重要な特徴であるクラススイッチを検出することができる。抗原特異的抗体産生を求めるために、全タンパク質を用いて、ELISAにおける特異的抗体を捕捉することができる。例えば、既知の(well-established)NP実験モデルにおいて、NIP−5及びNIP−19を用いて、それぞれ高親和性及び高/低親和性を有するNPに対する抗体の産生を特異的に検出することができる。
【0046】
実施例1
動物及び免疫
正常な8〜12週齢のC57BL/6マウスをNational Cancer Institute(Frederick, MD)又はThe Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から購入することができる。マウスは、上部にフィルターを備えた標準的なプラスチック製のケージに入れ、特定の病原体無含有状態を維持した。食餌及び水は自由に与えることができる。CGG(ニワトリγグロブリン)初期刺激T細胞が、20μgのCGG(Pel-Freez Biologicals, Rogers, Arkansas)で免疫後に得られ、約5×10個の熱殺菌した百日咳菌が、これまでに記載されたように(5、28)硫酸アルミニウムカリウム(A7167、Sigma)中に析出した。約50μgのCGGの腹腔内注射、並びに約5μgのCGGの前肢及び後足蹠への皮下注射の2週間後、追加免疫(booster immunization)を行った。
【0047】
実施例2
抗体及び試薬
マウスCD45R(B220)マイクロビーズ、マウスCD90(Thy1.2)マイクロビーズ、抗ビオチンマイクロビーズ、及びMACS LSカラムは、Miltenyi Biotec GmbH(Auburn, CA)から購入することができる。ビオチン標識化ラット抗マウスκは、Zymed(San Francisco, CA)から購入することができる。アルカリホスファターゼ標識化ヤギ抗マウスIgG(H+L)、及びアルカリホスファターゼ標識化ヤギ抗マウスIgMは、例えばKirkegaard & Perry Laboratories(Gaithersburg, MD)から購入することができる。抗マウスFDC(FDC−M1)及び抗マウスCD21/CD35は、例えばPharmingen (San Diego, CA)から購入することができる。NIP19−OVA(1つのOVA当たり19個のNIP基を有する4−ヒドロキシ−3−ヨード(ioda)−5−ニトロフェニルアセチルオボアルブミン)、NIP−OVA(1つのOVA当たり5つのNIP基を有する)、及びNP30−CGGは、例えばBiosearch Technologies(Novata, CA)から得ることができる。ラット抗マウスCD40は、例えばSouthern Biotechnology Associates, Incから得ることができる。low−tox−mウサギ補体は、例えばCedarlane Laboratories Limited(Westbury, NY)から購入することができ、熱不活性化は、56℃で約30分間、水浴で補体をインキュベートすることによって達成された。NP−CGG抗CGGのICは、1ng/mlのNP−CGGから6ng/mLのマウス抗CGGとの最終比で37℃で2時間、抗原及び抗体をインキュベートすることによって調製した。抗CGGは、1mg/mlを上回る抗CGGのIgGレベルで高度免疫マウスから得られた。或る特定の実験では、2時間のインキュベート中、12倍希釈でlow−tox−mウサギ補体を用いて補体担持(complement-bearing)ICを作製した。抗CD21/35は、Pierce(Rockford, IL)のImmunoPure F(ab’)精製キット(カタログ番号44888)を用いて、F(ab’)断片に変換した。抗CD23(クローンB3B4)は、Dr. Daniel Conradによって与えられた。
【0048】
実施例3
FDC単離
FDCは、これまでに記載されたように(5、28)、正常で若年成体マウスのリンパ節(腋窩リンパ節、外側腋窩リンパ節、鼠径リンパ節、膝窩リンパ節、腸間膜リンパ節、及び大動脈周囲リンパ節)から単離した。簡潔には、FDC単離の1日前に、マウスの全身を放射線に曝し、ほとんどのT細胞及びB細胞を排除した(137Csソースを用いて、1000rad)(Kosco et al. (1992) J. Immunol. 148, 2331-2339)。リンパ節を回収し、2つの26ゲージ針を用いてそれぞれのリンパ節カプセルを開いた。それから、リンパ節を、20mMのHepes、2mMのグルタミン、50μg/mLのゲンタマイシン、及びMEM非必須アミノ酸(GIBCO)を補充した1mlのコラゲナーゼD(16mg/mL、C−1088882、Roche)、0.5mLのDNaseI(5000単位/mL、D−4527、Sigma)、及び0.5mLのDMEMから成る酵素カクテルに入れた。COインキュベータ中で37℃で30分後、培地及び放出細胞を取り出し、20%のFCSと共に5mLのDMEMを含有する15mL容の円錐形の遠心管に移し、氷上に置いた。新たな一定分量の酵素混合物中で残存組織をさらに(second)30分消化して、細胞をこれまで通り回収した。単離細胞を洗浄した後、氷上で45分間、ラット抗マウスFDC特異的抗体(FDC−M1)とインキュベートした。細胞を洗浄し、氷上で45分間、κ軽鎖に特異的なビオチン化抗ラットIg 1μgとインキュベートした。それから、細胞を360μLのMACS緩衝液に加えた40μLの抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)と氷上で15〜20分間インキュベートした。予め1mlのMACS緩衝液で湿らせたMACS LSカラム上に細胞を堆積させ、10mLの氷冷MACS緩衝液で洗浄した。LSカラムをVarioMACSから取り出し、結合細胞を10mLのMACS緩衝液で放出させた。これらの細胞の約85〜95%が、FDC表現型、FDC−M1、CD40、CR1&2、及びFcγRIIを発現した(Sukumar et al.,非公開)。ヒトFDCは、これまでに記載されるように、FDC特異的mAb HJ2による正の選択を用いて単離することができる(Fakher et al. (2001) Eur. J. Immunol. 31, 176-185)。
【0049】
実施例4
AID(活性化誘導性シチジンデアミナーゼ)の分析のための細胞培養物
リンパ球(約4×10個)は、5%のCO雰囲気下で37℃で約2日間、48ウェル培養プレート(CoStar; Cambridge, MA)において約1.6×10個のFDCと共培養した。ウェルは、約1mL/ウェルの完全培地(10%のFCS、20mMのHepes、2mMのグルタミン、50μg/mLのゲンタマイシン、及びMEM非必須アミノ酸を補充したDMEM)を含有していた。10ng/mLのLPS(L−2387、Sigma)又は100ng/mLの抗CD40+10ng/mLのIL−4(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて、リンパ球を刺激した。FDC共刺激活性が準最適(Sub-optimal)濃度の一次シグナルで最も明らかであったので、準最適レベルのLPS、抗CD40+IL−4を用いた。FDCの影響はより高濃度の一次シグナルでも明らかなままであったが、その差はより小さく、研究するのがより難しかった。48時間後、細胞を回収し、トリゾール(Invitrogen)を用いて溶解して、全RNAを製造業者のプロトコルに従い抽出した。幾つかの実験では、72時間、FDCの存在下又は非存在下で、λB細胞及びCGG初回刺激T細胞及びNP−CGG+抗CGG免疫複合体を培養した。72時間の終わりに、抗B220マイクロビーズ及びMACSシステムを用いて、B細胞を単離した。トリゾールを用いて、約2×10個のB細胞から全RNAを抽出した。
【0050】
実施例5
定量逆転写酵素PCR分析
AID(活性化誘導性シチジンデアミナーゼ)に対するmRNAレベルを、定量逆転写酵素PCR(qRT PCR)を用いて測定した。18s rRNAレベルを内部対照として用いて、AIDの発現レベルを正規化した。透明な光学品質のシールテープ(Bio-Rad)で覆った96ウェル薄壁PCRプレートでPCR反応を行った。以下の条件下で、ワンステップRT−PCRキット(Applied Biosystems)を用いて増幅を行った:48℃で30分間(cDNA合成)、95℃で10分間の最初の変性、その後の95℃で15秒間の変性、そして60℃で1分間のアニーリング/伸長工程の組合せを40サイクル。iCycler iQソフトウェア(BioRad)を用いてデータ解析を行った。最終的に、ΔΔC法(Livak & Schmittgen (2001) Methods 25, 402-408)を用いて、mRNA発現レベルの差を算出した。PCR効率は、mRNAの連続希釈を用いて複数の標準曲線を作成することによって、100%近くまで求められた。蛍光シグナルが任意の閾値を超える(cross)PCRサイクルの数として定義される増幅サイクルの閾値(C値)は、それぞれの反応において算出された。mRNA発現レベル間のホールド変化は以下のように求めた:ホールド変化=2−ΔΔCT(式中、ΔΔC=(CT Gol−CT Hk)サンプル−(CT Gol−CT Hk)対照(C=サイクル閾値、Gol=対象の遺伝子、及びHk=ハウスキーピング遺伝子)。
