説明

μ−オキソ架橋−ホウ素サブフタロシアニン二量体を含有する光学膜

【課題】サブフタロシアニン単量体類が本来有する特性を損なうことなく、溶解性に優れたサブフタロシアニンの誘導体を用い、耐光性があって特定波長領域に吸収を有し、反射防止性等の機能性に優れた光学膜を提供する。
【解決手段】μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体が、下記化学式(1)で表されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性光学薄膜として用いられるもので、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を含有した光学膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反射防止膜、カラーフィルター・光学フィルター等の光透過膜のような機能性光学薄膜である光学膜は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の画像表示装置に不可欠で重要な材料である。
【0003】
中でも反射防止膜は、携帯電話やコンピュータのディスプレイ、自動車のフロントガラス等の表面に被覆されるものである。反射防止膜は、太陽光や蛍光灯によってディスプレイ表面に背景が映り込んでしまうのを防ぎ、鮮明な画像をディスプレイに表示させるために必須のもので、広く用いられている。このような反射防止膜の殆どは、無機化合物を化学蒸着法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)や物理蒸着法(Physical Vapor Deposition:PVD法)によって、製膜して得られる。有機化合物を用いた例も知られており、例えば特許文献1に、無金属フタロシアニン類を用いた反射防止膜が、開示されている。
【0004】
また、フタロシアニン類よりも環縮小したサブフタロシアニン単量体類を機能性光学薄膜や光学部品やその原材料とした例も知られており、例えば、特許文献2に、青色形成のためのカラーレジスト用インキ及びカラーフィルターが開示され、特許文献3に、高明彩フルカラー印刷用青色水性インキが開示され、特許文献4に、プラズマディスプレイ用前面パネルに用いられるオレンジ光を吸収する色素が開示され、特許文献5に、有機LEDの発光素子が開示されている。
【0005】
サブフタロシアニン単量体類は、顔料、薄膜化学材料、情報記録材料、発光材料としても、様々な分野に応用が検討されている。
【0006】
しかし、サブフタロシアニン単量体類は、耐光性、溶解性が十分でない。そのため、溶剤にそれを分散させた顔料分散体を調製して塗布し、その薄膜を作製する必要がある。このような顔料分散体を用いた薄膜は、粒子径0.5μm以下の超微粒子領域にまで均質に微粉末化し非常に狭い粒度分布としたサブフタロシアニン単量体類を用いなければ、十分な透明性を得ることができない。サブフタロシアニン単量体類を超微粒子領域にまで粉砕すると、その表面積が増大し、耐光性の一層の低下を招く原因となってしまう。しかも、均質に分散し難い顔料分散体を塗布して、均質な薄膜を作製するのは、困難である。
【0007】
一方、特定波長領域に吸収を有する機能性光学薄膜、とりわけ、最近、需要が拡大しているプラズマ表示パネル(Plasma Display Panel:PDP)や液晶などの大画面ディスプレイに被覆される反射防止膜、カラーフィルター、青色レーザー域対応光記録媒体、フォトレセプターなどの光学膜は、530〜580nmでの半値幅が小さく、吸収特性が大きな物性のものが、望まれている。
【0008】
【特許文献1】特開平8−64492号公報
【特許文献2】特開2004−10838号公報
【特許文献3】特開2005−200601号公報
【特許文献4】特開2005−344021号公報
【特許文献5】特開2006−13226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、サブフタロシアニン単量体類が本来有する特性を損なうことなく、溶解性に優れたサブフタロシアニンの誘導体を用い、耐光性があって特定波長領域に吸収を有し、前記機能性光学薄膜として反射防止性等に優れた光学膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた本発明の光学膜は、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を、含有しているというものである。この二量体を、主成分とする色素として含有することにより、機能性光学薄膜として有用な光学膜となる。
【0011】
光学膜は、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体が、下記化学式(1)
【化1】

【0012】
(化学式(1)中、Z〜Z12は、互いに同一又は異なり、水素原子;ヒドロキシル基;メルカプト基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアルキル基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアラルキル基;又は、アリール基、アミノ基、アルコキシル基、及びチオエーテル基から選ばれ置換基を有していてもよい基を示す。)
で表されるものであることが、好ましい。
【0013】
また、光学膜は、前記式(1)で表されるμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を主成分とする色素を、含有していると、一層好ましい。
【0014】
この光学膜は、例えばμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を主成分とする色素が含有された光学膜用塗布剤、例えばインキで、基材上に塗布されて形成されたものである。
【0015】
この光学膜は、500〜600nmの波長の光の吸収性を有しており、光透過性薄膜や光反射防止薄膜のような機能性光学薄膜として特に好適である。
【0016】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、サブフタロシアニン単量体から誘導されるものである。
【0017】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体の製造方法は、下記化学式(2)
【0018】
【化2】

【0019】
(化学式(2)中、Z〜Z12は、互いに同一又は異なり、水素原子;ヒドロキシル基;メルカプト基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアルキル基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアラルキル基;又は、アリール基、アミノ基、アルコキシル基、及びチオエーテル基から選ばれ置換基を有していてもよい基を示し、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンを、
下記化学式(3)
【0020】
【化3】

