説明

α−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法およびα−オレフィン重合用触媒

【課題】立体規則性、触媒活性などの触媒性能全般の改良とともに、α−オレフィン製造プロセスの生産性を損なうことなく、重合ポリマー粒子についての所望の平均粒径・粒度分布を得るべく、触媒の平均粒径・粒度分布などを制御する触媒成分の製造方法を提供する。
【解決手段】マグネシウム化合物とチタン化合物を溶質として含む溶液を、少なくとも1以上の攪拌機と1以上のバッフルを備えた攪拌槽にて、析出剤により粒子析出した後、さらに、ハロゲン化合物で処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法およびα−オレフィン重合用触媒に関するものであり、更に詳しくは、立体規則性などの基本性能を高レベルにて維持したままで、触媒の平均粒径・粒度分布などを所望の範囲内において制御し得るα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法およびα−オレフィン重合用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンは、産業資材として最も重要なプラスチック材料であり、フィルムやシートとして包装材料及び電気材料などに、成形品として自動車部材や家電製品などの工業材料に、さらに、繊維材料や建築材料などの各種の用途に広範に汎用されている。
このように利用用途が非常に広く多岐にわたるために、ポリオレフィンにおいては、それらの用途面から、多種の性質においての改良向上が求め続けられ、それらの要望に応じるために、主として重合触媒の改良による技術開発が展開されてきた。
遷移金属化合物と有機金属化合物を利用したチーグラー系の触媒により、オレフィンの重合活性が非常に高められて、工業生産が実現化された。その後に、分子量分布による重合体の物性の改善やα−オレフィンの立体規則性の向上をはじめ、多種の性能の改良がなされている。
【0003】
α−オレフィン重合用触媒改良法として、具体的には、マグネシウム化合物を触媒担体として、チタン及びハロゲンを必須成分として、含有する固体触媒成分を使用した触媒が開発され、さらに、電子供与性化合物を使用して触媒活性と立体規則性を高めた触媒(例えば、特許文献1〜3参照。)が開発され、その後には、特定の有機ケイ素化合物を新たに触媒成分に付加して、さらに、触媒活性や立体規則性の向上をはかる提案もなされている(例えば、特許文献4、5参照。)。
また、特定の有機ケイ素化合物の他に、ビニル基やアリル基のようなアルケニル基を有する特殊な構造のケイ素化合物を併用することにより、触媒活性や立体規則性がさらに向上し、分子量調節剤として用いられる水素のレスポンスが良化するなどの性能向上も提案されている(例えば、特許文献6〜8参照。)。
さらに、ケイ素化合物以外の電子供与体を利用する提案として、フラン化合物及びその誘導体を共存させ、水素応答性や活性を改良する技術(特許文献9、10参照。)や、特定の触媒系に対して、エーテル化合物を電子供与体として用いることにより、触媒活性を向上させる技術(特許文献11、12参照。)、あるいはマグネシウム化合物とチタン化合物、及びカルボン酸誘導体からなる均一な溶液をポリマーケイ素化合物で析出し、更にハロゲン化合物で処理することにより、より活性種チタンが高分散され、触媒活性の向上を特定の触媒系に対して実現した改良技術(特許文献13参照。)が、開示されている。
【0004】
α−オレフィン製造プロセスに関しても、工程の簡略化と生産コストの低減及び生産性の向上などの観点から、技術改良が続けられてきた。α−オレフィン重合法としては、炭化水素溶媒を用いるスラリー重合法、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合法または気相重合法が列挙される。
ポリプロピレン重合法について例示すると、当初工業化がなされたのは、炭化水素溶媒を用いたスラリー重合法であった。同重合法は、炭化水素溶媒の回収・蒸留精製、触媒残さの抽出分離やアタクチックポリマーを除去する工程など、エネルギーコスト、装置コスト上、高いプロセスといえる。その後、触媒性能の向上、とりわけ触媒活性の飛躍的な向上とともに、プロセスの無脱触化も進展してきた。
【0005】
現在では、ポリプロピレン製造プロセスの主流は、装置・操業コスト両面で優位な液相無溶媒重合法、気相重合法の各重合槽を組み合わせたプロセスが主流となっている。各プロセスにおいても、重合反応工程における重合ポリマーの反応槽内混合や重合反応槽を含む装置間の重合ポリマー移送工程、回収溶媒・未反応モノマーと重合ポリマー粒子分離工程など炭化水素溶媒と重合ポリマー粒子、プロピレン気・液と重合ポリマー粒子との分離において、重合ポリマーの平均粒径や粗粉・微粉含率低減を含めた粒度分布制御は、プロセスの生産性に直結する。そして、適切な制御がなされない場合には、例えば、重合ポリマー微粉含率部分の増加にともなう気・液分離工程の処理負荷増に伴うエネルギー効率低下や、最悪は閉塞などによるプロセス全体の停止などに至りうる。
【0006】
本発明者などが知る限りでは、いずれの触媒系においても、触媒粒子形成過程で触媒平均粒径、粒度分布などの制御を行うことにより、生成する重合ポリマーについても、所望の平均粒径や粒度分布を得る試みがなされている。触媒の改良に伴う、重合ポリマーの立体規則性改良、活性向上によって得られる触媒コスト削減とともに、触媒の平均粒径などの制御を組み合わせ、ポリプロピレン製造プロセスの生産性を損なうことなく、改良技術開発を進めることは、普遍的課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−138706号公報
【特許文献2】特開昭57−59909号公報
【特許文献3】特開平03−149204公報
【特許文献4】特開昭62−187707号公報
【特許文献5】特開昭61−171715号公報
【特許文献6】特開平03−2234707号公報
【特許文献7】特開平07−2923号公報
【特許文献8】特開2006−169283号公報
【特許文献9】特開2002−249507号公報
【特許文献10】特開2007−119514号公報
【特許文献11】特開2003−105019号公報
【特許文献12】特開2003−261612号公報
【特許文献13】特開2008−308558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点や課題に鑑み、立体規則性、触媒活性などの触媒性能全般の改良とともに、α−オレフィン製造プロセスの生産性を損なうことなく、重合ポリマー粒子についての所望の平均粒径・粒度分布を得るべく、触媒の平均粒径・粒度分布などを制御する触媒成分の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため、チーグラー触媒やチーグラー触媒の製造方法における各種の固体触媒成分の性質や粒子形成工程での粒度制御技術について、全般的な思考、考察及び探索を実施し、化学工学的見地から、槽内径:Dと反応液深/内径:Lo/D、攪拌装置構成を相似則に基づき、スケールアップ検討も実施し、このことを踏まえ、触媒粒度制御に必要な各種条件を、検証した。
その結果、本発明者は、マグネシウム化合物とチタン化合物などからなる溶液より出発して、析出剤などによる粒子形成過程を経て、固体触媒成分を得る手法において、固体触媒成分析出反応における装置構成要件・混合強度制御・温度制御・圧力制御の選択条件下で、所望の平均粒径・粒度分布の固体触媒成分を得るための、最適な製造方法を見出した。
すなわち、このようにして、本発明者は、活性点となるチタンが高分散化し、高活性や規則性を維持したまま、所望の平均粒径・粒度分布を実現した固体触媒成分、及びα−オレフィン重合用触媒が得られること見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、マグネシウム化合物とチタン化合物を溶質として含む溶液を、少なくとも1以上の攪拌機と1以上のバッフルを備えた攪拌槽にて、析出剤により粒子析出した後、さらに、ハロゲン化合物で処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記析出剤により粒子析出する際に、粒子析出反応を、反応液固スラリー単位容積攪拌動力(Po/V)が0.00001〜2.0KW/Mの範囲で行うことを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記析出剤により粒子析出する際に、粒子析出反応を、反応液固スラリー温度が10〜70℃の範囲で行うことを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記析出剤により粒子析出する際に、粒子析出反応を、反応圧力が常圧〜1.0MPaGの範囲で行うことを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記析出剤が下記の式(1)で表されるポリマーケイ素化合物であることを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法が提供される。
[−Si(H)(R)−O−]q…(1)
(式中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基であり、qは、このポリマーケイ素化合物の25℃における動粘度が1〜100cSt(mm/s)となるような重合度を示す。)
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記ハロゲン化合物は、ハロゲン化ケイ素化合物類及びハロゲン化チタン化合物類からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、前記マグネシウム化合物がハロゲン化マグネシウムであることを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明に係るα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法から得られた固体触媒成分(A1)に、下記の成分(A2)、(A3)および(A4)を接触処理することを特徴とするα−オレフィン重合用触媒成分の製造方法が提供される。
成分(A2):アルケニル基を有するケイ素化合物
成分(A3):下記の式で表される有機ケイ素化合物
3−mSi(OR
(式中、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素原子であり、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
成分(A4):有機アルミニウム化合物
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、成分(A2)のアルケニル基を有するケイ素化合物がビニルシラン化合物であることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒成分の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明に係るα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法から得られた固体触媒成分(A1)または第8若しくは9の発明に係るα−オレフィン重合用触媒成分の製造方法から得られた触媒成分(A)、及び下記成分(B)からなることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒が提供される。
成分(B):有機アルミニウム化合物
さらに、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、前記固体触媒成分(A1)または触媒成分(A)、成分(B)、及び下記成分(C)からなることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒が提供される。
成分(C):有機ケイ素化合物
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、立体規則性、触媒活性などの性能全般の改良とともに製造プロセスの生産性を損なわない平均粒径・粒度分布のα−オレフィン重合用固体触媒成分、およびα−オレフィン重合用固体触媒を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】チーグラー系触媒に関する、本発明の技術内容を理解するためのフローチャート図である。
【図2】従来の触媒製造装置(CASE−#1、バッフル無し)について、理解を助け、明確にするための攪拌槽構成図である。
【図3】本発明に係る触媒製造装置(CASE−#2)について、理解を助け明確にするための攪拌槽構成図である。
【図4】本発明に係る触媒製造装置(CASE−#3)について、理解を助け明確にするための攪拌槽構成図である。
【図5】本発明に係る触媒製造装置(CASE−#4)について、理解を助け明確にするための攪拌槽構成図である。
【図6】本発明に係る触媒製造装置(CASE−#5)について、理解を助け明確にするための攪拌槽構成図である。
【図7】本発明に係る攪拌槽Po/V特性について、理解を助け明確にするための線図である。
【図8】本発明に係る攪拌槽Po/V設定に対しての攪拌槽スケールと攪拌数Nについて、相関の理解を助け明確にするための線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
I.α−オレフィン重合用触媒
本発明においては、α−オレフィン用重合触媒として、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)または触媒成分(A)、及び有機アルミニウム化合物(B)を用いる。
この際、本発明の効果を損なわない範囲で、有機ケイ素化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)などの任意成分を用いることができる。
【0018】
1.α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)
本発明で用いる固体触媒成分(A1)は、マグネシウム化合物とチタン化合物を主成分として溶解させた溶液を、析出剤で析出した後、更にハロゲン化合物で処理してなるものである。また、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分を任意の形態で含んでも良い。以下に各構成成分を詳述する。
【0019】
(1)マグネシウム化合物(A1a)
本発明で用いられるマグネシウム化合物(A1a)としては、任意のものを用いることができる。
