説明

画像処理装置

【課題】検査対象物の種類に応じてプログラムを切り換えるのみで、フォーカス調整を容易に行うことができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る画像処理装置は、検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、検査対象物に対する前記撮像部のフォーカス位置を調整するフォーカス調整機構と、該フォーカス調整機構の動作を制御する制御部とを備える。フォーカスが合う位置を示すフォーカス位置データを含む複数の設定項目から構成され、検査対象物を検査する条件に関する検査条件データを、複数設定する。一の検査条件データから他の検査条件データへの切換指示を受け付けた場合、切換後の他の検査条件データに含まれるフォーカス位置データに基づいて、フォーカス調整機構の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の種類に応じてプログラムを切り換えることができ、切り換え時にフォーカス調整を比較的短時間で行うことができる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物に欠陥が存在するか否かを検査する場合、検査対象物の外観を撮像装置で撮像し、撮像した画像に基づいて欠陥の存否を判定する。欠陥の存否を正しく判定するためには撮像した画像が鮮明である必要があり、通常は手動でフォーカス調整を行ってから検査対象物を撮像している。
【0003】
フォーカス調整を手動で行う場合、製造ラインを流れる検査対象物の種類が変わった場合、その都度フォーカス調整をやり直す必要が生じる。斯かる煩雑な作業を回避するべく、例えば特許文献1では、被検査体(検査対象物)の厚さや高さに応じて焦点調整(フォーカス調整を行うことが可能な外観検査装置が開示されている。これにより、検査対象物の種類が変わることにより厚さや高さが変わり、被検査体の撮像方向における寸法(撮像装置との距離)が変動した場合であっても、フォーカス調整を手動で行う必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−184019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、多種多様な検査対象物が流れてくる製造ラインに設けてある画像処理センサに、特許文献1に開示してある外観検査装置を採用した場合、被検査体(検査対象物)の厚さや高さが変わる都度焦点調整(フォーカス調整)が行われ、フォーカス調整機構の寿命が短くなるおそれがあるという問題点があった。もちろん、検査対象物の種類を一定期間ごとに変えることで対応することも可能である。しかし、フォーカス調整作業は、手動であろうと自動であろうと一定の時間を要し、検査タクトタイムを短縮することは困難である。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、検査対象物の種類に応じてプログラムを切り換えるのみで、フォーカス調整を容易に行うことができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1発明に係る画像処理装置は、検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、検査対象物に対する前記撮像部のフォーカス位置を調整するフォーカス調整機構と、該フォーカス調整機構の動作を制御する制御部とを備える画像処理装置において、フォーカスが合う位置を示すフォーカス位置データを含む複数の設定項目から構成され、前記検査対象物を検査する条件に関する検査条件データを、複数設定する検査条件データ設定手段と、一の前記検査条件データから他の前記検査条件データへの切換指示を受け付ける検査条件切換指示受付手段とを備え、前記制御部は、前記検査条件データの切換指示を受け付けた場合、切換後の他の前記検査条件データに含まれるフォーカス位置データに基づいて、前記フォーカス調整機構の動作を制御することを特徴とする。
【0008】
第1発明では、フォーカスが合う位置を示すフォーカス位置データを含む複数の設定項目から構成され、検査対象物を検査する条件に関する検査条件データを、複数設定する。一の検査条件データから他の検査条件データへの切換指示を受け付け、検査条件データの切換指示を受け付けた場合、切換後の他の検査条件データに含まれるフォーカス位置データに基づいて、フォーカス調整機構の動作を制御する。検査条件データの切換指示によりフォーカス位置データを含む複数の設定項目から構成される検査条件データを切り換えるだけでフォーカス調整をすることができるので、製造ラインを流れてくる検査対象物の種類を一定期間ごとに変えながらフォーカス調整を行う必要がなく、しかもフォーカス調整を比較的短い時間で行うことが可能となる。
【0009】