【0021】
(化学式(3)中、Z〜Z12は、前記化学式(2)中のZ〜Z12に同じ。)
で表されるヒドロキシホウ素サブフタロシアニンに、反応させる工程により、前記化学式(1)で表されるμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を製造するというものである。
【0022】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体の別な製造方法は、化学式(3)で表されるヒドロキシホウ素サブフタロシアニンを、脱水反応させる工程により、前記化学式(1)で表されるμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を製造するというものである。
【0023】
前記化学式(3)で表されるヒドロキシホウ素サブフタロシアニンは、例えば前記化学式(2)で表されるハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンを加水分解する工程により得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光学膜が含有しているμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、サブフタロシアニン単量体を二量化することによって、簡便な方法で、収率良く、大量に製造することができるもので、サブフタロシアニン単量体の優れた特性を維持しつつ、サブフタロシアニン単量体よりも耐光性、溶剤に対する溶解性を向上させたものである。
【0025】
また、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、サブフタロシアニン単量体と比べると、Solid−State(薄膜状態)での分子会合に起因して、所望波長の変化や半値幅のブロード化を顕著に抑制できる。
【0026】
本発明の光学膜中のμ‐オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、500〜600nmの光を良好に吸収する特性を有している。
【0027】
このμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を主成分とする色素が含有された光学膜用塗布剤、例えばインキは、高溶解性で高耐光性の二量体を分散させたものでなく溶解させたものであるため、塗布によって均一な厚さの光学膜を形成することができる。さらにこの光学膜は、特定波長の光透過性や、特定波長の可視領域の吸収帯の吸光係数が向上しており、しかも半値幅が比較的狭いために、光透過性薄膜や光反射防止薄膜のような機能性光学薄膜として、特定の波長のみを遮断するという優れた効果を奏する。
【0028】
その結果、この光学膜で被覆されたディスプレイ等は、コントラスト比の高い鮮明な画像を表示することができる。
【0029】
この光学膜は、光反射防止薄膜や光透過性薄膜として、人間の視感度の中心である550nm付近の光を効果的に遮断し、その波長に近接する赤色光の透過を殆ど妨げないという特性を有するから、ディスプレイの視認性向上に極めて有用である。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0030】
以下、本発明の実施の好ましい形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0031】
本発明の光学膜は、前記化学式(1)で表されるμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を含有したもので、光の吸収、反射光の干渉・散乱等の性質を利用して、特定の波長の光を遮断したり、特定の波長の光のみを透過したりできる機能性光学薄膜である。光学膜は、例えばカラーフィルター・光学フィルターのような光透過性薄膜、光反射防止膜等として、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイのような情報表示装置等を被覆するのに、用いられる。
【0032】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、例えば、下記化学式(4)
【化4】

【0033】
(化学式(4)中、R〜Rは、互いに同一又は異なり、水素原子;ヒドロキシル基;メルカプト基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換、若しくは置換基含有のアルキル基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアラルキル基;又は、アリール基、アミノ基、アルコキシル基、及びチオエーテル基から選ばれ置換基を有していてもよい基を示す。n1〜n3は、互いに同一又は異なり、1〜4の整数である。)
で表されるものが、挙げられる。
【0034】
前記化学式中、未置換のアルキル基として、メチル基、エチル基、n‐プロピル基、i‐プロピル基、n‐ブチル基、i‐ブチル基、sec‐ブチル基、t−ブチル基、n‐ペンチル基、neo‐ペンチル基、n‐ヘキシル基、n‐ヘプチル基、n‐オクチル基、2‐エチルヘキシル基、n‐デシル基、ラウリル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0035】
パーシャルフルオロ置換のアルキル基として、2,2,2‐トリフルオロエチル基、3,3,3‐トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3‐ペンタフルオロプロピル基、4,4,4‐トリフルオロブチル基等が挙げられる。また、パーフルオロ置換のアルキル基として、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロ‐n‐プロピル基、パーフルオロ‐i‐プロピル基、パーフルオロ‐n‐ブチル基、パーフルオロ‐i‐ブチル基、パーフルオロ‐sec‐ブチル基、パーフルオロ‐n‐ペンチル基、パーフルオロ‐neo‐ペンチル基、パーフルオロ‐n‐ヘキシル基、パーフルオロ‐n‐ヘプチル基、パーフルオロ‐n‐オクチル基、パーフルオロ‐n‐デシル基等が挙げられる。
【0036】
未置換のアラルキル基としては、ベンジル基、α、α‐ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0037】
パーシャルフルオロ置換のアラルキル基としては、‐CF基、‐C(CF基等が挙げられ、パーフルオロ置換のアラルキル基としては、‐CF基、‐C(CF基が挙げられる。
【0038】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0039】
アミノ基としては、アミノ基;
メチルアミノ基、エチルアミノ基、n‐プロピルアミノ基、i‐プロピルアミノ基、n‐ブチルアミノ基、sec‐ブチルアミノ基、t‐ブチルアミノ基、n‐ペンチルアミノ基、neo‐ペンチルアミノ基、n‐ヘキシルアミノ基、n‐ヘプチルアミノ基、n‐オクチルアミノ基等のモノアルキルアミノ基;
ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ‐n‐プロピルアミノ基、ジ‐i‐プロピルアミノ基、ジ‐n‐ブチルアミノ基、ジ‐sec‐ブチルアミノ基、ジ‐t‐ブチルアミノ基、ジ‐n‐ペンチルアミノ基、ジ‐neo‐ペンチルアミノ基、ジ‐n‐ヘキシルアミノ基、ジ‐n‐ヘプチルアミノ基、ジ‐n‐オクチルアミノ基等のジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0040】
アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、i‐プロポキシ基、n‐ブトキシ基、i‐ブトキシ基、sec‐ブトキシ基、t‐ブトキシ基、n‐ペンチルオキシ基、neo‐ペンチルオキシ基、n‐ヘキシルオキシ基、n‐ヘプチルオキシ基、n‐オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0041】
チオエーテル基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n‐プロピルチオ基、i‐プロピルチオ基、n‐ブチルチオ基、i‐ブチルチオ基、sec‐ブチルチオ基、t‐ブブチルチオ基、n‐ペンチルチオ基、neo‐ペンチルチオ基、n‐ヘキシルチオ基、n‐ヘプチルチオ基、n‐オクチルチオ基等が挙げられる。
【0042】
これらの基は、別な置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;メルカプト基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、フェネチル基等のアリール基;ベンジル基、α、α‐ジメチルベンジル基等のアラルキル基;アミノ基;アルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0043】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、以下の方法で製造される。
【0044】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は例えば、サブフタロシアニンを二量化させることにより製造することができる。この製造方法を用いると、簡便且つ良好な収率でμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を得ることができる。このμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、溶媒への溶解性、耐光性に優れているためインキや機能性光学薄膜など多くの分野に応用できる。
【0045】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体のより具体的な製造方法の一例は、以下のとおりである。
【0046】
サブフタロシアニンは、公知の方法で得られる。例えば、特開2005−289854号公報記載の方法又は同等の方法により、フタロニトリル誘導体から合成される。その化学反応式を、下記式(5)
【0047】
【化5】

