説明

n型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法

【課題】安定したSPV信号が得られ、少数キャリアの拡散長を高精度かつ再現性よく測定することが可能なn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法を提供する。
【解決手段】表面光起電力法を用いて抵抗率0.1〜3000Ωcmのn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長を測定するための前処理方法であって、前記ウェハをフッ酸水溶液で処理する工程と、前記フッ酸水溶液での処理後の前記ウェハを純水で洗浄する工程と、洗浄後の前記ウェハを金属塩および過酸化水素を含む加温処理液で処理する工程と、前記加温処理液で処理後の前記ウェハを純水で洗浄する工程と、洗浄後の前記ウェハを1〜30kVの電位をもつポリプロピレンまたは石英から作られる凹形状を有する容器の密閉されていない内壁空間内に前記ウェハ全体が入るように設置して乾燥する工程とを含むことを特徴とする前処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、n型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェハの少数キャリア拡散長を測定する方法としては、SPV(Surface Photo Voltage)法が知られている。この方法は、シリコンウェハ表面に光を照射することによって、シリコンウェハ内部に生成した過剰少数キャリアがウェハ表層部に存在する空乏層または反転層の電界によりウェハ表面に移動し、その結果発生する表面光起電力(SVP)を測定するものである。実際の測定においては、数波長の光を別個にシリコンウェハ表面に照射し、それぞれの波長について、SPV値を測定する。照射した光の浸透深さと発生したSPV値との関係から少数キャリア拡散長を求める。
【0003】
このようなSPV法によって、少数キャリア拡散長を測定するには、シリコンウェハ表面に空乏層ができている必要がある。通常は、この条件を満足していれば他に特別な表面処理は必要ないが、サンプルのシリコンウェハによってはSPV信号が小さく、測定ができない場合がある。この場合、サンプルがp型であればフッ酸またはバッファフッ酸による処理が知られている。サンプルがn型であれば、過酸化水素水中での煮沸処理、過酸化マンガン酸カリウムによる表面処理が知られている。また、アルミニウムまたは鉄のような金属塩を添加した薬液で処理すると、SPV信号の大きさを変えることができることも知られている(特許文献1、非特許文献1−4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−280431号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】C Munakata and H Shimizu; Semicond. Sci. Technol.Vol.5, p 991 (1990) "Aluminum-induced AC surface potovoltage in n-type silicon wafers"
【非特許文献2】H.Shimizu; J.Coll.Enging. Nihon Univ. 45(1), September, 2003 "Metal-induced Alternating Current Surface Potovoltage in silicon: Atomic Bridging-Type Oxide Charge and Schottky Barrier-type Negative Charge"
【非特許文献3】JEITA EM-3509 表面起電力法によるシリコンウェハの少数キャリア拡散長測定法
【非特許文献4】JEITA 社団法人電子情報技術産業協会 シリコン技術委員会 “SPV測定のための前処理歩に関する調査報告書”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらのうちn型シリコンウェハの場合は、過酸化水素水中で煮沸した後にサンプル表面に経時変化が現れる。このため、SPV測定を精度よく行うことを目的としてサンプルをしばらくの間放置して安定化させることが経験的に知られている。しかしながら、サンプルを放置する時間は置かれた環境などによって異なり、一定のルールを規定することが難しく、SPV測定精度に影響を及ぼす。
【0007】
