α−シヌクレインを発現する細胞およびその使用
αシヌクレインを発現する哺乳動物の神経細胞、およびαシヌクレイン発現によって誘導される毒性を低下させる化合物を同定するためのスクリーニング方法を開示する。このようなスクリーニングによって同定された化合物を使用して、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、またはグアム・パーキンソン認知症複合などのシヌクレイノパチーを治療または予防することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年10月13日に出願した米国特許仮出願第60/829,320号の優先権を主張する。本先行出願の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、α-シヌクレインを発現する細胞、およびα-シヌクレイン発現によって誘導される毒性を低下させる化合物を同定するためのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
パーキンソン病は、病理学的に細胞質内レビー小体の存在により特徴づけられる神経変性障害であり(Lewy in Handbuch der Neurologie, M. Lewandowski, ed., Springer, Berlin, pp. 920-933, 1912(非特許文献1);Pollanen et al., J. Neuropath. Exp. Neurol. 52:183-191, 1993(非特許文献2))、細胞質内レビー小体の主成分は、140アミノ酸のα-シヌクレインタンパク質からなる線維である(Spillantini et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6469-6473, 1998(非特許文献3);Arai et al., Neurosci. Lett. 259:83-86, 1999(非特許文献4);Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11282-11286, 1993(非特許文献5))。家族性早期発症型パーキンソン病を引き起こすα-シヌクレインにおける3つの優性変異が記載されており、レビー小体がパーキンソン病および関連障害におけるニューロンの変性に機構的に寄与することが示唆される(Polymeropoulos et al., Science 276:2045-2047, 1997(非特許文献6);Kruger et al., Nature Genet. 18:106-108, 1998(非特許文献7);Zarranz et al., Ann. Neurol. 55:164-173, 2004(非特許文献8))。α-シヌクレイン遺伝子の三重および二重変異が、パーキンソン病の早期発症に関連づけられている(Singleton et al., Science 302:841, 2003(非特許文献9);Chartier-Harlin at al. Lancet 364:1167-1169, 2004(非特許文献10);Ibanez et al., Lancet 364:1169-1171, 2004(非特許文献11))。
【0004】
パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、およびアルツハイマー病のレビー小体変異型などの一連の疾患にα-シヌクレインが共通して関与していることから、これらの疾患は「シヌクレイノパチー(synucleinopathy)」という包括的用語で分類される。α-シヌクレインの毒性作用からニューロンを保護することは、これらの疾患を治療するための有望な戦略である。したがって、神経細胞におけるα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物および組成物を同定できるようにする系が必要である。このような化合物および組成物は、シヌクレイノパチーを治療または予防する上で有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lewy in Handbuch der Neurologie, M. Lewandowski, ed., Springer, Berlin, pp. 920-933, 1912
【非特許文献2】Pollanen et al., J. Neuropath. Exp. Neurol. 52:183-191, 1993
【非特許文献3】Spillantini et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6469-6473, 1998
【非特許文献4】Arai et al., Neurosci. Lett. 259:83-86, 1999
【非特許文献5】Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11282-11286, 1993
【非特許文献6】Polymeropoulos et al., Science 276:2045-2047, 1997
【非特許文献7】Kruger et al., Nature Genet. 18:106-108, 1998
【非特許文献8】Zarranz et al., Ann. Neurol. 55:164-173, 2004
【非特許文献9】Singleton et al., Science 302:841, 2003
【非特許文献10】Chartier-Harlin at al. Lancet 364:1167-1169, 2004
【非特許文献11】Ibanez et al., Lancet 364:1169-1171, 2004
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明は、付加的な組成物(例えば、毒性誘導剤(toxicity-inducing agent)または神経分化因子)で細胞を同時に処理する必要なく、α-シヌクレインの発現単独で細胞に対して毒性を示すように、α-シヌクレインを、誘導発現系により、哺乳動物の神経起源の細胞において安定して発現させることができるという発見に一部基づく。
【0007】
本発明は、ヒトαシヌクレインを含むタンパク質をコードする核酸に機能的に連結された誘導性プロモーターを含む安定に組み込まれた発現構築物を含む哺乳動物の神経細胞に注目し、この細胞では、毒性誘導剤または神経分化因子で細胞を同時に処理することなく該核酸の発現を誘導すると、細胞生存度が低下する。α-シヌクレインは、例えば、野生型α-シヌクレイン、または変異体α-シヌクレイン(例えば、A53T変異体ヒトα-シヌクレイン、A30P変異体ヒトα-シヌクレイン、またはE46K変異体ヒトα-シヌクレイン)であり得る。αシヌクレインは全長α-シヌクレイン、またはαシヌクレインの機能的断片であり得る。哺乳動物の神経細胞はヒト神経細胞であり得る。哺乳動物の神経細胞は神経細胞株(例えば、H4細胞株、PC12細胞株、SK-N-SH細胞株、SH-SY5Y細胞株、Neuro-2a細胞株、U87 MG細胞株、もしくは本明細書に記載される任意の他の神経細胞株)であり得るか、または神経細胞株に由来し得る。タンパク質は、例えば、蛍光タンパク質、酵素、またはエピトープといった検出可能なタンパク質を含む融合タンパク質であり得る。いくつかの態様において、蛍光タンパク質は赤色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、およびシアン蛍光タンパク質であり得る。いくつかの態様において、酵素はβ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼであり得る。いくつかの態様において、エピトープは、FLAG、HA、His6、AU1、Tap、プロテインA、またはMYCエピトープであり得る。哺乳動物の神経細胞は、単離された細胞であり得、または非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、クジラ、もしくはサル)内もしくは非ヒト哺乳動物上に存在し得る。
【0008】
いくつかの態様において、哺乳動物の神経細胞は、リプレッサータンパク質を構成的に発現する安定に組み込まれたリプレッサー構築物を含むことが可能であり、この細胞では、(i) 誘導物質が外因的に添加されない場合、リプレッサータンパク質が誘導性プロモーターに結合して、核酸の発現を抑制し、かつ(ii) 誘導物質が外因的に添加された場合、リプレッサータンパク質が誘導物質に結合して、核酸が発現される。リプレッサーは、Tetリプレッサー、例えば逆テトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)であり得る。誘導物質は、テトラサイクリン、またはドキシサイクリンなどのテトラサイクリン誘導体もしくは類似体であり得る。
【0009】
本明細書では、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを含む非ヒト哺乳動物にも注目する。非ヒト哺乳動物は、本明細書に記載される非ヒト哺乳動物のいずれかであり得る。
【0010】
本発明はまた、哺乳動物の神経細胞において毒性を誘導する方法を提供し、本方法は、哺乳動物の神経細胞において、核酸(例えば、α-シヌクレインのコード配列を含む核酸)の、細胞に毒性のある発現レベルを誘導する段階を含む。哺乳動物の神経細胞は、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかであり得る。したがって、α-シヌクレインは、本明細書に記載されるα-シヌクレインのいずれかであり得る。
【0011】
哺乳動物の神経細胞において毒性を誘導する方法をさらに提供する。本方法は、上記の神経細胞のいずれかを、細胞において核酸(例えば、α-シヌクレインのコード配列を含む核酸)の発現および毒性を誘導するのに効果的な量の、外因的に添加した誘導物質と接触させる段階を含む。α-シヌクレインは、本明細書に記載される任意のα-シヌクレインであり得る。
【0012】
本明細書では、α-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物を同定する方法にも注目し、本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において毒性を誘導するのに十分なレベルで核酸の発現を可能にする条件下で、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞生存度を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で測定された細胞生存度を、該候補薬剤の非存在下での細胞生存度と比較する段階を含み、細胞生存度が該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより高い場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物と同定される。
【0013】
α-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物を同定する方法もまた提供し、本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞においてゴルジ断片化を誘導するレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞におけるゴルジ断片化を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で測定された細胞におけるゴルジ断片化を、該候補薬剤の非存在下でのゴルジ断片化と比較する段階を含み、ゴルジ断片化が該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより少ない場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物と同定される。
【0014】
小胞体からゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物を同定する方法にも注目する。本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において小胞体からゴルジへの小胞輸送を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項15〜17のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で測定された細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送を、該候補薬剤の非存在下で測定された小胞体からゴルジへの小胞輸送と比較する段階を含み、本方法では、該候補薬剤の非存在下での小胞体からゴルジへの小胞輸送と比較して、該候補薬剤の存在下での細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送が増加することにより、該候補薬剤が小胞体からゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物と同定される。
【0015】
小胞のドッキングおよび融合を増加させる化合物を同定する方法にも注目し、本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において小胞のドッキングおよび融合を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞における小胞のドッキングおよび融合を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下での細胞における小胞のドッキングおよび融合を、該候補薬剤の非存在下での小胞のドッキングおよび融合と比較する段階を含み、本方法では、該候補薬剤の非存在下での小胞のドッキングおよび融合と比較して、該候補薬剤の存在下での小胞のドッキングおよび融合が増加することにより、該候補薬剤が小胞のドッキングおよび融合を増加させる化合物と同定される。
【0016】
本発明はまた、細胞からのタンパク質の分泌を増加させる化合物を同定する方法を提供する。本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞からのタンパク質分泌を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞からのタンパク質分泌を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下での細胞からのタンパク質分泌を、該候補薬剤の非存在下でのタンパク質分泌と比較する段階を含み、本方法では、該候補薬剤の非存在下でのタンパク質分泌と比較して、該候補薬剤の存在下での細胞からのタンパク質分泌が増加することにより、該候補薬剤が細胞からのタンパク質分泌を増加させる化合物と同定される。
【0017】
シヌクレイノパチーを治療する方法にも注目し、本方法は、シヌクレイノパチーを有すると診断された個体(例えば、ヒト患者)に、本明細書に記載される方法のいずれかによって同定された化合物の治療的有効量を含む薬学的組成物を投与する段階を含む。任意に、本方法は、シヌクレイノパチーを有するか、またはシヌクレイノパチーを発症するリスクがある個体として、個体を選択および/または診断する段階も含み得る。シヌクレイノパチーは、例えば、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、またはグアム・パーキンソン認知症複合であり得る。シヌクレイノパチーは、本明細書に記載される変異のいずれかなど、α-シヌクレインにおける変異によって起こるシヌクレイノパチーであり得る。
【0018】
「毒性誘導剤」とは、αシヌクレインを発現する細胞において、細胞でαシヌクレインのみを発現させるか、または細胞を毒性誘導剤とのみ接触させることによって起こる毒性(もしあれば)のレベルを超える毒性のレベルを誘導する組成物である。「毒性誘導剤」は、それ自体では細胞にとって毒性がないレベルで施与されるが、αシヌクレインの発現と組み合わせた場合に毒性を誘発する化合物(例えば、プロテアソーム阻害剤)であり得る。いくつかの態様において、「毒性誘導剤」は、α-シヌクレイン発現と組み合わせた場合に、哺乳動物細胞を細胞毒性に関して誘発するか、またはさもなくば哺乳動物細胞を感受性にする1つまたは複数の遺伝子エレメント(例えば、遺伝子の不活性化変異などの変異)であり得る。例えば、変異はAPPBP1のts41変異である可能性があり、これはユビキチン-プロテアソーム経路の欠陥をもたらす。
【0019】
本明細書で使用する「神経分化因子」とは、神経細胞の分化を誘発するタンパク質である。神経分化因子の例としては、NGF、BDNF、ニューロトロフィン-3、およびニューロトロフィン-4が挙げられる。
【0020】
本明細書に記載される神経細胞の利点は、α-シヌクレイン発現単独で細胞に毒性を示すように、α-シヌクレイン(野生型α-シヌクレインを含む)の安定した調節発現を可能にする点である。したがって、これらのα-シヌクレイン発現細胞で起こる毒性を救出すると同定される化合物は、例えば、毒性誘導剤または細胞毒性を誘導するために用いられる他の何らかの補助因子に作用するというよりも、むしろα-シヌクレイン関連経路を介してその有益な効果を媒介すると考えられる。
【0021】
特記しない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと類似のまたは同等の方法および材料を用いることができるが、例示的な方法および材料は以下に記載するものである。本明細書において言及する出版物、特許出願、特許、およびその他の参考文献はすべて、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先する。材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】H4細胞における野生型α-シヌクレインのテトラサイクリン調節性条件的発現を示す模式図である。α-シヌクレインのテトラサイクリン調節発現は、大腸菌(E. coli) Tn10にコードされるテトラサイクリン(Tet)耐性オペロン由来の調節エレメントの使用によるものであった。Tetリプレッサー(TR)またはα-シヌクレイン(Syn)を発現する2つの発現カセットを、レンチウイルス系により宿主細胞ゲノムに組み込んだ。Tetリプレッサーは、CMVプロモーター下で構成的に転写される。2つのテトラサイクリン応答エレメント(TRE)を、プロモーター領域に挿入した。TetリプレッサーがTREに結合すると、α-シヌクレイン転写は停止する。テトラサイクリンの存在下では(すなわち、誘導条件)、テトラサイクリンがTetリプレッサーに結合することによって、このタンパク質がTREから遊離し、結果としてα-シヌクレインの発現が起こる。
【図2】TS217細胞における野生型α-シヌクレインの条件的過剰発現を示すイムノブロットの写真である。テトラサイクリンによる誘導前(-)または1日(1d)もしくは3日(3d)間の誘導後に、TS217細胞溶解物を回収した。α-シヌクレインタンパク質の内因性レベルを示すために、親H4(C)細胞溶解物も回収した。溶解物をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分離し、左側に示したα-シヌクレインまたはアクチンに特異的な抗体を使用してタンパク質を検出した。
【図3】野生型α-シヌクレインを過剰発現するH4細胞における進行性の細胞毒性を示す折れ線グラフである。テトラサイクリンを3〜6日間添加することにより、α-シヌクレインを誘導した。細胞毒性は、細胞ATPレベルの測定により解析した。α-シヌクレインに誘導される細胞毒性の指標として、相対細胞生存度を、対照細胞に対する誘導細胞の割合として算出した。Y軸は相対生存度を表し、X軸は日数を表す。エラーバーは、8回の反復の標準偏差を表す。
【図4A】生存TS217細胞の写真である。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドに、TS217 H4細胞をプレーティングした。α-シヌクレインのテトラサイクリン誘導なし(対照)またはあり(誘導)で、細胞をさらに5日間培養した。Metamorphプログラム(Universal Imaging、ペンシルバニア州、ウェストチェスター)によって制御されるデジタルカメラを備えた蛍光顕微鏡(Olympus)により、生細胞のカルセインAM染色を画像化した。
【図4B】図4Aのカルセイン画像化によって決定され、Metamorphソフトウェアを用いて定量された細胞毒性の定量を示す棒グラフである。対応のないt検定、***P<0.0001。
【図5】細胞生存度アッセイにおけるテトラサイクリンの濃度応答を示す線シグモイド曲線フィット(line sigmoidal curve-fit)である。96ウェルプレートで、安定なH4クローンを様々な濃度のテトラサイクリンと共に6日間インキュベートした。細胞を溶解し、細胞ATPを測定した。媒体単独による培地を対照とした。エラーバーは、8回の反復の標準偏差を表す。X軸はテトラサイクリン濃度(μg/mL)の対数を表し、Y軸は相対光単位(RLU)として表示されるATP濃度を表す。
【図6A】細胞の写真であり、野生型α-シヌクレイン過剰発現細胞におけるゴルジ体の断片化を示す。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドに、TS217 H4細胞をプレーティングした。α-シヌクレインのテトラサイクリン誘導なし(対照)またはあり(誘導)で、細胞をさらに6日間培養した。GM130免疫反応性ゴルジ複合体を画像化した。
【図6B】正常なゴルジ複合体を有する細胞(図6Aによる)の定量解析を示す棒グラフである。断片化ゴルジを表す小さな焦点を排除することにより、無傷のゴルジ構造を捕獲した。対応のないt検定、***P<0.0001。
【図7】二重免疫蛍光染色を示す培養細胞の写真である。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドに、H4細胞をプレーティングした。α-シヌクレインのテトラサイクリン誘導なしで(対照)またはありで(誘導)、細胞をさらに6日間培養した。細胞を、それぞれGM130またはマンノシダーゼIIに特異的な抗体を使用して染色した。ゴルジ体の高倍率視野により、α-シヌクレイン過剰発現細胞におけるゴルジ形態の変化が明らかに示された。
【図8】テトラサイクリン処理細胞における小胞体(ER)の完全性を示す、マンノシダーゼIIまたはカルネキシンで染色した培養細胞の写真である。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドに、TS217 H4細胞をプレーティングした。α-シヌクレインのテトラサイクリン誘導なし(対照)またはあり(誘導)で、細胞をさらに5日間培養した。カルネキシン免疫反応性ERおよびマンノシダーゼII免疫反応性ゴルジ複合体を解析した。
【図9】化合物によるα-シヌクレインに誘導される毒性の救出を示す棒グラフである。TS217細胞をテトラサイクリンで処理して、α-シヌクレイン発現を5日間誘導した。5日間の誘導中に、細胞を様々な濃度の1-t-ブチル-3-(4-クロロ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(Cmp J)(0、0.08μM、0.15μM、および0.3μM)でも処理した。各細胞セットにおいてATP濃度を測定することにより相対生存度を決定したが、相対生存度は上記の通り対照に対する誘導の割合であった。Y軸は相対生存度を表し、X軸は化合物の濃度を表す。星印はクラスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)検定の結果を示す:*、**、***:それぞれP<0.05、0.01、および0.001。
【図10】α-シヌクレインに誘導される細胞毒性に及ぼすプレーティング密度の影響を示す棒グラフである。段階希釈したTS217細胞を、250、500、1000、2000、および4000個細胞/ウェルの希釈で96ウェルプレートにプレーティングした。細胞をテトラサイクリンの存在下で5日間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を回収し溶解して、細胞内ATP濃度を決定した。相対細胞生存度を、対照細胞に対する誘導細胞の割合として算出した。エラーバーは、6回の反復の標準偏差を表す。
【図11】フォルスコリン(FSK)による、TS217細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性の阻害を示す散布図である。X軸はマイクロモル(μM)でのFSKの薬用量を表す。Y軸は、細胞生存度に応じた、TS217細胞におけるATPの相対濃度(相対光単位(RLU)として表示)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
α-シヌクレインの核酸およびタンパク質
本明細書に開示する組成物および方法は、α-シヌクレインポリペプチドを含むタンパク質を使用する。「αシヌクレイン」という用語は、天然αシヌクレイン配列(例えば、天然のヒト野生型および変異体αシヌクレイン)およびその機能的変種を包含する。
