説明

ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル又はそのラクタムを生産する組換え細胞

本発明は、野生型と比べてより多くのω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル又は、ω−アミノカルボン酸から由来するより多くのラクタムをカルボン酸又はカルボン酸エステルから製造できるように遺伝子工学的に改変された細胞に関する。更に、本発明はω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムの製法、前記方法により得られたω−アミノカルボン酸、ω−カルボン酸エステル又はω−カルボン酸から由来するラクタム、ω−アミノカルボン酸又はラクタムをベースとするポリアミドの製法、ならびに前記方法により得られるポリアミドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その野生型に対して遺伝子工学的に改変された細胞、遺伝子工学的に改変された細胞の製法、前記方法により得られる細胞、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムの製法、前記方法により得られるω−アミノカルボン酸、ω−カルボン酸エステル又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタム、ω−アミノカルボン酸又はラクタムをベースとするポリアミドの製法、ならびに前記方法により得られるポリアミドに関する。
【0002】
ポリアミドは、その繰り返し単位(モノマー)が特色のある特徴としてアミド基を有するポリマーである。"ポリアミド"という名称は、通常は工業的に使用可能な熱可塑性合成樹脂の名称として使用され、よってこの物質クラスは化学的に使用されるタンパク質とは区別される。殆ど全ての重要なポリアミドは、第一アミンから誘導される。すなわち、その繰り返し単位の中に官能基−CO−NH−が存在する。それに加え、第二アミンのポリアミド(−CO−NR−、R=有機基)も存在する。ポリアミドのモノマーとして、特にアミノカルボン酸、ラクタム及び/又はジアミン及びジカルボン酸が使用される。
【0003】
特に重要であるのは、ラクタムをベースとするポリアミドの製造である。従って、ε−カプロラクタムの開環重合により、工業的に頻繁に使用される生成物"ポリアミド6"が得られるのに対して、ラウリンラクタムの開環重合により、同様に工業的に重要な"ポリアミド12"が得られる。ラクタムから成るコポリマー、例えばε−カプロラクタムとラウリンラクタムから成るコポリマー("ポリアミド6/12")のようなものも工業的に極めて重要である。
【0004】
ε−カプロラクタムの製造は、通常はシクロヘキサノンと硫酸水素塩の反応により、又は塩化水素とヒドロキシルアミンの反応によりシクロヘキサノンオキシムの形成下に行われる。
【0005】
これをε−カプロラクタム内でのベックマン転位により転移させるが、その際に濃硫酸が触媒として頻繁に使用される。シクロヘキサノンの製造は、通常はシクロヘキサンと空気酸素の触媒酸化により行われ、その際にシクロヘキサンは再びベンゼンの水素化により得られる。
【0006】
ラウリンラクタムの製造は特に費用がかかる。これは、まずシクロドデカトリエンの形成下にブタジエンをトリマー化することにより大工業的に行われる。引き続き、シクロドデカントリエンは、シクエオドデカンの形成下に水素化され、かつこのように得られたシクロドデカンは、シクロドデカノンの形成下に酸化される。このように得られたシクロドデカノンは、ヒドロキシルアミンと反応してシクロドドデカンオキシムになり、次にこれはラウリンラクタム内でのベックマン転位により転移される。
【0007】
オキシムのベックマン転位により、従来技術から公知のラクタムを製造する方法の欠点は、例えば硫酸ナトリウムのような塩が副生成物として大量に形成されることであり、これらは除去しなくてはならない。従って従来技術には、これらの欠点を有さない他のラクタムの製法が記載されている。EP-A-0748797には、ジニトリルからのラクタムの製法が記載されていて、この場合にジニトリルは水素化されてアミノニトリルになり、かつアミノニトリルは環加水分解によりラクタムに変換されている。環加水分解用の触媒として、分子篩い、例えば酸性ゼオライト、シリケート及び非ゼオライト系分子篩い、金属ホスフェート及び酸化金属又は金属混合酸化物のようなものが開示されている。しかし、この方法は、環加水分解によりアミノニトリルの反応の選択性がむしろ僅かであり、従って大量の副生成物が形成されるという欠点を有する。更に、この従来技術で記載されたラクタムの製法では、ベンゼン又はブタジエンのような炭化水素が使用され、これはガソリン又は石油の分留により得られ、再生不可能な資源から由来している。従って、このように製造されたラクタムをベースとするポリアミドの製造は経済的な見地から欠点であるとみなされる。
【0008】
本発明は、従来技術から生じる欠点を克服することを課題とする。特に、本発明はラクタム、特にラウリンラクタムを出来る限り僅かな方法工程で、かつ出来る限り少ない副生成物の形成下に形成することができる方法を提供することに課題を成す。
【0009】
更に、これに関連してラクタム、特にラウリンラクタムを用いて、再生可能な資源から製造できる方法を提供することであった。
【0010】
前記課題の解決策は、野生型と比べてより多くのω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するより多くのラクタムを、カルボン酸又はカルボン酸エステルから製造できるように遺伝子工学的に改変された細胞により成し遂げられる。このような細胞は、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを発酵法において、カルボン酸又はカルボン酸エステル、例えば、ラウリン酸又はラウリン酸エステルから製造するために使用できる。
【0011】
"野生型と比べてより多くのω−アミノカルボン酸、より多くのω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するより多くのラクタムを、カルボン酸又はカルボン酸エステルから製造できる"という表現は、遺伝子光学的に改変された細胞の野生型が、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを殆ど形成できないか、少なくとも検出不可能な量でしかこれらの化合物を形成できず、遺伝子工学的な改変の後に漸く検出可能な量でこれらの成分が形成できる場合にも関する。
【0012】
細胞の"野生型"とは、そのゲノムが進化により自然な方法で生じる状態の細胞を意味する。この用語は、全体の細胞にも個々の遺伝子にも使用される。従って、"野生型"という用語は、特にヒトが組換え法を用いて、その遺伝子配列を少なくとも部分的に改変した細胞もしくは遺伝子には当てはまらない。
【0013】
この場合に、本発明によれば、遺伝子工学的に改変された細胞は、定義付けられた時間の間隔、有利には2時間以内、より有利には8時間以内、かつ最も有利には24時間以内に、該細胞の野生型よりも少なくとも2倍、特に有利には少なくとも10倍、更に有利には少なくとも100倍、とりわけ有利には少なくとも1000倍、最も有利には少なくとも10000倍多くのω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタム形成されるように遺伝子工学的に改変されるのが有利である。この場合に、生成物形成の増大は例えば、本発明による細胞と野生型細胞を、それぞれ別々に同じ条件下(同じ細胞濃度、同じ栄養培地、同じ培養条件)に一定の時間期間に適切な栄養培地で培養し、かつ引き続き目的生成物(ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタム)の量を栄養培地内で測定することで決定できる。
【0014】
本発明による細胞は、原核生物及び真核生物であることができる。この場合に、これはほ乳類細胞(例えば、ヒト由来の細胞)、植物細胞又は微生物、例えば、酵母、真菌又は細菌であることができ、その際、微生物は特に有利であり、かつ細菌と酵母が最も有利である。
【0015】
細菌、酵母又は真菌として、特にドイツ微生物及び細胞培養保管機関(DSMZ)、ドイツのブラウンシュヴァイクに細菌−菌株、酵母−菌株又は真菌類−菌株として登録されている細菌、酵母又は真菌が適切である。
【0016】
本発明による適切な細菌は、
http://www.dsmz.de/species/bacteria.htm
に引用されている属種に属し、本発明による適切な酵母は、
http://www.dsmz.de/species/yeasts.htm
に引用されている属種に属し、かつ本発明による適切な真菌は、
http://www.dsmz.de/species/fungi.htm
に引用されているものである。
【0017】
本発明による特に有利な細胞は、コリネバクテリウム、ブレビバクテリウム、バチルス、ラクトバチルス、ラクトコッカス、カンジダ、ピチア、クルベロマイセス、サッカロミセス、大腸菌、ジモモナス、ヤロウィア、メチロバクテリウム、ラルストニア、シュードモナス、ブルクホルデリア及びクロストリジウムの種属から由来し、その際、大腸菌、コリネバクテリウム・グルタミクム及びシュードモナス・プチダが特に有利であり、かつ大腸菌が最も有利である。
【0018】
本発明による細胞の特に有利な実施態様によれば、これらはその野生型と比べて、以下の酵素:
i)カルボン酸又はカルボン酸エステルを相応するω−ヒドロキシカルボン酸又はω−ヒドロキシカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EI
ii)ω−ヒドロキシカルボン酸又はω−ヒドロキシカルボン酸エステルを相応するω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EII
iii)ω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸又はω−アミノカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EIII
のうち少なくとも1つの増大した活性を有する。
【0019】
酵素EIに関連して先に既に述べたように、かつ以下の説明で酵素EII等と関連して使用するような"酵素の増大した活性"という用語は、とりわけ増大した細胞内活性として解釈される。
【0020】
細胞内での酵素活性を増大するための以下の説明は、酵素EIの活性の増大にも、またそれらの活性を場合により高くすることができる以下に挙げる全ての酵素にも当てはまる。
【0021】
原則的に、酵素活性の増大は、酵素をコードする1つの遺伝子配列又は複数の遺伝子のコピー数を増やすことにより、又は強いプロモーターを使用するか、又は増大した活性を有する酵素をコードする遺伝子又は対立遺伝子を利用することにより、かつ場合によりこれらの方法を組み合わせることにより達成できる。本発明の遺伝子工学的に改変された細胞は、例えば、形質転換、形質導入、接合又はこれらの方法の組み合わせにより、所望の遺伝子、前記遺伝子の対立遺伝子又はその一部を有するベクターならびに前記遺伝子の発現を可能にするベクターを含んでいるベクターを用いて作成される。異種発現は、特に遺伝子又は対立遺伝子を細胞の染色体に、又は外部染色体を複製するベクターに挿入することにより達成される。
【0022】
細胞内の酵素活性を増大する可能性に関する概要は、ピルビン酸塩−カルボキシラーゼの例を用いてDE-A-10031999に挙げられている。これを参照して取り入れることにし、かつ細胞内で酵素活性を増大する可能性に関するそれらの開示内容は、本発明の開示の一部を成すことにする。
【0023】
