説明

p−アミノ安息香酸(PABA)によるメラニン形成及びメラノーマ転移の阻害

治療の必要のある哺乳動物に対してメラニン形成を阻害するための有効量のPABAを投与することを含む、メラニン形成の阻害方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年12月24日に出願された米国仮特許出願大60/436,394号に対する35 U.S.C. 119(e)の下での優先権の利益を享受する。この仮出願の前内容は、参考として完全にここに取り込まれる。
【0002】
この研究は、NIH/NCI交付ROI CA91645によって一部サポートされた。当該交付の観点に従って、米国政府は本発明に対して特定の権利を有するであろう。
【0003】
本発明は、パラ−アミノ安息香酸(PABA)を使用するメラニン形成の阻害、及び黒色ガンの治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
メラノーマ
ほとんどの先進国におけるメラノーマの発生率は、いずれかの他のガンのタイプよりも、過去50年にわたりより早く生じている(Houghton AN, (2002) Cancer Cell; 2: 275-278)。およそ45,000の新たなケースのメラノーマが、米国で毎年診断されており、その約20%は転移性疾患に付随して死亡しているであろう(Buzaid, AC. (2002) Crit Rev Ocol Hematol 44: 103-108)。進行したメラノーマの治療に対する予後は乏しく、患者の生存は疾患の予後のペースによって第一に支配されている(Buzaid, 上記参照)。外科的な介入は最も有効な治療のオプションであるが、それは疾患が早期の段階で診断及び治療される場合のみである(Molife R等 (2002) Crit Rev Oncol Hematol 44: 81-102)。それ故、メラノーマが早期の段階で診断されて外科的に除去されれば、生存のチャンスは大きい。しかしながら、退行と再発の危険が高いほど、疾患の進行の連続的な各段階は生存のチャンスの有意な下降を証明している(Molife等, 上記参照)。かくして、外科的な介入とは区別され、又は外科的な介入の効力を増大する、新規でより有効な治療方法に対する必要性が存在する。
【0005】
治療に対する臨床上の応答率は、メラノーマを有する患者において、他のガンを有する患者よりも典型的に低い。臨床試験は、化学療法並びに放射線治療の両者に対して、悪性のメラノーマは非常に耐性であることを示している。わずか約10%の永続的な応答率が、現在の治療形式に従って観察された(Flaherty LE等 (2002) Semin Oncol 29: 446-455)。以前に治療された患者における生化学的治療の評価は、6%の応答率を示した(Chapman等 (2002) Melanoma Res. 12: 381-387)。
【0006】
メラノーマに対する現存する治療プロトコールに対する治療上の応答の欠如は、その細胞性、生化学的、及び分子的起源に大きく依存する(Ichihasyhi N等 (2001) Br J Dermatol 144: 745-750; Heere-Ress等 (2002) Int J Cancer 99: 29-34; Sinha P等 (2000) Electrophoresis 21: 3048-3057)。メラノーマは非常に特定の細胞系列から生じる:それらはメラノサイトの悪性の変化の産物であり、メラノサイト自体は間葉神経冠細胞からもともと由来する。対照的にカルシノーマは、上皮細胞の悪性の変化から生じる。更に、メラノーマは性ホルモン依存性ではないのに対し、多くのカルシノーマは依存性である(例えば、アンドロゲン依存性前立腺ガン及びエストロゲン依存性乳ガン)。加えてメラノーマは、メラニン形成のプロセスを実施するのに対し、カルシノーマはこのプロセスをほとんど示さない。メラノーマの特徴的な特性の一つ以上が、現存する治療プロトコールに対するメラノーマの耐性を説明しているに違いない。
【0007】
メラニン形成
メラニン形成はメラニンの合成のプロセスであり、メラニンは細胞色素沈着に関与する。皮膚、毛嚢、内耳の血管条、及び眼の血管膜に位置するメラノサイトは、メラノーマについての起源の細胞でありメラニン形成を示す。メラニン形成は、アミノ酸L−チロシンのヒドロキシル化によって開始される伏在綱生化学的プロセスであり、前記ヒドロキシル化は、L−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)の形成を生じる。L−DOPAは次に、特定のメラノサイトカレン酵素、チロシナーゼの作用によりドーパクロムに変換される。更に酸化反応と還元反応により、最終的にドーパクロムはメラニンに変換される。
【0008】
研究により、メラニン形成が、放射線治療及び化学療法に対する色素沈着メラノーマ細胞の増大した耐性と関連していることが示されている(Kinnaert E等 (2000) Radiation Res 154: 497-502; Slominski A等 (1998) Anti-Cancer Res 18: 3709-3716)。かくしてこれらの治療は、転移性メラノーマに対して有効ではなくなる。メラニン形成をブロックする方法は、化学療法及び放射線治療の両者に対してメラノーマ細胞をより感受性にする臨床的な有用なアプローチを提供するであろう。
【0009】
研究により更に、メラニン形成の間で生産される中間体産物の多くが毒性効果を有することが示されている(Slominski A等 (1998), 上記参照; Riley PA (1991) Eur J Cancer 27: 1172-1177; Prota G等 (1994) Melanoma Res 4: 351-358)。メラニン形成の中間体は、例えば免疫抑制、線維症、及び突然変異生成に寄与することができる。それ故、メラニン形成の阻害は、例えば放射線または化学療法によって損傷されたメラノーマ細胞の殺傷といった、宿主の免疫系の関与を必要とするガンの治療の効力を増大するであろう。
【0010】
パラ−アミノ安息香酸
パラ−アミノ安息香酸(PABA)は、紫外線放射線を吸収する能力のため、サンスクリーンにおいて一般的に使用されている。PABAはまた、結合組織疾患(例えば強皮症;皮膚筋炎)の治療のため臨床試験において使用されており、リウマチ熱の治療のためサリチラートと組み合わせて使用されている。米国特許第6,368,598号('598特許)は、前立腺ガンの治療のための薬剤複合体において、結合基の必須ではない一部としてのPABAの使用を示唆した。'598特許に示されているように、PABAの機能は、企図された治療作用の部位で存在する酵素の作用によって、薬剤複合体の細胞毒性治療部分から分離している残余基として作用することである。しかしながら、PABAが、いずれかの抗腫瘍活性または前立腺または他のタイプのガンに対する他の治療機能を有することについては示唆されていない。Holtによれば、PABAはメトトレキセートレベル、活性、及び副作用を増大し得る(Holt GA (1998) Food & Drug Interactions. Chicago: Precept Press, 170)。
【0011】
PABAのメチル化誘導体であるパラ−アミノメチル安息香酸(PAMBA)は、ハムスターにおける移植可能なメラノーマ転移物の侵襲性を減少するためのプロテイナーゼインヒビターとして有用であることが見出されている(Zbytniewski Z等 (1977) Arch Geschwulstforsch 47: 400-404)。PAMBAの作用は、細胞外プロテアーゼによるタンパク質溶解を阻害し、かくしてガン細胞の侵襲性を減少する物理的バリアとして細胞外マトリックスを保存することである。しかしながら、侵襲性の減少は、確立された転移性腫瘍の増殖を阻害しない。それ故、PAMBAが、原発性または転移性メラノーマの増殖を阻害することについては示唆されていない。PAMBAがメラニン形成を阻害することについても、PAMBAがメラノーマの治療において有用であることが知られている、放射線の効果または化学療法試薬の活性を増大し得ることについても示唆されていない。
【非特許文献1】Houghton AN, (2002) Cancer Cell; 2: 275-278
【非特許文献2】Buzaid, AC. (2002) Crit Rev Ocol Hematol 44: 103-108
