説明

WDM光の伝送方法およびWDM光伝送システム

【課題】WDM光の各波長の光信号が伝送路上で帯域制限を受けても良好な伝送特性を実現できるWDM光の伝送方法およびWDM光伝送システムを提供する。
【解決手段】本WDM光伝送システムは、伝送路20を伝搬するWDM光の各波長の光信号について、各々の中心波長およびその近傍のスペクトル成分をスペクトル補正用光フィルタ50により選択的に減衰させることにより、各光信号のスペクトルにおける側波帯成分の強度を相対的に増加させた状態で、当該WDM光の伝送を行う。これにより、伝送路20上の帯域制限デバイス30をWDM光が通過して各波長の光信号のスペクトル幅が制限されても、側波帯成分の減衰に起因した伝送特性の劣化が軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路上で帯域制限を受ける波長多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)光を良好な特性で伝送するための方法およびWDM光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及に伴う急激な通信トラフィックの増大に対応するため、WDM光伝送システムでは光信号の高ビットレート化と波長チャンネルの高密度化とによる伝送容量の拡大が強く求められている。また、波長選択スイッチ(Wavelength Selective Switch:WSS)などを利用して、例えば図13に示すようにコアネットワークとメトロ網またはアクセス網とをシームレスに接続し、光信号を波長毎に柔軟に管理する全光ネットワークの構築も進められている。(例えば、下記の非特許文献1,2参照)。
【0003】
一般的に、WDM光に含まれる各波長の光信号の波長帯域幅(スペクトル幅)は、各々のビットレート(変調周波数)に比例する。このため、各波長の光信号のビットレートが高くなる程各々のスペクトル幅が広くなり、該各光信号を高密度に波長多重することが難しくなる。また、上記図13に示したような光ネットワークでは、伝送路上の各ノード等に配置されたフィルタ機能を有する光デバイスにより光信号のスペクトル幅が制限されて伝送特性の劣化が生じる。上記フィルタ機能を有する光デバイス(以下、帯域制限デバイスと呼ぶ)としては、例えば、各波長の光信号を合波してWDM光を生成する合波器(MUX)、WDM光を各波長の光信号に分波する分波器(DEMUX)、光アドドロップまたは光クロスコネクトの処理に用いられる光スイッチなどが挙げられる。
【0004】
上記のような帯域制限デバイスの影響を軽減してより高密度なWDM光の伝送を実現可能にするための従来技術として、例えば、下記の特許文献1に記載されているようなパーシャルDPSK(Partial Differential Phase Shift Keying:PDPSK)方式が提案されている。このPDPSK方式は、DPSK変調された光信号が送受信される光伝送システムの受信部において、遅延干渉計の遅延量を1ビット時間よりも短く設定することにより、伝送路上に存在する帯域制限デバイスを通過した光信号の特性劣化を抑圧する技術である。このようなPDPSK方式を採用することにより、40ギガビット毎秒(Gb/s)の光信号を50ギガヘルツ(GHz)間隔で波長多重したWDM光の伝送が実現可能になるという報告がなされている(例えば、下記の非特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0196110号明細書
【非特許文献1】Glenn Baxter et al., "Highly Programmable Wavelength Selective Switch Based on Liquid Crystal on Silicon Switching Elements", Optical Fiber Communication Conference (OFC) 2006, OTuF2
【非特許文献2】Steven Frisken, "Advances in Liquid Crystal on Silicon Wavelength Selective Switching", Optical Fiber Communication Conference (OFC) 2007, OWV4
【非特許文献3】B. Mikkelsen et al., "Partial DPSK with excellent filter tolerance and OSNR sensitivity", Electronics Letters, 2006, Vol.42, No.23
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなPDPSK方式を採用したWDM光伝送システムであっても、伝送路上の帯域制限デバイスによる光信号のスペクトル幅の制限がより厳しくなった場合、伝送特性の劣化は避けられないという課題がある。以下、この課題について詳しく説明する。
【0007】
図14は、40Gb/sのDPSK変調された光信号の一般的なスペクトルを示している。このようにDPSK光信号のスペクトルは、搬送波(レーザ光源からの出力光)の周波数(波長)を中心として高周波側および低周波側に側波帯を有しており、ここで例示した40Gb/sの場合、トータルで100GHz以上の帯域幅を持つことになる。WDM光は、上記のような光信号が中心波長を異ならせて複数多重化されたものとなる。該WDM光の伝送では、各波長の光信号が40Gb/sのような高ビットレートになっても、100GHz間隔や50GHz間隔といった高密度波長多重による信号伝送が一般的となりつつある。このような高速かつ高密度なWDM光の伝送を行う場合、伝送路上に配置された帯域制限デバイスにおいて、各波長の光信号の側波帯成分がそれぞれ削られてしまい、伝送特性に劣化が生じるという問題がある。
