説明

pH調整をともなう多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法及びそれを使用した1,3−ブタジエンの製造方法。

【課題】
pH調整をともなう多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法及びそれを使用した1,3−ブタジエンの製造方法を提供すること。
【解決手段】
本発明は、共沈用の共沈溶液のpHを変化させることによって多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法及び該触媒を使用した1,3−ブタジエンの製造方法に関する。調節したpHを有する溶液を使用し共沈させた前記多成分系モリブデン酸ビスマス触媒、その製造方法、並びに反応物としてn−ブテン及びn−ブタンを含有するC4混合物を使用した酸化的脱水素化反応による1,3−ブタジエンの製造方法が提供された。多くの不純物を含有するC4ラフィネートは、n−ブタンの分離及びn−ブテンの抽出のための追加の工程なしに反応物として直接使用され、これにより高収率で1,3−ブタジエンを得る。多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の活性は、従来技術において開示されていない、共沈溶液の正確なpH調節により単純に増加することができる。この方法は当技術分野において報告されている多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の活性の増加に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共沈用の共沈溶液のpHにおける変化による多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法、及び該触媒を使用した1,3−ブタジエンの製造方法に関し、さらに詳しくは、調節されたpHを有する溶液を使用した共沈による多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法、そしてさらに、上記触媒の存在下において、n−ブタンを分離する又はn−ブテンを抽出するための追加の工程なしに、n−ブタン及びn−ブテンを含有する安価なC4混合物から高付加価値の1,3−ブタジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、石油化学市場において次第に増加している需要である1,3−ブタジエンを得る方法には、ナフサ分解、n−ブテンの直接脱水素化反応、及びn−ブテンの酸化的脱水素化反応が含まれる。しかしながら、供給される1,3−ブタジエンの90%に関与するナフサ分解工程は、高い反応温度によって高エネルギーの消費を必要とする。その上、この工程は1,3−ブタジエンのみを製造するための単独工程ではないため、ナフサ分解装置への投資及びその経営は1,3−ブタジエンの製造要求にあわせるために最適化することは難しい。つまり、上記工程により増加したブタジエン需要を満たすために、さらに新しいナフサ分解装置が設置されることが必要であり、そしてそれに応じて、1,3−ブタジエン以外のラフィネート成分が余分に製造される。加えて、吸熱反応であるn−ブテンの直接脱水素化反応は、高収率で1,3−ブタジエンを製造するために高温及び低圧条件を必要とし、及び熱力学的に不利であり、従って1,3−ブタジエンの商業的製造には適さない[M. A. Chaar, D. Patel, H.H. Kung, J. Catal., vol. 109, pp. 463 (1988) / E. A. Mamedov, V. C. Corberan, Appl. Cata. A, vol. 127, pp. 1 (1995) / L. M. Madeira, M. F. Portela, Catal. Rev., vol. 44, pp. 247 (2002)]。
【0003】
加えて、n−ブテンの酸化的脱水素化反応はn−ブテンと酸素との反応であり、1,3−ブタジエン及び水を製造する。この反応は、安定な水が生成物として製造されるため、熱力学的に有利であり、そしてまた発熱をともなう性質のおかげで、更に熱を供給することなく、低下した反応温度でさえ1,3−ブタジエンが高収率で得られ得るため、商業的に有利でもある。さらにまた、この工程は追加の蒸気を製造し、それ故にエネルギー削減に関して有利である。従って、1,3−ブタジエンの製造のためのn−ブテンの酸化的脱水素化反応は、単工程により1,3−ブタジエンの製造を可能にする効果的な代替手段として考えられる。特に、n−ブタン等の不純物を含有するC4ラフィネート−3又はC4混合物が追加の分離工程なしにn−ブテンの原料として直接使用される場合、残りのC4ラフィネート成分への高付加価値化の利益が実現され得る。具体的には、本発明に使用される反応物であるC4ラフィネート−3混合物は、ナフサ分解により製造されたC4混合物から有用な成分を分離した後の残りの安価なC4ラフィネートである。さらに具体的には、ナフサ分解により製造されたC4混合物から1,3−ブタジエンを抽出した後の残りの第1混合物がラフィネート−1と呼ばれ、ラフィネート1からイソブチレンを抽出した後の残りの第2混合物がラフィネート−2と呼ばれ、及びラフィネート−2から1−ブテンを抽出した残りの第3混合物がラフィネート−3と呼ばれる。従って、前記C4ラフィネート−3又はC4混合物は主に2−ブテン(トランス−2−ブテン及びシス−2−ブテン)、n−ブタン、及び1−ブテンからなる。
【0004】
