説明

樹脂組成物および硬化物

【課題】本発明は、新規な塩基増殖剤、該塩基増殖剤を含む樹脂組成物および該樹脂組成物から得られる硬化物を提供することを課題とする。
【解決手段】斯かる課題を解決する手段として、下記一般式(1)で表される化合物を提供する。
【化1】


[式中、X、n、R〜Rは明細書に定義されるとおりである。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、塩基増殖剤、該塩基増殖剤を含む樹脂組成物および該樹脂組成物から得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
封止剤、接着剤等の用途に使用される光硬化物を作成する際に、従来光開始剤としてラジカルまたはカチオンによる硬化が用いられている。近年、特にエポキシ基含有化合物などの硬化または縮合反応を促進する化合物を硬化させる場合において、前記のラジカルまたはカチオンではなく、塩基(塩基性化合物)を用いることが効果的であることが知られてきている。しかしながら、前記の用途に要求される光に対する高い感度と硬化反応を促進させるために十分な量の塩基種を発生する性質とを兼ね備えた、実用可能な光塩基発生剤は知られていない。
【0003】
そこで、光塩基発生剤と塩基増殖剤とを併用し、塩基増殖反応を利用することが提案されている(特許文献1〜4)。塩基増殖剤とは、塩基の作用によって分解や転移反応し塩基を発生させる化合物を指す。塩基増殖剤を光塩基発生剤と併用をすることで、上記の問題を解決することができる。例えば、少量の光塩基発生剤でも塩基増殖剤によって塩基を増加させられるので、樹脂組成物において十分実用的な感度が達成される。また、塩基増殖剤の分解後に生じる化合物も安定である。さらに、分解前には塩基増殖剤として中性の化合物を用いることで、樹脂組成物の保存安定性の向上などを図ることができる。
【0004】
特に、硬化性樹脂組成物がEL素子用途などで使用される場合においては、硬化物には水分や酸素の透過を妨げる透湿バリア性が求められる。しかしながら、従来光塩基発生剤と塩基増殖剤との併用は主に接着剤分野で開発が進められ、可とう性や柔軟性を目的とした設計がなされてきた。そのため、具体的にいかなる塩基を用いることで高い透湿バリア性が実現できるかについても、そのような塩基を発生する塩基増殖剤についても、一切知られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−250111号公報
【特許文献2】特許第4454694号
【特許文献3】WO2008/152956号
【特許文献4】特許第4191956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた透湿バリア性を有する硬化性樹脂組成物を得るための塩基増殖剤、該塩基増殖剤を含む樹脂組成物および該樹脂組成物から得られる硬化物を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、下記式(1)で表される構造を有する化合物を塩基増殖剤として好適に用いることができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を包含する。
【0009】
項1、(A)下記一般式(1)で表される塩基増殖剤:
【0010】
【化1】

【0011】
[式(1)において、nは2〜8の整数を表す。
Xは、n価の有機基である。
Xは、置換されてもよい炭素数1〜6のアルキレン基または下記一般式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
(式(2)において、Xは、n価の炭素数3〜8のシクロアルキル部分、n価のベンゼン環部分もしくはn価のナフタレン環部分を示す。
およびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を示す。)で表されるn価の有機基を示す。
Yは、下記一般式(3)
【0014】
【化3】

【0015】
(式(3)において、
〜Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルファニル基、アミノカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基、メシル基、フェニル基、または、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基もしくはアリール基を示す。ただし、RおよびRの少なくとも1つは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルファニル基、アミノカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基、メシル基、フェニル基、または、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基もしくはアリール基を示す。
およびRは、結合して環状構造を形成していてもよい。)で表される有機基を示す。]、(B)塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物、および
(C)光塩基発生剤
を含有する樹脂組成物。
【0016】
項2、塩基増殖剤(A)が、下記一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される項1に記載の樹脂組成物。
【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
[式中、
Mは、水素原子または置換基を示す。
およびRは、各々同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を示す。
Yは、前記に同じ。]
【0021】
項3、塩基増殖剤(A)が、塩基の存在下において70℃以上の加熱により分解しアミン化合物を生成する塩基増殖剤である、項1または2に記載の樹脂組成物。
【0022】
項4、塩基増殖剤(A)の5%重量減少温度が150℃以上である、項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0023】
項5、塩基増殖剤(A)において、RおよびRのうち少なくとも1つが電子吸引性基である項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0024】
項6、光塩基発生剤(C)が、下記一般式(4)で表される化合物である、項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0025】
【化7】

【0026】
[式(4)において、RおよびRは、同一または異なって、水素または1価の有機基を示す。RおよびRは、それらが結合して環状構造を形成していても良い。ただし、RおよびRのうち、少なくとも1つは1価の有機基である。R〜R10は、同一または異なって、水素、ハロゲンまたは1価の有機基を示す。R〜R10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良い。ただし、R〜R10のうち、少なくとも1つは1価の有機基である。]
【0027】
項7、塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物(B)がエポキシ基を少なくとも1つ以上有するエポキシ基含有化合物である項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【0028】
項8、項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
【0029】
項9、水蒸気透過度が100g/m・day以下である、項8に記載の硬化物。
【0030】
項10、下記一般式(1)で表される化合物。
【0031】
【化8】

【0032】
[式(1)において、nは2〜8の整数を表す。
Xは、n価の有機基である。
Xは、置換されてもよい炭素数1〜6のアルキレン基または下記一般式(2)
【0033】
【化9】

【0034】
(式(2)において、Xは、n価の炭素数3〜8のシクロアルキル部分、n価のベンゼン環部分もしくはn価のナフタレン環部分を示す。
およびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を示す。)で表されるn価の有機基を示す。
Yは、下記一般式(3)
【0035】
【化10】

【0036】
(式(3)において、
〜Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルファニル基、アミノカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基、メシル基、フェニル基、または、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基もしくはアリール基を示す。ただし、RおよびRの少なくとも1つは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルファニル基、アミノカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基、メシル基、フェニル基、または、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基もしくはアリール基を示す。
およびRは、結合して環状構造を形成していてもよい。)で表される有機基を示す。]
【0037】
項11、項10に記載の化合物からなる塩基増殖剤。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、塩基増殖剤として使用することができる新規な化合物が提供される。本発明の化合物は、塩基の作用により分解し塩基を発生させることができ、さらに分解により発生する塩基がさらなる分解を促進するため、優れた塩基増殖作用を有する塩基増殖剤として使用することができる。さらに、本発明の化合物は保存安定性に優れる。
【0039】
本発明の塩基増殖剤は、既存の化合物を用いて合成可能であるため、安価かつ簡便な方法により合成をすることで、製造等に要するコストを抑制することができる。
【0040】
そして、本発明の塩基増殖剤は、2以上の1級アミン基を有する塩基(ジアミン、トリアミン等)を発生させることができる。そのため、エポキシ基含有化合物などの硬化性化合物との併用をすることで、優れた耐熱性、透湿バリア性を有する硬化物を得ることができる。
【0041】
また、本発明の塩基増殖剤を、光塩基発生剤と併用することで、感度良好な樹脂組成物が提供される。本発明の塩基増殖剤を用いることで、樹脂組成物中に硬化促進剤の機能を有する化合物の添加量を抑制することができるとの優れた効果が発揮される。このことにより、光塩基発生剤に由来する残渣を低減することも可能となる。
【0042】
さらに、本発明の塩基増殖剤は、従来のカチオン重合型の硬化促進剤と比べて、金属腐食作用が低減される。
【0043】
このような優れた硬化物が得られる樹脂組成物は、塗料、印刷インキ、オーバーコート層、接着剤、印刷原板、プリント配線板の配線保護用のソルダーレジストや、層間絶縁膜、カラーフィルターの画素、反射防止膜、ホログラム等を形成するためのレジスト等の多様な用途への応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】化合物Aにビペリジンを添加した溶液の、加熱後および室温でのH−NMRの測定結果(NMRチャート)を示す。(A)室温(r.t.)、および(B)130℃で加熱後の測定結果をそれぞれ示す。
【図2】NMRチャート中のピークに対応する水素の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
1.化合物および塩基増殖剤
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0046】
【化11】

