説明

p53の状態と遺伝子発現プロファイルとの関連性に基づき、癌を分類し、予後を予測し、そして診断する方法、システム、およびアレイ

本発明は、p53の変異状態と、所定の遺伝子セットの遺伝子発現プロファイルとを関連付けることに基づく、患者で疾患感受性を予測するための方法、システム、および組成を提供する。いくつかの実施形態では、癌を分類し、予後を予測し、そして診断する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、患者で疾患感受性を予測し、癌腫を分類し、そして臨床結果の予後を予測するのに使用しうる、遺伝子発現を基にした分類指標を構築するための統計法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的に、患者で疾患感受性を予測するためのシステム、組成、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
50%を超えるヒト癌でp53内変異は生じると考えられ、その変異はDNA結合ドメインおよびトランス活性化ドメインで観察されることが非常に多く、腫瘍発生の抑制においてその転写活性が重要であることを強く示している。ほとんどの癌種とは異なり、孤発性乳癌では、p53変異は約20%の事例で観察されるに過ぎない。しかし、p53生殖細胞系列変異を有する個人(すなわちリフラウメニ症候群)で、乳癌が多く観察されることは、乳癌の発生においてp53の不活化が特に重要な役割を担い、そしておそらく同様にp53の機能を損ないうる他の因子も重要な役割を担うことを示唆している。
【0003】
例えば、近年、HOXA5転写因子の過剰メチル化と、その後の阻害に続いて、p53の転写活性化が減少することは、ありうるエピジェネティック機序として、乳癌でのp53の発現の減少に関係付けられてきた。両胸部腫瘍および他の癌種では、その産生物がp53の分解を促進するMDM2遺伝子の増幅と過剰発現が、発癌に関係付けられてきた。さらに、MDM2の負の制御因子であるp14ARF遺伝子の欠失およびエピジェネティックサイレンシングは、様々な癌種で観察されている。従って、乳癌の発癌におけるp53の欠陥は、潜在的にp53遺伝子変異以外のいくつかの機序から生じうる。
【0004】
p53の状態は、いくつかの癌種で、特に乳癌で、予後の予測に重要であるという証拠がある。乳癌では、p53変異は、他の危険因子とは無関係に、全体的な無病生存期間を低下させ、腫瘍が再発する頻度を上昇させる。近年の証拠は、p53の不活化が、おそらくp53依存性アポトーシスを喪失させることにより、胸部腫瘍をある種のDNA損傷性化学療法および内分泌療法に耐性にすることを示唆している。
【0005】
しかし、これらの研究の全てにおいて、p53突然変異体の予後予測の可能性および治療耐性度は、変異の種類または変異が生じる正確なドメインなど、突然変異体の特定の特質に多く依存していることが判明した。重要なことには、この後者の観察は、p53の全ての変異の影響が等しいわけではなく、つまりあるものは単に機能を喪失させるだけであり、またあるものは優性阻害効果(野生型p53のトランス優性の抑制または発癌機能獲得など)を有し、さらにあるものは、例えば、p53下流転写標的遺伝子の小サブセットだけを調節不全にして、部分的にのみ機能を喪失させるという従来の研究から得た知見に一致する。こうした理由で、どの一つのp53の状態の分子評価も、p53の完全な機能の絶対的指標になっていないと思われる。
【非特許文献1】Bergh, J.、 Norberg, T.、Sjogren, S.、Lindgren, A. および Holmberg, L. “Complete sequencing of the p53 gene provides prognostic information in breast cancer patients, particularly in relation to adjuvant systemic therapy and radiotherapy(p53遺伝子完全シーケンシングによる、乳癌患者で、特に、アジュバント全身治療および放射線治療と関連する予後予測情報の提供)” Nat Med 1, 1029-34 (1995)
【非特許文献2】Elston, C. W. および Ellis, I. O. “Pathological prognostic factors in breast cancer. I. The value of histological grade in breast cancer: experience from a large study with long-term follow-up(乳癌における病理学的予後予測要因.I 乳癌における組織学的等級値:長期追跡による大研究から得た経験)” Histopathology 19, 403-10 (1991)
【非特許文献3】Egyhazi, S.ら、”Proteinase K added to the extraction procedure markedly increases RNA yield from primary breast tumors for use in microarray studies(抽出手順に添加したプロテイナーゼKが、マイクロアレイ研究で使用する胸部原発腫瘍から得たRNAの収量を顕著に増大)” Clin Chem 50, 975-6(2004)
【非特許文献4】Cattoretti, G.、Rilke, F.、Andreola, S.、D'Amato, L. および Delia, D. “P53 expression in breast cancer(乳癌でのP53の発現)”. Int J Cancer. 41,178-83 (1988)
【非特許文献5】Isola, J.、Visakorpi, T.、Holli, K. および Xallioniemi, O. P. “Association of overexpression of tumor suppressor protein p53 with rapid cell proliferation and poor prognosis in node-negative breast cancer patients(リンパ節陰性乳癌患者における癌抑制タンパク質p53の過剰発現と迅速な細胞増殖および不十分な予後予測との関連性)” J Natl Cancer Inst 84, 1109-14. (1992)
【非特許文献6】Andersen, T. I.ら、”Prognostic significance of TP53 alterations in breast carcinoma(乳癌におけるTP53改変の予後予測の重要性).”Br J Cancer 68, 540-8 (1993)
【非特許文献7】Bhargava, V.ら、”The association of p53 immunopositivity with tumor proliferation and other prognostic indicators in breast cancer(乳癌におけるp53免疫陽性と、腫瘍増殖および他の予後予測指標との関連性)” Mod Pathol 7, 361-8 (1994)
【非特許文献8】Dudoit, S., Frilyand, J. および Speed, T. P. “Comparison of discrimination methods for the classification of tumors using gene expression data(遺伝子発現データを使用する、腫瘍を分類するための判別法比較)”、Journal of the American Statistical Association 97, 77-87. (2002)
【非特許文献9】Sorlie, T.ら、”Repeated observation of breast tumor subtypes in independent gene expression data sets(独立した遺伝子発現データセットにおける胸部腫瘍サブタイプの反復観察)” Proc Natl Acad Sci USA 100, 8418-23 (2003)
【非特許文献10】Chen, X.ら、”Gene expression patterns in human liver cancers(ヒト肝臓癌での遺伝子発現パターン)”、Mol Biol. Cell 13, 1929-39 (2002)
【非特許文献11】Chen, X.ら、”Gene expression patterns in human liver cancers(ヒト肝臓癌における遺伝子発現パターン)” Mol Biol Cell 13,1929-39 (2002)
【非特許文献12】Kel, A. E.ら、MATCH:A tool for searching transcription factor binding sites in DNA sequences (DNA配列中の転写因子結合部位を探索するツール)、Nucleic Acids Res 31, 3576-9 (2003)
【非特許文献13】el-Deiry, W. S., Kern, S. E., Pietenpol, J. A., Kinzler, K. W. および Vogelstein, B. “ Definition of a consensus binding site for p53(p53のコンセンサス結合部位定義)”、Nat Genet 1, 45-9 (1992)
【非特許文献14】Berns, E. M.ら、”Complete sequencing of TP53 predicts poor response to systemic therapy of advanced breast cancer(TP53の完全シーケンシングが、進行した乳癌の全身療法に対して不十分な応答を予測)”、Cancer Res 60, 2155-62 (2000)
【非特許文献15】van't Veer, L. J.ら、”Gene expression profiling predicts clinical outcome of breast cancer(遺伝子発現プロファイリングによって乳癌の臨床結果を予測する)” Nature 415, 530-6 (2002)
【非特許文献16】Forozan, F.ら、”Comparative genomic hybridization analysis of 38 breast cancer cell lines: a basis for interpreting complementary DNA microarray data(38乳癌細胞系統の比較ゲノムハイブリダイゼーション分析:相補的DNAマイクロアレイデータを解釈するための基本)”、Cancer Res 60, 4519-25 (2000)
【非特許文献17】Tanner, M. M.ら、”Frequent amplification of chromosomal region 20ql2-ql3 in ovarian cancer(卵巣癌中の染色体領域20q12−q13の高頻度増幅)”、Clin Cancer Res 6, 1833-9 (2000)
【非特許文献18】Krop, I. E.ら、”HIN-1, a putative cytokine highly expressed in normal but not cancerous mammary epithelial cells(HIN−1、正常であり癌ではない乳房上皮細胞中高度に発現した推定サイトカイン)”、Proc Natl Acad Sci USA 98, 9796-801(2001)
【非特許文献19】SetubalおよびMeidanisら、『Introduction to Coniputational Biology Methods (コンピューターによる生物学的方法の手引き)』(PWS Publishing Corripany, Boston, 1997)
【非特許文献20】Salzberg、Searles、Kasif、(編)、『Computational Methods in Molecular Biology(分子生物学におけるコンピューターによる方法)』、(Elsevier, Amsterdam, 1998)
【非特許文献21】RashidiおよびBuehlei、『Bioinformatics Basics: Application in Biological Science and Medicine(バイオインフォマティクスの基礎:生物科学および医薬における応用)』(CRC Press, London, 2000)
【非特許文献22】OueletteおよびBzevanis、『Bioinformatics: A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins(バイオインフォマティクス:遺伝子およびタンパク質分析用実用的ガイド)』(Wiley & Sons, Inc., 第2版,2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌の予後予測および診断を向上させる努力の中では、異なるp53変異が、一般的に細胞機能に、特に、遺伝子発現に及ぼす影響をより正しく評価する方法が必要とされている。
【0007】
概要
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明は、p53のin vivo機能性をより有用に測定する方法、システム、および組成を提供する。これらの方法、システム、および組成は、癌の分類、予後予測、および診断に使用しうる。
【0009】
本発明の一態様では、患者で疾患の結果を予測する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップを含む上記方法を提供する。
【0010】
本発明の別の態様では、後期乳癌患者で疾患の結果を予測する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および後期乳癌患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップであって、該遺伝子セットがGenBank受託番号:BG271923(配列番号22)、NM_002466(配列番号31)、D38553(配列番号11)、NM_000909(配列番号9)、NM_024843(配列番号1)、R73030(配列番号29)、NM_003226(配列番号28)、AW299538(配列番号5)、およびAI990465(配列番号25)からなる群から選択されるステップ含む方法を提供する。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、初期であり局所治療を受けた乳癌患者で臨床結果を予測する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および初期であり局所治療を受けた乳癌患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップであって、該遺伝子セットがGenBank受託番号:AI961235(配列番号23)、BG271923(配列番号22)、NM_002466(配列番号31)、BC001651(配列番号14)、D38553(配列番号11)、AK000345(配列番号26)、BC004504(配列番号8)、NM_000909(配列番号9)、NM_024843(配列番号1)、R73030(配列番号29)、AI435828(配列番号20)、AI810764(配列番号24)、AI922323(配列番号10)、NM_003225(配列番号32)、NM_003226(配列番号28)、AW299538(配列番号5)、NM_003462(配列番号16)、AI990465(配列番号25)、NM_004392(配列番号15)、NM_001267(配列番号7)、およびAI826437(配列番号3)からなる群から選択されるステップを含む上記方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様では、肝臓癌患者で臨床結果を予測する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および肝臓癌患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップであって、該遺伝子セットが、GenBank受託番号:NM_002466(配列番号31)、BC001651(配列番号14)、D38553(配列番号11)、NM_024843(配列番号1)、AI435828(配列番号20)、AI810764(配列番号24)、NM_003226(配列番号28)、およびAW299538(配列番号5)からなる群から選択されるステップを含む上記方法を提供する。
