説明

β−アミロイド前駆体タンパク質の細胞プロセッシングをモニターするための方法及び組成物

【課題】β−アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)のプロセッシングをモニターするための方法の提供。
【解決手段】β−アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)のプロセッシングのモニターは、β−アミロイドペプチドのアミノ末端でのβAPP の切断に起因する可溶性βAPP フラグメントの分泌を検出することによってなされる。βAPP フラグメントの分泌のインビボモニターリングは、アルツハイマー病及び他のβ−アミロイド関連疾病の診断及び進行についてモニターされ、そして培養された細胞からのそのような分泌のインビトロモニターリングは、β−アミロイド生成のインヒビターを同定するためにモニターされ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、一般的にβ−アミロイド前駆体タンパク質のプロセッシングをモニターするための方法及び組成物に関する。より特定には、本発明は、アルツハイマー病の診断、予測及び治療への応答のモニターのためへの、及びアルツハイマー病の処理のための可能な薬物のスクリーニング及び評価のためへのそのような方法及び組成物の使用に関する。
【0002】
アルツハイマー病は、アルツハイマー病患者の脳、特に記憶及び知識に関与する領域に存在する多くのアミロイドプラーク及び神経細繊維網(高い不溶性のタンパク質凝集体)の存在によって特徴づけられる。過去において、プラーク及び網が原因であるか又は単にアルツハイマー病の結果であるかについて有意な科学的論争が存在するが、最近の発見は、アミロイドプラークが原因前駆体又は因子であることを示唆する。特に、β−アミロイドペプチド、すなわちアミロイドプラークの主要構成成分の生成がアミロイド前駆体タンパク質をコードする遺伝子における変異に起因することが発見されており、ここで前記タンパク質は通常プロセッシングされる場合、β−アミロイドペプチドを生成しないであろう。
【0003】
アルツハイマー病の家族性初期開始を引き起こす、アミロイド前駆体タンパク質における変異の同定は、アミロイド代謝がその病気の根底にある病原性工程における中枢的出来事である最強の証拠である。4つの報告される、疾病を引き起こす変異は、 770の同形(isoform) に関して、パリン717 〜イソロイシン(Goateなど.(1991) Nature 349: 704〜706)、バリン717 〜グリシン(Chartier Harlonなど.(1991) Nature 353: 844〜846)、バリン717 〜フェニルアラニン(Murrellなど.(1991) Science 254:97〜99) 及び 695の同形に関しては、二重変異変更リシン595−メチオニン596〜アスパラジン595−ロイシン596 (Mullanなど.(1992) Nature Genet 1: 345〜347)を包含する。さらに、β−アミロイドペプチドは脳のニューロンに対して毒性であり、そしてニューロン細胞の死がこの疾病に関連している。
【0004】
従って、アミロイド前駆体タンパク質の細胞プロセッシングをモニターする能力は、アルツハイマー病の診断、予測及び治療管理において有意に価値あるものである。特に、容易に得られる患者のサンプル、たとえば血清、脳脊髄液(CSF) 及び同様のものにおける検出できる診断マーカーをスクリーニングし、そして評価するために最小限に侵略的な方法を同定することが所望される。
【0005】
アルツハイマー病のための多くの可能性ある診断マーカーがこれまで示唆されて来た。本発明において特に興味あるものは、カルボキシ末端フラグメント (たとえばβ−アミロイドペプチド自体及びそのフラグメント)及びアミノ末端フラグメント(たとえば一定の 25KD, 105KD及び 125KDのフラグメント) を含む、アミロイド前駆体タンパク質の一定のフラグメントである。今までのところでは、提案されたマーカーは、アルツハイマー病の死亡前診断又はモニターリングについては明確ではない。
【0006】
従って、アルツハイマー病のための追加及び他の診断マーカーを同定することが所望される。そのようなマーカーは、単独で及び/又は他の診断マーカー及び方法と組合して有用であるべきである。好ましくは、診断マーカーは体液、たとえば CSF、血液、血漿、血清、尿、組織及び同様のものにおいて検出され、その結果、侵略的診断方法が利用され得る。
【0007】
本発明のさらに興味あるものは、β−アミロイドプラークの生成を阻害し又は妨げる能力のための候補薬物をスクリーニングするインビトロシステム及び方法である。β−アミロイドペプチドへのアミロイド前駆体タンパク質の転換を阻害し又は妨げる能力のための試験化合物をスクリーニングするための方法及びシステムを提供することが所望される。特に、試験化合物が転換を導びく代謝路を中断し又は妨害することができるような転換に包含されると思われて来た代謝路に基づく方法及びシステムを確立することが所望される。そのような方法及びシステムは多数の試験化合物をスクリーニングするために急速で、経済的で且つ適切であるべきである。
【背景技術】
【0008】
2.背景技術の記載
β−アミロイドペプチド(また、A4,βAP, Aβ又は AβP としても言及される:アメリカ特許第 4,666,829号及びWong (1984)Biochem.Biophys.Res.Commun.120. 1131〜1135を参照のこと) は、β−アミロイド前駆体タンパク質 (βAPP)に由来し、これは 695, 751及び 770個のアミノ酸の異なってスプライスされた形で発現される。Kangなど.(1987) Nature 325: 773〜776; Ponteなど.(1988)Nature 331: 525〜527 ;及び Kitaguchiなど.(1988) Nature 331: 530〜532 を参照のこと。アミロイド前駆体タンパク質の通常のプロセッシングは、トランスメンブランドメイン近くの残基 Lys16とLeu17(Kangなど.(1987) 前記においてAsp597が残基1であるνAP領域について番号を付与されている) との間の部位でタンパク質分解性切断を包含し、β−アミロイドペプチド配列の残る部分を保持する細胞外ドメインの構成的分泌をもたらす (Eschなど.(1990) Science 248:1122〜1124) 。
【0009】
この経路は、種間に広く保存され、そして多くの細胞型に存在しているように思える。 Weidemannなど.(1989) Cell 57: 115〜126 及びOltersdorfなど.(1990) J.Biol.Chem.265:4492〜4497を参照のこと。この正常な経路は、β−アミロイドペプチドに対応する前駆体タンパク質の領域内で分解し、従って、その形成を明らかに妨げる。βAPP のもう1つの構成的に分泌される形が注目され(Robakisなど.Soc.Neurosci. October 26,1993, Abstract No.15.4, Anaheim, CA.) 、これはEschなど. 前記により記載される形のものからβAP配列のカルボキシ末端のものを含む。
【0010】
Goldeなど.(1992) Science 255: 728〜730 は、アミロイド前駆体タンパク質の一連の欠失変異体を調製し、そしてβ−アミロイドペプチド領域内の1つの切断部位を観察した。この観察に基づけば、β−アミロイドペプチド形成は分泌路を包含しないことが推定された。 Estusなど.(1992) Science 255: 726〜728 は、脳細胞に見出されるアミロイド前駆体タンパク質の2つの最大カルボキシ末端タンパク質分解フラグメントが完全なβ−アミロイドペプチド領域を含むことを教授する。
【0011】
PCT出願WO92/00521 は、患者の脳脊髄液におけるアミロイド前駆体タンパク質の一定の 25KD, 105KD及び 125KDの可溶性誘導体の量の測定に基づいてアルツハイマー病を評価するための方法を記載する。そのWO92/00521 の第3図は、アミロイド前駆体タンパク質の切断がβ−アミロイドペプチドのアミノ末端近くで生じ、可溶性アミノ末端フラグメントを生成することを示唆しているが、しかしそのような切断の証拠又は論議はその出願には示されていない。