【0047】
[式(1)において、nは2〜8の整数を表す。
Xは、n価の有機基である。]
一般式(1)において、nは2〜8の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2、3もしくは4、特には2である。本発明の化合物を、硬化性樹脂組成物中などの塩基増殖剤として用いる場合、nを前述の値とすることで、該化合物は2以上の1級アミン基を有する塩基(ジアミン、トリアミン等)を発生させることができ、該塩基は付加重合反応を効率的に促進させ、結果として高い透湿バリア性を有する硬化物を得ることができる。
【0048】
一般式(1)において、Xはn価の有機基である。すなわち、n個の同一または異なってもよい上記Yが、各々Xに結合している。nが2〜8のそれぞれの場合について、一般式(1)は下記の態様を示す。
【0049】
【化12】

【0050】
一般式(1)において、n個の−Yは同一であっても異なってもよい。
【0051】
上記Xは、置換されてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、または
【0052】
【化13】

【0053】
[式(2)において、Xは、n価の炭素数3〜8のシクロアルキル部分、n価のベンゼン環部分もしくはn価のナフタレン環部分を示す。
およびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基、好ましくは水素原子を示す。]で表されるn価の有機基を示す。
【0054】
一般式(2)において、Xはn価の炭素数3〜8のシクロアルキル部分、n価のベンゼン環部分もしくはn価のナフタレン環部分。すなわち、本発明の化合物において、n個の同一または異なってもよい−(CR)−Y基が、各々Xに結合している。
【0055】
Xが置換されてもよい炭素数1〜6のアルキレン基である場合、該アルキレン基として、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などのアルキレン基が挙げられる。アルキレン基の好適な例として、一般式−(CH−(式中、mは1〜6の整数を示す。)で表されるものが挙げられる。一般式(1)において、Xが置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基である場合、上記nは2である。この場合の本発明化合物の好ましい態様の例を、下記に示す。
【0056】
【化14】

【0057】
[式中、mは1〜6の整数を示す。
およびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基、好ましくは水素原子を示す。]]
Xが炭素数1〜6のアルキレン基であることで、本発明の化合物を、硬化性樹脂組成物中などの塩基増殖剤として用いる場合、特に高い透湿バリア性を有する硬化物を得ることができる。これは、炭素数7以上のアルキレン基である場合と比べて、エポキシ基などの官能基へ付加重合する際に、2の官能基間の距離が短く剛直な3次元架橋を有する硬化物が形成されるためと考えられるが、本発明を拘束するものではない。
【0058】
また、Xが炭素数1〜6のアルキレン基である場合、本発明の化合物が発生する塩基は常温で液体であるため、取り扱いが容易である。
【0059】
上記Xが、上記一般式(2)で表される有機基である場合、Xはn価の炭素数3〜8のシクロアルキル部分、n価のベンゼン環部分もしくはn価のナフタレン環部分である。
【0060】
上記炭素数3〜8のシクロアルキル部分は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなど炭素数3〜8のシクロアルカンの炭素骨格を有する部分である。Xが該シクロアルキル部分である場合の本発明化合物の好ましい態様を、下記に示す。
【0061】
【化15】

【0062】
[式中、pは0または1である。
pが0の場合、(Z)pは、水素原子または置換基、好ましくは水素原子を示す。
pが1の場合、(Z)pは、同一または異なって、−(CR)−Y基を示す。
ただし、各式中、(Z)のうちn個が−(CR)−Y基である。]
【0063】
なお、シクロアルキル部分がシクロプロパンの炭素骨格を有する部分である場合上記nは2または3である。シクロアルキル部分がシクロブタン骨格を有する部分である場合上記nは2〜4である。シクロアルキル部分がシクロペンタン骨格を有する部分である場合上記nは2〜5である。シクロアルキル部分がシクロヘキサン骨格を有する部分である場合上記nは2〜6である。シクロアルキル部分がシクロヘプタン骨格を有する部分である場合上記nは2〜7である。シクロアルキル部分がシクロオクタン骨格を有する部分である場合上記nは2〜8である。
【0064】
本明細書において、不斉炭素を有する化合物は、R体、S体あるいはこれらの任意の割合の混合物を含み、ラセミ体であってもよい。不斉炭素を2以上含む場合、本発明の化合物はいずれの異性体あるいはその混合物であってもよい。
【0065】
上記Xがシクロアルキル部分である場合、下記に示すシクロアルキル部分がシクロヘキサン骨格を有するシクロアルキル部分である場合が特に好ましい。
【0066】
【化16】

【0067】
[式中、pは0または1である。
pが0の場合、(Z)pは、水素原子または置換基、好ましくは水素原子を示す。
pが1の場合、(Z)pは、同一または異なって、−(CR)−Y基を示す。
ただし、各式中、(Z)のうち少なくとも2個は−(CR)−Y基である。]
【0068】
この場合、−(CR)−Y基が結合するシクロアルキル部分の炭素原子の位置は、特に限定されるものではない。例えば、n=2の場合においてシクロアルキル部分がシクロへキシル基である場合、該−(CR)−Y基は、1位および2位の炭素原子、1位および3位の炭素原子ならびに1位および4位の炭素原子に結合することができる。なかでも、下記に示す、−(CR)−Y基が1位および3位の炭素原子に結合する態様が、本発明の特に好ましい態様として挙げられる。
【0069】
【化17】

【0070】
[式中、Mは、水素原子または置換基、好ましくは水素原子を示す。
およびRは、各々同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を示す。
Yは、前記に同じ。]
【0071】
上記Xがベンゼン環部分である場合、n個の−(CR)−Y基が、ベンゼン環部分に各々結合する。該−(CR)−Y基は、互いに同一であっても異なってもよい。この場合の本発明化合物の好ましい態様を、下記に示す。なお、この場合、上記nは2〜6である。
【0072】
【化18】

【0073】
[式中、pは0または1である。
pが0の場合、(Z)pは、水素原子または置換基、好ましくは水素原子を示す。
pが1の場合、(Z)pは、同一または異なって、(CR)−Yを示す。
ただし、(Z)のうちn個が(CR)−Yである。
Yは、前記に同じ。]
【0074】
該−(CR)−Y基が結合するベンゼン環部分の炭素原子の位置は、特に限定されるものではない。例えば、n=2のとき、−(CR)−Y基は、ベンゼン環部分(フェニレン基)のオルト位(1位および2位の炭素原子)、メタ位(1位および3位の炭素原子)およびパラ位(1位および4位の炭素原子)に結合することができる。なかでも、下記に示すメタ位に結合する態様が、本発明の特に好ましい態様として挙げられる。
【0075】
【化19】

