説明

帯電防止離型性ポリエステルフィルム

【課題】離型性ポリエステルフィルムの離型剤としてシリコーン化合物を用い、かかる離型剤と帯電防止剤とを併用したときに、簡便かつ安定的に生産でき、しかも塗膜均一性が高く、離型性、帯電防止性の品質が安定した帯電防止離型性ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムおよびその少なくとも一方の面に帯電防止剤および離型剤を含む帯電防止離型層を有する帯電防止離型性ポリエステルフィルムであって、該帯電防止剤がポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーであり、該離型剤がシリコーン化合物である帯電防止離型性ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止離型性ポリエステルフィルムに関するものであり、詳しくは離型剤としてシリコーン化合物を用い、帯電防止剤と併用したときに塗膜均一性が向上する帯電防止離型性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムはカード用、ラベル用、印刷用、粘着用、セラミック成形用、転写箔用等の各種離型用途に利用されている。通常、このようなポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは、離型機能を発現する物質をポリエステルフィルム表面に塗布し、積層することによって作成される。離型機能を発現する物質としてシリコーン化合物が使用されることが多い。しかしながら、シリコーン化合物被膜は、そのシリコーンの主鎖結合ならびに立体構造により電荷の漏洩がなく、帯電しやすい。すなわち、主鎖の−Si−O−Si−結合は、−C−C−結合に比し、イオン性は帯びているものの基本的にはσ結合であり、共役2重結合等のように電荷の非局在化はできない。また、Siに結合する2つのメチル基は主鎖の外側に向いていて疎水場を形成し、空気中の水分及び不純物イオンを通しての電荷の漏洩が極めて困難である。このようなシリコーン化合物を塗布したフィルムは、当然帯電性が高く、フィルム同士がブロッキングしやすいため種々の障害を生ずる。そこで、シリコーン化合物を含む離型フィルムに帯電防止性機能を付与することが行われている。
【0003】
まず、シリコーン化合物と帯電防止機能を有する化合物を混合させた塗剤をフィルム表面に積層することで、帯電防止性機能を有した離型フィルムが提案されている(特許文献1)。この手法の場合、帯電防止性機能を有する化合物がシリコーン化合物と混じりにくい化合物であり、不均一な塗膜となり、離型性能や帯電防止性能が不安定な品質になる場合がある。
【0004】
そこで、シリコーン化合物と帯電防止性機能を有する化合物を混合させない方法が提案されている。例えば、シリコーン化合物塗膜の反対面に、帯電防止性塗膜を積層することが提案されている(特許文献2、3)。しかしながら、この方法であると塗工工程が2回となるため、手間がかかることや、塗工工程が2回になることでフィルム表面への傷や異物の付着発生が多くなりやすい。別の方法として、帯電防止性塗膜の上に、離型層を塗工して積層し、帯電防止性機能を付与することが提案されている(特許文献4)。しかし、帯電防止性塗膜上に離型層を積層する方法では塗布工程が煩雑となり、精度の高い塗工技術が必要となって均一な塗膜が得にくい傾向にある。