【0013】
本発明のさらに別の態様では、患者で疾患の結果を予測するための遺伝子群を同定する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、p53の変異状態を予測するために、差次的に発現した該遺伝子をその能力に従ってランク付けるステップ、突然変異体および野生型のp53遺伝子発現プロファイルを識別するために、ランク付けしたそれらの遺伝子を訓練するステップ、p53の変異状態を予測する能力がある遺伝子セットを含むp53分類指標を得るステップ、独立したデータセット中の該p53分類指標を確証するステップ、および患者で疾患の結果を予測するために、該p53分類指標の能力を評価するステップを含む上記方法を提供する。
【0014】
本発明の別の態様では、患者で疾患の結果を予測するためのコンピューターシステムであって、プロセッサとメモリとを有するコンピューターを備え、該メモリ上には、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップを実施するために、プロセッサに実行させる実行可能コードが保存されている上記コンピューターシステムを提供する。
【0015】
本発明のさらに別の態様ではp53の変異状態を予測する能力がある複数の遺伝子を固体支持体に固定させた、患者で疾患感受性を予測するための診断ツールを提供する。
【0016】
本発明のさらに別の態様では、固体支持体と、その上にディスプレイさせた、患者でp53の変異状態を予測する能力がある遺伝子に対応する核酸プローブとを有する、患者で疾患感受性を予測するための核酸アレイを提供する。
【0017】
これらの態様および実施形態を以下にさらに詳しく述べる。
【0018】
定義
本出願で使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、前後関係から明瞭にそうではないと指摘されない限り複数の意味を包含する。例えば、「(an)薬剤」という用語は、複数の薬剤を含み、それらの混合物も含む。
【0019】
個体は、ヒトだけには限らず、哺乳動物、無脊椎動物、植物、真菌、ウイルス、細菌を含むが、それだけには限らない他の生物、あるいは上記のいずれかに由来する一つまたは複数の細胞であってもよい。
【0020】
本明細書で使用する「comprising」という用語は、「including」を意味する。「comprising」という語の変形、例えば、「comprise」および「comprises」は、対応して変化した意味を持つ。
【0021】
本開示全体にわたって、本発明の様々な態様を一範囲型式で示す。範囲型式での記述は、単に便宜、簡潔さのためと理解すべきであり、本発明の範囲を柔軟性なく制限するものと解釈すべきではない。従って、範囲の記述は、具体的に開示した全ての可能な下位範囲およびその範囲内の個々の数値を含むと考えるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記述は、具体的に開示した下位範囲、例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6、およびその範囲内の個々の番号、例えば、1、2、3、4、5、および6を含むと考えるべきである。これは、範囲の幅に関わらず該当する。
【0022】
本明細書で使用する「組織学的等級」または「腫瘍等級」という用語は、Elston-Ellis系腫瘍等級法に従い分類した腫瘍特性をさす。
【0023】
本明細書で使用する「p53の状態」は、p53遺伝子の変異状態をさす。p53突然変異腫瘍は、p53遺伝子中に、そのタンパク質の機能を変化させる変異を含む。p53野生型腫瘍は、p53遺伝子中に検出可能な変異を含まない。
【0024】
本明細書で使用する「原病生存期間」、すなわちDSSは、試験の終着が、疾患、例えば、乳癌を原因とする死である生存評価である。
【0025】
本明細書で使用する「無病生存期間」、すなわちDFSは、終着が、腫瘍再発(すなわち、癌が、体内の他の部位への遠隔転移の結果として再発する)、または遠隔転移の形跡のない乳癌を原因とする死である生存評価である。
【0026】
本明細書で使用する「アレイ」は、意図的に作成した分子コレクションであり、このコレクションは合成または生合成により調製することができる。アレイ中の分子は、互いに同一または異なっていてよい。アレイは、様々な型式、例えば、可溶性分子ライブラリー、樹脂ビーズ、シリカチップ、または他の固体支持体に結合させた化合物のライブラリーを想定することができる。
【0027】
本明細書で使用する「核酸ライブラリーまたはアレイ」は、様々な異なる型式で意図的に作成した核酸コレクション(例えば、可溶性分子ライブラリー、および樹脂ビーズ、シリカチップ、または他の固体支持体に結合させたオリゴヌクレオチドのライブラリー)であり、このコレクションは合成または生合成により調製することができる。さらに、「アレイ」という用語は、基本的に任意の長さ(例えば、1〜約1000ヌクレオチドモノマー長)の核酸を基板にスポットすることによって調製することができる、これらの核酸ライブラリーも含むものとする。本明細書で使用する「核酸」という用語は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形、つまりリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはペプチド核酸(PNA)をさし、プリン塩基およびピリミジン塩基、または他の天然、化学的もしくは生化学的に改変された、非天然、または誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む。このポリヌクレオチドの主鎖は、典型的にはRNAもしくはDNA中に見られるような糖類およびリン酸基、または修飾しもしくは置換した糖またはリン酸基を含むことができる。ポリヌクレオチドは、メチル化したヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含みうる。ヌクレオチド配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されうる。従って、ヌクレオシド、ヌクレオチド、デオキシヌクレオシド、およびデオキシヌクレオチドという用語は、一般的に、本明細書に記載したものなどの類似体を含む。これらの類似体は、自然に存在するヌクレオシドまたはヌクレオチドと同様に幾つかの構造的特徴を有する分子であり、その結果、核酸またはオリゴヌクレオチド配列中に組み込まれた場合、溶液中で自然に存在する核酸配列とハイブリダイズするようになる。典型的には、これらの類似体は、その塩基、リボース、またはリン酸ジエステル部分を置換し、かつ/または修飾することによって、自然に存在するヌクレオシドおよびヌクレオチドから派生させる。それらの変化は、ハイブリダイゼーションを安定化し、または脱安定化させるために目的に合わせて作成し、あるいは相補的核酸配列によって所望したように、ハイブリダイゼーションの特異性を増強することができる。
【0028】
本明細書で使用する「相補的」という用語は、配列決定しまたは増幅するためのヌクレオチドと核酸間、例えば、二本鎖DNA分子の二本鎖間、または一本鎖核酸上のオリゴヌクレオチドプライマーとプライマー結合部位間のハイブリダイゼーションまたは塩基対形成をさす。相補的ヌクレオチドは、一般的に、AとT(またはAとU)、またはCとGである。最適に整列させ比較した、そして適当なヌクレオチドの挿入または欠失を伴う一鎖のヌクレオチドと、他方の鎖のヌクレオチドの少なくとも約80%、通常、他方の鎖のヌクレオチドの少なくとも約90%〜95%、より好ましくは約98〜100%が対をなす場合、二本の一本鎖RNA分子または一本鎖DNA分子は相補的であるという。あるいは、選択的ハイブリダイゼーション条件下で、RNA鎖またはDNA鎖がその相補鎖とハイブリダイズする場合に相補性は存在する。典型的には、少なくとも14〜25のヌクレオチドの一配列に対して、少なくとも約65%の相補性、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%の相補性が存在する場合に、選択的ハイブリダイゼーションが生じる。
【0029】
本明細書で使用する「フラグメント」、「セグメント」、または「DNAセグメント」は、大型のDNAポリヌクレオチドまたはDNAの一部をさす。ポリヌクレオチドは、例えば、分解し、または複数のセグメントに細分化することができる。核酸を細分化する様々な方法は、当技術分野で周知である。その方法は、本来、例えば化学的または物理的でありうる。化学的細分化は、DNA分解酵素による部分的分解、酸による部分的脱プリン、制限酵素の使用、イントロンにコードされたエンドヌクレアーゼ、三重鎖形成法およびハイブリッド形成法など、DNAを基にした切断法を含んでよく、これらの切断法は、切断媒介物を核酸分子中の特定の位置に局在化させる、核酸セグメントの特異的ハイブリダイゼーション、あるいは既知または未知の位置にあるDNAを切断する他の酵素または化合物に依存する。物理的細分化法は、DNAに高剪断を加えることを含みうる。高剪断は、例えば、ピットまたはスパイクを備えたチャンバまたはチャンネル内にDNAを通し、または制限されたサイズフロー経路、例えば、開口部の断面寸法がミクロまたはサブミクロ規模である経路にDNA試料を強制的に通して生じさせることができる。他の物理的方法には、超音波処理および噴霧が含まれる。例えば、熱とイオンが媒介する加水分解による細分化など、物理的および化学的細分化法の組合せも同様に使用しうる。例えば、Sambrookら、『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)(Sambrookら)を参照されたい。これをあらゆる目的において参照により本明細書に組み込む。こうした方法を最適化して選択したサイズ範囲のフラグメントに核酸を消化することができる。有用なサイズ範囲は、100、200、400、700、または1000から500、800、1500、2000、4000、または10,000塩基対でありうる。しかし、4000、10,000、または20,000から10,000、20,000、または500,000塩基対など、大きいサイズ範囲も有用でありうる。
【0030】
本明細書で使用する「ハイブリダイゼーション」という用語は、2本の一本鎖ポリヌクレオチドが、非共有結合的に結合して安定した二本鎖ポリヌクレオチドを形成する過程をさす。「ハイブリダイゼーション」という用語は、三重鎖ハイブリダイゼーションをもさしうる。得られた(通常)二本鎖ポリヌクレオチドが「ハイブリッド」である。安定したハイブリッドを形成するポリヌクレオチド集団の比率を本明細書では「ハイブリダイゼーション度」と呼ぶ。ハイブリダイゼーション条件は、典型的には、塩濃度約1M未満、より一般的には約500mM未満、および約200mM未満を含む。ハイブリダイゼーション温度は、5℃程度と低くてもよいが、典型的には22℃超、より典型的には約30℃超、好ましくは約37℃超である。ハイブリダイゼーションは、通常、ストリンジェント条件下で、すなわち、プローブが、その標的下位配列とハイブリダイズする条件下で実施される。ストリンジェント条件は、配列に依存し、様々な状況において異なる。特異的ハイブリダイゼーションには、フラグメントが長くなるほど、ハイブリダイゼーション温度を高める必要があるであろう。相補鎖の塩基組成および長さ、有機溶媒の存在、および塩基ミスマッチング度を含め、他の要因もハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに作用しうるので、どれか一つのみの絶対的測定よりもパラメーターを組み合わせることが重要である。一般的には、所定のイオン強度およびpHで、特異的配列の熱融点(T)よりも約5℃低いストリンジェント条件が選択される。Tは、(所定のイオン強度、pH、および核酸組成下で)標的配列に相補するプローブの50%が、平衡時に標的配列とハイブリダイズする温度である。
【0031】
典型的には、ストリンジェント条件は、pHが7.0〜8.3、温度が低くても25℃で、塩濃度が少なくとも0.01Mから、わずか1M Naイオン濃度(または他の塩)を含む。例えば、5×SSPE(750mM NaCl、50mMリン酸Na、5mM EDTA、pH7.4)、および温度25〜30℃の条件が、対立遺伝子特異的プローブハイブリダイゼーションに適している。ストリンジェント条件には、例えば、Sambrook、Fritsche、およびManiatisの『Molecular Cloning A Laboratory Manual』第2版、Cold Spring Harbor Press (1989)、およびAndersonの『Nucleic Acid Hybridization』初版、BIOS Scientific Publishers Limited (1999)を参照されたい。上記あらゆる目的において、これらをこれによりその全体を参照により組み込む。
【0032】
本明細書で使用する「ハイブリダイゼーションプローブ」は、塩基特異的方式で核酸の相補鎖と結合できる核酸(オリゴヌクレオチドなど)のことである。そのようなプローブには、Nielsenら、Science 254:1497-1500 (1991)、Nielsen Curr. Opin. Biotechnol., 10:71-75 (1999)に記載されているペプチド核酸、ならびに他の核酸類似体、および核酸模倣体が含まれる。
【0033】
本明細書で使用する「mRNA」または「mRNA転写産物」には、それだけには限らないが、前駆体(pre)mRNA転写産物、転写産物処理中間体、翻訳準備の整った成熟mRNA、および単数もしくは複数の遺伝子転写産物、またはmRNA転写産物から派生した核酸が含まれる。転写産物処理には、スプライシング、編集、および分解が含まれる。本明細書で使用するmRNA転写産物から派生した核酸は、その合成に、mRNA転写産物またはその下位配列が鋳型として最終的に役立つ核酸をさす。従って、mRNAから逆転写したcDNA、そのcDNAから転写したcRNA、cDNAから増幅したDNA、その増幅したDNAから転写したRNAなどは全て、mRNA転写産物から派生し、派生したそのような産生物を検出することは、試料中に元の転写産物が存在するかどうか、かつ/または存在量を示すものである。従って、mRNAから派生した試料には、それだけには限らないが、単数または複数の遺伝子のmRNA転写産物、そのmRNAから逆転写したcDNA、そのcDNAから転写したcRNA、その遺伝子から増幅したDNA、増幅したDNAから転写したRNAなどが含まれる。
【0034】
