説明

感光性組成物及びソルダーレジスト組成物

【課題】LEDから生じた光を広い波長にわたって効率よく反射するレジスト膜を形成することを可能とするソルダーレジスト材料を提供する。
【解決手段】(A)1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物と、(B)465nmの屈折率が1.6以上でありかつ屈折率比X(400nmの屈折率/(800nmの屈折率)が1以上、1.1以下である無機フィラーとを含む、感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にソルダーレジスト膜を形成したり、または発光ダイオードチップが搭載される基板上に光を反射させるレジスト膜を形成したりする用途に好適に用いられる感光性組成物及びソルダーレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器用途において、プリント配線基板の上面に発光ダイオード(以下、LEDと略す)チップが搭載されている。LEDから生じた光の内、上記プリント配線基板の上面側に到達した光をも利用するために、プリント配線基板が上面に白色ソルダーレジスト膜が形成されていることがある。この場合、LEDチップの表面からプリント配線基板とは反対側に直接照射される光だけでなく、プリント配線基板の上面側に到達し、白色ソルダーレジスト膜により反射された反射光も利用することができる。従って、LEDから生じた光の利用効率を高めることができる。
【0003】
下記の特許文献1は、白色ソルダーレジスト膜を形成するための材料の一例を開示している。具体的には、特許文献1は、酸化チタンを含有しているソルダーレジスト材料を開示している。下記の特許文献2は、ルチル型酸化チタンを含有している白色ソルダーレジスト材料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−249148号公報
【特許文献2】特開2007−322546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示されている各材料からなるレジスト膜では、レジスト膜で反射される光のうち800nm付近の反射光の反射率が低く、LEDから取り出される光の白色度が低下するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、LEDから生じた光を広い波長にわたって効率よく反射するレジスト膜を形成することを可能とする感光性組成物、並びに該感光性組成物からなるソルダーレジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の広い局面によれば、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物(A)と、465nmの屈折率が1.6以上でありかつ下記式(1)で示される屈折率比Xが1以上、1.1以下である無機フィラー(B)とを含む、感光性組成物が提供される。
【0008】
【数1】

【0009】
好ましくは、無機フィラー(B)が、酸化ジルコニウムであり、得られたソルダーレジストは、白色度の高い反射光が得られる。
【0010】
本発明のさらに他の特定の局面では、465nmの屈折率が1.8以上の無機フィラー(C)がさらに含有されており、それによって、レジスト膜の反射率をより一層高めることができる。
【0011】
好ましくは、無機フィラー(C)が、ルチル型酸化チタンであり、その場合には得られたレジスト膜の反射率をより一層効果的に高めることができる。
【0012】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は、本発明の感光性組成物からなり、露光及び現像により反射性に優れたソルダーレジスト膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る感光性組成物は、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物(A)と、465nmの屈折率が1.6以上でありかつ屈折率比Xが1以上1.1以下である無機フィラー(B)とを含むものであるため、感光性組成物を露光して得られるレジスト膜の反射率を高めることができ、かつ反射光の白色度も高められる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の感光性組成物を露光及び現像することにより得られたソルダーレジスト膜を有するLEDデバイスの一例を示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0016】
〔1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有する、重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物(A)〕
本発明に係る感光性組成物は、上記特定の重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方を含む。すなわち、本発明に係る感光性組成物は、上記化合物(A)として、重合性炭化水素モノマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素ポリマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの双方を含んでいてもよい。また、上記重合性炭化水素モノマーとしては、1種の重合性炭化水素モノマーのみが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素モノマーが用いられてもよい。同様に、上記重合性炭化水素ポリマーとしても、1種の重合性炭化水素ポリマーなどが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素ポリマーが用いられてもよい。
【0017】
上記重合性炭化水素モノマーとしては、重合性不飽和基を有するモノマー、または重合性環状エーテル基を有するモノマーが挙げられる。上記重合性炭化水素ポリマーとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂またはオレフィン樹脂などが挙げられる。なお、本明細書における「樹脂」なる用語は、固形の樹脂だけでなく、液状樹脂及びオリゴマーをも含む。
【0018】