前述のように、n−ブテン(1−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン)の酸化的脱水素化反応によれば、n−ブテンは酸素と反応し、それに伴い、1,3−ブタジエン及び水を製造する。n−ブテンの酸化的脱水素化反応は単工程により1,3−ブタ
ジエンを製造することの効果的な代替案ではあるが、前記反応は、例えば反応物として酸素を使用することにより、完全な酸化を含む、多くの副反応の原因となるはずである。それ故、最大限にこの様な副反応を阻害し、及び1,3−ブタジエンにとって高選択度を有する触媒の開発が最重要である。従来知られている、n−ブテンの酸化的脱水素化反応において使用される触媒としては、フェライト係触媒[RJ. Rennard, W.L. Kehl, J. Catal., vol. 21, pp. 282 (1971)/W.R. Cares, J.W. Hightower, J. Catal., vol. 23, pp. 193 (1971)/M.A. Gibson, J.W. Hightower, J. Catal., vol. 41, pp. 420 (1976)/H.H. Kung, M.C. Kung, Adv. Catal., vol. 33, pp. 159 (1985)/J.A. Toledo, M.A. Valenzuela, H. Armendariz, G. Aguilar-Rios, B. Zapzta, A. Montoya, N. Nava, P. Salas, I. Schifter, Catal. Lett., vol. 30, pp. 279 (1995)]、錫系触媒[Y.M. Bakshi, R.N. Gur'yanova, A.N. Mal'yan, A.I. Gel'bshtein, Petroleum Chemistry U.S.S.R., vol. 7, pp. 177 (1967)]、モリブデン酸ビスマス系触媒[A.C.A.M. Bleijenberg, B.C. Lippens, G.C.A. Schuit, J. Catal., vol. 4, pp. 581 (1965)/Ph.A. Batist, B.C. Lippens, G.C.A. Schuit, J. Catal., vol. 5, pp. 55 (1966)/M.WJ. Wolfs, Ph.A. Batist, J. Catal.,
vol. 32, pp. 25 (1974)/WJ. Linn, A.W. Sleight, J. Catal., vol. 41, pp. 134 (1976)/W. Ueda, K. Asakawa, C-L. Chen, Y. Moro-oka, T. Ikawa, J. Catal., vol. 101, pp. 360 (1986)/Y. Moro-oka, W. Ueda, Adv. Catal., vol. 40, pp. 233 (1994)/R.K. Grasselli, Handbook of Heterogeneous Catalysis, vol. 5, pp. 2302 (1997)]などが含まれる。
【0005】
これら触媒のうち、モリブデン酸ビスマス系触媒は、ビスマスとモリブデン酸化物のみからなるモリブデン酸ビスマス触媒及びさらに種々の金属成分を含む多成分系モリブデン酸ビスマス触媒を含む。純粋なモリブデン酸ビスマスは様々な相に存在し、特に、α−モリブデン酸ビスマス(Bi2Mo312)、β−モリブデン酸ビスマス(Bi2Mo29
及びγ−モリブデン酸ビスマス(Bi2MoO6)を含む3相が触媒として有用であることが知られている[B. Grzybowska, J. Haber, J. Komorek, J. Catal., vol. 25, pp. 25 (1972)/A.P.V. Soares, L.K. Kimitrov, M.C.A. Oliveira, L. Hilaire, M.F. Portela, R.K. Grasselli, Appl. Catal. A, vol. 253, pp. 191 (2003)]。しかしながら、単一相を有する純粋なモリブデン酸ビスマス触媒の存在下において、n−ブテンの酸化的脱水素化反応による1,3−ブタジエンの製造方法は、低収率で1,3−ブタジエンを製造するため、商業化には適していない[Y. Moro-oka, W. Ueda, Adv. Catal., vol. 40, pp. 233 (1994)]。そのための代案として、n−ブテンの酸化的脱水素化反応に対する活性を増加するために、ビスマスとモリブデン酸だけでなく種々の金属成分を含む多成分系ンモリブデン酸ビスマス触媒の製造の試みがなされている[M.W.J. Wolfs, Ph. A. Batist, J. Catal., vol. 32, pp. 25 (1974)/S. Takenaka, A. Iwamoto, US Patent No. 3,764,632 (1973)]。
【0006】
いくつかの特許及び文献にn−ブテンの酸化的脱水素化反応のための多成分系モリブデン酸ビスマス触媒が報告されている。具体的には、多くの報告は、ニッケル、セシウム、ビスマス及びモリブデンを含む混合酸化物触媒を使用して520℃で1−ブテンの酸化的脱水素化反応を行い、69%の収率で1,3−ブタジエンを得[M. W. J. Wolfs, Ph.A. Batist, J. Catal., vol. 32, pp. 25 (1974)]、コバルト、鉄、ビスマス、マグネシウ
