説明

β細胞の画像化又は標的化において有用な、膵β細胞において優先的に発現される新たな細胞膜バイオマーカー

本発明は、膵β細胞の細胞膜中に特異的に位置するバイオマーカーの特定に関する。これらのバイオマーカーは、ヒト膵島において得られる大規模並列シグネチャー配列決定データセット、並びにヒト膵島、精製したラットの初代β細胞及び非β細胞及びインスリノーマ細胞に関するAffymetrixマイクロアレイデータセットに対するシステム生物学のアプローチによって選択された。一連の特異的な特徴に基づくと、これらのバイオマーカーは、健康及び疾患(T1D、T2D、膵癌、肥満、膵島移植、β細胞再生)において膵β細胞塊を研究するための画像化及び標的化戦略に対する特異な候補である。選択されるバイオマーカーの5つの特異的特徴は以下である:1)周辺組織と比較して、膵島において選択的に発現されること、2)膵α細胞又は他の膵島非β細胞よりも膵β細胞において高度に発現すること、3)膵β細胞における発現レベルが、膵β細胞において特異的に発現される酵素であるグルコキナーゼよりも高いか、又はそれと同程度であること、4)膜中に位置し、且つそれ自体が画像化、標的化、及び免疫組織化学を可能にする抗体、ペプチド、又は小分子によって標的化可能であること、並びに5)β細胞塊の炎症過程で発現が誘導されず、且つ該タンパク質はT細胞及び樹状細胞、又は炎症過程に関与する他の細胞において富化されないこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療分野、特に膵β細胞塊の画像化及び定量化、糖尿病性障害の病理学及び/又は診断のための膵β細胞の標的化又は可視化、膵島移植の追跡調査、並びに膵β細胞の精製戦略に関する。
【0002】
政府の権利に関する記載
この研究は、米国国際若年性糖尿病研究財団の助成金(JDRF−4−2001−43)により支援を受けた。国際若年性糖尿病研究財団は本発明において一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
現在の世界的規模での真性糖尿病の有病率は、罹患者がおよそ1億7000万人であり、最近の予測では2025年までには全世界で3億人に増加すると示唆されている。欧州では罹患者は3000万人を超える。患者の大半(約85%)が2型真性糖尿病(T2D)であり、1型真性糖尿病(T1D)を患う患者は一部(10%〜15%)である。糖尿病は重篤な長期合併症及び心理社会的問題を引き起こし、罹患率及び若年死の大きな負担を課している。糖尿病は失明及び視覚障害、手足の切断、末期腎不全、並びに神経障害の主な原因である。これは脳卒中、心筋梗塞、及び心不全を含む心血管疾患の発生率の著しい増加と関連する。心血管疾患は欧州では糖尿病性患者の死者総数の50%超を占める。T2Dはますます蔓延しており、より若年期に発症するようになり、罹病期間が数十年増加しているので、さらに多くの人々が重篤な糖尿病性合併症を発症し、苦痛によって人々の生活の質及び余命(expectancy)が低下している。
【0004】
糖尿病は多くのコストを発生させるが、生涯にわたり、重大な医学的問題を引き起こすため特に費用がかかる。これらのコストには、医師の業務及び看護業務、病院業務、研究室業務、医薬品、患者の教育及び訓練による直接コスト、並びに研究時間のロス、長期看護及び全般的な社会経済援助、早期退職、長期化する病的状態及び若年死による間接コストが含まれる。
【0005】
直接コスト及び間接コストの両方を含む真性糖尿病の全コストは各国で計算されており、莫大である。例えば、1人の患者を25年の期間にわたって治療するコストは100000ユーロ〜200000ユーロ程度である。本発明は、早期検出を改善し、糖尿病を予防するか、及び/又は回復させる新規の治療法の開発を助けることにより、満たされていない莫大な要求をかなえ、ヘルスケア業界及び医用画像処理、画像化用のトレーサーの製造販売に従事する企業に絶好の機会を与える。
【0006】
手のひらほどの大きさの臓器である膵臓は、胃の下部の裏側に位置する。膵臓は形態的にも生理的にも異なる2つの構造、すなわち消化に関与する酵素(アミラーゼ、リパーゼ等)及び重炭酸ナトリウムを産生する膵外分泌部、並びに血糖値の調節に関与するホルモン(インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、及び膵臓ポリペプチド)を産生する膵内分泌部から成る。膵内分泌部の細胞は、膵臓中に分散する島状の微小器官(ランゲルハンス島又は膵島)として組織化される。各々の膵島は4つの細胞型、すなわちα細胞、β細胞、δ細胞、及びPP細胞で構成されている。α細胞は膵島の周辺部に位置し、グルカゴンを分泌する。β細胞は膵島の中央部に見られ、グルコースに反応してインスリンを分泌可能な唯一の細胞である。δ細胞は周辺部にあり、ソマトスタチンを分泌する。PP細胞の機能については、さらに議論の余地がある(膵臓ポリペプチドの合成)。
【0007】
インスリンは、体がグルコースをエネルギーとして使用するのを助けるホルモンである。体が十分なインスリンを作らないか、インスリンを適切に用いることができないか、又はその両方の場合、グルコースが血液中に蓄積され、糖尿病が発症する。自己免疫疾患である1型真性糖尿病(T1D)では、膵臓のβ細胞は、体の免疫系によって攻撃され、破壊されているため、もはやインスリンを作ることはない。T1D患者は、生きるためにはインスリンを毎日摂取しなければならない。2型真性糖尿病(T2D)は通常、体がインスリンを効率的に用いるのが困難となるインスリン抵抗性と呼ばれる状態から始まる。時間とともにインスリン産生が同様に減少し、多くのT2D患者は最終的にはインスリンを摂取することが必要となる。
【0008】
また、健常被験体と比較してβ細胞数が増加している患者においては、高インスリン血症と呼ばれる状態が起こる。高インスリン血症の患者は発作、精神遅滞、及び永久的脳障害を発症する危険性が高い。グルコースはCNSによって使用される主要な基質であるため、未確認又は管理不良の低血糖症は、永続的で重篤な神経障害につながる可能性がある。一過性高インスリン血症は新生児に比較的よく見られる。糖尿病の母親から生まれた乳児、在胎週数に比べて小さいか若しくは大きい乳児、又は強いストレスを経験した乳児のインスリン濃度は高くなり得る。それに対し、先天性高インスリン血症は稀である。
【0009】
インスリンの定期的な投与以外の糖尿病に対する治療のうち、糖尿病患者における血糖の生理的制御及び血糖の正常化のための1つのアプローチは、in vivoにおける細胞からのインスリン分泌を回復させることである。動物からのインスリン産生細胞の異種移植、単離幹細胞のインスリン分泌細胞へのin vitro分化及び患者におけるその再移植、又は別の被験体から単離した膵島の同種移植といった幾つかの戦略が提案されている。
【0010】
β細胞の研究のための細胞モデルの不足に加えて、このタイプの細胞に適した信頼性のある効果的な細胞選別手段の不足は、β細胞の機能の研究、したがって1型糖尿病及び2型糖尿病の新規の治療方法の開発の妨げとなる。
【0011】
膵β細胞塊の画像化の現在の試みは、MRI(核磁気共鳴画像法)を用いるか、又はPET(ポジトロン放出断層撮影法)及びSPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影法)を用いることによって行なわれている。β細胞塊のin vivo画像化には、非常に高い感度と共に高い空間分解能が必要とされる。MRIは空間分解能が最も高いが、その主要な問題はex vivo標識化手順及びその半定量的性質にある。MRIは、ex vivoでのSPIO(酸化鉄の小粒子)によるヒト膵島の標識化、及びその後の膵島移植によって首尾よく使用されてきた(非特許文献1)。このアプローチを用いると、移植β細胞塊を移植後6ヶ月まで追跡調査することが可能であった。しかしながら、この技法は、ex vivoでの膵島細胞によるマーカーの取り込みに依存するため、移植にしか使用可能でなく、膵臓におけるβ細胞のin vivo画像化に使用することはできない。MRIは膵臓への糖尿病誘発性CD8+T細胞の動員を追跡調査するため(非特許文献2)、Cy5.5標識アネキシン5プローブを用いてT1D進行時のアポトーシスを検出するため(非特許文献3)、又はT1D進行時の微小血管変性を検出するため(非特許文献4)にも使用されているが、検出される変化は半定量的である。
【0012】
PET及びSPECTは感度が非常に高く、ex vivoでの標識化を必要としない。一方で、これらの技法の空間分解能はMRIを下回る。PET又はSPECT画像化は、膵島特異的な受容体に結合する化合物を用いて、又は放射性トレーサーで標識した、膵島において輸送体によって特異的に取り込まれる化合物を用いて達成される。β細胞PET/SPECT画像化に使用される現在の基質の大半は、非β細胞、場合によっては膵臓中の外分泌細胞に結合するか又は取り込まれる。これはトレーサーの希釈及び高いバックグラウンドをもたらすため、全膵臓量の1%〜2%にしかならない小さな膵島(直径100μm〜300μm)において膵臓全体に散在するβ細胞を定量化するのは現在は不可能である。このことは、画像化又は標的化に使用することのできるβ細胞に特異的な細胞膜タンパク質を特定することの緊急の必要性を示している。
【0013】
Paul Harrisのチームは、ヒト膵島において得られたマイクロアレイデータセットを外分泌細胞のデータセットと比較することによって、35種の膵島組織に限定される膜貫通分子及び膜結合分子を特定した(非特許文献5)。候補の1つである小胞モノアミン輸送体2(VMAT2)が、特異的リガンドDTBZを用いた膵β細胞塊の画像化に関するさらなる研究のために選択された。しかしながら、近年では、β細胞が全滅してもVMAT2の結合がもたらされることが示されており、DTBZは膵β細胞塊画像化の良好なバイオマーカーではないことが示される(非特許文献6)。
【0014】
これまで特定された幾つかのβ細胞特異的膜タンパク質の1つに、亜鉛輸送体ZnT8(又はSLC30A8)がある(非特許文献7、非特許文献8)。ZnT8は膵β細胞においてインスリンと共局在化する(非特許文献9)。Avalon(特許文献1及び特許文献2)及びCEA(特許文献3、特許文献4、及び特許文献5)は、このタンパク質がβ細胞特異的であるという事実、並びに癌の療法及び抗体試験での使用のためにSLC30A8(又はZnT8)に対する抗体を利用することを特許に採用している。
【0015】
近年では、SLC30A8が自己抗原であり、1型糖尿病における自己抗体の標的であるとして特定された(非特許文献10)。したがって、SLC30A8はβ細胞の検出に有用ではない。
【0016】
Biogen-IDEC社は、膵島細胞のβ細胞において(非特許文献11)及び腎臓(非特許文献12)において特異的に発現される免疫グロブリンスーパーファミリー遺伝子であるKirrel 2(フィルトリン(filtrin)又はNEPH3)を特定した。この候補は発現レベルが非常に低いため、β細胞の検出に有用ではない。近年、デンシン(densin)及びフィルトリンが自己抗原として働くことができ、これらに対する自己抗体がT1D患者において検出されることが示されている(非特許文献12)。しかしながら、この候補の発現は低過ぎるため、β細胞検出に有用ではない。
【0017】
β細胞増殖を刺激し(非特許文献13)、細胞膜から切断され、脱落するβ細胞タンパク質としてTmem27(又はコレクトリン)が特定された。Tmem27は、β細胞よりも膵島非β細胞において高度に発現されるため、本発明者らのバイオマーカーリストに残っていない。
【0018】
遊離脂肪酸受容体GPR40(FFAR1とも呼ばれる)は、膵島特異的であり、T2Dの治療に対する有力な標的であるとして近年特定されたGタンパク質共役(G-coupled)受容体である(非特許文献14)。近年では、膵β細胞の画像化に対する有力な候補バイオマーカーであることが示唆されている。しかしながら、この受容体は膵島β細胞及びα細胞の両方で発現されるため(非特許文献15)、良好なβ細胞バイオマーカーとしての可能性が妨げられる。
【0019】
脂肪酸受容体GPR119はβ細胞特異的受容体として特定されたが(非特許文献16、非特許文献17)、オレオイルエタノールアミド(OEA)/リゾホスファチジルコリン(LPC)で活性化されたGPR119は、グルコース誘発性インスリン分泌に関与する。これらの代謝物受容体が、細胞膜の外面でβ細胞塊を画像化するのに十分に高い濃度に達しているか否かを決定する必要がある(非特許文献18)。GPR119は近年、膵島非β細胞中で特定されたが(非特許文献19)、選択的小分子GPR119アゴニストPSN632408が食物摂取を抑制し、体重増加及び白色脂肪組織沈着を減少させたため(非特許文献20)、GPR119が他の組織においても発現されることが示される。
【0020】
ランダムファージディスプレイ20merペプチドライブラリを、新たに単離したラット膵島に対してスクリーニングしたが、選択したペプチドのいずれも他の組織と比べた膵島への結合に関して、画像化に使用するのに十分に選択的でなかった(非特許文献21)。
【0021】
膵臓を研究するPET画像化チームはβ細胞を画像化することも試みている。このために、チームは選択的に結合するか、又は膵島特異的輸送体及び受容体により取り込まれると想定される化合物を使用している。これらの化合物の例としては、グリベンクラミド、トルブタミド、セロトニン、L−DOPA、ドーパミン、ニコチンアミド、フッ化デオキシグルコース、及びフルオロジチゾン(fluorodithizone)が挙げられる。グリベンクラミド及びフルオロジチゾンは、PET画像化によるβ細胞塊の定量化に必要とされる、バックグラウンド比に対して強いシグナルを得るには十分に特異的ではない。F−デオキシグルコース(FDG)は、β細胞塊を首尾よく定量化するために使用することはできなかったが(非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24)、局所性インスリン過剰症と、びまん性インスリン過剰症とを区別するために使用することができた(非特許文献25及び非特許文献26、非特許文献27、非特許文献28、非特許文献29、非特許文献30)。
【0022】
膵β細胞を画像化するためにこれまで使用されてきた中で最も有望な化合物は、F18−DOPA及びジヒドロテトラベナジン(DTBZ)(どちらもVMAT2輸送体によって取り込まれる基質である)(非特許文献31、非特許文献32)、並びにグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)又はエキセンディン(GLP−1受容体に結合するリガンド)である(非特許文献33、非特許文献34)。残念なことに、上記の化合物は全て、過度に高いバックグラウンドレベルをもたらし、他の様々な腹腔内組織、例えば腎臓及び肝臓に非特異的に結合する。
【0023】
上記のように、Paul Harrisのチームは、β細胞画像化の潜在的ツールとして小胞モノアミン輸送体2(VMAT2)及びそのリガンドであるDTBZを特定した。DTBZをC−11及びF−18で標識すると、齧歯類及び霊長類において膵臓による高度の取り込みが得られた(非特許文献35)。残念なことに、β細胞を完全に根絶しても、膵臓によるDTBZの取り込みは30%〜40%しか低下せず、該化合物がβ細胞塊を評価するために使用することが可能なほどには十分なβ細胞に対する特異性を欠くことが示された(非特許文献36)。
【0024】
インスリン(K14D10)、スルファチド(IC2)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、又はタンパク質チロシンホスファターゼ(IA2)に指向性を有する幾つかの自己抗体が特定されている。Ian Sweetのチームは、β細胞の画像化/標的化のためにβ細胞特異抗体(K14D10)及びそのFab断片を使用したが、血中クリアランスが最良の抗体断片でも膵臓において優先的に蓄積しなかった。核画像化のために放射性同位体キレート剤で修飾したモノクローナル抗体IC2(非特許文献37、非特許文献38)は、極めて特異的な結合及びβ細胞への蓄積を示し、膵外分泌部又は間質組織には実質的に結合しなかった(非特許文献39)。しかしながら、スルファチドは膵島細胞を支配するシュワン細胞及び他の神経組織においても発現されるため、β細胞画像化における使用が妨げられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】欧州特許第1513951号明細書
【特許文献2】国際公開第03097802号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2006246442号明細書
【特許文献4】欧州特許第1563071号明細書
【特許文献5】国際公開第2004046355号パンフレット
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Evgenov et al 2006
【非特許文献2】Moore A et al, 2004
【非特許文献3】Medarova Z. et al, 2006
【非特許文献4】Medarova Z. et al 2007
【非特許文献5】Maffei et al 2004
【非特許文献6】Kung et al 2007
【非特許文献7】Chimienti F et al 2004
【非特許文献8】Seve et al 2004
【非特許文献9】Chimienti et al 2006
【非特許文献10】Wenzlau JM et al., 2007
【非特許文献11】Sun C. et al, 2003
【非特許文献12】Rinta-Valkama J et al 2007
【非特許文献13】Fukui K et al, 2005
【非特許文献14】Bartoov-Shifman R et al 2007
【非特許文献15】Flodgren E et al 2007
【非特許文献16】Frederiksson R et al, 2003
【非特許文献17】Chu et al 2007
【非特許文献18】Madiraju SR et al 2007
【非特許文献19】Sakamoto Y et al, 2006
【非特許文献20】Overton HA et al, 2006
【非特許文献21】Samli KN et al 2005
【非特許文献22】Malaisse WJ et al. 2000
【非特許文献23】Ruf J et al. 2006
【非特許文献24】Nakajo M. et al., 2007
【非特許文献25】de Lonlay P et al 2005
【非特許文献26】de Lonlay P et al 2006
【非特許文献27】Otonkoski T et al 2006
【非特許文献28】Kauhanen S et al 2007
【非特許文献29】Ribeiro MJ et al, 2007
【非特許文献30】Hardy OT., et al 2007
【非特許文献31】Souza F. et al 2006
【非特許文献32】Simpson NR. et al. 2006
【非特許文献33】Gotthardt M. et al, 2002
【非特許文献34】Wild M. et al. 2006
【非特許文献35】Souza et al, 2006
【非特許文献36】Kung et al 2007
【非特許文献37】Brogren CH et al 1986
【非特許文献38】Buschard K et al 1988
【非特許文献39】Moore A et al, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞に対して特異的な、信頼性のあるマーカーが不足しており、信頼性のあるβ細胞塊の定量化は可能ではない。本発明の目的の1つは、かかるマーカーを提供することである。