また、濃度の高い過酸化水素水を含む薬液、または金属塩を添加した薬液で処理することにより前記放置時間を短くすることができることが知られている。しかしながら、これらの場合でも放置時間とSPV測定精度との相関性は見出されていない。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、安定したSPV信号が得られ、少数キャリアの拡散長を高精度かつ再現性よく測定することが可能なn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、表面光起電力法を用いて抵抗率0.1〜3000Ωcmのn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長を測定するための前処理方法であって、前記ウェハをフッ酸水溶液で処理する工程と、前記フッ酸水溶液での処理後の前記ウェハを純水で洗浄する工程と、洗浄後の前記ウェハを金属塩および過酸化水素水を含む加温処理液で処理する工程と、前記加温処理液で処理後の前記ウェハを純水で洗浄する工程と、洗浄後の前記ウェハを1〜30kVの電位をもつポリプロピレンまたは石英から作られる凹形状を有する容器の密閉されていない内壁空間内に前記ウェハ全体が入るように設置して乾燥する工程とを含むことを特徴とするn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法が提供される。
【0010】
前記容器は、上部にシリコンウェハの出し入れをする開口部を有する容器本体と、この開口部に設置可能に設けられ、前記開口部に設置した際には、前記容器本体の内壁空間内を密閉しない上蓋とを備え、前記上蓋は、1〜30kVの電位をもつポリプロピレンまたは石英から作られることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安定したSPV信号が得られ、少数キャリアの拡散長を高精度かつ再現性よく測定することが可能なn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法における第5工程で用いられる容器及びその容器の内壁空間内にシリコンウェハを設置した状態を示す概念図である。
【図2】比較例に係る容器及びその容器の内壁空間内にシリコンウェハを設置した状態を示す概念図である。
【図3】本発明の実施形態に係るn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法における第5工程で用いられる容器及びその容器の内壁空間内にシリコンウェハを設置した状態の他の態様を示す概念図である。
【図4】実施例に係るn型シリコンウェハの前処理、SPV測定の工程を示すフローチャートである。
【図5】実施例1に用いられるポリプロピレン製の容器を示す斜視図である。
【図6】比較例1に用いられるポリプロピレン製の開放型カセットケースを示す斜視図である。
【図7】実施例1の前処理後の3枚のシリコンウェハにおける面内でのSPV信号強度および少数キャリア拡散長の分布を示す図である。
【図8】比較例1の前処理後の3枚のシリコンウェハにおける面内でのSPV信号強度および少数キャリア拡散長の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係るn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法を説明する。
【0014】
本実施形態に係るn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法は、表面光起電力法を用いて抵抗率0.1〜3000Ωcmのn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長を測定するための前処理方法である。この第1工程では、シリコンウェハをフッ酸水溶液で処理する。次に、第2工程では前記フッ酸水溶液での処理後のシリコンウェハを純水で洗浄する。次に、第3工程では洗浄後のシリコンウェハを金属塩(アルミニウム(Al)や鉄(Fe)の酸化物等)および過酸化水素水を含む加温処理液で処理する。次に、第4工程では前記加温処理液での処理後のシリコンウェハを再度、純水で洗浄する。最後に、第5工程では洗浄後のシリコンウェハを1〜30kVの電位をもつポリプロピレンまたは石英から作られる凹形状を有する容器の密閉されていない内壁空間内にシリコンウェハ全体が入るように設置して乾燥する。
【0015】
このような本実施形態に係る前処理方法による作用効果を説明する。
【0016】