【0025】
ヒトαシヌクレインは、以下のヌクレオチド配列:
によってコードされる。
【0026】
ヒトαシヌクレインは、以下のアミノ酸配列:
を有する。「変種」という用語は、本明細書において、機能的な断片、変異体、および誘導体を含むよう用いられる。例えば、「変種」は、特定の部位において、天然および非天然アミノ酸を含む天然アミノ酸の置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を含み得るがそれに限定されるわけではない。いくつかの態様において、αシヌクレインタンパク質は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または98%同一であり、α-シヌクレイン機能を保持する。
【0027】
本明細書で使用するα-シヌクレインの「活性」または「機能」は、哺乳動物細胞で過剰発現された場合に細胞毒性(例えば、ゴルジの完全性の消失、および/または細胞死の誘導(例えば、細胞ATP濃度の減少もしくはアポトーシスによって測定される))を引き起こす能力を含むが、それに限定されるわけではない。任意の特定の作用機序によって限定されることはないが、細胞毒性は、細胞における封入体もしくは凝集体の形成、またはプロテアソーム活性障害によって起こり得る。
【0028】
いくつかの態様では、全長α-シヌクレインタンパク質を使用することができる。「全長」という用語は、α-シヌクレインcDNAによってコードされる全アミノ酸を含むα-シヌクレインタンパク質を指す。他の態様では、異なる長さのα-シヌクレインタンパク質を使用してもよい。例えば、タンパク質の機能的活性ドメインのみを使用することができる。したがって、機能的であるならば、ほぼいかなる長さのタンパク質断片も使用することができる。
【0029】
特定の態様では、α-シヌクレインタンパク質の変種を使用することができる。そのような変種は、α-シヌクレインタンパク質の生物学的活性断片を含み得る。これらには、α-シヌクレイン活性を備えた、アミノ酸置換を有するタンパク質が含まれる。哺乳動物細胞において発現させることができるα-シヌクレイン変異体としては、A53T変異体(53位でのアラニンのスレオニンへの置換を含む)およびA30P変異体(30位でのアラニンのプロリンへの置換を含む)が挙げられる。
【0030】
特定の態様では、α-シヌクレインタンパク質の少なくとも一部を含む融合タンパク質を使用してもよい。例えば、α-シヌクレインタンパク質の一部を第2ドメインと融合することができる。融合タンパク質の第2ドメインは、免疫グロブリンエレメント(例えば、免疫グロブリン分子のFc断片)、二量体化ドメイン、標的化ドメイン、安定化ドメイン、および精製ドメインからなる群より選択され得る。あるいは、α-シヌクレインタンパク質の一部を、検出タンパク質などの異種分子と融合することができる。例示的な検出タンパク質には、(1) 緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、または黄色蛍光タンパク質(YFP)などの蛍光タンパク質;(2) β-ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ(AP)などの酵素;および(3) グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)または赤血球凝集素(HA)などのエピトープが含まれる。例えば、αシヌクレインタンパク質は、α-シヌクレインタンパク質のN末端もしくはC末端または他の部分において、GFPに融合することができる。これらの融合タンパク質は、本明細書において哺乳動物細胞(例えば、哺乳動物の神経細胞)によって例証される組換え宿主細胞において、α-シヌクレインタンパク質を迅速かつ容易に検出および同定するための方法を提供する。
【0031】
本明細書では、α-シヌクレインタンパク質をコードする核酸を調製し、細胞がα-シヌクレインタンパク質を発現できるように哺乳動物細胞に導入する方法についても記載する。「αシヌクレイン核酸」という用語は、SEQ ID NO:1に示される配列を含む核酸、および本明細書に記載されるα-シヌクレインの変種のいずれかをコードする核酸を包含する。例示的なα-シヌクレイン核酸には、野生型ヒトα-シヌクレインまたはA53TもしくはA30P変異体タンパク質をコードするものが含まれる。
【0032】
「核酸」という用語は一般に、例えばDNAまたはRNA中に見出される天然のプリン塩基またはピリミジン塩基といった少なくとも1つの核酸塩基を含む、DNA、RNA、またはその誘導体もしくは模倣体の少なくとも1つの分子または鎖を指す。一般に、「核酸」という用語は少なくとも1つの一本鎖分子を指すが、特定の態様においては、その少なくとも1つの一本鎖分子に対して部分的に、実質的に、または完全に相補的な少なくとも1つのさらなる鎖も包含する。したがって、核酸は、分子の一本の鎖を含む特定の配列の1つまたは複数の相補鎖、すなわち「相補体」を含む、少なくとも1つの二本鎖分子または少なくとも1つの三本鎖分子も包含してもよい。
【0033】
哺乳動物細胞においてα-シヌクレインを誘導発現させるための核酸ベクター
非限定的に、プラスミド、線状核酸分子、人工染色体、およびウイルスベクターを含む核酸ベクターを用いて、αシヌクレイン核酸を哺乳動物細胞にトランスフェクションすることができる。ベクターは、α-シヌクレイン核酸、本明細書に記載されるα-シヌクレインの変異体または変種体のいずれかを導入遺伝子として含み得る。
【0034】
構築物を含むベクターまたは核酸分子が発現用に調製されたならば、種々の適切な手段、すなわち形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション等のいずれかにより、DNA構築物を適切な宿主細胞に導入することができる。ベクターがウイルスベクターである場合には、直接感染によりベクターを細胞に送達することができる。好ましくは、ベクターは宿主ゲノムに安定に組み込まれる。安定に組み込まれた核酸(例えば、ベクター)を含む細胞株を作製する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Sambrook et al. in Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)を参照されたい)。簡潔に説明すると、例えばG418、ネオマイシン、またはハイグロマイシンBを含む多くの抗生物質を使用して、核酸がトランスフェクションされた細胞を選択することができる。一般に、トランスフェクションする核酸は、適切な抗生物質耐性遺伝子を含むか、または適切な抗生物質耐性遺伝子を含むベクターと同時にトランスフェクションされる。したがって、抗生物質中で培養した場合、抗生物質耐性遺伝子をコードする安定に組み込まれた核酸を含む細胞およびその子孫のみが、生存する。
【0035】
α-シヌクレインを誘導性プロモーターの制御下で発現させることができる。一般に、誘導発現ベクターは、1コピーまたは複数コピーの誘導物質応答エレメントから構成され、これは(i) 哺乳動物転写プロモーター(例えば、例えばTATAボックスプロモーターエレメント‐転写機構のためのDNAドッキング部位を含むCMVプロモーター)と(ii) 関心対象の導入遺伝子(例えば、α-シヌクレイン)をコードする機能的に連結された核酸を分離する。発現ベクターを含む細胞内には、誘導物質の非存在下で誘導物質応答エレメントに結合し得る転写リプレッサータンパク質も存在する。リプレッサーは、内因的に発現させるかまたは細胞に導入した核酸からトランスで外因的に発現させることが可能である。転写リプレッサーはDNA結合に加えて誘導物質にも結合することができ、誘導物質がリプレッサーに結合すると、リプレッサーがDNAから解離する(図1を参照されたい)。したがって、誘導物質(例えば、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、またはタモキシフェンなどの化合物)が存在しない場合、リプレッサータンパク質は1つまたは複数の誘導物質応答エレメントに結合し、導入遺伝子の転写を妨げる。しかし、リプレッサータンパク質が誘導物質に結合すると、誘導物質応答エレメントから解離し、導入遺伝子の転写およびそれに続く発現が可能になる。一般に、誘導物質による処理後の導入遺伝子の発現は、誘導物質の薬用量に依存する(例えば、施与する誘導物質の濃度が高いほど、導入遺伝子の発現は高くなる)。そのような誘導発現ベクターの例には、これらに限定されないが、以下に記載されるようなTet-Onベクター系、およびStratagene Inc.(カリフォルニア州、ラホーヤ)によって製造されるようなエクジソン誘導発現ベクター系が含まれる。
【0036】
あるいは、発現ベクターを含む細胞は、誘導物質の存在下でのみ誘導物質応答エレメントに結合し得る転写活性化因子を含み得る。したがって、誘導物質を細胞に施与すると、誘導物質応答エレメントに対する正の転写因子の結合が誘導されることにより、導入遺伝子の発現がやはり「スイッチオン」になる。そのようなベクターおよび調節系の例としては、エストロゲン/タモキシフェン調節性エストロゲン受容体ベクター系が挙げられる。
【0037】
いくつかの態様では、α-シヌクレインポリペプチドを、以下の実施例で例証されるような「Tet-On」系の制御下で発現させることができる(図1も参照されたい)。Tet-onベクターは、テトラサイクリン制御性トランスリプレッサー、rtTAが結合するテトラサイクリン応答エレメント(TRE)を含む。野生型tetリプレッサー(TetR)の変種体であるrtTAは、TetRリプレッサーと、単純ヘルペスウイルス1型のVP16トランス活性化ドメインから構成される融合ポリペプチドである。野生型TetR DNA結合ドメイン内の4つのアミノ酸変化により、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンエフェクターの存在下でのみ、標的導入遺伝子のテトラサイクリン応答エレメント(TRE)内のTetO配列を認識できるように、rtTA DNA結合特性が変化している。したがって、Tet-On系において、TRE調節性標的遺伝子の転写は、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンの存在下でのみrtTAによって促進される。
【0038】
誘導物質(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)の施与後のα-シヌクレインの誘導を評価するための方法としては、α-シヌクレインに特異的な抗体を使用するウェスタンブロッティング、またはα-シヌクレインのmRNA発現を検出するためのRT-PCRもしくはノーザンブロッティング技法が挙げられる。そのような方法は当業者に周知であり、Sambrook et al. (in Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989))に詳述されている。α-シヌクレインの発現は、誘導後約1時間(例えば、約30分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約8時間、約12時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約36時間、約48時間、またはそれ以上)で検出することが可能である(実施例1を参照されたい)。最大誘導レベルは、誘導後約12〜24時間で認められる場合が多い。いくつかの態様では、誘導後、経時的に発現の変化を判断(評価)することができる。例えば、誘導前(すなわち、誘導物質(例えば、ドキシサイクリンまたはタモキシフェン)を添加する前)のα-シヌクレインの発現量を、誘導後の様々な時点(例えば、1、4、8、および12時間;4、8、12、および16時間;8、12、16、および20時間;12、24、36、および48時間)における細胞によるα-シヌクレインの発現と比較することができる。
【0039】
誘導剤の適切な開始濃度は、約0.001μM(例えば、約0.01μM、約0.1μM、約1.0μM、約10.0μM、約100μM)である。誘導剤の濃度は、特定の実験について最適化することができ、例えば細胞株、導入遺伝子、または細胞を培養する培養条件(例えば、低血清条件)に依存し得る。
【0040】
いくつかの態様において、誘導性プロモーターの制御下にα-シヌクレインをコードする核酸ベクターを含む哺乳動物細胞(例えば、哺乳動物の神経細胞)は、非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、またはモルモット)内にある。ベクターは、エクスビボで哺乳動物細胞(例えば、神経細胞)に導入することができる、すなわち、細胞をインビトロでトランスフェクションし、その後哺乳動物に移植するかまたはさもなくば送達する(例えば、外科的に移植する)ことができる。あるいは、当技術分野で公知の種々の技法のいずれかを用いて、非ヒトトランスジェニック動物を確立することができる(例えば、Manson et al. (2001) Exp. Rev. Mol. Med. 11;およびHofker et al. Trangenic Mouse: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) Humana Press, Clifton, N.J., Vol. 29 (2002)を参照されたい)。
【0041】
動物におけるα-シヌクレインの発現の誘導は、適量の誘導物質を動物に投与することによって達成することができる。誘導物質は、食物または水の一部として(すなわち、食物または水に含めて)哺乳動物に送達することもできるし、静脈内投与または非経口投与(例えば、皮下注射)することもできる。
【0042】
動物モデルにおける誘導剤の適切な投与量、および導入遺伝子の誘導を検出するための方法は、例えば、Teng et al. (2002) Physiol. Genomics 11:99-107;Kim et al. (2003) Am. J. Pathol. 162(5):1693-1707;およびZabala et al. (2004) Cancer Res. 64:2799-2804に記載されている。
【0043】
以下のスクリーニング法では、上記の哺乳動物細胞のインビトロまたはインビボ態様のいずれもが使用できることが理解される。
【0044】
スクリーニング法
本発明は、哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性を阻止または抑制する「候補薬剤」(例えば、化合物または薬物)をスクリーニングおよび同定する方法に注目する。したがって、本明細書で言及する「候補薬剤」とは、哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性を減少させる、妨げる、または抑える(すなわち、阻止または抑制する)可能性を備えた任意の物質である。哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性は、例えばアポトーシスまたは壊死であり得、非限定的に、細胞におけるプロテアソーム活性障害、または細胞質における封入体/凝集体の形成の結果であり得る。しかし、正確な作用機序にかかわらず、本明細書のスクリーニング法によって同定される薬剤は、これらに限定されないが、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、またはグアム・パーキンソン認知症複合などの対象(例えば、ヒト患者)におけるシヌクレイノパチーを治療する上で有用な可能性がある。
【0045】
核酸、ポリペプチド、小分子化合物、巨大分子化合物、ペプチド模倣体、または本明細書に記載される任意の他の化合物(例えば、以下の「化合物」を参照されたい)を含むがそれらに限定されるわけではない様々な型の候補薬剤を、本明細書に記載される方法によってスクリーニングすることができる。場合によっては、候補薬剤は、哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性を減少させる、妨げる、または抑える遺伝因子である。例えば、種々の遺伝子のコード配列を含むcDNAライブラリーをスクリーニングして、本明細書に記載される疾患に有望な治療遺伝子を同定することができる。あるいは、スクリーニングを実施して、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレイン発現によって起こる細胞毒性に寄与する遺伝子エレメントを同定することができる。例えば、1つまたは複数の遺伝子の非存在下での細胞毒性のレベルまたは量を決定できるように、siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのライブラリーをスクリーニングすることができる。別の例では、スクリーニングアッセイを実施する前に、1つまたは複数の遺伝子を不活化するように、哺乳動物の神経細胞に突然変異を起こさせることができる。これらの例では、遺伝子の非存在下(突然変異による不活化またはサイレンシングによる)で、細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性のレベルが減少することにより、その遺伝子がα-シヌクレインに誘導される細胞毒性に寄与することが示される。したがって、遺伝子を標的化するsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、シヌクレイノパチーを治療する上で有用であり得る。
【0046】
α-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性を阻止または抑制し得る薬剤を同定するためのスクリーニング法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において毒性を誘導するのに十分なレベルで、α-シヌクレインをコードする核酸の発現を可能にする条件下で、細胞を培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞生存度を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で測定された細胞生存度を、該候補薬剤の非存在下での細胞生存度と比較する段階を含み、細胞生存度が該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより高い場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物と同定される。
【0047】
スクリーニングアッセイ法は、誘導性プロモーターの制御下にα-シヌクレインをコードする安定に組み込まれた核酸を含む哺乳動物細胞を含み得る。細胞は任意の哺乳動物細胞であり得るが、好ましくは、細胞は神経細胞(例えば、初代神経細胞、またはPC12、H4、SK-N-SH、SH-SY5Y、Neuro-2a、SVG p12、CCF-STTG1、SW 1088、SW 1783、LN-18、A172、U-138 MG、T98G、U-87 MG、U-118 MG、Hs 683、M059K、MO59J、H4、LN-229、Daoy、もしくはPFSK-1などの神経細胞株(さらなる細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、バージニア州、マナッサスで入手可能である))である。α-シヌクレインは、テトラサイクリン誘導性プロモーター(実施例に記載される通り)または任意の他の適切な誘導性プロモーターの制御下にあり得る。
【0048】
誘導性プロモーター(例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター)の制御下に安定に組み込まれたα-シヌクレインを含む細胞は、組織培養プレート、理想的には、96ウェル培養プレートなどのマルチウェルアッセイプレートで培養することが可能である。細胞は、α-シヌクレインの発現を誘導するための誘導剤(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)の不在(非誘導)下または存在(誘導)下で培養することが可能である。非誘導細胞および誘導細胞はまた、候補化合物(例えば、例えば化合物といった候補薬剤の1用量)で処理することが可能である。化合物の非存在下で培養した誘導細胞または非誘導細胞は、任意に、候補薬剤を送達した同様の量または濃度の媒体(例えば、DMSO)で処理することができる。アッセイは、以下のように細胞または細胞セットを含み得る:(i) 候補化合物で処理した誘導細胞;(ii) 候補化合物で未処理の誘導細胞;(iii) 候補化合物で処理した非誘導細胞;および(iv) 候補化合物で未処理の非誘導細胞。候補化合物が、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレイン誘導細胞毒性を阻止または抑制するかどうかを決定するために、細胞セット(i)に存在する毒性の量を、細胞セット(ii)に存在する細胞毒性の量と比較することができる。細胞セット(i)に存在する細胞毒性よりも細胞セット(ii)に存在する細胞毒性が大きい場合、このことは、該薬剤が細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制することを示す。細胞セット(iii)および(iv)は、例えば、それぞれ誘導剤または化合物にかかわりなく、培養条件に起因する細胞での細胞毒性の量を標準化するための対照として使用することができる。例えば、細胞セット(iii)に存在する毒性の量は、候補薬剤がそれ自体で細胞毒性があることを示し得る。
【0049】
例えば、濃度依存性またはEC50を決定しようとする場合には(以下を参照されたい)、細胞を2つまたはそれ以上の濃度の化合物で処理することができる。アッセイに適した候補化合物の濃度としては、例えば、約0.01μM〜1 mMの薬剤(例えば、約0.01μM〜0.1μM、約0.1μM〜1μM、約1μM〜10μM、約10〜1 mM、または約100μM〜1 mM)が挙げられる。
【0050】
誘導剤または化合物の本方法に適した量を決定するには、いくらかの最適化が必要であり得ることが理解される。そのような最適化は、例えば、使用する細胞の型、化合物の詳細、α-シヌクレイン誘導の量、またはα-シヌクレインの誘導前に必要な時間に基づき得る。
【0051】
α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制するための薬剤の有効性を評価する方法は、定量的、半定量的、または定性的であり得る。したがって、例えば、薬剤の活性を個別の値として決定することができる。薬剤の定量的決定の例は、その薬剤の最大反応の半分を与える薬剤(例えば、化合物)のモル濃度である50%有効濃度、すなわちEC50値である。あるいは、薬剤の有効性は、当技術分野で公知の種々の半定量的/定性的系を使用して評価することもできる。したがって、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する薬剤の有効性は、例えば、(a) 「優」、「良」、「可」、「不可」、および/もしくは「劣」のうちの1つもしくは複数;(b) 「非常に高い」、「高い」、「平均」、「低い」、および/もしくは「非常に低い」のうちの1つもしくは複数;または(c) 「+++++」、「++++」、「+++」、「++」、「+」、「+/-」、「および/もしくは「-」のうちの1つもしくは複数として表すことができる。
【0052】
哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する場合の薬剤(例えば、本明細書に記載される化合物のいずれかのような化合物)の有効性を決定するための方法。細胞は一般に、固体支持マトリックス(例えば、プラスチック組織培養プレートまたはマルチウェル(96または386ウェル)組織培養プレート)にプレーティングし、適切な培地中で培養する。次に、細胞を、一般に例えば10μM〜0.1μM濃度の候補薬剤の段階希釈物と接触させる。多くの場合には、対照化合物(例えば、公知の濃度の公知の阻害剤)もまた、内部標準として1つの細胞セットに添加する。多くの場合には、1つの細胞セットを、化合物を送達する担体、緩衝液、または媒体の存在下で培養する。細胞は、試験化合物の存在下または非存在下で、例えば1〜3日間(1日、2日、3日、4日、1週間、2週間)といった様々な時間培養し、その後プレート上に残存する細胞の数またはプレート上に残存する細胞の生存度について試験する。薬剤の存在下または非存在下におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性の程度を検出する(例えば、決定または測定する)方法は無数にあり、当業者に周知である。これらの方法は、例えば、細胞内のATP濃度を測定する段階を含み得る。細胞内または細胞集団内に存在するATPの量は、その集団内の生細胞数に比例する。一例では、例えば、ルシフェラーゼ/ルシフェリンを使用することにより、ATP濃度を酵素的に決定することができる。これらの酵素は、ATP加水分解を必要とする反応において光シグナルを生成する。したがって、試料中に存在するATPが多いほど、より多くの光が生成される。本方法では、最初に細胞を回収し、溶解する。次に、細胞溶解液をルシフェラーゼ/ルシフェリンと共にインキュベートし、試料から生成されたATP依存性光の量をルミノメーター(例えば、Turner BioSystems TD-20/20 Luminometer、Turner Biosystems、カリフォルニア州、サニーベール)を用いて検出および/または定量することができる。この場合、α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する上での所与の薬剤の有効性を決定するために、化合物の存在下で誘導細胞から生成された光シグナルの量を、薬剤の非存在下で誘導細胞から生成された光シグナルと比較することができる。薬剤の非存在下で培養した細胞と比較して、薬剤の存在下で培養した細胞の溶解物からより多くの光シグナルが生成された場合、このことは、その化合物が細胞毒性を阻止または抑制することを示す。本方法のさらなる例を実施例に記載する。