【0048】
(式(5)中、R〜R及びn1〜n3は前記に同じ、Xはフッ素、塩素、臭素、沃素などのハロゲン原子を示す。)
に示す。
【0049】
式(5)中、フタロニトリル誘導体上のRおよびnは、サブフタロシアニン上の置換基R〜R、n1〜n3に応じて適宜選択されるものである。
【0050】
ホウ素化合物BXは、Xがフッ素、塩素、臭素、沃素などのハロゲン原子のものであり、Xが塩素原子である三塩化ホウ素であることが好ましい。この三塩化ホウ素は常温・常圧では気体であるので、反応系内に吹き込んでもよいが、三塩化ホウ素を含有する溶液を反応系内に添加してもよく、適当な冷却手段で冷却して液化し反応系内に滴下してもよい。
【0051】
サブフタロシアニン合成反応に用いる溶媒としては、高沸点であり、フタロニトリル誘導体を良好に溶解させ、ハロゲン化ホウ素と反応しないものであれば特に限定されないが、たとえば、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ナフタレン、モノメチルナフタレン、モノクロロナフタレン、ジクロロナフタレン、キノリン、イソキノリン、スルフォラン等を用いることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上混合して用いられてもよい。
【0052】
得られたハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンは、下記化学反応式(6)
【0053】
【化6】

【0054】
(式(6)中、R〜R、n1〜n3及びXは前記に同じ。)
に示すように、加水分解を行うことによりヒドロキシホウ素サブフタロシアニンへと誘導される。
【0055】
この加水分解の反応は、酸性、アルカリ性のどちらの条件でも好適に進行する。
【0056】
酸性条件で加水分解するのに使用できる酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられ、好ましくは硫酸である。これらは水で適当な濃度に希釈して用いてもよい。また、ハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンの溶解性に応じて適宜、有機溶剤を添加して反応を行ってもよい。
【0057】
また、アルカリ性条件で加水分解するのに使用できる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩及び炭酸水素塩等であり、好ましくは水酸化ナトリウムである。これらは、固体のまま反応系内に添加されてもよく、水や適当な有機溶剤に溶解させた溶液にして反応系内に添加されてもよい。また、ハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンの溶解性に応じて適宜、有機溶剤を添加して反応を行ってもよい。
【0058】
加水分解反応の方法を具体的に例示すると、前記の溶媒、酸または塩基を、反応容器に投入し、−10〜10℃でハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンを投入し、1〜2時間この温度で撹拌する。その後、反応温度を10〜50℃に上げ、1〜6時間反応させる。
【0059】
反応終了後、必要に応じて、水又はアルコール等のように目的性生物のヒドロキシホウ素フタロシアニンが不溶である溶剤に分散させ、濾過することにより溶媒を除去する。さらに、必要に応じて、得られたヒドロキシホウ素サブフタロシアニンを溶剤で洗浄し、精製を行う。
【0060】
溶剤で洗浄して精製を行う場合、その溶剤は、反応副生成物を溶解し、目的生成物のヒドロキシホウ素サブフタロシアニンを溶解しないものであれば、とくに限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、アセトン、ヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上混合して用いられてもよい。
【0061】
得られたヒドロキシホウ素サブフタロシアニンは、加熱されて、脱水縮合を起こすことにより、下記化学反応式(7)
【0062】
【化7】

【0063】
(式(7)中、R〜R、及びn1〜n3は前記に同じ。)
に示すように、二量化を行うことにより、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体へと誘導される。
【0064】
この脱水縮合による二量化反応は、より具体的には、前記ヒドロキシホウ素サブフタロシアニンを溶媒に溶解、又は懸濁させ、必要に応じて適当な脱水剤の存在下、加熱して、脱水縮合させることにより、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を合成するというものである。
【0065】
脱水縮合による二量化反応に用いることのできる溶媒としては、ヒドロキシホウ素サブフタロシアニンを溶解、又は懸濁させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、クメン等のアルキルベンゼン類;モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルプロピレンウレア等の含窒素系溶媒;テトラハイドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、1,4−ジオキサン、モノグライム、ダイグライム、トリグライム等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0066】
また、脱水縮合による二量化反応に、適当な脱水剤を用いてもよい。脱水剤としては、ヒドロキシホウ素サブフタロシアニンの芳香環上の基に影響を与えないものであれば、特に限定されることはないが、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の硫酸塩類、DCC(シクロヘキシルカルボジイミド)などの有機脱水剤、モレキュラーシーブ等が挙げられる。
【0067】
脱水縮合による二量化反応の反応温度は、前記溶媒の還流温度であることが好ましく、その反応時間は、1〜24時間である。
【0068】
脱水縮合による二量化反応終了後、反応混合物を濾過し、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を得ることが好ましい。更に目的に合わせて精製してもよい。例えば、カラムクロマトグラフィー等の精製手段を用いてμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を、取り出すことができる。なお、精製手段はこれに限定されるものではない。
【0069】
脱水縮合による二量化反応でμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を得る方法を説明したが、次に、別な方法を示す。
【0070】
前記化学反応式(5)で得られるハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンと、前記化学反応式(6)で得られるヒドロキシホウ素サブフタロシアニンとを、下記化学反応式(8)
【0071】
【化8】

