説明

β−1,3−1,6−D−グルカンを用いたメタボリックシンドローム改善剤

【課題】天然素材からなる安全なメタボリックシンドローム改善剤を提供する。
【解決手段】以下のβ-1,3-1,6-D-グルカンを含むメタボリックシンドローム改善剤。好ましくは、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来し、1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有し、かつ水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が200cP(mPa・s)以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドローム改善剤、副交感神経の刺激剤および/または交感神経抑制剤、及びメタボリックシンドローム改善のため、又は交感神経抑制および/または副交感神経刺激(若しくはメタボリックシンドローム改善)のために用いられる飲食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドロームとは、高血糖、インスリン抵抗性、高脂血症、高血圧など、動脈硬化の危険因子が集積する動脈硬化性疾患発症のリスクが高い病態である(非特許文献1参照)。現代においては、飽食がもたらす生活習慣病として、メタボリックシンドロームは大きな問題となっている。
【0003】
β-1,3-1,6-D-グルカンはオーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)から調製され得ることが報告され(特許文献1)、腸管免疫活性化作用を有すること(特許文献2)等が報告されている。しかしながら、その由来に限られずβ-1,3-1,6-D-グルカンがメタボリックシンドローム低減効果を有することは実証されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2006−104439号公報
【特許文献2】特開2006−137719号公報
【非特許文献1】メタボリックシンドローム 実践マニュアル、フジメディカル出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、天然素材からなる安全なメタボリックシンドローム改善剤、及びメタボリックシンドローム改善効果を有する飲食品組成物を提供することを課題とする。
【0006】
さらに、本発明は、天然素材からなる安全な副交感神経刺激剤および/または交感神経抑制剤、及び副交感神経を刺激および/または交感神経を抑制することができる飲食品組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、β−1,3−1,6−D−グルカン(以下、本明細書においてβ−グルカンと称す)の健康維持・増進のための有効利用について研究を重ねた結果、このβ−グルカンが、メタボリックシンドローム改善に優れた効果を示し、さらに自律神経系をも抑制および/または刺激してメタボリックシンドローム改善効果を示すことを見出した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下のメタボリックシンドローム改善剤などを提供する。
【0009】
本発明は、β-1,3-1,6-D-グルカンを含む、メタボリックシンドローム改善剤を提供する。好ましくは、β-1,3-1,6-D-グルカンは、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来する。さらに好ましくは、β-1,3-1,6-D-グルカンは、以下の(1)−(2)の性質:
(1)1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有する;
(2)水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が200cP(mPa・s)以下である、
を有する。
したがって、本発明は、好ましくは、以下の(1)〜(3)の性質:
(1) オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来する。
(2) 1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有する。
(3) 水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が200cP(mPa・s)以下である、
を有するβ-1,3-1,6-D-グルカンを含む、メタボリックシンドローム改善剤を提供する。
【0010】
また、本発明は、β-1,3-1,6-D-グルカンを含む、副交感神経刺激剤および/または交感神経抑制剤を提供する。好ましくは、β-1,3-1,6-D-グルカンは、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来する。さらに好ましくは、β-1,3-1,6-D-グルカンは、以下の(1)−(2)の性質:
(1)1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有する;
(2)水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が200cP(mPa・s)以下である、
を有する。
したがって、本発明は、好ましくは、以下の(1)〜(3)の性質:
(1) オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来する。
(2) 1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有する。
(3) 水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が200cP(mPa・s)以下である、
を有するβ-1,3-1,6-D-グルカンを含む、副交感神経刺激剤および/または交感神経抑制剤を提供する。
【0011】
本発明はさらに、β-1,3-1,6-D-グルカンを含む、メタボリックシンドローム改善のための飲食品組成物を提供する。好ましくは、β-1,3-1,6-D-グルカンは、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来する。さらに好ましくは、β-1,3-1,6-D-グルカンは、以下の(1)−(2)の性質:
(1)1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有する;
(2)水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が200cP(mPa・s)以下である、
を有する。
したがって、本発明は、好ましくは、以下の(1)〜(3)の性質:
(1) オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来する。
(2) 1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有する。
(3) 水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が200cP(mPa・s)以下である、
を有するβ-1,3-1,6-D-グルカンを含む、飲食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、メタボリックシンドロームに起因する症状の予防、改善、および/または治療等に有効である。
【0013】
また、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、自律神経系、特に副交感神経系を亢進ないしは刺激、および/または交感神経系を抑制することから、メタボリックシンドローム改善との関連が示唆される。
【0014】
さらに、本発明におけるβ-1,3-1,6-D-グルカンの水溶液は低粘度であるため、摂取や除菌を行い易い点で有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
(I)メタボリックシンドローム改善剤
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、β-1,3-1,6-D-グルカンを含む。β-1,3-1,6-D-グルカンの由来は特に限定されるものではなく、市販のものや、各種微生物に由来するものを用いることができる。好ましくは、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来するβ-1,3-1,6-D-グルカンを含むものである。このβ-1,3-1,6-D-グルカンは、さらに好ましくは、1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有し、かつ水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が好ましくは200cP(mPa・s)以下、より好ましくは100cP(mPa・s)以下、さらに好ましくは50cP(mPa・s)以下のものである。上記粘度の下限値は通常10cP(mPa・s)程度であり得る。NMRの測定値は条件の微妙な変化によって変化し、また誤差を伴うことは周知のことであることから、「約4.7ppm」「約4.5ppm」は、通常予測される範囲の測定値の変動幅(例えば±0.2)を含む数値を意味する。
【0016】
オーレオバシジウム属微生物が産生するβ−1,3−1,6−D−グルカン
オーレオバシジウム属の微生物が産生するβ-1,3-1,6-D-グルカンは、菌体外に分泌されるために回収が容易であり、また水溶性である点で好ましいものである。オーレオバシジウム属の微生物は、分子量が100万以上の高分子量のグルカンから分子量が数万程度の低分子のグルカンまでを培養条件に応じて産生することができる。
【0017】