【0053】
α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する場合の薬剤の有効性を決定するのに適した他の方法は、例えば、薬剤の非存在下または存在下での誘導期間後に残存する細胞数を計数する段階を含む。本方法では、細胞をプレートからトリプシン処理し、洗浄し、色素(例えば、トリパンブルー)で染色して、顕微鏡または機械的細胞計数器(Beckman-Coulter Z1(商標) Series COULTER COUNTER(登録商標) Cell and Particle Counter)を用いて計数することができる。トリパンブルーのような色素は死滅細胞または死滅しかけている細胞によってのみ取り込まれるため、本方法によって集団内の生細胞と非生細胞の識別(すなわち、青色または白色細胞)が可能になる。処理後の薬剤(例えば、本明細書に記載される組成物のいずれか1つ)によるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性の阻止または抑制を決定するための別の方法は、代謝アッセイ法、例えばMTT代謝アッセイ法(Invitrogen、米国)である。MTT臭化ジフェニルテトラゾリウムは、ミトコンドリア呼吸鎖に属し、生細胞でのみ活性を有するコハク酸脱水素酵素系によってホルマザン結晶に分解されるテトラゾリウム塩(帯黄色)である。ミトコンドリアコハク酸脱水素酵素は、電子カップリング試薬の存在下で、MTT結晶を紫色のホルマザンに還元する。細胞を化合物で処理した後に細胞をMTT試薬に曝露すると、ウェル内により多くの生細胞が存在するほど、より多くのホルマザン色素が生成される。ホルマザン色素の量は、例えば分光光度計を用いて測定することができる。
【0054】
細胞における細胞毒性(例えば、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性)の薬剤(例えば、本明細書に記載される化合物または組成物)による阻止または抑制を試験する一般的に用いられる他の方法は、細胞におけるDNA合成のモニタリングを含む。例えば、薬剤の存在下または非存在下で培養した誘導細胞を、細胞分裂に際して細胞のDNAに取り込まれ得るヌクレオチド類似体でも処理する。そのようなヌクレオチド類似体の例としては、例えばBrdUまたは3H-チミジンが挙げられる。それぞれの場合において、誘導細胞(所与の薬剤の存在下および非存在下で培養)に取り込まれた標識の量を定量するが、標識取り込みの量は細胞集団における細胞増殖の量に直接比例する。薬剤の存在下および非存在下で誘導細胞に取り込まれた標識の量は、非誘導細胞に取り込まれた標識の量に対して標準化することができる。薬剤で未処理の誘導細胞と比較して、薬剤で処理した誘導細胞セットにおいてより多くのシグナル(すなわち、より多くのDNA合成)が認められることは、該薬剤がα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制することを示す。
【0055】
薬剤によるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性の阻止または抑制を評価するのに適した他の方法は、細胞におけるアポトーシスの検出を含む。アポトーシスを検出または測定するそのような方法は、例えば、DNA断片化、カスパーゼ活性化、またはアネキシンV発現をモニターする段階を含む。
【0056】
本発明は、α-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物を同定するためのスクリーニング法にも注目する。例えば、薬剤の存在下および非存在下で培養した誘導細胞を、(i) 固定し(例えば、ホルムアルデヒトまたはパラホルムアルデヒドによる);(ii) ゴルジ特異的タンパク質マーカーに特異的な検出可能に標識された第一抗体で処理し;(iii) 検出可能な標識によって生成されるシグナルを、蛍光支援細胞選別(FACS)および共焦点顕微鏡法を含むいくつかの方法のいずれかを用いて検出することができる。一例では、膜結合型ゴルジ局在タンパク質、GM130に対する第一抗体を用いて、ゴルジの境界を特異的に検出することができる。場合によっては、無傷のゴルジを示す断続パターンが検出される。ゴルジ染色がより拡散していれば、一般に、その細胞小器官の完全性の破壊が示される。ゴルジの完全性を決定するための例示的な方法は実施例に記載しており、例えばGosavi et al. (2002) J. Biol. Chem. 277(50):48984-48992にも記載されている。
【0057】
検出可能な標識は、第一抗体(ゴルジ特異的タンパク質マーカーを特異的に認識する一次抗体)、または第一抗体に結合し得る二次抗体に結合させることができる。あるいは、第一抗体を結合対(すなわち、ストレプトアビジンまたはビオチン)の第一メンバーに結合させることができ、結合対の第二メンバーを検出可能な部分に連結することができる。検出可能な部分には、放射性標識(例えば、125I、35S、33P、もしくは32P)、蛍光標識(例えば、テキサスレッド、フルオレセイン)、発光部分(例えば、ランタニド)、またはFRET対の1つもしくは複数のメンバーが含まれ得る。これらの検出可能なマーカーを検出する方法は当技術分野で周知であり、以下の実施例に記載する。
【0058】
α-シヌクレイン発現の誘導後に、ERからゴルジへの小胞輸送の遮断が観察されている(その全体が参照により組み入れられるPCT公開公報WO 2006/073734を参照されたい)。ERとゴルジ間の小胞輸送をモニターするのに適したアッセイ法は、一般に、これら2つの細胞小器官の間の特定タンパク質の輸送をモニターする段階を含む。例えば、タンパク質は、分泌される予定の内因性タンパク質であり得、例えば、本明細書に記載される固定化および抗体ベースの染色法のいずれかによって検出することが可能である。あるいは、1つまたは複数のタンパク質は検出可能なタンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、または蛍光タンパク質に結合されたタンパク質)であり得、この場合、タンパク質を細胞において直接可視化することができる。これらのアッセイ法では、ERからゴルジへの経路を通して輸送するタンパク質の細胞内局在性をモニターする。α-シヌクレインの発現はERからゴルジへのタンパク質の輸送を遮断するため、ERからゴルジへのタンパク質の輸送を促進するまたは増加させる候補薬剤は、したがってERからゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物と同定される。これらの化合物は、α-シヌクレイン媒介の毒性を減少させ、シヌクレイノパチー(例えば、本明細書に記載されるシヌクレイノパチーのいずれか)を治療するための候補治療薬であると考えられる。本明細書に記載される方法において用いるための、ERからゴルジへの輸送を検出する例示的な方法は、例えば、Kawano et al. (2006) J. Biol. Chem. 281(40):30279-30288;Kumagai et al. (2005) J. Biol. Chem. 280(8):6488-6495;およびGiussani et al. (2006) Mol. Cell. Biol. 26(13):5055-5069に見出すことができる。
【0059】
α-シヌクレイン発現細胞において、受容膜(例えば、ゴルジ膜またはシナプス前膜)への供与小胞(例えば、ER小胞またはシナプス小胞)融合を調節する化合物を同定するために、スクリーニング法を実施することもできる。α-シヌクレイン発現細胞において受容膜への供与小胞融合を増加させる化合物は、α-シヌクレイン媒介の毒性を減少させ、シヌクレイノパチーを治療するための候補治療薬であると考えられる。本明細書に記載される方法において用いるための、小胞のドッキングおよび融合を検出する例示的な方法は、例えば、Hibbert et al. (2006) Int. J. Biochem. Cell Biol. 38(3):461-471;Tsuboi et al. (2005) J. Biol. Chem. 280(47):39253-39259;およびHuang et al. (2005) Mol. Biol. Cell 16(6):2614-2623に見出すことができる。
【0060】
本発明は、細胞からのタンパク質分泌を増加させる化合物を同定するための方法も開示する。そのような方法は、哺乳動物細胞(例えば、神経細胞)におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を評価するためにも使用できることが理解される。例えば、本方法は、(i) 候補薬剤の存在下および非存在下で誘導細胞を培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞から分泌される1つまたは複数のタンパク質の量を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で細胞から分泌される1つまたは複数のタンパク質の量を、該候補薬剤の非存在下で分泌される1つまたは複数のタンパク質の量と比較する段階を含む。該候補薬剤の非存在下と比較して、該候補薬剤の存在下における1つまたは複数のタンパク質の分泌が上昇する(増加する)ことにより、該候補薬剤が1つまたは複数のタンパク質の分泌を増加させ得る化合物であることが示される。細胞からのタンパク質発現を検出するのに適した方法は、当技術分野で周知である。例えば、培養細胞からの培地を回収し、例えばウェスタンブロッティングもしくはドットブロッティング、または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって、タンパク質の存在または量について解析することができる。タンパク質が低レベルで分泌される場合には、任意に培地を濃縮することができる。あるいは、検出しようとする分泌タンパク質が例えば酵素である場合には、例えば発色基質を使用することにより、細胞培養液中の酵素活性を検出または定量することができる。場合によっては、分泌タンパク質は細胞の表面に結合したままであり、例えばFACSまたは共焦点顕微鏡技法を用いて検出することが可能である。場合によっては、分泌タンパク質を、例えば上記の固定化および抗体ベースの染色によって、インサイチュー(すなわち、細胞内)で細胞表面への移行中に検出することもでき、またはタンパク質を直接検出できる場合には(例えば、蛍光タンパク質)、FACSまたは顕微鏡技法によってタンパク質を検出または定量することができる。
【0061】
本明細書に記載されるスクリーニング法は、シヌクレイノパチーを治療する上で有用な化合物を同定するための二次スクリーニングまたは細胞ベースのスクリーニングとしても使用できることが理解される。例えば、例えば別の系(例えば、酵母)においてα-シヌクレインに誘導される毒性を阻害する能力に基づいて化合物を最初に選択する一次スクリーニング後に、本スクリーニング法を用いることができる。
【0062】
例えば、本明細書に記載されるスクリーニング法のいずれにおいても、陽性対照として有用である例示的化合物としては、1-t-ブチル-3-(4-クロロ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミンおよびフォルスコリン(実施例5を参照されたい)、ならびに例えばその全体が参照により組み入れられるPCT公開公報WO 2006/034003に見出されるものが挙げられる。
【0063】
スクリーニングアッセイを、複数反応の迅速な調製、処理、および解析を可能にする任意の形式で実施することができる。これは、例えばマルチウェルアッセイプレート(例えば、96ウェルまたは386ウェル)で行うことが可能である。種々の薬剤の保存溶液は手動でまたは機械的に作製することができ、その後のピペット操作、希釈、混合、分配、洗浄、インキュベーション、試料読み取り、データ収集、および解析はすべて、市販の解析ソフトウェア、ロボット工学、およびアッセイから生じたシグナルを検出できる検出計測器を用いてロボット制御で行うことができる。そのような検出器の例には、これらに限定されないが、分光光度計、ルミノメーター、蛍光光度計、および放射性同位体の崩壊を測定する装置が挙げられる。
【0064】
化合物
本明細書に記載される方法のいずれかを用いてスクリーニングまたは同定しようとする化合物には、種々の化学的種類が含まれ得るが、典型的には50〜2,500ダルトンの分子量を有する有機小分子が含まれ得る。これらの化合物は、タンパク質との構造的相互作用(例えば、水素結合)に必要な官能基を含むことが可能であり、典型的には少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を含み、好ましくは官能化学基のうちの少なくとも2つを含む。これらの化合物は、上記官能基のうちの1つまたは複数で置換された、環式炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造(例えば、プリンコア)を含む場合が多い。
【0065】
別の態様において、化合物には、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体(例えば、ペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸類似体、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体または構造類似体、ポリヌクレオチド、核酸アプタマー、およびポリヌクレオチド類似体を含むが、これらに限定されるわけではない、生体分子もまた含まれ得る。
【0066】
化合物を、化学ライブラリー、天然物ライブラリー、およびランダムなペプチド、オリゴヌクレオチド、または有機分子からなるコンビナトリアルライブラリーを含むいくつかの可能性のある供給源から同定することができる。化学ライブラリーは多様な化学構造からなり、そのうちのいくつかは、既知化合物の類似体、または他の創薬スクリーニングにおいて「ヒット」もしくは「リード」として同定された類似体もしくは化合物であり、他のものは天然物に由来し、さらに他のものは非指向性の(non-directed)合成有機化学から生じる。天然物ライブラリーは、(1) 土壌微生物、植物微生物、もしくは海洋微生物からの培養液の発酵および抽出、または(2) 植物もしくは海洋生物の抽出により、スクリーニング用の混合物を創出するために使用される微生物、動物、植物、または海洋生物の収集物である。天然物ライブラリーは、ポリペプチド、非リボソームペプチド、およびそれらの変種(非天然)を含む。総説に関しては、Science 282:63-68 (1998)を参照されたい。コンビナトリアルライブラリーは、混合物としての多数のペプチド、オリゴヌクレオチド、または有機化合物から構成される。これらのライブラリーは、伝統的な自動合成法、PCR、クローニング、または専有の合成法により、調製が比較的容易である。特に関心対象となるのは、非ペプチドコンビナトリアルライブラリーである。関心対象となるさらなる他のライブラリーには、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣体、多重平行合成(multiparallel synthetic)収集物、リコンビナトリアル、およびポリペプチドのライブラリーが含まれる。コンビナトリアルケミストリーおよびこれから創出されたライブラリーの総説に関しては、Myers, Curr. Opin. Biotechnol. 8:701-707 (1997)を参照されたい。本明細書における種々のライブラリーの使用により試験化合物が同定されると、続いて、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する試験化合物「ヒット」または「リード」の能力を最適化するために、該「ヒット」または「リード」を修飾することができる。
【0067】
上記で同定される化合物は、任意の化学的または生物学的方法によって合成することが可能である。上記で同定される化合物は純粋であってもよいし、異種組成物(例えば、薬学的組成物)中にあってもよく、アッセイに、生理学的に、または薬学的に許容される希釈剤または担体中で調製することが可能である(以下の薬学的組成物および治療方法を参照されたい)。
【0068】
薬学的組成物
哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制することが見出された薬剤は、例えば、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、またはグアム・パーキンソン認知症複合などのシヌクレイノパチーを治療するために対象に投与するための薬学的組成物として製剤化することが可能である。典型的に、薬学的組成物は薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩または塩基付加塩を含んでよい(例えば、Berge et al., J. Pharm. Sci. 66:1-19, 1977を参照されたい)。
【0069】
標準的な方法に従って、薬剤を製剤化することができる。薬学的製剤化は十分に確立された技術であり、例えば、Gennaro (ed.), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins (2000) (ISBN: 0683306472);Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Ed., Lippincott Williams & Wilkins Publishers (1999) (ISBN: 0683305727);およびKibbe (ed.), Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association, 3rd ed. (2000) (ISBN: 091733096X)にさらに記載されている。
【0070】
1つの態様において、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する薬剤を、塩化ナトリウム、リン酸二ナトリウム七水和物、リン酸一ナトリウム、および安定剤などの賦形剤物質と共に製剤化することができる。薬剤を、例えば適切な濃度で緩衝溶液中に提供することができ、2〜8℃で保存することができる。
【0071】
薬学的組成物は種々の形態であってよい。これらには、例えば、溶液(例えば、注射液および注入液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、および坐剤などの液体剤形、半固形剤形、および固形剤形が含まれる。好ましい形態は、意図する投与方法および治療用途に依存し得る。典型的に、本明細書に記載される薬剤の組成物は注射液または注入液の形態である。
【0072】
そのような組成物は、非経口様式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)によって投与することが可能である。本明細書で使用する「非経口投与」および「非経口投与する」という語句は、腸内投与および局所投与以外の、一般に注射による投与方法を意味し、これには、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内、および胸骨内注射および注入が含まれる。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高濃度での安定した保存に適したその他の秩序ある構造として製剤化することが可能である。無菌注射液は、必要量の本明細書に記載される薬剤を、必要に応じて上記の成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒に取り込み、その後ろ過滅菌することによって調製することが可能である。一般に、分散液は、基礎となる分散媒、および上記列挙したものからの必要とされるその他の成分を含む無菌媒体中に、本明細書に記載される薬剤を組み込むことにより調製される。無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、それによって、あらかじめ滅菌ろ過したその溶液から、本明細書に記載される薬剤および任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を使用することにより、分散液の場合には必要とされる粒径を維持することにより、および界面活性剤を使用することにより、維持することが可能である。注射用組成物の長期吸収は、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンといった、吸収を遅延させる物質を組成物中に含めることによってもたらすことが可能である。
【0073】
特定の態様では、薬剤を、インプラントおよびマイクロカプセル化された送達系を含む制御放出製剤のように、迅速な放出から化合物を保護する担体と共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製するための多くの方法は特許化されているか、または一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0074】
哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する薬剤として同定された薬剤を、例えば血液、血清、または他の組織といった循環中でのその安定性および/または保持を、例えば少なくとも1.5、2、5、10、また50倍向上させる部分を用いて修飾することができる。修飾された薬剤は、パーキンソン病などのシヌクレイノパチーで起こり得るような関心対象の治療部位(例えば、レビー小体の位置)に到達し得るかどうかを判断するために評価することが可能である(例えば、標識型の薬剤を使用することによる)。
【0075】
例えば、薬剤を、ポリマー、例えばポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドなどの実質的に非抗原性のポリマーと会合させることができる。適切なポリマーは、重量によって実質的に異なる。約200〜35,000ダルトン(または約1,000〜約15,000、および2,000〜約12,500)の数平均分子量を有するポリマーを使用することができる。例えば、薬剤を水溶性ポリマー、例えば親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンに結合させることができる。このようなポリマーの非限定的なリストには、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマー、およびブロックコポリマーの水溶性が維持されるという条件でそれらのブロックコポリマーが含まれる。さらなる有用なポリマーとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(プルロニック(Pluronics))などのポリオキシアルキレン;ポリメタクリル酸;カルボマー;ならびに分岐多糖または非分岐多糖が挙げられる。薬剤(例えば、化合物)を第2の薬剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤などの、シヌクレイノパチーのための任意の付加療法)と併用して使用する場合には、2つの薬剤を別々にまたは共に製剤化することができる。例えば、それぞれの薬学的組成物を、例えば投与直前に混合して共に投与することもできるし、または例えば同時にもしくは別の時点で別々に投与することもできる。
【0076】
投与
哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制し得る薬剤は、種々の方法によって対象、例えばヒト対象に投与することが可能である。多くの適用に関して、投与経路は以下のうちの1つである:静脈内注射または注入(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内注射(IP)、または筋肉内注射。場合によっては、CNSに、例えば髄腔内、脳室内(ICV)、脳内、または頭蓋内に、直接投与してもよい。薬剤は、固定用量として、またはmg/kg用量で投与することが可能である。他の例では、投与は経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、または直腸内であり得る。
【0077】