上記及び下記に挙げられた全ての酵素もしくは遺伝子の発現は、一次元及び二次元のタンパク質ゲル分離を用いて、かつ引き続きゲル内で相応の計算ソフトを用いてタンパク質濃度の光学的同定により検出可能である。酵素活性の増大が専ら相応する遺伝子の発現にのみ基づく場合には、野生型と遺伝子工学的に改変した細胞の間で1次元又は2次元のタンパク質分離を比較することで、酵素活性の増大の定量化を簡単な方法で決定することができる。コリネ型細菌においてタンパク質ゲルを調製し、かつタンパク質を同定するために一般的に行われている方法は、Hermann等により記載されている(電気泳動法、22巻: 1712.23(2001))。タンパク質濃度は同様にウェスタン・ブロットハイブリダイゼーション法により、検出すべきタンパク質に特異的な抗体を用いる(Sambrook等、分子クローニング:実験質マニュアル、第二版Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y. USA, 1989)。引き続き濃度を決定するために、相応のソフトウェアを用いて光学的評価が分析される(Lohaus and Meyer (1989) バイオスペクトル、5巻: 32-39頁; Lottspeich (1999)、応用化学111: 2630-2647頁)。DNA結合タンパク質の活性は、DNA−バンドシフトアッセイ(ゲルシフト法とも称する)により測定することができる(Wilson等(2001) 微生物学ジャーナル、183巻: 2151-2155)。他の遺伝子発現に及ぼすDNAに結合したタンパク質の作用は、様々に優れて記載されているリポーター遺伝子−アッセイの方法により検出できる(Sambrook等、分子クローニング:実験室マニュアル、第二版Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y. USA, 1989)。細胞内酵素活性は、種々に記載された方法により決定できる(Donahue等 (2000) 細菌学ジャーナル182(19)巻: 5624-5627頁; Ray等(2000) 細菌学ジャーナル182(8)巻: 2277-2284頁; Freedberg等(1973) 細菌学ジャーナル115(3)巻:816-823頁)。以下の説明で、一定の酵素の活性を決定する方法が具体的に記載されていない場合には、酵素活性の増大の決定及び酵素活性の減少の決定は、Hermann等、電気泳動法、22巻: 1712-23頁(2001), Lohaus 等、バイオスペクトル5 巻32-39頁(1998), Lottspeich、応用化学III: 2630-2647頁(1999)及びWilson等、細菌学ジャーナル183巻:2151-2155頁(2001)に記載されている方法で特に行った。
酵素活性の増大が内因性遺伝子の突然変異により生じた場合には、このような突然変異は、UV−照射によるか又は突然変異を起こす化学物質のような従来の方法により作成されるか、又は欠損、挿入及び/又はヌクレオチド置換のような遺伝子工学的方法により達成できる。突然変異により遺伝子工学的に改変された細胞が得られる。特に有利な酵素のミュータントは、少なくとも野生型の酵素と比較して少なくともフィードバック−阻害性が減少した酵素である。
【0024】
酵素活性の増大が、酵素の発現の増大により生じた場合には、相応する遺伝子のコピー数を増やすか、又は構造遺伝子の上流に存在するプロモーター領域と制限領域又はリボソーム結合部位を突然変異させる。同様に、構造遺伝子の上流に挿入された発現カセットが作用する。誘発可能なプロモーターにより、どの任意の時点でも発現を付加的に増大させることができる。更に、酵素の遺伝子には、規則的な配列としていわゆる"エンハンサー"が付き、これはRNA−ポリメラーゼとDNAの間の改善された相互作用により、同じく高い遺伝子発現が生じる。m−RNAの寿命を長くする手法により、同様に発現が改善される。更に、酵素タンパク質の分解を防止することにより酵素活性が強化される。この場合に、遺伝子又は遺伝子構造は、種々のコピー数を有するプラスミド中に存在するか、又は染色体中に組み込まれ、かつ増幅される。二者択一的に、更に当該遺伝子の過剰発現は、培地組成物と培養方法を変えることにより達成できる。このためのマニュアルは、当業者は特にMartin等(バイオテクノロジー5巻、137-146頁(1987))、Guerrero 等、遺伝子138巻、35-41頁(1994))、Tsuchiya and Morinaga(バイオテクノロジー6巻、428-430頁(1988))、Eikmanns等(遺伝子102巻、93-98頁 (1991))、EP-A 0472869、US 4601893、Schwarzer and Puehler(バイオテクノロジー9巻、84-87頁(1991))、Reinschied 等(応用・環境微生物学60巻、126-132頁(1994) )、LaBarre等(細菌学ジャーナル175巻、1001-1007頁(1993))、WO-A-96/15246、Malumbres等(遺伝子134巻、15-24頁(1993), JP-A-10-229891)、Jensen und Hammer(バイオテクノロジー&バイオエンジニアリング58巻、191-195頁(1998))及び遺伝子及び分子生物学の公知の教書に見いだすことができる。先に記載した方法は、同様に遺伝子的工学的に改変された細胞の突然変異にも通用する。
【0025】
それぞれの遺伝子の発現を高めるために、例えばエピソーマルのプラスミドが使用される。プラスミドとして、特にコリネ型細菌内で複製されるようなものが適切である。多くの公知のプラスミドベクター、例えばpZ1(Menkel等、応用・環境微生物学64巻: 549-554頁(1989))、pEKEx1(Eikmanns等、遺伝子107巻: 69-74頁(1991))又はpHS2-1(Sonnen等、遺伝子107巻:69-74頁(1991))は、クリプティックプラスミドpHM1519、pBL1又はpGAIに基づく。他のプラスミドベクター、例えばpCG4(US4489160)又はpNG2(Serwold-Davis 等、FEMS Microbiology Letters 66: 119-124(1990))又はpAG1(US 5158891)に基づくものも同様に使用できる。
【0026】
更に、染色体内に挿入することにより遺伝子増幅法を使用できるプラスミドベクターも適切であり、例えばReinscheid等によりhom-thrB-オペロンを重複又は増幅することが記載されている(応用・環境微生物学60巻: 126-132頁(1994))。この方法では、完全な遺伝子がプラスミドベクター中でクローニングされるが、これは宿主(一般的には大腸菌)、コリネバクテリウム・グルタミカム内で複製させることができない。ベクターとして、例えばpSUP301(Simon等、バイオテクノロジー1巻: 784-791頁(1983))、pk18mob又はpk19mob(Schaefer等、遺伝子145巻: 69-73頁(1994))、pGEM-T(Promega Corporation、マディソン、ウィスコンシン州、USA)、PCR2.1-TOPO(Shuman、生化学ジャーナル269巻: 32678-84頁(1994))、PCR(R)Blunt(Invitrogen, フローニンゲン州、オランダ)、pEM1(Schrumpf等、微生物学ジャーナル173巻: 4510-4516頁)又はpBGS8(Spratt 等、遺伝子41巻: 337-342頁(1986))を挙げることができる。増幅すべき遺伝子を有するプラスミドベクターは、引き続き接合又は形質転換によりコリネバクテリウム・グルタミクム由来の所望する菌株内に移動する。
【0027】
接合の方法は、例えばSchaefer等により応用・環境微生物学60巻: 756-759頁(1994)に記載されている。形質転換の方法は、例えば、Thierbach等、応用微生物学及びバイオテクノロジー29巻; 356-362頁(1988)、Dunican und Shivnan、バイオテクノロジー7巻: 1067-1070頁(1989)及びTauch 等、FEMS Microbiology Letters 123巻: 343-347パージ(1994)に記載されている。"交差"現象による同種組換えにより、得られる菌株は当該遺伝子の少なくとも2つのコピーを有する。
【0028】
上記及び下記の説明で使用される"その野生型に対して酵素Exの増大した活性"という定義は、特にそれぞれの酵素Exの少なくとも2倍、特に有利には少なくとも10倍、更に有利には少なくとも100倍、更には少なくとも1000倍、かつ最も有利には少なくとも10000倍増大した活性を常に有することであると解釈される。更に、"その野生型に対して酵素Exの増大した活性"を有する本発明による細胞には、特にその野生型が、酵素Exの検出可能な活性を何も有さないか、又は少なくとも有さず、かつ例えば過剰発現により酵素活性が増大した後に、酵素Exの検出可能な活性が示される細胞も含まれる。これに関連して、"過剰発現"という用語又は以下の説明で使用される"発現の増大"という用語には、出発細胞、例えば、野生型細胞が検出可能な活性を何も有さないか、又は少なくとも有さず、組換え法により酵素Exの検出可能な発現が漸く誘発される場合も含まれる。
【0029】
更に、本発明によれば細胞が酵素EIとEII、酵素EIとEIII、酵素EIIとEIII又は酵素EI、EII及びEIII全ての増大した活性を有するのが有利である。
【0030】
更に、先に記載した本発明による細胞の有利な実施態様と関連して、
− 酵素EIは、アルカンモノオキシゲナーゼ又はキシロールモノオキシゲナーゼであるか、又は有利には
− 酵素EIIは、アルカンモノオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ又はアルコールオキシダーゼであるか、又は有利には
− 酵素EIIIはω−トランスアミナーゼである。
【0031】
有利な酵素EI、特に有利にはアルカンモノオキシゲナーゼは、シュードモナス・プチダGPO1由来のalkBGT−遺伝子によりコードされるアルカンモノオキシゲナーゼである。alkBGT−遺伝子配列の単離は、例えば、Beilen等により、"グラム陰性及びグラム陽性細菌からのアルカンヒドロキシラーゼの機能的分析"、微生物学ジャーナル、第184巻(6)、1733〜1742頁(2002)に記載されている。更に、アルカンモノキシゲナーゼとして、シトクロム−p450−モノオキシゲナーゼ、特にカンジダ由来の、例えばカンジダ・トロピカリス由来の、又は植物由来の、例えばヒヨコマメ(Cicer arietinum L.)由来のシトクロム−P450−モノオキシゲナーゼを使用することもできる。カンジダ・トロピカリス由来の適切なシトクロム−P450−モノオキシゲナーゼの遺伝子配列は、例えばWO-A-00/20566に開示されているのに対して、ヒヨコマメ由来の適切なシトクロム−P450−モノオキシゲナーゼの遺伝子配列は、例えばBarz等の"ヒヨコマメ(Cicer arietinum L.)細胞懸濁培養液からの8個のシトクロムp450 cDNAのクローニングとキャラクテリゼーション"、植物科学、第155巻、101〜108頁(2002)から引用できる。更に、alkB-遺伝子の同族体は、Beilen等"石油・ガスサイエンス&テクノロジー"第58(4)巻、427〜440頁(2003)から引用できる。キシロールモノオキシゲナーゼの適切な遺伝子は、例えば、xylM−遺伝子又はxylA−遺伝子であり、その際、これらの2つ遺伝子を含むプラスミドは、遺伝子バンク登録番号(GENBANK−Accession−No.)M37480を有する。
【0032】
有利な酵素EII、特に有利には、アルコール−デヒドロゲナーゼは、例えばalkJ−遺伝子によりコードされるアルコールデヒドロゲナーゼ(EC. 1.1.99-2)であり、特にalkJ−遺伝子によりコードされるシュードモナスプチダGPol由来のアルコールデヒドロゲナーゼである。alkJ−遺伝子によりコードされるシュードモナス・プチダGpol由来、アルカニボラックス・ボルクメンシス由来、ボルデテラ・パラペルツシス由来、ボルデテッラ・ブロンキセプチカ又はロゼオメンシス・デニトリフィカンス由来のアルコードデヒドロゲナーゼの遺伝子配列は、例えばKEGG−遺伝子バンクから得ることができる。