さらに、シリコーン化合物と帯電防止性機能を有する化合物とを化学的に混合させた帯電防止性機能を有した離型フィルムも提案されている(特許文献5)。この手法だと塗膜は均一化するが、特殊な化合物となるため安定的なこの化合物の製造ができない場合がある。
【0005】
一方、熱可塑性高分子用の帯電防止剤として、耐熱性が改善され、再利用が可能なカチオンポリマーが種々提案されており(特許文献6、7)、またかかる帯電防止剤を用いた帯電防止性ポリエステルフィルムが提案されている(特許文献8、9)。しかしながら、これら特許文献6〜9において、離型性能も付与する観点での検討はなされていない。
このように、シリコーン化合物を用いた離型性ポリエステルフィルムについて、シリコーン離型剤と帯電防止剤とを併用したときに簡便かつ安定的に生産でき、しかも塗膜均一性が高く、離型性、帯電防止性の品質が安定している塗膜層が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−116426号公報
【特許文献2】特開平9−277451号公報
【特許文献3】特開平10−315373号公報
【特許文献4】特開2000−52495号公報
【特許文献5】特開平11−188813号公報
【特許文献6】特開2005−350517号公報
【特許文献7】特開2006−2074号公報
【特許文献8】特開2008−55621号公報
【特許文献9】特開2008−45085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はかかる従来技術の問題点を解消し、離型性ポリエステルフィルムの離型剤としてシリコーン化合物を用い、かかる離型剤と帯電防止剤とを併用したときに、簡便かつ安定的に生産でき、しかも塗膜均一性が高く、離型性、帯電防止性の品質が安定した帯電防止離型性ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、離型剤としてシリコーン化合物を用いた離型性ポリエステルフィルムに、帯電防止性を付与する帯電防止剤としてポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーを使用した場合に、従来用いられていたポリオキシアルキレン鎖を含有しないカチオンポリマーと比較して離型剤と帯電防止剤との相溶性が著しく向上し、優れた塗膜均一性が得られることにより帯電防止離型層のヘーズが向上し、塗布斑が目立ちにくくなる結果、同じ塗膜中でこれらの剤を一緒に用いることができ、簡便かつ安定的に生産できること、しかもこれら離型剤と帯電防止剤が均一分散しているため、離型性、帯電防止性の双方の品質が安定になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の目的は、ポリエステルフィルムおよびその少なくとも一方の面に帯電防止剤および離型剤を含む帯電防止層を有する帯電防止離型性ポリエステルフィルムであって、該帯電防止剤がポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーであり、該離型剤がシリコーン化合物である帯電防止離型性ポリエステルフィルムによって達成される。
【0010】
また本発明の帯電防止離型性ポリエステルフィルムは、好ましい態様として、該カチオンポリマーが、下記式(1)または下記式(2)で表わされる単量体から形成された構成単位A、および下記式(3)または下記式(4)で表わされる単量体から形成された構成単位Bを含んでなること、
【化1】