そこで使用されるように、「プローブ」は、特定の標的が認識できる分子である。いくつかの実施形態では、プローブは表面固定することができる。本発明が調査できるプローブの例には、それだけには限らないが、細胞膜受容体のアゴニストおよびアンタゴニスト、毒素および毒液、ウイルスのエピトープ、ホルモン(例えば、オピオイドのペプチド、ステロイドなど)、ホルモン受容体、ペプチド、酵素、酵素基質、補因子、薬物、レクチン、糖類、オリゴヌクレオチド、核酸、オリゴ糖、タンパク質、およびモノクローナル抗体が含まれる。
【0035】
本明細書で使用する「標的」は、所与のプローブに親和性を有する分子である。標的は、自然に存在する分子または人工分子でありうる。また、これらの分子は、未変化状態で、または他の種との凝集体として使用することができる。標的は、直接また特異的結合物質を介在させて、結合メンバーに共有結合的に、または非共有結合的に付着させることができる。本発明が使用することができる標的の例には、それだけには限らないが、抗体、細胞膜受容体、(例えば、ウイルス、細胞、または他の物質上の)特異的抗原決定基と反応するモノクローナル抗体および抗血清、薬物、オリゴヌクレオチド、核酸、ペプチド、補因子、レクチン、糖類、多糖類、細胞、細胞膜、およびオルガネラが含まれる。当技術分野では、標的を抗プローブと呼ぶ場合もある。標的という用語は、本明細書で使用するように、意味における違いはないものとする。2つの巨大分子が分子認識によって結合し複合体を形成すると、「プローブ標的対」が形成される。
【0036】
図面の簡単な説明
本特許または出願ファイルには、少なくとも一枚のカラーで作成した図面が含まれる。カラー図面を伴う本特許または特許出願公開公報の束は、請求し必要手数料の支払いがあれば特許庁から提供される。
【0037】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付図面は、本発明の実施形態を図示し、その記述と共に開示した本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明は、多くの好ましい実施形態を有し、詳細については当業者に公知の多くの特許、出願、および他の参照文献に依存する。従って、特許、出願、または他の参照を以下に引用し、または繰り返す場合、それは、あらゆる目的において、および述べた提案について、その全体を参照により組み込むと理解されるものとする。
【0039】
開示した、癌を分類し、予後を予測し、診断する方法、システム、および組成の実施形態を次に記載する。これらの方法、システム、および組成によって、p53のin vivo機能性のより有用な測定法が提供され、それによってp53の変異状態単独と比較して、患者結果の優れた予後予測指標がもたらされる。開示した方法、システム、および組成の実施形態に元々備わっている他の利点は以下の記述から明らかになる。
【0040】
癌の発生と進行におけるp53変異は、野生型p53対立遺伝子のトランス優性抑制を生じかねず、この抑制はp53活性を喪失させ、または野生型p53とは無関係な機能を発癌的に獲得させる。加えて、p53の発現に直接影響するような活性を含め、数種のp53機能エフェクターの活性の変化は、p53変異体の表現型を反復させるp53の欠陥の一因となりうる。乳癌では、このような影響は、より攻撃的な腫瘍、治療耐性、および不十分な臨床結果において現われる。
【0041】
より有用なp53のin vivo機能性の測定を提供することに伴い、本明細書に開示するのは「p53分類指標」、つまりp53野生型腫瘍と突然変異腫瘍の分子立体配置の違いから推定される発現サインである。分類指標は、所定数の遺伝子、例えば、少なくとも3遺伝子を含みうる。他の実施形態では、分類指標は、約3遺伝子から約500遺伝子を含みうる。表1に500の遺伝子リストを示す。いくつかの実施形態では、最適化させたp53分類指標には32の遺伝子が含まれる(表2)。最適化させた32遺伝子分類指標によって、有意な精度でp53突然変異体腫瘍と野生型腫瘍を識別でき、全治療群に相当する集団中の再発および生存を予測することができた。さらに、p53分類指標は、p53の変異状態単独よりも有意な生存予測器であり、他の臨床予測器とは無関係に多変量解析によっても有意なままであったが、p53の変異状態は有意ではなかった。さらに、変異の不在下でp53の発現が下方制御されることは、転写活性および臨床結果において、突然変異体(mt)表現型の腫瘍挙動を誘発するのに十分であった。
【0042】
乳癌および肝臓癌の独立したデータセットで、そして他の臨床特徴を無視して、最適化させたp53分類指標のサブセットは、有意な精度でp53の状態を予測することができた。原病生存期間(DSS)の予測器として、不均質な治療を施した大きい患者コホート、および術後アジュバント内分泌療法のみを施した患者セットで、分類指標はp53の変異状態単独より有意に優れていた。
【0043】
さらに、ネオアジュバント設定で化学療法を施した第3期患者が大部分を占める独立したcDNAマイクロアレイ研究では、p53分類指標の9遺伝子サブセットは、原病生存期間および無病生存期間の極めて有意な予測器であった。p53分類指標の遺伝子は、化学療法後にどの患者が再発し死亡するかだけでなく、どの後期患者が癌から生還するかを正確に見極めることができた。
【0044】
分類指標の21遺伝子サブセットもまた、進行して5年以内に遠隔転移を発生した初期照射治療患者の分子下位群と、発生しない同群を有意に識別することができた。
【0045】
従って、他の態様よりも特に、本明細書に記載したp53分類指標を定義することによって、予め認識していたよりもp53の極めて大きな影響がヒト腫瘍挙動に与えられることを本発明の方法、システム、および組成が実証し、それによってp53の機能を臨床評価する優れた手法が提供される。
【0046】
本発明の一態様は、患者で疾患の結果を予測する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップを含む方法を提供する。その疾患の結果は、原病生存期間、無病生存期間、腫瘍再発、および治療応答からなる群から選択されうる。疾患は、任意の癌であってよいが、乳癌または肝臓癌であることが好ましい。
【0047】
予想したp53の変異状態は、差次的に発現した遺伝子と、p53の変異状態、ER(エストロゲン受容体)の状態、および腫瘍の組織学的等級との関連性に従って、該遺伝子をランク付けることによって得られる。遺伝子のランク付けに線形モデル適合などの多変量ランク付け手順を使用することができる。ランク付けした遺伝子に管理学習(supervised learning)を施し、それらが突然変異体遺伝子発現プロファイルと野生型遺伝子発現プロファイルを識別できるようにすることができる。使用しうる管理学習法の一例は、対角線形判別分析(Diagonal Linear Discriminant Analysis:DLDA)である。
【0048】
いくつかの実施形態では、p53の変異状態を予測する能力を備えた遺伝子セットは、少なくとも3遺伝子、好ましくは約3〜500の遺伝子、最も好ましくは約32の遺伝子を含みうる。最適化させたp53分類指標を構成する32の遺伝子は、表1の遺伝子リストを含む群から選択することができる。いくつかの実施形態では、32の遺伝子は、GenBank受託番号:AI961235(配列番号23)、BG271923(配列番号22)、NM_002466(配列番号31)、BC001651(配列番号14)、D38553(配列番号11)、AK000345(配列番号26)、AA742697(配列番号21)、AL080170(配列番号30)、BF245284(配列番号27)、BC004504(配列番号8)、H15261(配列番号2)、NM_000909(配列番号9)、NM_024843(配列番号1)、R73030(配列番号29)、NM_030896(配列番号17)、AI435828(配列番号20)、AL512727(配列番号6)、AW242997(配列番号18)、AI810764(配列番号24)、AI922323(配列番号10)、AL360204(配列番号13)、NM_003225(配列番号32)、NM_003226(配列番号28)、AW299538(配列番号5)、NM_003462(配列番号16)、AI990465(配列番号25)、NM_004392(配列番号15)、NM_001267(配列番号7)、AF269087(配列番号4)、AI826437(配列番号3)、AL355392(配列番号12)、およびAU156421(配列番号19)を含みうる。
【0049】
本発明はまた、後期乳癌患者で疾患の結果を予測する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および後期乳癌患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップであって、該遺伝子セットがGenBank受託番号:BG271923、NM_002466、D38553、NM_000909、NM_024843、R73030、NM_003226、AW299538、およびAI990465からなる群から選択されるステップを含む上記方法も提供する。全てのGenBank受託番号は、図9〜508に示すように配列および配列番号に関するものである。
【0050】
本発明はまた、初期であり局所治療を受けた乳癌患者で臨床結果を予測する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および初期であり局所治療を受けた乳癌患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップであって、該遺伝子セットが、GenBank受託番号:AI961235、BG271923、NM_002466、BC001651、D38553、AK000345、BC004504、NM_000909、NM_024843、R73030、AI435828、AI810764、AI922323、NM_003225、NM_003226、AW299538、NM_003462、AI990465、NM_004392、NM_001267、およびAI826437からなる群から選択されるステップを含む上記方法も提供する。
【0051】
本発明はまた、肝臓癌患者で臨床結果を予測する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および肝臓癌患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップであって、該遺伝子セットがGenBank受託番号:NM_002466、BC001651、D38553、NM_024843、AI435828、AI810764、NM_003226、およびAW299538からなる群から選択されるステップを含む方法も提供する。
【0052】
本発明はまた、患者で疾患の結果を予測するための遺伝子群を同定する方法であって、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、p53の変異状態を予測するために、差次的に発現した該遺伝子をその能力に従ってランク付けるステップ、突然変異体および野生型のp53遺伝子発現プロファイルを識別するために、ランク付けしたそれらの遺伝子を訓練するステップ、p53の変異状態を予測する能力がある遺伝子セットを含むp53分類指標を得るステップ、独立したデータセット中の該p53分類指標を確証するステップ、および患者で疾患の結果を予測するために、該p53分類指標の能力を評価するステップを含む上記方法も提供する。
【0053】
先に開示した、患者で疾患の結果を予測するための遺伝子群を同定する方法では、差次的に発現した遺伝子と、p53の状態、ER(エストロゲン受容体)の状態、および腫瘍の組織学的等級との関連性に従って、該遺伝子を多変量ランク付け手順によりランク付けることができる。多変量ランク付け手順は、線形モデル適合(Linear Model-Fit)方法または当業者に公知の他のいかなる方法であってよい。訓練するステップは、対角線形判別分析(DLDA)などの管理学習法または当業者に公知の他のいかなる管理学習法の使用を含みうる。
【0054】
上に開示したp53分類指標は、少なくとも3遺伝子、好ましくは約3〜500の遺伝子、より好ましくは約32の遺伝子を含みうる。この32の遺伝子のp53分類指標は、GenBank受託番号:AI961235、BG271923、NM_002466、BC001651、D38553、AK000345、AA742697、AL080170、BF245284、BC004504、H15261、NM_000909、NM_024843、R73030、NM_030896、AI435828、AL512727、AW242997、AI810764、AI922323、AL360204、NM_003225、NM_003226、AW299538、NM_003462、AI990465、NM_004392、NM_001267、AF269087、AI826437、AL355392、およびAU156421からなる群から選択される遺伝子を含みうる「最適化された分類指標」である。
【0055】
その疾患の結果は、原病生存期間、無病生存期間、腫瘍再発、および治療応答からなる群から選択されうる。開示した一実施形態では、9遺伝子の部分的分類指標によって、後期乳癌患者で臨床結果を予測することができる。その9遺伝子の部分的分類指標は、GenBank受託番号:BG271923、NM_002466、D38553、NM_000909、NM_024843、R73030、NM_003226、AW299538、およびAI990465からなる群から選択される遺伝子を含みうる。
【0056】
別の開示した実施形態では、21遺伝子の部分的分類指標によって、初期であり局所治療を受けた乳癌患者で臨床結果を予測することができる。その21遺伝子の部分的分類指標は、GenBank受託番号:AI961235、BG271923、NM_002466、BC001651、D38553、AK000345、BC004504、NM_000909、NM_024843、R73030、AI435828;AI810764、AI922323、NM_003225、NM_003226、AW299538、NM_003462、AI990465、NM_004392、NM_001267、およびAI826437からなる群から選択される遺伝子を含みうる。
【0057】
さらに別の開示した実施形態では、8遺伝子の部分的分類指標によって、肝臓癌患者で臨床結果を予測することができる。その8遺伝子の部分的分類指標は、GenBank受託番号:NM_002466、BC001651、D38553、NM_024843、AI435828、AI810764、NM_003226、およびAW299538からなる群から選択される遺伝子を含みうる。
【0058】
本発明はまた、患者で疾患の結果を予測するためのコンピューターシステムであって、プロセッサとメモリとを有するコンピューターを備え、該メモリ上には、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップを実施するために、プロセッサに実行させる実行可能コードが保存されている上記コンピューターシステムも提供する。
【0059】
