説明

ネオヘキセンの製造方法

本発明は、ネオヘキセンを含む反応混合物を形成するために、イソブテンを、タングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、及び有機金属タングステン水素化物から選択されるタングステン化合物を含む担持触媒、及び、アルミニウムの酸化物を含む支持体と接触することを含み、好ましくは、ネオヘキセンを単離するために、反応混合物からネオヘキセンを分離することを含む、ネオヘキセンの製造方法に関する。接触により、特に、単一の(反応)工程において、ネオヘキセンへの高いモル選択性で、ネオヘキセンを直接的に生産することができる。接触は、50乃至600℃の温度、0.01乃至100MPaの全絶対圧下で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオヘキセンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3,3−ジメチル−1−ブテンとも呼ばれるネオヘキセンは、分岐α−オレフィン(アルファオレフィン)類に属し、すなわち、1番目の炭素原子に位置するオレフィン二重結合、及び1以上の炭化水素分岐を有するオレフィンである。接頭辞“ネオ”の定義によれば、ネオヘキセンは、ラジカル−C(CHに対応する特定の末端分岐を有する。ネオヘキセンは、一般式(1)に一致する。
【0003】
式(1)
【化1】

【0004】
ネオヘキセンは、非常に高いオクタン価であることが周知である。例えば、RON(リサーチオクタン価)が111.7、MON(モーターオクタン価)が93.3[E.F.Obertの「内燃機関と大気汚染」(Internal Combustion Engines and Air Pollution, 1973)による]、及び、20℃で、48kPaの比較的低い蒸気圧である。このような理由で、ネオヘキセンは、石油産業界において魅力的な製品であり、特に、ガソリンの添加剤として自動車に用いられる。また、ネオヘキセンは、特に、“Tonalide”(登録商標)という商品名の合成麝香系の香料の合成において重要な中間生成物として用いられる。また、ネオヘキセンは、特に、“Terbinafine”(登録商標)という商品名で、殺菌剤として用いられる。したがって、簡便で、直接的で、かつ安価なネオヘキセンの製造方法の開発が強く望まれていた。
【0005】
米国特許第7,041,861号B2明細書は、オレフィンメタセシス工程、及び、特に、2つの工程を含むネオヘキセンの製造方法を開示する。第一に、第一工程は、エチレン、2,3−ジメチル−2−ブテン(又はテトラメチルエチレン)、イソブテンのCオリゴマー、特に、ジイソブテン(又は2−メチル−4,4−ジメチル−2−ペンテン)、及びイソブテンの高重合のC12オリゴマーの混合物を生成するように、イソブテン自体とイソブテンのメタセシスを含む。前述の混合物の成分を分離し、特に、高重合のオリゴマーを除去した後、ネオヘキセンを生成するためのジイソブテンとエチレン間のメタセシスである第二工程が行われる。オレフィンメタセシス工程では、コバルト、モリブデン若しくはレニウムの担持酸化物、又は、コバルト及びモリブデンの担持酸化物の混合物から選択されるメタセシス触媒と、シリカ又はアルミナの支持体を用いることができることは、より一般的である。ネオヘキセンの製造の第一工程は、図5に表すように、酸性の陽イオン樹脂系の触媒が用いられる。2つの異なる反応工程、及び高重合のオリゴマーの中間除去を含むので、ネオヘキセンの製造方法は複雑であると考えられる。
【0006】
国際公開第98/02244号パンフレットは、シリカでグラフト化されたタンタル又はタングステンの水素化物等の、固形酸化物でグラフト化され分散された金属水素化物を含む金属触媒の存在下でのアルカンのメタセシスの工程を開示する。しかしながら、かかる工程は、アルカンの製造には関連するが、オレフィンには関連せず、ましてや、ネオヘキセン等の分岐α−オレフィンには関連しない。
【0007】
国際公開第2004/089541号パンフレットは、タングステン水素化物、及び酸化アルミニウム系の支持体を含む担持アルカンメタセシス触媒を開示する。かかる触媒は、炭化水素のメタセシスの反応において用いられ、通常の炭化水素(すなわち、非分岐炭化水素)の生成において、前述の条件で非常に高い選択性を示すことが示されている。また、オレフィン製造のための前述の触媒の使用は、想定も示唆もされておらず、ましてや、分岐α−オレフィン、特に、ネオヘキセンについては、想定も示唆もされていない。
【0008】
米国特許第6,878,660号B2明細書は、固体支持体に固定された、少なくとも1個のカルベン基を有する活性レニウム化合物を含む触媒を開示する。前述の触媒は、オレフィンメタセシス反応、特に、自己メタセシス(self−metathesis)反応で用いられ、オレフィンは、モル質量が異なる2つのオレフィンに変換される(例えば、プロピレンは、エチレンと2−ブテンに変換される)。また、かかる触媒は、共メタセシス(co−metathesis)(又は交差メタセシス)反応で用いられ、2つの異なるオレフィンは、2つの別のオレフィンに変換される(例えば、プロピレン及び1−ブテンは、エチレンと2−ペンテンに変換される)。様々なメタセシス反応でシリカに担持されたレニウム触媒の使用例が示される:3−ヘキセンと4−オクテンに変換される3−ヘプテンのメタセシス、2−ブテンとエチレンに変換されるプロピレンのメタセシス、及び、エチレン、2−メチル−2−ブテン及び2−ブテンに変換されるプロピレン及びイソブテンの共メタセシスがみられる。α−オレフィンの本発明の方法による製造は、想定も示唆もされておらず、ましてや、分岐α−オレフィン、特に、ネオヘキセンについては、想定も示唆もされていない。
【0009】
国際公開第2006/013251号パンフレットは、エチレンをプロピレンに変換する方法であって、エチレンは、酸化アルミニウム系の支持体でグラフト化されたタングステン水素化物を含む担持金属化合物を開示する。この特許出願によれば、反応は、少なくとも一部において、ブテンへのエチレンの二量体化の第一工程、そして、その後のエチレンとプロピレンに誘導するブテン間の反応を含むと想定される。かかる工程は、分岐α−オレフィン、特に、ネオヘキセンの製造が到底想定されるものではない。
【0010】
国際公開第2006/013263号パンフレットは、酸化アルミニウムに担持されたタングステン水素化物系の触媒の支持体存在下での、オレフィン二重結合、特に、オレフィンを含む化合物のメタセシスの工程を開示する。工程で用いるオレフィンは、非常に一般的に説明され、すなわち、Csp=Csp型(オレフィン構造)のオレフィン二重結合を含む直鎖又は分岐炭化水素鎖を有するオレフィンで、式がRC=CRであり、Ri(i=1〜4)は、同一であるか異なり、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、又はネオペンチルである。特に、メタセシスの様々な例が示される:エチレン及びブテンに変換されるプロピレンのメタセシス、並びに、プロピレンに変換されるエチレン及び2−ブテンの共メタセシス。イソブテンのメタセシスにおける反応での前述の触媒の使用は、想定も示唆もされておらず、ましてや、分岐α−オレフィンの製造の目的、特に、ネオヘキセン等の“ネオ”型の分岐については、想定も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7,041,861号B2明細書
【特許文献2】国際公開第98/02244号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/089541号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,878,660号B2明細書
【特許文献5】国際公開第2006/013251号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/013263号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
米国特許第7,041,861号B2明細書の教示に反し、今般、特に、単一の(反応)工程を含む簡便な工程により、イソブテンをネオヘキセンに直接的に変換することが可能であることが予期しない方法で見出された。また、米国特許第6,878,660号B2明細書及び国際公開第2006/013263号パンフレットの教示に反し、今般、イソブテン等のオレフィンをα−オレフィンに、特に、分岐α−オレフィンに変換すること、特に、ネオヘキセン等の“ネオ”型の分岐が可能であることが驚くべき方法で見出された。したがって、酸化アルミニウム系の固体に担持された特定のタングステン触媒の存在下で行われるイソブテンの触媒反応により、特に、単一の(反応)工程で、高い選択性で、直接的にネオヘキセン等の分岐α−オレフィンを製造することを初めて可能とした。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ネオヘキセンを含む反応混合物を形成するために、イソブテンを、タングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、及び有機金属タングステン水素化物から選択されるタングステン化合物を含む担持金属触媒、及び、酸化アルミニウムを含む支持体と接触し、ネオヘキセンを、好ましくは、反応混合物から分離及び単離することを特徴とする、ネオヘキセンの製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製造方法では、イソブテンを単独又は実質的に単独で用いることが好ましい。すなわち、イソブテンが任意に他の炭化水素、特に、他のオレフィンと混合されてもよい。そのため、イソブテンは、前述の混合物において、モルで全オレフィンの80%超、好ましくは90%超、特に、95%超に相当する。
【0015】
非常に有利な方法で、本発明の方法は、ネオヘキセンを含む反応混合物を形成するために、好ましくは、該混合物からネオヘキセンを分離及び単離するために、特に、イソブテンと触媒の接触を含む単一の(反応)工程により行われる。
【0016】
本発明の方法によれば、イソブテンと触媒の接触により、ネオヘキセン及び2,3−ジメチル−2−ブテン(又はテトラメチルエチレン)、2,3−ジメチル−1−ブテン、エチレン、並びに、任意にジイソブテン(2−メチル−4,4−ジメチル−2−ペンテン)及び未反応のイソブテン等の一般的な他の化合物を含む反応混合物が直接的に形成する。したがって、得られる反応混合物におけるネオヘキセンのモル比は、一般に、少なくとも5%であり、好ましくは少なくとも15%であり、5乃至35%、時に約50%までよく変動する。また、反応混合物は、30乃至40%の2,3−ジメチル−1−ブテン、7乃至10%の2,3−ジメチル−2−ブテン、10乃至30%のエチレン、及び5乃至10%のジイソブテンを含む(%はモルでのものを表す)。反応混合物は、一般に、高重合のイソブテンのオリゴマー、特に、C12以上を含まず、少なくとも検出されない程度に低い濃度を含む。これは、前述のオリゴマーの分離についての特定の工程を回避できるので、本発明の方法の明確な利点を表すものである。
【0017】
ネオヘキセンは、比較的高いモル選択性(molar selectivity)、特に、5%以上、好ましくは15%以上又は20%より高いモル選択性で生産される。ネオヘキセンにおけるモル選択性(%で表される)は、一般に、生成される全ての炭化水素の全モル数に対する生成されるネオヘキセンのモル数の比(100倍される)を意味し、かかる比は、次の式(2)に従って算出される。
【0018】
式(2)
【化2】

