説明

熱処理装置

【課題】筐体内部に配置されたパック食材等の対象物にノズルから熱媒体を噴射し、この熱媒体を熱媒体循環回路を循環させる構成の熱処理装置に関し、熱媒体循環回路を容易に洗浄可能な熱処理装置を提供すること。
【解決手段】対象物が収納可能とされた筐体21と、熱媒体Mを噴射するノズル30と、タンク25と、循環ポンプが設けられた熱媒体循環回路と、前記熱媒体を加熱する加熱部50とを備えた加熱冷却装置1であって、前記熱媒体循環回路内を洗浄する洗浄手段とを備え、前記洗浄手段は、前記循環ポンプと、前記加熱部50と、前記熱媒体循環回路に水を供給する給水装置と、洗剤を供給する洗剤供給部71とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気密に包装された食材等の対象物を、加熱、冷却等の熱処理するための熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、食材や調理された食品を大量に保存する場合、食材や調理された食品を真空包装袋に入れて真空包装して保存することが広く行われている。
このように真空包装された食材(以下、パック食材という)等の保存に際しては、調理された食材を真空包装後に加熱して殺菌する場合があり、このようにパック食材等を加熱、殺菌するための熱処理装置として加熱装置に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、調理後のパック食材を、加熱、冷却して殺菌するための熱処理装置としてレトルト装置に関する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
上記のような熱処理装置によりパック食材を調理する場合、食材を真空包装する際に食材から漏出した液汁や、調理場の作業台等に付着していた液汁や食材の端材等が真空包装袋の表面に付着し、それらが付着したまま熱処理装置に収納、調理されるために、熱処理装置の熱媒体循環回路内等にそれら付着物が堆積し、その結果、熱媒体循環回路内や装置筐体内に細菌が繁殖する場合がある。
【特許文献1】特開2003−319767号公報
【特許文献2】特許第3546082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱媒体循環回路内に堆積した付着物や繁殖した細菌は、配管等を分解したとしても充分に除去することが困難であり、それらを充分に除去するための技術が必要とされている。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、筐体内部に配置されたパック食材等の対象物にノズルから熱媒体を噴射し、この熱媒体を熱媒体循環回路を循環させる構成の熱処理装置に関し、熱媒体循環回路を容易に洗浄可能な熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1記載の発明は、対象物が収納可能とされた筐体と、前記筐体内部に配置され、前記対象物に熱媒体を噴射するノズルと、前記筐体の下部に配置され前記ノズルから噴射された前記熱媒体を受けるとともに貯留するタンクと、前記タンク内に貯留された前記熱媒体を前記ノズルに循環させる循環ポンプが設けられた熱媒体循環回路とを備えた熱処理装置であって、前記熱媒体循環回路内を洗浄する洗浄手段を備え、前記洗浄手段は、前記循環ポンプと、前記熱媒体循環回路に水を供給する給水装置と、前記水を加熱する加熱部と、前記水に洗剤を供給する洗剤供給部と、前記熱媒体循環回路から排水する排水手段と、前記水に洗剤を供給して循環させる洗剤洗浄工程及び前記水を循環させる通常洗浄工程を有する洗浄制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る熱処理装置によれば、洗浄手段が、循環ポンプと、加熱部と、給水装置と、洗剤供給部と、排水手段と、洗浄制御部とを備えていて、洗剤制御部が洗剤洗浄工程と通常洗浄工程を有しているので、洗剤が混合された水を熱媒体循環回路内、タンク内に循環させて洗剤洗浄することによりパック食材に付着した液汁等の熱媒体循環回路内への付着、堆積及び細菌の繁殖が抑制される。
また、通常洗浄することにより、熱媒体循環回路内等に残留した洗剤等を容易に除去することが可能である。
また、洗浄に際して、洗浄水がノズルから噴射されるので、筐体内が洗浄可能である。