【非特許文献3】Molife R等 (2002) Crit Rev Oncol Hematol 44: 81-102
【非特許文献4】Flaherty LE等 (2002) Semin Oncol 29: 446-455
【非特許文献5】Chapman等 (2002) Melanoma Res. 12: 381-387
【非特許文献6】Ichihasyhi N等 (2001) Br J Dermatol 144: 745-750
【非特許文献7】Heere-Ress等 (2002) Int J Cancer 99: 29-34
【非特許文献8】Sinha P等 (2000) Electrophoresis 21: 3048-3057
【非特許文献9】Kinnaert E等 (2000) Radiation Res 154: 497-502
【非特許文献10】Slominski A等 (1998) Anti-Cancer Res 18: 3709-3716
【非特許文献11】Riley PA (1991) Eur J Cancer 27: 1172-1177
【非特許文献12】Prota G等 (1994) Melanoma Res 4: 351-358
【非特許文献13】Holt GA (1998) Food & Drug Interactions. Chicago: Precept Press, 170
【非特許文献14】Zbytniewski Z等 (1977) Arch Geschwulstforsch 47: 400-404
【特許文献1】米国特許第6,368,598号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、原発性及び転移性メラノーマは、現存する治療では治療するのが依然として困難である。それ故、これらの疾患に対する新規で有効な治療に対する必要性が継続して存在する。PABAがメラニン形成の強力なインヒビターとして作用し、単独で、または化学療法及び放射線のような他の抗ガン形式と組み合わせて投与された場合、有効にメラノーマを治療するために使用できることが驚くべきことに発見された。メラノーマは他の皮膚ガンを含む他のガンとは異なる細胞起源を有するため、メラノーマは化学療法及び放射線のような治療に対して非常に耐性であることが知られていたため、且つin vitro及びin vivoでメラノーマ細胞増殖を阻害するPABAの濃度は肺カルシノーマーの増殖を促進する副作用を有することが見出されていたため、この発見は驚くべきものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、有効量のPABAを投与することによるメラニン形成を阻害する方法を提供する。特定の実施態様では、本発明は、有効量のPABAを投与することによる原発性及び転移性の黒色ガンの治療方法を提供する。前述のガンの治療では、PABAは、単一の治療剤として単独で投与されても良く、例えば放射線治療または一つ以上の更なる化学療法試薬を使用する化学療法のような、一つ以上の更なる治療と組み合わせて投与されても良い。一つ以上の実施態様では本発明は、PABA、カルボプラチン、及びパクリタキセルの組み合わせを投与することによる、転移性の悪性メラノーマの治療方法を提供する。
【0014】
PABAを使用する転移性の黒色ガンの治療は、いずれかのメカニズムによって、例えば黒色ガン細胞の増殖を妨げることによって、またはメラノーマ細胞の侵襲性を減少することによって、例えばプロテイナーゼ阻害によって達成されても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、メラニン形成を阻害し、哺乳動物における黒色ガンを治療するためのPABAの使用のための方法に関する。本発明の各種の特徴点では、PABAは、単独で、一つ以上の化学療法剤と組み合わせて、または放射線治療と組み合わせて投与できる。一つの実施態様では、PABAは、哺乳動物におけるメラノーマを治療するために、カルボプラチン及びパクリタキセルと組み合わせて投与される。
【0016】
本明細書において使用される用語は一般的に、本発明の文脈内で及び各用語が使用される特定の文脈において、当該技術分野における通常の意味を有する。特定の用語は、本発明の組成物及び方法、並びにそれらの作製及び使用方法を記載する際に、実施者に対して更なるガイドラインを与えるように以下に議論され、またはさもなければ本明細書で議論される。
【0017】
ここで使用される用語「黒色ガン」は、メラニン及び/またはメラノサイトが存在するガンを包含する。最も一般的な黒色ガンはメラノーマである。他の黒色ガンは、例えば幼児の黒色神経外胚葉腫瘍、黒色悪性末梢神経鞘腫瘍、黒色髄芽細胞腫、黒色神経鞘腫(neurilemoma)、黒色神経鞘腫(schwannoma)、髄膜黒色細胞腫、及び黒色上衣細胞腫を含む。
【0018】
ここで使用される用語、試薬の「有効量」は、病理的な、異常な、またはさもなければ非所望の状態と関連する少なくとも一つの症状を緩和するのに十分な量、そのような状態が発生または再発する可能性を防止または減少するのに十分な量、あるいはそのような状態の悪化を遅延するのに十分な量である。
【0019】
ここで使用される用語「メラニン形成」は、メラニンの合成のプロセスを意味し、それは例えばメラニンの化学的前駆体、当該プロセスの中間体、または当該プロセスの副産物と関連する全ての酵素的及び非酵素的反応を含む。
【0020】
ここで使用される用語「阻害」は、プロセスの作用または機能を減少、制限、またはブロックすることを意味する。
【0021】
ここで使用される用語「治療」または「処置」は、黒色ガンと関連する少なくとも一つの異常なまたは非所望の状態の減少または緩和を意味する。治療は例えば、黒色腫の増殖の速度または量の減少を生じても良い。治療はまた、黒色ガンの非所望の症状の減少または緩和を含む。前述のものは、黒色ガンの治療の単に非制限的な例である。他の意味及び黒色ガンを治療するための結果も、本発明によって包含される。
【0022】
ここで使用される用語「そのような治療の必要のある哺乳動物」は、メラニン合成または黒色ガンと関連する少なくとも一つの異常なまたは非所望の状態または疾患に罹患している哺乳動物を指す。
【0023】
用語「組み合わせて」は、二つ以上の治療を集合的に、または特定の系列に従って投与して、それらの所望の効果を生ずる治療方法を指す。
【0024】
用語「製薬学的に許容可能な」は、被験者に投与した際に、生理学的に寛容であり、典型的にアレルギーまたは同等の毒性(例えば胃の不調、めまい等)を生じない分子部分及び組成物を指す。好ましくは、及特にびワクチンがヒトに使用される場合、用語「製薬学的に許容可能な」は、調節機関(例えばU.S. Food and Drug Agency)によって承認されていること、または動物における使用のために一般的に認識されている調剤書に挙げられていることを意味しても良い。
【0025】
用語「再発性悪性メラノーマ」は、患者のガンがサイズにおいて巨大化し、または終結したガンの治療の後に転移性の拡散が生じた悪性のメラノーマを意味する。
【0026】
用語「非応答性悪性メラノーマ」は、ガンの治療が進行中である期間で、患者のガンのサイズが巨大化し、及び/または転移性の拡散が生じた悪性のメラノーマを意味する。
【0027】
PABAは、例えばSigma-Aldrich Chemical Co., St. Louis, MOから購入できる。
【0028】
メラニン形成の生合成経路は、L−チロシン及びL−DOPAを含む数多くの基質をヒドロキシル化するチロシナーゼ酵素の能力を含む複雑なプロセスである。このプロセスは最終的にメラニンの形成を導く。チロシンの存在下でのL−DOPAからのドーパクロムの形成を測定することを含む、チロシナーゼの活性を測定するin vitroのアッセイが開発されている(Heidcamp W (1995) Cell Biology Lab Manual, National Science Foundation)。L−チロシンとL−DOPAの両者は、PABAと同様な化学構造を有する。PABAはチロシナーゼに対する競合的な気質として作用し、かくしてメラニン形成を阻害するものと仮定された。
【0029】