第1工程でのフッ酸水溶液での処理によりシリコンウェハ表面に形成された自然酸化膜(ケミカルオキサイド膜)のような酸化膜を除去してシリコンウェハ表面を疎水性にする。その後、第2の工程でシリコンウェハ表面を純水で洗浄し、付着したフッ酸を除去する。次に、第3工程で洗浄後のシリコンウェハを金属塩(アルミニウム(Al)や鉄(Fe)の酸化物等)および過酸化水素水を含む加温処理液で処理する。このとき、シリコンウェハは加温処理液中の過酸化水素水によりケミカル酸化膜が成長して表面が親水性になる。このケミカル酸化膜は、微量の金属イオンが取り込まれているため、その表面が負に帯電する。また、生成したケミカル酸化膜中にはアルミニウムイオンや鉄イオンが取り込まれ、例えば(AlOSi)や(FeOSi)のような負電荷が増大するため、表面の負電荷がより安定化する。
【0017】
第4工程で前記加温処理液にて処理後のシリコンウェハを純水で洗浄する。純水で洗浄した後は、表面が濡れた状態になる。この表面が濡れ状態のシリコンウェハを単に乾燥すると、表面の負電荷がウェハ面内で偏って存在する。その結果、乾燥後のシリコンウェハから安定したSPV信号を得ることが困難になる。
【0018】
このようなことから第5工程で洗浄後のシリコンウェハを1〜30kVの電位をもつポリプロピレンまたは石英から作られる凹形状を有する容器の密閉されていない内壁空間内にシリコンウェハ全体が入るように設置して乾燥することによって、容器が正の電位を帯びているため、ウェハ表面全体の負電荷を容器に向けて均一に引き付け、ウェハ表面の負電荷を安定化でき、さらに表面の負電荷をウェハ面内で均一化できる。
【0019】
なお、ここでいう、「凹形状を有する容器の密閉されていない内壁空間内に前記ウェハ全体が入るように設置」について、具体的な態様を説明する。
【0020】
図1は、第5工程で用いられる容器及びその容器の内壁空間内にシリコンウェハを設置した状態を示す概念図であり、(a)は容器の上面図を、(b)は(a)のα方向から見た容器の側面図を、(c)は(a)をA−A’線で切ったときの断面図を、(d)は(a)をB−B’線で切ったときの断面図をそれぞれ示す。
【0021】
ここでいう、「凹形状を有する容器の密閉されていない内壁空間内に前記ウェハ全体が入るように設置」とは、凹形状を有する容器2の内壁面2aと前記容器2の上部2bの上端を通る水平面L1とで囲まれた空間内(内壁空間3内)にシリコンウェハ(図1中では例として3枚[1a、1b、1c])全体が入るように設置することをいう。
【0022】
したがって、本実施形態に係る前処理方法が施されたn型シリコンウェハは表面の負電荷の安定化および面内の均一化が図られるため、その後のSPV測定において安定したSPV信号強度が得られ、少数キャリア拡散長を高精度でかつ再現性よく測定することができる。
【0023】
図2は、前述した図1に対比される比較例に係る容器及びその容器の内壁空間内にシリコンウェハを設置した状態を示す概念図であり、図1(c)の位置に相当する部分を示す断面図である。
【0024】
図2に示すようにシリコンウェハの一部でも前記内壁空間内から露出している場合には、当該露出した部分の表面の負電荷の安定化を図ることができないため、シリコンウェハ面内の均一化が阻害され、好ましくない。
【0025】
本発明に係る前処理方法に供されるシリコンウェハは、n型であり、0.1〜3000Ωcmの抵抗率を有する。
【0026】
前記第1工程で用いるフッ酸水溶液のフッ酸濃度は、好適には、0.1%〜50%である。
【0027】
前記第3工程で用いる金属塩および過酸化水素水を含む加温処理液での処理は、好適には、40℃〜90℃で処理される。
【0028】
金属塩は、アルミニウム(Al)又は鉄(Fe)の金属塩が好適に用いられる。アルミニウムの金属塩は、例えば、硝酸アルミニウム(Al(NO33)、塩化アルミニウム(AlCl3)である。鉄の金属塩は、例えば、塩化鉄(FeCl3)である。
【0029】
金属塩は、加温処理液内にアルミニウム換算で0.1〜20.0ppmの範囲で含有させることが好適である。
【0030】
金属塩の含有量が前記範囲を下回ると、ウェハ表面に十分な負電荷が与えられず、安定したSPV信号強度を得ることが困難となる場合がある。他方、金属塩の含有量が前記範囲を上回ると、ウェハ表面に金属塩の析出が起こり、負電荷を得られず、拡散長測定が困難となる。
【0031】
前記加温処理液は、純水中に例えば20%〜50%の濃度の過酸化水素水を体積比でH2O:H22=13:0.5〜2.0となるように加えることが好適である。
【0032】
第3工程において、金属塩および過酸化水素水を含む加温処理液にシリコンウェハを浸漬する時間は、好適には、10分間〜60分間である。
【0033】