経口組成物は一般に、不活性の希釈剤または可食担体を含む。経口治療投与を目的とする場合、活性化合物を賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ剤、または例えばゼラチンカプセル剤といったカプセル剤の形態で使用することが可能である。経口組成物はまた、口腔洗浄液として用いるために、液体担体を用いて調製することも可能である。薬学的に適合する結合剤および/または補助物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分のいずれかまたは類似の性質の化合物を含み得る:微結晶性セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチンなどの結合剤;澱粉もしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterote)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバーなどの着香剤。
【0078】
散剤および錠剤は、1%〜95%(w/w)の活性化合物を含む。特定の態様において、活性化合物は5%〜70%(w/w)の範囲である。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂等である。「調製物」という用語は、活性化合物と、カプセル剤を提供する担体としての封入剤との製剤を含むことが意図され、カプセル剤内で活性化合物は他の担体と共にまたは担体を含まずに担体によって囲まれ、そのようにして担体と関連している。同様に、カシェ剤およびトローチ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびトローチ剤は、経口投与に適した固形剤形として用いることが可能である。
【0079】
経口使用に適した水溶液を、有効成分を水中に溶解し、必要に応じて適切な着色剤、香料、安定剤、および増粘剤を添加することによって調製することができる。経口使用に適した水性懸濁液は、微粉状有効成分を、天然もしくは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁化剤などの粘稠性物質と共に水中に分散させることによって作製することが可能である。
【0080】
吸入によって投与する場合、化合物は、例えば二酸化炭素などのガスといった適切な噴霧剤を含む加圧容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0081】
経粘膜または経皮手段による全身投与も可能である。経粘膜または経皮投与するには、障壁を透過するのに適した浸透剤を製剤中で使用する。そのような浸透剤は当技術分野で一般に公知であり、例えば経粘膜投与の場合、これには界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐剤を用いて達成することが可能である。経皮投与するには、活性化合物を、当技術分野で一般に公知である軟膏剤、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化する。
【0082】
化合物をまた、直腸送達のために、坐剤(例えば、カカオ脂および他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤と共に)または停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0083】
薬剤がポリペプチドであるか、またはさもなくば特に抗原性である場合には、薬剤に対する抗体の産生を減少させるかまたは回避するように、用量を選択することもできる。薬剤の投与経路および/または投与方法も、個々の症例に合わせることができる。
【0084】
所望の反応、例えば治療反応または組み合わせ治療効果をもたらすように、投与計画を調整する。投与計画は、例えば、シヌクレイノパチーを有する哺乳動物の1つまたは複数の罹患細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する。一般に、任意に第2の治療薬の適切な用量と別々にまたは共に製剤化した一定用量の薬剤(例えば、化合物)を使用して、対象に薬剤を提供することができる。薬剤の適切な投与量および/または用量範囲としては、対象におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制するのに十分な量が挙げられる。
【0085】
α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制するのに必要な薬剤の用量は、例えば、治療しようとする対象の年齢、性別、および体重を含む種々の要因に依存し得る。対象に投与する用量に影響するその他の要因としては、例えばシヌクレイノパチーの型または重症度が挙げられる。例えば、進行したアルツハイマー病を有する患者は、より軽症型のアルツハイマー病を有する患者とは異なる投与量の、α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する薬剤を必要とする場合がある。他の要因には、例えば、患者が同時に罹患しているかまたは以前に罹患していた他の障害、患者の一般的健康状態、患者の遺伝的素因、食習慣、投与時間、排出速度、薬物の組み合わせ、および患者に投与される任意の他のさらなる治療薬が含まれ得る。任意の特定の患者に対する具体的な投与量および治療計画は、治療する医師の判断によることが理解されるべきである。有効成分の量は、特記された化合物、ならびに組成物中のさらなる治療薬の有無および性質にも依存する。
【0086】
本明細書で使用する投与単位形態または「固定用量」とは、治療しようとする対象に対して単位投与量として適した、物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要な薬学的担体との関連において、および任意には他の薬剤との関連において、所望の治療効果(例えば、α-シヌクレインに誘導される細胞毒性の阻止または抑制)をもたらすように算出された所定量の活性化合物を含む。適切な投与頻度は、本明細書の他所に記載する。
【0087】
薬学的組成物は、本明細書に記載されるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制することが判明した薬剤の治療的有効量を含み得る。そのような有効量は、投与する薬剤の効果、または複数の薬剤を使用する場合には薬剤と第2の薬剤の組み合わせ効果に基づいて決定することが可能である。薬剤の治療的有効量は、個体の疾患の状態、年齢、性別、および体重、ならびに所望の反応、例えば少なくとも1つの障害パラメータの改善、例えばシヌクレイノパチーの少なくとも1つの症状(例えば、記憶障害または物忘れ)の改善を個体において誘発する化合物の能力などの要因によっても変えることができる。治療的有効量とは、治療的に有益な効果がいかなる毒性作用または有害作用をも上回る量のことでもある。
【0088】
以下は本発明の実施例である。これらの実施例は、本発明の範囲を限定すると決して解釈されるべきではない。
【0089】
実施例
実施例1. α-シヌクレインの条件的過剰発現
テトラサイクリン-オン(tetracycline-on)プロモーターの制御下でα-シヌクレインポリペプチドを安定して発現するH4ヒトグリオーマ細胞から、TS217細胞株を作製した(図1)。野生型α-シヌクレイン発現の誘導について試験するため、TS217細胞を0.1μg/mLテトラサイクリンなしで(「-」)、または0.1μg/mLテトラサイクリンで1日(1d)および3日(3d)間処理した(図2を参照されたい)。処理したまたは未処理のTS217細胞から様々な時点で全細胞溶解物を調製し、細胞タンパク質をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分離した。α-シヌクレインタンパク質の内因性レベルを示すために、親H4(C)からの全細胞溶解物も調製し、SDS-PAGEに供した。α-シヌクレインの発現は、α-シヌクレインタンパク質に特異的な抗体を使用してウェスタンブロッティングにより確認した(図2)。α-シヌクレインの発現は誘導後1日目までに少なくとも2倍増加し、誘導後3日目までに3倍または4倍超増加した。これらの結果から、α-シヌクレインの発現がテトラサイクリンによって調節されることが示された。
【0090】
実施例2. α-シヌクレインを過剰発現する細胞における細胞毒性
いくつかの実験系において、α-シヌクレインの過剰発現が、毒性誘導剤、または血清欠乏、ドーパミン、およびラクタシスチンなどの低用量のプロテアソーム阻害剤のような条件によって誘導される細胞死に対して細胞を感受性にすることが示されている(Smith et al. (2005) Hum. Mol. Genet. 14(24):3801-3811;Tabrizi et al. (2000) Hum. Mol. Genet. 9(18):2683-2689;およびOstreova et al. (1999) J. Neurosci. 19(14):5782-5791)。安定した誘導系を使用して、野生型α-シヌクレインの過剰発現が細胞生存度に及ぼす影響を決定するため、TS217細胞を0.1μg/mLテトラサイクリンで3〜6日間処理して、α-シヌクレインの発現を誘導した。ViaLight(登録商標) Plus Bioassayキット(Cambrex、メイン州、ロックランド)を使用して細胞溶解物中の細胞ATPレベルを測定することにより、細胞の相対生存度を1日間隔(3日目、4日目、5日目、および6日目)で評価した。α-シヌクレインに誘導される細胞毒性の指標として、相対細胞生存度を、対照細胞(テトラサイクリンで未処理の細胞)に対する誘導細胞の割合として算出した(図3を参照されたい)。任意の他の毒性誘導剤の非存在下で、相対細胞生存度は3日目〜6日目に50%を超えて減少し、これらの細胞におけるα-シヌクレインの発現単独で細胞死を引き起こし得ることが示された。
【0091】
TS217細胞におけるα-シヌクレイン過剰発現の細胞毒性はまた、膜透過性色素、カルセインAMを用いて評価した。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドにTS217細胞をプレーティングし、0.1μg/mLテトラサイクリンの非存在下(対照)または存在下(誘導)で5日間培養して、α-シヌクレイン発現を誘導した。細胞を2μMカルセインAMで処理し、酵素活性化カルセインAM(生細胞内)の蛍光を、Metamorphプログラム(Universal Imaging、ペンシルバニア州、ウェストチェスター)によって制御されるデジタルカメラを備えた蛍光顕微鏡(Olympus、ペンシルバニア州、センターバレー)を用いて可視化した。Metamorphソフトウェア(Universal Imaging、ペンシルバニア州、ウェストチェスター)を用いて、カルセイン陽性細胞を定量した(図4A)。テトラサイクリンでの5日間の処理(およびα-シヌクレインの誘導)後、生細胞数は約60%減少し(図4B)、これらの細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現が細胞死をもたらすことがさらに示された。
【0092】
α-シヌクレインに誘導される毒性に及ぼすプレーティング密度の影響も調べた。TS217細胞を、250、500、1000、2000、および4000個細胞/ウェルの希釈で96ウェルプレートにプレーティングした。細胞をテトラサイクリンの存在下で5日間インキュベートし、その後回収し溶解して(上記の通り)、細胞内ATP濃度を測定した。高い細胞密度(例えば、4000個細胞/ウェル)よりも低い細胞密度(例えば、250個細胞/ウェル)においてより多くの細胞死が認められ、プレーティング密度がα-シヌクレインに誘導される毒性に影響を及ぼすことが示された(図10)。
【0093】
実施例3. 細胞生存度に対するテトラサイクリンの用量依存性
細胞生存度に及ぼすテトラサイクリンの影響が濃度依存的であるかどうかを決定するため、96ウェルプレートで培養したTS217細胞を様々な濃度のテトラサイクリンと共に6日間インキュベートした。処理後、上記の通りに実験細胞群をそれぞれ溶解し、細胞ATPを測定した。媒体単独による培地(テトラサイクリンなし)を対照とした(図5)。細胞内のATP濃度に応じた相対細胞生存度は、用量依存的様式で、テトラサイクリンの濃度が増加するにつれて減少した(図5を参照されたい)。
【0094】
実施例4. α-シヌクレイン過剰発現細胞におけるゴルジ体の断片化
ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドにTS217細胞をプレーティングし、0.1μg/mLテトラサイクリンの非存在下(対照)または存在下(誘導)で6日間培養して、α-シヌクレイン発現を誘導した。処理後、リン酸緩衝生理食塩水中の4%スクロースを補充した4%ホルムアルデヒドで細胞を固定し、0.2%トリトン入りPBSで透過処理し、シス-ゴルジ繋留タンパク質GM130に特異的な抗体で染色した(図6A)。無傷のゴルジを含む細胞の数は、α-シヌクレインの6日間の誘導後にほぼ80%減少した(図6B)。
【0095】
ゴルジの完全性に及ぼすα-シヌクレインの強制過剰発現の影響をさらに評価するため、テトラサイクリンの非存在下(対照)および存在下(誘導)で6日間処理したTS217細胞を(上記を参照されたい)、それぞれGM130および膜結合型ゴルジ酵素マンノシダーゼIIに特異的な抗体で二重染色した。対照細胞はGM130およびマンノシダーゼIIのいずれに関しても断続的な共局在パターンを示したが、誘導細胞は拡散した非局在性のゴルジパターンを有し、α-シヌクレイン過剰発現がこれらの細胞においてゴルジ断片化を引き起こしたことがさらに示された(図7)。
【0096】
α-シヌクレインが小胞体(ER)に対しても同様の破壊効果を及ぼすかどうかを決定するため、TS217細胞を先の通りにガラス組織培養スライドにプレーティングし、0.1μg/mLテトラサイクリンの非存在下(対照)および存在下(誘導)で5日間培養して、α-シヌクレイン発現を誘導した。細胞を固定し、ER局在性Ca2+結合タンパク質カルネキシン、または対照としてのマンノシダーゼIIに対する抗体で染色した(図8)。ゴルジ体が著しい断片化を示したのに対し(図7も参照されたい)、α-シヌクレインを過剰発現する細胞ではER形態の肉眼的変化は認められなかった(図8)。
【0097】
実施例5. 細胞生存度の用量依存的救出
選択された化合物がα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻害し得るかどうかを決定するため、96ウェル組織培養プレートにプレーティングしたTS217細胞を、1-t-ブチル-3-(4-クロロ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(化合物J(Cmp J))(0.08μM、0.15μM、および0.3μM)もしくは対照としてのDMSOの存在下で(図9)、またはフォルスコリン(0.3μM、1μM、3μM、および10μM)もしくは対照としてのDMSOの存在下で(図11)、0.1μg/mLテトラサイクリンと共に5日間培養した。5日間の処理後、細胞を溶解し、細胞生存度に応じた細胞内ATP濃度についてアッセイした(上記の通り)。
【0098】
他の態様
本発明をその詳細な説明と共に記載してきたが、前述の説明は例証を目的とするものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。本発明の他の局面、利点、および変更は、以下に記載する特許請求の範囲の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年10月13日に出願した米国特許仮出願第60/829,320号の優先権を主張する。本先行出願の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、α-シヌクレインを発現する細胞、およびα-シヌクレイン発現によって誘導される毒性を低下させる化合物を同定するためのスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
パーキンソン病は、病理学的に細胞質内レビー小体の存在により特徴づけられる神経変性障害であり(Lewy in Handbuch der Neurologie, M. Lewandowski, ed., Springer, Berlin, pp. 920-933, 1912(非特許文献1);Pollanen et al., J. Neuropath. Exp. Neurol. 52:183-191, 1993(非特許文献2))、細胞質内レビー小体の主成分は、140アミノ酸のα-シヌクレインタンパク質からなる線維である(Spillantini et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6469-6473, 1998(非特許文献3);Arai et al., Neurosci. Lett. 259:83-86, 1999(非特許文献4);Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11282-11286, 1993(非特許文献5))。家族性早期発症型パーキンソン病を引き起こすα-シヌクレインにおける3つの優性変異が記載されており、レビー小体がパーキンソン病および関連障害におけるニューロンの変性に機構的に寄与することが示唆される(Polymeropoulos et al., Science 276:2045-2047, 1997(非特許文献6);Kruger et al., Nature Genet. 18:106-108, 1998(非特許文献7);Zarranz et al., Ann. Neurol. 55:164-173, 2004(非特許文献8))。α-シヌクレイン遺伝子の三重および二重変異が、パーキンソン病の早期発症に関連づけられている(Singleton et al., Science 302:841, 2003(非特許文献9);Chartier-Harlin at al. Lancet 364:1167-1169, 2004(非特許文献10);Ibanez et al., Lancet 364:1169-1171, 2004(非特許文献11))。
【0004】
パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、およびアルツハイマー病のレビー小体変異型などの一連の疾患にα-シヌクレインが共通して関与していることから、これらの疾患は「シヌクレイノパチー(synucleinopathy)」という包括的用語で分類される。α-シヌクレインの毒性作用からニューロンを保護することは、これらの疾患を治療するための有望な戦略である。したがって、神経細胞におけるα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物および組成物を同定できるようにする系が必要である。このような化合物および組成物は、シヌクレイノパチーを治療または予防する上で有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lewy in Handbuch der Neurologie, M. Lewandowski, ed., Springer, Berlin, pp. 920-933, 1912
【非特許文献2】Pollanen et al., J. Neuropath. Exp. Neurol. 52:183-191, 1993
【非特許文献3】Spillantini et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6469-6473, 1998
【非特許文献4】Arai et al., Neurosci. Lett. 259:83-86, 1999
【非特許文献5】Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11282-11286, 1993
【非特許文献6】Polymeropoulos et al., Science 276:2045-2047, 1997
【非特許文献7】Kruger et al., Nature Genet. 18:106-108, 1998
【非特許文献8】Zarranz et al., Ann. Neurol. 55:164-173, 2004
【非特許文献9】Singleton et al., Science 302:841, 2003
【非特許文献10】Chartier-Harlin at al. Lancet 364:1167-1169, 2004
【非特許文献11】Ibanez et al., Lancet 364:1169-1171, 2004
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明は、付加的な組成物(例えば、毒性誘導剤(toxicity-inducing agent)または神経分化因子)で細胞を同時に処理する必要なく、α-シヌクレインの発現単独で細胞に対して毒性を示すように、α-シヌクレインを、誘導発現系により、哺乳動物の神経起源の細胞において安定して発現させることができるという発見に一部基づく。
【0007】
本発明は、ヒトαシヌクレインを含むタンパク質をコードする核酸に機能的に連結された誘導性プロモーターを含む安定に組み込まれた発現構築物を含む哺乳動物の神経細胞に注目し、この細胞では、毒性誘導剤または神経分化因子で細胞を同時に処理することなく該核酸の発現を誘導すると、細胞生存度が低下する。α-シヌクレインは、例えば、野生型α-シヌクレイン、または変異体α-シヌクレイン(例えば、A53T変異体ヒトα-シヌクレイン、A30P変異体ヒトα-シヌクレイン、またはE46K変異体ヒトα-シヌクレイン)であり得る。αシヌクレインは全長α-シヌクレイン、またはαシヌクレインの機能的断片であり得る。哺乳動物の神経細胞はヒト神経細胞であり得る。哺乳動物の神経細胞は神経細胞株(例えば、H4細胞株、PC12細胞株、SK-N-SH細胞株、SH-SY5Y細胞株、Neuro-2a細胞株、U87 MG細胞株、もしくは本明細書に記載される任意の他の神経細胞株)であり得るか、または神経細胞株に由来し得る。タンパク質は、例えば、蛍光タンパク質、酵素、またはエピトープといった検出可能なタンパク質を含む融合タンパク質であり得る。いくつかの態様において、蛍光タンパク質は赤色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、およびシアン蛍光タンパク質であり得る。いくつかの態様において、酵素はβ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、または西洋ワサビペルオキシダーゼであり得る。いくつかの態様において、エピトープは、FLAG、HA、His6、AU1、Tap、プロテインA、またはMYCエピトープであり得る。哺乳動物の神経細胞は、単離された細胞であり得、または非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、クジラ、もしくはサル)内もしくは非ヒト哺乳動物上に存在し得る。
【0008】
いくつかの態様において、哺乳動物の神経細胞は、リプレッサータンパク質を構成的に発現する安定に組み込まれたリプレッサー構築物を含むことが可能であり、この細胞では、(i) 誘導物質が外因的に添加されない場合、リプレッサータンパク質が誘導性プロモーターに結合して、核酸の発現を抑制し、かつ(ii) 誘導物質が外因的に添加された場合、リプレッサータンパク質が誘導物質に結合して、核酸が発現される。リプレッサーは、Tetリプレッサー、例えば逆テトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA)であり得る。誘導物質は、テトラサイクリン、またはドキシサイクリンなどのテトラサイクリン誘導体もしくは類似体であり得る。
【0009】
本明細書では、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを含む非ヒト哺乳動物にも注目する。非ヒト哺乳動物は、本明細書に記載される非ヒト哺乳動物のいずれかであり得る。
【0010】
本発明はまた、哺乳動物の神経細胞において毒性を誘導する方法を提供し、本方法は、哺乳動物の神経細胞において、核酸(例えば、α-シヌクレインのコード配列を含む核酸)の、細胞に毒性のある発現レベルを誘導する段階を含む。哺乳動物の神経細胞は、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかであり得る。したがって、α-シヌクレインは、本明細書に記載されるα-シヌクレインのいずれかであり得る。
【0011】
哺乳動物の神経細胞において毒性を誘導する方法をさらに提供する。本方法は、上記の神経細胞のいずれかを、細胞において核酸(例えば、α-シヌクレインのコード配列を含む核酸)の発現および毒性を誘導するのに効果的な量の、外因的に添加した誘導物質と接触させる段階を含む。α-シヌクレインは、本明細書に記載される任意のα-シヌクレインであり得る。
【0012】