【0076】
[式中、Mは、水素原子または置換基、好ましくは水素原子を示す。
およびRは、各々同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を示す。
Yは、前記に同じ。]
【0077】
−(CR)−Y基がベンゼン環にメタ位に結合する場合、本発明の化合物を、硬化性樹脂組成物中などの塩基増殖剤として用いる場合、特に高い透湿バリア性を有する硬化物を得ることができる。これは、前述のXが炭素数1〜6のアルキレン基である場合と同様に、エポキシ基などの官能基へ付加重合する際に、2の官能基間の距離(炭素数5のアルキレンの場合におおよそ相当すると考えられる。)が短く剛直な3次元架橋を有する硬化物が形成されるためと考えられるが、本発明を拘束するものではない。
【0078】
上記Xがナフタレン環部分である場合、n個の−(CR)Y基が、ナフタレン環部分に各々結合する。該−(CR)−Y基は、互いに同一であっても異なってもよい。この本発明化合物の好ましい態様を、下記に示す。
【0079】
【化20】

【0080】
[式中、pは0または1である。
pが0の場合、(Z)pは、水素原子または置換基、好ましくは水素原子を示す。
pが1の場合、(Z)pは、同一または異なって、(CR)−Yを示す。
ただし、(Z)のうちn個が(CR)−Yである。]
【0081】
−(CR)−Y基が結合するナフタレン環部分の炭素原子は特に限定されるものではない。例えば、n=2のとき、−(Z)1基は、ナフタレン環部分(ナフチレン基)の一方の環の2つの炭素原子(例えば、1位および2位、1位および3位、1位および4位、または、2位および3位の炭素原子)、または異なる環の1つずつの炭素原子(例えば、1位および5位、1位および6位、1位および7位、1位および8位、2位および6位、または、2位および7位の炭素原子)に結合することができる。
【0082】
上記−(Z)0基が置換基である場合、置換基として、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基などが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0083】
一般式(1)において、Yは下記一般式(3)で表される有機基を示す。
【0084】
【化21】

【0085】
一般式(3)において、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルファニル基、アミノカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基(p−トルエンスルホニル基)、メシル基(メタンスルホニル基)、フェニル基、または、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基もしくはアリール基である。なお、本明細書において、上記アルキル基、上記シクロアルキル基、上記アルケニル基、上記シクロアルケニル基、上記アルキルチオ基、上記アルコキシ基、上記アルコキシカルボニル基、上記アシルオキシ基および上記アリール基のいずれもが置換されていてもよい。
【0086】
上記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示される。
【0087】
上記アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、neo−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜10のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
上記シクロアルキル基として、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
上記アルケニル基として、例えば、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、イソブテニル基、1−メチルアリル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、3,5−ジメチルオクテニル基、3,7−ジメチルオクテニル基などの炭素数2〜10の直鎖または分岐を有するアルケニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
上記シクロアルケニル基として、例えば、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基などの炭素数4〜8のシクロアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
上記アルキルチオ基の好ましいものとしては、例えば、アルキル部分が前述のアルキル基である炭素数1〜10のアルキルチオ基(好ましくはメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ)が挙げられる。
【0092】
上記アルコキシ基の好ましいものとしては、例えば、アルキル部分が上記アルキル基である炭素数1〜10程度のアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシなど)が挙げられる。
【0093】
アルコキシカルボニル基(−(C=O)OR)としては、例えば、アルコキシ部分が上記アルコキシ基である炭素数2〜11のアルコキシカルボニル基(好ましくは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル)が挙げられる。
【0094】
上記アシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、イソバレリル、ヘキシルカルボニル、ヘプチルカルボニル、ノニルカルボニル、デシルカルボニル、ウンデシルカルボニル、ベンジルカルボニル、ベンゾイルなどの炭素数2〜11のアシル基が挙げられる。
【0095】
上記アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、バレリルオキシ、イソバレリルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ、ヘプチルカルボニルオキシ、ノニルカルボニルオキシ、デシルカルボニルオキシ、ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシなどの炭素数2〜11のアシルオキシ基が挙げられる。
【0096】
上記アリール基の好ましいものとしては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜25程度のアリール基が挙げられる。
【0097】
およびR2が1価の有機基である場合、それらが互いに結合を介して環構造を形成してもよい。形成される環構造の例として、シクロペンタン環、シクロへキサン環等の脂環式の環構造、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族環構造などが挙げられる。上記環構造を構成する原子としてヘテロ原子を含んでいても良い。
【0098】
およびR2は、少なくとも1つが電子吸引性基であることが好ましい。なお、電子吸引性基とは、主にシアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基、メシル基、フェニル基等を指す。RおよびR2のうち少なくとも1つが電子吸引性基であることで、後述する塩基の存在下での加熱の際に、β位の水素原子(RおよびR2が結合するメチン基(−CH−)の水素原子)が容易に離脱し、化学式(1)の化合物の分解の効率を向上させると考えられるが、本発明を拘束するものではない。
【0099】
一般式(3)において、RおよびRは、少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、RおよびRの2つが水素原子であることが特に好ましい。
【0100】
一般式(3)において、R〜Rが置換基を有する場合、置換基はハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、ニトロ基などから選ぶことができるが、これらに限定されない。
【0101】
一般式(1)で表される化合物は、好ましくは分子量が650以下、特に好ましくは600以下である。分子量がこの範囲内であることで、本発明の化合物を硬化性樹脂組成物中などの塩基増殖剤として用いる場合、添加量を少なくすることが可能となり、特に無溶剤系において粘度を上昇させることなく使用することが可能となる。
【0102】
本発明の化合物の特に好ましい例として、下記化学式(a−1)〜(a−3)で表される構造を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
【化22】

【0104】
本発明の化合物は、後述するように樹脂組成物中に含有させる光塩基発生剤との併用の観点から、一般的に感光性樹脂の露光に用いられる高圧水銀ランプの発光波長で、比較的強度の高い365nm(i線)405nm(h線)、436nm(g線)の3種の波長に吸収を出来るだけ有さないことが好ましい。具体的には、本発明の化合物は、400nm以上の波長域に吸収を持たないことが好ましく、360nm以上の波長域に吸収を持たないことがさらに好ましい。400nm以上に吸収を有さないことは、光源からの光を吸収せず、良好な感度が得られるとの観点から好ましい。一般に露光に用いられる高圧水銀灯の主な発光波長が436nm(g線)、405nm(h線)、365nm(i線)であり、そのうち、最も発光強度が大きいのが365nmであることより、360nm以上の領域に吸収を持たないことが、良好な感度が得られるとの観点からさらに好ましい。
【0105】
本発明の化合物は、塩基増殖剤として用いる場合、耐熱性が高いことが好ましい。具体的には、耐熱性の指標として5%重量減少温度が、150℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがさらに好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。ここで、5%重量減少温度とは、当業者において公知の熱重量分析装置を用いて重量減少を測定した時に、試料の重量が初期重量から5%減少した時点(換言すればサンプル重量が初期の95%となった時点)の温度である。
【0106】
合成方法
本発明の一般式(1)で表される化合物は、例えば、下記の反応式−1に準じて、容易に合成することができる。
【0107】
【化23】