【0008】
具体的に、上記図14に示した40Gb/sのDPSK光信号が、例えば図15に示すような40GHzの3dB帯域幅を有する1次ガウス型フィルタ(バンドパスフィルタ)を通過した場合、当該光信号のスペクトルは図16に示すような形状となる。図16より明らかなように、バンドパスフィルタを通過することによって光信号の側波帯成分が減衰し、スペクトル形状が大幅に変わることが分かる。前述した伝送路上の帯域制限デバイスは、上記の例におけるバンドパスフィルタに相当する。
【0009】
ここで、上記のような光信号の側波帯成分の減衰が伝送特性に与える影響について、前述のPDPSK方式を採用した場合のシミュレーション結果を用いて詳しく説明する。
【0010】
図17は、PDPSK方式を採用したWDM光伝送システムに関するシミュレーションにおける計算モデルの概略を示した図である。この計算モデルでは、光送信部110内のPRBS回路111で発生する擬似ランダムビット列(Pseudo Random Bit Stream)がDPSKプリコーダ112に与えられることでDPSK方式に対応したデータ信号が生成され、該データ信号に従ってドライバ回路(DRV)113で生成した変調信号によりLN変調器(MOD)114が駆動される。これにより、レーザ光源(LD)115から出力される搬送波が位相変調されて、DPSK光信号が伝送路120に送信される。伝送路120上には、DPSK光信号の信号対雑音比(Optical Signal to Noise Ratio:OSNR)を制御するための光減衰器(ATT)131および光アンプ132と、DPSK光信号のスペクトル幅を制限するバンドパスフィルタ(1次ガウス型フィルタ)133とが配置されており、該バンドパスフィルタ133を通過したDPSK光信号が光受信部140で受信される。光受信部140では、遅延干渉計141およびバランス型受信器142によりDPSK光信号の復調処理が行われ、当該受信信号のビット誤り率(Bit Error Rate:BER)の測定がBER測定器143により行われる。上記遅延干渉計141における遅延時間は、ここでは1ビット時間の65%に対応する16.25ピコ秒(ps)に設定され、PDPSK方式に対応している。
【0011】
図18は、図17の計算モデルにおいて、バンドパスフィルタ133の3dB帯域幅を37GHz,26GHzおよび21GHzとした場合のOSNRとBERの関係を示している。ただし、OSNRは分解能0.5nmで測定した値であり、光送信部110および光受信部140の帯域は適切に設定されているものとする。図18のグラフより、バンドパスフィルタ133の3dB帯域幅が37GHzとある程度広いときには、OSNRの増大(改善)と伴にBERの値も顕著に低下している。一方、バンドパスフィルタ133の3dB帯域幅が26GHz,21GHzと狭くなると、OSNRが増大してもBERの値はそれ程低下しなくなる。つまり、PDPSK方式を採用した場合であっても、バンドパスフィルタ133の帯域幅が狭くなる程、BERが劣化することが分かる。
【0012】
したがって、伝送路上に狭帯域幅の帯域制限デバイスが配置されている場合、または、伝送路上に多数の帯域制限デバイスが配置されており、それら帯域制限デバイスのトータルのフィルタ特性の帯域幅が狭くなる場合には、PDPSK方式を採用したとしても、上記帯域制限デバイスによる側波帯成分の減衰に起因した伝送特性の劣化を有効に抑えることが難しくなる。このような側波帯成分の減衰に起因した問題点は、光信号の変調方式がDPSKの場合だけに限られるものではなく、DPSK以外の他の位相変調方式や、NRZ(Non Return to Zero)やRZ(Return to Zero)などの強度変調方式にも共通するものである。
【0013】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、WDM光の各波長の光信号が伝送路上で帯域制限を受けて側波帯成分が減衰されても良好な伝送特性を実現できるようにするためのWDM光の伝送方法およびWDM光伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明によるWDM光伝送システムの一態様は、波長の異なる複数の光信号を含むWDM光が伝搬する伝送路と、該伝送路上に配置された少なくとも1つの帯域制限デバイスと、を備え、前記WDM光が前記帯域制限デバイスを通過する際に各波長の光信号のスペクトル幅が制限されるWDM光伝送システムであって、前記WDM光に含まれる各波長の光信号について、各々の中心波長およびその近傍のスペクトル成分を選択的に減衰させることが可能な透過波長特性を有するスペクトル補正用光フィルタを備え、前記WDM光の各波長の光信号が前記スペクトル補正用光フィルタを通過することにより、該各光信号のスペクトルにおける側波帯成分の相対的な強度を増加させるスペクトル補正が行われるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