【0028】
本発明の候補はβ細胞に特異的であり、β細胞特異的標的化及び非侵襲的画像化に使用することができる。本発明の候補は炎症によって誘発されず、膵臓の周辺組織において発現されない。これらのバイオマーカーに対する標的化戦略の使用は、β細胞塊の低下の早期特定、及び膵島移植、β細胞再生の試み等を含む糖尿病に対する治療法の追跡調査を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、膵β細胞の細胞膜中に位置するバイオマーカー群に関する。これらのバイオマーカーは、ヒト膵島において得られる大規模並列シグネチャー配列決定データセット、並びにヒト膵島、精製したラットの初代β細胞及び非β細胞及びインスリノーマ細胞に関するAffymetrixマイクロアレイデータセットに対するシステム生物学のアプローチによって選択される。一連の特異的な特徴に基づくと、これらのバイオマーカーは、健康及び疾患(T1D、T2D、膵癌、又は膵島移植)において膵β細胞塊を研究するための画像化及び標的化戦略に対する特異な候補である。
【0030】
選択されるバイオマーカーの5つの特異的特徴は以下である:
1)周辺組織(全膵臓/外分泌組織、肝臓、腸、脾臓、胃)と比較して、膵島において選択的に発現されること、
2)膵α細胞又は他の膵島非β細胞よりも膵β細胞において高度に発現すること、
3)膵β細胞における発現レベルが、膵β細胞において特異的に発現される酵素であるグルコキナーゼよりも高いか、又はそれと同程度であること、
4)膜中に位置し、且つそれ自体が画像化、標的化、及び免疫組織化学を可能にする抗体、ペプチド、又は小分子によって標的化可能であること、
5)β細胞塊の炎症過程で発現が誘導されず、且つ該タンパク質はT細胞及び樹状細胞、又は炎症過程に関与する他の細胞において富化され(enriched)ないこと。
【0031】
これらのバイオマーカーに指向性を有する標識抗体、アプタマー、相互作用タンパク質、又はリガンドは、β細胞に特異的な定量化(mass quantification)を可能にし、糖尿病/膵癌の進行を評価し、膵臓疾患の状態のより早期の予測をもたらし、より早期の介入及び糖尿病を治癒又は停止させる機会の増加を可能にし、膵島移植後のβ細胞塊の追跡調査を可能にする。
【0032】
本発明のバイオマーカーは、他の数多くのβ細胞表面タンパク質と同様、T1Dにおける自己免疫に対する潜在的標的でもある場合があり、したがって自己抗体に対する標的であり得る。これらの自己抗体の検出はT1Dの予測を可能にし得る。
【0033】
本発明のバイオマーカーの別の用途は、1型及び2型糖尿病を患い、膵島移植後である患者におけるβ細胞塊の追跡調査である。β細胞の画像化は、糖尿病におけるβ細胞塊の減少を防ぐこと、又はβ細胞塊を再生によって回復させることを目的とした新たな治療法の臨床試験のための代理マーカーとしても有用である。バイオマーカーは、T1D又は移植の場合に炎症を止めるために薬剤を送達することも目的とし得る。
【0034】
本発明はしたがって、膵β細胞塊を特異的に測定するための、FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及びFXYD2−γ−cから成る群から選択されるマーカーの使用を提供する。好ましい実施の形態では、上記マーカーはFXYD2−γ−aである。
【0035】
代替的な実施の形態では、本発明は、膵β細胞塊を測定する方法であって、
a)試料中のβ細胞を、FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及び/又はFXYD2−γ−c等の1つ又は複数のFXYD2−γアイソフォームに特異的に結合する標識分子を用いて可視化する工程、
b)標識されたβ細胞の量を定量化する工程を含む、方法を提供する。
【0036】
好ましい実施の形態では、上記マーカーはFXYD2−γ−aである。
【0037】
さらなる実施の形態では、膵β細胞関連障害のin vivo診断のための診断用組成物の調製における、FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及び/又はFXYD2−γ−c等の1つ又は複数のFXYD2−γアイソフォームに特異的に結合する結合分子の使用が提供される。好ましい実施の形態では、上記マーカーはFXYD2−γ−aである。
【0038】
別の実施の形態では、本発明は、β細胞関連障害のin vivo診断を行う方法であって、
a)FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及びFXYD2−γ−cから成る群から選択されるマーカーの1つに特異的に結合する同位体標識トレーサー分子を被験体に導入する工程、
b)膵臓中のβ細胞集団に特異的に位置するトレーサー分子を、PET、PET−CT、又はSPECTを用いてin vivoで可視化する工程、
c)上記被験体におけるβ細胞の量を定量化する工程、
d)工程c)において得られたβ細胞塊のデータを健常被験体のβ細胞塊のデータと比較する工程、及び
e)工程c)において得られたβ細胞塊のレベルが、健常被験体のβ細胞塊のレベルと比較して低下している場合に、被験体を糖尿病であるか、又は糖尿病を患う危険性があると診断すると共に、工程c)において得られたβ細胞塊のレベルが、健常被験体のβ細胞塊のレベルと比較して上昇している場合に、被験体を高インスリン血症であるか、又は高インスリン血症を患う危険性があると診断する工程を含む、方法を提供する。好ましい実施の形態では、上記マーカーはFXYD2−γ−aである。
【0039】
本発明の方法のいずれかで分析されるβ細胞関連障害が1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、高インスリン血症、又は膵癌であるのが好ましい。
【0040】
代替的に本発明はさらに、被験体においてβ細胞塊を特異的に測定するか、及び/又はβ細胞関連障害を診断するか、及び/又はβ細胞を精製するためのキットであって、
a)FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b及びFXYD2−γ−cから成る群から選択されるバイオマーカーのいずれか1つと結合する標識分子を含む、キットを提供する。好ましい実施の形態では、上記マーカーはFXYD2−γ−aである。
【0041】
本発明の方法のいずれかにおいて、結合分子が、上記バイオマーカーと特異的に結合する、特異抗体、抗体断片、ナノボディ、アフィボディ(affybody)、アプタマー、フォトアプタマー、小分子、相互作用パートナー、特異的に結合するタンパク質若しくはペプチド、DARPin、アンキリン、同位体標識トレーサー、又はリガンドである。
【0042】
好ましい実施の形態では、抗体はFXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b又はFXYD2−γ−cバイオマーカーに指向性を有し、さらにより好ましくは、抗体は配列番号1〜配列番号5、好ましくは配列番号1〜配列番号3、より好ましくは配列番号1のペプチドのいずれか1つに指向性を有する。
【0043】
本発明はさらに、被験体におけるβ細胞移植の成功を追跡調査する方法であって、
a)被験体に膵島を移植した後一定期間内の被験体におけるβ細胞の量を測定する工程、及び
b)β細胞塊を経時的に比較することにより膵島移植の成功を決定する工程を含む、方法を提供する。
【0044】
代替的に本発明はβ細胞を他の膵非β細胞から精製又は単離する方法であって、
a)β細胞を、FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及びFXYD2−γ−cから成る群から選択されるマーカーの1つに特異的に指向性を有する標識結合分子でタグ付けする工程、及び
b)標識されたβ細胞を、非標識細胞からβ細胞上のタグによって単離し、それにより実質的に純粋なβ細胞調製物を得る工程を含む、方法を提供する。好ましい実施の形態では、上記マーカーはFXYD2−γ−aである。
【0045】
さらなる実施の形態では、本発明は、β細胞の再生を特定する方法であって、
a)β細胞を、FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及びFXYD2−γ−cから成る群から選択されるマーカーの1つに特異的に指向性を有する標識結合分子でタグ付けする工程、
b)標識されたβ細胞を、非標識細胞からβ細胞上のタグによって単離し、それにより実質的に純粋な再生β細胞調製物を得る工程、
c)免疫組織化学を実行し、それにより新たに再生されたβ細胞の数を特定すると共に、新たなβ細胞塊を確定する工程、及び
d)治療戦略を追跡調査すると共に、β細胞塊の回復を検出する工程を含む、方法を提供する。好ましい実施の形態では、上記マーカーはFXYD2−γ−aである。
【0046】
上記方法で使用されるタグが磁性ビーズ又は常磁性ビーズであり得る。それからβ細胞塊をMRIを使用して測定することができる。
【0047】
さらに、本発明は、機能的インスリン発現細胞を誘導するために幹細胞集団を特定する方法であって、
a)処理した幹細胞を、マーカーFXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b及びFXYD2−γ−cに特異的に指向性を有する標識結合分子でタグ付けする工程、及び
b)標識した幹細胞を、非標識細胞から潜在的β幹細胞上のタグによって単離し、それにより実質的に純粋なβ幹細胞調製物を得る工程を含む、方法を提供する。この方法は、c)免疫組織化学を実行し、それによりβ幹細胞の数を特定すると共に、新たなβ細胞塊を確定する工程、及びd)治療戦略を追跡調査すると共に、新たに形成されたβ細胞の量を検出する工程をさらに含み得る。好ましい実施の形態では、上記マーカーはFXYD2−γ−aである。
【0048】
別の実施の形態では、本発明はまた、膵β細胞に対する特異的バイオマーカーを特定する方法であって、かかるマーカーを以下の5つの基準:
a)全ヒト膵臓と比べてヒト膵島において50倍〜100倍超富化されていること、
b)精製ラットβ細胞において精製ラット非β細胞と比較して富化されており、比較的β細胞特異的となっていること、
c)グルコキナーゼと同じか、又はそれよりも高いレベルで発現されること、
d)細胞膜中に位置し、特異的抗体又はペプチドによる標的化に使用することができること、及び
e)選択した遺伝子/タンパク質の発現レベルが炎症時に変化していないことに基づき選択することを含む、方法を提供する。
【0049】
好ましくは、得られる発現データが、MPSS及び/又は遺伝子発現(mRNA)マイクロアレイ技術に由来するものである。
【0050】
また、本発明は、本発明の方法によって特定される新たなマーカー、例えばFXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及びFXYD2−γ−cも提供する。好ましい実施の形態では、上記マーカーはFXYD2−γ−aである。
【0051】
最後に、本発明は膵β細胞塊を特異的に測定するため、又は本発明に記載されるような方法、キット、及び使用のいずれか1つに使用するための、GNAS−XLas、GNAS−Alex、CDIPT、VAT1、CLSTN1、SLC7A5、CTTN、BAIAP3、LYPD1、ANXA7、DMBT1、KIAA1543、及びSLC7A8から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの使用も提供するが、ここでFXYD2−γマーカー(複数可)を、任意の1つ又は複数の上記マーカー群の他のマーカーで置き換えてもよく、又は上記リストのマーカーの任意の1つ又は複数を、FXYD2−γマーカー(複数可)と組み合わせて使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】FXYDファミリーの成員を示す図である。下線の断片はシグナルペプチドを指す。太字で示されるFXYD保存領域に注目されたい。
【図2】A:種々の種におけるFXYD2−γ−a及びFXYD2−γ−bスプライシング変異体のN末端配列を示す図である。B:ヒトFXYD2−γの3つのスプライシング型であるアイソフォームa、b及びcのアミノ酸配列アラインメントを示す図である。
【図3】FXYD2−γに指向性を有するAbnovaのモノクローナル抗体を用いて、ヒト腎臓明細胞癌の薄片及び正常ヒト膵臓の薄片に対して行った免疫組織化学を示す図である。黒色の矢印は腎臓における染色を指し、白色の矢印は膵臓のランゲルハンス島に特異的な染色を示す。
【図4】ラット膵臓の分散膵島細胞におけるFXYD2−γの発現を示す図である。100000個のラット分散膵島細胞において、FXYD2−γをウエスタンブロット法により検出するために、FXYD2−γに指向性を有するAbnovaのモノクローナル抗体を使用した。所与の分子量は近似値である。
【図5】ラット腎臓(K)及びラット膵島(pi)におけるFXYD2−γの発現を示す図である。Mは分子量マーカーである。FXYD2−γ−aのN末端ペプチドに対するポリクローナル抗体(SPY393及びSPY394)又はFXYD2−γ−bのN末端ペプチドに対するポリクローナル抗体(SPY341及びSPY342)をウエスタンブロット法により解析した。抗体は直接アプライした、又はその特異的ペプチドγ−a若しくはγ−b又は非特異的起源のペプチド(Xlas pep)を10倍オーバーロードして1時間プレインキュベートし、遠心分離してから、ウエスタンブロット法に使用した。
【図6】種々のマウス組織におけるFXYD2の検出を示す図である。FXYD2はマウス膵島において特異的に検出される。上パネル:1:マーカー、2:ラット腎臓(陽性対照)、3:マウス脳、4:マウス肝臓、5:マウス脾臓、6:マウス胃、7:マウス腸、8:マウス大腸、9:マウス膵島、10:マーカー。下パネル:1:ラット腎臓、2:マーカー、3:マウス肺、4:マウス筋肉、5:マウス心臓、6:マウス外分泌腺、7:AR42J細胞株、8:INS−1細胞株。
【図7】FXYD2−γ−a及びFXYD2−γ−bはヒト膵島において選択的に発現されるが、インスリノーマにおいては発現されないことを示す図である。ヒト正常膵臓切片を、FXYD2に指向性を有するモノクローナル抗体(Abnova)(A及びB、倍率はそれぞれ200×及び400×)、及びポリクローナル抗FXYD2−γ−a(SPY393)(C及びD、倍率はそれぞれ200×及び400×)を用いて免疫組織化学により解析した。インスリノーマの連続切片(倍率100×)を、抗インスリン抗体(E)及びSPY393(F)を用いて解析した。膵島。
【図8】a:FXYD2発現がヒト膵β細胞に限定されることを示す図である。3μmの連続切片を採取し、抗インスリン抗体、SPY393抗体(抗FXYD2−γ−a)又は抗グルカゴン抗体で染色した。2つのパネルは、各々が2つの異なる膵島を示す2回の独立実験を示している。FXYD2及びインスリンの局在性は同様である。b:FXYD2発現がヒト膵β細胞に限定されることを示す図である。3μmの連続切片を採取し、抗インスリン抗体、SPY393抗体(抗FXYD2−γ−a)又は抗グルカゴン抗体で染色した。2つのパネルは、各々が2つの異なる膵島を示す2回の独立実験を示している。FXYD2及びインスリンの局在性は同様である。
【図9】a:ヒト膵臓切片を免疫蛍光により解析した結果を示す図である。グルカゴンに対するモノクローナル抗体(K79bB10、Sigma)及びFITC標識抗マウスIgG(緑色)に加えて、SPY393抗体及びTRITC標識抗ウサギIgG(赤色)と共に切片をインキュベートした。FXYD2発現細胞(赤色)とグルカゴン発現α−細胞(緑色)との間に共局在性は見られなかった。b:ヒト膵臓切片を免疫蛍光により解析した結果を示す図である。インスリンに対するモノクローナル抗体(K36aC10、DBS)及びFITC標識抗マウスIgG(緑色)に加えて、SPY393抗体及びTRITC標識抗ウサギIgG(赤色)と共に切片をインキュベートした。FXYD2発現細胞(赤色)とインスリン発現β−細胞(緑色)との間に、非常に良好な共局在性(橙色の染色)が見られた。共局在性の定量化は下記表4及び表5に示す。
【図10】ラット分散膵島細胞におけるFXYD2発現を示す図である。FXYD2は膵島細胞の細胞質中及び膜上の両方で検出される。ラット分散膵島細胞をポリリジンコートスライドガラス上に固定し、2日間インキュベートして、単離手順から回復させた。次いで、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.3%TX100で処理し、正常ヤギ血清を用いてブロッキングを行った。FXYD2−γ−aを検出するSPY393、及びALEXAで標識した二次抗ウサギ抗体を用いて免疫細胞化学を行った。核(灰色部、矢印参照)はFXYD2陰性であり、FXYD2(明るく示す)が細胞質及び膜の両方に見られる。
【図11】FXYD2−γ−aがヒト、アカゲザル(Macaca mulatta)、及びラットの膵臓のβ細胞において特異的に発現されることを示す図である。ヒト(左欄)、アカゲザル(中央欄)、及びラット(右欄)の膵臓の連続パラフィン切片を、ポリクローナルウサギ抗FXYD2−γ−a(SPY393)(上列)、抗インスリン抗体(中央列)、又は抗グルカゴン抗体(下列)を用いて免疫組織化学により解析した(倍率400×)。
【図12】FXYD2−γ−aの発現が、1型糖尿病患者(CO及びTELF(これらのコードは2人の患者を識別するものである)、1型糖尿病の診断からそれぞれ3日後及び5年後に死亡した)に由来する膵島において、正常膵臓(CTRL)と比較して大幅に減少することを示す図である。3μmの連続切片を採取して、SPY393抗体、抗インスリン抗体、又は抗グルカゴン抗体で染色した。TELF膵臓では、インスリン染色を基にβ細胞を検出することはできない。このことはFXYD2染色の消失と相関していた。CO膵臓では、インスリン染色を基にβ細胞を検出することはできないが、非常にかすかなFXYD2染色が残されていた(倍率1000×)。
【図13】1型糖尿病患者に由来する膵島におけるFXYD2−γ−aの定量化を示す図である。1症例当たり20個のランゲルハンス島を定量化した(染色組織面積(%)(標識率LI)及び平均染色度)。上記図14に見られるように、TELF膵臓では、FXYD2染色は完全に消失しており、このことはインスリン染色により特定されるように、β細胞の消失と相関していた。CO膵臓においては、インスリンの染色は消失しており、このことはCTRLによる標識率(LI)と比較して、FXYD2−γ−aの染色の50倍の減少と相関していた。
【図14】STZ処理アカゲザルにおいて、FXYD2−γ−a発現の減少がβ細胞の喪失と相関することを示す図である。対照(A〜C、CT)及びSTZ処理アカゲザル(D〜F、霊長類1及びG〜I、霊長類2)に由来する膵臓の連続切片を、抗グルカゴン抗体(左欄A、D、G)、抗インスリン抗体(中央欄B、E、H)、又はSPY393ポリクローナル抗FXYD2−γ−a(右欄C、F、I)を用いて解析した(倍率400×)。
【図15】STZ誘発糖尿病アカゲザルにおける、インスリン及びFXYD2−γ−aの発現の有意な減少を示す図である。対照(CT)及びSTZ誘発糖尿病アカゲザル(霊長類P1〜P6)に由来する膵臓切片を解析した。1症例当たり6個の膵島を、試料の同一性を知らない3人の観察者によって計数した。グルカゴン陽性細胞、インスリン陽性細胞、及びFXYD2−γ−a陽性細胞を、1個の膵島当たりの相対的割合として算出した。CTにおける値を100%と見なした。