【0012】
Kennedyなど.(1992) Neurodegeneration 1:59〜64は、分泌されたβAPP の形についてのデータを表わし、これはβAPP の残基 527−540 に対する抗体とのその反応性及びβAPの最初の15個の残基に対する抗体との反応性の欠乏により特徴づけられる。βAPP 形のカルボキシ末端の切断部位又は同定を示す直接的な証拠は提供されていない。 PCT出願WO91/16628 号は、プロテアーゼ nexin−2又はアミロイド前駆体タンパク質に対する抗体を利用して、アミロイド前駆体タンパク質及びそのフラグメントの検出に基づいての疾病の診断方法を記載する。
【0013】
最近の報告は、可溶性β−アミロイドペプチドが培養培地(Haassなど.(1992) Nature 359: 322〜325)に、及びヒト及び動物 CSF(Seubertなど.(1992) Nature 359: 325〜327)に健康細胞により生成されることを示す。
【発明の開示】
【0014】
生物学的サンプルにおけるβ−アミロイド前駆体タンパク質 (βAPP)の分泌されたアミノ末端フラグメントを検出、そしてモニターするための方法及び組成物が提供され、ここで前記フラグメントは前記β−アミロイドペプチド (βAP) 領域のアミノ末端で又はその近くでの切断に起因する。特に、Kangなど. 、前記により記載されるβAPP に基づくアミノ酸配列 (すなわち“正常”な配列)に関しては、βAPP のこの切断され、分泌されたフラグメントは、それらのカルボキシ末端で暴露されるメチオニンを有する分泌されたフラグメントの一定のカルボキシ末端残基を含んで成るペプチドに対して発生せしめられた抗体により認識され得る。
【0015】
他方、天然に存在し又は構築された、βAPP の変異配列、たとえばMullanなど.(1992) Nature Genet 1: 345〜347 により報告される、リシン595 −メチオニン596 をアスパラジン595 −ロイシン596 に変える二重変異誘発がこの領域における新規配列を導入することができる。このβAPP 配列のC末端残基に対して特異的な結合物質がそのような配列のための検出の好ましい手段であろう。
【0016】
分泌されたフラグメントは、損なわれていないβAPP におけるβAP領域に隣接して存在するカルボキシ末端残基(正常な配列の場合はメチオニン)の5個のアミノ酸内で終結するβAPP の実質的に損なわれていないアミノ末端配列を含んで成るであろう。特に、分泌されたフラグメントは、βAPP の 695個のアミノ酸イソフォーム(isoform) のメチオニン596 及びリシン595 において終結する配列、及び他のイソフォームのための対応する番号並びに変異体βAPP 形、たとえばLYS595−MET596〜ASN595−LEU596 ("Swedish" 形)のための対応するアミノ酸から成る。本発明の方法及び組成物は、βAPPの細胞内プロセッシングをモニターするために、特にある疾病、特にアルツハイマー病及び家族性形並びにダウン症候群に関与される損なわれていないβAPを放すβAPP の切断をモニターするためにインビボ及びインビトロの両者において有用である。
【0017】
本発明の第1の特定の観点においては、βAPP の分泌されたアミノ末端フラグメント(ATF−βAPP)が、βAPP 695 イソフォームの残基 596で終結するβAPP 配列のC末端残基に対して発生せしめられた及び/又はその残基に対して特異的な結合物質との反応により、典型的には、生物学的サンプルに存在するβAPP の他の切断された形と ATF−βAPP とを区別することができる抗体との反応により検出される。その必要な特異性を有する抗体は、 ATF−βAPP のC末端残基を包含する合成ペプチドハプテンに対して生ぜしめられる。 本発明の第2の特定の観点においては、βAP関連の疾病、たとえばアルツハイマー病及びダウン症候群は、患者のサンプル、たとえば CSF、血清、血液、血漿、尿、組織及び同様のものにおける ATF−βAPP の検出に基づいて、患者において診断され、そしてモニターされ得る。高められた ATF−βAPP レベル又は割合は、前記疾病の開始及び進行に関与し、そして前記疾病の処理での経過を伴って減じられ得る。
【0018】
第3の特定の観点においては、本発明は、βAP生成インヒビターを同定するための方法を提供し、ここで ATF−βAPP の分泌をもたらす条件下で動物がその分泌を高められ、又は細胞が培養される。動物又は培養された細胞は試験化合物に暴露され、そして ATF−βAPP の分泌された量又は割合の変化を引き起こす試験化合物が同定され得る。
【0019】
第4の特定の観点においては、本発明は、 ATF−βAPP のC末端に特異的に結合できる、抗体分子、たとえば損なわれていない免疫グロブリン分子及び免疫グロブリンフラグメントを含む抗体組成物を含んで成る。そのような抗体分子は、 ATF−βAPP のC末端残基を含んで成る免疫原を通常用いて、いづれかの従来の手段で調製され得、そしてここでC末端メチオニンが正常な配列においては暴露される。
【0020】
第5の特定の観点においては、本発明は精製され、そして単離された形で ATF−βAPP を含んで成る。そのようを組成物は ATF−βAPP の検出のために種々の従来のアッセイにおいて有用であろう。そのような組成物は、天然又は組換え源、たとえば CSF、適切な細胞培養物からのならし培地又は同様のものからの ATF−βAPP の単離及び精製により得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、前駆体タンパク質からの損なわれていないβ−アミロイドペプチド (βAP) 領域の切断に起因するβ−アミロイド前駆体タンパク質 (βAPP)の新規分泌されたフラグメントの同定に起因する。その新規の分泌されたフラグメントは、そのような切断の後に残存するβAPP のアミノ末端部分を含んで成り、そしてβAPP のアミノ末端フラグメント(ATF−βAPP)としてこの後、言及されるであろう。 ATF−βAPP は、βAPP のための他の分泌プロセッシング路の生成物であると思われており、ここで前記路は正常な (疾病を有さない) 細胞に存在する。
【0022】
しかしながら、他の分泌路は患者における疾病細胞におけるβAPの生成において必須の出来事を担当し、そして ATF−βAPP の異常生成はβAPプラークに関連する疾病、特にアルツハイマー病及びダウン症候群に包含され得ると思われる。従って、本発明は、生物学的サンプルにおける ATF−βAPP の検出及び測定に基づいてβAPP の細胞プロセッシングをモニターするための方法及び組成物を提供する。
【0023】
ATF−βAPP は、βAP領域にすぐ隣接して存在し、そして正常なβAPP のためには、カルボキシ末端メチオニン (下記に示されるように 695イソフォームにおいてメチオニン596 として番号を付与されている) を含む、βAPP の一定残基を含んで成るペプチドに対して発生せしめられた抗体に対する特異的結合により同定され、そして認識される。そのペプチドは通常、少なくとも5個までの連続残基を含み、そして残基596 を含み、そしてそのような抗体を生成するための特定方法が下記に示される。
【0024】
図1のA及びBを参照すれば、βAPP は、それぞれ695, 751及び 770個のアミノ酸を含んで成る3種のイソフォームで見出される。 695のイソフォームは神経細胞において最とも通常であり、そして 751及び 770のイソフォームは 695イソフォーム上での残基 289での挿入に起因する(695イソフォームのすべての番号付けは、Kangなど.(1987) Nature 325: 733〜736 に従っている) 。 ATF−βAPPは、明らかに、 695イソフォームの残基 596と 597との間に位置する、β−アミロイドペプチド (βAP) 領域のアミノ末端のアミノ末端側上の5つの残基で又はその5つの残基以内での種々のβAPP イソフォームのタンパク質分解性切断に起因する。