上記のようなWDM光伝送システムでは、WDM光に含まれる各波長の光信号について、各々の中心波長およびその近傍のスペクトル成分をスペクトル補正用光フィルタにより選択的に減衰させて、各光信号のスペクトルにおける側波帯成分の強度を相対的に増加させた状態で、当該WDM光の伝送が行われる。これにより、伝送路上の帯域制限デバイスにおける各光信号に対する帯域制限が厳しくなっても、側波帯成分の減衰に起因した伝送特性の劣化を軽減することができため、高ビットレートかつ高波長密度なWDM光をエラーの少ない良好な特性で伝送することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明によるWDM光伝送システムの一実施形態の構成を示す図である。
図1において、本実施形態のWDM光伝送システムは、例えば、波長の異なる複数の光信号を含んだWDM光を送信する光送信装置10と、該光送信装置10からのWDM光が伝搬する伝送路20と、該伝送路20上の各ノード等において各波長の光信号のスペクトル幅を制限する帯域制限デバイス30と、伝送路20を伝送されたWDM光を受信する光受信装置40と、光送信装置10の出力端付近に位置する伝送路20上に配置され、WDM光の各波長の光信号について各々の中心波長およびその近傍のスペクトル成分を選択的に減衰させるスペクトル補正用光フィルタ50と、を備える。
【0017】
光送信装置10は、複数の送信器(TX)11および合波器12を有し、各送信器11から出力される波長の異なる光信号を合波器12で波長多重して伝送路20に出力する。各送信器11から出力される光信号の中心波長(周波数)は、例えば100GHz間隔や50GHz間隔などのような非常に狭い波長間隔に対応した所要のグリッド上に配置されている。また、各光信号のスペクトルは、各々の変調方式およびビットレートに対応した形状(スペクトル幅)を有している。例えば、40Gb/sのDPSK変調された光信号の場合には、上述の図14に示したようなスペクトル形状となる。合波器12は、各波長の光信号にそれぞれ対応した透過帯域を有しており、各々の帯域幅が光信号のスペクトル幅よりも狭い場合には、各光信号を合波する際に各々のスペクトル幅を制限することになるので、帯域制限デバイスの一つとなり得る。
【0018】
伝送路20上の帯域制限デバイス30は、例えば、伝送路20上の所要のノードにおいて、WDM光に含まれる各波長の光信号に対する分散補償等の処理を各々の波長毎に行う場合に使用される分波器および合波器や、WDM光に対して光アドドロップまたは光クロスコネクトの処理を行う場合に使用される光スイッチなどが該当する。このような帯域制限デバイス30は、WDM光に含まれる各波長の光信号にそれぞれ対応した透過帯域の幅が光信号のスペクトル幅よりも狭くなっており、所要の処理を行う際に各光信号のスペクトル幅を制限する。例えば、40Gb/sのDPSK変調された光信号が帯域制限デバイス30で処理された場合、処理後の光信号は、上述の図16に示したような側波帯成分が減衰されたスペクトル形状となる。上記のような帯域制限デバイス30は、伝送路20上に一つだけでなく複数存在する可能性がある。伝送路20上に複数の帯域制限デバイス30が配置されている場合、伝送路20を伝搬して光受信装置40に到達するWDM光に含まれる各波長の光信号は、複数の帯域制限デバイス30のトータルのフィルタ特性に応じて、各々のスペクトル幅が制限されることになる。
【0019】
光受信装置40は、分波器41および複数の受信器(RX)42を有し、伝送路20からのWDM光を分波器41で各波長の光信号に分波し、各々に対応した受信器42において光信号の受信処理を行う。分波器41は、各波長の光信号にそれぞれ対応した透過帯域を有しており、各々の帯域幅が光信号のスペクトル幅よりも狭い場合には、WDM光を分波する際に各光信号のスペクトル幅を制限することになるので、帯域制限デバイスの一つとなり得る。各受信器42は、光信号のビットレートおよび変調方式に対応した一般的な受信処理を実行する。
【0020】
スペクトル補正用光フィルタ50は、光送信装置10から伝送路20に送信されるWDM光に含まれる各光信号の波長間隔に対応した周期で透過率が変化するフィルタ特性(透過波長特性)を備えている。この周期的なフィルタ特性は、透過率が極小になる損失ピークの中心波長と、WDM光の各光信号の中心波長とが実質的に一致するように最適化されている。上記のようなスペクトル補正用光フィルタ50としては、例えば、エタロン(ファブリ・ペロー共振器)のような周期フィルタを用いることもできる。また例えば、ファイバブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating:FBG)や、アレイ導波路格子(Arrayed Waveguide Grating:AWG)、音響光学可変フィルタ(Acousto-Optic Tunable Filter:AOTF)などを利用して上記エタロンと同等の機能を実現することも可能である。
【0021】
具体的に、エタロンを用いたスペクトル補正用光フィルタ50の構成例を図2に示す。この構成例では、WDM光に対して透明な平板51の対向する平行平面に、反射率Rを有する部分反射膜52A,52Bをそれぞれ成膜することによりエタロンが形成されている。このエタロンを用いたスペクトル補正用光フィルタ50には、WDM光が一方の部分反射膜52A側から平板51内に入射され、該入射光が部分反射膜52A,52B間で多重反射される際にその一部が他方の部分反射膜52B側から平板51外に出射される。これにより、部分反射膜52A,52B間の距離(平板51の厚さ)dおよび平板51の屈折率nに応じて透過率(または損失)が周期的に変化する波長特性が実現される。