また、第2発明に係る画像処理装置は、第1発明において、前記検査条件データを設定する処理を実行するか、前記検査対象物の良否を判定する処理を実行するかを切り替える切替手段を備えることを特徴とする。
【0010】
第2発明では、検査条件データを設定する処理を実行するか、前記検査対象物の良否を判定する処理を実行するかを切り替えることができるので、事前にフォーカス位置データを記憶させておくことにより、検査を行う都度フォーカス調整を行う必要がなくなる。また、フォーカス位置データを他の画像処理センサにも容易に転用することが可能となる。
【0011】
また、第3発明に係る画像処理装置は、第2発明において、前記検査条件データ設定手段は、前記検査対象物の良否を判定する処理を実行するよう切り替えた場合、ユーザからの入力を受け付けてフォーカス位置データを設定し、前記制御部は、前記検査条件データを設定する処理を実行するよう切り替えた場合、前記フォーカス位置が切換後の他の前記検査条件データに含まれるフォーカス位置データに対応する位置になるように、前記フォーカス調整機構の動作を制御することを特徴とする。
【0012】
第3発明では、検査対象物の良否を判定する処理を実行するよう切り替えた場合、ユーザからの入力を受け付けてフォーカス位置データを設定する。検査条件データを設定する処理を実行するよう切り替えた場合、フォーカス位置が切換後の他の検査条件データに含まれるフォーカス位置データに対応する位置になるように、フォーカス調整機構の動作を制御する。これにより、フォーカス位置データを含む複数の設定項目から構成される検査条件データを設定するだけで、フォーカス位置が切換後の他の検査条件データに含まれるフォーカス位置データに対応する位置になるように調整することができるので、検査を行う都度フォーカス調整を行う必要がなく、フォーカス位置データを他の画像処理装置にも容易に転用することが可能となる。
【0013】
また、第4発明に係る画像処理装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記検査条件切換指示受付手段で、前記検査条件データの切換指示を受け付けた場合、前記制御部は、前記フォーカス位置を変更しないよう制御することを特徴とする。
【0014】
第4発明では、検査条件データの切換指示を受け付けた場合であっても、フォーカス位置を変更しないよう制御することで、焦点がずれていて少し画像がぼやけていても検査に支障がない検査対象物であるときには、余計なフォーカス調整を行う必要がなく、フォーカス調整機構の寿命を延伸させることが可能となる。
【0015】
また、第5発明に係る画像処理装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記フォーカス調整機構は、モータ及び該モータの回転と連動するネジ機構とで構成してあることを特徴とする。
【0016】
第5発明では、フォーカス調整機構は、モータ及び該モータの回転と連動するネジ機構とで構成してあるので、モータの回転を制御することにより、容易にフォーカス調整を行うことが可能となる。
【0017】
また、第6発明に係る画像処理装置は、第5発明において、前記検査条件切換指示受付手段で、前記検査条件データの切換指示を受け付けた場合、前記制御部は、前記フォーカス位置を原点に戻し、受け付けた切換指示に応じて前記モータの回転を制御することを特徴とする。
【0018】
第6発明では、検査条件データの切換指示を受け付けた場合、フォーカス位置を原点に戻し、受け付けた切換指示に応じてモータの回転を制御することにより、検査条件データを切り換える場合に、フォーカス位置特定のための画像処理を行う必要がなく、フォーカス調整機構を動作させるだけでフォーカス位置データに基づいてフォーカス位置を調整することができる。また、必ずフォーカス位置を原点に戻しているので、連続してフォーカス調整を行うことによる脱調を未然に回避することも可能となる。
【0019】
また、第7発明に係る画像処理装置は、第6発明において、前記検査条件データは、原点を補正するための情報を含むことを特徴とする。
【0020】
第7発明では、検査条件データは、原点を補正するための情報を含むので、より高い精度でフォーカス位置データに基づいてフォーカス位置を調整することができる。
【0021】
また、第8発明に係る画像処理装置は、第1乃至第7発明のいずれか1つにおいて、検査対象物と比較する基準となる検査対象物の代表的画像をマスタ画像として記憶しておき、前記検査条件データは前記マスタ画像を表示しつつ設定することを特徴とする。
【0022】