また、洗浄水をタンクで受けて循環させるので、長時間の洗浄をしても、洗剤、洗浄水、熱エネルギーの消費が小さく、洗浄コストが削減される。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の熱処理装置であって、前記洗浄制御部は、低温の前記水を用いる低温モードと、高温の前記水を用いる高温モードとを選択する水温切替手段を有することを特徴とする。
【0010】
この発明に係る熱処理装置によれば、水温切替手段を備えていて、洗浄に用いる水の水温を高温と低温に切り替えることが可能であり、洗浄、殺菌を効率的に行うことが可能である。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の熱処理装置であって、前記洗浄制御部は、前記低温モードでの洗剤洗浄と、前記高温モードでの洗剤洗浄と、前記通常洗浄とを順次行うことを特徴とする。
【0012】
この発明に係る熱処理装置によれば、低温モードでの洗剤洗浄、高温モードでの洗剤洗浄、通常洗浄を順次行うことにより、洗浄作業を効率的に行うことができる。
また、最初に低温の水で洗剤洗浄をするので熱媒体循環回路内にタンパク質等が残留していても配管内等に固着させずに除去することが可能であり、その後高温の水で洗剤洗浄をするので低温では除去しにくい残留物の除去及び殺菌を効率的に行うことができる。
また、洗剤洗浄の後に通常洗浄によりすすぎをするので、配管内等に残留する洗剤や配管等から分離された異物等を充分に除去することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱処理装置であって、前記加熱部は、前記タンクに蒸気を注入する蒸気供給バルブを備えていることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る熱処理装置によれば、タンクに蒸気を注入する蒸気供給バルブを備えているのでタンク内の洗浄水を効率的かつ容易に加熱することができる。
また、蒸気をタンク内に直接注入することにより、伝熱面を介さずに加熱するのですすぎ洗浄の際にすすぎ洗浄液に洗剤が残留している場合であっても、伝熱面に洗剤が固着することにより熱効率が低下することがない。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱処理装置であって、洗剤供給部は、設定された量の液体洗剤を自動計量することを特徴とする。
【0016】
この発明に係る熱処理装置によれば、洗剤供給部が設定された量の液体洗剤を自動計量することができるので、洗剤洗浄、自動洗浄を容易に自動化することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る熱処理装置によれば、筐体内部に配置されたパック食材等の対象物にノズルから熱媒体を噴射し、この熱媒体を熱媒体循環回路に循環させる構成の熱処理装置の熱媒体循環回路内を容易かつ効率的に洗浄し、パック食材に付着した液汁等の熱媒体循環回路内への付着、堆積を軽減し、細菌の繁殖を抑制することができる。
また、細菌の死滅温度以上の水温で熱媒体循環回路内を洗浄することにより効率的に殺菌を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1から図5を参照し、この発明の一実施形態について説明する。
図1から図3は、この発明に係る熱処理装置を説明するための図であり、加熱された熱媒体により対象物が加熱可能とされるとともに冷水により対象物が冷却可能とされる加熱冷却装置に適用した場合の例であり、符号1は、加熱冷却装置(熱処理装置)を示している。
【0019】
加熱冷却装置1は、加熱冷却装置本体20と、熱媒体循環回路40と、加熱部50と、冷水供給部60とを備え、加熱冷却装置本体20内に収納された、例えば、真空パックされた食材(対象物)(以下、パック食材Wという)にノズル30から熱媒体Mを噴射して、パック食材Wが加熱、冷却可能とされている。
【0020】
また、加熱冷却装置1は、洗浄手段70を備え、熱媒体循環回路40に洗浄水を循環、洗浄して、例えば、熱媒体Mが噴射された際にパック食材W表面に付着していた液汁等が熱媒体循環回路40内の熱媒体Mに混入し、長期間の後にタンク25及び熱媒体循環回路40内への液汁成分の付着、堆積を抑制することができるようになっている。