【図16】FXYD2−γ−a及びFXYD2−γ−bアイソフォームが齧歯類膵島、ラットINS−1E、AR42J細胞、及びヒトCAPAN−2細胞において発現されるが、ヒトPANC−1細胞においては発現されないことを示す図である。FXYD2−γ−a発現は、サイトカインへの24時間の曝露後でも変化しない。A. FXYD2−γ−a及びFXYD2−γ−bスプライシング変異体がマウス膵島において検出された。FXYD2−γ−aアイソフォーム(レーン1)、FXYD2−γ−bアイソフォーム(レーン2)、及びFXYD2−γ−cアイソフォーム(レーン3)を検出するためにプライマーを使用した。マーカー(M、レーン4)。B. ポリクローナル抗FXYD2−γ−a抗体(SPY393)は、FXYD2−γ−aアイソフォームのみを認識する。ラット分散膵島細胞(レーン3、レーン5)及びラット腎臓(レーン1、レーン2、レーン4、レーン6)を解析した。レーン1:FXYD2−γ−bブロッキングペプチドとのSPY393、レーン2:非特異的ブロッキングペプチドとのSPY393、レーン3及びレーン4:FXYD2−γ−aブロッキングペプチドとのSPY393、レーン5及びレーン6:ブロッキングペプチドを用いないSPY393。C.ウエスタンブロット解析を、CAPAN−2細胞(レーン1)、PANC−1細胞(レーン2)、AD293細胞(レーン3)、INS−1E細胞(レーン4)、及び分散ラット膵島対照(レーン5、レーン8)、及びサイトカインに24時間曝露した対照(レーン6、レーン9)、マーカー(レーン7)、ラット腎臓陽性対照(レーン10)の全細胞抽出物に対して行った。下の矢印はSPY393により検出されたFXYD2−γ−a発現を指し、上の矢印はポリクローナルウサギ抗β−アクチンを用いて検出されたβ−アクチンの発現を指す。D. ウエスタンブロット分析を、対照条件(レーン1)、又はIL1β(レーン2)、IL1β+IFNγ(レーン3)、IFNγのみ(レーン4)に24時間曝露したINS1E細胞の全細胞抽出物、及び同様に対照条件(レーン5)、又はIL1β(レーン6)、IL1β+IFNγ(レーン7)、IFNγのみ(レーン8)に24時間曝露したAR42J細胞の全細胞抽出物、マーカー(レーン9)、及びラット腎臓全細胞抽出物(レーン10)に対して行った。下の矢印はSPY393により検出されたFXYD2−γ−a発現を指し、上の矢印はポリクローナルウサギ抗β−アクチンを用いて検出されたβ−アクチンの発現を指す。ブロットは3回、4回の独立実験の代表的なものである。
【図17A】アカゲザルにおける生体内分布研究を示す図である。動物に124Iで標識したSPY393抗体を注射した。注射後の種々の時点でPETスキャンを行った(注射後時間(hours Post Injection)又はPI):パネルA:3時間PI、パネルB:24時間PI、パネルC:72時間PIでの胃内容物の解析結果、トレーサー分子が胃に多量に取り込まれており、体の他の部位での可視化が障害されることが示唆される。
【図17B】アカゲザルにおける生体内分布研究を示す図である。動物に124Iで標識したSPY393抗体を注射した。注射後の種々の時点でPETスキャンを行った(注射後時間(hours Post Injection)又はPI):パネルA:3時間PI、パネルB:24時間PI、パネルC:72時間PIでの胃内容物の解析結果、トレーサー分子が胃に多量に取り込まれており、体の他の部位での可視化が障害されることが示唆される。
【図17C】アカゲザルにおける生体内分布研究を示す図である。動物に124Iで標識したSPY393抗体を注射した。注射後の種々の時点でPETスキャンを行った(注射後時間(hours Post Injection)又はPI):パネルA:3時間PI、パネルB:24時間PI、パネルC:72時間PIでの胃内容物の解析結果、トレーサー分子が胃に多量に取り込まれており、体の他の部位での可視化が障害されることが示唆される。
【図18】ウサギポリクローナル抗体SPY344によって、ヒトパラフィン膵臓切片中の膵島においてXLasが特異的に検出されることを示す図である(図の左に示す)。ウサギポリクローナル抗体SPY345によっては、ヒトパラフィン膵臓切片中の膵島においてAlexが特異的に検出される(図の右上に示す)。SPY346によっても膵島においてAlexが特異的に検出されるが、染色はあまり強くない(図B、右下)。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、膵β細胞の細胞膜中に特異的に位置するバイオマーカー群に関する。これらのバイオマーカーは、ヒト膵島において得られる大規模並列シグネチャー配列決定データセット、並びにヒト膵島、精製ラット初代β細胞及び非β細胞及びインスリノーマ細胞に関するAffymetrixマイクロアレイデータセットに対するシステム生物学のアプローチによって選択される。大規模並列シグネチャー配列決定(Massively parallel signature sequencing)(MPSS)によって、mRNAサンプルの3’領域から数百万の短いシグネチャー配列タグが生じるが、その大半を個々の遺伝子に明確に割り当てることができ、各遺伝子にあてられるタグの数は、対応するmRNA量のデジタル表示値となる。個々の細胞は、およそ200000〜300000個の転写産物を含有するため、このレベルでのサンプリングは、細胞株又は組織において発現される全ての異なるmRNA種の完全なカタログ化に向かう。種々の組織に由来するMPSSデータセットの比較によって、組織特異的な遺伝子発現を規定する強力な手段がもたらされる。
【0054】
選択された候補は外分泌組織と比べて膵島に特異的であるだけでなく、候補をβ細胞の画像化及び標的化での使用にとってより有利にする多数のさらなる選択基準を追加した。バイオマーカーを選択するために、(比較情報の代わりに)定量的情報を含有する独自のデータセットを使用した。選択されるバイオマーカーに与えられる特異な特徴は以下である:
【0055】
1.選択されるバイオマーカー候補は、全ヒト膵臓と比べてヒト膵島において50倍〜100倍超富化されている。マイクロアレイによって得られる比較データを使用する代わりに、100万個当たりの転写産物(transcripts per million)の数を与えるMPSSによって得られる定量的データを用いる。これによって、全ヒト膵臓と比べてヒト膵島において富化されている転写産物の量を算出することが可能である。膵島は全膵臓の1%〜2%を占めるため、膵臓と比べて膵島において50倍〜100倍富化されていることを選択基準として使用した。定量的データを用いて、発現が周辺ヒト組織(胃、脾臓、腸)又は膵島移植片の配置に使用する組織(肝臓、腎臓)と比べてヒト膵島において何倍富化されるかを、公的に利用可能なヒトMPSSデータセットを用いた比較に基づき算出することができる。これはバックグラウンドレベルを予想し、膵島特異的な候補を選択するうえで非常に有用な基準である。膵島における富化は全膵臓と比べて、好ましくは50倍超である。
【0056】
2.選択された候補は、精製ラット非β細胞と比較して精製ラットβ細胞において富化されており、比較的β細胞に特異的となっている。膵島の組成はT1Dの進行時に、β細胞の喪失及び非β細胞(主にα細胞)の相対的増加によって変化する。したがって、推定バイオマーカーがβ細胞において特異的に発現されることが、β細胞塊の定量化に不可欠である。本発明の選択は、精製初代非β細胞と比較して精製初代β細胞に対して行ったマイクロアレイによって得られた独自のデータセットに基づいて行われる。かかる選択はこれまで行われていなかった。「富化される」という用語は、同一の条件下で操作した非β細胞と比較した場合に、β細胞においてより高いレベルの発現が得られることを意味する。この分析はマイクロアレイデータ解析に基づいて行われるため、FC変化は考慮に入れられず(すなわち(f.e.)FXYD2に対する幾つかのプローブは、ヒトにおける以前のデータと比較してマイクロアレイでそれほど良好ではなく、ここでFCは1.4である。一方で、幾つかのプローブセット、すなわちGNASプローブのスコアは非常に高く(インスリンと同程度)、ここでFCは1.3である)、β細胞において非β細胞よりも高く発現される遺伝子を選択したが、FC基準自体は設定しなかった。
【0057】
3.選択されたバイオマーカーの発現レベルは、グルコキナーゼの発現レベルと少なくとも同じであり、好ましくはそれよりも高い。画像化のためには、標的は膵β細胞上で検出を可能にするのに十分な量で発現される必要がある。この基準を確認するため、ヒト膵島における定量的データ、並びにヒト膵島及び初代ラットβ細胞における比較データの両方を用意している。これは、β細胞において中程度に発現される酵素であるグルコキナーゼとの比較によって行われる。
【0058】
4.選択されたバイオマーカーは細胞膜中に位置し、特異的抗体、化学合成、天然化合物、又はペプチドを用いた標的化に使用することができる。これらのタンパク質を標的とする抗体及びペプチドは、画像化/標的化を行うのに十分なほど高い親和性をもって細胞膜タンパク質上に位置する天然構造を検出する。細胞膜における局在性はシステム生物学アプローチ(IPA解析、GO解析、文献(literature)スクリーニング)によって評価されてきたが、この局在性を確認するために免疫組織化学を行う。
【0059】
5.選択された遺伝子/タンパク質の発現レベルは、炎症時に実質的に変更(例えば誘導)されない。対照条件と炎症が誘発される条件(例えばサイトカインで処理したβ細胞、又はウイルス若しくはdsRNAに曝露したβ細胞)とを比較する大量のマイクロアレイデータを用意する。炎症時に、膵β細胞は多くの場合、膵臓に浸潤する免疫細胞(T細胞、樹状細胞)において見られるものと同様のマーカーを発現する。したがって、β細胞塊を定量化するためには、β細胞においてのみ発現され、且つ炎症時に誘発されないバイオマーカーを選択することは主として重要である。マイクロアレイデータセットを公的に利用可能なSymatlasと比較することによって、これらのデータを確認することができた。この分析はこれまで他のグループによって行われていなかった。文献スクリーニングによって、種々のタイプの膵癌と比較して正常ヒト膵臓における発現を検出し、対照マウスと比べたNODマウス(T1Dマウスモデル)におけるそれらの発現を検出した。文献スクリーニングにおいて利用可能でない場合、このことは問題を明らかにするために特別に作製したマウスTMEにおいて確認した。「実質的に変更(例えば誘導)されない」という用語は、候補マーカーの発現レベルが非炎症状態と比べて炎症状態で誘導されないことを意味する。これは、糖尿病等の疾患状態によるβ細胞塊の減少と等しい量で発現を増加させる、考え得る炎症の影響に対抗するためである。(すなわち、糖尿病状態におけるβ細胞塊の減少は約30%であり、マーカーそれ自体が炎症状態による約30%の発現の増加を有する場合には、上記マーカーに基づくβ細胞塊の変化を検出することは可能ではない)。
【0060】
次に、本発明のリストのうち、3つの最良の候補をタンパク質レベルで解析し、膵島特異性及びβ細胞特異性を確認するために手順を開発した。候補に対し、利用可能な場合には抗体を選択するか、又はバイオマーカーを特異的に標的とする抗体を調製した。選択された候補及びこれらの候補を標的とする抗体を、(周辺組織と比べた)膵臓に対するそれらの特異性、及び外分泌組織と比べた膵島におけるそれらの特異的発現を確認するヒト組織マイクロアレイにおいて試験した。続いて、バイオマーカーのタンパク質発現を、非β細胞と比べたβ細胞に対するその特異性に関して、正常及び罹患ヒト及び齧歯類膵臓(ヒト膵癌及びT1Dマウスモデル)の膵臓薄片に対する免疫細胞化学によって検証した。
【0061】
この一連の基準を用いて、ヒト及び齧歯類の膵β細胞の細胞膜上で選択的に発現される特異なバイオマーカー群を得た。発現レベルは画像化/標的化を行うのに十分なほど高く、それらの発現レベルは炎症状態及び糖尿病状態によって実質的に変更されないか、又はこれらのマーカーは以前に自己抗原として特定されていない。これによって、これらのマーカーはβ細胞の画像化/標的化に対する完全な候補となる。
【0062】
本発明の大きな利点は、真性糖尿病において膵β細胞塊の決定を可能にすることである(下記参照)。現在、β細胞塊を特異的に測定する他の利用可能な方法はないことに留意されたい。
【0063】
1型糖尿病(T1D)は、体の免疫系が自身のインスリン産生β細胞を攻撃して破壊し、それ自体を破壊する自己免疫疾患である。疾患の進行を解明し、疾患を予防する新規の治療介入の有効性を評価するためのT1Dの早期検出に対する主要な障害は、β細胞塊を可視化及び測定する直接的な非侵襲的技術の不足である。β細胞塊を決定する信頼性のある方法の不足はまた、膵島移植、及び同様に(T1Dよりも小さい規模ではあるが)β細胞塊の段階的減少が存在する疾患である2型糖尿病(T2D)を患う患者の追跡調査を制限する。β細胞画像化の目的を達成するためには、可視化することのできるβ細胞特異的膜タンパク質の緊急の必要性がある。この問題を解決するために、候補β細胞バイオマーカーをシステム生物学アプローチによって選択した。得られた結果は以下のことを示す:
【0064】
選択された候補はヒトの膵β細胞において極めて富化されている。これらに指向性を有する抗体、小分子、又はペプチドを、PET又はMRI又はSPECT画像化に使用されるトレーサーとすることができる。これらのトレーサーはβ細胞に優先的に結合し、非常に良好な特異性及び選択性を可能とする。β細胞数の著しい減少及びα細胞の相対的増加が見られるT1Dの後期において、β細胞特異的バイオマーカーは、非β細胞からのバックグラウンドのない残存β細胞塊の定量化を可能にする。これらのバイオマーカーは、膵島移植者の追跡調査、2型糖尿病性患者におけるβ細胞塊の段階的減少、又は肥満非糖尿病性患者におけるβ細胞塊の最終的増加(この場合、インスリン抵抗性を補償するβ細胞塊の増加がある)の検査も可能にする。
【0065】
選択されたバイオマーカーは炎症によって誘発されず、浸潤免疫細胞を標的としない。β細胞は浸潤免疫細胞によって検出される自己抗原を発現する。対照及び炎症性β細胞における選択されたバイオマーカーの発現を比較し、免疫細胞において発現されない膜タンパク質を選択するため、炎症時(膵島炎)のβ細胞塊を追跡調査することが可能である。
【0066】
選択された候補は、ヒト膵島移植後の膵島移植片の非侵襲的画像化を可能にし、移植片生着を支持するための免疫抑制療法の調整、及び増強された免疫攻撃を受ける移植者を救うことを目的としたより早期の介入を可能にする。
【0067】
候補を標的とし、T1Dにおける自己免疫過程の一環として生じる内因性抗体は、自己免疫の有益なマーカーであり、疾患を発症する危険性の高い患者の検出に役立つ。
【0068】
膵臓の画像化に現在使用されている薬剤としては、グリベンクラミド、ドーパミン、フッ化デオキシグルコース、フルオロジチゾン、及びDOPA等の試薬が挙げられる。β細胞におけるこれらの薬剤の取り込みは、膵島の膵外分泌部及び非β細胞と比較して、信頼性のあるβ細胞塊の画像化を可能にするには十分ではない(Sweet et al, 2004)。
【0069】
本発明のバイオマーカーのリストは、ヒト膵島における定量的発現情報(MPSS)、並びに精製初代ラットβ細胞及び初代ラット非β細胞において得られたマイクロアレイデータセットから得た比較発現データを含有する独自のデータセットから選択した。本発明で選択されるバイオマーカーは、以下の基準に当てはまる:
1. 「膵島特異的」の基準は、ヒト膵島の定量的MPSSデータと、32種のヒト組織のMPSSデータ(全膵臓を含む、公的に利用可能なデータベースであるLICRのMPSSデータセットから得た)との比較に基づく。本発明では、膵臓と比べて膵島において50倍超富化された発現を選択した。ヒト膵島に関する定量的MPSSデータセットは以前は利用可能でなかったため、これは新たな特徴である。
2. 「β細胞特異的」、すなわちα細胞よりもβ細胞において強く発現されること。この基準は、1型糖尿病(T1D)等の病的状態におけるβ細胞の画像化に重要である。T1Dの進行過程においてβ細胞は次第に消滅するが、α細胞の数は増加する。したがって、β細胞に特異的であり、α細胞において全く又はあまり発現しないバイオマーカー(複数可)を用意する必要がある。
3. 発現レベルはグルコキナーゼより高いか、又は同程度であるべきである。グルコキナーゼは、β細胞において高度且つ選択的に発現される酵素であり、グルコキナーゼとの比較によって、潜在的バイオマーカーの高度の発現に関する信頼性のある評価が提供される。
4. 本発明のバイオマーカーは細胞膜に位置する。初めに、膜貫通領域を検出するためにTMHMMプログラムを使用し、続いて徹底的に文献解析を行なった。GO解析及びIngenuityのパスウェイ解析は、この基準を補完するために使用した。
5. 発現レベルは炎症によって誘導されない。選択されたバイオマーカーの発現レベルは、ヒト膵島及び精製初代ラットβ細胞で得られたマイクロアレイデータセットにおいて、炎症状態(サイトカインへの曝露又はウイルスによって誘発された)で増大しない。このことは、早期T1Dにおいて一般的な、膵島炎におけるバイオマーカーの発現の変更が誤ったβ細胞塊の評価を導かないことを確かにする。
【0070】
結論としては、バイオマーカーはβ細胞において優先的に発現され、画像化を可能にするのに十分な量で表面上に発現される。バイオマーカーは細胞外ドメインを有し、これに対して天然のリガンド、ペプチド、及び/又は(or and)抗体(若しくは抗体断片)をトレーサーとして開発することができる。選択されたバイオマーカーは炎症状態において変更されない。これらの特異な特徴はβ細胞塊の臨床解析を可能とする。
【0071】
本発明のバイオマーカーの目的は、健康な(health)状態及び病的状態(糖尿病又は膵島移植後)での膵β細胞塊の推定及び可視化において使用することである。本発明は、糖尿病状態の予測及び追跡調査、膵島移植の追跡調査のためのツール、及び糖尿病の予防及び/又はβ細胞塊の再生を目的とする治療アッセイのための代理マーカーであるツールの開発を可能にする。これらの候補を用いて行われる非侵襲的画像化は、β細胞塊の増加又は減少の検出を可能にする。
【0072】
したがって、本発明は、被験体のβ細胞塊を検出及び/又は測定するとともに、それを健常被験体のβ細胞塊の基準量と比較することによって、1型真性糖尿病若しくは2型真性糖尿病(T1D若しくはT2D)又は高インスリン血症等の糖尿病性障害を診断又は予後診断する非侵襲的方法を提供する。調査対象の被験体のβ細胞塊の増加は、高インスリン血症の状態を指し、一方で調査対象の被験体のβ細胞塊の減少は、1型真性糖尿病又は2型真性糖尿病の状態を指す。
【0073】
糖尿病性障害を診断又は予後診断する非侵襲的方法は、FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及びFXYD2−γ−cの群から選択されるβ細胞特異的バイオマーカーの検出によるβ細胞の極めて特異的な検出及び/又は可視化を包含する。
【0074】
特異的マーカーの検出は、高い特異性をもってバイオマーカーに結合する放射性同位体標識トレーサー分子を使用することによって行われる。トレーサーは例えば、抗体若しくはその断片、一本鎖抗体、ナノボディ、アフィボディ、アプタマー、フォトアプタマー、特異的リガンド若しくは相互作用タンパク質、又は選択されるバイオマーカーに特異的に結合することが示されている任意の小分子等であり得る。
【0075】
抗体は既知若しくは市販の抗体であっても、又は本発明のバイオマーカーの1つを極めて特異的に検出するように特別に設計してもよい。
【0076】
これに関し、本発明者らは、以下に指向性を有するポリクローナル抗体調製物を設計した:
ウサギを配列番号1(MTGLSMDGGGS+C−KLH)の11AAペプチド(抗体SPY393及びSPY394と指定される)、又は配列番号2(MTGLSMDGGGSPKGD+C−KLH)の15AAペプチド、又は配列番号3(MTGLSMDGGGSPKGDVDPFYYDYETVRN+C−KLH)の28AAペプチドで免疫化することによる、FXYD2のγ−aスプライシング変異体