【0072】
(式(8)中、R〜R、n1〜n3及びXは前記に同じ。)
に示すように、脱ハロゲン化水素により縮合させた二量化反応で、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体が、得られる。
【0073】
脱ハロゲン化水素により縮合させる二量化反応は、より具体的には、前記化学反応式(8)のようにハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンとヒドロキシホウ素サブフタロシアニンとを溶解、又は懸濁させ、必要に応じて適当な塩基の存在下、加熱し、脱ハロゲン化水素反応に伴う縮合をさせることにより、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を合成するというものである。
【0074】
脱ハロゲン化水素により縮合させる二量化反応に用いることのできる溶媒としては、ハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンとヒドロキシホウ素サブフタロシアニンとを溶解、又は懸濁させるこができるものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、クメン等のアルキルベンゼン類;モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルプロピレンウレア等の含窒素系溶媒;テトラハイドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、1,4−ジオキサン、モノグライム、ダイグライム、トリグライム等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。
【0075】
脱ハロゲン化水素により縮合させる二量化反応に、適当な塩基を用いて、副生するハロゲン化水素を除去し、反応を促進させてもよい。塩基としては、ヒドロキシホウ素サブフタロシアニン及び、ハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンの芳香環上にある基に影響を与えないものであれば、特に限定されることはないが、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化物;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩及び炭酸水素塩等を用いることができる。
【0076】
脱ハロゲン化水素により縮合させる二量化反応の反応温度は、前記溶媒の還流温度であることが好ましく、その反応時間は、1〜24時間である。
【0077】
脱ハロゲン化水素により縮合させる二量化反応終了後、反応混合物を濾過し、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を得ることが好ましい。更に目的に合わせて精製してもよい。例えば、カラムクロマトグラフィー等の精製手段や再結晶などを用いて、生成物を取り出すことができる。なお、精製手段はこれらに限定されるものではない。
【0078】
ハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンの具体例を以下に示す。なお、ハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンはこれらに限定されるものではない。
【0079】
【化9】

【0080】
また、ヒドロキシホウ素サブフタロシアニンの具体例を以下に示す。なお、ヒドロキシホウ素サブフタロシアニンはこれらに限定されるものではない。
【0081】
【化10】

【0082】
本発明のホウ素サブフタロシアニン二量体の具体例を以下に示す。なお、ホウ素サブフタロシアニン二量体はこれらに限定されるものではない。
【0083】
【化11】