この実施の形態において、熱媒体Mは水が温度調整されることにより構成され、パック食材Wを加熱する場合には温水Hの状態で、冷却する場合には冷水Cの状態で用いられるようになっている。
【0021】
加熱冷却装置本体20は、図1、図2に示すように、筐体21と、ノズル30と、タンク25とを備え、筐体21は外形が略直方体とされ、ひとつの側面部に矩形状の開口部22が形成され、この開口部22を介してパック食材Wを積載するための台車24が加熱冷却装置本体20内に出し入れ可能とされるとともに、開口部22には開口部22を液密に閉鎖可能な開口扉23が開閉自在に設けられている。
【0022】
また、筐体21の内部には、パック食材Wに挿入可能な位置に品温センサT1が配置され、この品温センサT1によりパック食材Wの芯温(パック食材Wを、例えば加熱した際に設定温度に最後に到達する部分の温度)が測定可能とされている。
【0023】
台車24は、加熱冷却装置本体20内部に収納自在に構成され、パック食材Wが収納自在とされかつ熱媒体Mが流通可能な貫通孔が複数形成された受け皿、いわゆるホテルパンが、上下方向に間隔をあけて複数積載可能とされている。
また、台車24は、台車24を移動自在に支持する車輪24Aによって加熱冷却装置本体20内部に設けられた台車用テーブル24Bに載置可能とされている。
【0024】
タンク25は、加熱冷却装置本体20の筐体21の下部に、熱媒体Mが貯留可能に設けられており、ノズル30から噴射された熱媒体Mを受けることができるようになっている。また、タンク25には、加熱部50が接続されて、タンク25内に貯留された熱媒体M(温水H、冷水C)を加熱するとともに温度調整可能とされている。
【0025】
加熱部50は、蒸気供給管50Aと、蒸気供給バルブ50Vと、蒸気供給管50Bとを備え、蒸気供給管50Aは上流側が蒸気供給源に接続され、蒸気供給管50Bは下流側がタンク25内の熱媒体Mに浸漬可能に接続され、また、タンク25には、レベルセンサLA及び温度センサT2が設けられていて、タンク25内の熱媒体Mの液位及び温度が検出可能とされている。
【0026】
蒸気供給バルブ50Vは、タンク25に配置された温度センサT2により検出された信号に基づいて開閉されるようになっており、温水Hの温度が設定値以下となった場合に蒸気供給バルブ50Vが開放されてタンク25内の熱媒体Mに蒸気が注入され、温水Hが加熱されて温水Hが温度調整可能とされている。
【0027】
また、タンク25には、液位上限位に対応する位置にオーバーフロー配管25Aが接続されるとともにタンク25の底部に排出配管29が接続されており、タンク25内に注入された蒸気が凝縮して温水Hの容積が増加した場合に温水Hがオーバーフロー配管25Aから排出可能とされるとともに、必要に応じて電磁バルブ29Vを開放して排出配管29から熱媒体Mが排出可能とされている。
【0028】
ノズル30はノズル分配管32に設けられるとともに加熱冷却装置本体20内に収納された台車24の両側方に配置されて、台車24に積載されたパック食材Wに熱媒体Mを噴射してパック食材Wを加熱、冷却するようになっている。
ノズル分配管32は、図1、図2に示すように、例えば、台車24の両側方に、加熱冷却装置本体20の上方から下方に延在してそれぞれ2組ずつ設けられており、ノズル30はそれぞれのノズル分配管32の長手方向に沿って等間隔に配置されている。
【0029】
また、加熱冷却装置1は、図3に示すような熱媒体循環回路40を備えており、熱媒体循環回路40は、温水Hと冷水Cが流通する主循環回路41と、冷水Cのみが流通する冷水循環回路42と、主循環回路41と冷水循環回路42とを選択的に切り替え自在とされた切替回路43とを備えている。
【0030】
主循環回路41は、上流側端部はタンク25の底部に接続されるとともに、循環ポンプ41P、モータバルブ41Vがこの順に配置され、ノズル分配管32に接続され、循環ポンプ41Pとノズル分配管32の間には、温水Hのみがバイパス流通する温水バイパス回路部41Aが形成されている。
【0031】
この温水バイパス回路部41Aの下流側にはノズル30から噴射される熱媒体Mの温度を測定するための温度センサT3が配置されている。
また、循環ポンプ41Pと温水バイパス回路部41Aの間には、排水バルブ49Vを介して排水管路49が接続され、排水バルブ49Vを開放することにより熱媒体循環回路40内の熱媒体Mが外部に排出可能とされている。
【0032】