本発明はまた、p53の変異状態を予測する能力がある複数の遺伝子を固体支持体に固定させた、患者で疾患感受性を予測するための診断ツールも提供する。固体支持体は、例えば、マイクロアレイであってよい。一実施形態では、複数の遺伝子固体支持体に固定したは、GenBank受託番号:AI961235、BG271923、NM_002466、BC001651、D38553、AK000345、AA742697、AL080170、BF245284、BC004504、H15261、NM_000909、NM_024843、R73030、NM_030896、AI435828、AL512727、AW242997、AI810764、AI922323、AL360204、NM_003225、NM_003226、AW299538、NM_003462、AI990465、NM_004392、NM_001267、AF269087、AI826437、AL355392、およびAU156421からなる群から選択される遺伝子を含みうる。別の実施形態では、固体支持体に固定した複数の遺伝子は、GenBank受託番号:BG271923、NM_002466、D38553、NM_000909、NM_024843、R73030、NM_003226、AW299538、およびAI990465からなる群から選択される遺伝子を含みうる。さらに別の実施形態では、固体支持体に固定した複数の遺伝子は、GenBank受託番号:AI961235、BG271923、NM_002466、BC001651、D38553、AK000345、BC004504、NM_000909、NM_024843、R73030、AI435828、AI810764、AI922323、NM_003225、NM_003226、AW299538、NM_003462、AI990465、NM_004392、NM_001267、およびAI826437からなる群から選択される遺伝子を含みうる。さらに別の実施形態では、固体支持体に固定した複数の遺伝子は、GenBank受託番号:NM_002466、BC001651、D38553、NM_024843、AI435828、AI810764、NM_003226、およびAW299538からなる群から選択される遺伝子を含みうる。
【0060】
本発明はまた、固体支持体と、その上にディスプレイさせた、患者でp53の変異状態を予測する能力がある遺伝子に対応する核酸プローブとを有する、患者で疾患感受性を予測するための核酸アレイも提供する。核酸アレイは、少なくとも8、32、100、250、または500の核酸プローブを含みうる。
【0061】
従って、開示した方法、システム、および組成は、p53欠陥胸部腫瘍とp53誘導胸部腫瘍を見極めることができ、他の癌種でもp53活性の計測に有効であろう。そうでないとしてもDNA配列レベルでp53野生型である胸部腫瘍の14%ほどが、他の手段によりp53を欠くと思われる。さらに、分類指標は、原病生存期間および様々な乳癌集団における再発の有意な予測器であり、従って、その集団の終了点の予測において、特に、その機能が主にp53依存性細胞死経路による治療剤と関連して臨床有用性を有する。
【0062】
実施例
【実施例1】
【0063】
p53突然変異体腫瘍およびp53野生型腫瘍の分子立体配置は異なる。
【0064】
p53突然変異体(mt)胸部腫瘍とp53野生型(wt)胸部腫瘍の間の分子的差異を洞察するために、高密度オリゴヌクレオチドマイクロアレイを使用し、257の生検試料の集団ベースシリーズを分析したが、それらの全ては予めp53コード領域の変異について配列決定した(Bergh, J.、 Norberg, T.、Sjogren, S.、Lindgren, A. および Holmberg, L. “Complete sequencing of the p53 gene provides prognostic information in breast cancer patients, particularly in relation to adjuvant systemic therapy and radiotherapy(p53遺伝子完全シーケンシングによる、乳癌患者で、特に、アジュバント全身治療および放射線治療と関連する予後予測情報の提供)” Nat Med 1, 1029-34 (1995)。参照により本明細書に組み込む)。
【0065】
患者の原物質は、1987年1月1日〜1989年12月31日の間にUppsala郡で摘出された全乳癌の65%に相当する、女性315名の集団をベースとしたコホートから得た新鮮凍結胸部腫瘍から構成された(Berghら、既に参照により組み込む)。術後、新鮮腫瘍の生存可能部分を2分割し、一部は直ちにイソペンタンで凍結して分析まで−70℃で保存し、他方は10%ホルマリンで固定し病理組織検査用に調製した。凍結腫瘍組織は、当初の315名の患者のうち299名から入手することができた。このうち、270組織にはマイクロアレイ実験に十分な量および質のRNAが含まれ、Affymetrixの品質管理後、260腫瘍の発現プロファイルをさらに分析した。本発明の研究は、Karolinska研究所倫理委員会の認可を受けている。
【0066】
既にBerghらにより記載(既に参照により組み込む)されている通り、元の315腫瘍でp53遺伝子(TP53)の変異分析を実施した。本発明の研究に含めた260腫瘍のうち、エクソン2〜11をcDNA配列分析することにより(Berghら、既に参照により組み込む)、59個にp53変異を見出した。3試料ではp53の状態を評価できなかった。臨床病理学的特性を患者記録および慣例の診断時臨床測定から導き出した。エストロゲン受容体の状態は、慣例の臨床手順の一部として、リガンド結合アッセイによって定量した。経験豊かな病理学者が、腫瘍を低度、中度、および高度腫瘍に分類し、腫瘍のElston-Ellis等級を決定した(Elston, C. W. および Ellis, I. O. “Pathological prognostic factors in breast cancer. I. The value of histological grade in breast cancer: experience from a large study with long-term follow-up(乳癌における病理学的予後予測要因.I 乳癌における組織学的等級値:長期追跡による大研究から得た経験)” Histopathology 19, 403-10 (1991)、参照により本明細書に組み込む)。彼ら260名の患者のうち84名で腋下リンパ節転移が見つかり、166名はリンパ節転移陰性であった。10名の患者はリンパ節の状態が不明であった。高齢により、または重大な随伴性疾患のために腋下検査を実施しなかったからである。全リンパ節転移陽性患者に、全身アジュバント治療を行った。一般に、閉経前女性には化学療法を施し、閉経後女性には内分泌治療を施した。本発明の研究に含めた260名の患者のうち、149名がアジュバント治療を受けなかった。患者の全体的生存率は、スウェーデン住民登記所から得た情報に基づき、死亡日および死亡原因は1999年末に患者記録概要から得た。
【0067】
結果としてアミノ酸レベルを変化させるp53変異を含むことが知られる59腫瘍から得たRNA、および野生型p53を有することが知られている198腫瘍から得たRNAをAffymetrix U133AおよびU133Bアレイで分析した。
【0068】
Qiagen RNeasy Mini Kit(Qiagen、ドイツ国)を使用し全RNAを抽出した。凍結腫瘍を小片に切断し、RLT緩衝液(RNeasy溶解緩衝液)とメルカプトエタノールを含む試験管(最高40mg/試験管)中で約30〜40秒間ホモジナイズした。次いで、混合物を55℃で10分間プロテイナーゼKにより処理したが、その処理は前回のRNA抽出でRNA収量を改善することを実証した(Egyhazi, S.ら、”Proteinase K added to the extraction procedure markedly increases RNA yield from primary breast tumors for use in microarray studies(抽出手順に添加したプロテイナーゼKが、マイクロアレイ研究で使用する胸部原発腫瘍から得たRNAの収量を顕著に増大)” Clin Chem 50, 975-6(2004)、参照により本明細書に組み込む)。以下のRNeasyカラムでの遠心分離ステップでは、RNAの質を高めるためにDNA分解酵素処理も含めた。RNA抽出物の統合性をAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies、米国メリーランド州ロックビル)で試験し、28S:18SのリボソームRNA率を計測した。高品質RNA抽出物は、マイクロアレイ分析まで−70℃で貯蔵した。
【0069】
in vitro転写(IVT)産生物(すなわち標的)の調製、オリゴヌクレオチドアレイハイブリダイゼーション、および走査をAffymetrixプロトコル(Affymetrix Inc., 米国カリフォルニア州サンタクララ)に従って実施した。T7結合オリゴ−dTプライマーを使用し、2〜5μgの全RNA出発量から第1鎖cDNAを合成し、続いてフェノール/クロロホルム抽出とPhase Lock Gelを使用して第2鎖の合成二本鎖cDNAを精製した。IVT反応にてビオチン化したcRNA標的をそのcDNA鋳型から調製した。Qiagen RNeasy Mini Kitを使用してその標識したcRNA標的を精製し、続いて化学的細分化した。細分化しビオチン化したcRNA10μgをAffymetrixオリゴヌクレオチドヒトアレイセットのHG-U133AおよびBにハイブリダイズしたが、このアレイセットには、十分に実証したヒト遺伝子約33,000個から派生させた39,000個超の転写産物に相当する45,000のプローブセットが含まれる。ハイブリダイゼーションオーブンを45℃にし、遠心を60rpmで16時間に設定して、ハイブリダイゼーションを実施した。Affymetrixプロトコルに従い、Fluidics Station 400(Affymetrix Inc., 米国カリフォルニア州サンタクララ)中でアレイを洗浄し染色した。ストレプトアビジンフィコエリトリン(SAPE、終濃度10μg/ml)を使用し染色し、ビオチン化抗ストレプトアビジン抗体でシグナル増幅を行い、そして2回目のSAPE染色を行った。製造業者の使用説明書に従ってアレイを洗浄しスキャンした。
【0070】
発現生データは、Microarray Suite 5.0ソフトウェア(Affymetrix Inc.,米国カリフォルニア州サンタクララ)を使用して処理し、総平均法を使用して規準化した。各マイクロアレイについては、平均対数強度を標的シグナル値の500に調整することによって、プローブセットシグナル値を計る。平均シグナル強度が次善の試料を再標識し、新規なアレイに再度ハイブリダイズした。マイクロアレイ人為産物が視認できるのであれば、細分化した同じプローブを使用し、その試料を新規なチップにハイブリダイズし、または別法として、欠陥領域が小さい場合は、影響を受けているプローブをさらに分析して調査した。U133AおよびBチップから得た規準化した発現データを組み合わせ、自然対数に変換した。
【0071】
遺伝子発現パターンがp53mtとwt腫瘍をどの程度識別できたかを初めて調査した。ウィルコクソン順位和検定によって、約2,770の別個の遺伝子(UniGene build #167による)を代表する3,330のAffymetrixプローブセットを同定したが、その発現パターンは、偽発見率(FDR:false discovery rate)を調整したp値、p<0.001でp53mtおよびwt腫瘍を識別した。これらの遺伝子のいくつかは、PERP、RRM2、SEMA3B、TAP1、GTSE1、CHECK1、およびCHEK2を含むp53の既知の転写標的であることが判明した。図1に示す物は、上位250遺伝子を使用する階層的クラスタ分析の結果であり、それらの遺伝子の全てがFDR p<5.9×10−8でp53の状態に関連する。遺伝子選択判定基準から予想された通りに、p53mtおよびwt腫瘍の大部分を別々の腫瘍群にクラスタ化した。2つの主なクラスタノードのうち、p53突然変異体の90%が一つのクラスタ(すなわち「変異体様」クラスタ)で見つかり、p53wt腫瘍の77%は他方(「野生型様」クラスタ)によって分離された。
【0072】
次に、遺伝子発現プロファイルの階層的構造を調査した。腫瘍の場合には、2つの主なクラスタが観察された。一つは突然変異体様腫瘍クラスタ内でより高度に発現した約200の遺伝子からなり、他方は、野生型様クラスタ内でより高度に発現した約50の遺伝子を表す。前者の中でp53突然変異体状態最も高度と相関した遺伝子は、CDC2、CDC20、CCNB1、CCNB2、CKS2、CDCA1、CDCA3、CDCA8、CENPA、TOP2A、PTTG1、およびMCM6を含み、細胞周期の進行に関連した。この知見は、wtのp53が細胞周期遺伝子に対して負の調節効果を有するという観察に一致する。野生型様クラスタ内でより高度に発現した遺伝子の中では、数個のエストロゲンに調節された遺伝子、およびSTC2、NCOR1、およびADRA2Aを含む、ERの状態に関連する遺伝子の存在が観察された。
【0073】
腫瘍をさらに検査することによって、p53の状態に加えて、主な腫瘍クラスタは、他の臨床特徴、すなわち、エストロゲン受容体(ER)の状態および腫瘍等級とも相関することが判明した。細胞のエストロゲン受容体状態は、いくつかの場合において癌と相関することが判明していた。正常な胸部細胞は、通常、エストロゲン受容体を有する。しかし、乳房で生じる癌細胞は、必ずしもエストロゲン受容体を有しているわけではない。エストロゲン受容体を有する乳癌は、「エストロゲン受容体陽性」と呼ばれ、エストロゲン受容体を有しない乳癌は「エストロゲン受容体陰性」と呼ばれる。エストロゲン受容体陽性癌では、癌細胞の増殖はエストロゲンに制御される。それに反して、エストロゲン受容体陰性癌細胞の増殖はエストロゲンによって支配されない。
【0074】
図1は、p53の状態と統計学的に相関した上位250遺伝子を使用する257腫瘍の階層的クラスタリングを示す。腫瘍を縦軸に表し、遺伝子を横軸に表す。彩度は、対数発現シグナルの強度を反映し、赤色相は発現レベルが高いこと示し、緑色相は発現レベルが低いことを示す。最上段の黒色垂直棒は、胸部腫瘍がp53変異を有することを示す。2行目の棒はER陽性腫瘍を示す。3行目の棒は、組織学的等級(Elston-Ellis段階評価法)を反映し、緑棒=I等級、青棒=II等級、および赤棒=III等級である。
【0075】
突然変異体様クラスタによる分離は、エストロゲン受容体陰性(ER−)腫瘍の86%(pcs=1.7×10−10)、III等級腫瘍の96%(pcs=2.5×10−19)、およびI等級腫瘍のわずか3%(pfe=6.9×10−15)で観察された。この結果は、部分的に、この研究のp53突然変異体が積極的にER陰性と相関(pcs=1.7×10−6)し、III等級の状態とも相関(pcs=1.2×10−11)するという事実のためであり、そしてp53突然変異乳癌が陰性ER状態および高腫瘍等級と著しく相関すると実証した先の報告に一致する。例えば、Cattoretti, G.、Rilke, F.、Andreola, S.、D'Amato, L. および Delia, D. “P53 expression in breast cancer(乳癌でのP53の発現)”. Int J Cancer. 41,178-83 (1988)、Isola, J.、Visakorpi, T.、Holli, K. および Xallioniemi, O. P. “Association of overexpression of tumor suppressor protein p53 with rapid cell proliferation and poor prognosis in node-negative breast cancer patients(リンパ節陰性乳癌患者における癌抑制タンパク質p53の過剰発現と迅速な細胞増殖および不十分な予後予測との関連性)” J Natl Cancer Inst 84, 1109-14. (1992)、Andersen, T. I.ら、”Prognostic significance of TP53 alterations in breast carcinoma(乳癌におけるTP53改変の予後予測の重要性)” Br J Cancer 68, 540-8 (1993)、およびBhargava, V.ら、”The association of p53 immunopositivity with tumor proliferation and other prognostic indicators in breast cancer(乳癌におけるp53免疫陽性と、腫瘍増殖および他の予後予測指標との関連性)” Mod Pathol 7, 361-8 (1994)を参照されたい。それらの全てを参照により本明細書に組み込む。