【0019】
また、同様の方法で、より一般的な方法で、接触時に生成されるオレフィン(O)におけるモル選択性(%で表される)は、生成される全ての炭化水素の全モル数に対する前述の生成されるオレフィン(O)のモル数の比(100倍される)として定義され、かかる比は、次の式(3)に従って算出される。
【0020】
式(3)
【化3】

【0021】
イソブテンの接触は、酸化アルミニウムを含む固体で担持された特定のタングステン触媒で行なわれる。前述の触媒により確実に、今般、上述のとおり、特に、単一の(反応)工程において、比較的高い選択性で、イソブテンをネオヘキセンに直接的に変換することができることが見出された。
【0022】
触媒は、好ましくは、上述のとおり、タングステン化合物がグラフト化される(又は固定される)酸化アルミニウムを含んだ支持体を含む。したがって、触媒のタングステン原子は、特に、単一のタングステン−酸素結合(W−OA1)により、酸化アルミニウムの少なくとも1個の酸素原子に結合される。また、タングステン原子は、特に、単一のタングステン−水素結合(W−H)により、タングステン水素化物又は有機タングステン水素化物の少なくとも1個の水素原子、及び/又は、特に、一重、二重又は三重のタングステン−炭素結合により、有機タングステン化合物又は有機タングステン水素化物の少なくとも1個の炭素原子に結合される。
【0023】
触媒の支持体は、酸化アルミニウムを含む固体支持体であり、特に、酸化アルミニウムは、支持体の表面で直接接触可能である。支持体は、好ましくは、特に、構造の全体にわたって均質な組成を有する均質の酸化アルミニウム支持体から選択される。また、支持体は、特に、酸化アルミニウムが主成分であり、好ましくは、酸化アルミニウムが支持体の表面で分散された、不均質の酸化アルミニウム支持体から選択され得る。したがって、例えば、酸化アルミニウムは、金属酸化物又は耐火性酸化物、硫化物、炭化物、窒化物及び塩類、炭素、金属、開孔又は閉鎖されたメソ多孔質構造体MCM21及びMCM22、有機/無機ハイブリッド材料、並びに分子ふるいから選択される、特に、シリカ及び金属酸化物又は耐火性酸化物から選択される支持体である固体支持体において分散され、担持され、又はグラフト化される。
【0024】
支持体は、0.1乃至5000m/gの、好ましくは1乃至3000m/gの、特に、1乃至1000m/gの範囲において選択される、ISO規格9277(1995)により測定される比表面積(B.E.T)であり、最大比表面積は、拡散が反応を制御しない場合であることが好ましい。
【0025】
特に、支持体は、単純な酸化アルミニウム、混合酸化アルミニウム、及び、元素周期表の特に第13乃至17族の、好ましくは第15乃至17族の1以上の元素により改質された酸化アルミニウムから選択される。本明細書において、元素周期表は、1991年にIUPACにより示された、及び、例えば、David R. Lideの[「化学と物理学のCRCハンドブック」(“CRC Handbook of Chemistry and Physics”第76版、1995−1996、CRC Press, Inc., USA)]により発行されたものをいう。
【0026】
支持体は、好ましくは、単純な酸化アルミニウムから選択される。単純なアルミナとも呼ばれる単純な酸化アルミニウムは、実質的に他の酸化物を含まず、特に、一般に不純物として含まれる1以上の酸化物を2重量%未満含む酸化アルミニウムと一般に理解される。酸化アルミニウムが2重量%の、又は1以上の他の酸化物を含む場合、その酸化物は、一般に、混合酸化アルミニウム、少なくとも1つの他の酸化物と結合する酸化アルミニウムとみなされる。単純な酸化アルミニウムは、特に、多孔性アルミナ、半多孔性アルミナ、非多孔性アルミナ、及びメソ多孔性アルミナから選択される。
【0027】
したがって、支持体は、“活性化アルミナ”又は“遷移アルミナ”とよく呼ばれる多孔性アルミナであり得る。多孔性アルミナは、一般に、様々な型の部分的に水酸化された酸化アルミニウム(Al)に相当する。部分的に水酸化された酸化アルミニウムは、例えば、三水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの水酸化物(又は酸化アルミニウムの水和物)、及びゲル状の水酸化アルミニウム(又はアルミナゲル)等の水酸化アルミニウムから選択される先駆物質の熱処理(又は脱水処理)を特に含む活性化処理により、一般に得られる。活性化処理により、先駆物質に含まれる水や水酸基の一部を除去し、残留水酸基及び多孔質構造を残存することを可能にする。最終的に、フレームアルミナ(flame alumina)が使用される場合、多孔質構造は存在し得ない。このような場合は、前処理により水酸基が除去される。多孔性アルミナの表面は、一般に、アルミニウム原子と、酸素原子と、特定の結晶形態により結合し酸性部位及び塩基部位が存在する水酸化物イオンの複合体混合物を含む。異なる結晶形態は、一般に、先駆物質の選択及び活性化処理の条件に依存する。例えば、空気又は不活性ガス等の他のガスの気流の使用、圧力、又は100乃至1000℃、好ましくは150乃至1000℃の範囲において選択される温度である。支持体は、特に、γ−アルミナ(ガンマアルミナ)、η−アルミナ(エータアルミナ)、δ−アルミナ(デルタアルミナ)、θ−アルミナ(シータアルミナ)、κ−アルミナ(カッパアルミナ)、ρ−アルミナ(ローアルミナ)、α−アルミナ(アルファアルミナ)、及びχ−アルミナ(クシー又はサイアルミナ)から選択される多孔性アルミナであり得る。支持体は、好ましくは、γ−アルミナ及びη−アルミナから選択される支持体である。多孔性アルミナは、100乃至1000m/g、好ましくは100乃至5000m/g、特に、200乃至3000m/g、特に、300乃至1000m/gの範囲において選択される比表面積(B.E.T.)である。また、多孔性アルミナは、1.5cm/g以下、好ましくは1.2cm/g以下、特に、1.0cm/g以下の比細孔容積である。
【0028】
また、支持体は、半多孔性アルミナであり得る。半多孔性アルミナは、一般に、上述した活性化処理で、特に、600乃至1000℃の範囲の温度で得られる。半多孔性アルミナは、一般に、多孔性アルミナと非多孔性アルミナが10/90乃至90/10、特に、20/80乃至80/20の範囲の重量比である、上述のうちの1つのような多孔性アルミナと、特に、α−アルミナ(アルファアルミナ)及びγ−アルミナ(ガンマアルミナ)から選択される非多孔性アルミナの混合物を含む。
【0029】
また、支持体は、“か焼アルミナ”又は“フレームアルミナ”という用語で一般に公知である、非多孔性アルミナであり得る。非多孔性アルミナは、α−アルミナ(アルファアルミナ)、又はγ−アルミナ(ガンマアルミナ)である。α−アルミナは、“コランダム”という名で、天然状態で存在し、他の酸化物等の不純物を2重量%未満、好ましくは1重量%未満の割合で含む。また、α−アルミナは、特に、1000℃超、好ましくは1100℃以上の温度で、特に、アルキルアルミニウム(aluminium alkyl)、アルミニウム塩類、酸化アルミニウムの水酸化物、三酸化アルミニウム、及び酸化アルミニウムから選択される先駆物質の熱処理、酸化処理、か焼処理により一般に合成される。非多孔性アルミナは、0.1乃至300m/g、好ましくは0.5乃至300m/g、特に、0.5乃至250m/gの範囲において選択される比表面積(B.E.T.)である。
【0030】
また、支持体は、特に、100乃至800m/gの範囲において選択される比表面積(B.E.T.)、及び、特に、2nm乃至0.05μmの範囲において選択される幅の細孔である、メソ多孔性アルミナであり得る。
【0031】