【0025】
そのような切断は、通常メチオニン596 、リシン595 又はロイシン596 であり、より通常にはメチオニン596 である、第1B図にMET596及びLYS595として示される、C末端残基の暴露をもたらす。もちろん、C末端残基は、 ATF−βAPP が異なったβAPP イソフォームから誘導される場合、異なった番号付けを有することが認識されるであろう。特に、C末端メチオニンはそれぞれ 751及び770 βAPP イソフォームにおいて、MET652及びMET671であり、そしてC末端リシンはLYS651及びLYS670である。この後に使用される場合、メチオニン596 、リシン595 及びロイシン596 は一般的に、βAPP のすべての他のイソフォーム又は変異体における対応する残基を言及するであろう。現在、 ATF−βAPP のN末端残基はすべてのイソフォームにおける LEU18であると思われる (βAP領域内で切断される分泌された形でのβAPP のアミノ末端のプロセッシングに基づく) 。
【0026】
本発明によれば、 ATF−βAPP は、種々の生物学的サンプル、たとえばインビトロサンプル、たとえば培養された細胞からのならし培地及びインビボ患者サンプル、典型的には CSF、血液、血清、血漿、尿、組織及び同様のものにおいて検出され、そして/又は測定され得る。検出及び測定は、サンプルに見出される他のβ−APP フラグメントと ATF−βAPP とを区別できるいづれかの技法により達成され得る。便利には、免疫学的検出技法が、使用され得、ここでその技法は、βAP領域の切断に基づいて暴露される ATF−βAPP のC末端残基、たとえばメチオニン596 、ロイシン596 又はリシン595 に結合する、抗体、抗体フラグメント又は他の同等の特異的結合物質を使用する。
【0027】
そのようなC末端特異的抗体は ATF−βAPP と関連するβAPP フラグメントとの間で区別できることが見出された。他方、免疫学的検出技法は、従来の技法を用いて、単離され、そして精製された ATF−βAPP に基づかれている。C末端残基特異的抗体及び精製され、そして単離された ATF−βAPP の両者の調製はこの後に記載される。特に適切な検出技法は、 ELISA、ウェスターンブロット、ラジオイムノアッセイ及び同様のものを包含する。
【0028】
ATF−βAPP 特異的抗体及び/又は競争抗原の使用を必要としない、 ATF−βAPP を検出するための他の技法がまた、使用され得る。たとえば、二次元ゲル電気泳動が、βAPP の密接に関連する可溶性フラグメントを分離するために使用され得る。次に、多くの又はすべてのフラグメントと交叉反応する抗体が、ゲルをプローブするために使用され得、そして ATF−βAPP の存在はゲル上でのその正確な位置に基づいて同定される。 ATF−βAPP の検出のための他の技法はまた、当業者の技術の範囲内である。たとえば、βAPのアミノ末端領域を含む分泌されたβAPP 種は、サンプルから免疫学的に除去され、 ATF−βAPP が単離され(第2A図、レーン2及び第5図、レーン11及び12を参照のこと)、次にこれは上記に論ぜられたいくつかの方法のいづれかにより検出され得る。
【0029】
ATF−βAPP に対して特異的な抗体は、メチオニン残基を含むC末端 ATF−βAPP 配列を含んで成る適切な抗原又はハプテンに対して調製され得る。便利には、合成ペプチドが、従来の固相技法により調製され、適切な免疫原に結合され、そして従来の技法により抗血清又はモノクローナル抗体を調製するために使用され得る。1つの適切な合成ペプチドは、βAPのすぐアミノ末端部位上に位置し、そして免疫原に結合され、そして実験セクションに詳細に記載されるように特定の抗体を調製するために使用される ATF−βAPP(ISEVKM)の6個の残基から成る。他の適切なペプチドハプテンは通常、βAPのすぐアミノ末端側上のβAPP 内の少なくとも5個の連続した残基を含んで成り、そして6個以上の残基を含むこともできる(但し、16個のアミノ末端残基を含むペプチドはほとんど特異的でない抗血清を生成することが見出されている)。正常な ATF−βAPPのカルボキシ末端の25個の残基は次の通りである(単一文字のアミノ酸名称を用いる)。
【0030】
DRGLT TRPGSGLTNI KTEEISEVKM
576 586 596
【0031】
合成ポリペプチドハプテンは、アミノ酸が成長鎖に連続的に付加される、良く知られたMerrifield固相合成技法により生成され得る(Merrifield (1963) J.Am.Chem.Soc. 85:2149〜2156) 。アミノ酸配列は上記 ATF−βAPP の配列に基づかれており、又は天然に存在する又は構築された変異配列を用いることができる。たとえば、 Swedish変異体は、リシン595 −メチオニン596 のために置換されたアスパラジン595 −ロイシン596 を有し、そして他の置換はメチオニン596 とロイシン596 との置換のみを包含する。
【0032】
十分な量のポリペプチドハプテンが得られたなら、それは、一般的にHudson and Hay, Practical Immunology, Blackwell ScientificPublications, Oxford, Chapter 1.3, 1980(これは引用により本明細書に組込まれる)に記載されるようにして、適切な免疫原性キャリヤー、たとえば血清アルブミン、キーホールリンペット(keyholelimpet) ヘモシアニン、他の適切なタンパク質キャリヤーに接合され得る。
【0033】
十分な量の免疫原が得られたなら、 ATF−βAPP からβAPの切断に基づいて暴露されるC末端残基に対して特異的な抗体がインビトロ又はインビボ技法により生成され得る。インビトロ技法は、免疫原へのリンパ球の暴露を包含し、そしてインビボ技法は適切な脊椎動物宿主中への免疫原の注射を必要とする。適切な脊椎動物宿主は、ヒトではなく、たとえばマウス、ラット、ウサギ、羊、ヤギ及び同様のものを包含する。免疫原は予定されたスケジュールに従って動物中に注射され、そしてその動物は改良された力価及び特異性を有する連続的な採血を伴って定期的に採血される。注射は、筋肉内、腹腔内、皮下又は同様のものに行なわれ、そしてアジュバント、たとえば不完全フロイントアジュバントが使用されるであろう。
【0034】
所望には、モノクローナル抗体は、所望する特異性を有する抗体を生成できる不滅化された細胞系を調製することによって得られる。そのような不滅化された細胞系は種々の手段で生成され得る。便利には、小脊椎動物、たとえばマウスが上記方法により所望する免疫原により高度免疫化される。次に、脊椎動物は通常、最終免疫化の数日後に殺害され、脾臓細胞が除かれ、そして脾臓細胞が不滅化される。この不滅化の態様は臨界ではない。現在、ほとんどの共通する技法は、 Kohler and Milstein (1975) Nature 256: 495〜497により最初に記載されているように、骨髄腫細胞融合パートナーとの融合である。
【0035】
他の技法は、 EBV形質転換、裸の DNA、たとえば癌遺伝子、レトロウィルス、等による形質転換、又は細胞系の適切な維持及びモノクローナル抗体の生成を提供するいづれか他の方法を包含する。モノクローナル抗体を調製するための特定の技法は、Antibodies:A Laboratory Manual, Harlow and Lane, eds., ColdSpring Harbor Laboratory, 1988に記載されており、これは引例により本明細書に組込まれる。
【0036】
モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体(抗血清)の他に、本発明の検出技法は、抗体フラグメント、たとえばF(ab), FV ,VL ,VH 及び他のフラグメントを用いることができるであろう。現在十分に特許及び科学文献に記載されているように、組換え的に生成された抗体(免疫グロブリン)及びその変異体を用いることもまた可能である。たとえば、 EPO第 8430268.0号; EPO第85102665.8号; EPO第85305604.2号; PCT/GB85/00392 号; EPO第85115311.4号; PCT/US86/002269号;及び日本特許出願第85239543号(これらは引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。上記のようにして調製された抗体の結合特異性をまねる他の組換えタンパク質を調製することもまた可能である。