【0076】
しかし、突然変異体様クラスタ内の1153のwt腫瘍のうち、顕著な過剰提示がER(pcs=2.0×10−6)、およびIII等級腫瘍(pfe=7.1×10−11)で同様に観察された。それによって、一変量統計分析により、p53の状態と高度に関連する多数の遺伝子が同定され、それらの遺伝子はp53の状態とは相関するが、組織学的等級およびERの状態とは相関しないという方式で腫瘍を分離することができる。
【実施例2】
【0077】
p53の欠陥を予測する遺伝子発現分類指標
p53wt腫瘍画分は、p53突然変異体の大部分と共にクラスタを形成することが判明したという知見は、これらの腫瘍が、実際、p53変異以外の機序によるp53の欠陥であろうという可能性を示唆する。これに反して、ほとんどのwt腫瘍を連想させる分子立体配置を有するp53突然変異体を発見したことは、これらの腫瘍が、実際、機能的に無傷のp53を発現するらしいことを示唆している。しかし、この場合の腫瘍群の割り当ては、一変量ランク付け手順により選択した遺伝子に基づくものであり、この手順はp53の状態と、ERおよび等級状態との関連性によるものではなかった。これにより、選択した遺伝子が、ほとんど等級および/またはER関連ものを含むという可能性がある程度生じ、その可能性は、腫瘍クラスタリングをp53の状態それ自体ではなく、これらの特性に向かって偏らせたかもしれない。
【0078】
従って、組織学的等級およびERの状態とは無関係に、p53の状態に相関する遺伝子をランク付ける線形モデル適合(LMF)として知られる多変量線形回帰法を含む、予測モデルを設計することによって、p53の状態を予測するための、確固たる遺伝子発現を基にした分類指標が開発された。
【0079】
図2は、p53の状態用の遺伝子を基にした分類指標の最適化および結果を示す。線形モデル適合法によりランク付けした遺伝子発現プロファイルを使用し、p53の状態の管理学習に対角線形判別分析(DLDA)を使用した。(A):等級/エストロゲン受容体(ER)相関遺伝子と、ウィルコクソン順位和検定または線形モデル適合によりランク付けしたp53相関遺伝子との間の重複の分析。ヒートマップは、100遺伝子ビン(横列)の腫瘍等級(上図ヒートマップ)またはERの状態(下図ヒートマップ)と相関した遺伝子数、さらにp53の状態(縦行;50遺伝子ビンでランク付け)と相関した遺伝子数を示し、p53相関遺伝子をLMF=線形モデル適合またはWR=ウィルコクソン順位和によりランク付けし、等級相関遺伝子をKW=Kruskal-Wallisにより、そしてER相関遺伝子をWRによりランク付けした。(B):分類指標の精度は、分類指標を構築するのに使用した遺伝子数の関数としてプロットし、最適分類指標は32遺伝子からなり、そして延べ40腫瘍が誤分類された。(C):一点除外(leave−one−out)交差検証を使用して、Uppsalaデータセット(257腫瘍)に適用した分類指標の結果。Unigene記号、(build #167)、Genbank受託番号、およびAffymetrixプローブID(A.=U133A;B.=U133B)を示す。
【0080】
遺伝子の選択には、発現レベルをその応答として、かつP53の状態、ERの状態、および等級状態を予測器変数として、直線モデルをその遺伝子発現データに適合させた。予測器変数と首尾よく相関しなかった遺伝子を除去するための初期フィルタとして、p値適合が0.001超える遺伝子全てを除外した。追加の予測器としてERおよび等級を使用することによって、発現パターンがERまたは等級状態によってほとんど説明がつくと思われる遺伝子を選別除去できるようになった。LMFランク付け手順を適用すると、一変量のウィルコクソン順位和(WR)法と比較して、細胞周期により調節される多くの既知遺伝子のランクが顕著に低下され、これらの遺伝子がp53の状態ではなく、高等級によって最も説明されることを示した(図2A、上図)。これに反して、ER関連遺伝子は、LMFによるp53関連遺伝子上位ランクに入ったことが観察された。それは、おそらく、WRによるそれらの低いランキングは、より高くランク付けされた等級関連遺伝子が多かったためであろう(図2A、下図)。
【0081】
クラス予測目的には、p53の状態係数の絶対値の降順で遺伝子をランク付けする。分類指標の構築には、最尤法の変形であるDLDA(対角線形判別分析)を使用した。例えば、参照により本明細書に組み込むDudoit, S., Frilyand, J. および Speed, T. P. “Comparison of discrimination methods for the classification of tumors using gene expression data(遺伝子発現データを使用する、腫瘍を分類するための判別法比較)”、Journal of the American Statistical Association 97, 77-87. (2002)に記載されている、マイクロアレイデータを使用するクラス決定問題にこれを予め適用させておく。最高の分類精度を有する予測器遺伝子セットは、一点除外交差検証により選択した。
【0082】
含まれる遺伝子数の関数としての分類指標の精度を図2Bにプロットする。特筆すべきは、分類指標が7遺伝子を含むか、または500遺伝子を含むかに関わらず、この腫瘍分類の精度が、わずか2.7%(すなわち7腫瘍)の変動をもって高度に安定していると観察されたことであった。500遺伝子分類指標中の遺伝子を下表1に示す。しかし、最適の分類指標は、32の遺伝子で得られたが(表2)、一方で40腫瘍(15.6%)が誤分類された。wt腫瘍の28個(14%)は、突然変異体様として分類され、他方で12個(20%)の突然変異体は野生型様として誤分類された(図2C)。
【表1】























【0083】
500遺伝子分類指標:遺伝子をp53の状態とその相関に従ってランク付ける。GenBank受託番号、Affymetrix プローブセット ID、Unigene ID、Unigene名、およびUnigene記号によって遺伝子を同定する。
【0084】
表1に記載した遺伝子の配列および配列番号については、上記遺伝子の配列の各々を示し、GenBank受託番号、Unigene ID、および/またはUnigene名、および配列番号に関連付けた図9〜508を参照されたい。
【実施例3】
【0085】
p53分類指標は、2個の独立したデータセットで有意な精度を示す。
【0086】
次いで、独立したデータセットと関連してp53分類指標の性能を評価した。図3は、独立したcDNAマイクロアレイデータセットで、分類指標遺伝子がp53の状態を予測できることを示す。(A)独立した乳癌データセットで、32遺伝子分類指標のうち9遺伝子サブセットが、p53の状態を予測することができる。本発明者らの分類指標の9遺伝子は、腫瘍の50%以上にそれらの遺伝子が存在することに基づいて選択された。分析に使用した腫瘍は、これらの遺伝子の>50%に存在する発現データを有する必要があった。(B)独立した肝臓癌データセットで、p53分類指標の8遺伝子サブセットが、p53の状態を予測することができる。8個の重複する遺伝子は、腫瘍の90%以上にそれらの遺伝子が存在することに基づいて選択された。分析に使用した腫瘍は、これらの遺伝子の>50%で存在する発現データを有する必要があった。(AおよびB)黒色垂直棒は、p53突然変異体の状態を示す。遺伝子記号(Unigene build #167)、および対応するIMAGEクローンID(元の研究から)を収載する。階層的クラスタグラムを示す。遺伝子(横列)、および腫瘍(縦行)をクラスタ化した。腫瘍デンドログラムでは、緑の枝は野生型様立体配置を示し、赤い枝は突然変異体様プロファイルを示す。
【0087】
従って、p53の状態が判明している公的に入手可能な2個のマイクロアレイデータセット:Sorlieらによる乳癌研究(Sorlie, T.ら、”Repeated observation of breast tumor subtypes in independent gene expression data sets(独立した遺伝子発現データセットにおける胸部腫瘍サブタイプの反復観察)” Proc Natl Acad Sci USA 100, 8418-23 (2003)、参照により本明細書に組み込む)、およびChenらによる肝臓癌研究(Chen, X.ら、”Gene expression patterns in human liver cancers(ヒト肝臓癌での遺伝子発現パターン)”、Mol Biol. Cell 13, 1929-39 (2002)、参照により本明細書に組み込む)を利用した。両研究は、cDNAマイクロアレイプラットフォームで行った。Sorlieデータセットでは、p53変異用に69の胸部腫瘍を配列決定した。分類指標遺伝子に対応する発現データの利用能について、この腫瘍サブセットをクエリーした。分類指標の28の遺伝子がUniGene ID(build #167)に位置づけられた。これらの遺伝子の半分以上が、Sorlieらのマイクロアレイに位置づけられたが、大半の腫瘍でほとんど発現せず、その遺伝子の半数以下ついて、いくつかの腫瘍の測定値が得られた。分類指標中のわずか9遺伝子が、腫瘍の>50%に存在する発現測定値を有するcDNAプローブ(異なる9遺伝子を表す)に対応することが判明し、その際、腫瘍は遺伝子の>50%(結果として44ウェルの採取した腫瘍サブセットになる)について測定値を有した。腫瘍を階層的にクラスタ化(図3A)するために分類指標のこの9遺伝子サブセットを使用して、p53mt腫瘍の77%を一つの枝にクラスタ化し、野生型の77%を他方の枝にクラスタ化(pcs=3.0×10−4)し、分類指標の確固たる予測能を反復した。
【0088】
次に、免疫組織化学、IHC(Chen, X.ら、”Gene expression patterns in human liver cancers(ヒト肝臓癌における遺伝子発現パターン)” Mol Biol Cell 13,1929-39 (2002)、参照により本明細書に組み込む)によってp53の状態を確認したcDNAマイクロアレイベースの肝臓癌データセットを分析した。この研究では、IHCによりp53タンパク質レベルを確認した。ここで、p53の状態についてアッセイした全59腫瘍に8分類指標遺伝子を位置づけることができた(各遺伝子は全腫瘍の90%以上に存在するデータを有し、そして各腫瘍は遺伝子の>50%のデータを含有した)。乳癌データセット(すなわち、pfe=3.5×10−4)で見られた統計上の有意性と同様の有意性をもって、この8分類指標遺伝子サブセットは、p53の状態と相関する2個の主要なクラスタにHCC試料をクラスタ化することができ、つまり、一クラスタに突然変異体の87%、および他方のクラスタに野生型61%にクラスタ化することができた(図3B)。合わせて、p53分類指標を含む遺伝子は、p53の状態に基づき胸部腫瘍のみならず肝臓癌をも分類する能力が確固としており、従って他の癌種でもp53の状態を予測する一般化可能な有用性を有しうることがこれらの観察から示唆される。
【表2】


【0089】
最適化させた32遺伝子p53分類指標。GenBank受託番号、Affymetrix プローブセット ID、Unigene ID、Unigene名、およびUnigene記号によって遺伝子を同定する。
【実施例4】
【0090】
p53分類指標は、p53の変異状態単独よりも優れた患者結果の予後予測指標である。
【0091】
乳癌および他の腫瘍型では、p53の状態が、腫瘍再発、患者生存、および治療応答など、臨床結果の予後を予測することは広く受け入れられている。臨床結果の予後予測指標として、p53の活性に基づく分類指標は、p53の変異状態単独より優れているという仮説を試験した。図4は、p53分類指標が、p53の変異状態単独よりも予後予測の重要性が高いということを示す。(A)p53の変異状態、(BおよびC)p53分類指標、または(D)両方に従って分類した、患者のカプラン−マイヤー生存曲線を示す。臨床終了点は、乳癌による死であった(すなわち原病生存期間)。A、B、およびDでは全257名の患者を評価し、Cではp53野生型腫瘍の198名の患者のみを評価した。危険率(HR)の有意性の評価にワルド検定(p)を使用した。
【0092】
治療の種類または臨床段階に関わらず、Uppsalaコホートの全257名の患者で、原病生存期間(DSS)の予測能について、分類指標および配列レベルのp53の変異状態を比較した。
【0093】
患者を分けるためにp53分類指標を使用して得られた危険率の有意性は、p53の変異状態単独を使用して得られた危険率の有意性よりも桁違いに高く(それぞれ、p=0.00057:p=0.012)(図4AおよびB)、特に、この改善されたp値はpmc=0.0046で統計上有意であった。
【0094】
さらに、シーケンシングによって野生型p53を有していると確認された198名の女性サブセットで、p53分類指標は、低危険群および高危険群に患者を有意に分離することもでき(p=0.016)(図4C)、突然変異体様として分類されたp53wt腫瘍を有する患者は、wt様クラスのwt腫瘍を有する患者よりもDSSが低いことが示唆された。図4Dでは、4つ全ての腫瘍下位群で生存曲線を比較した。特に、p53mtまたはmt様と分類されたwt腫瘍を有する患者(それぞれ、緑色および青色曲線)は、全体的生存率曲線が似ていたが、wt様と分類されたp53mt腫瘍を有する12名(赤色曲線)は、突然変異体様p53mt腫瘍群(緑色曲線)の生存率曲線と、wt様p53wt腫瘍群(黒色曲線)の生存率曲線に分類される生存曲線を示し、どちらの曲線とも有意には異ならなかった(mt/mt様比較p=0.47およびwt/wt様比較p=0.37)ことが観察された。
【0095】
次に、SorlieらのcDNAマイクロアレイデータセットで分類指標の予後予測の重要性を試験した(Sorlie, T.ら、Repeated observation of breast tumor subtypes in independent gene expression data sets(独立した遺伝子発現データセットにおける胸部腫瘍サブタイプの反復観察)、Proc Natl Acad Sci USA 100, 8418-23 (2003)、参照により本明細書に組み込む)。図5は、独立した後期腫瘍データセットで、p53分類指標の予後予測の重要性が極めて高いことを示す。図3に記載されている9遺伝子の部分的分類指標にしたがって腫瘍を階層的に分類し、生存結果との相関について分析した。(A)Sorlieらのデータセットから得た76腫瘍の階層的クラスタグラム;腫瘍デンドログラムの黒の枝は野生型様立体配置を示し、赤い分枝は突然変異体様プロファイルを示す。表示は、(B)原病生存期間および(C)無病生存期間に対するカプラン−マイヤー評価であり、(A)の腫瘍デンドログラムの緑の枝および赤の枝に従って患者群を決定した。
【0096】