支持体は、混合酸化アルミニウムから選択され得る。混合酸化アルミニウムは、一般に、2乃至80%未満、好ましくは2乃至50%未満、特に、2乃至40%未満又は2乃至30%未満の範囲において選択される重量割合の少なくとも1つの他の酸化物と結合する酸化アルミニウムを意味する。別の単一の酸化物又は複数の酸化物は、元素周期表の炭素以外の第1乃至13族及び第14族の金属から選択される元素(M)の酸化物である。元素(M)は、特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタニド、及びアクチニド、好ましくは、ケイ素、ホウ素、ガリウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、及びタングステンから選択される。特に、混合酸化アルミニウムは、無水アルミン酸塩、スピネル、シリカアルミナ、及びアルミノケイ酸塩から選択される。
【0032】
また、支持体は、特に、元素周期表の第13乃至17族、好ましくは第15乃至17族の1以上の元素で改質された酸化アルミニウムから選択され得る。ホウ素、リン、硫黄、フッ素、及び/又は塩素により改質された酸化アルミニウムが選択される。支持体は、特に、アルミナの超強酸、又は、ホウ素、アルミニウムのホウ素酸化物、リン、アルミニウムのリン酸化物、リン酸、アルミニウムのリン酸酸化物、アルミニウムのピロリン酸酸化物、オルトリン酸、アルミニウムのオルトリン酸酸化物、硫黄、アルミニウムの硫黄酸化物、硫酸、アルミニウムの硫酸酸化物、塩素、アルミニウムの塩素酸化物、フッ素若しくはアルミニウムのフッ素酸化物、好ましくはアルミニウムの塩素酸化物から選択される。また、分子ふるいにおいて、非晶質、結晶性又は他の形態であるアルミニウムのリン酸酸化物が、触媒支持体として選択されてもよい。
【0033】
支持体は、一般に、任意の形状及びサイズの粒子の形態である。粒子は、10nm乃至10mm、好ましくは20nm乃至5mmの範囲の非常に広い範囲において選択される平均サイズである。また、粒子は、球状、回転楕円状、半球状、円筒状、立方形状、リング状、ペレット状、ディスク状、若しくは顆粒形状、又は、米国特許第4,242,530号明細書に記載の蒸留塔反応器で用いられるような充填材料である。
【0034】
触媒は、タングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、及び有機金属タングステン水素化物から選択されるタングステン化合物を含む。触媒においてタングステンは、2乃至6、好ましくは4乃至6の酸化度である。
【0035】
タングステン化合物は、タングステン原子が1個以上の水素原子に結合される、特に、単一の(W−H)結合によるタングステン水素化物から選択される1つである。タングステン原子当たりの結合される水素原子の数は、1乃至5個であり、好ましくは1乃至4個、特に、1乃至3個から選択される。それは、タングステンの酸化度に依存する。また、タングステン化合物が支持体で固定又はグラフト化される場合、タングステンと支持体間、特に、タングステン原子と酸化アルミニウムの1個以上の酸素原子間に存在する結合数に依存する。
【0036】
また、タングステン化合物は、有機金属タングステン化合物から選択され得る。有機金属タングステン化合物は、一般に、タングステン原子が炭化水素ラジカルの少なくとも1個以上の炭素原子に結合される、特に、単結合、二重結合又は三重結合による有機金属タングステン化合物を意味する。タングステン原子当たりの結合される炭化水素ラジカルの数は、1乃至5個であり、好ましくは1乃至4個、特に、1乃至3個である。それは、タングステンの酸化度に依存し、任意にタングステン化合物が特に支持体で固定又はグラフト化される場合、タングステンと支持体間に存在する結合数に依存する。有機金属タングステン化合物は、同一の又は異なる、直鎖又は分岐で、飽和又は不飽和であって、特に、1乃至20個、好ましくは1乃至14個の炭素原子を含む1以上の炭化水素ラジカル(R)を含む。炭化水素ラジカル(R)は、1価、2価又は3価である。炭化水素ラジカル(R)は、直鎖又は分岐で、脂肪族、脂環式又は芳香族で、飽和又は不飽和の炭化水素ラジカル、特に、アルキル(1価)ラジカル、特に、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、又はアリルのラジカルであるC〜C10、アルキリデン(2価)ラジカル、特に、例えば、メチリデン、エチリデン、n−プロピリデン、イソプロピリデン、n−ブチリデン、イソブチリデン、ネオペンチリデン、又はアリリデンのラジカルであるC〜C10、アルキリジン(3価)ラジカル、特に、例えば、エチリジン、プロピリジン、ブチリジン、ネオペンチリジン、又はアリリジンのラジカルであるC〜C10、アリール基(1価)ラジカル、特に、例えば、フェニルのラジカルであるC〜C12、アラルキル(1価)ラジカル、特に、C〜C14、アラルキリデン(2価)ラジカル、特に、C〜C14、アラルキリジン(3価)ラジカル、特に、C〜C14から選択される。また、炭水水素ラジカルは、好ましくはケトン、エステル及びアミンから選択される有機官能基を含む。
【0037】
また、タングステン化合物は、有機金属タングステン水素化物から選択され得る。有機金属タングステン水素化物は、一般に、既に少なくとも1個の水素原子に結合されたタングステン原子が、炭化水素ラジカル、特に、上述の炭化水素ラジカル(R)の少なくとも1個の炭素原子に結合されるタングステン水素化物を意味する。有機金属タングステン水素化物は、同一の又は異なる、直鎖又は分岐で、飽和又は不飽和であって、特に、1乃至20個、好ましくは1乃至14個の炭素原子を含む1以上の炭化水素ラジカル(R)を含む。炭化水素ラジカル(R)は、1価、2価又は3価であり、上述のものから選択される。タングステン原子当たりの結合される水素及び炭化水素ラジカルの原子の総数は、2乃至5個、好ましくは2乃至4個、特に、2乃至3個である。タングステン原子当たりの結合される水素原子及び炭素原子の数はそれぞれ、上述されたタングステン原子当たりの結合される水素原子及び炭素原子のそれぞれの総数の条件に基づいて、1乃至4個及び4乃至1個、好ましくはそれぞれ1乃至3個及び3乃至1個、特に、それぞれ1乃至2個及び2乃至1個である。特に、有機金属タングステン水素化物から選択されるタングステン化合物を有する触媒を使用するのが好ましい。
【0038】
触媒は、上述されるタングステン化合物であり、また、“補助的な”配位子等の1以上の配位子を含み、好ましくは、少なくとも1個の酸素原子、及び/又は少なくとも1個の窒素原子を含む。配位子は、同一である又は異なり、好ましくは、オキソ、アルコキソ、アリールオキソ、アラルキルオキソ、ニトリド、イミド、及びアミド配位子から選択される。オキソ、アルコキソ、アリールオキソ、アラルキルオキソ、ニトリド、イミド、及びアミド配位子はそれぞれ、一般に次の事項を意味する:
− 一般式が=Oである2価のオキソラジカル、
− 一般式が=OR’である1価のアルコキソ、アリールオキソ、又はアラルキルオキソラジカル、
− 一般式が≡Nである3価のニトリドラジカル、
− 一般式が=NR”である2価のイミドラジカル、及び、
− 一般式が=NRである1価のアミドラジカル(なお、これらの一般式については後で説明する)。
【0039】
タングステン化合物におけるオキソ、アルコキソ、アリールオキソ、アラルキルオキソ、ニトリド、イミド、及び/又はアミド配位子の存在は、ネオヘキセンの製造方法において、触媒の挙動に良い影響を及ぼす。
【0040】
少なくとも1つのオキソ配位子を含むタングステン化合物は、一般に、既に少なくとも1個の水素原子、及び/又は少なくとも1つの炭化水素ラジカル(R)に結合されたタングステン原子が、少なくとも1つの式(4)のオキソ配位子に結合される、上述のうちの1つのタングステン化合物を意味する。
【0041】
式(4)
【化4】