重合性不飽和基を有するモノマーは、(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリル基を有する化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコールのジ(メタ)アクリレートや、多価アルコール、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物もしくは多価アルコールのプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレートや、フェノール、フェノールのエチレンオキサイド付加物もしくはフェノールのプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートや、グルセリンジグリシジルエーテルもしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートや、メラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0019】
多価アルコールとしては、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール又はトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。フェノールの(メタ)アクリレートとしては、フェノキシ(メタ)アクリレート又はビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0021】
上記重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含むことが好ましく、より好ましくは、重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーである。重合性不飽和基を有するモノマーが、2個以上の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含む場合には、最終的に得られたレジスト膜の架橋密度を高めることができ、従って、高温に晒されたとしてもレジスト膜が変色し難い。
【0022】
上記重合性炭化水素ポリマーは、下記の(i)〜(iv)で挙げられるカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。
【0023】
(i)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合とを有する化合物を共重合させた樹脂
(ii)カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)に、1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基とを有する化合物(b2)を反応させた樹脂
(iii)1分子中に1個のエポキシ基と不飽和二重結合とを有する化合物と不飽和二重結合を有する化合物との共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、反応により生成した第2級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた樹脂
(iv)水酸基を有するポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、反応により生成したカルボン酸基に、1分子中に1個のエポキシ基及び不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる、水酸基とカルボキシル基とを有する樹脂
【0024】
なお、レジスト膜の高温下における黄変性をより一層高めることができるので、上記重合性炭化水素ポリマーは、上記(ii)カルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。
【0025】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(b11)と、1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)とを共重合させることにより得られる。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルやグリコール変性(メタ)アクリレートが挙げられる。1種の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が用いられてもよく、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が併用されてもよい。
【0027】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート又はカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。グリコール変性(メタ)アクリレートとして、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)としては、(メタ)アクリル酸、不飽和基とカルボン酸との間が鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性などによりエステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸、マレイン酸などのカルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物が挙げられる。1種の上記化合物(b12)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b12)が用いられてもよい。
【0029】
1分子中にオキシラン環及びエチレン性不飽和基を有する化合物(b2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノアクリレートが挙げられる。なかでも、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましい。1種の化合物(b2)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b2)が用いられてもよい。
【0030】
カルボキシル基含有樹脂(i)〜(iv)の酸価は50〜150mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。酸価が50〜150mgKOH/gの範囲内にあると、現像の際の解像度を高めることができる。