【0022】
このエタロンの周期的なフィルタ特性は、部分反射膜52Aに対して光が垂直に入射される場合、隣り合う透過(損失)ピークの周波数間隔を示すフリースペクトラルレンジ(Free Spectral Range:FSR)が次の(1)式で表される。
【数1】

【0023】
また、上記フィルタ特性は、部分反射膜52A,52Bの反射率Rが大きくなる程、周期的に繰り返される各透過(損失)ピークの振幅が大きくなる。1つのピークの半値全幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)に対するFSRの比によってピークの鋭さを表したフィネス(Finess)は、部分反射膜52A,52Bの反射率Rを用いると、次の(2)式に示すような関係となる。
【数2】

【0024】
図3は、上記エタロンの周期的なフィルタ特性(周波数に対する透過率の関係)を部分反射膜52A,52Bの反射率Rに応じて示した一例である。このように部分反射膜52A,52Bの反射率Rが相対的に大きくなると、透過ピークが鋭くなり、フィネスの値が大きくなる。
【0025】
上記のようなエタロンの周期的なフィルタ特性を利用してスペクトル補正用光フィルタ50を実現するためには、WDM光の各光信号の中心波長とエタロンの損失ピークの中心波長とが実質的に一致するように、エタロンの平板51の厚さdおよび屈折率nを最適設計しておくと共に、帯域制限デバイス30により各光信号が受ける帯域制限の度合に応じてエタロンの部分反射膜52A,52Bの反射率Rを最適設計しておけばよい。
【0026】
次に、本実施形態のWDM光伝送システムにおける動作について説明する。
上記のような構成のWDM光伝送システムでは、光送信装置10の各送信器11から出力される光信号が合波器12で合波されてWDM光が生成され、該WDM光が伝送路20に出力される。伝送路20に送信されたWDM光は、ここでは先ずスペクトル補正用光フィルタ50に与えられる。スペクトル補正用光フィルタ50では、その周期的なフィルタ特性に従って、WDM光に含まれる各光信号の中心波長およびその近傍に対応したスペクトル成分が選択的に減衰される。これにより、スペクトル補正用光フィルタ50を通過したWDM光は、各波長の光信号のスペクトルにおける側波帯成分がスペクトル補正用光フィルタ50を通過する前に比べて強調されるようになる。つまり、WDM光がスペクトル補正用光フィルタ50を通過することにより、各波長の光信号のスペクトルにおける側波帯成分の相対的な強度が増加することになる。
【0027】
例えば、スペクトル補正用光フィルタ50に入力されるWDM光が上述の図14に示したような40Gb/sのDPSK変調された光信号を含む場合、該光信号のスペクトルは、スペクトル補正用光フィルタ50を通過することにより、図4の太線に示すような形状に変化する。この図4の例では、スペクトル補正用光フィルタ50の透過率の周波数特性が細線で示されており、光信号の中心周波数fcにおいて透過率が極小になるピーク(損失ピーク)が存在している。この損失ピークの半値全幅をWとすると、該半値全幅Wは、光信号のビットレートに対応した周波数fmよりも広く、かつ、fmの2倍よりも狭くなる(fm<W<2・fm)ようにするのが好ましい。すなわち、スペクトル補正用光フィルタ50に入力されるDPSK光信号のスペクトル(破線)は、中心周波数fcにおいて光パワーが最大になり、該最大ピークから高周波側および低周波側にfmだけ離れた周波数fc±fmにおいて光パワーが極大になるピーク(側波帯ピーク)が存在している。このような光信号のスペクトルにおける側波帯成分を効果的に強調するためには、上記2つの側波帯ピーク周辺の周波数成分を強調するのがよい。これを考慮すると、スペクトル補正用光フィルタ50の損失ピークの半値全幅をfm<W<2・fmの範囲として、上記2つの側波帯ピークの間のスペクトル成分を選択的に減衰させるようにするのが有効である。
【0028】
また、光信号の中心周波数fcに対応したスペクトル補正用光フィルタ50の損失ピークの深さに関しては、当該光信号が伝送路20上の帯域制限デバイス30によって受ける帯域制限が厳しくなる程、損失ピークを深くして側波帯成分の相対的な強調度合が大きくなるようにする。なお、損失ピークの深さの最適化は、前述したようにエタロンを用いてスペクトル補正用光フィルタ50を実現した場合、部分反射膜52A,52Bの反射率Rを調整して行われる。また、光送信装置10の合波器12または光受信装置40の分波器41においても光信号が帯域制限を受ける場合には、その影響を伝送路20上の帯域制限デバイス30による帯域制限に含めて、損失ピークの深さを決めるようにするのがよい。
【0029】
上記のようなスペクトル補正用光フィルタ50を通過したWDM光は、伝送路20上に配置された帯域制限デバイス30を通過する際に帯域制限を受けながら光受信装置40まで伝送されることになるが、各波長の光信号のスペクトルにおける側波帯成分の相対的な強度が、スペクトル補正用光フィルタ50により事前に増加されているので、帯域制限デバイス30での側波帯成分の減衰に対する耐力が大きくなる。光受信装置40に到達したWDM光は、分波器41で各波長の光信号に分波された後、各々に対応した受信器42で受信処理される。
【0030】