【0042】
式中、Oは酸素原子を表す。したがって、前述した、及び少なくとも1つのオキソ配位子を含むタングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、又は有機金属タングステン水素化物は、式(5)、(6)及び(7)にそれぞれ相当する。
【0043】
式(5)
【化5】

【0044】
式(6)
【化6】

【0045】
式(7)
【化7】

【0046】
式中、Wはタングステン原子を表し、Oは酸素原子を表し、Hは水素原子を表し、Rは上述した炭化水素ラジカル(R)を表す。また、タングステン原子は、好ましくは支持体に、特に、タングステン原子が酸化アルミニウムの酸素原子に結合する(W−OAl)少なくとも1つの単結合により(前述の式には示さない)、結合されると理解される。したがって、タングステン化合物は、式(5)によるオキソ−タングステン水素化物、式(6)によるヒドロカルビルオキソ−タングステン化合物、又は、式(7)によるヒドロカルビルオキソ−タングステン水素化物であることが考えられる。
【0047】
タングステン原子当たりのオキソ配位子の数は、1、2又は3であり、好ましくは1又は2である。それは、タングステンの酸化度、タングステン原子と水素原子及び/又は炭化水素ラジカル(R)間にそれぞれ存在する(W−H)及び/又は(W−R)結合の数、及び、任意にタングステンと支持体間の結合の数に依存する。したがって、タングステン原子当たり1以上のオキソ配位子を含むタングステン化合物は、特に、モノ−、ビス−、又はトリス(オキソ)−タングステン化合物、好ましくは、モノ−又はビス(オキソ)−タングステン化合物である。
【0048】
少なくとも1つのアルコキソ、アリールオキソ、又はアラルキルオキソ配位子を含むタングステン化合物は、一般に、既に少なくとも1個の水素原子、及び/又は少なくとも1つの炭化水素ラジカル(R)に結合されたタングステン原子が、少なくとも1つの式(8)のアルコキソ、アリールオキソ、又はアラルキルオキソ配位子に結合される、上述のうちの1つのタングステン化合物を意味する。
【0049】
式(8)
【化8】

【0050】
式中、Oは酸素原子を表し、R’は、水素原子、又はアルキル、アリール及びアラルキルラジカルからそれぞれ選択される1価の炭化水素ラジカルを表す。特に、該1価の炭化水素ラジカル(R‘)は、直鎖又は分岐で、飽和又は不飽和であって、1乃至20個の炭素原子、好ましくは1乃至14個の炭素原子を含み、特に、アルキルラジカル、特に、C〜C10、アラルキルラジカル、特に、C〜C14、及び、アリールラジカル、特に、C〜C12から選択される。したがって、上述した、及び、少なくとも1つのアルコキソ、アリールオキソ又はアラルキルオキソ配位子を含むタングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、又は有機金属タングステン水素化物は、式(9)、(10)及び(11)にそれぞれ相当する。
【0051】
式(9)
【化9】

【0052】
式(10)
【化10】

【0053】
式(11)
【化11】

【0054】
式中、Wはタングステンを表し、Oは酸素原子を表し、Hは水素原子を表し、Rは、上述の炭化水素ラジカル(R)を表し、R’は、水素原子、又は前述の1価の炭化水素ラジカルを表す。また、タングステン原子は、好ましくは支持体に、特に、タングステン原子が酸化アルミニウムの酸素原子に結合する(W−OAl)少なくとも1つの単結合により(前述の式には示さない)、結合されると理解される。したがって、タングステン化合物は、式(9)によるアルコキソ/アリールオキソ/アラルキルオキソ−タングステン水素化物、式(10)によるヒドロカルビルアルコキソ/アリールオキソ/アラルキルオキソ−タングステン化合物、又は、式(11)によるヒドロカルビルアルコキソ/アリールオキソ/アラルキルオキソ−タングステン水素化物であることが考えられる。
【0055】
タングステン原子当たりのアルコキソ、アリールオキソ、アラルキルオキソ配位子は、1乃至4、好ましくは1乃至3、特に、1又は2である。それは、タングステンの酸化度、タングステン原子と水素原子及び/又は炭化水素ラジカル(R)間にそれぞれ存在する(W−H)及び/又は(W−R)結合の数、及び、任意にタングステンと支持体間の結合の数に依存する。したがって、タングステン原子当たり1以上のアルコキソ/アリールオキソ/アラルキルオキソ配位子を含むタングステン化合物は、特に、モノ−、ビス−、又はトリス(アルコキソ/アリールオキソ/アラルキルオキソ)−タングステン化合物、好ましくは、モノ−又はビス(アルコキソ/アリールオキソ/アラルキルオキソ)−タングステン化合物である。
【0056】
少なくとも1つのニトリド配位子を含むタングステン化合物は、一般に、既に少なくとも1個の水素原子、及び/又は少なくとも1つの炭化水素ラジカル(R)に結合されたタングステン原子が、少なくとも1つの式(12)のニトリド配位子に結合された、上述のうちの1つのタングステン化合物を意味する。
【0057】
式(12)
【化12】

【0058】
式中、Nは窒素原子を表す。したがって、上述した、及び少なくとも1つのニトリド配位子を含むタングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、有機金属タングステン水素化物は、式(13)、(14)及び(15)にそれぞれ相当する。
【0059】
式(13)
【化13】

【0060】
式(14)
【化14】

【0061】
式(15)
【化15】

【0062】
式中、Wはタングステン原子を表し、Nは窒素原子を表し、Hは水素原子を表し、Rは、上述の炭化水素ラジカル(R)を表す。また、タングステン原子は、好ましくは支持体に、特に、タングステン原子が酸化アルミニウムの酸素原子に結合する(W−OAl)少なくとも1つの単結合により(前述の式には示さない)、結合されると理解される。したがって、タングステン化合物は、式(13)によるニトリド−タングステン水素化物、式(14)によるヒドロカルビルニトリド−タングステン化合物、又は、式(15)によるヒドロカルビルニトリド−タングステン水素化物であると考えられる。
【0063】
タングステン原子当たりのニトリド配位子の数は、1又は2、好ましくは1である。それは、タングステンの酸化度、タングステン原子と水素原子及び/又は炭化水素ラジカル(R)間にそれぞれ存在する(W−H)及び/又は(W−R)結合の数、及び、任意にタングステンと支持体間の結合の数に依存する。したがって、タングステン原子当たり1又は2のニトリド配位子を含むタングステン化合物は、特に、モノ−又はビス(ニトリド)−タングステン化合物、好ましくはモノ(ニトリド)−タングステン化合物である。
【0064】
少なくとも1つのイミド配位子を含むタングステン化合物は、一般に、既に少なくとも1個の水素原子、及び/又は少なくとも1つの炭化水素ラジカル(R)に結合されたタングステン原子が、少なくとも1つの式(16)のイミド配位子に結合された、上述のうちの1つのタングステン化合物を意味する。
【0065】
式(16)
【化16】

【0066】
[式中、Nは窒素原子を表し、R”は、水素原子又は1価の炭化水素ラジカルを表す。該1価の炭化水素ラジカル(R”)は、直鎖又は分岐で、飽和又は不飽和であって、1乃至20個の炭素原子、好ましくは1乃至14個の炭素原子を含み、特に、アルキルラジカル、特に、C〜C10、アラルキルラジカル、特に、C〜C14、及び、アリールラジカル、特に、C〜C12から選択される。]したがって、上述した、及び、少なくとも1つのイミド配位子を含むタングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、又は有機金属タングステン水素化物は、式(17)、(18)及び(19)にそれぞれ相当する。
【0067】
式(17)
【化17】