【0051】
実施例6
ナイーブB細胞の調製
完全培地(10%のFCS、20mMのHepes、2mMのグルタミン、50μg/mLのゲンタマイシン、及びMEM非必須アミノ酸を補充したDMEM)において2つの滅菌スライドの曇り端(frosted ends)の間でナイーブマウス由来のリンパ節をグラインドすることによって、単一の細胞懸濁液を調製した。懸濁細胞を遠心分離し(5分、1000rpm、4℃)、完全培地で再懸濁した。抗B220担持マイクロビーズを用いて、κ+λ陽性B細胞(全B細胞)が正に選択された。簡潔には、リンパ球は、氷上で15〜20分間、40μLの抗B220マイクロビーズ(MACS緩衝液中で10倍希釈)とインキュベートした。1mlのMACS緩衝液で予め湿らせたMACS LSカラム上に細胞を積層させ、10mLの氷冷MACS緩衝液で洗浄した。LSカラムをVarioMACSから取り出し、10mLのMACS緩衝液によって結合した細胞を放出させ、洗浄して、κ+λ陽性B細胞として用いた。C57BL/6マウスの抗NP抗体は主にλ軽鎖を有し(Jack et al. (1977) Eur. J. Immunol. 7, 559-565; Reth et al. (1978) Eur. J. Immunol. 8, 393-400)、本発明者等は、λ陽性ナイーブB細胞が培養下で豊富であった場合、NP応答が高められると結論付けた。λ陽性ナイーブB細胞を得るために、本発明者等は、氷上で45分間、10μgのκ軽鎖特異的ビオチン化ラット抗マウスmAbを用いて、κ陽性B細胞を取り除き、抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)でMACSカラム上にκ陽性B細胞を捕捉した。本発明者等は、通過液中のB220陽性細胞がλ鎖を発現し、この細胞が上記のように抗B220を用いて単離したと結論付けた。ナイーブB細胞が膜IgMを発現し、本発明者等のナイーブB細胞集団におけるIgMの存在をフローサイトメトリによって確認した。正常なマウス由来のリンパ節細胞の単細胞懸濁液は、FITC B220、PE結合抗マウスIgM、及びビオチン標識化ラット抗マウスλで三重標識化した。この結果によって、本発明者等のB細胞の約95%がλ軽鎖よりもむしろκ軽鎖を発現したことが示された。しかし、λ軽鎖を発現した細胞の98%近くがIgM陽性であり、これはナイーブ状態のB細胞であると予測される。これらのドナーマウスの血清抗NIPレベルは測定するのに低く(1ng/mL未満)、またナイーブ特性のNIP特異的B細胞を支持した。同じアプローチを用いて、ナイーブヒトB細胞をPBLから得ることができ、マーカーはIgM陽性及びCD19陽性である。
【0052】
実施例7
CGG初回刺激T細胞の単離
CGG追加免疫後1週間以上、CGG免疫マウスのリンパ節を排出することによってCGG初回刺激リンパ球が得られた。リンパ節は外科的に取り除かれ、2つの滅菌スライドの曇り端間でグラインドした。細胞を洗浄し、氷上で約45分間40μLのマウス抗CD90(Thy1.2)マイクロビーズ(MACS緩衝液中10倍希釈)とインキュベートし、それから1mlのMACS緩衝液で予め湿らせたMACS LSカラム上に堆積させ、約10mLの氷冷MACS緩衝液で洗浄した。LSカラムをVarioMACSから取り出し、上記のように結合した細胞を回収した。血清陽性ヒト由来のTT(破傷風トキソイド)初回刺激T細胞を抗CD2で得ることができる。
【0053】
実施例8
in vitroでのGC反応及び抗NIP抗体応答
48ウェル培養プレート(CoStar; Cambridge, MA)において、ナイーブλ陽性B細胞(約10×10細胞数/mL)、FDC(約4×10細胞数/mL)、及びCGG初回刺激T細胞(約5×10細胞数/mL)を、NP−CGG+抗CGG IC(1つのウェル当たり100ngのNP−CGG)と共培養することによって、in vitroでのGC反応を起こさせた。このウェルは、1mL/ウェルの完全培地(10%のFCS、20mMのHepes、2mMのグルタミン、50μg/mLのゲンタマイシン、及びMEM非必須アミノ酸を補充したDMEM)を含んでいた。ICをNP−CGG及び抗CGG血清を用いて調製し、リンパ球を刺激するのに用いた。培養物を5%のCO雰囲気下、37℃でインキュベートした。上清液を7日及び14日で回収し、固相ELISAを用いて、NIP特異的な低親和性及び高親和性のIgM抗体及びIgG抗体に対して分析した。それぞれの実験群を三連で構成した。
【0054】
実施例9
抗NIP及び親和性に対するELISA
異なる比率でNIPと結合するOVA、それぞれNIP19−OVA及びNIP−OVAによるELISAを用いて、抗NIP抗体の相対的親和性を求めた。NIPは、NPよりも抗NP抗体に対する親和性が高く、この理由からNIPを用いた(44、45)。簡潔には、4℃で一晩、PBS中で平底96ウェルELISAプレート(Falcon; Becton Dickinson, CA)を100μg/mLのNIP−OVA又はNIP19−OVAで覆った。0.1%のTween20を含有する1×PBSで三回プレートを洗浄した後、プレートをBSAで遮断した(5%、2時間、室温)。それから、応答が低いウェルに対して2倍希釈から始めて、培養物由来の上清液をプレートに加え、4℃で一晩インキュベートした。マウスのIgM又はIgGに特異的なアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗体を加え、一晩インキュベートした。pNPPホスファターゼ基質キット(Kirkegaard & Perry Laboratories, MD)を用いて、アルカリホスファターゼ活性を視覚化し、最適密度を450nmで求めた。プレートを100μg/mLの親和性精製ヤギ抗マウスのIgM又はIgG(Sigma, Saint Louis, MO)とインキュベートすることによって、IgM又はIgGに対する標準曲線を定めた。それから、プレートを洗浄し、100ng/mLから始まる2倍希釈のマウスのIgM又はIgG(Sigma)とインキュベートし、このプレートを4℃で一晩インキュベートした。標準曲線をそれぞれのプレートで作成し、直線用量範囲で標準曲線と比較することによって、抗NIPのIgM抗体又はIgG抗体の濃度を算出した。抗体の相対的親和性が、NIP19−OVAを用いる抗体のレベルによって示され、高い親和性の抗NIPだけを示すNIP−OVAに対して高親和性及び低親和性の両方の抗NIPを測定する。
【0055】
実施例10
統計分析
ELISA読みの分析に対して、t検定(両側分布)を用いた。幾つかの実験では、最大5つの異なる比較を行い、複数の比較でp値が0.01未満である必要があった。Livak & Schmittgen(2001)(Methods 25, 402-408)で記載した2−ΔΔCT法を用いて、リアルタイム定量PCR結果を分析した。
【0056】
実施例11
組織化学的手法
「光学顕微鏡レベル及び電子顕微鏡レベルでの免疫細胞化学におけるモノクローナル抗体の使用(Use of monoclonal antibodies in immunocytochemistry at the light and electron microscopic levels)」と題された章(Szakal et al. (1986)「モノクローナル抗体:ハイブリドーマ技法(Monoclonal Antibodies: Hybridoma Techniques)」 L. B. Schook, ed. Marcel Dekker, Inc, New York, pp. 229-263)は、これらを詳細に記載している。ビオチン化プローブが、HRPアビジンの使用を可能にさせ、光学顕微鏡レベル及び電子顕微鏡レベルの両方の研究を可能にする。
【0057】
実施例12
in vitroのGCに関する研究。in vitroのGCにおけるNIP特異的なIgM応答の促進