中でも、オーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)が生産するものが好ましく、オーレオバシジウム・プルランスGM-NH-1A1株、又はGM-NH-1A2株(独立行政法人産業技術研究所特許生物寄託センターにそれぞれFERM P-19285及びFERM P-19286として寄託済み)が産生するものが好ましい。GM-NH-1A1株及びGM-NH-1A2株は、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)K-1株の変異株である。オーレオバシジウム属K-1株は、分子量200万以上と100万程度の2種類のβ-1,3-1,6-D-グルカンを産生することが知られている。
【0018】
また、オーレオバシジウム属細菌が産生するβ−1,3−1,6−D−グルカンは、通常、硫黄含有基を有するところ、K-1株の産生するβ−グルカンはスルホ酢酸基を有することが知られている(Arg.Biol.Chem.,47,1167-1172(1983)),科学と工業,64,131-135(1990))。GM-NH-1A1株、及びGM-NH-1A2株が生産するβ-1,3-1,6-D-グルカンもスルホ酢酸基を有すると考えられる。オーレオバシジウム属微生物の中には、リン酸基のようなリン含有基、リンゴ酸基などを含むβ-1,3-1,6-D-グルカンを産生する菌種、菌株も存在する。
【0019】
GM-NH-1A1株及びGM-NH-1A2株は、後に実施例において示すようにメインピークが見かけ上50〜250万の高分子量のβ−グルカン(微粒子グルカン)とメインピークが見かけ上2〜30万の低分子量のβ−グルカンの両方を産生する菌株である。この微粒子状グルカンは、一次粒子径が0.05〜2μm程度である。
【0020】
β−1,3−1,6−D−グルカンの溶解度は、pH及び温度に依存する。このβ−1,3−1,6−D−グルカンは、pH3.5、温度25℃の条件で2mg/ml水溶液を調製しようとすると、その50重量%以上が一次粒子径0.05〜2μmの微粒子を形成し、残部は水に溶解する。本発明において粒子径は、レーザー回折散乱法により測定した値である。
【0021】
β−1,3−1,6−D−グルカンが水溶液として製剤中に含まれている場合は、レシチンのような乳化剤や、環状デキストリンのような安定化剤を水溶液に添加することにより、微粒子をさらに安定化させることができる。
【0022】
また、β−1,3−1,6−D−グルカンがオーレオバシジウム・プルランス由来のものである場合は、β-1,3結合/β-1,6結合の結合比は、1〜1.5程度、特に1.1〜1.4程度である。
【0023】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤に特に好適に用いられるβ−1,3−1,6−D−グルカン
本発明のメタボリックシンドローム改善剤に特に好適に用いられるβ−1,3−1,6−D−グルカンは、水溶液にしたときの粘度が、オーレオバシジウム属微生物が産生する天然型β−1,3−1,6−D−グルカンより低い。この低粘度β−1,3−1,6−D−グルカンは、0.5%(w/v)水溶液(pH5.0)の30℃における粘度が好ましくは200cP(mPa・s)以下であり、より好ましくは100cP(mPa・s)以下であり、さらに好ましくは50cP(mPa・s)以下であり、よりさらに好ましくは10cP以下である。本発明において、粘度はBM型回転粘度計で測定した値である。
【0024】
この低粘度グルカンは、オーレオバシジウム属微生物が産生する天然型β−1,3−1,6−D−グルカンと同様の一次構造を有し得る。具体的には、1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有するものである。NMRの測定値は条件の微妙な変化によって変化し、また誤差を伴うことは周知のことであることから、「約4.7ppm」「約4.5ppm」は、通常予測される範囲の測定値の変動幅(例えば±0.2)を含む数値を意味する。
【0025】
このグルカンがオーレオバシディウム・プルランス(例えばGM-NH-1A1株)由来のものである場合、得られるβ−1,3−1,6−D−グルカンをエキソ型のβ−1,3−グルカナーゼ(キタラーゼ M、ケイアイ化成製)で加水分解処理すると、分解生成物としてグルコースとゲンチオビオースの遊離が確認できる。このこと及びNMRの積算比から、オーレオバシディウム・プルランス由来のβ−1,3−1,6−D−グルカンはβ−1,3結合の主鎖に対し、β−1,6結合でグルコ−スが1分子側鎖に分岐した構造で、1,3−結合主鎖に対する1,6−結合の側鎖分岐度は、50〜100%程度、特に50
〜90%と推測される。
【0026】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤に特に好適に用いられるβ−1,3−1,6−D−グルカンは、金属イオン濃度が、β−1,3−1,6−D−グルカンの固形分1g当たり0.4g以下であることが好ましく、0.2g以下であることがより好ましく、0.1g以下であることがさらにより好ましい。製剤中にβ−1,3−1,6−D−グルカンが水溶液状態で含まれる場合は、金属イオン濃度は、水溶液の100ml当たり120mg以下であることが好ましく、50mg以下であることがより好ましく、20mg以下であることがさらにより好ましい。
【0027】
ここでいう金属イオンには、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、第3〜第5族金属イオン、遷移金属イオンなどが含まれるが、混入する可能性のある金属イオンとしては、代表的には、低粘度β−1,3−1,6−D−グルカンの製造において使用されるアルカリ由来のカリウムイオン、ナトリウムイオンなどが挙げられる。金属イオン濃度は、限外ろ過や透析により調整できる。金属イオン濃度が上記範囲であれば、水溶液状態で保存する場合や、水溶液状態で加熱滅菌する際に、β−1,3−1,6−D−グルカンのゲル化、凝集、沈殿が生じ難い。また、固形製剤においても、再溶解させる場合に凝集などが生じ難い。
【0028】
低粘度β−1,3−1,6−D−グルカンは、本発明のメタボリックシンドローム改善剤中に、固体状態で含まれてもよく、又は水溶液のような液体ないしは流動状で含まれてもよい。
【0029】
オーレオバシジウム属のβ−1,3−1,6−D−グルカンの生産方法
β−1,3−1,6−D−グルカンは、例えば、これを産生する微生物の培養上清に有機溶媒を添加することにより沈殿物として得ることができる。
【0030】
また、オーレオバシジウム属の微生物を培養して、β−1,3−1,6−D−グルカンを産生させる方法は種々報告されている。使用できる炭素源としては、シュークロース、グルコース、フラクトースなどの炭水化物、ペプトンや酵母エキスなどの有機栄養源等を挙げることができる。
【0031】
窒素源としては、硫酸アンモニウムや硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの無機窒素源等を挙げることができる。場合によってはβ−グルカンの産生量を上昇させるために適宜、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの無機塩、更には鉄、銅、マンガンなどの微量金属塩やビタミン類等を添加するのも有効な方法である。
【0032】
オーレオバシジウム属微生物を、炭素源としてシュークロースを含むツアペック培地にアスコルビン酸を添加した培地で培養した場合、高濃度のβ−1,3−1,6−D−グルカンを産生することが報告されている(Arg.Biol.Chem.,47,1167-1172(1983));科学と工業,64,131-135(1990);特開平7−51082号公報)。しかし、培地は、微生物が生育し、β−1,3−1,6−D−グルカンを生産するものなら特に限定されない。必要に応じて酵母エキスやペプトンなどの有機栄養源を添加してもよい。
【0033】
オーレオバシジウム属の微生物を上記培地で好気培養するための条件としては、10〜45℃程度、好ましくは20〜35℃程度の温度条件、3〜7程度、好ましくは3.5〜5程度のpH条件等が挙げられる。
【0034】
効果的に培養pHを制御するためにアルカリ、あるいは酸で培養液のpHを制御することも可能である。更に培養液の消泡のために適宜、泡消剤を添加してもよい。培養時間は通常1〜10日間程度、好ましくは1〜4日間程度であり、これによりβ−グルカンを産生することが可能である。なお、β−グルカンの産生量を測定しながら培養時間を決めてもよい。
【0035】
上記条件下オーレオバシジウム属の微生物を4〜6日間程度通気攪拌培養すると、培養液にはβ−1,3−1,6−D−グルカンを主成分とするβ−グルカン多糖が0.1%から数%(w/v)含有されており、その培養液の粘度はBM型回転粘度計(東機産業社製)により30℃では数百cP([mPa・s])から数千cP([mPa・s])という非常に高い粘度を有する。この培養を遠心分離して得られる上清に例えば有機溶媒を添加することにより、β−1,3−1,6−D−グルカンを沈殿物として得ることができる。
【0036】
低粘度β−1,3−1,6−D−グルカンの製造方法
上記の高粘度のβ−1,3−1,6−D−グルカンを含む培養液を、常温で攪拌しながら、これにアルカリを添加すると、急激に粘度が低下する。
【0037】
アルカリは、水溶性で、かつ医薬品や食品添加物として用いることができるものであればよく、特に限定されない。例えば、炭酸カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液などの炭酸アルカリ水溶液;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液などの水酸化アルカリ水溶液;あるいはアンモニア水溶液などを使用できる。アルカリは、培養液のpHが12以上、好ましくは13以上になるように添加すればよい。例えば水酸化ナトリウムを使用して培養液のpHを上げる場合は、水酸化ナトリウムの最終濃度が好ましくは0.5%(w/v)以上、より好ましくは1.25%(w/v)以上になるように添加すればよい。培養液にアルカリを添加し、良く攪拌すると、瞬時に培養液の粘度が低下する。
【0038】