本発明の一つの特徴点では、PABAは、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるメラニン形成を阻害するために使用される。阻害は10mg/日から20g/日のPABAの投与によって得られて良いがこれは制限的なものではない。好ましくはPABAは、20mg/日から12g/日の量で投与される。
【0030】
本発明の別の特徴点では、PABAは、哺乳動物、好ましくはヒトにおける黒色ガンを治療するために使用される。治療は、10mg/日から20g/日のPABAの投与を含んで良いがこれに制限されない。好ましくはPABAは、20mg/日から12g/日の量で投与される。
【0031】
本発明の別の特徴点では、有効量のPABAは、メラノーマを治療するために放射線治療と組み合わされて投与される。治療は、10mg/日から20g/日のPABAの投与を含んで良いがこれに制限されない。好ましくはPABAは、20mg/日から12g/日の量で投与される。好ましくは放射線は、1cGyから100Gyの量で投与される。より好ましくは放射線は、2cGyから20Gyの量で投与される。
【0032】
本発明の更なる特徴点では、有効量のPABAは、メラノーマの治療において使用が知られている一つ以上の化学療法試薬と組み合わされて投与される。治療は、10mg/日から20g/日のPABAの投与を含んで良いがこれに制限されない。好ましくはPABAは、20mg/日から12g/日の量で投与される。更に好ましくは、化学療法試薬は、白金錯体、ポドフィロトキシン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロランブシル、ビスルファン、ニトロスウレア、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、ドクソルビシン、Doxil(塩酸ドクソルビシンリポソーム注射)、Ellence(塩酸エピルビシン)、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド、タモキシフェン、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、トランスプラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、PS−341として以前に知られていた)、ジカルビジド、a−インターフェロン(Intron A)、Genasense G3139(Bc12アンチセンスオリゴヌクレオチド)、Gemzar(塩酸ゲンシタビン)、Xeloda(カペシタビン:5’−デオキシ−5−フルオロ−N−[(ペンチルオキシ)カルボニル]−シチジン)、エピタロンA及びB、オキサリプラチン、EGFRチロシンキナーゼのインヒビター(例えばOSI−774)、C225、Herceptin(トラスツザマブ)、Rituxan(リツキシマブ)、Proleukin(アルデスリューキン)、Photofrin(プロフィマーナトリウム)、Ontak(デニリューキンジフィトックス)、Novantrone(塩酸マイトキサントロン)、Nolvadex(クエン酸タモキシフェン)、Neupogen(フィルグラスチン)、Mylotart(ゲムツブマズオゾガミシン)、Hycamtin(塩酸トポテカン)、Glecvec(イマチニブメシラート)、Femara(レトロゾール)、Fareston(クエン酸トレミフェン)、Etopophos(リン酸エトポシド)、Ethyol(アミフォスチン)、Camptosar(塩酸イリノテカン)、Campath(アレムツブマブ)、Busulfex(ブスルファン)、Blenoxane(硫酸ブレオマイシン)、Aromasin(エクスメスタン)、Arimidex(アナストロゾール)、Taxotere(ドセタキセル)、Temodar(テモゾロミド)、及びTrisenox(アレセニックトリオキシド)を含む群から選択される。
【0033】
より好ましくは、選択される一つ以上の化学療法試薬は、パクリタキセル(Taxol(登録商標)、Bristol-Meyers Squibb Co., Printceton, New Jerseyから入手可能)及び/またはドセタキセル(Taxotere(登録商標)、Aventis Pharmaceuticals., Bridgewater, New Jerseyから入手可能)である。パクリタキセルは、チューブリンの結合を通じて微小管を安定化し、それは有糸分裂の停止を生ずる。本発明によれば、パクリタキセルは、当業者に周知の標準投与量で投与される。ドセタキセルは遊離微小管に結合し、有糸分裂の停止を生ずる。本発明によれば、ドセタキセルは、当業者に周知の標準投与量で投与される。
【0034】
カルボプラチン(Paraplatin(登録商標)、Bristol-Meyers Squibb Co., Princeton, New Jerseyから入手可能)は、セルサイクル非特異的な鎖内DNA架橋を生ずる白金配位化合物である。本発明によれば、カルボプラチンは、当業者に周知の標準投与量で投与される(Physician's Desk Reference, 第57版, 2003参照)。本発明によるカルボプラチンの投与量の決定方法の一つは、Jelliffe式から由来する見かけの糸球体濾過率(GFR)を使用して、Calvert式に従って時間で倍化される濃度の曲線の下部の標的領域(AUC)を適合させるための投与量計算を含む。Calvert式は以下の通りである:全投与量(mg)=(標的AUC)×(GFR+25)。この投与量決定方法の目的のため、GFRはクレアチンクリアランスと同等と考慮される。クレアチンクリアランス(Ccr)は、Jellife式によって見積もられる:Ccr(ml/分)={98−[0.8(年齢−20)]}÷Scr;年齢=20−80歳の患者の年齢、Scr=mg/dl単位の血清クレアチン。20歳未満の患者については、20で患者の実年齢を置換する。80歳より高齢の患者については、80で患者の実年齢を置換する。
【0035】
好ましい実施態様では、PABAは、カルボプラチン及びパクリタキセルと組み合わせて投与される。一つの実施態様では、PABAは、カルボプラチンの投与の前に5日間経口で2グラムの投与量で投与され、引き続き毎日全部で10日間継続される。カルボプラチンは、5ミリグラム/ミリリットル×分の標的AUCでCalvert式に従った投与量で、PABAの投与の第6日目に投与される。パクリタキセルは、PABAの治療の第6日目に静脈内に100ミリグラム/メーターの投与量で投与される。治療サイクルは、PABAの治療の第1日目に開始して、21日間で終わる。治療サイクルの間の間隔は、投与量制限毒性(「DLT」)が生じなければ11日間である。投与量制限毒性は、例えば造血毒性、吐き気/嘔吐、粘膜症、関節痛及び筋痛症、末梢神経障害、及び肝機能試験の異常を含む。
【0036】
本発明の別の実施態様では、PABA、カルボプラチン、及びパクリタキセルの組み合わせを、増大する投与量のパクリタキセルを含むレジームで投与する。一つのそのような実施態様では、カルボプラチンの投与の前に、5日間経口で2グラムの投与量でPABAで治療を開始し、全部で10日間毎日継続する。カルボプラチンは、5ミリグラム/ミリリットル×分の標的AUCでCalvert式に従って計算された投与量で、PABAの投与の第6日目に投与される。治療サイクルは、PABAの治療の第1日目に開始して、21日間で終わる。治療サイクルの間に引き続き、DLTの不存在下で、カルボプラチンの投与の前に、5日間経口で2グラムの投与量でPABAの投与で治療を開始し、全部で10日間毎日継続する。カルボプラチンは、5ミリグラム/ミリリットル×分の標的AUCでCalvert式に従って計算された投与量で、PABAの投与の第6日目に投与される。パクリタキセルは、PABAの治療の第6日目に静脈内に100ミリグラム/メーターの投与量で投与される。患者がDLTを示すことなくこの治療サイクルに寛容であれば、11日後に、カルボプラチンの投与の前に、5日間経口で2グラムの投与量でPABAで第三の治療を開始し、全部で10日間毎日継続する。カルボプラチンは、5ミリグラム/ミリリットル×分の標的AUCでCalvert式に従って計算された投与量で、PABAの投与の第6日目に投与される。パクリタキセルは、PABAの治療の第6日目に静脈内に125ミリグラム/メーターの投与量で投与される。患者がDLTを示すことなくこの治療サイクルに寛容であれば、11日後に、カルボプラチンの投与の前に、5日間経口で2グラムの投与量でPABAで第四の治療を開始し、全部で10日間毎日継続する。カルボプラチンは、5ミリグラム/ミリリットル×分の標的AUCでCalvert式に従って計算された投与量で、PABAの投与の第6日目に投与される。パクリタキセルは、PABAの治療の第6日目に静脈内に150ミリグラム/メーターの投与量で投与される。患者がDLTを示すことなくこの治療サイクルに寛容であれば、11日後に、カルボプラチンの投与の前に、5日間経口で2グラムの投与量でPABAで第五の治療を開始し、全部で10日間毎日継続する。カルボプラチンは、5ミリグラム/ミリリットル×分の標的AUCでCalvert式に従って計算された投与量で、PABAの投与の第6日目に投与される。パクリタキセルは、PABAの治療の第6日目に静脈内に175ミリグラム/メーターの投与量で投与される。