主循環回路41には、給水装置46が接続され、上流側の給水源Aから主循環回路41に給水可能とされている。
給水装置46は、前述のレベルセンサLAの検出信号により制御され、例えば、タンク25内の液位や熱媒体循環回路40内の熱媒体Mの量が減少してレベルセンサLAにより検出される熱媒体Mの液位が設定値以下となった場合に給水装置46の電磁バルブ46Vが開放されるとともに給水ポンプ46Pが駆動されて熱媒体循環回路40に給水されるようになっている。
【0033】
切替回路43は、モータバルブV1と、モータバルブV2と、モータバルブV3とを備えており、モータバルブV1は温水バイパス回路部41Aに、モータバルブV2は温水バイパス回路部41Aの上流端部と冷水循環回路42の上流端部との間に、モータバルブV3は温水バイパス回路部41Aの下流端部と冷水循環回路42の下流端部との間に設けられている。
【0034】
冷水循環回路42は、上流端部がモータバルブV2を介して温水バイパス回路部41Aの上流端部に接続され、冷水タンク62、冷水循環ポンプ42Pが、この順番で配置され、下流端部がモータバルブV3を介して温水バイパス回路部41Aの下流端部に接続されている。
【0035】
冷水タンク62は、冷水Cの水温が大きく上昇しない程度の充分な量の冷水Cが貯留可能とされており、冷水循環回路42の上流側から流入する冷水Cが底部に接続された管路から流出可能とされている。
【0036】
また、冷水タンク62は冷却装置64と接続されるとともに、冷水タンク62と冷却装置64と、冷水循環回路42とは冷水供給部60を構成していて、冷水供給部60は、冷水循環回路42を循環してきた冷水Cを冷却して水温を調整可能とされている。
また、冷水タンク62には、冷水用給水器65が接続され、冷水Cの液位を検出するためのレベルセンサLBが設けられている。
【0037】
冷水用給水器65は、電磁バルブ65Vと、ボールタップLCとを備え、上流側が給水源Bに接続されるとともに下流側が冷水タンク62に接続されており、ボールタップLCが冷水Cの液位の低下を検出すると冷水タンク62に給水可能とされている。
【0038】
冷水用給水器65は、前述のレベルセンサLBの検出信号により、例えば、冷水タンク62内の液位が設定値以下となった場合に電磁バルブ65Vが開放されて冷水タンク62に給水するようになっている。
【0039】
冷却装置64は、例えば、コンプレッサにより圧縮された冷媒を断熱膨張させることによって冷水Cから熱を奪い取って冷水Cを冷却させる構成とされており、冷水タンク62との間で冷水Cが循環可能に接続され、冷水タンク62から導かれた冷水Cを冷却するようになっている。
【0040】
洗浄手段70は、熱媒体循環回路40に設けられた循環ポンプ41Pと、熱媒体循環回路40に水を供給する給水装置46と、加熱部50と、水に洗剤を供給する洗剤供給部71と、洗浄制御部75と、熱媒体循環回路40から排水する排水手段(排水管路49及び排水バルブ49V)とを備えている。
【0041】
洗浄制御部75には、図4に示すように、循環ポンプ41Pを起動する起動スイッチと、洗浄モード切替スイッチ76A、水温切替手段76B、温度センサT2、レベルセンサLA、低温洗剤洗浄タイマ設定部TM1、高温洗剤洗浄タイマ設定部TM2、すすぎ洗浄タイマ設定部TM3からの信号が入力され、循環ポンプ41P、洗剤供給部71の吐出ポンプ72、蒸気供給バルブ50V、電磁バルブ46V、給水ポンプ46P、排水バルブ49Vに対して制御信号を出力するようになっている。
また、洗浄制御部75は、水に洗剤を供給して循環させる洗剤洗浄工程と、水を循環させる通常洗浄工程を有している。
【0042】
洗浄モード切替スイッチ76Aは、例えば、「手動運転」と「自動運転」とを切り替え可能に構成され、手動運転においては「洗剤洗浄」と「すすぎ洗浄」(通常洗浄)とを選択することができるようになっており、手動運転においては選択された洗浄工程が行われ、自動運転においては洗浄制御部75の図示しない記憶部に格納された自動運転プログラムに予め設定された順序に従って、自動による洗浄で行われるようになっている。
【0043】
水温切替手段76Bは、低温(例えば、常温)の洗浄水を用いる「低温モード」と、高温の洗浄水を用いる「高温モード」とを切替可能とされており、手動運転における洗浄水の水温は、例えば、セレクトスイッチ等により選択され、自動運転で用いる洗浄水の水温モードは、例えば、前述の自動運転プログラム等により自動で切り替わるになっている。