抗原特異的なB細胞の刺激及びクラススイッチがGCで行われ、FDCは、IgM応答及びIgクラススイッチを高めることができる。これを評価するために、本発明者等はナイーブのIgM発現B細胞を単離し、産生IgMからIgGへの切り替えが容易にモニタリングすることができる。正常なマウス由来のλ軽鎖発現B細胞(λ B細胞)、CGG免疫マウス由来の担体初回刺激T細胞(CGG−T細胞)、正常なマウス由来のFDC、及びNP−CGG−抗CGGから成るICを用いて、NIP特異的な抗体応答をin vitroのGCで開始した。一晩のインキュベート後、FDCリンパ球クラスタが見られ、これはKosco et al (1992)(J. Immunol. 148, 2331-2339)によって記載されたものと類似しており、これらのクラスタは14日の培養を通して存在した。ナイーブB細胞は最初にIgMを産生し、図2Aで示されるように(4番目の白いバー)、この組合せの免疫原及び細胞を用いて、7日までに120ngを超えるIgM抗NIPが蓄積したと考えられる。
【0058】
抗NIPは主にλ担持B細胞に由来し、正常な量の(約95%のκ)κ及びλ B細胞(κ+λ B細胞)を含有するナイーブB細胞がIgM抗NIP(約20ng/mL)だけでなく、λ担持細胞も産生したので(図2の白いバー3対白いバー4)、精製λ B細胞の使用は有用であった。遊離抗原(NP−CGG)はICと同じようには働かないので(図2の白いバー4対白いバー5)、FDCによって捕捉及びB細胞に提示され得るICの使用も重要であった。免疫原(抗原又はIC)又はFDCが無くなった場合、又はOVA初回刺激T細胞がCGG初回刺激T細胞に置き換わった場合、典型的にNIP特異的IgM応答は検出不可能であった。この実験において、7日目でFDCの非存在下でICを用いて得られた低IgM応答は一貫した観察ではなかった。培養培地を7日目に交換し、幾らかのIgMは2週目に蓄積したが(図2の黒いバー)、レベルは1週目の抗NIPのIgMに比べて低かった。NIP−5を用いて、高親和性の抗体を検出するアッセイは、FDCの存在下であっても、ほんのわずかしかIgM抗NIPが産生されないことを示した(図2、パネルB)。
【0059】
実施例13
免疫グロブリンクラススイッチ及びin vitroでのGCにおけるNIP特異的IgG応答
NIP特異的IgMに関して図2で記載されたのと同じ培養下で、IgG抗NIP応答を試験した。λ B細胞、CGG初回刺激T細胞、FDC、及びNP−CGG−抗CGGのICに対する必要性は最適IgG産生に対するものと同じであり、IgMに対しても同様であることは明らかであった(図3Aの3番目の白いバー及び3番目の黒いバー)。図3Aの1週目に蓄積した抗NIPのIgGは、図2Aの抗NIPのIgMレベルの約半分であった(約120ng/mLのIgMに対して約60ng/mLのIgG)。しかし、これらの関係は2週目で、わずか約20ng/mLのIgMに対して約140ng/mLを超えるIgGになり逆転した(図2A対図3Aにおける黒いバー)。したがって、産生したIgアイソタイプは、1週目では主にIgMから2週目では主にIgGへ切り替わった。
【0060】
実施例14
in vitroでの親和性成熟の検出及びFDC−ICの重要性
NIP−5を用いて高親和性抗体を検出したとき、IgMに対してIgGの量が明らかに多かった。興味深いことに、1週目で産生されたわずか約30〜50%のIgGが高親和性であった(NIP−5対NIP−19)。しかし、2週目で産出されたほとんど全てのIgGが高親和性であった(図3B)。これは、高親和性B細胞の選択、及び親和性成熟に関連した高親和性IgGを産生するためのこれらの細胞の選択刺激に一致している。さらに、抗原がFDCによって捕捉及びB細胞に提示されるIC形態であった場合にのみ親和性成熟が見られた。BCRに効率的に関与する遊離抗原(NP−CGG)は低親和性のIgGを刺激するが(図3Aの1番目の黒いバー及び4番目の黒いバー)、検出可能なレベルの高親和性IgGは刺激しなかった(図3B)。FDCの非存在下において、ICはITIM活性をもたらすBCR及びFcγRII、SHIPリン酸化及び応答性の欠乏に関与する。Ig−FCをFDC上の高レベルのFcgRIIで捕捉することによって、B細胞上のFcgRIIの関与が最小になり、生産的IgG応答を容易にする(Aydar et al. (2004) Eur. J. Immunol. 34, 98-107; Aydar et al (2003) J. Immunol. 171 , 5975-5987)。したがって、生産的IgG応答に対してB細胞を刺激することができるICのみがFDCによって捕捉されると考えられる。
【0061】
実施例15
FDCのCD21−CD21リガンドのIgM応答及びクラススイッチに対する相互作用の重要性の計測(Gauging)
B細胞のコレセプター複合体(CD21/CD19/CD81)におけるFDC−CD21リガンドとCD21との間の相互作用は、FDC関連抗原が最適な再生応答を刺激するのに重要である(Tew et al. (2001) Trends Immunol. 22, 361-36; Qin et al. (1998) J. Immunol 161, 4549-4554)。また、CD21/CD19ノックアウトマウスのIgM応答が抑制される(Chen et al. (2000) Immunol. Rev. 176, 194-204)。したがって、FDC−CD21リガンド−CD21の相互作用を介してB細胞に伝達される遮断シグナルは、IgM産生及びクラススイッチを阻害し得る。本発明者等の結果によって、抗CD21が、クラススイッチの低減と一致してIgM応答を阻害し、IgG応答が2週目のピークで劇的に低減した(90%超)ことが示された。抗CD21で処理した培養下に存在するB細胞の数が、アイソタイプ対照を有するB細胞の数よりも有意に低くなかったので、IgG応答の低下は、CD21リガンド−CD21の相互作用の非存在下におけるB細胞の喪失に単純には起因しなかった。本発明者等は、無処理のIgG結合B細胞−CD21のFc部分がB細胞−FcγRIIと結合し、ITIMを活性化して、これにより抗CD21との抗体応答の低減を説明することができる可能性についても考慮している。しかし、抗CD21がレセプターを単純に遮断する場合、抗CD21のF(ab’)が無傷抗体と同様に作用する必要があり、そうであることが証明された。
【0062】
FDC及びB細胞の両方がCD21及びCD23を発現する。CD23はヒトのシステムにおけるCD21に対するリガンドであり(Aubry et al. (1992) Nature 358:505)、これにより抗CD21がFDC活性に影響を与え得る、又はFDC−CD23が、B細胞のCD21と結合し、B細胞にシグナルを与え得る可能性が高まる。しかし、抗CD21によるFDCの処理はこれらの活性を阻害せず、抗CD23によるB細胞及びFDCの処理は検出可能な効果を全く有しなかった。
【0063】
本発明者等は、FDCにおけるCD21リガンドレベルの増加が、クラススイッチ及び高親和性NIP特異的IgGの産生を増大させるか否かを判定しようとした。FDCにおいてCD21リガンドレベルを高めるための補体によるICの処理は抗NIP応答を増大させなかった。このことは、さらなるCD21リガンドが正常なマウスのマウス抗OVA応答を増大させなかったというこれまでのデータに一致している(Aydar et al. (2002) Eur. J. Immunol. 32, 2817-2826)。しかし、加齢マウスにおけるFDCと共有結合したCD21リガンドのレベルは低いと考えられ、加齢FDCにおけるFDC−CD21リガンドのレベルを増大させるためのウサギ補体の添加が補助活性及びB細胞応答を改善した(Aydar et al. (2002) Eur. J. Immunol. 32, 2817-2826)。
【0064】
実施例16
AID発現及びFDCの存在
AIDは、クラススイッチに重要であり、GC−B細胞及びin vitroでクラススイッチ再結合を受けるB細胞で発現される(Muramatsu et al. (1999) J. Biol. Chem. 274, 18470-18476; Muramatsu et al. (2000) Cell 102, 553-563; Faili et al. (2002) Nat. Immunol. 3, 815-821)。FDCは、GC−B細胞によってAID発現を調節するのを助けることができ、本発明者等はこれを調べようとした。B細胞の大部分がこれらのポリクローナルB細胞活性化因子で刺激される場合、AIDのmRNAの発現は、LPS、又はIL−4+抗CD40で刺激したリンパ球で検出することができる。FDCとのB細胞の共刺激がAIDのmRNAを増幅し得る。定量RT−PCRを用いて、AIDのmRNAのレベルを求めた。準最適な量のLPS(10ng)、IL−4(10ng)、及び抗CD40(100ng)を用いて、リンパ球における低レベルのAIDを刺激した。FDC由来のmRNAが全ての培養下で一定になるように、共刺激を与える開始時、又は培養の終了時のいずれかでFDCを加えた。正常なリンパ球におけるAIDのmRNAレベルを1倍とし、LPS、又はIL−4+抗CD40処理単独、或いはFDCの存在下での効果を比較した。RT−PCRによる分析によって、LPSがリンパ球集団のAIDを約8倍、及びFDCを約2倍増加させたことが示された。しかし、LPSとFDCとの組合せは相乗作用があり、AIDのmRNA発現は約130倍増大した。IL−4+抗CD40による結果は同様であった。FDCによるAIDのmRNAレベルが約3倍、及びIL−4+抗CD40によるAIDのmRNAレベルが約18倍であったのに対し、IL−4+抗CD40とFDCとの組合せは、約180倍のAIDのmRNAレベルの上昇をもたらした。