本明細書では、α-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物を同定する方法にも注目し、本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において毒性を誘導するのに十分なレベルで核酸の発現を可能にする条件下で、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞生存度を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で測定された細胞生存度を、該候補薬剤の非存在下での細胞生存度と比較する段階を含み、細胞生存度が該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより高い場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物と同定される。
【0013】
α-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物を同定する方法もまた提供し、本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞においてゴルジ断片化を誘導するレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞におけるゴルジ断片化を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で測定された細胞におけるゴルジ断片化を、該候補薬剤の非存在下でのゴルジ断片化と比較する段階を含み、ゴルジ断片化が該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより少ない場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物と同定される。
【0014】
小胞体からゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物を同定する方法にも注目する。本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において小胞体からゴルジへの小胞輸送を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項15〜17のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で測定された細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送を、該候補薬剤の非存在下で測定された小胞体からゴルジへの小胞輸送と比較する段階を含み、本方法では、該候補薬剤の非存在下での小胞体からゴルジへの小胞輸送と比較して、該候補薬剤の存在下での細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送が増加することにより、該候補薬剤が小胞体からゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物と同定される。
【0015】
小胞のドッキングおよび融合を増加させる化合物を同定する方法にも注目し、本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において小胞のドッキングおよび融合を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞における小胞のドッキングおよび融合を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下での細胞における小胞のドッキングおよび融合を、該候補薬剤の非存在下での小胞のドッキングおよび融合と比較する段階を含み、本方法では、該候補薬剤の非存在下での小胞のドッキングおよび融合と比較して、該候補薬剤の存在下での小胞のドッキングおよび融合が増加することにより、該候補薬剤が小胞のドッキングおよび融合を増加させる化合物と同定される。
【0016】
本発明はまた、細胞からのタンパク質の分泌を増加させる化合物を同定する方法を提供する。本方法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞からのタンパク質分泌を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、上記の哺乳動物の神経細胞のいずれかを培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞からのタンパク質分泌を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下での細胞からのタンパク質分泌を、該候補薬剤の非存在下でのタンパク質分泌と比較する段階を含み、本方法では、該候補薬剤の非存在下でのタンパク質分泌と比較して、該候補薬剤の存在下での細胞からのタンパク質分泌が増加することにより、該候補薬剤が細胞からのタンパク質分泌を増加させる化合物と同定される。
【0017】
シヌクレイノパチーを治療する方法にも注目し、本方法は、シヌクレイノパチーを有すると診断された個体(例えば、ヒト患者)に、本明細書に記載される方法のいずれかによって同定された化合物の治療的有効量を含む薬学的組成物を投与する段階を含む。任意に、本方法は、シヌクレイノパチーを有するか、またはシヌクレイノパチーを発症するリスクがある個体として、個体を選択および/または診断する段階も含み得る。シヌクレイノパチーは、例えば、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、またはグアム・パーキンソン認知症複合であり得る。シヌクレイノパチーは、本明細書に記載される変異のいずれかなど、α-シヌクレインにおける変異によって起こるシヌクレイノパチーであり得る。
【0018】
「毒性誘導剤」とは、αシヌクレインを発現する細胞において、細胞でαシヌクレインのみを発現させるか、または細胞を毒性誘導剤とのみ接触させることによって起こる毒性(もしあれば)のレベルを超える毒性のレベルを誘導する組成物である。「毒性誘導剤」は、それ自体では細胞にとって毒性がないレベルで施与されるが、αシヌクレインの発現と組み合わせた場合に毒性を誘発する化合物(例えば、プロテアソーム阻害剤)であり得る。いくつかの態様において、「毒性誘導剤」は、α-シヌクレイン発現と組み合わせた場合に、哺乳動物細胞を細胞毒性に関して誘発するか、またはさもなくば哺乳動物細胞を感受性にする1つまたは複数の遺伝子エレメント(例えば、遺伝子の不活性化変異などの変異)であり得る。例えば、変異はAPPBP1のts41変異である可能性があり、これはユビキチン-プロテアソーム経路の欠陥をもたらす。
【0019】
本明細書で使用する「神経分化因子」とは、神経細胞の分化を誘発するタンパク質である。神経分化因子の例としては、NGF、BDNF、ニューロトロフィン-3、およびニューロトロフィン-4が挙げられる。
【0020】
本明細書に記載される神経細胞の利点は、α-シヌクレイン発現単独で細胞に毒性を示すように、α-シヌクレイン(野生型α-シヌクレインを含む)の安定した調節発現を可能にする点である。したがって、これらのα-シヌクレイン発現細胞で起こる毒性を救出すると同定される化合物は、例えば、毒性誘導剤または細胞毒性を誘導するために用いられる他の何らかの補助因子に作用するというよりも、むしろα-シヌクレイン関連経路を介してその有益な効果を媒介すると考えられる。
【0021】
特記しない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと類似のまたは同等の方法および材料を用いることができるが、例示的な方法および材料は以下に記載するものである。本明細書において言及する出版物、特許出願、特許、およびその他の参考文献はすべて、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書が優先する。材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】H4細胞における野生型α-シヌクレインのテトラサイクリン調節性条件的発現を示す模式図である。α-シヌクレインのテトラサイクリン調節発現は、大腸菌(E. coli) Tn10にコードされるテトラサイクリン(Tet)耐性オペロン由来の調節エレメントの使用によるものであった。Tetリプレッサー(TR)またはα-シヌクレイン(Syn)を発現する2つの発現カセットを、レンチウイルス系により宿主細胞ゲノムに組み込んだ。Tetリプレッサーは、CMVプロモーター下で構成的に転写される。2つのテトラサイクリン応答エレメント(TRE)を、プロモーター領域に挿入した。TetリプレッサーがTREに結合すると、α-シヌクレイン転写は停止する。テトラサイクリンの存在下では(すなわち、誘導条件)、テトラサイクリンがTetリプレッサーに結合することによって、このタンパク質がTREから遊離し、結果としてα-シヌクレインの発現が起こる。
【図2】TS217細胞における野生型α-シヌクレインの条件的過剰発現を示すイムノブロットの写真である。テトラサイクリンによる誘導前(-)または1日(1d)もしくは3日(3d)間の誘導後に、TS217細胞溶解物を回収した。α-シヌクレインタンパク質の内因性レベルを示すために、親H4(C)細胞溶解物も回収した。溶解物をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分離し、左側に示したα-シヌクレインまたはアクチンに特異的な抗体を使用してタンパク質を検出した。
【図3】野生型α-シヌクレインを過剰発現するH4細胞における進行性の細胞毒性を示す折れ線グラフである。テトラサイクリンを3〜6日間添加することにより、α-シヌクレインを誘導した。細胞毒性は、細胞ATPレベルの測定により解析した。α-シヌクレインに誘導される細胞毒性の指標として、相対細胞生存度を、対照細胞に対する誘導細胞の割合として算出した。Y軸は相対生存度を表し、X軸は日数を表す。エラーバーは、8回の反復の標準偏差を表す。
【図4A】生存TS217細胞の写真である。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドに、TS217 H4細胞をプレーティングした。α-シヌクレインのテトラサイクリン誘導なし(対照)またはあり(誘導)で、細胞をさらに5日間培養した。Metamorphプログラム(Universal Imaging、ペンシルバニア州、ウェストチェスター)によって制御されるデジタルカメラを備えた蛍光顕微鏡(Olympus)により、生細胞のカルセインAM染色を画像化した。
【図4B】図4Aのカルセイン画像化によって決定され、Metamorphソフトウェアを用いて定量された細胞毒性の定量を示す棒グラフである。対応のないt検定、***P<0.0001。
【図5】細胞生存度アッセイにおけるテトラサイクリンの濃度応答を示す線シグモイド曲線フィット(line sigmoidal curve-fit)である。96ウェルプレートで、安定なH4クローンを様々な濃度のテトラサイクリンと共に6日間インキュベートした。細胞を溶解し、細胞ATPを測定した。媒体単独による培地を対照とした。エラーバーは、8回の反復の標準偏差を表す。X軸はテトラサイクリン濃度(μg/mL)の対数を表し、Y軸は相対光単位(RLU)として表示されるATP濃度を表す。
【図6A】細胞の写真であり、野生型α-シヌクレイン過剰発現細胞におけるゴルジ体の断片化を示す。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドに、TS217 H4細胞をプレーティングした。α-シヌクレインのテトラサイクリン誘導なし(対照)またはあり(誘導)で、細胞をさらに6日間培養した。GM130免疫反応性ゴルジ複合体を画像化した。
【図6B】正常なゴルジ複合体を有する細胞(図6Aによる)の定量解析を示す棒グラフである。断片化ゴルジを表す小さな焦点を排除することにより、無傷のゴルジ構造を捕獲した。対応のないt検定、***P<0.0001。
【図7】二重免疫蛍光染色を示す培養細胞の写真である。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドに、H4細胞をプレーティングした。α-シヌクレインのテトラサイクリン誘導なしで(対照)またはありで(誘導)、細胞をさらに6日間培養した。細胞を、それぞれGM130またはマンノシダーゼIIに特異的な抗体を使用して染色した。ゴルジ体の高倍率視野により、α-シヌクレイン過剰発現細胞におけるゴルジ形態の変化が明らかに示された。
【図8】テトラサイクリン処理細胞における小胞体(ER)の完全性を示す、マンノシダーゼIIまたはカルネキシンで染色した培養細胞の写真である。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドに、TS217 H4細胞をプレーティングした。α-シヌクレインのテトラサイクリン誘導なし(対照)またはあり(誘導)で、細胞をさらに5日間培養した。カルネキシン免疫反応性ERおよびマンノシダーゼII免疫反応性ゴルジ複合体を解析した。
【図9】化合物によるα-シヌクレインに誘導される毒性の救出を示す棒グラフである。TS217細胞をテトラサイクリンで処理して、α-シヌクレイン発現を5日間誘導した。5日間の誘導中に、細胞を様々な濃度の1-t-ブチル-3-(4-クロロ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(Cmp J)(0、0.08μM、0.15μM、および0.3μM)でも処理した。各細胞セットにおいてATP濃度を測定することにより相対生存度を決定したが、相対生存度は上記の通り対照に対する誘導の割合であった。Y軸は相対生存度を表し、X軸は化合物の濃度を表す。星印はクラスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)検定の結果を示す:*、**、***:それぞれP<0.05、0.01、および0.001。
【図10】α-シヌクレインに誘導される細胞毒性に及ぼすプレーティング密度の影響を示す棒グラフである。段階希釈したTS217細胞を、250、500、1000、2000、および4000個細胞/ウェルの希釈で96ウェルプレートにプレーティングした。細胞をテトラサイクリンの存在下で5日間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を回収し溶解して、細胞内ATP濃度を決定した。相対細胞生存度を、対照細胞に対する誘導細胞の割合として算出した。エラーバーは、6回の反復の標準偏差を表す。
【図11】フォルスコリン(FSK)による、TS217細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性の阻害を示す散布図である。X軸はマイクロモル(μM)でのFSKの薬用量を表す。Y軸は、細胞生存度に応じた、TS217細胞におけるATPの相対濃度(相対光単位(RLU)として表示)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
α-シヌクレインの核酸およびタンパク質
本明細書に開示する組成物および方法は、α-シヌクレインポリペプチドを含むタンパク質を使用する。「αシヌクレイン」という用語は、天然αシヌクレイン配列(例えば、天然のヒト野生型および変異体αシヌクレイン)およびその機能的変種を包含する。
【0025】
ヒトαシヌクレインは、以下のヌクレオチド配列:
によってコードされる。
【0026】
ヒトαシヌクレインは、以下のアミノ酸配列:
を有する。「変種」という用語は、本明細書において、機能的な断片、変異体、および誘導体を含むよう用いられる。例えば、「変種」は、特定の部位において、天然および非天然アミノ酸を含む天然アミノ酸の置換(例えば、保存的アミノ酸置換)を含み得るがそれに限定されるわけではない。いくつかの態様において、αシヌクレインタンパク質は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、または98%同一であり、α-シヌクレイン機能を保持する。
【0027】
本明細書で使用するα-シヌクレインの「活性」または「機能」は、哺乳動物細胞で過剰発現された場合に細胞毒性(例えば、ゴルジの完全性の消失、および/または細胞死の誘導(例えば、細胞ATP濃度の減少もしくはアポトーシスによって測定される))を引き起こす能力を含むが、それに限定されるわけではない。任意の特定の作用機序によって限定されることはないが、細胞毒性は、細胞における封入体もしくは凝集体の形成、またはプロテアソーム活性障害によって起こり得る。
【0028】
いくつかの態様では、全長α-シヌクレインタンパク質を使用することができる。「全長」という用語は、α-シヌクレインcDNAによってコードされる全アミノ酸を含むα-シヌクレインタンパク質を指す。他の態様では、異なる長さのα-シヌクレインタンパク質を使用してもよい。例えば、タンパク質の機能的活性ドメインのみを使用することができる。したがって、機能的であるならば、ほぼいかなる長さのタンパク質断片も使用することができる。
【0029】
特定の態様では、α-シヌクレインタンパク質の変種を使用することができる。そのような変種は、α-シヌクレインタンパク質の生物学的活性断片を含み得る。これらには、α-シヌクレイン活性を備えた、アミノ酸置換を有するタンパク質が含まれる。哺乳動物細胞において発現させることができるα-シヌクレイン変異体としては、A53T変異体(53位でのアラニンのスレオニンへの置換を含む)およびA30P変異体(30位でのアラニンのプロリンへの置換を含む)が挙げられる。
【0030】
特定の態様では、α-シヌクレインタンパク質の少なくとも一部を含む融合タンパク質を使用してもよい。例えば、α-シヌクレインタンパク質の一部を第2ドメインと融合することができる。融合タンパク質の第2ドメインは、免疫グロブリンエレメント(例えば、免疫グロブリン分子のFc断片)、二量体化ドメイン、標的化ドメイン、安定化ドメイン、および精製ドメインからなる群より選択され得る。あるいは、α-シヌクレインタンパク質の一部を、検出タンパク質などの異種分子と融合することができる。例示的な検出タンパク質には、(1) 緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、または黄色蛍光タンパク質(YFP)などの蛍光タンパク質;(2) β-ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ(AP)などの酵素;および(3) グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)または赤血球凝集素(HA)などのエピトープが含まれる。例えば、αシヌクレインタンパク質は、α-シヌクレインタンパク質のN末端もしくはC末端または他の部分において、GFPに融合することができる。これらの融合タンパク質は、本明細書において哺乳動物細胞(例えば、哺乳動物の神経細胞)によって例証される組換え宿主細胞において、α-シヌクレインタンパク質を迅速かつ容易に検出および同定するための方法を提供する。
【0031】
本明細書では、α-シヌクレインタンパク質をコードする核酸を調製し、細胞がα-シヌクレインタンパク質を発現できるように哺乳動物細胞に導入する方法についても記載する。「αシヌクレイン核酸」という用語は、SEQ ID NO:1に示される配列を含む核酸、および本明細書に記載されるα-シヌクレインの変種のいずれかをコードする核酸を包含する。例示的なα-シヌクレイン核酸には、野生型ヒトα-シヌクレインまたはA53TもしくはA30P変異体タンパク質をコードするものが含まれる。
【0032】
「核酸」という用語は一般に、例えばDNAまたはRNA中に見出される天然のプリン塩基またはピリミジン塩基といった少なくとも1つの核酸塩基を含む、DNA、RNA、またはその誘導体もしくは模倣体の少なくとも1つの分子または鎖を指す。一般に、「核酸」という用語は少なくとも1つの一本鎖分子を指すが、特定の態様においては、その少なくとも1つの一本鎖分子に対して部分的に、実質的に、または完全に相補的な少なくとも1つのさらなる鎖も包含する。したがって、核酸は、分子の一本の鎖を含む特定の配列の1つまたは複数の相補鎖、すなわち「相補体」を含む、少なくとも1つの二本鎖分子または少なくとも1つの三本鎖分子も包含してもよい。
【0033】
哺乳動物細胞においてα-シヌクレインを誘導発現させるための核酸ベクター
非限定的に、プラスミド、線状核酸分子、人工染色体、およびウイルスベクターを含む核酸ベクターを用いて、αシヌクレイン核酸を哺乳動物細胞にトランスフェクションすることができる。ベクターは、α-シヌクレイン核酸、本明細書に記載されるα-シヌクレインの変異体または変種体のいずれかを導入遺伝子として含み得る。
【0034】
構築物を含むベクターまたは核酸分子が発現用に調製されたならば、種々の適切な手段、すなわち形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション等のいずれかにより、DNA構築物を適切な宿主細胞に導入することができる。ベクターがウイルスベクターである場合には、直接感染によりベクターを細胞に送達することができる。好ましくは、ベクターは宿主ゲノムに安定に組み込まれる。安定に組み込まれた核酸(例えば、ベクター)を含む細胞株を作製する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Sambrook et al. in Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989)を参照されたい)。簡潔に説明すると、例えばG418、ネオマイシン、またはハイグロマイシンBを含む多くの抗生物質を使用して、核酸がトランスフェクションされた細胞を選択することができる。一般に、トランスフェクションする核酸は、適切な抗生物質耐性遺伝子を含むか、または適切な抗生物質耐性遺伝子を含むベクターと同時にトランスフェクションされる。したがって、抗生物質中で培養した場合、抗生物質耐性遺伝子をコードする安定に組み込まれた核酸を含む細胞およびその子孫のみが、生存する。
【0035】
α-シヌクレインを誘導性プロモーターの制御下で発現させることができる。一般に、誘導発現ベクターは、1コピーまたは複数コピーの誘導物質応答エレメントから構成され、これは(i) 哺乳動物転写プロモーター(例えば、例えばTATAボックスプロモーターエレメント‐転写機構のためのDNAドッキング部位を含むCMVプロモーター)と(ii) 関心対象の導入遺伝子(例えば、α-シヌクレイン)をコードする機能的に連結された核酸を分離する。発現ベクターを含む細胞内には、誘導物質の非存在下で誘導物質応答エレメントに結合し得る転写リプレッサータンパク質も存在する。リプレッサーは、内因的に発現させるかまたは細胞に導入した核酸からトランスで外因的に発現させることが可能である。転写リプレッサーはDNA結合に加えて誘導物質にも結合することができ、誘導物質がリプレッサーに結合すると、リプレッサーがDNAから解離する(図1を参照されたい)。したがって、誘導物質(例えば、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、またはタモキシフェンなどの化合物)が存在しない場合、リプレッサータンパク質は1つまたは複数の誘導物質応答エレメントに結合し、導入遺伝子の転写を妨げる。しかし、リプレッサータンパク質が誘導物質に結合すると、誘導物質応答エレメントから解離し、導入遺伝子の転写およびそれに続く発現が可能になる。一般に、誘導物質による処理後の導入遺伝子の発現は、誘導物質の薬用量に依存する(例えば、施与する誘導物質の濃度が高いほど、導入遺伝子の発現は高くなる)。そのような誘導発現ベクターの例には、これらに限定されないが、以下に記載されるようなTet-Onベクター系、およびStratagene Inc.(カリフォルニア州、ラホーヤ)によって製造されるようなエクジソン誘導発現ベクター系が含まれる。
【0036】
あるいは、発現ベクターを含む細胞は、誘導物質の存在下でのみ誘導物質応答エレメントに結合し得る転写活性化因子を含み得る。したがって、誘導物質を細胞に施与すると、誘導物質応答エレメントに対する正の転写因子の結合が誘導されることにより、導入遺伝子の発現がやはり「スイッチオン」になる。そのようなベクターおよび調節系の例としては、エストロゲン/タモキシフェン調節性エストロゲン受容体ベクター系が挙げられる。
【0037】
いくつかの態様では、α-シヌクレインポリペプチドを、以下の実施例で例証されるような「Tet-On」系の制御下で発現させることができる(図1も参照されたい)。Tet-onベクターは、テトラサイクリン制御性トランスリプレッサー、rtTAが結合するテトラサイクリン応答エレメント(TRE)を含む。野生型tetリプレッサー(TetR)の変種体であるrtTAは、TetRリプレッサーと、単純ヘルペスウイルス1型のVP16トランス活性化ドメインから構成される融合ポリペプチドである。野生型TetR DNA結合ドメイン内の4つのアミノ酸変化により、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンエフェクターの存在下でのみ、標的導入遺伝子のテトラサイクリン応答エレメント(TRE)内のTetO配列を認識できるように、rtTA DNA結合特性が変化している。したがって、Tet-On系において、TRE調節性標的遺伝子の転写は、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンの存在下でのみrtTAによって促進される。
【0038】