その代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物類、ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシマグネシウム化合物類、金属マグネシウム、酸化マグネシウムに代表されるオキシマグネシウム化合物類、水酸化マグネシウムに代表されるヒドロキシマグネシウム化合物類、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物類、ブチルエチルマグネシウムに代表される有機金属マグネシウム化合物類、炭酸マグネシウムやステアリン酸マグネシウムに代表される無機酸及び有機酸のマグネシウム塩化合物類、及びそれらの混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Mg(OEt)Cl2−m;0<m<2などの化合物)、などを用いることができる。この中で好ましいのはハロゲン化マグネシウム化合物類であり、特に好ましくは塩化マグネシウムである。
【0020】
(2)チタン化合物(A1b)
本発明で用いられるチタン化合物(A1b)としては、任意のものを用いることができる。
その代表的な例としては特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることができる。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることができるが、好ましくは4価および3価のチタン化合物、更に好ましくは4価のチタン化合物を用いることが望ましい。
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物類、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)Ti−O−Ti(OBu)に代表されるTi−O−Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物類、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物類、などを挙げることができる。この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい。
また、3価のチタン化合物の具体例としては、三塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類を挙げることができる。三塩化チタンは、水素還元型、金属アルミニウム還元型、金属チタン還元型、有機アルミニウム還元型、など、公知の任意の方法で製造された化合物を用いることができる。
上記のチタン化合物類は、単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記チタン化合物類の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)Cl4−m;0<m<4などの化合物)、また、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(COBu)・TiClなどの化合物)、などを用いることができる。
【0021】
チタン化合物(A1b)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。チタン化合物(A1b)の使用量は、使用するマグネシウム化合物(A1a)の使用量に対して、モル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001〜1,000の範囲内であり、より好ましくは0.001〜100の範囲であり、特に好ましくは0.01〜50の範囲内が望ましい。
【0022】
(3)析出剤(A1c)
本発明で用いる析出剤(A1c)は、マグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)を接触してなる溶液を、還元反応により、マグネシウム化合物とチタン化合物との混合体として粒子析出させる適切な還元能を有するものであれば、任意のものを用いることができる。代表的な例としては、ハロゲン化チタン化合物類、ハロゲン化ケイ素化合物類、塩化水素、ハロゲン含有炭化水素化合物類、Si−H結合を有するシロキサン化合物類(ポリマーケイ素化合物類を含む)、アルミニウム化合物類などである。
【0023】
この中で好ましいのはSi−H結合を有するシロキサン化合物類であり、特に好ましくはポリマーケイ素化合物類である。
ポリマーケイ素化合物類としては、下記一般式(1)で示されるものが挙げられる。
[−Si(H)(R)−O−]q…(1)
(式中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基であり、qは、このポリマーケイ素化合物の25℃における動粘度が1〜100cSt(mm/s)となるような重合度を示す。)
【0024】
上記一般式(1)において、一般的に、直鎖では、両末端がSi−(R)などを取り、環状化合物でもよい。また、重合度qは、分布を持ち、qの選択からモル数あたりの含有Si(H)を変えることが本化合物の還元能を規定することとなる。
具体的な化合物の例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、フェニルハイドロジェンポリシロキサン、シクロヘキシルハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等を挙げることができる。
【0025】
析出剤(A1c)として、ポリマーケイ素化合物類を選択する場合も、使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
析出剤(A1c)としてのポリマーケイ素化合物は、使用するマグネシウム化合物(A1a)の使用量に対して、モル比(ポリマーケイ素化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001〜100の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜10の範囲内が望ましい。
【0026】
(4)ハロゲン化合物(A1d)
本発明で用いるハロゲン化合物(A1d)は、マグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)を接触してなる溶液を析出剤(A1c)による還元反応により析出するマグネシウム化合物とチタン化合物の混合粒子を、さらに適切にハロゲン化する機能を有するものであれば、任意のものを用いることができる。
具体的な例として、四塩化ケイ素に代表されるハロゲン化ケイ素化合物類、塩化アルミニウムに代表されるハロゲン化アルミニウム化合物類、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、1,2−ジクロロエタンやベンジルクロライドに代表されるハロゲン化有機化合物類、トリクロロボランに代表されるハロゲン化ボラン化合物類、五塩化リンに代表されるハロゲン化リン化合物類、六塩化タングステンに代表されるハロゲン化タングステン化合物類、五塩化モリブデンに代表されるハロゲン化モリブデン化合物類、などを挙げることができる。これらの化合物は単独で用いるだけでなく、併用することも可能である。この中で特に、四塩化ケイ素、四塩化チタン等が好ましい。
【0027】
ハロゲン化合物(A1d)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。ハロゲン化合物(A1d)の使用量は、使用するマグネシウム化合物(A1a)の使用量に対して、モル比(ハロゲン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1〜100の範囲内が望ましい。
【0028】
(5)電子供与体(A1e)
固体触媒成分(A1)は、任意成分として電子供与体(A1e)を、本発明の効果を損なわない範囲で任意の形態で含有してもよい。
本発明で用いられる電子供与体(A1e)の代表的な例として、カルボン酸誘導体が挙げられる。カルボン酸誘導体の例としては、一般的にカルボン酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミドなどである。また、カルボン酸誘導体とは、カルボン酸化合物であってもよい。
カルボン酸誘導体として用いることのできるカルボン酸化合物としては、フタル酸に代表される芳香族多価カルボン酸化合物類、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物類、2−n−ブチル−マロン酸の様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸や2−n−ブチル−コハク酸の様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物類、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物類などを例示することができる。
これらのカルボン酸化合物類は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
【0029】
また、カルボン酸誘導体としては、上記カルボン酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミドなどを例示することができる。
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることができる。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1〜20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2〜12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いることもできる。
また、酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることができる。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のポリハライドの場合は複数のハロゲンが同一であっても異なっていても良い。
アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることができる。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示することができる。
【0030】
また、カルボン酸誘導体として用いることのできる化合物として、複数の官能基を同一分子内に含有する化合物を用いることもできる。その様な化合物の例として、酢酸−(2−エトキシエチル)や3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルに代表されるアルコシ基を分子内に有するエステル化合物類、2−ベンゾイル−安息香酸エチルに代表されるケトエステル化合物類などを挙げることができる。
これらのカルボン酸誘導体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。これらの中で好ましいのは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類などである。
【0031】
カルボン酸誘導体以外の電子供与体(A1e)の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類などを用いることが望ましい。
電子供与体(A1e)として用いることのできる有機酸化合物としては、ベンゼンスルホン酸やメタンスルホン酸に代表される芳香族及び脂肪族のスルホン酸化合物類であり、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
電子供与体(A1e)として用いることのできる有機酸の誘導体化合物としては、上記有機酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミド、などを例示することができる。
電子供与体(A1e)として用いることのできる無機酸化合物としては、炭酸、リン酸、ケイ酸、硫酸、硝酸、などを例示することができる。これらの無機酸の誘導体化合物としては、エステルを用いることが望ましい。テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラブトキシシラン(ケイ酸ブチル)、などを具体例として挙げることができる。
【0032】
電子供与体(A1e)として用いることのできるエーテル化合物としては、ジブチルエーテルに代表される脂肪族エーテル化合物類、ジフェニルエーテルに代表される芳香族エーテル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、に代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などを例示することができる。
電子供与体(A1e)として用いることのできるケトン化合物としては、メチルエチルケトンに代表される脂肪族ケトン化合物類、アセトフェノンに代表される芳香族ケトン化合物類、2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオンに代表される多価ケトン化合物類、などを例示することができる。
電子供与体(A1e)として用いることのできるアルデヒド化合物としては、プロピオンアルデヒドに代表される脂肪族アルデヒド化合物類、ベンズアルデヒドに代表される芳香族アルデヒド化合物類、などを例示することができる。
電子供与体(A1e)として用いることのできるアルコール化合物としては、ブタノールや2−エチルヘキサノールに代表される脂肪族アルコール化合物類、フェノール、クレゾールに代表されるフェノール誘導体化合物類、グリセリンや1,1’−ビ−2−ナフトールに代表される脂肪族若しくは芳香族の多価アルコール化合物類、などを例示することができる。
電子供与体(A1e)として用いることのできるアミン化合物としては、ジエチルアミンに代表される脂肪族アミン化合物類、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンに代表される窒素含有脂環式化合物類、アニリンに代表される芳香族アミン化合物類、ピリジンに代表される窒素原子含有芳香族化合物類、1,3−ビス(ジメチルアミノ)−2,2−ジメチルプロパンに代表される多価アミン化合物類、などを例示することができる。
【0033】