(上式(1)中、R1およびR2はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10のアルキレン基であり、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R6はHまたは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、Y-はハロゲンイオン、ナイトレートイオン、サルフェートイオン、アルキルサルフェートイオン、スルホネートイオンまたはアルキルスルホネートイオンである)
【化2】

(上式(2)中、R7およびR8はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R9は炭素数1〜10のアルキレン基であり、R10およびR11はそれぞれ炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R12はHまたは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、Z-はハロゲンイオン、ナイトレートイオン、サルフェートイオン、アルキルサルフェートイオン、スルホネートイオンまたはアルキルスルホネートイオンである)
【化3】

(上式(3)中、R13およびR14はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、A1は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから1つの水酸基を除いた残基をそれぞれ表わす)
【化4】

(上式(4)中、R15およびR16はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、A2は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから1つの水酸基を除いた残基をそれぞれ表わす)
該カチオンポリマーが、さらに下記式(5)で表わされる単量体から形成された構成単位Cを含んでなること、
【化5】

(上式(5)中、R17およびR18はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R19はHまたは炭素数1〜6の飽和炭化水素基をそれぞれ表わす)
カチオンポリマーの全構成単位を基準として構成単位Aを60モル%以上99.9モル%以下、構成単位Bを0.1モル%以上40モル%以下の範囲で含んでなること、
シリコーン化合物がポリジメチルシロキサン、エポキシ基含有シリコーン、アミノ基含有シリコーン、および炭素数6以上の炭化水素基を有するシリコーンからなる群から選ばれる少なくとも1種であること、の少なくともいずれか1つを具備するものも包含する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の帯電防止離型性ポリエステルフィルムは、塗膜均一性が高く、簡便かつ安定的に生産でき、しかも離型性、帯電防止性の品質が安定していることから、カード用、ラベル用、印刷用、粘着用、セラミック成形用、転写箔用などの離型性が求められる各種の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステルフィルム]
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。
【0013】
ポリエステルは、これらポリエステルのうちの1つを主たる成分とする共重合体であってもよく、またはブレンドしたものであってもよい。ここで「主たる成分」とは、ポリエステルの繰り返し単位のモル数を基準として80モル%以上である。また主たる成分の割合は、85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。また、共重合成分またはブレンド成分はポリエステルの繰り返し単位のモル数を基準として20モル%以下であり、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートが力学的物性と成形性のバランスがよいので特に好ましい。
【0014】
ポリエステルフィルムは、例えば二酸化珪素、炭酸カルシウム、カオリン、シリコーン粒子などの無機または有機滑剤、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤を含有してもよい。
ポリエステルフィルムは、例えば次の方法で製造することができる。すなわち、ポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて非晶未延伸フィルムとし、縦方向(以下、連続製膜方向、長手方向、MD方向と称することがある)および横方向(以下、幅方向、TD方向と称することがある)に延伸する。縦方向の延伸は例えば温度60〜130℃、好ましくは90〜125℃で、2.0〜4.0倍、好ましくは2.5〜3.5倍に延伸する。横方向の延伸は、例えば温度60〜130℃、好ましくは90〜125℃で、2.0〜4.0倍、好ましくは3.0〜4.0倍に延伸する。二軸延伸後の面積倍率は13以下とすることが好ましい。
【0015】
なお、フィルムの延伸後には熱固定処理を行なうことが好ましい。熱固定処理は、最終延伸温度より高く融点以下の温度内で1〜30秒の時間内行なうことが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレートフィルムでは150〜250℃の温度、2〜30秒の時間の範囲で選択して熱固定することが好ましい。その際、20%以内の制限収縮もしくは伸長、または定長下で行ない、また2段以上で行なってもよい。
ポリエステルフィルムの厚みは、ハンドリング性、成形性などの点から必要な強度を得るために、好ましくは12〜100μm、さらに好ましくは25〜75μmである。
【0016】
[帯電防止離型層]
本発明の帯電防止離型性ポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、帯電防止剤および離型剤を含む帯電防止離型層を有し、該帯電防止剤がポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーであり、該離型剤がシリコーン化合物であることを特徴としている。
【0017】
(カチオンポリマー)
ポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーとして、例えば下記式(1)または下記式(2)で表わされる単量体から形成された構成単位A、および下記式(3)または下記式(4)で表わされる単量体から形成された構成単位Bを含むカチオンポリマーが挙げられる。
【0018】
【化6】

(上式(1)中、R1およびR2はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10のアルキレン基であり、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R6はHまたは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、Y-はハロゲンイオン、ナイトレートイオン、サルフェートイオン、アルキルサルフェートイオン、スルホネートイオンまたはアルキルスルホネートイオンである)
【0019】
【化7】

(上式(2)中、R7およびR8はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R9は炭素数1〜10のアルキレン基であり、R10およびR11はそれぞれ炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R12はHまたは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、Z-はハロゲンイオン、ナイトレートイオン、サルフェートイオン、アルキルサルフェートイオン、スルホネートイオンまたはアルキルスルホネートイオンである)
【0020】
【化8】

(上式(3)中、R13およびR14はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、A1は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから1つの水酸基を除いた残基をそれぞれ表わす)
【0021】
【化9】