【0033】
適切なω−トランスアミナーゼは、US-A-2007/0092957において例えば配列番号248,250,252及び254により特徴付けられたω−トランスアミナーゼである。
【0034】
有利な酵素EIII、特に有利にはω−トランスアミナーゼは、コリネバクテリウム・ビオラセウムDSM30191(Kaulmann等、2007; "クロモバクテリウム・ビオラセウムDSM30191由来のω−トランスアミナーゼの基質スペクトル及びその生体触媒の可能性" 酵素及び微生物テクノロジー、第41巻、628〜637頁)由来のω−トランスアミナーゼであり、これはSEQ-ID No.01による遺伝子配列によりコードされている。
【0035】
酵素EIIIとして、植物から単離できるω−トランスアミナーゼを使用するのが有利である。ここで植物由来のω−トランスアミナーゼは、シロイヌナズナ、カラスムギ、サトウダイコン、グリシンマックス、オオムギ、ミヤコグサ、トマト、キャッサバ、イネ、コムギ、トウモロコシ、ホウレンソウ、サトウイモ科、トウダイグサ科及びセイヨウサクラを含むグループから選択されるのが有利であり、ここでシロイヌナズナが特に有利である。ω−トランスアミナーゼとして、特にSEQ ID No.39による配列と90%、有利には95%、特に有利には99%、とりわけ有利には100%相同性である核酸によりコードされた酵素が適切である。この場合に、SEQ ID No.39に対して"ヌクレオチド−相同性"は、公知の方法を用いて決定される。一般的に、特にアルゴリズムを用いるコンピュータープログラムは、特殊な必要条件を考慮に入れて使用される。相同性を決定する有利な方法は、まず比較すべき配列の間で最大の一致を生じる。しかし、相同性を決定するためのコンピュータープログラムは以下のもの
− GAP(Deveroy, J 等、核酸研究12巻(1984)、387頁、ウィスコン大学医学部(Wi)遺伝学コンピューターグループ、及び
− BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul, S等、分子生物学ジャーナル215巻(1990)、403-410頁)
を含めたGCG−プログラムパケットを含むが、これに限定されるわけではない。
【0036】
BLAST−プログラムは、国立生物工学情報センター(NCBI)により、かつ更なる情報源(BLAST 教書、Altschul S等、NCBI NLM NIH Nethesda ND 228494;前記Altschul S等)から得られる。
【0037】
ヌクレオチド相同性を決定するために公知のスミス・ウォ−ターマンアルゴリズムを使用することもできる。
【0038】
ヌクレオチドを比較するための有利なパラメーターは、以下のものを含む:
− ニードルマン&ブンシュ(Needleman und Wunsch)のアルゴリズム、分子生物学ジャーナル48巻(1970)、443〜453頁、
− 比較マトリックス
整合= +10
不整合= 0
ギャップペナルティー= 50
ギャップレングスペナルティー= 3。
【0039】
GAP−プログラムは、上記パラメーターを用いて使用するために適切である。前記パラメーターは、ヌクレオチド配列比較の際の省略時のパラメーターである。
【0040】
更に、β−Alaのサブグループから成る酵素ピルベート−トランスアミナーゼが適切である。これには、例えば、シュードモナス・プチダW619由来のトランスアミナーゼ(gi:119860707、gi:119855857、gi:119856278)、シュードモナス・プチダ KT2440(gi: 24984391)由来の、シュードモナス・エルジノーサPA01(gi 15595330、gi: 15600506、gi: 15595418、gi: 9951072)由来の;ストレプトマイセス・コエリコロルA3(2)(gi: 3319731)由来の、ストレプトマイセス・アベルミチリスMA 4680(gi: 29831094、gi: 29829154)由来の、及びクロモバクテリウム・ビオラセウムATCC 12472(gi: 34102747)由来のトランスアミナーゼが属する。前記トランスアミナーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID No.19〜SEQ ID No.30による配列で描写されている。
【0041】
本発明により細胞を、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はカルボン酸エステルから出発して、ω−アミノカルボン酸をベースとするラクタムを製造するために使用する場合には、酵素EI、EII、EIIIのうち少なくとも1つの増大した活性の他に、特に酵素EIとEIII又はEI、EII及びEIIIの増大した活性の他に、酵素EIVの増大した活性を本発明による細胞が有するのが更に有利であり、これはω−アミノカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸にする反応を触媒する。その際、この酵素EIVは、細胞から分泌されるエステラーゼであるのが有利である。細胞によるエステラーゼの分泌は、細胞の外側でエステル結合が切れるという利点を有する。このように、ω−アミノカルボン酸と比べてω−アミノカルボン酸エステルの改善された膜透過性により、十分な目的生成物を細胞から離れた細胞周囲の栄養培地に送ることができる。
【0042】
本発明による有利なエステラーゼは特にリパーゼであり、その際、適切なリパーゼの例として、シュードモナス・フルオレッセンスHU380由来のリパーゼLipA(ACC Code Q76D26, Kojima and Shimizu, "シュードモナス・フルオレッセンスHU380由来のリパーゼの精製とキャラクタリゼーション"、生物科学及び生物工学ジャーナル、第96(3)巻、219〜226頁(2003))が挙げられる。
【0043】
エステラーゼの分離を確実にするために、分離が保障される相応のシグナル配列を当業者に公知の方法で用意することができる。例えば、シュードモナス・フルオレッセンスHU380由来の前記のリパーゼLipAを大腸菌内で発現させる場合には、EstAのシグナル配列を用いて、自然な方法でシュードモナス・エルジノーサの細胞表面上に生じるエステラーゼを用意することができる(Becker等、"脂肪分解酵素を示す大腸菌細胞表面の遺伝子系"、FEBS Letters、第579巻、1177〜1182頁(2005))。更に、適切な酵素はC.antarctica、M. miehei及びP. cepacia由来のリパーゼである(Vayssc等、"酵素及び微生物テクノロジー", 第31巻、648〜655(2002))。二者択一的に、分離したω−アミノカルボン酸エステルを通常のように分離することによりω−アミノカルボン酸を得ることができる。例えば、けん化、すなわちヒドロオキシドの水溶液、例えば、水酸化ナトリウムによるω−アミノカルボン酸エステルの加水分解により得られる。
【0044】
更に本発明によれば、本発明の細胞は、酵素EI、EII、EIIIのうち少なくとも1つの増大した活性の他、有利には酵素EIとEIII又はEI、EII及びEIIIの増大した活性の他、かつ場合により先に記載した酵素EIVの他に、ω−アミノカルボン酸を相応のラクタムにする反応を触媒する酵素EVの増大した活性を有することが有利であることが分かった。その際、ここでも酵素EVが細胞から分泌される場合に有利である。このように、細胞から直接に形成されたω−アミノカルボン酸、又はω−アミノカルボン酸エステルから形成されるω−アミノカルボン酸が細胞外に分離した後に、漸く相応するラクタムに変わる場合に目的生成物の精製が場合により軽減される。
【0045】
本発明による細胞の特に有利な実施態様によれば、酵素EI、EII又はEIIIの1つ以上の増大した活性、ならびに場合により酵素EIV及び/又はEVの増大した活性の他に、α−ケトカルボン酸をアミノ酸にする反応を触媒する酵素EVIの増大した活性を有する。その際に、この酵素EVIは、アミノ酸−デヒドロゲナーゼであるのが有利である。このような細胞の変性は、アミノ酸をNH2−基のドナーとして使用する場合に、トランスアミナーゼ(EIII)によりω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸、相応するω−アミノカルボン酸エステルにする反応を促進するか、もしくは相応するω−アミノカルボン酸エステルを消費し、適切に再生できるという利点を有する。アミノ酸−デヒドロゲナーゼとして、枯草菌(EC No.1.4.1.1; Gene ID: 936557)由来のアラニン−デヒドロゲナーゼが有利であり、これはSEQ ID No.2による遺伝子配列によりコードされる。更に適切なアミノ酸−デヒドロゲナーゼは、セリン−デヒドロゲナーゼ、アスパルテート−デヒドロゲナーゼ、フェニルアラニン−デヒドロゲナーゼ及びグルタメート−デヒドロゲナーゼである。
【0046】
冒頭で述べた課題の解決策は、遺伝子工学的に改変された細胞の製法であり、該方法は細胞内で、以下の酵素:
i) カルボン酸又はカルボン酸エステルを相応するω−ヒドロキシカルボン酸又はω−ヒドロキシカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EI
ii) ω−ヒドロキシカルボン酸又はω−ヒドロキシカルボン酸エステルを相応するω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EII、又は
iii)ω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸又はω−アミノカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EIII
のうち少なくとも1つの活性を高める方法工程を含み、その際、酵素活性の増大は冒頭に記載した方法により行うのが有利である。
【0047】
先に記載した方法の特別な実施態様によれば、この方法では、酵素EI、EII及び/又はEIIIの活性を増大する他に、酵素EIV(ω−アミノカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸にする反応を触媒する)の活性も、及び/又は酵素EV(ω−アミノカルボン酸を相応するラクタムにする反応を触媒する)の活性も、これらの酵素の発現を増大することにより高めることができ、その際、酵素EIV及び/又はEVは、有利には細胞から分泌される。
【0048】
冒頭に挙げた課題を解決するための解決策は、先に記載した方法により得られる遺伝子工学的に改変した細胞である。
【0049】
冒頭に挙げた細胞のもう1つの解決策は、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムの製法であり、以下の方法工程を含む:
I)本発明による細胞を、細胞がカルボン酸から、又はカルボン酸エステルから、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを形成できる条件下で、カルボン酸又はカルボン酸エステルを含む培地と接触させるか、又はカルボン酸又はカルボン酸エステルを含む有機相に隣接する培地と接触させ、
II)場合により、形成されたω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを単離する。
【0050】
本発明による方法の方法工程I)では、細胞をまずカルボン酸又はカルボン酸エステルを含む培地と接触させるか、又はカルボン酸又はカルボン酸エステルを含む有機相に隣接する培地と接触させ、その際、接触は細胞がカルボン酸から、又はカルボン酸エステルから、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを形成できる条件下で行われる。