次いで、アルカリ処理後の培養液から菌体などの不溶性物質を分離する。培養液の粘度が低いため、菌体を自然沈降させて上澄みを回収する方法(デカント法)、遠心分離、ろ紙あるいはろ布を利用した全量ろ過、フィルタープレス、更に膜ろ過(MF膜などの限外ろ過)などの方法で、容易に不溶性物質とグルカンとを分離できる。ろ紙あるいはろ布による全量ろ過の場合は、セライトなどろ過助剤を利用するのも一つの手段である。工業的にはフィルタープレスによる菌体除去が好ましい。
【0039】
次いで、グルカンを含む溶液に酸を添加して中和する。中和は、不溶物の除去前に行ってもよい。酸は、医薬や食品添加物として使用できるものであればよく、特に限定されない。例えば、塩酸、燐酸、硫酸、クエン酸、リンゴ酸などを使用できる。酸の使用量は、溶液又は培養液の液性が中性(pH5〜8程度)になるような量とすればよい。即ち、中和はpH7に合わせることを必ずしも要さない。
【0040】
pH12以上のアルカリ処理後、中和して得られるβ−1,3−1,6−D−グルカンは、30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が通常200cP以下、場合によっては50cP以下である。粘度は製造方法ないしは精製方法によって変動する。
【0041】
アルカリ処理された低粘度のβ−1,3−1,6−D−グルカンは、中和しても粘度が高くなることがない。さらに、常温(15〜35℃)では、液性をpHが4を下回るような酸性にしても、粘度が高くなることがない。
【0042】
また、培養上清をアルカリ処理、及び中和した後に、菌体などを除去するのに代えて、培養上清から菌体などを除去した後に、アルカリ処理、及び中和を行うこともできる。
【0043】
得られるグルカン水溶液からグルカンより低分子量の可溶性夾雑物(例えば塩類など)を除去する場合は、例えば限外ろ過を行えばよい。
【0044】
また、アルカリ処理、除菌した後、中和せずに、アルカリ性条件下で限外ろ過することもでき、これにより透明性、熱安定性、長期保存性に一層優れる精製β−1,3−1,6−D−グルカンが得られる。アルカリ性条件は、pH10以上、好ましくは12以上であり、pHの上限は通常13.5程度である。
【0045】
このようにして得られる水溶液に含まれるβ−1,3−1,6−D−グルカンは、乾燥させて固形製剤にする場合も、また水溶液のまま製剤として使用する場合も、一旦、水溶液から析出させることができる。β−1,3−1,6−D−グルカンの析出方法は、特に限定されないが、例えば、限外ろ過などにより濃縮してグルカン濃度を1w/w%以上にした水溶液に、エタノールのようなアルコールを、水溶液に対して容積比で等倍以上、好ましくは2倍以上添加することにより、β−1,3−1,6−D−グルカンを析出させることができる。この場合にpHをクエン酸などの有機酸によりpHを酸性、好ましくはpH4未満、さらに好ましくはpH3−3.7に調製して、エタノールを添加すると高純度のβ-1,3-1,6-グルカンの粉末を得ることができる。
【0046】
β−1,3−1,6−D−グルカンを低粘度化することにより、限外ろ過などによる濃縮を容易に行えることから、アルコール沈殿に使用するアルコール量を少なくすることができる。
【0047】
固形製剤にする場合は、低粘度β−1,3−1,6−D−グルカン水溶液を直接乾燥させてもよく、析出させたβ−1,3−1,6−D−グルカンを乾燥させてもよい。乾燥は、噴霧乾燥法、凍結乾燥法等公知の方法で行うことができる。
【0048】
(I)製剤
本発明のメタボリックシンドローム改善剤において、β−1,3−1,6−D−グルカンは、必要に応じて薬学的に許容される担体とともに適当な製剤とすることができる。このような担体として、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、付湿剤等が挙げられる。また、酸化防止剤のような慣用の添加剤なども含まれていてよい。
【0049】
製剤の形態は特に限定されず、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等のどのような形態であってもよい。アルカリ処理された低粘度のβ−1,3−1,6−D−グルカンを使用する場合は、高濃度の水溶液を調製できることから、シロップ剤にする場合にも、1日に無理なく摂取できる量に有効量のβ−1,3−1,6−D−グルカンを含ませることができる。
【0050】
賦形剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、乳糖、ショ糖、ブドウ糖等の各種の糖類;バレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン等の各種デンプン類、;結晶セルロース等の各種セルロース類;無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム等の各種無機塩類等が挙げられる。
【0051】
結合剤としては、公知のものを使用でき、例えば、結晶セルロース、プルラン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が挙げられる。
【0052】
崩壊剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、デンプン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0053】
潤沢剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などが挙げられる。
【0054】
付湿剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、大豆リン脂質、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。
【0055】
製剤中に含まれるβ−1,3−1,6−D−グルカンの量は、投与対象又は患者の年齢、体重、症状、投与方法等によって変化し得るが、例えば、体重70kgの成人男性の場合、1日摂取量が1〜1000mg程度、好ましくは10〜500mg程度、より好ましくは10〜200mg程度、さらに好ましくは25〜100mg程度になるような量含まれていればよい。また、経時的に飲水により摂取する場合は、β−1,3−1,6−D−グルカンの量は、例えば、0.1−1重量%、好ましくは、0.1−0.5重量%になるように含まれていればよい。上記摂取量の範囲であれば、十分にメタボリックシンドローム改善効果が得られるとともに、下痢のような副作用や毒性が現れるということがない。
【0056】
1日1回投与する製剤である場合は、1日必要量が一つの製剤に含まれていればよく、例えば1日3回投与する製剤である場合は、1日必要量の3分の1が製剤に含まれていればよい。
【0057】
また、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤のような固形製剤の場合は、製剤中にβ−1,3−1,6−D−グルカンが0.1〜100重量%程度、特に1〜50重量%程度含まれていることが好ましい。
【0058】
また、シロップ剤のような液体又は流動状の製剤の場合は、β−1,3−1,6−D−グルカンが0.01〜2重量%程度、特に0.05〜0.5重量%程度含まれていることが好ましい。なお、液体又は流動状の製剤中のグルカンは一部が溶解していない場合もある。
【0059】
上記範囲であれば、摂取し易い製剤量中に、メタボリックシンドローム改善剤効果が十分に得られるとともに副作用や毒性が現れない量のβ−1,3−1,6−D−グルカンが含まれることになる。またシロップ剤の場合は、上記範囲であれば、飲み易い粘度のシロップ剤が得られる。
【0060】
また、本発明のメタボリックシンドローム改善剤には、β−1,3−1,6−D−グルカンによるメタボリックシンドローム改善効果を損なわない範囲で、メタボリックシンドローム改善剤に通常含まれる成分や添加剤が含まれていてもよい。
投与対象
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、メタボリックシンドロームに曝されているヒトを含む哺乳動物に好適に投与できる。この中には、メタボリックシンドロームの可能性がある健康なヒトの他に、他の疾患を併発している患者も含まれる。さらに、β−1,3−1,6−D−グルカンは安全な天然成分であることから、メタボリックシンドロームの兆候を示している健常人も予防的に適時又は常時摂取することができる。
なお、本発明のメタボリックシンドローム改善剤の投与方法は、限定はされないが、経口投与、皮下投与、経皮投与、静脈内投与等を含み、好ましくは、経口投与である。
ここで、メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に高血糖、高血圧、高脂血症のうち2つ以上を合併した状態を言い、日本肥満学会による日本人ようの診断基準は、以下のようである。
腹囲が85cm以上の男性または90cm以上の女性であって、以下の3項目中2項目以上:
・血圧130/85mmHg以上
・中性脂肪150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満
・血糖110mg/dL以上
が該当する状態。
他にも、国際糖尿病連合の定めた診断基準等があり、これらの診断基準は当業者に周知である。
なお、正常人の数値(正常値)は以下の通りである。
血圧:収縮期血圧 140mmHg以下、拡張期血圧 90mmHg以下;
総コレステロール(TC):220mg/dL未満;
HDLコレステロール:40mg/dL以上<動脈硬化性疾患診療ガイドライン>、[男]40〜99mg/dL、[女]50〜109mg/dL <日本人間ドック学会ガイドライン>;
中性脂肪(TG):150mg/dL未満;
血糖値(BS):[空腹時]110mg/dL、[2時間値]140mg/dL