ム、カリウム及びモリブデンを含む混合酸化物触媒を使用した470℃でn−ブタン及びn−ブテンを含有するC4−混合物の酸化的脱水素化反応を行い、62%の最大収率で1,3−ブタジエンを得[S. Takenaka, H. shimizu, A. Iwamoto, Y. Kuroda, 米国特許第3,998,867号明細書(1976)]、及びニッケル、コバルト、鉄、ビスマス、リン、カリウム、及びモリブデンを含む混合酸化物触媒を使用して320℃で1−ブテンの酸化的脱水素化反応を行い、96%の最大収率で1,3−ブタジエンを得ている[S. Takenaka, A. Iwamoto、米国特許第3,764,632号明細書(1973)]。
【0007】
このような方法において、上記文献において公開された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒が使用された場合、1,3−ブタジエンは非常に高収率で得られ得るが、しかし、触媒が単純な金属成分の添加及びその割合を変えることによりのみ調整可能なため、触媒活性成分の増加に制限が課せられる。さらにその上、触媒活性は反応時間とともに急激に減少し、そして、触媒活性を増加させるために追加の金属成分は添加され続けねばならず、そして、前記触媒は非常に複雑な組成であり、及び再現性を確保するのは難しい。上記の慣用技術において、純粋なn−ブテン(1−ブテン又は2−ブテン)のみが反応物として使用され、または他の方法で、たとえn−ブタン及びn−ブテンの混合物が反応物として供給されたとしても、10質量%未満の少量のn−ブタンが含まれているC4混合物が使用されている。それ故に、n−ブタンの量が増加した場合において、1,3−ブタジエンの収率が減少することが予測される。実際の石油化学工程において反応物として多量のn−ブテンを含有するC4混合物を使用するために、残りのC4混合成分からn−ブテンを分離する工程が基本的に行われ、そのため極めて経済効率が損なわれる。典型的な例として、フェライト触媒を使用した工業用の工程において、n−ブタンの量が5質量%未満よりも低く維持されたC4混合物が反応物として使用される。
【0008】
上述したように、前記触媒及びn−ブテンの酸化的脱水素化反応による1,3−ブタジエンの製造のための工程に関する文献及び特許は、純粋な1−ブテン、2−ブテン又はそれらの混合物が反応物として使用されることを特徴とし、又はその他の方法として、多量のn−ブテンを含有するC4混合物が反応物として使用され、さらに単金属成分の添加及びその割合の変更に由来する、非常に複雑な組成を有した多成分系金属酸化物が触媒として使用されている。しかしながら、そのpHが調節された共沈溶液を使用した共沈により製造された比較的単純な金属成分を含む多成分系モリブデン酸ビスマスの存在下で、C4ラフネート−3又は高濃度のn−ブタンを有するC4混合物を含有するC4ラフィネートから1,3−ブタジエンが製造された例は、未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,998,867号明細書
【特許文献2】米国特許第3,764,632号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M. A. Chaar, D. Patel, H.H. Kung, J. Catal., vol. 109, pp. 463 (1988)
【非特許文献2】E. A. Mamedov, V. C. Corberan, Appl. Cata. A, vol. 127, pp. 1 (1995)
【非特許文献3】L. M. Madeira, M. F. Portela, Catal. Rev., vol. 44, pp. 247 (2002)
【非特許文献4】RJ. Rennard, W.L. Kehl, J. Catal., vol. 21, pp. 282 (1971)
【非特許文献5】W.R. Cares, J.W. Hightower, J. Catal., vol. 23, pp. 193 (1971)
【非特許文献6】M.A. Gibson, J.W. Hightower, J. Catal., vol. 41, pp. 420 (1976)
【非特許文献7】H.H. Kung, M.C. Kung, Adv. Catal., vol. 33, pp. 159 (1985)
【非特許文献8】J.A. Toledo, M.A. Valenzuela, H. Armendariz, G. Aguilar-Rios, B. Zapzta, A. Montoya, N. Nava, P. Salas, I. Schifter, Catal. Lett., vol. 30, pp. 279 (1995)
【非特許文献9】Y.M. Bakshi, R.N. Gur'yanova, A.N. Mal'yan, A.I. Gel'bshtein, Petroleum Chemistry U.S.S.R., vol. 7, pp. 177 (1967)
【非特許文献10】A.C.A.M. Bleijenberg, B.C. Lippens, G.C.A. Schuit, J. Catal., vol. 4, pp. 581 (1965)
【非特許文献11】Ph.A. Batist, B.C. Lippens, G.C.A. Schuit, J. Catal., vol. 5, pp. 55 (1966)
【非特許文献12】M. W. J. Wolfs, Ph.A. Batist, J. Catal., vol. 32, pp. 25 (1974)
【非特許文献13】WJ. Linn, A.W. Sleight, J. Catal., vol. 41, pp. 134 (1976)