【0051】
本発明によれば、遺伝工学的に改変された細胞は、ω−アミノカルボン酸又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを栄養培地と接触させ、これにより培養できるようにする目的で、連続的に又は不連続的にバッチ法(batch)で、又は流加培養法(fed-batch)で、又は繰り返し流加培養法(repeated-fed-batch)で行われる。GB-A-1009370に記載されているような半連続的方法も考え得る。公知の培養法による要約は、Chmielの教書("バイオテクノロジー1. バイオプロセス法への入門"(Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))又はStorhasの教書("バイオリアクター及び周囲装置"(Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))に記載されている。
【0052】
使用すべき培地は、それぞれの菌株の要求に適切な方法で応じなくてはならない。種々の微生物の培地の説明は、米国細菌学学会の教書"一般細菌学のマニュアルと方法"(ワシントンD. C., USA, 1981)に含まれている。
【0053】
カルボン酸又はカルボン酸エステルの他に、炭素源として、炭化水素、例えば、グルコース、サッカロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、デンプン及びセルロース、油及び脂肪、例えば、大豆油、ヒマワリ油、落花生油及びヤシ油、脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸、アルコール、例えば、グリセリン及びメタノール、炭化水素、例えば、メタン、アミノ酸、例えば、L−グルタメート、L−バリン又は有機酸、例えば酢酸を使用できる。これらの材料は別個に又は混合物として使用できる。炭水化物、特にUS 601494及びUS 6136576に記載されているような単糖類、オリゴ糖類又は多糖類、C5−糖又はグリセリンの使用が特に有利である。
【0054】
窒素源として、窒素含有有機化合物、例えば、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、トウモロコシ膨化水、大豆粉及び尿素、又は無機化合物、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムを使用できる。窒素源は、別個に又は混合物として使用できる。
【0055】
リン源として、リン酸、リン酸カリウム又はリン酸水素二カリウム又は相応のナトリウム含有塩を使用できる。培地は、成長に必要な硫酸マグネシウム又は硫酸鉄のような金属塩を更に含有しなくてはならない。最終的に、アミノ酸やビタミンのような重要な成長材料を付加的に上記の材料に使用できる。これに加えて培地に適切な前駆体を添加できる。前記の使用材料は、1回の反応物の形で培地に添加するか、又は適切な方法で培養の間に供給することができる。
【0056】
培養のpHをコントロールするために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアもしくはアンモニア水のような塩基性化合物、又はリン酸もしくは硫酸のような酸性化合物を適切な方法で使用できる。泡の発生をコントールするために、例えば、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を使用してもよい。プラスミドの安定性を維持するために、培地に選択的に作用する適切な材料、例えば抗生物質を添加してもよい。好気性条件を維持するために、酸素又は酸素含有気体混合物、例えば、空気を培養で用いてもよい。培養の温度は、通常は20℃〜45℃で、有利には25℃〜40℃である。
【0057】
本発明による細胞として、大腸菌由来の組換え細胞が使用されるω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを製造するための本発明による方法の特に有利な実施態様によれば、栄養培地として、Riesenberg 等の"ヒトインターフェロンα1を発現する組換え型大腸菌の高密度の細胞発酵"(Appl Microbiol and Biotechnology, 第34(1)巻、77〜82頁(1990))による、アンピシリン、クロラムフェニコール及びカナマイシンを補充したミネラル塩培地が使用される。
【0058】
方法工程I)における本発明による細胞と培地との接触は、細胞がカルボン酸から、又はカルボン酸エステルからω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを形成できる条件下で行われる。カルボン酸又はカルボン酸エステルとして、特に6〜20個の範囲内、有利には6〜15個の範囲内、特に6〜12個の範囲内の炭素数を有するカルボン酸が該当し、その際、ラウリン酸がカルボン酸として特に有利である。カルボン酸エステルとして、特に先に挙げたカルボン酸のメチルエステル又はエチルエステルが該当し、その際、ラウリン酸のメチルエステルがカルボン酸エステルとして特に有利である。
【0059】
方法工程I)でω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを製造する際に、種々の手順が考え得る。
【0060】
本発明による方法の実施態様によれば、まずバイオマスを生産する目的で、カルボン酸又はカルボン酸エステルを含有していない、特に先に挙げた有利なカルボン酸又はカルボン酸エステルを含有していない栄養培地で培養される。一定のバイオマスが得られた後に、カルボン酸又はカルボン酸エステルを栄養培地に添加するか、又はカルボン酸又はカルボン酸エステルを含有する新たな栄養培地と細胞を接触させる。これに関連して、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを形成する間に、カルボン酸もしくはカルボン酸エステルの含有量は、1〜200g/lの範囲内、特に有利には20〜200g/lの範囲内である。
【0061】
本発明による方法の他の実施態様によれば、これは
A)水相、ならびに
B)有機相
を含む2相系で実施できる。
【0062】
その際、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムの形成は、方法工程I)において細胞により水相で行われ、かつ形成されたω−アミノカルボン酸、形成されたω−アミノカルボン酸エステル、ω−アミノカルボン酸から由来する形成されたラクタムは有機相で富化される。このように、形成されたω−アミノカルボン酸、形成されたω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来する形成されたラクタムは、in situで抽出される。
【0063】
本発明による方法のこの実施態様では、バイオマス生産の目的で、まずカルボン酸又はカルボン酸エステルを含有しない、特に先に挙げたカルボン酸又はカルボン酸エステルを含有しない栄養培地中で細胞を培養することが有利であることが分かった。次に、一定のバイオマスが得られた後に、水相A)としての細胞懸濁液を有機相B)と接触させる。その際に、特に有機相B)はカルボン酸又はカルボン酸エステルを有利には1〜200g/lの範囲内、特に有利には20〜200g/lの範囲内で含む。しかし、カルボン酸又はカルボン酸エステルとして、使用される細胞に関して毒性ではない基質、例えばラウリン酸メチルエステルのようなものを使用する場合には、有機相のカルボン酸又はカルボン酸エステルの含有量は、著しく高くてもよい。このような場合には、有機相として純粋なカルボン酸、もしくは純粋なカルボン酸エステル、例えば純粋なラウリン酸メチルエステルを使用することも考えられる。
【0064】
有機相として、平均鎖長のアルカン、有利には、4を上回るlogP値を有するもの(僅かな泡形成)、又は物理的に似た芳香族又は芳香族エステルを使用できるが、しかし、先に説明したように、ラウリン酸エステル、特に有利にはラウリン酸メチルエステル、BEHP(ビス(2−エチルヘキシル)フタレート)又は長鎖脂肪酸エステル(Biodiesel)が有利である。
【0065】
更に本発明によれば、方法工程I)で使用されている培地が、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを形成するフェーズの際に、アミノ基の供与体、例えば、アンモニアもしくはアンモニウムイオン又はアミノ酸、特にアラニン又はアスパラギン酸塩を含有するのが有利である。これらは、トランスアミナーゼにより、ω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸又はω−アミノカルボン酸エステルにする反応を触媒する際にアミン−ドナーとして機能する。
【0066】
本発明の方法による方法の方法工程II)では、形成されたω−アミノカルボン酸、形成されたω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムが場合により単離され、その際、単離は下記の工程を含む少なくとも2段階の精製工程で行われる:
a)ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを培地から抽出する抽出工程、ならびに
b)方法工程a)で得られた抽出物を蒸留法により、又は選択的な結晶化により、少なくとも99.8%の純度を有するω−アミノカルボン酸相、ω−アミノカルボン酸エステル相又はラクタム相を得ながら更に精製する精製工程。
【0067】
方法工程a)での抽出は、特にいわゆる"in situ"抽出として準備することができ、その際に、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを製造するための本発明による方法の方法工程I)とII)を同時に行うことができる。この"in situ"抽出は既に先に記載してある。
【0068】
方法工程II)の精製は、例えば蒸留又は結晶化により行うことができる。
【0069】
ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを製造するための本発明による方法の特殊な実施態様では、方法工程I)で形成されたω−アミノカルボン酸エステルを、更なる方法工程で通常の化学的方法を用いて反応させてω−アミノカルボン酸にする。有利には通常の化学的方法は、ω−アミノカルボン酸エステルを塩基、ヒドロキシド、有利には水酸化ナトリウムの水溶液と反応させてω−アミノカルボン酸にするけん化である。ラウリン酸エステルから、有利にはラウリン酸メチルエステルからのω−アミノカルボン酸の製法を使用するのが有利である。
【0070】
冒頭で挙げた課題の解決策は、先に記載した方法により得られるω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムであり、その際、ラクタムはラウリンラクタムであるのが有利であり、これはω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを製造するための本発明による方法の方法工程I)で、ラウリン酸又はラウリン酸エステルがカルボン酸もしくはカルボン酸エステルとして使用される場合に得られる。その際、ω−アミノカルボン酸はω−アミノラウリン酸であり、かつω−アミノカルボン酸エステルがω−アミノラウリン酸メチルエステルであるのが有利である。
【0071】
冒頭に挙げられた課題の解決策は、ω−アミノカルボン酸をベースとするポリアミドの製法であり、以下の方法工程を含む:
(α1)先に記載したω−アミノカルボン酸を製造する方法により、特に先に記載したω−アミノカルボン酸をラウリン酸又はラウリン酸エステルから製造する方法により、ω−アミノカルボン酸を製造し、