第8発明では、検査対象物と比較する基準となる検査対象物の代表的画像をマスタ画像として記憶しておき、検査条件データはマスタ画像を表示しつつ設定するので、ユーザが設定を視認しながら検査条件データを設定することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、検査条件データの切換指示によりフォーカス位置データを含む複数の設定項目から構成される検査条件データを切り換えるだけでフォーカス調整をすることができるので、製造ラインを流れてくる検査対象物の種類を一定期間ごとに変えながらフォーカス調整を行う必要がなく、しかもフォーカス調整を比較的短い時間で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置の構成を示す外形図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のカメラモジュールのフォーカス調整機構の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置の構成を示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置のモード切り換え画面の例示図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置の設定画面の例示図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置のフォーカス調整画面の例示図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置のネジ有無の判定画面の例示図である。
【図10】位置補正ツール及び輪郭判別ツールの検査条件データの一覧を示す図表である。
【図11】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置のドライバ種別の判定画面の例示図である。
【図12】色面積ツールの検査条件データの一覧を示す図表である。
【図13】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置のネジ有無の検査画面の例示図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置のドライバ種別の判定画面の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る画像処理装置について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態の説明で参照する図面を通じて、同一又は同様の構成又は機能を有する要素については、同一又は同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。以下、画像処理装置として画像処理センサを例に挙げて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る画像処理センサは、撮像装置1と、撮像装置1とデータ通信することが可能に接続ケーブル3で接続されている表示装置2とで構成されている。もちろん、表示装置2の代わりに、ディスプレイを有する外部コンピュータであっても良い。なお、撮像装置1と表示装置2とが一体として構成されていても良い。
【0027】
撮像装置1は、内部に画像処理を実行するFPGA、DSP等を備えており、検査対象物を撮像する撮像素子を有するカメラモジュール(撮像部)と、検査対象物に対して光を照射する照明部とを備えている。撮像装置1をコンパクトにするべく、例えば図1に示すように、撮像装置1の正面の中央近傍にレンズ12を配置し、レンズ12の周囲を囲むように、照明部として複数のLED11を配置してある。なお、撮像装置1とは別に外部照明(リング照明等)を設けても良い。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す外形図である。図2(a)は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す正面図を、図2(b)は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す平面図を、図2(c)は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す背面図を、それぞれ示している。
【0029】
図2(a)に示すように、撮像装置1はレンズ12を正面の中央近傍に配置しており、レンズ12の周囲を囲むように複数のLED11を配置してある。撮像時には、複数のLED11を点灯させることにより、検査対象物に光を照射し、検査対象物を明瞭に撮像することができる。
【0030】