【0037】
製薬組成物
本発明の方法により患者に投与するために、PABAは製薬組成物に製剤化されて良い。製薬組成物は、製薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈液、香味料、甘味料、防腐剤、染料、バインダー、懸濁剤、分散剤、着色料、崩壊剤、希釈剤、皮膜形成剤、潤滑剤、可塑剤、食用油、または前述の二つ以上のいずれかの組み合わせといった添加剤を含んでも良い。
【0038】
適切な製薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈液は、エタノール;水;グリセロール;プロピレングリコール;アロエベラゲル;アラントイン;グリセリン;ビタミンA及びEオイル;鉱物オイル;PPG2ミリスチルプロピオナート;炭酸マグネシウム;リン酸カリウム;植物オイル;動物オイル;及びゾルケタールを含むが、これらに制限されない。
【0039】
適切なバインダーは、デンプン;ゼラチン;天然糖、例えばグルコース、スクロース、及びラクトース;トウモロコシ甘味料;天然及び合成ゴム、例えばアカシア、トラガカント、植物ゴム、及びアルギン酸アトリウム;カルボキシメチルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリエチレングリコール;ポビドン;ワックス等を含むが、これらに制限されない。
【0040】
適切な崩壊剤は、デンプン、例えばトウモロコシデンプン、メチルセルロース、アガー、ベントナイト、キサンタンゴム、ナトリウムデンプングリコラート、クロスポビドン等を含むがこれらの制限されない。
【0041】
適切な潤滑剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等を含むが、これらに制限されない。
【0042】
適切な懸濁剤は、ベントナイト、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、マイクロクリスタリンセルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、アガー−アガー及びトラガカント、または二つ以上のこれらの物質の混合物等を含むが、これらに制限されない。
【0043】
適切な分散懸濁剤は、合成及び天然ゴム、例えば植物ゴム、トラガカント、アカシア、アルギナート、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びゼラチンを含むが、これらに制限されない。
【0044】
適切な皮膜形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、及びポリメタクリラートを含むが、これらに制限されない。
【0045】
適切な可塑剤は、各種の分子量(例えば200−8000Da)のポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールを含むが、これらに制限されない。
【0046】
適切な着色剤は、酸化鉄、二酸化チタン、天然及び合成レーキを含むが、これらに制限されない。
【0047】
適切な食用油は、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、及びピーナッツ油を含むが、これらに制限されない。
【0048】
更なる添加剤の例として、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、リン酸二カルシウム、及びポリデキストロースが含まれるが、これらに制限されない。
【0049】
単位投与量形態
製薬組成物は、単位投与量形態、例えば錠剤、丸薬、硬いまたはやわらかいシェルカプセル、カプレット、ボーラス、パウダー、顆粒、滅菌非経口溶液、滅菌非経口懸濁物、滅菌非経口エマルション、エリキシル、チンキ剤、計量エアゾールまたは液体スプレー、ドロップ、アンプル、自動注入装置、または座薬として製剤化されて良い。単位投与量形態は、経口、非経口、鼻腔内、舌下、または直腸投与のために、あるいは吸入または通気、経皮的パッチ、及び凍結乾燥組成物のために使用されて良い。一般的に、活性成分の全身性の利用可能性を生じる活性成分のいずれかの送達が、本発明の実施において使用できる。好ましくは単位投与量形態は経口投与量形態であり、最も好ましくは固体の経口投与量形態であり、それ故好ましい投与量形態は錠剤、丸薬、カプレット、及びカプセルである。非経口の調製物(例えば、生理食塩水中の注射可能な調製物、及びパウダージェットシステムのための調製物)は、本発明の別の実施態様を含む。
【0050】
固体の単位投与量形態は、製薬学的に許容可能なキャリア及び前述のいずれかの他の所望の添加剤と、本発明の活性剤とを混合することによって調製されて良い。混合物は典型的に、本発明の活性剤、キャリア、及びいずれかの他の所望の添加剤の均一な混合物が形成されるまで、即ち活性剤が組成物中に完全に分散するまで混合される。この場合、前記組成物は、乾燥または湿潤顆粒として形成できる。
【0051】
所定量のPABAを有する投与量形態は、当該技術分野で周知の方法を使用して、既知の量のPABAを有する組成物で開始して製剤化されて良い。好ましい実施態様では、投与量形態は、既知の量のPABAを含む組成物を混合することによって得られる。
【0052】
投与量形態は、例えば「中間的な放出」の投与量形態として製剤化できる。「中間的な放出」の投与量形態は典型的に、薬剤溶解試験、例えばU.S. Pharmacopeiaスタンダード<711>で試験した際に、30-60分以内に少なくとも70%-90%の活性成分を放出する錠剤として製剤化される。好ましい実施態様では、中間的な投与量形態は、45分間で75%の活性成分を放出する。
【0053】
投与量形態は、例えば「制御放出」投与量形態として製剤化できる。「制御」、「持続」、「伸張」、または「時間放出」投与量形態は、活性剤が、一定期間に亘り確認できる調節可能な速度で送達ビヒクルから放出される場合に、生ずる活性製剤送達のタイプを記載する同等な用語であり、前記一定期間とは一般的に、分、時、日のオーダーであり、消化管内に侵入した際に、または胃酸液と接触した際に、即座に分散するというよりはむしろ、典型的に約60分から約3日間の範囲で分散する。制御放出において送達速度に影響する因子は、粒径、組成、多孔性、電荷構造、及び送達ビヒクルと活性成分の水和の度合い、環境(送達ビヒクルの内側または外側のいずれか)の酸性度、及び生理学的環境、即ち消化管に沿った特定の位置における活性剤の可溶性を含む。制御放出形態の溶解試験についての典型的なパラメータは、U.S. Pharmacopeiaスタンダード<724>に見出される。
【0054】
投与量形態はまた、複相段階で活性剤を送達し、それによって活性成分の第一の分画が第一の速度で放出され、少なくとも活性成分の第二の分画が第二の速度で放出されるように製剤化できる。好ましい実施態様では、投与量形態は、活性成分のある分画が中間的な放出の投与量形態のため前述のような速度で送達される第一の「中間的な放出相」と、残りの活性成分が制御放出投与量形態のため前述のような制御された持続態様で放出される第二の「制御された持続放出」とを含む、二相態様で活性剤を送達するように製剤化できる。
【0055】
錠剤または丸薬は、時間放出及び制御放出の単位投与量形態のような、遅延した及び/または長期化した作用を有する単位投与量形態を形成する用に、被覆またはさもなければ複合化できる。例えば錠剤または丸薬は、内部投与量区画と外部投与量区画を含むことができ、後者は層の形態で存在しまたは前者を覆っている。二つの区画は、胃における崩壊に抗するように機能し、内部区画を十二指腸内に完全なまま通過させる、または放出を遅延させる腸溶性層によって分離できる。