また、電子供与体(A1e)として用いることのできる化合物として、上記の複数の官能基を同一分子内に含有する化合物を用いることもできる。その様な化合物の例として、酢酸−(2−エトキシエチル)や3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルに代表されるアルコシ基を分子内に有するエステル化合物類、2−ベンゾイル−安息香酸エチルに代表されるケトエステル化合物類、(1−t−ブチル−2−メトキシエチル)メチルケトンに代表されるケトエーテル化合物類、N,N−ジメチル−2,2−ジメチル−3−メトキシプロピルアミンに代表されるアミノエーテル化合物類、エポキシクロロプロパンに代表されるハロゲノエーテル化合物類、などを挙げることができる。
これらの電子供与体(A1e)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0034】
任意成分として電子供与体(A1e)の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。電子供与体(A1e)使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対してモル比(電子供与体のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001〜10の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜5の範囲内が望ましい。
【0035】
(6)α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)の製造方法
本発明で用いる固体触媒成分(A1)は、マグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)を主成分とする溶液を、適切な還元能を有する析出剤(A1c)で析出した後、更にハロゲン化合物(A1d)で処理してなるものである。
いずれの場合でも、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の成分(A1e)を任意の形態で含んでも良い。
【0036】
マグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)を主成分として溶液を調整する条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることができる。一般的には、次の条件が好ましい。
不活性溶媒を用いないこともあるが、溶解において不活性溶媒を用いても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することができる。また、溶解温度は、−50〜200℃程度であり、好ましくは0〜100℃である。
マグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)の溶解順序に関しては、任意の順序を用いることができる。
マグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)を主成分として溶液は均一であることが好ましい。
【0037】
上記の溶液を適切な還元能を有する析出剤(A1c)と接触させる順序に関しては、酸素を存在させないことが必要であるものの、任意の順序を用いることができる。
接触順序に関しては、任意の順序を用いることができる。すなわち、溶液に析出剤(A1c)を加えてもよいし、析出剤(A1c)に溶液を加えてもよい。
【0038】
析出剤(A1c)を接触させて、マグネシウム化合物とチタン化合物の混合粒子を、還元反応にて形成させるためには、溶液の逐次化学量論を均一化させて粒子核生成を均一化させる観点から、少なくとも1以上の攪拌機を備えた攪拌槽にて、実施することが望ましい。
さらに、析出粒子核は、粒子形成・凝集を重ねて成長していく過程で攪拌槽内での上下方向での混合流が弱いと、重力の影響で反応槽内を下降し、凝集粒子密な沈降層形成をする傾向がある。また、この場合には、反応槽の上部溶液は、析出粒子凝集体が疎な状態になる。その結果、反応槽の上層では、粒子核の形成も衝突・凝集頻度が少なくなる。下層では、沈降層形成により粒子核の形成・供給が乏しくなり、還元による粒子形成・凝集成長反応の均一制御が不十分となる。そのために、得られるマグネシウム化合物とチタン化合物の混合粒子画分・収量の制御不十分となり、未凝集もしくは粗大粒子粒子が許容以上に生成して、粒度分布2山化など顕在化する。
【0039】
従って、攪拌槽内で十分な上下方向混合流を得るためには、少なくとも1以上の攪拌機と1以上のバッフルを備えた攪拌槽にて、実施することが特に望ましい。
その結果、反応における逐次全平均粒子重量濃度に対する、槽内重力方向での規格化最小・最大濃度比aを、0.95<a<1.05に満たして得られるマグネシウム化合物とチタン化合物混合粒子の粒度分布も、適正に制御することが可能となる。更に、得られた混合粒子を、ハロゲン化合物(A1d)で処理して得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)の粒度分布も、適正に制御することが可能となる。
【0040】
また、反応液固スラリー単位容積攪拌動力(Po/V)を制御することにより、粒子核形成も衝突・凝集・離合頻度を調整する。結果として、マグネシウム化合物とチタン化合物混合粒子の平均粒径を制御できる。更に、得られた混合粒子を、ハロゲン化合物(A1d)で処理して得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)の平均粒径も、適正に制御することが可能となる。
反応液固スラリー単位容積攪拌動力(Po/V)は、0.00001KW/M〜1.0KW/M、好ましくは0.0001KW/M〜1.0KW/M、より好ましくは0.001KW/M〜0.5KW/Mの範囲で選択することが望ましい。
【0041】
析出反応温度については、還元反応制御のため、適切な還元能を有する析出剤(A1c)の選択とともに重要である。析出反応温度が適正値に対して低すぎると、溶液の還元反応が十分に促進されず、粒子核形成が進まず、十分なマグネシウム化合物とチタン化合物混合粒子の収量が得られないことがある。一方、析出反応温度が適性値に対して高すぎると、マグネシウム化合物とチタン化合物混合粒子の過還元による変質、ひいてはハロゲン化合物で処理して得られるα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)の活性不良などにつながることがある。
その結果、析出反応温度は、−50〜100℃程度であり、好ましくは10〜70℃、より好ましくは20〜60℃である。
【0042】
析出反応圧力については、酸素を存在させない目的で、反応開始前に不活性ガスの攪拌槽導入加圧をおこなうことがある。また、析出剤としてSi−H結合を有するシロキサン化合物類を選択する場合は、還元反応進行に伴う副生ガス蓄積のため、攪拌槽内の圧力上昇を伴うことがある。定常的な圧力制御のための不活性ガス導入や副生ガス排出は、精密析出反応温度制御のためには避けることが多く、結果的に、反応圧力は、常圧〜加圧条件を粒子品質に影響のない範囲で選択することが多い。
その結果、析出反応圧力は、触媒製造装置・操業効率の適正な範囲で常圧〜1.0MPaG.範囲で選択する。
【0043】
上記の析出した固体成分と、ハロゲン化合物(A1d)や任意の成分(A1e)の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるものの、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることができる。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは−10〜100℃、更に好ましくは0〜70℃、とりわけ好ましくは10℃〜60℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、並びに、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。好ましくは、不活性希釈剤の存在下に、撹拌により接触させる方法を用いることが望ましい。
【0044】
上記の析出した固体成分とハロゲン化合物(A1d)や任意の成分(A1e)の接触順序に関しては、任意の順序を用いることができる。
さらに、固体成分に対して、ハロゲン化合物(A1d)、任意の成分(A1e)は、いずれも、任意の回数接触させることもできる。この際、ハロゲン化合物(A1d)、任意の成分(A1e)のいずれも複数回の接触で用いる化合物がお互いに同一であっても異なっても良い。また、先に各成分の使用量の範囲を示したが、これは1回当たりに接触させる使用量であり、複数回使用するときは、1回の使用量が前述した使用量の範囲内であれば、何回接触させても良い。
固体触媒成分(A1)の調製の際には、中間及び/又は最後に、不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することができる。
【0045】
2.α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)
本発明で用いる重合用固体触媒成分(単に、触媒成分または重合触媒成分ということもある。)(A)は、前述の固体触媒成分(A1)に対して、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、及び有機アルミニウム化合物(A4)を接触させてなるものである。また、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を任意の形態で含んでも良い。以下に各構成成分を詳述する。
【0046】
(1)アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)
本発明に用いられるアルケニル基を有するケイ素化合物(A2)としては、特開平2−34707号公報、特開2003−292522号公報、及び特開2006−169283号公報に開示された化合物等を用いることができる。
これらのアルケニル基を有する化合物は、モノシラン(SiH)の水素原子の少なくとも一つがアルケニル基に、そして残りの水素原子のうちのいくつかが、ハロゲン(好ましくはCl)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12のアルキル基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基)、その他で置き換えられた構造を示すものである。
一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
SiR4−n
(式中、Rは、アルケニル基であり、Rは、水素、ハロゲン、アルキル基またはアルコキシ基であり、nは、1≦n≦4を示す。)
【0047】
式中、Rは、アルケニル基を表し、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基が好ましく、ビニル基、アリル基が特に好ましい。nの値が2以上の場合、複数あるRは、同一であっても異なっても良い。
また、式中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル基またはアルコキシ基を表す。
として用いることのできるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。また、Rがアルキル基である場合は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基である。Rとして用いることのできるアルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
がアルコキシ基である場合は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。Rとして用いることのできるアルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などを用いることが望ましい。
nの値が2以下の場合、複数あるRは、同一であっても異なっても良い。
【0048】
より具体的には、ビニルシラン、メチルビニルシラン、ジメチルビニルシラン、トリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、クロロジメチルビニルシラン、クロロメチルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、クロロジエチルビニルシラン、ジクロロエチルビニルシラン、ジメチルエチルビニルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、トリペンチルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、CH=CH−Si(CH(CCH)、(CH=CH)(CHSi−O−Si(CH(CH=CH)、ジビニルシラン、ジクロロジビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリブロモシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジエチルシラン、ジアリルジビニルシラン、ジアリルメチルビニルシラン、ジアリルメチルクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリアリルエチルシラン、トリアリルビニルシラン、トリアリルクロロシラン、トリアリルブロモシラン、テトラアリルシラン、ジ−3−ブテニルシランジメチルシラン、ジ−3−ブテニルシランジエチルシラン、ジ−3−ブテニルシランジビニルシラン、ジ−3−ブテニルシランメチルビニルシラン、ジ−3−ブテニルシランメチルクロロシラン、ジ−3−ブテニルシランジクロロシラン、ジアリルジブロモシラン、トリアリルメチルシラン、トリ−3−ブテニルシランエチルシラン、トリ−3−ブテニルシランビニルシラン、トリ−3−ブテニルシランクロロシラン、トリ−3−ブテニルシランブロモシラン、テトラ−3−ブテニルシランシランなどを例示することができる。
これらの中でもビニルシラン化合物類が好ましく、とりわけトリメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、ジメチルジビニルシランが好ましい。
【0049】
アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)の使用量は、固体触媒成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01〜100の範囲内が望ましい。