【0065】
FDC単独をLPS又は抗CD40+IL−4で刺激した場合、有意なAIDのmRNAは見られず、このことによりFDC及びB細胞が同時に培養された場合、B細胞がmRNAの供給源であったことが示唆された。このことは、MACSシステムでB220マイクロビーズを用いて、2日の培養期間後に精製したB細胞からmRNAを単離することによって確認された。ほぼ全てのAIDのmRNAはB細胞分画内にあり、フロースルー分画が検出可能な活性を含有していた一方で、このAIDのmRNAを占める可能性がある幾つかの汚染B細胞も含んでいた。さらに、同数のB細胞(約2×10個)を用いてmRNAを得て、18s rRNAを内部負荷対照として用いたので、B細胞におけるAID活性の増大は、FDCによって引き起こされるB細胞の生存率又は増殖の増大に単純には起因しないと考えられた。したがって、B細胞をFDCの存在下で培養した場合、1つのB細胞当たりのAIDのmRNAのレベルが上昇した。
【0066】
実施例17
AID発現及びクラススイッチにおけるCD21−CD21リガンドの相互作用の関与
CD21リガンド−CD21の相互作用が遮断された際に見られたクラススイッチの低減によって、FDC−CD21リガンドと、B細胞−CD21との間の相互作用がコレセプター複合体を通って伝わり、AIDの発現の調節を助けることが示唆された。これを調べるために、抗CD21/35を用いて、FDC−CD21リガンド−B細胞−CD21の相互作用を妨げ、AID発現レベルを約90%低減し、このことはこの相互作用が働いていることを示した。
【0067】
実施例18
AID応答のFDC媒介性増大に対するIC及びCD21リガンドの重要性
本発明者等は、最適な高親和性抗体応答を促進するために、ICがFDCの能力に寄与するか否かを判定しようとした。促進されるクラススイッチ及び親和性成熟におけるFDC−ICの重要性を考慮して、本発明者等は、IC及びCD21リガンド−CD21の相互作用が、NP−CGGシステムにおけるAID発現のFDC媒介性増大に重要であったか否かを判定しようとした。NP−CGGに対して応答するB細胞が少数なので、AID調節の研究はより困難になる。しかし、72時間の培養後のRNA精製に約2×10個の精製B細胞を用いた場合、AIDのmRNAのFDC媒介性増大を検出することが可能であった。NP−CGG抗CGGのICは増大を刺激したが、NP−CGGは検出可能な増大を刺激することはできなかった。さらに、抗CD21/35は、ポリクローナル活性因子で刺激したB細胞の研究で見られたものと同じ様式で抗原刺激応答を阻害した。
【0068】
実施例19
in vitroのCGにおける体細胞超変異
in vitroのGCにおける体細胞超変異を調べるために、本発明者等はPCRを用いて、抗NPを作製するためにマウスで用いられるVH186.2遺伝子を増幅した。PCR産物を電気泳動ゲルから切り取り、抽出して、クローン化した後に、複数のクローンをシークエンシングした。20個の読み取り可能な配列のうち7つの配列がVh186.2生殖系列と相同性であり、VH186クローンと呼ばれた。この配列は、VH186.2生殖系列コード遺伝子に対してアラインしている。突然変異は置換ヌクレオチドで示される。図10で示されるように、かなりの突然変異が、体細胞超変異と一致して可変遺伝子で起こった。これらの突然変異はCDR配列でより高頻度であった(図11)。突然変異の分析によって、以下のことが明らかになった:
・平均41個の突然変異(32〜45個の範囲)が、シークエンシングされたVH186遺伝子(306ヌクレオチド)1つ当たりで見られた。これはin vivoのGCの研究で得られた結果と一致して高いものである。
・ほとんどの突然変異は、1つの欠失を有する点突然変異であった。これは、in vivoの胚中心及び体細胞超変異に特有でもある。
・1つを除く全ての突然変異がCDRにおける置換突然変異であった一方で、フレームワーク領域におけるサイレント突然変異に対する置換の比率はほぼ1:1であり、両方とも強い選択圧を示した。
・トランスバージョンによる転移の優位性が見られた。
・本発明者等は、シークエンシングされた全てのCγ領域において1つだけ突然変異を認め、PCR増幅の忠実性(fidelity)に対する内部対照を与えた。
【0069】
これらのin vitroのGCで得られた突然変異の特徴は、抗NP応答に対してin vivoのGCで得られた特徴と同様である。したがって、本発明のin vitroのGCはin vivoのGCで起こる重要な事象を忠実に反映していると思われる。
【0070】
実施例20
FDCによって分泌されるケモカインであるCXCL13はヒトのB細胞及びT細胞を濾胞帯に引き付けることが示されている(Estes et al. (2004) J. Immunol. 173, 6169-6178)。他の実施形態では、このケモカイン又はその受容体CXCR5の遮断は、B細胞及びT細胞がFDC豊富域に移動するのを阻害し得る。さらに、GCのB細胞が活性化され、特有の表現型、PNA、GL−7、CD95hi及びCD23loを発現し、B細胞が中心細胞である場合は明帯に、B細胞が胚中心細胞である場合は暗帯に分かれる。他の実施形態では、これらの特性はリンパ節濾胞のin vitroモデルに存在し得る。
【0071】
実施例21
他の実施形態において、FDC、B細胞、又はT細胞の精製調製物は、例えばセルロースベースのマイクロキャリア、コラーゲンクッション及びリンパ節細胞外材料を含むETC中に包埋させることができる。これは、固まる前に細胞をETC懸濁液に加えること、又は懸濁液をETCに直接注入することによって行うことができる。これらの細胞をマトリクス中で平衡化することができ、それから視覚化され、それが2週間にわたって続く可能性がある。ヒトのB細胞及びT細胞は、抗14、抗CD19、抗CD3、及び抗CD56を用いる負の選択によって、健常なドナーの末梢血から単離し、不要な細胞を取り除くことができる。マウスのB細胞及びT細胞はリンパ節から得て、これまでに記載されたように、正の選択によって精製することができる。
【0072】
実施例22
FDCは、MHC又は種の制限なしでB細胞を共培養することができ、本発明の実施形態では、FDCは、これまでに記載されたようにFDC特異的mAb HJ2を用いて、ナイーブのマウス又は若年患者から外科的に取り除いたヒトの甲状腺のリンパ節から単離することができる(Fakher et al. (2001) Eur. J. Immunol. 31, 176-185)。
【0073】
実施例23
他の実施形態において、FDCを組み込む場合、「in situゼリー化(jellification)」、「注射」、「クッション−ビーズ組合せ」、加えて小クッションとの組合せ、全ての細胞型に対する単一クッション、及びクッションの貫通等の様々な手法を一般的なLTEアーキテクチャに用いることができる。他の実施形態では、ETCとしては、例えばコラーゲンクッション、セルロースベースのマイクロキャリア、合成及び他の天然の生体材料、及び/又はリンパ節細胞外材料が挙げられ得る。
【0074】
実施例24
さらなる実施形態において、FDC、T細胞、及びB細胞は同じETCではあるが、異なる位置に配置することができる。まずFDCがETC内に入り、ETCと接着することが可能になり、それからT細胞及びB細胞が近くに配置され得る。リンパ球がFDCに引き付けられ、FDCの周りで集合化し、in vitroでGCを形成することができる。本発明者等は、CD3選択T細胞及び陰性選択B細胞は、ケモカインの非存在下でコラーゲンクッションにおける低い細胞運動性を示すことを認めている。FDC及び関連のケモカインの存在が、リンパ球の自然の運動性を増大させる可能性がある。
【0075】
実施例25
さらに他の実施形態において、FDC、T細胞、及びB細胞は、単一のETCに配置され、クラスタ化を視覚化するか、又は別々のETCに配置され、リンパ節のT細胞域及びB細胞域を刺激することができる。正規の顕微鏡解析に加えて、細胞をクッションで蛍光標識して、共焦点顕微鏡によって視覚化することができる。さらに、他の実施形態では、破傷風トキソイド(TT)免疫した人々から単離したBリンパ球及びTリンパ球は、FDC含有ETCで共培養し、さらにTT−抗TTのICで刺激することができ、抗原特異的GCに対するモデルとして有用である。