(α2)ポリアミドを得ながらω−アミノカルボン酸を重合する。
【0072】
ω−アミノカルボン酸をベースとするポリアミドを製造するための本発明による方法の方法工程(α2)では、方法工程(α1)で得られるω−アミノカルボン酸、特に方法工程(α1)で得られるω−アミノカルボン酸は、重合の形で反応してポリアミドになる。その際、場合により種々のω−アミノカルボン酸から成る混合物を使用することもでき、そのうちω−アミノカルボン酸のうち少なくとも1つ、場合により全てのω−アミノカルボン酸は本発明によるω−アミノカルボン酸の製法により製造される。
【0073】
ω−アミノカルボン酸からのポリアミドの製造は、例えばL. Notarbartolo, Ind. Plast. Mod. 10(1958)2、44頁、JP 01-074224、JP 01-051433、JP 63286428、JP 5808324又はJP 60179425に記載されているような公知の方法で行うことができる。
【0074】
冒頭に挙げた課題の解決策は、以下の方法工程を含むラクタムをベースとするポリアミドを製造する方法によっても達成される:
(β1)ω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを製造するための先に記載した方法により、特にラウリンラクタムをラウリン酸又はラウリン酸エステルから製造するための先に記載した方法により、ラクタムを製造し、
(β2)ポリアミドを得ながらラウリンラクタムを環開重合又は縮重合する。
【0075】
本発明によるラクタムをベースとするポリアミドの製法の方法工程(β2)では、方法工程(β1)で得られるラクタム、特に方法工程(β1)で得られるラウリンラクタムが、環開重合において、又は縮重合により反応してポリアミドになり、その際、場合により種々のラクタムの混合物、例えば、ラウリンラクタムとε−カプロラクタムから成る混合物を使用することができる。そのうち、ラクタムの少なくとも1つ、場合により全てのラクタムは、本発明によるω−アミノカルボン酸から由来するラクタムの製法により製造される。
【0076】
ラクタムからのポリアミドの製造は、例えば、DE-A-1495198、DE-A-2558480、EP-A-0129196、又は"Polymerization Processes", Inters-science, New York, 1977、424〜467頁、特に444〜446頁に記載されているような公知の方法によって行うことができる。
【0077】
冒頭に挙げた課題の解決策は、先に記載した方法により得られるポリアミドである。この場合に、ポリアミドが少なくとも10質量%まで、特に有利には少なくとも25質量%まで、より有利には少なくとも50質量%まで、最も有利には少なくとも75質量%までがラウリン酸、ラウリン酸エステル又はラウリンラクタムをベースとするのが特に有利であり、これは本発明によるラウリン酸、ラウリン酸エステルもしくはラウリン酸又はラウリン酸エステル由来のラウリンラクタムの製法により得られるのが特に有利である。
【0078】
本発明を以下の図と実施例により詳説するが、これに限定されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、大腸菌においてalk遺伝子を染色体挿入するための組換えプラスミドの図式を示す(tnp:トランスポゼース遺伝子;bla:アンピシリン耐性遺伝子、oriT RP4:可動化領域;I及びOは、ミニ−トランスポゾンTn5の"逆方向反復"を指す)。
【図2】図2は、アラビノースによって誘発可能なプロモーターの制御下に、トランスアミナーゼとアラニン−デヒドロゲナーゼを発現するための組換えプラスミドの図式を示す。
【図3】図3は、大腸菌内でLipAを発現するための組換えプラスミドの図式ならびに細胞表面での酵素の図を示す(colE1、ColE1:複製起源;estA*、estA:セリンに対してアラニンがアミノ酸置換された遺伝子(Codon#38)、cat:クロラムフェニコール耐性遺伝子; phoA:アルカリ性ホスファターゼのリーダー配列をコードする遺伝子断片)。
【図4】図4は、酵素アッセイによるC.violaceum−トランスアミナーゼの活性測定である。活性の測定は、光度計を用いて二重測定(活性1、活性2)により実施した。マイナスのコントロールとして、補助基質−アラニン無しの反応物(o. Cos)、熱不活性化酵素を有する反応物(不活性)、及び空ベクターを有する大腸菌発現培養から成る反応物(空ベクター)をω−TAと同様に精製して使用した。
【図5】図5は、基質12−アミノラウリン酸メチルエステルのクロマトグラムを示す。初めに基準測定(上)及び精製したトランスアミナーゼと2時間インキュベートした後(下)。
【図6】図6は、酵素アッセイ24時間後(上)の基質12−アミノラウリン酸メチルエステルのクロマトグラム及び基質を増大した後のもの(コントロール、下)を示す。
【図7】図7は、酵素を熱不活性化した後(上)と0時間後の基質12−アミノラウリン酸メチルエステルの6個のクロマトグラムを示す。
【図8】図8は、alkBGTSを増幅するためのテンプレートとして使用した出発プラスミドpGEc47を示す。
【図9】図9は、使用したプライマーと、これから得られたPCR産物alkBFGとalkTを示す。
【図10】図10は、ヒドロキシラウリン酸メチルエステルとオキソラウリン酸メチルエステルの合成に使用した組換えベクターpBT10を示す。
【図11】図11は、基準物質12−オキソラウリン酸メチルエステルのGC−クロマトグラムを示す。
【図12】図12は、基準物質12−ヒドロキシラウリン酸メチルエステルのGC−クロマトグラムを示す。
【図13】図13は、バイオリアクター内における休止細胞の微生物変換によるラウリン酸メチルエステルの有機相のクロマトグラムを示す(時点0分)。
【図14】図14は、バイオリアクター内における休止細胞の微生物変換によるラウリン酸メチルエステルの有機相のクロマトグラムを示す(時点150分)。
【図15】図15は、AT3G22200を有する発現ベクターpGJ3130を示す。
【図16】図16は、カップリングした酵素アッセイによる酵素活性の検出を示す(inaktiv:熱不活性化タンパク質;o. Cos.:アラニン添加なし;akt:精製した活性酵素)。
【図17】図17は、HPLCによる異種発現タンパク質AT3G22200の検出を示す(上:10.8minにて20分インキュベーションした後の生成物、下:10.8minでの基準物質)。
【図18】図18は、トランスアミナーゼ遺伝子ppta5(pPPTA5)を有する発現ベクターpET-21a(+)のプラスミドマップを示す。
【図19】図19は、トランスアミナーゼ遺伝子pta(pPSTA)を有する発現ベクターpET-21a(+)のプラスミドマップを示す。
【図20】図20は、トランスアミナーゼPPTA5による5mM12−オキソラウリン酸メチルエステルのアミノ化を示す。評価に関しては、得られた中性及び酸性抽出のクロマトグラムから12−オキソ−、及び12−アミノラウリン酸メチルエステルのピーク面をまとめ、かつ反応物もしくは生成物のパーセント部を計算した。
【図21】図21は、トランスアミナーゼPSTAによる5mM12−オキソラウリン酸メチルエステルのアミノ化を示す。評価に関しては、得られた中性及び酸性抽出のクロマトグラムから12−オキソ−、及び12−アミノラウリン酸メチルエステルのピーク面をまとめ、かつ反応物もしくは生成物のパーセント部を計算した。
【0080】
実施例
A.ラウリン酸もしくはラウリン酸メチルエステルのラウリンラクタムへの反応
ラウリン酸もしくはラウリン酸メチルエステルを反応させてラウリンラクタムにするために、大腸菌を必要な酵素モノオキシゲナーゼ、アルコール−デヒドロゲナーゼ、ω−トランスアミナーゼ、アラニン−デヒドロゲナーゼ及びリパーゼで補充した。酵素を大腸菌内で発現させた。その際、個々の酵素の発現レベルは個々の反応の動態に左右され、かつ互いに最適に合わせなくてはならない。発現レベルの調節は、相応の誘発剤の量を添加することにより行った。モノオキシゲナーゼとアルコール−デヒドロゲナーゼの発現をn−オクタンで誘発し、トランスアミナーゼとアラニン−デヒドロゲナーゼをアラビノースで誘発し、かつリパーゼをIPTGで誘発した。
【0081】
A1.個々の酵素のクローニング
ヒドロキシル化とアルデヒド形成
ラウリン酸もしくはラウリン酸メチルエステルをヒドロキシル化するために、シュードモナス・プチダ Gpo1由来のアルカンヒドロキシラーゼ系alkBGTを使用した。第二工程で、アルコールデヒドロゲナーゼalkJにより触媒してアルデヒドにした。
【0082】
ミニ−トランスポゾンTn5染色体を大腸菌のゲノムに挿入することにより、この反応に必要な遺伝子alkBGJTを大腸菌に組み込んだ(de Lorenzo等、微生物学ジャーナル、第172(11)巻、6568〜6572頁及び6557〜6567頁(1990);Panke等、応用・環境微生物学、5619〜5623頁(1999))。この場合に、遺伝子はalkB−プロモーターとプラスのレギュレーターalkSの制御下に発現しなくてはならない。Tn5−alkBGFJST−構築物の大腸菌−目的生物への転写は可動性プラスミドpUT−Kmを用いて行った(上記Panke等、1999)。
【0083】
alkST遺伝子座と発現に関連するレギュレーターalkSをalkBFGHJKLオペロンの外側に組織化し、かつシュードモナス・プチダのゲノム中に反対方向で配置した。クローニングの際に、この遺伝子の配置はトランスポゾンを有するプラスミド内でも保持された。断片alkSTとalkBFGJを互いにプラスミドに組込んだ。
【0084】
クローニングすべき遺伝子alkB(SEQ-ID No.03)alkG(SEQ ID No.4)及びalkJ(SEQ ID No.05)をシュードモナス・プチダ内で全部一緒にオペロンalkBFGHJKL中で組織化したが、アルデヒド−デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子alkHとは別であった。この酵素は目的の中間生成物、ラウリン酸のアルデヒドを再び分解するので、alkBGJ遺伝子のクローニングから排除しなくてはならない。
【0085】
alkBとalkGのクローニングを簡素化するために、この間に存在する遺伝子alkFをalkBとalkGと一緒に増幅し、かつクローニングした。AlkFは、触媒すべき反応にとって重要ではない。遺伝子alkBFGとalkJは2つの別々のPCR−反応物内で増幅され、かつSOE−PCRにより互いに融合される(Horton等、遺伝子、第77巻、61〜68頁(1989))。目的のDNAとしてシュードモナス・プチダGPo1由来のOCT−プラスミドを使用した。
【0086】
A2.クローニングストラッテジー
alkTの上流のNotI−切断部位と一緒に断片alkST=4077bp(SEQ ID No.06(alkS)とSEQ ID No.07(alkT))をPCR−増幅した:
プライマー
alkT−フォワード−NotI(SEQ ID No.08)
5’ ACGTAGCGGCCGCCTAATCAGGTAATTTTATAC
AlkS−リバース(SEQ IDNO.09)
5’ GAGCGAGCTATCTGGT。
【0087】
トランスポゾンを有するベクターpUT-Km内でPCR−断片をクローニングした。このために、ベクターをTn5の内部でNotIで切断し、かつ平滑末端のライゲーションによりalkST−断片とラーゲーションした。組換えプラスミドは、pUT-Km-alkSTの標識を有した。
【0088】
A3.SOE-PCR−法によるalkBFGJ−構築物の合成
断片1の合成:alkBFG+alkBの上流のプロモーター及び5’−末端のNotI−切断部位(生成物サイズ:1409bp)。
プライマー
alkBFG−フォワード−NotI(SEQ ID No.10)