【0108】
[式中、X、n、R〜Rは前記に定義されるとおりである。]
【0109】
反応式−1においては、一般式(6)で表されるイソシアネート化合物と、一般式(7)で表される第1級アルコール化合物とを、必要に応じて触媒の存在下で反応させることにより、本発明の化合物を製造することができる。一般式(7)で表される第1級アルコール化合物は、合成される一般式(1)で表される化合物に応じて、単一の化合物であってもよく、2〜上記n種の異なる化合物の組み合わせであってもよい。
【0110】
一般式(6)で表される化合物と一般式(7)で表される化合物との反応は、溶媒の存在下または非存在下で行うことができる。溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。
【0111】
上記反応において、一般式(6)で表される化合物と一般式(7)で表される化合物との使用割合は、広い範囲から適宜選択することができるが、前者1モルに対して、後者を合計でnモル〜過剰量使用することができる。
【0112】
上記反応で必要に応じて使用される触媒は、イソシアネート化合物と第1級アルコール化合物との間のウレタン化反応を触媒できるものであれば、特に限定されるものではない。好ましくは、ジラウリン酸ジブチル錫などの錫化合物触媒を用いることができる。
【0113】
このような触媒は、一般式(6)で表されるイソシアネート化合物1モルに対して、約0.001〜0.1モル程度となるような量で使用することができる。反応時間は30分〜24時間、反応温度は室温〜100℃程度で反応は有利に進行する。
【0114】
上記反応により得られる生成物は、通常行なわれる手段により単離および精製をすることができる。このような手段として、再結晶法、蒸留法、クロマトグラフィ法などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
かくして、本発明の化合物が製造される。上記化合物が合成されたことは、例えばH−NMR測定等の公知の手段により確認することができる。
【0116】
本発明化合物の塩基増殖剤としての使用方法
本発明の一般式(1)で表される化合物は、下記反応式−2で示すように、塩基(Base)の存在下において70℃以上の加熱により分解し、一般式(8)で表されるアミン化合物を発生させる。そして、下記反応式−2で示す反応により生じた一般式(8)で表されるアミン系化合物は、新たに下記反応式−2において触媒として作用する塩基となることができる。このような反応機構(塩基増殖反応)のため、本発明は、一般式(1)で表される化合物からなる塩基増殖剤をも提供する。なお、「塩基増殖剤」とは塩基の作用によって分解や転位反応し塩基を発生させる化合物を指す。また、「塩基」とは塩基性化合物を指す。本明細書において、塩基性化合物のことを単に「塩基」と記載する。
【0117】
【化24】

【0118】
[式中、X、n、R〜Rは前記に定義されるとおりである。]
【0119】
本発明の化合物が、上記化学式(3)で表される化合物である場合、当該化合物は下記反応式−3で示すように、塩基(Base)の作用かつ加熱により分解する。分解により、化学式(3)で表される化合物1分子より、m−キシレンジアミン1分子およびアクリロニトリル2分子が生じる。
【0120】
【化25】

【0121】
上記塩基増殖剤が、反応式−2により分解し、一般式(9)で表されるアミン化合物を生じたことは、例えば分解反応の前と後とで公知のH−NMR測定を行い、結果を比較することにより確認することができる。
【0122】
上記塩基増殖剤は、反応式−2による分解のために加熱をする。上記分解のための加熱温度は、本発明の塩基増殖剤が分解するために必要な加熱温度であれば特に限定されるものではない。分解のための加熱温度は、好ましくは70℃以上であるが、特に限定されるものではない。加熱温度は、塩基増殖剤の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の塩基増殖剤を後述する光塩基発生剤と併用する場合であって、該光塩基発生剤が塩基の発生に加熱を要する場合、該光塩基発生剤が塩基の発生に要する加熱温度を、本発明の塩基増殖剤を分解するための加熱温度とすることができる。
【0123】
上記塩基増殖剤は、反応式−2を開始させるために、塩基を作用させる。反応式−2を開始させるために作用させる塩基は特に限定されるものではなく、あらゆる塩基を作用させて塩基増殖剤としての機能を発揮することができる。例えば、作用させる塩基として、アミン化合物を好適に用いることができる。
【0124】
好適な塩基として、上記塩基は光塩基発生剤が発生する塩基が例示される。光塩基発生剤とは、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として電磁波が照射されると塩基を発生する剤をいう。上記光塩基発生剤は、外部刺激として電磁波が照射されると塩基を発生するものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、上記光塩基発生剤は、電磁波が照射されると塩基を発生し、適宜加熱をすることにより塩基の発生が促進される光塩基発生剤である。
【0125】
本発明において使用される光塩基発生剤として、2,6−ジメチル−3,5−ジシアノ−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’,4’−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンなどが例示できる。
【0126】
本発明の塩基増殖剤の好適な使用形態として、例えば、特開2010−106233号公報において開示される下記の一般式(2)で表される光塩基発生剤との併用が例示される。すなわち、上記の電磁波が照射されると塩基を発生し、適宜加熱をすることにより塩基の発生が促進される光塩基発生剤として、下記の一般式(4)で表される光塩基発生剤(けい皮酸型光塩基発生剤)を好適に使用することができる:
【0127】
【化26】

【0128】
[式(4)において、RおよびRは、同一または異なって、水素または1価の有機基を示す。RおよびRは、それらが結合して環状構造を形成していても良い。ただし、RおよびRのうち、少なくとも1つは1価の有機基である。R〜R10は、同一または異なって、水素、ハロゲンまたは1価の有機基を示す。R〜R10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良い。ただし、R〜R10のうち、少なくとも1つは1価の有機基である。]
【0129】
およびRは、それぞれ、独立に水素原子または1価の有機基であるがRおよびRのうち少なくとも1つは1価の有機基である。また、NHRは、塩基であるが、RおよびRは、それぞれ、アミノ基を含まない有機基であることが好ましい。
【0130】
1価の有機基としては、飽和または不飽和アルキル基、飽和または不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、および飽和または不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
【0131】
また、RおよびRは、それらが結合して環状構造になっていても良い。環状構造は、飽和または不飽和の脂環式炭化水素、複素環、および縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、および縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。
前記RおよびRの有機基中の炭化水素基以外の結合としては、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−、ここでRは水素原子または1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合等が挙げられる。
【0132】
前記RおよびRの有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、飽和または不飽和アルキルエーテル基、飽和または不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、およびアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH、−NHR、−NRR:ここで、RおよびRはそれぞれ独立に炭化水素基)等が挙げられる。これらの基は、直鎖、分岐、および環状のいずれでも良い。
【0133】
前記RおよびRの有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、飽和または不飽和アルキルエーテル基、飽和または不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、およびアリールチオエーテル基が好ましい。
【0134】
好適な組み合わせとしては、RおよびRが、それぞれ独立に1価の有機基であり、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数4〜12のシクロアルキル基であり、RおよびRは、同一であっても異なっていても良く、RおよびRは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い場合が挙げられる。アルキル基としては更に炭素数1〜8であることが好ましく、シクロアルキル基としては更に炭素数4〜10であることが好ましい。また、RおよびRが結合して置換基を有しても良い炭素数4〜12の環状構造となっている脂環式アミンも好ましい。
【0135】
〜R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲンまたは1価の有機基である。R〜R10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。
【0136】
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。
【0137】
1価の有機基としては、特に制限がなく、飽和または不飽和アルキル基、飽和または不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、および飽和または不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
【0138】
前記R〜R10の有機基中の炭化水素基以外の結合としては、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、カーボネート結合、スルホニル結合等が挙げられる。
【0139】
前記R〜R10の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、飽和または不飽和アルキルエーテル基、飽和または不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、およびアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH、−NHR、−NR:ここで、RおよびRはそれぞれ独立に炭化水素基)等が挙げられる。これらの基は、直鎖、分岐、および環状のいずれでも良い。
【0140】
中でも、R〜R10の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、飽和または不飽和アルキルエーテル基、飽和または不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、およびアリールチオエーテル基が好ましい。
また、R〜R10は、それらのうち1価の有機基である2つ以上が結合して環状構造になっていても良い。環状構造は、飽和または不飽和の脂環式炭化水素、複素環、および縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、および縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。例えば、R〜R10は、それらのうち1価の有機基である2つ以上が結合して、R〜R10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成していても良い。
【0141】
〜R10としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基(−ROAr)、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基をもつ炭素数2〜11のアルキル基、水酸基をもつ炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基(−SR)、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基および/または電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基および/または電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、およびメチルチオ基(−SCH)等が好ましい。また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐でも環状でも良い。
また、R〜R10としては、それらの2つ以上が結合して、R〜R10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、好ましい。
【0142】
一般式(4)で表される光塩基発生剤の好適な具体例として、下記化学式(c−1)〜(c−5)で表される光塩基発生剤が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0143】
【化27】