【0076】
実施例26
FDCは、B細胞及び濾胞Tヘルパー細胞の両方に対する化学誘引物質として作用するケモカインCXCL13を分泌し、これらの細胞をGCに補充する(54)。他の実施形態では、B細胞及びT細胞をFDC含有ETCに加え、CXCL13、又はそのレセプターであるCXCR5に対する中和抗体の存在下又は非存在下で、例えばLPS又はConAを用いて刺激することができる。他の実施形態では、CXCL13ノックアウトマウス由来のFDCを用いることができる。他の実施形態では、抗CD21抗体、抗ICAM−1抗体、抗VCAM抗体、及び抗BAFF抗体をこれらの培養物に別々に加え、FDC−B細胞−T細胞クラスタの形成におけるこれらの表面分子の重要性を調べることができる。これまでの研究によって、培養ウェル中のFDC周辺のB細胞のクラスタ化におけるこれらの分子の役割が示されている。
【0077】
実施例27
FDCが抗原を備えている場合のGC及び包括的なB細胞の特徴
一次抗原チャレンジ後、約6〜8日でGCが形成され、特有のGCのB細胞表現型(PNA、GL−7、CD95hi、CD23lo)を発現する迅速分裂B細胞から成る暗帯に隣接して存在する明帯におけるICが施されたFDC及び補体断片の存在によって検出される。これらのGCのB細胞は、特異的抗原に応答するB細胞であり、クラススイッチ及び体細胞超変異を受け、高親和性のIgG抗体を生成させる。
【0078】
実施例28
他の実施形態において、TT免疫した個体から単離したB細胞及びT細胞をコラーゲンクッション含有FDCで培養し、TT−抗TTのICで刺激することができる。培養の約10日後、B細胞を回収し、標識化して、フローサイトメトリによってPNA、GL−7、CD95及びCD23の表面発現に対して分析することができる。これらの濾胞形態の詳細な分析は、共焦点顕微鏡を用いて行うこともできる。
【0079】
実施例29
さらに別の実施形態において、抗原免疫した個体から単離したB細胞及びT細胞をコラーゲンクッション含有FDCで培養し、抗原−抗抗原(antigen-anti antigen)のICで刺激することができる。培養の約10日後、B細胞を回収し、標識化して、フローサイトメトリによってPNA、GL−7、CD95及びCD23の表面発現に対して分析することができる。これらの濾胞形態の詳細な分析は、共焦点顕微鏡を用いて行うこともできる。
【0080】
実施例30
本発明者等がin vitroで研究している二次元クラスタにおいて、GC又はT細胞周辺にマントル領域を形成し、集合し、別個のユニットを形成するB細胞は見られなかった。しかし、二次元配置は細網繊維、又は細胞の配列を助ける他の構造を有していない。本発明の他の実施形態では、ETCを用いて、T細胞及びB細胞がGC周辺で分離され、別々の領域を形成するような状態を提供することができる。GC周辺の細胞は、T細胞特異的抗体及びB細胞特異的抗体を用いて調べることができる。GCのB細胞がIgDを発現しないが、マントル帯のB細胞がIgDを発現するので、抗IgDによる標識化が有益である可能性もある。
【0081】
二次リンパ組織が適切な抗原でチャレンジされる場合、活性GCで発達した非常に多くの新規濾胞の結果として、この二次リンパ組織が劇的に広がる。これらの濾胞は異なるT細胞帯及びB細胞帯、並びに迅速増殖B細胞、ヘルパーT細胞、FDC、及びFDCから生存シグナルを受けていないアポトーシスB細胞を一掃するマクロファージから成る活性GCで組織化される。それぞれの活性GCは、FDC、T細胞、及びB細胞が相互作用する場合は明帯、及びB細胞が迅速に増殖する場合は暗帯にさらに分かれる。
【0082】
濾胞は、リンパ節だけでなく、膵臓、リンパ結節(例えばパイアー斑)でも明らかであり、全ての種のリンパ節で保存される。抗原が、リンパ節中にある輸入リンパ管から、或いは膵臓の周縁洞を介して、又はM細胞(パイアー斑の場合)によって血液から濾胞に輸送されるか否かは問題ではないと考えられる。
【0083】
抗原が濾胞内にあると、活性GCを有する二次濾胞の発達、及び体液性免疫の発生に必要なアゴニストが存在する。三次元で完全に発達した濾胞構造は、十分な量の高親和性抗体の産生に重要であると考えられる。
【0084】
実施例31
リンパ組織が消化され、細胞を従来の組織培養物に入れる場合、これらは濾胞組織を失い、組織を壊し二次元状態を維持する。本発明の実施形態では、FDCをこのような培養物に加え、FDC−B細胞−T細胞クラスタを形成することができる。本発明者等は、このようなin vitroのGCにおける免疫グロブリンのクラススイッチ、体細胞超変異、及び親和性成熟を実証している。
【0085】
実施例32
本発明の実施形態において、濾胞白血球を天然又は合成されたETCマトリクス中に入れることができ、FDCを固定することができ、T細胞及びB細胞をFDC周辺に配置し、濾胞のin vivo環境面を再生させることができる。ETCに好適な材料としては、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、細胞外マトリクス(ECM)、小腸粘膜下組織、膀胱粘膜、PLGA、ヒドロゲル、反転性コロイド結晶マトリクス、マイクロキャリア、及びコラーゲンで覆われたプレートが挙げられる。本発明の他の実施形態では、ETCマトリクスは存在せず、T細胞、B細胞及びFDCが標準的な二次元ウェルで単純に培養される。
【0086】
実施例33
本発明の他の実施形態において、機能的なLTE含有FDC、及び確定した又は未確定のT細胞帯及びB細胞帯を用いて、ワクチンを評価することができる。FDCを用いて、T細胞帯及びB細胞帯を確定するのを助けることができ、これらの細胞帯を予め形成させる必要はない。同様に、別の実施形態では、T細胞帯及びB細胞帯は必要ではない。一次免疫応答では、統合されたin vitroワクチン接種部位から初回刺激を受けた単球由来の樹状細胞を用いることができ、モデル抗原、例えば再生応答のための破傷風及び一次応答におけるモデルを検証するためのインフルエンザを用いることができ、同様に他の抗原、免疫原及び/又はアレルゲンを用いることができる。
【0087】
実施例34
マウス細胞を用いた実験において、本発明者等は二次元培養物における機能的なin vitroのGCに対する証拠が提示される。具体的には、ナイーブλ陽性B細胞、FDC、NP−CGG(トリγグロブリン)+抗CGGのIC、及びCGG初回刺激T細胞を共培養することによって、マウスGCをin vitroで作製した。これによって、FDC−リンパ球クラスタ及び抗NIPのIgM及びIgGの産生がもたらされた。
【0088】
クラススイッチは、1週目でのIgMから2週目でのIgGへの移動によって示され、親和性成熟は、1週目の大部分が低親和性のIgM及びIgGから2週目のほぼ全てが高親和性のIgG抗NIPへの変化によって示された。クラススイッチ及び親和性成熟は、適切な免疫複合体(IC)を有するFDCの存在下では容易に検出可能であったが、FDCの非存在下、又はICで関係のない抗原を有するFDCの存在下では検出不可能であった。
【0089】
FDCに加えて遊離抗原によって低親和性IgGが得られるが、FDCがICを有していた場合にのみ親和性成熟は明らかであった。クラススイッチは活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)依存性であり、FDC−CD21リガンド−B細胞CD21の相互作用の遮断が、AID産生のFDC−IC媒介性増大及びIgG応答を阻害した。FDCはAID及びエラープローンポリメラーゼの両方の産生を促進した。これらの酵素は体細胞超変異に必要である。可変領域遺伝子のシーケンシングは、高親和性抗体の産生と一致した多数の突然変異を示していた。
【0090】
実施例35
本発明の実施形態において、AISで統合することができる三次元培養組織構築物におけるヒト細胞系が構築される。in vivo状態であれば、FDCはコラーゲン繊維と接着することができ、GCが三次元で発生することができる足場を提供する。マウスシステムで認められたNIP特異的なIgM及びIgGの産生、クラススイッチ、体細胞超変異及び親和性成熟は、二次元のin vitroでのGCを用いたこれまでの研究の結果と比較することができる。
【0091】
実施例36