図2(b)及び図2(c)に示すように、撮像装置1の背面には、外部の電源から電力の供給を受ける電源ケーブルを接続する電源コネクタ102と、表示装置2とデータ通信する接続ケーブル3を接続することが可能な接続コネクタ103とを備えている。また、手動でフォーカスを調整することができるフォーカス調整ネジ101も背面に備えている。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図3において、コネクタ基板16は、電源インタフェース161に設けてある電源コネクタ102(図2(b)及び図2(c)参照)を介して、外部の電源から電力の供給を受ける。電源基板18は、供給された電力を各基板に供給する。本実施の形態では、カメラモジュール14にはメイン基板13を介して電力を供給している。電源基板18のモータドライバ181は、カメラモジュール14のモータ141に駆動電力を供給し、オートフォーカスを実現している。
【0032】
通信基板17は、メイン基板13から出力された欠陥を検出したか否かで検査対象物の良否を示すOK/NG信号(判定信号)を表示装置2へ送信する。判定信号を受信した表示装置2は、判定結果を表示する。
【0033】
照明基板(照明部)15は、検査対象物を撮像する撮像領域に光を照射する、照明基板15には複数のLED11が設けてあり、図示しないリフレクタはLED11の前方に設けてある。また、レンズ12は、短距離用又は長距離用のレンズユニットとして交換可能となっている。
【0034】
カメラモジュール(撮像部)14は、モータ141が回転することにより、オートフォーカス動作の制御を行うフォーカス調整機構を備えており、メイン基板13からの撮像指示信号に応じて検査対象物を撮像する。本実施の形態では、撮像素子としてCMOS基板142を備えており、撮像されたカラー画像は、CMOS基板142にてダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいてHDR画像へ変換され、メイン基板13のFPGA131へ出力される。
【0035】
図4は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のカメラモジュール14のフォーカス調整機構の構成を示す斜視図である。図4に示すように、カメラモジュール14のCMOS基板142にベースマウント143を取り付けてある。ベースマウント143には、レンズホルダ144のレンズ12を支持するレンズ支持体121の上下方向(矢印方向)の動きを検知する上下検知用センサと、レンズ支持体121を移動させる機構の一部であるモータ141の回転を検知する回転検知用センサとを備えている(図示せず)。
【0036】
ベースマウント143には、レンズ支持体121とレンズ支持体121を移動させる機構とで構成されたレンズホルダ144を取り付けてある。図4に示すように、モータ141の回転軸(ネジ機構)141aに雄ネジが形成してあり、ナット(ネジ機構)141bに形成してある雌ネジと螺合することにより、モータ141の回転に応じてナット141bが矢印方向に直線移動する。ナット141bはレンズ支持体121を下方から押し上げるようになっており、レンズ支持体121は図示しない付勢部材により下方へ押し下げられている。したがって、ナット141bの矢印方向への往復運動をモータ141の回転により制御することで、ナット141bにより付勢部材の付勢力に抗してレンズ支持体121を上昇させたり、下降させたりすることができ、レンズ支持体121に設けてあるレンズ12と検査対象物との距離を調整することができる。
【0037】
図3に戻って、メイン基板13は、接続してある各基板の動作を制御する。例えば照明基板15に対しては、複数のLED11の点灯/消灯を制御する制御信号を、LEDドライバ151へ送信する。LEDドライバ151は、FPGA131からの制御信号に応じて、例えばLED11の点灯/消灯、光量等を調整する。また、カメラモジュール14のモータ141に対しては、電源基板18のモータドライバ181を介してオートフォーカス動作を制御する制御信号を、CMOS基板142に対しては、撮像指示信号等を、それぞれ送信する。
【0038】
メイン基板13のFPGA131は、照明制御、撮像制御をするとともに、取得した画像データに対する画像処理を実行する(画像処理部)。また、メイン基板13のDSP132は、画像データについて、エッジ検出処理、パターン検索処理等を実行する。パターン検索処理の結果として、欠陥を検出したか否かで検査対象物の良否を示すOK/NG信号(判定信号)を通信基板17へ出力する。演算処理結果等はメモリ133に記憶される。なお、本実施の形態では、FPGA131が照明制御、撮像制御等を行っているが、これらをDSP132が行うようにしても良い。また、FPGA131とDSP132とが一体となった回路、すなわち主制御回路(主制御部)を設けても良い。要するに、主制御部は、複数のLED11の点灯/消灯を制御する制御信号をLEDドライバ151へ送信したり、オートフォーカス動作を制御する制御信号を電源基板18のモータドライバ181を介してカメラモジュール14のモータ141へ送信したり、撮像指示信号等をCMOS基板142へ送信したり、FPGA131及びDSP132の双方の機能を有する。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2の構成を示す正面図である。図5に示すように、表示装置2の前面の中央部分にはタッチパネル21が設けてあり、撮像された検査対象物のカラー画像を画面に表示するとともに、ユーザによる選択入力を受け付ける。