ウサギを配列番号4(MDRWYLGGS+C−KLH)のペプチド(抗体SPY341と指定される)で免疫化することによる、FXYD2のγ−bスプライシング変異体、
ウサギを配列番号5(GKPGPLRTLPEPSGPLPPSSGLSQPQVHALCPLSPLVTTGCCGQAAERDSCWERPPIPLLLPSLSG+C−KLH)のペプチドで免疫化することによる、FXYD2のγ−cスプライシング変異体。
【0077】
ヒトFXYD2−γ−aにおいてSPY393及びSPY394抗体によって認識される配列は、サル(アカゲザル)FXYD2−γ−aの配列と100%の類似性を有することに注目することが重要である。これによって、アカゲザルにおける標識抗体の特性を試験すること、及び上記サルモデルにおいて得られた結果をヒト状況に外挿することが可能となる。
【0078】
一実施形態では、本発明の診断又は予後診断方法は、体内の機能過程の三次元画像又はマップを作成する核医学医療画像化法である、ポジトロン放出断層撮影法(PET)を使用する。このシステムは、体内に導入されるポジトロン放出放射性同位体によって間接的に放出されるγ線対を、トレーサー分子、例えば特異的バイオマーカー結合分子により検出する。次いで、体内の放射性同位体標識トレーサーの画像を、コンピュータ解析によって再構成する。現代のスキャナでは、PETスキャンは、同じ機械で同時に患者に対して行われる、臓器等の構造基準を与えるX線CTスキャン(PET−CT)と組み合わされる。
【0079】
代替的な一実施形態では、本発明の診断又は予後診断方法において、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)画像化が使用され得る。SPECTは、複数の角度からの多重2D投影画像(projections)を得るためにガンマカメラを使用する。次いで、コンピュータを使用して、トモグラフィー再構成アルゴリズムを多重投影画像に適用し、3Dデータセットを得る。このデータセットを次に操作して、任意の選択した体軸に沿って薄片を示す。
【0080】
PET又はPET−CTにおいて使用される好ましい標識は、炭素−11(約20分)、窒素−13(約10分)、酸素−15(約2分)、及びフッ素−18(約110分)等の短寿命放射性同位体、又は適切な場合にはヨウ素−124(約4日間)等の中寿命放射性同位体である。
【0081】
本発明に包含される典型的なin vivo診断方法は以下の通りである:
a)上記マーカーに特異的に結合する同位体標識トレーサー分子を被験体に導入すること、
b)膵臓においてβ細胞に特異的に結合するトレーサー分子を、PET、PET−CT、又はSPECTを用いてin vivo可視化すること、
c)上記被験体におけるβ細胞塊を定量化すること、
d)工程c)において得られるβ細胞塊データと、健常被験体のβ細胞塊データとを比較すること、
d)工程c)において得られたβ細胞塊のレベルが、健常被験体のβ細胞塊のレベルと比較して低下している場合に、被験体を糖尿病であるか、又は糖尿病を患う危険性があると診断すると共に、工程c)において得られたβ細胞塊のレベルが、健常被験体のβ細胞塊のレベルと比較して上昇している場合に、被験体を高インスリン血症であるか、又は高インスリン血症を患う危険性があると診断すること。
【0082】
in vivo診断又は予後診断の方法は、1型真性糖尿病又は2型真性糖尿病、高インスリン血症、及びβ細胞に由来するインスリノーマのような膵臓の神経内分泌腫瘍の発生といった膵癌等のインスリン関連障害を診断するために使用することができる。
【0083】
インスリン関連障害を治療するうえで、膵島移植は選択肢の1つである。典型的には、特殊化した酵素を使用して、死亡したドナーの膵臓から膵島を取り出すエドモントンプロトコルが適用される。膵島は傷みやすいため、膵島を取り出した直後に移植が行なわれる。典型的には、患者は2つのドナー膵臓から抽出された膵島「等価物」を、体重1kg当たり少なくとも10000個与えられる。患者は多くの場合、インスリン非依存性を得るために2回の移植を必要とする。単一の提供膵臓から採取した膵島等価物をより少量しか使用しない移植もある。移植は多くの場合、放射線技師によって行われるが、放射線技師は上腹部から肝臓の門脈へのカテーテルの配置を誘導するためにX線及び超音波を使用する。次いで、膵島をカテーテルを介して肝臓にゆっくりと注入する。局所麻酔薬及び鎮痛剤を患者に与える。場合によっては、外科医は全身麻酔を用いた小切開によって移植を行ってもよい。
【0084】
かかるβ細胞移植治療の成功の鍵は、当然ながら移植に使用されるβ細胞調製物の純度である。本発明は、膵島移植に使用されるβ細胞を特異的に単離する方法、及び移植したβ細胞を追跡調査するためのツールを提供する。
【0085】
さらなる一実施形態では、本発明は、FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及びFXYD2−γ−cの群から選択される1つ又は複数のバイオマーカーを使用して、β細胞を特異的に可視化又は標識化することにより、膵β細胞を膵臓組織から単離及び/又は精製する方法を提供する。
【0086】
代替的には、本発明の方法は、機能的インスリン発現細胞を誘導するために幹細胞集団を特定する方法であって、
a)処理した該幹細胞を、FXYD2−γマーカーに特異的に指向性を有する標識結合分子でタグ付けする工程、及び
b)標識した幹細胞を、非標識細胞から潜在的β幹細胞上のタグによって単離し、それにより実質的に純粋なβ幹細胞調製物を得る、単離する工程を含む、方法を提供する。
【0087】
或る特定の実施形態では、本発明の方法は、
c)免疫組織化学を実行し、それによりβ幹細胞の数を特定すると共に、新たなβ細胞塊を確定する、実行する工程、及び
d)治療戦略を追跡調査すると共に、新たに形成されたβ細胞の量を検出する工程をさらに含み得る。
【0088】
上記の分離方法は、例えば本発明のバイオマーカーの1つ又は複数に指向性を有する標識結合分子の保持に基づく標準的分離技法を用いて、標識細胞を非標識細胞から分離することにより行うことができる。
【0089】
対象の細胞を小さな磁性粒子又は磁性ビーズでタグ付けすることの選択肢の1つは、本発明のバイオマーカーの1つに指向性を有する抗体、アプタマー、オリゴヌクレオチド、又は他の特異的に結合する薬剤若しくはリガンドを使用することである。このビーズ結合分子複合体は、膵臓細胞調製物においてβ細胞に指向性を有しており、例えば電磁場を用いることによってβ細胞を全膵臓細胞調製物から特異的に精製することができる。幾つかのシステムにおいては、試料はセパレータ装置内に入れた場合に磁場を発生するカラムによって処理され、標識細胞のみが保持される。
【0090】
他のシステムは、磁性セパレータの簡略版を提供する。カラム及びセパレータ装置の代わりに、これらのシステムは単純な磁石を用いて試験管内で標識細胞を直接保持し、一方で上清を抜き取る。これらのシステムの幾つかは陽性選択法又は陰性選択法において使用することができる。陰性選択又は富化選択とは、対象の細胞を標識しないままに不要な細胞を標識(捕捉)し得ることを意味する。磁性粒子は、Hammondsによるとフローサイトメトリーを妨げることも、細胞増殖を妨げることもないため、かかるシステムを用いて単離した細胞をさらに培養することができる。
【0091】
磁気分離は非常に強力であり、広範囲に適用可能なことが証明されており、細胞の生存能力を保持しつつ、標的細胞の70%の回収及び最大で98%の純度をもたらす場合もある。
【0092】
代替的には、四量体抗体複合体(TAC)に対する研究に基づく効率的な非磁性分離方法は、試料中の不要な細胞を結合させ、凝集塊を形成することにより機能する。標識化の後、試料をフィコール等の浮遊密度培地上に重層する。標識細胞を遠心分離して(with when)ペレット化し、一方で所望の非標識細胞を界面で回収した。この方法は迅速であり、得られた細胞は抗体で標識されておらず、非接触の状態である。
【0093】
これらの技法の多くは組み合わせると最も強力となる。しかしながら、当業者は特異的細胞型を選択的に精製する他の方法を知っているだろう。
【0094】
本発明の方法及びキットにおいて使用される「結合分子」という用語は、本発明のバイオマーカーの1つと特異的に結合又は相互作用し、本発明の方法及びキットにおいて使用することができる全ての好適な結合分子を指す。好適な結合因子の例は、抗体、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、ナノボディ、アフィボディ、抗体断片、アプタマー、フォトアプタマー、オリゴヌクレオチド、リポカリン、特異的相互作用小分子、分子インプリンティングポリマー(MIP)、DARPin、アンキリン、特異的相互作用タンパク質、ペプチド模倣体、生体模倣体又はペプチド、及びバイオマーカーの1つに特異的に結合する他の分子である。本発明のバイオマーカーの1つと結合するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、又は一本鎖抗体又はその断片は、本発明の方法及びキットに有用である。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体は、当該技術分野で既知の方法によって調製することができるが、多くの場合市販されている。
【0095】
本発明のバイオマーカーに特異的に結合するアプタマーは、いわゆるSELEX(すなわち指数関数的富化によるリガンドの系統的進化)を用いて得ることができる。Larry Gold及び共同研究者らによって開発され、米国特許第6,329,145号明細書に記載されているこのシステムにおいては、複数回の選択及び増幅を使用して、DNA又はRNA分子を選択した標的に対して高い特異性をもって選択することができる。近年、さらに高い特異性を有する通称(co-called)フォトアプタマーを設計する、より精密な方法がLarry Goldのグループによる米国特許第6,458,539号明細書に記載されている。
【0096】
相互作用タンパク質及び小分子等の結合因子を特定する方法も当該技術分野で知られている。例としてはツーハイブリッド解析、免疫沈降法等がある。
【0097】
また、本発明はFXYD2−γマーカーを発現するか、又は発現しない細胞若しくは細胞株を用いて、ペプチド又は小分子、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、ナノボディ、アフィボディ、抗体断片、アプタマー、フォトアプタマー、リポカリン、特異的相互作用小分子、分子インプリンティングポリマー(MIP)、DARPin、アンキリン、特異的相互作用タンパク質又はペプチド、及びバイオマーカーの1つに特異的に結合する他の分子等の結合分子を特定するツール及び方法も提供する。この目的で、本発明は、幾つかのFXYD2−γ−陽性細胞及び/又は細胞株(齧歯類膵島、ラットINS−1E、AR42J細胞、及びヒトのCAPAN−2細胞)、並びに1つのFXYD2−γ陰性細胞株(ヒトPANC−1細胞)を提供する。PET、PET−CT又はSPECT解析におけるβ細胞塊の可視化のための新たなトレーサー分子を特定するために、これらの細胞又は細胞株を使用して、FXYD2−γ−陽性細胞に特異的に結合するが、FXYD2−γ陰性細胞には特異的に結合しない結合因子又は化合物をスクリーニングすることができる。
【0098】
かかる態様の1つでは、本発明は、FXYD2−γ陽性細胞に特異的に結合する新たなトレーサー分子を特定する方法であって、
a)候補トレーサー分子をFXYD2−γ陽性細胞型又は細胞株と接触させると共に、候補トレーサー分子と細胞との相互作用を測定する工程、
b)候補トレーサー分子をFXYD2−γ陰性細胞型又は細胞株と接触させると共に、候補トレーサー分子と細胞との相互作用を測定する工程、及び
c)工程a)の細胞と結合するが、工程b)の細胞とは結合しないこれらの候補トレーサー分子をβ細胞塊トレーサー分子として保持する工程を含む、方法を提供する。上記方法の好ましい実施形態では、FXYD2−γ陽性細胞型又は細胞株は、齧歯類膵島、ラットINS−1E、AR42J細胞、及びヒトのCAPAN−2細胞から成る群から選択され、FXYD2−γ陰性細胞型又は細胞株はPANC−1である。
【0099】
本発明は、FXYD2−γ陽性細胞に特異的に結合する新たなトレーサー分子を特定するためのキットであって、一方がFXYD2−γ陽性細胞型又は細胞株であり、一方がFXYD2−γ陰性細胞型又は細胞株である2つの細胞型又は細胞株を含む、キットをさらに提供する。好ましい一実施形態では、FXYD2−γ陽性細胞型又は細胞株は、齧歯類膵島、ラットINS−1E、AR42J細胞、及びヒトのCAPAN−2細胞から成る群から選択され、FXYD2−γ陰性細胞型又は細胞株はPANC−1である。
【0100】
細胞株の使用に加えて、FXYD2−γバイオマーカーを標的として使用する当該技術分野で既知の生化学的結合アッセイも使用することができる。
【0101】
「標識」という用語は、PET、PET−CT又はSPECT解析に使用される全ての好適な同位体標識、磁性ビーズ又は常磁性ビーズ等の特異的抽出に適した標識、蛍光色素又は当該技術分野で既知の他の発光標識等のin vitro診断に適した標識を含む。
【0102】
本発明の方法又は使用又はキットにおいて述べられる「β細胞関連障害」という用語は、β細胞に関連する全ての障害、例えば1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、高インスリン血症、肥満、神経内分泌腫瘍、又はインスリノーマの発生を包含する。
【0103】
また、本発明のバイオマーカーは、生検材料又は細胞株由来の培養物から得られた、細胞培養物中のβ細胞の量又は特性を解析するin vitro方法にも使用することができる。本発明のβ細胞特異的マーカーはさらに、in vitroでβ細胞として分化させた改変幹細胞等の細胞の分化状態を特性化するためにも使用することができる。
【0104】
本発明の全ての実施形態において、「FXYD2−γ」という用語は、アイソフォームFXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及びFXYD2−γ−cを含む。
【0105】
実施例
本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0106】
実施例1:β細胞特異的細胞膜タンパク質を特定するための選択戦略
これらの実施例において使用される戦略を図1及び図2に示す。膵臓は、外分泌組織中に散在する、1%〜2%の小さな内分泌組織であるランゲルハンス島から構成される。膵外分泌部は、腺房細胞及び網状の管から成る。膵島は、インスリンを分泌するβ細胞、及び非β細胞、例えばグルカゴンを分泌するα細胞、膵臓ポリペプチドを産生するPP細胞、及びソマトスタチンを分泌するδ細胞を含有する。T1Dでは膵β細胞は自己免疫攻撃によって選択的に破壊される。また、T1Dよりも低いレベルではあるが、長期T2Dでもβ細胞の喪失が起こるという証拠がある。膵島及び膵β細胞に関する遺伝子発現データは、過去8年間に得られたものである。使用した方法は、マイクロアレイ解析及び大規模並列シグネチャー配列決定(発現した配列に由来するシグネチャーの配列決定に基づき、遺伝子発現を検出する手順)である。MPSSによって得られたデータは定量的であり(100万個当たりの転写産物)、アレイ解析(1つのセル当たり転写産物を3コピーまでしか検出することができない)よりも高感度である。β細胞の遺伝子発現プロファイルを得るために、2つの独立したヒト膵島試料に対してMPSSを行い、一方でFACSにより精製ラット初代β細胞及び非β細胞に対してマイクロアレイデータを得た。MPSSに使用したヒト膵島は高品質であった(2つの調製物のβ細胞の割合は53%及び59%であった)。得られたMPSSデータは、少なくとも5tpmのレベルで、試料1において5662個の遺伝子、及び試料2において5929個の遺伝子を示していた。遺伝子は、膵島におけるそのシグネチャー数が、最低レベル20tpmで、検査した他の32種の組織全体(膵臓を含む)の全シグネチャー数の80%以上である場合、膵島に対して80%以上特異的であると見なした。インスリンは平均レベルが126753tpmであり、そのリストの一番上にある。これは、ヒト膵島試料中のmRNA集団全体の13%である。上記の基準に従う膵島特異的な転写産物は、膵島において観察される発現レベルを、32種のヒト組織の公開されたMPSSデータセット(LICRのMPSSデータセット:http://mpss.licr.org/)と比較することによって得た。本発明では、膵島に対して比較的特異的な合計940個の遺伝子を検出したが、これらの遺伝子のうち324個は、ラット膵臓のβ細胞においてα細胞と比較してより高いレベルで発現される。TMHMMプログラムを用いて、膜貫通領域を有するタンパク質を特定し、44種のタンパク質を確保した。これらの候補を細胞膜位置に関して(文献解析、GO解析、及びIPA解析によって)さらに解析し、炎症状態で、すなわちサイトカイン又はウイルスへの曝露後に発現レベルを解析した(独自のマイクロアレイデータ)。GNF symatlasのウェブサイト(http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/)に基づき、T細胞/リンパ球におけるこれらの遺伝子の発現レベルも同様に検査した。マイクロアレイ解析のために、FACS選別膵島細胞を使用した。β細胞画分における初代β細胞の純度は90%であり、非β細胞画分は主にα細胞を含有していた(75%〜85%)。結果は、6190個〜6270個の遺伝子がラットのβ細胞、α細胞、及びINS−1細胞において発現されたことを示す(閾値平均シグナル強度=250、標的強度=1500)。非β細胞に対するβ細胞で発現した遺伝子の差次的発現解析によって、β細胞において富化される983個の遺伝子が得られた(倍富化(fold enrichment)≧2、FDR:5%)。972個の遺伝子が、β細胞において非β細胞と比較してより高度に発現された(倍富化≧2)。
【0107】
マイクロアレイによって得られた膵島特異的MPSSのリスト及びβ細胞特異的遺伝子のリストを、Ingenuityのパスウェイ解析ソフトウェアに導入した後、「未知」として割り当てられた細胞膜及びタンパク質を選択した。この手順によって、121種の細胞膜タンパク質及び249種の未知のタンパク質を得た。全膵臓と比べた膵島における発現レベルを比較し、膵島におけるグルコキナーゼの発現レベルが10tpm超であり、全膵臓に対し膵島において50倍超増幅された発現レベルを有する遺伝子を選択した。それらの発現レベルを32種の他の組織において確認した。この比較によって、55種の膵島特異的膜タンパク質が得られた。マイクロアレイデータを用いて、非β細胞よりもβ細胞において発現レベルが高いタンパク質を選択し、12個の非β細胞特異的遺伝子を特定した(データは示さない)。対照対サイトカイン(500u/mlのIFNγ+100u/mlのIL1β)への24時間の曝露下で、初代β細胞を用いて得られたマイクロアレイデータを比較することにより、サイトカインへの曝露後に誘導されるか、又は著しく阻害された遺伝子を除外した。Symatlasオープンリソース(http://symatlas.gnf.org/SymAtlas)を用いて、膵島炎の過程で膵島に存在するT細胞及び免疫系の他の細胞において高度に発現された遺伝子を除外した。全ての候補の文献解析を行い、内因性自己抗体がβ細胞画像化に使用されるトレーサーを妨げ得るため、自己抗原であると以前に特定されている候補を除外した。最終群の12種のβ細胞特異的膜タンパク質及び2種の新たな膵島特異的膜タンパク質を選択し、下記表1に示す。上記の戦略は図1に概略的に示される。
【0108】
表1:ISB(Seattle,USA)との共同研究において選択された候補のリスト
【表1】