本発明で用いられるアルケニル基を有するケイ素化合物(A2)は、活性点となりうるチタン原子にアルケニル基で配位しており、有機アルミ化合物によるチタン原子の過還元や不純物などによる活性点の失活を防ぐ目的として、用いられる。
【0050】
(2)有機ケイ素化合物(A3)
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(A3)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。
一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
3−mSi(OR
(式中、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素原子であり、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
【0051】
式中、Rは、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。Rとして用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数3〜10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。
より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
また、Rがヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましく、とりわけ、窒素または酸素であることが望ましい。Rのヘテロ原子含有炭化水素基の骨格構造としては、Rが炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
【0052】
式中、Rは、水素原子、ハロゲン、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。
として用いることのできるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。Rが炭化水素基である場合は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。
中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、Rがヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
【0053】
式中、mの値が1の場合、二つあるRは、同一であっても異なっても良い。また、mの値に関わらず、Rは、Rと同一であっても異なっても良い。
また、式中、Rは、炭化水素基を表す。Rとして用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のものである。Rとして用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることができる。中でも、メチル基とエチル基が最も好ましい。mの値が2以上である場合、複数存在するRは、同一であっても異なっても良い。
【0054】
本発明で用いることのできる有機ケイ素化合物(A3)の好ましい例としては、t−Bu(Me)Si(OMe)、t−Bu(Me)Si(OEt)、t−Bu(Et)Si(OMe)、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)、c−Hex(Me)Si(OMe)、c−Hex(Et)Si(OMe)、c−PenSi(OMe)、i−PrSi(OMe)、i−BuSi(OMe)、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)、n−Pr(Me)Si(OMe)、t−BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN−Si(OEt)
【0055】
【化1】

【0056】
などを挙げることができる。
これらの有機ケイ素化合物類は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0057】
有機ケイ素化合物(A3)の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものであり得るが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
有機ケイ素化合物(A3)の使用量は、固体触媒成分(A1)を構成するチタン成分(A1b)に対するモル比で(有機ケイ素化合物(A3)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1〜100の範囲内が望ましい。
【0058】
本発明で用いられる有機ケイ素化合物(A3)は、活性点となり得るチタン原子の近傍に配位し、活性点の触媒活性やポリマーの規則性といった触媒性能を制御していると、考えられている。
【0059】
(3)有機アルミニウム化合物(A4)
本発明に用いられる有機アルミニウム化合物(A4)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。一般的には、下記一般式にて表される化合物を用いることが望ましい。
AlX(OR
(式中、Rは、炭化水素基を表す。Xは、ハロゲンまたは水素を表す。Rは、炭化水素基またはAlによる架橋基を表す。a≧1、0≦b≦2、0≦c≦2、a+b+c=3である。)
【0060】
式中、Rは、炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜6、のものを用いることが望ましい。Rの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、などを挙げることができる。この中で、メチル基、エチル基、イソブチル基が最も好ましい。
式中、Xは、ハロゲンまたは水素である。Xとして用いることのできるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素などを例示することができる。この中で、塩素が特に好ましい。
また、式中、Rは、炭化水素基またはAlによる架橋基である。Rが炭化水素基である場合には、Rの炭化水素基の例示と同じ群からRを選択することができる。また、有機アルミニウム化合物(A4)として、メチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物類を用いることも可能であり、その場合Rは、Alによる架橋基を表す。
【0061】
有機アルミニウム化合物(A4)として用いることのできる化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることができる。中でも、トリエチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(A4)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0062】
有機アルミニウム化合物(A4)の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
有機アルミニウム化合物(A4)の使用量は、固体触媒成分(A1)を構成するチタン成分に対するアルミニウムの原子比(アルミニウム原子のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.1〜100の範囲内であり、特に好ましくは1〜50の範囲内が望ましい。
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(A4)は、触媒成分(A)中に有機ケイ素化合物(A3)を効率よく担持させることを目的として用いられる。従って、本重合時に助触媒として用いられる有機アルミニウム化合物(B)とは、使用目的が異なり、区別される。
【0063】
(4)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)
本発明で用いる重合用固体触媒成分(A)は、前述の成分(A1)に対して、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、並びに、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させてなるものであるが、この際、本発明の効果を損なわない範囲で、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)を任意成分として接触させても良い。
【0064】
本発明で用いることのできる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)としては、特開平3−294302号公報及び特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。
一般的には、下記式にて表される化合物を用いることが望ましい。
10O−C(R−C(R−C(R)−OR10
(式中、R及びRは、水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。R10は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
【0065】
式中、Rは、水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。
として用いることのできる炭化水素基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。
として用いることのできる炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。
より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
また、二つのRは、結合して一つ以上の環を形成しても良い。この際、環構造中に2個又は3個の不飽和結合を含むシクロポリエン系構造を取ることもできる。また、他の環式構造と縮合していても良い。単環式、複環式、縮合の有無に関わらず、環上に炭化水素基を置換基として1つ以上有していても良い。
環上の置換基は、一般に炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のものである。具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることができる。
【0066】
また、式中、Rは、水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基からなる群から選ばれる任意の遊離基を表す。具体的には、Rは、Rの例示から選ぶことができる。好ましくは水素である。
また、式中、R10は、炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。具体的には、R10は、Rが炭化水素基である場合の例示から選ぶことができる。好ましくは、炭素数1〜6の炭化水素基であることが望ましく、更に好ましくはアルキル基であることが望ましい。最も好ましくはメチル基である。
【0067】
〜R10がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましい。また、R〜R10が炭化水素基であるか、ヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいても良い。R〜R10がヘテロ原子及び/又はハロゲンを含む場合、その骨格構造は、炭化水素基である場合の例示から選ばれることが望ましい。また、R〜R10の八個の置換基は、お互いに同一であっても異なっても良い。
【0068】
本発明で用いることのできる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の好ましい例としては、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、1,1−ビス(1’−ブトキシエチル)シクロペンタジエン、1,1−ビス(α−メトキシベンジル)インデン、1,1−ビス(フェノキシメチル)−3,6−ジシクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)ベンゾナフテン、7,7−ビス(メトキシメチル)−2,5−ノボルナジネン、などを挙げることができる。
中でも、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが特に好ましい。
【0069】
これらの少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。また、固体触媒成分(A1)中の任意成分である電子供与体(A1e)として用いられる多価エーテル化合物と、同一であっても異なっても良い。また少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)は、単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0070】
また、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次に示す範囲内が好ましい。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)の使用量は、固体触媒成分(A1)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲内が望ましい。
【0071】
(5)α−オレフィン重合用触媒成分(A)の調製方法
本発明におけるα−オレフィン重合用触媒成分(A)は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)に対して、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、及び有機アルミニウム化合物(A4)を接触させてなるものである。この際、本発明の効果を損なわない範囲で、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)等の他の任意成分を任意の方法で接触させても良い。
【0072】