【非特許文献14】W. Ueda, K. Asakawa, C-L. Chen, Y. Moro-oka, T. Ikawa, J. Catal., vol. 101, pp. 360 (1986)
【非特許文献15】Y. Moro-oka, W. Ueda, Adv. Catal., vol. 40, pp. 233 (1994)
【非特許文献16】R.K. Grasselli, Handbook of Heterogeneous Catalysis, vol. 5, pp. 2302 (1997)
【非特許文献17】B. Grzybowska, J. Haber, J. Komorek, J. Catal., vol. 25, pp. 25 (1972)
【非特許文献18】A.P.V. Soares, L.K. Kimitrov, M.C.A. Oliveira, L. Hilaire, M.F. Portela, R.K. Grasselli, Appl. Catal. A, vol. 253, pp. 191 (2003)
【非特許文献19】Y. Moro-oka, W. Ueda, Adv. Catal., vol. 40, pp. 233 (1994)
【非特許文献20】M.W.J. Wolfs, Ph. A. Batist, J. Catal., vol. 32, pp. 25 (1974)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、前記慣用技術の限界を克服するために研究を続けた結果、本発明は、多成分系モリブデン酸ビスマスが、調節されたpHを有する共沈溶液を使用した共沈により製造され得、それによって、他の複雑な金属成分の添加あるいはその割合の変更が無くとも、n−ブテンの酸化的脱水素化反応にとって高活性を示す単純な金属成分を含む多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造が可能であり、そして特に、追加の分離工程が無いとしても、前記触媒の存在下、反応物として、多量のn−ブテン及びn−ブテンを含む安価なC4混合物を使用した酸化的脱水素化反応により、1,3−ブタジエンが製造され得ることを開示し、斯様にして本発明は完成した。
【0012】
従って、本発明は、pHの調節を有した共沈溶液を使用した共沈により1,3−ブタジエンを製造するための多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法を提供する。加えて、本発明は、前記方法によって製造された触媒の存在下において、追加の分離工程なしに反応物としてC4混合物を直接使用して酸化的脱水素化反応による1,3−ブタジエンを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、1,3−ブタジエンの製造に使用されるための多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法は
a)2価カチオン金属成分前駆体、3価カチオン金属成分前駆体、及びビスマス前駆体を含有する第一溶液を調製すること、
b)モリブデン前駆体が溶解した第二溶液を調製すること、
c)第一溶液を第二溶液に加え、共沈を行って共沈溶液を得、そして前記共沈溶液のpHが6乃至8に調節されるように1乃至3moL/L(M)のアルカリ溶液を前記共沈溶液に滴下添加すること、及び
d)調節されたpHを有する前記共沈溶液を1乃至2時間の間攪拌し、それから水を除去し、斯様にして固形成分を得ること、並びに
e)固形成分を20乃至300℃で乾燥し、その後熱処理を400乃至600℃で行うこと、
を含み得る。
【0014】
加えて、1,3−ブタジエンの製造方法は、
a)反応器の固定床に、上記の方法を使用して製造したモリブデン酸ビスマス触媒を充填すること、
b)反応物としてn−ブテン含有C4混合物、空気及び蒸気を、前記反応器の触媒床に連続的に通しながら酸化的脱水素化反応を行うこと、及び
c)1,3−ブタジエンを得ること、
を含み得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、n−ブテンの酸化的脱水素化反応に高活性を示すため有利である、1,3−ブタジエンの製造において使用される多成分系モリブデン酸ビスマスは、金属成分の添加及びその割合の変更することなしに共沈溶液のpHの調節により得ることができる。本発明の多成分系モリブデン酸ビスマス触媒が使用される場合、多量のn−ブタンを含有する該C4混合物は追加のn−ブタン分離によらないものであるが、反応物として主にn−ブタン及びn−ブテンからなるC4混合物を直接使用した酸化的脱水素反応により、1,3−ブタジエンは製造可能である。さらにその上、本発明の共沈溶液のpHの調節による多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法は、従来の文献及び特許に開示された触媒の活性がさらに増加するように、当技術分野で典型的な多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造に適用可能なことが期待される。
【0016】
本発明において、石油化学産業においてほとんど実用性のないC4混合物及びC4ラフィネート−3が1,3−ブタジエンの製造に直接利用されることが可能であり、その結果1,3−ブタジエンの製造のための単工程を確保し及び安価なC4ラフィネートに価値を付与する。さらにその上、1,3−ブタジエンの製造のための単工程が保証され、その結果増加している1,3−ブタジエンの需要のために最適化された生産が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施例の、共沈の過程で共沈溶液のpHによる7種の多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の反応活性の変化を示した図である。