【0037】
本発明はさらに、通常、実質的に純粋な形で得られる、単離され、そして精製された ATF−βAPP を含んで成る。“実質的に純粋な”とは少なくとも約50%w/w(重量/重量)又はそれ以上の純度を意味し、そして妨害タンパク質及び汚染物を実質的に有さない。好ましくは、 ATF−βAPP は、50%w/w、好ましくは80%w/w又はそれ以上の純度で単離又は合成されるであろう。 ATF−βAPP は従来のタンパク質精製技法により天然源から精製され、そして少なくとも約50%w/wの純度の均質組成物が従来の免疫親和性分離技法を用いて上記のようにして調製された抗体の使用により精製される。
【0038】
適切な天然の出発材料は、 ATF−βAPP 生成細胞系、たとえば胎児脳細胞培養物及び同様のものからのならし培地を包含する。他方、 ATF−βAPP はヒト宿主から得られた生物学的サンプル、たとえば CSF、血清及び同様のものから単離され得る。適切なタンパク質精製技法は、Methods in Enzymology, Vol.182, Deutcher, ed.,Academic Press, Inc., San Diego, 1990(引用により本明細書に組込まれる) に記載される。
【0039】
上記のようにして調製された、抗体及び精製 ATF−βAPP は、β−アミロイド関連疾病のモニターのために生物学的サンプル、特にインビボ患者サンプルにおいて、及びβAPP の細胞内プロセッシングをモニターするために細胞培養物からのならし培地において ATF−βAPP を検出するために種々の従来の免疫学的技法に使用され得る。適切な免疫学的技法は、イムノアッセイ、たとえば ELISA、ウェスターンブロット分析、及び同様のものを包含する。多くの特定の免疫学的検出技法が Harlow and Lane、前記に記載されている。
【0040】
患者サンプルにおける ATF−βAPP のインビボ検出は、アルツハイマー病及びβ−アミロイドプラーク沈着に関連する他の疾病、たとえばダウン症候群の診断及びモニターのために使用され得る。適切な患者のサンプルは、 CSF、血液、血清、血漿、尿、組織及び同様のものを包含する。その疾病の存在は一般的に、アルツハイマー病又は他のβ−アミロイド関連疾病を有さない正常な個人に比較して、高レベルの ATF−βAPP 、又は他の分泌されたβAPP フラグメント(すなわち、βAP領域内で又はその領域の方のカルボキシ末端で切断されたβAPP フラグメント)の量に対する ATF−βAPP の量の高い割合に関連しているであろう。
【0041】
ATF−βAPP の量は、イソフォーム(たとえば695, 751又は770)及び/又はそのカルボキシ末端によりさらに定義された形(たとえば、Eschなどにより記載された部位で及び/又はその部位の方のカルボキシ末端で切断された形)のいづれかで、 APPの他の種の量に比較され得る。初期診断方法の他に、 ATF−βAPP のレベルは、疾病の進行を追跡するために、及び処理の有効性を実質的に追跡するためにモニターされ得る。 ATF−βAPP のレベルは効果的な処理法により低下することが予測される。
【0042】
適切な細胞培養物からの培養培地における ATF−βAPP レベルのインビトロモニターは薬物のスクリーニングのために使用され得る。培養培地中への ATF−βAPP の分泌をもたらす条件下で細胞を増殖し、そしてその細胞を試験化合物に暴露することによって、 ATF−βAPP 分泌に対するそれらの試験化合物の効果が観察され得る。ATF−βAPP の量を減じることができる試験化合物は、βAP形成のインヒビターとして試験のための候補体であることが予測される。適切な細胞系は、ヒト及び動物細胞系、たとえば 293ヒト腎細胞系、ヒト神経膠細胞系、ヒトHeLa細胞、一次内皮細胞(たとえば HUVEC細胞)、一次ヒト線維芽細胞又はリンパ芽球(βAPP 変異を有する患者に由来する内因性細胞を包含する)、一次ヒト混合脳細胞(ニューロン、星状細胞及び神経膠を包含する)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO) 細胞、及び同様のものを包含する。 ATF−βAPP のレベル又は割合を選択的に高める細胞系は本発明の方法において特に有用である。
【0043】
同様に、アルツハイマー病の動物モデル、たとえばWO91/19810号に開示されるマウスモデル(この開示は、引用により本明細書に組込む)における ATF−βAPP のインビトロモニターリングはまた、治療効果のために(通常、インビトロスクリーンにより前もって同定されている化合物の試験のために)試験化合物をスクリーンするためにも使用され得る。試験化合物は動物に投与され、そして ATF−βAPP のレベル又は他のβAPP フラグメントに対する ATF−βAPPの割合が観察される。 ATF−βAPP のレベルを減じ、又は他のβAPPフラグメントに対する ATF−βAPP の割合を減じる化合物が追加の評価のための候補体であると思われる。
【0044】
試験化合物は、細胞の生存性を実質的に妨害しないで細胞培養物に添加され得るいづれかの分子、化合物又は他の物質であり得る。適切な試験化合物は、小さな分子、生物学的ポリマー、たとえばポリペプチド、ポリサッカリド、ポリヌクレオチド及び同様のものであり得る。試験化合物は典型的には、約1nM〜1mM、通常約10μM〜1mMの範囲の濃度で培養培地に添加されるであろう。
【0045】
ATF−βAPP の分泌を阻害できる試験化合物は、病原性細胞におけるβ−アミロイド生成をブロックする能力のさらなる決定のための候補体として見なされる。分泌の阻害は、βAPのアミノ末端でのβAPP の切断が少なくとも部分的にブロックされ、β−アミロイドペプチドへの転換のために利用できるプロセッシング中間体の量を減じることを示す。
【0046】
本発明は、細胞におけるβ−アミロイド生成を阻害するための方法をさらに含んで成り、ここでその方法は、上記方法により選択された化合物を細胞に投与することを包含する。その化合物は、培養された細胞によりβAP生成を阻害するために細胞培養物に添加され得る。その化合物はまた、アルツハイマー病及び他のβAP−関連疾病に関連するアミロイドプラークの沈着を阻害するために患者に投与され得る。
【0047】
本発明は、上記方法により選択された化合物を組込み、そして医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物をさらに含んで成る。そのような医薬組成物は、本発明の方法により同定された少なくとも1種の化合物の治療又は予防量を含むべきである。医薬的に許容できるキャリヤーは、意図される宿主に化合物を供給するのに適切ないづれかの相溶性非毒性物質であり得る。滅菌水、アルコール、脂肪、ロウ、及び不活性固体がキャリヤーとして使用され得る。医薬的に許容できるアジュバント、緩衝剤、分散剤、及び同様のものがまた、医薬組成物中に導入され得る。活性剤を組込む医薬条件の調整は、医学及び科学文献に十分に記載されている。たとえば、Remington's Pharmaceutical Science, Mack Publishing Company,Easton, Pennsylvania, 16th Ed., 1982 (この開示は引用により本明細書に組込まれる)を参照のこと。
【0048】
上記医薬組成物は、非経口、局部及び経口投与を包含する、宿主への全身投与のために適切である。その医薬組成物は非経口的に、すなわち皮下、筋肉内又は静脈内投与され得る。従って、本発明は宿主への投与のための組成物を供給し、ここに前記組成物は上記のように、許容できるキャリヤーにおける同定された化合物の医薬的に許容できる溶液を含んで成る。