【0061】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、メタボリックシンドロームに起因する身体的、精神的不調を予防および/または改善する作用を有する。ここで「予防」とは、メタボリックシンドロームに起因する不調の発症を完全に阻止することのみならず、その程度を抑制することも含むものとする。また、「改善」とは、かかる不調から完全に回復することのみならず、不調を緩和することも含むものとする。例えば、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、正常値よりも高い血圧を改善して正常値とするか、または正常値に近づけ、正常値よりも高い血中の脂質濃度、例えば、中性脂肪濃度を改善して正常値とするか、または正常値に近づけ、正常値よりも高い血糖値を改善して正常値とするか、または正常値に近づける。本発明におけるメタボリックシンドロームの改善は、これら血圧、血中中性脂肪濃度および血糖のいずれか1つ、2つ、または全ての改善を含む。したがって、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、血圧改善剤(降圧剤を含む)、高脂血症改善剤(血中中性脂肪濃度改善剤を含む)、および/または抗糖尿病薬(血糖値改善剤を含む)であり得る。
また、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、血糖が上昇したときの調節能力である耐糖能を高め、または、耐糖能異常を予防および/または改善することができ、これにより、高血糖を予防および/または改善することできる。例えば、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、食後の血糖値の上昇を抑え、速やかに正常レベルに血糖値を戻すことができる。
なお、WHO(世界保健機構)によれば、耐糖能異常とは、空腹時の血糖値が110-126mg/dL未満であり、且つ、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値の血糖値が140-199mg/dLを示す病態と定義されており、耐糖能異常が見られる場合は、2型糖尿病への移行率や心血管疾患の発症リスクが高くなることが知られている。
さらに、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、例えば、血糖低下作用等においてグルコース取込細胞のインスリン抵抗性を改善することができ、これにより、高血糖を予防および/または改善することできる。例えば、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、インスリンの作用を高めることができ、インスリンによる血糖低下効率を高めることができる。また、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、糖負荷後のインスリンの血中分泌量を低下させることができる。
したがって、本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、耐糖能増強剤、耐糖能異常予防剤および/または改善剤、高血糖予防剤および/または改善剤、インスリン抵抗性改善剤、インスリンの作用増強剤および/または糖負荷後のインスリン血中分泌量の低下剤であり得る。
【0062】
本発明におけるメタボリックシンドロームとは、例えば、高血圧、高中性脂肪、高血糖の症状を示す症状を呈する哺乳動物に対する概念であり、好ましくは、高血圧、高中性脂肪、高血糖の症状を示す症状を呈するヒトに対する概念である。
【0063】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、一態様として、メタボリックシンドロームの症状を呈するヒトに対して、その症状を予防および/または改善し、より具体的には、高血圧、高血糖、高中性脂肪などのメタボリックシンドローム等を予防および/または改善する。
【0064】
(II)副交感神経刺激剤および/または交感神経抑制剤(メタボリックシンドローム改善剤)
β-1,3-1,6-D-グルカン、好ましくは、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来するβ-1,3-1,6-D-グルカンは、副腎交感神経活動の抑制、胃副交感(迷走)神経の亢進、脾臓交感神経活動を抑制、肝臓交感神経を抑制、腎臓交感神経を抑制することから、交感神経抑制剤および/または副交感神経刺激剤として使用することができる。また、交感神経を抑制および/または副交感神経を刺激するためストレスを緩和することができ、メタボリックシンドローム改善剤としても使用することができる。
【0065】
β-1,3-1,6-D-グルカンは、さらに好ましくは、1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有し、かつ水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が好ましくは200cP(mPa・s)以下、より好ましくは100cP(mPa・s)以下、さらに好ましくは50cP(mPa・s)以下、よりさらに好ましくは10cP以下のものである。
【0066】
投与対象は、自律神経系の異常が悪影響を及ぼす種々の疾患に羅患している哺乳動物、好ましくはヒトを含み、好ましくはメタボリックシンドロームを改善する必要があると感じているヒトを含む。また、上記グルカンは天然の安全な成分であることから、健常人が常時摂取することもできる。
【0067】
(III)飲食品組成物
本発明の飲食品組成物は、β-1,3-1,6-D-グルカン、好ましくは、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来するβ-1,3-1,6-D-グルカンを含む。このβ-1,3-1,6-D-グルカンは、さらに好ましくは、1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有し、かつ水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が好ましくは200cP(mPa・s)以下、より好ましくは100cP(mPa・s)以下、さらに好ましくは50cP(mPa・s)以下、よりさらに好ましくは10cP以下のものである。この飲食品組成物は、β−1,3−1,6−D−グルカンを含むことからメタボリックシンドロームを改善する作用、及び交感神経を抑制しおよび/または副交感神経を刺激しストレスを緩和する作用を有するため、健康食品、機能性食品、又は栄養機能食品又は特定保健用食品のような保健機能食品として好適に使用できる。ここで、本発明における健康食品は、一般に「健康によい」として売られている食品全般、又は消費者が健康に良いと積極的な効果を期待して摂取する医薬品以外の食品を含み、健康補助食品を含む。また、本発明における機能性食品は、生体調節機能を充分に効率よく発現するように設計した食品を含む。
【0068】
従って、本発明の飲食品組成物は、メタボリックシンドロームを改善するために使用される旨の表示、又は交感神経を抑制および/または副交感神経を刺激するため、若しくはストレスを緩和するために使用される旨の表示が付されたものとすることができる。
【0069】
本発明の飲食品組成物に含まれる飲食品の種類は特に限定されない。β−1,3−1,6−D−グルカンを添加できるものであれば、栄養ドリンク、ジュース、茶、スープのような各種飲料品はもちろんのこと、クッキー、飴、ガム、ゼリー、寒天、プリン、グミ、チョコレート、澱粉加工食品などいかなる飲食品でも用いることができる。パン、うどんのような麺類、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、ドレッシングやマヨネーズなどの加工食品、嚥下用補助食品等も好適である。各飲食品の特性や目的に応じ、製造工程の適切な段階で配合すればよい。
【0070】
本発明の飲食品組成物中には、1日摂取量が好ましくは1〜1000mg程度、好ましくは10〜500mg程度、さらに好ましくは10〜200mg程度、よりさらに好ましくは25〜100mg程度になるようにβ−1,3−1,6−グルカンが含まれていればよい。特に、難治性のストレスに起因する疾患を有する患者に与えるためのものである場合は、1日摂取量が1〜1000mg程度、特に10〜500mg程度になる量のβ−1,3−1,6−グルカンが含まれていればよい。
【0071】
β−1,3−1,6−D−グルカンは人体に対して無毒性であるから、その添加割合に特に制限はないが、各飲食品の特性、呈味性あるいは経済性等を考慮して、固形、半固形又はゲル状食品の場合、その添加量は組成物全体量に対して通常0.01〜5重量%程度、好ましくは0.01%〜2重量%程度であればよい。ヨーグルトのような半固形状の食品も、食する上で流動性が求められない点で固形状食品に含まれる。上記の範囲であれば、無理なく摂取できる食品量中に、メタボリックシンドローム改善に有効な1日摂取量のβ−1,3−1,6−グルカンが含まれることになる。また、β−1,3−1,6−D−グルカンの上記含有比率であれば、グルカンの溶解性が良好であり粘度が低く吸収され易い。
【0072】
また同様の理由で、液体、流動状、又は半流動状の飲料組成物にβ−1,3−1,6−グルカンを含ませる場合のその含有量は、組成物全体に対して、0.01〜5重量%程度が好ましく、0.01〜2重量%程度がより好ましい。上記の範囲であれば、無理なく摂取できる食品量中にメタボリックシンドローム改善に有効な1日摂取量のβ−1,3−1,6−グルカンが含まれることになる。また、β−1,3−1,6−D−グルカンの含有比率が上記範囲であれば、殺菌などの熱処理によってもゲル化や粘度上昇を起こす恐れがない。なお、飲料組成物中のグルカン濃度が高い場合は一部が溶けずに含まれる場合もある。
【0073】