【0144】
2.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、下記を含有する樹脂組成物である:
(A)塩基増殖剤、
(B)塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物(硬化性化合物)、および
(C)光塩基発生剤。
【0145】
本発明の樹脂組成物は、塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物(B)の塩基の作用により、上記硬化性化合物の硬化または縮合反応が進むことにより硬化するため、硬化性樹脂組成物である。
【0146】
本発明の樹脂組成物は、さらに光塩基発生剤(C)を含有する。従って、本発明の樹脂組成物において、電磁波の照射により光塩基発生剤(C)が塩基を発生し、該塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物(B)の硬化または縮合反応が開始する。すなわち、本発明の樹脂組成物は感光性樹脂組成物である。
【0147】
以下、本発明の樹脂組成物各成分について説明する。
【0148】
(A)塩基増殖剤
本発明の樹脂組成物において、上記「1.化合物および塩基増殖剤」欄に記載の塩基増殖剤を用いる。
【0149】
上記「1.化合物および塩基増殖剤」欄に記載の塩基増殖剤は、一般式(8)で表されるアミン化合物を生じる。このようなアミン化合物と後述の塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物(B)とが反応することで、高い透湿バリア性を有する硬化物を得ることができる。
【0150】
なお、一般式(8)で表されるアミン化合物はアミド結合を形成することができるアミン基を2つ以上有するため、硬化促進剤としてだけではなく、硬化剤としても機能する。
【0151】
上記塩基増殖剤は単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0152】
上記塩基増殖剤の好ましい含有割合は、上記硬化性化合物100重量部に対して、10重量部以上100重量部以下で、より好ましくは、10重量部以上80重量部以下である。
【0153】
(B)塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物
本発明の樹脂組成物において使用される塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物(硬化性化合物)は、塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する条件を満たす範囲内で、特に限定されるものではない。
【0154】
上記塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物として、例えば分子内にエポキシ基を少なくとも1個以上有するエポキシ基含有化合物、イミダゾール基含有化合物、オキセタニル基含有化合物、ポリイミド化合物の前駆体であるポリアミック酸化合物、ポリベンゾオキサゾール化合物の前駆体であるポリヒドロキシアミド化合物などが例示される。
【0155】
本発明の樹脂組成物において用いられる塩基増殖剤(A)は一般式(8)で表されるアミン化合物を生じるとの観点から、塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物として、架橋作用を有する硬化促進剤を必要とする硬化性化合物を好適に使用することができる。架橋作用を有する硬化促進剤を必要とする硬化性化合物としては、エポキシ基含有化合物、イミダゾール基含有化合物などが例示され、分子内にエポキシ基を少なくとも1個以上有するエポキシ基含有化合物が好ましい例として挙げられる。
【0156】
分子内にエポキシ基を少なくとも1個以上有するエポキシ基含有化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のアルコール型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂が、分子量の異なるグレードのものを広く入手可能で、粘接着性や反応性などを任意に設定できるという点においてより好ましい。
【0157】
上記塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物は、単独で使用することも、組み合わせて使用することもできる。
【0158】
(C)光塩基発生剤
本発明において使用される光塩基発生剤とは、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として電磁波が照射されると塩基を発生する剤をいう。上記光塩基発生剤は、外部刺激として電磁波が照射されると塩基を発生するものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、上記光塩基発生剤は、電磁波が照射されると塩基を発生し、適宜加熱をすることにより塩基の発生が促進される光塩基発生剤である。
【0159】
本発明の樹脂組成物において、主に、まずは光塩基発生剤が塩基を発生させ、ついで光塩基発生剤より発生した塩基と塩基増殖剤とが反応し塩基を発生させる。
【0160】
本発明において好適に使用される光塩基発生剤として、上記「1.化合物および塩基増殖剤」欄に記載の、2,6−ジメチル−3,5−ジシアノ−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’−ニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジン、2,6−ジメチル−3,5−ジアセチル−4−(2’,4’−ジニトロフェニル)−1,4−ジヒドロピリジンなどの光塩基発生剤、ならびに、前述の化学式(4)で表される光塩基発生剤などが例示できる。
【0161】
本発明の樹脂組成物において使用される光塩基発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0162】
上記光塩基発生剤の好ましい含有割合は、上記硬化性化合物100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは、2重量部以上5重量部以下である。
【0163】
その他成分
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて上記の必須成分以外の成分を含めることができる。その他の成分としては、溶剤、増感剤、塩基増殖剤(B)以外の塩基増殖剤などを含めることができる。
【0164】
上記溶剤は、樹脂組成物を溶解、分散または希釈する溶剤として用いられる。上記溶剤としては、各種の汎用溶剤を用いることが出来る。
【0165】
使用可能な汎用溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、および、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
【0166】
中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホアミド、N−アセチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等の極性溶媒が好適なものとして挙げられる。
【0167】
上記増感剤としては、電磁波のエネルギーを光塩基発生剤が十分利用できるようにし、感度を向上させる化合物を用いることができる。上記増感剤の具体例としては、チオキサントンおよび、ジエチルチオキサントンなどのその誘導体、クマリン系および、その誘導体、ケトクマリンおよび、その誘導体、ケトビスクマリン、およびその誘導体、シクロペンタノンおよび、その誘導体、シクロヘキサノンおよび、その誘導体、チオピリリウム塩および、その誘導体、チオキサンテン系、キサンテン系および、その誘導体などが挙げられる。
【0168】
クマリン、ケトクマリンおよび、その誘導体の具体例としては、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられる。チオキサントンおよび、その誘導体の具体例としては、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。さらに他にはベンゾフェノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、1,2−ナフトキノン、などが挙げられる。
【0169】
上記塩基増殖剤(B)以外の塩基増殖剤としては、9−フルオレニルメチルカルバメート結合を有する化合物、1,1−ジメチル−2−シアノメチルカルバメート結合((CN)CHC(CH)2OC(O)NR)を有する化合物、パラニトロベンジルカルバメート結合を有する化合物、2,4−ジクロロベンジルカルバメート結合を有する化合物などが例示される。