各受信器42での光信号の受信特性は、該光信号のスペクトルの側波帯成分が帯域制限デバイス30により減衰されていても、中心波長近傍のスペクトル成分に対する側波帯成分の割合の変化が、スペクトル補正用光フィルタ50を設けていない従来のシステム構成に比べて抑えられているので、良好なものとなる。
【0031】
上記のようなスペクトル補正用光フィルタ50による伝送特性の改善効果について、パーシャルDPSK(PDPSK)方式を採用した場合のシミュレーション結果を用いて具体的に説明する。
【0032】
図5は、本実施形態に関するシミュレーションにおける計算モデルの概略を示した図である。なお、上述の図17に示した従来システムに関するシミュレーションの計算モデルと同じ部分には同一の符号を付してここでの説明を省略することにする。
【0033】
図5に示す計算モデルが上述した図17の場合と異なる点は、光送信部110および光受信部140の間を接続する伝送路120上に、上記スペクトル補正用光フィルタ50に相当するエタロン150が挿入されている点である。この計算モデルでは、図1における、光送信装置10内の任意の送信器11が光送信部110に相当し、光信号の伝搬経路上に存在する帯域制限デバイス(具体的には、光送信装置10内の合波器12、伝送路20上の帯域制限デバイス30、光受信装置40内の分波器41)がバンドパスフィルタ(1次ガウス型フィルタ)133に相当し、光受信装置40内の任意の受信器42が光受信部140に相当している。
【0034】
図6は、図5の計算モデルにおいて、バンドパスフィルタ133の3dB帯域幅を26GHzとした場合に、エタロン150のフリースペクトラルレンジ(FSR)と反射率を変化させたときのQ値の計算結果を示したものである。ただし、ここではOSNRを18dB(分解能0.5nm)とし、エタロン150のフィルタ特性としては透過率(損失)だけでなく分散(位相)の周波数特性も考慮して計算を行っている。
【0035】
図6の計算結果より、エタロン150のFSRと反射率を適切に選択することにより、反射率が0のときに相当するエタロン150を設けていない場合と比較して、3dB程度のQ値改善が実現できることが分かる。例えば、エタロン150のFSRとして50GHzを選択した場合(FSR50)に注目すると、エタロン150の平行平面での反射率を30%付近にすることでQ値が約16dBになる。反射率を0%としたときのQ値が約13dBであるので、最適化されたエタロン150の挿入によってQ値は約3dB改善している。
【0036】
図7は、図5の計算モデルにおいて、バンドパスフィルタ133の3dB帯域幅を26GHzとした場合のOSNRとBERの関係を示しており、図中の実線がエタロン150のFSRを50GHz、反射率を30%とした場合の計算結果、破線がエタロン150の反射率を0%とした場合(光信号のスペクトル補正を行わなかった場合)の計算結果である。図7の計算結果より、PDPSK方式を採用したシステムにおいて、最適化されたエタロン150を用いて光信号のスペクトル補正を行うことにより、バンドパスフィルタ133の帯域幅が狭くなっても、OSNRの増大(改善)と伴にBERの値も顕著に低下するようになり、スペクトル補正を行わなかった場合と比べるとBERが大幅に改善し、良好な伝送特性を実現できるようになることが分かる。
【0037】
図8は、図5の計算モデルにおいて、エタロン150のFSRを50GHz、反射率を30%として、バンドパスフィルタ133の3dB帯域幅を37GHz,26GHzおよび21GHzと変化させた場合のOSNRとBERの関係を求めた計算結果である。上述した図18との比較から明らかなように、最適化されたエタロン150を用いて光信号のスペクトル補正を行うことにより、バンドパスフィルタ133の3通りの帯域幅の全てにおいてBERの改善が可能になっている。
【0038】
上記のように本実施形態のWDM光伝送システムによれば、WDM光に含まれる各波長の光信号について、各々の中心波長およびその近傍のスペクトル成分をスペクトル補正用光フィルタ50により選択的に減衰させて、各光信号のスペクトルにおける側波帯成分の強度を相対的に増加させた状態で、当該WDM光の伝送を行うようにしたことによって、帯域制限デバイス30における各光信号に対する帯域制限が厳しくなったとしても、側波帯成分の減衰に起因した伝送特性の劣化を軽減することができる。これにより、高ビットレートかつ高波長密度なWDM光の伝送をエラーの少ない良好な伝送特性により実現することが可能になる。
【0039】
なお、上記実施形態では、スペクトル補正用光フィルタ50が光送信装置10の出力端付近の伝送路20上に配置される一例を示したが、伝送路20上の任意の位置にスペクトル補正用光フィルタ50を配置しても上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。また、伝送路20上の任意の複数の場所(例えば、伝送路20上に複数の帯域制限デバイスが存在する場合、各々の帯域制限デバイスに対応した場所など)にスペクトル補正用光フィルタを配置し、各波長の光信号に対するスペクトル補正を光送信装置10および光受信装置40の間で分散させて行うようにすることも可能である。
【0040】