本発明の実施形態において、TT特異的な記憶T細胞がほとんどの人々に豊富に存在するので、ヒトGCはキャリアとして破傷風トキソイド(TT)を用いて確立することができる。他の実施形態では、NP破傷風トキソイドを用いて、GCを作製することができる。それから、抗NP産生によって、高親和性抗体及び低親和性抗体の両方の産生を単純に測定でき、親和性成熟を調べることが可能になるので、抗NP産生を調べることができる。他の実施形態では、ナイーブヒトT細胞をin vitroで初回刺激し、それからそれを用いて、T細胞の補助をin vitroのGCに与えることができる。培養物、又はCGGで刺激したin vitroワクチン接種部位(VS)細胞のいずれかからの単球由来のDCを用いて、ナイーブヒトT細胞をCGGで初回刺激することができる。それから、このような初回刺激T細胞は、CGG−NPを有するマウスシステムに用いたのと同じ方法に用いることができる。
【0092】
実施例37
FDCはin vivoで細網繊維と接着し、濾胞内で固定した網目構造である。リンパ球は再循環するが、FDCは静止したままである。しかし、in vivoでこの状態のFDCは成熟している。ラットの尾のコラーゲンから作製されたコラーゲンクッションが確立された。FDCが接着し、コラーゲン上にクラスタを配置した。
【0093】
実施例38
in vitroのLTEに免疫複合体が包含されていることは、完全に分化した記憶B細胞の生成に重要である。本発明の実施形態では、2段階のLTEが用いられる。第1段階において、ナイーブ抗原特異的B細胞が刺激され、T細胞に依存して抗体を産生する。FDCに合わせてこの構築物から導かれた免疫複合体及び記憶T細胞はシグナルを与え、第2のLTE構築物で完全に分化するようにナイーブB細胞の新たなバッチを誘発した。
【0094】
別のアプローチにおいて、ICは、抗体が非特異的に抗原と人為的に結合することによって発生させることができる。例えば、ハプテンは対象の抗原と複合体化し、それから特異的抗体で結合される。複合体形成後、タンパク質の抗原性を維持するように特別な注意を払い、文献の手法を用いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)は標的タンパク質の一級アミノ基と連結することができる。これに関して、フルオレセイン−EX又は細長いリンカーを有する他の誘導体は、FITC及び他のハプテンによって形成された強いリンカー−抗原複合体よりも有利であり得る。それから、市販の高親和性の抗FITC抗体を用いて、抗原−ハプテン複合体と結合させ、完全なICを形成することができる。ほとんどの成体が破傷風トキソイドで免疫しており、この抗原に対して発生する体液性及び細胞媒介性の免疫応答が十分に特徴付けられているので、破傷風トキソイドをモデル抗原として用いることができる。他のリンカー及び抗原、例えばそれぞれジゴキシン及びNPも用いることができる。別の実施形態では、抗体は、アミン−チオール架橋法を用いて抗原と直接化学結合することができる。これらの非特異的化学物質を用いるには、ポリクローナル抗体に有用なものを作製する凝集工程を必要としない。さらに、ICの化学量論は、この複合体の大きさ又は密度に影響を与えることなく操作することができる。
【0095】
実施例39
本実施例において、LPSをB細胞に加え、シグナルを提供した後、FDCを加え、共刺激シグナルを提供して、実験を行った。次に抗体産生が試験された。本発明者等は2週間細胞を追跡した。培養培地を1週目の終わりに回収し、タイターは1日目〜7日目まで抗体合成を示す。培地を交換し、上清液を14日目に回収した。これらのタイターは7日目〜14日目まで抗体合成を示す。FDCは、予測通り潜在的共刺激活性を有していたが、7日目ではコラーゲンと接着するFDCと、プラスチックプレート上に浮かぶFDCとの間の抗体産生に差はなかった。しかし、14日目では、コラーゲンに接着したFDCは、プラスチックプレート上に浮かぶFDCと比較すると、抗体産生を促進する活性が約3倍であった。2週目のIgG 応答は1週目より低かったが、これは迅速に応答し、そして迅速に減衰するLPS刺激細胞に特有のものである。対して、抗原刺激細胞は典型的に、2週目にIgG産生がピークに達する。これらの結果は、コラーゲン上にFDCを置くことによって、生物学的活性が高まることを示している。
【0096】
実施例40
図12は、新たに単離したFDCを示す。モノクローナル抗体であるFDC−M1を用いて、正の選択前に典型的なプロセスで幾つかのFDCを見出すことができる。しかし、正の選択後、ほとんどのプロセスは残らない(図13、図14、図15)。
【0097】
実施例41
本発明者等は、in vitroでヒトIgGの一次応答を誘導しようと、また抗体が低濃度で機能することができるような親和性を有する高品質抗体を生成しようとした。オボアルブミン(OVA)を例示的な抗原として用い、用いた遮断ドナーはOVA血清反応が陰性であった。T細胞を単球由来のDCで初回刺激した。単球(約1×10個)をIL−4(約1000U/mL)及びGM−CSF(約800U/mL)で培養し、未成熟DCを生成した。5日後、OVA(1μg/mL)を加え、抗原を処理し、LPS(1μg/mL)を加え、DC成熟を刺激した。8日後、OVA初回刺激のために、約20×10個のCD4T細胞を加えた。マウス実験において5日間(実験1)及び10日間(実験2)、ヘルパーT細胞に対する初回刺激及び成熟を続けた。この初回刺激期間後、T細胞及びDCを、実験1ではナイーブB細胞(約15×10個)、並びに実験2では約10×10個のナイーブB細胞に混合した。OVA(約5μg)+マウス抗OVA(約30μg)を複合体化して、OVAのICを生成し、実験1では、細胞及びICを放射線照射マウスの首の後ろに注射し、実験2では、in vitroでICを約3×10個の新たに単離したFDCと共に入れた。このようにして、本発明者等は、実験1において14日目で約30ng/mLの抗OVAを得た。
【0098】
実験2において、5日目で、本発明者等は特異的な抗OVAを約12ng/mLと測定した。10日目で、抗OVAのレベルは約20ng/mLであった(これらのレベルはELISAによって容易に評価された)。したがって、50mLの培地では、このことが5日目の約600ngの抗OVA、及び10日間の約1000ngの全抗OVAに対応する。次に、本発明者等は親和性成熟を試験した。この試験とは、抗OVAをELISAプレートに結合させ、それから高い塩濃度を添加し、振盪器において2時間でどのくらいの量の結合抗体が解離したか定量することであった。プレートは次に洗浄され、ELISAがこれまでのように行われた。低親和性抗体は解離され、洗い流し、高親和性抗体は結合を維持し、ELISAで検出される。5日目の抗体のほとんどが1MのNaClで解離し、10日目の抗体のほとんどが結合を維持し、このことが、この期間で低親和性抗体から高親和性抗体へと変化したことを示唆していた。
【0099】
実施例42
全マウスIgGが、IC及び補体の有り又は無しで、マウスリンパ球及びLPSとインキュベート後のコラーゲンI型ビーズ上で新たなマウスFDCによって産生された。本実施例では、本発明者等は、FDCがコラーゲン上で網目構造を構成した後に、新たな免疫複合体及び補体を加えることによって、FDCを活性化させようとした。本発明者等は、約8000〜9000ngの新たなFDCを有する抗体を測定し、7日後でもまだ、ICを有するFDCの抗体濃度は約8000〜9000ng/mLであった。14日後では、抗体濃度は4000〜5000ng/mLであり、ビーズ上で維持されたIC及びFDCは、プラスチック上に維持されたものよりも良好であった。したがって、FDCは少なくとも約2週間、ビーズ上で良好な活性を維持することができる。ヒトFDCはIC及び補体から利益を受けた。
【0100】
実施例43
化学架橋なしでのコラーゲンの直接沈着
本実施例において、PuraCol(1mMの硝酸における超純粋ウシI型コラーゲン、Inamed, CA)溶液(約50μL)を250μL容プラスチックピペットチップに入れ、ピペッティングせずにマニュアルでパターン形成するための「ペン」として用いた。この方法は洗浄及び細胞培養物とのインキュベートに耐えることができる楕円形及び円形スポット(約800〜1000μm)のプリントを可能にした。このようにしてコラーゲンでスポットされた組織培養プレート又はペトリ皿はバイオハザードフードに入れ、フードのUV光下で約1時間乾燥させた。記載されたようにコラーゲンでパターン形成した組織培養物(マルチウェル)プレート又はペトリ皿をPBSで満たし、約10分間室温でインキュベートした。それから、ペトリ皿を空にし、蒸留水で満たして、約5分間インキュベートした。この蒸留水の洗浄を3回繰り返し、その後さらにUV光に約30分間曝すことを含めて3時間、ペトリ皿をバイオハザードフードで乾燥させた(図16)。
【0101】
実施例44
化学架橋によるコラーゲンの沈着
別の実施形態において、コラーゲンスポットの耐久性(hardiness)を増大させるために、化学架橋法を用いることができる。例えば、グルタルアルデヒドを洗浄/中和溶液に添加し、コラーゲンの架橋を開始させることができる。未反応グルタルアルデヒドを、トリメチルアミンの溶液で洗浄することによって中和し、蒸留水で複数回洗浄することで取り除くことができる。