【0170】
さらに、本発明の樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。例えば、バインダー樹脂、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能または形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0171】
本発明の樹脂組成物は、必須成分である前記本発明に係る光塩基増殖剤、塩基増殖剤、および塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物と、必要に応じて高分子量のバインダー成分等、その他任意成分を場合や用途に応じて混合することにより調製できる。
【0172】
本発明の樹脂組成物を硬化させるための手段は、当業者が適宜選択することができる。本発明の樹脂組成物を硬化させるための一態様として、上記樹脂組成物からなる塗膜を所定の支持体上に形成もしくは成形体を形成する工程、該塗膜もしくは該成形体の硬化させる部分に所定パターン状もしくは全部に電磁波を照射後もしくは照射と同時に加熱する工程、および必要に応じて硬化させる部分以外の樹脂組成物を現像により除去する工程を含む手段を挙げることができる。
【0173】
上記の本発明の樹脂組成物からなる塗膜を所定の支持体上に形成もしくは成形体を形成する工程において、塗膜が形成される支持体は、樹脂組成物の用途に応じて適宜選択することができる。支持体の具体例としては、シリコンウエハ、金属基板、セラミック基板、紙などが例示される。
【0174】
塗膜または成形体を形成する際の、膜厚もしくは成形体の厚みは特に限定されるものではないが、照射する電磁波の透過性の観点から、例えば0.5〜50μm、好ましくは1.0〜20μmとすることができる。塗膜は、例えば浸漬法、スプレー法、スクリーン印刷法、スピンコート法などにより形成することができる。塗膜または成形体を形成した後に、必要に応じて塗膜または成形体を乾燥することができる。乾燥条件は当業者が幅広い範囲から選択することができるが、例えば、80〜100℃、1分〜20分での乾燥が挙げられる。
【0175】
次いで、上記塗膜もしくは成形体の硬化させる部分に所定パターン状もしくは全部に電磁波を照射後もしくは照射と同時に加熱する工程を行なう。電磁波を塗膜もしくは成形体の、硬化させる部分に照射するか、または全部に照射するかは、樹脂組成物の用途に応じて適宜選択することができる。硬化させる部分に所定パターン状に電磁波を照射する場合は、例えば所定のパターンを有するマスクを通して電磁波を照射することができる。
【0176】
照射する電磁波の波長は、用いる光塩基発生剤に応じて、当業者が適宜設定することができる。電磁波の照射に用いられる露光方法や露光装置は特に限定されることなく、密着露光でも間接露光でも良く、g線ステッパ、i線ステッパ、超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミティ露光機、ミラープロジェクション露光機、またはその他の紫外線、可視光線、X線、電子線などを照射可能な投影機や線源を適宜使用することができる。
【0177】
電磁波を照射後もしくは照射と同時に加熱は、加熱方法および加熱温度のいずれも特に限定されない。なお、当該加熱により電磁波を照射された光塩基発生剤(A)から塩基が発生する。さらに、光塩基発生剤(A)から発生した塩基の作用により、塩基増殖剤(B)からの塩基の発生が開始される。上記加熱は、樹脂組成物が置かれた環境の温度(例えば、室温)による加熱であっても良く、その場合、徐々に塩基が発生する。また、電磁波の照射時に副生される熱によっても塩基が発生するため、電磁波の照射時に副生される熱により実質的に加熱が同時に行われても良い。反応速度を高くし、効率よく塩基を発生させる点から、塩基を発生させるための加熱温度としては、70℃以上であることが好ましい。
【0178】
さらに、必要に応じて硬化させる部分以外の樹脂組成物を現像により除去する工程を行なうことができる。該現像工程は、塗膜または成形体の一部に電磁波の照射を行なった場合に行なうことが好ましい。現像工程の具体的手段としては、当業者において公知の手法から適宜選択することができる。具体的には、現像液で未露光部の硬化しなかった樹脂組成物を溶解させ、現像液を除去する手段が例示される。
【0179】
上記現像液としては、硬化しなかった樹脂組成物を溶解させることができ、樹脂組成物の硬化物は溶解しないあらゆる溶剤を用いることができ、樹脂組成物の組成および目的に応じて適宜設定することができる。現像液の具体例としては、塩基性水溶液、有機溶剤などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0180】
塩基性水溶液としては、特に限定されないが、例えば、濃度が、0.01重量%〜10重量%、好ましくは、0.05重量%〜5重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の他、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムなどの水溶液等が挙げられる。
【0181】
有機溶剤としては、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクロン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、その他テトラヒドロフラン、クロロホルム、アセトニトリルなどを、単独であるいは2種類以上を組み合わせて添加してもよい。現像後は水または貧溶媒にて洗浄を行う。この場合においてもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えても良い。
【0182】
現像後に、必要に応じて水または貧溶媒でリンスを行うことができる。また、必要に応じて、80〜100℃で乾燥し硬化物を安定なものとすることもできる。硬化物の耐熱性を向上させるとの観点から、180〜500℃、好ましくは200〜350℃の温度で数十分から数時間加熱することができる。
【0183】
かくして得られる硬化物は、優れた透湿バリア性を有する。透湿バリア性を有することは、例えば、水蒸気透過度を当業者において公知の手法により測定することで、判定することができる。水蒸気透過度を測定する手法として、JIS K7129Aの感湿センサー法に準拠した手法、より具体的には、40℃/90%RHの条件下で、厚さ100μmの硬化物の水蒸気透過度を測定する手法が挙げられる。上記硬化物は、水蒸気透過度が100g/m・day以下であることが好ましく、60g/m・day以下であることがより好ましく、50g/m・day以下であることが特に好ましい。水蒸気透過度がこのような値である硬化物であれば、透湿バリア性が要求される用途、例えば、有機EL素子等のディスプレイの封止剤などとして好適に用いることができる。
【0184】
また、かくして得られる硬化物は、ガラス転移温度が(Tg)90℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度がこのような値である硬化物であれば、耐熱性が要求される用途、例えば、有機EL素子等のディスプレイの封止剤などとして好適に用いることができる。
【0185】
本発明の樹脂組成物は、パターン形成材料(レジスト)、コーティング材、印刷インキ、接着剤、粘着剤、封止剤、充填剤、電子材料、成形材料、3次元造形等、光照射や加熱によって硬化し、または溶解性が変化する材料が用いられている公知の全ての分野・製品に利用できる。
【0186】
透湿バリア性に優れる硬化物を得ることができる本発明の樹脂組成物は、接着剤、粘着剤、封止剤等に好適に用いることができる。電子部品用の接着剤や粘着剤、有機EL素子などのディスプレイ用封止剤が特に好適な使用例として挙げることができる。
【実施例】
【0187】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明する。本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0188】
なお、各測定、実験は、以下に示す装置を用いて行なった:
H−NMR測定:日本電子(株)製、JEOL JNM−LA400WB
5%重量減少温度測定:(株)島津製作所製、示差熱・熱重量同時測定装置DTG−6。
【0189】
[実施例1]化合物の製造(1)
m−キシリレンジイソシアナート1.6ml、エチレンシアノヒドリン1.5mlおよびジラウリン酸ジブチル錫0.06mlを混合し、室温で攪拌した。約3時間撹拌した後に、固体が析出し、攪拌子が回らなくなったところで反応を終了した。得られた固体をろ過し、酢酸エチル−n−ヘキサンで再結晶し、白色固体を得た(化合物A)。合成スキームを以下に示す。
【0190】
【化28】