【0084】
【化12】

【0085】
次に、本発明の光学膜について説明する。
【0086】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を含有する機能性光学薄膜のような本発明の光学膜について説明する。
【0087】
この光学膜は、例えば光透過性薄膜のような機能性光学薄膜である。光透過性薄膜とは、特定の波長の光のみを色素により吸収・遮断し、目的の光を取り出すことができる機能を持った薄膜である。
【0088】
この光透過性薄膜は、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を含有することを特徴とする。このμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は半値幅が狭く、また、薄膜状態での分子の会合による波長のブロード化を抑制するので、この光透過性薄膜は、550nm付近の光のみを遮断することができる。
【0089】
550nm付近の光は、緑色光に相当し、人間の視感度の中心である。そのため、人間はこの光を強く視認する。この光透過性薄膜は、550nm付近のこの緑色光を吸収する色素であるμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を含有させることにより、ディスプレイのコントラストを改善し、鮮明な画像を表示させることができる。
【0090】
この光透過性薄膜の製膜法は、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を主成分とする色素を、適当な液媒体に溶解させた塗布剤例えばインキで、基板上に塗布して被着させるというものである。この塗布剤に含まれるμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体の量は、塗布剤全量に対して、0.001〜20重量%であるのが好ましく、0.05〜5重量%であるのがより好ましく、0.1〜3重量%であるのが更に好ましい。
【0091】
光透過性薄膜に用いる色素のモル吸光係数は、40000〜150000dmmol−1cm−1であり、好ましくは60000〜110000dmmol−1cm−1である。
【0092】
次に、本発明の別な光学膜について説明する。光学膜は、光反射防止薄膜のような機能性光学薄膜であってもよい。光反射防止薄膜とは、ディスプレイの表面に蛍光灯や背景等の映りこみを防止し、視認性を向上させるものである。
【0093】
光反射防止薄膜は、光吸収剤としてμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を含有することを特徴とする。このμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、人間の視感度の中心である550nm付近の緑色光を吸収し、鮮明な画像を表示させることができる。また、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、半値幅が狭いので、緑色光の波長に近接している赤色光の色純度を低下させない。そのため、鮮明な画像を表示させることができる。
【0094】
また、これら光透過性薄膜や光反射防止薄膜のような機能性光学薄膜は、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体の光学特性を阻害しない程度に、他の機能性材料を混合して、製膜されていてもよい。他の機能性材料は、例えば、近赤外線吸収色素、紫外線吸収色素、色調調整用色素等が挙げられる。
【0095】
近赤外線吸収剤は、近赤外線が家電製品への誤動作、マイク受信部に干渉することにより生じるスピーカーのノイズ音、自動ドアの誤動作等を防止するために用いられるものである。これらは可視領域の波長の光は透過し、900nm〜1200nmの近赤外線のみを吸収する物質が好ましく、多くは有機色素を用いている。
【0096】
この有機色素として例えば、ジチオール金属錯体、シアニン系、ジインモニウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系の化合物等が挙げられる。これらの有機色素は、単独で用いられてもよく、2種以上混合してもよい。また、これら有機色素の添加方法は、特に制限されないが、塗布剤、例えば機能性光学膜用インキに添加するものであってもよく、カレンダー法、コーティング法、キャスト法等で製膜するものであってもよい。
【0097】
紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれも使用できるが、有機系の紫外線吸収剤が実用的である。有機系の紫外線吸収剤としては、300nm〜400nmの間、好ましくは350nm付近に極大吸収を有し、その領域の光を80%以上吸収するものが好ましい。例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、アクリレート系、オギザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の化合物等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上混合して用いられてもよいが、数種類組み合わせて用いることが好ましい。また、これら紫外線吸収剤の添加方法は、特に制限されないが、塗布剤、例えば機能性光学膜用インキに添加するものであってもよく、カレンダー法、コーティング法、キャスト法等で製膜するものであってもよい。
【0098】
色調調整用色素は、表示色の色バランスを補正し、表示のコントラストを改善する目的で用いられるものである。例えば、シアニン(ポリメチン)系、キノン系、アゾ系、インジゴ系、ポリエン系、スピロ系、ポルフィリン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等の色素が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上混合して用いられてもよいが、数種類組み合わせて用いられることが好ましい。
【0099】
これら機能性光学薄膜のような光学膜の薄膜形成法としては、インクジェット記録法、物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)、カレンダー法、コーティング法、キャスト法等が挙げられる。特にPVD法の中でも真空蒸着法が、用いられる。真空蒸着法は、例えば真空中において、有機色素または金属酸化物を加熱し、それを基材(例えば、二つの電極層の間)に付着させることによって薄膜を形成するという方法である。
【0100】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、このような真空蒸着法で薄膜形成するのに用いることができる。
【0101】
また、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を含有する塗布剤をスピンコート法等により塗布して、薄膜状に被着させることもできる。μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、各種溶剤への溶解度が高く、また、耐光性に優れているため、塗布剤は、堅牢なものとなる。
【0102】
また、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は、染料として用いることができ、高耐光性であるため、この塗布剤は、ディスプレイ等の表示装置に光吸収層を形成させるインキとして好ましく用いられる。この塗布剤で、基材例えばディスプレイ等の表示装置に、光吸収層を形成することにより、不要な光の遮断、反射防止等の機能を付与することができる。
【0103】
この塗布剤に用いられる液媒体としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−メトキシ−4−メチルペンタノン等のケトン系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、2,4,6−ヘキサントリオール等のポリオール、ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール及びそのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル等のエステル系溶媒;1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ジメチルスルホキシド;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン;γ−ブチルラクトン;THF等が挙げられる。これらの液媒体は、単独で用いられてもよく、混合して用いられてもよい。これらに少量の水を併用して用いてもよい。
【0104】
これらのうち、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル等エステル系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン;ジメチルスルホキシド;エチレングリコール等が推奨される。
【0105】
塗布剤は、更に各種添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えばバインダー(樹脂)、浸透剤、消泡剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、分散剤、レオロジーコントロール剤、界面活性剤、pH調整剤、皮膜改質剤、荷電制御剤(電荷調節剤)、動・植物油等油脂等の成分が挙げられる。これらの添加剤は、必要に応じて適宜選択し、単独で用いられ、又は複数組み合わせて用いられる。
【0106】
前記バインダー(樹脂)成分としては、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を良好に定着させたり、インキを安定化したり、粘度を調整したりするなどの目的で用いられる。前記液媒体に対して溶解するものであれば、公知の樹脂を適宜用いることができる。
【0107】
バインダー(樹脂)成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン‐酢酸ビニル共重合体等のポリビニル系樹脂;ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等のポリアミン系樹脂;ポリメチルアクリレート、ポリエチレンアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルメタアクリレート等のポリアクリレート系樹脂;ロジン、ロジン変性樹脂(フェノール、マレイン酸、フマル酸樹脂等);エチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;フェノール変性キシレン樹脂;キシレン樹脂;テルペンフェノール樹脂;フェノール樹脂;ケトン樹脂;アクリル樹脂;スチレン−アクリル樹脂;スチレン−マレイン酸樹脂;テルペン系樹脂;テルペン−マレイン酸樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリウレタン樹脂;アクリルウレタン樹脂;ポリエステル樹脂;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;ポリビニルホルマール及びそれらの共重合体;アルキッド樹脂;エポキシ樹脂;ポリエステルイミド樹脂;ポリアミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;シリコ−ン樹脂;フッ素系樹脂(フッ素系ポリマー);天然樹脂系(アラビアゴム、ゼラチン等)等が挙げられる。これら樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上混合して用いられてもよい。
【0108】
塗布剤は、前記μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体、液媒体、必要に応じてバインダー、添加剤等を混合し、攪拌して溶解し、必要に応じて希釈し、また必要に応じて他の添加剤を加えることによって、調製することができる。混合攪拌は、通常の羽を用いた攪拌機による攪拌のほか、高速の分散機、乳化機等により行われてもよい。
【0109】
得られた塗布剤を、必要に応じ希釈前、又は希釈後に、濾過して精製してもよい。濾過する場合は、例えば、孔径3.0μm以下のフィルター、好ましくは1.0μm以下のフィルターで、濾過する。
【0110】
この塗布剤は、光透過性薄膜や光反射防止薄膜のような機能性光学薄膜を形成するために、例えばインキとして用いられる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明の光学膜を試作した例を参照しながら、より具体的に説明する。なお、文中のSubPcBは、ホウ素サブフタロシアニンを示す。
【0112】
(製造例1)
フタロニトリル76.8g、p−キシレン260g、1.0M三塩化ホウ素/p−キシレン溶液270gを、窒素気流下還流温度で1時間撹拌することによって29.3gのSubPcBCl[中間化合物A−1]を得た。
【0113】
得られた[中間化合物A−1]の20.0gを、5℃以下の濃硫酸600mL中に、5℃を超えないよう冷却しながら入れ、5℃以下で5時間撹拌した。氷水3L中に投入してスラリー化し、濾取した。それを水3L中に分散し、還流下で1時間撹拌後、濾取することにより、12.6gのSubPcBOH[中間化合物B−1]を得た。
【0114】
得られた[中間化合物B−1]の13.4gをオルトジクロロベンゼン500mL中に投入し、還流撹拌を22時間行った。反応終了後、濾過を行い、ろ液を濃縮し、ジメチルホルムアミド400mLで洗浄することにより、4.5g(中間化合物B−1からの収率34.3%)の(SubPcB)O[化合物1]を得た。
【0115】
(SubPcB)O[化合物1]について元素分析の結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
それのH−NMR及び13C−NMRの測定結果を示す。
NMR(300MHz)
H−NMR(CDCl):δ7.77(dd,J=3,6Hz,6H)、8.61(dd,J=3,6Hz,6H)ppm
13C−NMR(CDCl):δ122.0、129.5、130.5、150.4ppm
【0118】
それの収率及びクロロホルム中での極大吸収波長、モル吸光係数を表5に示す。なお分光光度計は島津製作所製のUV−1700を用いた。また測定した溶解度を表6に示す。これらの結果は、(SubPcB)O[化合物1]が前記化学式の構造であることを支持する。
【0119】
(製造例2)
4−t−ブチルフタロニトリル25.0g、p−キシレン58.9g、1.0M三塩化ホウ素/p−キシレン溶液61.3gを窒素気流下還流温度で2時間撹拌することによって7.6gのt−BuSubPcBCl[中間化合物A−2]を得た。
【0120】
得られた[中間化合物A−2]3.0gを5℃以下のジメチルホルムアミド50mLと1N水酸化ナトリウム水溶液50mL中に入れ、5℃で1時間、室温で18時間撹拌した。スラリーを濾取、25%メタノール水溶液の100mL、水100mLで順次洗浄することにより、2.6gのt−BuSubPcBOH[中間化合物B−2]を得た。
【0121】
[中間化合物A−2]2.0g、[中間化合物B−2]2.0g、水素化ナトリウム1.0gをキシレン60mL中に投入し、還流温度で1時間撹拌した。反応溶液の濾過、濃縮を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘキサン=1:1)にて精製を行うことにより、0.65g(中間化合物B−2からの収率33.6%)の(t−BuSubPcB)O[化合物2]を得た。
【0122】
(t−BuSubPcB)O[化合物2]について元素分析の結果を表2に示す。
【0123】
【表2】