高温モードにおける水温は、図示しない温度設定部より設定可能な構成とされている。
【0044】
この実施形態における自動運転による洗浄の手順は、1度目が低温モードによる低温洗剤洗浄工程と、2度目が高温モードによる高温洗剤洗浄工程と、3度目が低温モードによるすすぎ洗浄工程(通常洗浄)とを順次行うように設定されている。
なお、自動運転における洗剤洗浄、すすぎ洗浄の順序及び回数、及びそれぞれの洗浄で用いる洗浄水の水温に関しては、任意に設定することが可能であり、例えば、すすぎ洗浄工程における洗浄を高温モードの水温とすることも可能である。
【0045】
また、低温モードにおける水温を設定可能な構成としてもよく、低温モードにおける水温は、高温モードに対して低温であることを意味しており、低温モードにおける水温を、例えば、熱媒体循環回路40内に残留する異物、又は洗剤を容易に除去可能な温度としてもよく、また、常温に比較すると高い水温に設定することも可能である。
【0046】
また、洗剤供給部71は、図5に示すように、液体洗剤を保持する保持タンク71Tと、液体洗剤をタンク25内に供給する吐出ポンプ72とを備え、吐出ポンプ72の吐出側の管路71Aの先端はタンク25の上限液位に対応する位置よりわずかに上方に位置されている。
【0047】
吐出ポンプ72は、例えば、シリンダ72Aと、シリンダ72A内を軸方向に往復するピストン72Bと、シリンダ72A内の液体洗剤の出入りを制御する弁72Cと、ピストンロッド72Dを介してピストン72Bを進退させるアクチュエータ72Eとから構成され、洗浄制御部75からのパルス信号によって、アクチュエータ72Eの進退量が定まり、その結果、設定された一定量の液体洗剤を吐出可能とされている。
洗浄手段70による洗浄は、例えば、1週間に一回程度実施されるようになっている。
【0048】
次に、加熱冷却装置1の作用について説明する。
加熱冷却装置1による洗浄工程は、手動運転においては、洗剤洗浄工程、すすぎ洗浄工程のうちの選択された洗浄工程が「低温モード」、又は「高温モード」のうち選択した水温モードにより行われ、自動運転においては、設定された一連の手順の洗浄工程が自動で行われる。
また、洗浄に際して、熱媒体循環回路40は、モータバルブV1を開放するとともに、モータバルブV2、モータバルブV3を閉鎖して洗浄水が主循環回路41を流通する構成とする。
【0049】
〔低温洗剤洗浄工程〕
「低温モード」を選択した場合の手動運転における「洗剤洗浄」での起動、又は自動運転における起動により行われる。
(1)まず、起動スイッチをONにする。
(2)レベルセンサLAにより検出されるタンク25内の液位が設定値以下の場合には、給水装置46によりタンク25に給水され、レベルセンサLAにより検出されるタンク25内の液位が設定値に到達したら給水を完了する。
(3)タンク25への給水が完了したら、洗剤供給部71の吐出ポンプ72のピストン72Bが前進して、予め設定された定量の液体洗剤がタンク25内に供給される。
(4)タンク25への給水が完了したら、(3)に並行して温度センサT2により水温が検出され、水温が設定値以下の場合には加熱部50の蒸気供給バルブ50Vが開放されることによりタンク25内の洗浄水に蒸気が注入されて温水Hに加熱される。蒸気の注入は、温水Hが設定温度に到達するまで行われる。タンク25内の洗浄水は、洗浄が完了するまで温度調整されることが好適である。
(5)給水が完了したら、加熱部50による加熱と関係なく、(3)、(4)に並行して循環ポンプ41Pが運転され、洗浄水の循環が開始される。
タンク25から熱媒体循環回路40に循環した洗浄水は、ノズル分配管32を経由して、ノズル30から噴射され、その一部が筐体21の内面を洗剤洗浄する。
(6)洗剤洗浄は、温度センサT2による検出が設定温度に到達すると、低温洗剤洗浄タイマ設定部TM1により設定された洗浄時間が図示しないタイマによりカウント開始されて、設定時間に到達することにより完了する。
なお、循環ポンプ41Pの起動により洗浄時間を開始する構成としてもよい。
(7)その後、自動運転においては高温洗剤洗浄工程に移行し、手動運転においては低温洗剤洗浄工程を完了する。
自動運転において、低温洗剤洗浄工程の後に洗浄水を排水することなく高温洗剤洗浄工程に移行して、低温洗剤洗浄工程で使用した洗浄水を高温洗剤洗浄工程で用いることにより、洗剤洗浄(低温洗剤洗浄工程及び高温洗剤洗浄工程)における洗剤及び水の使用量を削減することができる。