5’ TCGTAGCGGCCGCCCAGCAGACGACGGAGCAA
alkBFG−リバース−SOE(SEQ ID No.11)
5’ ATTTTATCTTCTCGAGGCTTTTCCTCGTAGAGCACAT
断片3、alkJの合成(5’末端でalkGに相補的末端及び3’末端でNotI−切断部位を有する)(生成物サイズ:1723bp):
プライマー
alkJ−フォワード−SOE(SEQ ID No.12)
5’ TGCTCTAACGAGGAAAAGCCTCGAGAAGATAAAATGTA
alkJ−リバース−NotI(SEQ ID No.13)
5’ ATTGACGCGGCCGCTTACATGCAGACAGCTATCA
2つの別個の断片をSOE-PCRにより互いに融合した(3つの別々のPCR反応が必要である)。組換えプラスミドpUT−Km−alkSTとalkBFGJ−構築物をNotIで切断し、かつライゲーションした。新たな組換えプラスミドpUT-Km−alkBGJST(図1参照)を大腸菌HB101内で形質転換し、かつ接合性プラスミドトランスファーにより大腸菌JM101に移した。
【0089】
A4.アミノ化とアミノドナー再生
ω−アミノラウリン酸エステルをアミノ化し、かつアミノドナーを再生するために、Tn5:alkBGJSTを有する大腸菌菌株JM101を組換えプラスミドpBAD-CV2025-aldで形質転換した。このプラスミドは、ベクターpBAD30をベースとしている(Guzman等、"アラビノースPBADプロモーターを有するベクターによる厳格な制御、調節及び高レベル発現"J. Bacteriol., 第177巻(14)4121〜4130(1995))。PBAD -CV2025-aldは、クロモバクテリウム・ビオラセウムDSM30191(SEQ ID No.01; Kaulmann等、酵素及び微生物テクノロジー第41巻、628〜637頁(2007))由来のトランスアミナーゼCV2025の遺伝子と、枯草菌subsp.Subtilis(SEQ ID No.02; NP_391071)由来のアラニン−デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子aldを有する。遺伝子には、このアラビノースの制御下に誘発されるプロモーターが存在する。
【0090】
A5.クローニングストラッテジー
クロモバクテリウム・ビオラセウムDSM30191由来の染色体DNAとのトランスアミナーゼ−遺伝子のPCR−増幅(生成物サイズ:1415bp):
プライマー
CV2025-フォワード−SaclI(SEQ ID No. 14)
5’ CGAGGAGCTCAGGAGGATCCAAGCATGCAGAAGCAACGTACG
CV2025-リバース−KpnI(SEQ ID No.15)
5’ GTCATGTACCCCTAAGCCAGCCCGCGCGCCT
ベクターpBAD30内でクローニングするために、フォワードプライマーはXbaI−切断部位の他にリボソーム結合部位を有した。ベクターpBAD30内でのライゲーションは切断部位SaclIとKpnIで行った。組換えベクターはpBAD-CV2025の標識を有する。
【0091】
枯草菌subsp.Subtilis(NP_391071)由来の染色体DNAとのアラニン−デヒドロゲナーゼ−遺伝子aldのPCR−増幅(生成物サイズ:1171bp):
プライマー
AlaDH-フォワード−XbalI(SEQ ID-No.16)
5’ ACCTATCTAGAAGGAGGACGCATATGATCATAGGGGTTCCT
AlaDH−リバース−PstI(SEQ ID No.17)
5’AACCTCTGCAGTTAAGCACCCGCCAC
組換えベクターpBAD-CV2025内でクローニングするために、フォワードプライマーはXbaI−切断部位の他にリボソーム結合部位を有した。クローニングは切断部位XbaIとPstIでベクター内で行った。得られたプラスミドはpBAD-CV2025- aldの標識を有する(図2参照)。
【0092】
A6.大腸菌においてコドンが最適化された発現をするためのクロモバクテリウム・ビオラセウムDSM30191由来の遺伝子ω−トランスアミナーゼの二者択一的クローニング
Geneart社においてω−トランスアミナーゼをコードする遺伝子(SEQ ID No.42)を大腸菌用のコドン利用に最適化して合成し、かつベクターpGA15(Geneart)内でクローニングした。この場合に、遺伝子の合成の際に切断部位SacIとKpnIの側面に挿入し、かつSacIとKpnIで消化した後に、予めSacIとKpnIで線状化しておいたベクターpGA15内でクローニングした。得られたベクターを制限エンドヌクレアーゼSacIとKpnIで消化し、断片(トランスアミナーゼ)を精製し、かつ発現ベクターpaCYCDuet-1(Npvagen)内でラーゲーションした。制限分析により正確なプラスミドを検査した。生じたベクターはpaCYCDuet-1::ω−トランスアミナーゼと称する。
【0093】
A7.6xHis-Tagによる異種発現タンパク質の精製
大腸菌(XL1 blue)内でベクター(paCYCDuet-1::ωトランスアミナーゼ)を形質転換した後に、形質転換された菌株を抗生物質アンピシリン含有(100μg/ml)YT−二重培地(dYT)内でOD600nm=0.3〜0.4になるまで28℃で培養した。発現は、Placプロモーターの制御下に行い、かつIPTG(最終濃度1mM)で誘発した。細菌発現培養の細胞溶解物:2360×gで50ml培地を遠心分離し、かつ引き続き5mM EDTA、300mM NaCl及び1mg/mlリゾザイム含有5ml リン酸ナトリウム緩衝液(pH8)中で再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。細胞溶解物を2360×gで10分間遠心分離し、かつ上澄液をProtino Ni-TED 2000充填カラムにより(製造者の指示に従う;Macherey-Nagel, Dueren)精製した。タンパク質濃度をブラッドフォールド法により決定した。
【0094】
A8.カップリングアッセイによる酵素活性の検出
カップリングアッセイにおいて活性を決定し、その際にトランアミナーゼ反応の副生成物として生じたピルベートを第二工程で更に反応させ、NADHをNAD+に酸化させた。NADH−濃度の減少(原理:吸光度減少の測定)は、340nmにおいて光度計で測定し、かつ活性の尺度として使用した。
【0095】
【表1】

【0096】
アッセイは12−ODME5μl(50mg/ml)の添加により開始した。測定は、1分毎に340nmにおいて室温で最大20分まで連続的に行った。コントロールに、不活性化したタンパク質と補助基質なしの反応物を使用した。図4では、吸光度の変化を光度測定により追跡することができる。
【0097】
A9.HPLCによる異種発現タンパク質の検出
【表2】

【0098】
室温で4時間インキュベートした後に、1体積MeOHで反応を中断した。HPLC−分析のために反応物をo−フタルジアルデヒド(oPA)で誘導化し、かつこのうち250μlを分析した。溶出液Aとして50mM NaAC pH4:アセトニトリル=4:1(v:v)を使用した。
【0099】
溶出液Bは、5%50mM NaAC pH4含有アセトニトリルであった。勾配は、30%B〜60%Bを4分間、60%B〜100%Bを2分間で通した。流量は1.2ml/分であった。
【0100】
分離は、Agilent Zorbax RP18カラムにより行った(Agilent Technologies, USA)。カラム温度は40℃であった。図5と6には、基準物ならびに12−オキソラウリン酸メチルエステルの吸収が示されている。マイナスのコントロールとして熱不活性化酵素を使用した(図7)。
【0101】
A6.エステル分離
ω−アミノラウリン酸メチルエステルを分離してω−アミノラウリン酸にするために、シュードモナス・フルオレッセンス由来のリパーゼLipA(Q76D26)を使用した。(Kojima&Shimizu, J. of Bioscience and Bioengin、第96(3)巻、219-226頁)(2003))。遺伝子をプライマーLipA-SfiI-upとLipA-SfiI-downを用いてシュードモナス・フルオレッセンスの染色体DNAと一緒に増幅し、かつSfiI−切断部位によりベクターpEST100内でクローニングした。組換えプラスミドはpEST-lipAの標識を有する(図3)。
【0102】
クローニングによりlipA(SEQ ID No.18)をアルカリ性ホスファターゼphoAのシグナル配列、かつEstA(緑膿菌由来のエステラーゼ)のオートトランスポータードメインに融合し、細胞質膜を介してリパーゼを転写し、かつ大腸菌の細胞表面上で調製した。手法に関しては、Becker等"脂肪分解酵素を示す大腸菌細胞表面の遺伝子系"、FEBS Letters 第579巻、1177〜1182頁(2005)を参照のこと。発現はPlacプロモーターの制御下に行い、かつIPTG(最終濃度1mM)で誘発した(生成物サイズ:1894bp)。
プライマー
Primer lipA-Sfi-up (SEQ ID No.19)
5’ AACAAAAGGGCCGCAATGGCCATGGGTGTGTATGACTAC
Primer lipA-Sfi-down (SEQ ID NO.20)
5’ TACAGGGGCCACCACGGCCTCAGGCGATCACAATTCC
B シュードモナス・プチダGPol由来のAlkBGTアルカンヒドロキラーゼ系によるラウリン酸メチルエステルから出発する12−ヒドロキシラウリン酸メチルエステルと12−オキソラウリン酸メチルエステルの合成
B1.alkBGT発現ベクターの構築
pCOMから出発
pCOM系(Smith等、2001プラスミド64巻:16〜24)から出発して、構築物pBT10(図10、SEQ ID No.31)を製造した。これには、アルデヒドへの酸化に必要な3成分であるシュードモナス・プチダ由来のアルカン−ヒドロキシラーゼ(AlkB)、ルブレドキシン(AlkG)及びルブレドキシン−リダクダーゼ(AlkT)が含まれている。3つの遺伝子を発現させるために、alkBFG遺伝子配列をalkB−プロモーターの制御下に調節し、かつalk-T遺伝子をalkS−プロモーターの制御下に制御した。
【0103】
B2.クローニングストラッテジー
alkBとalkGのクローニングを簡素化するために、これらの間に存在する遺伝子alkFをalkBとalkGと一緒に増幅し、かつクローニングした。AlkFは触媒すべき反応にとって重要ではない。alkBの上流のNdeI−切断部位及びalkGの下流のShalI−切断部位と一緒に断片alkBFG=2524bpをPCR−増幅した(SEQ ID No.03(alkB)とSEQ ID No.4(alkG)比較):
プライマー:alkBFGフォワード(SEQ ID No.32)
AAGGGAATTCCATATGCTTGAGAAACACAGATTC
プラーマー:alkBFGリバース(SEQ ID No.33)
AAAATTCGCGTCGACAAGCGCTGAATGGGTATCGG
断片alkT(2958bp)のPCR増幅(SEQ ID No.7(alkT)比較)
プライマーalkTフォワード(SEQ ID No,34)
TGAGACAGTGGCTGTTAGAG
プライマーalkTリバース(SEQ ID NO.35)
TAATAACCGCTCGAGAACGCTTACCGCCAACACAG
断片alkBFGとalkTの増幅をPCRにより行った。テンプレートとしてプラスミドpGEc47(図12)を使用した[Eggink等(1987)生化学ジャーナル262巻、17712-17718頁]。
【0104】
クローニングは、サブクローニングベクターpSMART(R)HCKan(Lucigen)により実施した。この付加的な工程は必要であった。それというのも、直接的なクローニングが成功しなかったからである。このために、市販されていて、既に線状化されて平滑末端を備えたベクターpSMART(R)HCKan(Lucigen Corporation)をそれぞれ平滑末端のPCR−産物(図9)とライゲーションした。