ここで、77%の精度でmt腫瘍とwt腫瘍を識別することができる9遺伝子の部分的分類指標を使用し、関連する患者生存情報により、76ウェルの採取した腫瘍試料を階層的にクラスタ化した(図5A)。重要なことに、大多数のこれらの腫瘍(>80%)は、局所的に進行した乳癌を有するIII期患者(T3/T4および/またはN2)の化学療法応答に対する、2つの独立した予測研究から得た。腫瘍を2つの主要な枝、31腫瘍をwt様クラスタに、および44腫瘍を突然変異体様クラスタにクラスタ化した。これらの腫瘍プロファイルに従って患者をグループ分けすると、原病生存期間および無病生存期間(図5BおよびC)のカプラン−マイヤー生存曲線は、このコホートで共に高度に有意であった(p=0.00008(DSS)、およびp=0.00005(DFS))。注目すべきことに、p53mt様群の44名の患者の7年生存率35%と比較して、p53wt様クラスタの31名の患者は、乳癌の7年生存率90%を示した(図5B)。すなわち、この大多数の第III期患者集団では、部分的分類指標は、どの患者が、再発し死亡するかだけでなく、どの後期患者が癌から生存するかを正確に予測することができる。階層的クラスタ分析には、対数発現値を平均中央化し規準化し、ピアソン相関計量および平均連結法(Dr. Michael Eisenの好意によるCluster and TreeViewソフトウェア;ソフトウェアは、UC Berkeley校ウェブサイト、Lawrence Berkeley National Laboratoryで得ることができる)を使用して、遺伝子および腫瘍をクラスタ化した。生存分析するために、p53分類指標の結果に従って、または一事例では、p53の変異状態に従って患者を層別化した。異なる患者群の生存曲線を算出するためにカプラン−マイヤー評価を使用し、得られた危険率の統計上の有意性を評価するためにワルド検定を使用した。図4の生存分析は、偶然のみによる達成率を評価し、p53の状態単独を使用して得られたp=0.012と比較して(パネルA)、より有意なワルドp値0.00057(パネルB)は、p53分類指標によって決定されたグループ指定を使用し得られた。100,000回の繰り返しランでは、40腫瘍を無作為に選択し(すなわち、パネルAとBではグループ指定で腫瘍数が異なった)、それらのp53の状態を逆にし、ワルドp値を各ランで算出した。p値≦0.00057は、564回しか得られなかった。この観察のモンテカルロp値は、0.0046であると推定される。
【0097】
関連性試験(すなわち、2個以上の群において観察した事象数の有意性を確認するため)には、カイ2乗検定を使用した。任意のカテゴリーで事象数が極めてさい(<5)場合、カイ2乗検定の代わりにフィッシャーの正確確率検定を使用した。
【0098】
p53下流標的遺伝子および上流エフェクターの発現レベルの統計分析には、p53wtおよびmt腫瘍間で差次的に発現した遺伝子を判定するために、両側2群T検定を使用した(図8)。mt様クラス中のp53wt腫瘍と、wt様クラス中のp53wt腫瘍の間の比較(逆も同様)には片側2群t検定を実施して、p53野生型および突然変異体間で観察したように、遺伝子が同じ方向(または反対方向)で有意に差次的に発現したかどうかを試験した。
【0099】
本発明の方法の実施形態が、本明細書に開示した統計方法のみには限らないことは当業者には明白であろう。本発明の実施形態は同等の分析法を包含する。本明細書で使用したp値の略語には以下のものがある。
【0100】
WT=ウィルコクソン順位和検定
=T検定
cs=カイ2乗検定
fe=フィッシャーの正確確率検定
=ワルド検定
mc=モンテカルロ評価
既知の転写開始部位(TSS)を有する分類指標遺伝子のそれぞれで、p53結合部位のプロモーター分析を実施した。BEARR(Vega, V. B., Bangarusamy, D. K., Miller, L. D., Liu, E. T. & Lin, C. Y. BEARR:Batch Extraction and Analysis of cis-Regulatory Regions(バッチ抽出およびシス調節領域の分析)Nucleic Acids Res 32, W257-60 (2004)、参照により本明細書に組み込む)を使用して、プロモーター配列(TSSの3000bp上流〜500bp下流)を抽出し、そしてTRANSFAC(Kel, A. E.ら、MATCH:A tool for searching transcription factor binding sites in DNA sequences (DNA配列中の転写因子結合部位を探索するツール)、Nucleic Acids Res 31, 3576-9 (2003)、参照により本明細書に組み込む)バージョン6.0(マトリックスアクセッション:M00272)、および基準のp53結合部位コンセンサス 5’−RRRCWWGYYYN(0−13)RRRCWWGYYY−3’(el-Deiry, W. S., Kern, S. E., Pietenpol, J. A., Kinzler, K. W. および Vogelstein, B. “ Definition of a consensus binding site for p53(p53のコンセンサス結合部位定義)”、Nat Genet 1, 45-9 (1992)、参照により本明細書に組み込む)に基づく単純なパターン調査から得られたP53位置重み行列(position weight matrix)を使用して、推定結合部位を予測した。
【実施例5】
【0101】
p53欠陥分類指標は、内分泌治療を行った患者での結果と有意に相関するが、p53の状態単独ではない。
【0102】
患者の結果を予測する分類指標の確実性をさらに試験するために、他の関連する治療群におけるその性能も分析した。近年、p53mt胸部腫瘍は、p53wt腫瘍よりも内分泌療法に対して耐性が高いことが観察されており、これは耐性腫瘍中のp53依存性アポトーシスの脱共役によって部分的に説明された(Berns, E. M.ら、”Complete sequencing of TP53 predicts poor response to systemic therapy of advanced breast cancer(TP53の完全シーケンシングが、進行した乳癌の全身療法に対して不十分な応答を予測)”、Cancer Res 60, 2155-62 (2000)、参照により本明細書に組み込む)。ホルモン療法特異的患者コホートで、結果を予測する分類指標の能力を試験するために、術後アジュバントタモキシフェン治療のみを受けた68名のER+患者から構成したUppsalaコホートの亜集団を検査した。図6は、内分泌治療を行った患者で、p53分類指標が、p53の変異状態よりも予後予測の重要性が高いことを示す。68名のER+であり内分泌治療を行った患者を(A)p53の変異状態または(B)p53分類指標に従って分類し、原病生存期間(DSS)との相関を分析した。カプラン−マイヤー生存評価を示す。図6AおよびBの生存分析に示されるように、この分類指標は、原病生存期間の有意な予測器(p=0.047)であったが、p53の変異状態単独はそうではなかった(pw=0.395)ことが観察された。
【0103】
次に、van't Veerらによって公にされた97の胸部腫瘍セット(van't Veer, L. J.ら、”Gene expression profiling predicts clinical outcome of breast cancer(遺伝子発現プロファイリングによって乳癌の臨床結果を予測)” Nature 415, 530-6 (2002)、参照により本明細書に組み込む)での分類指標の予後予測の性能を検査した。図7は、p53分類指標が、初期であり局所治療を受けた胸部腫瘍の独立したセットで遠隔再発の予後を予測することを示す。
【0104】
最適化させた分類指標の21遺伝子に相当するプローブセットを使用して、術後アジュバント放射線療法で治療し、少なくとも5年間追跡した初期患者のオランダ人コホートから得た97腫瘍(van't Veer, L. J.ら、”Gene expression profiling predicts clinical outcome of breast cancer (遺伝子発現プロファイリングによって乳癌の臨床結果を予測)”、Nature 415, 530-6 (2002)、参照により本明細書に組み込む)を階層的にクラスタ化した。色および「C」の名称(すなわち、C1〜C5)によって、主要なクラスタノードの境界を画定する。黒色の矢印は、5年以内に遠隔転移(DM)に発達した患者から得た腫瘍に相当する。遺伝子記号および対応するGenbank受託番号を示す。既に記載されている通りに階層的クラスタリングを実施した。
【0105】
ここで、試料の全ては、臨床的に均一になるように制御され、すなわち、サイズが<5cmであり(Tl/T2)、進行した疾患がなく(pN0)、診断時の年齢が55歳未満であり、手術と続く放射線治療のみによって治療した患者(アジュバント全身療法を受けた5名の患者の除く)から得たものであった。32の遺伝子分類指標から、21の遺伝子に対応する24のプローブを生存情報がある全97腫瘍に位置づけることができた。腫瘍クラスタリング後、類似する平均距離相関を有する約4個のクラスタが観察され、そのクラスタは5年以内に遠隔転移を生じたであろう患者を有意に識別した(pfe=2.2×10−4)(図7)。特に、p53wt様分子立体配置に最も近似するクラスタ3の39腫瘍のうちの26%と比較して、分子立体配置がp53mt様腫瘍であるクラスタ1の26腫瘍のうちの73%が5年以内に遠隔転移した。これらの知見から、p53分類指標は、初期であり局所治療を受けた乳癌で腫瘍再発を予後予測するということが示唆される。
【実施例6】
【0106】
分類指標遺伝子の機能の分析
いくつかの機構的な洞察を得るために、その発現レベルおよびp53の状態と、患者の結果との間の相関を説明する手がかりを求めて、分類指標遺伝子の機能性アノテーションを分析した。驚くべきことに、分類指標遺伝子のどれも既知のp53の転写標的ではないばかりか、以前にはp53経路に関与していなかったことが判明した。所定のプロモーター領域を有する21の遺伝子のプロモーターを分析することによって、これらのプロモーターのどれにも、基準のp53結合部位、または近年記載された新規なp53結合部位の形跡がないことが判明した。
【0107】
これらの遺伝子のうち12個は機能が未知である。しかし、特徴づけられた遺伝子のうち、いくつかは、細胞増殖および増殖(MYBL2、TFF1、BRRN1、CHAD、SCGB3A1、DACH、CDCA8)、転写(LAF4、NY−BR−1、DACH、MYBL2)、イオン輸送(CACNG4、CYBRD1、LRP2)、ならびに乳癌生物学(SCGB3A1、TFF1、STC2、NY−BR−1、AGR2)に関連付けられる。推測では、これらの遺伝子のいくつかは、機構的に、p53突然変異体様腫瘍の不十分な予後予測を引き起こしうる。例えば、p53突然変異体様腫瘍で上方制御されるのが観察されたMYBL2は、c−MYB発癌遺伝子に密接に関係する増殖促進転写因子である。それは、しばしば、乳癌(20q13)で増幅する染色体領域に位置づけられ、乳癌細胞系統および孤発性卵巣癌で過剰に発現することが既に報告されている(Forozan, F.ら、”Comparative genomic hybridization analysis of 38 breast cancer cell lines: a basis for interpreting complementary DNA microarray data(38乳癌細胞系統の比較ゲノムハイブリダイゼーション分析:相補的DNAマイクロアレイデータの解釈の基礎)”、Cancer Res 60, 4519-25 (2000)、およびTanner, M. M.ら、”Frequent amplification of chromosomal region 20q12-q13 in ovarian cancer(卵巣癌中の染色体領域20q12−q13の高頻度増幅)”、Clin Cancer Res 6, 1833-9 (2000)、この両方を参照により本明細書に組み込む)。p53突然変異体様腫瘍で下方制御されることが観察されたSCGB3A1(HIN1)は、仮想腫瘍サプレッサー遺伝子であり、過剰に発現した場合、乳癌細胞の増殖を阻害することができ、乳房腫瘍形成初期にそのプロモーターが過剰メチル化することによって、転写的にサイレンスされることが判明している(Krop, I. E.ら、”HIN-1, a putative cytokine highly expressed in normal but not cancerous mammary epithelial cells(HIN−1、正常であり癌ではない乳房上皮細胞中高度に発現した推定サイトカイン)”、Proc Natl Acad Sci USA 98, 9796-801(2001)、参照により本明細書に組み込む)。
【実施例7】
【0108】
誤分類された腫瘍の性質。
【0109】
野生型p53配列状態を有するいくつかの癌が、32遺伝子分類指標を使用する発現プロファイリングによって、p53突然変異体として分類されることが観察された。この「誤分類」されたp53wt腫瘍が、実際にp53の欠陥であったならば、これらは、p53経路の混乱を反映する何らかの分子特性を有し、これらの特性がp53突然変異腫瘍の大多数に見られるはずである。第一に、p53遺伝子の転写阻止(TP53)により、またはそのmRNA半減期の短縮により低下した転写産物レベルから、p53の欠陥が生じうる可能性を考えてみた。異なる腫瘍クラスで、(マイクロアレイに存在するTP53プローブセットを用いて)t検定を使用し、TP53の相対的発現レベルを比較した(図8)。実際、この仮定に一致して、wt様として分類された残りの170のwt腫瘍と比較して、mt様と分類された28のwt腫瘍で、TP53の全体的発現レベルは有意に減少するのが観察された(p=1.4×10−4)。一般に、p53突然変異乳癌では、TP53のmRNAレベルは減少しないのと一致して、正確にmt様と分類されたp53mt腫瘍と、全wt腫瘍との間には、発現レベルにおいて統計上の有意差は観察されなかった。
【0110】
図8は、p53の転写産物レベル、その転写標的、およびその上流エフェクターが、既知の予想したクラスを識別することを示す。p53経路関連遺伝子の発現レベルを試験した。t検定によって、異なる腫瘍クラス間の転写産物レベルの統計上の有意性を定量し、図右のまとめの表に示す。4つの腫瘍クラスは以下通りである。1)突然変異体として分類されたp53mt腫瘍47、2)突然変異体として分類されたp53wt腫瘍28、3)野生型として分類されたp53wt腫瘍170、および4)野生型として分類されたp53mt腫瘍12。グレーで示したまとめの統計的測定値は、有意性がp<0.05に達しなかった。
【0111】
表3は、p53変異の比較分析を示す。(I)重大な変異を挿入、欠失、または終止コドンとして定義した。残りのミスセンス点変異(mpm;wt様群中11、mt様群中27)のうち、IARC TP53変異データベース(国際がん研究機関IARCのウェブサイトでオンラインにより入手可能)によって定義されている通り、(II)p53中最もありふれたミスセンス点変異、および(III)in vitroで優性阻害活性を有することが既に示されている突然変異体の出現頻度を本発明者らは定量した。P値は、フィッシャーの正確確率検定を使用し算出した。
【0112】
p53欠陥腫瘍の変化した転写をある程度示すと仮定した既知のp53転写標的にこのやり方を適用した。実際、いくつかのp53標的遺伝子は変化した発現パターンを示した(図8)。その全てがプロモーターに機能性p53結合部位を含む、TP53誘発遺伝子であるTP53INP1、SEMA3B、PMAIP1(NOXA)、FDXR、CCNG1、およびLRDDは、mt様と分類された28のwt腫瘍で、他方の野生型と比較して発現が有意に減少した(全てp<0.05)。さらにまた、一つを除きこれらの遺伝子は全て、mt様と分類されたp53mt腫瘍で(全wt腫瘍と比較して)有意に減少し、そして2事例を除く全てにおいて、他方の突然変異体と比較した場合、これらの遺伝子は12のwt様として分類されたmt腫瘍でより有意に高発現した。