本発明の飲食品組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、食品分野で慣用の補助成分が含まれていて良い。このような補助成分として、例えばフラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトースのようなオリゴ糖;ビフィドバクテリウム、ビフィズス、ラクトバチラス、エンテロコッカス属のような乳酸菌;アガリクス、マイタケ、シイタケ、メシマコブ、チャーガ、ハナビラタケのようなキノコ類、またはその抽出物;α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンのようなシクロデキストリンや直鎖デキストリンおよび難消化デキストリン;クエン酸、リンゴ酸、ヒアルロン酸のような有機酸;トリプトファン、メチオニン、テアニン、GABA(γ‐アミノ酪酸)などのアミノ酸、β‐カロテン、ルテイン、アスタキサンチン、フコキサンチンなどのβ‐カロチノイド類、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEのようなビタミン類;亜鉛、鉄、マグネシウム、セレン、クロム、銅、マンガン、モリブデン、ヨウ素のようなミネラル;ウコン、高麗ニンジン、ショウガ、紅花、イチョウ葉またはイチョウ葉エキスのような生薬;ラクトフェリン;ローヤルゼリー;プロポリス;カテキン;ウコン;トレハロース;高麗ニンジン;ショウガ;紅花;イチョウ葉またはイチョウ葉エキス;アロエ;サイリウム;シャンピニオン;黒酢;各種香料などが挙げられる。
【0074】
特に、β−1,3−1,6−D−グルカン0.01〜5重量%(特に0.01〜2重量%)程度と乳酸菌(中でも、殺菌乳酸菌粉末)、オリゴ糖、又は/及びアミノ酸をそれぞれ0.01〜2重量%程度とを含む飲食品組成物が好ましい。この場合の飲食品組成物は、固形、半固形、ゲル状、液体状、流動状、半流動状のいずれの飲食品組成物であってもよい。
【0075】
また、本発明の飲食品組成物は、一般の飲食品を主体とするものではなく、賦形剤又は担体等とともにβ−1,3−1,6−グルカンを錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤などの形状に成形した、例えば固形のいわゆるサプリメント製剤(栄養補助製剤)であってもよい。賦形剤は製剤の項目で例示したものを使用できる。この場合のβ−1,3−1,6−グルカンの含有量は、組成物全体に対して、10〜80重量%程度が好ましく、10〜50重量%程度がより好ましい。
【0076】
特に、β−1,3−1,6−D−グルカン10〜80重量%(特に10〜50重量%)程度と乳酸菌(中でも、殺菌乳酸菌粉末)、オリゴ糖、又は/及びアミノ酸をそれぞれ1〜10重量%程度とを含むものが好ましい。
【0077】
本発明の飲食品組成物は、ストレス状態又はストレス状態気味のヒト、ストレスを感じているヒト、自律神経系の異常による疾患に羅患しているヒトが必要時、又は日常的に摂取するのに好適である。
実施例
次に実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
(1)低粘度β−1,3−1,6−グルカンの調製
(1-1)β−グルカンの培養産生
後掲の表1に示す組成を有する液体培地100mlを500ml容量の肩付きフラスコに入れ、121℃で、15分間、加圧蒸気滅菌を行った後、オーレオバシジウム プルランス(Aureobasidium pullulans)GM-NH-1A1株(FERM P-19285)を同培地組成のスラントより無菌的に1白金耳植菌し、130rpmの速度で通気攪拌しつつ、30℃で24時間培養することにより種培養液を調製した。
【0079】
次いで、同じ組成の培地200Lを300L容量の培養装置(丸菱バイオエンジ製)に入れ、121℃で、15分間、加圧蒸気滅菌し、上記のようにして得られた種培養液2Lを無菌的に植菌し、200rpm、27℃、40L/minの通気攪拌培養を行った。なお、培地のpHは水酸化ナトリウム及び塩酸を用いてpH4.2〜4.5の範囲内に制御した。96時間後の菌体濁度はOD660nmで23 ODで、多糖濃度は0.5%(w/v)で、硫黄含量から計算される置換スルホ酢酸含量は0.09%であった。
<多糖濃度測定>
多糖濃度は、培養液を数mlサンプリングし、菌体を遠心分離除去した後、その上清に最終濃度が66%(v/v)となるようにエタノールを加えて多糖を沈殿させて回収した後、イオン交換水に溶解し、フェノール硫酸法で定量した。
<置換スルホ含量測定>
同様にして菌体を除去した培養上清にエタノールを最終濃度が66%となるように添加し、β−グルカンを沈殿回収した。その後、再度イオン交換水に溶解し、再度遠心分離後、その上清に最終濃度が0.9%になるように食塩を加えた後、再度66%エタノールでβ−グルカンを回収した。このβ−グルカン回収精製操作を更に2回繰り返し、得られたβ−グルカン水溶液をイオン交換水で透析後、凍結乾燥によりβ−グルカン粉末を得た。
【0080】
このβ−グルカン粉末を燃焼管式燃焼吸収後、イオンクロマト法で組成分析した結果、S含量は239mg/kgであり、この値から計算される置換スルホ酢酸含量は0.09%であった。
【0081】
【表1】

【0082】
(1−2)アルカリ処理
上記のようにして得られた培養液の粘度をBM型回転粘度計(東京計器製)を用いて、30℃、12rpmで測定したところ、1500cP((mPa・s))であった。測定に用いるロータは粘度にあわせて適当なものを選択した。
【0083】
この培養液に水酸化ナトリウム最終濃度が2.4%(w/v)となるように25%(w/w)水酸化ナトリウムを添加し攪拌したところ(pH13.6)、瞬時に粘度が低下した。引き続いて50%(w/v)クエン酸水溶液でpH5.0となるように中和してから濃度0.5(w/v%)における粘度を測定したところ、そのときの粘度(30℃)は20cP([mPa・s])であった。
【0084】
次いで、この培養液にろ過助剤としてKCフロック(日本製紙社製)を1wt%添加し、薮田式ろ過圧搾機(薮田機械製)を用いて菌体を除去し、最終的に培養ろ液(約230L)を得た。その多糖濃度は0.5%(w/v)で、ほぼ100%の回収率であった。
【0085】
(1−3)β−グルカン水溶液の脱塩
上記のβ−グルカン水溶液(培養ろ液)を0.3%に希釈後、限外ろ過(UF)膜(分子量カット5万、日東電工社製)を用いて脱塩を行い、最終的にナトリウムイオン濃度を20mg/100mlに落とした後、50%(w/v)クエン酸水溶液によりpHを3.5に調整した。
【0086】
引き続いて、ホット充填用加熱ユニット(日阪製作所製)を用いて95℃で、3分間保持することにより殺菌処理を行い、最終製品のβ−グルカン水溶液を得た。この時のβ−グルカンの濃度をフェノール硫酸法により測定したところ0.22%(w/v)であった。また、培養液からのトータル収率は約73%であった。
<硫黄含有量の測定>
また、得られたβ−グルカン水溶液をイオン交換水で透析後、凍結乾燥によりβ−グルカン粉末を得た。本β−グルカンの組成分析結果からS含量は330mg/kgであり、これから計算される置換スルホ酢酸含量は0.12%であった。
<結合状態の確認>
また、脱塩を行った上記培養ろ液について、コンゴーレッド法によって、480nmから525nm付近への波長シフトを確認することができたのでβ−1,3結合を含むグルカンを含有していることが証明された(K. Ogawa, Carbohydrate Research, 67, 527-535 (1978)、今中忠行 監修, 微生物利用の大展開, 1012-1015, エヌ・ティー・エス(2002))。そのときの極大値へのシフト差分はΔ0.48/500μg多糖であった。
【0087】
上記培養ろ液15mlを取り出し、30mlのエタノールを添加し、4℃、1000rpm、10minで遠心して、沈殿する多糖を回収した。66%エタノールで洗浄し、4℃、1000rpm、10分間遠心して、沈殿する多糖に2mlのイオン交換水と、1mlの1N水酸化ナトリウム水溶液を添加撹拌後、60℃、1時間保温して沈殿を溶解させた。次に-80℃にて凍結後、一晩、真空凍結乾燥を行い、乾燥後の粉末を1mlの1N水酸化ナトリウム重水溶液に溶解させ、2次元NMRに供した。
【0088】
2次元NMR(13C−H COSY NMR)106ppmと相関関係を有するH NMRスペクトルを図6に示す。このスペクトルにおいて4.7ppmと4.5ppm付近との2つのシグナルが得られた。
【0089】
この結果、本β−グルカンがβ−1,3−1,6−Dグルカンであることが証明された(今中忠行 監修、微生物利用の大展開、1012-1015、エヌ・ティー・エス(2002))。それぞれのH NMRシグナルの積分比から、β−1,3結合/β−1,6結合の比は1.15であることが判明した。
<粒度測定>
次に、レ−ザ回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA製LA−920)を用いて培養液の粒度を測定したところ、粒子としては0.3μmと100μm程度の大きさのところにピ−クが見られた。続いて、超音波を照射しながら、粒度測定を行うと、100μmのピ−クはみるみるうちに消失し、0.3μmのピ−クが増え、最終的に0.3μmのみとなった。超音波照射したときの培養液の粒度分布を図7に示す。
【0090】
0.3μmのピークはβ−1,3−1,6−D−グルカンの一次粒子によるピークであり、100〜200μmのピークはβ−1,3−1,6−D−グルカンの一次粒子が凝集した二次粒子によるピークであると考えられる。
【0091】
また、二次粒子はマグネチックスタラ−による攪拌、軽い振とうでも同じように消失し、容易に砕けて一次粒子になることが確認された。よって、二次粒子は非常に緩い凝集(緩凝集状態)と考えられる。
<分子量測定>
また、東ソー社製のトーヨーパールHW65(カラムサイズ75cm×φ1cm、排除分子量250万(デキストラン))を用いて、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶離液としてゲルろ過クロマトグラフィーを行い、溶解β−1,3−1,6−D−グルカンとβ−1,3−1,6−Dグルカンの1次粒子とを含む溶液の分子量を測定したところ、溶解β−1,3−1,6−D−グルカンに由来する2〜30万のピークの低分子画分と、1次粒子に由来する見かけ上50〜250万の高分子画分との二種類が検出された。分子量のマーカーとしてShodex社製のプルランを用いた。
【0092】
水溶性β−1,3−1,6−D−グルカンと微粒子とを分離するため、上記の微粒子画分と可溶性画分とを含むβ−1,3−1,6−D−グルカン溶液をアドバンテック社製のフィルター(0.2μm)でろ過を行ったところ、50〜250万の高分子画分が消失した。このことから、高分子画分はβ−1,3−1,6−D−グルカンの一次粒子や一次粒子が凝集した二次粒子に相当することが判明した。よって、水溶性β−1,3−1,6−D−グルカンの分子量は2〜30万と考えられる。