【0031】
なお、化合物(i)は、1個以上の不飽和二重結合基および2個以上のカルボキシル基または酸無水物基を有する重合性炭化水素ポリマーを含有し、酸価が50〜150mgKOH/gであることがより好ましい。現像の際の解像度を高めることができる。
【0032】
なお、ここでいう「酸価」は、具体的には、化合物を溶剤(トルエン/2−プロパノール/水(体積比で5/5/0.05))に溶かして水酸化カリウムを用いて中和滴定することにより算出できる。中和滴定法としては、P−ナフトールベンゼイン指示薬法や電位差滴定法が挙げられる。
【0033】
また、重合性炭化水素ポリマーは、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。例えば、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂が挙げられる。1種のエポキシ樹脂が用いられてもよく、2種以上のエポキシ樹脂が組み合わせて用いられてもよい。
【0034】
〔無機フィラー(B)〕
本発明に係る感光性組成物は、465nmの屈折率が1.6以上でありかつ下記式(1)で示される屈折率比Xが1以上、1.1以下である無機フィラーを含有する。そのため、得られるレジスト膜の反射性を高めることができる。このような無機フィラー(B)としては、酸化マグネシウム、アスベスト又は酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0035】
【数2】

【0036】
無機フィラー(B)の屈折率は1.7以上であることが好ましく、それによってソルダーレジスト膜の反射率を高めることができる。具体的には、無機フィラー(B)は酸化ジルコニウムであることが好ましく、より一層反射率を高めることができる。
【0037】
取り扱いやすい粘度と必要な反射率が得られる感光性組成物となることから、感光性組成物中に占める無機フィラー(B)の含有量は3〜50重量%であることが好ましい。
【0038】
〔無機フィラー(C)〕
本発明に係る感光性組成物は、465nmの屈折率が1.8以上の無機フィラー(C)をさらに含有することが好ましく、それによってレジスト膜の反射性をさらに高めることができる。
【0039】
無機フィラー(C)としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、鉛白、硫化亜鉛、チタン酸カリウム又はチタン酸鉛が挙げられる。なかでも、高い反射率が得られるので酸化チタンが好ましい。
【0040】
広い波長範囲にわたって高い反射率が得られるので、無機フィラー(B)100重量部に対して、無機フィラー(C)が1重量部以上、300重量部以下で加えられることが好ましい。
【0041】
可視光領域での反射率を高めることができるため、無機フィラー(B)および無機フィラー(C)の数平均粒子径は、0.01〜2.0μmの範囲内にあることが好ましく、0.1〜1.0μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0042】
感光性組成物に占める、無機フィラー(B)および無機フィラー(C)の合計量は、3重量%以上、80重量%以下であることが好ましく、それによってレジスト膜の反射性を効果的に高めることができる。より好ましい下限は10重量%であり、より好ましい上限は75重量%である。
【0043】
〔光重合開始剤〕
本発明の感光性組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。それによって、感光性を高めることができる。光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール、イミダゾール、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、アントラキノン、ベンズアンスロン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、安息香酸エステル、アクリジン、フェナジン、チタノセン、α−アミノアルキルフェノン、オキシム、またはこれらの誘導体等が挙げられる。1種の光重合開始剤(C)が用いられてもよく、2種以上の光重合開始剤が用いられてもよい。
【0044】
上記透明な重合性炭化水素モノマーと透明な重合性炭化水素ポリマーとの合計100重量部に対して、上記光重合開始剤は0.1〜30重量部の範囲内で含有されることが好ましく、1〜15重量部の範囲内で含有されることがより好ましい。光重合開始剤が上記好ましい範囲内で含有される場合には、感光性組成物の感光性をより一層高めることができる。
【0045】
〔1分子中に少なくとも2個の環状エーテル基を有する化合物〕
本発明に係る感光性組成物は、1分子中に少なくとも2つの環状エーテル基を有する化合物を含有することが好ましい。このような環状エーテル基を有する化合物としては、ジシクロペンタジエンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アセタール、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、エチレングリコールのビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレングリコールの3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸ジエステル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ヒダントイン型を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、カテコールやレゾルシノール等の多価フェノールまたはグリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテル、フタル酸またはイソフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、更にはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、水溶性エポキシ樹脂、その他ウレタン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0046】
上記環状エーテル基を有する化合物は、光重合開始剤が光の照射により活性化されると、上記重合性炭化水素化合物(A)と反応し、感光性組成物を硬化させる。