【0068】
式(18)
【化18】

【0069】
式(19)
【化19】

【0070】
式中、Wはタングステン原子を表し、Nは窒素原子を表し、Hは水素原子を表し、Rは、上述の炭化水素ラジカル(R)を表し、R”は、水素原子、又は上述の1価の炭化水素ラジカルを表す。また、タングステン原子は、好ましくは支持体に、特に、タングステン原子が酸化アルミニウムの酸素原子に結合する(W−OAl)少なくとも1つの単結合により(前述の式には示さない)、結合されると理解される。したがって、タングステン化合物は、式(17)によるイミド−タングステン水素化物、式(18)によるヒドロカルビルイミド−タングステン化合物、又は、式(19)によるヒドロカルビルイミド−タングステン水素化物であると考えられる。
【0071】
タングステン原子当たりのイミド配位子の数は、1、2又は3であり、好ましくは1又は2である。それは、タングステンの酸化度、タングステン原子と水素原子及び/又は炭化水素ラジカル(R)間にそれぞれ存在する(W−H)及び/又は(W−R)結合の数、及び、任意にタングステンと支持体間の結合の数に依存する。したがって、タングステン原子当たり1以上のイミド配位子を含むタングステン化合物は、特に、モノ−、ビス−、又はトリス(イミド)−タングステン化合物、好ましくは、モノ−又はビス(イミド)−タングステン化合物である。
【0072】
少なくとも1つのアミド配位子を含むタングステン化合物は、一般に、既に少なくとも1個の水素原子、及び/又は少なくとも1つの炭化水素ラジカル(R)に結合されたタングステン原子が、少なくとも1つの式(20)のアミド配位子に結合された、上述のタングステン化合物を意味する。
【0073】
式(20)
【化20】

【0074】
[式中、Nは窒素原子を表し、R及びRは、同一である又は異なり、水素原子、又は1価の炭化水素ラジカルを表す。該1価の炭化水素ラジカル(R及びR)は、直鎖又は分岐で、飽和又は不飽和であって、1乃至20個の炭素原子、好ましくは1乃至14個の炭素原子を含み、特に、アルキルラジカル、特に、C〜C10、アラルキルラジカル、特に、C〜C14、及び、アリールラジカル、特に、C〜C12から選択される。]したがって、上述したような、少なくとも1つのアミド配位子を含むタングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、又は有機金属タングステン水素化物は、式(21)、(22)及び(23)にそれぞれ相当する。
【0075】
式(21)
【化21】