第5工程で用いられる容器は、凹形状を有する容器2の上部2bは開放されている、すなわち、前記容器2の内壁空間3は密閉された空間ではない。
【0034】
このように構成によって、容器の内壁空間内に収容したウェハを乾燥(例えば自然乾燥)させ易くなるため好ましい。
【0035】
前記容器は、上部にシリコンウェハの出し入れをする開口部を有する容器本体と、この開口部に着脱可能に取り付けられ、前記開口部に取り付けた際、前記容器本体の内壁空間内を密閉しない上蓋とを備えることが更に好ましい。
【0036】
図3は、第5工程で用いられる容器及びその容器の内壁空間内にシリコンウェハを設置した状態の他の態様を示す概念図であり、(a)は、容器の上面図を、(b)は、(a)をA−A’線で切ったときの断面図を、(c)は、(a)をB−B’線で切ったときの断面図をそれぞれ示す。
【0037】
図3に示すように前記容器(容器本体)2は、上部2bにシリコンウェハの出し入れをする開口部を有し、更にこの開口部に設置可能に設けられ、この開口部に設置した際には、前記容器2の内壁空間内を密閉しない空隙4aが形成される上蓋4を備え、更に、前記上蓋4は、1〜30kVの電位をもつポリプロピレンまたは石英から作られることが好ましい。
【0038】
このように、シリコンウェハの出し入れをする上部2bの開口部においても、上述したような上蓋4を設けることで、前記内部空間において概ね全方向に前記電位をもつポリプロピレンまたは石英を配置することができるため、より、ウェハ表面全体の負電荷を容器に向けて均一に引き付け、ウェハ表面の負電荷を安定化でき、さらに表面の負電荷をウェハ面内で均一化できる。
【0039】
前記容器及び上蓋の電位が1kV未満である場合には、ウェハ表面全体の負電荷を容器に向けて引き付ける力が弱くなるため、ウェハ表面の負電荷を安定化させ、さらに表面の負電荷をウェハ面内で均一化できない場合がある。前記電位が30kVを超える場合には、静電放電現象が生じ易く、扱いが困難になる。
【0040】
前記容器及び上蓋に電位を印加する方法は、前記容器及び上蓋に外部電極を接続し、電位を印加する方法で行うことができる。また、前記容器及び上蓋の電位の測定は、非接触電位計で行うことができる。
【0041】
また、容器又は上蓋の材質をポリプロピレンまたは石英から選択することにより、前記電位を安定的に保持することが可能になる。なお、コスト面や作業性(重さ等)の観点から前記容器及び上蓋は、ポリプロピレンから作ることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定解釈されるものではない。
【0043】
(実施例1)
図4に示すフローチャートに従ってn型シリコンウェハの前処理を行った。この前処理で用いるアルミニウム標準液および過酸化水素水を含む温度50℃の加温処理液は、次の方法で調製した。70℃まで加熱した純水に濃度30%の過酸化水素水を水:過酸化水素水の体積比で13:1になるように添加した。このとき、過酸化水素水の添加により温度が50℃前後に低下した。つづいて、この過酸化水素水の水溶液にアルミニウム標準液(硝酸アルミニウム)を1ppmの濃度になるように添加して温度50℃の前記加温処理液を調製した。
【0044】
最初に、抵抗率が23〜32Ωcmのn型シリコンウェハを3枚準備した。ステップS1で、各ウェハを5%濃度のフッ酸水溶液に15分間浸漬して、ウェハ表面の酸化膜を除去した。各ウェハの表面が疎水性になっていることを確認した後、ステップS2で、各ウェハを純水で10分間以上洗浄した。
【0045】
ステップS3で、各ウェハを前記温度50℃の加温処理液に30分間浸漬した。加温処理液で処理した後の各ウェハの表面にケミカル酸化膜が一様に形成されていることを確認した後、ステップS4で、ウェハを純水で10分間以上洗浄した。
【0046】
ステップS5で、各ウェハを2kVの電位を持つポリプロピレン製の容器(容器本体と蓋体からなる)に収納し、自然乾燥した。すなわち、図5に示すように洗浄後の3枚のウェハ1a,1b,1cをポリプロピレン製の容器本体2の上部2bから容器本体2内に垂直に立てて収納した後、上部2bにポリプロピレン製の蓋体4を該上部2bの開口部を全て密閉せず、僅かに隙間が生じるように設置し、前記電位の下で自然乾燥した。
【0047】
ステップS6で、自然乾燥後の各ウェハの少数キャリアの拡散長を測定した。すなわち、表面にケミカル酸化膜が生成した自然乾燥後のシリコンウェハを金属電極からなる試料台上に載せ、シリコンウェハの上方に表裏に透明電極を有するガラス板からなる測定電極を適当な間隔をあけて対向配置させた。測定電極の上方からウェハの表面にハロゲンランプの光源から光度1012〜1014フォトン/cm2・sec、波長1.004〜0.8eVの光ビームをパルス状に照射した。ウェハへの光ビームの照射で透明電極と金属電極との間に発生する表面光起電圧をSPV信号強度として測定した。