【0040】
また、表示装置2は、外部の電源から電力が供給される電源ケーブルを接続する電源コネクタ24と、撮像装置1とデータ通信する接続ケーブル3を接続することが可能な接続コネクタ25とを備えている。さらにUSBメモリ等と接続することが可能なUSBポート22を前面に設けてある。
【0041】
ユーザは、表示装置2のタッチパネル21の画面に表示されているボタンを選択することにより、画像処理センサの動作を制御する。そして、検査対象物の検査を実行する「検査モード」と、撮像装置1の条件設定を行う「設定モード」との切り換えを行うこともできる。言い換えると、本実施の形態に係る画像処理センサは、検査対象物の良否を判定する検査モード(Runモード)と、検査に用いる各種パラメータ(撮像パラメータ、照明パラメータ、画像処理パラメータ等)の設定を行う設定モード(非Runモード)とを切り替えるためのモード切替部を有している。図6は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2のモード切り換え画面の例示図である。
【0042】
図6(a)は、「検査モード」の画面表示の例示図である。図6(a)に示すように検査対象物表示領域61に、撮像装置1が撮像した検査対象物の画像を表示する。左下の「センサ設定」ボタン62が切換手段として機能し、「センサ設定」ボタン62が選択された場合、「設定モード」へと切り換わり、図6(b)に示す画面へと画面遷移する。
【0043】
図6(b)は、「設定モード」の画面表示の例示図である。図6(b)に示すように、プログラム選択領域63にて、検査対象物の種類又は検査環境を選択する。ここで、「プログラム」とは、検査対象物の種類又は検査環境に応じて設定された一連のデータ群(パラメータ値の組み合わせ)を意味しており、検査対象物の種類又は検査環境ごとに異なるデータ群をプログラムとして記憶することができる。検査対象物を検査する条件に関する検査条件データには、フォーカス調整をする場合にフォーカスが合う位置を示すフォーカス位置データを含んでいる。
【0044】
また、検査対象物と比較する基準となる検査対象物の代表的画像であるマスタ画像が記憶されている場合、マスタ画像表示領域64にマスタ画像が表示される。「設定ナビ」ボタン65が選択された場合、詳細な設定を行う設定画面に画面遷移する。図6(b)の「運転開始」ボタン66は切換手段として機能し、「運転開始」ボタン66が選択された場合、「検査モード」へと切り換わり、図6(a)に示す画面へと画面遷移する。
【0045】
図7は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2の設定画面の例示図である。図7に示す設定画面を通じて、ユーザは、撮像条件の設定(図7(a))、パターンサーチする基準となるマスタ画像の登録(図7(b))、マスタ画像に対して輪郭サーチ等のツール設定(図7(c)〜図7(e))、出力割当(図7(f))、という流れで順次設定を行う。以下、詳細に説明する。図6(b)に示す「設定ナビ」ボタン65が選択された場合、まず図7(a)に示す撮像条件設定画面が表示される。撮像条件設定画面では、マスタ画像が記憶されていない場合には現在撮像している検査対象物の画像が、マスタ画像が記憶されている場合にはマスタ画像が主表示領域71に表示され、画面下部に撮像条件を設定する設定ボタン群が表示されている。例えば「トリガ条件」ボタンが選択された場合には、撮像装置1が検査対象物を撮像するタイミングを特定するトリガ条件を設定することができる。詳細な設定画面は省略するが、それぞれのボタンが選択された場合、それぞれの設定条件に応じて図5に示すタッチパネル21上に表示される。「フォーカス自動調整」ボタン73が選択された場合については後述する。
【0046】
また、より詳細な設定をするには、図7(a)の「拡張機能」ボタン72を選択すれば良い。「拡張機能」ボタン72が選択された場合、詳細な設定を行うためのボタンが別途表示される。このように撮像条件設定画面では、明るさの調整、フォーカスの調整、撮像範囲、照明のオン/オフ、ズームのオン/オフ等を設定することができる。フォーカスの調整については後述する。
【0047】
図7(a)の「進む」と表示された「画面遷移」ボタン74が選択された場合、図7(b)に示すマスタ画像登録画面が表示される。登録されたマスタ画像上に、以後、検査用の様々なツールを設定する。1つのマスタ画像に対して複数のプログラムを記憶することができる。つまり、同じマスタ画像に対して異なるツールを設定し、異なるプログラムとして記憶しておくことができる。