さらに、周期的なフィルタ特性を有するスペクトル補正用光フィルタ50を用いて、WDM光の各波長の光信号に対するスペクトル補正を一括して行う構成例について説明したが、例えば図9に示すように、光送信装置10内の複数の送信器11−1〜11−Nの各出力端にスペクトル補正用光フィルタ50−1〜50−Nをそれぞれ設け、各波長の光信号に対するスペクトル補正を個別に行うようにしてもよい。この場合、各スペクトル補正用光フィルタ50−1〜50−Nのフィルタ特性は、各送信器11−1〜11−Nから出力される光信号の中心波長(周波数)に一致した単一の損失ピークを有していればよいので、上述したエタロン等の周期フィルタに加えて、周期性のないノッチフィルタを利用することも可能になる。これと同様にして、例えば図10に示すように、光受信装置40内の各波長に対応した受信器42−1〜42−Nの入力端にスペクトル補正用光フィルタ50−1〜50−Nをそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0041】
また、上記図10の構成例のように、受信端において波長毎にスペクトル補正を行うようにした場合には、各スペクトル補正用光フィルタ50−1〜50−Nとしてフィルタ特性が可変なものを適用し、各受信器42−1〜42−Nで得られる誤り率などの伝送特性に関する情報に基づいて、対応するスペクトル補正用光フィルタのフィルタ特性を制御回路(CONT)43−1〜43−Nによりフィードバック制御するようにしてもよい。
【0042】
図11は、可変のフィルタ特性を有するスペクトル補正用光フィルタの構成例を示している。この例では、上述の図2に示したエタロンの部分反射膜52A,52Bに代えて、反射率に分布を持たせた部分反射膜53A,53Bが平板51の平行平面に形成されている。このエタロンは、図示を省略したアクチュエータ等により、その配置が反射率の分布方向に制御される。これにより、部分反射膜53Aに対して略垂直に入射される光信号の位置が制御され、該入射位置に応じて反射率が切り替わり、エタロンのフィルタ特性(フィネス)が変化するようになる。
【0043】
上記のようにフィルタ特性を可変にしたエタロンの配置が、受信器42−1〜42−Nからの誤り率などの情報に基づいて制御回路43−1〜43−Nによりフィードバック制御されることによって、例えば、帯域制限デバイス30のフィルタ特性の時間的変動などにより光信号が受ける帯域制限の状態が変化するような場合にも、該変化に追随して最適なスペクトル補正を行うことが可能になる。このようなスペクトル補正用光フィルタのフィルタ特性の可変制御は、上述の図13に示したような光ネットワークに本発明が適用され、伝送経路の切り替えが行われることで光信号が通過する帯域制限デバイスの数が変化するような場合に非常に有効である。
【0044】
さらに、スペクトル補正用光フィルタのフィルタ特性の制御に関連して、本発明では、スペクトル補正用光フィルタにおける損失ピークの中心波長が、該スペクトル補正用光フィルタに入力される光信号の中心波長に一致していることが重要になる。この点に着目すると、例えば図12に示すように、スペクトル補正用光フィルタ50からの出力光の一部を分岐器61で分岐して当該光パワーを受光器62で検出し、その検出パワーが最小になるように、制御回路(CONT)63によりスペクトル補正用光フィルタ50の温度等を制御してフィルタ特性を最適化するようにしてもよい。スペクトル補正用光フィルタ50の損失ピークの中心波長と光信号の中心波長とにズレが生じていると、受光器62で検出される光パワーが増加するので、受光器62での検出パワーを最小にする制御を行うことにより、損失ピークの中心波長と光信号の中心波長とが常時一致するようになる。これにより、光信号のスペクトル補正をより高い精度で行うことができ、該光信号のスペクトルにおける側波帯成分の相対的な強度を確実に増加させることが可能になる。
【0045】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 波長の異なる複数の光信号を含むWDM光が伝搬する伝送路上に少なくとも1つの帯域制限デバイスが配置され、前記WDM光が前記帯域制限デバイスを通過する際に各波長の光信号のスペクトル幅が制限されるWDM光伝送システムにおけるWDM光の伝送方法であって、
前記WDM光に含まれる各波長の光信号について、各々の中心波長およびその近傍のスペクトル成分を選択的に減衰させることにより、該各光信号のスペクトルにおける側波帯成分の相対的な強度を増加させるスペクトル補正を行うことを特徴とするWDM光の伝送方法。
【0046】
(付記2) 波長の異なる複数の光信号を含むWDM光が伝搬する伝送路と、該伝送路上に配置された少なくとも1つの帯域制限デバイスと、を備え、前記WDM光が前記帯域制限デバイスを通過する際に各波長の光信号のスペクトル幅が制限されるWDM光伝送システムであって、
前記WDM光に含まれる各波長の光信号について、各々の中心波長およびその近傍のスペクトル成分を選択的に減衰させることが可能な透過波長特性を有するスペクトル補正用光フィルタを備え、
前記WDM光の各波長の光信号が前記スペクトル補正用光フィルタを通過することにより、該各光信号のスペクトルにおける側波帯成分の相対的な強度を増加させるスペクトル補正が行われることを特徴とするWDM光伝送システム。
【0047】
(付記3) 付記2に記載のWDM光伝送システムであって、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記各光信号の中心波長にそれぞれ一致した波長で透過率が極小になる複数の損失ピークが存在する透過波長特性を有することを特徴とするWDM光伝送システム。
【0048】