【0050】
なお、自動運転、手動運転において低温洗剤洗浄工程を完了する際に、タンク25内及び熱媒体循環回路40内の洗浄水を一旦排水させるようにしてもよい。
この場合、循環ポンプ41Pが停止されるとともに排水バルブ49Vが開放されてタンク25内及び熱媒体循環回路40内の洗浄水が排水管路49を経由して無圧排水され、タンク内に設けられたレベルセンサLAによりタンク25内の洗浄水がなくなったことが検出されると低温洗剤洗浄工程が完了する。なお、無圧排水時間を設定して排水完了を検出することも可能である。
【0051】
〔高温洗剤洗浄工程〕
「高温モード」を選択した場合の手動運転における「洗剤洗浄」での起動、又は自動運転における「低温洗剤洗浄工程」に引き続いて行われる。
高温洗剤洗浄工程の目的が殺菌の場合は、殺菌したい細菌の死滅温度、時間以上とする。
【0052】
なお、主な細菌の死滅温度、時間は以下のとおりである。
〔細菌の種類と死滅温度、時間〕
細菌名 温度(℃) 時間(分)
病原大腸菌 60 15
サルモネラ属菌 55 10
黄色ブドウ球菌 60 2.5
腸炎ビブリオ 60 15
カンピロバクター 60 20
セレウス菌(芽胞) 95 36
以上の表から、高温洗剤洗浄における水温の設定値を70℃〜90℃、その水温における洗浄時間を20分以上とすることがセレウス菌以外の細菌を殺菌できる点で好適であり、水温の設定値を95℃以上、洗浄時間を36分以上とすることがセレウス菌を含めて殺菌できる点でより好適である。
【0053】
(1)手動運転の場合には、起動スイッチをONにする。
(2)レベルセンサLAにより検出されるタンク25内の液位が設定値以下の場合には、給水装置46によりタンク25に給水され、レベルセンサLAにより検出されるタンク25内の液位が設定値に到達したら給水を完了する。
(3)タンク25への給水が完了したら、洗剤供給部71の吐出ポンプ72のピストン72Bが前進して、予め設定された定量の液体洗剤がタンク25内に供給される。
(4)タンク25への給水が完了したら、(3)に並行して温度センサT2により水温が検出され、水温が設定値以下の場合には加熱部50の蒸気供給バルブ50Vが開放されることによりタンク25内の洗浄水に蒸気が注入されて温水Hに加熱される。蒸気の注入は、温水Hが設定温度に到達するまで行われる。
タンク25内の洗浄水は、洗浄が完了するまで温度調整される。
(5)給水が完了したら、加熱部50による加熱と関係なく、(3)に並行して循環ポンプ41Pが運転され、洗浄水の循環が開始される。
タンク25から熱媒体循環回路40に循環した洗浄水は、ノズル分配管32を経由して、ノズル30から噴射され、その一部が筐体21の内面を洗浄する。
(6)高温洗剤洗浄は、温度センサT2による検出が設定温度に到達すると、高温洗剤洗浄タイマ設定部TM2により設定された洗浄時間が図示しないタイマによりカウント開始されて、設定時間に到達することにより完了する。
(7)その後、循環ポンプ41Pが停止されるとともに排水バルブ49Vが開放されてタンク25内及び熱媒体循環回路40内の洗浄水が排水管路49を経由して無圧排水され、タンク内に設けられたレベルセンサLAによりタンク25内の洗浄水がなくなったことが検出されることにより高温洗剤洗浄工程が完了する。
なお、排水完了を設定した無圧排水時間の経過により検出することも可能である。
【0054】
〔すすぎ洗浄工程〕
すすぎ洗浄工程は、手動運転における「すすぎ洗浄」での起動により、又は自動運転における洗剤洗浄工程に引き続いて行われる。手動運転の場合には、「低温モード」、「高温モード」のいずれかを選択する。
(1)手動運転の場合には、起動スイッチをONにする。
(2)レベルセンサLAにより検出されるタンク25内の液位が設定値以上となるまで給水装置46によりタンク25に給水され、レベルセンサLAにより検出されるタンク25内の液位が設定値に到達したら給水を完了する。
(3)タンク25への給水が完了したら、温度センサT2により水温が検出され、水温が設定値以下の場合には加熱部50の蒸気供給バルブ50Vが開放されることによりタンク25内の洗浄水に蒸気が注入されて温水Hに加熱される。蒸気が注入は、温水Hが設定温度に到達するまで行われる。タンク25内の洗浄水は、洗浄が完了するまで温度調整される。