【0048】
マスタ画像は、現在撮像している検査対象物の画像を登録しても良いし、以前に撮像しておいた画像から選択して登録しても良い。現在撮像している画像を登録する場合、ユーザは「Live画像登録」ボタン75を選択すればよい。「Live画像登録」ボタン75が選択された時点で撮像されている画像がマスタ画像として登録される。
【0049】
図7(b)の「進む」と表示された「画面遷移」ボタン76が選択された場合、図7(c)に示すマスタ画像ごとのツール設定画面が表示される。マスタ画像上に、以後、検査用の様々なツールを設定する。
【0050】
ツール設定画面では、表示されているマスタ画像に、検査を実行するためのツールを追加設定する。図7(c)に示す「追加」ボタン77が選択された場合、図7(d)に示すツール選択画面が表示される。ツール選択画面で選択されたツールを追加設定する。例えば「輪郭サーチ」ボタン78が選択された場合、図7(e)に示す輪郭サーチ設定画面が表示される。輪郭サーチ設定画面で、マスタ画像のどの輪郭を撮像された検査対象物の画像と照合するのか設定しておくことにより、欠陥を検出したか否かで検査対象物の良否を判定することができる。以下、色面積、位置補正等の設定をすることができる。
【0051】
図7(c)の「進む」と表示された「画面遷移」ボタン79が選択された場合、図7(f)に示す出力割当画面が表示される。出力割当画面では、検査の結果として画面に表示される出力線が何を意味するのか、設定ボタン群80を選択することで設定することができる。「完了」ボタン81が選択された場合、図6(b)に示す「設定モード」の画面表示に戻る。このように、ユーザは、図5に示す表示装置2のタッチパネル21上で、「進む」と表示された「画面遷移」ボタン74、76、79を順に選択することで、簡単かつ短時間に、検査に用いる各種パラメータを設定することができる。また、画像処理センサに慣れていないユーザであっても、表示装置2のタッチパネル21上で次の操作へ誘導されるので、各種パラメータを容易に設定することができる。
【0052】
本実施の形態では、図6(b)に示す「設定モード」画面から、フォーカス調整を行う場合の検査条件データを設定して記憶する。図6(b)に示す「設定モード」画面から、「設定ナビ」ボタン65を選択し、図7(a)に示す撮像条件設定画面が表示される。そして、図7(a)の「フォーカス自動調整」ボタン73を選択することで、フォーカス調整を行う。
【0053】
図8は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2のフォーカス調整画面の例示図である。図8(a)では、主表示領域71に現在撮像している検査対象物の画像が表示されている。この状態で「フォーカス自動調整」ボタン73を選択することで、フォーカス調整を行う。
【0054】
具体的には、「フォーカス自動調整」ボタン73を選択した時点で、FPGA131はカメラモジュール14のモータ141に制御信号を送信し、モータ141を回転させる。そして、検査対象物との距離が最も近い位置から最も遠い位置までレンズ12を移動させ、検査対象物を複数枚撮像することにより、図8(b)に示すようにフォーカスが合う位置をフォーカス位置として特定することができる。フォーカス位置として特定した位置を、例えば位置‘60’と設定する。そして、特定したフォーカス位置、フォーカス位置の明るさ、出力の設定等を含む検査条件データとして、FPGA131はプログラム単位でメモリ133に記憶する。
【0055】
図9は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2のネジ有無の判定画面の例示図である。図9の主表示領域71に現在撮像している検査対象物の画像が表示されている。図9の例では、位置補正ツールの検査領域91及び輪郭判別ツールの検査領域92が設定されている。
【0056】
図10は、位置補正ツール及び輪郭判別ツールの検査条件データの一覧を示す図表である。図10に示すように、様々な設定項目について、設定例が対応付けて記憶されている。これら設定項目と設定例との組み合わせであるデータ群を一括して「プログラム01」として図3に示すメモリ133に記憶する。
【0057】
なお、図10に示す複数の各種設定項目(設定パラメータ)のうち、トリガ関連の項目では、少なくとも内部トリガ又は外部トリガのいずれかを選択するためのパラメータ「トリガ方式」を必須設定項目とすることが好ましい。撮像関連の項目では、少なくとも画面の明るさを調整するためのパラメータ「明るさ」及びオートフォーカス位置を調整するためのパラメータ「AF調整位置」を必須設定項目とすることが好ましい。
【0058】
また、ツール関連の項目では、少なくともどのような種別のツールで画像処理を行うかを決定するためのパラメータ「ツール種別」及び検査精度の基準となるパラメータ「閾値」(一致度)を必須設定項目とすることが好ましい。特に、検査対象物の良否を判定する処理を実行する場合には、「ツール種別」を必須設定項目とすることが好ましい。