【0049】
時々、脳に直接的又は間接的に前記医薬組成物を導入することが所望され又は必要であろう。直接的な技法は通常、血液−脳バリヤーをバイパスするために宿主の心室システム中に薬物供給カーテーテルの配置を包含する。一般的に好ましい間接的な技法は、脂質可溶性薬物への親水性薬物の転換により薬物潜在性を提供するために組成物を配合することを包含する。潜在性は一般的に、薬物をより脂質可溶性にするために薬物上に存在し、そして血液−脳バリヤーを通しての輸送を受けやすい、ヒドロキシル、カルボキシル及び第一アミン基のブロックを通して達成される。他方、親水性薬物の供給は、血液−脳バリヤーを一時的に開放できる高張液の動脈内注入により高められ得る。
【0050】
医薬キャリヤーにおける化合物の濃度は広く変化し、すなわち医薬組成物の約 0.1重量%〜約20重量%又はそれ以上である。筋肉内注射のための局部医薬組成物は、たとえば1〜4mlの滅菌した緩衝水及び本発明の方法により同定された化合物1μg〜1mgを含むように製造される。静脈内注入のための局部組成物は、滅菌リンガー溶液 100〜 500ml及び前記化合物約1〜 100mgを含むように製造され得る。
【0051】
本発明の医薬組成物は、βAPの沈着に関連する疾病、たとえばアルツハイマー病及びダウン症候群の予防的及び/又は治療的処置のために投与され得る。治療的適用において、医薬組成物は、疾病をすでに有する宿主に投与される。医薬組成物は、βAPプラークのさらなる沈着を阻止するのに十分な量で投与されるであろう。これを達成するために適切な量は、“治療的有効量”として定義される。そのような有効量は疾病の程度、宿主の大きさ及び同様のものに依存し、そして一般的には、約0.01μg〜10mgの化合物/宿主の体重1kgの範囲であり、そして 0.1μg〜1mg/kgの用量がより通常には使用される。
【0052】
予防的適用のためには、本発明の医薬組成物はβAP疾病に対して敏感ではあるが、しかしそのような疾病をすでに有さない宿主に投与される。そのような宿主は、医学文献に記載されているように、遺伝的スクリーニング及び臨床的分析により同定され得る。その医薬組成物はひじょうに初期段階でβAPプラークの沈着を阻害又は妨げることができ、好ましくはβ−アミロイド疾病の初期段階さえも防止するであろう。予防的有効量として言及される、そのような予防的処置のために必要とされる化合物の量は一般的に、治療的処置のために記載された量と同じである。
【実施例】
【0053】
次の例は例示的目的により示されており、本発明を制限するものではない。
実 験
材料及び方法
1.抗体及び親和性マトリックスの調製
モノクローナル抗体 6C6を、免疫原としてウサギ血清アルブミンに接合されたβAP残基1−28を含む合成ペプチドを用いて、抗体10D5(Hymanなど.(1992) J.Neuropath.Exp.Neurol. 51:76) と同じ態様で発生せしめ、そしてスクリーンした。10D5及び 6C6の両者は、βAP配列の初めの16個のアミノ酸内のエピトープを認識する。 6C6は免疫沈殿における10D5よりもより効果的であり、そして捕獲抗体として使用された。
【0054】
6C6樹脂を調製するために、4mlの Affigel(登録商標)10 (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA) を冷水により洗浄し、そして3mlの6C6 (PBS(2.7mMのKCl, 1.5mMのKH2PO4, 8.1mMのNa2HPO4, 137mMのNaCl, pH 7.5) 及び 0.5MのNaClにおいて12.5mg/mlを組合した。カップリングは軽い振盪を伴って4℃で一晩、進行した。次に、 400μlの1Mのトリス(pH 8.0) を添加し、そして振盪を40分間続けた。次に、樹脂を、使用する前、TTBS(137mMのNaCl, 5mMのKCl, 25mMのトリス、 0.5%の Tween(登録商標)20, pH 7.5) により徹底的に洗浄した。抗体 7H5はまた、 Hymanなど.(1992) 前記に記載される。
【0055】
抗体 (抗体92と称する) を、βAPP の残基 591−596 を含む合成ペプチドに対して発生せしめた (Kangなど.(1987) 前記において番号を付けられている) 。ペプチド (N−アセチル−CISEVKM)を、免疫原を形成するためにスルホ−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルにより活性されたウサギ血清アルブミンに接合した。抗血清を、標準方法論によりウサギにおいて免疫原に対して生成せしめた。個々の接種の間、ウサギは、約10の部位で 0.1mlの皮下注射において免疫原5μgを受けた(50μg/追加免疫)。上記と同じペプチドを、 IgG画分からの抗体の親和性精製のために Sulfo-ling(TM) ゲル(Pierce Chemical Co., Rockford, IL)に結合した。
【0056】
抗体92の調製の詳細な説明は次の通りである。ウサギ血清アルブミン (12.3mg) を、1.25mlの0.05MのKH2PO4 (pH 7.0) 中、13mgのスルホ−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルと共に0℃で20分間インキュベートした。次に、その混合物をすぐに、リン酸緩衝液により平衡化されたSephadex G−10の1×75cmカラム上でゲル濾過にゆだねた、排除された体積のタンパク質溶離物をプールし、そしてすぐに、標準の自動化された固相方法論により合成されたN−アセチル−CISEVKM ペプチド30mgと共に組合した。
【0057】
カップリング反応(20mlの体積)を一晩進行せしめ、そして他に、抗体発生のために商業的施設に送った。注射方法は、等体積の完全フロイントアジュバントに抗原を乳化すること及び約10の部位に 0.1mlのアリコートにおいて合計50μgの抗原を皮下注射することである。その後、3週間ごとに、追加免疫注射を同一の手段により与え、但し、不完全フロイントアジュバントを乳化剤として使用した。ウサギを個々の注射の後、1週間後、採血し、そして血清を ELISAにおけるペプチドへの反応により力価について試験した。
【0058】
IgGを、50%の(NH4)2SO4(2×)による沈殿化により陽性反応血清から精製し、そして PBSに対して透析した。N−アセチル−CISEVKMペプチドを、そのペプチドに対して特異的な抗体を精製するために、親和性樹脂を生成するための製造業者の推薦を用いてSulfo-link(TM)ゲル(Pierce Chemical Co., Rockford, IL) に接合した。 IgG画分を前記カラムに適用し、そして PBSにより非特異的に結合された材料を通して洗浄した後、抗体を 0.1MのグリシンpH 2.5及び0.5MのNaClにより溶離し、そして凍結の前、 PBSを通して透析した。
【0059】
2.ヒト胎児脳細胞培養物
胎児ニューロン組織検体を、生後12〜14週目の胎児死骸から得た。脳皮質のサンプルをハンクス液(HBSS) により2度、すすいだ。皮質組織(2〜3g)を、1mgのDNase (Sigma Chemical Co., St,Louis, MO D3427)が添加されている冷 HBSS 10mlに置いた。粉砕された懸濁液を、 210μm及び 130μmの Nitexナイロンスクリーンを通して、 Pulliamなど.(1984) J.Virol.Met. 9:301 により記載されているようにして濾過した。
【0060】
細胞を遠心分離により収穫し、そしてニューロン媒体 (10%ウシ胎児血清、1%グルコース、1mMの Napyruate, 1mMのグルタミン、20mMの KClにより強化されたMEM)に再懸濁した。ポリエチレンイミンにより被覆された 100mmの皿に、ニューロン培地8mlにおける1.5×107 個の細胞を接種した。培地は1週当たり2度交換された。この研究におけるすべての培養物は少なくとも30日、インビトロで増殖された。血清を含まない増殖条件のためには、培養物を定義された培地(5μg/mlのウシインシュリン; 0.1mg/mlのヒトトランスフェリン; 0.1mg/mlの BSA画分V; 0.062μg/mlのプロゲステロン; 1.6μg/mlのプトレッシン; 0.039μg/mlの亜セレン酸ナトリウム; 0.042μg/mlのチロキシン及び 0.033μg/mlのトリヨード−L−チロニン)中に移し、そして3日後、その上清液を収穫した。