【0093】
(2)粉末化グルカンの調製
(1)において、アルカリ処理および菌体除去処理により調製された微粒子β−1,3−1,6−D−グルカンを含むβ−1,3−1,6−D−グルカン水溶液に、最終濃度が66%(v/v)となるようにエタノールを添加して、多糖グルカンを沈殿させ、遠心分離法により回収した。次いで凍結乾燥法によりエタノールと水分を除去し、乾燥β−1,3−1,6−D−グルカンを得た。そのときの収率はエタノール沈殿前の全糖濃度と比較して95%以上であった。
【0094】
次いで、得られた乾燥β−1,3−1,6−D−グルカンを最終濃度が0.3%(w/v)となるように水に溶解分散後、前述したと同様にして東ソー社製のトーヨーパールHW65(カラムサイズ 75cm×φ1cm、排除分子量250万(デキストラン))により0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を溶離液としてゲルクロマトグラフィーを行い、分子量を測定したところ、得られた多糖の分子量は2〜30万のピークの低分子画分と見かけ上50〜250万の高分子画分の二種類からなることが判明した。ここで、分子量のマーカーとしてShodex社製のプルランを用いた。
【0095】
一方、水溶性β−1,3−1,6−D−グルカンと微粒子を分離するため、本法で調製したβ−1,3−1,6−D−グルカン水溶液(微粒子と可溶化グルカンを含むもの)をアドバンテック社製のフィルター(0.2μm)でろ過を行ったところ、50〜250万の高分子画分が消失した。よって、本法により得られたβ−1,3−1,6−D−グルカンを乾燥させても、再溶解させれば乾燥前のβ−1,3−1,6−D−グルカンと同様の物理的挙動を再現することが実証された。
【0096】
(3)高純度β−1,3−1,6−D−グルカン粉末の製造
(1)においてアルカリ処理を行い低粘度化した培養液(多糖濃度0.5%(5mg/ml))90Lを50%クエン酸水溶液9kgで中和後、濾過助剤(日本製紙ケミカル製粉末セルロ−スKCフロック)を1.8kgプレコートした薮田式濾過圧搾機40D-4を通して、菌体を取り除いた。ろ液を限外濾過スパイラルエレメント(日東電工製NTU3150−S4)で9Lまで濃縮した。本濃縮液を攪拌しながら、pHを3.0-3.5にクエン酸により調整して、エタノール18Lを加え、グルカン/エタノール/水スラリーを得た。スラリーの粘度はBM型粘度計で22mPa・s(30℃)であった。室温で3時間静置し、上澄み液(エタノール/水)約17Lを取り除いた。残ったスラリーの粘度は45mPa・s(30℃)であった。本濃縮スラリー10Lを坂本技研型の噴霧乾燥装置R-3を用いて噴霧乾燥し、360gのβ−1,3−1,6−D−グルカン粉末を得た(回収率80%)。得られたβ−1,3−1,6−D−グルカンの純度はNMRスペクトルの解析の結果、90%以上であった。
なお、得られたβ−1,3−1,6−D−グルカン粉末を1N水酸化ナトリウム重水溶液に溶解させ、NMRスペクトルを測定したところ、1H NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを得た。また、得られたβ−1,3−1,6−D−グルカン粉末の濃度0.5(w/v%)の水溶液の粘度は200cP以下であった(pH5.0、30℃)。
【0097】
(4)β−1,3−1,6−D−グルカンのメタボリックシンドローム改善効果の検討
検討1:β‐1,3-1,6−グルカンの肝臓、膵臓、腎臓交感神経に対する効果
方法
実験には12時間毎の明暗周期(8時〜20時まで点灯)下に24℃の恒温動物室にて餌(オリエンタル酵母、MF)及び水は自由摂食させて1週間以上飼育した体重約300gのWistar系雄ラットを使用した。自律神経の活動を検討するために、3時間絶食後、明期の中間期にウレタン(1g/kg、ip)麻酔下で開腹し、膵臓、肝臓および腎臓を支配する交感神経を銀電極で吊り上げ、既述の方法(1)にて神経活動を測定した。電気活動の測定値が落ち着いた時期(13時頃)にβグルカン水溶液(上記(3)で得たβ−1,3−1,6−D−グルカンの水溶液)1mlを十二指腸投与してこれらの自律神経活動の変化を測定した。尚、手術開始から測定終了までチューブを気管に挿入して気道を確保し、保温装置にて体温(ラット直腸温)を35.0±0.5℃に保つようにした。経口投与の対照実験としては溶媒である水を1ml同様の条件で経口投与することで行った。十二指腸投与のために予め十二指腸カニューレを十二指腸に挿入した。データは5秒あたりの発電頻度(pulse/5sec)の5分間毎の平均値にて解析し、投与前の値を100%として百分率で表し、平均値+標準誤差で示した。統計計算は分散分析法(ANOVA with repeated measures)および Mann-Whitney U-testにて行った。
【0098】
結果
(i)肝臓交感神経活動に対するβグルカンの十二指腸投与効果
10μgのβグルカンもしくは水1mlを十二指腸投与した時のウレタン麻酔ラットの肝臓交感神経活動(hepatic sympathetic nerve activity、Hepatic-SNA)の変化を3匹ずつのラットを用いて検討した。図1にその結果を示す。図1左図は実測データを示す。図1右図はHepatic-SNAの5分間毎の平均活動量(spikes/5 s)を、投与前値(0分値)を100%とする百分率で表して、その平均値+標準誤差を計算してグラフに示したものである。対照実験として行った水投与群ではHepatic-SNAは徐々に若干上昇したが、10μgのβグルカンを十二指腸投与した群ではHepatic-SNAは著明に有意に(P<0.0005、F= 161 by ANOVA)低下した。表2に十二指腸投与前(0分)の2群のラットでのHepatic-SNAの値を示す。これら2群のHepatic-SNAの0分値の間にはMann-Whitney U-testにより統計学的有意差は認められなかった。
(ii)膵臓交感神経活動に対するβグルカンの十二指腸投与効果
本試験では膵臓交感神経活動(pancreatic sympathetic nerve activity、Pancreatic-SNA)に対する10μgのβグルカンの十二指腸投与効果について検討した。図2にその結果を示す。図2左図は実測データを示す。図2右図はPancreatic-SNAの5分間毎の平均活動量(spikes/5 s)を、投与前値(0分値)を100%とする百分率で表して、その平均値+標準誤差を計算してグラフに示したものである。対照実験として行った水投与群ではPancreatic-SNAは若干上昇したが、10μgのβグルカンを十二指腸投与した群ではPancreatic-SNAは有意に(P<0.0005、F= 51.3 by ANOVA)低下した。表2に十二指腸投与前(0分)の2群のラットでのPancreatic-SNAの値を示す。これら2群のPancretic-SNAの0分値の間にはMann-Whitney U-testにより統計学的有意差は認められなかった。
(iii)腎臓交感神経活動に対するβグルカンの十二指腸投与効果
本試験では十二指腸投与は腎臓交感神経活動(renal sympathetic nerve activity、RSNA)に対する1μgのβグルカンの十二指腸投与効果について3匹のラットを用いて検討した。対照実験としては溶媒である水1mlを十二指腸投与する実験を3匹のラットを用いて行った。図3にその結果を示す。図3左図は実測データを示す。図3右図はRSNAの5分間毎の平均活動量(spikes/5 s)を、投与前値(0分値)を100%とする百分率で表して、その平均値+標準誤差を計算してグラフに示したものである。対照実験として行った水投与群ではRSNAは殆ど変化しなかったが、1μgのβグルカンを十二指腸投与した群ではRSNAは有意に(P<0.0005、F=82.9 by ANOVA)低下した。表2に十二指腸投与前(0分)のβグルカン投与群と水投与群の2群のラットでのRSNAの値を示す。これら2群のRSNAの0分における絶対値の間にはMann-Whitney U-testにより統計学的有意差は認められなかった。
【0099】
考察
以上の実験からウレタン麻酔ラットでは、1)10μgのβグルカンを十二指腸投与すると肝臓交感神経活動(Hepatic-SNA)が低下する、2)10μgのβグルカンを十二指腸投与すると膵臓交感神経活動(Pancreatic-SNA)が低下する、3)1μgのβグルカンを十二指腸投与すると腎臓交感神経活動(RSNA)が低下する、などが明らかとなった(表3)。
肝臓交感神経活動が低下すると肝臓に蓄積されている糖質であるグリコーゲンの分解酵素であるglycogen phosphorylaseが不活化され、アミノ酸や乳酸からブドウ糖を合成する経路である糖新生系の酵素活性が低下して血糖値が低下する。従って,本試験の結果より、10μgのβグルカンを十二指腸投与すると肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生が減少するために血糖が低下すると考えられる。
また、膵臓交感神経活動が減少すると、血糖を低下させるインスリンの膵臓ランゲルハンス島β細胞からの分泌が促進されるので、II型糖尿病等のインスリン分泌能が低下している場合において、インスリン分泌が増加することが考えられる。従って、本試験の結果より、10μgのβグルカンを十二指腸投与すると膵臓β細胞からのインスリン分泌が促進されるので、血糖が低下すると考えられる。
腎臓交感神経活動は副腎交感神経活動ほどではないが、血圧に影響を及ぼす。腎臓交感神経活動が高まると血圧上昇が起り、減少すると血圧低下が起ることが示されている(2)。従って、本試験の結果より、1μgのβグルカンを十二指腸投与すると血圧が低下すると考えられる。
以上の事実は10μgのβグルカンの腸内投与が肝臓交感神経と膵臓交感神経の活動を減少させて血糖を低下させ得ることを示し、1μgのβグルカンの腸内投与が腎臓交感神経活動を減少させて血圧を低下させ得ることを示す。
参考文献
(1)Tanida M. et al. Am. J. Physiol. 288: R447-455, 2005.