【0059】
このように、一の検査条件データの中には複数の設定項目が含まれており、これら複数の設定項目は、例えば外部出力に関する設定項目、少なくとも「トリガ方式」が含まれるトリガ条件に関する設定項目、少なくとも「明るさ」及び「AF調整位置」が含まれる撮像条件に関する設定項目、照明補正を行うか否かを決定するための照明補正に関する設定項目、マスタ画像の有無・特定に関する設定項目、及び少なくとも「ツール種別」が含まれる画像処理ツールに関する設定項目等で構成される。
【0060】
図11は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2のドライバ種別の判定画面の例示図である。図11の主表示領域71に現在撮像している検査対象物の画像として、ドライバの画像が表示されている。図11の例では、色面積ツールの検査領域93のみが設定されている。
【0061】
図12は、色面積ツールの検査条件データの一覧を示す図表である。図12に示すように、図10とは異なる様々な設定項目について、設定例が対応付けて記憶されている。これら設定項目と設定例との組み合わせであるデータ群を一括して「プログラム02」として図3に示すメモリ133に記憶する。
【0062】
検査条件データを切り換えるとは、プログラムごとに記憶してあるデータ群を切り換えることである。図13は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2のネジ有無の検査画面の例示図である。図13に示すように、検査条件データとして「プログラム01」が選択された場合、図10に示す検査条件データが読み出され、主表示領域71に現在撮像している検査対象物の画像が表示されるとともに、検査条件データに基づく位置補正ツールの検査領域91及び輪郭判別ツールの検査領域92が表示されている。図13では、検査領域92にてネジが存在すると判定された結果を示す。ネジ部分の色を変えたり、ビープ音を鳴動させる等の方法でユーザに伝える工夫がなされている。
【0063】
ここでプログラムを、「プログラム01」から「プログラム02」に切り換えた場合、プログラムごとに記憶してあるデータ群を、図12に示す「プログラム02」の検査条件データに切り換える。図14は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2のドライバ種別の判定画面の例示図である。図14の例では、主表示領域71にドライバの画像が表示され、色面積ツールの検査領域93にて先端が黒いドライバであると判定されている。このように、プログラムを切り換えるだけで、検査条件データが入れ替わり、プログラムに含まれるツールに対応した検査領域が即座に設定される。
【0064】
このように、検査条件データとして「プログラム01」又は「プログラム02」が選択されることで、フォーカス調整を自動で行うことができ、わざわざ手動で行う必要がなく、ユーザの手間は大きく軽減される。つまり、画像処理センサ(又は表示装置2)は、「プログラム01」、「プログラム02」のように、複数の異なる検査条件データが設定されてメモリ133に記憶されており、これら複数の異なる検査条件データの中から一の検査条件データをメモリ133から読み出すことによって、ユーザは一の検査条件データを選択する。
【0065】
なお、プログラムを切り換えた場合であっても、フォーカス位置を変更しないようにすることができることが好ましい。焦点がずれていて少し画像がぼやけていても検査に支障がない検査対象物であるときには、余計なフォーカス調整を行う必要がなく、フォーカス調整機構の寿命を延伸させることができるからである。
【0066】
また、プログラムを切り換える場合、フォーカス位置への移動は、プログラムを切り換える前のフォーカス位置とプログラムを切り換えた後のフォーカス位置との差分だけ移動すれば足りる。ただ、フォーカス調整を繰り返し行うことによる脱調を未然に回避するべく、プログラムの切り換え時に、フォーカス位置の原点を実際の検査対象物に合わせて補正した後、フォーカス位置を原点に戻し、プログラムで指定されているフォーカス位置へ移動させることが好ましい。
【0067】
すなわち、プログラムの切換指示を受信したFPGA131は、まずフォーカス位置の原点の補正を行う。該補正には、実際の検査対象物の形状、寸法等の検査条件データに含まれる情報を用いる。補正が完了した時点で、フォーカス位置を原点へ移動するようモータドライバ181へ指示する。
【0068】
そして、FPGA131は、プログラムを切り換えた後のプログラムに対応しているフォーカス位置へと移動するようモータドライバ181へ指示する。これにより、フォーカス位置特定のための画像処理を行う必要がなく、フォーカス調整機構を動作させるだけでフォーカス位置データに基づいてフォーカス位置を調整することができる。また、必ずフォーカス位置を原点に戻しているので、連続してフォーカス調整を行うことによる脱調を未然に回避することも可能となる。