【0018】
【図2】図2は、本発明の実施例の、pH8の共沈溶液から共沈された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の存在下での反応時間による1,3−ブタジエンの収率の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の詳細な説明を示す。上記のように、本発明は、調節されたpHを有する溶液を使用した共沈により、慣用技術と比較して単純な組成を有する、n−ブテンの酸化的脱水素化反応に適した多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法、及び追加のn−ブテン分離工程によらないC4混合物が反応物として使用される、前記製造された触媒を使用したn−ブテンの酸化的脱水素化反応による1,3−ブタジエンの製造方法を対象とする。
【0020】
特に、本発明においては、前記C4混合物は、ナフサ分解により製造されたC4混合物から有益な成分を分離した後の残りの、主にn−ブタン及びn−ブテンからなる安価なC4ラフィネートを指す。典型的には、C4混合物から1,3−ブタジエンを抽出した後の残りの第一混合物がラフィネート−1と呼ばれ、該ラフィネート−1からイソブチレンを抽出した後の残りの第二混合物がラフィネート−2と呼ばれ、及び該ラフィネート−2から1−ブテンを抽出した後の残りの第三混合物がラフィネート−3と呼ばれる。従って、本発明における反応物の役割をするC4混合物はC4ラフィネート−3、又は主に2−ブ
テン(トランス−2−ブテン及びシス−2−ブテン)、n−ブタン、及び1−ブテンからなるC4混合物である。
【0021】
n−ブテンの酸化的脱水素化反応による、高い収率での1,3−ブタジエンの製造に使用するための本発明の触媒は、調節されたpHを有する共沈溶液を使用した共沈により製造された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒である。
【0022】
前記多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の触媒活性は、金属成分の数及びその割合の変更に依存して変わる。本発明において、4金属成分を含む及びn−ブテンの酸化的脱水素化反応のための高い活性を示す比較的単純である多成分系モリブデン酸ビスマス触媒は、慣用技術に見られるような金属成分の追加及びその割合の変更なしに共沈溶液のpHの正確な調節により製造される。
【0023】
前記4金属成分の多成分系モリブデン酸ビスマス触媒は2価カチオン金属成分(例えば、Ca、Mg、Fe、Mn、Sr、Ni)、3価カチオン金属成分(例えばFe、Al)、ビスマス及びモリブデンを含有する。前記2価及び3価カチオン金属成分は当技術分野において一般的に及び主として使用される金属を含む。本発明において、ニッケルが2価カチオン金属として使用され、及び鉄が3価カチオン金属として使用される。さらに、多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造のための金属前駆体として、任意の金属前駆体が当技術分野で一般的に知られていれば使用され得る。本発明において、ニッケル前駆体は硝酸ニッケルにより例示され、鉄前駆体は硝酸鉄により例示され、ビスマス前駆体は硝酸ビスマスにより例示され、及びモリブデン前駆体はモリブデン酸アンモニウムにより例示される。同様に、前駆体の割合は多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造のために様々に変更され得る。本発明において、共沈におけるpH調節により触媒活性を増加するために、ニッケル前駆体と鉄前駆体とビスマス前駆体とモリブデン前駆体のモル比が1乃至10:1乃至5:1:5乃至20に設定するのが好ましく、及び8乃至9:2.5乃至3.5:1:11乃至12に設定するのがより好ましい。
【0024】
前記ニッケル、鉄及びビスマスの前駆体は共に蒸留水に溶解され、それから、モリブデン前駆体は別に蒸留水に溶解され、そして前駆体溶液はともに混同された。そのようなものとして、前駆体の種類により、酸性溶液(例えば、硝酸)がその溶解性を高めるために添加され得る。前記前駆体が完全に溶解した後に、前記ニッケル、鉄及びビスマス含有前駆体溶液は前記モリブデン含有前駆体溶液へ注入される。この場合、共沈溶液のpHを均一に調節及び維持するために、1乃至3moL/L(M)のアルカリ溶液が所定の割合で共に添加され得る。添加される前記アルカリ溶液は、特に制限されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアンモニアの溶液を含む。本発明の実施態様においてアンモニア溶液が使用された。もし、アルカリ溶液の濃度が1moL/L(M)よりも低い又は3moL/L(M)より高い場合、触媒活性を示す相の形成が問題となり、及び所望の相以外の不要な相が共に形成され得、それによって触媒活性が低下する。
【0025】