(4)給水が完了したら、加熱部50による加熱と関係なく、(3)に並行して循環ポンプ41Pが運転され、洗浄水の循環が開始される。
タンク25から熱媒体循環回路40に循環した洗浄水は、ノズル分配管32を経由して、ノズル30から噴射され、その一部が筐体21の内面をすすぎ洗浄して洗剤等を除去する。
(5)すすぎ洗浄は、温度センサT2による検出が設定温度に到達すると、すすぎ洗浄タイマ設定部TM3により設定された洗浄時間が図示しないタイマによりカウント開始されて、設定時間に到達することにより完了する。
なお、循環ポンプ41Pの起動により、洗浄時間を開始する構成としてもよい。
(6)その後、循環ポンプ41Pが停止されるとともに排水バルブ49Vが開放されてタンク25内及び熱媒体循環回路40内の洗浄水が排水管路49を経由して無圧排水され、タンク内に設けられたレベルセンサLAによりタンク25内の洗浄水がなくなったことが検出されることによりすすぎ洗浄工程が完了する。
なお、排水完了を設定した無圧排水時間の経過により検出することも可能である。
なお、自動運転の場合に、例えば、(1)から(6)を複数回行うことによりすすぎ洗浄工程を完了させるようにしてもよい。
【0055】
上記各洗浄工程における、タンク25内の洗浄水の温度調整は、センサT2により検出された水温が設定値よりも低くなった場合には、蒸気供給バルブ50Vが開放されて蒸気をタンク25内に注入してタンク25内の洗浄水を加熱し、水温が設定温度の近傍又は範囲内まで上昇したら蒸気供給バルブ50Vが閉鎖されて蒸気供給管50Bからの蒸気供給を停止することにより行われる。
【0056】
また、タンク25内に蒸気を注入して、蒸気の凝縮によりタンク25内の液位が上昇した場合、余剰の洗浄水がオーバーフロー配管25Aを経由してオーバーフローしてタンク25から排出されて液位が維持される。
【0057】
上記実施の形態に係る加熱冷却装置1によれば、洗浄手段70が、洗剤洗浄工程と、すすぎ洗浄工程とを選択して洗浄することができるので、手動運転、自動運転において、洗剤洗浄、すすぎ洗浄を必要に応じて組み合わせて効率的な洗浄を行うことができる。
その結果、熱媒体循環回路40内、タンク25内に付着、堆積したパック食材W表面の残留物が除去され、細菌の繁殖が抑制される。
また、洗浄に際して、洗浄水がノズル30から噴射されるので、筐体21内を洗浄することができる。
【0058】
また、上記実施の形態に係る加熱冷却装置1によれば、高温洗剤洗浄により高温の洗浄水を循環させて洗浄することにより、熱媒体循環回路40内、タンク25内に付着した低温で除去されにくい付着物を容易に除去するとともに、高温洗剤洗浄が死滅温度、時間を満足する細菌を効率的に殺菌することができる。また、熱媒体循環回路40に直接蒸気を循環させることがないので、加熱冷却装置1が圧力容器等に該当することがなくメンテナンスが容易である。
また、高温モードの洗浄水を使用してすすぎ洗浄をすることにより、より効率的な殺菌を行うことが可能である。
【0059】
この発明に係る加熱冷却装置1によれば、洗剤供給部71の吐出ポンプ72により設定された量の液体洗剤を自動計量して洗浄水に供給することができるので、洗剤洗浄、ひいては自動による一連の洗浄工程を容易に行うことができる。
【0060】
また、洗浄制御部75により、洗剤洗浄工程と、通常洗浄工程とを有しているので、例えば、加熱冷却装置1の使用状況に応じて、加熱冷却装置1の熱媒体循環回路40等を洗浄する周期、使用する洗浄工程の種類等を選択して最適な洗浄をすることができる。
また、洗浄水をタンク25で受けて循環させるので、長時間の洗浄をしても、洗剤、洗浄水、熱エネルギーの消費が小さく、洗浄コストが削減される。
また、自動運転において、低温洗剤洗浄工程で使用した洗浄水を高温洗剤洗浄工程で用いることにより、洗剤洗浄における洗剤及び水の使用量を削減することができる。
【0061】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、設定された量の液体洗剤を自動軽量する吐出ポンプ72として、プランジャ型ポンプがパルス制御されるアクチュエータにより駆動される場合について説明したが、例えば、電磁ポンプや、予め設定されたストローク位置に近接スイッチ等を配置して洗剤を計量する構成としてもよいし、ギアポンプ等のプランジャ型ポンプによらない方法を用いて定量計量してもよい。