【0061】
前記細胞からのならし培地(10ml)を収穫した。EDTA(5mM)、ロイペプチド(10μg/ml)及びトリス−HCl(20mM, pH 8.0) を、示された最終濃度で個々の10mlのサンプルに添加し、そしてそのサンプルを30,000×gで4℃で20分間、回転せしめた。得られた上清液を2つの等しいアリコートに分け、 6C6樹脂を前記アリコートの1つに添加した(200μlの樹脂及び約5mg/mlの結合された6C6)。両アリコートを4℃で6時間、軽く混合し、樹脂をペレット化し、そして第2の 200μlのアリコートに樹脂を添加した。サンプルを4℃で一晩、さらに混合した。その組合された樹脂をTTBSにより2度洗浄し、次にすぐに、 0.1Mのグリシン、 0.1MのNaClのアリコート (pH 2.8) 1mlにより2度抽出した。
【0062】
樹脂から抽出された材料、樹脂により消耗された培地及び出発材料を、10%TCA(トリクロロ−酢酸) により0℃で1時間、それぞれ沈殿せしめ、ペレットをアセトンにより洗浄し、そして次に、減圧下で SDS−PAGEサンプル緩衝液 150μlに再懸濁し、そして煮沸した。個々のサンプル (25μl) を、10〜20%のトリシンゲル(Novex)を用いて SDS−PAGEにゆだねた。タンパク質を40Vで一晩、ProBlotPVDF膜に移した。免疫反応性タンパク質の可視化は、 AMPPD基質について製造業者の指図に従ってTROPIX化学発光システムを用いた。使用される一次抗体濃度は、抗−5, 0.1μg/ml;92, 2μg/ml;10D5,2μg/ml。
【0063】
3.ヒト 293細胞の培養
ヒト 293細胞(ATCC No.CRL−1573) を変性し、 APPを過剰発現せしめた (Selkoeなど.(1988) Proc.Natl.Acad.Sci. USA 85:7341) 。細胞を、使用する前、10cmの皿において半集密性(subconfluency)に増殖せしめた。代謝ラベリング及び免疫沈殿を、Oltersdorfなど.(1989)Nature 341:144 及び (1990) J.Biol.Chem. 265:4492に記載されているようにして実質的に行なった。手短に言及すれば、ラベリングは10cmの皿において行なわれた。細胞をメチオニンを有さない培地で洗浄し、0.5mCiの35S −メチオニンにより補充されたメチオニンを有さない培地2mlにおいて20分間、インキュベートし、完全な培地により洗浄し、完全な培地3mlにおいて2時間、追跡した。
【0064】
ならし培地を集め、そして3000×gで10分間透明にし、続いてプロテインA Sepharose (R)(Pharmacia, Piscataway, NJ)により予備吸収せしめた。免疫沈殿は、サンプル当たり 1.5mgのプロテインA Sepharose (R) により行なわれた。抗体抗−5はサンプル当たり2μgで使用され;6C6, 7H5及び92はサンプル当たり10μgで使用された。5mgのウサギ抗マウス IgGは、 6C6及び 7H5と共に並びに対照サンプルにおいて使用された。沈殿物を、TBS (137mMのNaCl,5mMのKCl, 25mMのトリス、pH 7.5) 、 0.1%のNP40, 5mMのEDTA,1mMのPMSF, 10μg/mlのロイペプチンにより4度洗浄した。 SDS−PAGEは5% Laemmliゲル上で行なわれた。
【0065】
4.Swedish変異によりトランスフェクトされたヒト293細胞の培養
ヒト腎臓 293細胞の6つのウェルトレーにおける二重ウェルを、製造業者(Boehringer Mannheim) により記載されるようにして、 DOTAP介在トランスフェクションを用いて正常なヒトβAPP 又は Swedish変異体βAPP のいづれかを発現するプラスミドベクターにより一般的にトランスフェクトした。40時間後、細胞を、10%ウシ胎児血清を含む、メチオニンを含まない DME中に置き、そして20分後、それらを 200μCi/mlの35S−メチオニンにより35分間ラベル化した。次に、細胞を、10%ウシ胎児血清を含む正常な DME培地中に戻し、そしてさらに 2.5時間インキュベートした。培地を細胞から集め、そして1000×gで15分間、回転せしめ、すべての細胞を除いた。上清液を半分に分け、そして半分を標準方法により抗−5抗体により免疫沈殿した。
【0066】
他の半分をアガロース結合された 6C6抗体と共に一晩インキュベートし、そして 6C6アガロースに結合された材料を遠心分離により分離した。残る材料を抗−5抗体により免疫沈殿せしめた。全体の抗−5免疫沈殿物 (α5+)、 6C6結合された沈殿物(6C6+) 及び 6C6非反応性、抗−5反応性免疫沈殿物(6C6−,α5+)を、5% Laemmliゲルにかけ、そして免疫反応性タンパク質をオートラジオグラフィーにより可視化した。
【0067】
実験的な図面の記載
第2図:ヒト混合された脳細胞培養物からのならし培地における切断されたβAPP の表示
サンプル1は、培養物からのならし培地であり;サンプル2は 6C6−反応性βAPP を消耗された培地であり;そしてサンプル3は 6C6樹脂から抽出された材料である。パネルAを、βAPP 配列 444−592(Oltersdorfなど.(1989) 前記及び (1990) 前記) に対して生ぜしめられた抗−5抗体によりプローブした。パネルBを、材料及び方法セクションに記載されるように抗92によりプローブした。パネルCを、材料及び方法セクションに記載されるようにβAP残基1−16内のエピトープを認識するモノクローナル抗体10D5によりプローブした。C2及びC3において観察された低分子量バンドは、C1には見出されず、そして 6C6樹脂から誘導され、そして一次抗体には無関係なヤギ−抗−マウス IgGアルカリホスファターゼ接合体により認識される(データは示されていない)。
【0068】
第3図:92抗体の特異性
75才の男性から得られたヒト腰動脈 CSF検体1mlを、10% TCAにより沈殿せしめ、10倍の濃度をもたらし、そして第2図に記載されるようにして処理した(但し、ゲルウェルは4cmのスロットであった)。92抗体を、軽く混合しながら、4℃で10時間、それぞれ約60μMの濃度で、種々の可能性ある競争ペプチドの存在下でTTBS 0.5ml中、 6.7μg/mlに希釈した。次に、抗体を1%ゼラチン/TTBSにおいて8倍に希釈し、その後、 CSF由来の材料のブロットのストリップと共にインキュベートし、そして第2図に記載されているようにして処理した。競争ペプチドは次の通りであった:レーン1、競争ペプチドは添加されなかった;レーン2、GSGLTNIKTEEISEVK;レーン3、 YSGLTNIKTEEISEVKM;レーン4、ISEVKM;レーン5、EISEVKMD;レーン6、 CISEVKM;レーン7、 YISEVKM。MW=分子質量マーカー(キロドルトンで示される)。
【0069】
第4図:細胞系及び一次ヒト胎児脳培養物における異なったC−末端に対する抗体により検出される免疫沈殿における APPの分泌された形の分子質量異種性
抗体:抗−5:レーン3,6,9;6C6(βAPペプチド残基1−16に対して検出された);レーン4,7,10;抗体92(APPアミノ酸591−596 に対する) ;レーン5,8,11;7H5 (APP−KPI に対する):レーン12。細胞:左側のパネル (レーン1及び3−5):APP695により安定してトランスフェクトされた 293細胞;中間のパネル (レーン2及び6−8):APP751により安定してトランスフェクトされた 293細胞;左側のパネル (レーン9−13):ヒト胎児脳培養物。対照:レーン1,2及び13:ウサギ抗マウス IgG抗体。矢印:抗体 6C6及び92により認識される分泌される形の APP間での分子質量差異の例。 SDS−PAGEは5% Laemmliゲル上で行なわれた。MW=分子質量マーカー(キロドルトンにより示される)。