(上式(4)中、R15およびR16はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、A2は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから1つの水酸基を除いた残基をそれぞれ表わす)
【0022】
構成単位Aを形成する式(1)で表わされる単量体の具体例として、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩、アクリロイルアミノプロピルジメチルアンモニウムエチルスルホン酸塩、アクリロイルアミノプロピル2−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウム硝酸塩、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム硝酸塩、メタクリロイルアミノブチルトリメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩、メタクリロイルアミノヘキシルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム硝酸塩等が挙げられる。
【0023】
構成単位Aを形成する式(2)で表わされる単量体の具体例として、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩、アクリロイルオキシプロピルジメチルアンモニウムエチルスルホン酸塩、アクリロイルオキシプロピル2−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウム硝酸塩、アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム硝酸塩、メタクリロイルオキシブチルトリメチルアンモニウムメチルスルホン酸塩、メタクリロイルオキシヘキシルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム硝酸塩等が挙げられる。
【0024】
また、構成単位Bを形成する式(3)で表わされる単量体の具体例として、アクリル酸ポリオキシエチレン、アクリル酸ポリオキシプロピレン、アクリル酸オキシエチレンオキシプロピレン、アクリル酸ポリオキシエチレンオキシプロピレン、アクリル酸オキシエチレンポリオキシプロピレン、アクリル酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、メタクリル酸ポリオキシエチレン、メタクリル酸ポリオキシプロピレン、メタクリル酸オキシエチレンオキシプロピレン、メタクリル酸ポリオキシエチレンオキシプロピレン、メタクリル酸オキシエチレンポリオキシプロピレン、メタクリル酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、クロトン酸ポリオキシプロピレン、クロトン酸オキシエチレンオキシプロピレン、クロトン酸ポリオキシエチレンオキシプロピレン、クロトン酸オキシエチレンポリオキシプロピレン、クロトン酸ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等が挙げられる。
【0025】
構成単位Bを形成する式(4)で表わされる単量体の具体例として、α−アリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)、α−アリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシプロピレン)、α−アリル−ω−ヒドロキシ(オキシエチレンオキシプロピレン)、α−アリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレンオキシプロピレン)、α−アリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(オキシエチレンオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレンオキシプロピレン)、α−メタリル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)等が挙げられる。
【0026】
本発明のカチオンポリマーが、式(1)または(2)で表わされる単量体で構成されるカチオン成分を含有する構成単位Aを必須成分として含むことにより、帯電防止剤としての機能が発現する。
また本発明のカチオンポリマーは、式(3)または(4)で表わされる単量体で構成されるポリオキシアルキレン鎖を含有する構成単位Bを必須成分として含むことにより、シリコーン化合物との相溶性が向上し、帯電防止剤とシリコーン化合物を同じ塗膜中で用いたときに優れた塗膜均一性が得られ、帯電防止離型層のヘーズが良好になるため塗布斑がめだちにくくなり、しかもこれら離型剤と帯電防止剤が均一分散しているため、離型性、帯電防止性の双方の品質が安定になる。構成単位Bにおけるポリオキシアルキレン鎖は、2〜20の繰り返し数であり、さらに好ましくは5〜15、特に好ましくは8〜15である。
【0027】
これら構成単位Aおよび構成単位Bは、カチオンポリマーの全構成単位を基準として、構成単位Aを60モル%以上99.9モル%以下の範囲で含むことが好ましく、また構成単位Bを0.1モル%以上40モル%以下の範囲で含むことが好ましい。また、構成単位Aの含有量はより好ましくは65モル%以上90モル%以下、さらに好ましくは65モル%以上80モル%以下であり、構成単位Bの含有量はより好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上35モル%以下である。
構成単位Aが下限値に満たない場合、十分な帯電防止性能が発現しないことがある。また構成単位Aが上限値を超える場合、相対的に構成単位Bが減るため、シリコーン化合物との相溶性が悪くなり、塗膜均一性が低下することがある。構成単位Bが下限値に満たない場合、シリコンーン化合物とカチオンポリマーが十分に相溶しないため、相分離が生じてしまい、塗膜が均一になりにくく、さらに離型性、帯電防止性の品質にばらつきが生じやすい。また、構成単位Bが上限値を超える場合、カチオンポリマーの耐熱性、耐湿性が低下するため、塗工膜のブロッキング耐性が低下する場合がある。
【0028】
本発明のカチオンポリマーは、さらに下記式(5)で表わされる単量体から形成された構成単位Cを含むことが好ましい。
【化10】