【0113】
p53をリン酸化し、それによって安定化を促進するp53陽性上流エフェクターであるCHEK1およびCHEK2は、p53によって転写的に抑制されることが知られている。突然変異体様クラスのp53wtおよびmt腫瘍で、これらの遺伝子のmRNAレベルが有意に上昇することが観察された。また、野生型様として誤分類された12のmt腫瘍では、その他の47のp53突然変異体と比較して、これらの遺伝子の発現が有意に減少したことも観察された。特に、これらの胸部腫瘍試料では、p53に調節される遺伝子CDKN1A(p21)、GADD45、PPM1D(WIP1)、TP53I3(PIG3)、TNFRSF6、BBC3(PUMA)、APAF1、またはBCL2は差次的に発現されないことが観察された。
【0114】
総合すると、分類指標はp53転写活性のいくつかの態様に基づいて腫瘍を識別でき、この活性は、突然変異体様クラスのp53突然変異体腫瘍および野生型腫瘍で阻害されるが、野生型様クラスのp53野生型腫瘍(およびある程度12のp53突然変異腫瘍)では作動していることをこれらのデータは示唆している。
【0115】
おそらく逆説的に、p53を誘導する遺伝子PERP、BAX、およびSFN(14−3−3σ)は全て、28の誤分類されたwt腫瘍で、上記の誘導性遺伝子対応物のように低レベルではなく、有意により高いレベルで発現することが観察された。しかし、突然変異体様として分類されたP53mt腫瘍で、これらの遺伝子が有意に過剰発現することも観察され、乳癌では、突然変異体または欠陥p53と関連して調節機序を変えることにより、これらの遺伝子が誘発されうることが示唆された。
【0116】
興味深いことに、CHEK1およびCHEK2の方法と似た方法でp53活性を増強すると思われる、p53の別の陽性上流エフェクターATRもまた、たとえこの遺伝子がp53依存性方式で調節されるかどうか不明であっても、p53突然変異体および突然変異体様クラスのp53wt腫瘍で、より有意に高いレベル発現することが判明した。留意すべきは、上流エフェクターATMまたはPRKDC(DNA−PK)の発現レベルで有意差は観察されなかった。
【0117】
次いで、それによって突然変異体様p53wt腫瘍でp53の発現および活性が減少するかもしれない機序が、変更される可能性を確認するために、p53活性の他の上流モジュレーターの発現レベルを試験した。第一に、HOXA5、USF1、EGR1、およびTP53BP1を含む突然変異体様クラスの野生型および突然変異体で、数個の既知のp53トランス活性化陽性レギュレーターが有意に減少することが観察された。HOXA5、USF1、およびEGR1は全て、p53プロモーターに結合し、その発現を高めることが知られている転写因子である。興味深いことに、3つ全ての欠陥は、乳癌の発癌に既に関与していた。近年、p53およびHOXA5 mRNAの同調的な喪失およびタンパク質の発現が、ヒト乳癌細胞系統パネルで観察され、HOXA5プロモーターが、20のp53陰性ヒト胸部腫瘍の16でメチル化することが判明した。c−Myc腫瘍性タンパク質に構造的に関与するUSF1は、乳癌細胞系統で転写活性を減少させることが判明しており、近年、エストロゲン受容体αの発現を活性化することが示された。抗増殖機能およびアポトーシス機能を有するDNA傷害性応答遺伝子であるEGR1は、ヒト乳癌細胞で外来的に発現させた場合、腫瘍形成能を阻害することができ、ヒトおよびマウス乳癌細胞系統ならびに腫瘍で発現が減少することが観察されている。TP53BP1は、転写因子というよりもDNA傷害に応答してリン酸化するATMのBRCTドメイン含有基質であると考えられている。この遺伝子産物は、p53の中心DNA結合ドメインに結合し、それによってp53標的遺伝子の転写活性化を増強することが知られている。28の突然変異体として分類されたp53wt腫瘍では、全4個の遺伝子の発現が有意に減少し、USF1およびTP53BP1の事例においては、野生型様として分類されたp53突然変異体で発現は有意に高かった。興味深いことに、47の突然変異体様として分類されたp53mt腫瘍では、可能な陽性フィードバックループを示唆して、それらの発現レベルも有意に低く、それによって野生型p53はこれらの遺伝子の発現を増強することができるが、損なわれたp53はそのようにできないことも観察された。これらの観察が別々にまたは組み合わせて作用する可能性を示唆しているのに合わせて、これらの遺伝子は乳房で無傷のp53活性には重要であり、転写的にサイレンスされた場合には、p53の欠陥の一因となりうる。
【0118】
最後に、数個の既知のp53活性陰性レギュレーター発現を検査した。特に、リン酸化が介在するp53タンパク質の分解によって、p53を消極的に調節し、タンパク質レベルでのその過剰発現が様々な癌に関与してきたMDM2は、本明細書に記載した実験では、転写産物レベルで差次的に発現しないことが判明した。しかし、PLK1およびGTSE1は発現した。近年、M相レギュレーターPLK1は、p53のDNA結合ドメインに結合し、それによってin vitroでその転写活性を阻害するするように見えた。GTSE1(B99)は、p53のC末端調節ドメインに結合し、p53トランス活性化機能を阻害し、p53タンパク質の細胞内レベルを減少させる。興味深いことに、両遺伝子の転写産物レベルは、mt様クラスのp53wtおよびmt腫瘍の中で最高に有意に過剰発現し、乳癌の発癌でのp53の機能抑制における、これらの遺伝子産物の可能な役割を示唆した。
【0119】
次に、野生型様として12のp53突然変異腫瘍が誤分類されたことを説明しうる相関についてp53変異のスペクトルを分析した。まず、わずか一つの変異が野生型様および突然変異体様腫瘍に共通することが観察された。DNA結合ドメイン中のアミノ酸220にあるTyr>Cysである。突然変異体として正確に分類された47のp53mt腫瘍の中で、42%(20/47)がフレームシフトと続く切断をもたらす、挿入(n=2)、欠失(n=11)、および終止コドン(n=7)(表3−I)として定義された「重大な」変異を有し、それに対して野生型様として分類された12の突然変異体では、わずか1個(8%)が重大な変異である、グリシン残基のインフレーム付加をもたらすDNA結合ドメインへの3bpの挿入を含有する(pfe=0.025)ことが観察された。2003年6月現在、18,585の体細胞変異および225のp53の生殖細胞系列変異インデックスを有するIARC TP53変異データベース(国際がん研究機関IARCのウェブサイトでオンラインにより入手可能)を使用し、ヒト癌において、12のwt様突然変異体および47のmt様突然変異体中の最も共通するp53変異(全p53変異の約20%を表す;表1−II)の出現頻度を比較した。mt様群の27のうち9と比較して、共通する変異のどれも、wt様群中の11のミスセンス点変異(mpm)サブセットと重複しないことが判明した(pfe=0.029)。次いで、各腫瘍群のmpmと、IARC TP53変異データベースの包括的リストの418の突然変異体とを交差比較したが、これらの突然変異体は、既に公にされた44の研究の少なくとも一つで、優性阻害機能について予め分析されている。表2−IIIに示すように、mt様群の27うちの12と比較して、12のwt様突然変異体のうち11のmpmのわずか1つが、優性阻害活性を有していることが既に実証されていることが判明した(pfe=0.039)。総合すると、これらのデータは、配列レベルでは、野生型様として分類された12のp53突然変異体は、突然変異体様として分類された47のp53突然変異体と比較して、ほとんど「良性」のp53突然変異体を実際に含みうることが示唆され、本発明者らの発現分析におけるp53wt腫瘍の大多数と、それらが分子的に一致することとも一致する。
【表3】

【0120】
p53変異の比較分析。(I)重大な変異を挿入、欠失、または終止コドンとして定義した。残りのミスセンス点変異(mpm;wt様群中11、mt様群中27)のうち、IARC TP53変異データベース(http://www.iarc.fr/p53/index.html)によってに定義されている通り、(II)p53中、最もありふれたミスセンス点変異、および(III)in vitroで優性阻害活性を有することが既に示されている突然変異体の出現頻度を本発明者らは定量した。P値は、フィッシャーの正確確率検定を使用し算出した。
【0121】
本発明の実施には、当業者に公知の慣用の生物学的方法、ソフトウェア、およびシステムを使用しうる。前述の実施例は、患者で疾患の結果を予測する方法を記載した。別の態様では、患者で疾患の結果を予測するためのコンピューターシステムを提供する。そのコンピューターシステムは、プロセッサとメモリを備えることができ、該メモリには、p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップを実施するために、プロセッサに実行させる実行可能コードが保存されている。
【0122】
適当なコンピューターシステムは、例えば、PCやマッキントッシュなど、一般的な汎用コンピューターであってよい。典型的には、本発明のコンピューターソフトウエア製品には、本発明の方法の論理ステップを実施するためのコンピューターが実施することができる指示を含む、コンピューターが読み取り可能な媒体が含まれる。適当なコンピューターが読み取り可能な媒体には、フロッピーディスク、CD−ROM/DVD/DVD−ROM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリー、ROM/RAM、磁気テープなどが含まれる。コンピューターが実施可能な指示は、適当なコンピューター言語または数種の言語の組合せで書かれていてよい。基礎的なコンピューター生物学的方法は、例えば、SetubalおよびMeidanisら、『Introduction to Coniputational Biology Methods (コンピューターによる生物学的方法の手引き)』(PWS Publishing Corripany, Boston, 1997)、Salzberg、Searles、Kasif、(編)、『Computational Methods in Molecular Biology(分子生物学におけるコンピューターによる方法)』、(Elsevier, Amsterdam, 1998)、 RashidiおよびBuehlei、『Bioinformatics Basics: Application in Biological Science and Medicine(バイオインフォマティクスの基礎:生物科学および医薬における応用)』(CRC Press, London, 2000)、およびOueletteおよびBzevanis、『Bioinformatics: A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins(バイオインフォマティクス:遺伝子およびタンパク質分析用実用的ガイド)』(Wiley & Sons, Inc., 第2版,2001)に記載されている。
【0123】
さらに、本発明は、インターネットなどのネットワークを通して遺伝情報を提供する方法を含む好ましい実施形態を含みうる。
【0124】
さらに、本発明のいくつかの実施形態は、多様な癌に対する化学療法剤を設計するための複数の医薬標的を提供しうる。例えば、p53の変異状態に最も相関する32遺伝子は、化学療法用の潜在的分子標的として役立つであろう。化学療法薬物(細胞毒剤)および抗ホルモン治療は、癌を治療するために通常使用されている。しかし、数名の患者では、細胞毒剤および抗ホルモン剤を含む治療レジメンは、軽度から重度の副作用を引き起こすことが知られている。例えば、乳癌では、これらの副作用には嘔吐、嘔気、脱毛症、および疲労が含まれる。従って、有効な癌治療の未来は、その標的に高特異的な薬物と共に存在する。いくつかの研究に従って、臨床開発のパイプラインにおける乳癌薬物の約68%は標的化したクラスのものである。従って、本発明のある態様で具体化させたものなどの分子サインは、重要な手がかりを提供し、または標的化した化学療法剤で他に依存しない標的であることが証明されるであろう。
【0125】
最後に、開示した本発明の実施形態は、p53の状態およびヒト乳房腫瘍での生存を予測することができる遺伝子発現サインを定義する(p53サインまたは分類指標)。乳癌および肝臓癌の独立したデータセット、そして他の臨床特徴に関わらず、そのp53サインのサブセットによって、有意な精度をもってp53の状態を予測することができる。原病生存期間(DSS)の予測器として、このサインは、不均一に治療された患者大コホートで、p53の変異状態単独より有意に優れていた。p53サインは、全身アジュバント療法および局所領域的放射線治療から多少の利益を得た患者を有意に識別できるであろう。ほとんどのヒト癌のあるレベルでp53経路は損傷を受けうるが、p53経路に関与する転写産物の分析によって、p53発現サインが、患者生存および治療応答に影響を与える、胸部腫瘍のこの経路の操作立体配置を定義する(p53の変異状態単独よりもそのようである)ことが示唆される。癌では、全てのp53変異が等しい効果を有するとは限らないことは明らかであり、あるものは単純に機能を喪失させ、あるものは優性阻害効果(野生型p53のトランス優性抑制または発癌機能の獲得など)を有し、またあるものは部分的機能喪失を示し、例えば、p53下流転写標的遺伝子の小サブセットだけが調節不全になる。こうした理由で、p53の状態のただ一つの分子評価が、完全なp53の機能の絶対的指標を提供するとは思われない。本明細書に開示した実施形態は、p53の機能の下流指標を見ることによって、シーケンシングまたは生化学的手段の使用よりも、p53の機能状態を正確に確認しうることをを示唆する。
【0126】
上記説明は、例示を目的とし、限定するものではないことは理解されよう。本発明の多くの変形形態は、上記説明を再考することにより当業者には明白である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲、およびそのような請求項が権利を受ける同等物の全範囲に関して決定される。特許文献および非特許文献を含め、引用した参照文献は全て、参照によりその全体をあらゆる目的において本明細書に組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】開示した本発明の一実施形態で使用するための、p53の状態と統計学的に相関する上位250遺伝子を使用する、257腫瘍の階層的クラスタリングを示す図である。
【図2A−B】開示した本発明の実施形態に一致して、p53の状態に対する遺伝子分類指標の最適化および結果を示す図である。
【図2C】開示した本発明の実施形態に一致して、p53の状態に対する遺伝子分類指標の最適化および結果を示す図である。
【図3】開示した本発明の実施形態に一致して、分類指標遺伝子が、独立したcDNAマイクロアレイデータセットでp53の状態を予測できることを示す図である。
【図4】開示した本発明の実施形態に一致して、p53分類指標が、p53の変異状態単独よりも予後予測の重要性が高いことを示す図である。
【図5】開示した本発明の実施形態に一致して、後期腫瘍の独立したデータセットで、p53分類指標の予後予測の重要性が極めて高いことを示す図である。
【図6】開示した本発明の実施形態に一致して、内分泌治療を行った患者で、p53分類指標が、p53の変異状態よりも予後予測の重要性が高いことを示す図である。