【0076】
式(22)
【化22】

【0077】
式(23)
【化23】

【0078】
式中、Wはタングステン原子を表し、Hは水素原子を表し、Nは窒素原子を表し、Rは、上述の炭化水素ラジカル(R)を表し、R及びRは、同一である又は異なり、水素原子、又は上述の1価の炭化水素ラジカルを表す。また、タングステン原子は、好ましくは支持体に、特に、タングステン原子が酸化アルミニウムの酸素原子に結合する(W−OAl)少なくとも1つの単結合により(前述の式には示さない)、結合されると理解される。]したがって、タングステン化合物は、式(21)によるアミド−タングステン水素化物、式(22)によるヒドロカルビルアミド−タングステン化合物、又は、式(23)によるヒドロカルビルアミド−タングステン水素化物であると考えられる。
【0079】
タングステン原子当たりのアミド配位子の数は、1乃至4であり、好ましくは1乃至3であり、特に、1又は2である。それは、タングステンの酸化度、タングステン原子と水素原子及び/又は炭化水素ラジカル(R)間にそれぞれ存在する(W−H)及び/又は(W−R)結合の数、及び、任意にタングステンと支持体間の結合の数に依存する。したがって、タングステン原子当たり1以上のアミド配位子を含むタングステン化合物は、特に、モノ−、ビス−、又はトリス(アミド)−タングステン化合物、好ましくは、モノ−又はビス(アミド)−タングステン化合物である。
【0080】
タングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、及び有機金属タングステン水素化物から選択されるタングステン化合物は、好ましくは、少なくとも1個の酸素原子、及び/又は少なくとも1個の窒素原子を含み、上述したようなオキソ、アルコキソ、アリールオキソ、アラルキルオキソ、ニトリド、イミド、及びアミド配位子から選択される、複数の、特に、2又は3の異なった配位子(又は、“補助的な”配位子)を含む。
【0081】
タングステン水素化物及び有機金属タングステン水素化物から選択されるタングステン化合物を含む触媒は、赤外線分光法において、(W−H)結合の1以上の吸収バンド特性を示す。該吸収バンドの周波数は、タングステンの配位圏に従って変化し、タングステンの支持体との結合の数、並びに、任意に上述の炭化水素ラジカル(R)との結合の数、及び他の水素原子との結合の数に依存する。したがって、例えば、少なくとも2つの吸収バンドが1903及び1804cm−1でみられ、同じタングステン原子が、支持体の酸化アルミニウム(特に、α−アルミナ又はγ−アルミナ)に結合された酸素原子に結合する(W−OAl)結合の環境において、(W−H)結合のバンド特性と考えられる。また、触媒における(W−H)結合は、タングステン水素化物(δW−H)の化学シフトの値が変化し、他の配位子及び調製条件に依存する500MHzでのプロトンのNMRにより特徴づけられる。一般的な例では、0.6ppmであり得る。
【0082】
本発明で使用される触媒、及びその調製の手順は、例えば、国際公開第2004/089541号パンフレットに記載されている。
【0083】
したがって、例えば、触媒の調製は、次の工程を含む:
(1)酸化アルミニウム系支持体の空気又は酸素下でのか焼工程
例えば、α−アルミナ又はγ−アルミナであって、1乃至24時間、好ましくは200乃至1000℃の範囲において選択される温度で、特に、300乃至700℃で行われ、か焼工程後は、好ましくは、1乃至24時間、好ましくは200乃至1000℃の範囲において選択される温度で、特に、300乃至700℃で、窒素、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガスの雰囲気下で、又は真空下で、脱ヒドロキシル工程が行われる、
(2)予め調製された支持体における有機金属タングステン先駆物質(Pr)の分散及びグラフト化工程
タングステンは、支持体でグラフト化された有機金属タングステン化合物を形成するために、少なくとも1つの炭化水素ラジカル(R)、及び任意に上述のような少なくとも1つの“補助的な”配位子に結合される、及び、任意に、
(3)支持体でグラフト化されたタングステン水素化物又は有機金属タングステン水素化物を形成するための、予め調製された化合物の水素化分解工程。
【0084】
ネオヘキセンの製造方法は、イソブテンと触媒の接触を含む。接触は、反応ゾーン(Z)において、様々な方法で、不連続的に、又は好ましくは連続的に行なわれる。例えば、イソブテンが触媒に、若しくは触媒がイソブテンに添加され、又は、イソブテンと触媒が同時に反応ゾーン(Z)に添加される。
【0085】
接触は、50乃至600℃、好ましくは70乃至550℃、特に、100乃至500℃の範囲において選択される温度で行われる。また、接触は、0.01乃至100MPa、好ましくは0.1乃至50MPa、特に、0.1乃至30MPaの範囲において選択される全絶対圧下で行われる。
【0086】
また、接触は、不活性剤、液体又はガス、特に、窒素、アルゴン及びヘリウムから選択される不活性ガスの存在下で行われる。また、接触は、水素、又は、特に、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン及びテトラヒドロナフタレンから選択される環式炭化水素等の“その場で(in situ)”水素を形成する薬剤の存在下で有利に行われる。接触時に存在する水素は、特に、触媒の活性化又は再生の薬剤の役割を果たす。例えば、水素は、0.1kPa乃至10MPaの広い範囲、好ましくは1kPa乃至1MPaにおいて選択される水素分圧での接触に用いられる。
【0087】
また、接触は、イソブテンと触媒のタングステンのモル比が1乃至10、好ましくは2乃至10、特に、5乃至10の範囲において選択されるような、イソブテン及び触媒の量で行われる。また、接触は、触媒を含む反応ゾーン(Z)で、かつ、イソブテンが好ましくは連続的に導入され、特に、例えば0.1乃至10、好ましくは1乃至10、特に、5乃至10の広い範囲において選択される、触媒のタングステンのモル当たり及び分当たりのイソブテンの導入モル比で行われる。
【0088】
接触は、気相、気相/液相の混合相、液相、又は超臨界相で、選択される相に適応した反応ゾーン(Z)において行われる。特に、接触は、主に気相で、反応ゾーン(Z)において、特に、大気圧以上の圧力下、及びネオヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン及びジイソブテンの凝結気圧未満の圧力下で行われ得る。
【0089】
また、接触は、気相/液相の混合相で、反応ゾーン(Z)で、ネオヘキセン、イソブテン及びエチレンを主に気相中で維持するために、好ましくは、気相から少なくともネオヘキセンを分離及び単離するために、好ましくは、特に、2,3−ジメチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン及びジイソブテンを含む該気相、液相から分離するために、2,3−ジメチル−2−ブテン及び2,3−ジメチル−1−ブテンの凝結気圧以上の圧力下で、及びネオヘキセンの凝結気圧未満の圧力下で行われ得る。
【0090】
また、接触は、気相/液相の混合相で、反応ゾーン(Z)で、イソブテン及びエチレンを主に気相中で維持するために、及び、2,3−ジメチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン及びジイソブテンを含む主に液相中のネオヘキセンを回収するために、好ましくは、該液相から少なくともネオヘキセンを分離及び単離するために、ネオヘキセンの凝結気圧以上の圧力下で、及びイソブテンの凝結気圧未満の圧力下で行われ得る。
【0091】
また、接触は、気相/液相の混合相で、反応ゾーン(Z)で、反応混合物の残部が主に液相中に維持される一方で、エチレンを主に気相中で維持するために、イソブテンの凝結気圧以上の圧力下で、及びエチレンの凝結気圧未満の圧力下で行われ得る。
【0092】
上述したような気相/液相の混合相における接触は、下記又は米国特許第4,242,530号明細書のとおりに、蒸留塔反応器において有利に行われる。
【0093】
また、接触は、液相で、反応ゾーン(Z)で、特に、エチレンの凝結気圧以上の圧力下で行われ得る。
【0094】
また、接触は、超臨界相で、触媒がイソブテン中で懸濁される反応ゾーン(Z)で、特に、工程において含まれる及び生産される全ての生産物の臨界温度よりも高い温度で、又は、工程において含まれる及び生産される全ての生産物の臨界圧よりも高い圧力で行われ得る。
【0095】
接触を行うことは、特に、
(i)反応混合物を好ましくは連続的に形成するために、触媒を含む反応ゾーン(Z)にイソブテンを連続的に導入することにより、及び、
(ii)反応混合物の少なくとも一部を1以上の外部の、好ましくは反応ゾーン(Z)の外側の連続的な分画に連続的に供するために、好ましくは、反応混合物の1以上の成分、特に、ネオヘキセンを好ましくは連続的に分離及び単離するために、前述のゾーン(Z)から反応混合物の少なくとも一部を連続的に取り出すことにより有利であり得る。
【0096】
また、接触を行うことは、特に、
(i)反応混合物の残部が実質的に液相中で維持される一方で、反応混合物の1以上の成分、特に、エチレン、イソブテン、及び任意にネオヘキセンが気相中で実質的に維持される条件下で(すなわち、気相/液相の混合相とする条件下で)、反応混合物を好ましくは連続的に形成するために、触媒を含む反応ゾーン(Z)にイソブテンを連続的に導入することにより、
(ii)任意に気相の少なくとも一部を少なくとも1つの外部の、好ましくは連続的な分画に供するために、好ましくは、気相の少なくとも一部の1以上の成分、特に、ネオヘキセンを好ましくは連続的に分離及び単離するために、及び任意に少なくとも1つの前述の成分を好ましくは連続的に反応ゾーン(Z)に導入して再利用し、特に、イソブテンを分離及び単離するために、前述のゾーン(Z)から気相の少なくとも一部を連続的に取り出すことにより、及び、
(iii)任意に液相の少なくとも一部を少なくとも1つの外部の、好ましくは連続的な分画に供するために、好ましくは、液相の少なくとも一部の1以上の成分、特に、ネオヘキセンを好ましくは連続的に分離及び単離するために、及び任意に少なくとも1つの前述の成分を好ましくは連続的に反応ゾーン(Z)に導入して再利用し、特に、イソブテンを分離及び単離するために、前述のゾーン(Z)から液相の少なくとも一部を連続的に取り出すことにより有利であると見出され得る。
【0097】
また、接触を行うことは、特に、
(i)反応混合物の残部が実質的に液相中で維持される一方で、反応混合物の少なくとも2つの成分、特に、エチレン、イソブテン、及び任意にネオヘキセンが実質的に気相中で維持され、内側の、好ましくは反応ゾーン(Z)の一部で連続的な分画に供される条件下で(すなわち、気相/液相の混合相とする条件下で)、触媒を含む反応ゾーン(Z)にイソブテンを連続的に導入することにより、
(ii)分画された気相の成分、特に、ネオヘキセンを好ましくは連続的に単離するために、及び、任意に、分画された気相の成分、特に、イソブテンを好ましくは連続的に反応ゾーン(Z)に導入して再利用するために、前述のゾーン(Z)から、前述の分画された気相の成分を連続的に取り出すことにより、及び、
(iii)任意に液相の少なくとも一部を少なくとも1つの外部の、好ましくは連続的な分画に供するために、好ましくは、液相の少なくとも一部の1以上の成分、特に、ネオヘキセンを好ましくは連続的に分離及び単離するために、前述の反応ゾーン(Z)から液相の少なくとも一部を連続的に取り出すことにより有利であると見出され得る。
【0098】