固体触媒成分(A)の各構成成分の接触条件は、酸素を存在させないことが必要であるが、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の条件を用いることができる。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50〜200℃程度、好ましくは−10〜100℃、更に好ましくは0〜70℃、とりわけ好ましくは10℃〜60℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、並びに、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することができる。好ましくは、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法を用いることが望ましい。
【0073】
固体触媒成分(A1)、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、及び有機アルミニウム化合物(A4)の接触手順に関しては、任意の手順を用いることができる。
具体的な例としては、下記の手順(i)〜手順(iv)などが挙げられる。
手順(i):固体触媒成分(A1)にアルケニル基を有するケイ素化合物(A2)を接触させ、次いで有機ケイ素化合物(A3)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させる方法。
手順(ii):固体触媒成分(A1)にアルケニル基を有するケイ素化合物(A2)及び有機ケイ素化合物(A3)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させる方法。
手順(iii):固体触媒成分(A1)に有機ケイ素化合物(A3)を接触させ、次いでアルケニル基を有するケイ素化合物(A2)を接触させた後、有機アルミニウム化合物(A4)を接触させる方法。
手順(iv):全ての化合物を同時に接触させる方法。
この中でも、手順(i)及び手順(ii)が好ましい。
また、任意成分として、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)を用いる場合も、上記と同様に任意の順序で接触させることができる。
【0074】
さらに、固体触媒成分(A1)に対して、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、並びに、有機アルミニウム化合物(A4)のいずれも、任意の回数接触させることもできる。この際、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、有機ケイ素化合物(A3)、並びに、有機アルミニウム化合物(A4)のいずれも複数回の接触で用いる化合物がお互いに同一であっても異なっても良い。また、先に各成分の使用量の範囲を示したが、これは1回当たりに接触させる使用量であり、複数回使用するときは、1回の使用量が前述した使用量の範囲内であれば、何回接触させても良い。
【0075】
触媒成分(A)の調製の際には、中間及び/又は最後に不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することができる。
図1に、触媒製造フローチャートを例示する。
【0076】
3.有機アルミニウム化合物(B)
本発明においては、触媒としてα−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)または触媒成分(A)、及び有機アルミニウム化合物(B)を用いることが必須要件であるが、本発明において用いることのできる有機アルミニウム化合物(B)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。
好ましくは、触媒成分(A)を調製する際の成分である有機アルミニウム化合物(A4)における例示と同じ群から選択することができる。また、触媒成分(A)を調製する際に用いることのできる有機アルミニウム化合物(A4)と触媒成分として用いることのできる有機アルミニウム化合物(B)が、同一であっても異なっても良い。
有機アルミニウム化合物(B)は、単独の化合物を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0077】
有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、α−オレフィン重合用触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(B)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1〜5,000の範囲内であり、特に好ましくは10〜500の範囲内が望ましい。
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(B)は、本重合中に助触媒として用いられる。従って、固体触媒成分(A)を調製する際の成分である有機アルミニウム化合物(A4)とは、使用目的が異なり、区別される。
【0078】
4.有機ケイ素化合物(C)
本発明においては、α−オレフィン用重合触媒として、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A1)または触媒成分(A)、及び有機アルミニウム化合物(B)を用いる。この際、本発明の効果を損なわない範囲で、有機ケイ素化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)などの任意成分を用いることができる。
本発明の触媒において任意成分として用いられる有機ケイ素化合物(C)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。好ましくは、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を調製する際の成分である有機ケイ素化合物(A3)における例示と同じ群から選択することができる。
また、ここで使用される有機ケイ素化合物(C)は、α−オレフィン重合用触媒成分(A)に含まれる有機ケイ素化合物(A3)と、同一であっても異なってもよい。
【0079】
有機ケイ素化合物(C)を用いる場合の使用量は、α−オレフィン重合用固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(有機ケイ素化合物(C)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲内が望ましい。
また、本発明で用いられる有機ケイ素化合物(C)は、触媒成分(A)を調製する際の成分である有機ケイ素化合物(A3)と同様に、活性点に作用し触媒性能を制御する働きがあると考えられている。本発明のように、触媒成分(A)中だけでなく、本重合時にも有機ケイ素化合物(C)を作用させることで、触媒性能が更に向上させることができる。
【0080】
5.少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)
本発明の触媒において、任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)としては、特開平3−294302号公報および特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。
好ましくは、α−オレフィン重合用触媒成分(A)において用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)における例示と同じ群から選択することができる。この際、触媒成分(A)を調製する際に任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(A5)と、触媒の任意成分として用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)が、同一であっても異なっても良い。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)は、単独の化合物を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。
【0081】
また、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)を用いる場合の使用量は、触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01〜10,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5〜500の範囲内が望ましい。
【0082】
6.その他の化合物
本発明の触媒において、本発明の効果を損なわない限り、上記の有機ケイ素化合物(C)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(D)以外の成分を、触媒の任意成分として用いることができる。例えば、特開2004−124090号公報に開示されている分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)や特開2006−225449号公報に開示されている亜硫酸エステル化合物(F)を用いることにより、CXSの様な非晶性成分の生成を抑制することができる。この場合、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチルなどを好まし例として挙げることができる。また、ジエチル亜鉛の様なAl以外の金属原子を持つ有機金属化合物を用いることもできる。
【0083】
分子内にC(=O)N結合を有する化合物(E)及び亜硫酸エステル化合物(F)を用いる場合の使用量は、固体触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(任意成分(E)、(F)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001〜1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.05〜500の範囲内が望ましい。
【0084】
本発明で用いられるこれらの任意成分は、有機ケイ素化合物(C)と同様に活性点となりうるチタン原子の近傍に配位し、触媒性能を制御したり、非晶性成分を生成するような活性点に直接的に配位し、選択的に被毒するなどの作用があり、触媒性能の向上を目的として用いられる。
【0085】
7.予備重合
本発明における固体触媒成分(A1)または触媒成分(A)は、本重合で使用する前に、予備重合されていても良い。重合プロセスに先立って、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。
予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることができる。
具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物類、などを挙げることができる。
中でも、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
【0086】
触媒成分(A)として予備重合されたものを用いる場合には、触媒成分(A)の調製手順において、任意の手順で予備重合を行うことができる。例えば、固体触媒成分(A1)を予備重合した後に、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、及び、有機ケイ素化合物(A3)を接触させることができる。また、固体触媒成分(A1)、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、及び、有機ケイ素化合物(A3)を接触させた後に、予備重合を行うこともできる。更に、固体触媒成分(A1)、アルケニル基を有するケイ素化合物(A2)、及び、有機ケイ素化合物(A3)を接触させる際に、同時に予備重合を行っても良い。
【0087】
固体触媒成分(A1)または触媒成分(A)と、上記のモノマーとの反応条件は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の条件を用いることができる。一般的には、以下の範囲内が好ましい。
固体触媒成分(A)または(A1)1グラムあたりの基準で、予備重合量は0.001〜100gの範囲内であり、好ましくは0.1〜50g、更に好ましくは0.5〜10gの範囲内が望ましい。
また、予備重合時の反応温度は、−150〜150℃、好ましくは0〜100℃である。そして、予備重合時の反応温度は、本重合のときの重合温度よりも低くすることが望ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
予備重合は、複数回行っても良く、この際用いるモノマーは、同一であっても異なっても良い。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行うこともできる。
【0088】
II.α−オレフィン重合
本発明の触媒を使用する、α−オレフィンの重合は、炭化水素溶媒を用いるスラリー重合、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合又は気相重合に適用される。
スラリー重合の場合の重合溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒が用いられる。採用される重合方法は、連続式重合、回分式重合又は多段式重合等いかなる方法でもよい。重合温度は、通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃であり、そのとき分子量調節剤として水素を用いることができる。
【0089】
本発明の触媒系で重合するα−オレフィンは、一般式:R11−CH=CH(ここで、R11は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、分枝基を有してもよい。)で表されるものである。
具体的には、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィン類である。これらのα−オレフィンの単独重合のほかに、α−オレフィンと共重合可能なモノマー(例えば、エチレン、α−オレフィン、ジエン類、スチレン類等)との共重合も行うことができる。これらの共重合性モノマーは、ランダム共重合においては15重量%まで、ブロック共重合においては50重量%まで使用することができる。
【0090】
III.α−オレフィン重合体
本発明により重合されるα−オレフィン重合体のインデックスについては、特に制限はなく、各種用途に合わせて、適宜調節することができる。
一般的には、α−オレフィン重合体のMFRは、0.01〜10,000g/10分の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜1,000g/10分の範囲内である。