【0056】
活性剤の放出を制御するための生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロ−ピラン、ポリシアノアクリラート、及びヒドロゲルの架橋化または両親媒性ブロックコポリマーを含むがこれらに制限されない。
【0057】
液体投与量形態については、活性物質またはその生理学的に許容可能な塩は、任意に通常使用される物質、例えば可溶化剤、乳化剤、または他の助剤と共に、溶液、懸濁物、またはエマルションの形態にされる。活性な組み合わせ及び対応する生理学的に許容可能な塩のための溶媒は、水、生理食塩水溶液、またはアルコール、例えばエタノール、プロパンジオール、またはグリセロールを含むがこれらに制限されない。更に、グルコースはマンニトール溶液のような糖溶液が使用されて良い。更に挙げられた各種の溶媒の混合物が本発明で使用されて良い。
【0058】
経皮的投与量形態もまた、本発明によって企図される。経皮的形態は、流体貯蔵庫または薬剤含有接着性マトリックスシステムのいずれかを使用する拡散態様経皮的システム(経皮的パッチ)であっても良い。他の経皮的投与量形態は、局所ゲル、ローション、軟膏、経粘膜的システム及び装置、並びにイオン伝導性(電気的拡散)送達システムを含むがこれらに制限されない。経皮的投与量形態は、本発明の活性剤の時間放出及び制御放出のために使用されて良い。
【0059】
全身的に投与するための、特に注射による投与のための本発明の製薬組成物及び単位投与量形態は典型的に、前述のような製薬学的に許容可能なキャリアを含む。好ましい液体キャリアは植物オイルである。固体キャリアの例は、ラクトン、石膏、スクロース、シクロデキストリン、タルク、アガー、ペクチン、アカシア、ステアリン酸及びセルロースの低級アルキルエーテル、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タルカム、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、ラクトース、ゴム等である、注射は例えば、腫瘍内、静脈内、包膜内、筋肉内、気管内、または皮下であって良い。静脈内注射が好ましい。
【0060】
活性剤はまた、小さいユニラメラベシクル、大きいユニラメラベシクル、及びマルチラメラベシクルのようなリポソーム送達システムの形態で投与できる。リポソームは、各種のホスホリピド、例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンから形成できる。
【0061】
本発明の製薬組成物はまた、標的化可能な薬剤キャリアとして可溶性ポリマーと結合できる。そのようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、及びパルミトイル基で置換されたポリエチルエネオキシデオポリリジンを含むがこれらに制限されない。
【0062】
投与
本発明の製薬組成物または単位投与量形態は、各種の経路、例えば静脈内、気管内、皮下、経口、腫瘍内、粘膜、非経口、口腔内、舌下、眼内、肺内、経粘膜的、経皮的、及び筋肉内によって投与されて良い、単位投与量形態はまた、適切な鼻孔内ビヒクルの局所使用を介して鼻孔内に投与されても良く、または当業者に既知の経皮的皮膚パッチの形態のものを使用して経皮的経路を介して投与されても良い。
【0063】
本発明の製薬組成物または単位投与量形態は、ガンの治療の必要のある哺乳動物、好ましくはヒトに投与されて良い。本発明の製薬組成物または単位投与量形態は、最適な活性を得る一方で、特定の患者に対する毒性または副作用を最小化するために、前述のガイドラインに照らして通常の試験によって規定された投与量及び投与摂生によって投与されて良い。しかしながらそのような治療摂生の細かい修正は、本明細書に開示されたガイドラインに照らして常用である。
【0064】
本発明の組成物の投与量は、存在している疾患状態、患者の病状、体重、性別、及び年齢、並びに投与の態様のような各種の因子によって変化してよい。経口投与については、製薬組成物は、記録されたまたは記録されていない固体単位投与量形態の形態で提供できる。
【0065】
製薬組成物または単位投与量形態は単一の日々の投与量で投与されても良く、または全部の日々の投与量は複数の分割された投与量で投与されても良い。更に、他の活性剤の共投与または連続投与が所望されて良い。本発明の製薬組成物は、好ましくはガンの治療のためのいずれかの既知の薬剤治療と組み合わせて良い。
【0066】
組み合わせ治療のため、本発明の製薬PABA組成物と他の活性剤(類)(例えば化学療法試薬(類))は、最適な投与量の組み合わせと投与摂氏が達成されるまで、最初に別個の投与量として適用されて良い。それゆえ患者は、その特定の病状のための適切な投与量に対して決定されて良い。それぞれの化合物の適切な投与量が、不利な副作用なく所望の効果を達成されると決定された後、患者は、製薬PABA組成物と他の活性剤(類)の適切な投与量を含む単一の投与量形態にスイッチされて良く、または二重(または複数)の投与量形態で継続されて良い。
【0067】
本発明の組み合わせ治療を利用する正確な投与量及び投与摂生は、患者の種族、人種、年齢、体重、性別、及び医学的状態;投与経路;患者の腎及び肝機能;患者の治療歴;及び患者の応答性を含む各種の因子に従って選択される。毒性なく効力を得る範囲内の化合物の濃度を達成する最適な精度は、標的部位に対する薬剤の利用可能性の速度論に基づく摂生を必要とする。これは、薬剤の吸収、崩壊、代謝、排除、及び投与量摂生に対する患者の応答性を含む。しかしながらそのような治療摂生の細かい修正は、本明細書に開示されたガイドラインに照らして常用である。
【実施例】
【0068】
実施例1−PABAはin vitroで培養されたB16メラノーマ細胞におけるメラニン分泌を抑制する
DMEM培地(例えばLife Technologies, Inc., Rockville MDから入手可能)における黒色B16メラノーマ細胞の増殖は、分泌メラニンの蓄積による赤色から褐色の色の変化を生じた。RPMI培地(例えばLife Technologies, Inc., Rockville MDから入手可能)における黒色B16メラノーマ細胞の増殖は、色の変化を生じなかった。RPMI培地は、メラニン分泌の阻害により赤色を維持した。DMEMに存在しないRPMIにおける主要な成分の一つはPABAである。B16細胞からのメラニン分泌に対するPABAの効果を評価するために、培地のミリリットル当たり0.1mgのPABAで、RPMIで見出されるものと同じ濃度に達するように、DMEM培養培地にPABAを添加した。7日間PABAを補ったDMEM培地で細胞を増殖させた。PABAを補った培地は赤色を維持する一方、補っていない培地は褐色となった。これらの結果は、PABAがメラニンの形成及び/または分泌を阻害することを示唆する。
【0069】
実施例2−メラニン合成及び分泌の時間及び濃度依存性の阻害
B16メラノーマ細胞のメラニン分泌に対するPABAの効果を更に分析するために、DMEMで培養されたB16メラノーマ細胞に対して0.5mg/日及び1.0mg/日の濃度でPABAを添加した。ついで、405nm及び660nmの波長で吸光度を測定することによって、メラニン含量について培養培地のサンプルを分析した(Kowalczuk C等, (2001) Inter J Rad Biol 77: 883-890)。PABAの添加は、メラニン分泌の時間依存的及び濃度依存的な阻害を引き起こした(図1A及び1B)。
【0070】
実施例3−PABAはB16メラノーマ細胞内のメラニンの細胞内合成を抑制する
PABAがB16細胞におけるメラニンの細胞内合成を阻害するかを測定するために、0.1mg/mlのPABAの存在下または不存在下で、DMEMにおいて細胞を増殖させた。3週間の培養に引き続き、遠心分離によって細胞を回収した。ABAの不存在下で培養された細胞から得た細胞ペレットは通常のように黒色を呈し、メラニンの存在を示した。PABAの存在下で培養されたB16メラノーマ細胞はより明るい色を表し、メラニンの蓄積の減少を示した。これらの結果は、PABAがメラノーマ細胞内のメラニン合成及び/または蓄積を阻害することを示す。
【0071】
実施例4−PABAはチロシナーゼ活性量依存的に阻害する