(上式(5)中、R17およびR18はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R19はHまたは炭素数1〜6の飽和炭化水素基をそれぞれ表わす)
【0029】
本発明のカチオンポリマーがさらに構成単位Cを含むことによって、樹脂自体の凝集力が向上し、塗膜を強固にすることができる。
構成単位Cを形成する式(5)で表わされる単量体の具体例として、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ターシャリーブチルオキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルオキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−ターシャリーブチルオキシメチルメタクリルアミド、N−ヘキシルオキシメチルメタクリルアミド等が挙げられるが、なかでもN−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドが好ましい。
【0030】
本発明のカチオンポリマーが式(5)で表わされる単量体から形成された構成単位Cを含む場合、構成単位Cの含有量はカチオンポリマーの全構成単位を基準として、1モル%以上30モル%以下の範囲で含むことが好ましく、さらに好ましくは5モル%以上25モル%以下の範囲である。構成単位Cの含有量が下限値に満たない場合、塗膜の凝集力が低下することがある。一方、構成単位Cの含有量が上限値を超える場合、カチオンポリマー自体の造膜性が悪くなり、塗膜外観に影響を及ぼす場合がある。
【0031】
本発明のカチオンポリマーには、柔軟性、硬度調整や水分散化等の必要に応じて、一般的なビニル共重合体の構成単位Dを導入してもよい。具体例として、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、スチレン、αーメチルスチレン等が挙げられる。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2ーエチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
これら一般的なビニル共重合体の構成単位Dを導入する場合は、カチオンポリマーの全構成単位を基準として、1モル%以上40モル%以下の範囲で含むことが好ましく、さらに好ましくは5モル%以上30モル%以下の範囲である。これらは一例であり、構成単位Dはこれらに限定されるものではない。
【0032】
本発明のカチオンポリマーは、数平均分子量が5000〜1000000であることが好ましく、7000〜100000であることがさらに好ましい。カチオンポリマーの数平均分子量が下限値に満たないと帯電防止性が十分でないことがある。またカチオンポリマーの数平均分子量が上限値を超える場合は塗膜が均一になりにくいことがある。
【0033】
本発明のカチオンポリマーは、ラジカル共重合により得ることができる。ラジカル共重合それ自体は、公知の方法、通常は水または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を用いた水性溶液中で行なうことができる。例えば、各構成単位を所定量ずつ水に溶解させて合計で10〜45重量%含む水溶液を調製した後、窒素ガス雰囲気下において、これにラジカル開始剤を加え、50〜80℃で4〜8時間ラジカル重合反応させる。用いるラジカル開始剤としては、重合反応温度下において分解し、ラジカル発生するものであれば、その種類は特に制限されないが、水溶性のラジカル開始剤を用いるのが好ましい。かかる水溶性のラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。これらは、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸の如き還元性物質更にはアミン等と組み合わせ、レドックス開始剤として用いることもできる。また、乳化重合とする場合は、適正な界面活性剤を用いることで、同様に実施できる。
【0034】
(シリコーン化合物)
本発明において、離型性を発現させるためにシリコーン化合物が用いられ、かかるシリコーン化合物として、ポリジメチルシロキサン、エポキシ基含有シリコーン、アミノ基含有シリコーン、および炭素数6以上の炭化水素基を有するシリコーンからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
離型剤としてシリコーン化合物を用いることにより、どのような環境下でも離型性が高く、多種多様な用途に使用できる。これらのシリコーン化合物の中でも、特にポリジメチルシロキサンや、エポキシ基含有シリコーンまたはアミノ基含有シリコーンといったシリコーン化合物が離型剤としてよく用いられるものの、カチオンポリマーと混ざりにくい化合物であり、本発明のポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーを用いた場合の塗膜均一性の改良効果が特に高くなる。また、特にエポキシ基含有シリコーンまたはアミノ基含有シリコーンといった極性成分を有するシリコーン化合物は、本発明のポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーとの相溶性がさらに良好となり、塗膜均一性が向上することから好ましい。
【0035】
ポリジメチルシロキサンとして、25℃における粘度が100〜100000センチストークスの範囲であるポリジメチルシロキサンが好ましい。粘度が100センチストークスよりも低いと離型性が十分でないことがある。一方、粘度が100000センチストークスよりも高くなると粘度が高く、かつ分子量も大きくなるため、カチオンポリマーとの相溶性が低下することがある。
【0036】
エポキシ基含有シリコーンのエポキシ基として、γ−グリシドキシプロピル基、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシ−β−メチル−プロピル基といったグリシドキシアルキル基、2−グリシドキシカルボニル−エチル基、2−グリシドキシカルボニル−プロピル基といったグリシドキシカルボニルアルキル基が挙げられる。粘度についてはポリジメチルシロキサンと同様の範囲であることが好ましい。
【0037】
アミノ基含有シリコーンのアミノ基として、3−アミノプロピル基、3−アミノ−2−メチル−プロピル基、2−アミノエチル基といった1級アミノアルキル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチル基といった1級および2級アミノアルキル基を有する有機基が挙げられる。粘度についてはポリジメチルシロキサンと同様の範囲であることが好ましい。
【0038】
炭素数6以上の炭化水素基を有するシリコーンとして、炭素数6以上のアルキル変性シリコーン、炭素数6以上のアラルキル変性シリコーン、炭素数6以上のアルキルアラルキル共変性シリコーン、アリール変性シリコーンが例表わされる。これらの炭素数6以上の炭化水素基を有するシリコーンを用いた場合は、帯電防止離型層表面の離型性能を維持しつつ、濡れ性を向上させることができる。
【0039】
かかる炭素数6以上の炭化水素基を有するシリコーンとして、下記式(6)で表わされる化合物が例表わされる。
【化11】