【図7】開示した本発明の実施形態に一致して、初期であり局所治療を施した胸部腫瘍の独立したセットで、p53分類指標が、遠隔再発の予後徴候であることを示す図である。
【図8】開示した本発明の実施形態に一致して、p53の転写産物レベル、その転写標的、およびその上流エフェクターが、既知の予想されるクラスを識別することを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者で疾患の結果を予測する方法であって、
p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、
突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、
差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および
患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップ
を含む上記方法。
【請求項2】
疾患の結果が、原病生存期間、無病生存期間、腫瘍再発、および治療応答からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疾患が乳癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
疾患が肝臓癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
差次的に発現した遺伝子と、p53の変異状態、ERの状態、および腫瘍の組織学的等級との関連性に従って該差次的に発現した遺伝子をランク付けることによって、予想したp53の変異状態を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子を多変量ランク付け手順に従ってランク付ける、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記多変量ランク付け手順が線形モデル適合(Linear Model-Fit)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
予想したp53の変異状態が、管理学習(supervised learning)法の使用によって得られる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記管理学習法が対角線形判別分析(Diagonal Linear Discriminant Analysis)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
p53の変異状態を予測するための遺伝子セットが、少なくとも3遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
p53の変異状態を予測するための遺伝子セットが、3〜500の遺伝子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
p53の変異状態を予測するための遺伝子セットが、32の遺伝子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記32の遺伝子が、表1の遺伝子リストを含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記32の遺伝子が、配列番号23、配列番号22、配列番号31、配列番号14、配列番号11、配列番号26、配列番号21、配列番号30、配列番号27、配列番号8、配列番号2、配列番号9、配列番号1、配列番号29、配列番号17、配列番号20、配列番号6、配列番号18、配列番号24、配列番号10、配列番号13、配列番号32、配列番号28、配列番号5、配列番号16、配列番号25、配列番号15、配列番号7、配列番号4、配列番号3、配列番号12、および配列番号19からなる群から選択された配列である遺伝子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
後期乳癌患者で疾患の結果を予測する方法であって、
p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、
突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、
差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および
後期乳癌患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップであって、該遺伝子セットをコードする配列が、配列番号22、配列番号31、配列番号11、配列番号9、配列番号1、配列番号29、配列番号28、配列番号5、および配列番号25からなる群から選択されるステップ
を含む上記方法。
【請求項16】
初期であり局所治療を受けた乳癌患者で臨床結果を予測する方法であって、
p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、
突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、
差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および
初期であり局所治療を受けた乳癌患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップであって、該遺伝子セットが、配列番号23、配列番号22、配列番号31、配列番号14、配列番号11、配列番号26、配列番号8、配列番号9、配列番号1、配列番号29、配列番号20、配列番号24、配列番号10、配列番号32、配列番号28、配列番号5、配列番号16、配列番号25、配列番号15、配列番号7、および配列番号3からなる群から選択された配列である遺伝子から選択されるステップ
を含む上記方法。
【請求項17】
肝臓癌患者で臨床結果を予測する方法であって、
p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、
突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、
差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および
肝臓癌患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップであって、該遺伝子セットが、配列番号31、配列番号14、配列番号11、配列番号1、配列番号20、配列番号24、配列番号28、および配列番号5からなる群から選択された配列を含むステップ
を含む上記方法。
【請求項18】
患者で疾患の結果を予測するための遺伝子群を同定する方法であって、
p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、
突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、
p53の変異状態を予測するために、差次的に発現した該遺伝子をその能力に従ってランク付けるステップ、
突然変異体および野生型のp53遺伝子発現プロファイルを識別するために、ランク付けしたそれらの遺伝子を訓練するステップ、
p53の変異状態を予測する能力がある遺伝子セットを含むp53分類指標を得るステップ、
独立したデータセット中の該p53分類指標を確証するステップ、および
患者で疾患の結果を予測するために、該p53分類指標の能力を評価するステップ
を含む上記方法。
【請求項19】
前記差次的に発現した遺伝子と、p53の状態、ERの状態、および腫瘍の組織学的等級との関連性に従って、該遺伝子を多変量ランク付け手順によりランク付ける、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多変量ランク付け手順が線形モデル適合である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記訓練するステップが、管理学習法の使用を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記管理学習法が対角線形判別分析である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記p53分類指標が少なくとも3遺伝子を含む、請求18に記載の方法。
【請求項24】
前記p53分類指標が3〜500の遺伝子を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
最適化させたp53分類指標が32の遺伝子を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記最適化させたp53分類指標が、配列番号23、配列番号22、配列番号31、配列番号14、配列番号11、配列番号26、配列番号21、配列番号30、配列番号27、配列番号8、配列番号2、配列番号9、配列番号1、配列番号29、配列番号17、配列番号20、配列番号6、配列番号18、配列番号24、配列番号10、配列番号13、配列番号32、配列番号28、配列番号5、配列番号16、配列番号25、配列番号15、配列番号7、配列番号4、配列番号3、配列番号12、および配列番号19からなる群から選択された配列である遺伝子を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
疾患の結果が、原病生存期間、無病生存期間、腫瘍再発、および治療応答からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
9遺伝子の部分的分類指標によって、後期乳癌患者で臨床結果を予測することができる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記9遺伝子の部分的分類指標が、配列番号22、配列番号31、配列番号11、配列番号9、配列番号1、配列番号29、配列番号28、配列番号5、および配列番号25からなる群から選択された配列である遺伝子を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
21遺伝子の部分的分類指標によって、初期であり局所治療を受けた乳癌患者で臨床結果を予測することができる、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記21遺伝子の部分的分類指標が、配列番号23、配列番号22、配列番号31、配列番号14、配列番号11、配列番号26、配列番号8、配列番号9、配列番号1、配列番号29、配列番号20、配列番号24、配列番号10、配列番号32、配列番号28、配列番号5、配列番号16、配列番号25、配列番号15、配列番号7、および配列番号3からなる群から選択された配列である遺伝子を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
8遺伝子の部分的分類指標によって、肝臓癌患者で臨床結果を予測することができる、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記8遺伝子の部分的分類指標が、配列番号31、配列番号14、配列番号11、配列番号1、配列番号20、配列番号24、配列番号28、および配列番号5からなる群から選択された配列である遺伝子を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
患者で疾患の結果を予測するためのコンピューターシステムであって、プロセッサとメモリとを有するコンピューターを備え、該メモリ上には、
p53遺伝子の突然変異体または野生型でありうる腫瘍試料の複数の遺伝子から遺伝子発現プロファイルを得るステップ、
突然変異腫瘍または野生型腫瘍中でどの遺伝子が差次的に発現しているのかを判定するために、該遺伝子発現プロファイルを比較するステップ、
差次的に発現した該遺伝子から、p53の変異状態を予測するための遺伝子セットを抽出するステップ、および
患者で疾患の結果を予測するために、該遺伝子セットを使用するステップ
を実施するために、プロセッサに実行させる実行可能コードが保存されている上記コンピューターシステム。
【請求項35】
p53の変異状態を予測する能力がある複数の遺伝子を固体支持体に固定させた、患者で疾患感受性を予測するための診断ツール。
【請求項36】
前記固体支持体がマイクロアレイである、請求項35に記載の診断ツール。
【請求項37】
前記複数の遺伝子が、GenBank受託番号:配列番号23、配列番号22、配列番号31、配列番号14、配列番号11、配列番号26、配列番号21、配列番号30、配列番号27、配列番号8、配列番号2、配列番号9、配列番号1、配列番号29、配列番号17、配列番号20、配列番号6、配列番号18、配列番号24、配列番号10、配列番号13、配列番号32、配列番号28、配列番号5、配列番号16、配列番号25、配列番号15、配列番号7、配列番号4、配列番号3、配列番号12、および配列番号19からなる群から選択される遺伝子を含む、請求項35に記載の診断ツール。
【請求項38】
前記複数の遺伝子が、配列番号22、配列番号31、配列番号11、配列番号9、配列番号1、配列番号29、配列番号28、配列番号5、および配列番号25からなる群から選択された配列である遺伝子を含む、請求項37に記載の診断ツール。
【請求項39】
前記複数の遺伝子が、配列番号23、配列番号22、配列番号31、配列番号14、配列番号11、配列番号26、配列番号8、配列番号9、配列番号1、配列番号29、配列番号20、配列番号24、配列番号10、配列番号32、配列番号28、配列番号5、配列番号16、配列番号25、配列番号15、配列番号7、および配列番号3からなる群から選択された配列である遺伝子を含む、請求項37に記載の診断ツール。
【請求項40】
前記複数の遺伝子が、配列番号31、配列番号14、配列番号11、配列番号1、配列番号20、配列番号24、配列番号28、および配列番号5からなる群から選択された配列である遺伝子を含む、請求項37に記載の診断ツール。
【請求項41】
固体支持体と、その上にディスプレイさせた、患者でp53の変異状態を予測する能力がある遺伝子に対応する核酸プローブとを有する、患者で疾患感受性を予測するための核酸アレイ。
【請求項42】
少なくとも8の核酸プローブを有する、請求項41に記載の核酸アレイ。
【請求項43】
少なくとも32の核酸プローブを有する、請求項42に記載の核酸アレイ。
【請求項44】
少なくとも500の核酸プローブを有する、請求項43に記載の核酸アレイ。

【図1】
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【図2A−B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−521383(P2008−521383A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535648(P2007−535648)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/SG2005/000338
【国際公開番号】WO2006/052218
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(506205103)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (26)
【氏名又は名称原語表記】AGENCY FOR SCIENCE,TECHNOLOGY AND RESEARCH
【Fターム(参考)】