(付記4) 付記3に記載のWDM光伝送システムであって、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記各損失ピークの半値全幅が、前記各光信号のビットレートに対応した周波数よりも広く、かつ、該周波数の2倍よりも狭いことを特徴とするWDM光伝送システム。
【0049】
(付記5) 付記3または4に記載のWDM光伝送システムであって、
前記WDM光は、前記各光信号が所定の波長間隔で配置されており、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記伝送路上に、前記WDM光の波長間隔に対応した周期で透過率が変化する周期フィルタを配置して構成されることを特徴とするWDM光伝送システム。
【0050】
(付記6) 付記5に記載のWDM光伝送システムであって、
前記周期フィルタは、エタロンであることを特徴とするWDM光伝送システム。
【0051】
(付記7) 付記3または4に記載のWDM光伝送システムであって、
出力波長が互いに異なる複数の送信器および該各送信器から出力される光信号を合波する合波器を有する光送信装置を備え、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記光送信装置内の各送信器の出力端にそれぞれ設けられ、各波長の光信号に対するスペクトル補正を個別に行うことを特徴とするWDM光伝送システム。
【0052】
(付記8) 付記3または4に記載のWDM光伝送システムであって、
前記伝送路を伝送されてきたWDM光を各波長の光信号に分波する分波器および該分波器から出力される各波長の光信号を受信処理する複数の受信器を有する光受信装置を備え、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記光受信装置内の各受信器の入力端にそれぞれ設けられ、各波長の光信号に対するスペクトル補正を個別に行うことを特徴とするWDM光伝送システム。
【0053】
(付記9) 付記8に記載のWDM光伝送システムであって、
前記スペクトル補正用光フィルタは、透過波長特性が可変であり、
前記各受信器で得られる伝送特性に関する情報に基づいて、前記スペクトル補正用光フィルタの透過波長特性を制御する制御部を備えたことを特徴とするWDM光伝送システム。
【0054】
(付記10) 付記2〜8のいずれか1つに記載のWDM光伝送システムであって、
前記スペクトル補正用光フィルタは、透過波長特性が可変であり、
前記スペクトル補正用光フィルタからの出力光のパワーを検出するパワー検出部と、
前記パワー検出部での検出パワーが最小になるように前記スペクトル補正用光フィルタの透過波長特性を制御する制御部と、を備えたことを特徴とするWDM光伝送システム。
【0055】
(付記11) 付記2〜10のいずれか1つに記載のWDM光伝送システムであって、
前記伝送路上に前記帯域制限デバイスが複数配置されているとき、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記各帯域制限デバイスにそれぞれ対応させて前記伝送路上に複数設けられることを特徴とするWDM光伝送システム。
【0056】
(付記12) 付記2〜11のいずれか1つに記載のWDM光伝送システムであって、
前記帯域制限デバイスは、前記各波長の光信号を合波する合波器、前記WDM光を分波する分波器、および、光アドドロップまたは光クロスコネクトの処理に用いられる光スイッチのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするWDM光伝送システム。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明によるWDM光伝送システムの一実施形態の構成を示す図である。
【図2】上記実施形態におけるスペクトル補正用光フィルタの構成例を示す図である。
【図3】エタロンのフィルタ特性を説明する図である。
【図4】上記実施形態においてスペクトル補正用光フィルタを通過した光信号のスペクトルの一例を示す図である。
【図5】上記実施形態に関するシミュレーションにおける計算モデルの概略を示した図である。
【図6】図5の計算モデルにおいてエタロンのFSRと反射率を変化させてQ値を計算した結果を示す図である。
【図7】図5の計算モデルにおけるOSNRとBERの関係を計算した結果を示す図である。
【図8】図5の計算モデルにおけるOSNRとBERの関係をエタロンのFSRを変化させて計算した結果を示す図である。
【図9】上記実施形態に関連し、スペクトル補正用光フィルタを光送信装置内に設けた場合の構成例を示す図である。
【図10】上記実施形態に関連し、スペクトル補正用光フィルタを光受信装置内に設けた場合の構成例を示す図である。
【図11】可変のフィルタ特性を有するスペクトル補正用光フィルタの構成例を示す図である。
【図12】スペクトル補正用光フィルタのフィルタ特性の制御に関する応用例を示す図である。
【図13】全光ネットワークの一例を示す図である。
【図14】40Gb/sのDPSK光信号のスペクトルを示す図である。
【図15】40GHzの3dB帯域幅を有するバンドパスフィルタの特性を示す図である。
【図16】図15のバンドパスフィルタを通過したDPSK光信号のスペクトルを示す図である。
【図17】PDPSK方式を採用したWDM光伝送システムに関するシミュレーションにおける計算モデルの概略を示した図である。