PABAで処理された細胞で観察された細胞関連性メラニンの減少は、PABAがメラニン合成の生合成経路のある工程を阻害することを示唆した。チロシナーゼ活性に対するPABAの効果を、以前に公開された方法を使用してドーパクロムの形成を測定することによって評価した(Heidcamp W (1995), 上記参照)。L−DOPA(8.0mM)をクエン酸ナトリウムバッファーに再懸濁し、800Uの精製チロシナーゼを添加した。475nmの波長で混合物の光学密度を測定して、ドーパクロムの形成をモニターすることによってチロシナーゼ活性を測定した。PABAの効果を評価するために、PABAの存在下または不存在下で反応を実施した。コントロールとして、PABAの代わりにアデノシンの存在下で反応を実施した。結果は図2に示されている。PABAの添加は、ドーパクロム形成の量依存的な阻害を導いた。これらの結果は、PABAがチロシナーゼの強力なインヒビターであることを示し、PABAが細胞内のメラニン蓄積を阻害するメカニズムは、チロシナーゼの阻害であることを示唆する。
【0072】
実施例5−PABAはニワトリ胚モデルにおけるB16メラノーマ転移を阻害する
B16メラノーマの攻撃性及び侵襲性に対するPABAの効果を、ニワトリ胚モデルにおいて測定した(Brooks PC等, (1994) Cell 79: 1157-1164)。in vvivoでのB16実験的転移に対するPABAの効果を、メラノーマ転移の攻撃性及び侵襲性においてメラニン合成が演じる役割を測定するために評価した。1から3週間に亘り0.1mg/mlのPABAの存在下または不存在下で増殖したB16メラノーマ細胞を、12日齢のニワトリ胚に注射した。7日間のインキュベーション期間の最後で、胚を犠牲にし、転移性胚腫瘍病変の数を定量した。B16メラノーマ転移の時間依存的な阻害が、PABAの存在下で増殖したB16メラノーマ細胞について観察された(図3)。これらの結果は、PABAがin vivoで原発性でないメラノーマの増殖を阻害することを示す。
【0073】
実施例6−ニワトリ胚におけるB16メラノーマ腫瘍増殖に対するPABAの効果
in vivoでの固形腫瘍増殖に対するPABAの効果を、ニワトリ胚腫瘍増殖アッセイを使用して評価した(Petitclerc E等, (2000) J Biol Chem 275: 8051-8061)。B16メラノーマ細胞を、0.1mg/mlのPABAの存在下または不存在下で6週間増殖させた。細胞を回収し、各群から2.5×10の細胞を、10日齢のニワトリ胚の漿尿膜(CAM)にイノキュレートした。更に7日間胚を発達させた。7日間のインキュベーション期間の最後で、胚を犠牲にし、腫瘍を取り出して湿潤重量を測定した。PABAで処理されたB16メラノーマ細胞から形成された腫瘍は、非処理のB16メラノーマ細胞から由来する腫瘍より、平均で60%小さかった(図4)。これらの結果は、PABAでのB16メラノーマ細胞の処理が、in vivoで腫瘍増殖を阻害することを示す。
【0074】
実施例7−PABAはB16メラノーマ細胞に対する放射線の抗増殖効果を促進する
以前の研究により、メラノーマ細胞に存在する細胞内メラニンの量が、当該細胞の放射線感受性に強く関連することが示唆されている(Kinnaert E等, (2000) Radiation Res 154: 497-502)。かくしてメラニン合成またはメラニン形成をブロックすることは、メラニン細胞が放射線治療に対してはるかに感受性となることを引き起こすかもしれない。イオン化放射線の抗増殖効果に対するPABAの効果を試験するために、0.1mg/mlのPABAの存在下または不存在下で増殖したB16メラノーマ細胞を、10Gyのイオン化放射線の単一の分画投与量で処理した。3日間のインキュベーション期間にわたり、直接的な細胞カウントによる細胞増殖をモニターした。その結果、PABAの処理は、PABAを受けていない細胞と比較して、単一の分画投与量の放射線の抗増殖効果及び細胞毒性効果を増大することが示された(図5)。
【0075】
実施例8−PABAはヒト1424メラノーマ細胞に対する放射線の抗増殖効果を促進する
B16メラノーマ細胞で観察されたメラノーマに対するPABAの放射線促進効果を、着色化ヒトメラノーマ細胞系G−361(ATCCナンバーCRL-1424, (1978) Pediatr Res 12: 485)で観察した。ヒトG−361メラノーマ細胞は、B16メラノーマ細胞より放射線に耐性であり、それ故B16細胞と比較して増殖を阻害するためにより高投与量のイオン化放射線を必要とする。ヒトG−361メラノーマ細胞を、20Gyの放射線で単独で、または実施例7に記載されたように0.1mg/mlのPABAと組み合わせて処理した。単一投与量のイオン化放射線は、ヒトG−361メラノーマ細胞の増殖を有意に阻害した(図6)。比較として、PABAと放射線の組み合わせは、ヒトG−361メラノーマ細胞の増殖を完全に阻害した(図6)。これらの結果は、PABAと放射線の組み合わせが、放射線単独と比較して、抗増殖効果を促進することを確認する。
【0076】
実施例9−PABAはB16メラノーマ細胞に対するタクソールの抗増殖効果を促進する
化学療法試薬、タクソールの抗増殖効果を促進するPABAの能力を、B16メラノーマ細胞で試験した。0.1mg/mlのPABA及び/または10.0μMのパクリタキセル(タクソール)の存在下または不存在下で、DMEM培地において細胞を増殖させた。48時間のインキュベーション期間にわたり、直接的な細胞カウントにより細胞増殖をモニターした。パクリタキセルは、処理なしと比較してB16メラノーマ細胞増殖を有意に阻害した(図7)。PABAとタクソールの組み合わせ治療は、タクソール単独と比較して、細胞に対する抗増殖効果の促進を示した(図7)。これらの結果は、PABAがタクソールの抗腫瘍活性を促進することを示す。
【0077】
実施例10−ルイス肺カルシノーマ細胞の増殖に対するPABAの効果
カルシノーマ細胞に対するPABAの抗増殖効果を、ルイス肺カルシノーマ(LLC)細胞について試験した(Young MR等< (2003) Int J Cancer 103: 38-44)。0.1mg/mlのPABAの存在下または不存在下で、DMEM培地において細胞を増殖させた。48時間のインキュベーション期間に亘り、直接的な細胞カウントにより細胞増殖をモニターした。PABAの添加は、LLC細胞の増殖を増大した(図8)。メラノーマ細胞に対するPABAの効果と比較して、これらの結果は、PABAはカルシノーマ細胞の増殖を阻害するよりもむしろ促進することを示す。
【0078】
実施例11−ルイス肺カルシノーマ腫瘍増殖に対するPABAの効果
カルシノーマ腫瘍の増殖に対するPABAの効果を、ルイス肺カルシノーマ(LLC)腫瘍増殖アッセイを使用して試験した(Mauceri HJ等, (2002) Cancer Chemother Pharmacol 50: 412-418)。0.1mg/mlのPABAの存在下または不存在下で3週間、DMEM培地においてLLC細胞を増殖させた。細胞を回収し、各群から得られる2×10の細胞を、10日齢のニワトリ胚のCAMにおいてイノキュレートした。更に7日間肺を発達させた。7日間のインキュベーション期間の最後で、胚を犠牲にし、腫瘍を取り出して湿潤重量を測定した。PABAで処理されたLLC細胞から形成された腫瘍は、非処理のLLC細胞から由来する腫瘍より平均して有意に大きかった(図9)。メラノーマ腫瘍に対するPABAの効果と比較して、これらの結果は、PABAでのLLC細胞の処理は、カルシノーマ腫瘍増殖を阻害するよりもむしろ促進することを示す。
【0079】
実施例12−イオン化放射線でのメラノーマの処理に対するPABAのin vivoの効果
PABAがin vivoで腫瘍増殖を阻害するイオン化放射線の効果を促進するかどうかを測定するために、ニワトリ胚腫瘍増殖アッセイ(Petitclerc E等, (2000) J Biol Chem 275: 8051-8061)を使用した。4群のニワトリ胚を実験した。コントロール群はいずれの治療も受けず、第二群はPABA単独を受け、第三群はイオン化放射線単独を受け、第四群はPABAとイオン化放射線を受けた。各群5から10のニワトリ胚が存在した。
【0080】