【0109】
実施例2:選択されたバイオマーカーの膵島特異的発現の検証
A. マーカーFXYD2:
LICRのMPSSデータセットに由来する32種のヒト組織における発現と比較した、ヒト膵島において得られたMPSSデータ。5tpmを超える発現レベルのみを示す。
【0110】
A.1 導入:
Na,K−ATPアーゼのγ−サブユニット(FXYD2、ATP1G1、HOMG2、MGC12372)は、その力学的特性を変更することによってNa,K−ATPアーゼを調節する1回膜貫通型タンパク質である。γ−サブユニットは、組織特異的に発現される7つのFXYDタンパク質のファミリーに属する(Cornelius F et al, 2003の図1)。FXYD2は近位尿細管及び遠位尿細管、並びに腎臓のヘンレ係蹄の太い上行脚髄質において多量に発現される(Arystarkhova E et al 2002、Pihakaski-MaunsbachK et al 2006)。2つのスプライシング変異体(γ−a(配列番号6)及びγ−b(配列番号7))がラット及びヒトで検出されているが(Arystarkhova E et al 2005)、第3のスプライシング変異体γ−cはマウスでしか特性化されていない(Holstead Jones D et al, 2005)。近年、FXYD2のさらなるスプライシング変異体が、GenBankデータベースに寄託されており(NM_001127489、2747bp、145 AA=14.5kDa(配列番号8)、ヒトFXYD2−γ−cスプライシング変異体として指定されている。この新たなスプライシング変異体は、同一の21個のアミノ酸残基のアミノ末端を有するため、FXYD2−γ−aタンパク質の選択的スプライシング形態であると思われる(図2B)。興味深いことに、この新たなγ−c変異体(配列番号8)も、本発明者らによって作製された抗体SPY393により認識される。
【0111】
本発明者らは続いて、この新たなγ−c変異体がヒトのCAPAN2細胞及びヒトの膵島細胞において発現されるかを調査した。また、本発明者らは、SPY393抗体により一貫して検出された20kDのタンパク質の配列決定のために、SPY393F(ab)2−ビオチン結合因子及びstrept−Dynaビーズを用いたCAPAN2細胞での免疫沈降を使用した。
【0112】
本発明者らは続いて、新たなγ−c変異体に特異的に結合する抗体を作製した。
【0113】
3つのヒトFXYD2スプライシング変異体を特性化した。形態γ−a及びγ−bはN末端の8aaのみで異なる。γ−bペプチドについて、配列はラット、ヒト及びマウス間で保存されている。γ−aについては配列は保存されていない(図2参照)。この新たなスプライシング変異体は、同一の21個のアミノ酸残基のアミノ末端、タンパク質の中央の大きい挿入、及び異なるC末端を有するため、FXYD2−γ−aタンパク質の選択的スプライシング形態であると思われる。配列は配列番号8に示される。
【0114】
A.2 FXYD2の発現は膵島特異的である
FXYD2−γ−b:
この候補の検証を、Abnovaの全長γ−bスプライシング変異体に対する唯一の利用可能な市販のモノクローナル抗体(クローン1C3−B3)を用いて開始した。膵臓薄片及び腎臓薄片に対する免疫組織化学によって、腎臓におけるFXYD2−γ−bの存在を確認した(図3a)。膵臓におけるFXYD2の発現は、膵島、及び稀に外分泌組織の介在導管に限定される(図3b)。膵臓、より具体的には膵島におけるFXYD2の発現は全く示されなかった。
【0115】
ウエスタンブロット法によって解析したラット分散膵島において、Abnovaの抗体によってFXYD2について2つのバンドが弱く検出された(およそ19kDa及びおよそ6.4kDa、図4参照)。
【0116】
FXYD2−γ−a:
ヒトγ−aスプライシング変異体のみを解析するのに利用可能な抗体はないため、γ−a及びγ−bヒトFXYD2スプライシング変異体のN末端断片に対するウサギポリクローナル抗体を生成させた(Eurogentecとの共同研究)。
MTGLSMDGGGS+C(配列番号1)=γ−aペプチド1、
MTGLSMDGGGSPKGD(配列番号2)=γ−aペプチド2、
MTGLSMDGGGSPKGDVDPFYYDYETVRN(配列番号3)=γ−aペプチド3、
MDRWYLGGS+C(配列番号4)=γ−bペプチド、
Xxx(配列番号5)=γ−cペプチド
【0117】
この目的で、ペプチドごとに2匹のウサギに注射した。ウサギSPY393及びSPY394ポリクローナル抗体は、γ−aFXYD2ペプチドを認識する(SPY394もより少ない程度でγ−bFXYD2ペプチドを検出する)。SPY341抗体はγ−bFXYD2ペプチドを認識する。これらの抗体はラット、マウス、及びヒトの組織において有効であった。
【0118】
抗体産生に関して選択されたγ−bペプチドは、ヒト、ラット、及びマウスについて同様であるため、抗体SPY341及びSPY342はこれらの異なる種においてFXYD2を検出可能であるべきである。本発明のヒトγ−aペプチド(11AA)は、ラットγ−aペプチド(11AA)とは4AA異なる。マウスγ−aペプチド(15AA)は、選択されたヒトγ−aペプチドより長く、9AA異なる(図2A参照)。抗体を産生するために使用される、両方の選択されたペプチドのC末端部は同様であり、両方のペプチドの抗体検出をもたらすことができる。
【0119】
齧歯類(ラット又はマウス)における予想結果に関する生体内分布研究において、抗体SPY393を使用することができるかを検出するために、抗体をウエスタンブロット法で試験した。ラット全腎臓タンパク質(陽性対照と見なす)及びラット分散膵島細胞に対する、SPY393及びSPY394抗体を用いたウエスタンブロット法によって、およそ19kDaの特異的バンドが示された。このシグナルは、10倍オーバーロードのγ−aペプチドとのプレインキュベーションによって特異的に阻害された(図5A)。SPY341及びSPY394抗体を用いて、10倍オーバーロードのγ−bペプチドによって阻害され得る、約6.4kDaの非常に弱いシグナルを検出した(図5B)。SPY342は、γ−aペプチド又はγ−bペプチドのいずれかによって阻害され得る特異的結合を検出しなかった(図5C)。
【0120】
FXYD2−γ−aに対する抗体を産生するために使用される配列はヒトとマウスとで異なるため、種々のマウス組織を単離し、ウエスタンブロット法によってSPY393結合を解析した。解析した全ての組織のうち、マウス膵島のみが特異的FXYD2バンドを示した(図6参照)。
【0121】
ウサギポリクローナル抗体が、外分泌細胞への大きな結合(高いバックグラウンドレベルをもたらし得る)なく、膵島において特異的にFXYD2を検出するかを決定するために、抗体を正常ヒト膵臓に対する免疫組織化学によって試験した。SPY393抗体は膵外分泌部においてバックグラウンドなく、膵島を特異的に染色する。SPY394はFXYD2−γ−aを検出するが、染色はSPY393抗体を用いて観察される染色よりも強くはなく、ウエスタンブロット法において見られた結果が確認される(図7)。SPY341は膵島においてFXYD2−γ−bを特異的に検出するが、染色はSPY393において観察される染色よりも強くはない。抗体SPY342は膵臓を染色しなかった(結果は示さない)。
【0122】
ヒト膵島と比較した、他の組織におけるバイオマーカーの発現レベル
MPSSデータに基づくと、FXYD2発現は、他の組織において低い発現が検出されるのに対し、膵島、腎臓、及び唾液腺において特異的に検出される(下記表2参照)。副腎、骨髄、脳、下垂体、胎盤、前立腺、小腸、脊髄、甲状腺、気管、大腸、及び単球においては検出されなかった。MPSSデータ(表3参照)は、全膵臓と比べて膵島において500倍超のシグナル増幅を示す。膵島は全膵臓量の1%〜2%であるため、この候補は膵島特異的であるとして選択される。
【0123】
MPSSデータを確認するために、35種の異なるヒト組織に対して免疫組織化学を行った(組織マイクロアレイ(又はTMA)、結果は表2に示す)。これらのTMAを、市販の抗FXYD2抗体及び本発明者らのSPY393抗FXYD2抗体を用いて試験した。本発明者らのSPY393抗体による染色は膵臓の膵島においてのみ示され、他のヒト組織切片のいずれにおいても示されなかった。
【0124】
FXYD2−γ−c発現データ
免疫化に使用される配列番号3のペプチド
【0125】
表2:市販の抗FXYD2抗体(Abnova)と本発明のSPY−393抗FXYD2抗体との比較
【表2】