(式(6)中、R20は炭素数1〜5の飽和または不飽和の1価炭化水素基、R21は炭素数6〜20の飽和または不飽和の1価炭化水素基、R22はR20又はR21をそれぞれ表わし、mは0〜500の整数、nは1〜500の整数を表わす。)
【0040】
上式中、R20は同一もしくは異種の炭素数1〜5の飽和または不飽和の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、などの飽和炭化水素基、シクロペンチル基などの飽和脂環式炭化水素基が例示され、特にメチル基が好ましい。
【0041】
また、R21は同一もしくは異種の炭素数6〜20の飽和または不飽和の1価炭化水素基であり、例えばアルキル基が挙げられ、具体的には、へキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基が例示され、特にドデシル基、テトラデシル基が好ましい。また、アルキル基以外のR21としてアラルキル基が挙げられ、具体的には、ベンジル基、4−メチルベンジル基、p−メトキシベンジル基、ジフェニルメチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基が例示され、特に2−フェニルプロピル基が好ましい。またR21の他の例としてアリール基が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
これらの中でも、R21の炭素数6〜20の炭化水素基として、帯電防止剤との相溶性がより良好なフェニル基が最も好ましく用いることができる。
【0042】
(界面活性剤)
本発明で用いるシリコーン成分は、塗工時の取扱易さ、作業環境から水分散液あるいは乳化液の形態で使用するのが好ましい。良好な水分散、乳化液の形態を得るには、界面活性剤の使用が好ましく、塗液の他の成分との分散安定性のため、ノニオン系界面活性剤が特に好ましい。
【0043】
(架橋剤)
帯電防止離型層には、塗膜の凝集力を向上させるために、さらに架橋剤を添加させることが好ましい。架橋剤としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物を例示することができ、その他カップリング剤を用いることもできる。取り扱い易さや塗液のポットライフが長いことからエポキシ化合物、オキサゾリン化合物を用いることが好ましく、カップリング剤を用いることも好ましい。
【0044】
(帯電防止離型層の組成比)
本発明の帯電防止離型層における各添加剤の割合は、帯電防止離型層の重量を基準として本発明のカチオンポリマー、すなわち帯電防止剤が35〜90重量%、シリコーン化合物からなる離型剤が1〜50重量%、界面活性剤が0〜15重量%であることが好ましい。
また帯電防止剤の含有量は35〜70重量%であることがより好ましく、35〜65重量%であることがさらに好ましい。シリコーン離型剤の含有量は10〜40重量%であることがより好ましく、20〜30重量%であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量は5〜12重量%であることがより好ましい。
【0045】
本発明のカチオンポリマーからなる帯電防止剤が下限値に満たないと帯電防止性能が不足し、加工工程でのゴミ等の付着が多くなり、欠点等の発生が多くなる場合があり、一方、上限値を超えると相対的にシリコーン成分の含有量が低下し、離型性能が低下することがある。また、シリコーン化合物からなる離型剤が下限値に満たないと離型性能が低下することがあり、一方、上限値を超えると塗膜均一性が低下することがある。界面活性剤については、下限値に満たないと均一塗工性が低下することがあり、一方上限値を超えると発泡しやすくなり、泡因の塗工欠陥が発生しやすくなる場合がある。
【0046】
また、帯電防止離型層がさらに架橋剤を含む場合、架橋剤の含有量は1〜30重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがさらに好ましい。さらに架橋剤を含む場合に、架橋剤の含有量が下限値に満たないと塗膜凝集力が下がり、耐傷性が低下することがあり、一方、上限値を超える場合は架橋密度が高くなり、造膜性が低下して塗布外観が低下することがある。
【0047】
(帯電防止離型層の形成方法)
本発明において帯電防止離型層の塗設に用いられる上記組成物は、塗布層を形成させるために、水溶液、水分散液あるいは乳化液等の水性塗液(以下、水性塗布液と称することがある)の形態で使用されることが好ましい。