また、非晶性成分である冷キシレン可溶分(CXS)の量は、用途によって好ましい範囲が異なるのが一般的である。射出成形用途などの高い剛性が好まれる用途に対しては、CXSの量は、0.01〜3.0重量%の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.05〜1.5重量%の範囲内、とりわけ好ましくは0.1〜1.0重量%の範囲内が望ましい。ここで、CXSの値は、下記実施例の中で定められた手法により測定した値である。
また、本発明により得られるポリマー粒子は、優れた粒子性状を示す。一般的に、ポリマー粒子の粒子性状は、ポリマー嵩密度、粒径分布、粒子外観、などにより評価される。本発明により得られるポリマー粒子は、ポリマー嵩密度が、0.35〜0.55g/mlの範囲内、好ましくは、0.40〜0.50g/mlの範囲内である。ポリマー粒径分布は、指標(実施例で説明する。)の範囲内である。
【0091】
IV.攪拌槽
本発明において、攪拌槽の材質は、任意であり、例えば、ガラス製、金属製、合成樹脂製、ステンレス製などが挙げられる。また、攪拌槽の容積も、任意であり、例えば、0.1L〜100mの範囲から選ばれる。
さらに、攪拌槽の形状は、任意であり、例えば、円柱形、半円柱形、角柱形などが挙げられ、攪拌槽下部には、鏡部分があってもなくてもよい。
攪拌槽の内径(円柱、半円柱においては直径、角柱においては円相当直径)も、任意であり、例えば、10〜10000mmの範囲から選ばれる。攪拌軸や翼の材質も、任意である。攪拌軸は、攪拌槽の径もしくは相当径中心に設置するが、偏芯位置に設置することもある。
撹拌翼の形状や設置高さも、任意であり、例えば、後退翼(2枚、3枚、4枚・・)、ピッチパドル翼(2枚、3枚、4枚・・)、タービン翼(2枚、3枚、4枚・・)、マックスブレンド翼、フルゾーン翼が挙げられ、同形状、異形状の撹拌翼の組み合わせ可能である。
【0092】
また、バッフルの材質や取り付け位置は、任意であり、バッフルの取り付け向きは、略攪拌槽内壁から撹拌軸方向に、取り付けが好ましい。バッフルの形状は、任意であり、棒状、平板状に、孔、突起等を設けてもよい。バッフルの枚数は、1枚以上であり、2枚以上が好ましく、より好ましくは3〜10枚である。バッフルの幅は、攪拌槽内径との比で、好ましくは0.01〜0.3、より好ましくは0.05〜0.2の範囲である。また、攪拌槽内壁とのクリアランスは、攪拌槽内径との比で、好ましくは0.01〜0.1、より好ましくは0.02〜0.08である。
【0093】
V.攪拌トルク(T)の測定・単位容積攪拌動力(Po/V)の設定
1.攪拌トルク(T)の測定
攪拌装置を備えた内径(D)=120mm、及び内径(D)=200mmガラス製セパラブルフラスコを作製した。鏡部分は、1:2半楕円形状とした。
攪拌翼、バッフルは、CASE−#1〜CASE−#5の組み合わせにて、構成した。そして、攪拌翼径(di)、翼幅(bi)、翼枚数(ni)、及びバッフル幅(dB)、枚数(nB)などは、実運転での攪拌槽における化学工学的相似寸法などを保っている。しかし、本発明に用いることができる攪拌槽は、前記撹拌槽と化学工学的相似寸法を保っていなくてもよい。
図2〜図6の(a)〜(e)に、各組み合わせの攪拌槽の構成図を例示する。
また、下記表1に、攪拌装置の基本寸法を例示する。
【0094】
【表1】

【0095】
攪拌駆動部と攪拌軸・攪拌翼との間には、ひねりバネ式トルクメーター(山崎式トルクメーター)を設置して、所定の攪拌装置構成、攪拌数(N)、反応液深(Lo)でトルクを測定した。
個々の攪拌測定では、先ず、空の状態で軸摺りあわせ部の空攪拌トルクを測定した。
次に、実液として水(比重1.00)またはヘプタン(比重0.69)、もしくはマグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)を主成分とする均一な溶液(比重0.84)を用いて、反応液深/内径:Lo/D=0.75〜1.45の範囲で、反応液深(Lo)を設定した。所定の攪拌数(N)で攪拌して、実トルクを計測した。実トルクと空トルク差を、正味の攪拌トルク(T)とした。
【0096】
実施範囲において、攪拌翼設置高さ上限は、最大でLo/D=0.65(CASE−#3)のため、設定Lo/D=0.75〜1.45の範囲では、正味の攪拌トルク(T)は、実液種類、攪拌装置構成(化学工学的相似寸法)、攪拌槽内径(D)、攪拌数(N)の設定により一定となる。また、絶対値は実液比重(ρ)に比例する。攪拌トルク同様に攪拌動力(Po)が一定に定まることとなる。また設定Lo/Dから攪拌槽内径(D)見合いの単位容積(V)が比例関係で計算される。粒子析出反応時の単位容積攪拌動力(Po/V)は、前述設定のLo/D=0.75〜1.45の範囲では、攪拌動力(Po)一定でLo/Dに逆比例する。
図7に、Lo/D=0.92、水(比重=1.00)、攪拌槽の内径(D)=200mmとした単位容積攪拌動力(Po/V)測定結果を例示する。同様に、ヘプタン、もしくはマグネシウム化合物(A1a)とチタン化合物(A1b)を主成分とする均一な溶液を用いて、Lo/D=0.75〜1.45の範囲で測定した結果、攪拌動力(Po)は、下記の式(2)で導出されることがわかった。
Po=F×(ρ1/ρo)×(N/60)×(D/1000)…(2)
[式中、Poは攪拌動力(kW)を、Nは攪拌数(rpm)を、Dは攪拌槽内径(mm)を、ρoは水比重を、ρ1は液比重を、Fは係数を、それぞれ示し、F=f(翼効率)*Np(動力数)である。]
【0097】
上記係数であるFは、バッフルが設置していないCASE−#1では、F=0.0423であり、また、CASE−#2では、F=0.2030であり、CASE−#3では、F=0.2284であり、CASE−#4では、F=0.3383であり、CASE−#5では、F=0.5075である。
【0098】
2.単位容積攪拌動力(Po/V)の設定
内径(D)=120mm、及び内径(D)=200mmでの単位容積攪拌動力(Po/V)測定結果は、Lo/D=0.75〜1.45の範囲で、Lo/D、実液比重(ρ)、攪拌装置構成にて、下記の式(3)でよく相関を得ている。
(N1)×(D1)(=(N2)×(D2)…(3)
[式中、Niは攪拌数(rpm)を、Diは攪拌槽内径(mm)を、そして、添え字、i=1、2・・・は、攪拌槽(化学工学的相似寸法)を示す。]
【0099】
図8に、Lo/D=0.92、水(比重=1.00)、攪拌槽攪拌装置CASE−#3の内径(D)=120mm、200mm、400mm、2000mmにおける単位容積攪拌動力(Po/V)相関を例示する。
同一条件で攪拌槽スケールを変えて所定の単位容積攪拌動力(Po/V)を与える際の攪拌数(N)は、上記式(3)を参照して、設定を実施している。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明における各物性値の測定方法を以下に示す。
(1)MFR(メルトマスフローレート):
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」の試験条件:230℃、2.16kg荷重に準拠して、測定し評価した。
【0101】
(2)ポリマー嵩密度:
パウダー試料の嵩密度をASTM D1895−69に準ずる装置を使用し測定した。
(3)ポリマー平均粒径:
パウダー試料の粒径分布をJIS Z8801の「試験用ふるい」に準拠して、篩い分け法により測定した。得られた粒径分布において、重量基準で積算50wt%となる粒径を平均粒径とした。
【0102】
(4)CXS:
試料(約5g)を140℃のp−キシレン(300ml)中に一度完全に溶解させた。その後23℃まで冷却し、23℃で12時間ポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾別した後、濾液からp−キシレンを蒸発させた。p−キシレンを蒸発させた後に残ったポリマーを100℃で2時間減圧乾燥した。乾燥後のポリマーを秤量し、試料に対する重量%としてCXSの値を得た。
(5)密度:
MFR測定時に得られた押出ストランドを用い、JIS K7112D法に準拠して密度勾配管法で行った。
【0103】
(6)チタン含量:
試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を計算した。
(7)ケイ素化合物含量:
試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較することにより、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含量を算出した。また、予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含量を算出した。
【0104】
(8)固体触媒成分(A1)、重合用触媒成分(A)の平均粒径:
試料を、分散媒としてヘプタンを用いて適切な濃度の懸濁液とした。レーザー回折式粒径分布測定装置(セイシン企業製LMS−350)で粒度分布を湿式法にて測定した。得られた粒径分布において、容積基準で積算50wt%となる粒径を平均粒径とした。
【0105】
[実施例1]
1.固体触媒成分(A1)の調製
撹拌装置を図3におけるCASE−#2の構成とした内径120mm、容量3Lのセパラブルフラスコを充分に窒素で置換した。反応は、各工程とも窒素シールでバブラーを経由にて常圧下で実施した。精製したn−ヘプタン0.65Lを導入して、更にMgClを81g、Ti(O−n−Bu)を580g添加して、90℃で2.5hr反応させ均一な溶液とした。
次いで、均一な溶液を40℃に冷却した。40℃に保持したまま、メチルハイドロジェンポリシロキサン(20cStのもの)を126g添加し、5hr析出反応を行った。析出攪拌数は62rpm、単位容積攪拌動力Po/V=0.0048kW/mで設定した。析出した固体生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、精製したn−ヘプタンを導入して、上記固体生成物の濃度が250g/Lとなる様に調整した。ここに、SiClを124mL添加して、90℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が50g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。
次いで、フタル酸ジクロライド9mLに精製したn−ヘプタンで81mL追加希釈し混合した液を、事前に調製しておき、その混合液を添加し、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が188g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。
ここへ、TiClを176mL添加し、102℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体成分(A1)のスラリーを得た。ごく一部、スラリーを分取乾燥して固体触媒成分(A1)の収量が85gであることを把握した。
【0106】
2.重合触媒成分(A)の調製
引き続き、上記固体成分(A1)のスラリーを、固体触媒成分(A1)として80g相当容量に調整した。さらに精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒成分(A1)の濃度が100g/Lとなる様に調整した。ここに、成分(A2)としてトリメチルモノビニルシランを8mL、成分(A3)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を10mL、成分(A4)としてEtAlをn−ヘプタンにて10wt%希釈した液を、464mL添加して30℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
得られたスラリーをセパラブルフラスコから抜き出し真空乾燥を行ってα−オレフィン用重合触媒成分(A)を得た。分析したところ、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が2.0wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.6wt%含まれていた。平均粒径D50=19.5μm、分散指数としてD50/D10=1.35、D90/D50=1.33であった。
【0107】
3.α−オレフィン用重合触媒成分(A)の予備重合
充分に窒素で置換した攪拌装置を備えた500mL丸底フラスコを準備した。上記のα−オレフィン用重合触媒成分(A)を10g秤量し、精製したn−ヘプタンを導入して、濃度が40g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlをn−ヘプタンにて10wt%希釈した液を21mL添加し、15gのプロピレンを1hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に20分反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをフラスコから抜き出し、真空乾燥を行ってα−オレフィン用重合触媒成分(A)の予備重合体を得た。本品は、α−オレフィン用重合触媒成分(A)1gあたり1.4gのポリプロピレンを含んでいた。
【0108】
4.プロピレンの重合
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3Lのステンレス鋼製オートクレーブを真空下で加熱乾燥し、室温まで冷却して、プロピレン置換した後、成分(B)としてEtAlを500mg、及び水素を4,000mL導入し、次いで、液体プロピレンを750g導入して、内部温度を70℃に合わせた後に、上記のα−オレフィン用重合触媒成分(A)を7mg圧入して、プロピレンを重合させた。1.5時間後にエタノールを10mL圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。
得られたポリマー収量から、触媒効率は44,500g−PP/g−触媒、MFR=24.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=585μm、分散指数としてD50/D10=1.23、D90/D50=1.21であった。まとめた結果を表2に示す。
【0109】
[実施例2]
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図4におけるCASE−#3とし、析出攪拌数は62rpm、単位容積攪拌動力Po/V=0.0054kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が1.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.6wt%含まれていた。平均粒径D50=19.2μm、分散指数としてD50/D10=1.33、D90/D50=1.30であった。