誘導物質(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)の施与後のα-シヌクレインの誘導を評価するための方法としては、α-シヌクレインに特異的な抗体を使用するウェスタンブロッティング、またはα-シヌクレインのmRNA発現を検出するためのRT-PCRもしくはノーザンブロッティング技法が挙げられる。そのような方法は当業者に周知であり、Sambrook et al. (in Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3 (1989))に詳述されている。α-シヌクレインの発現は、誘導後約1時間(例えば、約30分、約90分、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約8時間、約12時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約36時間、約48時間、またはそれ以上)で検出することが可能である(実施例1を参照されたい)。最大誘導レベルは、誘導後約12〜24時間で認められる場合が多い。いくつかの態様では、誘導後、経時的に発現の変化を判断(評価)することができる。例えば、誘導前(すなわち、誘導物質(例えば、ドキシサイクリンまたはタモキシフェン)を添加する前)のα-シヌクレインの発現量を、誘導後の様々な時点(例えば、1、4、8、および12時間;4、8、12、および16時間;8、12、16、および20時間;12、24、36、および48時間)における細胞によるα-シヌクレインの発現と比較することができる。
【0039】
誘導剤の適切な開始濃度は、約0.001μM(例えば、約0.01μM、約0.1μM、約1.0μM、約10.0μM、約100μM)である。誘導剤の濃度は、特定の実験について最適化することができ、例えば細胞株、導入遺伝子、または細胞を培養する培養条件(例えば、低血清条件)に依存し得る。
【0040】
いくつかの態様において、誘導性プロモーターの制御下にα-シヌクレインをコードする核酸ベクターを含む哺乳動物細胞(例えば、哺乳動物の神経細胞)は、非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、またはモルモット)内にある。ベクターは、エクスビボで哺乳動物細胞(例えば、神経細胞)に導入することができる、すなわち、細胞をインビトロでトランスフェクションし、その後哺乳動物に移植するかまたはさもなくば送達する(例えば、外科的に移植する)ことができる。あるいは、当技術分野で公知の種々の技法のいずれかを用いて、非ヒトトランスジェニック動物を確立することができる(例えば、Manson et al. (2001) Exp. Rev. Mol. Med. 11;およびHofker et al. Trangenic Mouse: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) Humana Press, Clifton, N.J., Vol. 29 (2002)を参照されたい)。
【0041】
動物におけるα-シヌクレインの発現の誘導は、適量の誘導物質を動物に投与することによって達成することができる。誘導物質は、食物または水の一部として(すなわち、食物または水に含めて)哺乳動物に送達することもできるし、静脈内投与または非経口投与(例えば、皮下注射)することもできる。
【0042】
動物モデルにおける誘導剤の適切な投与量、および導入遺伝子の誘導を検出するための方法は、例えば、Teng et al. (2002) Physiol. Genomics 11:99-107;Kim et al. (2003) Am. J. Pathol. 162(5):1693-1707;およびZabala et al. (2004) Cancer Res. 64:2799-2804に記載されている。
【0043】
以下のスクリーニング法では、上記の哺乳動物細胞のインビトロまたはインビボ態様のいずれもが使用できることが理解される。
【0044】
スクリーニング法
本発明は、哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性を阻止または抑制する「候補薬剤」(例えば、化合物または薬物)をスクリーニングおよび同定する方法に注目する。したがって、本明細書で言及する「候補薬剤」とは、哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性を減少させる、妨げる、または抑える(すなわち、阻止または抑制する)可能性を備えた任意の物質である。哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性は、例えばアポトーシスまたは壊死であり得、非限定的に、細胞におけるプロテアソーム活性障害、または細胞質における封入体/凝集体の形成の結果であり得る。しかし、正確な作用機序にかかわらず、本明細書のスクリーニング法によって同定される薬剤は、これらに限定されないが、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、またはグアム・パーキンソン認知症複合などの対象(例えば、ヒト患者)におけるシヌクレイノパチーを治療する上で有用な可能性がある。
【0045】
核酸、ポリペプチド、小分子化合物、巨大分子化合物、ペプチド模倣体、または本明細書に記載される任意の他の化合物(例えば、以下の「化合物」を参照されたい)を含むがそれらに限定されるわけではない様々な型の候補薬剤を、本明細書に記載される方法によってスクリーニングすることができる。場合によっては、候補薬剤は、哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性を減少させる、妨げる、または抑える遺伝因子である。例えば、種々の遺伝子のコード配列を含むcDNAライブラリーをスクリーニングして、本明細書に記載される疾患に有望な治療遺伝子を同定することができる。あるいは、スクリーニングを実施して、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレイン発現によって起こる細胞毒性に寄与する遺伝子エレメントを同定することができる。例えば、1つまたは複数の遺伝子の非存在下での細胞毒性のレベルまたは量を決定できるように、siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのライブラリーをスクリーニングすることができる。別の例では、スクリーニングアッセイを実施する前に、1つまたは複数の遺伝子を不活化するように、哺乳動物の神経細胞に突然変異を起こさせることができる。これらの例では、遺伝子の非存在下(突然変異による不活化またはサイレンシングによる)で、細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性のレベルが減少することにより、その遺伝子がα-シヌクレインに誘導される細胞毒性に寄与することが示される。したがって、遺伝子を標的化するsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、シヌクレイノパチーを治療する上で有用であり得る。
【0046】
α-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性を阻止または抑制し得る薬剤を同定するためのスクリーニング法は、(i) 候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において毒性を誘導するのに十分なレベルで、α-シヌクレインをコードする核酸の発現を可能にする条件下で、細胞を培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞生存度を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で測定された細胞生存度を、該候補薬剤の非存在下での細胞生存度と比較する段階を含み、細胞生存度が該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより高い場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物と同定される。
【0047】
スクリーニングアッセイ法は、誘導性プロモーターの制御下にα-シヌクレインをコードする安定に組み込まれた核酸を含む哺乳動物細胞を含み得る。細胞は任意の哺乳動物細胞であり得るが、好ましくは、細胞は神経細胞(例えば、初代神経細胞、またはPC12、H4、SK-N-SH、SH-SY5Y、Neuro-2a、SVG p12、CCF-STTG1、SW 1088、SW 1783、LN-18、A172、U-138 MG、T98G、U-87 MG、U-118 MG、Hs 683、M059K、MO59J、H4、LN-229、Daoy、もしくはPFSK-1などの神経細胞株(さらなる細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、バージニア州、マナッサスで入手可能である))である。α-シヌクレインは、テトラサイクリン誘導性プロモーター(実施例に記載される通り)または任意の他の適切な誘導性プロモーターの制御下にあり得る。
【0048】
誘導性プロモーター(例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター)の制御下に安定に組み込まれたα-シヌクレインを含む細胞は、組織培養プレート、理想的には、96ウェル培養プレートなどのマルチウェルアッセイプレートで培養することが可能である。細胞は、α-シヌクレインの発現を誘導するための誘導剤(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)の不在(非誘導)下または存在(誘導)下で培養することが可能である。非誘導細胞および誘導細胞はまた、候補化合物(例えば、例えば化合物といった候補薬剤の1用量)で処理することが可能である。化合物の非存在下で培養した誘導細胞または非誘導細胞は、任意に、候補薬剤を送達した同様の量または濃度の媒体(例えば、DMSO)で処理することができる。アッセイは、以下のように細胞または細胞セットを含み得る:(i) 候補化合物で処理した誘導細胞;(ii) 候補化合物で未処理の誘導細胞;(iii) 候補化合物で処理した非誘導細胞;および(iv) 候補化合物で未処理の非誘導細胞。候補化合物が、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレイン誘導細胞毒性を阻止または抑制するかどうかを決定するために、細胞セット(i)に存在する毒性の量を、細胞セット(ii)に存在する細胞毒性の量と比較することができる。細胞セット(i)に存在する細胞毒性よりも細胞セット(ii)に存在する細胞毒性が大きい場合、このことは、該薬剤が細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制することを示す。細胞セット(iii)および(iv)は、例えば、それぞれ誘導剤または化合物にかかわりなく、培養条件に起因する細胞での細胞毒性の量を標準化するための対照として使用することができる。例えば、細胞セット(iii)に存在する毒性の量は、候補薬剤がそれ自体で細胞毒性があることを示し得る。
【0049】
例えば、濃度依存性またはEC50を決定しようとする場合には(以下を参照されたい)、細胞を2つまたはそれ以上の濃度の化合物で処理することができる。アッセイに適した候補化合物の濃度としては、例えば、約0.01μM〜1 mMの薬剤(例えば、約0.01μM〜0.1μM、約0.1μM〜1μM、約1μM〜10μM、約10〜1 mM、または約100μM〜1 mM)が挙げられる。
【0050】
誘導剤または化合物の本方法に適した量を決定するには、いくらかの最適化が必要であり得ることが理解される。そのような最適化は、例えば、使用する細胞の型、化合物の詳細、α-シヌクレイン誘導の量、またはα-シヌクレインの誘導前に必要な時間に基づき得る。
【0051】
α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制するための薬剤の有効性を評価する方法は、定量的、半定量的、または定性的であり得る。したがって、例えば、薬剤の活性を個別の値として決定することができる。薬剤の定量的決定の例は、その薬剤の最大反応の半分を与える薬剤(例えば、化合物)のモル濃度である50%有効濃度、すなわちEC50値である。あるいは、薬剤の有効性は、当技術分野で公知の種々の半定量的/定性的系を使用して評価することもできる。したがって、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する薬剤の有効性は、例えば、(a) 「優」、「良」、「可」、「不可」、および/もしくは「劣」のうちの1つもしくは複数;(b) 「非常に高い」、「高い」、「平均」、「低い」、および/もしくは「非常に低い」のうちの1つもしくは複数;または(c) 「+++++」、「++++」、「+++」、「++」、「+」、「+/-」、「および/もしくは「-」のうちの1つもしくは複数として表すことができる。
【0052】
哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する場合の薬剤(例えば、本明細書に記載される化合物のいずれかのような化合物)の有効性を決定するための方法。細胞は一般に、固体支持マトリックス(例えば、プラスチック組織培養プレートまたはマルチウェル(96または386ウェル)組織培養プレート)にプレーティングし、適切な培地中で培養する。次に、細胞を、一般に例えば10μM〜0.1μM濃度の候補薬剤の段階希釈物と接触させる。多くの場合には、対照化合物(例えば、公知の濃度の公知の阻害剤)もまた、内部標準として1つの細胞セットに添加する。多くの場合には、1つの細胞セットを、化合物を送達する担体、緩衝液、または媒体の存在下で培養する。細胞は、試験化合物の存在下または非存在下で、例えば1〜3日間(1日、2日、3日、4日、1週間、2週間)といった様々な時間培養し、その後プレート上に残存する細胞の数またはプレート上に残存する細胞の生存度について試験する。薬剤の存在下または非存在下におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性の程度を検出する(例えば、決定または測定する)方法は無数にあり、当業者に周知である。これらの方法は、例えば、細胞内のATP濃度を測定する段階を含み得る。細胞内または細胞集団内に存在するATPの量は、その集団内の生細胞数に比例する。一例では、例えば、ルシフェラーゼ/ルシフェリンを使用することにより、ATP濃度を酵素的に決定することができる。これらの酵素は、ATP加水分解を必要とする反応において光シグナルを生成する。したがって、試料中に存在するATPが多いほど、より多くの光が生成される。本方法では、最初に細胞を回収し、溶解する。次に、細胞溶解液をルシフェラーゼ/ルシフェリンと共にインキュベートし、試料から生成されたATP依存性光の量をルミノメーター(例えば、Turner BioSystems TD-20/20 Luminometer、Turner Biosystems、カリフォルニア州、サニーベール)を用いて検出および/または定量することができる。この場合、α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する上での所与の薬剤の有効性を決定するために、化合物の存在下で誘導細胞から生成された光シグナルの量を、薬剤の非存在下で誘導細胞から生成された光シグナルと比較することができる。薬剤の非存在下で培養した細胞と比較して、薬剤の存在下で培養した細胞の溶解物からより多くの光シグナルが生成された場合、このことは、その化合物が細胞毒性を阻止または抑制することを示す。本方法のさらなる例を実施例に記載する。
【0053】
α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する場合の薬剤の有効性を決定するのに適した他の方法は、例えば、薬剤の非存在下または存在下での誘導期間後に残存する細胞数を計数する段階を含む。本方法では、細胞をプレートからトリプシン処理し、洗浄し、色素(例えば、トリパンブルー)で染色して、顕微鏡または機械的細胞計数器(Beckman-Coulter Z1(商標) Series COULTER COUNTER(登録商標) Cell and Particle Counter)を用いて計数することができる。トリパンブルーのような色素は死滅細胞または死滅しかけている細胞によってのみ取り込まれるため、本方法によって集団内の生細胞と非生細胞の識別(すなわち、青色または白色細胞)が可能になる。処理後の薬剤(例えば、本明細書に記載される組成物のいずれか1つ)によるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性の阻止または抑制を決定するための別の方法は、代謝アッセイ法、例えばMTT代謝アッセイ法(Invitrogen、米国)である。MTT臭化ジフェニルテトラゾリウムは、ミトコンドリア呼吸鎖に属し、生細胞でのみ活性を有するコハク酸脱水素酵素系によってホルマザン結晶に分解されるテトラゾリウム塩(帯黄色)である。ミトコンドリアコハク酸脱水素酵素は、電子カップリング試薬の存在下で、MTT結晶を紫色のホルマザンに還元する。細胞を化合物で処理した後に細胞をMTT試薬に曝露すると、ウェル内により多くの生細胞が存在するほど、より多くのホルマザン色素が生成される。ホルマザン色素の量は、例えば分光光度計を用いて測定することができる。
【0054】
細胞における細胞毒性(例えば、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現によって起こる細胞毒性)の薬剤(例えば、本明細書に記載される化合物または組成物)による阻止または抑制を試験する一般的に用いられる他の方法は、細胞におけるDNA合成のモニタリングを含む。例えば、薬剤の存在下または非存在下で培養した誘導細胞を、細胞分裂に際して細胞のDNAに取り込まれ得るヌクレオチド類似体でも処理する。そのようなヌクレオチド類似体の例としては、例えばBrdUまたは3H-チミジンが挙げられる。それぞれの場合において、誘導細胞(所与の薬剤の存在下および非存在下で培養)に取り込まれた標識の量を定量するが、標識取り込みの量は細胞集団における細胞増殖の量に直接比例する。薬剤の存在下および非存在下で誘導細胞に取り込まれた標識の量は、非誘導細胞に取り込まれた標識の量に対して標準化することができる。薬剤で未処理の誘導細胞と比較して、薬剤で処理した誘導細胞セットにおいてより多くのシグナル(すなわち、より多くのDNA合成)が認められることは、該薬剤がα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制することを示す。
【0055】
薬剤によるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性の阻止または抑制を評価するのに適した他の方法は、細胞におけるアポトーシスの検出を含む。アポトーシスを検出または測定するそのような方法は、例えば、DNA断片化、カスパーゼ活性化、またはアネキシンV発現をモニターする段階を含む。
【0056】
本発明は、α-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物を同定するためのスクリーニング法にも注目する。例えば、薬剤の存在下および非存在下で培養した誘導細胞を、(i) 固定し(例えば、ホルムアルデヒトまたはパラホルムアルデヒドによる);(ii) ゴルジ特異的タンパク質マーカーに特異的な検出可能に標識された第一抗体で処理し;(iii) 検出可能な標識によって生成されるシグナルを、蛍光支援細胞選別(FACS)および共焦点顕微鏡法を含むいくつかの方法のいずれかを用いて検出することができる。一例では、膜結合型ゴルジ局在タンパク質、GM130に対する第一抗体を用いて、ゴルジの境界を特異的に検出することができる。場合によっては、無傷のゴルジを示す断続パターンが検出される。ゴルジ染色がより拡散していれば、一般に、その細胞小器官の完全性の破壊が示される。ゴルジの完全性を決定するための例示的な方法は実施例に記載しており、例えばGosavi et al. (2002) J. Biol. Chem. 277(50):48984-48992にも記載されている。
【0057】
検出可能な標識は、第一抗体(ゴルジ特異的タンパク質マーカーを特異的に認識する一次抗体)、または第一抗体に結合し得る二次抗体に結合させることができる。あるいは、第一抗体を結合対(すなわち、ストレプトアビジンまたはビオチン)の第一メンバーに結合させることができ、結合対の第二メンバーを検出可能な部分に連結することができる。検出可能な部分には、放射性標識(例えば、125I、35S、33P、もしくは32P)、蛍光標識(例えば、テキサスレッド、フルオレセイン)、発光部分(例えば、ランタニド)、またはFRET対の1つもしくは複数のメンバーが含まれ得る。これらの検出可能なマーカーを検出する方法は当技術分野で周知であり、以下の実施例に記載する。
【0058】
α-シヌクレイン発現の誘導後に、ERからゴルジへの小胞輸送の遮断が観察されている(その全体が参照により組み入れられるPCT公開公報WO 2006/073734を参照されたい)。ERとゴルジ間の小胞輸送をモニターするのに適したアッセイ法は、一般に、これら2つの細胞小器官の間の特定タンパク質の輸送をモニターする段階を含む。例えば、タンパク質は、分泌される予定の内因性タンパク質であり得、例えば、本明細書に記載される固定化および抗体ベースの染色法のいずれかによって検出することが可能である。あるいは、1つまたは複数のタンパク質は検出可能なタンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、または蛍光タンパク質に結合されたタンパク質)であり得、この場合、タンパク質を細胞において直接可視化することができる。これらのアッセイ法では、ERからゴルジへの経路を通して輸送するタンパク質の細胞内局在性をモニターする。α-シヌクレインの発現はERからゴルジへのタンパク質の輸送を遮断するため、ERからゴルジへのタンパク質の輸送を促進するまたは増加させる候補薬剤は、したがってERからゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物と同定される。これらの化合物は、α-シヌクレイン媒介の毒性を減少させ、シヌクレイノパチー(例えば、本明細書に記載されるシヌクレイノパチーのいずれか)を治療するための候補治療薬であると考えられる。本明細書に記載される方法において用いるための、ERからゴルジへの輸送を検出する例示的な方法は、例えば、Kawano et al. (2006) J. Biol. Chem. 281(40):30279-30288;Kumagai et al. (2005) J. Biol. Chem. 280(8):6488-6495;およびGiussani et al. (2006) Mol. Cell. Biol. 26(13):5055-5069に見出すことができる。
【0059】
α-シヌクレイン発現細胞において、受容膜(例えば、ゴルジ膜またはシナプス前膜)への供与小胞(例えば、ER小胞またはシナプス小胞)融合を調節する化合物を同定するために、スクリーニング法を実施することもできる。α-シヌクレイン発現細胞において受容膜への供与小胞融合を増加させる化合物は、α-シヌクレイン媒介の毒性を減少させ、シヌクレイノパチーを治療するための候補治療薬であると考えられる。本明細書に記載される方法において用いるための、小胞のドッキングおよび融合を検出する例示的な方法は、例えば、Hibbert et al. (2006) Int. J. Biochem. Cell Biol. 38(3):461-471;Tsuboi et al. (2005) J. Biol. Chem. 280(47):39253-39259;およびHuang et al. (2005) Mol. Biol. Cell 16(6):2614-2623に見出すことができる。
【0060】
本発明は、細胞からのタンパク質分泌を増加させる化合物を同定するための方法も開示する。そのような方法は、哺乳動物細胞(例えば、神経細胞)におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を評価するためにも使用できることが理解される。例えば、本方法は、(i) 候補薬剤の存在下および非存在下で誘導細胞を培養する段階;(ii) 該候補薬剤の存在下で細胞から分泌される1つまたは複数のタンパク質の量を測定する段階;ならびに(iii) 該候補薬剤の存在下で細胞から分泌される1つまたは複数のタンパク質の量を、該候補薬剤の非存在下で分泌される1つまたは複数のタンパク質の量と比較する段階を含む。該候補薬剤の非存在下と比較して、該候補薬剤の存在下における1つまたは複数のタンパク質の分泌が上昇する(増加する)ことにより、該候補薬剤が1つまたは複数のタンパク質の分泌を増加させ得る化合物であることが示される。細胞からのタンパク質発現を検出するのに適した方法は、当技術分野で周知である。例えば、培養細胞からの培地を回収し、例えばウェスタンブロッティングもしくはドットブロッティング、または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって、タンパク質の存在または量について解析することができる。タンパク質が低レベルで分泌される場合には、任意に培地を濃縮することができる。あるいは、検出しようとする分泌タンパク質が例えば酵素である場合には、例えば発色基質を使用することにより、細胞培養液中の酵素活性を検出または定量することができる。場合によっては、分泌タンパク質は細胞の表面に結合したままであり、例えばFACSまたは共焦点顕微鏡技法を用いて検出することが可能である。場合によっては、分泌タンパク質を、例えば上記の固定化および抗体ベースの染色によって、インサイチュー(すなわち、細胞内)で細胞表面への移行中に検出することもでき、またはタンパク質を直接検出できる場合には(例えば、蛍光タンパク質)、FACSまたは顕微鏡技法によってタンパク質を検出または定量することができる。