【0191】
化合物Aの分析結果は以下の通りであった。
【0192】
H−NMR測定(400MHz,DMSO)
2.85(t,4H),4.13-4.18(m,8H),7.412-7.14(m,3H),7.23(t,1H),7.92(t,1H)。
【0193】
示差熱−熱重量同時測定(TG-DTA)
5%重量減少温度:222℃。
【0194】
[実施例2]化合物の製造(2)
m−キシリレンジイソシアナートに替えて、エチレンジイソシアナートを用いる以外は実施例1と同様にして、化合物Bを得る。合成スキームを下記に示す。
【0195】
【化29】

【0196】
H−NMR測定および示差熱−熱重量同時測定を実施例1と同様にする。
【0197】
[実施例3]化合物の製造(3)
m−キシリレンジイソシアナートに替えて、ヘキサメチレンジイソシアナートを用いる以外は実施例1と同様にして、化合物Cを得る。合成スキームを下記に示す。
【0198】
【化30】

【0199】
H−NMR測定および示差熱−熱重量同時測定を実施例1と同様にする。
【0200】
[実施例4]化合物の分解(1)
実施例1の化合物が、塩基の存在下で加熱することで塩基を発生することを、H−NMR測定により確認した。
【0201】
<実験方法>
(1)1.0 mgの化合物Aを、0.5mlの重水素化DMSO(DMSO−d)に溶解させ、ピペリジン(塩基)を0.5mg(化合物Aとモル等量)添加した。
(2)(1)で得られた溶液を、130℃で10分間加熱した。
(3)加熱後の溶液のH−NMRを測定した。対照として、室温における加熱前の該溶液のH−NMRを測定した。
【0202】
<測定結果および考察>
化合物Aにピペリジンを添加した溶液の、室温および130℃で10分間加熱した溶液のH−NMRを測定した結果(NMRチャート)を図1(A)および(B)に示す。ピーク高の増大または減少が観察されたピークに対応する水素原子を、図2に示す。
【0203】
図1(A)および(B)に示すように、化合物Aはピペリジンを添加し加熱することで分解することが、H−NMRの測定により確認された。加熱後において、化合物Aの存在に対応するピーク(a)および(b)のピーク高は減少し、m−キシリレンジアミンおよびアクリロニトリルの生成にそれぞれ対応するピーク(c)および(d)のピーク高は増大した。従って、化合物Aは、m−キシリレンジアミンおよびアクリロニトリルに分解することが確認できた。
【0204】
理論に拘束されることを望むものではないが、このような分解は、化合物Aが電気吸引性基であるシアノ基を有することに起因すると考えられる。
【0205】
[実施例5]化合物の分解(2)
実施例4と同様にして、実施例2で得る化合物Bが、塩基の存在下で加熱することで塩基を発生することを、H−NMR測定により確認する。
【0206】
[実施例6]化合物の分解(3)
実施例4と同様にして、実施例3で得る化合物Cが、塩基の存在下で加熱することで塩基を発生することを、H−NMR測定により確認する。
【0207】
[実施例7]樹脂組成物の製造(1)
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,エポキシ等量160-170g/eq.,質量平均分子量:320-340,DIC社製)100質量部、下記化学式で表される光塩基発生剤(c−1)4質量部および実施例1で得た化合物A43質量部を、攪拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合攪拌した。得られた混合物をテトラヒドロフランで希釈を行い、固形分が20質量%である樹脂組成物を調製した。
【0208】
【化31】