ビスマス含有前駆体溶液の添加速度、及びアンモニア溶液等のアルカリ溶液の添加速度は、共沈用の共沈溶液のpHが6乃至8に均一に維持されるように調整される。所定のpHで共沈された溶液は0.5乃至5時間、好ましくは1乃至2時間、共沈に必要な時間攪拌された。水及びその他の溶液成分は攪拌された溶液から、真空濃縮器又は遠心分離機を使用して除去され、斯様に固体試料を取得した。斯様に取得した固体試料は20乃至300℃、好ましくは150乃至200℃で12乃至24時間乾燥された。斯様に製造された固体触媒は電気炉に置かれ、続いて熱処理が300乃至800℃、好ましくは400乃至600℃、及びさらに好ましくは450乃至500℃の温度で行われ、それによって多成分系モリブデン酸ビスマス触媒が製造された。
【0026】
本発明によれば、共沈の際に共沈溶液のpHの調節により多成分系モリブデン酸ビスマス触媒を製造するための技術は4金属成分を含む多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造に限定されるものではなく、ビスマス及びモリブデンに加えて3種又はそれ以上の金属成分を含む多成分系モリブデン酸ビスマス複合酸化物触媒の製造に適用され得る。
【0027】
本発明によれば、多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の存在下において、反応物として作用するn−ブタンは触媒上に吸着し、触媒の格子酸素は吸着されたn−ブタンの2つの水素原子と反応し、よって1,3−ブタジエン及び水が製造され、及び触媒の格子酸素空孔が反応物である酸素分子で占められるような反応が起こる。この方法により、n−ブテンは触媒上に吸着された場合、触媒のサイトは触媒作用の特性であるn−ブテン及び格子酸素の触媒活性を活性化することができる。さらに、異なるpH値の溶液を使用した共沈により製造された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒は異なる触媒相比及び格子酸素特性を有しているため、共沈溶液のpHの調節により製造された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒は異なる活性が示された。
【0028】
本発明の実施態様によれば、多成分系モリブデン酸ビスマス触媒が同種の金属成分を含む場合においてさえも、その触媒活性は共沈溶液のpHに依存して変化することが見られる(図1)。特に、金属成分の添加及びその割合の変更することなしに単に共沈溶液のpHの調節によるだけで、それらは比較的単純な金属成分を含んでいるだけにかかわらず、本反応のための高い活性を示す多成分系モリブデン酸ビスマス触媒を製造することが可能である。
【0029】
それ故に、本発明の1,3−ブタジエン製造のための触媒は、所定のpHを有する共沈溶液を使用して製造された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒である。所定のpHで調整された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒は前記共沈溶液を使用して取得され、触媒活性を考慮してそのpHは6乃至8に設定された。
【0030】
加えて、本発明は、所定のpHを有する共沈溶液を使用して製造された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の存在下で、n−ブタンの原料として追加のn−ブタンの分離工程によらない、多量のn−ブタンを含有するC4混合物又はC4ラフィネート−3を使用した酸化的脱水素化反応による1,3−ブタジエンの製造方法を提供する。
【0031】
本発明の実施態様において、触媒反応のための直線状のパイレックス(登録商標)反応器は、反応温度が均一に維持できるように電気炉に組み込まれ、及び反応物が該反応器の触媒層を連続して通過している間、前記反応が実施される。反応温度は300乃至600℃、好ましくは300乃至500℃、及びさらに好ましくは420℃に設定される。さらに、触媒量は、GHSV(ガス空間速度)がn−ブテンに基づいて50乃至5000h-1、好ましくは100乃至1000h-1、及びさらに好ましくは150乃至500h-1であるように設定された。反応物として供給されるn−ブテンと空気と蒸気との体積率は1:0.5乃至10:1乃至50、及び好ましくは1:3乃至4:10乃至30に設定された。本発明において、n−ブテンの原料としてのC4混合物又はC4ラフィネート−3の量及びその他反応物としての空気の量はマスフローコントローラを使用して正確に調整された。液層の水は、蒸気が反応器に供給されるようにシリンジポンプを使用し注入しながら気化させた。液層における水のある反応器の一部の温度は、シリンジポンプによって注入された水が瞬時に蒸気に気化するように150乃至300℃、及び好ましくは180乃至250℃に維持され、他の反応物(C4混合物及び空気)と混合され、その後混合物は反応器の触媒床を通過した。
【0032】
本発明の触媒の存在下で反応した反応物のうち、C4混合物は0.5乃至50質量%のn−ブタン、40乃至99質量%のn−ブテン、及び0.5乃至10質量%の他のC4成
分を含有する。前記その他のC4成分としては、例えばイソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、及びイソブテンを含有する。
【0033】
本発明の所定のpHを有する共沈溶液を使用して製造された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の存在下において、1,3−ブタジエンは、反応物としてn−ブタン及びn−ブテンを含有する安価なC4混合物又はC4ラフィネート−3を使用してn−ブテンの酸化的脱水素反応により高収率で製造されることができる。特に、少なくとも20質量%の高濃度のn−ブタンを含有するC4混合物が追加のn−ブタンの分離工程なしに反応物として直接使用された場合でさえ、n−ブテンの高転換率及び1,3−ブタジエンの高い選択度が生じ得、及び、活性は長期間維持され得る。