【0047】
上記環状エーテル基を有する化合物は、上記化合物(A)100重量部に対し、好ましくは、0.1〜50重量部の割合で反応し、より好ましくは1〜30重量部の割合で配合される。環状エーテル基を有する化合物の配合割合が上記好ましい範囲内にある場合、高温化でも変色しがたいレジスト膜を得ることができる。
【0048】
上記環状エーテル基を有する化合物は、1種のみが用いられてもよく、1種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0049】
〔その他の成分〕
本発明に係る感光性組成物は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、溶剤、着色剤、充填剤、消泡剤、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含有してもよい。
【0050】
〔調製方法〕
本発明に係る感光性組成物は、例えば、各配合成分を撹拌混合した後、3本ロールにて均一に混合することにより調製できる。
【0051】
感光性組成物を硬化させるために使用される光源として、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を発光する照射装置が挙げられる。上記光源として、例えば、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ又はエキシマレーザーが挙げられる。これらの光源は、感光性組成物の構成成分の感光波長に応じて適宜選択される。光の照射エネルギーは、所望とする膜厚又は感光性組成物の構成成分により適宜選択される。光の照射エネルギーは、一般に、10〜3000mJ/cm2の範囲内である。
【0052】
〔LEDデバイス〕
本発明に係る感光性組成物は、LEDチップが基板に実装されているLEDデバイス中のソルダーレジスト膜の形成に好適に用いられる。図1は、本発明に係る感光性組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を有するLEDデバイスを模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【0053】
図1に示すLEDデバイス1では、基板2の上面2a上に、ソルダーレジスト膜3が形成されている。ソルダーレジスト膜3上に、LEDチップ7が搭載されている。
【0054】
基板2は、ガラス層5と樹脂層6とを有する積層基板からなる。もっとも、基板2は特に限定されず、樹脂と他の材料からなる積層基板に限らず、セラミック多層基板などの他の積層基板により形成されていてもよい。さらに、基板2は、単一の樹脂材料からなる樹脂基板であってもよい。基板2の上面2a上には、電極4a,4bが形成されている。電極4a,4bは、適宜の金属もしくは合金からなる。
【0055】
ソルダーレジスト膜3は、本発明の感光性組成物を基板2の上面2a上に塗工し、露光・現像することにより形成されている。より具体的には、電極4a,4bを形成した後に、基板2の上面2a上の全面に感光性組成物を塗工する。次に、下方に電極4a,4bが位置する部分が遮光部とされているマスクを用いて感光性組成物を上方から選択的に露光する。露光により、光が照射された領域では、感光性組成物が硬化する。遮光部で覆われた領域では感光性組成物の硬化は進行しない。従って、硬化していない感光性組成物を溶解する溶剤を用いて、露光されていない感光性組成物部分を除去する。このようにして、図1に示す開口部3a,3bを有するソルダーレジスト膜3を得ることができる。開口部3a,3bには、上記電極4a,4bがそれぞれ露出している。
【0056】
次に、下面7aに端子8a,8bを有するLEDチップ7をソルダーレジスト膜3上に搭載し、半田9a,9bにより端子8a,8bと電極4a,4bとをそれぞれ接合する。このようにして、LEDデバイス1が得られる。
【0057】
LEDデバイス1では、LEDチップ7を駆動すると、破線で示すように光が発せられる。この場合、LEDチップ7から基板2の上面2aとは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、ソルダーレジスト膜3に到達した光が矢印Aで示すように反射される。ソルダーレジスト膜3は、白色であり、上記光を高い効率で反射させる。従って、矢印Aで示す反射光も利用されるので、LEDチップ7の光の利用効率を高めることができる。
【0058】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。
【0059】
まず、実施例及び比較例の評価方法を説明する。
【0060】
(評価方法)
(1)測定サンプルの調製
80mm×90mm×厚さ0.8mmのガラスエポキシ基板、品番:FR−4からなる基板上に、スクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルバイアス製スクリーン印刷版を用いて、感光性組成物を全面に印刷した。印刷後、80℃のオーブン内で20分間印刷された感光性組成物層を乾燥させた。次に、紫外線照射装置を用い、未露光領域が遮光部とされているパターンを有するフォトマスクを介し、感光性組成物層に、波長365nmの紫外線を照射エネルギーが400mJ/cm2となるように、100mW/cm2の紫外線照度で4秒間照射した。紫外線による硬化が進行し、白色のレジスト膜が形成された。照射後、炭酸ナトリウムの1重量%水溶液にレジスト膜を浸漬して現像し、未露光部の感光性組成物層部分を除去した。このようにして、遮光部が開口部とされているパターンを有するレジスト膜を得た。しかる後、150℃のオーブン内でレジスト膜を1時間加熱し硬化させ、レジスト膜が形成されているサンプルを得た。なお、得られたサンプルにおけるレジスト膜の厚みは20μmであった。
【0061】
(反射率の測定)
積分球を備えた分光光度計(島津製作所社製、「UVPC−3101C」)を用いて、400nmから800nmの反射率を測定した。450nmの反射率と800nmの反射率との比X(450nmの反射率/800nmの反射率)を計算した。反射率比が、1.1以下の場合を「◎」、1.1より大きく1.15以下の場合を「○」、1.15より大きい場合を「×」とした。
【0062】
(合成例1)
アクリルポリマー1を含む溶液の調製