また、予備重合、及びプロピレンの重合は、実施例1と同様の方法で行った。
触媒効率は43,800g−PP/g−触媒、MFR=22.5g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=580μm、分散指数としてD50/D10=1.20、D90/D50=1.16であった。結果を表2に示す。
【0110】
[実施例3]
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図4におけるCASE−#3とし、析出攪拌数は182rpm、単位容積攪拌動力Po/V=0.1447kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が2.0wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.6wt%含まれていた。平均粒径D50=15.5μm、分散指数としてD50/D10=1.33、D90/D50=1.25であった。
また、予備重合、及びプロピレンの重合は、実施例1と同様の方法で行った。
触媒効率は42,600g−PP/g−触媒、MFR=25.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=490μm、分散指数としてD50/D10=1.15、D90/D50=1.11であった。結果を表2に示す。
【0111】
[実施例4]
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図5におけるCASE−#4として析出攪拌数は62rpmとして、単位容積攪拌動力Po/V=0.0079kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が1.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.7wt%含まれていた。平均粒径D50=19.0μm、分散指数としてD50/D10=1.36、D90/D50=1.24であった。
また、予備重合、及びプロピレンの重合は、実施例1と同様の方法で行った。
触媒効率は43,500g−PP/g−触媒、MFR=24.5g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=570μm、分散指数としてD50/D10=1.20、D90/D50=1.17であった。結果を表2に示す。
【0112】
[実施例5]
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図6におけるCASE−#5として析出攪拌数は62rpmとして、単位容積攪拌動力Po/V=0.0119kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が1.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.7wt%含まれていた。平均粒径D50=18.8μm、分散指数としてD50/D10=1.35、D90/D50=1.25であった。
また、予備重合、及びプロピレンの重合は、実施例1と同様の方法で行った。
触媒効率は44,000g−PP/g−触媒、MFR=22.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=575μm、分散指数としてD50/D10=1.21、D90/D50=1.19であった。結果を表2に示す。
【0113】
[比較例1]
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図2におけるCASE−#1として析出攪拌数は62rpmとして、単位容積攪拌動力Po/V=0.0010kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が2.0wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.7wt%含まれていた。平均粒径D50=20.0μm、分散指数としてD50/D10=1.55、D90/D50=1.52であった。
また、予備重合、及びプロピレンの重合は実施例1と同様の方法で行った。
触媒効率は43,200g−PP/g−触媒、MFR=22.5g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=630μm、分散指数としてD50/D10=1.38、D90/D50=1.22であった。結果を表2に示す。
【0114】
[比較例2]
実施例1の固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図2におけるCASE−#1として析出攪拌数は182rpmとし、単位容積攪拌動力Po/V=0.0268kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が2.0wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.6wt%含まれていた。平均粒径D50=18.0μm、分散指数としてD50/D10=1.55、D90/D50=1.54であった。
また、予備重合、及びプロピレンの重合は、実施例1と同様の方法で行った。
触媒効率は43,600g−PP/g−触媒、MFR=23.5g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=610μm、分散指数としてD50/D10=1.36、D90/D50=1.20であった。結果を表2に示す。
【0115】
[実施例6]
1.固体触媒成分(A1)の調製
撹拌装置を図4におけるCASE−#3の構成とした内径200mm、容量10Lのステンレス鋼製オートクレーブを充分に窒素で置換した。反応は、各工程とも窒素置換し常圧で開始し、反応終了まで密封系で実施した。
先ず、精製したn−ヘプタン3.0Lを導入した。更に、MgClを375g、Ti(O−n−Bu)を2,685g添加して、90℃で2.5hr反応させ均一な溶液とした。次いで均一な溶液を40℃に冷却した。40℃に保持したままメチルハイドロジェンポリシロキサン(20cStのもの)を585g添加し、5hr析出反応を行った。析出攪拌数は46rpm、単位容積攪拌動力Po/V=0.0054kW/mで設定した。この析出工程では、副生するガスを除去して反応開始から終了まで常圧状態を保持した。析出した固体生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、精製したn−ヘプタンを導入して、上記固体生成物の濃度が250g/Lとなる様に調整した。ここに、SiClを574mL添加して、90℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が50g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。
【0116】
次いで、フタル酸ジクロライド43mLに精製したn−ヘプタンで387mL追加希釈し混合した液を事前に調製しておき、その混合液を添加し、90℃で1hr反応を行った。
反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が188g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。
ここへ、TiClを816mL添加し、112℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分(A1)のスラリーを得た。ごく一部、スラリーを分取乾燥して、固体触媒成分(A1)の収量が390gであることを把握した。
【0117】
2.重合触媒成分(A)の調製
引き続き、上記固体触媒成分(A1)のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒成分(A1)の濃度が100g/Lとなる様に調整した。ここに、成分(A2)としてトリメチルモノビニルシランを37mL、成分(A3)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を47mL、成分(A4)としてEtAlをn−ヘプタンにて10wt%希釈した液を2,175mL添加して30℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、α−オレフィン用重合触媒成分(A)スラリーを得た。
得られたスラリーのごく一部を分取乾燥し、α−オレフィン用重合触媒成分(A)分析を実施した。このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が1.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.8wt%含まれていた。平均粒径D50=19.5μm、分散指数としてD50/D10=1.44、D90/D50=1.38であった。
【0118】
3.α−オレフィン用重合触媒成分(A)の予備重合
引き続き、上記のα−オレフィン用重合触媒成分(A)スラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、濃度が40g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlをn−ヘプタンにて10wt%希釈した液を762mL添加し、565gのプロピレンを3hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に20分反応を継続した。
次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをステンレス鋼製オートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行ってα−オレフィン用重合触媒成分(A)の予備重合体を得た。本品は、α−オレフィン用重合触媒成分(A)1gあたり1.4gのポリプロピレンを含んでいた。
【0119】
4.プロピレンの重合
実施例1に記載内容と全く同様に行った。
得られたポリマー収量から触媒効率は44,800g−PP/g−触媒、MFR=24.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=585μm、分散指数としてD50/D10=1.15、D90/D50=1.15であった。まとめた結果を表2に示す。
【0120】
[実施例7]
実施例6の固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図4におけるCASE−#3として析出攪拌数は142rpm、単位容積攪拌動力Po/V=0.1447kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が1.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.7wt%含まれていた。平均粒径D50=15.5μm、分散指数としてD50/D10=1.43、D90/D50=1.35であった。
また、予備重合は、実施例6、そして、プロピレンの重合は、実施例1と同様の方法で行った。
触媒効率は45,200g−PP/g−触媒、MFR=24.5g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=500μm、分散指数としてD50/D10=1.14、D90/D50=1.12であった。結果を表2に示す。
【0121】
[実施例8]
固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図4におけるCASE−#3とし析出攪拌数は46rpm、単位容積攪拌動力Po/V=0.0054kW/mとし全工程とも窒素置換し常圧で開始し反応終了まで密封系で実施した。析出工程も密封系で実施して最大析出圧力は0.2MPaとした以外は実施例6と全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が2.0wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.8wt%含まれていた。平均粒径D50=19.2μm、分散指数としてD50/D10=1.46、D90/D50=1.40であった。
また、予備重合は実施例6と、プロピレンの重合は実施例1と、同様の方法で行った。
触媒効率は44,600g−PP/g−触媒、MFR=23.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=580μm、分散指数としてD50/D10=1.19、D90/D50=1.16であった。結果を表2に示す。
【0122】
[実施例9]
固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図4におけるCASE−#3とし、析出攪拌数は142rpm、単位容積攪拌動力Po/V=0.1447kW/mとし、全工程とも窒素置換し常圧で開始し、反応終了まで密封系で実施した。析出工程も密封系で実施して、最大析出圧力は0.2MPaとした以外は、実施例7と全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が1.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.8wt%含まれていた。平均粒径D50=16.0μm、分散指数としてD50/D10=1.44、D90/D50=1.36であった。
また、予備重合は実施例6と、プロピレンの重合は実施例1と、同様の方法で行った。
触媒効率は44,300g−PP/g−触媒、MFR=25.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=500μm、分散指数としてD50/D10=1.14、D90/D50=1.10であった。結果を表2に示す。
【0123】
[比較例3]
実施例8の固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図2におけるCASE−#1とし、析出攪拌数は48rpmとして、単位容積攪拌動力Po/V=0.0010kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が2.0wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.8wt%含まれていた。平均粒径D50=19.8μm、分散指数としてD50/D10=1.65、D90/D50=1.60であった。
また、予備重合は実施例6と、プロピレンの重合は実施例1と、同様の方法で行った。