【0070】
第5図: Swedish変異によりトランスフェクトされたヒト 293細胞からのならし培地における切断されたβAPP の表示
第5図は正常な形及び Swedish形の両者のために二重トランスフェクションからの結果を示す。レーン1−4はα5+であり;レーン5−8は 6C6+であり;そしてレーン9−12は 6C6−,α5+サンプルである。レーン1,2,5,6,9及び10は正常なβAPP からであり、レーン3,4,7,8,11及び12はSwedish βAPP からである。その Swedish変異は、高められた AFT−αAPP の生成をもたらし、そしてレーン11及び12はレーン9及び10よりも一層の ATF−βAPP 材料を含む。
【0071】
結 果
残基1−16内のβAPのエピトープを認識するモノクローナル抗体 6C6を、種々のサンプルからの一定のβAPP フラグメントを免疫消耗するために使用した。モノクローナル抗体 6C6を樹脂(上記のような)に結合し、そして上記のようにして、ヒト胎児脳細胞培養物からのならし培地と共にインキュベートした。第2図、レーンC2に見られるように、この樹脂は細胞培養物のならし培地からのβAB1−6を含むβAPP を効果的に除く。しかしながら、実質的なβAPP 免疫反応性は、βAP領域側のエピトープN末端に対して向けられた抗−5抗体により検出されるように樹脂により捕獲されない。
【0072】
βAPP のこの明らかに新規の形を特徴づけるために、本発明者は、βAPP 残基 591−596 を含む合成ペプチドに対する抗体を生成した。この抗体(92と称する)は、樹脂により捕獲されないβAPP の種を認識することが見出されたが(第2図、レーンB2)、しかし驚くべき事には、βAB1−6配列を含むβAPP の分泌形と反応しなかった(レーンB3)。
【0073】
交叉反応性のこの欠乏についての説明は、92抗体が残基 596に対応する、カルボキシ−末端メチオニンを含むβAPP におけるエピトープを認識することを示す。従って、本発明者は、92により生成される免疫反応性をブロックする種々の合成ペプチドの能力を試験する。第3図に見出されるように、メチオニン 596の同等物で終る、βAPP 配列基材のペプチドは92の反応を実質的にブロックし、そしてそれらのカルボキシ末端で1つのアミノ酸よりも長いか又は短いペプチドは競争において比較的効果的ではない。ペプチド競争の同じパターンが細胞培養物上清液(データは示されていない)及びCSFにおいて観察された。
【0074】
一連のパルス−追跡実験は、検出される量の抗体92免疫沈殿可能材料がβAPP の 695又は 751イソフォームのいづれかを過剰発現する 293細胞により生成されることを示した (第4図、レーン5及び8)。ヒト胎児脳細胞培養物に対する類似する実験は、92免疫沈殿可能性材料が低%(5%)の SDS−PAGEにより 6C6反応性βAPP から溶解され得ることを示す(第4図、レーン9−11)。胎児脳細胞培養物においては、Kunitzプロテアーゼ阻害ドメイン(KPI) −含有βAPP 形の他のプロセッシングはほとんど明白ではなく、但し、薄い同時移動性バンドが抗体92及び抗−KPI 抗体 7H5免疫沈殿により観察された (レーン11, 12) 。
【0075】
混合された脳培養物に抗体92及び 6C6沈殿性材料の溶解する能力は、 293細胞におけるその位置に比較して生成されるそれぞれの形のほぼ等しい量に少なくとも部分的に依存する。 Estusなど.(1992)前記は、他の組織に比較して、ヒト脳は、サイズに基づいて、βAPのアミノ末端で又はその近くで開始すると思われる、比較的多量の実質的にアミロイド原性カルボキシ末端フラグメントを含むことを観察した。
【0076】
抗体92及び 6C6沈殿可能βAPP 材料の出現の一時的な一致は、特に長い追跡時間が92及び 6C6反応性種の割合の著しい変化をもたらさないので (データは示されていない) 、分泌後に生じる第2のタンパク質分解性出来事の見込みに反対の議論を示す。それらの種の免疫学的交叉反応性の完全な欠乏と組合される、 SDS−PAGEによる分泌形の分析は、他の分泌経路の存在をさらに示す。他の切断部位は、β−セレクターゼ部位と称され、それは切断がβAP内に生じる、Eschなど.(1990) 前記により記載される切断とは異なった、βAPのアミノ末端で生じることを強調する。
【0077】
前述の発明はより理解するために詳細に記載されて来たが、ある一定の変更が本発明の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1のA及びBは、正常なβAPP の種々のイソフォーム及び ATF−βAPP のその対応するイソフォームをそれぞれ示す。
【図2】図2のA,B及びC図は、ヒト胎児の脳細胞培養物のならし培地に由来する材料の化学発光ゲルパターンである。個々のゲルのレーン1,2、及び3は、未処理のならし培地、β−アミロイドペプチド残基1〜16内でエピトープを認識する抗体との反応により消耗されたならし培地、及びこの抗体により除去される材料をそれぞれ表わす。パネルA,B及びCは、次のプローブを示す:抗−5抗体(β−アミロイドペプチド領域の方に対してβAPP アミノ末端上の位置を認識する)、抗体92(βAPP からのβAPの切断により暴露されるC末端メチオニンで終結する合成ペプチドに対して生ぜしめられている)、及び抗体10D4(残基1〜16以内のβAPのエピトープを認識するモノクローナル抗体)。
【図3】図3は、ヒト腰動脈 CSFを試験することによって得られた化学発光ゲルパターンである。 CSFは、単独で(レーン1)又は ATF−βAPP のC末端の変動を表わす種々のペプチドにより予備インキュベートされた92抗体によりプローブされた。有意な競争(結合の低下)は、C末端メチオニンで終結するペプチドにより観察された(レーン3,4,6、及び7)。ペプチドは次の通りであった:レーン1、競争ペプチドは添加されなかった;レーン2、GSGLTNIKTEEISEVK;レーン3、 YSGLTNIKTEEISEVKM;レーン4、ISEVKM;レーン5、EISEVKMD;レーン6、 CISEVKM;レーン7、 YISEVKM。MW=分子質量マーカー(キロドルトンで示される)。
【図4】図4は、種々の細胞系からのならし培地の免疫沈殿により得られた電気泳動ゲルパターンを表わすオートラジオグラムである。ヒト胎児脳培養物により分泌され、そして抗体92(矢印でのレーン11)により免疫沈殿された材料は明らかに、抗体6C6(矢印でのレーン10)により沈殿された材料よりも小さい。抗体 6C6は、βAPの残基1−16内のエピトープを認識する。
【図5】図5は正常な及びSwedish βAPP の両者をコードするcDNAによりトランスフェクトされたヒト 293細胞系からのならし培地の免疫沈殿により得られた電気泳動ゲルパターンを表わすオートラジオグラムである。 Swedishトランスフェクト細胞 (レーン11及び12) により分泌された AFT−βAPP 材料の量は正常なβAPP ランスフェクタント (レーン9及び10)により生成された量よりも定性的に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞におけるβ−アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)のプロセッシングをモニターするための方法であって、前記細胞から分泌される可溶性βAPP フラグメントを検出することを含んで成り、ここで前記βAPP フラグメントがβ−アミロイドペプチド (βAP)のアミノ末端でのβAPP の切断に起因する方法。
【請求項2】
前記切断がβAP側の方に向かって連続した5個の残基領域のアミノ末端内で生じる請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】
前記切断がメチオニン596 又はリシン595 で生じる請求の範囲第2項記載の方法。
【請求項4】
前記切断がメチオニン596 で生じる請求の範囲第3項記載の方法。
【請求項5】
前記切断がロイシン596 で生じる請求の範囲第2項記載の方法。