(2)Guynet PG, et al. Progr. Brain Res. 107: 127-144, 1996.
【表2】

【表3】

【0100】
検討2:β‐1,3-1,6−グルカンの副腎交感神経、胃副交感神経に対する効果
方法
十二指腸内投与は、十二指腸に挿入したポリエチレンtubeを使用し、1匹あたりの投与量は1mlで、投与速度は1ml/minであった。投与効果については、10ngから10mgまでのβ−グルカン(上記(3)で得たβ−1,3−1,6−D−グルカン)を水1mlに溶解して十二指腸内に投与し、自律神経の活動を電気生理学的に測定して、その活動を上昇あるいは低下を測定した。対照実験としては溶媒である水を1ml同様の条件で十二指腸内投与することで行った。データは5分間毎の5秒あたりの発電頻度(pulse/5sec)の平均値にて解析し、投与前の値を100%として百分率で表し、平均値±標準誤差で示した。統計計算は分散分析法(ANOVA with repeated measures)および Mann-Whitney U-testにて行った。
【0101】
結果
<副腎交感神経活動測定のためのβ−グルカン投与量の決定>
10ngから10mgまでのβ−グルカンを十二指腸内投与し副腎交感神経活動(Adrenal sympathetic nerve activity、ASNA)の測定を行った実際のデータとそれを投与前値を100%とした5分間毎の平均活動量として表したものである。1μg(=1000ng)から10mgの広範囲の投与量で副腎交感神経活動が低下し、投与35分後までにもっとも著明に低下したのは10μgのβ−グルカンを投与した時であった。そこで、最も効果の強かった10μgを十二指腸内に投与したときの副腎交感神経の活動変化について検討した。
【0102】
<副腎交感神経活動に対するβ−グルカンの十二指腸内投与効果>
10μgのβ−グルカンおよび対照実験として行った溶媒である水を、それぞれ、十二指腸内投与した時の実際の副腎交感神経活動の変化について検討した。対照水投与時には殆ど神経活動に変化は認められなかったが、10μgのβ−グルカンの十二指腸内投与により副腎交感神経活動が著明に低下することが認められた。これらのデータを、投与前の神経活動を100%として5分毎の平均活動量として示したものを図4に示す。
【0103】
水投与対照動物では殆ど副腎交感神経活動(ASNA)は変化しないのに対して、10μgのβ−グルカン投与群では投与5分後から15分後にかけて急速に活動が低下し、その後約30〜40%のレベルに留まった。両群の値を5分後から60分後まで群として分散分析法(ANOVA with repeated measures)により解析すると両者の値に有意差(p<0.0005; F=364)が認められた。なお、投与前の副腎交感神経活動の値は水投与群とβ−グルカン投与群で、それぞれ、102.5 ± 2.6 spikes/5secと132.7 ± 15.7 spikes/5secであり両者の間に統計学的有意差は認められなかった(Mann-Whitney U-testにてp=0.4)。
【0104】
<胃副交感(迷走)神経活動測定のためのβ−グルカン投与量の決定>
0.1μgから10μgまでの量のβ−グルカンを十二指腸内投与した時の実際の胃副交感神経活動(Gastric Vagal Nerve Activity、GVNA)の変化について測定した。0.1μgのβ−グルカン投与は胃副交感神経活動をやや低下させたが、1μgと10μgのβ−グルカンの十二指腸内投与は胃副交感神経活動を著明に増加させた。そこで、この内最も効果の強かった1μgのβ−グルカンの胃副交感神経活動に対する作用を水投与作用とともに各3匹ずつのラットを用いて検討した。
【0105】
<胃副交感(迷走)神経活動に対するβ−グルカンの十二指腸内投与効果>
1μgのβ−グルカンおよび対照実験として行った溶媒である水を、それぞれ、十二指腸内投与した時の実際の胃副交感(迷走)神経活動の変化について検討した。図5にはその時の実際の測定データと投与前の神経活動を100%として5分毎の平均活動量として示したものを示す。
【0106】
対照水投与は胃副交感神経活動を殆ど変化させなかったが、1μgのβ−グルカンの十二指腸内投与は水投与後と比較すると有意に(P<0.0005、F=22.9)胃を支配する副交感神経活動を上昇させた。なお、投与前の胃交感神経活動の値は水投与群とβ−グルカン投与群で、それぞれ、112.3 ± 28.3 spikes/5secと129.4 ± 41.1 spikes/5secであり統計学的有意差は認められなかった(Mann-Whitney U-testにてp=0.4)。
考察
以上の事実は10μgのβグルカンの腸内投与が副腎交感神経の活動を減少させて血圧を低下させ得ることを示し、1μgのβグルカンの腸内投与が胃副交感神経活動を減少させて血圧を低下させ得ることを示す。
【0107】
検討3:β‐1,3-1,6−グルカンの脂質吸収に及ぼす効果
実験材料および方法
1)βグルカン
βグルカン素材は上記(3)で作成されたβ‐1,3-1,6−グルカン粉末を使用し、必要に応じて5mg/mlの濃度に溶解して使用した。
2)動物
ICRマウス(雄、5週齢)を日本エルエスシー(株)から購入し、1週間の予備飼育後、健康なマウスを実験に使用した。試験期間中、脂質負荷試験前を除いて、餌と水は自由に使用させた。
3)脂質負荷およびβグルカンの投与
一日に2回(7時と19時)にβグルカンを経口投与し、その10分後に脂質(バター)を0.3ml経口投与した。βグルカンの量は、kgマウス当たり10mgと100mgのそれぞれとした。コントロール群は溶媒である
4)脂質負荷試験および脂質定量
7日間のβグルカン投与と脂質投与後、8日目の脂質負荷試験を行った。4時間以上の絶食の後、βグルカンと脂質を連続して投与し、投与前、投与後1時間、2時間に尾血管からヘパリン処理毛細管を用いて採血した。血漿を分離し測定まで‐20℃以下で保存した。血中中性脂肪濃度は、和光純薬製の測定キットを用いて酵素法により測定した。コントロール群では食品用乳化剤を50mg/kg投与した。
結果
コントロール群では脂質投与後1時間で血中脂肪濃度は上昇し、その後低下した。それに対してβグルカン投与群では、100mg/kg投与群で、血中の中性脂肪濃度の上昇が抑制される傾向を示した。
【表4】

【0108】
検討4:β‐1,3-1,6−グルカンの耐糖能に及ぼす効果
実験材料および方法
1)βグルカン
βグルカン素材は上記(3)で作成されたβ‐1,3-1,6−グルカン粉末を使用した。
2)動物
ICR雄性マウス(14週齢)を日本エスエルシー(株)から購入し、1週間予備飼育した後、健康なマウスを実験に用いた。実験期間中、飼料および水は自由摂取させた。
3)グルコース負荷試験(OGTT)
[実験1] β-グルカン経口投与試験:β-グルカンをそれぞれ50mg、100mg、200mg、および500mg/10mLとなるよう精製水中に溶解し、体重10g当たり0.1mLの水溶液を7日間、朝晩(7:00および19:00) 経口投与した(50mg、100mg、200mg、および500mg/kg)。コントロール群へは精製水を同様に経口投与した。8日目に4時間以上の絶食後、それぞれβ-グルカン液とグルコース水溶液(100mg/0.2mL)を経口投与した。グルコース投与前(0分)、投与後15分、30分、60分および120分に尾静脈から微量採血し、小型血糖測定器(グルコカード,アークレイ(株),京都)を用いて血糖値を測定した。また、投与後15分にはインスリン濃度測定のため、ヘパリン処理した毛細管を用いて採血し、遠心分離して血漿を分離した。血中インスリン濃度はELISAキット(森永生科学研究所,横浜)を用いて測定した。
[実験2] β-グルカン飲水試験:β-グルカンをそれぞれ0.1%、0.3%、0.5%、および1%となるよう精製水中に溶解し、飲水びんを用いて7日間自由摂取させた。8日目に4時間以上の絶食後、グルコース水溶液(100mg/0.2mL)を経口投与した。血糖値測定、投与後15分の血中インスリン濃度測定は[実験1]と同様に行った。
4)統計処理
Stat Viewソフトを用いてDunnett testによる検定を行い、P<0.05を有意と判定した。
【0109】
結果および考察
1.実験1:β-グルカン経口投与試験
7日間のβ-グルカン投与期間中、β-グルカン投与による体重の増減は認められず、目視において異常は見られなかった。