【0102】
実施例45
レーザーマイクロマシンによるパターン形成
別の実施形態において、コラーゲンによるペトリ皿の連続被覆、及びその後のレーザービームを用いたパターン形成は、規則的なパターンを作成するのに用いることができる方法である。レーザーマイクロマシーンは、コラーゲンパターンの接着及び安定性を改善するプラスチック表面の化学修飾及び活性化にも有用であり得る。
【0103】
実施例46
記憶B細胞は、in vivoでの胚中心で大量に形成される
記憶B細胞は、本発明のin vitro胚中心でも見出される。これを評価するために、本発明者等はin vitroの一次応答の開始後12日でヒトリンパ球を採取し、新たにFDC及び免疫複合体を加え、二次応答を引き起こさせた。これらの培養物由来の上清液は回収され、測定可能なレベルの高親和性の特異的IgG抗体を含んでいた。
【0104】
実施例47
本発明の実施形態において、in vitroで危険性の高い免疫原に対する一次応答を誘導し、in vitroのGCで特異的記憶細胞を広げた後に、より多くのFDC及び免疫原を有するこれらの記憶細胞を用いて、培養物をさらに広げることができる。このプロセスは、1回又は複数回繰り返すことができる。最終産物は、ヒトに危険性の高い免疫原を曝すことのない大量の高親和性で特異的なヒトIgG抗体である。
【0105】
実施例48
図16は、実施例43に従って調製したコラーゲンドットを示す。図17の結果はコラーゲン被覆Cytodexビーズによるものであり、CytodexにおいてFDCによる1mL当たり約7000ngのIgGが典型的な結果である。図18の結果はコラーゲンドットパターンによるものである。ここで、本発明者等は約47000ngのIgGを測定した。
【0106】
本発明の実施形態は、FDCがリンパ球を引き付ける場合、FDCをコラーゲンドットに接着させることを含む。コラーゲンドットは、例えばウシコラーゲン又はラット尾I型コラーゲンによって調製することができる(図16)。コラーゲンは、例えば組織培養プレートウェルの底を覆うのに用いることもできる。高レベルの抗体が得られた(約29500ng/mL)。
【0107】
任意の機構によって結合されることを望まず、幾つかのFDCがコラーゲンドットの上面にくっつく一方で、他のFDCはドットの底部周辺で輪を形成すると思われる。上部とくっついたFDCは不規則な形状のクラスタを形成し、リンパ球を引き付けると考えられ、リンパ球は、さらにFDC網目構造とは離れてより分散される。
【0108】
上記の明細書が、例示目的で与えられた実施例によって本発明の原理を教示しているが、本開示を読むことで当業者によって、本発明の真の範囲を逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更を行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】B細胞をシグナル伝達するのに重要なレセプター及びリガンドを示す図である。B細胞MHC IIが抗原をTCRに提示する必要性は、CD40の関与であるとして周知である。重要な事象としては以下のものが挙げられる: ・FDCがBCRとの相互作用に対して無傷抗原を与え、この抗原−BCR相互作用がB細胞の活性化及び分化に対して正のシグナルを与える。
【0110】
・FDCが補体由来CD21LをB細胞−CD21に与え、CD21/CD19/TAPA−1複合体とのこの相互作用がB細胞の活性化及び分化に対して正の補助シグナルを与える。
【0111】
・FDC上のFcγRIIBが、抗原−抗体複合体でIg−Fcと結合し、その結果としてB細胞におけるITIMを介して伝達されたシグナルが遮断され得る(B細胞上のFcγRIIBは関与しないことに留意されたい)。したがって、FDCはB細胞に対して負のシグナルを最小にする。
【0112】
・FDCはICで覆われたボディ(イコソーム)を与え、B細胞が非常に良好であることが見出される。イコソーム抗原によって抗原がB細胞に与えられ、T細胞に提示される。
【図2】FDCは、ナイーブB細胞による共培養下でNP特異的なIgMの産生を促進する。ナイーブλB細胞及びFDCは、ナイーブC57BL/6マウスから単離され、CCG初回刺激T細胞は、CGGで免疫されたC57BL/6マウスから単離された。ICはNP−CGG及び抗CGG高度免疫マウス血清を用いて調製した。約1×10個のナイーブλB細胞、約0.5×10個のCGG初回刺激T細胞、約0.4×10個のFDCは、ICにおいて100ngのNP−CGGの存在下又は非存在下で、或いは遊離抗原として共培養した。培養上清液を7日目に回収し、新しい培地と交換した。ELISAを用いて、細胞培養の7日目及び14日目で上清液に蓄積したNIP特異的IgMを測定した。全てのデータは、3つの独立実験の代表的なものである。パネルAは全NIP特異的IgMを示し、パネルBは高親和性NlP特異的IgM抗体を示す。白いカラムは第1週に発生したNIP特異的IgM抗体を表し、黒いカラムは第2週に発生したNIP特異的IgMを表す。NIP特異的IgMの親和性成熟は、トータルに対してNIP19−OVAと結合したNIP特異的IgMの量と、高親和性NIP特異的IgM抗体に対してNIP−OVAと結合したNIP特異的IgMの量とを比較することによって推測された。平均値周りの誤差バーは反復培養に対する平均値の標準誤差を表す。
【図3】FDCが、ナイーブB細胞による共培養下でNP特異的IgGの産生及び親和性成熟を促進することを示す図である。図1でNIP特異的IgMの産生を研究するのに用いられた同じ細胞培養物を用いて、全IgG抗体及び抗親和性NIP特異的IgG抗体を研究した。培養上清液を7日目に回収し、新しい培地に交換した。ELISAを用いて、細胞培養後7日目及び14日目に上清液で蓄積したNIP特異的IgGを測定した。全てのデータは、3つの独立実験の代表的なものである。パネルAは全NIP特異的IgGを示し、パネルBは高親和性NIP特異的IgG抗体を示す。白いカラムは第1週に発生したNIP特異的IgG抗体を表し、黒いカラムは第2週に発生したNIP特異的IgG抗体を表す。IgMからIgGへのクラススイッチは、第1週で発生したIgM及びIgGの量と、第2週で発生したIgM及びIgGの量とを比較することによって推測された。NIP特異的IgGの親和性成熟は、NIP19−OVAと結合したNIP特異的IgGの量と、NIP−OVAと結合したNIP特異的IgGの量とを比較することによって推測された。NIP19−OVAと結合したNIP特異的IgGと、NIP−OVAと結合したNIP特異的IgGとの間の違いは、NIP特異的IgG抗体の親和性成熟に反映する。平均値周りの誤差バーは反復培養に対する平均値の標準誤差を表す。
【図4】Randolph et al. (1998) Science 282, 480-3からの組織セッティングモデルファクト。
【図5】マイクロキャリア上のDC、FDC、T細胞及びB細胞を組み込むin vitroでのLTE/GCの立体配置。
【図6】ECMマトリクス中にDC、FDC、T細胞及びB細胞を組み込むin vitroでのLTE/GCの別の立体配置。
【図7】7日後のIgG産生。
【図8】14日後のIgG産生。
【図9】FDCが約1週間コラーゲン上に存在した後に、広域なプロセスが見られる。
【図10】in vitroのGCにおいて体細胞超変異を試験するために、本発明者等は、マウスで用いられるVH186.2遺伝子を増幅し、抗NPを作製するためにPCRを用いた。PCR産物を電気泳動ゲルから切断し、抽出して、クローン化した後、多重クローンをシークエンシングした。20個の読み取り可能な配列のうち、7つがVh186.2生殖細胞系列に対して相同性を有し、VH186クローンと称された。この配列は、VH186.2生殖細胞系列コード遺伝子に対してアラインされた。突然変異とは、置換されたヌクレオチドを示す。相当の突然変異が可変遺伝子で起こり、これは体細胞超変異に一致していた。
【図11】10個のヌクレオチド塩基当たりの特有の突然変異の数を塩基の位置に対してプロットした。
【図12】単離後であるが、正の選択前のFDC。
【図13】単離後であるが、正の選択前の選択された新しいFDC。幾つかのFDCが突起を有していることに留意されたい。
【図14】正の選択後のFDC。
【図15】正の選択後のFDC。
【図16】in vitroでGC様帯を形成するためのコラーゲンドットパターンの使用。FDCの好ましい接着域は空間的に限定され、境界は「無FDC」帯として与えられる。
【図17】FDCは24時間Cytodexビーズとインキュベートした後、白血球を加えた。7日後、IgG産生を測定した。