【請求項6】
前記βAPP フラグメントが、βAPP からのβ−アミロイドペプチドの切断により暴露された、前記フラグメント上のC−末端残基に特異的に結合する物質への暴露により検出される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項7】
前記βAPP フラグメントが患者サンプルにおいて検出される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項8】
前記患者サンプルが脳脊髄液である請求の範囲第7項記載の方法。
【請求項9】
前記βAPP フラグメントが細胞培養物からのならし培地において検出される請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項10】
生物学的サンプルにおけるβ−アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の分泌されたフラグメントの存在を検出するための方法であって、βAPP からのβ−アミロイドペプチド(βAP)の切断により暴露されている、分泌されたフラグメント上のC末端領域に特異的に結合する物質に前記サンプルを暴露し;そして
前記物質と前記分泌されたフラグメントとの間の結合を検出することを含んで成る方法。
【請求項11】
前記C末端残基がβAP側の方に向かって連続した5個の残基領域のアミノ末端内に存在する請求の範囲第10項記載の方法。
【請求項12】
前記C末端残基がメチオニン596 又はリシン595 である請求の範囲第11項記載の方法。
【請求項13】
前記C末端残基がメチオニン596 である請求の範囲第11項記載の方法。
【請求項14】
前記C末端残基がロイシン596 である請求の範囲第11項記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルが、βAPP からのβ−アミロイドペプチドの切断により暴露されたC−末端残基に対して特異的な抗体に暴露される請求の範囲第10項記載の方法。
【請求項16】
前記C末端残基がメチオニンである請求の範囲第15項記載の方法。
【請求項17】
前記C末端残基がロイシンである請求の範囲第15項記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、暴露されている残基596 を伴って、βAPP の残基 591〜596 を含んで成るペプチドに対して生ぜしめられている請求の範囲第15項記載の方法。
【請求項19】
前記生物学的サンプルが患者サンプルである請求の範囲第10項記載の方法。
【請求項20】
前記患者サンプルが脳脊髄液である請求の範囲第19項記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的サンプルが細胞系からのならし培地である請求の範囲第10項記載の方法。
【請求項22】
患者におけるβ−アミロイド関連疾病を診断又はモニターするための方法であって、
β−アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の分泌されたフラグメントの量又は割合を患者サンプルにおいて測定し、ここで前記βAPPフラグメントがβ−アミロイドペプチドのアミノ末端でのβ−APPの切断に起因する方法。
【請求項23】
前記切断がβAP側の方に向かって連続した5個の残基領域のアミノ末端内で生じる請求の範囲第22項記載の方法。
【請求項24】
前記切断がメチオニン596 、ロイシン596 又はリシン595 で生じる請求の範囲第23項記載の方法。
【請求項25】
前記切断がメチオニン596 で生じる請求の範囲第24項記載の方法。
【請求項26】
前記患者サンプルが脳脊髄液である請求の範囲第22項記載の方法。
【請求項27】
分泌されたフラグメントの測定された量又は割合と正常な患者に特徴的な量とを比較することをさらに含んで成り、ここで高められたβAPP の量又は割合がアルツハイマー病の診断である請求の範囲第26項記載の方法。
【請求項28】
前記βAPP フラグメントが、β−アミロイドペプチドのアミノ末端での APPの切断により暴露された、前記フラグメント上のC−末端残基に特異的に結合する物質への暴露により測定される請求の範囲第22項記載の方法。
【請求項29】
β−アミロイド生成インヒビターを同定するための方法であって:
β−アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)のフラグメントの分泌をもたらす条件下で細胞を培養し、ここで前記βAPP フラグメントがβ−アミロイドペプチドのアミノ末端でのβAPP の切断に起因し;
前記培養された細胞を多くの試験化合物に暴露し;そして
分泌されたβAPP フラグメントの量の変化を引き起こす試験化合物を同定することを含んで成る方法。
【請求項30】
前記細胞が培養されたヒト胎児脳細胞である請求の範囲第29項記載の方法。
【請求項31】
前記試験化合物が1nM〜1mMの濃度で暴露される請求の範囲第29項記載の方法。
【請求項32】
前記試験化合物が小分子を含んで成る請求の範囲第29項記載の方法。
【請求項33】
前記試験化合物が生物学的ポリマーを含んで成る請求の範囲第29項記載の方法。
【請求項34】
β−アミロイドペプチドのアミノ末端で切断される、β−アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の分泌されたフラグメントに特異的に結合する抗体分子を含んで成る抗体組成物。
【請求項35】
前記分泌されたフラグメントがβAPP からのβAPのインビボ切断に起因し、C末端メチオニン又はロイシンの暴露をもたらす請求の範囲第34項記載の抗体組成物。
【請求項36】
前記抗体分子が損なわれていない免疫グロブリンを含んで成る請求の範囲第34項記載の抗体組成物。
【請求項37】
前記抗体分子が免疫グロブリンフラグメントを含んで成る請求の範囲第34項記載の抗体組成物。
【請求項38】
前記抗体分子がβAPP の少なくとも残基 591−596 を含んで成るペプチドに対して生ぜしめられる請求の範囲第34項記載の抗体組成物。
【請求項39】
前記ペプチドに対して生ぜしめられた抗血清を含んで成る請求の範囲第38項記載の抗体組成物。
【請求項40】
精製され、そして単離された形でのβ−アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の可溶性フラグメントであって、前記フラグメントが損なわれていないβAPP からのβ−アミロイドペプチドの切断に起因するC末端メチオニン又はロイシンを有することを特徴とする可溶性フラグメント。
【請求項41】
脳脊髄液及び培養された細胞からのならし培地から成る群から選択される天然源から単離される請求の範囲第40項記載の可溶性フラグメント。
【請求項42】
βAPP イソフォーム 695の残基18−596 、βAPP イソフォーム 751の残基18−612 、又はβAPP イソフォーム 770の残基18−671から実質的に成る請求の範囲第41項記載の可溶性フラグメント。
【請求項43】
βAPP イソフォーム 695の残基18−595 、βAPP イソフォーム 751の残基18−611 又はβAPP イソフォーム 770の残基18−670から実質的に成る請求の範囲第42項記載の可溶性フラグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−51029(P2006−51029A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230075(P2005−230075)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【分割の表示】特願平5−518303の分割
【原出願日】平成5年3月3日(1993.3.3)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【出願人】(502072400)エリ リリー アンド カンパニー (8)
【Fターム(参考)】