【0124】
それのH−NMR及び13C−NMRの測定結果を示す。
NMR(300MHz)
H−NMR(CDCl):δ1.49(m,54H)、7.80(m,6H)、8.48(m,6H)、8.65(m,6H)ppm
13C−NMR(CDCl):δ30−35、55−60、120−150ppm
【0125】
それの収率及びクロロホルム中での極大吸収波長、モル吸光係数を表5に示す。また測定した溶解度を表6に示す。これらの結果は(t−BuSubPcB)O[化合物2]が前記化学式の構造であることを支持する。
【0126】
(製造例3)
4−オクチルオキシフタロニトリル10.0g、p−キシレン16.9g、1.0M三塩化ホウ素/p−キシレン溶液17.6gを窒素気流下還流温度で2時間撹拌することによって4.0gの(C17O)SubPcBCl[中間化合物A−3]を得た。
【0127】
得られた[中間化合物A−3]4.0gを5℃以下のジメチルホルムアミド20mLと1N水酸化ナトリウム水溶液20mL中に入れ、5℃で1時間、室温で2時間撹拌した。スラリーを濾取、50%メタノール水溶液200mLで洗浄することにより、3.2gの(C17O)SubPcBOH[中間化合物B−3]を得た。
【0128】
[中間化合物A−3]3.0g、[中間化合物B−3]3.0gから製造例2と同様の方法により、1.07g(中間化合物B−3からの収率36.5%)の{(C17O)SubPcB}O[化合物3]を得た。
【0129】
{(C17O)SubPcB}O[化合物3]について元素分析の結果を表3に示す。
【0130】
【表3】