すべての場合において、接触は、触媒を含む反応ゾーン(Z)で行なわれる。触媒は、一般に、固体であり、特に、固体粒子の形態であり、例えば、気体あるいは液体のイソブテンの流れが通過する蒸留充填物(distillation packing)若しくは層状の形態であり、又は、気体あるいは液体のイソブテンと流れの形態で同伴する、若しくは気体あるいは液体のイソブテンにより懸濁が維持される固体粒子の形態である。
【0099】
接触は、静的反応器、リサイクル反応器、又は動的反応器を含む反応ゾーン(Z)で行なわれる。したがって、例えば、接触は、完全な反応サイクルの間に導入された所定量のイソブテン及び触媒を含む静的反応器で行なわれ得る。また、接触は、少なくとも1つの形成された反応混合物の成分、好ましくは未反応のイソブテンを再利用することが可能であり、反応器の内側又は外側の先の分画により、反応混合物から分離される、リサイクル反応器で行われ得る。また、接触は、気体あるいは液体のイソブテンの流れが触媒を含む床へ流れる、又は該床を通過する、動的反応器で行なわれ得る。
【0100】
実際には、接触は、管式(又は多管式)反応器、蒸留塔反応器、スラリー反応器、流動層反応器、機械攪拌床反応器(mechanically agitated bed reactor)、流動層機械攪拌床反応器(fluidised and mechanically agitated bed reactor)、固定床反応器、及び循環床反応器(circulating bed reactor)から選択される反応器を含む反応ゾーン(Z)で行われる。一般に、固体触媒(特に、粒子形状)は、管式(又は多管式)反応器の管内部に配置される。したがって、好ましくは連続的に管に導入されたイソブテンは、流れの形態で該管を通過し、反応混合物を形成するために触媒と接触する。また、触媒は、蒸留反応器内に配置され、該触媒は、好ましくは、触媒及び蒸留充填物(すなわち、蒸留機能及び触媒機能を有する蒸留塔のための充填物:例えば、米国特許第4,242,530号明細書に記載のリング、サドル、顆粒、シート、チューブ、螺旋、及び、バッグに充填されたもの)として機能する蒸留システムの成分である。また、触媒は、流動層反応器、機械攪拌床反応器、固定床反応器、又は循環床反応器の床を形成する。触媒は、前述の反応器のうちの1つで用いられ、任意に少なくとも1つの固体不活性剤(好ましくは、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ及びケイ酸アルミニウムから選択される)と混合して用いられる。イソブテンは、前述の反応器のうちの1つに好ましくは連続的に導入され、一般に、気体あるいは液体の流れの形態で好ましくは連続的に管へ流れる若しくは該管で循環するか、又は、前述の反応器の床あるいは蒸留充填物を通過する若しくは該床あるいは該充填物で循環する。ネオヘキセンの最適生産条件での反応の進行を促進するために、工程は、反応混合物の1以上の成分、好ましくはネオヘキセンを好ましくは連続的に取り出すことにより有利に行われる。
【0101】
また、工程は、ネオヘキセンを単離するために、反応混合物からネオヘキセンを分離することを含むのが好ましい。分離は、様々な方法で行われ、非連続的、又は好ましくは連続的に行われる。分離は、反応混合物の同一の又は異なる分画を含み、同一又は異なる型であり、好ましくは、
− 物理的状態の変化、好ましくは、気相/液相の変化による、特に、蒸留又は濃縮による分画
− 分子ろ過、好ましくは、半透性選択膜(semi−permeable and selective membrane)による分画、及び、
− 吸着、好ましくは分子ふるいによる分画から選択される。
【0102】
分離は、反応ゾーン(Z)とは別個の独立した、少なくとも1つの分画ゾーン(F)で行われる。例えば、1以上の蒸留/濃縮塔で、又は該反応ゾーン(Z)の一部に配置された少なくとも1つの分画ゾーン(F)で、及び、例えば、米国特許第4,242,530号明細書に記載のような蒸留塔反応器で行われる。
【0103】
また、分離は、2つ(あるいは、それよりも多い)の、特に、同一又は異なる型の、好ましくは、上述の型の分画から選択される、連続的な分画の組み合わせを含む反応混合物の二重の(又は多重の)分画により行われる。特に、分離は、特に、好ましくは反応混合物のネオヘキセン及び少なくとも1つの他の成分、好ましくは、2,3−ジメチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン及び/又は好ましくは再利用されて触媒と接触される未反応のイソブテンを分離及び単離するために、2つ(あるいは、それよりも多い)の連続的な分画ゾーンで行われる。例えば、反応ゾーン内(Z)に配置された少なくとも1つの分画ゾーン、及び該反応ゾーン(Z)の外側の他の1つの分画ゾーン、例えば、蒸留塔、少なくとも1つの蒸留/濃縮塔、又は反応ゾーン(Z)の外側に配置された全ての塔において連続的に、及び、例えば、2以上の蒸留/濃縮塔で行われる。
【0104】
本発明の方法は、上述のとおり、反応ゾーン及び分画ゾーンを含む蒸留塔反応器により有利に行われる。前述の反応器の反応ゾーンにおいては、好ましくは、気相/液相の混合相の形態で、反応混合物を形成するために、イソブテンは、触媒に好ましくは連続的に接触される。そして、特にネオヘキセン、及び、特に該反応ゾーンで好ましくは再利用される未反応のイソブテンを単離するために、分画ゾーンと該反応器で同時に、前述の反応混合物の1以上の成分(特に、エチレン、未反応のイソブテン、及び、好ましくはネオヘキセン)が好ましくは連続的に分離される。
【0105】
物理的状態、好ましくは反応混合物の気相/液相の変化による分画は、反応混合物の少なくとも1つの成分、好ましくはネオヘキセンを濃縮又は気化するために、好ましくは、反応混合物の少なくとも1つの成分を該反応混合物から分離及び単離するために、1以上の蒸留/濃縮塔、又は蒸留塔反応器で、特に、反応混合物の冷却若しくは加熱により行われる。分画は、蒸留塔又は蒸留塔反応器の最上部のエチレン、好ましくは、反応ゾーンで再利用される低量の未反応のイソブテン、特に、2,3−ジメチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、及びジイソブテンを含む液体混合物の残部から同様に分離及び単離される依然として低量のネオヘキセンを取り出すために、特に、混合物の蒸留により、特に、少なくとも1つの蒸留塔又は蒸留塔反応器で行われる。液体混合物の残部は、その後、2,3−ジメチル−2−ブテン及び/又は2,3−ジメチル−1−ブテンが、比較的高いオクタン価であり需要の多い生産物であるので、2,3−ジメチル−2−ブテン及び/又は2,3−ジメチル−1−ブテンをジイソブテンから分離及び単離するために、したがって工程の改良のために、同様に分画に、特に、蒸留に供される。
【0106】
分子ろ過による分画は、反応混合物の少なくとも1つの成分、好ましくはネオヘキセンを阻むために、及び、反応混合物の残部、特に、エチレン、2,3−ジメチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、ジイソブテン、及び任意に未反応のイソブテンを通すために、反応混合物を1以上の半透性選択膜に通すことにより行われる。
【0107】
吸着による分画は、反応混合物の少なくとも1つの成分、特に、ネオヘキセンを維持するために、及び反応混合物の他の成分、特に、エチレン、2,3−ジメチル−2−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、ジイソブテン、及び任意に未反応のイソブテンを通すために、少なくとも1つの脱着工程に保持された該反応混合物の成分を供することで、好ましくはTSA法(“温度スイング吸着”法)又はPSA法(“圧力スイング吸着”法)により、該反応混合物の成分を単離するために、1以上の分子ふるいに反応混合物を通すことにより行われる。
【0108】
また、分離は、特に、好ましくは(a)ネオヘキセン、及び、(b)2,3−ジメチル−1−ブテン、(c)2,3−ジメチル−2−ブテン、(d)ジイソブテン、(e)エチレン、及び、(f)未反応のイソブテンのうちの少なくとも1つの反応混合物の他の成分を分離するために、好ましくは、上述した3つの分画から選択される少なくとも2又は3つの異なる型の連続的な分画の組み合わせを含む。
【0109】
本発明の方法は、反応混合物から未反応のイソブテンを分離し、次いで、好ましくは、特に、該方法による生産物を増加するために、未反応のイソブテンを再利用して触媒に接触することを有利に含む。また、該方法は、特に、比較的高いオクタン価である、2,3−ジメチル−1−ブテン及び/又は2,3−ジメチル−2−ブテンを反応混合物から分離すること、好ましくは2,3−ジメチル−1−ブテン及び/又は2,3−ジメチル−2−ブテンを単離することを含む。
【0110】
該方法は、特に、単一成分をガソリンと混合して、ガソリンのオクタン価を増加するために、又は、特に、ガソリンブレンド基材(gasoline blendstock)としての単一成分を使用するために、C5+炭化水素生産物(すなわち、少なくとも5個の炭素原子を含む)、例えば、C5+オレフィン、及び任意にネオヘキセンを含むC5+アルカンを単一成分として反応混合物から分離及び単離することを有利に含む。
【0111】
また、本発明は、ガソリンと混合して、ガソリンのオクタン価を増加するための前述の単一成分の使用に関する。また、本発明は、ガソリンブレンド基材としての前述の単一成分の使用に関する。
【0112】
また、本発明の方法は、特に、少なくとも1つの分離された画分をガソリンと混合して、ガソリンのオクタン価を増加するために、又は、特に、ガソリンブレンド基材としての少なくとも1つの分離された画分を使用するために、C5+炭化水素生産物、例えば、C5+オレフィン、及び任意にネオヘキセンを含むC5+アルカンを単一成分として反応混合物から分離し、該単一成分から少なくとも1つの分離された画分を分離及び単離することを有利に含む。
【0113】
また、本発明は、ガソリンと混合して、ガソリンのオクタン価を増加するための少なくとも1つの前述の分離された画分の使用に関する。また、本発明は、ガソリンブレンド基材としての少なくとも1つの前述の分離された画分の使用に関する。
【0114】
また、本発明の方法は、ネオヘキセンの製造において、すなわち、単一の(反応)工程で、比較的高い選択性で、特に有利である。
【0115】
次の実施例は、本発明を説明するものである。
【実施例】
【0116】
<実験例1:アルミナ(W−H/Al)でグラフト化された有機金属タングステン水素化物を含む金属触媒の調製>
第一工程において、100m/gの比表面積(B.E.T.)であり、94.95重量%のアルミナ及び5重量%の水を含む、Degussa社(ドイツ)により“Aeroxide(登録商標)Alu C”の商品名で市販されている2.5gのγ−アルミナを、15時間の気流の下、500℃で、か焼処理をした後、15時間10−2Paの絶対圧下、500℃で、脱ヒドロキシル処理をした。このように処理されたアルミナは、赤外線分光法において、それぞれ3774、3727及び3683cm−1の残留(AlO−H)結合の特性を有する3つの吸収バンドを示した。
【0117】
第二工程において、予め調製された1.8gのアルミナを単離し、25℃で、アルゴン雰囲気下で、攪拌手段が取り付けられた反応器に導入した。次いで、触媒の先駆物質(Pr)として作用するタングステントリス(ネオペンチル)ネオペンチリジン305mgを、反応器に導入した。該先駆物質の一般式は式(24)のとおりである。
【0118】
式(24)
【化24】