【0034】
その上、本発明において、金属成分の添加及びその割合の変更により多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の活性を増加することの慣用技術の限界は克服され、及びその触媒活性は共沈溶液のpHの調節により強化された。従って、当技術分野における標準的なすべての多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造に適用できるため、本技術は有利であり、それによってその活性の増加が可能であり、さらに多くの不純物を含有するC4混合物又はC4ラフィネート−3を反応物として使用したときでさえ、1,3−ブタジエンが高収率で得られるため、反応物を分離するための追加の工程の必要なしに工業用の工程に直接適用できる。
【実施例】
【0035】
本発明のよりよい理解は下記に例証した実施例により得られ得るが、本発明の制限として理解されるものではない。
【0036】
製造例1
多成分系モリブデン酸ビスマス触媒のための金属前駆体及び溶液の選択
ニッケル前駆体として硝酸ニッケル6水和物(Ni(NO32・6H2O)、鉄前駆体
として硝酸鉄9水和物(Fe(NO33・9H2O)、ビスマス前駆体として硝酸ビスマ
ス5水和物(Bi(NO32・5H2O)、及びモリブデン前駆体としてモリブデン酸ア
ンモニウム4水和物((NH46Mo724・4H2O)を使用した。硝酸ビスマス5水和物は強酸溶液によく溶解されるのに対し、前記他の金属前駆体は蒸留水によく溶解され、従って、硝酸ビスマス5水和物は硝酸溶液が添加された蒸留水を使用して、別にして溶解した。
【0037】
所定のpHを有する共沈溶液を使用した多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造
具体的には、多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造のために、硝酸ニッケル6水和物(Ni(NO32・6H2O)7.92g及び硝酸鉄9水和物(Fe(NO33・9H2O)3.66gを蒸留水(50mL)に溶解して攪拌した。別に、硝酸ビスマス5水和物(Bi(NO32・5H2O)1.47gを攪拌しながら硝酸3mL含有蒸留水(15m
L)に溶解した。ビスマスが完全に溶解した後、該ビスマス溶液をニッケル及び鉄の前駆体が溶解した溶液に加え、斯様にニッケル、鉄及びビスマスの前駆体が溶解した酸性溶液を調製した。さらに、モリブデン酸アンモニウム4水和物((NH46Mo724・4H2O)6.36gを蒸留水(100mL)に溶解して攪拌し、その溶液を単独で調製した。
ニッケル、鉄及びビスマスの前駆体を溶解させた前記酸性溶液をモリブデン酸溶液に滴下添加した。斯様に、pHを正確に調節するために、共沈溶液のpHを3、4、5、6、7、8、及び9に調節するように、3moL/L(M)のアンモニア溶液へ滴下添加しなが
ら、前記酸性溶液及びアンモニア溶液を異なる速度で添加した。
【0038】
斯様に調製された混合溶液を磁力攪拌器を使用して室温で1時間攪拌し、その後、沈殿した溶液を真空濃縮又は遠心分離し、固体試料を得た。斯様に得られた固体試料を175
℃で24時間乾燥させた。製造された固体触媒を電気炉に設置し、そして475℃で熱処理し、それによって所定のpHを有する共沈溶液から共沈された多成分系モリブデン酸ビスマス触媒を製造した。製造した触媒は成分分析(ICE−AES)により、それによって所望の金属前駆体の量が誤差範囲内で正確に共沈したとして分析された。結果を下記表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1
多成分系モリブデン酸ビスマス触媒存在下でのC4ラフィネート−3又はC4混合物の酸化的脱水素化反応
製造例1で製造した多成分系モリブデン酸ビスマス触媒を使用して、n−ブテンの酸化的脱水素化反応を行った。反応物として、C4混合物、空気及び蒸気を使用し、そして直線状のパイレックス(登録商標)反応器を反応器として使用した。反応物として供給するC4混合物の組成を下記表2に示す。反応物の割合及びGHSVをC4混合物中のn−ブテンに基づいて設定した。n−ブテンと空気と蒸気の比を1:3.75:15に設定した。蒸気が反応器の注入口に水の形で注入され、具体的には水は200℃で蒸気に直接気化され、他の反応物、即ちC4混合物及び空気と混合され、反応器へ注入されるように反応装置を設計した。C4混合物及び空気の量をマスフローコントローラを使用して調整し、蒸気の量は水を含むシリンジポンプの注入速度を調節することによって調整した。反応温度は475℃に維持した。触媒量はn−ブテンに基づいてGHSVが475h-1になるように設定し、反応を行った。その後、反応生成物ガスクロマトグラフィーを使用して分析した。生成物は、目的とする1,3−ブタジエンに加えて、完全酸化により生じた二酸化炭素、生成物による分解、及びn−ブタンからなる。n−ブテンの転化率、1,3−ブタジエンの選択度及び1,3−ブタジエンの収率は下記式1、2、及び3から計算した。
【0041】
式1
転化率(%)=(反応したn−ブテンのモル数/供給したn−ブテンのモル数)×100
【0042】
式2
選択度(%)=(生成した1,3−ブタジエンのモル数/供給したn−ブテンのモル数)×100
【0043】
式3
収率(%)=(生成した1,3−ブタジエンのモル数/供給したn−ブテンのモル数)×100
【0044】
【表2】

【0045】