本発明に用いる水性塗布液の固形分濃度は、該塗布液の重量を基準として通常20重量%以下、好ましくは1〜10重量%である。固形分濃度が下限に満たないとポリエステルフィルムへの塗れ性が不足することがある。また固形分濃度が上限を超えると塗液の安定性や塗布層の外観が低下することがある。
【0048】
水性塗布液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0049】
水性塗布液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは組成物と共に前述のような界面活性剤を併用することが好ましい。
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。
【0050】
(帯電防止離型層の厚み)
帯電防止離型層の厚みは、乾燥後の厚みとして、好ましくは0.01〜0.1μm、さらに好ましくは0.01〜0.06μmである。帯電防止離型層の厚みが下限値に満たないと帯電防止性や離型性が十分に発現しないことがあり、また上限値を超えると塗布液を高濃度にしたり、塗布量を増やす必要があるため塗布しにくくなる傾向にあり、塗工性が不均一になることがある。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、各種物性は下記の方法により評価した。またwt%は重量%を表わす。
【0052】
(1)塗布層ヘーズ(帯電防止離型層のヘーズ)
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用して、下記式(I)より塗布層ヘーズを測定した。
塗布層ヘーズ=フィルムヘーズ−塗布層未塗工フィルムヘーズ ・・・(I)
A+:0.1%未満
A:0.1〜0.4%未満
B:0.4〜0.8%未満
C:0.9%以上
この評価で、Aまでが実用性能を満足する。
【0053】
(2)塗布層均一性
三波長の蛍光灯の光をフィルム表面に当て、正反射光で塗布状況を観察する。
A+:塗布層が均一である。
A:極弱い斑がある。
B:弱い斑がある。
C:強い斑がある。
この評価で、Aまでが実用性能を満足する。
【0054】
(3)帯電防止性
サンプルフィルムの帯電防止層表面の表面固有抵抗を、タケダ理研社製・固有抵抗測定器を使用し、測定温度23℃、測定湿度60%の条件で、印加電圧100Vで1分後の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定する。尚、表面固有抵抗値は1×1013[Ω/□]以下が好ましく、1×1012以下が更に好ましい。
【0055】
(4)離型性
帯電防止離型表面に粘着テープ(日東電工株式会社製、製品名「No.31B」)を貼合せ、5kgの圧着ローラーで圧着し20時間放置後、帯電防止離型表面と粘着テープとの剥離力を引張試験機にて測定した。なお、剥離強度の好ましい範囲は300g/10mm以下である。剥離強度が300g/10mmより大きいと、離型フィルムを貼り付けた積層シートから樹脂シート等を剥離分離して使用する際に剥離が困難となることがある。
【0056】
(5)塗布層厚み
包埋樹脂でフィルムを固定し断面をミクロトームで切断し、2%オスミウム酸で60℃、2時間染色して、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM2010)を用いて、塗布層の厚みを測定した。
【0057】
[実施例1〜7、比較例1〜3]
平均粒子径が1.5μmの酸化ケイ素の粒子を0.01wt%を含む溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.63dl/g、Tg=78℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.4倍に延伸した後、表1に示す塗布層構成成分からなる塗布液(3wt%塗布液)をロールコーターで均一に塗布した。
次いで、この塗布フィルムを引き続いて110℃で乾燥し、140℃で横方向に3.7倍に延伸し、更に230℃で熱固定して表1に示す塗膜(帯電防止離型層)を有する二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ38μm)を得た。これら実施例フィルムは、一回の工程で帯電防止性と離型性の両機能を安定して有する層を製膜でき、高い生産性が得られた。
【0058】
【表1】