また、液体洗剤の吐出ポンプ72に代えて、粉末洗剤等を保持するための保持皿等により洗剤供給部を構成してもよい。
【0062】
例えば、上記実施の形態においては、熱処理装置が、熱媒体Mである温水Hと冷水Cが切替えられて熱媒体循環回路40内を循環する加熱冷却装置1の場合について説明したが、例えば、熱媒体循環回路40を温水Hが循環させられて加熱のみを行う熱処理装置(加熱装置)、又は熱媒体循環回路40を冷水Cが循環させられて冷却のみを行う熱処理装置(冷却装置)にも適用可能である。
【0063】
また、上記実施の形態においては、加熱部50が、タンク25内の洗浄水及び熱媒体Mに蒸気を注入して加熱する場合について説明したが、洗浄水及び熱媒体Mを加熱する手段として、1次側に蒸気を流通させた熱交換器による加熱や、電熱ヒータを用いた加熱等の他の手段による加熱を用いることも可能であり、また、タンク25以外の、例えば、配管部分等に加熱部を配置してもよい。
【0064】
また、上記実施の形態においては、加熱冷却装置1が冷水タンク62と冷却装置64からなる冷水供給部60を備える場合について説明したが、冷水供給部60を他の構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る加熱冷却装置の内部を正面から見た図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る加熱冷却装置の図1におけるX−X視した横断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る加熱冷却装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る洗浄制御部の概略を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る洗剤供給部の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
C 冷水
H 温水
M 熱媒体
W パック食材
1 加熱冷却装置
20 加熱冷却装置本体
21 筐体
25 タンク
30 ノズル
40 熱媒体循環回路
46 給水装置
49 排水管路(排水手段)
49V 排水バルブ(排水手段)
50 加熱部
60 冷水供給部
70 洗浄手段
71 洗剤供給部
75 洗浄制御部
76B 水温切替手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が収納可能とされた筐体と、
前記筐体内部に配置され、前記対象物に熱媒体を噴射するノズルと、
前記筐体の下部に配置され前記ノズルから噴射された前記熱媒体を受けるとともに貯留するタンクと、
前記タンク内に貯留された前記熱媒体を前記ノズルに循環させる循環ポンプが設けられた熱媒体循環回路を備えた熱処理装置であって、
前記熱媒体循環回路内を洗浄する洗浄手段を備え、
前記洗浄手段は、
前記循環ポンプと、
前記熱媒体循環回路に水を供給する給水装置と、
前記水を加熱する加熱部と、
前記水に洗剤を供給する洗剤供給部と、
前記熱媒体循環回路から排水する排水手段と、
前記水に洗剤を供給して循環させる洗剤洗浄工程及び前記水を循環させる通常洗浄工程を有する洗浄制御部とを備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記洗浄制御部は、
低温の前記水を用いる低温モードと、
高温の前記水を用いる高温モードとを選択する水温切替手段を有することを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記洗浄制御部は、
前記低温モードでの洗剤洗浄と、前記高温モードでの洗剤洗浄と、前記通常洗浄とを順次行うことを特徴とする請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記加熱部は、
前記タンクに蒸気を注入する蒸気供給バルブを備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記洗剤供給部は、
設定された量の液体洗剤を自動計量することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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