【0061】
本明細書に記載されるスクリーニング法は、シヌクレイノパチーを治療する上で有用な化合物を同定するための二次スクリーニングまたは細胞ベースのスクリーニングとしても使用できることが理解される。例えば、例えば別の系(例えば、酵母)においてα-シヌクレインに誘導される毒性を阻害する能力に基づいて化合物を最初に選択する一次スクリーニング後に、本スクリーニング法を用いることができる。
【0062】
例えば、本明細書に記載されるスクリーニング法のいずれにおいても、陽性対照として有用である例示的化合物としては、1-t-ブチル-3-(4-クロロ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミンおよびフォルスコリン(実施例5を参照されたい)、ならびに例えばその全体が参照により組み入れられるPCT公開公報WO 2006/034003に見出されるものが挙げられる。
【0063】
スクリーニングアッセイを、複数反応の迅速な調製、処理、および解析を可能にする任意の形式で実施することができる。これは、例えばマルチウェルアッセイプレート(例えば、96ウェルまたは386ウェル)で行うことが可能である。種々の薬剤の保存溶液は手動でまたは機械的に作製することができ、その後のピペット操作、希釈、混合、分配、洗浄、インキュベーション、試料読み取り、データ収集、および解析はすべて、市販の解析ソフトウェア、ロボット工学、およびアッセイから生じたシグナルを検出できる検出計測器を用いてロボット制御で行うことができる。そのような検出器の例には、これらに限定されないが、分光光度計、ルミノメーター、蛍光光度計、および放射性同位体の崩壊を測定する装置が挙げられる。
【0064】
化合物
本明細書に記載される方法のいずれかを用いてスクリーニングまたは同定しようとする化合物には、種々の化学的種類が含まれ得るが、典型的には50〜2,500ダルトンの分子量を有する有機小分子が含まれ得る。これらの化合物は、タンパク質との構造的相互作用(例えば、水素結合)に必要な官能基を含むことが可能であり、典型的には少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を含み、好ましくは官能化学基のうちの少なくとも2つを含む。これらの化合物は、上記官能基のうちの1つまたは複数で置換された、環式炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造(例えば、プリンコア)を含む場合が多い。
【0065】
別の態様において、化合物には、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体(例えば、ペプトイド)、アミノ酸、アミノ酸類似体、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体または構造類似体、ポリヌクレオチド、核酸アプタマー、およびポリヌクレオチド類似体を含むが、これらに限定されるわけではない、生体分子もまた含まれ得る。
【0066】
化合物を、化学ライブラリー、天然物ライブラリー、およびランダムなペプチド、オリゴヌクレオチド、または有機分子からなるコンビナトリアルライブラリーを含むいくつかの可能性のある供給源から同定することができる。化学ライブラリーは多様な化学構造からなり、そのうちのいくつかは、既知化合物の類似体、または他の創薬スクリーニングにおいて「ヒット」もしくは「リード」として同定された類似体もしくは化合物であり、他のものは天然物に由来し、さらに他のものは非指向性の(non-directed)合成有機化学から生じる。天然物ライブラリーは、(1) 土壌微生物、植物微生物、もしくは海洋微生物からの培養液の発酵および抽出、または(2) 植物もしくは海洋生物の抽出により、スクリーニング用の混合物を創出するために使用される微生物、動物、植物、または海洋生物の収集物である。天然物ライブラリーは、ポリペプチド、非リボソームペプチド、およびそれらの変種(非天然)を含む。総説に関しては、Science 282:63-68 (1998)を参照されたい。コンビナトリアルライブラリーは、混合物としての多数のペプチド、オリゴヌクレオチド、または有機化合物から構成される。これらのライブラリーは、伝統的な自動合成法、PCR、クローニング、または専有の合成法により、調製が比較的容易である。特に関心対象となるのは、非ペプチドコンビナトリアルライブラリーである。関心対象となるさらなる他のライブラリーには、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣体、多重平行合成(multiparallel synthetic)収集物、リコンビナトリアル、およびポリペプチドのライブラリーが含まれる。コンビナトリアルケミストリーおよびこれから創出されたライブラリーの総説に関しては、Myers, Curr. Opin. Biotechnol. 8:701-707 (1997)を参照されたい。本明細書における種々のライブラリーの使用により試験化合物が同定されると、続いて、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する試験化合物「ヒット」または「リード」の能力を最適化するために、該「ヒット」または「リード」を修飾することができる。
【0067】
上記で同定される化合物は、任意の化学的または生物学的方法によって合成することが可能である。上記で同定される化合物は純粋であってもよいし、異種組成物(例えば、薬学的組成物)中にあってもよく、アッセイに、生理学的に、または薬学的に許容される希釈剤または担体中で調製することが可能である(以下の薬学的組成物および治療方法を参照されたい)。
【0068】
薬学的組成物
哺乳動物の神経細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制することが見出された薬剤は、例えば、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、またはグアム・パーキンソン認知症複合などのシヌクレイノパチーを治療するために対象に投与するための薬学的組成物として製剤化することが可能である。典型的に、薬学的組成物は薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用する「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩または塩基付加塩を含んでよい(例えば、Berge et al., J. Pharm. Sci. 66:1-19, 1977を参照されたい)。
【0069】
標準的な方法に従って、薬剤を製剤化することができる。薬学的製剤化は十分に確立された技術であり、例えば、Gennaro (ed.), Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins (2000) (ISBN: 0683306472);Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Ed., Lippincott Williams & Wilkins Publishers (1999) (ISBN: 0683305727);およびKibbe (ed.), Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association, 3rd ed. (2000) (ISBN: 091733096X)にさらに記載されている。
【0070】
1つの態様において、哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する薬剤を、塩化ナトリウム、リン酸二ナトリウム七水和物、リン酸一ナトリウム、および安定剤などの賦形剤物質と共に製剤化することができる。薬剤を、例えば適切な濃度で緩衝溶液中に提供することができ、2〜8℃で保存することができる。
【0071】
薬学的組成物は種々の形態であってよい。これらには、例えば、溶液(例えば、注射液および注入液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、および坐剤などの液体剤形、半固形剤形、および固形剤形が含まれる。好ましい形態は、意図する投与方法および治療用途に依存し得る。典型的に、本明細書に記載される薬剤の組成物は注射液または注入液の形態である。
【0072】
そのような組成物は、非経口様式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)によって投与することが可能である。本明細書で使用する「非経口投与」および「非経口投与する」という語句は、腸内投与および局所投与以外の、一般に注射による投与方法を意味し、これには、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内、および胸骨内注射および注入が含まれる。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高濃度での安定した保存に適したその他の秩序ある構造として製剤化することが可能である。無菌注射液は、必要量の本明細書に記載される薬剤を、必要に応じて上記の成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒に取り込み、その後ろ過滅菌することによって調製することが可能である。一般に、分散液は、基礎となる分散媒、および上記列挙したものからの必要とされるその他の成分を含む無菌媒体中に、本明細書に記載される薬剤を組み込むことにより調製される。無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、それによって、あらかじめ滅菌ろ過したその溶液から、本明細書に記載される薬剤および任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤を使用することにより、分散液の場合には必要とされる粒径を維持することにより、および界面活性剤を使用することにより、維持することが可能である。注射用組成物の長期吸収は、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンといった、吸収を遅延させる物質を組成物中に含めることによってもたらすことが可能である。
【0073】
特定の態様では、薬剤を、インプラントおよびマイクロカプセル化された送達系を含む制御放出製剤のように、迅速な放出から化合物を保護する担体と共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤を調製するための多くの方法は特許化されているか、または一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0074】
哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する薬剤として同定された薬剤を、例えば血液、血清、または他の組織といった循環中でのその安定性および/または保持を、例えば少なくとも1.5、2、5、10、また50倍向上させる部分を用いて修飾することができる。修飾された薬剤は、パーキンソン病などのシヌクレイノパチーで起こり得るような関心対象の治療部位(例えば、レビー小体の位置)に到達し得るかどうかを判断するために評価することが可能である(例えば、標識型の薬剤を使用することによる)。
【0075】
例えば、薬剤を、ポリマー、例えばポリアルキレンオキシドまたはポリエチレンオキシドなどの実質的に非抗原性のポリマーと会合させることができる。適切なポリマーは、重量によって実質的に異なる。約200〜35,000ダルトン(または約1,000〜約15,000、および2,000〜約12,500)の数平均分子量を有するポリマーを使用することができる。例えば、薬剤を水溶性ポリマー、例えば親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンに結合させることができる。このようなポリマーの非限定的なリストには、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマー、およびブロックコポリマーの水溶性が維持されるという条件でそれらのブロックコポリマーが含まれる。さらなる有用なポリマーとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(プルロニック(Pluronics))などのポリオキシアルキレン;ポリメタクリル酸;カルボマー;ならびに分岐多糖または非分岐多糖が挙げられる。薬剤(例えば、化合物)を第2の薬剤(例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤などの、シヌクレイノパチーのための任意の付加療法)と併用して使用する場合には、2つの薬剤を別々にまたは共に製剤化することができる。例えば、それぞれの薬学的組成物を、例えば投与直前に混合して共に投与することもできるし、または例えば同時にもしくは別の時点で別々に投与することもできる。
【0076】
投与
哺乳動物細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制し得る薬剤は、種々の方法によって対象、例えばヒト対象に投与することが可能である。多くの適用に関して、投与経路は以下のうちの1つである:静脈内注射または注入(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内注射(IP)、または筋肉内注射。場合によっては、CNSに、例えば髄腔内、脳室内(ICV)、脳内、または頭蓋内に、直接投与してもよい。薬剤は、固定用量として、またはmg/kg用量で投与することが可能である。他の例では、投与は経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、または直腸内であり得る。
【0077】
経口組成物は一般に、不活性の希釈剤または可食担体を含む。経口治療投与を目的とする場合、活性化合物を賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ剤、または例えばゼラチンカプセル剤といったカプセル剤の形態で使用することが可能である。経口組成物はまた、口腔洗浄液として用いるために、液体担体を用いて調製することも可能である。薬学的に適合する結合剤および/または補助物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分のいずれかまたは類似の性質の化合物を含み得る:微結晶性セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチンなどの結合剤;澱粉もしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterote)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤(glidant);スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバーなどの着香剤。
【0078】
散剤および錠剤は、1%〜95%(w/w)の活性化合物を含む。特定の態様において、活性化合物は5%〜70%(w/w)の範囲である。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂等である。「調製物」という用語は、活性化合物と、カプセル剤を提供する担体としての封入剤との製剤を含むことが意図され、カプセル剤内で活性化合物は他の担体と共にまたは担体を含まずに担体によって囲まれ、そのようにして担体と関連している。同様に、カシェ剤およびトローチ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびトローチ剤は、経口投与に適した固形剤形として用いることが可能である。
【0079】
経口使用に適した水溶液を、有効成分を水中に溶解し、必要に応じて適切な着色剤、香料、安定剤、および増粘剤を添加することによって調製することができる。経口使用に適した水性懸濁液は、微粉状有効成分を、天然もしくは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁化剤などの粘稠性物質と共に水中に分散させることによって作製することが可能である。
【0080】
吸入によって投与する場合、化合物は、例えば二酸化炭素などのガスといった適切な噴霧剤を含む加圧容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0081】
経粘膜または経皮手段による全身投与も可能である。経粘膜または経皮投与するには、障壁を透過するのに適した浸透剤を製剤中で使用する。そのような浸透剤は当技術分野で一般に公知であり、例えば経粘膜投与の場合、これには界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐剤を用いて達成することが可能である。経皮投与するには、活性化合物を、当技術分野で一般に公知である軟膏剤、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化する。
【0082】
化合物をまた、直腸送達のために、坐剤(例えば、カカオ脂および他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤と共に)または停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0083】
薬剤がポリペプチドであるか、またはさもなくば特に抗原性である場合には、薬剤に対する抗体の産生を減少させるかまたは回避するように、用量を選択することもできる。薬剤の投与経路および/または投与方法も、個々の症例に合わせることができる。
【0084】
所望の反応、例えば治療反応または組み合わせ治療効果をもたらすように、投与計画を調整する。投与計画は、例えば、シヌクレイノパチーを有する哺乳動物の1つまたは複数の罹患細胞におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する。一般に、任意に第2の治療薬の適切な用量と別々にまたは共に製剤化した一定用量の薬剤(例えば、化合物)を使用して、対象に薬剤を提供することができる。薬剤の適切な投与量および/または用量範囲としては、対象におけるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制するのに十分な量が挙げられる。
【0085】
α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制するのに必要な薬剤の用量は、例えば、治療しようとする対象の年齢、性別、および体重を含む種々の要因に依存し得る。対象に投与する用量に影響するその他の要因としては、例えばシヌクレイノパチーの型または重症度が挙げられる。例えば、進行したアルツハイマー病を有する患者は、より軽症型のアルツハイマー病を有する患者とは異なる投与量の、α-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制する薬剤を必要とする場合がある。他の要因には、例えば、患者が同時に罹患しているかまたは以前に罹患していた他の障害、患者の一般的健康状態、患者の遺伝的素因、食習慣、投与時間、排出速度、薬物の組み合わせ、および患者に投与される任意の他のさらなる治療薬が含まれ得る。任意の特定の患者に対する具体的な投与量および治療計画は、治療する医師の判断によることが理解されるべきである。有効成分の量は、特記された化合物、ならびに組成物中のさらなる治療薬の有無および性質にも依存する。
【0086】
本明細書で使用する投与単位形態または「固定用量」とは、治療しようとする対象に対して単位投与量として適した、物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要な薬学的担体との関連において、および任意には他の薬剤との関連において、所望の治療効果(例えば、α-シヌクレインに誘導される細胞毒性の阻止または抑制)をもたらすように算出された所定量の活性化合物を含む。適切な投与頻度は、本明細書の他所に記載する。
【0087】
薬学的組成物は、本明細書に記載されるα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻止または抑制することが判明した薬剤の治療的有効量を含み得る。そのような有効量は、投与する薬剤の効果、または複数の薬剤を使用する場合には薬剤と第2の薬剤の組み合わせ効果に基づいて決定することが可能である。薬剤の治療的有効量は、個体の疾患の状態、年齢、性別、および体重、ならびに所望の反応、例えば少なくとも1つの障害パラメータの改善、例えばシヌクレイノパチーの少なくとも1つの症状(例えば、記憶障害または物忘れ)の改善を個体において誘発する化合物の能力などの要因によっても変えることができる。治療的有効量とは、治療的に有益な効果がいかなる毒性作用または有害作用をも上回る量のことでもある。
【0088】
以下は本発明の実施例である。これらの実施例は、本発明の範囲を限定すると決して解釈されるべきではない。
【0089】
実施例
実施例1. α-シヌクレインの条件的過剰発現
テトラサイクリン-オン(tetracycline-on)プロモーターの制御下でα-シヌクレインポリペプチドを安定して発現するH4ヒトグリオーマ細胞から、TS217細胞株を作製した(図1)。野生型α-シヌクレイン発現の誘導について試験するため、TS217細胞を0.1μg/mLテトラサイクリンなしで(「-」)、または0.1μg/mLテトラサイクリンで1日(1d)および3日(3d)間処理した(図2を参照されたい)。処理したまたは未処理のTS217細胞から様々な時点で全細胞溶解物を調製し、細胞タンパク質をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分離した。α-シヌクレインタンパク質の内因性レベルを示すために、親H4(C)からの全細胞溶解物も調製し、SDS-PAGEに供した。α-シヌクレインの発現は、α-シヌクレインタンパク質に特異的な抗体を使用してウェスタンブロッティングにより確認した(図2)。α-シヌクレインの発現は誘導後1日目までに少なくとも2倍増加し、誘導後3日目までに3倍または4倍超増加した。これらの結果から、α-シヌクレインの発現がテトラサイクリンによって調節されることが示された。
【0090】
実施例2. α-シヌクレインを過剰発現する細胞における細胞毒性
いくつかの実験系において、α-シヌクレインの過剰発現が、毒性誘導剤、または血清欠乏、ドーパミン、およびラクタシスチンなどの低用量のプロテアソーム阻害剤のような条件によって誘導される細胞死に対して細胞を感受性にすることが示されている(Smith et al. (2005) Hum. Mol. Genet. 14(24):3801-3811;Tabrizi et al. (2000) Hum. Mol. Genet. 9(18):2683-2689;およびOstreova et al. (1999) J. Neurosci. 19(14):5782-5791)。安定した誘導系を使用して、野生型α-シヌクレインの過剰発現が細胞生存度に及ぼす影響を決定するため、TS217細胞を0.1μg/mLテトラサイクリンで3〜6日間処理して、α-シヌクレインの発現を誘導した。ViaLight(登録商標) Plus Bioassayキット(Cambrex、メイン州、ロックランド)を使用して細胞溶解物中の細胞ATPレベルを測定することにより、細胞の相対生存度を1日間隔(3日目、4日目、5日目、および6日目)で評価した。α-シヌクレインに誘導される細胞毒性の指標として、相対細胞生存度を、対照細胞(テトラサイクリンで未処理の細胞)に対する誘導細胞の割合として算出した(図3を参照されたい)。任意の他の毒性誘導剤の非存在下で、相対細胞生存度は3日目〜6日目に50%を超えて減少し、これらの細胞におけるα-シヌクレインの発現単独で細胞死を引き起こし得ることが示された。
【0091】
TS217細胞におけるα-シヌクレイン過剰発現の細胞毒性はまた、膜透過性色素、カルセインAMを用いて評価した。ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドにTS217細胞をプレーティングし、0.1μg/mLテトラサイクリンの非存在下(対照)または存在下(誘導)で5日間培養して、α-シヌクレイン発現を誘導した。細胞を2μMカルセインAMで処理し、酵素活性化カルセインAM(生細胞内)の蛍光を、Metamorphプログラム(Universal Imaging、ペンシルバニア州、ウェストチェスター)によって制御されるデジタルカメラを備えた蛍光顕微鏡(Olympus、ペンシルバニア州、センターバレー)を用いて可視化した。Metamorphソフトウェア(Universal Imaging、ペンシルバニア州、ウェストチェスター)を用いて、カルセイン陽性細胞を定量した(図4A)。テトラサイクリンでの5日間の処理(およびα-シヌクレインの誘導)後、生細胞数は約60%減少し(図4B)、これらの細胞におけるα-シヌクレインの過剰発現が細胞死をもたらすことがさらに示された。