OGTTにおいてグルコース投与後、コントロール群では血糖値は投与後30分まで上昇し、その後低下した。β- グルカン50mg/kg投与群では、血糖値はグルコース投与後15分まで上昇し、30分後には血糖値の低下が見られ、投与後60分の血糖値はコントロール群と比較して有意に低下していた(図8)。β-グルカン100mg/kgおよび200mg/kg投与群では、グルコース投与後15分から30分の血糖値の上昇はわずかで、その後血糖値は低下し、投与後60分の血糖値はコントロール群と比較して有意に低下していた。β-グルカン500mg/kg投与群ではグルコース投与後15分から30分に血糖値がわずかに低下したが、投与後60分に再び上昇した後、緩やかに血糖は低下した。
これらの結果より、β-グルカンが耐糖能を増強することが示された。
グルコース負荷後15分の血中インスリン濃度に対する、β-グルカン経口投与の影響は200mg/kgまでインスリンの低下傾向が見られた。(表5)。また、インスリンの血糖低下効率を検討するためにグルコース濃度をインスリン濃度で除した値を算出したところ、インスリン抵抗性の改善傾向が見られた。
2.実験2:β-グルカン飲水実験
7日間、飲水をβ-グルカン水溶液としたところ、6日目にβ-グルカン1%飲水群において1匹下痢が観察されたが、体重の減少は見られなかった。その他、目視において異常は認められなかった。
OGTTにおいて、グルコース投与後、コントロール群では血糖値は投与後30分まで上昇し、その後低下した。β-グルカン0.1%および0.3%飲水群では、血糖値がコントロール群と比較して低下する傾向が見られた。β-グルカン1%飲水群の血糖値は、ブドウ糖投与後60分に再びわずかに上昇した後、低下した。β-グルカン0.5%飲水群では投与後30分から120分において、コントロール群と比較して低下する傾向が見られた(図9)。
グルコース負荷後15分の血中インスリン濃度は、β-グルカン飲水によって低下しており、0.5%および1%飲水群ではコントロール群と比較して有意に低下していた (表5)。また、インスリンの血糖低下効率を検討するためにグルコース濃度をインスリン濃度で除した値を算出したところ、β-グルカン飲水によって増加しており、0.5%飲水群ではコントロール群と比較して有意にグルコース/インスリン値は増加していた。
これらの結果より、β-グルカンがインスリンの抵抗性を改善することが示された。
【0110】
【表5】

【0111】
(5)飲食品組成物の処方例
処方例1(クッキー)
粉末β−1,3−1,6−D−グルカン 1重量%
殺菌乳酸菌末 0.2重量%
カテキン 1重量%
クッキー生地 残量

処方例2(サプリメント)
粉末β−1,3−1,6−D−グルカン 10重量%
コラーゲンペプチド 42重量%
ヒアルロン酸 0.06重量%
殺菌乳酸菌末 1重量%
ビタミンC 10重量%
ビタミンB2 0.03重量%
ビタミンB6 0.03重量%
賦形剤(デンプンなど) 残量

処方例3(サプリメント)
粉末β−1,3−1,6−D−グルカン 1重量%
コラーゲンペプチド 42重量%
ヒアルロン酸 0.06重量%
ビタミンC 10重量%
ビタミンB2 0.03重量%
ビタミンB6 0.03重量%
ナイアシン 0.15重量%
賦形剤(デンプンなど) 残量

処方例4(ドリンク剤)
β−1,3−1,6−D−グルカン水溶液
(0.2重量%β‐グルカン水溶液) 61.5重量%
殺菌乳酸菌末 0.03重量%
ミルクオリゴ糖 0.8重量%
ラクトフェリン 0.09重量%
甘味料(スクラロース) 0.03重量%
クエン酸 0.22重量%
香料 0.37重量%
水 残部

処方例5(ドリンク剤)
β−1,3−1,6−D−グルカン水溶液
(0.2重量%β‐グルカン水溶液) 61.5重量%
殺菌乳酸菌末 0.03重量%
テアニン 0.8重量%
GABA 0.09重量%
甘味料(スクラロース) 0.03重量%
クエン酸 0.22重量%
香料 0.37重量%
水 残部

処方例6(ドリンク剤)
粉末β−1,3−1,6−D−グルカン
(オーレオバシジウム属由来) 0.2重量%
紅花エキス 7%
イチョウ葉エキス 7%
高麗人参エキス 7%
ザクロエキス 1%
天草エキス 3.5%
桂皮エキス 3.5%
陳皮エキス 3.5%
ウコンエキス 2.1%
生姜エキス 1%
ハチミツ 3%
水 残部
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】β−1,3−1,6−D−グルカン(10μg)の十二指腸投与による肝臓交感神経活動(Hepatic-SNA)の変化
【図2】β−1,3−1,6−D−グルカン(10μg)の十二指腸投与による膵臓交感神経活動(Pancreatic-SNA)の変化
【図3】β−1,3−1,6−D−グルカン(1μg)の十二指腸投与による腎臓交感神経活動(Renal-SNA)の変化
【図4】β−1,3−1,6−D−グルカン(10μg/ml)の十二指腸投与による副腎交感神経活動(ASNA)の変化を示す。
【図5】β−1,3−1,6−D−グルカン(1μg/ml)の十二指腸投与による胃副交感神経活動(GVNA)の変化を示す。
【図6】NMRスペクトルを示す。 帰属: H−NMRの4.5ppm付近のピーク:1位の水素(β1→6結合)4.4729ppm H−NMRの4.7ppm付近のピーク:1位の水素(β1→3結合)4.7258ppm
【図7】超音波照射後の粒度分布を示す。
【図8】グルコース負荷後の血糖値に及ぼすβ-グルカン経口投与の影響を示す。*:コントロール群と比較して有意差を認める,Dunnett test, P<0.05
【図9】グルコース負荷後の血糖値に及ぼすβ−グルカン水溶液飲水の影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-1,3-1,6-D-グルカンを含む、メタボリックシンドローム改善剤。
【請求項2】
β-1,3-1,6-D-グルカンが、オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物に由来する、請求項1に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項3】
β-1,3-1,6-D-グルカンが、以下の(1)−(2)の性質:
(1)1N水酸化ナトリウム重水溶液を溶媒とする溶液のH NMRスペクトルが約4.7ppm及び約4.5ppmの2つのシグナルを有する;
(2)水溶液の30℃、pH5.0、濃度0.5(w/v%)における粘度が200cP(mPa・s)以下である、
を有する、請求項1または請求項2に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項4】
オーレオバシジウム属(Aureobasidium sp.)に属する微生物がオーレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)である請求項1−3のいずれかに記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項5】
血中の中性脂肪濃度を改善することによりメタボリックシンドロームを改善する請求項1−4のいずれかに記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項6】
交感神経抑制および/または副交感神経刺激によりメタボリックシンドロームを改善する請求項1−5のいずれかに記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項7】
高血圧、および/または、高血糖の改善することによりメタボリックシンドロームを改善する請求項1−6のいずれかに記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項8】
耐糖能を増強することによりメタボリックシンドロームを改善する請求項1−7のいずれかに記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項9】
インスリン抵抗性を改善することによりメタボリックシンドロームを改善する請求項1−8のいずれかに記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項10】
請求項1−9のいずれかに記載のメタボリックシンドローム改善剤を含む、健康食品又は機能性食品。
【請求項11】
メタボリックシンドロームを改善するために用いられる旨の表示を付した、請求項10に記載の健康食品又は機能性食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−298768(P2009−298768A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322480(P2008−322480)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】