【図18】FDCは24時間コラーゲンドットパターンプレート上でインキュベートした後、白血球を加えた。7日後、IgG産生を測定した(これは非組織培養処理プレート上であった)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物被験体に投与せずに、アレルゲン、免疫原、免疫調節剤、免疫治療剤及び潜在的ワクチン剤の評価を可能にする人工免疫システムであって、
培養組織構築物、並びに
前記培養組織構築物内に包埋されるか、又はその上に固定される少なくとも1つの三次元人工胚中心であって、
濾胞樹状細胞、
B細胞、及び
T細胞
を含む、少なくとも1つの三次元人工胚中心
を含む、人工免疫システム。
【請求項2】
前記培養組織構築物が、コラーゲンクッション、ゼラチン、ヒアルロン酸、小腸粘膜下組織、膀胱粘膜、PLGA、ヒドロゲル、コラーゲンで覆われたプレート、マイクロキャリア、反転性(inverted)コロイド結晶マトリクス、合成細胞外マトリクス材料、及び天然細胞外マトリクス材料から成る群より選択される、請求項1に記載の人工免疫システム。
【請求項3】
前記B細胞及び前記T細胞が、ワクチン、アジュバント、免疫調節剤、免疫治療剤候補、化粧品、薬剤、生物製剤(biologic)、及び化合物から成る群より選択される作用物質で免疫された個体から単離される、請求項1に記載の人工免疫システム。
【請求項4】
濾胞白血球をさらに含む、請求項1に記載の人工免疫システム。
【請求項5】
前記培養組織構築物が、コラーゲンスポットで覆われたプレートを含む、請求項1に記載の人工免疫システム。
【請求項6】
前記コラーゲンスポットが架橋される、請求項5に記載の人工免疫システム。
【請求項7】
前記濾胞樹状細胞が、前記コラーゲンスポットと接着する、請求項5に記載の人工免疫システム。
【請求項8】
前記システムが、前記培養組織構築物に分布する間質細胞をさらに含む、請求項1に記載の人工免疫システム。
【請求項9】
前記システムが、IL−4抗体、CD40L抗体、及び抗CD40抗体から成る群より選択される可溶性因子をさらに含む、請求項1に記載の人工免疫システム。
【請求項10】
前記システムが、ワクチン、アジュバント、免疫調節剤、免疫治療剤候補、化粧品、薬剤、生物製剤、及び化合物から成る群より選択される作用物質をさらに含む、請求項1に記載の人工免疫システム。
【請求項11】
作用物質に対する動物の潜在的な反応を評価する方法であって、
作用物質を請求項1に記載の人工免疫システムに投与すること、及び
前記作用物質に対する前記B細胞及び/又は前記T細胞の応答を評価すること
を含む、方法。
【請求項12】
前記作用物質が、ワクチン、アジュバント、免疫調節剤、免疫治療剤候補、化粧品、薬剤、生物製剤、及び化合物から成る群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記作用物質が、該作用物質に特異的な抗体と結合する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
作用物質に特異的な抗体を産生する方法であって、
作用物質を請求項1に記載の人工免疫システムに投与すること、及び
前記作用物質に特異的な抗体を前記人工免疫システムから単離すること
を含む、方法。
【請求項15】
作用物質に特異的な抗体を産生するB細胞を産生する方法であって、
作用物質を請求項1に記載の人工免疫システムに投与すること、及び
前記作用物質に特異的な抗体を産生するB細胞を前記人工免疫システムから単離すること
を含む、方法。
【請求項16】
作用物質に特異的なT細胞を産生する方法であって、
作用物質を請求項1に記載の人工免疫システムに投与すること、及び
前記作用物質に特異的なT細胞を前記人工免疫システムから単離すること
を含む、方法。
【請求項17】
前記作用物質が、ワクチン、アジュバント、免疫調節剤、免疫治療剤候補、化粧品、薬剤、生物製剤、及び化合物から成る群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記作用物質が、該作用物質に特異的な抗体と結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記作用物質が、ワクチン、アジュバント、免疫調節剤、免疫治療剤候補、化粧品、薬剤、生物製剤、及び化合物から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記作用物質が、該作用物質に特異的な抗体と結合する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記作用物質が、ワクチン、アジュバント、免疫調節剤、免疫治療剤候補、化粧品、薬剤、生物製剤、及び化合物から成る群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記作用物質が、該作用物質に特異的な抗体と結合する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
ワクチンに対する非応答者(non-responders)を同定する方法であって、
濾胞樹状細胞、被験体から単離されたB細胞、及び被験体から単離されたT細胞を培養組織構築物に加えること、
ワクチンを、前記濾胞樹状細胞、前記B細胞、及び前記T細胞を含む前記培養組織構築物に投与すること、並びに
前記ワクチンに対する前記B細胞及び前記T細胞の応答を評価すること(ここで、B細胞及びT細胞の応答の欠如が、前記被験体は該ワクチンに対する非応答者であることを示す)
を含む、ワクチンに対する非応答者を同定する方法。
【請求項24】
ワクチンに対する非応答者を良好な応答者(responders)に変えることができる免疫調節剤を同定する方法であって、
請求項23に記載の方法を用いて、非応答者を同定すること、
濾胞樹状細胞、前記非応答者から単離されたB細胞、及び該非応答者から単離されたT細胞を培養組織構築物に加えること、
免疫調節剤を、前記濾胞樹状細胞、前記B細胞、及び前記T細胞を含む前記培養組織構築物に投与すること、
ワクチンを、前記濾胞樹状細胞、前記B細胞、及び前記T細胞を含む前記培養組織構築物に投与すること、並びに
前記免疫調節剤の存在下で前記ワクチンに対する前記B細胞及び/又は前記T細胞の応答を評価すること(ここで、該ワクチンに対するB細胞及び/又はT細胞の応答が、該免疫調節剤は前記非応答者を良好な応答者に変えるのに有効であることを示す)
を含む、方法。
【請求項25】
抗原に特異的な抗体を産生するB細胞を不死化する方法であって、
作用物質を請求項1に記載の人工免疫システムに投与すること、
前記抗原に特異的な抗体を産生するB細胞を前記人工免疫システムから単離すること、及び
前記抗原に特異的な抗体を産生する前記B細胞を不死化すること
を含む、方法。
【請求項26】
抗原に対してモノクローナルなB細胞を不死化する方法であって、
作用物質を請求項1に記載の人工免疫システムに投与すること、
前記抗原に対してモノクローナルなB細胞を同定すること、並びに
前記抗原に対してモノクローナルな前記B細胞を単離、クローン化及び不死化すること
を含む、方法。
【請求項27】
抗原に対する免疫応答を試験する方法であって、
作用物質を請求項1に記載の人工免疫システムに投与すること、及び
前記T細胞の応答及び/又は前記B細胞の応答に対して前記抗原が有する効果を分析すること
を含む、方法。
【請求項28】
前記T細胞の応答に対して前記抗原が有する効果が分析される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記B細胞の応答に対して前記抗原が有する効果が分析される、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−521225(P2009−521225A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547590(P2008−547590)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/048959
【国際公開番号】WO2007/075979
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508176935)ヴァックスデザイン コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】VaxDesign Corporation
【住所又は居所原語表記】Suite 365,12612 Challenger Parkway,Orlando,Florida 32826 USA
【出願人】(308028809)ヴァージニア コモンウェルス ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】