前記群は以下の態様で作製された。PABAの不存在、または100μg/mlの濃度でのPABAの存在下で、増殖培地において14日間B16F10メラノーマ細胞を培養した。細胞を回収し、洗浄し、滅菌PBSに再懸濁した。B16F10メラノーマ細胞を、10日齢のニワトリ胚のCAMに移植し、それを少なくとも24時間インキュベートした。インキュベートしたニワトリ胚(PABAの不存在下で培養したものと、PABAの存在下で培養したもの)を、単一の分画投与量のイオン化放射線(5.0Gy)で処理した。腫瘍を切除し、切除された腫瘍の湿潤重量を測定することにより腫瘍増殖を評価した。
【0081】
図10に示されているように、PABA単独を受けた群と、放射線単独を受けた群は、コントロール群と比較して約75%の腫瘍増殖の阻害を示した。PABAと放射線の両者を受けた群は、コントロール群と比較して約90%の腫瘍増殖の阻害を示した。
【0082】
この実施例は、PABA単独と放射線治療の組み合わせたPABAが、in vivoモデルにおいてメラノーマ腫瘍増殖の有意な阻害を引き起こすことを示す。
【0083】
実施例13−メラノーマの治療のためのPABAとパクリタキセルのin vivo移植片実験
1×10のB16F10メラノーマ細胞(PABAの不存在下で培養された)を、Balb/cヌードマウスに皮下に移植した。50mg/kgの濃度でのPABAの腹膜内注射を、腫瘍細胞の移植後3日目で開始して毎日続けた。移植後4日目で開始して、いくつかのPABA注射マウスといくつかの非処理マウスに、20mg/kgの濃度でパクリタキセルの腹膜内注射を与え、それを第16日間の実験で一日おきに続けた。コントロール群は、PABAまたはパクリタキセルを受けなかった。4日ごとに、10の動物の群を第8日目で開始して腫瘍増殖評価のため使用した。
【0084】
第12日目で、コントロール群と比較して、パクリタキセル及びパクリタキセル+PABAの両者について、腫瘍増殖の減少が観察された(図11)。パクリタキセルとPABAの組み合わせは、613+/−282mmの平均腫瘍容量で、有意な腫瘍増殖遅延を示した。パクリタキセル単独では、1097+/−612mmの平均腫瘍容量を生じた。コントロール群についての平均腫瘍容量は1500mmを超えた。第16日目で、PABA+パクリタキセルの組み合わせ群は、コントロール群(p=0.016)及びパクリタキセル単独群(p=0.045)とは有意に異なった(適合しないデータについてのスチューデントt検定)。
【0085】
実施例14−メラノーマの治療に対するPABAと放射線のin vivo移植片実験
1×10のB16F10メラノーマ細胞(PABAの非存在下で培養した)を、Balb/cヌードマウスに皮下で移植した。50mg/kgの濃度でのPABAの腹膜内注射を、腫瘍細胞の移植後3日目で開始し毎日続けた。腫瘍細胞移植後第10日目で、マウスを9Gyの前投与量で一日おきに3Gyで照射するか、または全く照射しなかった。コントロール群はPABAまたは放射線を受けなかった。
【0086】
15日後に号物を犠牲にし、腫瘍を切除した。腫瘍を測定し、その容量を計算した。図12に示されるように、PABA単独はコントロールに比較して腫瘍増殖に対して最小の効果を有し(P>0.100)、イオン化放射線単独の分画化投与量はコントロールと比較して約60%まで腫瘍増殖を阻害し(P<0.04)、PABAと分画化イオン化放射線の組み合わせはコントロールと比較して約95%まで腫瘍増殖を阻害した(P<0.002)。
【0087】
この実施例は、PABAがメラノーマに対するイオン化放射線の腫瘍増殖阻害効果を促進することを示す。
【0088】
実施例15−カルボプラチン、パクリタキセル、及びPABAの組み合わせての、転移性悪性メラノーマの処理
56歳の女性が、1998年に悪性メラノーマと診断された。彼女の左脚の悪性メラノーマの大規模な外科的切除が、局所リンパ節切除と共に実施された。センチネルリンパ節(悪性メラノーマの領域からのリンパ流を最初に受け取るリンパ節)は、顕微鏡実験で悪性細胞ポジティブであったが、残りのリンパ節は悪性細胞についてネガティブであった。患者は当時アジュバント治療を断っていた。1999年に、患者は悪性左大腿部小節を形成し、それを摘出した。転移性疾患についてのワークアップはネガティブであった。患者はインターフェロンを使用するアジュバント治療に同意した。6ヶ月間のインターフェロン治療の間で、患者は二つの悪性皮下左大腿部小節を形成した。テモダール及びサリドマイドを使用する6ヶ月間の治療を実施した。一年間の疾患のない状態の後、複数の肝臓病変が通常のフォローアップCTスキャンで発見された。患者はテモダールを再開したが、ガンは進行を続けた。
【0089】
患者の治療をカルボプラチンに変更した。カルボプラチンの第二サイクルの間で、患者の直腸は貫通し、緊急の人工肛門が実施された。2002年12月の術後のCTスキャンにより過度の肝臓転移、腹膜インプラント(腹膜上の転移性病変を示す)、及び大きな腹膜後部と骨盤のリンパ節(これらのリンパ節に広がった転移を示す)が示された。
【0090】
カルボプラチン、パクリタキセル、及びPABAの組み合わせ治療を開始した。PABAは全部で10日間経口で2グラムの投与量で投与された。PABA投与の第6日目に、5mg/ml*分の標的AUGでCalvert式によって計算された投与量でカルボプラチンが投与された。パクリタキセルは100mg/mの投与量で静脈内で、PABA投与の第6日目に投与された。PABAの第一の投与の後21日目で治療サイクルは終結した。治療サイクルの間で11日間に引き続き、もう一度の同じ治療サイクルを開始した。3回の治療サイクルに引き続きCTスキャンを実施した。患者は有意な臨床上の改善を示し、彼女は2003年2月に仕事に復帰した。2003年3月に実施されたCTスキャンは、肝臓病変の完全な解消と、腹膜内の疾患の50%超の減少を示した。
【0091】
2003年8月、患者は人工肛門を元に戻すことを決意した(直腸の連続性を回復し、人工肛門を閉ざす手術)。カルボプラチン、パクリタキセル、及びPABAの組み合わせ治療を8週間停止した。手術の前のCTスキャンは、2003年3月のCTスキャンと比較して変化を示さなかった。
【0092】
この実施例は、カルボプラチン、パクリタキセル、及びPABAを使用する組み合わせ治療が、メラノーマが化学療法の完成の後に再発し、且つ化学療法の間で進行した患者において、転移性悪性メラノーマに対して有効であることを示す。
【0093】
本発明は、ここに記載された特定の実施態様によって範囲を制限されるものではない。ここに記載されたものに加えて本発明の各種の変更が、前述の記載及び添付の図面から当業者に明らかであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものと企図される。
【0094】
本願を通じて引用された全ての特許、特許出願、文献、手順等の完全な開示は、参考として完全にここに取り込まれる。定義の不一致の場合には本願が優先される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、B16メラノーマ細胞を単独でまたはPABAの存在下で培養したDMEM培地において分泌されたメラニン濃度に対するPABAの効果を示す図である。メラニン濃度は、405nmの波長での吸光度(A)及び660nmでの波長の吸光度(B)によって測定された。
【図2】図2は、PABAによるチロシナーゼ活性の阻害を示す図である。チロシナーゼ活性は、475nmの波長での吸光度を使用して、L−DOPAからドーパクロムの形成を測定することによって評価された。
【図3】図3は、ニワトリ肺におけるB16メラノーマ転移に対するPABAの効果を示す図である。メラノーマ転移の数は、犠牲にしたニワトリ胚から由来する肺に存在する転移性肺腫瘍病変の数を計数することによって評価された。
【図4】図4は、B16メラノーマ腫瘍増殖に対するPABAの効果を示す図である。
【図5】図5は、B16メラノーマ細胞増殖に対するPABAと10Gyのイオン化放射線の効果を示す図である。
【図6】図6は、ヒト1424メラノーマ細胞増殖に対するPABAの20Gyのイオン化放射線の効果を示す図である。細胞増殖は直接的な細胞カウントによって測定された。
【図7】図7は、B16メラノーマ細胞増殖に対するPABAとタクソールの効果を示す図である。細胞増殖は直接的な細胞カウントによって測定された。
【図8】図8は、ルイス肺カルシノーマ細胞増殖に対するPABAの効果を示す図である。
【図9】図9は、ルイス肺カルシノーマ腫瘍増殖に対するPABAの効果を示す図である。
【図10】図10は、ニワトリ胚のin vivo研究におけるイオン化放射線でのメラノーマの治療に対するPABAの効果を示す図である。