【0119】
次いで、反応器を66℃まで加熱し、アルミナでグラフト化された有機金属タングステン化合物を得るために、得られた混合物を乾燥状態で4時間攪拌した。攪拌の終わりに、反応器を25℃まで冷却し、未反応の先駆物質(Pr)の余剰を、25℃でn−ペンタンで混合物を洗浄することにより除去した。アルミナでグラフト化された有機金属タングステン化合物を、その後、真空乾燥し、アルゴン雰囲気下で単離した。単離された有機金属タングステン化合物は、4.4重量%のタングステンを含んでいた。その一般式は式(25)のとおりである。
【0120】
式(25)
【化25】

【0121】
第三工程において、予め調製されたアルミナでグラフト化された有機金属タングステン化合物500mgを、該有機金属タングステン化合物を水素と接触して、150℃で15時間、73kPaの水素絶対圧力下で脱ヒドロキシル処理を行うために、500mlの容量の反応器に載置した。脱ヒドロキシル処理の終わりに、反応器を25℃まで冷却し、大気圧でのアルゴン雰囲気下で、アルミナでグラフト化された有機金属タングステン水素化物を含む触媒(W−H/Al)を単離して得た。触媒は、4.4重量%のタングステンを含み、赤外線分光法において、それぞれ1903及び1804cm−1の、アルミナでグラフト化された(W−H)結合の特性を有する2つの吸収バンドを示した。また、500MHzでの核磁気共鳴(solidH−NMR)において、0.6ppmのタングステン水素化物(δW−H)の化学シフト値を示した。
【0122】
<実験例2(比較例):シリカ(Ta−H/Si)でグラフト化された有機金属タンタル水素化物を含む金属触媒の調製>
第一工程において、200m/gの比表面積(B.E.T.)である、Degussa社(ドイツ)により“Aerosil 200(登録商標)”の商品名で市販されている1.8gのシリカを、15時間10−2Paの絶対圧下、500℃で、脱ヒドロキシル処理をした。得られたシリカは、赤外線分光法において、3747cm−1の残留(SiO−H)結合の特性を有する吸収バンドを示した。
【0123】
第二工程において、予め調製された1.4gのシリカを単離し、25℃で、アルゴン雰囲気下で、攪拌手段が取り付けられた反応器に導入した。次いで、触媒の先駆物質(Pr)として作用するタンタルトリス(ネオペンチル)ネオペンチリジン270mgを、反応器に導入した。該先駆物質の一般式は式(26)のとおりである。
【0124】
式(26)
【化26】

【0125】
次いで、シリカでグラフト化された有機金属タンタル化合物を得るために、得られた混合物を25℃で2時間攪拌した。攪拌の終わりに、未反応の先駆物質(Pr)の余剰を、25℃でn−ペンタンで洗浄することにより除去した。その後、シリカでグラフト化された有機金属タンタル化合物を真空乾燥した。有機金属タンタル化合物は、5.2重量%であった。その一般式は式(27)及び(28)のとおりである。
【0126】
式(27)
【化27】

【0127】
式(28)
【化28】

【0128】
第三工程において、予め調製されたシリカでグラフト化された有機金属タンタル化合物を水素と接触して、150℃で15時間、73kPaの水素絶対圧力下で、脱ヒドロキシル処理を行った。脱ヒドロキシル処理の終わりに、アルゴン雰囲気下で、シリカでグラフト化された有機金属タンタル水素化物を含む触媒(Ta−H/Si)を単離して得た。触媒は、5.2重量%のタンタルを含み、赤外線分光法において、1830cm−1の、シリカでグラフト化された(Ta−H)結合の特性を有する吸収バンドを示した。
【0129】
<実験例3:(W−H/Al)触媒でのネオヘキセンの調製>
実験例1で調製した(W−H/Al)触媒500mgを含む、150℃まで加熱した5mlの容積の動的反応器に、イソブテンを連続的に、触媒のタングステンのモル当たり及び分当たり1.52モルの速度で、0.1MPaの全絶対圧下で、導入した。イソブテンの初期変換率は40%であり、300分間の接触で、その変換率は10%付近で安定することが観察された。500分間の接触により得られた反応混合物は、ネオヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、エチレン、ジイソブテン、及び未反応のイソブテンを含んでいた。次のモル選択性(molar selectivity)を測定及び算出した。
【0130】
− ネオヘキセン:21%
− 2,3−ジメチル−1−ブテン:33%
− 2,3−ジメチル−2−ブテン:8%
− エチレン:30%
− ジイソブテン:8%
【0131】
1000分間の接触の終わりに、水素反応器の水素のモルの割合が4.5%となる量の水素を反応器に添加した。イソブテンの変換割合は、10%から23%にすぐに上昇した後、後者の値で安定した。
【0132】
1200分間の接触後に、反応器を20℃まで冷却し、イソブテンの導入を停止した。反応混合物を回収し、マイクロ蒸留によりネオヘキセンを該混合物の残部から単離した。
【0133】
<実験例4(比較例):(Ta−H/Si)触媒でのネオヘキセンの調製>
実験例3において、(W−H/Al)触媒の代わりに実験例2(比較例)で調製した(Ta−H/Si)触媒を用いた以外は、実験例3と全く同様の手順を採用した。イソブテンの初期変換率は12%であり、300分間の接触で、その変換率は1.5%付近で安定することが観察された。500分間の接触により得られた混合物は、ネオヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、エチレン、プロペン、イソペンテン、ジイソブテン、及び未反応のイソブテンを含んでいた。次のモル選択性を測定及び算出した。
【0134】
− ネオヘキセン:2%
− 2,3−ジメチル−1−ブテン:32%
− 2,3−ジメチル−2−ブテン:9%
− エチレン:20%
− イソペンテン:22%
− プロペン:10%
− ジイソブテン:5%
【0135】
ネオヘキセンのモル選択性は、非常に弱く(実験例3で得られたものよりも約10倍弱い)、他の異なるオレフィン、特に、イソペンテン及びプロペンを形成したことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオヘキセンを含む反応混合物を形成するために、イソブテンを、タングステン水素化物、有機金属タングステン化合物、及び有機金属タングステン水素化物から選択されるタングステン化合物を含む担持金属触媒、及び、アルミニウムの酸化物を含む支持体と接触することを特徴とする、ネオヘキセンの製造方法。
【請求項2】
前記触媒が、タングステン化合物がグラフト化されるアルミニウムの酸化物を含んだ支持体を含むことを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記支持体が、単純なアルミニウムの酸化物、アルミニウムの混合酸化物、及び元素周期表の第13乃至17族の1以上の元素により改質されたアルミニウムの酸化物から選択されることを特徴とする、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記支持体が、多孔性アルミナ、半多孔性アルミナ、非多孔性アルミナ、及びメソ多孔性アルミナから選択されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記支持体が、γ−アルミナ(ガンマアルミナ)、η−アルミナ(エータアルミナ)、δ−アルミナ(デルタアルミナ)、θ−アルミナ(シータアルミナ)、κ−アルミナ(カッパアルミナ)、ρ−アルミナ(ローアルミナ)、χ−アルミナ(クシー又はサイアルミナ)、及び、α−アルミナ(アルファアルミナ)から選択される多孔性アルミナ又は非多孔性アルミナであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
有機金属タングステン化合物及び有機金属タングステン水素化物から選択されるタングステン化合物が、同一の又は異なる、直鎖又は分岐で、飽和又は不飽和の、1以上の炭化水素ラジカルを含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記タングステン化合物が、少なくとも1個の酸素原子、及び/又は少なくとも1個の窒素原子を含み、同一の又は異なる、1以上の配位子を含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記配位子が、オキソ、アルコキソ、アリールオキソ、アラルキルオキソ、ニトリド、イミド、及びアミド配位子から選択されることを特徴とする、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記接触が、50乃至600℃の範囲において選択される温度で行われることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記接触が、0.01乃至100MPaの範囲において選択される全絶対圧下で行われることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記接触が、イソブテンと触媒のタングステンのモル比が1乃至10の範囲において選択されるような、イソブテン及び触媒の量で行われることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記接触が、イソブテンが導入される触媒を含む反応ゾーンで行われることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
イソブテンが、0.1乃至10の範囲において選択される、触媒のタングステンのモル当たり及び分当たりのイソブテンの導入モル比で、反応ゾーンに導入されることを特徴とする、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記接触が、水素の存在下で、特に、0.1kPa乃至10MPaの範囲において選択される水素分圧下で行われることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
ネオヘキセンが、反応混合物の同一の又は異なる1以上の連続的な分画により、反応混合物から分離されることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
ネオヘキセンが、反応ゾーンとは別個の独立した、又は反応ゾーンの一部に配置された、少なくとも1つの分画ゾーンで、反応混合物から分離されることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
ネオヘキセンの分離が、1以上の蒸留塔で行われることを特徴とする、請求項15又は16記載の製造方法。
【請求項18】
ネオヘキセンの分離が、蒸留塔反応器で行われることを特徴とする、請求項15又は16記載の製造方法。
【請求項19】
反応混合物から未反応のイソブテンを分離した後、イソブテンを再利用して触媒と接触することを含む、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
単一成分としてネオヘキセンを含むC5+炭化水素生産物を反応混合物から分離及び単離することを含む、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
単一成分をガソリンと混合して、ガソリンのオクタン価を増加すること、又は、ガソリンブレンド基材としての単一成分を使用することを更に含む、請求項20記載の製造方法。
【請求項22】
単一成分としてネオヘキセンを含むC5+炭化水素生産物を反応混合物から分離し、少なくとも1つの分離された画分をガソリンと混合して、ガソリンのオクタン価を増加するために、又は、ガソリンブレンド基材としての少なくとも1つの分離された画分を使用するために、単一成分から少なくとも1つの分離された画分を分離及び単離することを含む、請求項1乃至19のいずれか一項に記載の製造方法。

【公表番号】特表2010−513254(P2010−513254A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540850(P2009−540850)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004753
【国際公開番号】WO2008/071949
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(597142701)ビーピー オイル インターナショナル リミテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】BP OIL INTERNATIONAL LIMITED
【Fターム(参考)】