【0131】
それのH−NMR及び13C−NMRの測定結果を示す。
NMR(300MHz)
H−NMR(CDCl):δ0.89(m,18H)、1.30(m,48H)、1.82(m,12H)、2.20(m,12H)、4.06(m,12H)、7.09(m,6H)、7.29(m,6H)、7.75(m,6H)ppm
13C−NMR(CDCl):δ15−65、120−150ppm
【0132】
それの収率及びクロロホルム中での極大吸収波長、モル吸光係数を表5に示す。また測定した溶解度を表6に示す。これらの結果は{(C17O)SubPcB}O[化合物3]が前記化学式の構造であることを支持する。
【0133】
(製造例4)
4−オクチルチオフタロニトリル15.0g、p−キシレン24.2g、1.0M三塩化ホウ素/p−キシレン溶液25.2gを窒素気流下還流温度で2時間撹拌することによって10.5gの(C17S)SubPcBCl[中間化合物A−4]を得た。
【0134】
得られた[中間化合物A−4]6.0gを5℃以下のジメチルホルムアミド60mLと1N水酸化ナトリウム水溶液60mL中に入れ、5℃で1時間、室温で2時間撹拌した。スラリーを濾取、50%メタノール水溶液1L、水3Lで順次洗浄することにより、4.9gの(C17S)SubPcBOH[中間化合物B−4]を得た。
【0135】
[中間化合物A−4]5.0g、[中間化合物B−4]5.0g、水素化ナトリウム5.0gを1,4−ジオキサン100mL中に投入し、還流温度で1時間撹拌した。反応溶液の濾過、濃縮を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:ヘキサン=1:1、塩化メチレン:酢酸エチル=100:1)にて精製を行うことにより、2.35g(中間化合物B−4からの収率24.0%)の{(C17S)SubPcB}O[化合物4]を得た。
【0136】
{(C17S)SubPcB}O[化合物4]について元素分析の結果を表4に示す。
【0137】
【表4】

【0138】
それのH−NMR及び13C−NMRの測定結果を示す。
NMR(300MHz)
H−NMR(CDCl):δ0.87(m,18H)、1.28(m,48H)、1.79(m,12H)、2.05(m,12H)、3.21(m,12H)、7.70(m,6H)、8.64(m,12H)ppm
13C−NMR(CDCl):δ14−60、120−150ppm
【0139】
それの収率及びクロロホルム中での極大吸収波長、モル吸光係数を表5に示す。また測定した溶解度を表6に示す。これらの結果は{(C17S)SubPcB}O[化合物4]が前記化学式の構造であることを支持する。
【0140】
【表5】

【0141】
【表6】

【0142】
表5の中間化合物A−1、化合物1,2,3,4についてクロロホルム中での吸収スペクトルを図1に示した。この表5、6に示すとおり、サブフタロシアニン二量体は、同じ置換基を有するサブフタロシアニン単量体よりも溶剤に対する溶解性が向上し、モル吸光係数が大きく、反射防止膜で要求される吸収波長550nm領域に吸収帯を持たせることが可能である。
【0143】
次に、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を用いた薄膜作成法及び評価方法を説明する。なお、下記実施例において、重量部を部と表記する。
【0144】
(実施例1)
前記製造例で得られた薄膜用色素である化合物1を含む光学膜である機能性光学薄膜を、下記に示す工程で作製した。
【0145】
製造例1で得られた化合物1の0.1部と、ポリメタクリレート15部をメチルエチルケトン50部、シクロヘキサノン35部に撹拌により溶解混合させて、液状の塗布剤を調製した。
【0146】
得られた塗布剤をスピンコーター(MIKASA 1H−D7)を使い、厚さ1mmのガラス板に塗布し、本発明の機能性光学薄膜を作製した。
【0147】
(実施例2)
実施例2では、実施例1の化合物1を製造例2で得られた化合物2に代えた以外は同じ塗布剤を調製し、機能性光学薄膜を作製した。
【0148】
(実施例3)
実施例3では、実施例1の化合物1を製造例3で得られた化合物3に代えた以外は同じ塗布剤を調製し、機能性光学薄膜を作製した。
【0149】
(実施例4)
実施例4では、実施例1の化合物1を製造例4で得られた化合物4に代えた以外は同じ塗布剤を調製し、機能性光学薄膜を作製した。
【0150】
(比較例1)
製造例1で得られた中間化合物A−1の0.1部と、ポリメタクリレート15部をメチルエチルケトン50部、シクロヘキサノン35部に撹拌により分散混合させて、塗布剤を調製した。
【0151】
得られた塗布剤をスピンコーター(MIKASA 1H−D7)を使い、厚さ1mmのガラス板に塗布し、機能性光学薄膜を作製した。
【0152】
(比較例2)
比較例2では、実施例1の化合物1を製造例1で得られた中間体である中間化合物A−1に代え、更に色素の添加量を0.5部に代えた以外は同じ塗布剤を調製し、薄膜を作製した。この際、中間化合物A−1は完全に溶解せず、塗布剤は分散体として得た。
【0153】
(比較例3)
比較例3では、比較例1と同様に、塗布剤を調製し、その塗布剤を濾過した。そのろ液(中間化合物A−1の飽和溶液)を用い薄膜を作製した。
【0154】
(透過スペクトルの測定法)
前記の実施例1〜4と比較例1〜3で得られたサブフタロシアニンを含有する薄膜を用いて、分光光度計(HITACHI UV1700)で薄膜の透過率を測定した。薄膜の極大吸収における透過率を表7に、透過スペクトルを実施例1〜4と比較例1は図2、比較例2及び3は図3に示した。
【0155】
透過率は10%T以下を◎、10〜30%Tを○、30〜40%Tを△、40%T以上を×として評価した。
【0156】
(ヘイズの測定法)
前記の実施例1〜4と比較例1で得られたサブフタロシアニンを含有する薄膜を用いて、ヘイズメーター(日本電色工業社製 NDH2000)で薄膜のヘイズを測定した。得られたヘイズ値を表8に示した。
【0157】
ヘイズ値は1.0未満を◎、1.0〜1.5を○、1.5〜2.0を△、2.0以上を×として評価した。
【0158】
(耐光性の測定法)
前記の実施例1〜4と比較例1で得られたサブフタロシアニンを含有する薄膜を用いて、キセノン・フェードメーター(アトラス社製 Ci−4000)で薄膜の耐光性を測定した。試験条件はBST温度45℃、湿度50%、放射照度25W/mで行った。1時間後の着色状態を目視判定で行った。得られた耐光性を表9に示した。
【0159】
色素が残っている状態を○、色素が薄く残っている状態を△、無色になった状態を×として評価した。
【0160】
(反射率の測定法)
前記の実施例1〜4と比較例1で得られたサブフタロシアニンを含有する薄膜を用いて、分光光度計はHITACHIのU−3410を使用し、60φ積分球付属装置を装置に付けて色素の最大吸収波長におけるガラス基板をベースとした反射率を測定した。得られた反射率を表10に示す。
【0161】
反射率は5.0%以下を◎、5.0〜10%を○、10〜20%を△、20%以上を×として評価した。
【0162】
【表7】