【図11】図11は、ヌード(免疫欠損)マウスのin vivo移植片研究におけるメラノーマの治療に対するPABAとパクリタキセルの効果を示す図である。
【図12】図12は、Balb/cマウスにおけるメラノーマの治療に対するPABAと放射線での組み合わせ治療の効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療の必要のある哺乳動物に対してメラニン形成を阻害するための有効量のPABAを投与することを含む、メラニン形成の阻害方法。
【請求項2】
前記哺乳動物に10mg/日から20g/日のPABAを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物に20mg/日から12g/日のPABAを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メラニン形成の阻害が黒色ガンを治療するために用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記黒色ガンがメラノーマである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物がヒトである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療の必要のある哺乳動物に対して黒色ガンを治療するための有効量のPABAを投与することを含む、黒色ガンの治療方法。
【請求項8】
前記哺乳動物がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記黒色ガンがメラニン形成を阻害することによって治療される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ガンがメラノーマである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記有効量が前記哺乳動物に10mg/日から20g/日のPABAを投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記有効量が前記哺乳動物に20mg/日から12g/日のPABAを投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
更に放射線治療を投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
1cGyから100Gyの放射線の投与量で前記放射線治療を投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
2cGyから20Gyの放射線の投与量で前記放射線治療を投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
更に一つ以上の化学療法試薬を投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記一つ以上の化学療法試薬が白金錯体、ポドフィロトキシン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロランブシル、ビスルファン、ニトロスウレア、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、ドクソルビシン、Doxil(塩酸ドクソルビシンリポソーム注射)、Ellence(塩酸エピルビシン)、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド、タモキシフェン、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、トランスプラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、PS−341として以前に知られていた)、ジカルビジド、a−インターフェロン(Intron A)、Genasense G3139(Bc12アンチセンスオリゴヌクレオチド)、Gemzar(塩酸ゲンシタビン)、Xeloda(カペシタビン:5’−デオキシ−5−フルオロ−N−[(ペンチルオキシ)カルボニル]−シチジン)、エピタロンA及びB、オキサリプラチン、EGFRチロシンキナーゼのインヒビター(例えばOSI−774)、C225、Herceptin(トラスツザマブ)、Rituxan(リツキシマブ)、Proleukin(アルデスリューキン)、Photofrin(プロフィマーナトリウム)、Ontak(デニリューキンジフィトックス)、Novantrone(塩酸マイトキサントロン)、Nolvadex(クエン酸タモキシフェン)、Neupogen(フィルグラスチン)、Mylotart(ゲムツブマズオゾガミシン)、Hycamtin(塩酸トポテカン)、Glecvec(イマチニブメシラート)、Femara(レトロゾール)、Fareston(クエン酸トレミフェン)、Etopophos(リン酸エトポシド)、Ethyol(アミフォスチン)、Camptosar(塩酸イリノテカン)、Campath(アレムツブマブ)、Busulfex(ブスルファン)、Blenoxane(硫酸ブレオマイシン)、Aromasin(エクスメスタン)、Arimidex(アナストロゾール)、Taxotere(ドセタキセル)、Temodar(テモゾロミド)、及びTrisenox(アレセニックトリオキシド)からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記選択される化学療法試薬の少なくとも一つがTaxolである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記選択される化学療法試薬の少なくとも一つがドセタキセルである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記化学療法試薬の少なくとも一つが白金配位化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記白金配位化合物がカルボプラチンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
カルボプラチン、パクリタキセル、及びPABAの組み合わせを投与することを含む、悪性メラノーマを有する患者の治療方法。
【請求項23】
前記悪性メラノーマを有する患者が転移性悪性メラノーマを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記悪性メラノーマを有する患者が再発性悪性メラノーマを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記悪性メラノーマを有する患者が非応答性悪性メラノーマを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
PABA及び製薬学的に許容可能なキャリアを含む経口投与量形態。
【請求項27】
PABA及び液体キャリアを含む非経口投与量形態。
【請求項28】
メラノーマに罹患している患者におけるPABAを投与することより必須になるメラノーマの治療のための経口投与量形態。
【請求項29】
メラノーマに罹患している患者におけるPABAを投与することより必須になるメラノーマの治療のための非経口投与量形態。
【請求項30】
有効量のPABAを投与することを含む、メラノーマに罹患しているヒトの治療方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2006−513223(P2006−513223A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564022(P2004−564022)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/US2003/041179
【国際公開番号】WO2004/058241
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(594032322)ニューヨーク・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】New York University
【Fターム(参考)】