【0059】
帯電防止剤1:下記式(1)に示す構造が70モル%/メトキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレート30モル%からなる共重合体である。
【化12】

(上式(1)中、R、RはそれぞれHであり、Rは炭素数が3のアルキレン基であり、R、Rはそれぞれ炭素数が1の飽和炭化水素基であり、Rは炭素数が3のヒドロキシアルキル基であり、Yはメチルスルホネートイオンである)
【0060】
帯電防止剤2:下記式(1)に示す構造が70モル%/メトキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレート20モル%/N−メチロールアクリルアミド10モル%からなる共重合体である。
【化13】

(上式(1)中、R、RはそれぞれHであり、Rは炭素数が3のアルキレン基であり、R、Rはそれぞれ炭素数が1の飽和炭化水素基であり、Rは炭素数が3のヒドロキシアルキル基であり、Yはメチルスルホネートイオンである。)
【0061】
帯電防止剤3:下記式(2)に示す構造が70モル%/メトキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレート20モル%/N−メチロールアクリルアミド10モル%からなる共重合体である。
【化14】

(上式(2)中、R、RはそれぞれHであり、Rは炭素数が3のアルキレン基であり、R10、R11はそれぞれ炭素数が1の飽和炭化水素基であり、R12は炭素数が3のヒドロキシアルキル基であり、Zはメチルスルホネートイオンである。)
【0062】
帯電防止剤4:ポリオキシアルキレン鎖非含有カチオンポリマー(第一工業製薬株式会社製 商品名「シャロールDC−303P」)
帯電防止剤5:ポリオキシアルキレン鎖非含有アニオンポリマー ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製 商品名「ポリナスPS−50」)
【0063】
シリコーン1:ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製 商品名「KM−862T」)
シリコーン2:アミノ基変性シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名「X−51−1178」)
シリコーン3:エポキシ基変性シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名「Polon MF−18T」)
シリコーン4:フェニル基変性シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名「X−52−8148」)
架橋剤:オキサゾリン化合物(株式会社日本触媒製 商品名「エポクロスWS−700」)
界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名「ナロアクティーCL−85」)
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の帯電防止離型性ポリエステルフィルムは、塗膜均一性が高く、簡便かつ安定的に生産でき、しかも離型性、帯電防止性の品質が安定していることから、カード用、ラベル用、印刷用、粘着用、セラミック成形用、転写箔用などの離型性が求められる各種の用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムおよびその少なくとも一方の面に帯電防止剤および離型剤を含む帯電防止離型層を有する帯電防止離型性ポリエステルフィルムであって、該帯電防止剤がポリオキシアルキレン鎖を含有するカチオンポリマーであり、該離型剤がシリコーン化合物であることを特徴とする帯電防止離型性ポリエステルフィルム。
【請求項2】
該カチオンポリマーが、下記式(1)または下記式(2)で表わされる単量体から形成された構成単位A、および下記式(3)または下記式(4)で表わされる単量体から形成された構成単位Bを含んでなる請求項1に記載の帯電防止離型性ポリエステルフィルム。
【化1】

(上式(1)中、R1およびR2はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R3は炭素数1〜10のアルキレン基であり、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R6はHまたは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、Y-はハロゲンイオン、ナイトレートイオン、サルフェートイオン、アルキルサルフェートイオン、スルホネートイオンまたはアルキルスルホネートイオンである)
【化2】

(上式(2)中、R7およびR8はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R9は炭素数1〜10のアルキレン基であり、R10およびR11はそれぞれ炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R12はHまたは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であり、Z-はハロゲンイオン、ナイトレートイオン、サルフェートイオン、アルキルサルフェートイオン、スルホネートイオンまたはアルキルスルホネートイオンである)
【化3】

(上式(3)中、R13およびR14はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、A1は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから1つの水酸基を除いた残基をそれぞれ表わす)
【化4】

(上式(4)中、R15およびR16はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、A2は分子中に合計2〜20個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレンジオールから1つの水酸基を除いた残基をそれぞれ表わす)
【請求項3】
該カチオンポリマーが、さらに下記式(5)で表わされる単量体から形成された構成単位Cを含んでなる請求項1または2に記載の帯電防止離型性ポリエステルフィルム。
【化5】

(上式(5)中、R17およびR18はそれぞれHまたは炭素数1〜3の飽和炭化水素基であり、R19はHまたは炭素数1〜6の飽和炭化水素基をそれぞれ表わす)
【請求項4】
カチオンポリマーの全構成単位を基準として構成単位Aを60モル%以上99.9モル%以下、構成単位Bを0.1モル%以上40モル%以下の範囲で含んでなる請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止離型性ポリエステルフィルム。
【請求項5】
シリコーン化合物がポリジメチルシロキサン、エポキシ基含有シリコーン、アミノ基含有シリコーン、および炭素数6以上の炭化水素基を有するシリコーンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止離型性ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2011−201254(P2011−201254A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72830(P2010−72830)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】