【0126】
表3:MPSSデータ:
【表3】

【0127】
A.3. FXYD2の発現は膵島においてβ細胞に限定される
他の組織におけるFXYD2の発現レベルは、膵島、腎臓、及びMOLT4細胞において発現を示すFXYD2 205674_x_atプローブセットに関するマイクロアレイSymatlasデータから得た(ウェブリンク:http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/参照、対応するMPSSデータに関しては表6を参照)。FXYD2発現がβ細胞において特異的に検出されることを検証するために、FXYD2に指向性を有するSPY393抗体、抗インスリン抗体(β細胞を検出する)、又は抗グルカゴン抗体(α細胞を検出する)を用いて解析した連続膵臓薄片(3μmの膵臓パラフィン切片)において免疫組織化学を行った(図8参照)。
【0128】
FXYD2がβ細胞において特異的に発現されることを検証するために、免疫蛍光(図9、並びに共局在率については表4及び表5を参照)。この目的で、抗ウサギIgG−TRITC標識(赤色)を付けたSPY393抗体を、グルカゴンに対するモノクローナル抗体(K79bB10、Sigma、図9a参照)と組み合わせて、又はインスリンに対するモノクローナル抗体(K36aC10、DBS、図9b参照)と組み合わせて使用した。マウスモノクローナル抗体は、FITC標識抗マウスIgG(緑色)によって検出された。グルカゴン発現α細胞とFXYD2との間に共局在性は見られなかったが(表4参照)、インスリン発現β細胞は全てのFXYD2と共局在化した(表5参照)。このことは膵β細胞におけるFXYD2−γ−aの優先的発現を示す。
【0129】
表4:グルカゴンとFXYD2−γ−aとの共局在率(図12a)
【表4】

【0130】
表5:インスリン及びFXYD2−γ−aに関する共局在率(図12b)
【表5】

【0131】
A.4. FXYD2の発現レベルは炎症状態において誘導されない
β細胞遺伝子発現バンクは、実験医学研究室において行われたマイクロアレイ実験結果を含有する、本発明者らによって作製されたオープンリソースである。マイクロアレイ発現値はヒトの膵島、ラット初代β細胞、及びINS−1E細胞において、対照と炎症状態(サイトカイン又はウイルスのいずれかへの曝露によって誘発された)とを比較して得た。マイクロアレイデータは、IL1β(50U/ml)及びIFNγ(1000U/ml)又はコクサッキーウイルス5B(感染効率30〜100、Ylipaasto P et al, 2005)のいずれかに48時間曝露した単離ヒト膵島に対して得た。ヒトデータセットの解析では、サイトカインに曝露した場合、FXYD2発現の2倍の減少が示され、この減少はCBV5に曝露した場合より低かった(表6参照)。これらのデータは、48時間のサイトカインへの曝露の後、FXYD2発現の2倍〜3倍の低下を示すMPSSデータを確認するものである。ラットマイクロアレイのプローブセットはスコアが低かったが、これはおそらくプローブセットの誤った選択のためである。
【0132】
表6:ヒト膵島におけるFXYD2発現レベルに対する炎症又はウイルス感染の影響
【表6】

【0133】
FXYD2のタンパク質レベルをINS−1E及びAR42J細胞において、対照条件下及びサイトカイン(IL1β+IFNγ)誘発条件下で、ウエスタンブロット法によって解析したが、FXYD2−γ−aにおける変化は検出されなかった(図16C及び図16D)。
【0134】
A.5. FXYD2は膵β細胞の膜及び細胞質ゾルで検出される
組織化学による解析によって、膜及び細胞質の両方でのFXYD2発現が示される(以前の図面及び図10を参照)。細胞膜を障害することなく(パラホルムアルデヒド及びトリトンX100を使用せずに)、ラット及びマウスの分散膵島に対して行った免疫細胞化は、細胞の膜上でFXYD2の検出を示した。
【0135】
図12に、FXYD2−γ−aの発現が、1型糖尿病患者(CO及びTELF(これらのコードは2人の患者を識別するものである)、1型糖尿病の診断からそれぞれ3日後及び5年後に死亡した)に由来する膵島において、正常膵臓(CTRL)と比較して大幅に減少することを示す。3μmの連続切片を採取して、SPY393抗体、抗インスリン抗体、又は抗グルカゴン抗体で染色した。TELF膵臓では、インスリン染色を基にβ細胞を検出することはできない。このことはFXYD2染色の消失と相関していた。CO膵臓では、インスリン染色を基にβ細胞を検出することはできないが、非常にかすかなFXYD2染色が残されていた(倍率1000×)。
【0136】
図13に、1型糖尿病患者に由来する膵島におけるFXYD2−γ−aの量を示す。1症例当たり20個のランゲルハンス島を定量化した(染色組織面積(%)(標識率LI)及び平均染色度)。上記図14に見られるように、TELF膵臓では、FXYD2染色は完全に消失しており、このことはインスリン染色により特定されるように、β細胞の消失と相関していた。CO膵臓においては、インスリンの染色は消失しており、このことはCTRLによる標識率(LI)と比較して、FXYD2−γ−aの染色の50倍の減少と相関していた。
【0137】
B. マーカーAlex及びXLas
B.1. 導入
XL−エキソンによってコードされる代替的遺伝子産物(Alex)及びグアニンヌクレオチド結合G(s)サブユニットαアイソフォームエキストララージ(extra large)(XLas)は、GNAS1遺伝子座によって代替的な第1エクソン及びプロモータを用いてコードされる2つのタンパク質である(Abramowitz J et al, 2004)。Gs−α及びXLasは異なるN末端ドメインを有するが、カルボキシ末端部は同一である。広範に発現されるGs−αとは異なり、XLasは限られた組織分布を有する。XLasは主に神経内分泌組織において見られ、下垂体において非常に高いレベルである(Kehlenbach RH et al, 1994、Pasolli H et al, 2000)。XLasは、クラスB副甲状腺ホルモン受容体1、CRF受容体1、b2−アドレナリン受容体、TSH受容体等の幾つかのGs共役受容体のシグナル伝達に関与するGsタンパク質である(Bastepe M et al, 2002)。
【0138】
XLasは細胞膜にも位置していた(Pasolli H et al, 2000)。Alexは主として細胞膜ラッフル(ruffles)と関連する、356アミノ酸の高プロリン細胞膜タンパク質である。AlexはXLasのエキストララージN末端領域と相互作用する。XLasと同様に、Alexも神経内分泌細胞において発現される(Klemke M et al, 2001)。
【0139】
B.2. Alex及びXLasは膵島において発現される
MPSSデータにより、膵島において全膵臓と比較した場合に1200倍に富化されたGNAS1遺伝子座の発現が示される。したがって、これら2つのタンパク質をタンパク質検証に選択した。
【0140】
ヒトタンパク質に利用可能な市販の抗体はなく、ラット及びヒトの配列は著しく異なるため、ウサギポリクローナル抗体を産生するために特異的ペプチド(Eurogentec)を選択した。
XLas:PAEEMETEPPHNEPI(配列番号9)
Alex:RREEKYPLRGTDPLP(配列番号10)
【0141】
ペプチドごとに2匹のウサギに注射した。ウサギポリクローナル抗体SPY343及びSPY344はXLasを標的とし、抗体SPY345及びSPY346はAlexを標的とする。ヒト及びラットの配列は大いに異なるため、ウエスタンブロット法において抗体を検証することができなかった。抗体は免疫組織化学によってヒト膵臓に対して検証した。ウサギポリクローナル抗体SPY343及びSPY344はどちらもヒトのパラフィン膵臓切片で、XLasを膵島において特異的に検出し、SPY344が最良の結果であった(図18参照、倍率は異なる)。
【0142】
ヒト組織マイクロアレイを行うことによる、膵臓の周辺組織と比べたヒト膵島における優先的発現を確認するさらなる検証が進められている。
【0143】
同様に、膵β細胞に対するXLas及びAlexの特異的位置を、抗インスリン抗体又は抗グルカゴン抗体を用いた共局在化を行うことによって解析する。
【0144】
B.3. 発現レベルは炎症状態で増加しない
β細胞遺伝子発現バンクは、実験医学研究室において行われたマイクロアレイ実験結果を含有する、本発明者らによって作製されたオープンリソースである。IL1β(50U/ml)及びIFNγ(1000U/ml)又はコクサッキーウイルス5B(感染効率30〜100、Ylipaasto P. et al, 2005)のいずれかに48時間曝露した単離ヒト膵島に対して行ったマイクロアレイデータの解析は、炎症状態でGNAS遺伝子座を示さなかった。これらの結果は以下のウェブリンクに見ることができる:
http://dil.t1dbase.org/page/GeneMore/display/?ug_id=Rn.127731
【0145】
炎症状態におけるXLas及びAlexのさらなる検証は、ヒトT1Dの膵臓切片において行った。
【0146】
C. マーカーVAT1:小胞アミン輸送タンパク質1ホモログ(Hs.514199)
VAT1はシナプス小胞において検出される膜タンパク質であり、神経終末における神経伝達物質の貯蔵及び放出の調節に関与する。VMAT1及びVMAT2の発現は、膵内分泌部及び膵臓腫瘍において報告されている(Anlauf et al, 2003)。VMAT1に対するウサギポリクローナル抗体は、内分泌導管細胞における発現を示した。しかしながら、この情報は本発者らのMPSSデータにおいて得られた情報(全膵臓における発現は見られず、膵島において507tpmの発現が見られた)と対立する。精製ラット初代β細胞では発現レベルは高く、β細胞において2倍増加する。炎症状態への曝露はVAT1発現を減少させる。
【0147】
C1. 独自の結果:ヒト膵島に対するMPSSデータ、及び非β細胞と比べたラット初代β細胞に対して得られたマイクロアレイデータ:
【0148】
【表7】