【0048】
また、前記SPV信号強度から求められるSPV値に基づいて拡散長を計算した。SPV値(ΔV)と照射光の侵入深さ(α−1)には、次の関係がある。
【0049】
Φeff/ΔV=A(S+D/L)(1+α−1*1/L)
拡散長の測定時、ΦeffおよびA(S+D/L)の部分は一定と考えてよいので、各波長の侵入深さ(α−1)に対して、Φeff/ΔVをプロットすると、Φeff/ΔV=0となるα−1の値が拡散長Lとなる。
【0050】
このような方法により3枚のシリコンウェハにおける面内の複数個所でのSPV信号強度および少数キャリア拡散長を求め、各ウェハの面内での少数キャリア拡散長と共にSPV信号強度の分布(A,B,C)として図7に示す。
【0051】
(比較例1)
3枚の抵抗率が23〜32Ωcmのn型シリコンウェハを実施例1と同様なステップ1〜4の処理を行った後、図6に示すように洗浄後の3枚のシリコンウェハ11a,11b,11cをポリプロピレン製の開開放型カセットケース(電位ゼロ)12内に垂直に立てて収納した。その後、開放型カセットケースをクリーンルームの環境下に置いて各ウェハを自然乾燥した。
【0052】
自然乾燥後の各ウェハを実施例1と同様な方法でSPV強度信号および少数キャリア拡散長を求め、各ウェハの面内での少数キャリア拡散長と共にSPV信号強度の分布(A,B,C)として図8に示す。
【0053】
図7から明らかなように2kVの電位を持つポリプロピレン製の容器内で洗浄後のシリコンウェハを自然乾燥して前処理を行った実施例1では、ウェハ面内での少数キャリア拡散長およびSPV信号強度が一様で、かつ3枚のウェハ間の少数キャリア拡散長およびSPV信号強度も一様であることが分かる。
【0054】
これに対し、洗浄後のシリコンウェハを電位ゼロのポリプロピレン製の開放型カセットケース内にセットし、クリーンルームの環境下で自然乾燥して前処理を行った比較例1では、図8に示すようにウェハ面内での少数キャリア拡散長およびSPV信号強度のばらつきが大きく、かつ3枚のウェハ間の少数キャリア拡散長およびSPV信号強度のばらつきも大きくなることが分かる。
【0055】
したがって、本発明のn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法によれば少数キャリアの拡散長を高精度かつ再現性よく測定できる。
【符号の説明】
【0056】
1a,1b,1c…シリコンウェハ、2…容器、3…内壁空間、4…蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面光起電力法を用いて抵抗率0.1〜3000Ωcmのn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長を測定するための前処理方法であって、
前記ウェハをフッ酸水溶液で処理する工程と、
前記フッ酸水溶液での処理後の前記ウェハを純水で洗浄する工程と、
洗浄後の前記ウェハを金属塩および過酸化水素を含む加温処理液で処理する工程と、
前記加温処理液で処理後の前記ウェハを純水で洗浄する工程と、
洗浄後の前記ウェハを1〜30kVの電位をもつポリプロピレンまたは石英から作られる凹形状を有する容器の密閉されていない内壁空間内に前記ウエハ全体が入るように設置して乾燥する工程と
を含むことを特徴とするn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法。
【請求項2】
前記容器は、上部にシリコンウェハの出し入れをする開口部を有する容器本体と、この開口部に設置可能に設けられ、前記開口部に設置した際には、前記容器本体の内壁空間内を密閉しない上蓋とを備え、前記上蓋は、1〜30kVの電位をもつポリプロピレンまたは石英から作られることを特徴とする請求項1記載のn型シリコンウェハの少数キャリア拡散長測定の前処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−51330(P2013−51330A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189094(P2011−189094)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(312007423)コバレントシリコン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】