【0163】
【表8】

【0164】
【表9】

【0165】
【表10】

【0166】
光フィルター性能について、実施例1〜4の薄膜と比較例1の薄膜を比較すると、実施例1〜4はいずれも極大波長における透過率が低く、良好な結果だった。また図1,2の比較例より、実施例1〜4の薄膜は分子会合による目的波長の変化や半値幅のブロード化、目的波長以外の吸収がなかった。
【0167】
ヘイズ値については、比較例1の塗布剤は分散体であるために、薄膜のヘイズが1以上と悪い値になったが、実施例1〜4の薄膜はヘイズ値が1以下と良好な結果であった。
【0168】
耐光性については比較例1よりも実施例1が大変良好であり、実施例2、3、4が良好という結果であった。
【0169】
また、図3に比較例2,3で作成した薄膜の透過スペクトルを示した。図3より、高濃度の分散体の塗布剤を用いた比較例2は目的波長以外にも低い透過率を有しており、飽和溶解した塗布剤を用いた比較例3は目的波長の透過率が高いという結果であった。
【0170】
反射率については実施例1〜4、特に実施例1の薄膜は良好に反射防止効果が発揮されているが、比較例1の薄膜は充分な反射防止効果が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明のμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を含有する光学膜は、機能性光学薄膜として用いられる。この光学膜は、人間の視感度の中心である550nm付近の光を効果的に遮断し、ディスプレイの視認性向上に極めて有用であり、また、半値幅が比較的狭いため波長の近接する赤色光の透過をほとんど妨げないため種々の機能性光学薄膜に応用可能である。また、μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体は溶剤への溶解度が高く、高耐光性であるため、それを含有させて堅牢なインキのような塗布剤も提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明を適用する光学膜に含有させるμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体(化合物1、2、3、4)と、本発明を適用外の光学膜に含有させる化合物(中間化合物A−1)との吸収スペクトルを示す図である。
【図2】本発明を適用するμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体(化合物1、2、3、4)を含有する光学膜と、本発明を適用外の化合物(中間化合物A−1)を含有する光学膜との透過スペクトルを示す図である。
【図3】本発明を適用外の光学膜に含有させる化合物(中間化合物A−1)飽和状態と、分散体の薄膜との透過スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を、含有していることを特徴とする光学膜。
【請求項2】
前記μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体が、下記化学式(1)
【化1】

(化学式(1)中、Z〜Z12は、互いに同一又は異なり、水素原子;ヒドロキシル基;メルカプト基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアルキル基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアラルキル基;又は、アリール基、アミノ基、アルコキシル基、及びチオエーテル基から選ばれ置換基を有していてもよい基を示す。)
で表されることを特徴とする請求項1に記載の光学膜。
【請求項3】
光反射防止薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の光学膜。
【請求項4】
光透過性薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の光学膜。
【請求項5】
前記化学式(1)で表される前記μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を主成分とする色素が含有されている塗布剤で、基材上に塗布されて形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学膜。
【請求項6】
500〜600nmの波長の光の吸収性を有していることを特徴とする請求項1に記載の光学膜。
【請求項7】
μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を主成分とする色素と、溶剤とが、含有されていることを特徴とする光学膜用塗布剤。
【請求項8】
前記μ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体が、下記化学式(1)
【化2】

(化学式(1)中、Z〜Z12は、互いに同一又は異なり、水素原子;ヒドロキシル基;メルカプト基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアルキル基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアラルキル基;又は、アリール基、アミノ基、アルコキシル基、及びチオエーテル基から選ばれ置換基を有していてもよい基を示す。)
で表されることを特徴とする請求項7に記載の光学膜用塗布剤。
【請求項9】
下記化学式(2)
【化3】

(化学式(2)中、Z〜Z12は、互いに同一又は異なり、水素原子;ヒドロキシル基;メルカプト基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアルキル基;炭素数を1〜20とし直鎖状若しくは分岐鎖状で未置換、パーシャルフルオロ置換、パーフルオロ置換若しくは置換基含有のアラルキル基;又は、アリール基、アミノ基、アルコキシル基、及びチオエーテル基から選ばれ置換基を有していてもよい基を示し、Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンを、
下記化学式(3)
【化4】

(化学式(3)中、Z〜Z12は、前記化学式(2)中のZ〜Z12に同じ。)
で表されるヒドロキシホウ素サブフタロシアニンに、反応させる工程により、
又は、この化学式(3)で表されるヒドロキシホウ素サブフタロシアニンを脱水反応させる工程により、
下記化学式(1)
【化5】

(化学式(1)中、Z〜Z12は、前記に同じ。)
で表されるμ-オキソ架橋-ホウ素サブフタロシアニン二量体を製造する方法。
【請求項10】
下記化学式(2)
【化6】

(化学式(2)中、Z〜Z12は、前記に同じ。Xはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化ホウ素サブフタロシアニンを加水分解して、前記化学式(3)で表されるヒドロキシホウ素サブフタロシアニンとする工程を、有することを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−216589(P2008−216589A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53265(P2007−53265)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】