【0069】
以上のように本実施の形態によれば、検査条件データの切換指示によりフォーカス位置データを含む複数の設定項目から構成される検査条件データを切り換えるだけでフォーカス調整をすることができるので、製造ラインを流れてくる検査対象物の種類を一定期間ごとに変えながらフォーカス調整を行う必要がなく、しかもフォーカス調整を比較的短い時間で行うことが可能となる。
【0070】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変更、改良等が可能である。例えば撮像装置1と表示装置2とは、接続ケーブル3で直結されている形態に限定されるものではなく、LAN、WAN等のネットワーク網を介して接続されていても良いことは言うまでもない。また、本実施例では撮像装置1と表示装置2とは別体となっているが、両者が一体になった画像処理装置であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 撮像装置
2 表示装置
3 接続ケーブル
13 メイン基板
14 カメラモジュール(撮像部)
21 タッチパネル
131 FPGA(制御部)
141 モータ
142 CMOS基板(撮像素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、
検査対象物に対する前記撮像部のフォーカス位置を調整するフォーカス調整機構と、
該フォーカス調整機構の動作を制御する制御部と
を備える画像処理装置において、
フォーカスが合う位置を示すフォーカス位置データを含む複数の設定項目から構成され、前記検査対象物を検査する条件に関する検査条件データを、複数設定する検査条件データ設定手段と、
一の前記検査条件データから他の前記検査条件データへの切換指示を受け付ける検査条件切換指示受付手段と
を備え、
前記制御部は、前記検査条件データの切換指示を受け付けた場合、切換後の他の前記検査条件データに含まれるフォーカス位置データに基づいて、前記フォーカス調整機構の動作を制御することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記検査条件データを設定する処理を実行するか、前記検査対象物の良否を判定する処理を実行するかを切り替える切替手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記検査条件データ設定手段は、前記検査対象物の良否を判定する処理を実行するよう切り替えた場合、ユーザからの入力を受け付けてフォーカス位置データを設定し、
前記制御部は、前記検査条件データを設定する処理を実行するよう切り替えた場合、前記フォーカス位置が切換後の他の前記検査条件データに含まれるフォーカス位置データに対応する位置になるように、前記フォーカス調整機構の動作を制御することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記検査条件切換指示受付手段で、前記検査条件データの切換指示を受け付けた場合、前記制御部は、前記フォーカス位置を変更しないよう制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記フォーカス調整機構は、モータ及び該モータの回転と連動するネジ機構とで構成してあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記検査条件切換指示受付手段で、前記検査条件データの切換指示を受け付けた場合、前記制御部は、前記フォーカス位置を原点に戻し、受け付けた切換指示に応じて前記モータの回転を制御することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記検査条件データは、原点を補正するための情報を含むことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
検査対象物と比較する基準となる検査対象物の代表的画像をマスタ画像として記憶しておき、前記検査条件データは前記マスタ画像を表示しつつ設定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図12】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−108875(P2013−108875A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254879(P2011−254879)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】