【0209】
得られた樹脂組成物をガラス上にスピンコートし、紫外線照射装置(製品名「DRE−10/12QN」,Hバルブ使用,フュージョンUVシステムズジャパン社製)を用いて紫外線を2000mJ照射した後80℃で1時間加熱し硬化膜を作成した。作成した硬化膜をメチルエチルケトン(MEK)にて拭き取りを行ったところ、拭き取ることができなかったため、硬化膜が十分に硬化していたことが確認された。
【0210】
[実施例8]樹脂組成物の製造(2)
実施例1で得た化合物Aに替えて、実施例2で得る化合物Bを用いる以外は実施例7と同様にして、硬化膜を作成する。作成した硬化膜をメチルエチルケトン(MEK)にて拭き取りを行い、硬化膜が十分に硬化していたことを確認する。
【0211】
[実施例9]樹脂組成物の製造(3)
実施例1で得た化合物Aに替えて、実施例3で得る化合物Cを用いる以外は実施例7と同様にして、硬化膜を作成する。作成した硬化膜をメチルエチルケトン(MEK)にて拭き取りを行い、硬化膜が十分に硬化していたことを確認する。
【0212】
[比較例1]
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,エポキシ等量160-170g/eq.,質量平均分子量:320-340,DIC社製)100質量部および前記光塩基発生剤(c−1)137質量部を、攪拌機を用いて混合攪拌した。その後、得られた混合液脱泡させて膜形成用塗工液を調製した。
【0213】
塗工液をガラス上にスピンコートし、紫外線照射装置を用いて紫外線を2000mJ照射した後80℃で1時間加熱し硬化膜を作成した。作成した硬化膜をMEKにて拭き取りを行ったところ、硬化膜の一部を拭き取ることができたため、硬化膜の硬化が十分でなかったことが確認された。
【0214】
以上の実施例7〜9の結果は、本願発明の化合物が塩基増殖剤として作用し、エポキシ樹脂が硬化できる程度の量の塩基が、塩基増殖反応により生成したことを示している。
【0215】
[実施例10]樹脂組成物の透湿バリア性(1)
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,エポキシ等量160-170g/eq.,質量平均分子量:320-340,DIC社製)100質量部、前記光塩基発生剤(c−1)15質量部、および実施例1で得た化合物A15質量部を、攪拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合攪拌した。得られた混合物をテトラヒドロフランで希釈を行い、固形分が20質量%である樹脂組成物を調製した。
【0216】
そして、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、高さ100μmのスペーサーを置き、上記膜形成用塗工液を滴下した。次いで、剥離フィルム(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)を、該剥離フィルムの剥離処理面と滴下した塗工液面とが接するように上から重ねた後、バーコーターを用いて均一な厚みの膜を形成した。得られた膜面に、紫外線照射装置(製品名「DRE−10/12QN」,Hバルブ使用,フュージョンUVシステムズジャパン社製)を用いて紫外線を2000mJ照射した後、乾燥オーブンにて80℃で1時間加熱し、硬化膜(厚み:100μm)を得た。
【0217】
ガラス転移温度(Tg)の測定
得られた硬化膜について、ガラス転移温度を測定した。動的粘弾性測定(DMA)装置(製品名「RSAIII」,ティー・エイ・インスツルメントジャパン社製)を用い、昇温速度5℃/分、測定温度範囲25〜200℃、周波数1Hz(引張モード)の条件にて測定し、得られた損失係数tanδの最大値をTg(℃)とした。結果を表1に示す。
【0218】
水蒸気透過度の測定
得られた硬化膜について、水蒸気透過度を測定した。透湿度測定装置(製品名「LYSSY水蒸気透過度計 L80−5000」)を用い、40℃、90%RHの条件(JIS K7129(A法)に準拠)にて測定した。結果を表1に示す。
【0219】
[実施例11]樹脂組成物の透湿バリア性(2)
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,エポキシ当量:160〜170g/eq.,質量平均分子量:320〜340,DIC社製)、前記光塩基発生剤(c−1)、および実施例1で得た化合物Aを、攪拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合攪拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例10と同様の方法にて、硬化膜(厚み:100μm)を得る。
【0220】
得られた硬化膜について、実施例10と同様の方法により、ガラス転移温度の測定および水蒸気透過度の測定を行う。
【0221】
[実施例12]樹脂組成物の透湿バリア性(3)
硬化性化合物(商品名「エピクロン 850S」,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:183〜193g/eq.,質量平均分子量:368〜388,DIC社製)、前記光塩基発生剤(c−1)剤、および実施例2で得る化合物Bを、攪拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合攪拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例10と同様の方法にて、硬化膜(厚み:100μm)を得る。
【0222】
得られた硬化膜について、実施例10と同様の方法により、ガラス転移温度の測定および水蒸気透過度の測定を行う。
【0223】
[実施例13]樹脂組成物の透湿バリア性(4)
硬化性化合物(商品名「エピクロン 730S」,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,エポキシ当量:170〜180g/eq.,質量平均分子量:439,DIC社製)、前記光塩基発生剤(c−1)、および実施例2で得る化合物Bを、攪拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合攪拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例10と同様の方法にて、硬化膜(厚み:100μm)を得る。
【0224】
得られた硬化膜について、実施例10と同様の方法により、ガラス転移温度の測定および水蒸気透過度の測定を行う。
【0225】
[実施例14]樹脂組成物の透湿バリア性(5)
硬化性化合物(商品名「エピクロン 730S」,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,エポキシ当量:170〜180g/eq.,質量平均分子量:439,DIC社製)、前記光塩基発生剤(c−1)、および実施例3で得る化合物Cを、攪拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合攪拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例10と同様の方法にて、硬化膜(厚み:100μm)を得る。
【0226】
得られた硬化膜について、実施例10と同様の方法により、ガラス転移温度の測定および水蒸気透過度の測定を行う。
【0227】
[比較例2]
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,エポキシ当量:160〜170g/eq.,質量平均分子量:320〜340,DIC社製)100質量部と、光酸発生剤(商品名「アデカオプトマーSP−170」,極大吸収波長:310nm,ADEKA社製)5質量部とを、攪拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合攪拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、実施例10と同様の方法にて、硬化膜(厚み:100μm)を得た。
【0228】
得られた硬化膜について、実施例10と同様の方法により、ガラス転移温度の測定および水蒸気透過度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0229】
[比較例3]
硬化性化合物(商品名「エピクロン EXA−835LV」,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,エポキシ当量:160〜170g/eq.,質量平均分子量:320〜340,DIC社製)、前記光塩基発生剤(c−1)および下記化学式で表される化合物N(ジアミノヘプタンを発生する塩基発生剤)を、攪拌機(製品名「T.K.ホモディスパー2.5型」,PRIMIX社製)を用いて混合攪拌した後、脱泡させて膜形成用塗工液を調製した以外は、参考例1と同様の方法にて、参考比較例2の硬化性樹脂組成物からなる硬化膜(厚み:100μm)を得る。
【0230】
【化32】

【0231】
得られた硬化膜について、実施例10と同様の方法により、ガラス転移温度の測定および水蒸気透過度の測定を行う。
【0232】
【表1】

【0233】
以上の実施例10〜14の測定結果は、本願発明の樹脂組成物を用いて、透湿バリア性に優れた硬化物が得られることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される塩基増殖剤:
【化1】

[式(1)において、nは2〜8の整数を表す。
Xは、n価の有機基である。
Xは、置換されてもよい炭素数1〜6のアルキレン基または下記一般式(2)
【化2】

(式(2)において、Xは、n価の炭素数3〜8のシクロアルキル部分、n価のベンゼン環部分もしくはn価のナフタレン環部分を示す。
およびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を示す。)で表されるn価の有機基を示す。
Yは、下記一般式(3)
【化3】

(式(3)において、
〜Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルファニル基、アミノカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基、メシル基、フェニル基、または、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基もしくはアリール基を示す。ただし、RおよびRの少なくとも1つは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルファニル基、アミノカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基、メシル基、フェニル基、または、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基もしくはアリール基を示す。
およびRは、結合して環状構造を形成していてもよい。)で表される有機基を示す。]、(B)塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物、および
(C)光塩基発生剤
を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
塩基増殖剤(A)が、下記一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される請求項1に記載の樹脂組成物。
【化4】

【化5】

【化6】

[式中、
Mは、水素原子または置換基を示す。
およびRは、各々同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を示す。
Yは、前記に同じ。]
【請求項3】
塩基増殖剤(A)が、塩基の存在下において70℃以上の加熱により分解しアミン化合物を生成する塩基増殖剤である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
塩基増殖剤(A)の5%重量減少温度が150℃以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
塩基増殖剤(A)において、RおよびRのうち少なくとも1つが電子吸引性基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
光塩基発生剤(C)が、下記一般式(4)で表される化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【化7】

[式(4)において、RおよびRは、同一または異なって、水素または1価の有機基を示す。RおよびRは、それらが結合して環状構造を形成していても良い。ただし、RおよびRのうち、少なくとも1つは1価の有機基である。R〜R10は、同一または異なって、水素、ハロゲンまたは1価の有機基を示す。R〜R10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良い。ただし、R〜R10のうち、少なくとも1つは1価の有機基である。]
【請求項7】
塩基の作用により硬化または縮合反応を促進する化合物(B)がエポキシ基を少なくとも1つ以上有するエポキシ基含有化合物である請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
【請求項9】
水蒸気透過度が100g/m・day以下である、請求項8に記載の硬化物。
【請求項10】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化8】

[式(1)において、nは2〜8の整数を表す。
Xは、n価の有機基である。
Xは、置換されてもよい炭素数1〜6のアルキレン基または下記一般式(2)
【化9】

(式(2)において、Xは、n価の炭素数3〜8のシクロアルキル部分、n価のベンゼン環部分もしくはn価のナフタレン環部分を示す。
およびRは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基またはメトキシ基を示す。)で表されるn価の有機基を示す。
Yは、下記一般式(3)
【化10】

(式(3)において、
〜Rは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルファニル基、アミノカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基、メシル基、フェニル基、または、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基もしくはアリール基を示す。ただし、RおよびRの少なくとも1つは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルファニル基、アミノカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、ホルミル基、トシル基、メシル基、フェニル基、または、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基もしくはアリール基を示す。
およびRは、結合して環状構造を形成していてもよい。)で表される有機基を示す。]
【請求項11】
請求項10に記載の化合物からなる塩基増殖剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−76000(P2013−76000A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217004(P2011−217004)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】