温度計、攪拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてエチルカルビトールアセテート、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃に加熱した。次いで、メタクリル酸とメチルメタクリレートを30:70のモル比で混合したモノマーを約2時間かけて滴下した。さらに1時間攪拌した後、120℃まで加熱してポリマー溶液を得た。
【0063】
このポリマー溶液を室温まで冷却した後、触媒として臭化テトラブチルアンモニウム1gを投入した。メタクリル酸とメチルアクリレートとの合計投入量と、グリシジルアクリレートの投入量とのモル比が100:10となる量のグリシジルアクリレートを投入した。100℃で30分間攪拌し、ポリマー中のカルボキシル基と付加反応させ、室温まで冷却した。固形分酸価60mgKOH/g、固形分濃度50%、重量平均分子量15,000の不飽和基含有硬化性樹脂溶液を得た。以下、この溶液を、アクリルポリマー1を含む溶液と呼ぶ。
【0064】
(合成例2)
アクリルポリマー2を含む溶液の調製
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル750gとt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート17.9gを窒素ガスで置換された反応容器に投入し、窒素ガス気流下、95℃に昇温後、メタクリル酸241.4gと、コハク酸変性ε−カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、「プラクセルFM1A」)205.4gと、2,2´−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)17.9gとの混合物を反応容器内へ3時間かけて滴下し、95℃で8時間攪拌を行い、カルボキシル基を有するビニル共重合体溶液を得た。次にビニル共重合体溶液にエポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、「サイクロマーA200」)303.3gと、トリフェニルフォスフィン3.03gと、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.5gとを反応容器に投入し、空気気流下、100℃まで加熱し、10時間攪拌を行い、エポキシ基の開環付加反応を行った。固形分酸価76.5mgKOH/g、固形分濃度55%、重量平均分子量20000の不飽和基含有硬化性樹脂溶液を得た。以下、この溶液を、アクリルポリマー2を含む溶液と呼ぶ。
【0065】
(実施例1)
アクリルポリマー1を含む溶液を15重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」と呼ぶことがある)5重量部と、酸化ジルコニウム(日本電工社製、品番:PCS、数平均粒子径1.1μm)40重量部と、光ラジカル重合開始剤(日本シイベルヘグナー社製、「TPO」)2重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「828」)を配合し、混合機(シンキー社製、「練太郎SP−500」)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合した。その後、混合機(シンキー社製、「SP−500」)を用いて、混合物を3分間脱泡することにより、感光性組成物を得た。
【0066】
得られた感光性組成物を、基板(難燃性指標 FR−4)上に、スクリーン印刷法により、塗工した。塗工後、80℃のオーブンで20分間乾燥させ、レジスト材料層を基板上に形成した。次に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、紫外線照射装置を用い、レジスト材料層に365nmの波長の紫外線を、照射エネルギーが400mJ/cm2となるように100mW/cm2の紫外線照度で4秒間照射した。紫外線を照射した後、炭酸ナトリウムの1重量%水溶液にレジスト材料層を浸漬して現像し、未露光部のレジスト材料層を除去することにより、基板上にレジスト膜のパターンを形成した。その後、150℃のオーブン内で1時間加熱しレジスト膜を後硬化させることで、レジスト膜を得た。得られたレジスト膜の厚みは20μmであった。
【0067】
(実施例2〜5および比較例)
表1に記載された組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして感光性組成物を調製した。
【0068】
表1において、各成分の詳細は以下の通り。
【0069】
〔酸化チタン〕石原産業社製、品番 CR−97、平均粒子径 0.25μm、465nmの屈折率 2.4、屈折率比X 1.12
〔酸化ジルコニウム〕日本電工社製、品番 PCS、平均粒子径 1.1μm、465nmの屈折率 2.1、屈折率比X 1.04
【0070】
【表1】

【0071】
表1から明らかなように、実施例1〜5により得られた、屈折率分布の小さい酸化ジルコニウムを含むレジスト膜は、比較例で得られたレジスト膜に比べて反射率分布が小さいことがわかる。
【符号の説明】
【0072】
1…LEDデバイス
2…基板
2a…上面
3…ソルダーレジスト膜
3a,3b…開口部
4a,4b…電極
5…ガラス層
6…樹脂層
7…LEDチップ
7a…下面
8a,8b…端子
9a,9b…半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物と、
(B)465nmの屈折率が1.6以上でありかつ下記式(1)で示される屈折率比Xが1以上、1.1以下である無機フィラーとを含む、感光性組成物。
【数1】

【請求項2】
前記無機フィラー(B)が酸化ジルコニウムである、請求項1記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項3】
465nmの屈折率が1.8以上の無機フィラー(C)をさらに含有する請求項1または2記載のソルダーレジスト組成物。
【請求項4】
前記無機フィラー(C)が、ルチル型酸化チタンである請求項1〜3記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性組成物からなるソルダーレジスト組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−197952(P2010−197952A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45734(P2009−45734)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】