【0105】
引き続き、alkBFG−断片を制限酵素NdeIとSalIで、かつalkT−断片を制限酵素PacIとXhoIでサブクローニングベクターから切り取った。この断片をアガロースゲル(1%)中で分離し、ゲルから切り取り、かつゲル抽出キットにより単離した。断片を互いにベクターpCOM10(Smits, T.H.M., Seeger, M. A., Witholt, B & van Beilen, J. B. (2001) Plasmid 46, 16-24)内でライゲーションした。第一工程では、alkBFGを切断部位NdeIとSalIによりpCOM10に挿入し、第二工程でalkTを切断部位PacIとXhoIによりクローニングした。
【0106】
組換えプラスミドをまず大腸菌DH5αで形質転換した。プラスミドを有するクローンをカナマイシン含有LB培地で選択した。これから単離したプラスミドを制限分析とシーケンス化によりクローニングした。これはpBT10の標識を有する(図10)。
【0107】
B3.バイオリアクターにおけるラウリン酸−メチルエステルからヒドロキシラウリン酸メチルエステルと12−オキソラウリン酸メチルエステルへの微生物変換
微生物変換させるためにプラスミドpBT10を42℃で2分間のヒートショックにより化学耐性菌株E.Coli W3110内で形質転換させた。ヒドロキシラウリン酸メチルエステルと12−オキソラウリン酸メチルエステルの合成に、E.Coli W3110-pBT10をM9培地中、30℃かつ180rpmで一晩培養し、かつ回収した。0.5%グルコース含有M9培地中でOD450=0.2になるまでバイオマスを吸収した。ジシクロプロピルケトンで4時間成長させた後に発現を誘発し、かつ更に4時間インキュベートした。細胞を新たに遠心分子し、かつ細胞ペレットをKPi−緩衝液(50mM, pH7.4)中に再懸濁し、かつバイオリアクターに添加した。バイオマス濃度を約1.8gCDW/Lに調節した。強力に撹拌しながら(1500分-1)基質であるラウリン酸メチルエステルを1:3の比で細胞懸濁液に添加した(100ml細胞懸濁液、50mlラウリン酸−メチルエステル)。温度は30℃で一定に保持した。生成物ヒドロキシラウリン酸メチルエステルと12−オキソラウリン酸メチルエステルの形成を反応物のGC−分析により検出した。このために、マイナスのコントロールとして0分後(図13)と150分後(図14)に、反応物の有機相からプローブを取り出し、かつGC(Thermo Trace GC Ultra)により分析した。カラムとしてVarian Inc. FactorFourTM VF-5mを使用した(長さ:30m、フィルム厚:0.25μm、内径:0.25mm)。
分析条件:
炉温度 80〜280℃
ランプ 15℃/分
スプリット比 15
注入容量 1μl
キャリアー流量 1.5ml/分
PTV注入器 80〜280℃、15℃/秒にて
検出器ベース温度: 320℃
12−オキソラウリン酸メチルエステル(図11)と12−ヒドロキシラウリン酸メチルエステル(図12)の検出は純粋な物質の注入により示されている。
【0108】
C 12−オキソラウリン酸メチルエステルから12−アミノラウリン酸メチルエステルへの反応
C1:シロイヌナズナ由来のアミノトランスフェラーゼの単離と発現
シロイヌナズナ由来の公知のアミノトランスフェラーゼを分析した。この場合に意外にも4−アミノブチレート−トランスアミナーゼ(at3g22200, SEQ ID No.38)は、12−オキソドデカン酸メチルエステルに対して、約14U/mgの異種発現タンパク質の活性を示した。この生成物12−アミノドデカン酸メチルエステルをHPLCにより確認した。
【0109】
特記されない限り、全ての方法はSambrook, J. Fritsch, E. F., & Maniatis, T(1989), 分子クローニング第二版、New York: Cold Spring Harbor Laboratory Pressのプロトコールにより行った。
【0110】
シロイヌナズナ由来(at3g22200)の4−アミノブチレートトランスアミナーゼの単離
RNeasy Mini Kitを用いて、製造者であるQIAGEN GmbH(Hilden)の指示に従い成長の良いシロイヌナズナの植物種からRNAを単離した。引き続き、製造者の指示に従いRT Skript Kit(USB Europe GmbH, Staufen)を用いてcDNA合成を実施した。RNA−品質/量の決定は製造者(Thermo Fisher Scientific Inc.Waltham USA)の指示に従いナノドロップを用いて決定した。
シロイヌナズナcDNAから切断部位を挿入するためのPCR
以下のプライマーを用いて、4−アミノブチレートトランスアミナーゼをコードするDNA(SEQ ID NO.19)をNaeI、BamHIで消化したベクター中でクローニングした。
【0111】
フォワードプライマーにプロテアーゼ切断部位とNaeIを挿入、SEQ ID No.36
GCCGGCGAGAACCTGTACTTTCAGATGGCAAGTAAGTATGCCACTTG
リバースプラーマーにBamHIを挿入、SEQ ID No.37
GGATCCTCACTTCTTCTTGTGCTGAGCCTTG
PCRを以下のプロトコールに従って実施した:
【表3】

【0112】
生じたPCR産物をNucleoSpin(R) Extract II Kit(Macherey-Nagel、ドイツ国、製造者の指示に従う)で精製した。
【0113】
異種タンパク質の発現
上記PCR産物を使用しながらベクターpGJ3130(図15、SEQ ID No.43)を標準的な分子生物学法により製造し、かつ大腸菌(XL1blue)内で形質転換した。形質転換した大腸菌菌株を、抗生物質アンピシリン含有(100μg/ml)YT−二重培地(dYT)内で、かつ0.5mM IPTGを添加してOD600nm=0.3〜0.4の密度になるまで28℃で培養した。
【0114】
6xHIS-Tagによる異種発現タンパク質の精製
細菌発現培養の細胞溶解物:2360×gで50ml培地を遠心分離し、かつ引き続き5mM EDTA、300mM NaCl及び1mg/mlリゾザイム含有5ml リン酸ナトリウム緩衝液(pH8)中で再懸濁させ、室温で1時間インキュベートした。細胞溶解物を2360×gで10分間遠心分離し、かつ上澄液をProtino Ni-TED 2000充填カラムにより(製造者の指示に従う;Macherey-Nagel, Dueren)精製した。タンパク質濃度をブラッドフォールド法により決定した。
【0115】
カップリングアッセイによる酵素活性の検出
カップリングアッセイにおいて活性を決定し、その際にトランアミナーゼ反応の副生成物として生じたピルベートを第二工程で更に反応させ、NADHをNAD+に酸化させた。NADH−濃度の減少(原理:吸光度減少の測定)は、340nmにおいて光度計で測定し、かつ活性の尺度として使用した。
【0116】
【表4】

【0117】
12−ODME5μl(50mg/ml)の添加によりアッセイを開始した。測定は、1分毎に340nmにおいて室温で最大20分まで連続的に行った。コントロールに、不活性化したタンパク質と補助基質なしの反応物を使用した。図6では、吸光度の変化を光度測定により追跡することができる。
【0118】
HPLCによる異種発現タンパク質の検出
【表5】

【0119】
室温で4時間インキュベートした後に、1体積MeOHで反応を中断した。HPLC−分析のために反応物をo−フタルアルデヒド(oPA)で誘導化し、かつこのうち250μlを分析した。溶出液Aとして50mM NaAC pH4:アセトニトリル=4:1(v:v)を使用した。
【0120】
溶出液Bは、5%50mM NaAC pH4含有アセトニトリルであった。勾配は、30%B〜60%Bを4分間、60%B〜100%Bを2分間で通した。流量は1.2ml/分であった。
【0121】
分離は、Agilent Zorbax RP18カラムにより行った(Agilent Technologies, USA)。カラム温度は40℃であった。図17(上)には、12−アミノラウリン酸メチルエステルの形成が示されている。基準プローブは図17の下に記載されている。
【0122】
シュードモナス由来のPPTA5とPSTAを用いる12−オキソラウリン酸メチルエステルのアミノ化
D1.PPTA5とPSTAのクローニング
12−オキソラウリン酸メチルエステルのアミノ化に、菌株E.coli BL21(DE3)/PPTA5とE.coliBL21(DE3)/PSTAを使用した。これらの菌株を以下のように構築した。2つのトランスアミナーゼ遺伝子をクローニングするために、発現ベクターpET-21a(+)(Novagen)を選択した。ppta5遺伝子(SEQ ID No.40)には、該遺伝子に制限切断部位NdeIとXhoIを末端で接合するプライマーを構築した;
プライマーPPTA5_NdeI:
GGAATTCCATATGAGCGTCAACAACCCCGCAAACCCG(SEQ ID No.44)及び
プライマーPPTA5_XhoI:
CCGCTCGAGTTATCGAATCGCCTCAAGGGTCAGGTCC(SEQ ID No.45)。
【0123】
psta遺伝子(SEQ ID No.41)には、NdeIとBamHIを末端に有するプライマーを構築した;
プライマーPSTA_NdeI:
GGAATTCCATATGAGCGATTCGCAAACCCTGCACTGGC(SEQ ID No.46)及び
プライマーPSTA_BamHI:
CGCGGATCCTCAGCCCAGCACATCCTTGGCTGTCG(SEQ ID No.47)。
このプライマーをPCRで使用した。引き続き、精製したPCR産物ならびにベクターpET_21a(+)を制限酵素NdeIとXhoIもしくはNdeIとBamHIを用いて制限した。切断したベクターをShrimp由来のアルカリ性ホスファターゼで脱リン酸化した。NdeIとXhoIで切断したベクターとppta−5遺伝子ならびにNdeIとBamHIで切断したベクターとpsta遺伝子をT4DNAリガーゼでライゲーションした後に、形質転換受容性の菌株E.coli XL1-Blueで形質転換した。幾つかのクローンが成長した後に、プラスミドの単離を行い、引き続き制限及びゲル電気泳動分析を行った。得られたクローンのトランスアミナーゼ配列(pPPTA5もしくはpPSTA)を配列分析により確認した。図18には、発現ベクターのプラスミドマップが示されている。
【0124】
D2.PPTA5とPSTAの発現
発現させるために、ベクターpPPTA5とpPSTAを形質転換受容性のE.Coli BL21(DE3)細胞内で形質転換した。個々のコロニー毎に、5ml LB-Amp−培地(アンピシリン濃度100μg/ml)に移種し、かつ37℃で一晩振盪した。引き続き200mlLB−Amp−培地に1%濃度を移種し、37℃で振盪し、かつ0.5のOD600が達成された後に0.5mMIPTGで遺伝子発現を誘発した。30℃で20時間振盪した後に細胞を回収し、かつ−20℃に置いた。
【0125】
菌株E.coliBL21(DE3)/pPPTA5とE.Coli BL21(DE3)/pPSTAを消化するために、細胞0.4gずつを100mM Tris-HCl緩衝液(pH7.2)で処理し、25%細胞懸濁液にし、これを遠心分離器(Bandelin Sonoplus HD2070;tip MS73;50% 強度)で90秒間2回処理した。遠心分離の後に上澄液を取り除いた。このように得られた粗抽出物を12−オキソラウリン酸メチルエステルの反応で使用した。反応物400μlはN,N−ジメチルホルムアミド中に溶解した5mM12−オキソラウリン酸メチルエステル、500mMDL−アラニン、1mMピリドキサール−5’−フタレート及び10mMKpi-緩衝液(pH7.0)中の80μl粗抽出物を含有していた。これを25℃で振盪した。一定時間後に、プローブを20μlずつ取り出し、一部を1%濃度NaOH溶液1μlでアルカリpH領域内にし、かつ100μl酢酸エチルエステルで振盪して抽出した。有機相をガスクロマトグラフィー(Gaschromatograph Perkin Elimer社、水素炎イオン化検出器付きClarus 500)により試験した。このために、OPTIMA5−カラム(0.25μm、30m、0.15mm、Macherey-Nagel)を使用した。プログラムは以下の通りである:
80℃
25℃/分 180℃
5℃/分 215℃
20℃/分 280℃
12−オキソラウリン酸メチルエステルと12−アミノラウリン酸メチルエステルの滞留時間は7.2分もしくは7.7分であった。
【0126】
反応の結果は図20と21に記載されている。評価するために、12−オキソラウリン酸メチルエステルと12−アミノラウリン酸メチルエステルのピーク面を、得られた中性及び酸性抽出のクロマトグラムからまとめ、かつ抽出物もしくは生成物のパーセント部を計算した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型と比べてより多くのω−アミノカルボン酸、より多くのω−アミノカルボン酸エステル又は、ω−アミノカルボン酸から由来するより多くのラクタムをカルボン酸又はカルボン酸エステルから製造できるように遺伝子工学的に改変された細胞。
【請求項2】
細胞は、その野生型と比べて以下の酵素:
i)カルボン酸又はカルボン酸エステルを相応するω−ヒドロキシカルボン酸又はω−ヒドロキシカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EI
ii)ω−ヒドロキシカルボン酸又はω−ヒドロキシカルボン酸エステルを相応するω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EII
iii)ω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸又はω−アミノカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EIII
のうち少なくとも1つの増大した活性を有する、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
細胞は酵素E1、EII及びEIIIの全ての増大した活性を有する、請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
− 酵素EIは、アルカンモノオキシゲナーゼであるか、又は
− 酵素EIIは、アルカンモノオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ又はアルコールオキシダーゼであるか、又は
− 酵素EIIIはω−トランスアミナーゼである
請求項2又は3に記載の細胞。
【請求項5】
酵素EIは、alkBGTにコードされたシュードモナス・プチダGpo1由来のアルカンモノオキシゲナーゼである、請求項2から4までのいずれか1項に記載の細胞。
【請求項6】
酵素EIIは、シュードモナス・プチダGpo1由来のalkJ-遺伝子によりコードされる、請求項2から5までのいずれか1項に記載の細胞。
【請求項7】
酵素EIIIは、クロモバクテリウム・ビオラセウムDSM30191由来のω−トランスアミナーゼである、請求項2から6までのいずれか1項に記載の細胞。
【請求項8】
細胞内では、ω−アミノカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸にする反応を触媒する酵素EIVの発現が増大する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の細胞。
【請求項9】
酵素EIVは、細胞から分泌されるシュードモナス・フルオレッセンス由来のリパーゼLipA(Q76D26)である、請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
細胞内では、ω−アミノカルボン酸を相応するラクタムにする反応を触媒する酵素EVの発現が増大する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の細胞。
【請求項11】
酵素EVは細胞から分泌される、請求項10に記載の細胞。
【請求項12】
細胞は、遺伝子工学的に改変された大腸菌の細胞、遺伝子工学的に改変されたコリネバクテリウム・グルタミクムの細胞又は遺伝子工学的に改変されたシュードモナス・プチダの細胞である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の細胞。
【請求項13】
遺伝子工学的に改変された細胞を製造する方法において、細胞内で、以下の酵素:
i) カルボン酸又はカルボン酸エステルを相応するω−ヒドロキシカルボン酸又はω−ヒドロキシカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EI
ii) ω−ヒドロキシカルボン酸又はω−ヒドロキシカルボン酸エステルを相応するω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EII
iv)ω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸又はω−アミノカルボン酸エステルにする反応を触媒する酵素EIII
のうち少なくとも1つの活性を高める方法工程を含む、遺伝子工学的に改変された細胞を製造する方法。
【請求項14】
酵素EI、EII又はEIIIの活性を更に高めるために、ω−アミノカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸にする反応を触媒する酵素EIVの活性及び/又はω−アミノカルボン酸を相応するラクタムにする反応を触媒する酵素EVの活性を、これらの酵素の発現を増大させることにより高め、かつその際に酵素EIV及び/又はEVは細胞から分泌される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法により得られる遺伝子工学的に改変された細胞。
【請求項16】
ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを製造する方法において、以下の:
I)請求項1から12までのいずれか1項又は請求項15に記載の細胞を、細胞がカルボン酸から、又はカルボン酸エステルから、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを形成できる条件下で、カルボン酸又はカルボン酸エステルを含む培地と接触させるか、又はカルボン酸又はカルボン酸エステルを含む有機相に隣接する培地と接触させ、
II)場合により、形成されたω−アミノカルボン酸、形成されたω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを単離する
方法工程を含む、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを製造する方法。
【請求項17】
方法工程I)で形成されたω−アミノカルボン酸エステルを、更なる方法工程で通常の化学的方法を用いて反応させてω−アミノカルボン酸にする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細胞は、遺伝子工学的に改変された大腸菌の細胞、遺伝子工学的に改変されたコリネバクテリウム・グルタミクムの細胞又は遺伝子工学的に改変されたシュードモナス・プチダの細胞である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
方法工程I)で使用される培地は、トランスアミナーゼにより触媒されるω−オキソカルボン酸又はω−オキソカルボン酸エステルを相応するω−アミノカルボン酸又はω−アミノカルボン酸エステルにする反応の際に、アミン−ドナーとして機能するアミノ酸を含有している、請求項16から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
方法は、次のもの:
A)水相、ならびに
B)有機相
を含む2相系で実施され、その際、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムの形成は、方法工程I)において細胞により水相で行われ、かつ形成されたω−アミノカルボン酸、又は形成されたω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来する形成されたラクタムは有機相で富化される、請求項16から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
形成されたω−アミノカルボン酸、形成されたω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来する形成されたラクタムの単離は、次のもの:
a)ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタムを培地から抽出する抽出工程
b)方法工程a)で得られた抽出物を蒸留法により、又は更なる抽出法により、少なくとも99.8%の純度を有するω−アミノカルボン酸の相、ω−アミノカルボン酸エステルの相又はラクタムの相を得ながら更に精製する精製工程
を含む少なくとも2段階の精製工程で行われる、請求項16から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
方法工程a)での抽出は、反応抽出である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
カルボン酸はラウリン酸であり、又はカルボン酸エステルはラウリン酸メチルエステルであり、その際、ラウリン酸又はラウリン酸メチルエステルは方法工程II)で反応してラウリンラクタムになる、請求項16から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項16から23までのいずれか1項に記載の方法により得られる、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボン酸エステル、又はω−アミノカルボン酸から由来するラクタム。
【請求項25】
請求項23に記載の方法により得られるラウリンラクタム。
【請求項26】
ω−アミノカルボン酸をベースとするポリアミドの製法において、次の:
(α1)請求項16から23までのいずれか1項に記載の方法により、ω−アミノカルボン酸を製造し、
(α2)ポリアミドを得ながらω−アミノカルボン酸を重合する
方法工程を含む、ω−アミノカルボン酸をベースとするポリアミドの製法。
【請求項27】
ラクタムをベースとするポリアミドの製法において、次の:
(β1)請求項16から23までのいずれか1項に記載の方法により、ラクタムを製造し、
(β2)ポリアミドを得ながらラウリンラクタムを環開重合又は縮重合する
方法工程を含む、ラクタムをベースとするポリアミドの製法。
【請求項28】
請求項25又は26に記載の方法により得られるポリアミド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−505854(P2011−505854A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538608(P2010−538608)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067447
【国際公開番号】WO2009/077461
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】