【0149】
C2. VAT1の発現は炎症状態において誘導されない:
以下のウェブリンクの結果を参照されたい:
http://dil.t1dbase.org/page/GeneMore/display/?ug_id=Rn.9118
【0150】
C3. β細胞遺伝子バンク情報:
遺伝子は脊髄、肺、及び膵β細胞において高度に発現される:以下のウェブリンクを参照されたい:
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=10493
【0151】
C4. GNF Symatlas情報:http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/(図16)
【0152】
D. マーカーCDIPT:CDP−ジアシルグリセロール−イノシトール3−ホスファチジルトランスフェラーゼ(Hs.121549)
CDIPT(MGC1328、PIS、PIS1、Pis、Pis1)は、CDP−ジアシルグリセロールからのホスファチジルイノシトールの形成を触媒する(Saito S et al, 1998)。CDIPTは脳及び網膜において発現される。膵島では分泌顆粒膜において富化される(Rana RS et al, 1986)。本発明者らのMPSSデータでは、その発現は全膵臓と比べて膵島で富化されている。ラット膵β細胞における発現レベルは高く、非β細胞と比べて2倍富化されている。炎症状態では、CDIPT発現はヒト膵島に対するMPSSデータ及びヒト膵島におけるマイクロアレイデータの両方において減少している。
【0153】
D1. 独自の結果:ヒト膵島に対するMPSSデータ、及び非β細胞と比べたラット初代β細胞に対して得られたマイクロアレイデータ:
【0154】
【表8】

【0155】
D2. CDIPTの発現は炎症状態において誘導されない:
β細胞遺伝子バンクの結果を参照されたい:
(http://dil.t1dbase.org/page/GeneMore/display/?ug_id=Rn.10598)
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=10423
【0156】
D3. GNF symatlas情報:http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/(図17)
【0157】
E. マーカーBAIAP3:BAI1結合タンパク質3(Hs.458427)
BAIAP3(BAP3)は、エキソサイトーシスの調節に関係するタンパク質であり(Palmer RE et al. 2002)、線維形成性小円形細胞腫瘍(DSRCT)における新規の転写因子EWS−WT1により誘発されることが報告されている。BAIAP3は膵島において発現されるとは報告されていない。ラットマイクロアレイに利用可能なプローブセットはない。ヒト膵島では、その発現は全膵臓と比べて膵島において増加しており、ヒト膵島において得られたマイクロアレイデータでは、発現レベルはグルコキナーゼの範囲である。サイトカインへの曝露は、ヒト膵島におけるBAIAP3発現を減少させる(MPSSデータ)。
【0158】
【表9】

【0159】
E1. 独自のマイクロアレイ情報:BAIAP3は炎症によって影響されず、β細胞において発現されるが、膵臓の周辺組織においては発現されない。
以下のウェブリンクを参照されたい:http://dil.t1dbase.org/page/GeneMore/display/?ug_id=Rn.201777
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=8938
【0160】
E2. GNF symatlas情報:GNF symatlasのプローブセットは、脳及び下垂体において高い発現を示した。http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/(図18)
【0161】
F. マーカーCLSTN1:カルシンテニン1(Hs.29665)
CLSTN1は、細胞質カルシウム結合ドメインを有するシナプス後1回膜貫通1型膜タンパク質である(Vogt L. et al, 2001)。カルシンテニン−1は輸送小胞(vesicularcargo)をキネシン−1に結合する(Koneca A et al, 2006)。電子顕微鏡法によると、カルシンテニンタンパク質ファミリーは興奮性中枢神経系(CNS)シナプスのシナプス後膜に局在化していた。in situハイブリダイゼーション解析によって、CLSTN1は中枢神経系のほとんどのニューロンにおいて豊富であることが示された(Hintsch G. et al, 2002)。本発明者らのMPSSデータでは、CLSTN1発現は膵臓と比べて膵島において富化されており、ラット初代β細胞において高度に発現され、非β細胞と比べてβ細胞において2.5倍富化される。ヒト膵島の炎症状態への曝露によって、ヒト膵島においてCLSTN1発現が減少する(MPSSデータ)。
【0162】
【表10】

【0163】
F1. 独自のマイクロアレイ情報:
CLSTN1発現は炎症によって影響されない。以下のウェブリンクを参照されたい:http://dil.t1dbase.org/page/GeneMore/display/?ug_id=Rn.99876
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=22883
【0164】
F2. GNF symatlas情報:http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/(図19)
【0165】
G. マーカーSLC7A5:溶質輸送体ファミリー7
SLC7A5(陽イオン性アミノ酸輸送体、y+系、メンバー5又はLAT1)は、分岐又は芳香族側鎖を有する大きな中性アミノ酸の移入に重要な細胞膜輸送体である。本発明者らのMPSSデータでは、その発現は全膵臓と比べてヒトの膵島において富化される。SLC7A5はラット膵β細胞において高度に発現され、非β細胞と比較してβ細胞において2倍超増加する。その発現はサイトカインに曝露したラット初代β細胞においては誘導されない。サイトカインへのヒト膵島の曝露はLAT1発現を減少させる(MPSSデータ)。
【0166】
【表11】

【0167】
G1. SLC7A5発現は炎症によって影響されない。以下のウェブリンクを参照されたい:http://dil.t1dbase.org/page/GeneMore/display/?ug_id=Rn.32261
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=8140
【0168】
G2. Symatlas情報(http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/):発現は全膵臓よりも膵島において高く、限定された細胞集団において見られる。(図20)
【0169】
H. マーカーCTTN:コルタクチン(Hs.632133)
コルタクチン(CTTN、EMS1)は動的アクチンネットワークの調節因子である。コルタクチンは膜内に位置し、小胞輸送及び細胞間接着及び細胞拡散に関与する。近年、頭頸部腫瘍の扁平上皮細胞癌細胞において、コルタクチンの過剰発現はEGFRキナーゼ阻害剤ゲフィチニブの抵抗性を増進させることが示されている(Timpson P et al, 2007)。コルタクチンは膵島において発現されるとは報告されていない。本発明者らのMPSSデータでは、CTTNは全膵臓と比べて膵島において富化される。初代β細胞における発現レベルは高く、非β細胞と比べてβ細胞において3倍近く富化される。ヒト膵島の炎症状態への曝露は、MPSSデータ及びマイクロアレイデータの両方においてCTTN発現を減少させる。
【0170】
【表12】

【0171】
H1. CTTNの発現は炎症によって誘導されない
以下のウェブリンクを参照されたい:http://dil.t1dbase.org/page/GeneMore/display/?ug_id=Rn.107869
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=2017
【0172】
H2. GNF symatlas情報(http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/):Symatlasに見られる情報は、CTTNが膵島において富化され、プローブセットのスコアが低い(プローブセットの誤った選択のためであり得る)という本発明者らのデータを確認するものではない。
【0173】
I. マーカーLYPD1:LY6/PLAUR:ドメイン含有1(Hs.651252)
LYPD1(又はPHTS推定Hela腫瘍抑制因子)アンチセンス遺伝子は、中枢神経系全体で高度に発現される(Egerod KL et al, 2007)。LYPD1は、GPR39遺伝子の3’エクソンと重複することが報告されている。LYPD1は、N末端シグナル配列及び白血球抗原−6(Ly6)/uPAR(PLAUR、グリコシルホスファチジルイノシトール結合細胞表面糖タンパク質に特徴的なドメイン)を含有する。LYPD1の過剰発現は、Hela細胞における細胞生存率を低下させる(Yu D. et al, 2006)。本発明者らのMPSSデータでは、LYPD1は全膵臓と比べて膵島において富化される。ラット初代β細胞における発現レベルは高くないが、非β細胞と比べてβ細胞において10倍超富化される。
【0174】
【表13】

【0175】
I1. β細胞遺伝子バンク情報:
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=72585
【0176】
J. マーカーANXA7:アネキシンA7(Hs.631827);
アネキシンA7(Anx7)(又はシネキシン)は、膜と融合するが、電位依存性カルシウムチャネルとして働くことのできるカルシウム依存性膜結合タンパク質である(Caohuy H et al, 1996)。Anx7は、マウスランゲルハンス島における遺伝子発現の栄養制御に必要とされる(Srivastava M et al, 1999 and 2002)。ヌル表現型(nullphenotype)は胎生期10日目に致死であった。ヘテロ接合マウスは生存可能且つ繁殖可能であったが、インスリン分泌異常及び単離した膵島内のインスリン含量増加を示した。これらのマウスは、膵島におけるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)受容体機能の著しい低下を有する。種々のスプライシング変異体が組織特異的発現によって特性化されている(Magendzo, K et al, 1991)。アネキシン7は脳の小胞体ストアからカルシウムを動員する(Watson WD. Et al, 2004)。Anx7は全膵臓と比べて膵島において富化される。ラット初代β細胞では、Anx7は高度に発現され、β細胞においてα細胞と比べて富化される。サイトカインへの曝露はヒト膵島においてANXA7発現を増加させない(MPSSデータ)。
【0177】
J1. 本発明者らの発現解析:
【0178】
【表14】

【0179】
J2. 本発明者らのβ細胞遺伝子バンク情報:
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=310
【0180】
J3. GNF symatlasプローブはヒトにおいて低い発現レベルをもたらし、考慮に入れなかった。
【0181】
K. マーカーDMBT1:悪性脳腫瘍1において欠損している(Hs.279611)
肺サーファクタントタンパク質D(surfactant pulmonary-associated protein D)結合タンパク質とも呼ばれるDMBT1(GP340、muclin、Crpd)は、スカベンジャー受容体スーパーファミリーの新規のメンバーである(Holmskov et al 1997)。DMBT1遺伝子の突然変異は、ヒト星細胞グリオーマにおいて報告されている(Mollenhauer, J. et al, 1997及びMueller W. etal, 2002)。種々のアイソフォームが組織特異的発現を有し、肺胞組織及びマクロファージ組織において発現が報告されている。DMBT1発現の喪失又は低下が食道癌、胃癌、肺癌、及び大腸癌において見られた。本発明者らのMPSSデータでは、DMBT1は全膵臓と比べて膵島において富化される。ラット初代β細胞における発現レベルは高くないが、非β細胞と比べてβ細胞において2倍超富化される。サイトカインへのヒト膵島の曝露は、DMBT1発現を減少させる(MPSSデータ)。
【0182】
K1. 本発明の発現解析MPSSデータ:
【0183】
【表15】

【0184】
K2. 独自のマイクロアレイ情報:DMBT1発現については以下のウェブリンクを参照されたい:
http://dil.t1dbase.org/page/GeneMore/display/?ug_id=Rn.10107
http://dil.t1dbase.org/page/GeneMore/display/?ug_id=Rn.10107
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=1755
【0185】
L. マーカーKIAA1543:独立行政法人理化学研究所のcDNA 2310057J16遺伝子(Hs.17686)
KIAA1543はヒト脳のcDNAライブラリからクローニングされたが(Nagase T. et al, 2000)、膵臓においては特定されていない。その機能は未知である。本発明者らのMPSSデータでは、その発現は全膵臓と比べて膵島において富化される。ヒト及びラットのマイクロアレイに対して利用可能なプローブセットはない。サイトカインへのヒト膵島の曝露はその発現に影響を与えない(MPSSデータ)。
【0186】
【表16】

【0187】
L1. β細胞遺伝子バンク情報:
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=57662
【0188】
M. マーカーSLC7A8:溶質輸送体ファミリー7(陽イオン性アミノ酸輸送体、y+系)、メンバー8(Hs.632348)
SLC7A8又はLAT2(又はT細胞活性化リンカーファミリーのメンバー2(非T細胞活性化リンカー))(ウィリアムズ・ビューレン症候群染色体領域15タンパク質)は、N末端及びC末端が細胞質内にある12個の膜貫通ドメインを有する535アミノ酸のタンパク質である。SLC7A8と4F2重鎖との同時発現は、SLC7A8を細胞膜に送り、小さな及び大きな双性イオンアミノ酸に対し広い特異性をもってアミノ酸輸送活性を誘導する(Pineda, M et al, 1999)。腎臓において最も高い発現が報告されており、ドーパミン前駆体L−ジヒドロキシフェニルアラニンはLAT2を介して輸送される(Quinones H. et al, 2004)。腎臓LAT1及びLAT2の過剰発現は、不死化腎近位尿細管細胞におけるL−DOPAの取り込みを増大する(Pinho LJ. et al, 2003 and 2004)。LAT2の発現は全膵臓と比べて膵島において富化される(MPSSデータ)。ラット初代β細胞における発現レベルは高く、非β細胞と比べてβ細胞において2倍増加する。
【0189】
M1. 独自のMPSSヒトデータ発現解析:
【0190】
【表17】

【0191】
M2. β細胞遺伝子発現情報:発現は腎臓及び膵島において最も高い。
http://dil.t1dbase.org/page/GeneOverview/display/?gene_id=23428
【0192】
M3. Symatlas情報:http://symatlas.gnf.org/SymAtlas/(図21)
【0193】
結論としては、12種のβ細胞特異的細胞膜タンパク質及び2種の新たな膵島特異的細胞膜タンパク質の群が特定された。上位の3つ(FXYD2、Alex、及びXLas)を、検証戦略を策定するために選択した。3つの候補は全て膵島において特異的に富化され、膵臓内で膵島に特異的に位置していた。FXYD2のみが膵β細胞において発現され、細胞膜内で検出される。3つの候補は全て炎症状態で誘発されない。
【0194】
実施例3:2人の1型糖尿病性患者の膵臓におけるFXYD発現の顕著な減少の確認
FXYD2−γ−aの発現は、1型糖尿病患者(CO及びTELF(これらのコードは2人の患者を識別するものである)、1型糖尿病の診断からそれぞれ3日後及び5年後に死亡した)に由来する膵島において、正常膵臓(CTRL)と比較して大幅に減少する。3μmの連続切片を採取して、SPY393抗体、抗インスリン抗体、又は抗グルカゴン抗体で染色した。TELF膵臓では、インスリン染色を基にβ細胞を検出することはできない。このことはFXYD2染色の消失と相関していた。CO膵臓では、インスリン染色を基にβ細胞を検出することはできないが、非常にかすかなFXYD2染色が残されていた(図12参照、倍率1000×)。
【0195】
図13は1型糖尿病患者に由来する膵島におけるFXYD2−γ−aの定量化を示す。1症例当たり20個のランゲルハンス島を定量化した(染色組織面積(%)(標識率LI)及び平均染色度)。上記図11に見られるように、TELF膵臓では、FXYD2染色は完全に消失しており、このことはインスリン染色により特定されるように、β細胞の消失と相関していた。CO膵臓においては、インスリンの染色は消失しており、このことはCTRLによる標識率(LI)と比較して、FXYD2−γ−aの染色の50倍の減少と相関していた。
【0196】
図14は、STZ処理アカゲザルにおけるFXYD2−γ−a発現の減少がβ細胞の喪失と相関することを示す。対照(A〜C、CT)及びSTZ処理アカゲザル(D〜F、霊長類1及びG〜I、霊長類2)に由来する膵臓の連続切片を、抗グルカゴン抗体(左欄A、D、G)、抗インスリン抗体(中央欄B、E、H)、又はSPY393ポリクローナル抗FXYD2−γ−a(右欄C、F、I)を用いて解析した。倍率400×。
【0197】
また、STZ誘発糖尿病アカゲザルの膵臓におけるインスリン及びFXYD2−γ−a発現の有意な減少を実証することができた(図15)。対照(CT)及びSTZ誘発糖尿病アカゲザル(霊長類P1〜P6)に由来する膵臓切片を解析した。1症例当たり6個の膵島を、試料の同一性を知らない3人の観察者によって計数した。グルカゴン陽性細胞、インスリン陽性細胞、及びFXYD2−γ−a陽性細胞を、1個の膵島当たりの相対的割合として算出した。CTにおける値を100%と見なした。STZ処理アカゲザル及び非処理対照(CT)においてインスリン、グルカゴン、及びFXYD2−γ−aについて染色された細胞の割合を、下記表7.に示す。対照霊長類(CT)の膵臓切片及びSTZ誘発糖尿病アカゲザル(霊長類1〜6)の膵臓を解析した。β細胞の数を全膵臓に占める細胞の割合として計数した。1症例当たり6個の膵島を、試料の同一性を知らない3人の観察者によって計数した。グルカゴン陽性細胞、インスリン陽性細胞、及びSPY393陽性細胞を、1個の膵島当たりの陽性細胞の相対的割合として算出した。
【0198】
表7.STZ処理アカゲザル及び非処理対照(CT)においてインスリン、グルカゴン、及びFXYD2−γ−aについて染色された細胞の割合
【表18】