【図18】図17の計算モデルにおいて、バンドパスフィルタの3dB帯域幅を変化させてOSNRとBERの関係を計算した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10…光送信装置
11…送信器
12…合波器
20…伝送路
30…帯域制限デバイス
40…光受信装置
41…分波器
42…受信器
43,63…制御回路
50…スペクトル補正用光フィルタ
51…平板
52A,52B,53A,53B…部分反射膜
61…分岐器
62…受光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なる複数の光信号を含むWDM光が伝搬する伝送路上に少なくとも1つの帯域制限デバイスが配置され、前記WDM光が前記帯域制限デバイスを通過する際に各波長の光信号のスペクトル幅が制限されるWDM光伝送システムにおけるWDM光の伝送方法であって、
前記WDM光に含まれる各波長の光信号について、各々の中心波長およびその近傍のスペクトル成分を選択的に減衰させることにより、該各光信号のスペクトルにおける側波帯成分の相対的な強度を増加させるスペクトル補正を行うことを特徴とするWDM光の伝送方法。
【請求項2】
波長の異なる複数の光信号を含むWDM光が伝搬する伝送路と、該伝送路上に配置された少なくとも1つの帯域制限デバイスと、を備え、前記WDM光が前記帯域制限デバイスを通過する際に各波長の光信号のスペクトル幅が制限されるWDM光伝送システムであって、
前記WDM光に含まれる各波長の光信号について、各々の中心波長およびその近傍のスペクトル成分を選択的に減衰させることが可能な透過波長特性を有するスペクトル補正用光フィルタを備え、
前記WDM光の各波長の光信号が前記スペクトル補正用光フィルタを通過することにより、該各光信号のスペクトルにおける側波帯成分の相対的な強度を増加させるスペクトル補正が行われることを特徴とするWDM光伝送システム。
【請求項3】
請求項2に記載のWDM光伝送システムであって、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記各光信号の中心波長にそれぞれ一致した波長で透過率が極小になる複数の損失ピークが存在する透過波長特性を有することを特徴とするWDM光伝送システム。
【請求項4】
請求項3に記載のWDM光伝送システムであって、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記各損失ピークの半値全幅が、前記各光信号のビットレートに対応した周波数よりも広く、かつ、該周波数の2倍よりも狭いことを特徴とするWDM光伝送システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載のWDM光伝送システムであって、
前記WDM光は、前記各光信号が所定の波長間隔で配置されており、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記伝送路上に、前記WDM光の波長間隔に対応した周期で透過率が変化する周期フィルタを配置して構成されることを特徴とするWDM光伝送システム。
【請求項6】
請求項5に記載のWDM光伝送システムであって、
前記周期フィルタは、エタロンであることを特徴とするWDM光伝送システム。
【請求項7】
請求項3または4に記載のWDM光伝送システムであって、
出力波長が互いに異なる複数の送信器および該各送信器から出力される光信号を合波する合波器を有する光送信装置を備え、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記光送信装置内の各送信器の出力端にそれぞれ設けられ、各波長の光信号に対するスペクトル補正を個別に行うことを特徴とするWDM光伝送システム。
【請求項8】
請求項3または4に記載のWDM光伝送システムであって、
前記伝送路を伝送されてきたWDM光を各波長の光信号に分波する分波器および該分波器から出力される各波長の光信号を受信処理する複数の受信器を有する光受信装置を備え、
前記スペクトル補正用光フィルタは、前記光受信装置内の各受信器の入力端にそれぞれ設けられ、各波長の光信号に対するスペクトル補正を個別に行うことを特徴とするWDM光伝送システム。
【請求項9】
請求項8に記載のWDM光伝送システムであって、
前記スペクトル補正用光フィルタは、透過波長特性が可変であり、
前記各受信器で得られる伝送特性に関する情報に基づいて、前記スペクトル補正用光フィルタの透過波長特性を制御する制御部を備えたことを特徴とするWDM光伝送システム。
【請求項10】
請求項2〜8のいずれか1つに記載のWDM光伝送システムであって、
前記スペクトル補正用光フィルタは、透過波長特性が可変であり、
前記スペクトル補正用光フィルタからの出力光のパワーを検出するパワー検出部と、
前記パワー検出部での検出パワーが最小になるように前記スペクトル補正用光フィルタの透過波長特性を制御する制御部と、を備えたことを特徴とするWDM光伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−147532(P2010−147532A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319372(P2008−319372)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】