触媒効率は45,000g−PP/g−触媒、MFR=22.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=620μm、分散指数としてD50/D10=1.40、D90/D50=1.25であった。結果を表2に示す。
【0124】
[比較例4]
実施例8の固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図2におけるCASE−#1とし、析出攪拌数は142rpmとし、単位容積攪拌動力Po/V=0.0268kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が2.0wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.8wt%含まれていた。平均粒径D50=18.5μm、分散指数としてD50/D10=1.65、D90/D50=1.60であった。
また、予備重合は実施例6と、プロピレンの重合は実施例1と、同様の方法で行った。
触媒効率は44,800g−PP/g−触媒、MFR=25.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=600μm、分散指数としてD50/D10=1.40、D90/D50=1.24であった。結果を表2に示す。
【0125】
[実施例10]
1.固体触媒成分(A1)の調製
撹拌装置を図4におけるCASE−#3の構成とした内径2,000mm、容量10mのステンレス鋼製オートクレーブを充分に窒素で置換した。反応は、各工程とも窒素置換し常圧で開始し、反応終了まで密封系で実施した。
先ず、精製したn−ヘプタン3,000Lを導入した。更に、MgClを375kg、Ti(O−n−Bu)を2,685kg添加して、90℃で2.5hr反応させ均一な溶液とした。次いで、均一な溶液を40℃に冷却した。40℃に保持したままメチルハイドロジェンポリシロキサン(20cStのもの)を585kg添加して、5hr析出反応を行った。析出攪拌数は14rpm、単位容積攪拌動力Po/V=0.0054kW/mで設定した。最大析出圧力は0.2MPaとした。析出した固体生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次いで、精製したn−ヘプタンを導入して、上記固体生成物の濃度が250g/Lとなる様に調整した。ここに、SiClを574L添加して、90℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が50g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。
次いで、フタル酸ジクロライド43Lに精製したn−ヘプタンで387L追加希釈し混合した液を事前に調製しておき、その混合液を添加し、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、反応生成物の濃度が188g/Lとなる様に精製したn−ヘプタンを導入した。
ここへ、TiClを816L添加し、112℃で3hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分(A1)のスラリーを得た。ごく一部、スラリーを分取乾燥して、固体触媒成分(A1)の収量が390kgであることを把握した。
【0126】
2.固体触媒成分(A)の調製
引き続き、上記固体触媒成分(A1)のスラリーに、精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒成分(A1)の濃度が100g/Lとなる様に調整した。ここに、成分(A2)としてトリメチルモノビニルシランを37L、成分(A3)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を47L、成分(A4)としてEtAlをn−ヘプタンにて10wt%希釈した液を2,175L添加して、30℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、α−オレフィン用重合触媒成分(A)スラリーを得た。
得られたスラリーのごく一部を分取乾燥し、α−オレフィン用重合触媒成分(A)分析を実施した。
このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が1.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が5.9wt%含まれていた。平均粒径D50=20.4μm、分散指数としてD50/D10=1.50、D90/D50=1.44であった。
【0127】
3.α−オレフィン用重合触媒成分(A)の予備重合
引き続き、上記のα−オレフィン用重合触媒成分(A)スラリーに、精製したn−ヘプタンを導入して、濃度が40g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlをn−ヘプタンにて10wt%希釈した液を762L添加し、565kgのプロピレンを6hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に20分反応を継続した。
次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをステンレス鋼製オートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行ってα−オレフィン用重合触媒成分(A)の予備重合体を得た。本品は、α−オレフィン用重合触媒成分(A)1kgあたり1.3kgのポリプロピレンを含んでいた。
【0128】
4.プロピレンの重合
実施例1の記載内容と全く同様に行った。
得られたポリマー収量から、触媒効率は46,500g−PP/g−触媒、MFR=26.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=600μm、分散指数としてD50/D10=1.19、D90/D50=1.15であった。まとめた結果を表2に示す。
【0129】
[実施例11]
固体触媒成分(A1)の調製において、撹拌装置構成を図4におけるCASE−#3とし、析出攪拌数は24rpm、単位容積攪拌動力Po/V=0.0223kW/mとした以外は、実施例10と全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が1.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が6.1wt%含まれていた。平均粒径D50=15.8μm、分散指数としてD50/D10=1.48、D90/D50=1.40であった。
また、予備重合は、実施例10、そしてプロピレンの重合は、実施例1と同様の方法で行った。
触媒効率は47,000g−PP/g−触媒、MFR=23.5g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=560μm、分散指数としてD50/D10=1.19、D90/D50=1.14であった。結果を表2に示す。
【0130】
[比較例5]
実施例10の固体触媒成分(A1)調製において、撹拌装置構成を図2におけるCASE−#1とし、析出攪拌数は16rpmとして、単位容積攪拌動力Po/V=0.0010kW/mで設定した以外は、全く同様に行った。
分析した結果、このα−オレフィン用重合触媒成分(A)には、チタン含量が1.9wt%、t−Bu(Me)Si(OMe)が6.0wt%含まれていた。平均粒径D50=19.0μm、分散指数としてD50/D10=1.75、D90/D50=1.70であった。
また、予備重合は実施例10と、プロピレンの重合は実施例1と、同様の方法で行った。
触媒効率は45,900g−PP/g−触媒、MFR=24.0g/10minであった。また、ポリマー平均粒径D50=630μm、分散指数としてD50/D10=1.45、D90/D50=1.35であった。結果を表2に示す。
【0131】
【表2】

【0132】
【表3】

【0133】
表2,3から明らかなように、実施例1〜11及び比較例1〜5を対比検討することにより、本発明による固体触媒成分(A1)、及びα−オレフィン重合用触媒成分(A)は、その粒度制御技術が全般にわたり、比較例に対して優れ、さらに、触媒活性や立体規則性なども同等レベル以上に維持された結果を示しており、非常にバランスの優れた触媒であると言える。
具体的には、実施例1、2,4,5と比較例1を比較することにより、槽内径:Dを120mmのスケールで1以上の攪拌機と1以上のバッフルを備えた攪拌槽においては、槽上下混合を強調することで、析出剤により粒子析出する工程の液深方向での相対濃度を均一化し、さらにハロゲン化合物などで処理することにより、粒度分布の狭い固体触媒成分(A1)、及びα−オレフィン重合用触媒成分(A)を得ることが確認できる。
重合触媒効率や立体規則性は維持しつつ、得られるポリマーの粒度分布も狭く、粗粉・微粉含率の低減を達成している。もって重合プロセスの生産性向上に資することとなる。
また、実施例2,3と比較例1,2を比較することにより、1以上の攪拌機と1以上のバッフルを備えた攪拌槽においては、単位容積攪拌動力Po/Vを適切に選定して、狭粒度分布を保持しつつ固体触媒成分(A1)、及びα−オレフィン重合用触媒成分(A)の平均粒径制御が達成し得ることが確認できる。
また、実施例6、7、8、9と比較例3、4を比較することにより、槽内径:Dを200mmに変えて相似則に基づきスケールアップした場合でも、同様の効果が確認できる。
さらに、実施例10,11と比較例5との比較により、槽内径:Dを2,000mmとした、商業規模の実証においても、1以上の攪拌機と1以上のバッフルを備えた攪拌槽において、上記と同様の効果が確認できる。触媒平均粒径の制御をおこなうことで、生成する重合ポリマーについても、平均粒径を含む、所望のモルフォロジーを得られる。
この結果、スラリー重合法、液相無溶媒重合法、気相重合法など様々な重合プロセスの生産性を損なうことなく、好適なポリマーモルフォロジーを提供し得る、平均粒径、狭粒度分布の固体触媒成分(A1)、並びにα−オレフィン重合用触媒成分(A)が提供可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明を用いて製造された固体触媒成分(A1)または触媒成分(A)は、粒度分布が狭いため、重合触媒効率や立体規則性は維持しつつ、得られるポリマーの粒度分布も狭く、粗粉・微粉含率の低減を達成している。その結果、プロピレンなどのα−オレフィンの重合プロセスの生産性向上に寄与し、産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム化合物とチタン化合物を溶質として含む溶液を、少なくとも1以上の攪拌機と1以上のバッフルを備えた攪拌槽にて、析出剤により粒子析出した後、さらに、ハロゲン化合物で処理することを特徴とするα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項2】
前記析出剤により粒子析出する際に、粒子析出反応を、反応液固スラリー単位容積攪拌動力(Po/V)が0.00001〜2.0KW/Mの範囲で行うことを特徴とする請求項1に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項3】
前記析出剤により粒子析出する際に、粒子析出反応を、反応液固スラリー温度が10〜70℃の範囲で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項4】
前記析出剤により粒子析出する際に、粒子析出反応を、反応圧力が常圧〜1.0MPaGの範囲で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項5】
前記析出剤が下記の式(1)で表されるポリマーケイ素化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
[−Si(H)(R)−O−]q…(1)
(式中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基であり、qは、このポリマーケイ素化合物の25℃における動粘度が1〜100cSt(mm/s)となるような重合度を示す。)
【請求項6】
前記ハロゲン化合物は、ハロゲン化ケイ素化合物類及びハロゲン化チタン化合物類からなる群から選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項7】
前記マグネシウム化合物がハロゲン化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法から得られた固体触媒成分(A1)に、下記の成分(A2)、(A3)および(A4)を接触処理することを特徴とするα−オレフィン重合用触媒成分の製造方法。
成分(A2):アルケニル基を有するケイ素化合物
成分(A3):下記の式で表される有機ケイ素化合物
3−mSi(OR
(式中、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基であり、Rは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン又は水素原子であり、Rは、炭化水素基であり、mは、1≦m≦3を示す。)
成分(A4):有機アルミニウム化合物
【請求項9】
成分(A2)のアルケニル基を有するケイ素化合物がビニルシラン化合物であることを特徴とする請求項8に記載のα−オレフィン重合用触媒成分の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のα−オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法から得られた固体触媒成分(A1)または請求項8若しくは請求項9に記載のα−オレフィン重合用触媒成分の製造方法から得られた触媒成分(A)、及び下記成分(B)からなることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒。
成分(B):有機アルミニウム化合物
【請求項11】
前記固体触媒成分(A1)または触媒成分(A)、成分(B)、及び下記成分(C)からなることを特徴とする請求項10に記載のα−オレフィン重合用触媒。
成分(C):有機ケイ素化合物

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−193258(P2012−193258A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57539(P2011−57539)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】