【0199】
実施例4:選択された候補が膵β細胞塊画像化に使用可能なことを確認するための齧歯類における生体内分布研究
SPY393抗体は、生体内分布研究を行うために任意の放射性トレーサーで標識することができる。この特定の実施例においては124Iを使用した。FXYD2に対するモノクローナル抗体を開発することもでき、検証した後、この抗体及びその断片を同様に生体内分布研究に使用することができる。モノクローナル抗体を作製する方法は当該技術分野で既知である。
【0200】
アカゲザルにおける第1の生体内分布研究の結果を図17に示す。動物に124Iで標識したSPY393抗体を注射した。注射後の種々の時点でPETスキャンを行った。下記表8.にもこの結果を示す。図面から明らかなように、膵臓は実際に標的とされているが(1日目、図17A及び2日目、図17B)、シグナルは胃内容物の染色によって幾分隠れている(図17C参照)。このバックグラウンドを減少させるために新たなスキャンを行う。
【0201】
これらの第1実験はどの症例においても、FXYD2−γマーカーが哺乳類の体内でのβ細胞塊の決定及び可視化に対する非常に有望な標的であることを確かに示す。
【0202】
表8.Max Lonneux/F. Jamar及びDenisDufraneとのUCL共同研究で行われた実験。SPY393はI124で標識した
【表19】

【0203】
実施例5:FXYD2−γ−陽性細胞に特異的に結合する小分子の特定
別の態様では、本発明はFXYD2−γ陽性細胞に特異的に結合する小分子を特定する方法を提供する。かかる小分子(例えばペプチド、化学物質等)は、その後β細胞塊を可視化するためのトレーサーとして使用することができる。この目的で、本発明者らはFXYD2バイオマーカーを発現するか又は発現しないヒト細胞株を特定した。
【0204】
図16に示すように、FXYD2−γ−a及びFXYD2−γ−bアイソフォームの発現は、齧歯類膵島、ラットINS−1E、AR42J細胞、及びヒトのCAPAN−2細胞において示され得るが、ヒトPANC−1細胞においては示されない。FXYD2−γ−a発現はサイトカインへの24時間の曝露の後も変化せず、β細胞マーカーを選択するために使用される方法が、実際にサイトカインの発現に非依存的であることが確認される。
A FXYD2−γ−a及びFXYD2−γ−bスプライシング変異体がマウス膵島において検出された。FXYD2−γ−aアイソフォーム(レーン1)、FXYD2−γ−bアイソフォーム(レーン2)、及びFXYD2−γ−cアイソフォーム(レーン3)を検出するためにプライマーを使用した。マーカー(M、レーン4)。重要なことに、γ−c変異体は検出されなかった。
B ポリクローナル抗FXYD2−γ−a抗体(SPY393)は、FXYD2−γ−aアイソフォームのみを認識する。ラット分散膵島細胞(レーン3、レーン5)及びラット腎臓(レーン1、レーン2、レーン4、レーン6)を解析した。レーン1:FXYD2−γ−bブロッキングペプチドとのSPY393、レーン2:非特異的ブロッキングペプチドとのSPY393、レーン3及びレーン4:FXYD2−γ−aブロッキングペプチドとのSPY393、レーン5及びレーン6:ブロッキングペプチドを用いないSPY393。
C ウエスタンブロット解析を、CAPAN−2細胞(レーン1)、PANC−1細胞(レーン2)、AD293細胞(レーン3)、INS−1E細胞(レーン4)、及び分散ラット膵島対照(レーン5、レーン8)、及びサイトカインに24時間曝露した対照(レーン6、レーン9)、マーカー(レーン7)、ラット腎臓陽性対照(レーン10)の全細胞抽出物に対して行った。下の矢印はSPY393により検出されたFXYD2−γ−a発現を指し、上の矢印はポリクローナルウサギ抗β−アクチンを用いて検出されたβ−アクチンの発現を指す。
D ウエスタンブロット分析を、対照条件(レーン1)、又はIL1β(レーン2)、IL1β+IFNγ(レーン3)、IFNγのみ(レーン4)に24時間曝露したINS1E細胞の全細胞抽出物、及び同様に対照条件(レーン5)、又はIL1β(レーン6)、IL1β+IFNγ(レーン7)、IFNγのみ(レーン8)に24時間曝露したAR42J細胞の全細胞抽出物、マーカー(レーン9)、及びラット腎臓全細胞抽出物(レーン10)に対して行った。下の矢印はSPY393により検出されたFXYD2−γ−a発現を指し、上の矢印はポリクローナルウサギ抗β−アクチンを用いて検出されたβ−アクチンの発現を指す。ブロットは3回、4回の独立実験の代表的なものである。
【0205】
SPY1バイオマーカーを発現する及び発現しない2つの別個の細胞株又は細胞型を用いることによって、SPY1バイオマーカーに特異的に結合し、例えばPET、PET−CT又はSPECT解析に対するトレーサーとして有用な小分子の特定が可能となる。SPY1陰性細胞ではなく、SPY1陽性細胞との結合に特異的な小分子をスクリーンニングする手段は、当該技術分野で既知である。
【0206】
例えば、FXYD2に結合するペプチドを特定するためにファージディスプレイ実験を行い、これらのペプチドを標識して生体内分布解析を行うのに使用する。代替的には、化学物質ライブラリをFXYD2に特異的に結合する化合物に関してスクリーニングし、この化合物を標識して生体内分布解析を行うのに使用する。また、小さな抗体断片「ナノボディ」(Ablynx NV)ライブラリ、ヒト化一本鎖Fvライブラリをスクリーニングしてもよい。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵β細胞塊を特異的に測定するための、FXYD2−γアイソフォームから選択されるマーカーの使用。
【請求項2】
膵β細胞塊を測定する方法であって、
a)FXYD2−γアイソフォームに特異的に結合する標識分子を用いて、試料中の該β細胞を可視化する工程、及び
b)標識されたβ細胞の量を定量化する工程を含む、方法。
【請求項3】
膵β細胞関連障害のin vitro診断及びin vivo診断のための診断用組成物の調製における、FXYD2−γアイソフォームに特異的に結合する結合分子の使用。
【請求項4】
β細胞関連障害のin vivo診断を行う方法であって、
a)FXYD2−γアイソフォームに特異的に結合する同位体標識トレーサー分子を被験体に導入する工程、
b)膵臓中のβ細胞集団に特異的に位置する該トレーサー分子を、PET、PET−CT、SPECT、又はMRIを用いてin vivoで可視化する工程、
c)前記被験体における該β細胞の量を定量化する工程、
d)工程c)において得られたβ細胞塊のデータを健常被験体のβ細胞塊のデータ、又は同じ被験体の以前の分析のβ細胞塊のデータと比較する工程、及び
e)工程c)において得られたβ細胞塊のレベルが、健常被験体のβ細胞塊のレベルと比較して低下している場合に、該被験体を糖尿病であるか、又は糖尿病を患う危険性があると診断すると共に、工程c)において得られたβ細胞塊のレベルが、健常被験体のβ細胞塊のレベル、又は同じ被験体の以前の分析のβ細胞塊のレベルと比較して上昇している場合に、該被験体を高インスリン血症であるか、又は高インスリン血症を患う危険性があると診断する工程を含む、方法。
【請求項5】
該β細胞関連障害が1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、高インスリン血症、又は膵癌である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項6】
被験体においてβ細胞塊を特異的に測定するか、及び/又はβ細胞関連障害を診断するか、及び/又はβ細胞を精製するためのキットであって、
a)バイオマーカーFXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b及び/又はFXYD2−γ−cと結合する標識分子を含む、キット。
【請求項7】
該結合分子が、前記バイオマーカーと特異的に結合する、特異抗体若しくはその断片、ナノボディ、アフィボディ、一本鎖抗体、アプタマー、フォトアプタマー、小分子、相互作用パートナー、同位体標識トレーサー、又はリガンドである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法、使用又はキット。
【請求項8】
該抗体がFXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b及び/又はFXYD2−γ−cバイオマーカーに指向性を有する、請求項7に記載の方法、使用又はキット。
【請求項9】
該抗体が、配列番号1〜配列番号5によって規定されるペプチドのいずれか1つに、より特異的に指向性を有する、請求項8に記載の方法、使用又はキット。
【請求項10】
被験体におけるβ細胞移植の成功を追跡調査する方法であって、
a)該被験体にβ細胞を移植した後一定期間内の該被験体におけるβ細胞の量を測定する工程、及び
b)該β細胞塊を経時的に比較することにより該移植の成功を決定する工程を含む、方法。
【請求項11】
β細胞を他の膵非β細胞から精製又は単離する方法であって、
a)該β細胞を、FXYD2−γアイソフォームに特異的に指向性を有する標識結合分子でタグ付けする工程、及び
b)標識された該β細胞を、非標識細胞から該β細胞上のタグによって単離し、それにより実質的に純粋なβ細胞調製物を得る工程を含む、方法。
【請求項12】
β細胞の再生を特定する方法であって、
a)β細胞を、FXYD2−γアイソフォームに特異的に指向性を有する標識結合分子でタグ付けする工程、
b)標識された該β細胞を、非標識細胞から該β細胞上のタグによって単離し、それにより実質的に純粋な再生β細胞調製物を得る工程、
c)免疫組織化学を実行し、それにより新たに再生されたβ細胞の数を特定すると共に、新たなβ細胞塊を確定する工程、及び
d)治療戦略を追跡調査すると共に、β細胞塊の回復を検出する工程を含む、方法。
【請求項13】
該タグが磁性ビーズ、常磁性ビーズであり、β細胞塊がMRI(核磁気共鳴画像法)によって測定され得る、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
機能的インスリン発現細胞を誘導するために幹細胞集団を特定する方法であって、
a)処理した該幹細胞を、FXYD2−γアイソフォームに特異的に指向性を有する標識結合分子でタグ付けする工程、及び
b)標識した該幹細胞を、非標識細胞から潜在的β幹細胞上のタグによって単離し、それにより実質的に純粋なβ幹細胞調製物を得る工程を含む、方法。
【請求項15】
c)免疫組織化学を実行し、それによりβ幹細胞の数を特定すると共に、新たなβ細胞塊を確定する工程、及び
d)治療戦略を追跡調査すると共に、新たに形成されたβ細胞の量を検出する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
膵β細胞に対する特異的バイオマーカーを特定する方法であって、かかるマーカーを以下の5つの基準:
a)全ヒト膵臓と比べてヒト膵島において50倍〜100倍超富化されていること、
b)精製ラットβ細胞において精製ラット非β細胞と比較して富化されており、比較的β細胞特異的となっていること、
c)グルコキナーゼと同じか、又はそれよりも高いレベルで発現されること、
d)細胞膜中に位置し、特異的抗体又はペプチドによる標的化に使用することができること、及び
e)選択した遺伝子/タンパク質の発現レベルが炎症時に変化していないことに基づき選択することを含む、方法。
【請求項17】
得られる該発現データが、MPSS及び/又は遺伝子発現(mRNA)マイクロアレイ技術に由来するものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
FXYD2−γ陽性細胞に特異的に結合する新たなトレーサー分子を特定する方法であって、
a)候補トレーサー分子をFXYD2−γ陽性細胞型又は細胞株と接触させると共に、該候補トレーサー分子と該細胞との相互作用を測定する工程、
b)該候補トレーサー分子をFXYD2−γ陰性細胞型又は細胞株と接触させると共に、該候補トレーサー分子と該細胞との相互作用を測定する工程、及び
c)工程a)の該細胞と結合するが、工程b)の該細胞とは結合しない候補トレーサー分子をβ細胞塊トレーサー分子として保持する工程を含む、方法。
【請求項19】
該FXYD2−γ陽性細胞型又は細胞株が、齧歯類膵島、ラットINS−1E、AR42J細胞、及びヒトのCAPAN−2細胞から成る群から選択され、且つ該FXYD2−γ陰性細胞型又は細胞株がPANC−1である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
FXYD2−γ陽性細胞に特異的に結合する新たなトレーサー分子を特定するためのキットであって、一方がFXYD2−γ陽性細胞型又は細胞株であり、一方がFXYD2−γ陰性細胞型又は細胞株である2つの細胞型又は細胞株を含む、キット。
【請求項21】
該FXYD2−γ陽性細胞型又は細胞株が、齧歯類膵島、ラットINS−1E、AR42J細胞、及びヒトのCAPAN−2細胞から成る群から選択され、且つ該FXYD2−γ陰性細胞型又は細胞株がPANC−1である、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
FXYD2−γ陽性細胞に特異的に結合する新たなトレーサー分子を特定する方法であって、
候補トレーサー分子をFXYD2−γ分子と接触させると共に、該候補トレーサー分子と該FXYD2−γ分子との相互作用を測定する工程、及び
工程a)の該FXYD2−γ分子に結合する候補トレーサー分子を、β細胞塊トレーサー分子として保持する工程を含む、方法。
【請求項23】
該FXYD2−γアイソフォームが、FXYD2−γ−a、FXYD2−γ−b、及びFXYD2−γ−cから成る群から選択される、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法、使用、又はキット。
【請求項24】
該FXYD2−γアイソフォームがFXYD2−γ−aである、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法、使用、又はキット。
【請求項25】
膵β細胞塊を特異的に測定するため、又は請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法、使用、又はキットに使用するための、FXYD2−γ、GNAS−XLas、GNAS−Alex、CDIPT、VAT1、CLSTN1、SLC7A5、CTTN、BAIAP3、LYPD1、ANXA7、DMBT1、KIAA1543、及びSLC7A8から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−515071(P2011−515071A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546352(P2010−546352)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051721
【国際公開番号】WO2009/101181
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(507338138)
【出願人】(510221401)
【出願人】(510221412)インスティテュート フォー システムズ バイオロジー (1)
【Fターム(参考)】