【0092】
α-シヌクレインに誘導される毒性に及ぼすプレーティング密度の影響も調べた。TS217細胞を、250、500、1000、2000、および4000個細胞/ウェルの希釈で96ウェルプレートにプレーティングした。細胞をテトラサイクリンの存在下で5日間インキュベートし、その後回収し溶解して(上記の通り)、細胞内ATP濃度を測定した。高い細胞密度(例えば、4000個細胞/ウェル)よりも低い細胞密度(例えば、250個細胞/ウェル)においてより多くの細胞死が認められ、プレーティング密度がα-シヌクレインに誘導される毒性に影響を及ぼすことが示された(図10)。
【0093】
実施例3. 細胞生存度に対するテトラサイクリンの用量依存性
細胞生存度に及ぼすテトラサイクリンの影響が濃度依存的であるかどうかを決定するため、96ウェルプレートで培養したTS217細胞を様々な濃度のテトラサイクリンと共に6日間インキュベートした。処理後、上記の通りに実験細胞群をそれぞれ溶解し、細胞ATPを測定した。媒体単独による培地(テトラサイクリンなし)を対照とした(図5)。細胞内のATP濃度に応じた相対細胞生存度は、用量依存的様式で、テトラサイクリンの濃度が増加するにつれて減少した(図5を参照されたい)。
【0094】
実施例4. α-シヌクレイン過剰発現細胞におけるゴルジ体の断片化
ポリ-L-リジンで被覆したガラス組織培養チャンバースライドにTS217細胞をプレーティングし、0.1μg/mLテトラサイクリンの非存在下(対照)または存在下(誘導)で6日間培養して、α-シヌクレイン発現を誘導した。処理後、リン酸緩衝生理食塩水中の4%スクロースを補充した4%ホルムアルデヒドで細胞を固定し、0.2%トリトン入りPBSで透過処理し、シス-ゴルジ繋留タンパク質GM130に特異的な抗体で染色した(図6A)。無傷のゴルジを含む細胞の数は、α-シヌクレインの6日間の誘導後にほぼ80%減少した(図6B)。
【0095】
ゴルジの完全性に及ぼすα-シヌクレインの強制過剰発現の影響をさらに評価するため、テトラサイクリンの非存在下(対照)および存在下(誘導)で6日間処理したTS217細胞を(上記を参照されたい)、それぞれGM130および膜結合型ゴルジ酵素マンノシダーゼIIに特異的な抗体で二重染色した。対照細胞はGM130およびマンノシダーゼIIのいずれに関しても断続的な共局在パターンを示したが、誘導細胞は拡散した非局在性のゴルジパターンを有し、α-シヌクレイン過剰発現がこれらの細胞においてゴルジ断片化を引き起こしたことがさらに示された(図7)。
【0096】
α-シヌクレインが小胞体(ER)に対しても同様の破壊効果を及ぼすかどうかを決定するため、TS217細胞を先の通りにガラス組織培養スライドにプレーティングし、0.1μg/mLテトラサイクリンの非存在下(対照)および存在下(誘導)で5日間培養して、α-シヌクレイン発現を誘導した。細胞を固定し、ER局在性Ca2+結合タンパク質カルネキシン、または対照としてのマンノシダーゼIIに対する抗体で染色した(図8)。ゴルジ体が著しい断片化を示したのに対し(図7も参照されたい)、α-シヌクレインを過剰発現する細胞ではER形態の肉眼的変化は認められなかった(図8)。
【0097】
実施例5. 細胞生存度の用量依存的救出
選択された化合物がα-シヌクレインに誘導される細胞毒性を阻害し得るかどうかを決定するため、96ウェル組織培養プレートにプレーティングしたTS217細胞を、1-t-ブチル-3-(4-クロロ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イルアミン(化合物J(Cmp J))(0.08μM、0.15μM、および0.3μM)もしくは対照としてのDMSOの存在下で(図9)、またはフォルスコリン(0.3μM、1μM、3μM、および10μM)もしくは対照としてのDMSOの存在下で(図11)、0.1μg/mLテトラサイクリンと共に5日間培養した。5日間の処理後、細胞を溶解し、細胞生存度に応じた細胞内ATP濃度についてアッセイした(上記の通り)。
【0098】
他の態様
本発明をその詳細な説明と共に記載してきたが、前述の説明は例証を目的とするものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。本発明の他の局面、利点、および変更は、以下に記載する特許請求の範囲の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトαシヌクレインを含むタンパク質をコードする核酸に機能的に連結された誘導性プロモーターを含む安定に組み込まれた発現構築物を含む、哺乳動物の神経細胞であって、毒性誘導剤(toxicity-inducing agent)または神経分化因子で細胞を同時に処理することなく該核酸の発現を誘導すると、細胞生存度が低下する、哺乳動物の神経細胞。
【請求項2】
αシヌクレインが野生型α-シヌクレインである、請求項1記載の細胞。
【請求項3】
αシヌクレインが変異体α-シヌクレインである、請求項1記載の細胞。
【請求項4】
変異体α-シヌクレインが変異体ヒトα-シヌクレインA53Tである、請求項3記載の細胞。
【請求項5】
変異体α-シヌクレインが変異体ヒトα-シヌクレインA30Pである、請求項3記載の細胞。
【請求項6】
変異体α-シヌクレインが変異体ヒトα-シヌクレインE46Kである、請求項3記載の細胞。
【請求項7】
αシヌクレインが全長α-シヌクレインである、請求項1〜6のいずれか一項記載の細胞。
【請求項8】
ヒト神経細胞である、請求項1〜7のいずれか一項記載の細胞。
【請求項9】
神経細胞株に由来する、請求項1〜8のいずれか一項記載の細胞。
【請求項10】
H4細胞株に由来する、請求項1〜7のいずれか一項記載の細胞。
【請求項11】
PC12細胞株に由来する、請求項1〜7のいずれか一項記載の細胞。
【請求項12】
タンパク質が検出可能なタンパク質を含む融合タンパク質である、請求項1〜11のいずれか一項記載の細胞。
【請求項13】
検出可能なタンパク質が蛍光タンパク質、酵素、またはエピトープである、請求項12記載の細胞。
【請求項14】
検出可能なタンパク質が、赤色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、およびシアン蛍光タンパク質からなる群より選択される蛍光タンパク質である、請求項13記載の細胞。
【請求項15】
単離された細胞である、請求項1〜14のいずれか一項記載の細胞。
【請求項16】
リプレッサータンパク質を構成的に発現する安定に組み込まれたリプレッサー構築物をさらに含み、
(i) 誘導物質が外因的に添加されない場合、リプレッサータンパク質が誘導性プロモーターに結合して、核酸の発現を抑制し、かつ(ii) 誘導物質が外因的に添加された場合、リプレッサータンパク質が誘導物質に結合して、核酸が発現される、請求項1〜15のいずれか一項記載の細胞。
【請求項17】
リプレッサータンパク質がTetリプレッサーである、請求項16記載の細胞。
【請求項18】
誘導物質がテトラサイクリンまたはドキシサイクリンである、請求項16または17記載の細胞。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれか一項記載の神経細胞を含む、非ヒト哺乳動物。
【請求項20】
哺乳動物の神経細胞において毒性を誘導する方法であって、請求項1〜15のいずれか一項記載の細胞において、核酸の、細胞に対し毒性のある発現レベルを誘導する段階を含む、方法。
【請求項21】
哺乳動物の神経細胞において毒性を誘導する方法であって、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を、細胞において核酸の発現および毒性を誘導するのに効果的な量の、外因的に添加した誘導物質と接触させる段階を含む、方法。
【請求項22】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において毒性を誘導するのに十分なレベルで核酸の発現を可能にする条件下で、請求項1〜15のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞生存度を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下で測定された細胞生存度を、該候補薬剤の非存在下での細胞生存度と比較する段階
を含む、α-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物を同定する方法であって、
細胞生存度が、該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより高い場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物と同定される、方法。
【請求項23】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において毒性を誘導するレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞生存度を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下で測定された細胞生存度を、該候補薬剤の非存在下での細胞生存度と比較する段階
を含む、α-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物を同定する方法であって、
細胞生存度が、該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより高い場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物と同定される、方法。
【請求項24】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞においてゴルジ断片化(Golgi fragmentation)を誘導するレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞におけるゴルジ断片化を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下で測定された細胞におけるゴルジ断片化を、該候補薬剤の非存在下におけるゴルジ断片化と比較する段階
を含む、α-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物を同定する方法であって、
ゴルジ断片化が、該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより少ない場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物と同定される、方法。
【請求項25】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において小胞体からゴルジへの小胞輸送を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下で測定された細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送を、該候補薬剤の非存在下で測定された小胞体からゴルジへの小胞輸送と比較する段階
を含む、小胞体からゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物を同定する方法であって、
該候補薬剤の非存在下での小胞体からゴルジへの小胞輸送と比較して、該候補薬剤の存在下での細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送が増加することにより、該候補薬剤が小胞体からゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物と同定される、方法。
【請求項26】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において小胞のドッキングおよび融合を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞における小胞のドッキングおよび融合を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下での細胞における小胞のドッキングおよび融合を、該候補薬剤の非存在下での小胞のドッキングおよび融合と比較する段階
を含む、小胞のドッキングおよび融合を増加させる化合物を同定する方法であって、
該候補薬剤の非存在下での小胞のドッキングおよび融合と比較して、該候補薬剤の存在下での小胞のドッキングおよび融合が増加することにより、該候補薬剤が小胞のドッキングおよび融合を増加させる化合物と同定される、方法。
【請求項27】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞からのタンパク質分泌を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞からのタンパク質分泌を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下での細胞からのタンパク質分泌を、該候補薬剤の非存在下でのタンパク質分泌と比較する段階
を含む、細胞からのタンパク質の分泌を増加させる化合物を同定する方法であって、
該候補薬剤の非存在下でのタンパク質分泌と比較して、該候補薬剤の存在下での細胞からのタンパク質分泌が増加することにより、該候補薬剤が細胞からのタンパク質分泌を増加させる化合物と同定される、方法。
【請求項28】
シヌクレイノパチー(synucleinopathy)を治療する方法であって、シヌクレイノパチーを有するか、またはシヌクレイノパチーを発症するリスクがある個体に、請求項22〜27のいずれか一項記載の方法によって同定された化合物の治療的有効量を含む薬学的組成物を投与する段階を含む、方法。
【請求項29】
シヌクレイノパチーが、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、またはグアム・パーキンソン認知症複合である、請求項28記載の方法。
【請求項1】
ヒトαシヌクレインを含むタンパク質をコードする核酸に機能的に連結された誘導性プロモーターを含む安定に組み込まれた発現構築物を含む、哺乳動物の神経細胞であって、毒性誘導剤(toxicity-inducing agent)または神経分化因子で細胞を同時に処理することなく該核酸の発現を誘導すると、細胞生存度が低下する、哺乳動物の神経細胞。
【請求項2】
αシヌクレインが野生型α-シヌクレインである、請求項1記載の細胞。
【請求項3】
αシヌクレインが変異体α-シヌクレインである、請求項1記載の細胞。
【請求項4】
変異体α-シヌクレインが変異体ヒトα-シヌクレインA53Tである、請求項3記載の細胞。
【請求項5】
変異体α-シヌクレインが変異体ヒトα-シヌクレインA30Pである、請求項3記載の細胞。
【請求項6】
変異体α-シヌクレインが変異体ヒトα-シヌクレインE46Kである、請求項3記載の細胞。
【請求項7】
αシヌクレインが全長α-シヌクレインである、請求項1〜6のいずれか一項記載の細胞。
【請求項8】
ヒト神経細胞である、請求項1〜7のいずれか一項記載の細胞。
【請求項9】
神経細胞株に由来する、請求項1〜8のいずれか一項記載の細胞。
【請求項10】
H4細胞株に由来する、請求項1〜7のいずれか一項記載の細胞。
【請求項11】
PC12細胞株に由来する、請求項1〜7のいずれか一項記載の細胞。
【請求項12】
タンパク質が検出可能なタンパク質を含む融合タンパク質である、請求項1〜11のいずれか一項記載の細胞。
【請求項13】
検出可能なタンパク質が蛍光タンパク質、酵素、またはエピトープである、請求項12記載の細胞。
【請求項14】
検出可能なタンパク質が、赤色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、およびシアン蛍光タンパク質からなる群より選択される蛍光タンパク質である、請求項13記載の細胞。
【請求項15】
単離された細胞である、請求項1〜14のいずれか一項記載の細胞。
【請求項16】
リプレッサータンパク質を構成的に発現する安定に組み込まれたリプレッサー構築物をさらに含み、
(i) 誘導物質が外因的に添加されない場合、リプレッサータンパク質が誘導性プロモーターに結合して、核酸の発現を抑制し、かつ(ii) 誘導物質が外因的に添加された場合、リプレッサータンパク質が誘導物質に結合して、核酸が発現される、請求項1〜15のいずれか一項記載の細胞。
【請求項17】
リプレッサータンパク質がTetリプレッサーである、請求項16記載の細胞。
【請求項18】
誘導物質がテトラサイクリンまたはドキシサイクリンである、請求項16または17記載の細胞。
【請求項19】
請求項1〜7のいずれか一項記載の神経細胞を含む、非ヒト哺乳動物。
【請求項20】
哺乳動物の神経細胞において毒性を誘導する方法であって、請求項1〜15のいずれか一項記載の細胞において、核酸の、細胞に対し毒性のある発現レベルを誘導する段階を含む、方法。
【請求項21】
哺乳動物の神経細胞において毒性を誘導する方法であって、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を、細胞において核酸の発現および毒性を誘導するのに効果的な量の、外因的に添加した誘導物質と接触させる段階を含む、方法。
【請求項22】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において毒性を誘導するのに十分なレベルで核酸の発現を可能にする条件下で、請求項1〜15のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞生存度を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下で測定された細胞生存度を、該候補薬剤の非存在下での細胞生存度と比較する段階
を含む、α-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物を同定する方法であって、
細胞生存度が、該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより高い場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物と同定される、方法。
【請求項23】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において毒性を誘導するレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞生存度を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下で測定された細胞生存度を、該候補薬剤の非存在下での細胞生存度と比較する段階
を含む、α-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物を同定する方法であって、
細胞生存度が、該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより高い場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導される毒性を阻止または抑制する化合物と同定される、方法。
【請求項24】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞においてゴルジ断片化(Golgi fragmentation)を誘導するレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞におけるゴルジ断片化を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下で測定された細胞におけるゴルジ断片化を、該候補薬剤の非存在下におけるゴルジ断片化と比較する段階
を含む、α-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物を同定する方法であって、
ゴルジ断片化が、該候補薬剤の非存在下と比較して該候補薬剤の存在下でより少ない場合に、該候補薬剤がα-シヌクレインに誘導されるゴルジ断片化を阻止または抑制する化合物と同定される、方法。
【請求項25】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において小胞体からゴルジへの小胞輸送を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下で測定された細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送を、該候補薬剤の非存在下で測定された小胞体からゴルジへの小胞輸送と比較する段階
を含む、小胞体からゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物を同定する方法であって、
該候補薬剤の非存在下での小胞体からゴルジへの小胞輸送と比較して、該候補薬剤の存在下での細胞における小胞体からゴルジへの小胞輸送が増加することにより、該候補薬剤が小胞体からゴルジへの小胞輸送を増加させる化合物と同定される、方法。
【請求項26】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞において小胞のドッキングおよび融合を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞における小胞のドッキングおよび融合を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下での細胞における小胞のドッキングおよび融合を、該候補薬剤の非存在下での小胞のドッキングおよび融合と比較する段階
を含む、小胞のドッキングおよび融合を増加させる化合物を同定する方法であって、
該候補薬剤の非存在下での小胞のドッキングおよび融合と比較して、該候補薬剤の存在下での小胞のドッキングおよび融合が増加することにより、該候補薬剤が小胞のドッキングおよび融合を増加させる化合物と同定される、方法。
【請求項27】
候補薬剤の存在下、および候補薬剤が存在しない場合に細胞からのタンパク質分泌を減少させるレベルで核酸の発現を誘導するのに効果的な量の外因的に添加された誘導物質の存在下で、請求項16〜18のいずれか一項記載の細胞を培養する段階;
該候補薬剤の存在下で細胞からのタンパク質分泌を測定する段階;ならびに
該候補薬剤の存在下での細胞からのタンパク質分泌を、該候補薬剤の非存在下でのタンパク質分泌と比較する段階
を含む、細胞からのタンパク質の分泌を増加させる化合物を同定する方法であって、
該候補薬剤の非存在下でのタンパク質分泌と比較して、該候補薬剤の存在下での細胞からのタンパク質分泌が増加することにより、該候補薬剤が細胞からのタンパク質分泌を増加させる化合物と同定される、方法。
【請求項28】
シヌクレイノパチー(synucleinopathy)を治療する方法であって、シヌクレイノパチーを有するか、またはシヌクレイノパチーを発症するリスクがある個体に、請求項22〜27のいずれか一項記載の方法によって同定された化合物の治療的有効量を含む薬学的組成物を投与する段階を含む、方法。
【請求項29】
シヌクレイノパチーが、パーキンソン病、家族性パーキンソン病、レビー小体病、アルツハイマー病のレビー小体変異型、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、またはグアム・パーキンソン認知症複合である、請求項28記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−506569(P2010−506569A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532601(P2009−532601)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/081227
【国際公開番号】WO2008/063779
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(507088185)フォールドアールエックス ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/081227
【国際公開番号】WO2008/063779
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(507088185)フォールドアールエックス ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]