所定のpHを有する共沈溶液から共沈した多成分系モリブデン酸ビスマス触媒を本反応に適用した。結果を下記表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
実施例2
共沈用の共沈溶液のpHによる多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の反応活性の変化
調製例1における触媒調製及び実施例1における反応活性実験によると、多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の反応活性に関する共沈溶液のpHの効果を図1に示した。共沈溶液のpHが増加するにつれて、反応活性は一般的に増加が観察され、pH8で最も高く、その後pH9で低下した活性が観察された。従って、共沈溶液のpHの変化により、多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の活性は制御できることがわかる。このことは、調製された触媒が個々のpH値でその異なる相及び割合を有し、斯様に触媒活性は触媒自身の特性の変化に依存して多様になる、と考えられる。
【0048】
実施例3
反応時間によるn−ブテンの酸化的脱水素化反応
製造例1で製造され、かつ実施例1において最も高い触媒活性を示した、pH8の共沈溶液を使用して得られた多成分系モリブデン酸ビスマス触媒を使用して触媒の不活化度を評価するために、実施例1のC4混合物の酸化的脱水素反応を行い、そして反応時間による1,3−ブタジエンの収率を観察した。結果を図2に示した。図2に示されるように、反応開始から48時間は、ほぼ触媒の不活化は観察されず、高い活性が維持され続けた。したがって、本発明において製造された触媒はn−ブテンの酸化的脱水素化反応に非常に有効であると理解することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)2価カチオン金属成分前駆体、3価カチオン金属成分前駆体、及びビスマス前駆体を含有する第一溶液を調製すること、
b)モリブデン前駆体が溶解した第二溶液を調製すること、
c)第一溶液を第二溶液に加え、共沈を行って共沈溶液を得、そして前記共沈溶液のpHが6乃至8に調節されるように1乃至3moL/L(M)のアルカリ溶液を前記共沈溶液に滴下添加すること、及び
d)調節されたpHを有する前記共沈溶液を1乃至2時間の間攪拌し、それから水を除去し、斯様にして固形成分を得ること、並びに
e)固形成分を20乃至300℃で乾燥し、その後熱処理を400乃至600℃で行うこと、
を含む、多成分系モリブデン酸ビスマス触媒の製造方法。
【請求項2】
2価カチオン金属成分前駆体と3価カチオン金属成分前駆体とビスマス前駆体とモリブデン前駆体のモル比が1乃至10:1乃至5:1:5乃至20である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記a)における、前記2価カチオン金属成分前駆体が硝酸ニッケルであり、前記3価カチオン金属成分前駆体が硝酸鉄であり、及び前記ビスマス前駆体が硝酸ビスマスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記b)における、前記モリブデン前駆体がモリブデン酸アンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ溶液がアンモニア溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
a)反応器の固定床に、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のモリブデン酸ビスマス触媒を充填すること、
b)反応物としてn−ブテン含有C4混合物、空気及び蒸気を、前記反応器の触媒床に連続的に通過させるとともに酸化的脱水素化反応を行うこと、及び
c)1,3−ブタジエンを得ること、
を含む、1,3−ブタジエンの製造方法。
【請求項7】
前記C4混合物が0.5乃至50質量%のn−ブタン、40乃至99質量%のn−ブテン、並びに0.5乃至10質量%のn−ブタン及びn−ブテン以外のC4混合物を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記n−ブテンと空気と蒸気のモル比が1:0.5乃至10:1乃至50である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化的脱水素化反応が300乃至600℃の反応温度及び50乃至5000h-1のガス空間速度で行われる、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−537798(P2010−537798A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510196(P2010−510196)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002586
【国際公開番号】WO2008/147055
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(507268341)エスケー エナジー 株式会社 (57)
【氏名又は名称原語表記】SK ENERGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】99, Seorin−dong, Jongro−gu, Seoul, 110−110 Republic of Korea
【Fターム(参考)】